説明

新しいエポキシ樹脂及びこれを含むエポキシ樹脂組成物

【課題】新しいエポキシ樹脂及びこれを含むエポキシ樹脂組成物を提供すること
【解決手段】
本発明は、耐熱性、熱膨張特性、及び加工性が改善された新しいエポキシ樹脂、並びにこれを含む熱硬化性樹脂組成物に関し、明細書中の化学式1のエポキシ樹脂、これを含むエポキシ樹脂組成物、並びにこれで製造されたパッケージング、基板、及びトランジスタを提供する。本発明による特定の側鎖基を有するエポキシ樹脂及び/又は特定のコア構造を有するエポキシ樹脂は、これを含む組成物の硬化時、エポキシ樹脂に対してフィラーが化学的に強固に結合し、これにより、エポキシ樹脂に対するフィラーの充填効果が最大化されるだけでなく、特定のコア構造の特性により、硬化物の耐熱性及び熱膨張特性が大きく向上し(CTEが減少し)、改善されたガラス転移挙動、強度、及び加工性を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化時に改善された耐熱性、熱膨張特性、加工性、及び高いガラス転移温度特性を示す新しいエポキシ樹脂、並びにこれを含むエポキシ樹脂組成物に関する。より詳細には、本発明は、耐熱性、熱膨張特性、及び加工性が改善された新しいエポキシ樹脂、並びにこれを含む、改善された耐熱性、特に、改善された高温寸法安定性、熱膨張特性(すなわち、小さいCTE(Coefficient of Thermal Expansion))、及び高温加工性を有する新しい熱硬化性樹脂組成物に関する。本発明による組成物は、ガラス転移温度(Tg)が高くなり、これによりガラス転移挙動が抑制されるので、優れた耐熱性及び強度を示す。
【背景技術】
【0002】
高分子材料、具体的にはエポキシ樹脂の熱膨張係数(CTE)は、約50乃至80ppm/℃であり、無機粒子であるセラミック素材及び金属材料の熱膨張係数(例えば、シリコンの熱膨張係数は3乃至5ppm/℃であり、銅の熱膨張係数は17ppm/℃である。)の数倍乃至数十倍程度と非常に大きい。従って、例えば、半導体、ディスプレイ分野などにおいて高分子材料が無機材料又は金属材料と共に使用される場合、高分子材料と無機材料又は金属材料との異なる熱膨張係数により、高分子材料の物性及び加工性が著しく制限される。また、例えば、シリコンウエハと高分子基板が隣接して使用される半導体パッケージングなどの場合や、ガスバリア特性を与えるために高分子フィルム上に無機遮蔽膜をコーティングする場合、工程及び/又は使用温度変化時、構成成分間の顕著な熱膨張係数の差(CTE不一致)により、無機層のクラックの生成、基板の撓みの発生、コーティング層の剥離、基板の破損など、製品不良が発生する。
【0003】
このような高分子材料の大きいCTE及びそれによる高分子材料の寸法の変化により、次世代半導体基板、PCB(プリント基板、Printed Circuit Board)、パッケージング、OTFT(有機薄膜トランジスタ、Organic Thin Film Transistor)、フレキシブルディスプレイ基板などの技術開発が制限される。具体的には、現在、半導体及びPCB分野においては、金属材料/セラミック材料に比べて非常に大きいCTEを有する高分子材料により、高集積化、高微細化、フレキシブル化、高性能化などが求められる次世代部品の設計と加工性及び信頼性の確保に困難がある。言い換えれば、部品加工温度での高分子材料の高い熱膨張特性により、部品を製造する際に、不良が発生するだけでなく、工程が制限され、部品の設計、加工性及び信頼性の確保が問題となっている。つまり、電子部品の加工性及び信頼性を確保するためには、高分子材料の改善された耐熱性、熱膨張特性、すなわち寸法安定性が求められる。
【0004】
現在まで高分子材料、例えばエポキシ樹脂の熱膨張特性を改善する(すなわち、熱膨張係数を下げる)ためには、一般に、(1)エポキシ樹脂と無機粒子(無機フィラー)及び/又はファブリック(繊維)を複合化したり、(2)新しい高分子合成法でCTEが減少した新しいエポキシ樹脂を設計する方法が用いられてきた。
【0005】
エポキシ樹脂の熱膨張特性を改善するためにエポキシ樹脂とフィラー(無機粒子)を複合化する場合は、約2乃至30μmサイズのシリカフィラーを多量に使用しなければCTE減少効果が得られない。しかしながら、多量のフィラーの充填により、加工性及び部品の物性が低下するという問題が伴う。すなわち、多量のフィラーによる流動性の減少と隙間充填時のボイドの生成などが問題となる。また、フィラーの添加により、材料の粘度が幾何級数的に増加する。さらに、半導体構造の微細化によりフィラーのサイズが減少する傾向があるが、1μm以下のフィラーを使用した場合は、流動性低下(粘度増加)の問題
が非常に深刻になる。一方、平均粒径の大きいフィラーを使用した場合は、樹脂とフィラーの組成物(複合体)が適用部位に充填されない頻度が高くなる。そして、有機樹脂とファブリックの組成物(複合体)の場合は、10ppm/℃以下の小さいCTE値に達しにくいだけでなく、繊維複合化時、厚さ方向のCTEには大きな効果が得られにくい。
【0006】
また、鉛含有はんだを代替する高融点無鉛材料を使用することにより、半導体実装時のリフロー温度が約260乃至275℃となり、既存のリフロー温度に比べて数十度程度上昇した。よって、既存の材料に比べて高温で優れたリフロー性を有するような、ガラス転移温度の高い材料の開発が求められている。
【0007】
これに加えて、電子部品加工温度での熱膨張特性の確保のためにも、材料のガラス転移温度が高くなることが求められている。高分子システムの熱膨張係数(CTE)は温度変化に依存するが、高分子がガラス状態からゴム状態に熱転移するガラス転移温度(Tg)を超えることによって、高分子システムの熱膨張係数(CTE)及び寸法の変化が急激に増加する。図1に示すように、高分子システムの熱膨張係数(CTE)は、ガラス転移温度(Tg)を基準として、Tg以上の温度での熱膨張係数(α2)がTg以下の温度での熱膨張係数(α1)に比べて大幅に増加し、一般的にα2値はα1値に比べて何百%レベルになるほど非常に大きい。このような高分子システムの熱的特性により、図1に示すように、高分子システムにおいては、ガラス転移温度前後で不連続的で顕著な寸法の変化が見られる。例えば、エポキシ硬化物の場合は、ガラス転移温度以下の温度でのCTE(α1)は約50乃至80ppm/℃であるが、ガラス転移温度以上の温度でのCTE(α2)は200ppm/℃以上までも増加し、これにより、Tg以上の温度での寸法の変化がTg以下の温度での寸法の変化に比べて大幅に増加する。このように、高分子システムにおいては、Tg前後の温度区間で熱膨張特性が大幅に変化し、これにより顕著な寸法の変化が生じる。
【0008】
そこで、従来の熱硬化性高分子組成物(複合体)の大きいCTE及びそれによる耐熱性及び加工性不足などのような問題を改善するために、改善された耐熱性及び熱膨張特性を示し、かつ温度変化による寸法の変化が最小限に抑えられる新しい高分子組成物(複合体)の開発が求められている。また、高分子システムのガラス転移挙動の発現を抑制したり、高いガラス転移温度を示す高分子システムを設計することにより、高分子の耐熱性及び/又は熱膨張特性を改善することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の一局面によれば、硬化時に改善された熱膨張特性、耐熱性、寸法安定性、及び加工性を示すようにした新しいエポキシ樹脂が提供される。
【0010】
本発明の他の局面によれば、熱膨張特性、耐熱性、寸法安定性、強度、及び加工性が改善されたエポキシ樹脂組成物が提供される。
【0011】
本発明のさらに他の局面によれば、高いガラス転移温度(Tg)を示し、従って、ガラス転移挙動が抑制され、及び/又はガラス転移挙動を示さないエポキシ樹脂組成物が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様によれば、下記化学式1のエポキシ樹脂が提供される。
【0013】
【化1】

【0014】
上記式において、コア構造A乃至Eは、それぞれビスフェノールA系構造、ビフェニル系構造、ナフタレン系構造、カルド系構造、アントラセン系構造、ジシクロペンタジエン系構造、多環芳香族構造、及び液晶系化合物構造から構成される群から独立して選択されるものであって、同一であるか又は異なり、この場合、側鎖基Rは、エポキシ基、ビニル基、アリル基、カルボキシル基、酸無水物基、
【化2】

から構成される群から選択され、
【0015】
前記コア構造A、C、及びEが同一であり、前記コア構造B及びDが同一であり、前記A、C、及びEをなすコア構造と前記B及びDをなすコア構造とは、それぞれビスフェノールA系構造、ビフェニル系構造、ナフタレン系構造、カルド系構造、アントラセン系構造、ジシクロペンタジエン系構造、多環芳香族構造、及び液晶系化合物構造から構成される群から独立して選択される異なる構造であり、この場合、側鎖基Rは、水素原子、エポキシ基、ビニル基、アリル基、カルボキシル基、酸無水物基、
【化3】

から構成される群から選択され、nは、0乃至100の整数である。
【0016】
本発明の他の態様によれば、本発明によるエポキシ樹脂と、硬化剤と、無機粒子及び繊維から構成される群から選択される少なくとも1種のフィラーとを含むエポキシ樹脂組成物が提供される。
【0017】
本発明のさらに他の態様によれば、本発明によるエポキシ樹脂組成物で製造されたパッケージング、基板、及びトランジスタが提供される。
【発明の効果】
【0018】
本発明による特定の側鎖基を有するエポキシ樹脂及び/又は特定のコア構造を有するエポキシ樹脂は、これを含む組成物の硬化時、エポキシ樹脂に対してフィラーが化学的に強固に結合されるようにし、これにより、エポキシ樹脂に対するフィラーの充填効果が最大化されるだけでなく、特定のコア構造の特性により、硬化物の耐熱性及び熱膨張特性が大きく向上し(CTEが減少し)、改善されたガラス転移挙動、強度、及び加工性を示す。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】高分子システムにおけるガラス転移温度と熱膨張係数(CTE)の関係を示すグラフである。
【図2】エポキシ樹脂のヒドロキシ基の改質を示す図である。
【図3】本発明の一態様によるナフタレン系エポキシ樹脂により樹脂組成物の熱膨張特性が改善される概念を示す図である。
【図4】高分子システムにおけるTgの有無による貯蔵弾性率の変化を示すグラフである。
【図5】実施例及び比較例で製造された熱硬化性エポキシ樹脂組成物の温度上昇による寸法の変化を示すグラフである。
【図6】実施例及び比較例で製造された熱硬化性エポキシ樹脂組成物のガラス転移温度以下の温度での熱膨張係数(CTE)を示すグラフである。
【図7】実施例5の樹脂組成物の熱的特性の変化を示すグラフである。
【図8】実施例6の樹脂組成物の熱的特性の変化を示すグラフである。
【図9】比較例3の樹脂組成物の熱的特性の変化を示すグラフである。
【図10】(a)は実施例5及び6の樹脂組成物の貯蔵モジュラスの変化を示すグラフであり、(b)は実施例5及び6の樹脂組成物のtanδの変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、前述のように、温度上昇に対する改善された熱膨張特性、耐熱性、加工性、強度、及びガラス転移挙動を有する新しいエポキシ樹脂、並びにこれを含むエポキシ樹脂組成物を提供するために提案されたものであり、以下、本発明による新しいエポキシ樹脂及びこれを含むエポキシ樹脂組成物について説明する。
【0021】
1.改善された熱膨張特性及び加工性を有するエポキシ樹脂
本発明の一態様によれば、下記化学式1の新しいエポキシ樹脂が提供される。
【0022】
【化4】

【0023】
上記式において、コア構造A乃至Eは、それぞれビスフェノールA系構造、ビフェニル系構造、ナフタレン系構造、カルド系構造、アントラセン系構造、多環芳香族構造、及び液晶系化合物構造から構成される群から独立して選択されるものであって、同一であるか又は異なり、この場合、側基Rは、エポキシ基、ビニル基、アリル基、カルボキシル基、酸無水物基、
【化5】

から構成される群から選択され、
【0024】
前記コア構造A、C、及びEが同一であり、前記コア構造B及びDが同一であり、前記
A、C、及びEをなすコア構造と前記B及びDをなすコア構造とは、それぞれビスフェノールA系構造、ビフェニル系構造、ナフタレン系構造、カルド系構造、アントラセン系構造、多環芳香族構造、及び液晶系化合物構造から構成される群から独立して選択される異なる構造であり、この場合、側鎖基Rは、水素原子、エポキシ基、ビニル基、アリル基、カルボキシル基、酸無水物基、
【化6】

から構成される群から選択される。
【0025】
前記「コア構造が異なる」及び「異なる構造」とは、コア構造自体がナフタレン系構造とアントラセン系構造のように異なる場合だけでなく、ナフタレン系構造であっても、ナフタレン構造が下記化学式(1−5)及び(1−6)のように異なる場合や、ナフタレン構造のうち結合位置が異なる炭素の場合(例えば、1,6−、2,7−の炭素位置に連結される場合)も異なる構造であることを意味する。
【0026】
上記化学式1の「エポキシ基、ビニル基、アリル基、カルボキシル基、酸無水物基、
【化7】

から構成される群」から選択される特定の側鎖基を有するエポキシ樹脂及び/又は特定のコア構造を有するエポキシ樹脂は、硬化時、エポキシ樹脂に対してフィラーが化学的に強固に結合されるようにし、これにより、エポキシ樹脂に対するフィラーの充填効果が最大化されるだけでなく、特定のコア構造の特性により、組成物の耐熱性及び熱膨張特性が大きく向上し(CTEが減少し)、改善されたガラス転移挙動、強度、及び加工性を示す。
【0027】
前記エポキシ樹脂の化学式1のコア構造のうち、ビスフェノールA系構造は、ビスフェノールA構造を有するものであればいかなるものであってもよく、これに限定するものではないが、例えば下記化学式(1−1)又は(1−2)のビスフェノールA構造であってもよい。
【化8】

【0028】
前記エポキシ樹脂の化学式1のコア構造のうち、ビフェニル系構造は、ビフェニル構造を有するものであればいかなるものであってもよく、これに限定するものではないが、例えば下記化学式(1−3)又は(1−4)のビフェニル構造であってもよい。
【化9】

【0029】
前記エポキシ樹脂の化学式1のコア構造のうち、ナフタレン系構造は、これに限定するものではないが、例えば下記化学式(1−5)又は(1−6)のナフタレン構造であってもよい。
【化10】

(ただし、上記化学式(1−6)において、Rは、単結合又は炭素原子数1乃至5のアルカンジイル基、好ましくは炭素原子数1乃至3のアルカンジイル基であってもよい。)
【0030】
上記化学式(1−5)及び(1−6)においてはナフタレン環に対する連結部位を特定しておらず、上記化学式(1−6)においてはナフタレン環間の結合部位を特定していないが、これは、ナフタレン環のどの炭素位置にも連結及び結合可能であることを意味する。これに限定するものではないが、例えば、上記化学式(1−5)は、1,2−、1,3−、1,4−、1,5−、1,6−、1,7−、2,3−、2,6−、2,7−の炭素位置に連結されるなどの全ての場合を含むものと理解される。また、上記化学式(1−6)は、2,6−ビナフタレニル−7,7’−の炭素位置や1,1−ビナフタレニル−2,2’−の炭素位置など、2つのナフタレンのいずれの部分に連結された場合も全て含むものと理解される。
【0031】
前記エポキシ樹脂の化学式1で表されるコア構造のうち、カルド系構造は、カルド構造を有するものであればいかなるものであってもよく、これに限定するものではないが、例えば下記化学式(1−7)乃至(1−12)で表されるカルド構造であってもよい。
【化11】

【0032】
前記エポキシ樹脂の化学式1で表されるコア構造のうち、アントラセン系構造は、アントラセン構造を有するものであればいかなるものであってもよく、これに限定するものではないが、例えば下記化学式(1−13)で表されるアントラセン構造であってもよい。
【化12】

【0033】
上記化学式1において、nは0乃至100の整数である。繰り返し単位数の増加によりエポキシ樹脂の分子量が増加すると、架橋密度が低くなるだけでなく、樹脂の粘度が増加し、エポキシ材料の加工が難しくなるので、繰り返し単位数(n)は、100以下、好ましくは20以下、より好ましくは10以下、さらに好ましくは5以下、さらにより好ましくは2以下、最も好ましくは0であってもよい。
【0034】
上記化学式1において、エポキシ樹脂の主鎖に存在する側基Rは、コア構造によって、水素原子であるか、又は図2に示すように特定の官能基であってもよく、具体的には、側鎖基Rは、エポキシ基、ビニル基、アリル基、カルボキシル基、酸無水物基、
【化13】

から構成される群から選択される少なくとも1種の改質された側鎖基であってもよい。
【0035】
具体的には、上記化学式1において、コア構造A乃至Eは、それぞれビスフェノールA系構造、ビフェニル系構造、ナフタレン系構造、カルド系構造、アントラセン系構造、多環芳香族構造、及び液晶系化合物構造から構成される群から独立して選択されるものであって、同一であるか又は異なる場合、側鎖基Rは、エポキシ基、ビニル基、アリル基、カルボキシル基、酸無水物基、
【化14】

から構成される群から選択されてもよい。
【0036】
一方、上記化学式1において、コア構造A、C、及びEが同一であり、コア構造B及びDが同一であり、A、C、及びEをなすコア構造とB及びDをなすコア構造とがそれぞれビスフェノールA系構造、ビフェニル系構造、ナフタレン系構造、カルド系構造、アントラセン系構造、多環芳香族構造、及び液晶系化合物構造から構成される群から選択される異なる構造の場合、側鎖基Rは、水素原子、エポキシ基、ビニル基、アリル基、カルボキシル基、酸無水物基、
【化15】

から構成される群から選択されてもよい。
【0037】
前記特定の側鎖基を有するエポキシ樹脂は、エポキシ樹脂の主鎖中のヒドロキシ基のプロトン(H)を塩基などを用いて脱プロトン化反応(deprotonation)させた後、エピクロルヒドリン、(メタ)アクリロハライド、アリルハライド、酸無水物などと反応させることにより製造することができる。ここで、塩基としては、KCO、KOH、NaOH、NaH、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、テトラエチルアンモニウムハライド、トリエチルベンジルアンモニウムハライドなどが使用されてもよい。
【0038】
本発明の一態様による特定の側鎖基を有するエポキシ樹脂及び/又は特定のコア構造を有するエポキシ樹脂を含む組成物で硬化物を形成する場合、製造される硬化物のガラス転移温度が高くなり、耐熱性が改善される。これは、本発明の前記エポキシ樹脂の側鎖基と後述するフィラーの反応性基との化学的結合により、エポキシ樹脂間にフィラーが強固に結合されて充填された状態で複合化するからである。
【0039】
また、前記エポキシ樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物は、温度上昇によるエポキシ高分子の熱的特性の変化が抑制されて、熱転移、すなわちガラス転移挙動が抑制、弱化、減少し、及び/又はガラス転移挙動を示さない。従って、従来のエポキシ樹脂組成物のガラス転移温度より高い温度区間でも、優れた強度、具体的には、改善された熱的及び機械的強度特性を示す。本発明のエポキシ樹脂を含む組成物は、このような高温での優れた強度により、さらに薄い基板として適用することができ、これにより、電気製品の薄型化及び小型化技術に適用することができる。
【0040】
一方、従来、高温工程に適するようにガラス転移温度の高いエポキシ樹脂を使用する場合は、強固な(rigid)芳香族エポキシ構造を採用するが、このようなエポキシ樹脂は、溶媒に対する溶解性及び溶融性(melting)がよくないため、硬化物への製造及び加工が困難であった。しかし、本発明による新しいエポキシ樹脂を使用する場合は、ガラス転移温度の低いエポキシ樹脂を使用して硬化物を形成しても硬化物が高いTgを示すので、溶媒に対する溶解性及び溶融性に優れた、ガラス転移温度の低い樹脂を使用することができ、これにより、硬化物への製造が容易であり、加工性も改善される。
【0041】
一方、エポキシ樹脂のヒドロキシ基(OH基)は、樹脂の誘電率及び吸湿率を高めるという欠点がある。しかしながら、前記エポキシ樹脂の側鎖基ORがヒドロキシ基以外の特定の側鎖基を有する場合は、エポキシ樹脂中のOH基の濃度が減少するので、エポキシ樹脂の誘電率及び吸湿率が下がるという利点がある。それだけでなく、エポキシ分子間の水素結合がなくなるので、エポキシ樹脂の粘度が低くなり、従って、配合加工性が向上する。さらに、エポキシ樹脂の主鎖に化学的に結合されたフィラーが架橋点として作用するので、全体としてエポキシ樹脂の硬化度が増加し、耐熱特性やモジュラスなどの硬化物の物性も向上する。
【0042】
本発明の他の態様によれば、上記化学式1において、前記コア構造A、C、及びEが同一であり、前記コア構造B及びDが同一であり、前記A、C、及びEをなすコア構造と前
記B及びDをなすコア構造とが異なるナフタレン系ユニットであるエポキシ樹脂(以下、「ナフタレン系エポキシ樹脂」という。)が提供され、この場合、前記側鎖基Rは、水素原子、エポキシ基、ビニル基、アリル基、カルボキシル基、酸無水物基、
【化16】

から構成される群から選択されてもよい。
【0043】
また、上記化学式1において、nは0乃至100の整数であり、好ましくは0乃至10の整数、より好ましくは0乃至5の整数、さらに好ましくは0乃至2であり、最も好ましくは0である。nが100を超える場合は、加工性が悪くなり、架橋度が低くなるという点で好ましくない。一方、コアに計3つ乃至7つのナフタレン系ユニットを含むナフタレン系エポキシ樹脂は、組成物を形成する際に、隣接するエポキシの主鎖との分子間力(intermolecular attraction)、樹脂の主鎖のパッキング性、熱膨張特性、及び加工性の面で最も好ましい特性を示す。
【0044】
つまり、本発明の上記態様によるナフタレン系エポキシ樹脂は、コアに3つ以上のナフタレン系ユニットを含み、前記ナフタレン系ユニットは、異なる2種類のナフタレン系ユニットからなることを特徴とする。
【0045】
前記ナフタレン系エポキシ樹脂において、前記ナフタレン系ユニットは、異なる2種類のナフタレン系構造からなるようにしてもよい。本明細書において用いられた用語“異なる種類のナフタレン系ユニット”は、ナフタレン部分の構造自体が異なるナフタレン系ユニットだけでなく、ナフタレン部分に対する他の部分の結合位置が異なるナフタレン系ユニットを含む意味で用いられる。例えば、1,6−の炭素位置に他の部分が結合されるナフタレンと2,7−の炭素位置に他の部分が結合されるナフタレンとは、“異なる種類のナフタレン”として理解される。
【0046】
本発明の好ましい一態様の例として、コアに3つのナフタレン系ユニットを含み、3つのナフタレン系ユニットが2種類のナフタレン系ユニットから構成されるナフタレン系エポキシ樹脂の例(上記化学式1において、コア構造A及びEは同一のナフタレン系ユニットであり、コア構造Dはコア構造A及びEのナフタレン系ユニットとは異なるナフタレン系ユニットであり、nが0である場合)を下記化学式2に示す。下記化学式2のナフタレン系エポキシ樹脂は、本発明の理解を助けるために例示的に提示したものであり、これにより本発明を限定するものではない。
【0047】
【化17】

【0048】
上記化学式2において、Rは、水素原子、エポキシ基、ビニル基、アリル基、カルボキ
シル基、酸無水物基、
【化18】

から構成される群から選択されてもよい。より具体的には、これに限定するものではないが、例えば、前記Dは1,6−の炭素位置に他の部分が連結される構造であり、かつ前記A及びEは2,7−の炭素位置に他の部分が連結される構造であってもよい。
【0049】
本発明によるナフタレン系エポキシ樹脂のナフタレン系ユニットは、上記化学式(1−5)又は(1−6)から構成される群から選択されてもよい。
【0050】
以下、図面を参照して本発明の好ましい一態様によるナフタレン系エポキシ樹脂における温度上昇による熱膨張特性及び加工性が改善される概念についてより具体的に説明する。このような概念を図3に示す。図3の(a)は、コアに1つのナフタレン系ユニットを含むナフタレン系エポキシ樹脂と硬化剤との反応により形成されたエポキシ樹脂の主鎖の模式図を示す。図3の(b)は、異なる2種類のナフタレン系ユニットを含み、コアに計3つのナフタレン系ユニットを含む本発明の一態様によるナフタレン系エポキシ樹脂と硬化剤との反応により形成されたエポキシ樹脂の主鎖の模式図を示す。
【0051】
従来のコアに1つのナフタレン系ユニットを含むナフタレン系エポキシ樹脂は、硬化剤との反応によりエポキシ硬化物網状構造を形成する場合、図3の(a)に示すように、エポキシ樹脂と硬化剤とが交互に連結された主鎖を形成する。このような主鎖中の頻繁な硬化剤部分により、隣接するエポキシ樹脂の主鎖の分子間のパッキング特性が妨げられる。従って、エポキシ硬化物網状構造の自由体積が増加し、温度上昇による主鎖の動きが大きくなるので、温度上昇時に大きい熱膨張係数を示す。
【0052】
しかし、図3の(b)に示すように、コアに3つ以上のナフタレン系ユニットを含む本発明によるナフタレン系エポキシ樹脂は、硬化剤との反応により網状構造のエポキシ硬化物を形成する場合、長いナフタレン部分により、硬化剤による隣接するエポキシ樹脂の主鎖間のパッキング特性の妨害が顕著に減少するだけでなく、連続して位置する平らなナフタレン分子構造により、隣接するエポキシ樹脂の主鎖間のパッキング効率が向上する。従って、隣接するエポキシ樹脂の主鎖間の分子間力(intermolecular attraction)が増大し、エポキシ樹脂の主鎖間の自由体積(free volume)が減少し、温度上昇による樹脂の主鎖の移動性が抑制されるので、改善された熱膨張特性、すなわち小さいCTE(熱膨張係数, Coefficient of Thermal Expansion)、改善された寸法安定性、及び加工性を示す。
【0053】
一方、前記3つ以上のナフタレン系ユニットが同一の構造のナフタレン系ユニットである場合は、ナフタレン系ユニットの高い規則性(結晶性)により、エポキシ樹脂の主鎖間の分子間力が非常に大きくなり、従って、低い加工性を示す。すなわち、樹脂複合体の溶媒に対する溶解度が非常に低くなり、溶媒にほとんど溶解しなかったり、加工温度で溶融しなかったりするので、試料の製造が非常に難しくなる。
【0054】
しかし、本発明の一態様によるナフタレン系エポキシ樹脂中の3つ以上のナフタレン系ユニットは、異なる2種類のナフタレン系ユニットからなるので、ナフタレン系コアユニットの構造上の差異(非対称性(asymmetric))によりナフタレン系コア構造
の高い結晶性(規則性)が緩和され、これにより、エポキシ樹脂の主鎖の分子間力が多少緩和され、従って、ナフタレン系エポキシ樹脂の加工性が改善される。すなわち、溶解度が向上し、溶融温度が低くなる。
【0055】
上記本発明によるナフタレン系エポキシ樹脂は、異なる2種類のナフタレン系ユニットを共重合して製造することができる。具体的には、ジエポキシナフタレン系化合物とジヒドロキシナフタレン系化合物を共重合して製造してもよい。より具体的には、本発明による新しいナフタレン系エポキシ樹脂は、溶媒中でジエポキシナフタレン系化合物とジヒドロキシナフタレン系化合物を溶解させて反応させることにより合成してもよい。このとき、必要に応じて、塩基触媒又は相転移触媒(相間移動触媒)を使用してもよい。
【0056】
前記ジエポキシナフタレン系化合物及び前記ジヒドロキシナフタレン系化合物としては、当該技術分野において一般的に知られているものを使用してもよく、これに限定するものではないが、例えば、前記ジエポキシナフタレン系化合物としては、下記化学式(3−1)及び/又は(3−2)の化合物を使用してもよく、前記ジヒドロキシナフタレン系化合物としては、下記化学式(4−1)及び/又は(4−2)の化合物を使用してもよい。これらは、本発明の理解を助けるために例示的に提示したものであり、これにより本発明を限定するものではない。
【0057】
【化19】

【化20】

(ただし、上記化学式(3−2)及び(4−2)において、Rは、単結合又は炭素原子数1乃至5のアルカンジイル基、好ましくは炭素原子数1乃至3のアルカンジイル基であってもよい。)
【0058】
上記化学式(3−1)、(3−2)、(4−1)、及び(4−2)において、ナフタレ
ン環に対するエポキシ基又はヒドロキシ基の結合部位は特定していないが、これは、2つのエポキシ基又はヒドロキシ基がナフタレン環のいずれか他の2つの炭素に置換された全ての場合を含むものである。これに限定するものではないが、例えば、上記化学式(3−1)又は(4−1)の化合物の場合、エポキシ基又はヒドロキシ基は、それぞれ1,2−、1,3−、1,4−、1,5−、1,6−、1,7−、2,3−、2,6−、2,7−の炭素位置に置換されるなどの全ての場合を含むものと理解される。また、上記化学式(4−2)は、2,6−ビナフタレニル−7,7’−ジオールや1,1−ビナフタレニル−2,2’−ジオールなど、2つのナフタレンのいずれの部分に連結された場合も全て含むものと理解される。これは、上記化学式(3−2)の場合も同様である。
【0059】
前記ジエポキシナフタレン系化合物は過剰量で使用され、具体的には、ジヒドロキシナフタレン系化合物とジエポキシナフタレン系化合物とは、[ジヒドロキシナフタレン系化合物]/[ジエポキシナフタレン系化合物]のモル比が1/10乃至1/2、より好ましくは1/6乃至1/3となるように使用されてもよい。これは、[ジヒドロキシナフタレン系化合物]/[ジエポキシナフタレン系化合物]のモル比が1/2より大きければ、両末端基にエポキシ基を有するエポキシを合成することが難しいという問題があり、1/10より小さければ、エポキシ樹脂の分子量を調節することが難しいという問題があるからである。
【0060】
反応温度及び反応時間は、使用されるジエポキシナフタレン系化合物及びジヒドロキシナフタレン系化合物のナフタレン構造に大きく依存するので、使用されるジエポキシナフタレン系化合物及びジヒドロキシナフタレン系化合物によって異なり、これに限定するものではないが、例えば0℃乃至150℃で5分乃至24時間反応させることにより、本発明によるナフタレン系エポキシ樹脂が得られる。
【0061】
前記溶媒としては、反応物を容易に溶解し、反応に何ら悪影響を及ぼさず、反応後に容易に除去できるものであれば、いかなる有機溶媒でも使用することができ、これに特に限定するものではないが、例えば、アセトニトリル、THF(テトラヒドロフラン)、MEK(メチルエチルケトン)、DMF(ジメチルホルムアミド)、メチレンクロライドなどを使用してもよい。
【0062】
さらに、前記重合反応時、塩基触媒又は液相−液相転移触媒(liquid−liquid phase transfer catalyst)が使用される場合、前記塩基触媒としては、これに限定するものではないが、例えば、KOH、NaOH、KCO、KHCO、NaH、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミンが使用されてもよい。前記相転移触媒としては、これに限定するものではないが、例えば、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライドが使用されてもよい。
【0063】
本発明のさらに他の態様によれば、上記化学式1において、前記コア構造A、C、及びEが同一であり、前記コア構造B及びDが同一であり、前記A、C、及びEをなすコア構造と前記B及びDをなすコア構造のうち、一方の構造がナフタレン系ユニットであり、他方の構造がカルド系ユニットであることを特徴とするエポキシ樹脂(以下、「カルド系エポキシ樹脂」という。)が提供され、この場合、前記側鎖基Rは、水素原子、エポキシ基、ビニル基、アリル基、カルボキシル基、酸無水物基、
【化21】

から構成される群から選択されてもよい。
【0064】
また、上記化学式1において、nは0乃至100の整数であり、好ましくは0乃至20の整数、より好ましくは0乃至10整数、さらに好ましくは0乃至5の整数、さらにより好ましくは0乃至2の整数、最も好ましくは0であってもよい。繰り返し単位数nが100を超える場合は、エポキシ分子量の増加により架橋密度が低くなるだけでなく、樹脂の粘度の増加によりエポキシ材料の加工が難しくなるので、物性及び加工性を考慮して、繰り返し単位数は100以下にすることが好ましい。一方、コアに計3つ乃至7つのコアユニット(ナフタレン系ユニット及びカルド系ユニットを含む)を含むカルド系エポキシ樹脂は、組成物を形成する際に、隣接するエポキシの主鎖との分子間力、樹脂の主鎖のパッキング性、熱膨張特性、及び加工性の面で最も好ましい特性を示す。
【0065】
前記ナフタレン系ユニットは、上記化学式(1−5)及び(1−6)で表されるナフタレン系構造から選択されるものであってもよく、前記カルド系ユニットは、上記化学式(1−7)乃至(1−12)で表されるカルド系構造から選択されるものであってもよい。
【0066】
本発明をこれに限定するものではないが、例えば、前記ナフタレン系化合物のうち、2,6−ジヒドロキシナフタレンのナフタレン系ユニット、及び9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンのカルド系ユニットを交互に主鎖に含むエポキシ樹脂の例を下記化学式5及び6に示す。
【0067】
【化22】

【0068】
【化23】

【0069】
前記主鎖にナフタレン系ユニット及びカルド系ユニットを含むエポキシ樹脂は、例えば
、ジヒドロキシナフタレン化合物とジエポキシカルド化合物との反応、又はジエポキシナフタレン化合物とジヒドロキシカルド化合物との反応により製造することができる。具体的には、溶媒中で、ジヒドロキシナフタレン化合物とジエポキシカルド化合物との反応、又はジエポキシナフタレン化合物とジヒドロキシカルド化合物との反応により製造することができる。ここで、必要に応じては、塩基触媒又は相転移触媒を使用してもよい。
【0070】
これに限定するものではないが、ジヒドロキシナフタレン化合物及びジヒドロキシカルド化合物の例を下記化学式7及び8に示す。ジエポキシナフタレン化合物及びジエポキシカルド化合物は、下記化学式7及び8の化学構造において、ヒドロキシ基の代わりに、グリシジルエーテル(すなわち、エポキシ基)を有するものである。また、例えば、ジヒドロキシナフタレン化合物又はジヒドロキシカルド化合物は、ヒドロキシ基をエポキシ化して使用することもできる。
【0071】
【化24】

(ただし、上記化学式(7−2)において、Rは、単結合又は炭素原子数1乃至5のアルカンジイル基、好ましくは炭素原子数1乃至3のアルカンジイル基であってもよい。)
【0072】
上記化学式(7−1)及び(7−2)においてはヒドロキシ基の連結部位を特定しておらず、上記化学式(7−2)においてはナフタレン環間の結合部位を特定していないが、これは、ナフタレン環のどの炭素位置にも連結及び結合可能であることを意味する。これに限定するものではないが、例えば、上記化学式(7−1)は、1,2−、1,3−、1,4−、1,5−、1,6−、1,7−、2,3−、2,6−、2,7−の炭素位置に結合されるなどの全ての場合を含むものと理解される。また、上記化学式(7−2)は、2,6−ビナフタレニル−7,7’−ジオールや1,1−ビナフタレニル−2,2’−ジオールなど、2つのナフタレンのいずれの部分に連結された場合も全て含むものと理解される。
【0073】
【化25】

【0074】
これに限定するものではないが、例えば、上記化学式5のカルド系エポキシ樹脂の合成時には、前記ジエポキシナフタレン系化合物は過剰量で使用され、具体的には、ジヒドロキシカルド系化合物とジエポキシナフタレン系化合物とは、[ジヒドロキシカルド系化合物]/[ジエポキシナフタレン系化合物]のモル比が1/10乃至1/2、より好ましくは1/6乃至1/3となるように使用されてもよい。これは、[ジヒドロキシカルド系化合物]/[ジエポキシナフタレン系化合物]のモル比が1/2より大きければ、両末端基にエポキシ基を有するエポキシ化合物を合成することが難しいという問題があり、1/10より小さければ、エポキシ樹脂の分子量を調節することが難しいという問題があるからである。
【0075】
また、例えば、上記化学式6のカルド系エポキシ樹脂の合成時には、前記ジエポキシカルド系化合物は過剰量で使用され、具体的には、ジヒドロキシナフタレン系化合物とジエポキシカルド系化合物とは、[ジヒドロキシナフタレン系化合物]/[ジエポキシカルド系化合物]のモル比が1/10乃至1/2、より好ましくは1/6乃至1/3となるように使用されてもよい。これは、[ジヒドロキシナフタレン系化合物]/[ジエポキシカルド系化合物]のモル比が1/2より大きければ、両末端基にエポキシ基を有するエポキシ化合物を合成することが難しいという問題があり、1/10より小さければ、エポキシ樹脂の分子量を調節することが難しいという問題があるからである。
【0076】
反応温度及び反応時間は、使用されるジエポキシナフタレン系化合物及びジヒドロキシカルド系化合物、又はジエポキシカルド系化合物及びジヒドロキシナフタレン系化合物の構造に大きく依存するので、使用される化合物によって異なり、具体的には、0℃乃至150℃で5分乃至24時間反応させることにより、本発明によるナフタレン−カルド系共重合エポキシ樹脂が得られる。
【0077】
前記溶媒としては、反応物を容易に溶解し、反応に何ら悪影響を及ぼさず、反応後に容易に除去できるものであれば、いかなる有機溶媒でも使用することができ、これに特に限定するものではないが、例えば、アセトニトリル、THF(テトラヒドロフラン)、MEK(メチルエチルケトン)、DMF(ジメチルホルムアミド)、メチレンクロライドなどを使用してもよい。
【0078】
さらに、前記重合反応時、塩基触媒又は液相−液相転移触媒が使用される場合、前記塩基触媒としては、これに限定するものではないが、例えば、KOH、NaOH、KCO
、KHCO、NaH、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミンが使用されてもよい。前記相転移触媒としては、これに限定するものではないが、例えば、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライドが使用されてもよい。
【0079】
カルド(cardo)化合物とは、分子の主鎖に環状側基(cyclic side group)を有する構造の化合物を意味する。カルド化合物は、高分子の主鎖に体積の大きい側基(lateral group)が存在する構造的特徴により、主鎖の著しい回転障害(rotational hindrance)を与え、これにより、非常に高い耐熱性(高いガラス転移温度)だけでなく、優れた加工性を有する。
【0080】
主鎖にナフタレン系ユニット及びカルド系ユニットを含むエポキシ樹脂は、主鎖に含まれる強直したカルド系ユニットにより改善された耐熱性を示す。すなわち、ガラス転移温度が高くなり、熱膨張特性が改善される。また、非平面構造(out−of−plane)を有するカルド系ユニットが主鎖に導入されてナフタレンの結晶性を減少させるので、材料の加工性(例えば、溶解性)が改善される。さらに、主鎖にナフタレン系ユニット及びカルド系ユニットを含む新しいエポキシ樹脂は、主鎖の強直性の向上により耐熱性が増加するので、従来のように、エポキシ材料の耐熱性を向上させるためにエポキシ官能基の濃度を増加させて(エポキシ当量を減少させて)硬化物の架橋密度(硬化度)を増加させる必要がない。従って、架橋密度の増加時に伴うOH基の増加及び自由体積の増加がないので、これによる副作用である吸湿率及び誘電率の増加が抑制される。
【0081】
また、主鎖にナフタレン系ユニット及びカルド系ユニットを含み、側鎖基Rは、水素原子、エポキシ基、ビニル基、アリル基、カルボキシル基、酸無水物基、
【化26】

から構成される群から選択される少なくとも1つの特定の側基であるエポキシ樹脂は、フィラーと複合化する場合、エポキシ樹脂の特定の側基とフィラーの官能基の化学的結合により、エポキシ樹脂間にフィラーが強固に結合されて充填された状態で複合化するので、耐熱特性がさらに向上した複合体を製造することができる。
【0082】
前記主鎖にナフタレン系ユニット及びカルド系ユニットを含む新しいエポキシ樹脂を含む組成物は、硬化物を形成する際に、エポキシ樹脂自体の高い耐熱性により、高温での耐熱特性、すなわちガラス転移温度、及び高温での機械的強度が改善される。さらに、主鎖にナフタレン系ユニット及びカルド系ユニットを含み、特定の側鎖基を有するエポキシ樹脂を含む組成物は、硬化物を形成する際に、エポキシ樹脂の新しいコア構造によるエポキシ樹脂自体の優れた耐熱性を示すだけでなく、特定の側鎖基によりエポキシ樹脂とフィラーが化学的に強固に結合された状態で複合化するため、より改善された耐熱性を示し、熱膨張特性も著しく向上する。
【0083】
2.改善された熱膨張特性及び加工性を有するエポキシ樹脂組成物
本発明の他の態様によれば、上記本発明の一態様によるエポキシ樹脂、硬化剤、及びフィラーを含むエポキシ樹脂組成物が提供される。本態様によるエポキシ樹脂組成物のエポキシ樹脂としては、前述したエポキシ樹脂についての全ての事項が適用され、これについて本項目では更なる記述はしない。
【0084】
本明細書において用いられた用語「エポキシ樹脂組成物」は、本発明によるエポキシ樹脂、硬化剤、及びフィラー(無機粒子(無機フィラー)、ガラス繊維)だけでなく、任意の触媒やその他の添加剤などを含む、硬化反応前及び/又は後の組成物をすべて含む広範囲な意味で用いられる。
【0085】
前記硬化剤としては、エポキシ樹脂の硬化剤として一般的に知られているいかなる硬化剤でも使用することができ、これに特に限定するものではないが、例えば、アミン系硬化剤、フェノール系硬化剤、無水酸化物系硬化剤などを使用することができる。
【0086】
より具体的には、これに限定するものではないが、前記アミン系硬化剤としては、脂肪族アミン、脂環族アミン、芳香族アミン、その他のアミン、及び変性ポリアミンを使用してもよく、2つ以上の一級アミン基を含むアミン化合物を使用してもよい。前記アミン系硬化剤の具体的な例としては、4,4’−ジメチルアニリン(4,4’−dimethylaniline)(ジアミノジフェニルメタン(diamino diphenyl methane),DAM又はDDM)、ジアミノジフェニルスルホン(diamino
diphenyl sulfone, DDS)、及びm−フェニレンジアミン(m−phenylene diamine )から構成される群から選択される少なくとも1種の芳香族アミン、ジエチレントリアミン(diethylene triamine,
DETA)、ジエチレンテトラアミン(diethylene tetramine)、トリエチレンテトラアミン(triethylene tetramine, TETA)、m−キシレンジアミン(m−xylene diamine, MXDA)、メタンジアミン(methane diamine, MDA)、N,N’−ジエチレンジアミン(N,N’−diethylenediamine, N,N’−DEDA)、テトラエチレンペンタアミン(Tetraethylenepentamine, TEPA)、及びヘキサメチレンジアミン(hexamethylenediamine)から構成される群から選択される少なくとも1種の脂肪族アミン、イソホロンジアミン(isophorone diamine, IPDI)、N−アミノエチルピペラジン(N−aminoethyl piperazine, N−AEP)、及びビス(4−アミノ3−メチルシクロヘキシル)メタン)(bis(4−amino 3−methylcyclohexyl)methane, Larominc 260)から構成される群から選択される少なくとも1種の脂環族アミン、ジシアンジアミド(DICY)などの他のアミン、ポリアミド系、エポキシ系などの変性アミンが挙げられる。
【0087】
これに限定するものではないが、前記フェノール系硬化剤の例としては、フェノールノボラック樹脂、3官能性フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック、ビスフェノールAノボラック樹脂、フェノールp−キシレン樹脂、フェノール4,4’−ジメチルビフェニレン樹脂、フェノールジシクロペンタジエン樹脂、ジシクロペンタジエン−フェノールノボラック(DCPD−フェノール)、キシロック(xylok)(p−キシレン変性)、ビフェニル系フェノール樹脂、ナフタレン系フェノール樹脂などが挙げられる。
【0088】
これに限定するものではないが、前記無水酸化物系硬化剤の例としては、ドデセニルコハク酸無水物(dodecenyl succinic anhydride, DDSA)、ポリアゼライン酸無水物(poly azelaic poly anhydride) などの脂肪族無水酸化物、ヘキサヒドロフタル酸無水物(hexahydrophthalic anhydride, HHPA)、メチルテトラヒドロフタル酸無水物(methyl tetrahydrophthalic anhydride,MeTHPA)、メチルナジック酸無水物(methylnadic anhydride,
MNA)などの脂環族無水酸化物、トリメリット酸無水物(trimellitic anhydride, TMA)、ピロメリット酸二無水物(pyromellitic
acid dianhydride, PMDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(benzophenonetetracarboxylic dianhydride, BTDA)などの芳香族無水酸化物、テトラブロモフタル酸無水物(tetrabromophthalic anhydride, TBPA)、クロレンド酸無水物(chlorendic anhydride HET)などのハロゲン系無水化合物などが挙げられる。
【0089】
一般に、硬化剤は、エポキシ基との反応でエポキシ樹脂硬化物の硬化度を調節することができ、目的とする硬化度の範囲に応じて、エポキシ樹脂のエポキシ基の濃度を基準として硬化剤の含量を調節することができる。前記アミン硬化剤とエポキシ基の当量反応では、2つのエポキシ基当たり1つのアミン基が定量濃度であり、当量反応におけるアミン硬化剤は、エポキシ基/アミン基[NH]のモル比が2/1となる濃度比で使用してもよい。よって、本発明において、前記アミン硬化剤の含量は、前記エポキシ樹脂のエポキシ基を基準としてエポキシ基/アミン基[NH]のモル比が0.5乃至3.0となるように、好ましくは1.0乃至2.5となるように調節して使用することが好ましい。前記エポキシ基/アミン基のモル比のうち、前記アミン基のモル濃度は、後述するガラス繊維に含まれるアミノ基を含まない。一方、エポキシ樹脂中のエポキシ側鎖基及びフィラーのエポキシ反応性基は、前記エポキシ基のモル濃度に含まれる。
【0090】
以上、アミン系硬化剤の場合を例に挙げて硬化剤の配合量について説明したが、前記フェノール系硬化剤、無水酸化物系硬化剤や、本明細書で別途記載していないエポキシ樹脂の硬化に使用できるいかなる硬化剤も、所望の硬化度の範囲に応じて、エポキシ樹脂組成物中のエポキシ基の総濃度を基準としてエポキシ基と硬化剤の反応性基との化学反応により化学量論的量で適宜に配合して使用することができ、これは当該技術分野において一般的なものである。
【0091】
本発明による組成物を構成するフィラーとしては、無機粒子及び/又は繊維を使用してもよい。
【0092】
前記無機粒子及び繊維としては、従来のエポキシ樹脂組成物に使用されるものとして一般的に知られているいかなる無機粒子及び繊維でも使用することができる。前記無機粒子としては、これに限定するものではないが、SiO、ZrO、TiO、Al、又はこれらを含む混合された金属酸化物(例えば、シリカ−ジルコニウム酸化物)及びシルセスキオキサンなどを単独で又は2種以上混合して使用することができる。ここで、シルセスキオキサンにはかご型、T−10型、はしご型があり、本発明においてはこれらの全てを使用することができる。
【0093】
前記繊維としては、これに限定するものではないが、従来の有機樹脂硬化物、具体的には、基板などとして使用するためのエポキシ樹脂硬化物の物性を改善するために使用される一般的ないかなる繊維でも使用することができる。具体的には、ガラス繊維、有機繊維、又はこれらの混合物を使用することができる。また、本明細書において用いられた用語「ガラス繊維」は、ガラス繊維だけでなく、ガラス繊維織物、ガラス繊維不織物などを含む意味で用いられる。これに限定するものではないが、前記ガラス繊維としては、E、T(S)、NE、E、D、石英などのガラス繊維が挙げられる。前記有機繊維としては、これに特に限定するものではないが、液晶ポリエステル繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、全芳香族繊維、ポリオキシベンザゾール繊維などを単独で又は2つ以上混合して使用することができる。
【0094】
一般に、前記無機粒子及び繊維フィラーは、表面に、これに限定するものではないが、例えば、エポキシ基、アミノ基、(メタ)アクリレート基、炭素原子数2乃至6のアルキ
レン基、アリル基、チオール基、及びマレイミド基から構成される群から選択される少なくとも1つの基(以下、「反応性基」という。)を有する。一方、前記フィラー表面の反応性基は、前記エポキシ樹脂の特定の側鎖基と化学的に反応して結合する。
【0095】
これに限定するものではないが、本発明の一態様によるエポキシ樹脂組成物に使用可能なフィラーの例としては、下記化学式9に示すものが挙げられる。
【0096】
【化27】

(上記式において、nは0乃至10の整数である。)
【0097】
そして、前記無機粒子及び繊維フィラーは、前述した反応性基以外に、脂肪族又は芳香族分子の基(以下、便宜上「混和性基」という。)をさらに含んでもよい。前記混和性基により、エポキシ樹脂とフィラーの混和性が改善される。前記混和性基としては、これに限定するものではないが、例えば、炭素原子1乃至10のアルキル基、炭素原子2乃至10のアルキレン基、炭素原子3乃至8のアリール基又はアリーレン基、炭素原子1乃至10のアルコキシ基、炭素原子3乃至8の芳香族アルキル基、炭素原子3乃至8の芳香族アルコキシ基、炭素原子3乃至7のヘテロ芳香族アルコキシ基(ヘテロ元素はO、N、S、及びPから構成される群から選択される少なくとも1種である。)、炭素原子3乃至7のヘテロ芳香族アルキル基(ヘテロ元素はO、N、S、及びPから構成される群から選択される少なくとも1種である。)、(メタ)アクリレート基、ビニル基、アリル基、チオール基、及びマレイミド基から構成される群から選択される少なくとも1種であってもよい。
【0098】
前記無機粒子及び繊維フィラーとしては、エポキシ樹脂との反応性及び混和性(混合性)を考慮して、少なくとも1つの前述した混和性基をさらに含むものを使用してもよい。また、前記フィラーとしては、前述した反応性基と混和性基とを含むものを使用してもよい。これに限定するものではないが、前述した反応性基と混和性基とを含むフィラーの例としては、下記化学式10の無機粒子フィラーが挙げられる。より具体的には、これに限定するものではないが、例えば、50mol%のベンゼン基(フェニル基)と50mol
%のエポキシ基を有するフィラーを使用してもよい。
【0099】
【化28】

(上記式において、nは0乃至10の整数である。)
【0100】
前記無機粒子としては、これに限定するものではないが、複合体の使用用途、具体的には無機粒子の分散性などを考慮して、粒径が0.5nm乃至数十μmである無機粒子を使用してもよい。前記無機粒子は、エポキシ樹脂に分散され、粒径によって分散性が異なるので、前述した粒径の無機粒子を使用することが好ましい。一方、繊維は、主にエポキシ樹脂が繊維に含浸される方式で複合化するので、繊維の大きさなどは特に制限されず、当該分野において一般的に用いられるいかなる繊維でも使用することができる。
【0101】
これに限定するものではないが、本発明の一態様による新しいエポキシ樹脂と表面にアミノ基を有するフィラーとは、下記反応式1のように反応して、改質されたエポキシ樹脂に無機粒子が化学的に結合される。
【0102】
【化29】

【0103】
本発明による組成物においてフィラーとして無機粒子が使用される場合、前記無機粒子
は、前記エポキシ樹脂に対して5乃至1000phr(parts per hundred,樹脂100質量部当たりの質量部)の量で配合してもよい。前記無機粒子の配合量が5phr未満であれば、組成物のガラス転移温度の上昇及び耐熱性の改善が不十分であるので好ましくなく、1000phrを超えれば、組成物の粘度が上昇して加工性が大きく減少するので好ましくない。
【0104】
本発明による組成物においてフィラーとして繊維が使用される場合、前記繊維の含量は、全組成物質量に対して10乃至90質量%であってもよい。前記繊維の含量が10質量%未満であれば、組成物の耐熱性の向上が不十分であるので好ましくなく、90質量%を超えれば、相対的にバインダーとしてのエポキシの量が不足して組成物の加工が難しいので好ましくない。前記組成物の全組成物質量とは、組成物が無機粒子、硬化剤、及び/又は触媒などを含む場合にこれらの量を含む全組成物質量をいう。
【0105】
上記本発明による組成物に使用されるフィラー、具体的には無機粒子及び繊維、並びにこれらの製造方法は、当該技術分野において一般的に知られており、本発明の組成物には、いかなる既知の製造方法で製造された無機粒子及び繊維でも使用することができる。例えば、アミノ基を有するガラス繊維は、エタノール95質量%と蒸留水5質量%の混合溶媒に、シランカップリング剤としてγ−アミノプロピルトリエトキシシラン(γ−aminopropyltriethoxysilane )0.2乃至1.0質量%を添加し、この溶液にガラス繊維を30分間含浸させてから取り出した後、110℃のオーブンで30分間反応させ、常温で一日間完全に乾燥させることにより、アミノ基で改質することができる。
【0106】
本発明によるエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂と硬化剤との硬化反応を促進するように、触媒をさらに含んでもよい。前記触媒としては、当該技術分野においてエポキシ樹脂複合体に一般的に用いられるものとして知られているいかなる触媒でも使用することができ、これに限定するものではないが、例えば、ベンジルジメチルアルニン(BDMA,
dimethyl benzyl arnine)、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(2,4,6−tris(dimethylaminomethyl)phenol, DMP−30)などの3級アミン、2−メチルイミダゾール(2MZ)、2−エチル−4−メチル−イミダゾール(2E4M)、2−ヘプタデシルイミダゾール(2−heptadecylimidazole, 2HDI)などのイミダゾール、BF3−モノエチルアミン(BF3−MEA)などのルイス酸が挙げられる。
【0107】
その他に、硬化剤の物性を調節するために通常配合される粘度調節剤、希釈剤などの添加剤を必要に応じて配合してもよい。これら触媒、粘度調節剤、希釈剤などのさらなる添加剤の配合比は、特に限定されるものではなく、当該技術分野において配合可能な量として一般的に知られている範囲で、複合体の物性改善に適した配合比にすることができる。
【0108】
前記組成物の硬化反応時には2つの化学反応が同時に起こることがある。すなわち、(1)エポキシ樹脂の末端のエポキシ基と硬化剤との硬化反応、及び(2)前記エポキシ樹脂の特定の側鎖基とフィラー表面の反応性基との反応である。前記2つの化学反応のうち、エポキシ樹脂と硬化剤との反応によりエポキシ高分子ネットワークが生成されると共に、エポキシ樹脂とフィラーとの反応によりフィラーがエポキシ高分子ネットワークと一体化した硬化物を形成するので、従来の改質された基を有しないエポキシ樹脂とフィラーとを含む硬化物に比べて、硬化物の耐熱性及びガラス転移挙動が顕著に改善される。さらに、前記混和性の基も硬化反応に関与する。
【0109】
以下、改質されたエポキシ樹脂とフィラーとの硬化反応について具体的に説明する。
【0110】
上記本発明の一態様によるエポキシ樹脂組成物の硬化反応においては、一般的に知られているいかなる反応条件を用いてもよい。エポキシ樹脂と硬化剤との硬化反応は、エポキシ樹脂の硬化反応条件として一般的に知られているいかなる反応条件で行ってもよく、フィラーの添加により硬化反応条件が異なるわけではない。
【0111】
硬化反応条件は、使用するエポキシの構造、硬化剤の種類、及び触媒の使用有無などによって異なり、当業者であればエポキシ樹脂組成物の構成成分によって硬化反応条件を適切に選択することができる。
【0112】
前述のように、エポキシ樹脂と硬化剤との硬化反応は一般的なものであり、これに限定するものではないが、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(DGEBA,Di−Glycidyl Ether of Bisphenol A)エポキシ樹脂及び4,4’−ジメチルアニリン硬化剤を使用する場合は、150℃で2時間反応させた後、170乃至200℃で3時間追加で反応させてもよい。硬化剤としてフェノールノボラック樹脂などのフェノール系硬化剤を使用して硬化する場合は、トリフェニルホスフィン(1phr)触媒をさらに使用し、150℃で2時間硬化した後、190℃で3時間加熱することにより、エポキシ基と硬化剤とを反応させる。前記反応は本発明の理解を助けるためのものであり、これにより本発明を限定するものではない。
【0113】
一方、本発明によるエポキシ樹脂の特定の側鎖基とフィラーの反応性基との反応は、反応に関与する基の種類によって異なる。例えば、上記反応式1のように、エポキシ樹脂中のエポキシ基、カルボン酸基、酸無水物基である側鎖基は、フィラー中のアミノ基又はエポキシ基と化学的に反応して結合される。一方、下記反応式2のように、(メタ)アクリレート基、ビニル基、及び/又はアリル側鎖基を有する樹脂において、(メタ)アクリレート基、ビニル基、及び/又はアリル基である側鎖基は、フィラー中の(メタ)アクリレート基、ビニル基、アリル基、イミダゾール基、及びチオール基から構成される群から選択される少なくとも1種の結合基と化学的に反応して結合される。
【0114】
【化30】

(上記式において、nは2である。)
【0115】
前述のように、本発明の一態様による組成物は、硬化時、エポキシ樹脂の特定の側鎖基とフィラーの反応性基とが化学的に結合するか、又はエポキシ樹脂コアの特定のユニットによりエポキシ樹脂とフィラーとが強固に結合されて複合化し、フィラーにより高分子主鎖の可動性が制限される。従って、本発明による熱硬化性高分子組成物は、温度上昇によ
る熱転移(thermal transition)を示すガラス転移温度が上昇する。それだけでなく、熱転移現象が抑制される。これにより、本発明による熱硬化性高分子組成物は改善された耐熱性を示す。
【0116】
また、前記エポキシ樹脂組成物に特定の側鎖基を有するエポキシ樹脂が使用される場合は、エポキシ樹脂のヒドロキシ基(−OH基)の濃度が減少し、複合体の誘電率及び吸湿率が低くなるという利点を有する。一方、エポキシ樹脂の主鎖に化学的に結合されたフィラーにより、耐熱性及びモジュラスなどの硬化物の物性も向上する。
【0117】
さらに、図4に示すように、高分子システムにおいては、一般的にガラス転移温度以上の温度で貯蔵弾性率が急激に減少し、これは高分子システムの強度が低下することを意味する。しかし、本発明による硬化物は、ガラス転移挙動が抑制されるので、ガラス転移温度以上の区間でも急激な貯蔵弾性率の減少、すなわち強度の低下を示さない。また、一般的な熱硬化性高分子組成物は、ガラス転移温度より高い温度で強度が著しく減少するが、本発明による熱硬化性高分子組成物は、従来の組成物に比べて高いガラス転移温度を示すので、組成物の製造及びこれを利用した加工温度の範囲で優れた強度を示す。
【0118】
上記本発明の一態様による組成物において、前記エポキシ樹脂と前記フィラーとは、エポキシ樹脂の特定の側鎖基とフィラーの反応性基基とが化学的に反応することにより結合される。よって、エポキシ樹脂とフィラーとが化学的に結合されて強固に複合化する。従って、本発明によるエポキシ樹脂組成物は、熱的特性の変化を示すガラス転移温度が上昇するだけでなく、さらに高い温度での熱的特性の変化が抑制されるので、改善された耐熱性を示す。
【0119】
具体的には、本発明の一態様による熱硬化性高分子組成物の高いガラス転移温度により、さらに高い温度での改善された熱膨張特性、すなわち小さい熱膨張係数を示すだけでなく、温度上昇によるエポキシ樹脂のガラス転移挙動が抑制及び/又は減少するか、ガラス転移挙動が現れず、好ましくは、使用温度区間でガラス転移挙動が抑制、減少、弱化されるか、又は現れない。また、本発明の組成物は、改善されたガラス転移挙動、すなわち上昇したガラス転移温度を示す。従って、一般的なエポキシ樹脂組成物においてガラス転移温度以上の温度で発生していた顕著な強度変化の程度が最小限に抑えられるか、及び/又はそのような物性の変化が現れない。また、従来の高分子組成物に比べて高いガラス転移温度により、加工温度で改善された熱膨張特性を示す。
【0120】
本明細書において用いられた用語「ガラス転移挙動の抑制」は、高分子複合体のガラス転移挙動が抑制、減少、緩和、及び/又は弱化されて、ガラス転移温度を中心として、ガラス相からゴム相への状態変化、及びそれによる熱膨張係数の増加、寸法の変化、強度の変化などが抑制、減少、緩和、及び/又は弱化され、好ましくはガラス転移温度特性を示さない(ガラス相からゴム相への相転移温度がない)特性を全て含む意味で用いられる。
【0121】
ただし、ガラス転移挙動は、温度上昇による高分子組成物のガラス相からゴム相への熱転移により現れる特性であるので、このような高分子組成物のガラス転移挙動の抑制効果は、硬化反応による硬化組成物の形成時に現れる。
【0122】
このような本発明の一態様により提供される複合体は、次世代半導体基板、次世代PCB、パッケージング(packaging)、OTFT、フレキシブルディスプレイ基板(flexible display substrate)などへの使用に適している。
【実施例】
【0123】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。
【0124】
実施例1:ナフタレン系エポキシ樹脂の合成
フラスコにナフタレン−エポキシモノマー(2,7−ジヒドロキシナフタレンのジグリシジルエーテル)34gとトリエチルベンジルアンモニウムクロライド0.85gを入れ、真空となるように前記フラスコ内の空気を除去した。その後、前記フラスコにCHCN100mlを入れ、均一な溶液となるように5分間攪拌した。その後、前記均一な溶液に1,6−ジヒドロキシナフタレン5gをCHCN100mlに溶解したナフタレン溶液を徐々に滴加し、80℃で24時間反応させた。その後、溶媒を蒸発器で除去し、残留物をエチルアセテート500mlに溶解し、HOでワークアップ(work up)した。その後、有機層を分離し、エチルアセテートを蒸発器で除去することにより、下記化学式11のナフタレン系エポキシ樹脂を得た。得られた下記化学式11のナフタレン系エポキシ樹脂の合成反応式を下記反応式3に示す。また、本実施例で合成された化学式11の化合物のNMR結果は次の通りである。
【0125】
H NMR(400MHz,CDCl)δ8.16(d,J=9.2Hz,1H),7.63(d,J=8.8Hz,4H),7.30(d,J=3.2Hz,2H),7.14−6.96(m,10H),6.69(t,J=4.0Hz,1H),4.56−4.46(m,2H),4.36−4.25(m,10H),4.00−3.95(m,2H),3.37(s,1H),2.99−2.89(m,4H),2.76−2.75(m,2H)
【0126】
【化31】

【0127】
実施例2:ナフタレン系エポキシ樹脂を用いた熱硬化物の製造
実施例1で製造されたナフタレン系エポキシ樹脂1.95gをメチレンクロライド30gに溶解した後、ミキサーを用いて均一に混合した。ここにジアミノジフェニルメタン(DDM)(化学式12)0.45gを添加した後、小型攪拌機を用いて均一な溶液となるように混合した。前記製造された溶液を120℃に予熱された真空オーブンに入れて5分間放置し、溶媒を除去し、120℃に予熱されたモールドに注いだ。次いで、150℃、窒素雰囲気下で2時間反応させた後、オーブンを昇温して230℃で2時間追加で硬化させることにより、樹脂硬化物を得た。
【0128】
【化32】

【0129】
比較例1:DGEBAを用いた硬化物の製造(DGEBA−DDM)
ビスフェノールAジグリシジルエーテル(DGEBA,diglycidyl ether of bisphenol A, Mn 377)1gをメチレンクロライド1.5gに溶解した後、ジアミノジフェニルメタン(DDM)0.263gを添加し、小型攪拌機を用いて均一な溶液となるように混合した。このようにして製造された溶液を120℃に予熱された真空オーブンに入れて5分間放置し、溶媒を除去し、120℃に予熱されたモールドに注いだ。次いで、これを120℃で2時間硬化した後、窒素パージ状態でオーブンを昇温して150℃で2時間、そして200℃で2時間追加で硬化反応させることにより、エポキシ樹脂硬化物を準備した。比較例1のDGEBAとDDMとの硬化反応の反応式を下記反応式4に示す。
【0130】
【化33】

【0131】
比較例2:ナフタレン系エポキシ樹脂を用いた硬化物の製造
1,6−ナフタレンジエポキシ1gを120℃に予熱された真空オーブンに入れて融解した後に脱気した。ここにジアミノジフェニルメタン(DDM)0.364gを添加し、120℃のオーブンで融解した後、1分間ハンドミキシングして均一な溶液となるように混合した。このようにして製造された溶液を、120℃に予熱された真空オーブンでバブルを除去した後、120℃に予熱されたモールドに注いだ。次いで、これを120℃で2時間硬化した後、窒素パージ状態でオーブンを昇温して150℃で2時間、そして230℃で2時間追加で硬化させることにより、エポキシ樹脂硬化物を得た。
【0132】
[物性評価1]:熱膨張特性評価
上記実施例及び比較例で製造された樹脂硬化物の温度による寸法の変化をTMA(熱機械分析装置、Thermo−Mechanical Analyzer)(Expansion mode,Force 0.03N)を用いて評価し、図5に示す。硬化物のサンプルは、幅×長さ×厚さが5mm×5mm×3mmの大きさとなるように製造した。
【0133】
図5に示すように、本発明による実施例1のナフタレン系エポキシ樹脂が使用された実施例2の樹脂硬化物は、温度上昇による膨張特性の変化率が減少し、これにより、エポキシ樹脂複合体の寸法の変化が減少することを確認することができた。また、図6に示すように、実施例1の新しいナフタレン系エポキシ樹脂を使用した場合、ガラス転移温度以前の温度でのCTE(α1)値は、44ppm/℃であって、比較例1のエポキシ硬化物(DGEBA−DDM,70ppm/℃)に比べて約43%減少しており、そして比較例2のナフタレンエポキシ硬化物(56ppm/℃)に比べても約30%程度に減少した。
【0134】
実施例3:アクリレート側鎖基を有するエポキシ樹脂の製造
常温で250mlのフラスコでメチレンクロライド60mlに下記化学式13の3量体(トリマー)エポキシ樹脂10gを添加して攪拌した。0℃でジイソプロピルエチルアミン9.88mlを添加し、直ちにアクリロイルクロライド4.6mlを徐々に入れた。0℃で2時間反応させた後、有機層をブライン(brine)でワークアップした。有機層に残っている水をMgSOで除去した後、蒸発させて溶媒を除去することにより、アクリレート基を有するエポキシ樹脂(14)を得た。実施例3の新しいエポキシ合成反応式は下記反応式5の通りである。
【0135】
H NMR(400MHz,CDCl)δ8.14(d,J=8.8Hz,1H),7.66(d,J=8.8Hz,4H),7.32(d,J=3.2Hz,2H),7.16−7.00(m,10H),6.74(dd,J=3.2Hz,1H),6.50(d,J=17.2Hz,2H),6.20(q,J=10.0Hz,2H),5.89(d,J=10.4Hz,2H),5.81(t,J=4.8Hz,1H),5.70(t,J=4.8Hz,1H),4.47(dd,J=4.4Hz,8H),4.31−4.27(m,2H),4.06−4.01(m,2H),3.41(s,2H),2.95−2.92(m,2H),2.81−2.79(m,2H)。
【0136】
【化34】

【0137】
実施例4:エポキシ側鎖基を有するエポキシ樹脂の製造
常温でフラスコにNaH0.85gを入れてDMF20mlで溶解し、0℃でDMF10mlに溶解した下記化学式13の3量体エポキシ樹脂5gを徐々に入れた。0℃で10分間攪拌し、エピクロルヒドリン2.22mlを徐々に入れた後、常温で12時間反応させた。反応終了後、飽和したNHClでクエンチングし、ブラインでワークアップした。有機層を分離し、有機層に残っている水をMgSOで除去し、フィルタした後、蒸発させて溶媒を除去することにより、エポキシ側鎖基を有するエポキシ樹脂(15)を得た
。本実施例による新しいエポキシ合成反応式を下記反応式6に示す。
【0138】
H NMR(400MHz,CDCl)δ8.17(d,J=9.6Hz,1H),7.66(d,J=8.8Hz,4H),7.34(d,J=6.0Hz,2H),7.17−7.01(m,10H),6.75(t,J=2.8Hz,1H),4.38−4.28(m,12H),4.14−4.01(m,4H),3.80−3.72(m,2H),3.41(s,2H),3.24(s,2H),2.94−2.92(m,2H),2.83−2.79(m,4H),2.69−2.68(m,2H)。
【0139】
【化35】

【0140】
実施例5:アクリレート側鎖基を有するエポキシ樹脂とガラス繊維の硬化物
常温で上記実施例3で合成された化学式14のアクリレート側鎖基を有するエポキシ樹脂(NET−A)2.2g、ジアミノジフェニルメタン(DDM)0.29g、及びMEK(methyl ethyl ketone)7gを混合した後に攪拌することにより、均一な溶液を製造した。この溶液に45mm×45mmの大きさのアミノ反応性基を有する石英ガラス繊維織物を含浸した後、120℃の真空オーブンで10分間溶媒を乾燥させた。乾燥後、これをホットプレスに入れて硬化させることにより、サイドアクリレート基を有するエポキシ樹脂とガラス繊維の硬化物(NET−A−GF硬化物)を製造した。ホットプレスでの硬化条件は、150℃、200℃、及び230℃でそれぞれ2時間ずつ硬化反応させることであった。このようにして製造されたエポキシ高分子硬化物の樹脂含量は50wt%であり、硬化物の厚さは0.3mmであった。
【0141】
【化36】

【0142】
一方、常温で上記化学式14のアクリレート側鎖基を有するエポキシ樹脂(NET−A)2.2g、DDM0.29g、及びMEK7gを混合した後に攪拌して均一な溶液を製造し、120℃の真空オーブンで10分間溶媒を乾燥させた。乾燥後、これをホットプレスに入れて硬化させることにより、アクリレート側鎖基を有するエポキシ樹脂硬化物(N
ET−A硬化物)を製造した。ホットプレスでの硬化条件は、150℃、200℃、及び230℃でそれぞれ2時間ずつ硬化反応させることであった。
【0143】
その後、前記NET−A−GF硬化物及び前記NET−A硬化物の熱的特性を評価した。熱的特性評価においては、前記NET−A−GF硬化物及び前記NET−A硬化物の温度による寸法の変化をTMA(熱機械分析装置、Thermo−Mechanical Analysizer)を用いて評価した。NET−A−GF硬化物のサンプルは、幅×長さ×厚さを4mm×35mm×0.3mmの大きさに製造し、引張測定モード(tension mode)で測定した。NET−A硬化物のサンプルは、幅×長さ×厚さを5mm×5mm×3mmの大きさに製造し、膨張測定モード(expansion mode)で測定した。その結果を図7及び下記表1に示す。
【0144】
【表1】

【0145】
図7及び表1に示すように、アクリレート側鎖基を有するエポキシ樹脂とガラス繊維織物の硬化物(NET−A−GF硬化物)は、エポキシ樹脂硬化物(NET−A硬化物)に比べて、ガラス転移温度が約70℃上昇した。つまり、NET−A−GF硬化物は、NET−A硬化物に比べて、高い温度でも改善された熱膨張特性(すなわち、優れた寸法安定性)や優れた強度を示す。また、図7から、常温乃至高温(>200℃)間の温度変化による寸法の変化が減少したことを確認することができた。
【0146】
実施例6:エポキシ側鎖基を有するエポキシ樹脂及びガラス繊維の組成物
常温で上記実施例4で合成された化学式15のエポキシ側鎖基を有するエポキシ樹脂(NET−Epoxy)2.1g、DDM0.5g、及びMEK7gを混合した後に攪拌して均一な溶液を製造し、ここにアミノ反応性基を有する石英ガラス繊維織物(45mm×45mmの大きさ)を含浸した後、120℃の真空オーブンで10分間溶媒を乾燥させた。乾燥後、これをホットプレスに入れて硬化させることにより、エポキシ側鎖基を有するエポキシ樹脂とガラス繊維織物の硬化物(NET−Epoxy−GF複合体)を製造した。ホットプレスでの硬化条件は、150℃、200℃、及び230℃でそれぞれ2時間ずつ硬化反応させることであった。このようにして製造されたエポキシ高分子硬化物の樹脂含量は50wt%であり、硬化物の厚さは0.3mmであった。
【0147】
【化37】

【0148】
一方、常温で上記化学式15のエポキシ側鎖基を有するエポキシ樹脂(NET−Epoxy)2.1g、DDM0.5g、及びMEK7gを混合した後に攪拌して均一な溶液を製造し、120℃の真空オーブンで10分間溶媒を乾燥させた。乾燥後、これをホットプレスに入れて硬化させることにより、エポキシ樹脂硬化物(NET−Epoxy硬化物)を製造した。ホットプレスでの硬化条件は、150℃、200℃、及び230℃でそれぞれ2時間ずつ硬化反応させることであった。
【0149】
その後、上記実施例5と同様の方法で前記NET−Epoxy−GF硬化物及び前記NET−Epoxy硬化物の熱的特性を評価し、図8及び下記表2に示す。
【0150】
【表2】

【0151】
図8及び表2に示すように、ガラス繊維織物と複合化した硬化物(NET−Epoxy−GF硬化物)は、エポキシ樹脂硬化物(NET−Epoxy硬化物)に比べて、ガラス転移温度が約40℃上昇した。つまり、NET−Epoxy−GF硬化物は、NET−Epoxy硬化物に比べて、高い温度でも改善された熱膨張特性や優れた強度を示す。また、図8から、常温乃至高温(>200℃)間の温度変化による寸法の変化が減少したことを確認することができた。
【0152】
比較例3:ビスフェノールAジグリシジル(DGEBA)を用いたエポキシ/ガラス繊維織物硬化物の製造
常温でDGEBA(diglycidyl ether of bisphenol A, Mn 377)2.0g、DDM 0.52g、及びMEK7gを混合した後に攪
拌して均一な溶液を製造し、ここにアミノ反応性基を有するガラス繊維織物(45mm×45mmの大きさ)を含浸した後、120℃の真空オーブンで10分間溶媒を乾燥させ、ホットプレスで上記実施例5と同様の方法及び条件(硬化条件は150℃、200℃、及び230℃でそれぞれ2時間ずつ硬化させること)で硬化させることにより、エポキシ樹脂とガラス繊維織物の硬化物(DGEBA−GF硬化物)を製造した。
【0153】
一方、DGEBA2.0g、DDM0.52g、及びMEK7gを混合した後に攪拌して均一な溶液を製造し、これを120℃で10分間乾燥させた。乾燥後、これをホットプレスに入れ、上記実施例5と同様の方法及び条件(硬化条件は150℃、200℃、及び230℃でそれぞれ2時間ずつ硬化させること)で硬化させることにより、エポキシ樹脂硬化物(DGEBA硬化物)を製造した。
【0154】
その後、上記実施例5と同様の方法で前記DGEBA−GF硬化物及び前記DGEBA硬化物の熱的特性を評価し、図9及び下記表3に示す。
【0155】
【表3】

【0156】
図9及び表3に示すように、DGEBA−GF硬化物のガラス転移温度とDGEBA硬化物のガラス転移温度とが近い値であり、これから、改質されていないか、又は本発明による特定のコア構造を有しないエポキシ樹脂を用いた場合は、ガラス繊維織物との複合体を形成しても複合体の熱的特性及び高温での強度特性が改善されないことを確認することができた。
【0157】
実施例7:強度特性評価
上記実施例5及び6で製造されたエポキシ樹脂とガラス繊維織物の硬化物の動的機械的物性を、DMA(動的粘弾性測定装置、Dynamic Mechanical Analyzer,TA Instrument社,DMA2980)を用いて評価した。組成物試料の寸法は12.5mm×40mm×2mmとし、デュアルカンチレバーモード(Dual Cantilever Mode)で測定した。測定温度範囲は25℃乃至250℃、昇温速度は5℃/min、振動数(frequency)は1Hzとして測定した。
【0158】
一般的なエポキシ樹脂硬化物は、図10(a)に実線で示すように、一般的にガラス転移温度以上の温度で貯蔵モジュラス値(G’)が著しく低下するだけでなく、図10(b)に実線で示すように、ガラス転移温度でピークtanδ値を示す。一方、貯蔵モジュラスの減少とは強度の減少を意味する。しかし、上記実施例5のNET−A−GF組成物及び上記実施例6のNET−Epoxy−GF複合体は、図10(b)のピークtanδ値の変化から確認できるように、ガラス転移温度が上昇するだけでなく、高温でも高い貯蔵モジュラス(G’, storage modulus)を維持するなど、大きく改善された熱的特性及び強度を示す。このような物性は、tanδの結果から分かるように、改質作用基で改質されたエポキシ樹脂とアミン基を有するガラス繊維織物の複合体の場合、
ガラス転移挙動が大きく抑制されるだけでなく、ガラス転移温度が上昇することに起因するものである。
【0159】
実施例8:アクリレート側鎖基を有するエポキシ樹脂の製造
常温で250mlのフラスコでメチレンクロライド120mlにビスフェノールAジグリシジルエーテル(DGEBA,Mn 1075)(16)10gを添加して攪拌した。0℃でジイソプロピルエチルアミン10mlを添加し、直ちにアクリロイルクロライド9mlを徐々に入れた。0℃で2時間反応させた後、有機層をブラインでワークアップした。有機層に残っている水をMgSOで除去した後、蒸発させて溶媒を除去することにより、アクリレート基を有するエポキシ樹脂(18)を得た。上記改質反応の反応式は下記反応式7の通りである。
【0160】
H NMR(400MHz,DMSO−d)δ7.09(m,12H),6.84(m,12H),6.34(dd,J=15.0,1.5Hz,2H),6.20(dd,J=17.0,10.5Hz,2H),5.97(dd,J=10.5,1.5Hz,2H),5.46(m,2H),4.24(m,10H),3.77(dd,J=11.0,6.5Hz,2H),3.30(m,2H),2.82(dd,J=5.0,4.5Hz,2H),2.68(dd,J=5.0,2.5Hz,2H),1.56(S,18H)。
【0161】
【化38】

【0162】
実施例9:アクリレート側鎖基を有するエポキシ樹脂と無機粒子の複合体
常温で上記実施例8で得られたアクリレート側鎖基を有するエポキシ樹脂2.5gと表面にアミノ基を有するシリカ粒子(平均粒径1μm)0.9gをメチレンクロライド30gに溶解した後、ミキサーを用いて均一に混合した。混合物にジアミノジフェニルメタン(DDM)0.87gを添加した後、小型攪拌機を用いて均質な溶液となるように攪拌した。製造された溶液を120℃に予熱された真空オーブンに入れ、溶媒を除去し、120℃に予熱されたモールドに注いだ。高分子複合体は、150℃で2時間硬化反応させた後、オーブンを昇温して200℃で2時間追加で硬化反応させた。
【0163】
本実施例で得られたエポキシ複合体の熱膨張特性は、TMA(熱機械分析装置)を用いて常温乃至200℃の温度区間で5℃/minの昇温速度で評価した。その結果、改質されたエポキシ樹脂複合体のCTEは約45ppm/℃程度であって、後述する比較例4の複合体の58ppm/℃よりはるかに優れた耐熱性が観察された。
【0164】
比較例4:特定の側鎖基を有しないエポキシ樹脂と無機粒子の複合体
エポキシ樹脂としてビスフェノールAジグリシジルエーテル(DGEBA,Mn 1075)を使用し、表面に反応性基を有しないシリカ粒子を使用したことを除いては、実施例9と同様の方法で複合体を製造した。
【0165】
比較例4で得られたエポキシ複合体の熱膨張特性は、TMA(熱機械分析装置)を用いて常温乃至200℃の温度区間で5℃/minの昇温速度で評価した。その結果、エポキシ樹脂複合体のCTEは約58ppm/℃であった。
【0166】
実施例10:ナフタレン−カルド−ナフタレンの3量体エポキシ樹脂の合成
【0167】
250mlのフラスコに9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン11.26g、1,6−ジエポキシナフタレン35g、テトラエチルベンジルアンモニウムクロライド(TEBAC)0.88g、及びアセトニトリル70mlを入れて80℃で攪拌した。9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンと1,6−ジエポキシナフタレンが溶解した後、80℃で12時間反応を進めた。反応終了後、溶媒を蒸発器で除去し、エチルアセテート200mlに溶解した後、HOでワークアップした。有機層を分離した後、エチルアセテートを蒸発器で除去することにより、主鎖にナフタレン系ユニット及びカルド系ユニットを含むエポキシ樹脂を得た。実施例10による新しいエポキシ樹脂の合成反応式は下記反応式8の通りである。
【0168】
H NMR(400MHz,CDCl)δ8.19(d,J=9.2Hz,1H),8.11(d,J=16.0Hz,1H),7.74(d,J=7.2Hz,2H),7.35−7.26(m,8H),7.25−7.23(m,2H),7.16−7.09(m,8H),6.79(d,J=8.4Hz,4H),6.71−6.66(m,2H),4.48−4.03(m,14H),3.49−3.39(m,2H),2.96−2.92(m,2H),2.84−2.78(m,2H)。
【0169】
【化39】

【0170】
実施例11:カルド−ナフタレン−カルドの3量体エポキシ樹脂の合成
フラスコにカルド−エポキシモノマー57.7gとトリエチルベンジルアンモニウムクロライド0.85gを入れ、真空となるように反応容器内の空気を除去した。前記フラスコにCHCN300mlを入れ、均一な溶液となるように常温で5分間攪拌した。前記溶液にジヒドロキシナフタレン5gをCHCN100mlに溶解したナフタレン溶液を徐々に滴加した後、80℃で24時間反応させた。溶媒を蒸発器で除去し、エチルアセテート200mlに溶解した後、HOでワークアップした。有機層を分離した後、エチルアセテートを蒸発器で除去することにより、主鎖にナフタレン系ユニット及びカルド系ユニットを含むエポキシ樹脂を得た。実施例11による新しいエポキシ樹脂の合成反応式は下記反応式9の通りである。
【0171】
H NMR(400MHz,CDCl)δ8.10(d,J=10.0Hz,1H),7.74(d,J=7.2Hz,4H),7.34−7.30(m,11H),7.25−7.23(m,2H),7.11−7.09(m,11H),6.77(q,J=8.8Hz,8H),6.70(dd,J=5.8,2.6Hz,1H),4.49−4.39(m,2H),4.29−4.12(m,10H),3.92−3.88(m,2H),3.30(s,1H),2.88−2.86(m,2H),2.71−2.70(m,2H),2.59−2.56(m,2H)。
【0172】
【化40】

【0173】
実施例12:特定の側鎖基を有するナフタレン−カルド−ナフタレンの3量体エポキシ樹脂の合成
常温で250mlのフラスコに上記実施例10で合成された3量体5gを入れ、メチレンクロライド60mlで攪拌した。0℃でトリエチルアミン3mlとアクリロイルクロライド1.8mlを徐々に入れた後、0℃で2時間反応させた。反応終了後、飽和したNaHCOでクエンチングし、有機層を水でワークアップした。有機層を分離し、有機層に残っている水をMgSOで除去し、濾過した後、溶媒を蒸発器で除去した。実施例12による新しいエポキシ樹脂の合成反応式は下記反応式10の通りである。
【0174】
H NMR(400MHz,CDCl)δ8.17(d,J=9.0Hz,1H),8.13(d,J=16.0Hz,1H),7.72(d,J=7.0Hz,2H),7.4−7.2(m,8H),7.3−7.2(m,2H),7.16−7.09(m,8H),6.79(d,J=8.4Hz,4H),6.7−6.66(m,2H),6.50(d,J=17.2Hz,2H),6.20(q,J=10.0Hz,2H),5.89(d,J=10.4Hz,2H),4.48−4.03(m,14H),3.49−3.39(m,2H),2.96−2.92(m,2H),2.84−2.78(m,2H)。
【0175】
【化41】

【0176】
実施例13:ナフタレン−カルド−ナフタレンの3量体エポキシ樹脂組成物の硬化
常温で上記実施例10で製造されたナフタレン−カルド−ナフタレンエポキシ樹脂1.6gとジアミノジフェニルメタン(DDM)0.189gをメチレンクロライド7gに溶解した後、ミキサーを用いて均一に混合した。製造された溶液を90℃に予熱された真空オーブンに入れて溶媒を除去した後、90℃に予熱されたモールドに入れ、90℃で2時間、150℃で2時間、200℃で2時間反応させた後、オーブンを昇温して230℃で2時間追加で硬化反応させた。
【0177】
実施例14:カルド−ナフタレン−カルドの3量体エポキシ樹脂組成物の硬化
常温で上記実施例11で製造されたカルド−ナフタレン−カルドエポキシ樹脂2.5gとDDM0.87gをメチレンクロライド7gに溶解した後、ミキサーを用いて均一に混合した。製造された溶液を90℃に予熱された真空オーブンに入れて溶媒を除去した後、90℃に予熱されたモールドに入れ、90℃で2時間、150℃で2時間、200℃で2時間反応させた後、オーブンを昇温して250℃で2時間追加で硬化反応させた。
【0178】
実施例15:特定の側鎖基を有するナフタレン−カルド−ナフタレンの3量体エポキシ樹脂組成物の硬化
常温で上記実施例12で製造されたアクリル側鎖基を有するナフタレン−カルド−ナフタレンエポキシ樹脂1.75gとDDM0.189gをメチレンクロライド5gに溶解した後、ミキサーを用いて均一に混合した。製造された溶液を90℃に予熱された真空オーブンに入れて溶媒を除去した後、90℃に予熱されたモールドに入れ、90℃で2時間、150℃で2時間、200℃で2時間反応させた後、オーブンを昇温して250℃で2時間追加で硬化反応させた。
【0179】
比較例5:ナフタレンエポキシ樹脂組成物の硬化
120℃に予熱されたオーブンで1,6−ジエポキシナフタレン樹脂2gを融解した後、DDM0.728gを添加して2乃至3分間混合する。均一に混合された溶液を120℃に予熱されたモールドに入れ、120℃で2時間、150℃で2時間反応させた後、オーブンを昇温して200℃で2時間追加で硬化反応させた。
【0180】
実施例16:硬化物の熱的特性評価
上記実施例13乃至15及び比較例5の硬化物の熱的特性を評価した。熱的特性評価においては、前記硬化物の温度による寸法の変化をTMA(熱機械分析装置、Thermo−Mechanical Analysizer)を用いて評価した。硬化物試料は、幅×長さ×厚さを5mm×5mm×3mmの大きさに製造し、膨張測定モード(expansion mode)で測定した。その結果を下記表4に示す。
【0181】
【表4】

【0182】
上記表4に示すように、カルド系ユニットを含む本発明によるエポキシ樹脂の硬化物は、比較例5のナフタレンエポキシ硬化物に比べて、ガラス転移温度が約20乃至40℃上昇し、温度変化による寸法の変化が減少したことを確認することができた。
【0183】
実施例17:新しいエポキシ樹脂を用いた樹脂複合体の製造
常温で上記実施例10で合成されたナフタレン−カルド−ナフタレンエポキシ樹脂1.6g、DDM0.5g、及びMEK7gを混合した後に攪拌して均一な溶液を製造し、ここにアミノ基を有する石英ガラス繊維織物(45mm×45mmの寸法)を含浸した後、120℃の真空オーブンで10分間溶媒を乾燥させた。乾燥後、これをホットプレスに入れて硬化させることにより、エポキシ基で改質されたエポキシ樹脂とガラス繊維織物の複合体を製造した。ホットプレスでの硬化条件は、150℃、200℃、230℃、250℃でそれぞれ2時間ずつ硬化反応させることであった。その後、上記実施例16と同様の方法で前記複合体の熱的特性を評価した結果、CTE値は12ppm/℃、ガラス転移温度は200℃であり、非常に優れた熱的特性を示した。このようにして製造されたエポキシ高分子複合体の樹脂含量は50wt%であり、複合体の厚さは0.3mmであった。
【0184】
実施例18:新しいエポキシ樹脂を用いた樹脂複合体の製造
常温で上記実施例10で合成されたナフタレン−カルド−ナフタレンエポキシ樹脂1.6g、DDM0.5g、アミノ基を有するシリカ粒子0.5g(平均粒径1μm)、及びMEK7gを混合した後に攪拌して均一な溶液を製造し、120℃の真空オーブンで10分間溶媒を乾燥させた。乾燥後、これをホットプレスに入れて硬化させることにより、エポキシ基で改質されたエポキシ樹脂と無機粒子の複合体を製造した。ホットプレスでの硬化条件は、150℃、200℃、230℃、250℃でそれぞれ2時間ずつ硬化反応させることであった。その後、上記実施例16と同様の方法で前記複合体の熱的特性を評価した結果、CTE値は35ppm/℃、ガラス転移温度は200℃であり、非常に優れた熱的特性を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表されるエポキシ樹脂。
【化1】

(上記式において、コア構造A乃至Eは、それぞれビスフェノールA系構造、ビフェニル系構造、ナフタレン系構造、カルド系構造、アントラセン系構造、ジシクロペンタジエン系構造、多環芳香族構造、及び液晶系化合物構造から構成される群から独立して選択されるものであって、同一であるか又は異なり、この場合、側鎖基Rは、エポキシ基、ビニル基、アリル基、カルボキシル基、酸無水物基、
【化2】

から構成される群から選択され、
前記コア構造A、C、及びEが同一であり、前記コア構造B及びDが同一であり、前記A、C、及びEをなすコア構造と前記B及びDをなすコア構造とは、それぞれビスフェノールA系構造、ビフェニル系構造、ナフタレン系構造、カルド系構造、アントラセン系構造、ジシクロペンタジエン系構造、多環芳香族構造、及び液晶系化合物構造から構成される群から独立して選択される異なる構造であり、この場合、側鎖基Rは、水素原子、エポキシ基、ビニル基、アリル基、カルボキシル基、酸無水物基、
【化3】

から構成される群から選択され、
nは、0乃至100の整数を表す。)
【請求項2】
上記化学式1において、前記コア構造A、C、及びEが同一であり、前記コア構造B及びDが同一であり、前記A、C、及びEをなすコア構造と前記B及びDをなすコア構造とが異なるナフタレン系ユニットであることを特徴とする請求項1に記載のエポキシ樹脂。
【請求項3】
前記エポキシ樹脂は、下記化学式2で表されることを特徴とする請求項2に記載のエポキシ樹脂。
【化4】

(上記式において、前記コア構造A及びEは同一のナフタレン系ユニットであり、前記コア構造Dは前記コア構造A及びEのナフタレン系ユニットとは異なるナフタレン系ユニットであり、側鎖基Rは、水素原子、エポキシ基、ビニル基、アリル基、カルボキシル基、酸無水物基、
【化5】

から構成される群から選択される。)
【請求項4】
前記ナフタレン系ユニットは、下記化学式(1−5)又は(1−6)で表されることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のエポキシ樹脂。
【化6】

(ただし、上記化学式(1−6)において、Rは、単結合又は炭素原子数1乃至5のアルカンジイル基を表す。)
【請求項5】
前記異なるナフタレン系ユニットは、1,6−ナフタレン及び2,7−ナフタレンであることを特徴とする請求項4に記載のエポキシ樹脂。
【請求項6】
上記化学式1において、前記コア構造A、C、及びEが同一であり、前記コア構造B及びDが同一であり、前記A、C、及びEをなすコア構造と前記B及びDをなすコア構造のうち、一方の構造が下記化学式(1−5)又は(1−6)で表されるナフタレン系ユニッ
トであり、他方の構造が下記化学式(1−7)乃至(1−12)で表される化合物から構成される群から選択されるカルド系ユニットであることを特徴とする請求項1に記載のエポキシ樹脂。
【化7】

(ただし、上記化学式(1−6)において、Rは、単結合又は炭素原子数1乃至5のアルカンジイル基を表す。)
【化8】

【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂と、
硬化剤と、
無機粒子及び繊維から構成される群から選択される少なくとも1種のフィラーとを含むエポキシ樹脂組成物。
【請求項8】
前記無機粒子は、SiO、ZrO、TiO、BaTiO、Al、これらの混合物、T−10型シルセスキオキサン、かご型シルセスキオキサン、及びはしご型シルセスキオキサンが単独で又は2種以上混合して使用されることを特徴とする請求項7に
記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項9】
前記繊維は、E、T(S)、NE、E、D、及び石英から構成される群から選択されるガラス繊維、又は液晶ポリエステル繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、全芳香族繊維、ポリオキシベンザゾール繊維から構成される群から選択される有機繊維であることを特徴とする請求項7に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項10】
前記フィラーは、エポキシ基、アミノ基、(メタ)アクリレート基、炭素原子数2乃至6のアルキレン基、アリル基、チオール基、及びイミダゾール基から構成される群から選択される少なくとも1つの基を有することを特徴とする請求項7乃至9のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項11】
前記フィラーは、炭素原子1乃至10のアルキル基、炭素原子2乃至10のアルキレン基、炭素原子数3乃至8のアリール基又はアリーレン基、炭素原子1乃至10のアルコキシ基、炭素原子数3乃至8の芳香族アルキル基、炭素原子数3乃至8の芳香族アルコキシ基、炭素原子数3乃至7のヘテロ芳香族アルコキシ基(ヘテロ元素はO、N、S、及びPから構成される群から選択される少なくとも1種である。)、炭素原子数3乃至7のヘテロ芳香族アルキル基(ヘテロ元素はO、N、S、及びPから構成される群から選択される少なくとも1種である。)、(メタ)アクリレート基、ビニル基、アリル基、チオール基、及びマレイミド基から構成される群から選択される少なくとも1種の混和性基をさらに含むことを特徴とする請求項7乃至請求項10のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項12】
請求項7乃至請求項11のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物で製造されたパッケージング。
【請求項13】
請求項7乃至請求項11のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物で製造された基板。
【請求項14】
請求項7乃至請求項11のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物で製造されたトランジスタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公表番号】特表2012−524828(P2012−524828A)
【公表日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−507162(P2012−507162)
【出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【国際出願番号】PCT/KR2010/002567
【国際公開番号】WO2010/123314
【国際公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(505214010)コリア インスティチュート オブ インダストリアル テクノロジー (20)
【Fターム(参考)】