説明

新しい有機発光素子材料およびこれを用いた有機発光素子(6)

本発明は、第1電極、発光層、1層以上の有機物層および第2電極を積層した形態で含む有機発光素子であって、前記有機物層中の1層以上が下記化学式1の化合物、または、この化合物に熱硬化性または光硬化性の官能基が導入された化合物を含む有機発光素子を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光素子の寿命、効率、電気化学的安定性および熱的安定性を大きく向上させることができるフルオレン誘導体を含む有機発光素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機発光現象は、特定有機分子の内部プロセスによって、電流が可視光に転換される例の1つである。有機発光現象の原理は次の通りである。陽極と陰極の間に有機物層を位置させた時、二つの電極の間に電圧をかけるようになれば、陰極と陽極から各々電子と正孔とが有機物層に注入される。有機物層に注入された電子と正孔とは再結合してエキシトンを形成し、このエキシトンが再び底状態に落ちながら光が出るようになる。このような原理を用いる有機発光素子は、一般的に陰極と陽極およびその間に位置する有機物層、例えば正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層を含む有機物層で構成することができる。
【0003】
有機発光素子で用いられる物質としては、純粋有機物質または有機物質と金属とが錯体をなす錯化合物が大部分を占めており、用途により正孔注入物質、正孔輸送物質、発光物質、電子輸送物質、電子注入物質などに区分することができる。ここで、正孔注入物質や正孔輸送物質としては、p−タイプの性質を有する有機物質、すなわち容易に酸化がなされ、酸化時に電気化学的に安定した状態を有する有機物が主に用いられている。一方、電子注入物質や電子輸送物質としては、n−タイプの性質を有する有機物質、すなわち容易に還元がなされ、還元時に電気化学的に安定した状態を有する有機物が主に用いられている。発光層物質としては、p−タイプの性質とn−タイプの性質を同時に有する物質、すなわち酸化と還元状態でどちらにも安定した形態を有する物質が望ましく、エキシトンが形成された時に、これを光に転換する発光効率の高い物質が好ましい。
【0004】
上記にて言及した以外に、有機発光素子で用いられる物質は次のような性質をさらに有することが好ましい。
【0005】
第1に、有機発光素子で用いられる物質は、熱的安定性に優れていることが好ましい。有機発光素子内では電荷の移動によるジュール熱が発生するためである。現在、正孔輸送層物質として主に用いられるNPBは、ガラス遷移温度が100℃以下の値を有するため、高い電流を必要とする有機発光素子では用いることが難しいという問題がある。
【0006】
第2に、低電圧駆動可能な高効率の有機発光素子を得るためには、有機発光素子内に注入された正孔または電子が円滑に発光層に伝えられると同時に、注入された正孔と電子とが発光層の外に抜け出さないようにしなければならない。このため、有機発光素子に用いられる物質は、適切なバンドギャップとHOMOまたはLUMOエネルギー準位を有しなければならない。現在、溶液塗布法によって製造される有機発光素子において、正孔輸送物質として用いられるPEDOT:PSSの場合、発光層物質として用いられる有機物のLUMOエネルギー準位に比べてLUMOエネルギー準位が低いため、高効率で、かつ長寿命の有機発光素子の製造に困難がある。
【0007】
その他にも、有機発光素子で用いられる物質は、化学的安定性、電荷移動度、電極や隣接した層との界面特性などに優れている必要がある。すなわち、有機発光素子で用いられる物質は、水分や酸素による物質の変形が少ない必要がある。また、適切な正孔または電子移動度を有することによって有機発光素子の発光層で正孔と電子の密度が均衡をなすようにしてエキシトン形成を極大化できる必要がある。そして、素子の安定性のために金属または金属酸化物を含む電極との界面を良くできる必要がある。
【0008】
したがって、当技術分野では前記のような要件を備えた有機物を含む有機発光素子の開発が求められている。
【技術的課題】
【0009】
ここで、本発明者らは、有機発光素子で使用可能な物質として要求される条件、例えば適切なエネルギー準位、電気化学的安定性および熱的安定性などを満足させることができ、置換基により有機発光素子で要求される多様な役割をすることができる化学構造を有するフルオレン誘導体を含む有機発光素子を提供することを目的とする。
【技術的解決方法】
【0010】
第1電極、発光層をはじめとする1層以上からなる有機物層および第2電極を順次積層した形態を含む有機発光素子において、前記有機物層のうち、1層以上が化学式1の化合物、またはこの化合物に熱硬化性または光硬化性の官能基が導入された化合物を含む有機発光素子を提供する。
【化1】

前記化学式1において、
XはCまたはSiであり、
Aは−NZ1Z2であり、
Bは−NZ3Z4であって、
Yは、結合;2価の芳香族炭化水素;ニトロ、ニトリル、ハロゲン、アルキル基、アルコキシ基およびアミノ基からなる群より選択される1つ以上の置換基によって置換された2価の芳香族炭化水素;2価の複素環基;またはニトロ、ニトリル、ハロゲン、アルキル基、アルコキシ基およびアミノ基からなる群より選択される1つ以上の置換基によって置換された2価の複素環基であり、
Z1〜Z4は、各々独立的に、水素;炭素数1−20の脂肪族炭化水素;芳香族炭化水素;ニトロ、ニトリル、ハロゲン、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、芳香族炭化水素および複素環基からなる群より選択される1つ以上の置換基によって置換された芳香族炭化水素;芳香族炭化水素によって置換されたシリコン基;複素環基;ニトロ、ニトリル、ハロゲン、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、芳香族炭化水素および複素環基からなる群より選択される1つ以上の置換基によって置換された複素環基;炭素数1−20の炭化水素または炭素数6−20の芳香族炭化水素で置換されたチオフェン基;または芳香族炭化水素で置換されたホウ素基であり、
R1〜R4およびR6〜R9は、各々独立的に水素、置換または非置換されたアルキル基、置換または非置換されたアルコキシ基、置換または非置換されたアルケニル基、置換または非置換されたアリール基、置換または非置換されたアリールアミン基、置換または非置換された複素環基、アミノ基、ニトリル基、ニトロ基、ハロゲン基、アミド基またはエステル基からなる群より選択され、ここで、これらは互いに隣接する基と脂肪族またはヘテロの縮合環を形成することができ、
R5は、水素、置換または非置換されたアルキル基、置換または非置換されたシクロアルキル基、置換または非置換されたアルケニル基、置換または非置換されたアリール基および置換または非置換された複素環基からなる群より選択され、
ここで、R5がアリール基または複素環基である場合、アリールまたは複素環基のオルト(ortho)の位置の炭素とR4またはR6は、O、S、NR、PR、C=O、CRR’、SiRR’からなる群より選択される基と共に縮合環を形成することができ、ここでRおよびR’は各々独立的に水素、置換または非置換されたアルキル基、置換または非置換されたアルコキシ基、置換または非置換されたアルケニル基、置換または非置換されたアリール基、置換または非置換されたアリールアミン基、置換または非置換された複素環基、ニトリル基、アミド基またはエステル基からなる群より選択され、ここで、RとR’は縮合環を形成してスピロ化合物を形成することができる。
【0011】
上記の化学式1の置換基を詳細に説明すれば次の通りである。
【0012】
前記化学式1の置換基のZ1〜Z4において、前記芳香族炭化水素の例としては、フェニル、ビフェニル、テルフェニルなどの単環式芳香族環およびナフチル、アントラセニル、ピレニル、ペリレニルなどの多環式芳香族環などを挙げることができる。前記複素環基の例としては、チオフェン、フラン、ピロル、イミダゾール、チアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、トリアゾール、ピリジル、ピリダジン、ピラジン、キノリン、イソキノリンなどがある。
【0013】
前記炭素数1〜20の脂肪族炭化水素は、直鎖脂肪族炭化水素と分枝鎖脂肪族炭化水素、飽和脂肪族炭化水素と不飽和脂肪族炭化水素とをすべて含む。
【0014】
これらの例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、iso−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などのアルキル基;スチリルと同じ二重結合を持つアルケニル基;およびアセチレン基のような三重結合を持つアルキニル基がある。
【0015】
前記化学式1のR1〜R9中のアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基は、炭素数は特に限定されないが、1−20であることが好ましい。
【0016】
化合物中に含まれているアルキル基の長さは、化合物の共役長さには影響を及ぼさないで、但し付随的に化合物の有機発光素子への適用方法、例えば真空蒸着法または溶液塗布法の適用に影響を及ぼすことができる。
【0017】
前記化学式1のR1〜R9中のアリール基の例としては、フェニル基、ビフェニル基、テルフェニル基、スチルベンなどの単環式芳香族およびナフチル基、アントラセニル基、フェナトレン基、ピレニル基、ペリレニル基などの多環式芳香族環などがあるが、これらだけに限定されるものではない。
【0018】
前記化学式1のR1〜R9中のアリールアミン基の例としては、ジフェニルアミン基、ジナフチルアミン基、ジビフェニルアミン基、フェニルナフチルアミン基、フェニルジフェニルアミン基、ジトリルアミン基、フェニルトリルアミン基、カルバゾール基、トリフェニルアミン基などがあるが、これらだけに限定されるものではない。
【0019】
前記化学式1のR1〜R9中の複素環基の例としては、チオフェン基、フラン基、ピロル基、イミダゾール基、チアゾール基、オキサゾール基、オキサジアゾール基、トリアゾール基、ピリジル基、ピラダジン基、キノリニル基、イソキノリン基、アクリジン基などがあるが、これらだけに限定されるものではない。
【0020】
前記例の他に、前記化学式1のR1〜R9中のアルケニル基、アリール基、アリールアミン基、複素環基の具体的な例としては、下記化学式で示した例があるが、これらだけに限定されるものではない。
【化2】

前記化学式において、Zは水素、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素、アルコキシ基、アリールアミン基、アリール基、複素環基、ニトリル基、アセチレン基などからなる群より選択される基である。前記Z中のアリールアミン基、アリール基、複素環基の具体的な例としては、前述したR1〜R9の置換基に記載した例がある。
【0021】
本発明の1つの好ましい実施様態において、前記化学式1中のR5がアリール基または複素環基である。本発明のまた1つの好ましい実施様態において、前記化学式1中のR5がアリール基または複素環基であり、前記アリールまたは複素環基のオルト(ortho)位置の炭素とR4またはR6はO、S、NR、PR、C=O、CRR’、SiRR’(ここで、RおよびR’は化学式1で定義した通りである)からなる群より選択される基と共に縮合環を形成することができる。
【0022】
本発明のまた一つの好ましい実施様態において、前記化学式1中R5がアリール基または複素環基であり、前記アリールまたは複素環基のオルト(ortho)位置の炭素とR4および前記アリールまたは複素環基のオルト(ortho)位置の炭素とR6は、O、S、NR、PR、C=O、CRR’、SiRR’(ここで、RおよびR’は化学式1で定義した通りである)からなる群より選択される基と共に縮合環を形成することができる。
【0023】
本発明のまた1つの好ましい実施態様において、前記化学式1の化合物の例として下記化学式2ないし化学式119化合物がある。しかし、下記化学式の化合物は本発明の理解を助けるためのものであって、これらによって本発明の範囲が限定されるものではない。
【化3】








【0024】
前記化学式において、AおよびBは化学式1で定義された通りである。
【0025】
前記AまたはBの好ましい例は、下記の通りであるが、これに限定されるものではない。前記化学式2ないし化学式119と、下記の置換基AまたはBの組合によって様々な種類の誘導体化合物を形成することができる。例えば、化学式2と下記基1とが用いられる場合、化合物を2−1と称する。
【化4】



【0026】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0027】
前記化学式1の化合物は、前記化学式1に表示されたコア構造、すなわちアクリジン基とカルバゾール基とが融合した構造にフルオレン基がスピロ構造で結びついたコア構造に多様な置換体を導入することによって、有機発光素子で用いられる有機物層として用いるのに適する特性を有することができる。具体的に説明すれば次の通りである。
【化5】

前記化学式1の化合物のコアの立体構造は、下記のようにAとBの部分に分けて説明することができる。前記化学式1の化合物のコアは、Xを中心に空間的に平面Aと平面Bとが直角をなす立体構造を有し、ここでXを中心としてAとB部分の間の共役は生じない。また、B平面で窒素原子1つが3つのアリール基の間に位置することによって、B平面内に共役を制限する役割をする。
【0028】
化合物の共役の長さとエネルギーバンドギャップとは密接な関係がある。具体的に、化合物の共役の長さが長いほどエネルギーバンドギャップが小さくなる。前述した通り、前記化学式1の化合物のコアは制限された共役を含んでいるため、これはエネルギーバンドギャップが大きい性質を有する。
【0029】
本発明では、上記の通りにエネルギーバンドギャップが大きいコア構造のR1〜R9およびZ1〜Z4の位置に多様な置換基を導入することによって、多様なエネルギーバンドギャップを有する化合物を合成することができる。通常、エネルギーバンドギャップが大きいコア構造に置換基を導入してエネルギーバンドギャップを調節することは容易であるが、コア構造がエネルギーバンドギャップが小さい場合には置換基を導入してエネルギーバンドギャップを大きく調節することが難しい。また、本発明では前記のような構造のコア構造のR1〜R9およびZ1〜Z4の位置に多様な置換基を導入することによって、化合物のHOMOおよびLUMOエネルギー準位も調節することができる。
【0030】
また、前記のような構造のコア構造に多様な置換基を導入することによって、導入された置換基の固有特性を有する化合物を合成することができる。例えば、有機発光素子の製造時に用いられる正孔注入層物質、正孔輸送層物質、発光層物質、電子輸送層物質に主に用いられる置換基を前記コア構造に導入することによって、各有機物層で要求する条件を充足させる物質を合成することができる。特に、前記化学式1の化学物は、コア構造にアリールアミン構造を含んでいるため、有機発光素子において正孔注入および/または正孔輸送物質としての適切なエネルギー準位を有することができる。本発明では、前記化学式1の化合物中の置換基により適切なエネルギー準位を有する化合物を選択して有機発光素子に用いることによって、駆動電圧が低く光効率の高い素子を実現することができる。
【0031】
また、前記コア構造に多様な置換基を対称(AとBをコア構造の両側に固定)に導入することによって、エネルギーバンドギャップを細かく調節を可能にし、一方で有機物間における界面での特性を向上するようにし、物質の用途を多様にすることができる。
【0032】
また、置換基AおよびBに含まれた窒素数を各々1つ(Z1〜Z4がヘテロ芳香族アミン化合物である場合、これら構造に含まれた窒素数は含まないこと)で固定する場合HOMO、LUMOエネルギー準位およびエネルギーバンドギャップを細かく調節可能であり、一方で有機物間における界面での特性を向上するようにしながら物質の用途を多様にすることができる。
【0033】
また、前記化学式1の化合物は、スピロ結合による空間的構造に多様な置換基を導入して有機物の三次元構造を調節することによって、有機物内のπ−π相互作用を最小化する構造を有するようにして、エキシマ(excimer)の形成を抑制することもできる。
【0034】
一方、前記化学式1の化合物はガラス遷移温度(Tg)が高く、熱的安定性に優れている。例えば、化学式2−4の化合物は、ガラス遷移温度が148℃であって、既に一般的に用いられるNPB(Tg:96℃)に比べて顕著に高いことが分かる。このような熱的安定性の増加は、素子に駆動安定性を提供する重要な要因となる。
【0035】
また、前記化学式1の化合物は、有機発光素子の製造時の真空蒸着法だけでなく、溶液塗布法によって有機物層として形成することができる。ここで、溶液塗布法というのは、スピンコーティング、ディップコーティング、インクジェットプリンティング、スクリーンプリンティング、スプレー法、ロールコーティングなどを意味するが、これらだけに限定されるものではない。
【0036】
例えば、化学式1の化合物は、素子の製造工程中に用いられる溶媒、例えば、キシレン、ジクロロエタン、あるいはNMPなどのような極性溶媒などに対する溶解度に非常に優れているだけでなく、溶液を用いた方法で薄膜形成が非常に良くできる特性を有するため、素子の製造時の溶液塗布法を用いることができる。
【0037】
本発明のスピロ構造の化合物は、リチオ化(lithiation)されたアリール基とケト基とを反応させて得た3次アルコールを酸触媒下にて加熱すれば、水が蒸発しながら六角形の環構造を形成する方法を用いて製造することができる。このような製造方法は当技術分野でよく知られている方法であって、当業者は前記製造方法の条件を変更して前記化学式1の化合物を製造することができる。具体的な製造方法は後述する製造例に記載した。
【0038】
本発明の有機発光素子では、前記化学式1の化合物の代りに前記化学式1の化合物に熱硬化性または光硬化性の官能基を導入した化合物を用いることもできる。このような化合物は、前述した化学式1の化合物の基本物性を維持すると同時に、素子の製作の際、溶液塗布法により薄膜に形成した後に硬化させる方法によって有機物層として形成することができる。
【0039】
上記の通りに有機発光素子の製作の際、有機物に硬化性の官能基を導入し、溶液塗布法により前記有機物の薄膜を形成した後に硬化する方法によって有機物層を形成する方法は、米国特許公開2003−0044518号およびヨーロッパ特許公開1146574 A2号などに記載されている。
【0040】
前記文献には熱硬化または光硬化可能なビニル基あるいはアクリル基を有する物質を用いて、前記のような方法によって有機物層を形成して有機発光素子を製作する場合、溶液塗布法によって多層構造を有する有機発光素子を作ることができるだけでなく、低電圧、高輝度の有機発光素子を作ることができると記載されている。このような作用原理は、本発明の化合物にも適用することができる。
【0041】
本発明において、前記熱硬化性または光硬化性の官能基は、ビニル基またはアクリル基などであり得る。
【0042】
本発明の有機発光素子は、有機物層中の1層以上が本発明の化合物、すなわち前記化学式1の化合物を含むことを除いては当技術分野で知られている材料と方法によって製造することができる。
本発明の有機発光素子の有機物層は、單層構造としてなされることもできるが、2層以上の有機物層が積層された多層構造としてなされることもできる。例えば、本発明の有機発光素子は有機物層であって、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層などを含む構造を有することができる。しかし、有機発光素子の構造は、ここに限定されず、さらに少ない数の有機物層を含むことができる。
【0043】
そして、本発明の有機発光素子は、例えば基板上に第1電極、有機物層および第2電極を順次積層させることによって製造することができる。この時、スパッタリング法や電子ビーム増発法(e−beam evaporation)のようなPVD(Physical Vapor Deposition)方法などを用いることができるが、これら方法にだけに限定されるものではない。
【0044】
前記化学式1の化合物の製造方法およびこれらを用いた有機発光素子の製造は、以下の製造例および実施例で具体的に説明する。しかし、下記製造例および実施例は、本発明を例示するためのものであり、本発明の範囲がこれらによって限定されるものではない。
【発明の実施のための形態】
【0045】
前記化学式1として代表される有機化合物の合成方法とこれを用いた有機電気発光素子の製造は、以下の実施例および比較例によってより具体的に説明される。しかし、これらの実施例は本発明を例示するためのものであって、本発明の範囲がこれらだけに限定されるものではない。
【0046】
前記化学式1に表示される化合物の合成のために、下記化学式a〜gの化合物を出発物質として用いることができる。
【化6】

【0047】
<製造例1>化学式aとして示される出発物質の製造
1)ジフェニルアミン10g(59mmol)とプロモメティルメティレテル8.04ml(88.6mmol)をテトラヒドロフラン100mlに溶解させた後、トリエチルアミは12.4ml(88.6mmol)を添加した。窒素気流下で5時間攪拌した後、蒸溜水を入れて有機層を抽出した。抽出した有機層は、ノルマルヘキサン/テトラヒドロフラン=15:1でコラム分離した後、真空乾燥して3次アミン12g(収率90%)を得た。
2)前記1)で合成されたアミン化合物(12.0g、56.3mmol)を精製されたTHF100mlに溶かした後−78℃で冷却した後、n−BuLi(2.5Mヘキサン溶液、22.5ml、56.3mmol)をゆっくり添加した。同一温度で30分間攪拌した後、化合物2、7−ジクロロ−9−フルオレノン(14.0g、56.3mmol)を加えた。同一温度で40分間攪拌した後、常温に温度を上げて3時間さらに攪拌した。塩化アンモニウム水溶液で反応を終了した後にエチルエーテルで抽出した。有機物層から無水硫酸マグネシウムで水を除去した後に有機溶媒も除去した。得られた固体をエタノールに分散させて一日の間攪拌した後に濾過し真空乾燥して、中間物質を100mlの酢酸に分散させた後、濃い硫酸10滴を加えて、4時間の間還流した。得られた固体を濾過し、エタノールで洗った後に真空乾燥して21.8g(96.8%収率)のアミンを得た。MS:[M+H]=401。
【0048】
<製造例2>化学式bとして示される出発物質の製造
化学式a(9.00g、22.5mmol)と1−ヨードナフタレン(11.4g、45.0mmol)、炭酸カリウム(6.22g、45.0mmol)、ヨウ化銅(214mg、1.13mmol)およびキシレン(250mL)を窒素の雰囲気下で一晩中加熱した。常温に冷却した後、生成物をエチルアセテートで抽出し、無水硫酸マグネシウムによって水分を除去した後に減圧下において溶媒を除去した。ヘキサン溶媒を用いてシリカゲルコラムを通過させ、化合物を得た後に溶媒を減圧下において除去し、真空乾燥させて化合物b(5.0g、42%収率)を得た。MS:[M+H]=527。
【0049】
<製造例3>化学式cとして示される出発物質の製造
1)ジフェニルアミン5.08ml(30mmol)、1−プロモ−2−ヨードベンゼン5.6ml(45mmol)、銅2.29g(36mmol)および炭酸カリウム4.98g(36mmol)を5日間還流した。冷却後水とエチルアセテートで抽出した後に無水硫酸マグネシウムで水分を除去した後、n−ヘキサンでコラム分離した。エタノールを加えて固体化し、生成物4.4g(45%収率)を得た。MS:[M+H]=323。
2)乾燥したフラスコに化合物前記1)化合物1.36g(4.19mmol)をTHF15mlに溶解させてドライアイス/アセトン槽を装着した。t−ブチルリチウム(1.7Mペンタン溶液)6.18ml(2.5eq)を30分の間滴加して1時間さらに攪拌した。2、7−ジブロモ−9−フルオレノン1.18g(3.49mmol)をTHF20mlに溶解させて注射器を用いて反応額に入れた後1時間さらに攪拌した。常温で1時間さらに攪拌した後、飽和NH4Cl水溶液を入れて30分の間攪拌した。水とエチルアセテートで抽出し、無水硫酸マグネシウムで水分を除去した後に真空乾燥して生成物を得た。
3)精製しない化合物前記2)化合物を酢酸5mlに溶解させて濃い硫酸5滴を入れて60℃で一日の間攪拌した。冷却後、濾過しながら水で洗い、5%NaHCO水溶液で洗った後にn−ヘキサン/エチルアセテート=9:1溶液でコラム分離した。得られた物質にエタノールを加えて固体化させ、濾過した後に真空乾燥して生成物1.76g(89.2%)を得た。MS:[M+H]=566。
【0050】
<製造例4>化学式dとして示される出発物質の製造
1)4−アミノビフェニル2.0g(12mmol)、4−ブロモビフェニル2.74g(12.0mmol)をキシレン50mlに溶解させて、Tert−ブトキシドナトリウム1.72g(18mmol)、トリスジベンジリデンアセトンジパラジウム(0)0.11g(0.12mmol)、トリ−tert−ブチルホスフィン0.036g(0.18mmol)を添加した後、3時間の間窒素気流下で還流した。反応溶液に蒸溜水を入れ、反応を終了させて有機層を抽出した後、無水硫酸マグネシウムで水分を除去した。減圧下で溶媒を除去し、ヘキサンで再結晶化して真空乾燥させて生成物2.2g(57%収率)を得た。MS:[M+H]=322。
2)前記1)の化合物2.2g(6.8mmol)、1−プロモ−2−ヨードベンゼン1.25mL(10mmol)、炭酸カリウム1.2g(8.8mmol)、銅0.56g(8.8mmol)をニトロベンゼン5mLに窒素気流下で30時間の間還流した後、常温に冷却した。THFを入れて30分の間攪拌し、溶けない固体を濾過して除去した後、減圧下で溶媒を除去した。ノルマルヘキサン/トルエン=3/1でコラム分離した後、エタノールで再結晶化して真空乾燥して化合物2.4g(収率74%)を得た。MS:[M+H]=477。
3)前記2)の化合物2.30g(4.83mmol)をTHF30mLに溶解させて、−78℃でt−BuLi(1.7Mペンタン溶液)5.68ml(9.66mmol)を30分の間滴加した。2時間の間攪拌した後にTHF8mLに溶解している化合物2、7−ジブロモ−9−フルオレノン1.36g(4.03mmol)を入れた。同一温度で2時間の間攪拌した後に冷却容器(ドライアイス/アセトン)を除去して常温で1時間反応の間攪拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液16mLを入れて30分の間攪拌し、反応を終了させた。生成物をエチルアセテートで抽出し、エタノールを用い固体化して化合物を得た。得られた化合物を真空乾燥させた後、酢酸5mLに溶解させて濃い硫酸溶液5滴を入れ、60℃で一晩中攪拌した。常温に冷却させた後、減圧下で溶媒を除去してエチルアセテートで有機層を抽出した。生成物に含まれている副産物をノルマルヘキサン/テトラヒドロフラン=4/1でコラム分離して除去した。生成物をエタノールで再結晶化し、真空乾燥させて生成物0.77g(27%)を得た。MS:[M+H]=718。
【0051】
<製造例5>化学式eとして示される出発物質の製造
1)4、4−ジトリルアミは1.97g(10mmol)、1−ブロモ−2−ヨードベンゼン1.87ml(15mmol)、ヨウ化銅95mg(0.5mmol)、炭酸カリウム4.15g(30mmol)をキシレン100mlに入れて1週間還流した。冷却後、水を加えた後にエチルアセテートで抽出し、無水硫酸マグネシウムで水分を除去した後、ノルマルヘキサンだけでコラム分離後に生成物2.219g(収率63%)を得た。MS:[M+H]=353。
2)乾燥したフラスコに化合物前記化合物(428mg、1.21mmol)を精製したTHF6mlに溶解させ、ドライアイス/アセトン容器を装着した。t−BuLi1.43ml(1.7Mペンタン溶液、2.43mmol)を30分の間滴加して同一温度で1時間さらに攪拌した。化合物2、7−ジブモロ−9−プルロレノン(338mg、1.00mmol)をTHF6mlに溶解させ、注射器を用いて意反応溶液に加えた後に1時間さらに攪拌した。常温で1時間さらに攪拌した後、飽和アンモニウムクロライド水溶液を入れて反応を終了した後、30分の間攪拌した。エチルアセテートで抽出し、無水硫酸マグネシウムで水分を除去した後に真空乾燥した。
3)前記2)化合物を酢酸5mlに溶解させて濃い硫酸5滴を入れて60℃で一日の間攪拌した。常温に冷却後、濾過しながら水で洗った。5%中炭酸ナトリウム水溶液で洗ってしてノルマルヘキサン/テトラヒドロフラン=9:1溶液でコラム分離した後、エタノールで固体化させて濾過乾燥した。(528mg、収率89%)。MS:[M+H]=594。
【0052】
<製造例6>化学式fに示される出発物質の製造
1)m、m’−ジトリルアミンは2.28ml(12mmol)、1−ブロモ−2−ヨードベンゼン2.26ml(18.0mmol)、銅991mg(1.3eq)、炭酸カリウム2.16g(15.6mmol)およびニトロベンゼン1mlを3日間還流した。冷却後、ニトロベンゼンを減圧蒸留し、除去して水とエチルアセテートで抽出して有機層から無水硫酸マグネシウムを用いて水分を除去した。有機溶媒を除去した後、ノルマルヘキサン/エチルアセテート=50:1溶媒でコラム分離してエタノールで固体化した。MS:[M+H]=353(−Br)、400(−I)。収率:68%(2.9g)。
2)乾燥したフラスコに前記1)化合物779mg(2.21mmol)を精製したTHF8mlに溶解させ、ドライアイス/アセトン槽を装着した。t−ブチルリチウム(1.7Mペンタン溶液)2.6ml(4.4mmol)を30分の間滴加して1時間さらに攪拌した。2、7−ジブロモ−9−フルオレノン0.622g(1.83mmol)をTHF9mlに溶解させて注射器で反応額に入れた後、同一温度で1時間さらに攪拌した。常温で1時間さらに攪拌した後、飽和アンモニウムクロライド水溶液を入れて30分の間攪拌した。水とエチルアセテートで抽出した後、無水硫酸マグネシウムで有機層の水分を除去した後に真空乾燥した。
3)精製しない前記2)化合物を酢酸5mlに溶解させて濃い硫酸5滴を入れて60℃で一日の間攪拌した。冷却後、濾過しながら、水で洗った。5%NaHCO水溶液で洗い、ノルマルヘキサン/エチルアセテート=9:1溶液でコラム分離した。エタノールで固体化させ、濾過した後に真空乾燥した。MS:[M+H]=594。収率:73.9%(0.807g)。
【0053】
<製造例7>化学式gに示される出発物質の製造
1)2−ブロモアニリン(800mg、4.70mmol)、1−tert−ブチル−4−アイオドベンゼン(1mL、5.64mmol)、水酸化カリウム(1.06g、18.8mmol)、塩化銅(19mg、0.16mmol)、1、10−フェナトロリン(34mg、0.16mmol)およびキシレン(16mL)を窒素の雰囲気下で一晩中加熱した。この反応物を常温に冷却した後、生成物をエチルアセテートで抽出し、無水硫酸マグネシウムによって水分を除去した後に減圧下において溶媒を除去した。生成物をヘキサン溶媒を用いてシリカゲルコラムを通過させ、2価アミンと3価アミンとを得た。得られた2価アミンと3価アミンとの混合物を真空乾燥した後、1−tert−ブチル−4−アイオドベンゼン(0.8mL、4.42mmol)、ヨード化銅(35mg、0.18mmol)、炭酸カリウム(763mg、5.52mmol)と共にトルエン(15mL)に加えて窒素の雰囲気下で一晩中加熱した。この反応物を常温に冷却した後、生成物をエチルアセテートで抽出し、無水硫酸マグネシウムによって水分を除去した後に減圧下において溶媒を除去した。生成物をヘキサン溶媒を用いてシリカゲルコラムを通過させた後、溶媒を減圧下において除去し、真空乾燥させて所望する白色固体の前記化合物(0.67g、33%)を得た。MS:[M+H]=437。
2)乾燥したフラスコに前記1)の化合物0.5g(1.2mmol)を精製したTHF6mlに溶解させ、ドライアイス/アセトン容器を装着した。ここで、−78℃でt−BuLi(1.7Mペンタン溶液、1.35ml、2.3mmol)を30分の間滴加した。この反応物を1時間の間攪拌した後、2、7−ジブロモ −9−フルオレノン338mg(1mmol)をTHF5mlに溶解させて、注射器で反応額に入れた後、同一温度で反応物を1時間の間攪拌した後ドライアイス/アセトン容器を除去して常温で1時間の間攪拌した。ここに、飽和塩化アンモニウム水溶液(10mL)を入れて30分の間攪拌し、反応を終了させて、生成物をエチルアセテートで抽出した後、ノルマルヘキサン/エチルアセテート=9/1溶媒でコラム分離して化合物得た。
3)前記2)化合物を真空乾燥させた後、酢酸(5mL)に溶解させて濃い硫酸溶液(3滴)を入れ、60℃で1日の間攪拌した。この反応物を常温に冷却させた後、フィルタ紙を用いて生成物をこして水で洗浄した。生成物に含まれている副産物をノルマルヘキサン/エチルアセテート=9/1溶媒でコラム分離して除去し、真空乾燥させて生成物を0.31g(収率36%)を得た。MS:[M+H]=678。
【0054】
<実施例1>化学式2−1として示される化合物の製造
化学式c5.02g(8.88mmol)とジフェニルアミン1.81g(10.7mmol)をトルエン120mlに溶解させ、tert−ブトキシドナトリウム2.90g(30.2mmol)、ビスジベンジリデンアセトンパラジウム(0)0.12g(0.21mmol)、50wt%トリ−tert−ブチルホスフィントルエン溶液0.16ml(0.32mmol)を添加した後、2時間の間窒素気流下で還流した。反応溶液に蒸溜水を入れて反応を終了させ、有機層を抽出した。ノルマルヘキサン/テトラヒドロフラン=9/1溶媒でコラム分離した後、石油エーテルに攪拌した後、真空乾燥して化学式2−1(5.2g、収率78.9%)を得た。MS:[M+H]=742。
【0055】
<実施例2>化学式3−1として示される化合物の製造
化学式b4.68g(8.88mmol)とジフェニルアミン1.81g(10.7mmol)をトルエン120mlに溶解させ、tert−ブトキシドナトリウム2.90g(30.2mmol)、ビスジベンジリデンアセトンパラジウム(0)0.12g(0.21mmol)、50wt%トリ−tert−ブチルホスフィントルエン溶液0.16ml(0.32mmol)を添加した後、2時間の間窒素気流下で還流した。反応溶液に蒸溜水を入れて反応を終了させ、有機層を抽出した。ノルマルヘキサン/テトラヒドロフラン=9/1溶媒でコラム分離した後、石油エーテルに攪拌した後、真空乾燥して化学式3−1(5.1g、収率72.5%)を得た。MS:[M+H]=793。
【0056】
<実施例3>化学式3−2として示される化合物の製造
化学式b4.68g(8.88mmol)とN−フェニル−1−ナフチルアミン2.34g(10.7mmol)とをトルエン120mlに溶解させ、tert−ブトキシドナトリウム2.90g(30.2mmol)、ビスジベンジリデンアセトンパラジウム(0)0.12g(0.21mmol)、50wt%トリ−tert−ブチルホスフィントルエン溶液0.16ml(0.32mmol)を添加した後、2時間の間窒素気流下で還流した。反応溶液に蒸溜水を入れて反応を終了させ、有機層を抽出した。ノルマルヘキサン/テトラヒドロフラン=9/1溶媒でコラム分離した後、石油エーテルに攪拌した後、真空乾燥して化学式3−2(5.6g、収率71%)を得た。MS:[M+H]=893。
【0057】
<実施例4>化学式26−1として示される化合物の製造
化学式e5.28g(8.88mmol)とジフェニルアミン1.81g(10.7mmol)をトルエン120mlに溶解させ、tert−ブトキシドナトリウム2.90g(30.2mmol)、ビスジベンジリデンアセトンパラジウム(0)0.12g(0.21mmol)、50wt%トリ−tert−ブチルホスフィントルエン溶液0.16ml(0.32mmol)を添加した後、2時間の間窒素気流下で還流した。反応溶液に蒸溜水を入れて反応を終了させ、有機層を抽出した。ノルマルヘキサン/テトラヒドロフラン=9/1溶媒でコラム分離した後、石油エーテルに攪拌した後、真空乾燥して化学式26−1(4.9g、収率71.7%)を得た。MS:[M+H]=771。
【0058】
<実施例5>化学式27−1として示される化合物の製造
化学式f5.27g(8.88mmol)とジフェニルアミン1.81g(10.7mmol)をトルエン120mlに溶解させて、tert−ブトキシドナトリウム2.90g(30.2mmol)、ビスジベンジリデンアセトンパラジウム(0)0.12g(0.21mmol)、50wt%トリ−tert−ブチルホスフィントルエン溶液0.16ml(0.32mmol)を添加した後、2時間の間窒素気流下で還流した。反応溶液に蒸溜水を入れて反応を終了させ、有機層を抽出した。ノルマルヘキサン/テトラヒドロフラン=9/1溶媒でコラム分離した後、石油エーテルに攪拌した後、真空乾燥して化学式27−1(5.0g、収率73%)を得た。MS:[M+H]=771。
【0059】
<実施例6>化学式28−1として示される化合物の製造
化学式g6.02g(8.88mmol)とジフェニルアミン1.81g(10.7mmol)とをトルエン120mlに溶解させ、Tert−ブトキシドナトリウム2.90g(30.2mmol)、ビスジベンジリデンアセトンパラジウム(0)0.12g(0.21mmol)、50wt%トリ−tert−ブチルホスフィントルエン溶液0.16ml(0.32mmol)を添加した後、2時間の間窒素気流下で還流した。反応溶液に蒸溜水を入れて反応を終了させ、有機層を抽出した。ノルマルヘキサン/テトラヒドロフラン=9/1溶媒でコラム分離した後、石油エーテルに攪拌した後、真空乾燥して化学式28−1(5.6g、収率73.8%)を得た。MS:[M+H]=855。
【0060】
<実施例7>化学式29−1として示される化合物の製造
化学式d6.37g(8.88mmol)とジフェニルアミン1.81g(10.7mmol)をトルエン120mlに溶解させて、tert−ブトキシドナトリウム2.90g(30.2mmol)、ビスジベンジリデンアセトンパラジウム(0)0.12g(0.21mmol)、50wt%トリ−tert−ブチルホスフィントルエン溶液0.16ml(0.32mmol)を添加した後、2時間の間窒素気流下で還流した。反応溶液に蒸溜水を入れて反応を終了させ、有機層を抽出した。ノルマルヘキサン/テトラヒドロフラン=9/1溶媒でコラム分離した後、石油エーテルに攪拌した後、真空乾燥して化学式29-1(6.2g、収率77%)を得た。MS:[M+H]=895。
【0061】
<実施例8>有機発光素子の製造
ITO(indium tin oxide)が1000Åの厚さで薄膜コーティングされたガラス基板(corning7059glass)を洗剤を溶かした蒸溜水に入れて超音波で洗浄した。この時、洗剤としてはフィッシャー社(Fischer Co.)製のものを用い、蒸溜水としてはミリポア(Millipore Co.)製のフィルタで2回こした蒸留水を用いた。ITOを30分間洗浄した後、蒸溜水で2回繰り返して超音波洗浄を10分間進行した。蒸溜水洗浄が終わった後、イソプロピルアルコール、アセトン、メタノールなどの溶剤で超音波洗浄して乾燥させた後、プラズマ洗浄機に移送させた。窒素プラズマを用いて、14mtorrの圧力、85Wで前記基板を5分間乾式洗浄した後、真空蒸着機に基板を移送させた。
【0062】
上記のように準備されたITO透明電極の上に下記化学式の化合物であるヘキサニトリルヘキサアザトリフェニレン(hexanitrile hexaazatriphenylene:以下、HATという)を500Åの厚さで熱真空蒸着してITO導電層およびN型有機物を有する陽極を形成した。
【化7】

【0063】
前記層上に前記化学式28−1の化合物(400Å)を真空蒸着して正孔輸送層を形成させた。前記正孔輸送層上にAlq3を300Åの厚さで真空蒸着して発光層を形成した。
【0064】
前記発光層上に下記化学式の電子輸送層物質を200Åの厚さで蒸着して電子輸送層を形成した。
【化8】

【0065】
前記電子輸送層上に順次的に12Å厚さのフッ化リチウム(LiF)と2000Å厚さのアルミニウムを蒸着して陰極を形成した。
【0066】
前記の過程で有機物の蒸着速度は0.3〜0.8Å/secで維持した。
【0067】
また、陰極のフッ化リチウムは0.3Å/sec、アルミニウムは1.5〜2.5Å/secの蒸着速度を維持した。
【0068】
蒸着時の真空度は1〜3×10−7に維持した。
【0069】
製造された素子は、順方向電流密度100mA/cmで5.47Vの電界を示し、2.91lm/Wの光効率を示す緑色の発光が表れた。このように素子が前記駆動電圧で作動して発光するということは、正孔注入層と発光層との間に層を形成した前記化学式28−1の化合物が正孔輸送の役割をしているということを示す。
【0070】
<実施例9>有機発光素子の製造
正孔注入層を別途に形成せずに、実施例7と同じ方法で準備したITO透明電極の上にHAT薄膜(80Å:界面特性を向上させる目的で使用)を形成した後、その上に化学式28−1の化合物を1100Åの厚さで蒸着して正孔注入と輸送を同時にする層を形成したことを除いては、実施例1と同一の方法によって有機発光素子を製作した。
【0071】
製造された素子は、順方向電流密度100mA/cmで6.75Vの電界を示し、2.19lm/Wの光効率を示す緑色発光が表れた。このように、素子が前記駆動電圧で作動して発光をするということは、前記化学式1−4の化合物が正孔注入と輸送役割をしているということを示し、このように本発明の化合物として正孔注入と輸送とを同時に行う層を形成する場合にも低電圧駆動および優れた光効率を達成することができるということを知ることができる。
【0072】
<実施例10>有機発光素子の製造
実施例9において化学式28−1を2−1と置換したこと以外は、同じように素子を製作した。
【0073】
製造された素子は、順方向電流密度100mAで5.63Vの電界を示し、1.83lm/Wの光効率を示す緑色発光が表れた。
【0074】
<実施例11>有機発光素子の製造
実施例9において化学式28−1を3−1と置換したこと以外は、同じように素子を製作した。
【0075】
製造された素子は、順方向電流密度100mAで5.77Vの電界を示し、1.66lm/Wの光効率を示す緑色発光が表れた。
【0076】
<実施例12>有機発光素子の製造
実施例9において化学式28−1を3−2と置換したこと以外は、同じように素子を製作した。
【0077】
製造された素子は、順方向電流密度100mAで5.72Vの電界を示し、1.78lm/Wの光効率を示す緑色発光が表れた。
【0078】
<実施例13>有機発光素子の製造
実施例9において化学式28−1を26−1と置換したこと以外は、同じように素子を製作した。
【0079】
製造された素子は、順方向電流密度100mAで5.70Vの電界を示し、2.1lm/Wの光効率を示す緑色発光が表れた。
【0080】
<実施例14>有機発光素子の製造
実施例9において化学式28−1を27−1と置換したこと以外は、同じように素子を製作した。
【0081】
製造された素子は、順方向電流密度100mAで5.63Vの電界を示し、2.0lm/Wの光効率を示す緑色発光が表れた。
【0082】
<実施例15>有機発光素子の製造
実施例9において化学式28−1を29−1と置換したこと以外は、同じように素子を製作した。
【0083】
製造された素子は、順方向電流密度100mAで5.80Vの電界を示し、1.82lm/Wの光効率を示す緑色発光が表れた。
【0084】
<実施例16>有機発光素子の製造
実施例9において化学式28−1を3−1と置換したこと以外は、同じように素子を製作した。
【0085】
製造された素子は、順方向電流密度100mAで5.77Vの電界を示し、1.66lm/Wの光効率を示す緑色発光が表れた。
【0086】
<実施例17>有機発光素子の製造
実施例9において化学式28−1を3−2と置換したこと以外は、同じように素子を製作した。
【0087】
製造された素子は、順方向電流密度100mAで5.72Vの電界を示し、1.78lm/Wの光効率を示す緑色発光が表れた。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明の化合物は、有機発光素子において、有機物層物質、特に正孔注入物質および/または正孔輸送物質として用いることができ、この化合物を有機発光素子に用いる場合、素子の駆動電圧を低くし、光効率を向上させ、化合物の熱的安定性によって素子の寿命特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】基板1、陽極2、発光層3、陰極4からなる有機発光素子の例を示したものである。
【図2】基板1、陽極2、正孔注入層5、正孔輸送層6、発光層7、電子輸送層8および陰極4からなる有機発光素子の例を示したものである

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、発光層と、1層以上の有機物層と、及び第2電極とを備えてなる、有機発光素子であって、
前記有機物層中の1層以上が下記化学式1の化合物、又は該化合物に熱硬化性若しくは光硬化性の官能基が導入された化合物を含んでなる、有機発光素子。
【化1】

[前記化学式1において、
XはCまたはSiであり、
Aは−NZ1Z2であり、
Bは−NZ3Z4であって、
Yは、結合;2価の芳香族炭化水素;ニトロ、ニトリル、ハロゲン、アルキル基、アルコキシ基およびアミノ基からなる群より選択される1つ以上の置換基によって置換された2価の芳香族炭化水素;2価の複素環基;またはニトロ、ニトリル、ハロゲン、アルキル基、アルコキシ基およびアミノ基からなる群より選択される1つ以上の置換基によって置換された2価の複素環基であり、
Z1〜Z4は、各々独立的に各々、水素;炭素数1−20の脂肪族炭化水素;芳香族炭化水素;ニトロ、ニトリル、ハロゲン、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、芳香族炭化水素および複素環基からなる群より選択される1つ以上の置換基によって置換された芳香族炭化水素;芳香族炭化水素によって置換されたシリコン基;複素環基;ニトロ、ニトリル、ハロゲン、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、芳香族炭化水素および複素環基からなる群より選択される1つ以上の置換基によって置換された複素環基;炭素数1−20の炭化水素または炭素数6−20の芳香族炭化水素で置換されたチオフェン基;または芳香族炭化水素で置換されたホウ素基であり、
R1〜R4およびR6〜R9は、各々独立的に水素、置換または非置換されたアルキル基、置換または非置換されたアルコキシ基、置換または非置換されたアルケニル基、置換または非置換されたアリール基、置換または非置換されたアリールアミン基、置換または非置換された複素環基、アミノ基、ニトリル基、ニトロ基、ハロゲン基、アミド基またはエステル基であって、ここで、これらは互いに隣接する基と脂肪族またはヘテロの縮合環を形成することができ、
R5は、水素、置換または非置換されたアルキル基、置換または非置換されたシクロアルキル基、置換または非置換されたアルケニル基、置換または非置換されたアリール基および置換または非置換された複素環基であって、
ここで、R5がアリール基または複素環基である時、前記アリールまたは複素環基のオルト(ortho)位置の炭素とR4またはR6は、O、S、NR、PR、C=O、CRR’、SiRR’からなる群より選択される基と一緒に縮合環を形成することができ、
ここで、RおよびR’は、各々独立的に水素、置換または非置換されたアルキル基、置換または非置換されたアルコキシ基、置換または非置換されたアルケニル基、置換または非置換されたアリール基、置換または非置換されたアリールアミン基、置換または非置換された複素環基、ニトリル基、アミド基、エステル基からなる群より選択され、ここで、RとR’は、縮合環を形成してスピロ化合物を形成することができるものである。]
【請求項2】
前記化学式1中、R5がアリール基または複素環基である、請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項3】
前記化学式1中、R5がアリール基または複素環基であり、前記アリールまたは複素環基のオルト(ortho)位置の炭素とR4またはR6はO、S、NR、PR、C=O、CRR’、SiRR’(ここで、RおよびR’は化学式1で定義した通りである)からなる群より選択される基と共に縮合環を形成する、請求項2に記載の有機発光素子。
【請求項4】
前記化学式1の化合物が、下記化学式2〜化学式119中のいずれか一つの化合物である、請求項1に記載の有機発光素子。
【化2】








[上記化学式において、AおよびBは請求項1で定義されたの同様である。]
【請求項5】
AおよびBが、独立的に下記の基のうちの1つである、請求項4に記載の有機発光素子。
【化3】



【請求項6】
前記有機物層が正孔輸送層を含んでなり、該正孔輸送層が前記化学式1の化合物、又は該化合物に熱硬化性若しくは光硬化性の官能基が導入された化合物を含んでなる、請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項7】
前記有機物層が正孔注入層を含んでなり、該正孔注入層が前記化学式1の化合物、又は該化合物に熱硬化性若しくは光硬化性の官能基が導入された化合物を含んでなる、請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項8】
前記有機物層が正孔注入と正孔輸送を同時に兼ね備えて成る層を含んでなり、該層が前記化学式1の化合物、又は該化合物に熱硬化性若しくは光硬化性の官能基が導入された化合物を含んでなる、請求項1に記載の有機発光素子。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−511155(P2008−511155A)
【公表日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−529722(P2007−529722)
【出願日】平成17年9月23日(2005.9.23)
【国際出願番号】PCT/KR2005/003169
【国際公開番号】WO2006/080637
【国際公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【出願人】(502202007)エルジー・ケム・リミテッド (224)
【Fターム(参考)】