説明

新生物形成の処置のための増殖調節因子及びホルモンの組合せ

本発明は免疫学、内分泌学、及び腫瘍学の分野に関し、特に、決定された増殖因子及びホルモン因子に対する複合型免疫応答の生成に関する。本明細書中に概説される、増殖を調節する因子(EGF、TGF、VEGF)と性ホルモン放出カスケード又は生殖に関与するホルモン(GnRH、LH、FSH)との間の相乗効果は、腫瘤の減少及び生存時間の増加として表される抗腫瘍応答を刺激する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として免疫学、内分泌学、及び腫瘍学の分野に関し、特に、増殖を調節する因子(EGF、TGF、VEGF)、並びに性ホルモン及び/又は性ホルモン放出カスケードに関与するホルモン若しくは生殖ホルモンの組合せを含む薬学的組成物に関し、この組成物は新生物形成の処置のための複合型自己免疫応答を引き起こす。
【背景技術】
【0002】
ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)(黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)としても知られる)は、脳下垂体前葉の黄体形成ホルモン(LH)及び卵胞刺激ホルモン(FSH)の放出に関与する視床下部性ペプチドホルモンである。
【0003】
視床下部系によって産生されるGnRHに加えて、他の脳の部位(Jennes L,Conn P.M.「ラット脳におけるゴナドアトリピン放出ホルモン及びそのレセプター(Gonodatripin−releasing hormone and its receptors in the rat brain)」Front Neuroendocrinol.1994,第15巻、51−77頁)、並びにラット卵巣顆粒細胞(Peng C.,Fan N.C.,Ligier M.,Vaananen J.,Leung P.C.「ヒト顆粒膜黄体細胞におけるゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)及びGnRHレセプターメッセンジャーリボ核酸の発現及び調節(Expression and regulation of gonadotropin−releasing hormone (GnRH) and GnRH receptor messenger ribonucleic acids in human granulosa−luteal cells)」Endocrinology 1994、第135巻、1740−1746頁)、精巣細胞(Di Matteo L.,Vallarino M.,Pierantoni R.「カエル、ラナエスクレンタの脳、脳下垂体、及び精巣におけるGnRH分子型の局在(Localization of GnRH molecular forms in the brain,pituitary and testis of the frog,Rana esculenta)」J.Exp.Zool.1996,第247巻、33−40頁)、ヒト胎盤(Gohar J.,Mazor M.,Lieberman J.R.「妊娠中のGnRH(GnRH in pregnancy)」Arch.Gynecol.Obstet,1996,第259巻,1−6頁)、免疫系(Jacobson J.D.,Crofford L.J.,Sun L.,Wilder R.L.「リンパ器官におけるGnRH及びGnRHレセプターmRNAの周期的発現(Cyclical expression of GnRH and GnRH receptor mRNA in lymphoid organs)」Neuroendocrinology 1998,第67巻、117−125頁)、及び脳下垂体(Bauer T.W.,Moriarty C.M.,Childs G.V.「ラット脳下垂体前葉におけるゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)の研究(Studies of immunoreactive gonadotropin releasing hormone (GnRH) in the rat anterior pituitary)」J.Histochem.Cytochem,1981,第29巻,1171−1178頁)でのGnRH産生の証拠が存在する。
【0004】
性腺摘出は、性腺ステロイドに依存する腫瘍の処置のために必要な周知の治療手順である。GnRHアナログは、化学的去勢を通してのみならず、腫瘍細胞に対する直接的効果によってもまた、それらの抗腫瘍活性を発揮することができる(Couillard S.,Labrie C.,Belanger A.,Candas B.,Pouliot F.,Labrie F.「ヒトZR−75−1乳癌異種移植片の増殖に対するデヒドロエピアンドロステロン及び抗アンドロゲンEM−800の効果(Effect of dehydroepiandrosterone and anti−androgen EM−800 on growth of human ZR−75−1 breast cancer xenografs)」J.Nat Cancer Inst.1998,5月20日号、772−778頁;Kolle S.ら「ヒト前立腺癌および過形成における成長ホルモンの発現(Expression of growth hormone receptor in human prostatic carcinoma and hyperplasia)」Int.J.Oncol.1999、第5巻、911−916頁)。
【0005】
同様に、GnRHアンタゴニスト(MZ−4−71)が、アンドロゲン非依存性前立腺癌細胞系PC−3、DU−145、及びDunning AT−1の増殖を抑制し得ることが報告された(A Jungwirthら「成長ホルモン放出ホルモンのアンタゴニストによるアンドロゲン非依存性前立腺癌のインビボ増殖の阻害(Inhibition of in vivo proliferation of androgen−independent prostate cancers by an antagonist of growth hormone−releasing hormone)」British Journal of Cancer 1997,第75巻、第11号、1585−1592頁)。
【0006】
Dunning細胞系R3327−Gは、現在十分に確立された方法として前立腺腫瘍の処置に一般的に関連した異なる研究において広範に使用されている。EGFレセプターはアンドロゲン腫瘍モデルDunning R3327に感受性である前立腺において見い出されている(Damber J.E.,Bergh B.,Gafvels M.「ラット前立腺腺癌における上皮増殖因子レセプター含量:エンドクリン処理の効果(Epidermal growth factor receptor content in rat prostatic adenocarcinoma: effects of endcrine treatment)」Urol.Res.1995,第23巻、第2号、119−25頁)。亜系Dunning R3327−GにおいてEGFレセプターの発現がアンドロゲン制御下で協調的であることもまた示唆されてきた(「Dunning R3327 G前立腺腫瘍を有するラットの去勢後の成長因子の協調的損失(Coordonate loss of growth factors following castration of rats carrying the Dunning R3327 G prostatic tumor)」Clin Physiol Biochem,1992,第9巻、第2号、47−50頁)。
【0007】
上皮増殖因子(EGF)は、約6045Daの分子量を有する53アミノ酸のポリペプチドであり、これはインビトロ及びインビボにおいて上皮細胞及び間葉細胞の増殖を刺激する(Cohen S.,Carpenter G.,「ヒト上皮増殖因子:単離並びに化学的及び生物学的特性(Human Epidermal Growth Factor:Isolation and Chemical and biological properties)」PNAS USA,1975,第72巻、1317頁)。EGF作用は細胞膜における特異的レセプターを介して発揮される。EGFは最初にマウス顎下腺から精製された(Cohen S.J.Biol.Chem.1962,第237巻、第1巻、555頁)。その後、類似の分子がヒト尿から得られた(Cohen S.「ヒト上皮増殖因子:単離並びに化学的及び生物学的特性(Human Epidermal Growth Factor:Isolation and Chamical and Biological Properties)」PNAS USA 1975,第72巻、1317頁)。
【0008】
EGFの生物的調節作用は、約170KDaの糖タンパク質である膜レセプター(EGF−R)を介して行われ、その遺伝子はクローニング及び配列決定されている。このレセプターの細胞内ドメインは特異的チロシンキナーゼタンパク質活性と関連付けられており、悪性形質転換プロセスに特定の関連を示す癌遺伝子v−erb−Bに対する構造的相同性を有する(Helding C.H.Cell,1984,第37巻、9−20頁)。腫瘍細胞にEGF−Rが存在することから、ヒト乳癌に関連する保留された予測が支持される。約40%の乳癌がEGFに対する高親和性特異的結合部位を示す(Rios M.A.ら「上皮増殖因子及びエストロゲンのレセプター、乳癌を有する患者における再発の予測因子(Receptors for Epidermal Growth Factor and Estrogen Predictors of Relapse in Patients with Mammary Carcinoma)」Anticancer Research 1998,第8巻、173−176頁)。分化マーカーとして、又は悪性細胞の潜在的な増殖能力の指示因子としてのEGF−Rを指し示すエストロゲンレセプターの存在との逆相関もまた存在する(Perez R.,Pascual M.R.,Macias A.,Lage A. Breast Cancer Research and Treatment 1984,第4巻、189−193頁)。
【0009】
Balb/cマウスにおけるエールリッヒ腹水腫瘍モデルにおいて展開された以前の研究(Lombardero J.ら、Neoplasma 1987、第33巻、4頁)はEGFのインビボ阻害効果を実証し、この分子が生物学的応答の転換因子と考えられることの可能性を示唆した。
【0010】
免疫効果を伴って、副作用を伴わずにEGF依存性腫瘍増殖を阻害する、キャリアタンパク質と結合された自系のEGFを含むワクチン組成物が開発された(米国特許第5894018号:抗腫瘍活性を有する自系上皮増殖因子又はそのフラグメント若しくは誘導体を含むワクチン組成物及び悪性疾患の治療におけるその使用(Vaccine composition comprising autologus epidermal growth factor or fragment or derivative,thereof having anti−tumour activity and used thereof in the therapy of malignant diseases))。
【0011】
以前の研究においては、Dunning腫瘍は、腹側前立腺と比較して、血管内皮増殖因子(VEGF)又はそのレセプターについての高レベルのmRNAを発現することが報告されていた(「去勢の前後での腹側前立腺及びDunning R3327 PAPの腺癌における血管内皮増殖因子(VEGF)及びそのレセプターの発現(Expression of vascular endothelial growth factor and its receptors in the ventral prostate and Dunning R3327 PAP adenocarcinoma before and after castration)」Prostate 1988,第36巻、第2号、71−79頁)。動物モデルにおけるアッセイは、アンドロゲン欠乏が血管退行をもたらし得ること、及びVEGFがアンドロゲンによって調節され得ることを示した。ヒト前立腺癌において、腺上皮によるVEGFの構成的産生はアンドロゲン除去治療のために抑制された。VEGFの損失は、周囲内皮細胞を剥奪した血管における内皮細胞の選択的アポトーシスをもたらした(Laura E.ら:「確立されたヒト腫瘍における未成熟血管の選択的除去は、血管内皮増殖因子の除去後に起こる(Selective ablation of immature blood vessels in established human tumors follows vascular endothelial growth factor withdrawal)」J.Clin.Invest.1999,第103巻、第2号、159−165頁)。
【0012】
VEGFは、内皮細胞の特異的な血管形成性かつ血管性の分裂促進因子であり、病原性の血管新生において役割を果たし、これは、癌及び関節リウマチを含む多数の臨床的病変と関連する。VEGFはグリコシル化された、ジスルフィド結合を有するホモダイマーであり、異なるアイソフォーム(VEGF121、VEGF165、VEGF189及びVEGF206)で発現され、ヒトにおいては121−206残基を含む(「1.93A分解能で精緻化された血管内皮増殖因子(VEGF)の結晶構造:複数コピーの柔軟性及びレセプター結合(The crystal structure of vascular endothelial growth factor(VEGF)refined to 1.93A resolution:Multiple copy flexibility and receptor binding)」Structure,1997,第5巻、第10号、1325−1338頁)。
【0013】
一般論として、腫瘍細胞は、外因性の増殖シグナルに対して劇的に低い依存性を示し、それら自体の増殖シグナルの多くを生成することができる。多くの様式で得られたこのシグナル非依存性は、組織中のいくつかの型の細胞の適切な挙動を確実にするように通常作動している、決定的に重要なホメオスタシスの挙動に損害を与える。
【0014】
増殖シグナルの自律性に到達するために、細胞は、これらのシグナルの細胞間翻訳因子から作用まで、細胞外増殖シグナルを変化させる機構を作り出した(Douglas H.及びRobert A.W.「癌の品質証明(概説)(The Hallmarks of Cancer(Review))」Cell 2000,第100巻、57−70頁)。増殖因子の大部分が1つの細胞型によって産生されて他の細胞型の増殖を刺激する(異型シグナル伝達のプロセス)のに対して、多くの癌細胞は、正のフィードバック連関を作ることによってそれらが応答する、増殖因子を合成する能力を取っている(自己分泌刺激)。
【0015】
通常、それらの細胞質ドメインにおいてチロシンキナーゼ活性を有する特定の増殖因子に対するレセプターは、多くの種類の癌細胞において過剰発現され、結果として、それらは通常の濃度の増殖因子に対して過剰な応答を発生する。増殖因子レセプターの過剰発現はまた、リガンド非依存性のシグナル伝達も誘発し得る。リガンド非依存的なシグナル伝達は、同様に、レセプターの構造的変化によって達成され得る(EGFレセプターは、その細胞質ドメインを喪失し、かつ連続的にシグナル伝達し得る)。
【0016】
SOS−Ras−Raf−MAPKカスケードは、増殖因子の作用に起因するシグナル伝達において重要な役割を果たす。ヒト腫瘍の25%はRasタンパク質発現の調節において問題を有しているが、増殖シグナル伝達経路はすべてのヒトの腫瘍において変化している(ほぼ半分のヒト結腸癌腫が変異したras癌遺伝子を有し、そして残りが他のシグナル伝達経路成分が欠損していると考えられている)。
【0017】
線維芽細胞及び内皮細胞のような正常細胞は、腫瘍細胞の増殖において重要な役割を果たし得る。正常組織において、細胞は、それらの隣接する細胞のシグナル(傍分泌)又は全身性シグナル(内分泌)を通して増殖するように促される。それゆえに、腫瘍細胞増殖を説明するために、腫瘍の内部のいくつかの細胞間の従属栄養性シグナル伝達は、上述の自律的機構と同程度に重要であると見なされるべきである。この意味において、血管系によって供給される酸素及び他の栄養は、これらの機能並びに腫瘍細胞の生存のために必須である。
【0018】
血管形成の持続を誘導する能力は、腫瘍発生の間の別個の段階(又は複数の段階)において、「血管形成スイッチ」を介して、血管静止状態から獲得されるようである。新血管形成は、巨視的腫瘍の形成に関連するクローン性拡大のための必要条件である。
【0019】
細胞系における増殖因子の分裂促進的効果はGnRHアナログによって抵抗され得、これは、シグナル伝達分裂促進的経路との相互作用を示す。この仮説は、GnRHアゴニストによる卵巣及び子宮内膜からのヒト腫瘍細胞において増殖因子によって誘導されるチロシンキナーゼ活性阻害(これは部分的にはGnRH誘導されたホスホチロシンホスファターゼの活性化に起因する)によって実証された。
【0020】
GnRHアナログを用いる治療は、腫瘍細胞膜上の増殖因子レセプター(EGF、インスリン様増殖因子1(IGF−1))の劇的な減少、及び腫瘍中のEGF−RのmRNAレベルの急激な上昇と関連していた。さらに、特定の腫瘍系における抗増殖性活性並びにエストロゲン及びアンドロゲンについてのレセプター発現の変化が報告された。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
四半世紀にわたる癌研究の進歩の助けにより、複数の相を有する悪性の劇的なプロセスとしての腫瘍形成を支持する確かな証拠が蓄積されてきた。悪性細胞遺伝子型の広範なカタログは、細胞生理学における本質的な変化を明らかにしている。これらの形質転換は、集合的に、異なる型の腫瘍における悪性増殖に組織を駆動する。従って、なお未解決である癌治療の重要な問題は、受動的な又は受動的な免疫応答の調節を達成することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、以前に記載された問題に対する解決策であり、増殖調節因子(EGF、TGF、VEGF)並びに性ホルモン、及び/又は性ホルモン放出カスケードに関与するホルモン、又は生殖に関与するホルモン(GnRH、LH、FSH)を含む新規な薬学的組成物を使用する。この組合せは、新生物形成の処置に対して有用であり、及び状況に応じて、この組合せの活性成分は同時に、別々に、又は逐次的に適用され得る。
【0023】
前臨床試験において、上述の増殖因子及びホルモンに対する複合型の免疫応答の生成は、このような因子及びホルモンに対する免疫応答が独立して生成されたときに観察されるものよりもより良好な結果を可能にする。これらの結果は、この見積りが、異なる起源の新生物を有する患者の処置のためのより効果的な方法を構成することの証拠を提供する。なぜなら、腫瘤の減少及び生存時間の増加として表される抗腫瘍応答が促進されるからである。
【0024】
さらに特定すると、本発明は、同時投与、個別投与、又は逐次的投与のための新生物形成の処置のための薬学的組合せに関し、前記組合せは化合物A及び化合物Bを含み、ここで、前記化合物A及び化合物Bは、以下からなる分子の群から選択される:
A:a.1.免疫増強キャリアタンパク質に結合されているか又は結合されていない、GnRH又はそのアナログ、又は抗GnRH抗体、又はGnRHレセプター(GnRH−R)、又はその変異改変体、又は誘導ペプチド、又は抗GnRH−R抗体
a.2.免疫増強キャリアタンパク質に結合されているか又は結合されていない、天然若しくは組換えのゴナドトロピン、又はそれらのアナログ、又はそれらの変異改変体、ヒト化されているか又はされていない、抗ゴナドトロピン抗体、それらのFab、scFVフラグメント
a.3.免疫増強キャリアタンパク質に結合されているか又は結合されていない、ゴナドトロピンレセプター又はそれらの変異改変体、又は誘導ペプチド
a.4.ヒト化されているか又はされていない、抗ゴナドトロピンレセプター抗体、それらのFab、scFVフラグメント
B:b.1.免疫増強キャリアタンパク質に結合されているか又は結合されていない、天然若しくは組換えのEGF、又はその変異改変体若しくは誘導ペプチド、又はEGF模倣ペプチド、又はEGFアナログ
b.2.ヒト化されているか又はされていない、抗EGF抗体、それらのFab、scFVフラグメント
b.3.免疫増強キャリアタンパク質に結合されているか又は結合されていない、EGFレセプター(EGF−R)、又はその変異改変体若しくは誘導ペプチド
b.4.ヒト化されているか又はされていない、抗EGFレセプター抗体、それらのFab、scFVフラグメント
b.5.免疫増強キャリアタンパク質に結合されているか又は結合されていない、天然若しくは組換えのVEGF、又はその変異改変体若しくは誘導ペプチド、又はVEGF模倣ペプチド、又はVEGFアナログ
b.6.ヒト化されているか又はされていない、抗VEGF抗体、それらのFab、scFVフラグメント
b.7.免疫増強キャリアタンパク質に結合されているか又は結合されていない、VEGFレセプター、又はそれらの変異改変体、又はVEGFレセプターからの誘導ペプチド
b.8.ヒト化されているか又はされていない、抗VEGFレセプター抗体、それらのFab、scFVフラグメント、
b.9.免疫増強キャリアタンパク質に結合されているか又は結合されていない、天然若しくは組換えのTGF、又はその変異改変体若しくは誘導ペプチド、又はTGF模倣ペプチド、又はTGFアナログ
b.10.ヒト化されているか又はされていない、抗TGF抗体、それらのFab、scFVフラグメント
b.11.TGFレセプター(TGF−R)、又はその変異改変体若しくは誘導ペプチド。
【0025】
好ましい製剤において、A又はBのプール中の分子を含むこの薬学的組合せは、結合体化(コンジュゲーション)又はキメラ分子の形成によって免疫増強キャリアタンパク質に結合される。さらに特定すると、A分子の中で、GnRHアナログペプチドが配列pGlu−His−Trp−Ser−Tyr−Pro−Leu−Arg−Pro−Glyを有する。
【0026】
選択された免疫増強キャリアタンパク質の別の発明の実現は、Neisseria meningitides P1及びP64外膜タンパク質又は破傷風トキソイド(TT)Tヘルパーエピトープの1つであり得る。
【0027】
同様に、本発明は、結合体化されたタンパク質又はキメラタンパク質が以下の改変体の1つである薬学的組合せを言う:
(b)キャリアタンパク質及びEGFに結合したGnRH
(c)キャリアタンパク質及びVEGFに結合したGnRH
(d)キャリアタンパク質及びTGFに結合したGnRH
(e)キャリアタンパク質、EGF、及びTGFに結合したGnRH
(f)キャリアタンパク質、VEGF、及びEGFに結合したGnRH。
【0028】
本発明は、組み合わせた免疫応答を生成する方法を提供し、この方法は、同時に、別々に、又は逐次的に適用される、本発明において規定される治療的組合せを用いる処置を含む。
【0029】
以下の手順を用いて、本発明をさらに詳細に説明する。
【0030】
組合せ調製物の1つの成分として破傷風トキソイドTヘルパーエピトープ(D3−1)に結合された変異型GnRHを含む免疫原性調製物の獲得
GnRHに対する抗体応答を満たすために、キャリアタンパク質(哺乳動物免疫去勢ワクチン、欧州特許第0959079号)と結合体化されたGnRHアナログペプチドを免疫化のために使用する。GnRHアナログペプチド(pGlu−His−Trp−Ser−Tyr−Pro−Leu−Arg−Pro−Gly)及びキャリアタンパク質(破傷風トキソイドTヘルパーエピトープ)を、2つのグリシン残基をセパレーターとして使用して、固相方法及びBoc/Bzlストラテジーによって、「4−メチル−ベンズヒドリルアミン」(MBH A−0.75 mmol/g、BACHEM,Swiss)を使用して化学的に合成した。
【0031】
GnRHに対する体液性応答は、天然のGnRH又はキャリアタンパク質に結合されたそのアナログのいずれかを用いる能動免疫を通して得られ得る。さらに、GnRHアナログ、アゴニスト、又はアンタゴニストは、腫瘤を減少させる際に相乗効果を有する組合せ調製物においてこのようにして使用され得る。なぜなら、これらは、これらのレセプターが有する細胞中のGタンパク質を通してのシグナル伝達を遮断又は損なうからである。抗GnRH抗体はまた、受動的免疫応答を生成するために組合せ成分として使用され得る。下垂体性ゴナドトロピン黄体形成ホルモン(LH)及び卵胞刺激ホルモン(FSH)は同様に、自己免疫応答を産生する増殖因子と組み合わされた場合に、特定の種類の腫瘍においてある程度の相乗効果を有し得る。
【0032】
組合せ調製物の1つの成分として、キャリアタンパク質に結合された組換えヒト上記増殖因子(hrEGF)を含む免疫原性調製物の獲得
PBS/MgCl 10mM中の組換えヒト上皮増殖因子(hrEGF)の溶液(National Madicament Register Office,Cuba,HEBERMIN,No.1266)を同じ溶媒中のキャリアタンパク質溶液(組換えP64、Neisseria meningitides外膜)と混合し、タンパク質1モルあたり1:5モルのhrEGFの比率で、後で、0.05%のグルタルアルデヒドを、0.05から0.1%までの最終濃度で加えた。この混合物を1時間から3時間室温でインキュベートし、PBS/MgCl 10mM中で、少なくとも3回透析溶液を交換して透析した(悪性疾患の治療における抗腫瘍活性を有する自系上皮増殖因子又はそのフラグメント若しくは誘導体を含むワクチン組成物、及びその使用、米国特許第5894018号)。
【0033】
EGFに対する体液性応答はまた、免疫増強キャリアタンパク質に結合された、EGF又はそのレセプターのペプチド免疫を介して受動的に、又は抗EGF抗体若しくは抗EGFレセプターの直接的投与を用いて達成され得る。
【0034】
EGFは、トランスフォーミング増殖因子、TGFと、その配列が約30%共通している。これらは、膜レセプターの同じ結合部位について競合する。さらに、異なる型のヒト腫瘍におけるαTGF/EGFレセプター複合体が大量にあることが報告された。それ故に、TGFに対する体液性応答は、発癌において重要であり、これがEGFについて記載される相乗効果において等しく重要であることが明らかである。
【0035】
組合せ調製物の1つの成分としてキャリアタンパク質に結合されたヒト血管内皮増殖因子(hvVEGF)を含む免疫原性調製物の獲得
VEGFに対する体液性応答は、キャリアタンパク質(KLH、キーホールリンペットヘモシアニン)に結合体化されたVEGFペプチド(hVEGF−KLH)を使用する免疫によって達成される。KLHへのHVEGF121アイソフォーム結合体化をカルボジイミドカップリングを用いて作製した。
【0036】
VEGFに対する体液性応答はまた、免疫増強キャリアタンパク質に結合された、VEGF又はそのレセプターを介する免疫を通して受動的に、又は抗VEGFレセプターの直接的投与によって達成され得る。
【0037】
GnRH及びhrEGFの組合せ免疫原性調製物の獲得
この組合せ免疫原性調製物は、750μgのD3−1及び250μgのhrEGF−P64を0.5mlの最終容量で混合することによって達成した。
【0038】
GnRH及びhVEGFの組合せ免疫原性調製物の獲得
この組合せ免疫原性調製物は、750μgのD3−1及び100μgのhVEGF−KLHを0.5mlの最終容量で混合することによって達成した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
本発明を、以下の実施例を用いて例証する。
【0040】
1.コペンハーゲンラットにおける腫瘍細胞系R3327−Gの移植
腫瘍細胞系Dunning R3327−Gを9から12週齢のコペンハーゲンラット(各約100g体重)に移植し、これを、移植培地(RPMI 1640、無血清、0.5ml)中、動物あたり2×10個の細胞密度で、側腹部の弛緩した領域上で、異なる処置に供した。動物中で100パーセントの接着効率を90日後に達成した。
【0041】
2.異なる処置下で腫瘍系Dunning R3327−Gを移植したラットにおける抗腫瘍活性の判断基準としての生存時間の評価
以前に記載したように移植されたコペンハーゲンラットを使用して、1群あたり動物10匹ずつの8つの群を作り、実験を形成した。
【0042】
実験群は以下の通りである:
1.プラセボ動物(油性アジュバント中でPBSを用いて免疫)
2.外科的に去勢した動物
3.DES(ジエチルスチルベストロール)で処置した動物
4.ペプチドD3−1(GnRHm1−TT)で免疫した動物
5.hrEGF−P64で免疫した動物
6.hVEGF−KHLで免疫した動物
7.D3−1+hrEGF−P64の組合せ製剤で免疫した動物
8.D3−1+hVEGF−KLHの組合せ製剤で免疫した動物。
【0043】
処置のために使用した免疫スキームは7回の投与(移植前の3回の投与及び移植後の4回の投与)を含み、2週間毎に以下を投与した:皮下で、脊椎のいずれかの側の4つの部位への、750μgのD3−1、250μgのhrEGF−P64、100μgのhVEGF−KLH、並びに、油性アジュバント(完全フロイントアジュバントを初回免疫において使用し、不完全フロイントアジュバントを追加の刺激において使用した)中での0.5ml容量でのD3−1+hrEGF−P64の組合せ及びD3−1+hVEGF−KLHの組合せ。組合せ処置では、個別の処置に使用したものと同じ抗原投量を維持した。
【0044】
DES処置は1ml/kg/日の割合で1週間に3回、実験が続く限り断続的に行い、細胞を接種した後で開始した。
【0045】
免疫を腫瘍移植手順の30から45日前に開始し、7回の免疫が完了するまで続けた。従って、抗体力価として表されるELISAアッセイにおける体液性応答は、細胞移植の前には各抗原についてカットオフ値より上であった。
【0046】
治療効果の評価は、実験期間の間(13ヶ月)1週間に1回行った。効果を各実験群における動物の生存時間として評価した、データを図1に示す。
【0047】
3.異なる処置下で腫瘍細胞系Dunning R3327−Gを移植したラットにおける抗腫瘍活性の判断基準としての腫瘍減少の評価
上記のようにコペンハーゲンラットを使用して、1群あたり動物10匹の8つの群を作り、実験を形成した。
【0048】
実験群は以下の通りである:
1.プラセボ動物(油性アジュバント中でPBSを用いて免疫)
2.外科的に去勢した動物
3.DES(ジエチルスチルベストロール)で処置した動物
4.ペプチドD3−1(GnRHm1−TT)で免疫した動物
5.hrEGF−P64で免疫した動物
6.hVEGF−KHLで免疫した動物
7.D3−1+hrEGF−P64の組合せ製剤で免疫した動物
8.D3−1+hVEGF−KLHの組合せ製剤で免疫した動物。
【0049】
以前と同様に、処置のために使用した免疫スキームは7回の投与(移植前の3回の投与及び移植後の4回の投与)を含み、2週間毎に以下を投与した:皮下で、脊椎のいずれかの側の4つの部位への、750μgのD3−1、250μgのhrEGF−P64、100μgのhVEGF−KLH、並びに、油性アジュバント(初回免疫における完全フロイントアジュバント、及びさらなる刺激における不完全フロイントアジュバント)中での0.5ml容量でのそれらの組合せ。
【0050】
DES処置は1ml/kg/日の割合で1週間に3回、実験が続く限り断続的に行い、細胞を接種した後で開始した。
【0051】
実験の評価を屠殺後(腫瘍系移植3ヶ月後)に行った。各処置の効果を評価するために、腫瘍を乾燥し、実験用天秤で秤量した。処置効果(E処置)を、1マイナス、処置動物における平均腫瘍重量(P処置)とプラセボ動物におけるの腫瘍平均重量(Pプラセボ)の比と見なした:
(E処置)=1−(P処置/Pプラセボ)。 (1)
【0052】
二重組合せ製剤の場合における予測された効果(E理論上)は、いずれの効果も相互に除外し合わない場合、以下に従って計算され得る(Caridad W.,Guerra Bustillo,Ernesto Menendez Acuna,Rolando Barrera Morera,Esteban Egana Morales.「Estadistica」、Editorial Pueblo y Educacion,1989):
(E理論上)=ET1+ET2−(ET1×ET2)。 (2)
ここでET1は処置1効果であり、ET2は処置2効果である。
【0053】
表1に示されるように、組合せ(組み合わせた調製物)について達成された実験効果は予測された理論的効果よりも高く、従って、腫瘍サイズを減少させる際にこれらの組合せの相乗効果が得られる。
【0054】
表1 屠殺の時点(腫瘍系移植3ヶ月後)での腫瘍細胞系Dunning R3327−Gを移植したコペンハーゲンラットに対する異なる処置の効果
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】異なる処置に供した、腫瘍系Dunning R3327−Gを移植したコペンハーゲンラットの生存時間評価を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同時投与、個別投与、又は逐次的投与を通しての新生物形成の治療のための薬学的組合せであって、化合物A及び化合物Bを含み、ここで、前記化合物A及び化合物Bは、以下からなる分子の群から選択される薬学的組合せ:
A:
a.1.免疫増強キャリアタンパク質に結合されているか又は結合されていない、GnRH若しくはそのアナログ、又は抗GnRH抗体、又はGnRHレセプター(GnRH−R)、又はその変異改変体、又は誘導ペプチド、又は抗GnRH−R抗体
a.2.免疫増強キャリアタンパク質に結合されているか又は結合されていない、天然若しくは組換えゴナドトロピン、又はそれらのアナログ、又はそれらの変異改変体、ヒト化されているか又はされていない、下垂体性抗ゴナドトロピン抗体、それらのFag、scFVフラグメント
a.3.免疫増強キャリアタンパク質に結合されているか又は結合されていない、下垂体性ゴナドトロピンレセプター、又はそれらの変異改変体、若しくは誘導ペプチド
a.4.ヒト化されているか又はされていない、下垂体性抗ゴナドトロピンレセプター抗体、それらのFab、scFVフラグメント
B:
b.1.免疫増強キャリアタンパク質に結合されているか又は結合されていない、天然若しくは組換えEGF又はその変異改変体、若しくは誘導ペプチド、又はEGF模倣ペプチド、又はEGFアナログ
b.2.ヒト化されているか又はされていない、抗EGF抗体、それらのFab、scFVフラグメント
b.3.免疫増強キャリアタンパク質に結合されているか又は結合されていない、EGFレセプター(EGF−R)、又はその変異改変体、若しくは誘導ペプチド
b.4.ヒト化されているか又はされていない、抗EGFレセプター抗体、それらのFab、scFVフラグメント
b.5.免疫増強キャリアタンパク質に結合されているか又は結合されていない、天然若しくは組換えVEGFまたはその変異改変体、若しくは誘導ペプチド、又はVEGF模倣ペプチド、又はVEGFアナログ
b.6.ヒト化されているか又はされていない、抗VEGF抗体、それらのFab、scFVフラグメント
b.7.免疫増強キャリアタンパク質に結合されているか又は結合されていない、VEGFレセプター、又は変異改変体、又はVEGFレセプターからの誘導ペプチド
b.8.ヒト化されているか又はされていない、抗VEGFレセプター抗体、それらのFab、scFVフラグメント、
b.9.免疫増強キャリアタンパク質に結合されているか又は結合されていない、天然若しくは組換えTGF又はその変異改変体、若しくは誘導ペプチド、又はTGF模倣ペプチド、又はTGFアナログ
b.10.ヒト化されているか又はされていない、抗TGFレセプター抗体、それらのFab、scFVフラグメント、
b.11.免疫増強キャリアタンパク質に結合されているか又は結合されていない、TGFレセプター(TGF−R)又はその変異改変体、若しくは誘導ペプチド。
【請求項2】
A群及びB群の分子が、結合体化又はキメラタンパク質の形成によって免疫増強キャリアタンパク質に結合される、請求項1に記載の組合せ。
【請求項3】
GnRHアナログペプチドが配列pGlu−His−Trp−Ser−Tyr−Pro−Leu−Arg−Pro−Glyを有し、免疫増強キャリアタンパク質に結合されている、請求項1又は2に記載の組合せ。
【請求項4】
免疫増強キャリアタンパク質がナイセリアメニンギチデス(Neisseria meningitides)P1及びP64外膜タンパク質から選択される、請求項1又は2に記載の組合せ。
【請求項5】
免疫増強キャリアタンパク質が破傷風トキソイド(TT)Tヘルパーエピトープである、請求項1又は2に記載の組合せ。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の組合せであって、結合体化されたキメラタンパク質が以下の改変体:
a)キャリアタンパク質及びEGFに結合したGnRH
b)キャリアタンパク質及びVEGFに結合したGnRH
c)キャリアタンパク質及びTGFに結合したGnRH
d)キャリアタンパク質、EGF、及びTGFに結合したGnRH
e)キャリアタンパク質、VEGF、及びEGFに結合したGnRH
の1つである、組合せ。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか一項に規定される治療用組合せの1つを用いる治療を含む、複合型免疫応答の生成のための方法。
【請求項8】
組合せが同時に、別々に、又は逐次的に適用され得る、請求項7に記載の方法。


【図1】
image rotate


【公表番号】特表2006−514036(P2006−514036A)
【公表日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−562478(P2004−562478)
【出願日】平成15年12月22日(2003.12.22)
【国際出願番号】PCT/CU2003/000019
【国際公開番号】WO2004/058297
【国際公開日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(304012895)セントロ デ インジエニエリア ジエネテイカ イ バイオテクノロジア (46)
【Fターム(参考)】