説明

新聞用紙

【課題】塗工層を有しながらも白色ムラが少なく、不透明度が高いうえ、紙粉によるブランケット汚れ、剣先詰まり及び見当ズレがなく、印刷適性にも優れた新聞用紙を提供すること。
【解決手段】原紙の少なくとも片面に、顔料と接着剤とを主成分とし、染料で着色された塗工剤で塗工層が形成されており、顔料として、古紙パルプを製造する古紙処理工程の脱墨工程で排出される脱墨フロスを主原料とし、脱水工程、乾燥工程、燃焼工程及び粉砕工程を経て、燃焼工程において凝集体とした再生粒子凝集体が少なくとも配合され、JIS P 8148に準拠して測定した原紙の白色度が52〜60%で、JIS P 8150に規定されたCIELab色空間によって算出した用紙表面のL*、a*、b*が、L*=75.0〜80.0、a*=−3.50〜0.50、b*=3.50〜7.50である新聞用紙。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新聞用紙に関する。さらに詳しくは、軽量であるとともに、塗工層を有しながらも白色ムラが少なく、不透明度が高いうえ、紙粉によるブランケット汚れ、剣先詰まり及び見当ズレがなく、印刷適性にも優れ、例えば高速オフセットカラー印刷等のオフセット印刷に好適に使用し得る新聞用紙に関する。
【背景技術】
【0002】
新聞用紙としては、通常機械パルプや古紙パルプを主体とする原紙が使用されているが、最近では用紙の軽量化(低坪量化)も求められており、このような新聞用紙の軽量化に伴い、その用紙に対する印刷後の不透明性が併せて要求されるようになってきている。
【0003】
そこで、例えば特許文献1では、有機物及び白色無機粒子の混合物を炭化処理した炭化物にさらに白化処理を施した、所定の比表面積及び白色度を有する再生顔料と接着剤とを主成分とする塗工層を、原紙の表面に設け、用紙の印刷不透明度の向上を図った印刷用塗工紙が提案されている。
【0004】
しかしながら、前記印刷用塗工紙では、確かに印刷不透明度の向上を図ることが可能なものの、新聞用紙のように低い白色度の色調を有する用紙の場合、前記のごとき塗工層では、その表面の色調に白色ムラが生じて見栄えが悪いだけでなく、例えば特にサテライト型のオフセットカラー印刷機に適用した際には、オフセット印刷時の多頻度の湿し水によって、塗工層中にこの湿し水が過度に含浸し、紙質強度が低下するといった問題が生じる。
【0005】
また、白色ムラの小さい新聞用紙を得るため、原紙の色調が隠蔽されるように、最表面に設ける塗工層の厚みを大きくする(塗工量を増加させる)方法も考えられるが、塗工層の厚みの増大は、相対的に新聞用紙の原紙の坪量の低下に繋がり、紙力の低下や高速輪転印刷における強度不足による断紙を招くとともに、吸収乾燥型の新聞用オフセットインクによる印刷を行った場合、インクが塗工層面に滞留し、印刷汚れや裏移りの問題が生じてしまう。
【特許文献1】特開2003−119695号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記背景技術に鑑みてなされたものであり、塗工層を有しながらも白色ムラが少なく、不透明度が高いうえ、紙粉によるブランケット汚れ、剣先詰まり及び見当ズレがなく、印刷適性にも優れた新聞用紙を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
原紙の少なくとも片面に、顔料と接着剤とを主成分とし、染料で着色された塗工剤により塗工層が形成された新聞用紙であって、
前記顔料として、古紙パルプを製造する古紙処理工程の脱墨工程で排出される脱墨フロスを主原料とし、脱水工程、乾燥工程、燃焼工程及び粉砕工程を経て、前記燃焼工程において凝集体とした再生粒子凝集体が少なくとも配合され、
JIS P 8148に準拠して測定した原紙の白色度が52〜60%であり、
JIS P 8150に規定されたCIELab色空間によって算出した用紙表面のL*、a*、b*
*=75.0〜80.0、
*=−3.50〜0.50、
*=3.50〜7.50
であることを特徴とする、新聞用紙
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、軽量であるとともに、塗工層を有しながらも白色ムラが少なく、不透明度が高いうえ、紙粉によるブランケット汚れ、剣先詰まり及び見当ズレがなく、印刷適性にも優れ、例えば高速オフセットカラー印刷等のオフセット印刷に好適に使用し得る新聞用紙が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(実施の形態)
本発明の新聞用紙は、原紙の少なくとも片面に、顔料と接着剤とを主成分とし、染料で着色された塗工剤で塗工層が形成され、顔料として特定の再生粒子凝集体が少なくとも配合されており、原紙の白色度が所定範囲内に調整され、かつ、JIS P 8150に規定されたCIELab色空間によって算出した用紙表面のL*、a*、b*
*=75.0〜80.0、
*=−3.50〜0.50、
*=3.50〜7.50
といった所定範囲内の値であることを特徴とする。
【0010】
ここで、本発明において、JIS P 8150「紙及び板紙−色(C/2°)の測定方法−拡散照明法」に規定されたCIELab色空間によって算出した用紙表面のL*、a*、b*とは、CIE 1976 L*、a*、b*色空間において規定されるものである。このCIE 1976 L*、a*、b*色空間とは、
*=116(Y/Yn)1/3−16
*=500[(X/Xn)1/3−(Y/Yn)1/3
*=200[(Y/Yn)1/3−(Z/Zn)1/3
で定める量L***を直交座標系にもつ色空間である。ただし、X/Xn、Y/Yn、Z/Znは、0.008856より大であり、X、Y、Zは物体の三刺激値、Xn、Yn、Znは物体色を照明する光源の三刺激値で、Yn=100に基準化されている。
【0011】
まず本発明に用いられる原紙について説明する。かかる原紙を構成するパルプの種類には特に限定がなく、通常の新聞用紙に用いられるパルプを適宜使用することができる。
【0012】
パルプとしては、例えばストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、サーモグランドパルプ(TGP)、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、リファイナーメカニカルパルプ(RMP)等の機械パルプ;広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、広葉樹半晒クラフトパルプ(LSBKP)、針葉樹半晒クラフトパルプ(NSBKP)、広葉樹亜硫酸パルプ、針葉樹亜硫酸パルプ等の化学パルプ;茶古紙、クラフト封筒古紙、雑誌古紙、新聞古紙、チラシ古紙、オフィス古紙、上白古紙、ケント古紙、模造古紙、更紙古紙等から製造される離解古紙パルプ、離解・脱墨古紙パルプ、離解・脱墨・漂白古紙パルプ等の古紙パルプや、これらを漂白したパルプ等があげられ、これらの中から1種又は2種以上を適宜選択し、その割合を調整して用いることができる。
【0013】
なお、前記古紙パルプのなかでも、新聞古紙パルプは、確立されたルートで回収された新聞用紙を再利用するものであり、原紙を構成する原料パルプとして好適に用いることができるが、該新聞古紙パルプは、一般に、再三に渡る回収・再利用により劣化や短繊維化が進んでおり、新聞用紙の強度や不透明度の低下を招く恐れがある。しかしながら、本発明の新聞用紙は、原紙の両面に特定の塗工層が設けられているので、新聞古紙パルプを適宜使用した場合であっても、不透明度の向上と紙力維持とを同時に実現することができる。
【0014】
本発明に用いる原紙は、例えば前記のごときパルプで構成されるが、かかるパルプのほかにも、例えば通常の新聞用紙に用いられる抄紙用薬剤を配合することができる。
【0015】
前記抄紙用薬剤としては、例えばカオリン、炭酸カルシウム、タルク、二酸化チタン、ホワイトカーボン、尿素ホルムアルデヒド樹脂等の填料;水溶性重合体、ロジンエマルジョン等の内添サイズ剤;澱粉類、植物ガム、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリルアミド等の紙力増強剤;歩留まり向上剤;濾水性向上剤等があげられ、これらの中から1種又は2種以上を適宜選択し、その配合量を調整して用いることができる。
【0016】
本発明に用いる原紙の製造方法には特に限定がなく、例えば前記パルプに抄紙用剤を添加した後、pH値等の条件を適宜調整し、長網抄紙機やギャップフォーマー抄紙機等の抄紙機を用いて通常の工程にて抄紙する方法を採用することができる。
【0017】
原紙の白色度は、JIS P 8148:2001「紙、板紙及びパルプ−ISO白色度(拡散青色光反射率)の測定方法」に記載の方法に準拠して測定して52%以上、好ましくは53%以上、かつ60%以下、好ましくは58%以下である。本発明においては、このように原紙が、一般的な新聞用紙で必要とされる程度の白色度を有し、かつ、該原紙の白色度と、原紙の表面に形成された塗工層表面、すなわち新聞用紙表面の白色度とが平準化されたものである。
【0018】
原紙の坪量に特に限定はないが、目的とする新聞用紙のJIS P 8124「紙及び板紙−坪量測定方法」に準拠して測定した坪量が35〜50g/m2であることを考慮して、原紙の坪量は、通常30〜47g/m2程度となるように調整することが好ましい。
【0019】
次に、原紙の両面に形成される塗工層について説明する。該塗工層は、顔料と接着剤とを主成分とし、染料にて着色された塗工剤にて形成されるものであり、顔料として、特定の再生粒子凝集体が少なくとも配合される。
【0020】
新聞用紙は、通常、その流通・搬送時の作業性の点から、積み上げ時に荷崩れしないようにスベリ性を低下させる(抗スベリ性を付与する)必要があると共に、該抗スベリ性に反して、その印刷・折加工時には適度なスベリ性を必要とする。例えば従来の、ホワイトカーボンを内添した用紙や、ホワイトカーボンを含む塗工層を表面に設けた用紙は、ホワイトカーボン自体が滑り止め剤として使用されていることからも明らかなように、スベリ性を低下させ過ぎるため、輪転機での折加工時に、いわゆる剣先詰まりという折不良を起こし易い。
【0021】
ところが、本発明に用いる再生粒子凝集体は、例えば後述するように、好適にはその粒子構成成分にカルシウム、ケイ素及びアルミニウムの3成分を含有した凝集体であり、塗工剤として含有される染料、得られる新聞用紙に適度なスベリ性を付与し、流通・搬送時に要求される抗スベリ性と印刷・折加工時に要求されるスベリ性といった相反する効果を適切に発現することができる。このように、塗工剤の主成分である顔料として、このような再生粒子凝集体が少なくとも配合されることが、本発明の大きな特徴の1つである。
【0022】
前記再生粒子凝集体は、古紙パルプを製造する古紙処理工程の脱墨工程で排出される脱墨フロスを主原料とし、脱水工程、乾燥工程、燃焼工程及び粉砕工程を経て、前記燃焼工程において凝集体としたものである。
【0023】
このような再生粒子凝集体は、脱墨フロスを燃焼して得られる循環使用が可能なものであるので、廃棄物としての埋め立て等の処分が不要であり、環境負荷の低減と、省資源化に大きく貢献するものである。また、主原料が古紙処理工程の脱墨工程で生じる脱墨フロスであるので、安価であり、新たな天然無機鉱物の使用量を抑えることができ、製造コストが充分に削減されるという利点がある。さらにこのような再生粒子凝集体を用いることで、抄紙時の灰分歩留りが高く、例えば一般的な炭酸カルシウムとは異なり、ワイヤー摩耗等の抄紙設備の摩耗劣化を来たすことがなく、さらに樹脂成分が微細な状態下で再生粒子凝集体に吸着することで、樹脂分の凝集によるピッチトラブルを防ぎ、抄紙設備汚れを殆ど起こさず、低コストかつ高い操業性で新聞用紙を製造することができる。
【0024】
なお、前記再生粒子凝集体を製造する際には、後述するように、脱墨フロスの造粒工程、各工程間に設けられる分級工程等を経てもよい。また再生粒子凝集体の製造設備には、各種センサーを設け、被処理物や設備の状態、処理速度のコントロール等を行うことが望ましい。以下の具体的説明で示す移送流路、給送流路、配送流路、循環流路、返送流路等の各種流路は、例えば管、ダクト等で構成することができる。
【0025】
前記再生粒子凝集体の主原料は、例えば古紙から脱墨古紙パルプを製造する脱墨工程のフローテーション工程で発生する脱墨フロスである。特に古紙のリサイクル工程で排出される脱墨フロスが、製紙原料由来の材料からなり、鉄分やその他重金属等の不純物の混入が少ないので、好適である。そして、古紙再生工程では、あらかじめ古紙自体の選別を行うので、脱墨フロスは、その無機物の組成が経時的に安定したものであり、得られる再生粒子凝集体の組成も安定したものとなる。これら脱墨フロスには、無機物として例えば炭酸カルシウム、カオリン、タルク、二酸化チタン、シリカ、アルミナ等が含有される。なお、再生粒子凝集体の全原料における脱墨フロスの割合は、固形分として50質量%以上、さらには60質量%以上とすることが好ましい。
【0026】
通常脱墨フロスは、例えばスクリーン等の脱水手段によって水分率が90〜97質量%程度となるように脱水し、さらにスクリュープレス等の脱水手段にて、水分率が50質量%以下、さらには25〜45質量%、特に30〜40質量%となるまで脱水することが好ましい。水分率が50質量%を超えると、次の乾燥工程での乾燥エネルギーコストが大きくなったり、乾燥後の粒度にバラツキが生じる原因となり、結果として均一な燃焼が困難になる恐れがあるほか、第1燃焼炉における処理温度の低下を招き、加熱時のエネルギーロスが多大になるとともに、原料の燃焼ムラが生じ易くなり、均一な燃焼を進め難くなる恐れがある。さらに、排ガス中の水分が多くなり、ダイオキシン対策における再燃焼処理効率の低下と、排ガス処理設備の負荷が大きくなる場合がある。逆に水分率が25質量%未満となるまで脱水すると、脱水設備が大型化するとともに、脱水エネルギーコストが大きくなる恐れがある。
【0027】
得られた脱水脱墨フロス(脱水物)は、あらかじめ乾燥される。乾燥手段としては、熱風乾燥等の公知の手段が使用可能であるが、脱墨フロスを乾燥させながらほぐすことが可能であり、さらに比重分級も可能な熱風乾燥手段を最も好適に使用することができる。
【0028】
好適に使用することが可能な熱風乾燥手段を具体的に例示すると、脱水物を、インペラ等のほぐし設備にて、4000μm以下、さらには300〜3000μm、特に500〜2000μmの体積平均粒子径となるようにほぐしながら、インペラ設備下方に設けた熱風吹出し手段にて熱風を吹き込み、熱風乾燥を行う。ほぐされ、乾燥された脱墨フロスのうち、比重の軽い脱墨フロスを、熱風乾燥手段の上部に設けた取出し口から排出させることで、乾燥と分級とを行うことができる。なお、乾燥脱墨フロスの分級には、好適な手段として、サイクロンによる分級手段を採用することもできる。
【0029】
また乾燥・文級された脱墨フロス(乾燥物)の粒揃えは、粒子径の体積分布において5000μm以下の粒子が70質量%以上、さらには72質量%以上、特に80質量%以上となるように調整することが特に好ましい。このように、乾燥物を、粒子径が5000μm以下の粒子が70質量%以上となるように製造すると、得られる再生粒子凝集体の品質がより均一になり、実用化の可能性をさらに高めることができる。
【0030】
前記熱風乾燥手段を採用する際の熱風の温度は、乾燥工程に供する脱水物の水分率や、目的とする乾燥物の水分率を考慮して適宜調整することが好ましいが、例えば100〜200℃程度とすることが好ましい。
【0031】
かくして乾燥工程を経た乾燥物の水分率は、2〜20質量%程度、さらには5〜15質量%程度に調整されていることが好ましい。乾燥物の水分率が2質量%よりも低いと、次の燃焼工程で過焼する恐れがあり、逆に20質量%よりも高いと、乾燥不足により、燃焼を確実に行うことが困難となる恐れがある。
【0032】
次に、乾燥・分級された脱墨フロスは、燃焼工程に送られる。燃焼は、例えばロータリーキルン、流動床炉、浮遊炉、ストーカ炉等、通常用いられている焼却炉を用いて行うことができ、中でも、熱風炉や電気炉による間接加熱による方法が、燃焼温度コントロール、燃焼度合いの微調整が容易であるという点から特に好適である。例えばロータリーキルンを用いた燃焼においては、直接加熱による燃焼や間接加熱による燃焼を、単独で、又は組み合わせて行うことができる。例えば、第1燃焼炉による一次燃焼を直接加熱キルン炉、特に内熱キルン炉で、第2燃焼炉による二次燃焼を間接加熱キルン炉、特に燃焼温度の調整が容易に可能な外熱キルン炉で、各々行う方法を採用することができる。
【0033】
燃焼工程は、一段階燃焼とすることもできるが、少なくとも二段階燃焼とすることが好ましく、連続する設備により少なくとも二段階燃焼とすることがより好ましい。燃焼工程が少なくとも二段階であると、有機物の燃焼による燃焼において燃焼ムラが生じにくく、満遍なく燃焼を進めることが可能になる。特に燃焼工程における物理的手段を相違させることで、偏った燃焼を避け、燃焼速度の向上を図ることが可能である。
【0034】
燃焼温度は、脱墨フロス中のカーボンブラック等のインク顔料や、繊維、ポリマー等の有機系化合物を燃焼し、その粒子中に、カルシウム、ケイ素及びアルミニウムの3成分が含有されるように、かかる燃焼工程において凝集された再生粒子凝集体が形成されるのに充分かつ安定した温度であればよく、特に限定されるものではない。
【0035】
脱墨フロス中にシリカが含まれる場合には、シリカがカルシウム及びアルミニウムと反応し、硬度の高い珪酸アルミニウムカルシウム等が生成する恐れがある。このような硬度の高い物質の生成を防止するために、例えば、500℃以下の温度で燃焼することが検討されるが、このような条件では、有機化合物を完全燃焼させることが難しく、顔料として有用なレベルの白色度を有する再生粒子凝集体を得ることが困難となる恐れがある。
【0036】
一方、燃焼温度が1000℃を超えると、脱墨フロス中に含まれる炭酸カルシウム、カオリン、タルク、二酸化チタン、シリカ、アルミナ等の無機物の分解及び焼結が進み、高硬度化するため、得られた再生粒子凝集体を所望の粒子径にまで粉砕するのに多大のエネルギーや時間を要する恐れがある。
【0037】
このように、燃焼温度は、製造される再生粒子凝集体の白色度、硬度に大きな影響力を有するので、燃焼条件としては、一次燃焼が500〜650℃で、二次燃焼が550〜750℃で行われることが好ましく、一次燃焼が530〜630℃で、二次燃焼が600〜730℃で行われることがより好ましい。一次燃焼温度が500℃未満である場合には、未燃物の残量が多く、無機粒子の凝集体形成が不充分であり、例えば得られる再生粒子凝集体の白色度が充分に向上しない恐れがある。逆に一次燃焼温度が650℃を超える場合には、脱墨フロスに含まれる炭酸カルシウムの多くが熱分解し、再資源としての使用が難しい、酸化カルシウム、珪酸カルシウム等の高pH化要因物質が多く生じる恐れがあり、また得られる再生粒子凝集体に熱溶融が生じ、極めて硬くワイヤー摩耗性が低下する恐れがある。一方、二次燃焼温度が550℃未満である場合には、有機物の燃焼が不充分になったり、燃焼ムラが生じ、得られる再生粒子凝集体の白色度が向上しない恐れがある。逆に二次燃焼温度が750℃を超える場合には、燃焼されて凝集した再生粒子凝集体の表面が高温に晒され、溶融が生じて極めて硬い溶融物を形成する恐れや、無機粒子の表面の高温化による燃焼のため、酸素が無機粒子芯部にまで行き届き難く、燃焼ムラや未燃焼部位の発生が懸念されることがある。また、二次燃焼温度を一次燃焼温度よりも50〜120℃高くすることで、再生粒子凝集体の表面の過焼を防止しながら、未燃物を燃焼させることができる。
【0038】
なお、勿論、二次燃焼温度を一次燃焼温度と同温度とすることもできる。二次燃焼温度を一次燃焼温度と同温度とする場合は、例えば530〜730℃とすると、緩慢に燃焼が進行し、未燃物を減少させることができ、充分な白色度を有する再生粒子凝集体を得ることができる。なお、本発明において、一次燃焼温度と二次燃焼温度との温度差は、燃焼炉内上端部の温度を基準とする。
【0039】
燃焼工程は、この工程内に空気を送風する手段及びこの工程内から空気を排気する手段の少なくともいずれか一方によって、燃焼工程内酸素濃度が0.05%以上に、さらには0.1%以上に調節されることが好ましく、また20%以下に調節されることが好ましい。特に、この燃焼工程内酸素濃度は、第1燃焼炉内上端部で0.2〜20%に、さらに好ましくは1〜15%に、特に好ましくは5〜12%に調節されることが望ましく、第2燃焼炉のバーナー近傍で5〜20%に、さらに好ましくは10〜20%に、特に好ましくは15〜18%に調節されることが望ましい。第1燃焼炉内上端部での酸素濃度が0.2%未満であると、燃焼が進まず、ムラのある燃焼が進むだけでなく、燃焼に膨大な時間とエネルギーコストとが必要になる恐れがある。他方、第2燃焼炉のバーナー近傍での酸素濃度が20%を超えると、過焼しやすく、過焼ムラにより再生粒子凝集体が黄変化するととともに、再生粒子凝集体の溶融が多発して分解や酸化が進み、顔料としての活用が困難になる場合がある。また、本発明においては、燃焼工程に供給される、乾燥・分級された脱墨フロス(乾燥物)の水分率が、好ましくは2〜20質量%程度、より好ましくは5〜15質量%程度に調整されているため、燃焼工程内酸素濃度を0.05〜20%とすると、極めて効率よく燃焼を進行させることができ、燃焼を90分間以内で行うことが可能になり、極めて高い生産性を得ることができる。例えば、乾燥物の水分率を10質量%とすることで、燃焼を約60分間で行うことができる。
【0040】
なお、燃焼工程内の酸素は、燃焼させるためのバーナー等によって消費され、燃焼工程内酸素濃度が低下するが、空気等の酸素含有ガスを送風し、あるいは排気することで、酸素濃度を維持、調節することが可能であり、さらに酸素含有ガスを送風し、あるいは排気することで、燃焼工程内の温度を細かく調節することが可能になり、再生粒子凝集体をムラなく万遍に燃焼することができる。
【0041】
燃焼工程における滞留時間には特に限定がなく、前記燃焼温度や燃焼工程内酸素濃度等の条件に応じて、充分に燃焼が行われるように調整すればよいが、例えば第1燃焼炉内での滞留時間が30〜90分間、さらには40〜80分間、特に50〜70分間となるように、また第2燃焼炉内での滞留時間が10〜60分間、さらには15〜45分間、特に20〜40分間となるように調整することが好ましい。
【0042】
第1燃焼炉での燃焼は、未燃率が5〜30質量%、さらには8〜25質量%、特に10〜20質量%となるように行うことが好ましい。一次燃焼後の未燃率が5質量%未満では、燃焼における粒子表面の過焼が生じ、表面が硬くなるとともに、内部の酸素不足が生じ、再生粒子凝集体の白色度が低下する恐れがある。他方、一次燃焼後の未燃率が30質量%を超えると、後の燃焼燃焼後においても未燃分が残ったり、未燃分の自燃による過燃焼により粒子が硬化したり、未燃分が残るのを防止するために粒子表面が過焼するまで燃焼燃焼してしまい、再生粒子凝集体表面が硬くなる恐れがある。
【0043】
なお、本発明において採用し得る、燃焼工程での好ましい条件等は先述のとおりであるが、さらにより好適な燃焼条件等について以下に説明する。
【0044】
例えば、製紙用スラッジを燃焼する場合、(1)特開2003−119695号公報には、乾燥物を炉内の酸素濃度が0.1体積%以下となる実質的に酸素が存在しない貧酸素状態で、具体的には間接加熱炉(外熱燃焼炉)によって乾燥及び炭化処理し、次に炭化物に含まれる有機物由来の炭素を酸化させて脱炭素する方法、具体的には間接加熱炉によって白化処理する方法が提案されている。また、該公報には、後者の白化処理において内熱ロータリーキルン炉を使用することも開示されている。
【0045】
他方、(2)特開2002−275785号公報には、炭化後に再燃焼のためにロータリーキルン炉を使用することも開示されている。
【0046】
さらに、(3)特許第3808852号公報には、原料スラッジとして脱墨スラッジを用い、これを乾燥させる乾燥工程と、乾燥させた脱墨スラッジをサイクロン型燃焼炉の炉上部から炉内に供給し、旋回下降させつつ燃焼させ、未燃分を含む一次燃焼物を得る一次燃焼工程と、該サイクロン型燃焼炉に連通し、その下端からの未燃分を含む一次燃焼物を受けて、機械的な攪拌により酸素との接触を促進させながら、一次燃焼工程の燃焼熱を利用して所定の白色度となるまで燃焼させる二次燃焼工程とを含む、脱墨スラッジからの白色顔料又は白色填料の製造方法が提案されている。
【0047】
また、(4)特開2004−176208号公報には、塗工紙製造工程の排水処理汚泥から填料を製造する際に、成形汚泥を1つのロータリーキルン炉内で乾燥、炭化、燃焼させる方法が提案されている。
【0048】
前記(1)、(2)及び(4)に記載の方法は、古紙パルプを製造する古紙処理設備の脱墨工程においてパルプ繊維から分離された脱墨フロスを主原料とするものではなく、製紙スラッジを主原料とするものであり、得られる再生粒子は、本発明に用いられる再生粒子凝集体とは異なるものと考えられる。
【0049】
一方、(3)に記載の方法によれば、本発明に用いられる再生粒子凝集体と略同様の再生粒子を得ることができるが、該方法では、サイクロン式流動燃焼炉を使用し、乾燥物を燃焼し、次いで二次燃焼を行っている。
【0050】
燃焼工程においてサイクロン式流動燃焼炉を使用する場合、それ自体の形式に由来するものと考えられるが、サイクロン式では、一般に数十〜数百ミクロンの原料と空気とを旋回流として供給口から供給し、空気の旋回作用により空気と効果的に混合さて原料を燃焼する。したがって、原料に含有される微粒子が排ガスとともに系外に排出されて製品歩留りが低下したり、主原料である脱墨フロスの燃焼時間(加熱時間)が短時間であるため未燃分が生じやすく、最終的に得られる燃焼物の品質、特に形状が一定でなく、燃焼物の白色度にもバラツキが生じる場合がある。
【0051】
そこで、第1燃焼炉と、該第1燃焼炉にて燃焼された脱墨フロスを再度燃焼する、後の第2燃焼炉とを有する、少なくとも2段階の燃焼工程に供し、前記第1燃焼炉において、例えば300℃以上、500℃未満という比較的低温で燃焼処理を行うことで、過剰燃焼が起こらず、より品質の安定した再生粒子凝集体を製造することができる。
【0052】
具体的には、脱水後の原料の乾燥及び燃焼が一連で行われ、内熱による第1燃焼炉における燃焼時間(滞留時間)が30分を超えて90分以下、より好適には40〜80分、最適には50〜70分であることが望ましい。また、本体が横置きで中心軸周りに回転する内熱(直接加熱)キルン炉により、前記脱水後の原料の乾燥及び燃焼(一次燃焼)を行い、次に、第1燃焼炉から得られる燃焼物を外熱による第2燃焼炉にて再度燃焼(二次燃焼)し、その燃焼時間(滞留時間)が60分以上、より好適には60〜240分、特に好適には90〜150分、最適には120〜150分であることが望ましい。さらに、本体が横置きで中心軸周りに回転する外熱(間接加熱)キルン炉、特に燃焼温度を容易に調整可能な外熱電気炉により、二次燃焼することがより好ましい。
【0053】
また、後に図面と共に説明する再生粒子凝集体の製造方法では、前記第1燃焼炉として内熱キルン炉を、第2燃焼炉として外熱キルン炉を例示しているが、これらのキルン炉としは公知の燃焼炉を使用することができる。また、キルン炉に限定されることなく、流動床炉、ストーカー炉、サイクロン炉、半乾留・負圧燃焼式炉等の公知の燃焼炉を用いることができる。なお本発明においては、先の一次燃焼を内熱による第1燃焼炉で行い、後の二次燃焼を外熱による第2燃焼炉で行う、少なくとも2段階の燃焼炉であれば、公知のいずれの燃焼炉も好適に使用することができる。さらに、この外熱による第2燃焼炉としては、重油等を熱源にした間接加熱方式の燃焼炉等を用いた公知の燃焼方法を採用することもできる。
【0054】
第1燃焼炉として好適に用いられる内熱キルン炉では、乾燥及び燃焼を1つの炉で行うことができ、供給口から排出口に至るまで、緩やかに安定的に乾燥及び燃焼が進行し、かつ燃焼物の微粉化が抑制される。また、第2燃焼炉として好適に用いられる外熱キルン炉で燃焼を行うと、その端部から所定の滞留時間をもって一次燃焼後の燃焼物を二次燃焼した後、他端部の排出口から排出することができ、さらに外熱により燃焼物に均一な熱が加わるので、均一に燃焼が行われ、燃焼にバラツキが生じない。さらに、キルン炉内壁の回転による摩擦によって燃焼物が緩やかに攪拌されるので、微粉化が起こり難い。その結果、最終的な燃焼物の品質及び形状がより安定したものとなる。
【0055】
例えば前記したように、第1燃焼炉において、原料中の微細繊維や塗工紙に多用される有機高分子化合物であるラテックス、印刷により付与されたインク成分等を効率よく燃焼させるために、水分率を40%未満に脱水乾燥させ、高温で燃焼させる方法を採用することができるが、第1燃焼炉において、例えば300℃以上、500℃未満という比較的低温で加温操作することにより、原料に含有される有機物が燃焼ガス化し、この燃焼ガスを燃焼(酸化)させることで、得られる再生粒子凝集体の品質安定性や白色度がさらに向上する。
【0056】
このように、燃焼工程における乾燥及び燃焼を、好適には内熱キルン炉及び外熱キルン炉にて、少なくとも2段階の燃焼炉にて行うことで、より均一で安定性に優れた再生粒子凝集体を得ることができる。
【0057】
好適な燃焼炉として用いられる内熱キルン炉又は外熱キルン炉は、内部耐火物を円周状でなく、六角形や八角形とすることで燃焼物を滑らせることなく持ち上げて攪拌することができるが、現実には、キルン炉として円筒形であり、燃焼物攪拌用のリフターを設けることが、原料の均一な燃焼と、品質の均一化を図ることができる点で最適である。これは、第1燃焼炉において、低温でじっくりと原料全体を燃焼することを意図することとも関係すると考えられる。
【0058】
さらに、より好適な再生粒子凝集体を得るための燃焼炉について以下に説明する。
【0059】
従来から慣用的に用いられてきた燃焼炉は、ストーカー炉(固定床)、流動床炉、サイクロン炉、キルン炉の4種に大別することができる。
【0060】
(ストーカー炉(固定床))
脱墨フロスの燃焼度合いの調整が困難であり、燃焼物が不均一になり易いうえ、灰分の多い脱墨フロスの燃焼では、火格子間のクリアランスから落塵を生じてしまう。火格子を通して燃焼物の下に空気を吹上げて燃焼させるため、炭酸カルシウム等が飛灰となり、排ガスとともに排ガス設備へ送られ、歩留が低下し易い。
【0061】
(流動床炉)
炉内の流動媒体に珪砂のような粒子状の流動媒体を使用するため、珪砂が再生粒子凝集体へ混入し、品質の低下を招いてしまう。また均一な攪拌が困難である他、硅砂を流動層混合して燃焼させた後、硅砂と燃焼物とを分離し、硅砂は燃焼炉へ戻して燃焼物のみを取出すが、燃焼物も硅砂と同程度の粒径が生じるため、分離することができない。さらに、硅砂と浮遊した状態で燃焼させているため、燃焼度合いの調整が困難であり、品質のばらつきが生じる。燃焼炉のストーカー(階段状)を、所定幅で燃焼物が通過しながら燃焼が進むため、灰の攪拌が不充分となり、幅方向で燃焼にバラツキが生じる。また、硬度の高い珪砂との摩擦、衝突により、燃焼物が微粉化され飛灰となって系外へ排出され、歩留りが低下してしまう。
【0062】
(サイクロン炉)
炉内を一瞬で通過するため、燃焼物中の固定炭素が充分に燃焼されず、再生粒子凝集体の白色度の低下に繋がる。さらに、風送により細かい粒子はサイクロンで分離されず、排ガスと一緒に排ガス処理工程に送られるため、歩留が低下してしまう。
【0063】
これらのことから、本発明においては、燃焼炉としてキルン炉を用いることが最も好適である。さらに前記のごとく、先の第1燃焼炉を内熱キルン炉とし、後の第2燃焼炉を外熱キルン炉とすることが、以下の点から好適である。
【0064】
外熱キルン炉は、キルン炉の外側に加熱設備を設けた構成であるため、キルン炉の構造が比較的複雑であるとともに、燃焼物を間接的に乾燥、燃焼させるため、多量の熱源が必要となる。したがって、脱水後の水分率が高い原料を乾燥、燃焼させる一次燃焼工程で、外熱キルン炉を第1燃焼炉として使用した場合には、乾燥・燃焼効率が低くなり、生産性が低下し、温度の制御が困難になるとともに多大なエネルギーコストを必要とし、費用対効果が低下してしまう恐れがある。
【0065】
また、内熱キルン炉を第2燃焼炉として使用した場合には、残カーボンを燃焼するにおいて、炉内温度の調整に多量の希釈空気が必要であり、また多量の空気を投入しなければ燃焼熱を内熱キルン炉内に均一に伝えることが困難である。さらに炉内温度の変動を抑えることが困難であるため、燃焼物の過燃焼や燃焼ムラが生じ易い。しかも、通常加熱に使用される重油バーナーからの重油燃焼残カーボンやイオウ酸化物等による汚染が発生し、製品段階で白色度の低下やバラツキが生じ、得られる燃焼物の品質の均一化が困難となる恐れもある。
【0066】
これらのことから、本発明においては、燃焼工程にて、先の第1燃焼炉を内熱キルン炉とし、後の第2燃焼炉を外熱キルン炉として用いることが最適である。
【0067】
次に、本発明に用いられる再生粒子凝集体のより好適な製造方法の一例を、図面を参照しながらさらに詳細に説明する。
【0068】
[概要]
再生粒子凝集体の製造設備フローは、脱水工程、乾燥工程、燃焼工程及び粉砕工程を有するが、さらに、脱墨フロスの凝集工程又は造粒工程や、各工程間に分級工程等を設けてもよい。
【0069】
図1は、再生粒子凝集体の製造設備フローの一部構成例(乾燥工程、燃焼工程及び燃焼工程を含む設備例)を示す概略図である。本設備には、各種センサーが備わっており、被燃焼物や設備の状態、処理速度のコントロール等を行っている。
【0070】
図示しない、古紙パルプを製造する脱墨工程においてパルプ繊維から分離された脱墨フロスは、種々の操作を経て、同じく図示しない公知の脱水設備により脱水される。脱水後の原料は、40質量%以上、好ましくは90質量%未満、より好ましくは45〜70質量%、特に好ましくは50質量%を超えて60質量%以下の高含水状態とすることが望ましい。
【0071】
かかる脱水後の原料10は、望ましくは、粉砕機(又は解砕機)により40μm以下の粒子径に粉砕しておく。かかる原料10が、貯槽12から切り出され、本体が横置きで中心軸周りに回転する内熱キルン炉である、第1燃焼炉14の一方側から装入機15により装入される。第1燃焼炉14の一方側には、排ガスチャンバー16が、他方側には排出チャンバー18が設けられている。排出チャンバー18を貫通して、熱風が第1燃焼炉14の他方側から吹き込まれ、前記一方側から装入され、第1燃焼炉14の回転に伴って前記他方側に順次移送される原料10の乾燥及び燃焼が行われる。
【0072】
ここで、第1燃焼炉14内に吹き込む熱風は、酸素濃度が0.2〜20%となるように調製することが望ましい。炉内温度は、300℃以上、500℃未満、好ましくは400℃以上、500℃未満、特に400〜450℃であることが望ましい。熱風は、バーナー20Aを備える熱風発生炉20から吹き込まれる。
【0073】
排ガスチャンバー16からは、乾燥・燃焼に供した排ガスが再燃焼室22に送り込まれる。排ガス中に含まれる燃焼物の微粉末は、排ガスチャンバー16の下部から排出され、再利用される。排ガスは、再燃焼室22でバーナーにより再燃焼が行われ、予冷器24により予冷された後、熱交換器26を通し、誘引ファン28により煙突30から排出される。ここで、熱交換器26は外気を昇温した後に、熱風発生炉20に送られ、第1燃焼炉14から吹き込まれる熱風の用に供せられ、排ガスチャンバー16からの排ガスの熱を回収する。排ガスの処理は、排ガス中に含まれる有害物質の除去に有効である。
【0074】
第1燃焼炉14において乾燥及び燃焼処理を経た燃焼物は、本体が横置きで中心軸周りに回転する外熱キルン炉である、第2燃焼炉32に装入される。この装入される燃焼物の粒径としては、40μm以下が好適である。第2燃焼炉32での熱源としては、第2燃焼炉32内の温度コントロールが容易で長手方向の温度制御が容易な電気による調整が好適である。したがって、電気ヒーターにより間接的に第1燃焼炉14から得られる燃焼物を再び燃焼させる外熱式の第2燃焼炉32であることが望ましい。
【0075】
第2燃焼炉32においては、酸素濃度を調整する空気あるいは酸素の供給機構(図示せず)にて、酸素濃度が5〜20%、好ましくは10〜20%、特に10〜15%となるように燃焼することが望ましい。燃焼温度は、550〜780℃、好ましくは600〜750℃であることが望ましい。また、第2燃焼炉内での滞留時間は、60分以上、好適には60〜240分、特に90〜150分であることが望ましく、残カーボンを完全に燃焼させるには120〜150分が最適である。
【0076】
燃焼が終了した再生粒子は、冷却機34により冷却された後、振動篩機などの粒径選別機36により選別され、湿式粉砕機等を用いた粉砕工程で目的の粒子径に調整された燃焼物が燃焼品サイロ38に一時貯留され、顔料の用途先に仕向けられる。
【0077】
なお、前記工程では脱墨フロスのみを原料として用いた場合を例示したが、脱墨フロスを主原料に、抄紙工程における製紙スラッジ等の他製紙スラッジを適宜混入させたものを原料とした燃焼物であってもよい。
【0078】
以上、再生粒子凝集体の製造方法の概要を説明したが、その詳細及び応用例等を以下に説明する。
【0079】
[原料]
古紙パルプ製造工程では、安定した品質の古紙パルプを連続的に生産する目的から、使用する古紙の選定、選別を行い、一定品質の古紙を使用する。そのため、古紙パルプ製造工程に持ち込まれる無機物の種類やその比率、量は、基本的に一定になる。しかも、再生粒子凝集体の製造方法において未燃物の変動要因となるビニールフィルム等のプラスチック類が古紙中に含まれていた場合においても、これらの異物は脱墨フロスを得る脱墨工程に至る前段階で除去することができる。したがって、脱墨フロスは、工場排水工程や製紙原料調成工程等、他の工程で発生する製紙スラッジと比べ、極めて安定した品質の再生粒子を製造するための原料となる。
【0080】
なお本明細書において、脱墨フロスとは、古紙パルプを製造する古紙処理工程において、主に、古紙に付着したインクを取り除く脱墨工程で、パルプ繊維から分離されるものをいう。
【0081】
[脱水工程]
脱墨フロスのさらなる脱水には、公知の脱水手段を適宜使用することができる。本実施の形態における一例では、例えばスクリーンによって、脱墨フロスから水を分離して脱水する。スクリーンにおいて、水分率を90〜97%に脱水した脱墨フロスは、例えばスクリュープレスに送り、さらに所定の水分率まで脱水することが好適である。
【0082】
脱水後の原料の水分率が70%を超えると、第1燃焼炉における乾燥・燃焼処理温度の低下を招き、加熱のためのエネルギーロスが多大になるとともに、原料の燃焼ムラが生じやすくなり、均一な燃焼を進め難くなる。さらに、排出される排ガス中の水分が多くなり、ダイオキシン対策における再燃焼処理効率の低下と、排ガス処理設備の負荷が大きくなる恐れがある。また、脱水後の原料の水分率が40%未満と低いと、脱墨フロスの過剰燃焼の原因となる。脱水後の原料の水分率を適宜調整することにより、脱水処理エネルギーの削減にも寄与することができる。
【0083】
以上のように、脱墨フロスの脱水を多段工程で行って急激な脱水を避けると、無機物の流出を抑制することができ、脱墨フロスのフロックが硬くなりすぎる恐れがない。脱水処理においては、脱墨フロスを凝集させる凝集剤等の脱水効率を向上させる助剤を添加してもよいが、凝集剤には、鉄分を含まないものを使用することが好ましい。鉄分が含有されると、鉄分の酸化により再生粒子凝集体の白色度が低下する恐れがある。
【0084】
脱墨フロスの脱水工程は、再生粒子凝集体の製造工程に隣接することが生産効率の面で好ましいが、あらかじめ古紙パルプ製造工程に隣接して設備を設け、脱水を行った物を搬送することも可能であり、トラックやベルトコンベア等の搬送手段によって定量供給機まで搬送し、この定量供給機から乾燥・燃焼工程に供給する。
【0085】
かかる脱水後の原料10は、第1燃焼炉14に供給する操作において、望ましくは、粉砕機(又は解砕機)により平均粒子径が40mm以下の粒子径に揃えることが好ましく、より好ましくは平均粒子径が3〜30mm、さらに好ましくは平均粒子径が5〜20mmの範囲になるように調整することが望ましい。さらに、粒子径が50mm以下の原料10の割合が、70重量%以上となるように粉砕しておくことがより好ましい。脱墨フロス中に含まれる炭酸カルシウムの熱変化を来たさない燃焼処理を図るため、原料の粒子径は均一であることが好ましいが、平均粒子径が3mm未満では、過燃焼になり易く、逆に40mmを超える平均粒子径では、原料芯部まで均一に燃焼を図ることが困難となる。
【0086】
なお本明細書において、前記平均粒子径及び粒子径の割合は、攪拌式の分散機で充分分散させた試料溶液を用いて測定した値をいい、各燃焼行程における粒子径は、JIS Z 8801−2(2000)「試験用ふるい−第2部:金属製板ふるい」にて規定の金属製の板ふるいにて測定した値をいう。
【0087】
[第1燃焼工程(乾燥・燃焼工程)]
前記原料10が貯槽12から切り出され、第1燃焼炉14に供給される。第1燃焼炉14は、本体が横置きで中心軸周りに回転する内熱キルン炉方式からなり、第1燃焼炉14(内熱キルン炉14)の一方側から装入機15により装入される。熱風発生炉にて生成された熱風が、内熱キルン炉14の排出口側から、脱水物の流れと向流するように送り込まれ、内熱キルン炉14内が加熱される。内熱キルン炉14の一方側には、排ガスチャンバー16が、他方側には排出チャンバー18が設けられている。排出チャンバー18を貫通して、熱風が内熱キルン炉14の他方側から吹き込まれ、前記一方側から装入され、内熱キルン炉14の回転に伴って前記他方側に順次移送される原料の乾燥及び燃焼が行われる。
【0088】
すなわち、本乾燥・燃焼工程は、脱水物を、本体が横置きで中心軸周りに回転する、内熱キルン炉によって乾燥・燃焼することにより、供給口から排出口に至るまで、緩やかに乾燥及び有機分の燃焼を行うことができ、燃焼物の微粉化が抑制され、凝集体の形成、硬い・柔らかい等さまざまな性質を有する脱水物の燃焼度合いの制御と粒揃えとを安定的に行うことができる。なお、乾燥を別工程に分割し、吹き上げ式の乾燥機を入れることも可能である。
【0089】
ここで、内熱キルン炉14内に吹き込む熱風は、酸素濃度が0.05%以上、さらには0.1%以上となるように、また20%以下となるように調節されることが好ましい。特に、この燃焼工程内酸素濃度は、第1燃焼炉内上端部で、好ましくは0.2〜20%に、さらに好ましくは1〜15%に、特に好ましくは5〜12%に調節されることが望ましく、第2燃焼炉のバーナー近傍で、好ましくは5〜20%に、さらに好ましくは10〜20%に、特に好ましくは15〜18%に調節されることが望ましい。特に第1燃焼炉内上端部での酸素濃度が0.2%未満であると、均一な燃焼が進まず、ムラのある燃焼が進むだけでなく、燃焼に膨大な時間とエネルギーコストとが必要になる恐れがある。
【0090】
原料の燃焼(酸化)により酸素が消費されるため、燃焼の状況によって酸素濃度に変動が生じる。酸素濃度が過度に低いと、充分な燃焼を図ることが困難である。燃焼炉内の酸素濃度は、原料の燃焼等によって酸素が消費されて低下するが、燃焼させるための熱風発生装置等により、空気等の酸素含有ガスを送風し、あるいは排気することで、酸素濃度を維持、調節することが可能であり、さらに酸素含有ガスを送風し、あるいは排気することで、燃焼炉内の温度を細かく調節することも可能になり、原料をムラなく均一に燃焼することができる。
【0091】
第1燃焼炉の炉内温度(燃焼温度)は、好ましくは300℃以上、500℃未満、さらに好ましくは400℃以上、500℃未満、特に好ましくは400〜450℃であることが望ましい。第1燃焼炉においては、容易に燃焼可能な有機物を緩やかに燃焼させ、燃焼し難い残カーボンの生成を抑える目的から、燃焼温度300℃以上、500℃未満の温度範囲で燃焼することが好ましい。過度に燃焼温度が低いと、有機物の燃焼が不充分となる恐れがあり、過度に燃焼温度が高いと、過燃焼が生じ、炭酸カルシウムの分解による酸化カルシウムが生成し易くなる。さらに、熱風の温度が500℃以上の場合は、硬い・柔らかい等の種々の性質を有する燃焼物の粒揃えが進行するよりも早く、乾燥・燃焼が局部的に進むため、粒子表面の未燃率と内部の未燃率との差を少なく均一にすることが困難になる。
【0092】
なお、熱風は、バーナー20Aを備える熱風発生炉20から吹き込まれる。
【0093】
排ガスチャンバー16からは、乾燥・燃焼に供した排ガスが再燃焼室22に送り込まれる。微粉末は、排ガスチャンバー16の下部から排出され、再び原料に配合されて再利用される。
【0094】
排ガスは、再燃焼室22でバーナーにより再燃焼が行われ、予冷器24により予冷された後、熱交換器26を通し、誘引ファン28により煙突30から排出される。ここで、熱交換器26は外気を昇温した後に、熱風発生炉20に送られ、内熱キルン炉14から吹き込まれる熱風の用に供せられ、排ガスチャンバー16からの排ガスの熱を回収する。
【0095】
第1燃焼炉は、脱墨フロス中に含有される燃焼容易な有機物を緩慢に燃焼させ、残カーボンの生成を抑制するため、好適には前記条件で30〜90分の滞留時間で燃焼させることが好ましい。40〜80分の滞留時間(燃焼時間)であることが、有機物の燃焼と生産効率の面でより好ましく、50〜70分の滞留時間(燃焼時間)であることが、恒常的な品質を確保するために特に好ましい。燃焼時間が30分未満では、充分な燃焼が行われずに残カーボンの割合が多くなる恐れがある。逆に燃焼時間が90分を超えると、原料の過燃焼による炭酸カルシウムの熱分解が生じ、得られる再生粒子凝集体が極めて硬くなる恐れがある。
【0096】
特に、次工程の第2燃焼工程内に供給する燃焼物の未燃率が2〜20質量%となるように、乾燥・燃焼することが好ましく、未燃率を、より好ましくは5〜17質量%、特に好ましくは7〜12質量%にすることが望ましい。
【0097】
前記のように、第2燃焼工程内に供給する燃焼物の未燃率を2〜20質量%にすることで、第2燃焼工程での燃焼を、短時間で効率よく行うことができると共に、外熱炉における安定した加熱により、硬度が低く、白色度が80%以上、さらには70%以上の高白色度の燃焼物を得ることができる。特に、第2燃焼工程内に供給する燃焼物の未燃率が2質量%未満では、第1次燃焼炉におけるエネルギーコストが高くなると共に、燃焼物の硬度が比較的高くなっている場合があり、第2燃焼炉出口における燃焼物の白色度が低下する等、燃焼物の品質低下を来たす場合がある。
【0098】
[第2燃焼工程]
内熱キルン炉14において乾燥及び燃焼処理を経た燃焼物は、移送流路を通して、本体が横置きで中心軸周りに回転する外熱ジャケット31を有する第2燃焼炉32にあたる外熱キルン炉に装入される。この第2燃焼炉32(外熱キルン炉32)では、燃焼物を外熱で加温しながら、キルン炉内壁に設けたリフターにより、原料の燃焼炉内での搬送を制御し、緩慢に燃焼させることで、さらに均一に未燃分を燃焼する。
【0099】
第2燃焼炉における燃焼では、第1燃焼炉で燃焼しきれなかった残留有機物、例えば残カーボンを燃焼させるため、第1燃焼炉において供給される原料の粒子径よりも小さい粒子径に調整された燃焼物を用いることが好ましい。乾燥・燃焼工程後の燃焼物(第2燃焼炉入口での燃焼物)は、平均粒子径が10μm以下、さらには1〜8μm、特に1〜5μmとなるように調整することが好ましい。
【0100】
第2燃焼炉入口での燃焼物の平均粒子径が1μm未満では、過燃焼の恐れがあり、逆に平均粒子径が10μmを超えると、残カーボンの燃焼が困難で芯部まで燃焼が進まず、得られる再生粒子凝集体の白色度が低下する恐れがある。第2燃焼炉での安定した生産を確保するためには、平均粒子径が1〜8μmの燃焼物が70質量%以上となるように粒子径を調整することが好ましい。したがって、得られる再生粒子凝集体の品質を均一にするという観点における実用化可能性に、有益である。さらに、乾燥後に分級を行うと、小径な粒子の燃焼物を確実に除去することができ、また処理効率も向上するという利点がある。
【0101】
外熱キルン炉32での外熱源としては、外熱キルン炉32内の温度コントロールが容易で長手方向の温度制御が容易な電気加熱方式の電気炉が好適である。したがって、電気ヒーターによる外熱キルン炉32であることが望ましい。
【0102】
外熱に電気を使用することにより、温度の調整を細かく、かつ内部の温度を均一にコントロールすることが可能になり、凝集体の形成、硬い・柔らかい等種々の性質を有する脱水物の燃焼度合いの制御と粒揃えとを安定的に行うことができる。
【0103】
さらに電気炉は、電気ヒーターを炉の流れ方向に複数設けることで、任意に温度勾配を設けることが可能であると共に、燃焼物の温度を一定時間、一定温度保持することが可能であり、第1燃焼炉を経た燃焼物中の残留有機分、特に残カーボンを第2燃焼炉で炭酸カルシウムの分解を来たすことなく未燃分を限りなくゼロに近づけることができ、従来塗工用顔料として用いられている重質炭酸カルシウムと比べ、比較的低いワイヤー摩耗度で、高白色度の再生粒子凝集体を得ることができる。
【0104】
外熱キルン炉32においては、酸素濃度が5〜20%、より好ましくは10〜20%、最も好ましくは10〜15%となるように調整することが望ましい。酸素濃度は、第2燃焼炉に適宜の手段により酸素又は空気投入量のコントロールによって行うことができる。ただし、図1中、具体的な形態の図示は省略している。特に、外熱キルン炉内の酸素濃度が5%未満では、燃焼困難な残カーボンの燃焼が進まない恐れがある。
【0105】
第2燃焼炉での燃焼温度は、550〜780℃、さらには600〜750℃であることが好ましい。第2燃焼炉では、前記したように、第1燃焼炉で燃焼しきれなかった残留有機物、特に残カーボンを燃焼させる必要があるため、第1燃焼炉よりも高温で燃焼させることが好ましい。第2燃焼炉での燃焼温度が550℃未満では、充分に残留有機物の燃焼を図ることが困難であり、逆に燃焼温度が750℃を超えると、燃焼物中の炭酸カルシウムの酸化が進行し、粒子が硬くなる恐れがある。
【0106】
なお本明細書において、第1燃焼炉での燃焼温度(一次燃焼温度)は、第1燃焼炉の出口温度を、第2燃焼炉での燃焼温度(二次燃焼温度)は、放射温度計による第2燃焼炉の内壁表面温度を基準とする。
【0107】
また、第2燃焼炉での滞留時間は、60分以上、より好適には60〜240分、特に好適には90〜150分、最適には120〜150分であることが望ましい。特に残カーボンの燃焼は、炭酸カルシウムの分解をできる限り生じさせない高温で、緩慢に行う必要があり、第2燃焼炉での滞留時間が60分未満では、残カーボンの燃焼には短時間で不充分であり、逆に240分を超えると、炭酸カルシウムが分解する恐れがある。なお、燃焼物の安定した生産を行うには、滞留時間を60分以上で、過燃焼の防止、生産性の確保のためには、滞留時間を240分以下で燃焼させることが好適である。
【0108】
外熱キルン炉32から排出される燃焼物の平均粒子径は、10μm以下、より好ましくは1〜8μm、最も好ましくは1〜5μmに調整することが好適である。
【0109】
燃焼が終了した燃焼物は、再生粒子の凝集体であり、冷却機34により冷却された後、振動篩機などの粒径選別機36により目的の粒子径のものが燃焼品サイロ38に一時貯留され、顔料の用途先に仕向けられる。
【0110】
[粉砕工程]
前記第2燃焼工程を経た燃焼物(再生粒子凝集体)は、さらに公知の分散・粉砕工程にて適宜必要な粒子径に微細粒化され、塗工剤の顔料として使用される。
【0111】
例えば、第2燃焼工程で燃焼後、得られた粒子を、ジェットミルや高速回転式ミル等の乾式粉砕機、又はアトライター、サンドグラインダー、ボールミル等の湿式粉砕機を用いて粉砕する。なお、本発明に顔料として用いられる再生粒子凝集体の粒子径は、後述するように、体積平均粒子径が1.0〜5.0μmであることが好ましい。
【0112】
[付帯工程]
例えば図1に示す再生粒子凝集体の製造設備において、より品質の安定化を求めるには、再生粒子凝集体の粒子径を、各工程で均一に揃えるための分級を行うことが好ましい。粗大粒子や微小粒子を前工程にフィードバックすることで、より品質の安定化を図ることができる。
【0113】
また、乾燥工程の前段階において、脱水処理を行った脱墨フロスを造粒することが好ましく、さらには、造粒物の粒子径を均一に揃えるための分級を行うことがより好ましい。やはり、粗大造粒粒子や微小造粒粒子を前工程にフィードバックすることで、より品質の安定化を図ることができる。造粒には公知の造粒設備を使用することができ、回転式、攪拌式、押し出し式等の設備が好適である。
【0114】
さらに、再生粒子凝集体の原料となり得るもの以外はあらかじめ除去しておくことが好ましく、例えば古紙パルプ製造工程の脱墨工程に至る前段階のパルパーやスクリーン、クリーナー等で砂、プラスチック異物、金属等を除去することが、除去効率の面で好ましい。特に鉄分の酸化物は微粒子の白色度低下の起因物質になるため、鉄分の混入を避け、選択的に取り除くことが推奨される。各工程を鉄以外の素材で設計又はライニングし、摩滅等により鉄分が系内に混入することを防止するとともに、さらに、乾燥・分級設備内等に磁石等の高磁性体を設置し、選択的に鉄分を除去することが好ましい。
【0115】
好適な燃焼炉として用いられる内熱キルン炉又は外熱キルン炉は、内部耐火物を円周状でなく、六角形や八角形とすることで燃焼物を滑らせることなく持ち上げて攪拌することができるが、現実には、キルン炉として円筒形であり、燃焼物攪拌用のリフターを設けることが、原料の均一な燃焼と、品質の均一化を図ることができる点で最適である。これは、第1燃焼炉において、低温でじっくりと原料全体を燃焼することを意図することとも関係すると考えられる。
【0116】
[第2燃焼炉のリフターについて]
第2燃焼炉内の内壁に、その一端側から他端側に向けて、螺旋状リフター及び/又は軸心と平行な平行リフターを配設することで、原料の均一な燃焼と、品質の均一化を図ることができる。特に、被燃焼物の装入側から排出側に向けて、螺旋状リフターと、軸心と平行な平行リフターとの順で配設することが望ましい。
【0117】
前記リフターの構成によると、装入側から投入された内容物が、まず螺旋状リフターにて他端側に向けて適正量ずつ送り込まれながら持ち上げられて落下する間に、原料に起因する有機成分がガス化し、発生する燃焼ガス(可燃焼ガス)と効率的に接触し、さらに引き続いて平行リフターにて持ち上げられて落下する動作を繰り返すことで燃焼ガス(可燃焼ガス)と効率的に接触するので、熱交換効率よく内容物を燃焼させることができる。特に、螺旋状リフターにて平行リフターに送り込まれる内容物の量がコントロールされることで、平行リフター部分における内容物の持ち上げ・落下が適正に行われ、内容物の燃焼を均一かつ効率的に行うことができる。また、耐火物の損傷の恐れがないことから、燃焼物の純度の低下がなく、その生産能力も向上する。
【0118】
また、螺旋状リフター及び平行リフターを、例えば耐熱性を有するステンレス鋼板等の金属製とすると、比較的温度が低いので高価な耐熱材料を用いなくても、充分に耐久性及び強度を確保することができると共に、耐火物製のリフター等と比して伝熱効率が高いので、一層熱効率が向上する。
【0119】
前記第2燃焼炉のリフターを図面にて説明する。図2は第2燃焼炉の部分概略図であり、(a)は第2燃焼炉の一部破断概略断面図、(b)は第2燃焼炉の内部展開概略平面図である。図2において、被燃焼物は第2燃焼炉32の左側から装入され(図2(a)中、「装入」と示す)、回転駆動手段(図示せず)にて回転駆動可能に構成され、他端側から排出される。
【0120】
第2燃焼炉32は、円筒状の外筐32Aの内面に、耐火キャスタブルや耐火レンガからなる耐火壁32Bを内張りして構成されている。第2燃焼炉32の耐火壁32Bの内面には、投入側において、第2燃焼炉32の軸心に対して45〜70°の傾斜角で傾斜した複数条(図2では8条)の螺旋状リフター4が等間隔に突設されている。さらにこの螺旋条リフター4の配設領域の他端側に、第2燃焼炉32の軸心と平行な適当長さの平行リフター5Aが、周方向に等間隔置きに複数(図2では8つ)かつ軸心方向に複数列(図2では8列)千鳥状に配列して突設されている。
【0121】
また、平行リフター5Aは、図2の右側に排出部に向かって連続的に形成されている(図示せず)。この場合、装入側では低温であるので、装入側の平行リフター5Aは、ステンレス鋼板等の耐熱性及び耐腐食性を有する金属板にて形成することが望ましく、排出部側では高温となるので、排出部側の平行リフター5Aは、耐火物性とすることが望ましい。
【0122】
なお、図2では、螺旋状リフター4はその長手方向に適当間隔おきに配設した取付ブラケット6に固定されて配設されている。また、各平行リフター5Aは、それぞれの取付ブラケット5Bに固定されて配設されている。
【0123】
さらに必要に応じて、螺旋状リフター又は平行リフターの一方のみを設けることも可能である。
【0124】
例えば図1に示す製造設備フローに基づく再生粒子凝集体の製造方法では、示差熱熱重量同時測定装置による示差熱分析において、700℃近傍で生じる炭酸カルシウムの分解(酸化カルシウムへの変化)における減量(率)が50%以上となるように脱墨フロスを燃焼制御することで、より正確にカルシウム成分の酸化の進行を抑制し、得られる再生粒子凝集体が硬くなるのを防止することができるという利点がある。
【0125】
以上、顔料である再生粒子凝集体の好適な製造方法の一例を詳細に説明したが、さらに本発明においては、該再生粒子凝集体として、前記のごとき工程を経て得られた再生粒子凝集体の表面をシリカで被覆した、シリカ被覆再生粒子凝集体も好適に用いることができる。
【0126】
表面をシリカで被覆したシリカ被覆再生粒子凝集体は、その表面が高い多孔性を有し、比表面積が飛躍的に高くなっているので、後述するように、接着剤であるシラノールPVAとの結合力がさらに向上すると共に、例えば新聞用オフセットインクの吸収乾燥性をさらに向上させ、印刷濃度の向上をより充分に図ることができると共に、印刷不透明度をさらに向上させることができる。該シラノールPVAとしては、例えばRポリマー(商品名、(株)クラレ製)が代表例としてあげられる。
【0127】
なお、本発明に用いられる、古紙処理工程の脱墨工程にて生じる脱墨フロスは、近年の中性抄紙化に伴い、炭酸カルシウムの含有量が増加傾向にあり、得られる再生粒子凝集体中のカルシウムの割合も高くなる傾向がある。このようにカルシウムの割合が高い再生粒子凝集体を顔料として用いると、得られる新聞用紙の白紙不透明度がやや低下する場合があるが、表面にシリカを析出させたシリカ被覆再生粒子凝集体は、製紙用途の無機粒子としての機能が非常に高く、該シリカ被覆再生粒子凝集体を顔料として用いた新聞用紙は、その白紙不透明度及び吸油性が充分に向上する。
【0128】
再生粒子凝集体の表面を被覆するシリカについては、天然に産出するシリカではなく、何らかの化学反応による合成シリカであれば特に制限なく使用することが可能である。具体的には、例えばコロイダルシリカ、シリカゲル、無水シリカ等があげられる。これらの合成シリカは、高比表面積、ガス吸着能の高さ、微細性、細孔への浸透力や吸着力の大きさ、付着性の高さ、高吸油性等の優れた特性を活かして、幅広い分野で利用されているものである。これらのうち、コロイダルシリカは、珪酸化合物から不純分を除去して無水珪酸ゾルとし、pH及び濃度を調整してゾルを安定化させた、球状、連鎖状、不定形等の形状を有する非晶質シリカである。シリカゲルは、珪酸ナトリウムを無機酸で分解することによって得られる含水珪酸である。また無水シリカは、四塩化ケイ素の加水分解によって得られるものである。
【0129】
シリカ被覆再生粒子凝集体は、前記燃焼工程において凝集体とした再生粒子凝集体を珪酸アルカリ溶液中にて懸濁するとともに鉱酸を添加し、該再生粒子凝集体の周囲をシリカで被覆して得ることができ、例えば以下の方法を好適に採用することができる。
【0130】
まず、再生粒子凝集体を珪酸アルカリ溶液に添加、分散させ、スラリーを調製した後に加熱攪拌しながら、液温を60〜100℃程度、より好ましくは密閉容器内で所定の圧力に保持して鉱酸を添加し、シリカゾルを生成させる。次いで最終反応液のpHを中性〜弱アルカリ性の範囲に調整することにより、再生粒子凝集体の表面にシリカを析出させることができる。このようにして再生粒子凝集体の表面に析出されるシリカは、珪酸アルカリ(例えば珪酸ナトリウム:水ガラス)を原料として、硫酸、塩酸、硝酸等の鉱酸の希釈液と高温下で反応し、加水分解反応と珪酸の重合化により得られる、粒子径が10〜20nm程度のシリカゾル粒子である。
【0131】
また、珪酸ナトリウム溶液等の珪酸アルカリ溶液に希硫酸等の鉱酸を添加することによって生成する、粒子径が数nm程度のシリカゾル微粒子を、再生粒子凝集体の多孔性を有する表面全体を被覆するように付着させ、該シリカゾル微粒子の結晶成長に伴う、無機微粒子表面上のシリカゾル微粒子と再生粒子凝集体に包含されるケイ素やカルシウム、アルミニウムとの間で生じる結合により、無機粒子の表面にシリカを析出させることもできる。この場合、珪酸アルカリ溶液に酸を添加する際のpHも、中性〜弱アルカリ性の範囲とし、好ましくはpHを8〜11の範囲に調整する。これは、pHが7未満の酸性条件になるまで酸を添加してしまうと、シリカゾル粒子ではなくホワイトカーボンが生成する恐れが生じるからである。
【0132】
なお、前記珪酸アルカリ溶液の種類には特に限定がないが、入手が容易である点から珪酸ナトリウム溶液(3号水ガラス)が特に望ましい。かかる珪酸アルカリ溶液の濃度としては、再生粒子凝集体中のシリカ成分が低下し、再生粒子凝集体の表面にシリカが析出し難くならないようにするには、溶液中の珪酸分(SiO2換算)が3質量%以上であることが好ましく、再生粒子凝集体の表面に析出されるシリカが、シリカゾルの形態からホワイトカーボンになり、再生粒子凝集体の多孔性が阻害され、不透明度や印刷適性の向上効果が不充分になる恐れをなくすには、かかる珪酸分が10質量%以下であることが好ましい。
【0133】
このように、本発明に好適に用いられる再生粒子凝集体は、好ましくは、その粒子構成成分中に、カルシウム、ケイ素及びアルミニウムの3成分を含有している。X線マイクロアナライザー(型番:E−MAX・S−2150、(株)日立製作所/(株)堀場製作所製)による元素分析において、該再生粒子凝集体の粒子構成成分には、酸化物換算で、カルシウムとケイ素とアルミニウムとが、30〜82:9〜35:8〜35、さらには40〜82:9〜30:9〜30、特に60〜82:9〜20:9〜20の質量割合で含有されていることが好ましい。
【0134】
また、特に再生粒子凝集体がシリカ被覆再生粒子凝集体である場合には、前記X線マイクロアナライザーによる元素分析において、該シリカ被覆再生粒子凝集体の粒子構成成分には、酸化物換算で、カルシウムとケイ素とアルミニウムとが、10〜80:10〜80:5〜29、さらには15〜80:15〜80:5〜25の質量割合で含有されていることが好ましい。
【0135】
さらに本発明で好適に使用することができるシリカ被覆再生粒子凝集体において、特に第1燃焼炉の炉内温度(燃焼温度)が、好ましくは300℃以上、500℃未満、さらに好ましくは400℃以上、500℃未満、特に好ましくは400〜450℃といった条件を経て得られたシリカ被覆再生粒子凝集体は、燃焼可能な有機物を緩やかに燃焼させて得られたものであるので、製品の色ムラが少なく、均一な色目であり、塗工層形成において付与される染料との相乗効果にて、あたかも塗工層を有さない新聞用紙と同等の、L*=75.0〜80.0、a*=−3.50〜0.50、b*=3.50〜7.50である新聞用紙を得ることが容易になる。
【0136】
なお、前記再生粒子凝集体(以下、シリカ被覆再生粒子凝集体を含む概念として記載する)において、酸化物換算のカルシウムとケイ素とアルミニウムとの合計含有割合は、再生粒子凝集体の粒子構成成分中の85質量%以上、さらには90質量%以上であることが好ましい。
【0137】
本発明に用いられる再生粒子凝集体は、ケイ素を含むところ、ケイ素からなるシリカの粒子は微細なので、光学的屈折率が高い。したがって、例えばケイ素が酸化物換算で前記質量割合以上含有されている再生粒子凝集体が顔料として表面に塗工された新聞用紙は、白紙不透明度が特に高い。
【0138】
また、例えばカルシウムが酸化物換算で前記質量割合以上含有された再生粒子凝集体が顔料として表面に塗工された場合には、特に得られる新聞用紙の白色度を向上させることができる。
【0139】
再生粒子凝集体の粒子構成成分中のカルシウムとケイ素とアルミニウムとの質量割合を、酸化物換算で前記範囲内に調整するには、本来、脱墨フロスにおける原料構成を調整することが好ましいが、乾燥工程や燃焼工程、さらには必要に応じて分級工程において、由来が明確な塗工フロスや調整工程フロスをスプレー等で含有させる方法や、焼却炉スクラバー石灰を含有させる方法を採用することも可能である。
【0140】
例えば、再生粒子凝集体中のカルシウムの調整には中性抄紙系の排水スラッジや、塗工紙製造工程の排水スラッジを、ケイ素の調整には不透明度向上剤として多量添加されている塗工紙製造系の排水スラッジを、アルミニウムの調整には酸性抄紙系等の硫酸バンドが使用された抄紙系の排水スラッジや、クレーの使用量が多い上質紙抄造工程の排水スラッジを適宜用いることができる。
【0141】
また再生粒子凝集体において、カルシウムとケイ素とアルミニウムとの合計含有割合を酸化物換算で85質量%以上に調整するには、例えば排水スラッジの凝集処理に鉄分を含有しない凝集剤を使用する手段、製造設備工程を鉄以外の素材で設計又はライニングし、摩滅等により鉄分が系内に混入するのを防止したり、さらには乾燥・分級設備内に磁石等の高い磁性体を設置して鉄分を除去する手段等を採用することが可能である。特に鉄分は、酸化により白色度を低下させる起因物質になるため、選択的に除去することが好ましい。
【0142】
また再生粒子凝集体にはケイ素が含まれるが、該ケイ素からなるシリカの1次粒子は微細であるので、光学的屈折率が高い。したがって、例えばケイ素が酸化物換算で前記質量割合以上含有された再生粒子凝集体を顔料として表面に塗工した場合には、特に得られる新聞用紙の白紙不透明度を向上させることができる。
【0143】
本発明に用いられる再生粒子凝集体の粒子径は、例えば高速オフセット印刷等の印刷における紙粉の発生を充分に防止し、かつ適度なスベリ性を容易に付与するという点から、体積平均粒子径が1.0μm以上、さらには1.2μm以上であることが好ましく、また精細な印刷面や、より迅速なインク吸収乾燥性及び用紙表面でのインク定着性を得るという点から、体積平均粒子径が5.0μm以下、さらには4.8μm以下であることが好ましい。
【0144】
また本発明に用いられる再生粒子凝集体は、粒子径の体積分布において20μm以下である凝集体の割合が70質量%以上に、かつ該粒子径の体積分布において18μmを越える凝集体の割合が0.5質量%以下に調整されていることがより好ましい。
【0145】
なお本明細書において、再生粒子凝集体の体積平均粒子径及び体積分布は、レーザー粒径分布測定装置(レーザー回折式粒度分布測定装置 SALD−2200型、標準屈折率(1)にて測定、(株)島津製作所製)にて測定した値(レーザー解析に基づく値)をいう。
【0146】
さらに本発明では、新聞用紙表面における白色ムラを解消することができ、さらには耐水性、湿し水に対する用紙の湿潤や伸張の抑制、表面強度、見当ズレの抑制、インク吸収性などの新聞用紙の特性がより向上するという点から、塗工層表面のX線マイクロアナライザーによる元素分析において、再生粒子凝集体の存在領域が面積割合で30%以上、さらには32%以上であることが好ましい。またかかる再生粒子凝集体が柔軟な2次凝集体であり、過度の配合は高速輪転印刷における紙粉の発生、紙質強度の低下を来たすという点を考慮すると、再生粒子凝集体の存在領域が面積割合で90%程度以下であることが好ましい。
【0147】
従来の塗工用顔料は、粉体白色度計((株)ケット科学研究所製、形式C−100)において白色度が85%以上のものが一般的に用いられ、本発明が対象とする白色度が52〜60%の新聞用紙に用いる場合、その白色度差から用紙表面に白色ムラが生じる問題がある。一方、本発明で好適に用いることができる再生粒子凝集体は、元来灰暗色の脱墨フロスを原料とし、本来は高い白色度の再生粒子凝集体を製造するところ、本発明にて供するが故に、所望の白色度の再生粒子凝集体を製造し得る。よって、その再生粒子凝集体を用いた本発明においては、課題とする不透明度の向上を遡及しながら、従来であれば白色ムラが生じる問題を考慮すべきところ、前記のごとく再生粒子凝集体の存在領域を面積割合で30%以上、さらには32%以上としても前記問題を生じず、塗工層を有しながらも白色ムラが少なく、不透明度が高いうえ、紙粉によるブランケット汚れ、剣先詰まり及び見当ズレがなく、印刷適性にも優れた新聞用紙を提供することができる。
【0148】
さらに本発明で好適に使用することができる再生粒子凝集体において、特に第1燃焼炉の炉内温度(燃焼温度)が、好ましくは300℃以上、500℃未満、さらに好ましくは400℃以上、500℃未満、特に好ましくは400〜450℃といった条件を経て得られた再生粒子凝集体は、燃焼可能な有機物を緩やかに燃焼させて得られたものであるので、製品の色ムラが少なく、均一な色目であり、塗工層形成において付与される染料との相乗効果にて、あたかも塗工層を有さない新聞用紙と同等の、L*=75.0〜80.0、a*=−3.50〜0.50、b*=3.50〜7.50である新聞用紙を得ることが容易になる。
【0149】
なお本明細書において、再生粒子凝集体の存在領域とは、一定面積の領域を12000倍で試料の異なる個所を10枚撮影し、X線マイクロアナライザーにて各領域における元素分析を行い、画像解析装置にてカルシウム、ケイ素及びアルミニウムが重なって検出される部分を再生粒子凝集体として選択し、カルシウム、ケイ素及びアルミニウムが重なって検出される部分の面積割合を画像解析装置にて算出して求めたものである。
【0150】
さらに前記再生粒子凝集体は、JIS K 5101−13−1に記載の「顔料試験方法−第13部:吸油量−第1節:精製あまに油法」に準拠した吸油量が、80ml/100g以上、さらには90ml/100g以上であることが好ましく、また200ml/100g以下、さらには145ml/100g以下であることが好ましい。該再生粒子凝集体の吸油量が80ml/100g未満では、白紙不透明度と印刷不透明度との差が少なく、印刷の裏抜けが生じたり、ネッパリが生じる恐れがあり、200ml/100gを超えると、紙面pHが高めに推移する傾向があり、インク濃度が低下する恐れがある。
【0151】
本発明でいう印刷不透明度とは、オフセット輪転印刷機(型番:RI−2型、石川島産業機械(株)製)で、オフセット輪転印刷用インク(商品名:ニューズゼットナチュラリス(墨)、大日本インキ化学工業(株)製)のインク量を変えて印刷し、印刷面反射率が9%のときの、印刷前の裏面反射率に対する印刷後の裏面反射率の比率:
(印刷後の裏面反射率/印刷前の裏面反射率)×100(%)
を求めたものである。なお、これら反射率の測定には、分光白色度測色機(スガ試験機(株)製)を用いる。
【0152】
新聞用紙においては、見た目の不透明性が重要視されるため、印刷不透明度は、一定の印刷面反射率において、印刷前の裏面反射率に対する印刷後の裏面反射率の比率から求めることが好適である。本発明における特徴である再生粒子凝集体を顔料として用い、JIS P 8150に規定されたCIELab色空間によって算出した用紙表面のL*、a*、b*が、L*=75.0〜80.0、a*=−3.50〜0.50、b*=3.50〜7.50となるように塗工層を設けることで、塗工層を有しながらも白色ムラが少ない新聞用紙を得ることができる。
【0153】
本発明において、新聞用紙により適度なスベリ性が付与され、高い不透明度やインク吸収乾燥性が確保されるようにするには、再生粒子凝集体の量が、顔料全量の30質量%以上、さらには35質量%以上となるように調整することが好ましい。
【0154】
再生粒子凝集体は、その構成成分として、酸化物換算で、カルシウムとケイ素とアルミニウムとが、好ましくは30〜82:9〜35:8〜35、さらに好ましくは40〜82:9〜30:9〜30、特に好ましくは60〜82:9〜20:9〜20の質量割合で、シリカ被覆再生粒子凝集体の場合は、好ましくは10〜80:10〜80:5〜29、さらに好ましくは15〜80:15〜80:5〜25の質量割合で含有されており、炭酸カルシウムやホワイトカーボン等の従来から用いられる各種微細粒子単体とは異なり、微細粒子固有の効果のみを発現することがなく、平準化された性状を有するので、他の組み合わせ可能な顔料と比べ、顔料全量の30質量%以上、さらには35質量%以上となるように調整することで、摩擦や印刷適正などに偏ることなく、均等な塗工層の形成と不透明性とを発揮することができる。
【0155】
塗工剤の主成分である顔料としては、前記特定の再生粒子凝集体が少なくとも配合されていればよいが、例えばオフセットカラー印刷等の印刷時における新聞用紙の特性がさらに向上するという点から、かかる再生粒子凝集体とともに、アスペクト比が20以上の高アスペクト顔料が配合されていることが好ましい。
【0156】
前記高アスペクト顔料としては、例えばカオリンクレー、デラミネーテッドクレー等の高アスペクトクレーがあげられ、他にも、例えばアスペクト比が約50、さらには実験室レベルで100に至るアスペクト比を有するクレーや炭酸カルシウムが開発されている。このような100に近似のアスペクト比を有する顔料は、粒子径の大きなものを製造することができない点や高価になるといった問題があるので、アスペクト比が高くとも50程度のものを例示することができる。
【0157】
高アスペクト顔料のアスペクト比は、例えばオフセットカラー印刷等の印刷時において新聞用紙表面の平坦性を向上させることで、高精細な印刷面を得ることができるだけでなく、印刷面に対して並列的に配向するため、不透明性がさらに向上するという点から、20以上、さらには21以上であることが好ましい。また価格と得られる品質面とを考慮すると、かかる高アスペクト顔料のアスペクト比は30以下であることが好ましい。
【0158】
本発明に用いられる高アスペクト顔料の粒子径は、例えば高速オフセット印刷等の印刷における紙粉の発生をより充分に防止するという点から、体積平均粒子径が2.0μm以上、さらには2.2μm以上であることが好ましく、また精細な印刷面や、より迅速なインク吸収乾燥性及び用紙表面でのインク定着性を得るという点から、体積平均粒子径が15.0μm以下、さらには13.0μm以下であることが好ましい。
【0159】
高アスペクト顔料を前記再生粒子凝集体と併用する場合、新聞用紙表面における白色ムラを解消することができ、さらには耐水性、湿し水に対する用紙の湿潤や伸張の抑制、表面強度、見当ズレの抑制、インク吸収性などの新聞用紙の特性がより向上するという点から、塗工層表面のX線マイクロアナライザーによる元素分析において、再生粒子凝集体と高アスペクト顔料との合計存在領域が面積割合で45%以上、さらには48%以上であることが好ましい。再生粒子凝集体と高アスペクト顔料との合計存在領域を面積割合で100%とすることも可能であるが、例えば高速オフセット印刷等の印刷における用紙表面の表面強度、紙粉発生の抑制という点を考慮すると、安価なタルク等の顔料を用いる場合は、再生粒子凝集体と高アスペクト顔料との合計存在領域が面積割合で100%程度以下であることが好ましい。
【0160】
なお本明細書において、再生粒子凝集体と高アスペクト顔料との合計存在領域とは、前記再生粒子凝集体の存在領域と同様に、一定面積の領域を12000倍で試料の異なる個所を10枚撮影し、X線マイクロアナライザーにて各領域における元素分析を行い、画像解析装置にてカルシウム、ケイ素及びアルミニウムが重なって検出される面積(A)を測定し、またX線マイクロアナライザーにて視認した高アスペクト顔料の個数に高アスペクト顔料の10個平均面積を乗算して算出される面積(B)を測定し、面積(A)と面積(B)とから、合計面積割合を算出して求めたものである。
【0161】
さらに顔料として、前記再生粒子凝集体及び高アスペクト顔料の他にも、例えば軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、クレー、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、ケイ酸アルミニウム、ケイソウ土、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、合成非晶質シリカ(ホワイトカーボン)、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、アルミナ、リトポン、ゼオライト、加水ハロイサイト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、多孔性合成非晶質シリカ、多孔性炭酸マグネシウム、多孔性アルミナ等の無機顔料;スチレン系プラスチックピグメント、アクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン、マイクロカプセル、尿素樹脂、メラミン樹脂等の有機顔料といった、一般に塗工剤に配合される顔料の中から、1種又は2種以上を適宜選択して用いることができる。
【0162】
なお、前記再生粒子凝集体以外の顔料を用いる場合、レーザー法にて測定した平均粒子径が例えば2〜15μm程度のものであることが好ましい。また塗工剤に配合される顔料全体としては、レーザー法にて測定した平均粒子径が例えば0.1〜10μm程度であることが好ましく、またその15μm以下の粒度分布(体積基準)が55〜70%程度であることが好ましい。
【0163】
顔料とともに塗工剤に配合される接着剤の種類には特に限定がないが、例えば酸化澱粉、変性澱粉、エステル化澱粉、デキストリン等の澱粉類;ポリビニルアルコール(以下、PVAという)等の合成樹脂接着剤;カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白等の蛋白類といった水溶性接着剤や、例えばスチレン−ブタジエン共重合体等の共役ジエン系共重合体ラテックス;アクリル酸エステルの重合体又は共重合体等のアクリル系共重合体ラテックス;エチレン−酢酸ビニル重合体等のビニル系重合体ラテックス;これら各種重合体ラテックスをカルボキシル基等の官能基含有単量体で変性したアルカリ溶解性、アルカリ膨潤性又はアルカリ非溶解性の重合体ラテックスといったラテックス類が例示され、これらの中から1種又は2種以上を適宜選択して用いることができる。これらの中でも、再生粒子凝集体との結合によって適度なインク吸収能が発現され、耐水性が高く、多頻度の湿し水に対しても用紙の湿潤や伸張がより抑制された新聞用紙を得ることができるという点から、特に酸化澱粉等の澱粉類やPVAを用いることが好ましい。
【0164】
なお、前記PVAとしては、例えば平均重合度が50〜2400程度であり、またケン化度が98.0〜99.0モル%程度のものを好適に用いることができる。
【0165】
塗工剤における顔料と接着剤との配合割合は、例えばオフセットカラー印刷等の印刷時における新聞用紙の特性の向上効果が充分に発現されるようにするには、顔料100質量部に対して接着剤が15質量部以下、さらには10質量部以下となるように調整することが好ましい。また接着剤の量が少なすぎて、原紙に対する塗工剤の付着性が不充分にならないようにするには、顔料100質量部に対して接着剤が5質量部以上、さらには8質量部以上となるように調整することが好ましい。
【0166】
なお塗工剤は顔料及び接着剤を主成分とするものであり、これら顔料及び接着剤の塗工剤中の合計量は、通常90質量%程度以上であることが好ましい。
【0167】
本発明の新聞用紙は、前記したように、原紙の白色度が所定範囲内であるが、例えば塗工層内に染料を含有させることにより、原紙の白色度と、該原紙の表面に形成された塗工層表面、すなわち新聞用紙表面の白色度とを平準化することができる。
【0168】
染料を抄紙に用いる場合、内添用の填料とともに原料パルプに内添するのが一般的であり、通常染料は、パルプ繊維に対する染色性は良好であるが、填料に対する染色性は低い。ところが、従来一般的に用いられるクレーや炭酸カルシウムに対する染料の染色性と、再生填料に対する染色性とは異なる。
【0169】
本発明では、前記したように、塗工剤において顔料として特定の再生粒子凝集体が少なくとも配合されるが、該再生粒子凝集体に対して、染料は良好な染色性を示す。しかも、その染色性は、種々の再生粒子凝集体においても、高温で燃焼した再生粒子凝集体と比べて低温で燃焼した再生粒子凝集体の方がより優れる。さらに、再生粒子凝集体を含む顔料の粒径や仕様によっても、染料の挙動が異なる。
【0170】
また、紙用途の染料は、アニオン性を呈する従来一般的に用いられるクレーや炭酸カルシウムよりも、再生粒子凝集体に対する染色性の方が高く、カチオン性直接染料又は塩基性染料は、再生粒子凝集体の仕様により染色性が異なる。
【0171】
そこで、これら染色性の異なる染料を塗工剤において併用すると、染料微細繊維比率及び填料比率の高いフェルト面は、カチオン性直接染料もしくは塩基性染料で着色され、パルプ比率の高いワイヤー面は、主にアニオン性直接染料で着色される。したがって、同色系のアニオン性直接染料とカチオン性直接染料もしくは塩基性染料との使用比率を調整することにより、色相表裏差を小さくすることができ、調整の度合いによっては、色相表裏差をゼロにすることも可能である。
【0172】
また、本発明のように染料を塗工剤に配合して原紙の表面に塗工することにより、従来のように原料パルプに染料を内添する場合と比較して、少量の染料にて着色ムラを抑制することができる。
【0173】
本発明に用いる染料の種類には特に限定がなく、塩基性染料、酸性染料、アニオン性直接染料、カチオン性直接染料、ノニオン性染料等の中から1種又は2種以上を適宜選択し、例えば前記のごとき組み合わせにて使用することができる。
【0174】
前記染料の中でもアニオン性直接染料は退色性が高いが、表面サイズ剤や紙力増強剤と同時に塗工剤中に配合する際に、表面サイズ剤との凝集が起こり難く、取り扱いが容易であるという点から紙力増強剤としてアニオン性澱粉を使用する場合が多く、カチオン性の染料を配合すると、該アニオン性澱粉との凝集物が生成される可能性がある。したがって、染料としてはアニオン性直接染料を用いることがより好ましいが、前記したように、同色系のアニオン性直接染料とカチオン性直接染料もしくは塩基性染料とを併用し、両者の使用比率を調整することにより、色相表裏差を小さくすることができ、調整の度合いによっては、色相表裏差をゼロにすることも可能である。
【0175】
本発明に好適に用いることができる染料として、例えば以下のものが例示される。
【0176】
(アニオン性直接染料)
・R1:赤色アニオン性直接染料
(東亜化成(株)製、登録商標:トーアレッド2BP)
(クラリアントジャパン(株)製、商品名:カルタバイオレット3B70)
(日本化薬(株)製、商品名:カヤフェクトオレンジL)
・Y1:黄色アニオン性直接染料
(東亜化成(株)製、商品名:ミカドファーストイエロー21R)
・B1:青色アニオン性直接染料
(日本化薬(株)製、商品名:ダイレクトスカイブルー5B200)
(日本化薬(株)製、商品名:カヤフェクトブルーRFliquid100)
【0177】
(カチオン性直接染料)
・R2:赤色カチオン性直接染料
(クラリアントジャパン(株)製、
商品名:カルタゾールレッドK2BNリキッド)
(日本化薬(株)製、商品名:カヤフェクトオレンジCS)
・Y2:黄色カチオン性直接染料
(クラリアントジャパン(株)製、
商品名:カルタゾールイエローKGLリキッド)
(日本化学工業所(株)製、商品名:スーパーイエローYSL)
・B2:青色カチオン性直接染料
(クラリアントジャパン(株)製、
商品名:カルタゾールブルーKRLリキッド)
【0178】
(塩基性染料)
・R3:赤色塩基性染料
(保土ヶ谷化学工業(株)製、商品名:アストラフロキシン)
・Y3:黄色塩基性染料
(日本化学工業所(株)製、商品名:スーパーイエローFGL
・B3:青色塩基性染料
(BASFジャパン(株)製、商品名:バサゾールブルー16L)
【0179】
本発明に用いる塗工剤中には、前記顔料及び接着剤や染料の他にも、例えば表面サイズ剤、紙力増強剤、消泡剤、防腐剤等の、製紙分野で通常使用される添加剤を適宜配合することができる。
【0180】
塗工剤を調製する方法には特に限定がなく、顔料及び接着剤、必要に応じて各種添加剤等の配合割合を適宜調整し、適切な温度にて均一な組成となるように撹拌混合し、例えば固形分濃度が1〜10質量%程度となるようにすればよい。
【0181】
なお、前記染料は他の機能性添加剤と反応する場合があるので、このような反応を避けるためには、あらかじめ分散させた染料を、塗工工程直前に塗工剤に均一に分散させることが好ましい。
【0182】
前記塗工剤を原紙の両面に塗工して塗工層を形成する。塗工に用いられる塗工装置には特に限定がなく、例えば2ロールサイズプレス、ブレードメタリングサイズプレス、ロッドメタリングサイズプレス、ゲートロールコーター、ブレードコーターバーコーター、ロッドブレードコーター、エアーナイフコーター等を適宜使用することができる。これらの中でも、原紙の表面に塗工剤を均一にムラなく塗工することができるという点から、ゲートロールコーターやロッドメタリングサイズプレスを用い、フィルムトランスファー方式にて塗工層を形成することが好ましい。
【0183】
塗工層を形成する際の塗工剤の塗工量は、塗工層に充分な表面強度を付与するためには、原紙の片面あたり、固形分で0.2g/m2以上、さらには0.5g/m2以上であることが好ましく、またネッパリ性が高くなり、ブランケットへの貼り付き、断紙などのトラブルが生じないようにするためには、原紙の片面あたり、固形分で3.0g/m2以下、さらには2.0g/m2以下であることが好ましい。
【0184】
また塗工剤を原紙に塗工する際の塗工速度は、原紙の両面に所望の塗工層が形成される限り特に限定がなく、通常の新聞用紙を製造する際の抄紙速度程度であればよい。
【0185】
本発明において、例えば前記塗工装置を用い、原紙の両面に前記塗工量で塗工剤を塗工した後、乾燥させて塗工層を形成させるが、必要に応じて、その表面に平坦化処理を施して仕上げを行うことができる。かかる平坦化処理の際には、例えばスーパーカレンダー、グロスカレンダー、ソフトカレンダー等のカレンダー設備を用いることができる。
【0186】
得られる新聞用紙について、例えばオフセットカラー印刷等の印刷時の特性がさらに向上するという点から、塗工層の表面平滑度Rp値(パーカープリントサーフ粗さ(空気漏洩方式))が、1.96MPaの印圧下で8μm以下、さらには7.5μm以下となるように、例えば前記平坦化処理が施されることが好ましい。また高速輪転印刷における瞬時の版胴と印刷用紙表面との接触(用紙にかかる印圧が瞬時)という点を考慮すると、かかる塗工層の表面平滑度Rp値は、1.96MPaの印圧下で4μm以上、さらには4.5μm以上であることが好ましい。
【0187】
なお本明細書において、塗工層の表面平滑度Rp値は、塗工層表面のプリントサーフラフネスをISO−8791/4「Paper and board−Determination of roughness/smoothness(air leak methods)−Part4:Print−surf method」(1992年)に従って測定したものである。該測定において、測定機は、Messmer社製のPARKER PRINT−SURF Roughness Tester MODEL No.Me−90を用い、条件は、ソフトバッキング、クランプ圧1.96MPaとする。
【0188】
かくして得られる本発明の新聞用紙は、配達や運送における軽量化、高速輪転印刷における紙質強度の確保、印刷不透明性の確保という点から、JIS P 8124「紙及び板紙−坪量測定方法」に記載の方法に準拠して測定した坪量が、35g/m2以上、好ましくは38g/m2以上であり、またその軽量化の点から、かかる坪量が、50g/m2以下、好ましくは48g/m2以下である。
【0189】
前記したように、本発明においては、原紙の白色度と、塗工層表面、すなわち新聞用紙表面の白色度とが平準化されているが、これら両者の白色度の差は5%以下、さらには3%以下であることが好ましい。
【0190】
また本発明の新聞用紙は、JIS P 8150に規定されたCIELab色空間によって算出した用紙表面のL*、a*、b*
*=75.0〜80.0、
*=−3.50〜0.50、
*=3.50〜7.50
であり、該用紙表面のL*、a*、b*は、好ましくは
*=77.0〜79.0、
*=−2.50〜0.00、
*=4.00〜7.00
である。
【0191】
新聞用紙は、一面に文字情報が網羅された情報資料となる新聞用途に用いられるため、過度に色が白いと眼精疲労を来たし、一概にはいえないものの、例えば北日本では暖色系(赤や黄色)の色彩が好まれ、南日本では寒色系(青や緑色)の色彩が好まれる傾向がある。本発明においては、再生粒子凝集体を好適に用いながら、用紙表面のL*、a*、b*をL*=75.0〜80.0、a*=−3.50〜0.50、b*=3.50〜7.50、好ましくはL*=77.0〜79.0、a*=−2.50〜0.00、b*=4.00〜7.00と調整することで、塗工層を有しながらも白色ムラが少なく、不透明度が高いうえ、紙粉によるブランケット汚れ、剣先詰まり及び見当ズレがなく、印刷適性にも優れた新聞用紙を提供することができる。
【0192】
新聞用紙の灰分には特に限定がないが、例えばJIS P 8251「灰分試験方法」に記載の方法に準拠して測定して、原紙で2〜8%程度、塗工後の新聞用紙において6〜10%程度であることが好ましい。
【0193】
本発明において好適に用いることができる再生粒子凝集体は、適度な吸油性と不透明度の向上効果とを有するので、所定の不透明度を確保するにおいて、従来一般に用いられている炭酸カルシウムと比べて比較的少量で不透明性を確保することが可能である。よって、紙中に含有させる填料の配合割合を少なくすることが可能になるので、新聞用紙の軽量化においても紙力を維持しながら不透明性を確保することができる。
【0194】
したがって、本発明においては、前記方法で測定した灰分が2〜10%程度であっても、充分に不透明性を確保することができ、このように灰分が少ない場合は特に、紙粉によるブランケット汚れ、剣先詰まり及び見当ズレがなく、印刷適性にも優れた新聞用紙を提供することが可能となる。
【0195】
また本発明の新聞用紙は、印刷物の見映えや裏抜け防止の点から、印刷不透明度が90%以上、さらには91〜95%であることが好ましい。
【0196】
次に、本発明の新聞用紙を以下の実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0197】
参考例1〜10(再生粒子凝集体の製造)
原料として脱墨フロス(脱墨古紙パルプを製造する古紙処理工程のフローテーション工程から排出された脱墨フロス)を用い、図1に示す製造設備フローに従って、表1〜2に示す条件にて脱水工程、第1燃焼工程(乾燥・燃焼工程)及び第2燃焼工程を順次行い、第2燃焼工程にて粒子を凝集させた後、湿式粉砕処理を施し、再生粒子凝集体1〜10を得た。
【0198】
なお、参考例1〜2及び5〜8においては、再生粒子凝集体を珪酸ナトリウム溶液(水ガラス)に添加、分散させてスラリーを調製した後、加熱攪拌しながら、液温を90℃に保持して希硫酸を添加し、シリカゾルを生成させた。次いで最終反応液のpHを9に調整し、再生粒子凝集体の表面にシリカを析出させてシリカ被覆再生粒子凝集体を得た。
【0199】
得られた再生粒子凝集体(及びシリカ被覆再生粒子凝集体)について、その粒子構成成分中のカルシウム、ケイ素及びアルミニウムの含有量(酸化物換算)、カルシウム、ケイ素及びアルミニウムの合計含有割合(酸化物換算)、体積平均粒子径、外観、ワイヤー摩耗度、生産性及び品質安定性について調べた。これらの結果を表3〜4に示す。
【0200】
なお、表1〜4に示す各種測定値は、以下の方法にて測定した。
【0201】
(ア)脱水物の水分率
試料を採取し、JIS P 8127「紙及び板紙−水分試験方法−乾燥器による方法」に記載の方法に準拠して測定した。
【0202】
(イ)脱水物の体積平均粒子径及び体積分布
JIS Z 8801−2(2000)「試験用ふるい−第2部:金属製板ふるい」にて規定の金属製の板ふるいにて体積平均粒子径を測定し、粒子径が50μm以下の粒子の割合(体積分布)を算出した。
【0203】
(ウ)第1燃焼炉内上端部及び第2燃焼炉のバーナー近傍での酸素濃度
ガス分析装置(型番:PG250型、(株)堀場製作所製)にて測定した。
【0204】
(エ)第1燃焼工程後の燃焼物の未燃率
電気マッフル炉をあらかじめ600℃に昇温後、ルツボに試料を入れて約3時間で完全燃焼させ、燃焼前後の重量変化から未燃率を算出した。
【0205】
(オ)再生粒子凝集体中のカルシウム、ケイ素及びアルミニウムの含有量(酸化物換算)
以下に示す実施例のとおりに原紙の表裏面に塗工層を形成した後、該塗工層表面に散見する再生粒子凝集体を無作為に100個抽出し、個々の凝集体についてX線マイクロアナライザー(型番:E−MAX・S−2150、(株)日立製作所/(株)堀場製作所製)にて粒子構成成分の元素分析を行い、平均値を求めた。また、これらカルシウム、ケイ素及びアルミニウム各々の含有量から、再生粒子凝集体の粒子構成成分中の、カルシウムとケイ素とアルミニウムとの合計含有割合(酸化物換算)を算出した。
【0206】
(カ)再生粒子凝集体の体積平均粒子径
(表2における入口の体積平均粒子径及び出口の体積平均粒子径、並びに表3における体積平均粒子径)
再生粒子凝集体のサンプル10mgを超音波分散機(出力:80W)で3分間分散させた。これを用い、レーザー粒径分布測定装置(レーザー回折式粒度分布測定装置 SALD−2200型、標準屈折率(1)にて測定、(株)島津製作所製)にて、平均粒子径を測定した。
【0207】
(キ)外観
目視にて再生粒子凝集体の色を観察し、白色と灰色とに区分した。
【0208】
(ク)ワイヤー摩耗度
摩耗度試験装置(日本フィルコン(株)製)を用い、スラリー濃度2質量%にて3時間、プラスチックワイヤー摩耗度を測定した。
【0209】
(ケ)生産性
原料の脱水効率、生産性及び粉砕に必要な電力を各々5段階評価し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:いずれも高い評価でバランスが最もよかった。
○:平均してよい評価であった。
△:脱水効率、生産性及び粉砕に必要な電力のいずれかに問題があった。
×:実操業が困難であった。
【0210】
(コ)品質安定性
白色度、粒子径、一定時間間隔における生産量の各項目について、変動程度を測定し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:いずれの項目も全く変動がなかった。
○:いずれの項目も殆ど変動がなかった。
△:いずれかの項目に変動が認められた。
×:いずれの項目にも変動が認められた。
【0211】
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【0212】
表4に示された結果から、参考例1〜10の再生粒子凝集体は、いずれも白色度が高く、ワイヤー摩耗度が低く、生産性及び品質安定性にも優れたものであることがわかる。
【0213】
製造例1〜20(原紙の作製)
原料パルプとして、漂白加圧ストーングランドパルプ(BPGW)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)及び新聞古紙から製造した脱墨古紙パルプ(DIP、機械パルプ含有量:30質量%)を、表5に示す割合で混合してパルプスラリーを得た。このパルプスラリーに、パルプ固形分100質量部に対して、サイズ剤(品名:CS−1700、星光PMC(株)製)を固形分で0.05質量部添加し、長網抄紙機を使用して抄紙し、坪量が約35〜47g/m2の原紙を得た。
【0214】
原紙の白色度をJIS P 8148:2001に準拠して測定した。その結果を表5に併せて示す。
【0215】
【表5】

【0216】
調製例1〜10及び比較調製例1〜10(塗工剤の調製)
表6〜7に示す各成分を均一な組成となるまで室温にて撹拌混合した後、精製水にて希釈し、固形分濃度が約40質量%の塗工剤1〜10及び比較塗工剤1〜10を調製した。なお、表6〜7に示す染料については、あらかじめ分散させたものを、以下に示す実施例1〜10及び比較例1〜10における塗工工程直前に、塗工剤に均一に分散させて用いた。また、各染料の割合は、色目に合わせて適宜調整した。
【0217】
なお、表6〜7に示す顔料、接着剤及び染料は以下のとおりである。
【0218】
(顔料)
カオリン:ブラジル産カオリンクレー
デラミ:デラミネーテッドクレー
1級:1級クレー
2級:2級クレー
ホワイト:ホワイトカーボン
【0219】
(接着剤)
PVA:平均重合度1700、ケン化度98〜99モル%
((株)クラレ製、商品名:PVA117)
SBR:スチレンブタジエンラバーラテックス(日本合成化学工業(株)製)
【0220】
(染料)
R1:赤色アニオン性直接染料
(日本化薬(株)製、商品名:カヤフェクトオレンジL)
Y1:黄色アニオン性直接染料
(東亜化成(株)製、商品名:ミカドファーストイエロー21R)
B1:青色アニオン性直接染料
(日本化薬(株)製、商品名:カヤフェクトブルーRFliquid100)
R2:赤色カチオン性直接染料
(日本化薬(株)製、商品名:カヤフェクトオレンジCS)
Y2:黄色カチオン性直接染料
(日本化学工業所(株)製、商品名:スーパーイエローYSL)
B2:青色カチオン性直接染料
(クラリアントジャパン(株)製、
商品名:カルタゾールブルーKRLリキッド)
R3:赤色塩基性染料
(保土ヶ谷化学工業(株)製、商品名:アストラフロキシン)
Y3:黄色塩基性染料
(日本化学工業所(株)製、商品名:スーパーイエローFGL
B3:青色塩基性染料
(BASFジャパン(株)製、商品名:バサゾールブルー16L)
【0221】
【表6】

【表7】

【0222】
実施例1〜10及び比較例1〜10(新聞用紙の製造)
原紙の表裏面に、表8に示す塗工装置で、塗工速度を適宜調整して、原紙片面あたりの塗工量(固形分)が表8に示す量となるように塗工剤を塗工した後、乾燥させて塗工層を形成した。なお、表裏面の塗工量は同一に調整した。これにソフトカレンダーにて平坦化処理を施し、以下に示す方法にて測定した塗工層の表面平滑度Rp値が表8に示す値となるようにして新聞用紙を得た。
【0223】
なお、表8に示す塗工装置は以下のとおりである。
【0224】
ゲートロール:ゲートロールコーター
ロッドメタリング:ロッドメタリングサイズプレス
2ロール:2ロールサイズプレス
【0225】
【表8】

【0226】
得られた新聞用紙について、以下の方法にて各物性を測定した。これらの結果を表9〜12に示す。また、得られた新聞用紙表面の塗工層について、再生粒子凝集体の存在領域(面積割合)(参考例1〜10)及び再生粒子凝集体と高アスペクト顔料との合計存在領域(面積割合)(調製例1〜10)も測定した。これらの結果を併せて表10に示す。
【0227】
(a)再生粒子凝集体の存在領域(面積割合)
塗工層表面について、一定面積の領域を12000倍で試料の異なる個所を10枚撮影し、前記と同じX線マイクロアナライザーにて各領域における元素分析を行い、画像解析装置(型番:ルーゼックス、(株)ニレコ製)にてカルシウム、ケイ素及びアルミニウムが重なって検出される部分を再生粒子凝集体として選択し、カルシウム、ケイ素及びアルミニウムが重なって検出される部分の面積割合を画像解析装置にて算出した。
【0228】
(b)再生粒子凝集体と高アスペクト顔料との合計存在領域(面積割合)
塗工層表面について、一定面積の領域を12000倍で試料の異なる個所を10枚撮影し、前記と同じX線マイクロアナライザーにて各領域における元素分析を行い、前記と同じ画像解析装置にてカルシウム、ケイ素及びアルミニウムが重なって検出される面積(A)を測定し、またX線マイクロアナライザーにて視認した高アスペクト顔料の個数に高アスペクト顔料の10個平均面積を乗算して算出される面積(B)を測定し、面積(A)と面積(B)とから、合計面積割合を算出した。
【0229】
(c)比較調製例使用顔料の存在領域(面積割合)
塗工層表面について、一定面積の領域を12000倍で試料の異なる個所を10枚撮影し、前記と同じX線マイクロアナライザーにて、ホワイトカーボンであればケイ素単独で、タルクであればケイ素とマグネシウムとが重なって検出される面積を測定し、視認した比較調製例使用顔料の個数にかかる顔料の10個平均面積を乗算して算出される面積を測定し、合計面積割合を算出した。
【0230】
(d)塗工層の表面平滑度Rp値
空気漏洩による平滑度試験器であるプリントサーフラフネスにて、ISO−8791/4(1992年)に従って測定した。測定機は、Messmer社製のPARKER PRINT−SURF Roughness Tester MODEL No.Me−90を用い、ソフトバッキング、クランプ圧1.96MPaの条件で測定した。
【0231】
(e)坪量
JIS P 8124に準拠して測定した。
【0232】
(f)白色度
JIS P 8148(2001)に準拠して測定した。
【0233】
(g)白色度差
新聞用紙の原紙の白色度と塗工後の塗工面の白色度との差を求め、絶対値で表した。
【0234】
(h)L*、a*、b*
JIS P 8150に規定されたCIELab色空間によって算出した。測定装置として、マクベス社製のカラーアナライザー「i5」(SCE方式、視野角2度、光源:CIEイルミナントC)を用いた。
【0235】
(i)灰分 JIS P 8251に準拠して測定した。
【0236】
(j)印刷不透明度
オフセット輪転印刷機(型番:RI−2型、石川島産業機械(株)製)で、オフセット輪転印刷用インク(商品名:ニューズゼットナチュラリス(墨)、大日本インキ化学工業(株)製)のインク量を変えて印刷し、印刷面反射率が9%のときの、印刷前の裏面反射率に対する印刷後の裏面反射率の比率:
(印刷後の裏面反射率/印刷前の裏面反射率)×100(%)
を求めた。なお、これら反射率の測定には、分光白色度測色機(スガ試験機(株)製)を用いた。
【0237】
次に、各新聞用紙について、以下の試験例1〜5に基づいて各特性を調べた。その結果を表9〜10に示す。
【0238】
試験例1(インク吸収ムラ)
オフセットカラー印刷機(型番:SYSTEM C−20、(株)小森コーポレーション製)を使用し、16万部/時の印刷速度で、藍、赤、黄、墨の順に4色カラー印刷を行った。藍/赤の重色部分のインク濃度ムラを目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:インク濃度ムラが全く認められず、均一で鮮明な画像である。
○:インク濃度ムラが殆ど認められず、均一な画像である。
△:インク濃度ムラが認められ、やや不均一な画像である。
×:インク濃度ムラが明らかであり、不均一な画像である。
なお、前記評価基準のうち、◎及び○の場合を実使用可能と判断する。
【0239】
試験例2(ブランケットへの紙粉堆積)
前記試験例1と同じオフセットカラー印刷機を使用し、同じ印刷速度で藍、赤、黄、墨の順に4色カラー印刷を行った。5000部の印刷を行った後、ブランケット非画線部への紙粉の堆積度合いを目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:紙粉の発生が認められない。
○:紙粉の発生が僅かに認められるが、実用上問題がない。
△:紙粉の発生が明確に認められる。
×:ブランケット上に紙粉が多く堆積し、ブランケットが白くなっている。
なお、前記評価基準のうち、◎及び○の場合を実使用可能と判断する。
【0240】
試験例3(カラー印刷適性)
オフセット輪転機(型番:DIAMONDSTAR、三菱重工業(株)製)を使用し、15万部/時の印刷速度で、藍、赤、黄、墨の順に4色カラー印刷を行った。4色目の墨単色部の印刷面濃度及び濃度ムラについて、また4色を重ね合わせた重色部の印刷画像の均一性について目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:墨単色部の印刷面濃度が非常に高く、濃度ムラもない。また重色部で非常に均一な画
像が得られている。
○:墨単色部の印刷面濃度が高く、濃度ムラも殆どない。また重色部で均一な画像が得ら
れている。
△:墨単色部の印刷面濃度がやや低く、濃度ムラも認められる。また重色部で、不均一で
鮮明さがやや悪い画像が得られている。
×:墨単色部の印刷面濃度が低く、濃度ムラも明確に認められる。また重色部で、不均一
で鮮明さに欠けた画像が得られている。
なお、前記評価基準のうち、◎及び○の場合を実使用可能と判断する。
【0241】
試験例4(剣先詰まり回数)
新聞オフセット輪転機(型番:DIAMONDSTAR、三菱重工業(株)製)を用い、両出し15万部/時の印刷速度で印刷を行い、6時間の間に、折り部で剣先詰まりが発生する回数を測定した。
なお、剣先詰まりの発生回数が1回以下の場合を実使用可能と判断する。
【0242】
試験例5(見当ズレ)
前記試験例4と同じ新聞オフセット輪転機を用い、両出し12万部/時の印刷速度で藍、赤、黄、墨の順に4色カラー印刷を行った。ペースター(自動紙継ぎ)直前とペースター後100部目とで、それぞれ1色目と4色目との見当マーク位置の幅方向の差を測定し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:ペースター前後の差が0.1mm未満である。
○:ペースター前後の差が0.1mm以上、0.2mm未満である。
△:ペースター前後の差が0.2mm以上、0.3mm未満である。
×:ペースター前後の差が0.3mm以上である。
なお、前記評価基準のうち、◎及び○の場合を実使用可能と判断する。
【0243】
【表9】

【表10】

【表11】

【表12】

【0244】
実施例1〜10の新聞用紙はいずれも、原紙の白色度が適度の所定範囲内であり、この原紙の表面に、顔料として特定の再生粒子凝集体が配合された塗工剤にて塗工層が形成されており、その表面のL*、a*、b*が、各々所定範囲内に調整されている。したがって、実施例1〜10の新聞用紙は、軽量であるのは勿論のこと、塗工層を有しながらも白色ムラが少なく、不透明度が高いうえ、紙粉によるブランケット汚れ、剣先詰まり及び見当ズレがなく、カラー印刷適性にも優れており、例えば高速オフセットカラー印刷等のオフセット印刷に非常に適した特性を具備していることがわかる。
【0245】
これに対して比較例1〜10の新聞用紙はいずれも、塗工層に含まれる顔料として再生
粒子凝集体が用いられておらず、インク吸収ムラ、ブランケットへの紙粉の堆積、剣先詰まり、見当ズレが著しかったり、カラー印刷適性に劣る等、例えば高速オフセットカラー印刷等のオフセット印刷に必要な特性を具備していないことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0246】
本発明の新聞用紙は、例えば17〜20万部/時間といった高速でのオフセットカラー印刷等のオフセット印刷、特に高速オフセットフルカラー印刷における高繊細印刷等に好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0247】
【図1】再生粒子凝集体の製造設備フローの一部構成例を示す概略図
【図2】第2燃焼炉の部分概略図で、(a)は第2燃焼炉の一部破断概略断面図、(b)は第2燃焼炉の内部展開概略平面図
【符号の説明】
【0248】
10 原料
14 第1燃焼炉
32 第2燃焼炉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原紙の少なくとも片面に、顔料と接着剤とを主成分とし、染料で着色された塗工剤により塗工層が形成された新聞用紙であって、
前記顔料として、古紙パルプを製造する古紙処理工程の脱墨工程で排出される脱墨フロスを主原料とし、脱水工程、乾燥工程、燃焼工程及び粉砕工程を経て、前記燃焼工程において凝集体とした再生粒子凝集体が少なくとも配合され、
JIS P 8148に準拠して測定した原紙の白色度が52〜60%であり、
JIS P 8150に規定されたCIELab色空間によって算出した用紙表面のL*、a*、b*
*=75.0〜80.0、
*=−3.50〜0.50、
*=3.50〜7.50
であることを特徴とする、新聞用紙。
【請求項2】
塗工層表面のX線マイクロアナライザーによる元素分析において、再生粒子凝集体の存在領域が面積割合で30%以上である、請求項1に記載の新聞用紙。
【請求項3】
顔料として、前記再生粒子凝集体とともに、アスペクト比が20以上の高アスペクト顔料が配合された、請求項1に記載の新聞用紙。
【請求項4】
塗工層表面のX線マイクロアナライザーによる元素分析において、再生粒子凝集体と高アスペクト顔料との合計存在領域が面積割合で45%以上である、請求項3に記載の新聞用紙。
【請求項5】
再生粒子凝集体が、前記燃焼工程において凝集体とした再生粒子凝集体を珪酸アルカリ溶液中にて懸濁するとともに鉱酸を添加し、該再生粒子凝集体の周囲をシリカで被覆して得られたシリカ被覆再生粒子凝集体である、請求項1に記載の新聞用紙。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−293144(P2009−293144A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−146031(P2008−146031)
【出願日】平成20年6月3日(2008.6.3)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】