説明

新脈管形成阻害のための方法および組成物

本発明は、ラミニンの変性形態またはタンパク質分解形態のアンタゴニストを使用した、組織における新脈管形成を阻害するためまたは新脈管形成を検出するための、方法および組成物に特徴を有する。本発明のアンタゴニストは、変性ラミニンまたはタンパク質分解されたラミニンに特異的に結合するが、同じラミニンの天然形態には大きく低減した親和性で結合する。本発明の方法は、新脈管形成阻害量の本発明のアンタゴニストを含有する組成物を、組織に投与する工程を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、一般的に、医薬の分野に関し、そして特に、ラミニンの変性形態またはタンパク質分解形態のアンタゴニストを用いて、組織における新脈管形成を阻害するためまたは新脈管形成を検出するための、方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
組織の増殖および転移は、毎年多数の人々に影響を与える。実際、米国のみで、600,000をはるかに超える新たな癌の症例が、毎年診断されているであろうと推定されている(非特許文献1)。重要なことには、多くの研究が、あらゆる固形腫瘍の増殖は、最小サイズを超えた継続的な腫瘍の増殖のために、新たな血管増殖を必要とすることを示唆している(非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5;非特許文献6;非特許文献7;非特許文献8)。多岐にわたる他のヒト疾患がまた、非調節性の血管発達または不適切な血管発達によって特徴付けられる。これらの疾患としては、黄斑変性のような眼疾患、心血管疾患、乾癬、および糖尿病性網膜症が挙げられる。さらに、多くの炎症性疾患もまた、非制御性の新生血管形成に関連する。特に挙げられるのは、関節炎および乾癬である(非特許文献1)。
【0003】
新脈管形成は、既存の脈管から新たな血管が発達する生理学的プロセスとしてとして規定される(非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3)。新脈管形成は、発生の間には極めて重要であるが、成体においては通常休止しており、そして局所的かつ一過性にのみ誘発される。成体の雌においては、これは、生殖周期の一部として毎月起こり、そして両性において、これは、他の比較的重要でないプロセス(例えば、毛髪成長および創傷治癒)に関連する。この複雑なプロセスは、種々の分子(成長因子、細胞接着レセプター、マトリックス分解酵素、および細胞外マトリックス構成要素が挙げられる)の協働を必要とする(非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3)。したがって、新脈管形成をブロックするために設計された治療は、固形腫瘍の増殖に大きく影響し得る。実際、腫瘍の新生血管形成をブロックすることが、種々の動物モデルにおいて腫瘍増殖を大きく阻害し得るという明らかな証拠が提供されており、そしてヒト臨床データもまた、この議論を支持し始めている(非特許文献1;非特許文献9)。重要なことには、多くの研究が、あらゆる固形腫瘍の増殖は、最小サイズを超えた継続的な腫瘍の増殖のために、新たな血管増殖を必要とすることを示唆している(非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5;非特許文献6;Brooksら、1997;非特許文献10)。
【0004】
したがって、多くの研究者が、彼らの抗脈管形成アプローチを、新脈管形成を開始および維持する成長因子およびサイトカインに対して集中させている(非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5;非特許文献6;Brooksら、1997)。しかし、新脈管形成を刺激する能力を有する、重複する効果および特異性を有する多数の異なる成長因子およびサイトカインが存在する。任意の所与のサイトカインをブロックする治療的利益は、この冗長性によって妨害され得る。他の抗脈管形成の標的に対しては、ほとんど注意が払われていない。
【0005】
予測され得るように、新脈管形成は、細胞外マトリックス(ECM)周辺の血管のタンパク質分解性再構築を必要とする。この再構築が新たな血管の発達を助長する微小環境を提供することが、数件の研究から示唆されている(非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5;非特許文献6;Brooksら、1997)。
【0006】
細胞外タンパク質ラミニンは、主に、しかし排他的にではなく、基底膜において見出されるヘテロトリマー分子である(非特許文献11;非特許文献12)。各ラミニン分子は、αラミニン鎖、βラミニン鎖、およびγラミニン鎖のコピーを各々1つずつ有する。ラミニンの少なくとも5つの異なるα鎖(分子量約400kDa)、3つの異なるβ鎖(分子量約200kDa)、および3つの異なるγ鎖(分子量約200kDa)が存在する。これらがランダムにアセンブリしたならば、45種の考えられるアイソフォームが存在するが、このアセンブリは、好適な特定の組み合わせに偏っているようにみえる。例えば、知られている限りでは、γ2鎖のみが、α3鎖およびβ3鎖とアセンブリし、これによってラミニン−5として公知の組み合わせを形成する(非特許文献13)。2000年の時点で、12のアイソフォームが特徴付けられている。以下の表は、関連するGenBank登録番号と一緒に、これらのアイソフォームの特徴を列挙する。
【0007】
【化1】

構造の研究に基づくと、一般に、β鎖およびγ鎖のカルボキシル末端領域は、長い棒様の構造のα鎖の一部に結合する。アミノ末端ドメインは、単量体の腕としてこの三量体構造から突出し、そしてそのカルボキシ末端ドメイン領域は、球状のGドメインとしてこの三量体構造から続いて外に出る
上述のように、新脈管形成の阻害は、腫瘍増殖を制限するための(特に、多剤耐性腫瘍に対処するための代替的手段として)有用な治療であることが提唱されている。また、新脈管形成阻害剤に対する意図される標的(内皮細胞)は癌性でないので、それらが変異して薬剤耐性を獲得する可能性は低い。さらに、成体においては新脈管形成が既にダウンレギュレートされているので、抗新脈管形成薬は、最小限の副作用しか有さないはずである。
【0008】
他に提唱されている新脈管形成の阻害のための手段としては、以下が挙げられる:(1)「脈管形成分子」(例えば、βFGF(線維芽細胞成長因子))の放出の阻害、(2)脈管形成分子の中和(例えば、抗βFGF抗体の使用による)、および(3)脈管形成性刺激に対する内皮細胞応答の阻害。この後者のストラテジーは、大きな注目を受けており、そしてFolkmanおよび共同研究者(非特許文献14)は、新脈管形成を阻害するために使用され得る、数種の内皮細胞応答インヒビターを記載している(コラゲナーゼインヒビター、基底膜ターンオーバーインヒビター、血管抑制ステロイド(angiostatic steroid)、真菌由来新脈管形成インヒビター、血小板因子4、トロンボスポンジン、関節炎薬(例えば、D−ペニシラミン)、およびチオリンゴ酸金(gold thiomalate)、ビタミンDアナログ、α−インターフェロンなどが挙げられる)。(さらなる提唱される新脈管形成のインヒビターについては、非特許文献2;非特許文献15;非特許文献16;および特許文献1、特許文献2、特許文献3、および特許文献4を参照のこと)。
【0009】
さらに、新脈管形成を調節する、同定されたいくつかの因子は、他の機能を有するより大きなタンパク質のフラグメントである。そして、アンギオスタチンは、プラスミノーゲンの38kDaフラグメントであり、そしてエンドスタチンは、コラーゲンの20kDaフラグメントである。さらに、別のタンパク質、PEXは、新脈管形成を遅延させるように見える。逆説的なことに、PEXは、MMP−2(メタロプロテアーゼ)のフラグメントであり、メタロプロテアーゼは、ECMを分解することによって、新脈管形成を可能にし、かつ促進することに強く関わっている。同様に、新脈管形成および転移の別のインヒビター、Tn−1は、トロポニンのフラグメントである。
【特許文献1】米国特許第5,092,885号明細書
【特許文献2】米国特許第5,112,946号明細書
【特許文献3】米国特許第5,192,744号明細書
【特許文献4】米国特許第5,202,352号明細書
【非特許文献1】Varner,J.A.,Brooks,P.C.,およびCheresh,D.A.,Cell Adh.Commun.(1995)3,367〜374
【非特許文献2】Blood,C.H.およびZetter,B.R.,Biochim.Biophys.Acta.(1990)1032:89〜118
【非特許文献3】Weidner,N.ら,J.Natl.Cancer Inst.(1992)84:1875〜1887
【非特許文献4】Weidner,N.ら,N.Engl.J.Med.(1991)324:1〜7
【非特許文献5】Brooks,P.C.ら,J.Clin.Invest.(1995)96:1815〜1822
【非特許文献6】Brooks,P.C.ら,Cell(1994)79:1157〜1164
【非特許文献7】Brooks,P.C.ら,Cell(1996)85,683〜693
【非特許文献8】Brooks,P.C.ら,Cell(1998)92:391〜400
【非特許文献9】Folkman,J Semin.Oncol.(2002)29:15〜18
【非特許文献10】CarmelietおよびJain,Nature Biotech.(2000)407:249〜57
【非特許文献11】Jones,J.C.R.ら,Micr.Res.Tech.(2000)51:211〜213
【非特許文献12】Patarroyo,M.ら,,Semin.Cancer Biol.(2002)12:197〜207
【非特許文献13】Tunggalら,Microsc Res Tech.(2000)51:214〜27
【非特許文献14】Folkmanら,Cancer Biology(1992)3:89〜96
【非特許文献15】Mosesら,Science(1990)248:1408〜1410
【非特許文献16】Ingberら,Lab.Invest.(1988)59:44〜51
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の要旨)
本発明は、新脈管形成を阻害し得る、変性ラミニンまたはタンパク質分解されたラミニンのアンタゴニストを提供する。本発明のアンタゴニストは、変性ラミニンまたはタンパク質分解されたラミニンに特異的に結合するが、同じラミニンの天然形態には大きく低減した親和性で結合する。アンタゴニストは、任意の形態の(or)変性ラミニン(変性ラミニンが挙げられる)に対して特異的であり得る。アンタゴニストは、ラミニンの5種の異なるα鎖のいずれかに対して特異的であり得るか、ラミニンの3種の異なるβ鎖のいずれかに対して特異的であり得るか、ラミニンの3種の異なるγ鎖のいずれかに対して特異的であり得るか、またはその後発見された任意のラミニン鎖に対して特異的であり得る。
【0011】
アンタゴニストは、種々の領域を介して変性ラミニンと結合するが、その種々の領域を介して、ラミニンのネイティブ形態とかなり低い程度で結合する抗体であり得るか、またはその機能的フラグメントであり得る。このような抗体は、モノクローナルであり得るか、またはポリクローナルであり得る。アンタゴニストはまた、変性ラミニンに対して特異性を有するがラミニンのネイティブ形態に対してはより親和性が低い、ポリペプチドまたはペプチドであり得る。アンタゴニストはまた、非ペプチド化合物(例えば、低有機分子、炭水化物もしくはオリゴヌクレオチド)であり得る。
【0012】
したがって、本発明は、組織における新脈管形成を阻害するための方法を記載する。この方法は、この組織に、新脈管形成阻害量の本発明のアンタゴニストを含有する組成物を投与する工程を包含する。本発明のアンタゴニストは、組成物中、単独で投与され得るか、または別の治療化合物と一緒に投与され得る。
【0013】
処置されるべき組織は、新生血管形成が起こっている、新脈管形成の阻害が所望される任意の組織(例えば、疾患組織)であり得る。例示的な組織としては、炎症性の組織、固形腫瘍、転移、線維症を被る組織、脈管炎を被る組織、血管腫、再狭窄を被る組織などが挙げられる。
【0014】
本発明はまた、本発明のアンタゴニストを上記組織と接触させる工程、または本発明のアンタゴニストを、問題の組織を含む器官に由来する血液もしくは血清と接触させる工程によって、組織における新脈管形成を検出するための方法を提供する。このような方法は、エキソビボおよびインビボの両方での使用のために適切である。
【0015】
方法はまた、本発明のアンタゴニストをエキソビボもしくはインビボのいずれかで組織と接触させる工程、または本発明のアンタゴニストを問題の組織を含む器官に由来する血液もしくは血清と接触させる工程によって、腫瘍組織、転移および組織への腫瘍浸潤を検出するために提供される。
【0016】
本発明はまた、変性ラミニンに対して特異的に結合するが、ラミニンのネイティブ形態に対して大きく低下した親和性で結合するアンタゴニストをスクリーニングするための方法を提供する。このようなアンタゴニストは、新脈管形成を阻害するために使用され得る。
【0017】
一局面において、本発明は、変性ラミニンに対して特異的に結合するが、上述のラミニンの各々のネイティブ形態に対して大きく低下した親和性で結合するアンタゴニストに特徴を有する。いくつかの実施形態において、上記アンタゴニストは、ネイティブラミニンに対するその結合と比較した場合、変性ラミニンに対して少なくとも約2倍増加した結合を有する。別の実施形態において、上記アンタゴニストは、変性ラミニンとの間の結合において、ネイティブラミニンに対するその結合と比較した場合、少なくとも約5倍の増加を有する。なお別の実施形態において、上記アンタゴニストは、変性ラミニンとの間の結合において、ネイティブラミニンに対するその結合と比較した場合、少なくとも約6倍の増加を有する。さらなる実施形態において、上記アンタゴニストは、変性ラミニンとの間の結合において、ネイティブラミニンに対するその結合と比較した場合、少なくとも約10倍の増加を有する。
【0018】
別の局面において、本発明は、変性ラミニン中の骨格ドメインに対して特異的に結合するが、上記ラミニンのネイティブ形態中の上述の骨格ドメインに対して、約1/2以下の親和性で結合するアンタゴニストに特徴を有する。一実施形態において、変性ラミニンのドメインの骨格に特異的に結合するが、このラミニンのネイティブ形態の上述の骨格ドメインに約1/5以下の親和性で結合するアンタゴニストである。別の実施形態において、変性ラミニンの骨格ドメインに特異的に結合するが、このラミニンのネイティブ形態の上述の骨格ドメインに約1/6以下の親和性で結合するアンタゴニストである。さらなる実施形態において、変性ラミニンの骨格ドメインに特異的に結合するが、このラミニンのネイティブ形態の上述の骨格ドメインに約1/10以下の親和性で結合するアンタゴニストである。
【0019】
本発明の局面の好ましい実施形態において、上記アンタゴニストは、モノクローナル抗体である。さらになお好ましい実施形態において、このアンタゴニストは、以下のモノクローナル抗体クローン:LMD2、LMD9、LMD21、LMD24、LMD52、LMD105、LMD1、LMD5、LMD11、LMD17、LDM26、LMD13、LMD14、LMD15、LMD16、LMD23、LMD30、LMD209、またはLMD418の結合特異性を有するモノクローナル抗体である。他の実施形態において、本発明のアンタゴニストは、ポリクローナル抗体である。さらなる実施形態において、本発明のアンタゴニストは、ヒト化モノクローナル抗体である、なおさらなる好ましい実施形態において、本発明のアンタゴニストは、化学的に修飾されたモノクローナル抗体である。さらに他の実施形態において、本発明のアンタゴニストは、モノクローナル抗体のフラグメントである。
【0020】
本発明の局面の他の好ましい実施形態において、本発明のアンタゴニストは、ポリペプチド、直鎖状ペプチド、または環状ペプチドである。本発明の局面の他の好ましい実施形態において、本発明のアンタゴニストは、非ペプチド化合物である。本発明の局面のさらなる実施形態において、本発明のアンタゴニストは、オリゴヌクレオチド、炭水化物、脂質、または合成ポリマーである。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態において、上述のアンタゴニストは、細胞傷害性因子、細胞増殖抑制性因子、またはラジオアイソトープに結合体化され得る。
【0022】
別の局面において、本発明は、組織における新脈管形成を阻害する方法に特徴を有する。この方法は、上述の組織に本発明のアンタゴニストを投与する工程を包含する。このアンタゴニストは、静脈内に、経皮的に、滑液包内に、筋肉内に、腫瘍内に、眼内に(intraoculory)、鼻腔内に、関節内に、鞘内に、局所的に、または経口的に、投与され得る。このアンタゴニストはさらに、化学療法または放射線治療と組み合わせて投与され得る。いくつかの実施形態において、本発明のアンタゴニストは、ラジオアイソトープと結合体化され得る。
【0023】
いくつかの実施形態において、処置されるべき組織は、炎症性であり、そして新脈管形成が起こっている。他の実施形態において、組織は、哺乳動物中に存在する。さらなる実施形態において、組織は、関節炎組織、眼組織、網膜組織、血管腫、肺組織、腎臓組織、または脈管組織である。
【0024】
本発明のさらなる局面において、本発明は、組織における腫瘍増殖、腫瘍転移、または転移した腫瘍の増殖を阻害する方法に特徴を有する。この方法は、本発明のアンタゴニストを投与する工程を包含する。この方法は、さらなる工程を包含し得る。この局面において、本発明のアンタゴニストは、静脈内に、経皮的に、滑液包内に、筋肉内に、腫瘍内に、眼内に、鼻腔内に、関節内に、鞘内に、局所的に、または経口的に、投与され得る。特定の実施形態において、本発明のこのアンタゴニストは、化学療法と組み合わせて投与されるか、放射線治療と組み合わせて投与されるか、またはこのアンタゴニストが最初にラジオアイソトープと結合体化された後に投与される。
【0025】
特定の実施形態において、この腫瘍増殖、腫瘍転移、または転移した腫瘍の増殖は、黒色腫、癌腫、肉腫、線維肉腫、神経膠腫、または星状細胞腫である。本発明のいくつかの実施形態において、この処置方法は、組織を加熱する工程を包含する。
【0026】
本発明のさらなる局面において、本発明は、組織において乾癬、黄斑変性、再狭窄、慢性関節リウマチ、強皮(scleraderma)、線維症、または脈管炎を阻害する方法に特徴を有し、本発明のアンタゴニストを投与する工程を包含する。この方法は、さらなる工程を包含し得る。この局面において、本発明のアンタゴニストは、静脈内に、経皮的に、滑液包内に、筋肉内に、腫瘍内に、眼内に、鼻腔内に、関節内に、鞘内に、局所的に、または経口的に、投与され得る。特定の実施形態において、本発明のこのアンタゴニストは、化学療法と組み合わせて投与されるか、放射線治療と組み合わせて投与されるか、またはこのアンタゴニストが最初にラジオアイソトープと結合体化された後に投与される。本発明のいくつかの実施形態において、この処置方法は、組織を加熱する工程を包含する。
【0027】
本発明のさらなる局面において、本発明は、生物由来の組織、血液または血清を本発明のアンタゴニストと接触させる工程によって、その生物における新脈管形成を検出する方法に特徴を有する。この新脈管形成を検出する方法は、他の工程を包含し得る。いくつかの実施形態において、接触される組織、血液または血清は、インビボにある。さらなる実施形態において、接触される組織、血液または血清は、インビボにあり、そして本発明のアンタゴニストは、静脈内に、経皮的に、滑液包内に、筋肉内に、腫瘍内に、眼内に、鼻腔内に、関節内に、鞘内に、局所的に、または経口的に、投与される。この局面または他の局面の特定の実施形態において、このアンタゴニストは、蛍光色素、放射性タグ、常磁性重金属、診断用色素、量子のドット(quantum dot)、または酵素と結合体化される。
【0028】
本発明のなおさらなる局面において、本発明は、生物由来の組織、血液または血清を本発明のアンタゴニストと接触させる工程によって、その生物における腫瘍、腫瘍浸潤、または転移を検出する方法に特徴を有する。この検出方法は、さらなる工程を包含し得る。いくつかの実施形態において、接触される組織、血液または血清は、エキソビボにある。他の実施形態において、接触される組織、血液または血清は、インビボにある。さらなる実施形態において、接触される組織、血液または血清は、インビボにあり、そして本発明のアンタゴニストは、静脈内に、経皮的に、滑液包内に、筋肉内に、腫瘍内に、眼内に、鼻腔内に、関節内に、鞘内に、局所的に、または経口的に、投与される。この局面または他の局面の特定の実施形態において、このアンタゴニストは、蛍光色素、放射性タグ、常磁性重金属、診断用色素、量子のドット、または酵素と結合体化される。
【0029】
さらなる局面において、本発明は、変性ラミニンアンタゴニストについてスクリーニングする方法に特徴を有する。この方法は、以下の工程:(a)候補アンタゴニストを提供する工程;(b)目的のラミニンを、熱的変性手段、化学的変性手段、または酵素的変性手段によって変性させる工程;(c)上記候補アンタゴニストの、変性ラミニン分子に対する第一の親和性を測定する工程;(d)上記候補アンタゴニストの、ネイティブラミニン分子に対する第二の親和性を測定する工程;(e)上記変性ラミニンとの第一の親和性が上記ネイティブラミニンとの第二の親和性よりも大きい場合、上記候補アンタゴニストを変性ラミニンアンタゴニストとして選択する工程。一実施形態において、この候補アンタゴニストは、低分子化合物である。別の重複する実施形態において、この候補アンタゴニストは、非ペプチド化合物、オリゴヌクレオチド、ポリペプチド、直鎖状ポリペプチド、または環状ペプチド、モノクローナル抗体、またはポリクローナル抗体である。この局面および他の局面の他の実施形態において、結合の親和性は、ラジオイムノアッセイ、FRET、または酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)によって測定される。
【0030】
いくつかの実施形態において、候補アンタゴニストは、ラミニンのネイティブ形態に対する結合の親和性よりも少なくとも約2倍大きい親和性で、変性ラミニンに特異的に結合する。他の実施形態において、候補アンタゴニストは、ラミニンのネイティブ形態に対する結合よりも親和性の少なくとも約5倍大きい親和性で、変性ラミニンに特異的に結合する。さらなる実施形態において、候補アンタゴニストは、ラミニンのネイティブ形態に対する結合の親和性よりも少なくとも約6倍大きい親和性で、変性ラミニンに特異的に結合する。さらに他の実施形態において、候補アンタゴニストは、ラミニンのネイティブ形態に対する結合の親和性よりも少なくとも約10倍大きい親和性で、変性ラミニンに特異的に結合する。
【0031】
別の局面において、本発明は、本発明のアンタゴニストを使用して、血液中の変性ラミニンを検出する方法に特徴を有する。本発明の特定の実施形態において、血液中の変性ラミニンを検出する方法は、組織損傷を検出するために使用される。
【0032】
さらなる局面において、本発明は、組織損傷の調節因子についてスクリーニングする方法に特徴を有する。この方法においては、試験化合物が生物に投与され、そして循環する変性ラミニンの量が、本発明のアンタゴニストに対する結合によって測定される。
【0033】
さらなる局面において、本発明は、炎症の調節因子についてスクリーニングする方法に特徴を有する。この方法においては、試験化合物が生物に投与され、そして循環する変性ラミニンの量が、本発明のアンタゴニストに対する結合によって測定される。
【0034】
なお別の局面において、本発明は、新脈管形成の調節因子についてスクリーニングする方法に特徴を有する。この方法においては、試験化合物が生物に投与され、そして循環する変性ラミニンの量が本発明のアンタゴニストに対する結合によって測定される。
【0035】
さらに別の局面において、本発明は、組織における細胞接着を阻害する方法に特徴を有する。この方法は、本発明のアンタゴニストを投与する工程を包含する。
【0036】
別の局面において、本発明は、細胞移動を阻害する方法に特徴を有する。この方法は、本発明のアンタゴニストを投与する工程を包含する。
【0037】
なお別の局面において、本発明は、異常な状態を処置または予防する方法に特徴を有する。この方法は、本発明のアンタゴニストを投与する工程を包含する。この局面および他の局面の実施形態において、上記異常な状態は、自己免疫疾患および炎症からなる群より選択される。この局面および他の局面の別の実施形態において、本発明のアンタゴニストは、二次モノクローナル抗体と一緒に投与される。
【0038】
なお別の局面において、本発明は、変性ラミニンアンタゴニストについてスクリーニングする方法に特徴を有する。この方法は、変性ラミニンに対する結合についてLMD2クローン由来の抗体と競合する候補アンタゴニストの能力によって、アンタゴニストを選択する工程を包含する。他の実施形態において、ネイティブラミニンに対して変性ラミニンに優先的な結合を示すモノクローナル抗体が、この方法に使用され得る。
【0039】
本発明のアンタゴニストは、変性ラミニン中の骨格ドメインまたはポリペプチド鎖に、ネイティブラミニンの骨格ドメインに対するその結合よりも2倍、5倍、6倍、または10倍大きい親和性で、結合し得る。
【0040】
さらなる局面において、本発明は、ラミニンのエピトープに特徴を有する。ここで、このエピトープは、本発明の抗体またはアンタゴニストによって、変性ラミニンにおいて、本発明の抗体またはアンタゴニストがネイティブラミニンのネイティブエピトープと結合するよりも大きな親和性で、結合される。このエピトープは、精製または単離されたペプチドであり得る。このエピトープは、このエピトープのアミノ酸以外のアミノ酸を含み得る。このエピトープはまた、本質的に、このエピトープのアミノ酸から構成され得る。このエピトープが、このエピトープのアミノ酸に加えてアミノ酸を含む場合、それは、約1〜10個のさらなるアミノ酸を含み得るか、約10〜33個のさらなるアミノ酸を含み得るか、約30〜50個のさらなるアミノ酸を含み得るか、約40〜66個のさらなるアミノ酸を含み得るか、または約50〜100個のさらなるアミノ酸を含み得るか、あるいは約100個より多くのさらなるアミノ酸を含み得る。
【0041】
本発明の局面の全てにおいて、本明細書において記載される方法はまた、本明細書において記載された状態を処置するための医薬の調製において使用され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
(発明の詳細な説明)
新脈管形成インヒビターは、固形腫瘍のための治療として非常に有望である。分解された細胞外マトリックス(ECM)タンパク質は、新脈管形成において積極的かつ本質的な役割を果たす。タンパク質分解性再構築においてのみ露出する潜在エピトープは、重大かつ本質的な役割を果たす。成熟ラミニンのネイティブな三次元構造の変性は、新脈管形成を制御または調節する潜在調節領域を露出する可能性がある。したがって、ラミニン中の潜在部位は、おそらく、内皮細胞表面レセプターを結合し、それによって内皮細胞の挙動を改変することによって、新脈管形成において積極的な役割を果たすと予測される。これらの潜在調節領域の調節またはそれに対する結合は、新脈管形成の診断および/または阻害のための従来認識されていない手段を提供する。これらのラミニンの潜在部位のアンタゴニストは、ECMの再構築がこのような部位で必ず大きいので、新脈管形成/腫瘍増殖をブロックする。ECMタンパク質(例えば、ラミニン)を分解するためのモノクローナル抗体はまた、標的薬物送達のために有用であることを証明し得る。さらに、このようなモノクローナル抗体は、脈管形成状態を有する患者の血清中において分解されたECMタンパク質のフラグメントを検出するための診断用途を有し得る。
【0043】
新脈管形成は、既存の脈管構造からの新たな脈管の発達である。このプロセスにおいて、脈管を裏打ちする内皮細胞は、サイトカインによって活性化される(Klagsbrun,M.(1992)Seminars in Cancer Biology 3(2),81〜7;Neufeld,G.,Cohen,T.,Gengrinovitch,S.,およびPoltorak,Z.(1999)FASEB Journal 12(1),9〜22)。活性化された内皮細胞は、増殖し、そして脈管周辺の基底膜を分解するプロテアーゼを分泌する。新脈管形成の初期段階の間、活性化された内皮細胞は、タンパク質分解により改変された内皮下基底膜を通って浸潤すると考えられる(Kleiner,D.E.,およびStetler−Stevenson,W.G.(1999)Cancer Chemotherapy & Pharmacology 43 補遺,S42〜51;Birkedal−Hansen,H.(1995)Current Opinion in Cell Biology 7(5),728〜35)。間質のコラーゲンもまた、内皮細胞が間質空間に侵入するにしたがって分解される。新脈管形成の成熟期の間、活性化された内皮細胞は、形態形成を受け、毛細管様の管へと再編成される。脈管の平滑筋細胞が補充されて、この管の周りに鞘を形成する。最終的に、内皮細胞は、新たなECM成分を分泌し、アクセサリー細胞(例えば、周皮細胞)との結合を形成し、そして成熟血管へと分化する(Hirschi,K.K.,Rohovsky,S.A.,およびD’Amore,P.A.(1997)Transplant Immunology 5(3),177〜8;Lampugnani,M.G.,およびDejana,E.(1997)Current Opinion in Cell Biology 9(5),674〜82)。
【0044】
新脈管形成は、多くの異なるファミリーの分子の調整された活性に依存する。これらのクラスの各々は、抗脈管形成治療のための潜在的な標的のセットを表す。いくつかの十分研究された脈管形成因子としては、成長因子およびそれらのレセプター、タンパク質分解酵素;細胞接着分子、およびECM構成要素が挙げられる(Leek,R.D.,Harris,A.L.,およびLewis,C.E.(1994)Journal of Leukocyte Biology 56(4),423〜35;Mignatti,P.,およびRifkin,D.B.(1996)Enzyme & Protein 49(1〜3),117〜37;Pepper,M.S.,およびMontesano,R.(1990)Cell Differentiation & Development 32(3),319〜27;Brooks,P.C.(1996)European Journal of Cancer 32A(14),2423〜9;Brooks,P.C.(1996)Cancer & Metastasis Reviews 15(2),187〜94;Luscinskas,F.W.,およびLawler,J.(1994)FASEB Journal 8(12),929〜38 ;Carey,D.J.(1991)Annual Review of Physiology 53,161〜77;Ingber,D.E.,およびFolkman,J.(1989)Cell 58(5),803〜5;O’Reilly,M.S.,Holmgren,L.,Shing,Y.,Chen,C.,Rosenthal,R.A.,Moses,M.,Lane,W.S.,Cao,Y.,Sage,E.H.,およびFolkman,J.(1994)Cell 79(2),315〜28)。重要なことに、これらの分子のファミリーは、単独では機能せず、新たな血管発達のために協働して機能する複雑なネットワークに関係する。これら4つのクラスの新脈管形成調節因子の重要なメンバーの活性をブロックすることは新脈管形成をブロックすることが示された。
【0045】
(マトリックス再構築プロテアーゼ)
新脈管形成の浸潤段階の間、活性化された内皮細胞は、多くのマトリックス変質酵素を利用して、局所ECMを再構築する(Kleiner & Stetler−Stevenson(1999);Birkedal−Hansen,H.(1995))。このタンパク質分解性再構築は、新たな血管の発達を助長する微小環境の生成に役立つ。マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)は、基底膜および間質ECMの再構築に重要な役割を果たすと考えられている。さらに、セリンプロテアーゼもまた、新脈管形成に重要な役割を果たすことが示されている。これらのMMPのインヒビターは、現在、可能性のある抗脈管形成治療として探索されている。MMPは、非脈管形成部位で重要な役割を果たす可能性があるので、MMPインヒビターは、有害な副作用を有する可能性がある。
【0046】
(インテグリン)
ECM(ネイティブおよび分解性)と脈管細胞との間の結合は、インテグリンと称される細胞様面レセプターのクラスによって優勢に媒介される。(Brooks,P.C.(1996)European Journal of Cancer;Brooks,P.C.(1996)Cancer & Metastasis Reviews;Luscinskas & Lawler(1994))。インテグリンは、α鎖およびβ鎖から構成される細胞表面ヘテロダイマーのファミリーであり、ECM構成要素および他の細胞との細胞相互作用を媒介する(同上)。研究は、インテグリンが、脈管細胞の接着および移動の調節において重要な役割を果たすという証拠を提供した(同上)。ネイティブECMがあるセットのインテグリンを介して脈管細胞と相互作用する一方、分解されたECMは、(重複するが)異なるセットのインテグリンと相互作用する。ECMのタンパク質分解性再構築におけるインテグリン相互作用の変化が、脈管細胞の細胞シグナル伝達の変化を生じ、脈管細胞の増殖および移動のプロセスを促進している可能性がある。
【0047】
(分解マトリックスタンパク質)
ECMタンパク質のMMP媒介性分解は、ネイティブタンパク質においては、そのネイティブタンパク質のコア内に埋もれているかもしくは異なる構造を有するかのいずれかである部位を露出させる。いくつかの潜在部位の露出が新脈管形成のプロセスに重要な役割を果たすことが、今や明らかである。これらの潜在部位のアンタゴニストは、新脈管形成のために必要な必須のシグナルをブロックする。
【0048】
ECMは、非常に安定である。例えば、多くのコラーゲンの半減期は1年を超える。結果として、分解ECMタンパク質は、脈管形成部位において豊富に見出される一方、正常組織においてはほとんど見いだされない。例えば、モノクローナル抗体(Mab HUIV26)は、変性IV型コラーゲンと特異的に反応するが、コラーゲンのネイティブ形態とは反応せず、腫瘍組織において脈管形成部位を染色するが、正常組織を染色しない。脈管形成部位におけるECMの大規模な再構築と正常組織におけるその欠如とは、分解ECMのアンタゴニストの診断用途および治療用途のために重要な意味を有する。第一に、新脈管形成の間に生成された分解ECMタンパク質は、血流中に出て行く可能性がある。したがって、これらの分解ECMタンパク質を特異的に認識するモノクローナル抗体が、特異的な脈管形成マーカーの存在について血清をモニタリングすることによる、増強された新脈管形成を伴う疾患のための診断ツールとして有用であることが判明し得る。第二に、分解ECMタンパク質は、腫瘍中の脈管形成部位において高濃度であるが、周辺の正常組織においては非常に低レベルであるように見えるので、分解ECM特異的モノクローナル抗体は、腫瘍部位への毒性分子または画像化用分子の送達のためのビヒクルとして使用され得る。このようなモノクローナル抗体に細胞傷害剤を結合体化することによって、この細胞傷害剤が腫瘍に送達され得る。画像化用プローブ(MRI用途での常磁性分子)を結合体化することによって、モノクローナル抗体は、脈管形成部位の非侵襲性の検出において使用され得る。第三に、Mab HUIV26(コントロールのアイソタイプ適合抗体ではない)の全身性投与は、ニワトリCAMアッセイにおいてbFGF誘導性新脈管形成を阻害し(<90%阻害)、かつ種々のマウス腫瘍モデルにおいて腫瘍増殖を阻害する(50〜90%阻害)。これらの結果は、IV型コラーゲンの分解/変性が、新脈管形成において積極的かつ本質的な役割を果たす部位を露出させることを示す。したがって、他の分解ECMタンパク質(例えば、ラミニン)のアンタゴニストは異常な新脈管形成が疾患の重要な要因である疾患の処置において有用であることが、判明し得る。
【0049】
浸潤性細胞(例えば、癌細胞)の検出のためのラミニン鎖特異的プローブの使用の例としては、Tryggvasonらによる、米国特許第5,660,982号および同第6,143,505号および米国特許出願公開第2005/0019332 A1号を参照のこと。
【0050】
他のECM分子の分解/変性もまた、新脈管形成に必須の役割を果たす重要な部位を露出する。例えば、変性I型コラーゲンを認識するが、ネイティブI型コラーゲンを認識しないMab XL313は、CAMアッセイにおける可能性のある新脈管形成インヒビターであり、そしてマウス腫瘍モデルにおいて腫瘍増殖をブロックする。しかし、変性I型コラーゲンもしくは変性IV型コラーゲンを認識する全てのモノクローナル抗体が新脈管形成をブロックする可能性は低い。さらに、コラーゲン以外のさらなるECM分子の分解が、新脈管形成および腫瘍増殖に本質的な役割を果たす部位の露出を引き起こす可能性がある。最近の研究は、ECMタンパク質内に存在する異なるドメインが、新脈管形成と腫瘍増殖とを調節することを示唆している。実際、プラスミノーゲンのような分子のフラグメント(すなわち、アンギオスタチン)、XVIII型コラーゲンのような分子のフラグメント(すなわち、エンドスタチン)、XV型コラーゲンのような分子のフラグメント(すなわち、レスチン)、MMP−2のような分子のフラグメント(すなわち、PEXドメイン)、フィブロネクチン、およびトロンボスポンジンが、全て新脈管形成を調節することが示されている(O’Reilly,M.S.,Holmgren,L.,Shing,Y.,Chen,C.,Rosenthal,R.A.,Moses,M.,Lane,W.S.,Cao,Y.,Sage,E.H.,およびFolkman,J.(1994)Cell 79(2),315〜28;O’Reilly,M.S.,Boehm,T.,Shing,Y.,Fukai,N.,Vasios,G.,Lane,W.S.,Flynn,E.,Birkhead,J.R.,Olsen,B.R.,およびFolkman,J.(1997)Cell 88(2),277〜85;Ramchandran,R.,Dhanabal,M.,Volk,R.,Waterman,M.J.,Segal,M.,Lu,H.,Knebelmann,B.,およびSukhatme,V.P.(1999)Biochemical & Biophysical Research Communications 255(3),735〜9;Brooks,P.C.,Silletti,S.,von Schalscha,T.L.,Friedlander,M.,およびCheresh,D.A.(1998)Cell 92(3),391〜400;Castellani,P.,Viale,G.,Dorcaratto,A.,Nicolo,G.,Kaczmarek,J.,Querze,G.,およびZardi,L.(1994)International Journal of Cancer 59(5),612〜8;Tolsma,S.S.,Volpert,O.V.,Good,D.J.,Frazier,W.A.,Polverini,PlJ.,およびBouck,N.(1993)Journal of Cell Biology 122(2),497〜511)。
【0051】
(新脈管形成におけるECMの積極的役割の証拠)
ECMは、非常に単純化された形式において、2つの一般的区画から構成されるものとして特徴付けられ得る。この2つの区画の概念を採用すると、ECMは、間質ECMと基底板もしくは基底膜とに分けられ得る。基底膜は、ECMの特殊化された形態であり、表皮および内皮の両方をそれらの下にある間葉から分ける(Timpl,R.(1989)European Journal of Biochemestry 180(3),487〜502;Timpl,R.,およびBrown,J.C.(1996)Bioessays 18(2),123〜32;Yurchenco,P.D.,およびSchittny,J.C.(1990)FASEB Journal 4(6),1577〜90;Schittny,J.C.,およびYurchenco,P.D.(1989)Current Opinion in Cell Biology 1(5),983〜8)。基底膜の主成分としては、ラミニン、IV型コラーゲン、エンタクチン(enactin)/ニドジェン、SPARC、パーレカン(perlecan)および他のプロテオグリカンが挙げられる。これらの成分は、複雑なパターンの分子相互結合を示し、そしてメッシュ様のネットワークへと組織化される超分子アセンブリを示す(同上)。
【0052】
基底膜のメッシュ様ネットワークは、一連の係留線維(VII型コラーゲンおよびフィブリンが挙げられる)によって、その下にある間質マトリックスに結合される(同上)。十分特徴付けられた成分のいくつかとしては、コラーゲンの種々の遺伝的に異なる形態(例えば、I型コラーゲン、II型コラーゲン、III型コラーゲン、およびV型コラーゲン)が挙げられる。さらに、多くの非コラーゲン性糖たんぱく質(フィブロネクチン、フィブリノーゲン/フィブリン、トロンボスポンジン、およびビトロネクチンが挙げられる)もまた、間質マトリックスを構成するのに役立つ(Adechi,E.,Hopkinson,I.,およびHayashi,T.(1997)International Review of Cytology 173,73〜156;Mosher,D.F.,Sottile,J.,Wu,C.,およびMcDonald,J.A.(1992)Curr.Opion.Cell Biol.4,810〜818)。最後に、多くのプロテオグリカンもまた、間質マトリックスの複雑な構造に貢献している。インテグリンとともにECMを作り上げるこのタンパク質のネットワークは、協働して機能し、新たな血管の発達を調節する。
【0053】
歴史的に、ECMは、細胞および組織に機械的および構造的支持を提供すると考えられていた。しかし、新しい分子的技術、細胞的技術、および生化学的技術の発達に従って、ECMについてのこの限られた見解は、劇的に拡大された。実際、ECMは、細胞および組織に機械的調節機能と生化学的調節機能との両方を提供する、繊維性タンパク質、プロテオグリカンおよび構造糖タンパク質の複雑な相互結合ネットワークとして大まかに定義され得る。新脈管形成において、ECMの3次元構造内に含まれる調節情報は、新たな血管を形成し得るレシピエント細胞に認識かつ伝達されなければならない。この目的のため、ECM成分のインテグリン媒介性の連結が、個々のシグナル伝達経路を活性化し、次いでこれが新生血管形成を調節し得ることが示された。上記で考察されるように、コラーゲンの変性形態を特異的に認識する数種のモノクローナル抗体は、新脈管形成の潜在的インヒビターである。以下は、これらのモノクローナル抗体のうちの1つについての重要な観察のまとめであり、新脈管形成および腫瘍増殖の調節における分解ECMタンパク質の重要性を示す。
【0054】
HUIV26と称される高度に特異的なモノクローナル抗体(変性IV型コラーゲンと反応するが、ネイティブの3重らせんIV型コラーゲンとは反応しない)は、本明細書中に示される免疫サブトラクション(subtractive immunization)の方法によって開発された。この抗体(Mab HUIV26)は、変性IV型ヒトコラーゲンに特異的に結合するが、ネイティブタンパク質には、反応性があったとしても、ほとんど結合を示さない。さらに、このモノクローナル抗体は、フィブロネクチン、ビトロネクチン、フィブリノーゲン、ネイティブI型コラーゲンまたは変性I型コラーゲンを含む他のECM成分とは相互作用しない。
【0055】
新脈管形成をブロックする2つの他のモノクローナル抗体が、特徴付けられており、これは、他のECMタンパク質の潜在部位を特異的に認識する。このことは、ネイティブECMが、新脈管形成を支持することに重要な役割を果たす大量の潜在部位を含むことを示唆する。
【0056】
MMPおよびセリンプロテアーゼのようなプロテアーゼは、潜在部位を露出させることに役割を果たすように見える。プラスミノーゲン、コラーゲンXVIII、コラーゲンXV、MMP−2、フィブロネクチンおよびトロンボスポンジンのような分子のフラグメントが新脈管形成を調節することが示された(O’Reilly,M.S.,Holmgren,L.,Shing,Y.,Chen,C.,Rosenthal,R.A.,Moses,M.,Lane,W.S.,Cao,Y.,Sage,E.H.,およびFolkman,J.(1994)Cell 79(2),315〜28;O’Reilly,M.S.,Boehm,T.,Shing,Y.,Fukai,N.,Vasios,G.,Lane,W.S.,Flynn,E.,Birkhead,J.R.,Olsen,B.R.,およびFolkman,J.(1997)Cell 88(2),277〜85;Ramchandran,R.,Dhanabal,M.,Volk,R.,Waterman,M.J.,Segal,M.,Lu,H.,Knebelmann,B.,およびSukhatme,V.P.(1999)Biochemical & Biophysical Research Communications 255(3),735〜9;Brooks,P.C.,Silletti,S.,von Schalscha,T.L.,Friedlander,M.,およびCheresh,D.A.(1998)Cell 92(3),391〜400 ;Castellani,P.,Viale,G.,Dorcaratto,A.,Nicolo,G.,Kaczmarek,J.,Querze,G.,およびZardi,L.(1994)International Journal of Cancer 59(5),612〜8 ;Tolsma,S.S.,Volpert,O.V.,Good,D.J.,Frazier,W.A.,Polverini,PlJおよびBouck,N.(1993)Journal of Cell Biology 122(2),497〜511)。これらのフラグメントは、新脈管形成を調節する細胞表面レセプターのアンタゴニストとして働き得る。
【0057】
本発明において、新脈管形成は、ECM成分のラミニン中に見出される特定の潜在部位を拮抗することによって阻害され得る。本発明において、ラミニン中の潜在部位と特異的に反応するモノクローナル抗体または他のアンタゴニストが同定され、そしてそれらのアンタゴニスト活性が試験される。
【0058】
ラミニン自体は、α、βおよびγと称される3つの異なる鎖から構成される、約900kDaの大きなヘテロトリマーである(Yurchenco,P.D.,およびRuben,G.C.(1987)Journal of Cell Biology 105(6 Pt1),2559〜68;Yurchenco,P.D.,Cheng,Y.S.,およびColognato,H.(1992)Journal of Cell Biology 117(5),1119〜33;Engvall,E.(1993)Kidney International 43(1),2〜6;Ekblom,M.,Falk,M.,Salmivirta,K.,Durbeej,M.,およびEkblom,P.(1998)Annals of the New York Academy of Sciences 857,194〜211;Mayer,U.,Kohfeldt,E.,およびTimpl,R.(1998)Annals of the New York Academy of Sciences 857,130〜42)。ラミニンが、細胞接着、細胞移動を支持し、シグナル伝達、遺伝子発現および分化を調節することが示された(同上)。ラミニンがインテグリンおよび非インテグリンレセプター両方によって内皮細胞相互作用を支持することが、公知である(Schnaper,H.W.,Kleinman,H.K.,およびGrant,D.S.(1993)Kidney International 43(1),20〜5;Basson,C.T.,Knowles,W.J.,Bell,L.,Albelda,S.M.,Castronovo,V.,Liotta,L.A.,およびMadri,J.A.(1990)Journal of Cell Biology 110(3),789〜801;Nomizu,M.,Kuratomi,Y.,Malinda,K.M.,Song,S.Y.,Miyoshi,K.,Otaka,A.,Powell,S.K.,Hoffman,M.P.,Kleinman,H.K.,およびYamada,Y.(1998)Journal of Biological Chemistry 273(49),32491〜9)。Grantおよび他によるこれまでの研究は、ラミニン中の異なる機能的ドメインが異なる内皮細胞プロセスを調節することを示した(Grant,D.S.,Tashiro,K.,Segui−Real,B.,Yamada,Y.,Martin,G.R.,およびKleinman,H.K.(1989)Cell 58(5),933〜43)。実際、ラミニンのα鎖の内部のRGDトリペプチド含有ドメインが内皮細胞接着を促進することが示された(同上)。この接着促進能力が、β1インテグリンの連結に依存することが示された。さらに、ラミニンのβ1鎖内部の第二のドメイン(YIGSR)が、細胞−細胞相互作用を誘導し、形態形成を調節し、そして内皮細胞の管様構造への再組織化を誘導することが示された(Grant,D.S.,Tashiro,K.,Segui−Real,B.,Yamada,Y.,Martin,G.R.,およびKleinman,H.K.(1989)Cell 58(5),933〜43;Kubota,Y.,Kleinman,H.K.,Martin,G.R.,およびLawley,T.J.(1988)Journal of Cell Biology 107(4),1589〜98)。可溶性形態に加えられた場合、このペプチドは新脈管形成を大きく阻害した(同上)。興味深いことに、内皮細胞が、非インテグリンラミニンレセプターとの相互作用を介して、このYIGSR配列に結合することが示された(Ruoslahti,E.,およびEngvall,E.(1997)Journal of Clinical Investigation 100(11 補遺),S53〜6)。さらなる研究において、α1鎖由来のラミニン由来ペプチド(IKVAV)がプロテアーゼ活性を調節し、そして新脈管形成を促進することが示された。(Kibbey,M.C.,Grant,D.S.,およびKleinman,H.K.(1992)Journal of National Cancer Institute 84(21),1633〜8;Grant,D.S.,Kinsella,J.L.,Fridman,R.,Auerbach,R.,Piasecki,B.A.,Yamada,Y.,Zain,M.,およびKleinman,H.K.(1992)Journal of Cellular Physiology 153(3),614〜25)。最後に、他のラミニンペプチドがインビトロにおいて内皮細胞の接着および移動を促進することが、また示された(Malinda,K.M.,Nomizu,M.,Chung,M.,Delgado,M.,Kuratomi,Y.,Yamada,Y.,Kleinman,H.K.,およびPonce,M.L.(1999)FASEB Journal 13(1),53〜62;Ponce,M.L.,Nomizu,M.,Delgado,M.C.,Kuratomi,Y.,Hoffman,M.P.,Powell,S.,Yamada,Y.,Kleinman,H.K.,およびMalinda,K.M.(1999)Circulation Research 84(6),688〜94)。まとめると、ラミニン中の数個の異なる配列は、正および負の両方に新脈管形成を調節するように機能し得る。
【0059】
ネイティブラミニン中の新脈管形成調節配列の多くは細胞に接近可能であるが、生物学的に関連する配列またはドメインが隠れており、そして露出のためにタンパク質分解性の再構成を必要とするという可能性もある。このため、Giannelliおよび他による最近の研究は、ラミニン−5のMMP−2媒介性切断がそのサブユニット内部の潜在部位を露出し、次いでこのことが、細胞の運動性を誘起することを示した(Giannelli,G.,Falk−Marzillier,J.,Schiraldi,O.,Stetler−Stevenson,W.G.,およびQuaranta,V.(1997)Science 277(5323),225〜8;Giannelli,G.,Pozzi,A.,Stetler−Stevenson,W.G.,Gardner,H.A.,およびQuaranta,V.(1999)American Journal of Pathology 154(4),1193〜201)。したがって、ラミニンの3次元構造内の潜在部位が、やはり新脈管形成を調節し得るという可能性がある。
【0060】
ECMの分解されたフラグメントは、新脈管形成に積極的な役割を果たす。分解ECM分子に特異的に反応するモノクローナル抗体、および新脈管形成をブロックするモノクローナル抗体が、同定されている。重要なことに、これらの抗体のいくつかは、新脈管形成におけるプロセスの独自のステップをブロックするように見える。これについての証拠は、特徴付けられたモノクローナル抗体が、内皮細胞に対するそれらの効果について異なった挙動をするという観察に由来する。例えば、変性コラーゲンに対する2種の抗体は、両方とも新脈管形成をブロックするが、それらの一方のみが内皮細胞接着の潜在的インヒビターである。したがって、後者のエピトープは接着に重要であり得るが、他のエピトープは新脈管形成の異なる事象のために必要であるようにみえる。このことは、新脈管形成の初期の間のECMの分解が、新脈管形成の促進において独自の機能的役割を果たす多くの潜在部位を露出させることを示唆する。腫瘍増殖は、ラミニンのこれらの異なる潜在部位のいくつかを拮抗することによって、最も効果的にブロックされ得る可能性がある。他のECMタンパク質の分解/変性形態を認識するモノクローナル抗体および他のアンタゴニストが、同定されている。これらは、以下において有用である:
1.新脈管形成の阻害;
2.腫瘍増殖の阻害;
3.(脈管形成性)腫瘍部位への細胞傷害剤の標的性送達;
4.眼の血管の疾患の処置;
5.異常な脈管発達を伴う他の疾患(例えば、慢性関節リューマチ)の処置;
6.インサイチュにおける脈管形成部位の検出;
7.インビボにおける脈管形成部位の検出(画像化分子との結合を介する);
8.血清中または尿中の脈管形成マーカーの検出;および
9.新脈管形成におけるECMの役割を理解する基礎科学研究。
【0061】
本発明は、新脈管形成を阻害する、変性ラミニンまたはタンパク質分解性ラミニンのアンタゴニストに特徴を有する。本発明のアンタゴニストは、変性ラミニン分子またはタンパク質分解性ラミニン分子に特異的に結合するが、そのネイティブ形態には大きく低下した親和性で結合する。本発明のアンタゴニストは、任意の変性ラミニン(変性αラミニンもしくは変性βラミニンが挙げられる)に対して特異的であり得る。アンタゴニストは、ラミニンのうちの5種の異なるα鎖のいずれか、3種の異なるβ鎖のいずれか、3種の異なるγ鎖のいずれか、または今後発見される任意のラミニン鎖に対して特異的であり得る。
【0062】
アンタゴニストは、抗体またはそれらの機能的フラグメントであり得、その可変領域を介して変性ラミニンと結合するが、ラミニンのネイティブ形態とはかなりより低い程度で結合する。本発明の抗体は、モノクローナルまたはポリクローナルであり得る;このような抗体を単離するための手段は、以下に記載される。本発明のアンタゴニストはまた、変性ラミニンに特異的に結合し得るが、ラミニンのネイティブ形態により低い親和性で結合し得る、非抗体分子であり得る。このような非抗体アンタゴニストはまた、他のタンパク質、他のポリペプチド、または非ペプチド化合物(例えば、有機低分子、炭水化物もしくはオリゴヌクレオチド)であり得る。
【0063】
このようなペプチドアンタゴニストの例としては、BrooksおよびAkaluによる、発明の名称「STQ Peptides」である、米国特許出願公開第20040224896 A1号を参照のこと。
【0064】
本発明はまた、変性ラミニンに特異的に結合するが、ラミニンのネイティブ形態にはかなり低下した親和性で結合するアンタゴニストをスクリーニングする方法を提供する。このようなアンタゴニストは、新脈管形成を阻害するために使用され得る。
【0065】
ペプチドアンタゴニストおよびポリペプチドアンタゴニストは、当業者に公知の多くの技術によって作製され得る。例えば、ツーハイブリッドシステム(例えば、Fields,S.(1989)Nature 340:245〜46)は、ラミニンのフラグメントを、ライブラリーからラミニンペプチドに結合するタンパク質アンタゴニストを選択するための「餌(bait)」として利用する。この潜在的アンタゴニストのライブラリーは、多くの可能性の一例において、cDNAライブラリーに由来し得る。別の実施形態において、この潜在的アンタゴニストは、公知のラミニン結合タンパク質の改変体であり得る。このようなタンパク質をコードする遺伝子は、ランダムに突然変異誘発され得るか、または遺伝子シャッフリングもしくは配列の多様性を生じるための他の利用可能な技術に供され得る。
【0066】
本発明のペプチドアンタゴニストおよびポリペプチドアンタゴニストはまた、分子進化の技術によって生成され得る。タンパク質をコードする遺伝子のライブラリーは、突然変異誘発、遺伝子シャッフリング、または分子の多様性を生じるための他の利用可能な技術によって作製され得る。多くの改変体を示すタンパク質プールは、変性ラミニンを結合するそれらの能力について(例えば、このようなタンパク質プールを変性ラミニンが結合された固体マトリックスに通すことによって)選択され得る。例えば、塩勾配を用いた溶出は、変性ラミニンに対する親和性を有する改変体の精製を提供し得る。ネガティブ選択工程もまた包含され得、この工程によって、このようなプールはネイティブラミニンが結合された固体マトリックスに通される。その濾液は、プール中に、ラミニンのネイティブ形態に対して低い親和性を有するこれらの改変体を含む。
【0067】
本発明のペプチドアンタゴニストおよびポリペプチドアンタゴニストはまた、ファージディスプレイによっても精製され得る。無作為化されたペプチドまたはタンパク質は、ファージコートタンパク質との融合物としてファージミド粒子の表面上に発現され得る。一価のファージディスプレイの技術は、広範に利用されている(例えば、Lowman H.B.ら,(1991)Biochemistry 30:10832〜8を参照のこと)。無作為化されたペプチドライブラリーまたはタンパク質ライブラリーを発現するファージは、ネイティブラミニン分子が結合された固体マトリックスを用いて選り分け(pan)られ得る。残りのファージはネイティブラミニンに結合しないか、またはかなり低い親和性でネイティブラミニンに結合する。次いで、このファージは、変性ラミニンが結合された固体マトリックスに対して選り分けられる。結合したファージは、単離され、そして溶液条件の変更によってか、または適切に設計された構築物についてはファージコートタンパク質を無作為化されたペプチドライブラリーまたはタンパク質ライブラリーに結合するリンカー領域のタンパク質分解性切断のいずれかによって、固体マトリックスから分離される。単離されたファージは、選択されたアンタゴニストの身元(identity)を決定するために、配列決定され得る。
【0068】
別の実施形態において、ポリペプチドは、このポリペプチドが変性ラミニンのアンタゴニストであるがネイティブラミニンのアンタゴニストではない限り、アミノ酸残基配列が本明細書において示されているポリペプチドの任意のアナログ、フラグメントもしくは化学的誘導体を含む。したがって、本発明のポリペプチドは、種々の変化、置換、挿入、および欠失(このような変化がその使用に特定の利点を提供するもの)に供され得る。これに関して、本発明の変性ラミニンアンタゴニストポリペプチドは、引用したペプチドの配列と同一であるというよりもむしろ、それに似ている。この引用したペプチドにおいては、1つ以上の変化がなされ、そしてそれは、本明細書において定義されるように、1つ以上のアッセイにおいて変性ラミニンアンタゴニストとして機能する能力を保有する。
【0069】
したがって、ポリペプチドは、ペプチド誘導体の任意の種々の形態であり得、これには、アミド、タンパク質との結合体、環化ペプチド、重合化ペプチド、アナログ、フラグメント、化学的に改変されたペプチド、および同様の誘導体が挙げられる。
【0070】
(他のアンタゴニスト)
本発明のアンタゴニストはまた、有機低分子(例えば、天然産物の有機低分子、または従来の有機合成もしくはコンビナトリアル有機合成によって合成されたそれらの化合物)であり得る、化合物は、変性ラミニンに結合するこれらの能力について、例えば、上記のカラム結合技術を使用して、試験され得る。化合物はまた、同様のカラム結合技術によって、ラミニンのネイティブ形態に対する低下した親和性について選択される。
【0071】
本発明のアンタゴニストはまた、非ペプチド化合物であり得る。適切な非ペプチド化合物としては、例えば、オリゴヌクレオチドが挙げられる。本明細書中で使用される場合、オリゴヌクレオチドとは、プリン、ピリミジン、および他の芳香族塩基を含む任意のヘテロポリマー性物質をいう。DNAオリゴヌクレオチドおよびRNAオリゴヌクレオチドは、糖を修飾されたオリゴヌクレオチド(例えば、2’アルキル化リボース)、および骨格を修飾されたオリゴヌクレオチド(例えば、ホスホロチオネートオリゴヌクレオチドもしくはペプチド核酸)である場合、本発明で使用するのに適切である。オリゴヌクレオチドは、一般に見出されるプリン塩基およびピリミジン塩基(例えば、アデニン、チミン、グアニン、シトシンおよびウリジン)、ならびに複素環部分内において修飾された塩基(例えば、7−デアザグアニン)もしくは環外部分において修飾された塩基を含み得る。オリゴヌクレオチドはまた、芳香族塩基をまた含む、異なる構造(例えば、ポリアミド核酸など)を有するヘテロポリマーを包含する。
【0072】
本発明のオリゴヌクレオチドアンタゴニストは、当業者に公知の多くの方法によって作製され得る。一実施形態において、オリゴヌクレオチドのプールは、多数の配列を含んで生成される。プールは、例えば、任意のもしくはあらゆる伸長工程において、モノマーの混合物を用いた固相合成によって生成され得る。オリゴヌクレオチドのプールは、このプールを含む溶液を、変性ラミニンまたはそのフラグメントが固定された固体マトリックスを通すことによって選別される。変性ラミニンに結合するプール内の配列は、固体マトリックス上に保持される。これらの配列は、種々の塩濃度もしくはpHの溶液で溶出される。選択された配列は、第二の選択工程に供される。この選択されたプールは、ネイティブラミニンが固定された第二の固体マトリックスに通される。このカラムは、ネイティブラミニンに結合するそれらの配列を保持し、したがって、プールを変性ラミニンに対して特異的な配列について富化する。このプールは、増幅され得、および必要な場合、突然変異誘発され得、そしてこのプロセスは、このプールが本発明のアンタゴニストの特徴を示すまで反復される。個々のアンタゴニストは、通常、この配列を宿主生物(例えば、E.coli)中にクローニングした後に、オリゴヌクレオチドプールのメンバーを配列決定することによって同定され得る。
【0073】
(疾患の処置)
本発明は、概して、変性ラミニンに対するアンタゴニストの結合が新脈管形成を阻害するが、ネイティブラミニンに対する結合は新脈管形成を阻害しないという発見に関する。この発見は、新脈管形成が種々の疾患プロセスにおいて果たす役割に起因して、重要である。新脈管形成を阻害することによって、このような疾患プロセスに介入し、その症状を改善し、そしていくつかの場合、新脈管形成に関連する疾患を治癒することができる。
【0074】
新たな血管の増殖が、疾患に関連する病理の原因であるか、またはそれに寄与する場合、新脈管形成の阻害は、疾患の有害な影響を低減する。例としては、乾癬、慢性関節リウマチ、糖尿病性網膜症、炎症性疾患、再狭窄、黄斑変性などが挙げられる。新たな血管の増殖が有害な組織の増殖を支持するのに必要とされる場合、新脈管形成の阻害は、その組織への血液供給を低下させ、それによって、血液供給の必要性に基づいた組織質量の低下に寄与する。例としては、直径数ミリメートルを超える腫瘍増殖のため、および固形腫瘍転移の確立のために、新生血管形成が継続的に必要とされる腫瘍増殖が挙げられる。
【0075】
本発明の方法は、治療が新脈管形成に高度に選択的であり、かつ他の生物学的プロセスには選択的でないことに一部起因して、有効である。新しい脈管の増殖のみが変性ラミニンのアンタゴニストによって阻害され、したがって、この治療法は、成熟血管に有害な影響を与えない。アンタゴニストは、腫瘍の脈管形成部位に結合するが、正常な周辺組織には結合しない。
【0076】
新脈管形成が重要であると考えられている種々の疾患が存在し、脈管形成性疾患と称され、この疾患としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:炎症性疾患(例えば、免疫性炎症および非免疫性炎症、慢性関節リューマチ、ならびに乾癬)、不適切もしくは時期的に不適切な血管の浸潤に関連する疾患(例えば、糖尿病性網膜症、血管新生緑内障、再狭窄、アテローム硬化性プラークにおける毛細管増殖、および骨粗鬆症、ならびに癌に関連する疾患(例えば、固形腫瘍、固形腫瘍転移、血管線維腫、水晶体後線維増殖症、血管腫、カポジ肉腫、および腫瘍増殖を支持するために新生血管形成を必要とする同様の癌)。本発明のアンタゴニストを用いた処置に対する他の適切な腫瘍としては、黒色腫、癌腫、肉腫、線維肉腫、神経膠腫および星状細胞腫が挙げられる。本発明のアンタゴニストを用いた処置に対する他の適切な疾患および障害としては、線維症、脈管炎、強皮、および喘息が挙げられる。
【0077】
異常な新脈管形成に関与し、したがって本発明のアンタゴニストによって処置可能ないくつかの疾患としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:慢性関節リウマチ、虚血−再灌流関連の脳水腫および脳傷害、皮質虚血、卵巣の過形成および過血管形成(hypervascularity)(多嚢胞性卵巣症候群)、子宮内膜症、乾癬、糖尿病性網膜症および他の眼の脈管形成性疾患(例えば、未熟児網膜症(水晶体後線維増殖)、黄斑変性、角膜移植拒絶、血管新生(neuroscular)緑内障およびOster Webber症候群。
【0078】
網膜/脈絡膜新生血管形成、したがって本発明のアンタゴニストによって治療可能ないくつかの例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:ベスト病、近視、視神経乳頭外側部の限局性陥没(optic pit)、スターガルツ(Stargarts)病、パジェット病、静脈閉塞、動脈閉塞、鎌状赤血球貧血、サルコイド、梅毒、弾性線維性仮性黄色腫頸動脈非閉塞性疾患(pseudoxanthoma elasticum carotid abostructive disease)、慢性ブドウ膜炎/硝子体炎(vitritis)、ミコバクテリア感染、ライム病、全身性エリテマトーデス、未熟児網膜症、イールズ病、糖尿病性網膜症、黄斑変性、ベーチェット病(Bechets disease)、網膜炎もしくは脈絡膜炎(chroiditis)を引き起こす感染、推定眼ヒストプラスマ症、毛様体輪(pars planitis)、慢性網膜剥離、過粘稠度症候群、トキソプラスマ症、外傷およびレーザー後(post−laser)合併症、ルベオーシス(rubesis)に関連する疾患(角(angle)の新生血管形成)および線維性脈管組織または線維性組織の異常な増殖に関連する疾患(増殖性硝子体網膜症のあらゆる形態が挙げられる)。
【0079】
角膜の新生血管形成、したがって本発明のアンタゴニストによって処置可能ないくつかの例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:流行性角結膜炎、ビタミンA欠乏症、コンタクトレンズの使い過ぎ(overwear)、アトピー性角膜炎、上縁角膜炎(superior limbic keratitis)、翼状片乾性角結膜炎、シェーグレン、しゅさ、フリクテン症(phylectenulosis)、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、角膜移植拒絶、モーレン潰瘍、テリエン辺縁変性、辺縁角質溶解、多発性動脈炎、ウェーゲナーサルコイドーシス、強膜炎、類天疱瘡(periphigoid)放射状角膜切開、血管新生緑内障および水晶体後線維増殖症、梅毒、ミコバクテリア感染、脂質変性、化学的熱傷、細菌性潰瘍、真菌性潰瘍、単純ヘルペス感染、帯状疱疹感染、原生動物感染およびカポジ肉腫。
【0080】
(新脈管形成の阻害方法)
変性ラミニンの結合が、単独で新脈管形成を効果的に阻害し得るという発見は、高度に特異的な、したがっておそらく低毒性の治療組成物の開発を可能にする。したがって、本発明は、1種以上の変性ラミニンに結合する能力を有する、抗体ベースのアンタゴニストの使用を開示するが、やはり変性ラミニンに特異的に結合し得るがネイティブラミニンには結合し得ないかもしくはネイティブラミニンに対して低親和性で結合し得る、他のアンタゴニストを設計または単離することができる。
【0081】
本明細書中で示される発見の前には、新脈管形成、および新脈管形成に依存する任意のプロセスが、ラミニン中の潜在エピトープ(すなわち、タンパク質分解ラミニンまたは変性ラミニンにおいて見出されるが、同じラミニンのネイティブ形態には見出されないエピトープ)を拮抗する試薬を使用することによってインビボで阻害され得ることは知られていなかった。
【0082】
本発明は、組織において新脈管形成を阻害し、それによって、組織における新脈管形成に依存する事象を阻害するための方法を提供する。一般的に、この方法は、新脈管形成を阻害する量の変性ラミニンアンタゴニストを含む組成物を上記組織に投与する工程を包含する。
【0083】
先に記載したように、新脈管形成は、組織の新生血管形成に関わる種々のプロセス(「出芽(sprouting)」、脈管形成、および脈管拡張が挙げられる)を含み、この新脈管形成プロセスの全ては、血管内の細胞外マトリックスコラーゲンの破壊に関わる。外傷の創傷治癒、黄体(corpus leuteum)形成および胚形成を除いて、成体における新脈管形成プロセスの大部分は疾患プロセスに関連し、したがって、本発明の治療法の使用は、これらの疾患プロセスに対して有効に選択されると考えられる。
【0084】
疾患組織において新脈管形成を阻害する方法は、この疾患の症状を改善し、そしてその疾患に依存して、その疾患の治癒に寄与し得る。一実施形態において、本発明は、組織における新脈管形成それ自体の阻害を企図する。組織における新脈管形成の程度、したがって、本方法によって達成される阻害の程度は、種々の方法(例えば、実施例において記載される、免疫組織化学によってタンパク質分解されたラミニンもしくは変性ラミニン免疫陽性の未熟脈管構造および新生脈管構造を検出するための方法)によって評価され得る。
【0085】
本明細書において記載されるように、任意の種々の組織または体系化された組織から構成される器官は、疾患状態における新脈管形成を支持し得る。これらの組織としては、皮膚、筋、腸、結合組織、関節、骨、および血管が脈管形成性刺激によって侵入し得る、同様の組織が挙げられる。本明細書において使用される場合、組織はまた、あらゆる体液、分泌物(例えば、血清、血液、脳脊髄液、血漿、尿、滑液、硝子体液)なども包含する。
【0086】
したがって、1つの関連する実施形態において、処置されるべき組織は炎症組織であり、阻害されるべき新脈管形成は、炎症組織の新生血管形成が生じている炎症組織の新脈管形成である。この分類において、上記方法は、関節炎組織における(例えば、慢性関節リューマチを有する患者において、免疫性もしくは非免疫性の炎症組織、乾癬組織において、など)新脈管形成の阻害を企図する。
【0087】
(網膜疾患)
一実施形態において、処置されるべき組織は、糖尿病性網膜症、黄斑変性または血管新生緑内障を有する患者の網膜組織であり、そして阻害されるべき新脈管形成は、網膜組織の新生血管形成が生じている網膜組織新脈管形成である。
【0088】
(腫瘍増殖および腫瘍転移)
関連するさらなる実施形態において、処置されるべき組織は、固形腫瘍、転移、皮膚癌、乳癌、血管腫もしくは血管線維腫、および同様の癌を有する患者の組織であり、そして阻害されるべき新脈管形成は、腫瘍組織の新生血管形成が生じている腫瘍組織新脈管形成である。本方法によって処置され得る代表的な固形腫瘍組織としては、肺、膵臓、胸部、結腸、喉頭、卵巣、カポジ肉腫および同様の組織が挙げられる。
【0089】
腫瘍組織新脈管形成の阻害は、腫瘍増殖において果たす新生血管形成の重要な役割に起因して、特に好ましい実施形態である。腫瘍組織の新生血管形成の非存在下では、腫瘍組織は必要な栄養素を得られず、増殖は遅延し、さらなる増殖が止まり、退行し、そして最終的に、壊死が起こって腫瘍の死をもたらす。
【0090】
言い換えると、本発明は、本方法によって腫瘍の新脈管形成を阻害することによって腫瘍の新生血管形成を阻害する方法を提供する。同様に、本発明は、上記の新脈管形成阻害方法を実施することによって腫瘍増殖を阻害する方法を提供する。
【0091】
本方法はまた、転移の形成に対して特に有効である。なぜなら:(1)転移の形成は、転移性癌細胞が原発性腫瘍を出て行くことができるように、その原発性腫瘍の新生血管形成を必要とし、そして(2)二次性部位における転移の確立は、転移の増殖を支持するために新生血管形成を必要とし、したがって、転移の開始およびコロニー形成の両方は、ECMの破壊に関連するからである。したがって、本発明のアンタゴニストは、転移を防止または最小限にする別個の、かつさらなる治療効果を有し得る。
【0092】
関連する実施形態において、本発明は、他の治療(例えば、固形腫瘍に対する、そして転移の確立を制御するための、従来の化学療法)と組み合わせた本方法の実施を企図する。新脈管形成インヒビターの投与は、代表的に、化学療法の間もしくはその後に行われるが、腫瘍組織が新脈管形成を誘導して、化学療法のレジメンの後に、腫瘍組織への血液供給および栄養素の供給によって回復することによって毒性の襲撃に応答する時点において、新脈管形成を阻害することが好ましい。さらに、固形腫瘍が転移に対する予防法として除去された外科手術の後に新脈管形成阻害法を施すことが好ましい。
【0093】
本方法が腫瘍の新生血管形成の阻害に適用される範囲において、この方法は、腫瘍組織増殖の阻害、腫瘍転移形成の阻害、および確立された腫瘍の退行に適用され得る。本発明のアンタゴニストはまた、転移のプロセスが必ず細胞外マトリックスの再構築を必要とするので、転移の直接的処置に有効である。
【0094】
(再狭窄)
再狭窄は、経皮的経管的冠状動脈形成術の部位における、平滑筋細胞(SMC)の移動および増殖のプロセスであり、血管形成術の成功を妨害する。再狭窄の間の血管に関連するSMCの遺贈および増殖は、本方法によって阻害される新脈管形成のプロセスに関連する。したがって、本発明はまた、本方法によって、脈管形成関連プロセスを阻害することによる、血管形成手順後の患者における、再狭窄の阻害を企図する。再狭窄の阻害のため、変性ラミニンアンタゴニストは、代表的に、血管形成手順後約2日〜約28日の間、より代表的には、上記手順の後、大体最初の14日の間、投与される。
【0095】
(定義)
用語「アンタゴニスト」は、特定の条件下でラミニンまたは変性ラミニンに特異的に結合し得る化合物をいう。好ましい実施形態において、特定の条件は、おおよそ、生理学的な条件である。
【0096】
用語「結合する」とは、2つの化合物が、(代表的には溶液中で)一旦接触する場合、特異的な形式で互いに結合し、そして特異的な形式で結合され続ける、第一の化合物と第二の化合物との相互作用を記載することを意味する。しかし、この結合は、不可逆的である必要はない。2つの化合物は、第一の化合物と第二の化合物との間の相互作用が、特定の条件下で、互いに対して、他の化合物に対するよりも大きな親和性で起こった場合、「結合」する。好ましい実施形態において、結合は、抗体と抗原との間にある。
【0097】
用語「結合親和性」とは、第一の化合物(例えば、抗体)が、特定の条件下で他の化合物に結合するよりも強く第二の化合物(例えば、抗原)に対して結合する場合の、相互作用の強度をいう。本発明のアンタゴニストは、特定の条件下で結合が起こる場合、サンプル中に存在する他の抗原の結合と比較して、100倍強くラミニンに結合する。本発明の他のアンタゴニストは、特定の条件下で、サンプル中に存在する他の化合物の結合と比較した場合、1,000倍強く、10,000倍強く、100,000倍強く、または100,000倍よりも強く、ラミニンに結合し得る。本発明のアンタゴニストは、特定の条件下で結合が起こる場合、ネイティブ構造のラミニンの結合と比較して、1.5倍強く、2倍強く、3倍強く、4倍強く、5倍強く、6倍強く、8倍強く、10倍強く、13倍強く、20倍強く、20倍よりも強く、変性ラミニンに結合し得る。好ましい実施形態において、特定の条件は、おおよそ、生理学的条件である。本発明のモノクローナル抗体は、単離された変性ラミニンと免疫反応するが、コラーゲンのネイティブ形態と低下した親和性で免疫反応する抗体分子を含む。用語「低下した親和性」とは、ネイティブ状態のラミニンへの結合と比較した場合に変性状態のラミニンに対してより大きな結合親和性を有する、本発明のアンタゴニストの特徴をいう。好ましい実施形態において、本発明のアンタゴニストは、ラミニンの変性状態と比較した場合、ネイティブ構造のラミニンに、約1/2の親和性で結合する。他の好ましい実施形態において、本発明のアンタゴニストは、ラミニンの変性状態と比較した場合、ネイティブ構造にあるラミニンに、約1/5の親和性で結合する。さらに好ましい実施形態において、本発明のアンタゴニストは、ラミニンの変性状態と比較した場合、ネイティブ構造にあるラミニンに、約1/10の親和性で結合する。さらになお好ましい実施形態において、本発明のアンタゴニストは、ラミニンの変性状態と比較した場合、ネイティブ構造にあるラミニンに、1/10より低い親和性で結合する。
【0098】
好ましい実施形態において、結合の特定の条件は、生理食塩水溶液、または全血もしくは血清などである。いくつかの場合、特定の条件は、界面活性剤を含有する緩衝液を包含する。
【0099】
「特異的結合親和性」によって、抗体または別の第一の化合物が、標的抗原、または標的の第二の化合物に、特定の条件下で、その可変領域によって、他の抗原に結合するよりも大きな親和性で結合することを意味する。抗体または抗体フラグメントは、他のポリペプチドに結合し得る領域を含むポリペプチドである。一般に、抗体は、可変領域を介して、それらの標的抗原に特異的に結合する。抗体はまた、可変領域以外のドメインを介して、他の抗原またはタンパク質を特異的に結合することができ得る。しかし、このような結合は、一般的に抗体の分類に関連する。可変領域以外のドメインを介した特異的結合の例としては、補体およびプロテインAを結合することが挙げられる。さらに、抗体以外の分子もまた、特定の条件下で、第三の分子に結合するよりも大きな親和性で第二の分子に結合し得る。したがって、非限定的な例において、アビジンは、ATPに対する結合におけるよりも大きな親和性で、ビオチンに結合し、そしてerbB2は、インシュリンに対して結合するよりも大きな親和性で、へレグリン(heregulin)に結合する。
【0100】
用語「ネイティブラミニン」とは、ラミニンモノマーまたは生物内でインサイチュに見出されるラミニンのようなものの両方を指し得る。変性ラミニンは、熱的手段、酵素的手段、または化学的(カオトロピック)手段によって得ることができる。好ましい実施形態において、変性ラミニンは、タンパク質分解性消化によって得られる。さらなる好ましい実施形態において、変性ラミニンは、MMP9消化によって得られる。
【0101】
用語「骨格ドメイン」とは、ポリペプチドの骨格鎖の部分であって、その領域への翻訳後修飾を伴う部分をいう。エピトープは、骨格ドメインの一実施形態であるが、他の形態が考えられる。一般に、骨格ドメインは、ラミニンまたは変性ラミニンの、別の化合物(例えば、本発明のアンタゴニスト)への結合に関与する領域である。
【0102】
変性ラミニンに対する特異的結合親和性を有する抗体または抗体フラグメントは、変性ラミニン−抗体免疫複合体形成に適切な条件下でサンプルをこの抗体でプローブすることによって、このサンプル中の変性ラミニンの存在および/または量を検出する方法、ならびに変性ラミニンに結合体化され、次いでネイティブラミニンの結合と比較された、抗体の存在および/または量を検出するための方法において、使用され得る。このような方法を実施するための診断キットは、変性ラミニンに対して特異的な抗体または抗体フラグメント、およびこの抗体の結合パートナーの結合体またはこの抗体それ自体の結合体を含むように構築され得る。
【0103】
変性ラミニンに対して特異的結合親和性を有する抗体または抗体フラグメントは、原核生物または真核生物から単離され得るか、富化され得るか、または精製され得る。当業者に公知の慣習的な方法は、原核生物と真核生物との両方における抗体または抗体フラグメントの生成を可能にする。抗体の精製、富化、および単離は、当該分野で周知である。
【0104】
変性ラミニンに対して特異的結合親和性を有する抗体は、免疫複合体が形成するような条件下で、サンプルをこの抗体と接触させることによって、このサンプル中の変性ラミニンの存在および/または量を検出するための方法において、ならびに変性ラミニンに対して結合体化した抗体の存在および/または量を検出するための方法において、使用され得る。このような方法を実施するための診断キットが、抗体を含む第一の容器および抗体の結合パートナーと標識(例えば、ラジオアイソトープ)との結合体を含む第二の容器を備えるように構築され得る。この診断キットはまた、FDAに認可された用途の通知、およびそのための指示書を備え得る。抗体アンタゴニストはまた、新脈管形成を阻害し得る。
【0105】
本明細書において「エピトープ」は、本発明の抗体またはアンタゴニストによって認識または結合されるアミノ酸配列である。エピトープは、連続するペプチド配列であり得るか、または非連続的なアミノ酸配列から構成され得る。抗体またはアンタゴニストは、1つ以上の配列を認識または結合し得る。したがって、用語「エピトープ」は、1つより多くの異なるアミノ酸配列標的を規定し得る。抗体またはアンタゴニストによって認識または結合されるエピトープは、当業者に周知のペプチドマッピングおよび配列分析技術によって決定され得る。
【0106】
このようなエピトープは、「潜在エピトープ」であり得る。本明細書中で使用される場合、「潜在エピトープ」は、ネイティブラミニン内部では本発明の抗体またはアンタゴニストへの結合のために露出されていないが、変性ラミニンの抗体またはアンタゴニストによって認識および結合され得るラミニンエピトープである。ネイティブ構造において溶剤暴露(solvent exposed)されていないか、または部分的にのみ溶剤暴露されているペプチド配列は、可能性のある潜在エピトープである。エピトープが溶剤暴露されていない場合、または部分的にのみ溶剤暴露されている場合、そのエピトープは分子の内部に埋もれている可能性がある。潜在エピトープの配列は、抗体またはアンタゴニストの特異性を決定することによって同定され得る。候補潜在エピトープはまた、例えば、ネイティブラミニンの3次元構造を試験することによって同定され得る。
【0107】
用語「モノクローナル抗体」とは、特定の抗原を認識し、そしてそれに結合し得る抗体をいう。ここで、この抗体は、実質的に均質な集団である。この実質的に均質な抗体の集団は、それらは一般的に単一の不死化細胞株に由来するので、実質的に均質なアミノ酸配列を有する。これらは、培養物中の継続した細胞株(continuous cell line in culture)によってか、または細菌の生成によって抗体分子の生成を提供する任意の技術によって得ることができる。モノクローナル抗体は、当業者に公知の方法によって得ることができる(例えば、Kohlerら,Nature 256:495〜497,1975、米国特許第4,376,110号、ならびにHarlowおよびLane(編)、Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory(1988)、これらの全ては、あらゆる図、表、または図面を含め、その全体が本明細書によって参考として援用される。
【0108】
用語「モノクローナル抗体クローン」とは、実質的に均質な抗体の集団を生成する不死化細胞株をいう。
【0109】
別の局面において、本発明は、変性ラミニンまたは変性ラミニンドメインに対する特異的結合親和性を有する抗体を生成する、ハイブリドーマに特徴を有する。「ハイブリドーマ」によって、抗体(例えば、本発明の変性ラミニンに対する抗体)を分泌し得る不死化細胞株が意味される。好ましい実施形態において、変性ラミニンに対する抗体は、変性ラミニンに特異的に結合し得るアミノ酸の配列を含む。
【0110】
変性ラミニンに優先的に結合する好ましいモノクローナル抗体としては、モノクローナル抗体クローンLMD2、LMD9、LMD21、LMD24、LMD52、LMD105、LMD1、LMD5、LMD11、LMD17、LDM26、LMD13、LMD14、LMD15、LMD16、LMD23、LMD30、LMD209、またはLMD418の免疫応答特性を有するモノクローナル抗体が挙げられる。
【0111】
用語「ポリクローナル」とは、抗原またはそれらの抗原性機能的誘導体で免疫された動物の血清に由来する、抗体分子の異質な集団である抗体をいう。用語ポリクローナルとは、このような抗体の集団が1つより多くの抗体産生細胞のクローンから生じるという事実をいい、したがって群として、抗体は、特に可変領域において、多様なアミノ酸配列を有すると予測される。さらに、種々のクラスの抗体(例えば、IgGまたはIgM)が、所与のポリクローナル抗体のサンプルによって生成され得、そしてそれに含まれ得る。ポリクローナル抗体の産生のために、種々の宿主動物が抗原の注入によって免疫され得る。宿主の種に依存して、種々のアジュバントが使用されて、免疫応答を増加させ得る。
【0112】
本発明の抗体は、特定のクラスのヒト免疫グロブリン分子(例えば、IgG分子)のフレームワーク中に相補性決定領域(CDR)または可変領域を移植することによって、「ヒト化」され得る。これは、ヒト免疫グロブリンに対して抗原性に実質的に同一であるが、元の抗体CDR領域として同じ抗原に結合するモノクローナル抗体を生成する。したがって、これらの組み換え抗体は、ヒトの処置において使用され得、この処置における合併症の危険性は、はるかに低い。
【0113】
本発明によって包含される抗体または他のアンタゴニストに対する他の改変としては、他の生物学的に活性なタンパク質またはリガンドとの遺伝的融合タンパク質、または2つの抗体が互いに結合されている二特異性抗体の一部が挙げられる。
【0114】
用語「抗体フラグメント」とは、特定の分子に対して特異的結合親和性を示す抗体の部分(例えば、超可変領域ならびに重鎖および軽鎖の周辺の部分、またはCDR領域)をいう。超可変領域は、ポリペプチド標的に物理的に結合する抗体の部分である。用語、抗体の「CDR領域」(相補性決定領域)とは、抗体の抗原結合領域をいう。パラトープまたは抗体結合部位は、抗原に特異的に結合する重鎖可変領域と軽鎖可変領域とから構成される抗体分子の構造部分である。
【0115】
本発明の抗体フラグメントは、パラトープを含み、そして当該分野でFab、Fab’、F(ab’)およびF(v)として公知の部分を含む。Fabフラグメントは、Fcレセプターを欠いており、可溶性であり、そして血清半減期における治療的利点、および可溶性Fabフラグメントを使用する様式における診断的利点を与える。例えば、抗体のFabおよびF(ab’)部分(フラグメント)は、周知の方法により、実質的にインタクトな抗体における、それぞれ、パパインおよびペプシンのタンパク質分解反応によって、調製される。例えば、米国特許第4,342,566号を参照のこと。Fab’抗体部分もまた周知であり、F(ab’)部分から、その後の、例えばメルカプトエタノールによる2つの重鎖部分を連結するジスルフィド結合の還元、それに続く、ヨードアセトアミドのような試薬による得られたタンパク質メルカプタンのアルキル化によって、生成される。インタクトな免疫グロブリン分子を含む抗体が好ましい。
【0116】
変性ラミニンに対して特異的結合親和性を有する抗体または抗体フラグメントは、変性ラミニン−抗体免疫複合体形成に適切な条件下でサンプルをこの抗体でプローブすることによって、このサンプル中の変性ラミニンの存在および/または量を検出する方法、ならびに変性ラミニンに結合体化された抗体の存在および/または量を検出するための方法において、使用され得る。このような方法を実施するための診断キットは、変性ラミニンに対して特異的な抗体または抗体フラグメント、およびこの抗体の結合パートナーの結合体またはこの抗体それ自体の結合体を含むように構築され得る。このようなキットはまた、1つ以上のネガティブコントロール抗体を含む。
【0117】
用語「ネガティブコントロール抗体」とは、特異的結合親和性を有するが、抗体と同様の供給源に由来する抗体をいう。しかし、ネガティブコントロール抗体は、変性ラミニンへの結合親和性を示さないか、または変性ラミニンに対して、ラミニンに対しての親和性と同じ結合親和性を示す。
【0118】
変性ラミニンに対して特異的結合親和性を有する抗体または抗体フラグメントは、原核細胞または真核細胞から単離され得るか、富化され得るか、または生成され得る。当業者に公知の慣習的な方法は、原核生物と真核生物との両方における抗体または抗体フラグメントの生成を可能にする。抗体の精製、富化、および単離は、当該分野で周知である。
【0119】
本発明の抗体アンタゴニストは、当業者に公知の多くの方法に従って作製され得る。そして、作製された抗体は、変性ラミニンに結合するその能力に関して、および同じラミニンのネイティブ形態に対する低下した結合に関して選択され得る。抗体は、例えば、「免疫サブトラクション(subtractive immunization)」法によって作製され得る(例えば、Brooksら,(1993)J.Cell Biol.122:1351〜59を参照のこと)。
【0120】
用語「タンパク質」、「ポリペプチド」、および「ペプチド」は、本明細書において交換可能に使用され、そしてその慣習的意味(すなわち、アミノ酸の鎖)で使用される。上記用語のいずれも、アミノ酸の何らかの設定された長さまたは長さの範囲を意味しない。これらの用語はまた、ポリペプチドの翻訳後(または合成後)修飾(例えば、グリコシル化、アセチル化、リン酸化など)、ならびに天然に存在する当該分野で公知の他の改変および天然に存在しない当該分野で公知の他の改変の両方を意味せず、排除もしない。ポリペプチドは、タンパク質全体であっても、アミノ酸鎖の一領域であってもよい。タンパク質は、1つ以上のポリペプチドを含み得る。
【0121】
用語「直鎖状ペプチド」は、別のアミノ酸とのペプチド結合を介した結合を含まないアミノ末端から、別のアミノ酸とのペプチド結合を介した結合を同様に含まないカルボキシル末端へと伸びる、従来のポリペプチド骨格を示すために、本明細書中で使用される。直鎖状ペプチドのアミノ末端に位置するアミノ酸が、アミノ酸のカルボキシル部分のみを介してこのペプチド骨格に結合し、このペプチド鎖のカルボキシル末端に位置するアミノ酸が、αアミノ基によって形成されるペプチド結合によってのみこの鎖に結合することに、注意すること。
【0122】
用語「環状ペプチド」は、アミノ末端もカルボキシル末端も有さないペプチド骨格を示すために本明細書中で使用される。つまり、この骨格に含まれる全てのアミノ酸は、α炭素へのペプチド結合を介して、やはりこの骨格内にある2つの他のアミノ酸に結合される。
【0123】
用語「非ペプチド化合物」としては、炭水化物、脂質、合成ポリマーなどのような非限定的な例が挙げられる。
【0124】
用語「オリゴヌクレオチド」とは、約10ヌクレオチドと約2000ヌクレオチドとの間を含み得る、比較的短いポリヌクレオチドの鎖をいう。このような用語はまた、あらゆる形態のDNAおよびあらゆる形態のRNAを指す。多くの場合、この用語は、一本鎖デオキシリボヌクレオチドを指すが、これはまた同様に、特に一本鎖もしくは二本鎖のリボヌクレオチド、RNA:DNAハイブリッド、二本鎖DNA、およびペプチド核酸を指し得る。用語「オリゴヌクレオチド」は、少なくとも10ヌクレオチド、20ヌクレオチド、30ヌクレオチド、40ヌクレオチド、50ヌクレオチド、70ヌクレオチド、80ヌクレオチド、100ヌクレオチド、120ヌクレオチド、150ヌクレオチド、175ヌクレオチドおよび200ヌクレオチドの長さの鎖を含み得る。これらの鎖は、2000ヌクレオチド長まで、1500ヌクレオチド長まで、1000ヌクレオチド長まで、800ヌクレオチド長まで、600ヌクレオチド長まで、500ヌクレオチド長まで、450ヌクレオチド長まで、400ヌクレオチド長まで、350ヌクレオチド長まで、300ヌクレオチド長まで、250ヌクレオチド長まで、200ヌクレオチド長まで、175ヌクレオチド長まで、150ヌクレオチド長まで、125ヌクレオチド長までおよび100ヌクレオチド長までであり得る。したがって、例えば、オリゴヌクレオチドは、150ヌクレオチド長と600ヌクレオチド長との間であり得る。
【0125】
オリゴヌクレオチド(特に1本鎖DNAオリゴヌクレオチド)は、多くの場合、化学的方法(例えば、自動合成機によって実行されるような方法)によって合成される。しかし、オリゴヌクレオチドは、種々の他の方法(インビトロ組換えDNAを介する技術および細胞生物体中およびインビトロでのRNAもしくはDNAの発現が挙げられる)によって、作製され得る。
【0126】
最初に、化学的に合成されたDNAは、代表的には5’リン酸なしで得られる。したがって、これは、さらに使用する前にしばしばリン酸化される。化学的に合成されたオリゴヌクレオチドの3’末端は、一般的に遊離のヒドロキシル基を有し、そしてさらなる改変なしで容易に連結され得る。
【0127】
用語「構造の改変」または「核酸構造の改変」とは、任意の形態のRNA核酸またはDNA核酸の任意の核酸の塩基部分、ヌクレオシド部分、またはヌクレオチド部分に対する任意の分子構造の変化をいう。構造の改変は、核酸の塩基部分、ヌクレオシド部分、またはヌクレオチド部分を改変する分子構造の変化を生じる、転写後改変、誘導体、天然産物を生成する反応、または細胞化学もしくは細胞反応から構成され得る。構造の改変としては、例えば、核酸塩基、ヌクレオシド、またはヌクレオチドの種々のアルキル化、メチル化、チオール化、酸化、ペプチド誘導体化、糖誘導体化、および放射線誘導反応もしくはラジカル誘導反応が挙げられるが、これらに限定されない。
【0128】
本明細書中で使用される場合、用語「結合体化する」は、ある分子の、別の分子、組成物、化合物、または検出可能な標識との/別の分子、組成物、化合物、または検出可能な標識への、係留(tethering)、結合、または会合として規定される。このような係留、結合、または会合としては、共有結合性相互作用または非共有結合性相互作用(例えば、ビオチン/アビジン)が挙げられる。
【0129】
本明細書中で使用される場合、用語「細胞傷害性因子」とは、細胞を殺すために使用される分子、化合物、毒素、組成物、または生物学的実体をいう。好ましい実施形態において、この細胞は、腫瘍細胞である。「細胞傷害性因子」とは、主にその細胞の機能を直接的に妨害することによって細胞死を引き起こすか、または細胞の減数分裂を阻害もしくは妨害する化合物をいう。このような因子の例としては、アルキル化剤、腫瘍壊死因子、インターカレーター、微小管インヒビター、およびトポイソメラーゼインヒビターが挙げられる。
【0130】
本明細書中で使用される場合、用語「細胞増殖抑制性因子」とは、細胞のさらなる分裂を防ぐために使用される分子、化合物、毒素、組成物、または生物学的実体をいう。好ましい実施形態において、この細胞は、腫瘍細胞である。「細胞増殖抑制性因子」とは、主にその細胞の機能、細胞の代謝を直接的に妨害することによって、細胞増殖および細胞分裂を妨害するか、または細胞の減数分裂を阻害もしくは妨害する化合物をいう。
【0131】
用語「阻害する」とは、所与のプロセスに関連する細胞の活動および細胞外の活性を低下させることをいう。したがって、プロセスの全体的速度は、遅延するか、またはおそらく完全に止まる。用語「阻害する」はまた、ポリペプチドとその天然の結合パートナーとの相互作用を低下させることによって、ポリペプチドの細胞活性または細胞外活性を低下させる(おそらく、これはポリペプチドの触媒活性を阻害する)ことを指し得る。
【0132】
本明細書中で使用される場合、用語「組織」とは、生物学的生体中の任意の組織を指し得る。このような組織としては、肺、心臓、血液、肝臓、筋、脳、膵臓、皮膚などが挙げられ得るが、これらに限定されない。本発明はまた、処置されるべき組織の近くにこのアンタゴニストを運ぶ生物学的流体中の本発明のアンタゴニストの濃度を増加させることによって、組織に化合物を投与する工程に関する。この流体としては、血液、血清、血漿、涙液、唾液、乳、尿、羊水、精液、血漿、卵管液および滑液が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0133】
用語「器官」は、生物中の任意の器官、生物から単離された任意の器官、または器官の任意の部分に関する。器官および組織の例は、神経組織、脳組織、脾臓、心臓、肺、胆嚢、膵臓、精巣、卵巣、および腎臓である。これらの例は限定ではなく、そして本発明は、生物由来の、または生物から単離された、任意の器官および任意の組織に関する。
【0134】
用語「投与」または「投与すること」とは、異常な状態を処理または予防するために、化合物を、動物(好ましくは、哺乳動物)の細胞または組織に組み込む方法をいう。本発明の化合物またはプロドラッグが1つ以上の活性因子と組み合わせて提供される場合、用語「投与」または「投与すること」は、その化合物またはプロドラッグの、他の因子との連続的導入または同時導入を包含する。生物内に含まれる細胞に関して、化合物を投与するための多くの技術が(経口適用、注入適用、非経口適用、経皮適用およびエアロゾル適用が挙げられるが、これらに限定されない)、当該分野において存在する。
【0135】
次いで、生物機能に対する化合物を投与することの効果がモニタリングされ得る。生物は、好ましくは、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、またはヤギであり、より好ましくは、サルまたは類人猿であり、そして最も好ましくは、ヒトである。
【0136】
用語「化学療法」とは、多くの処置レジメンのいずれか1つをいう。この用語は、主に(しかし排他的にではなく)、癌性の細胞に対して選択的に毒性である薬物を使用して癌を処置することに関連して使用される。したがって、「化学療法」は、担当医の指示の下での1つ以上の化学療法剤の一連の投与を意味する。しばしば、化学療法剤の投与は、担当医によってモニタリングされる必要のある強い副作用を伴う。
【0137】
本明細書中で使用される場合、用語「化学療法剤」としては、例えば、ホルモン剤、抗代謝剤、DNA相互作用剤(interactive agent)、チューブリン相互作用剤などが挙げられる(例えば、アスパラギナーゼまたはヒドロキシ尿素)。これらの型の化学療法剤の各々は、さらに細分され得る。考えられる化学療法剤は、これらの群または他の群から選択され得る。化学療法剤およびそれらの投与法の詳細な考察については、Dorrら,Cancer Chemotherapy Handbook,第2版,Appleton & Lange(Connecticut,1994)(本明細書において参考として援用される)を参照のこと。可能性のある化学療法剤の一覧としては、米国特許第6,316,462号もまた参照のこと。
【0138】
用語「放射線治療」とは、多くの処置レジメンのいずれか1つをいう。この用語は、主に(しかし排他的にではなく)、癌を処置することに関連して使用される。したがって、「放射線治療」は、担当医の指示の下で、放射線またはラジオアイソトープの一連の線量に患者を暴露することを意味する。しばしば、放射線治療の投与は、担当医によってモニタリングされる必要のある強い副作用を伴う。
【0139】
用語「組織を加熱する」とは、通常は、インビボで組織のある領域の温度を上昇させることをいう。このことは、熱源の適用によるか、またはマイクロ波放射のような放射によって達成され得る。
【0140】
用語「検出する」とは、本明細書中で使用される場合、所定の分子、事象または一連の事象の存在を確認するための任意の方法をいう。このことを達成するために使用される技術としては、PCR、配列決定、PCR配列決定、分子ビーコン技術、ハイブリダイゼーション、ハイブリダイゼーション後のPCRが挙げられ得るが、これらに限定されない。検出のために使用され得る試薬の例としては、放射標識したプローブ、酵素標識したプローブ(ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ)および親和標識したプローブ(ビオチン、アビジンまたはストレプトアビジン)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0141】
用語「サンプル」とは、本明細書中で使用される場合、物質のアリコートをいい、非常におおくの場合、生物学的物質に由来する水溶液または水性懸濁液である。本発明の方法により分析物の存在についてアッセイされるサンプルとしては、例えば、細胞、細胞から抽出したタンパク質が挙げられ、ヒトおよび動物の体液(例えば、全血、血清、血漿、脳脊髄液、痰、気管支洗浄物、気管支吸引物、尿、リンパ液および、呼吸器、腸管、尿生殖路の種々の外分泌物、涙液、唾液、乳汁、白血球、骨髄腫など);生物学的流体(例えば、細胞培養上清);固定され得る組織標本;ならびに固定され得る細胞標本が挙げられる。上記方法に使用されるサンプルは、アッセイフォーマット、およびアッセイされる組織、細胞または抽出物の性質に基づいて変動する。細胞またはサンプルからタンパク質抽出物を調製するための方法は、当該分野で周知であって、本発明の方法と適合性であるサンプルを得るために容易に適合され得る。
【0142】
用語「生物」とは、繁殖し得る任意の生物をいう。任意の生物が、本発明のアンタゴニストによって処置され得る。好ましい実施形態において、生物は、哺乳動物である。用語「哺乳動物」とは、好ましくは、げっ歯類、有蹄類、霊長類、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ウマ、ヒツジ、ブタ、ヤギおよびウシのような生物をいうが、これらに限定されず、より好ましくはネコ、イヌ、サルおよびサルをいい、最も好ましくはヒトである。本明細書中で使用される場合、用語「哺乳動物(mammalian)」または「哺乳動物(mammal)」はまた、任意の温血動物(例えば、上記のような)またはその動物に由来する細胞をいい得る。
【0143】
本明細書中で使用される場合、用語「接触する」は、本発明のアンタゴニストを含有する溶液もしくは組成物、または別の化合物を、生物由来の細胞、組織もしくは器官を浴している液体培地と一緒に添加することをいう。あるいは、「接触する」は、本発明のアンタゴニストを含有する溶液もしくは組成物、または別の化合物を、液体(例えば、生物由来の血液、血清または血漿)と一緒に混合することをいい得る。化合物を含有する溶液はまた、別の成分(例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO))を含有し得る。DMSOは、化合物の取り込みまたは化合物の溶解性を向上させる。試験化合物を含有する溶液は、送達装置(例えば、ピペットベースのデバイスまたはシリンジベースのデバイス)を利用することによって、細胞、組織または器官を浴する培地に添加され得るか、または別の液体(例えば、血液)と混合され得る。
【0144】
用語「スクリーニング」とは、広い分野の化合物内から選択される個々の化合物(例えば、有機低分子)の活性を比較する方法をいう。アッセイが研究室内で確立された後、一組の化合物から選択された化合物または化合物の小さい一組の能力は、そのアッセイにおいて実証された活性を調節する能力を個々にまたは集合的に評価される。好ましい実施形態において、化合物は、変性ラミニンに結合する能力についてアッセイされ、この結合は、後に、ネイティブのラミニンに結合する能力と比較される。化合物は、各アッセイにおいて、一度につき一つスクリーニングされ得るか、または小さい組の化合物が、一緒に混合されて、一つの反応容器中で同時にアッセイされ得る。このようなスクリーニングアッセイは、一般に96ウェルプレートなどで行なわれる。スクリーニングされる化合物は、コンビナトリアルライブラリーに由来し得る。スクリーニングされる化合物はまた、合理的な薬物設計方法に由来し得る。
【0145】
スクリーニングされる化合物としては、細胞外起源のもの、細胞内起源のもの、生物学的起源のもの、または化学的起源のものが挙げられるが、これらに限定されない。当業者は、細胞が試験化合物に曝露された後に、現れるレポーターアッセイの活性における変化を測定し得る。当業者は例えば、本明細書中に記載されるアッセイまたはルシフェラーゼタンパク質の蛍光産物を産生する細胞の能力の別のアッセイを用いて、新脈管形成の速度の増加または減少を測定し得る。あるいは、当業者は、ルシフェラーゼタンパク質の蛍光産物を産生する細胞の能力の研究下での新脈管形成または別のプロセスと関連するマーカー遺伝子の発現の増加または減少を試験し得る。
【0146】
用語「調節因子」は、新脈管形成または炎症などのプロセスを関連する過程または一連の事象を変え得る化合物をいう。調節因子は、好ましくは、組織に提供される化合物の濃度に依存して生じるプロセスの速度を減少させ、より好ましくは、組織に提供される化合物の濃度に依存するプロセスの速度を減少させるか、もしくは増加させるか、または最も好ましくは、組織に提供される化合物の濃度に依存して生じるプロセスの速度を増加させる。他の好ましい実施形態において、調節因子は、ポリペプチドに曝露される化合物の濃度に依存して、ポリペプチドが修飾される速度を増加させるか、またはポリペプチドが修飾される速度を阻害する。なおさらなる好ましい実施形態において、調節因子は、ポリペプチドに曝露される化合物の濃度に依存して、ポリペプチドがその天然の結合パートナーと結合する速度を増加させるか、またはポリペプチドがその天然の結合パートナーと結合する割合を阻害する。
【0147】
用語「処置する」とは、治療効果を有し、生物の異常な状態を少なくとも一部は緩和するかまたは抑制する組成物を投与することをいう。処置は、完全な治癒を提供する必要はなく、少なくとも一つの症状が改善されるか、または完全になくなる場合、有効であるとみなされることに留意すること。さらに、処置は、病状または他の異常な状態の永続的な改善(このことは、好ましいことではあるが)を提供する必要なない。
【0148】
用語「癌を処置する」とは、癌性の状態に罹患する哺乳動物に組成物を投与することをいい、癌細胞を死滅させるか、癌細胞の増殖を阻害するか、そして/または新脈管形成を含む癌の転移のプロセスを阻害することによる、癌性の状態を緩和する効果をいう。
【0149】
用語「予防する」とは、生物が異常な状態と関係するかまたは異常な状態を発症する可能性を減少させることをいう。
【0150】
本発明のアンタゴニストはさらに修飾基でさらに修飾され得る。修飾基としては、生化学的標識または生化学的構造(例えば、ビオチン、蛍光標識を含む基、光を散乱させる粒子もしくはプラズモン共鳴粒子、ジエチレントリアミンペンタアセチル基、(O)−メントキシアセチル基、N−アセチルノイラミニル基、コリル構造またはイミノビオチニル基)を含む基が挙げられ得る。本発明のアンタゴニストは、当該分野で公知の方法に従ってコリル基でそのカルボキシ末端を修飾され得る。コリル誘導体およびコリルアナログは、修飾基としても使用され得る。例えば、好ましいコリル誘導体は、Aic(3−(O−アミノエチル−イソ)−コリル)であって、これは、本発明のペプチドアンタゴニストをさらに修飾するために使用され得る遊離のアミノ基を有する。修飾基は、「ビオチニル構造」であり得、これは、ビオチニル基およびそのアナログおよびその誘導体(例えば、2−イミノビオチニル基)を含む。別の実施形態において、修飾基は、蛍光標識基(例えば、本発明由来のペプチド構造のアンタゴニストを5−(および6−)カルボキシフルオレセイン、スクシンイミジルエステルまたはフルオレセインイソチオシアネートと反応させることにより誘導される基のようなフロオレセイン含有基)を含み得る。本発明のアンタゴニストはまた、他の蛍光標識(ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシルまたはフィコエリトリンおよびエネルギー伝達蛍光色素または蛍光イオン指示薬)を結合させることにより改変され得る。種々の他の実施形態において、修飾基は、N−アセチルノイラミニル基、トランス−4−コチニンカルボキシル基、2−イミノ−1−イミダゾリジンアセチル基、(S)−(−)−インドリン−2−カルボキシル基、(−)−メントキシアセチル基、2−ノルボルナンアセチル基、γ−オキソ−5−アセナフテンブチリル基、(−)−2−オキソ−4−チアゾリジンカルボキシル基、テトラヒドロ−3−フロイル基、2−イミノビオチニル基、ジエチレントリアミンペンタアセチル基、4−モルホリンカルボニル基、2−チオフェンアセチル基または2−チオフェンスルホニル基を含み得る。他の実施形態において、光散乱基、磁性基、ナノ金、他のタンパク質、固体マトリクス、放射性標識および炭水化物が結合され得る。
【0151】
なお他の局面において、修飾基は、オリゴマー(例えば、ポリエチレングリコール、オリゴヌクレオチド、ポリペプチド(本発明の元のペプチドアンタゴニストに由来しても由来しなくてもよい)または結合対の一部分であってもよい。
【0152】
本発明のアンタゴニストは、化合物の所望の官能性を保持したままでその化合物の特異的な特性を変えるようにさらに修飾され得る。例えば、一実施形態において、その化合物は、その化合物の薬物動態学的特性(例えば、インビボでの安定性、溶解度バイオアベイラビリティまたは半減期)を変えるように修飾され得る。その化合物は、その化合物を検出可能な物質で標識するように修飾され得る。その化合物は、その化合物をさらなる治療部分に結合させるように修飾され得る。その化合物を化学的にさらに修飾するために(例えば、その薬物動態学的特性を変えるために)、反応基は、誘導体化され得る。例えば、修飾基が、本発明のペプチドアンタゴニストのコアドメインのアミノ末端に結合される場合、その化合物のカルボキシ末端はさらに修飾され得る。潜在的なC末端修飾としては、化合物がカルボキシペプチダーゼに対する基質として作用する能力を減少させる修飾が挙げられる。C末端修飾因子の例としては、アミド基、エチルアミド基および種々の非天然のアミノ酸(例えば、D−アミノ酸)、β−アラニン、C末端脱カルボキシル化およびC末端アルコールが挙げられる。あるいは、修飾基が、凝集コアドメインのカルボキシ末端に結合される場合、その化合物のアミノ末端は、例えば、その化合物がアミノペプチダーゼに対する基質として作用する能力を減少させるためにさらに修飾され得る。
【0153】
本発明のアンタゴニストは、ポリエチレングリコール(PEG)の付加によって修飾され得る。PEG修飾により、循環時間の改善、溶解度の改善、タンパク質分解に対する耐性の改善、抗原性および免疫原性の減少、バイオアベイラビリティの改善、毒性の減少、安定性の改善およびより容易な処方を生じ得る(総説については、Francisら、International Journal of Hematology、68:1〜18、1998を参照のこと)。PEG化はまた、生物活性の実質的な減少を生じ得る。
【0154】
本発明のアンタゴニストはまた、治療目的のために、放射性同位体(例えば、イットリウム−90またはヨウ素−131)に結合され得る(例えば、DeNardoら、「Choosing an optimal radioimmunotherapy dose for clinical response」、Cancer 94(4補遺):1275〜86、2002;Kaltsasら、「The value of radiolabelled MIBG and octreotide in the diagnosis and management of neuroendocrine tumours」、Ann Oncol 12 補遺2:S47〜50、2001を参照のこと)。
【0155】
本発明のアンタゴニストは、その化合物を検出可能な物質と反応させることにより、その化合物を標識するようにさらに修飾され得る。本発明のいくつかの局面において、適切な検出可能な物質としては、種々の酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質、光散乱物質もしくはプラズモン共鳴物質および放射性物質が挙げられる。適切な酵素の例としては、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼまたはアセチルコリンエステラーゼが挙げられる。結合対のメンバーであり、かつ複合体を形成し得る適切な補欠分子族の例としては、ストレプトアビジン/ビオチン複合体、アビジン/ビオチン複合体および抗原/抗体複合体(例えば、ウサギIgGと抗ウサギIgG)が挙げられる。適切な蛍光物質の例としては、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシルまたはフィコエリトリンおよびエネルギー伝達蛍光色素が挙げられる。発光物質の例としては、ルミノールが挙げられる。光散乱物質またはプラズモン共鳴物質の例としては、金粒子または銀粒子および量子ドットが挙げられる。適切な放射性物質の例としては、14C、123I、124I、125I、131I、Tc99m、35SまたはHが挙げられる。本発明のアンタゴニストは、14Cを本発明のアンタゴニストの修飾基または1つ以上のアミノ酸構造のいずれかに組み込むことにより14Cにより放射活性的に標識され得る。標識された本発明のアンタゴニストは、化合物のインビボでの薬物動態学を評価するため、ならびに例えば、診断目的で疾患の進行もしくは被験体が疾患を発症する傾向を検出するために使用され得る。組織分布の変質されたラミニンは、被験体由来のインビボサンプルまたはインビトロサンプルのどちらかで本発明の標識されたアンタゴニストを使用して検出され得る。インビボ診断剤としての使用のために、本発明のアンタゴニストは、放射性テクネチウムまたは放射性ヨウ素で標識され得る。標識のためのキレート基が導入され得る部位を提供する修飾基(例えば、遊離アミノ基を有するコール酸のAic誘導体)が選択され得る。例えば、本発明のペプチドアンタゴニスト配列内のチロシン残基は、放射性ヨードチロシルで置換され得る。放射性ヨウ素の種々の同位体のいずれかが、診断剤または治療剤を作製するために組み込まれ得る。123I(半減期13.2時間)は、全身シンチグラフィに使用され得、124I(半減期4日間)は、陽電子断層撮影法(PET)に使用され得、125I(半減期60日間)は、代謝回転研究に使用され得、131I(半減期8日間)は、全身に対する放射能計測および遅延低分解能画像化研究に使用され得る。
【0156】
代替的な化学的修飾において、本発明のアンタゴニストは、「プロドラッグ」形態で調製され得、その化合物自体は、変性ラミニンのアンタゴニストとして作用しないが、むしろインビボでの代謝の際に本明細書中で定義される変性ラミニンのアンタゴニストに形質転換され得る。例えば、この型の化合物において、修飾基は、代謝の際に変性ラミニンの活性アンタゴニストの形態に変換され得るプロドラッグ形態で存在し得る。修飾基のこのようなプロドラッグ形態は、本明細書中では「二次修飾基」といわれる。ペプチドベースの薬物の活性な形態の送達を最適化するために代謝を制限するペプチドプロドラッグを調製するための種々の方法が、当該分野で公知である。
【0157】
(処置)
組織における新脈管形成を阻害するため、従ってまた新脈管形成関連疾患の処置のため方法を実施するための本発明の方法は、新脈管形成が生じているかまたは生じている危険性のある組織を、変性ラミニンもしくはタンパク質分解したラミニンに結合し得るが、ラミニンのネイティブの形態にはあまり親和性を有さない変性ラミニンアンタゴニストの治療有効量を含有する組成物と接触させる工程を包含する。従って、本発明の方法は、本発明の変性ラミニンアンタゴニストを含有する生理学的に耐容性のある組成物の治療有効量を患者に投与する工程を包含する。
【0158】
変性ラミニンアンタゴニストの投与のための投薬量範囲は、本明細書中でさらに記載されるアンタゴニストの形態、その効力に依存し、新脈管形成および新脈管形成により仲介される疾患症状が回復される所望の効果を生じるのに十分に多い量である。その投薬量は、有害な副作用(例えば、過粘稠度症候群、肺水腫、うっ血性心不全など)を引き起こすほど多い量であるべきではない。一般的に投薬量は、患者の年齢、状態、性別および疾患の程度によって変動し、当業者により決定され得る。投薬量はまた、いずれかの合併症の場合には、個々の医師によって調整され得る。
【0159】
本発明の化合物が被験体に投与される場合、それらは、治療組成物として調製される。このような組成物は、通常、薬学的に受容可能な濃度の塩、緩衝剤、保存剤、適合性のキャリアおよび必要に応じて他の治療剤を含有し得る。治療組成物は、任意の従来的な経路(注射または時間をかけての段階的な注入が挙げられる)によって投与され得る。投与は、投与される組成物に依存して、例えば、経口投与、肺投与、静脈内投与、腹腔内投与、筋肉内投与、腔内投与、皮下投与または経皮投与であり得る。
【0160】
用語「治療組成物」は、用語「活性化合物」、「活性因子」または「活性組成物」と相互変換可能に使用され、本明細書中で使用される場合、生物学的効果(例えば、新脈管形成の阻害)を生じる本発明の変性ラミニンアンタゴニストのいずれかをいう。本発明に使用される治療組成物は、好ましくは無菌であり、患者への投与に適した重量または体積の単位中に、所望の応答を生じるために治療有効量の治療組成物を含有する。
【0161】
その組成物は、治療有効量で投与される。用語「治療有効量」とは、本明細書中で使用される場合、治療効果を提供するために、研究者、獣医、医師または他の臨床医によって求められる、組織、系、動物またはヒトに生物学的応答または薬効を誘発する活性化合物、プロドラッグまたは薬学的因子の量を意味する。
【0162】
用語「投与」または「投与する」は、異常な状態を処置または予防するために、動物、好ましくは哺乳動物の細胞または組織に化合物を導入する方法をいう。本発明の化合物またはプロドラッグが1つ以上の活性因子と組合せて提供される場合、用語「投与」または「投与する」は、その化合物またはプロドラッグの他の因子との連続的導入または同時導入を包含する。生物内に存在する細胞については、化合物を投与するための多くの技術が、当該分野に存在し、経口適用、注射適用、非経口適用、経皮適用およびエアロゾル適用が挙げられるが、これらに限定されない。
【0163】
次いで、化合物を生物の機能に投与する効果は、モニタリングされ得る。生物は、好ましくは、マウス、ラット、ウサギ、モルモットまたはヤギであり、より好ましくはサルまたは類人猿であり、最も好ましくはヒトである。
【0164】
用語「治療効果」は、異常な状態(転移のような疾患または障害を含む)を引き起こすか、またはこれの原因となる因子の阻害または活性化をいう。治療効果は、異常な状態の1つ以上の症状をある程度軽減するかまたは防止する。異常な状態の処置に関連して、治療効果は、以下の1つ以上をいい得る:(a)細胞の増殖、成長および/または分化の増加または減少;(b)細胞死の阻害(すなわち、遅延または停止)または加速;(c)異常な状態に関連する一種以上の症状のある程度までの軽減;(d)感染した細胞の集団の機能の増強または阻害;(e)異常な状態と関連する細胞に存在する酵素活性の活性化;ならびに(f)異常な状態と関連する細胞に存在する酵素活性の阻害。
【0165】
用語「異常な状態」は、生物における正常な機能から逸脱する生物の細胞または組織における機能をいい、一般に疾患または疾患と関連する過程といわれる状態が挙げられるが、これらに限定されない。異常な状態は、新脈管形成、細胞増殖、細胞分化、細胞外マトリクスの再構築、細胞生存、細胞機能または細胞内の酵素の活性に関連し得る。細胞増殖障害に関連する異常な状態としては、癌、線維症性障害および糸球体間質障害、異常な新脈管形成および異常な脈管形成、創傷治癒、乾癬、糖尿病および炎症が挙げられる。分化に関連する異常な状態としては、神経変性障害、遅い速度の創傷治癒および遅い速度の組織移植治癒が挙げられるが、これらに限定されない。細胞生存に関連する異常な状態とは、プログラム細胞死(アポトーシス)経路が活性化されるか、抑制される状態をいう。
【0166】
細胞外マトリクスタンパク質の多くは、新脈管形成と関連している。
【0167】
用語「逸脱」は、ラミニン分子の機能と関連して、細胞外マトリクスの他の要素ともはや正確に相互作用しないラミニン分子であって、それが、天然の結合パートナーともはや相互作用し得ないか、別のタンパク質によってもはや改変されないか、天然の結合パートナーともはや相互作用しないように高次構造的に変化したラミニン分子をいう。
【0168】
一実施形態において、治療有効量は、処置される組織において新脈管形成の測定可能な阻害を生じるのに十分な、変性ラミニンアンタゴニストの量(すなわち、新脈管形成阻害量)である。新脈管形成の阻害は、本明細書中に記載される免疫組織化学により、または当業者に公知のほかの方法によりインサイチュで測定され得る。変性ラミニンアンタゴニストの効力は、種々の手段によって測定され得、それらとしては、CAMアッセイにおける新脈管形成の阻害、インビボのウサギの眼でのアッセイにおける新脈管形成の阻害、インビボのキメラマウス:ヒトアッセイおよび類似するアッセイにおける新脈管形成の阻害が挙げられる。
【0169】
モノクローナル抗体の形態の本発明の変性ラミニンアンタゴニストの治療有効量は、代表的に生理学的に耐容される組成物で投与される場合に、約0.01μg/mL〜約100μg/mL、好ましくは約1μg/mL〜約5μg/mL、および通常は約5μg/mLの血漿濃度を達成するのに十分である量である。言い方を換えると、投薬量は、一日に一回以上の投与量で、一日または数日の間、約0.1mg/kg〜約300mg/kg、好ましくは約0.2mg/kg〜約200mg/kg、最も好ましくは約0.5mg/kg〜約20mg/kgで変動し得る。
【0170】
アンタゴニストが、モノクローナル抗体のフラグメントの形態である場合、その量は、全抗体の質量に対するフラグメントの質量に基づいて容易に調節され得る。好ましい血漿モル濃度は、約2μM〜約5mMの抗体アンタゴニストであり、好ましくは約100μM〜1mMの抗体アンタゴニストである。
【0171】
ポリペプチドの形態または低分子の形態の本発明の変性コラーゲンアンタゴニストの治療有効量は、代表的に生理学的に耐容される組成物で投与される場合に、約0.1μg/mL〜約200μg/mL、好ましくは約1μg/mL〜約150μg/mLの血漿濃度を達成するのに十分であるポリペプチドの量である。1モルあたり約500gの質量を有するポリペプチドに基づいて、好ましい血漿モル濃度は、約2μM〜約5mMのポリペプチドアンタゴニストであり、好ましくは約100μM〜1mMのポリペプチドアンタゴニストである。言い方を換えると、体重あたりの投薬量は、一日に一回以上の投与量で、一日または数日の間、約0.1mg/kg〜約300mg/kg、好ましくは約0.2mg/kg〜約200mg/kgで変動し得る。
【0172】
量は、開業医によって調整され得る。開業医の知識および専門知識の範囲内である要因としては、以下が挙げられる:処置される特定の状態、状態の重篤度、患者の年齢、患者の健康状態、患者の体重、処置の期間、同時の治療(もしあれば)の性質、投与経路などの要因。これらの要因は、当業者に周知であり、扱われ得るが、日常的な調整に過ぎない。個々の成分またはその組合せの最大限の用量が使用されることが一般的に好ましく、その用量は、医師の判断に従った最も大きい安全な用量である。しかし、患者は、医学的な理由、心理的な理由または他の理由のために、より低用量またはより耐容される用量を主張し得ることが、当業者に理解される。患者の応答は、例えば、治療組成物の投与後に循環するラミニンの量を決定することにより、または新脈管形成の割合を測定することにより測定され得る。他のアッセイが、当業者に公知であり、応答のレベルを測定するために使用され得る。
【0173】
被験体に投与される活性化合物の用量は、種々のパラメータに従って、特に、使用される投与の様式および患者の状態に従って選択され得る。他の要因としては、処置の所望の期間が挙げられる。被験体における応答が、最初に適用した用量では不十分である事象において、より高い用量(または異なる送達経路による効率的により高い用量)は、患者の耐性が許容する程度まで使用され得る。
【0174】
治療組成物の投与のための他のプロトコルは、当業者に公知であって、そのプロトコルの中で、用量、注射の予定、注射の部位、投与の様式などが前述のものとは異なる。例えば、試験目的または獣医学的治療目的のための治療組成物のヒト以外の哺乳動物への投与は、上に記載したものと実質的に同じ条件下で行なわれる。
【0175】
本発明のモノクローナル抗体、ペプチドまたは他のアンタゴニストは、注射または時間をかけての段階的な注入によって非経口的に投与され得る。処置されるべき組織は代表的に、全身投与によって身体に接近され得、従って、最も多くの場合、治療組成物の静脈内投与によって処置されるが、標的化される組織が標的分子を含むようである場合、他の組織および他の送達手段が企図される。従って、モノクローナル抗体、ポリペプチドおよびそれらの誘導体を含むアンタゴニストは、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、腔内、経皮的、局所的、眼内、経口的、鼻腔内または関節内に投与され得、ぜん動手段によって送達され得る。
【0176】
本発明のモノクローナル抗体、ペプチドまたは他のアンタゴニストを含有する治療組成物は、例えば、単位用量の注射によって、従来的に静脈内に投与される。用語「単位用量」は、本発明の治療組成物に関連して使用される場合、被験体への単一投薬量として適切である物理的に別個の単位をいい、各単位は、必要な希釈剤(すなわち、キャリアまたはビヒクル)と関係して所望の治療有効量を生じるために計算された活性物質の所定の量を含む。
【0177】
好ましい一実施形態において、変性ラミニンアンタゴニストは、単一投薬量で静脈内に投与される。
【0178】
本発明の組成物は、投薬処方と適合性の様式で、治療有効量で投与される。投与される量および時期は、処置される患者、活性成分を利用する患者の系の容量および所望の治療効果の程度に依存する。投与されるのに必要とされる活性成分の正確な量は、開業医の判断に依存し、各個体に特有である。しかし、全身適用のための適した投薬範囲は、本明細書中に開示され、投与の経路に依存する。投薬のための適したレジメンもまた利用可能であるが、最初の投与、その後の注射または他の投与によって1時間以上の間隔で繰り返し投与されることによって代表的に表される。あるいは、インビボ治療のために指定された範囲の血液中の濃度を維持するために十分である継続的な静脈内注入が企図される。
【0179】
本発明において、その多くの実施形態において処置される患者は、望ましくはヒト患者であるが、本発明の原則が、本発明が全ての哺乳動物について有効であることを示唆することが理解されるべきであり、全ての哺乳動物は、用語「患者」に包含されることが意図される。この文脈において、哺乳動物は、新脈管形成に関係する疾患の処置が望ましい任意の哺乳動物種、特に農業的な哺乳動物種および家畜とされる哺乳動物種を包含することが理解される。このような患者は、例えば、ブタ、ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ラバ、ロバ、イヌ、ネコ、ウサギ、モルモット、サルまたは類人猿、マウスまたはラットであり得る。
【実施例】
【0180】
(実施例1:抗体の獲得)
(ヒトラミニンの変性形態と特異的に反応する一組のモノクローナル抗体を単離するための免疫サブトラクションの使用)
免疫サブトラクション技術は、実験的にマウスの免疫応答を操作し、それにより、一般的な高度に抗原性のエピトープの混合物の内で希少で少量のエピトープに対する抗体の産生を選択的に増強し得る。手短かにいうと、6匹の雌性BALB/cマウスの群に、200μgの三重らせんのヒトネイティブラミニンをそれぞれ腹腔内注射する。ネイティブの抗原の注射の24時間後および48時間後、マウスに、寛容化剤(tollerizing agent)であるシクロホスファミド(150mg/kg)を腹腔内注射する。寛容化剤は、ネイティブの抗原内で共通の決定因子に対する抗体を産生する活性化B細胞を死滅させる。寛容化は、ネイティブの抗原内の共通のエピトープに対する免疫応答を減少させるために3回繰り返される。最後の寛容化剤注射の25日後、そのマウスに、熱変性したV型コラーゲン、フィブロネクチンまたはラミニンを注射し、変性に曝されたエピトープに対する免疫応答を刺激する。変性した抗原を、三週間毎に合計四回注射する。各マウス由来の血清を、ELISAにより、ネイティブ抗原と変性抗原とで、免疫活性について試験する。変性した抗原に対して特異的に高免疫反応性を示す全てのマウスを、ハイブリドーマの産生のために使用する。
【0181】
(抗原の調製)
精製されたヒトラミニンをSigma(St.Louis、MO)より購入する。ネイティブのタンパク質を、抗原注射のために滅菌PBSで希釈する。熱変性のために、タンパク質を沸騰水浴で30分間加熱し、氷水浴で迅速に冷却する。
【0182】
(ELISAを使用する変性/分解ECMタンパク質に対する血清反応性の試験)
各マウス由来の血清の、ネイティブの抗原および熱変性した抗原のそれぞれに対する免疫反応性を、ELISAにより、試験する。マイクロタイタープレートを、25μg/mlの濃度にて、V型コラーゲン、ラミニンおよびフィブロネクチン(ネイティブのものおよび熱変性したもの)で、4℃にて一晩コーティングする。次いで、そのウェルをPBS中のプロテアーゼを含まないBSA(100μg/ml)で4時間ブロックする。血清またはモノクローナル抗体を、適切な力価にて37℃で2時間インキュベートし、その後、ペルオキシダーゼを結合したヤギ抗マウスIgGおよびIgM(H+L)とともに(1:3000希釈)2時間インキュベートする。最後に、OPD(0.4mg/ml)の80mMクエン酸−リン酸緩衝液(pH5.0)を洗浄したプレートに添加し、結合した抗体を定量する。25μlの4N HSOにより発色反応(chromagenic reaction)を停止させる。490nmでの吸光度を測定し、光学値を、BSAに対する非特異的な結合に対して補正した。このアッセイを三連で行なう。変性抗原に対して反応性を示す全てのマウスを、ハイブリドーマ産生のために使用する。
【0183】
(ハイブリドーマの調製)
ハイブリドーマ融合を、これまでに記載されたような標準的な技術により行なう(Fazekas,d.S.,Groth,S.,およびScheidegger,D.,(1980)J.Immunol.Methods、35、1〜21)。手短かにいうと、脾臓およびリンパ節を免疫したマウスから取り除き、10mlのDMEM中で洗浄する。脾臓細胞をその組織から標準的なバルーン技術によって収集する。回収した細胞をDMEM中で2度洗浄する。赤血球を、0.1M NHCl中で10分間インキュベートすることにより除去する。次いで、脾細胞を洗浄し、骨髄腫細胞と4:1(脾細胞:骨髄腫細胞)の比で混合する。PEG−400(0.5ml)を、穏やかに混合しながら60秒間にわたってゆっくり細胞に添加し、37℃にて90秒間インキュベートする。その後、その細胞を20mlの滅菌生理食塩水でリンスする。融合細胞を、完全HAT培地に再懸濁し、2×10細胞/ウェルの濃度で96ウェルマイクロタイタープレートに供する。ハイブリドーマ培養物を、平静に7〜14日間増殖させる。生じたハイブリドーマ由来の上清を、ELISAにより反応性についてスクリーニングする。ハイブリドーマのプールを、クローニングの時点まで液体窒素中で保存する。全てのハイブリドーマを、クローン性を確実にするために限界希釈により2度クローニングする。
【0184】
(ハイブリドーマにより産生されたモノクローナル抗体のアイソタイプ決定)
変性ECMタンパク質に対して優先的な反応性を示すモノクローナル抗体を、Mouse Typer Sub−Isotyping Kit(Bio−Rad)を製造業者のプロトコルに従って利用して確立された手順に従ってアイソタイプ決定する。
【0185】
(モノクローナル抗体の精製)
IgGモノクローナル抗体を、標準的な技術を使用してプロテインAアガロースに対する親和性により培養培地または腹水から精製する。IgMモノクローナル抗体を、製造業者により提供されるプロトコルを使用してMannin−Binding−Column(Pierce)に対する親和性により精製する。
【0186】
生産性を保証するために、通常より多くの動物(6匹のマウス)を使用する。さらに、所望の免疫反応性を有するが、低力価であるモノクローナル抗体をさらなる分析から除外しない。これらの改変により、各変性抗原について、30〜40個のポジティブのハイブリドーマが期待される;これらのポジティブのハイブリドーマの内のいくつかは、抗脈管形成活性を示すはずである(約4〜8個)。
【0187】
(制限および代替物)
いくつかの新規の抗脈管形成モノクローナル抗体を同定する。シクロホスファミドは、免疫抑制剤であるので、B細胞増殖を抑制し、従って、生存可能なB細胞はほとんど残存し得ない。このようなことが生じる場合、シクロホスファミドの投薬量は、より低いレベル(例えば、100mg/kg)まで低減され得る。代替的なアプローチ(例えば、新脈管形成を調節する役割を果たすと考えられる特定のペプチドによる免疫)は、潜在部位を認識する抗体を同定するために使用され得る。
【0188】
(実施例2:抗体の獲得)
免疫サブトラクションを使用して、ヒトラミニンの変性形態と特異的に反応する一組のモノクローナル抗体を単離する。新脈管形成の間のECMの分解は、ECMのタンパク質分解性の再構築の際にのみ露出されるECM中の潜在エピトープ(「潜在」エピトープ)を露出すると提唱されている。さらに、いくつかの露出されたECMの潜在エピトープは、細胞表面変化を内皮細胞上のレセプターに関与させ、その後のシグナル伝達が、内皮細胞の挙動に必須の変化を提供することにより、新脈管形成に重要かつ必須の役割を果たす。この提唱の中心となる仮説は、ラミニン中の潜在部位が、新脈管形成に必須であるということである。この仮説の推論は、このような潜在部位のアンタゴニストが、内皮細胞の挙動を変え、新脈管形成をブロックするということである。
【0189】
(I.ラミニン)
本発明者らは、ラミニンに対するモノクローナル抗体のパネルを作製し、変性ラミニンに優先的に結合する抗体をスクリーニングした。
【0190】
(結果)
ラミニンによる免疫のために3匹のマウスを選択した。免疫前の血清を最初に、後のELISA分析のための基準点として収集した。マウスを「ネイティブの」(熱変性していない)ラミニンにより免疫した。二日後、マウスをシクロホスファミドで処置し、ネイティブのラミニンにより刺激した増殖性B細胞を死滅させた。これを3回繰り返し、ネイティブのラミニンに応答するB細胞を除去した。次いで、マウスを熱変性したラミニンで免疫し、変性ラミニンに対する免疫応答を惹起した。変性ラミニンによる免疫の数回のサイクルの後、血清をELISA分析のために収集した。3匹のマウスの内の2匹由来の血清は、ネイティブのラミニンよりむしろ熱変性したラミニンと優先的に反応した(表1)。
【0191】
【表1】

番号2のマウスおよび番号3のマウスは、熱変性したラミニンに対して優先的な反応性を示し、従ってハイブリドーマの作製のために選択した。脾臓を収集し、不死化した融合パートナーと融合させ、ハイブリドーマのプールを作製した。このプールを、単一の細胞として播種し、クローン集団を作製した。クローニングを2度繰り返し、クローン性を確実にした。各クローン由来の培養物上清を、ネイティブのラミニンおよび熱変性したラミニンに対する反応性について試験した。クローンの内大部分(1022個のクローンの内850個より多く)は、変性ラミニンに対する1.2倍より小さい選択性を示した。培養上清物が、変性ラミニンと優先的に反応する(1.6倍より大きい優先性)約50個のクローンを同定した。これらのクローンを増殖させ、産生された抗体のアイソタイプを、標準的なELISA分析により決定した。全てのクローンが、IgMであることが見出された。これらの50個のクローンの培養上清物を調製し、IgM結合レクチンに対する親和性によりIgM抗体を精製した。IgM調製物のタンパク質濃度を、ブラッドフォード分析により決定した。
【0192】
精製したIgMの50個のサンプルのELISA分析は、10個が、変性ラミニンに対する強い優先性を示し、別の10個が変性ラミニンに対する中程度の優先性を示したことを示した(表2)。
【0193】
【表2】

(実施例3:さらなる特徴付け)
表2に示したハイブリドーマのそれぞれについて、腹水を作製する。IgM結合カラムに対する親和性により、それぞれの腹水から抗体を精製する。精製した抗体を、ネイティブのラミニンおよび変性ラミニンに対する内皮細胞の挙動を変化させる能力について分析する。具体的には、ネイティブのラミニン上の移動が劇的に影響を受けないのに、変性ラミニンへの内皮細胞の接着および移動の速度を遅くする能力について抗体をアッセイする。このような抗体の中には、インビボでの内皮細胞の接着および/または移動をブロックし、新脈管形成および腫瘍の成長をブロックする抗体になるものもある。
【0194】
(実施例4:他のタンパク質に対する抗体の獲得)
(I.フィブロネクチン)
フィブロネクチンによる免疫のために3匹のマウスを選択した。免疫前の血清を最初に、後のELISA分析のための基準点として収集した。マウスを「ネイティブの」(熱変性していない)フィブロネクチンにより免疫した。二日後、マウスをシクロホスファミドで処置し、ネイティブのフィブロネクチンにより刺激した増殖性B細胞を死滅させた。次いで、マウスを熱変性したフィブロネクチンで免疫し、変性フィブロネクチンに対する免疫応答を惹起した。次いで、マウスを熱変性したフィブロネクチンで免疫し、変性フィブロネクチンに対する免疫応答を惹起した。変性フィブロネクチンによる免疫の数回のサイクルの後、血清をELISA分析のために収集した。3匹のマウス由来の血清は、ネイティブのフィブロネクチンよりむしろ熱変性したフィブロネクチンと優先的に反応した(表3)。
【0195】
【表3】

3匹のマウスをそれぞれ屠殺し、その脾臓を、ハイブリドーマのプールの生成に使用した。ハイブリドーマのプールを、後日の分析のために凍結した。
【0196】
(実施例5:細胞接着/移動アッセイ)
(ネイティブまたは変性したV型コラーゲン、ラミニンおよびフィブロネクチンでの血管内皮細胞接着および移動を阻害するモノクローナル抗体の同定)
抗原(V型コラーゲン、ラミニンおよびフィブロネクチン)のそれぞれに対するモノクローナル抗体は、変性した抗原を優先的に認識することが見出されている。これらのモノクローナル抗体を、変性ECMタンパク質でのHUVECの接着および移動を阻害する能力について試験する。
【0197】
(細胞接着アッセイ)
4℃にて16時間インキュベートすることにより、ネイティブおよび熱変性したV型コラーゲン、ラミニンおよびフィブロネクチン(25μg/ml)を、96ウェルの組織培養処理していないプレートに固定化する(Damsky,C.H.,およびWerb,Z.(1992)Current Opinion in Cell Biology、4(5)、772〜81)。次いで、ウェルを洗浄し、PBS中1%BSAで、37℃にて1時間インキュベートする。コンフルーエント以下のHUVECを回収し、洗浄し、接着緩衝液(RPMI 1640、1mM MgCl、0.2mM MnClおよび0.5% BSA)中に再懸濁する。200μlの接着緩衝液に再懸濁したHUVEC(1×10細胞)を各ウェルに添加し、37℃にて30分間接着させた。試験すべきモノクローナル抗体(およびモノクローナル抗体に適合するコントロールアイソタイプ)を、最終濃度25μg/mlにて接着緩衝液に添加する。接着しなかった細胞を穏やかに洗浄することにより取り除き、接着した細胞を記載される(Damsky,C.H.およびWerb,Z.(1992)Current Opinion in Cell Biology 4(5)、772〜81)ようにクリスタルバイオレットにより10分間染色する。ウェルをPBSを用いて3回洗浄し、クリスタルバイオレットを結合した細胞を、100の10%酢酸を添加することにより溶出する。アッセイを三連で行なう。細胞接着を、マイクロタイタープレートリーダーを用いて600nmの波長にて溶出したクリスタルバイオレットの光学密度を測定することにより定量する。
【0198】
(細胞移動アッセイ)
トランスウェル膜(孔サイズ8.0μm)の下側を、PBS中25μg/mlの濃度のネイティブまたは熱変性した、V型コラーゲン、ラミニンまたはフィブロネクチンで、4℃にて16時間コーティングする。600μlの移動緩衝液(RPMI 1640、1mM MgCl、0.2mM MnClおよび0.5% BSA)を下のチャンバに添加する。HUVEC(1×10細胞)を、100μlの移動緩衝液に再懸濁し、上のチャンバに配置し、37℃にて8時間移動させる。膜の上側に残っている細胞を、綿棒で取り除く。下側に移動した細胞を固定し、クリスタルバイオレットで染色する。トランスウェル膜を洗浄し、クリスタルバイオレットを結合した細胞を、記載される(DamskyおよびWerb、1992)ように、10%酢酸を用いて溶出する。細胞の移動を、マイクロタイタープレートリーダーを用いて600nmの波長にて溶出したクリスタルバイオレットの光学密度を測定することにより定量する。
【0199】
(予測された結果、限界および代替物)
同定されたモノクローナル抗体のいくつかは、HUVECの抗原への接着および/または移動を阻害する。しかし、ECMタンパク質の変性は、細胞接着の減少を引き起こし得、その場合、アッセイ条件は、細胞接着および細胞移動を最適化するために、プレート上に固定された変性タンパク質の量を増加させることにより調整し得る。70%より高い細胞接着を支持するタンパク質の量を、プレートコーティングに使用する。
【0200】
(実施例6:新脈管形成の阻害/新脈管形成アッセイ)
本発明のアンタゴニストはまた、組織における新脈管形成を調節する能力についてアッセイされ得る。当業者に公知の任意の適切なアッセイが、このような効果をモニタリングするために使用され得る。いくつかのこのような技術は、本明細書中に記載される。
【0201】
ニワトリの漿尿膜(CAM)における新脈管形成を測定する一種のアッセイは、CAMアッセイとして公知である。CAMアッセイは、他の文献により詳細に記載されていて、さらに腫瘍組織の新脈管形成と血管新生との両方を測定するために使用されている。Ausprunkら、Am.J.Pathol.,79:597〜618(1975)およびOssonskiら、Cancer Res.,40:2300〜2309(1980)を参照のこと。
【0202】
CAMアッセイは、インビトロ新脈管形成のためのアッセイモデルとしてよく認識されている。なぜならば、全組織の血管新生が生じ、実際のニワトリの胚の血管がCAMに成長するか、またはCAMで成長した組織に成長するからである。CAMアッセイは、新しい血管の成長の量および程度の両方に基づく血管新生の阻害を例証する。さらに、CAMに移植された任意の組織(例えば、腫瘍組織)の成長をモニタリングすることは容易である。最後に、このアッセイは、アッセイ系の中に毒性に対する内部標準が存在するので特に有用である。ニワトリの胚は、任意の試験試薬に曝露され、従って胚の健康状態は、毒性の指標である。
【0203】
新脈管形成を測定する別のアッセイは、インビボのウサギの眼のモデルであり、ウサギの眼のアッセイといわれている。このウサギの眼のアッセイは、他の文献に詳細に記載されていて、さらに新脈管形成インヒビター(例えば、サリドマイド)の存在下で新脈管形成と血管新生との両方を測定するために使用されている。D’Amatoら、(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.91:4082〜4085を参照のこと。
【0204】
ウサギの眼のアッセイは、インビボ新脈管形成のためのアッセイモデルとしてよく認識されている。なぜならば、角膜の縁から角膜に成長するウサギの血管により例証される血管新生プロセスが眼の自然に透明な角膜を通して容易に可視化されるからである。さらに、血管新生の刺激もしくは阻害の程度と量との両方、または血管新生の回帰が、経時的に容易にモニタリングされ得る。
【0205】
最後に、ウサギは、任意の試験試薬に曝露され、従ってウサギの健康状態は、試験試薬の毒性の指標である。
【0206】
キメラマウス:ヒトマウスモデルにおける新脈管形成を測定するさらなるアッセイは、キメラマウスアッセイといわれている。このアッセイは、他の文献に詳細に記載されていて、新脈管形成、血管新生および腫瘍組織の回帰を測定するために、本明細書中にさらに記載されている。Yanら、(1993)、J.Clin.Invest.91:986〜996を参照のこと。
【0207】
キメラマウスアッセイは、インビボ新脈管形成の有用なアッセイモデルである。なぜならば、移植された皮膚移植片は、組織学的に正常ヒト皮膚に非常に類似していて、全組織の血管新生が生じるからである。実際のヒト血管は、移植したヒト皮膚から移植したヒト皮膚の表面のヒト組織に成長する。ヒト移植片中の血管新生の起源は、ヒト特異的内皮細胞マーカーを用いた新脈管構造の免疫組織化学染色により実証され得る。
【0208】
キメラマウスアッセイは、新しい血管の成長の回帰の量と程度との両方に基づいて新血管新生の回帰を実証する。さらに、移植された皮膚上に移植された任意の組織(例えば、腫瘍組織)の成長に対する効果をモニタリングすることは容易である。最後に、このアッセイは、アッセイ系の中に毒性に対する内部標準が存在するので有用である。キメラマウスは、任意の試験試薬に曝露され、従ってマウスの健康状態は、毒性の指標である。
【0209】
本明細書中で例証的に記載される本発明は、本明細書中に具体的に開示されない任意の要素もしくは制限なしに、適切に実施され得る。従って、例えば、用語「含む(comprising)」、「含む(including)」、「含む(containing)」などは、制限なしに広範に読み取られなければならない。さらに、本明細書中で使用される用語および表現は、制限のための用語ではなく、記述のための用語として使用され、このような用語および表現の使用には、示される本発明の任意の等価物またはその一部の排除を意図しないが、特許請求された本発明の範囲内で種々の改変が可能であることが認識される。従って、本発明は、好ましい実施形態および任意の特徴により具体的に開示されるが、開示された本明細書中で具体化された本発明の改変および変化が、当業者により容易になされ得、そのような改変および変化は、本明細書中で開示された本発明の範囲内であると考えられることが理解されるべきである。本発明は、本明細書中で広範に総称的に記載されている。属の開示に含まれるより狭い種および亜属の分類のそれぞれは、これらの発明の一部を形成する。これは、本発明のそれぞれの属の記述に含まれるが、但し、除かれるべき材料が特に列挙されるか否かにかかわらず、消極的な限定は、属から任意の被験体を除くことを可能にする。さらに、発明の特徴または局面が、マーカッシュ群の表現で記載される場合、当業者は、本発明がまたマーカッシュ群の任意の個々のメンバーまたはメンバーの一部の群のいずれかの表現で記載されることも認識する。さらに、本発明の局面に対する参照が個々のメンバーの範囲を列挙する(例えば、「配列番号1〜配列番号100、包括的に」)場合、一覧の個々のメンバーを列挙することと等価であることが意図され、さらに、全ての個々のメンバーが、請求項から個々に排除され得るか、個々に含まれ得ることが理解されるべきである。
【0210】
本明細書中の方法において示された工程および/または使用された工程は、記載された順序および/または述べられた順序とは異なる順序で実施され得る。これらの工程は、これらの工程が行なわれ得る順序の単なる例示である。この工程は、特許請求された本発明の目的をなお実施するように所望される任意の順序で行なわれ得る。
【0211】
本明細書中の本発明の記述から、本発明の範囲を逸脱することなく本発明の概念を実施するために、種々の等価物が使用され得ることが明らかである。さらに、本発明は、特定の実施形態を特異的に参照して記載されているが、当業者は、変化が本発明の精神および範囲から逸脱することなく、形態および詳細になされ得ることを認識する。記載された実施形態は、全ての局面において制限的ではなく例示的であると考えられる。本発明は、本明細書中に記載される特定の実施形態に限定されず、多くの等価物、再構成、改変および置換が、発明の範囲を逸脱することなく可能であることがまた理解されるべきである。従って、さらなる実施形態が、本発明の範囲内であり、添付の特許請求の範囲の範囲内である。
【0212】
本明細書中で言及された全ての米国特許および米国特許出願、外国特許および外国特許出願、科学論文、書物および出版物は、それぞれ個々の特許または出版物(任意の図面、図および表を含む)が完全に示されているかのように、参考として援用されることが明確に個々に示されるかのように、その全体が参考として本明細書中に援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノクローナル抗体であって、該モノクローナル抗体のネイティブラミニンに対する結合と比較した場合、変性ラミニンに対する少なくとも約1.5倍増加した結合を有する、モノクローナル抗体。
【請求項2】
請求項1に記載のモノクローナル抗体であって、前記増加した結合が、該モノクローナル抗体のネイティブラミニンに対する結合と比較した場合、変性ラミニンとの間の結合における少なくとも約2倍の差異である、モノクローナル抗体。
【請求項3】
請求項1に記載のモノクローナル抗体であって、前記増加した結合が、該モノクローナル抗体のネイティブラミニンに対する結合と比較した場合、変性ラミニンとの間の結合における少なくとも約6倍の差異である、モノクローナル抗体。
【請求項4】
モノクローナル抗体であって、変性ラミニン中の骨格ドメインに特異的に結合し、該結合が、該モノクローナル抗体が該ラミニンのネイティブ形態中の該骨格ドメインに対して結合するよりも、少なくとも約1.5倍だけ大きい親和性を有する、モノクローナル抗体。
【請求項5】
請求項4に記載のモノクローナル抗体であって、前記骨格ドメインに対する結合の親和性が、ネイティブラミニンと比較した場合、変性ラミニンにおいて少なくとも約2倍大きい、モノクローナル抗体。
【請求項6】
請求項4に記載のモノクローナル抗体であって、前記骨格ドメインに対する結合の親和性が、ネイティブラミニンと比較した場合、変性ラミニンにおいて少なくとも約6倍大きい、モノクローナル抗体。
【請求項7】
前記モノクローナル抗体が、以下のモノクローナル抗体クローン:
LMD2、LMD9、LMD21、LMD24、LMD52、LMD105、LMD1、LMD5、LMD11、LMD17、LDM26、LMD13、LMD14、LMD15、LMD16、LMD23、LMD30、LMD209、またはLMD418
の結合特異性を有するモノクローナル抗体である、請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5、または請求項6に記載のモノクローナル抗体。
【請求項8】
前記モノクローナル抗体が、モノクローナル抗体クローンLMD9の結合特異性を有するモノクローナル抗体である、請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5、または請求項6に記載のモノクローナル抗体。
【請求項9】
前記モノクローナル抗体が、モノクローナル抗体クローンLMD11の結合特異性を有するモノクローナル抗体である、請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5、または請求項6に記載のモノクローナル抗体。
【請求項10】
前記モノクローナル抗体が、モノクローナル抗体クローンLMD17の結合特異性を有するモノクローナル抗体である、請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5、または請求項6に記載のモノクローナル抗体。
【請求項11】
前記モノクローナル抗体が、ヒト化モノクローナル抗体である、請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5、または請求項6に記載のモノクローナル抗体。
【請求項12】
前記モノクローナル抗体が、化学的に修飾されたモノクローナル抗体である、請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5、または請求項6に記載のモノクローナル抗体。
【請求項13】
前記モノクローナル抗体が、細胞傷害性因子または細胞増殖抑制性因子に結合体化されている、請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5、または請求項6に記載のモノクローナル抗体。
【請求項14】
組織における新脈管新生を阻害するための方法であって、請求項1〜10のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体を該組織に投与する工程を包含する、方法。
【請求項15】
前記モノクローナル抗体が、化学療法と組み合わせて投与される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記モノクローナル抗体が、放射線治療と組み合わせて投与される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記モノクローナル抗体が、ラジオアイソトープに結合体化されている、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記組織が炎症性であり、かつ新脈管形成が生じている、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記組織が関節炎組織、眼の組織、網膜組織、または血管腫である、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
組織における腫瘍増殖、腫瘍転移、または転移した腫瘍の増殖を阻害する方法であって、請求項1〜11のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体を投与する工程を包含する、方法。
【請求項21】
前記モノクローナル抗体が、化学療法と組み合わせて投与される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記モノクローナル抗体が、放射線治療と組み合わせて投与される、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記モノクローナル抗体が、投与される前に、ラジオアイソトープに結合体化されている、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記処置が、前記組織を加熱する工程を包含する、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
組織における乾癬、黄斑変性、再狭窄、慢性関節リウマチ、強皮、線維症、または脈管炎を阻害する方法であって、請求項1〜11のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体を投与する工程を包含する、方法。
【請求項26】
前記モノクローナル抗体が、化学療法と組み合わせて投与される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記処置が、前記組織を加熱する工程をまた包含する、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
精製されたペプチドであって、本発明のモノクローナル抗体の結合によって同定されるエピトープから実質的に構成されている、精製されたペプチド。
【請求項29】
前記モノクローナル抗体が、以下のモノクローナル抗体クローン:
LMD2、LMD9、LMD21、LMD24、LMD52、LMD105、LMD1、LMD5、LMD11、LMD17、LDM26、LMD13、LMD14、LMD15、LMD16、LMD23、LMD30、LMD209、またはLMD418
の結合特異性を有するモノクローナル抗体である、請求項28に記載の精製されたペプチド。
【請求項30】
前記モノクローナル抗体が、モノクローナル抗体クローンLMD9の結合特異性を有するモノクローナル抗体である、請求項28に記載の精製されたペプチド。
【請求項31】
前記モノクローナル抗体が、モノクローナル抗体クローンLMD11の結合特異性を有するモノクローナル抗体である、請求項28に記載の精製されたペプチド。
【請求項32】
前記モノクローナル抗体が、モノクローナル抗体クローンLMD17の結合特異性を有するモノクローナル抗体である、請求項28に記載の精製されたペプチド。

【公表番号】特表2007−523092(P2007−523092A)
【公表日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−553372(P2006−553372)
【出願日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【国際出願番号】PCT/US2005/005322
【国際公開番号】WO2005/079508
【国際公開日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【出願人】(506274291)キャンサーバックス コーポレイション (1)
【Fターム(参考)】