説明

新規なジアミノフェノチアジン化合物、その製造方法、およびその使用

本発明は、新規な2,8‐ジアミノフェノチアジン化合物およびその製造方法に関する。
さらに、本発明は、新規な2,8‐ジアミノフェノチアジン化合物の、液体またはガス状流体、とりわけ、流入物および産業排水または家庭排水の処理分野における使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なジアミノフェノチアジン化合物およびその製造方法に関する。
さらに、本発明は、新規なジアミノフェノチアジン化合物の、液体またはガス状流体、とりわけ、産業排水または家庭排水の処理分野における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
大まかに言って、当該技術の状況においては、そのような殺生物剤および酸化剤の使用を必要とする多くの種々の産業分野、とりわけ、農業食品産業および排水処理分野において使用する新規な殺生物剤が絶えず求められている。
微生物学的リスクは、絶え間のない発生故に現実の脅威を示している。実施されている方法および手段は、これらの方法および手段に対して抵抗性である個体群を選別するか或いは確認されていないまたは古い疾病を発症させることが避けられない。物質滅菌および/または消毒に頼る現存の系は、そのような問題の処理に対して抵抗性である生存因子および分子にとっての濃縮剤として作用し、従って、ヒト、動物および植物の健康を脅かし(流入種)、さらに、同じ産生物およびリスクのための貯槽として作用する(排出種)。
【0003】
あり得る微生物学的リスクを抑制する或いは阻止することを意図する殺生物剤製品および方法は、一般的予防策(消毒、飲料水化、浄化)およびこの生物集団に関連する疾病および/または不都合の処置方法の双方に関して時代遅れである。
製薬、農業食品、マイクロエレクトロニクス工業のような精密および重厚産業は、高度な滅菌および/または純粋条件下で生産しなければならない。
水および排水の処理および浄化は、天然資源の化学的または微生物学的安全レベルの悪化の点で、益々複雑で費用高のプロセスである。
ヒトおよび動物の健康のための益々高度化した浸潤的操作は、流入種(水、ガス、大気)を厳格に消毒することを必要とする。2007年において、流入種および排出種の処理は、不十分な制御のままである。
【0004】
院内感染症の数は、依然として過度に高いままである。
伝統的な消毒剤(酸化剤、ビグアニド、第四級アンモニウム化合物等)の強力な選定は、通常のヒト病原性微生物を抑制するのを可能にするが、流入種回路中に、種々の起原からの微生物、例えば、バイオテルル(biotelluric)微生物(シュードモナス種、クロストリジウム種、クリプトスポリジウム種等)を選別し、従って、持ち込む。これらの新規な因子は、処理することおよび排除することが極めて難しいようである。
抗生物質に関しては、その繰返しの使用が伝統的な病原菌に対する作用スペクトルを崩壊させている。
【0005】
既に述べたように、消毒剤は、産業または家庭排水の処理方法において頻繁に使用されている。例えば、排水の処理方法は、家庭または産業起原のいずれであれ、一般的には、下記の連続工程を含む:
施設に処理すべき排水を供給するための汲み上げ工程;
処理すべき排水から最も粗い固形汚染物を物理的分離法によって除去することを意図するスクリーニング工程;
懸濁物質の大部分を除去するための物理的分離工程からなるいわゆる“一次処理”工程;そのような工程は、典型的には、沈降による物理的分離工程からなる。そのような沈降分離工程は、一般的には、汚染物を前以って凝集させた後に実施する。汚染物凝集は、例えば金属塩のような凝集剤をデカンテーション用容器に加え、そのようにして懸濁物質およびある種の他の有機および無機汚染物を沈降(凝集)させることによって生じさせる。
炭素質または窒素質汚染物を除去することを意図するいわゆる“二次処理”工程;この工程は、典型的には、細菌介在の生物学的プロセスを使用し、上記の細菌は、必要に応じて、フィルター膜のような支持体上に固定させている。
望ましくない微生物のような望ましくない単細胞または多細胞生物体を排除することを意図する消毒工程;この工程は、上記で処理した排水に、自然環境に放出する前に、殺生物剤を添加することによって実施する。上記消毒工程は、一般的には、塩素を添加することによって実施する。酸化剤によって介在されるそのような消毒工程は、オゾンまたは臭素のような殺生物剤を、ある状況下においては二酸化塩素を添加することによっても実施し得る。また、消毒工程は、排水を太陽放射線にまたは人工紫外線に暴露して望ましくない生存生物体を死滅させることによっても実施し得る。
排水清澄化工程;この工程は、浄化排液と有機物質分解に由来する二次スラッジまたは残留物とを、浄化し消毒した排水を自然環境に放出する前に分離するための最終沈降工程からなる。
【0006】
ヒトまたは動物起源の排液は、22℃で再生し得る105〜107細菌数/mlの平均微生物負荷を含む。水処理プラントにおいては、ヒトおよび動物胃腸管由来の微生物は、水の正常細菌個体群を干渉し得る。それによって、遺伝子物質、とりわけ、抗生物質耐性遺伝子の交換または移動が生じる。容器および水源飲用水中に通常存在する、塩素‐オゾンバリアを通過する細菌は、そのようにして抗生物質に対して耐性となる。逆のプロセスも生じ得る:飲料水(処理済みまたは水源由来のいずれか)の摂取は、同じ転移を正常腸細菌に対して誘発させ得る。悪循環は完成である。
【0007】
有機合成によって高反応性生成物を現場生成させる方法は知られている。この合成は、光化学作用によって進行し、有機分子中に反応性状態、とりわけ、三重項酸素から出発しての一重項酸素を、光子の作用下に発生させることを可能にする。そのような反応を誘発させることのできる分子は、光増感剤と言われている;光子エネルギーが光増感剤を励起し、今度は、その光増感剤がこのエネルギーをさらなる分子に移動させる。この分子が酸素である場合、低反応性の三重項状態からの分子は、高反応性の一重項状態になる(タイプII反応;C.S.Foote, Photochem.Photobiol.,1991: 54,659)。そのような一重項酸素は、超酸化物アニオンラジカルを発生させ得る非ラジカル形であり、それ自体高度に反応性である。
【0008】
有機化学は、種々の光増感剤を使用して、中性分子のカルボニル誘導体(アセトン、ベンゾフェノン、メナジオン)および染料(ローズベンガル、メチレンブルー)からラジカルを発生させている。
メチレンブルー群(ジアミノ 3,7‐フェノチアジン;前出参照)は、とりわけ興味がある。この分子(およびその誘導体)は、毒性が低く、穏やかな抗菌作用(静菌性)を有する多くの生物学的および薬理学的特性を有する一般的な組織学染料であり、亜硝酸塩およびメトヘモグロビン化(methemoglobinizing)中毒に対する解毒剤である。その光活性化可能な特性(殺生物性一重項酸素発生性生成物)は、血液由来製品の滅菌剤として既に使用されている。専ら3,7‐ジアミノフェノチアジン構造体から出発して、数多くの誘導体が合成されている。さまざまな著者が、皮膚疾患の治療において、原核生物および真核生物等に対する一般的殺生物剤としての光活性化時のそのような生成物の興味を実証している(例えば、WO 2005/054217 A1号、WO 2005/034855 A2号における当該技術の説明を参照されたい)。
【0009】
しかしながら、3,7‐ジアミノフェノチアジン群からの誘導体は、不安定なアンモニウム化合物の形のイオン性構造体からなる。これらの化合物は、メチレンブルーに対して僅かに特定の改良しか与えない。しかも、これらの化合物の光活性化は、紫外線によってしか達成できない。
本出願人は、汚染排水の処理方法における消毒剤のような消毒剤として一般的に使用する新規な殺生物剤を合成するのに精力を注いだ。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、本説明において以下で定義する式(I)を有する新規な2,8‐ジアミノフェノチアジン殺生物性化合物に関する。
また、本発明の目的は、式(I)の2,8‐ジアミノフェノチアジン化合物の製造方法を提供することである。
さらに、本発明は、式(I)の新規な2,8‐ジアミノフェノチアジン化合物の殺生物剤としての使用にも関する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、2,8‐ジアミノフェノチアジン群に由来する新規な殺生物剤化合物を提供する。
本出願人が知る限りにおいて、2,8‐ジアミノフェノチアジン群に由来する既知の化合物は、それぞれ、上記ジアミノの非置換化合物およびそのアシル化プレカーサーだけである。これらの生成物は、Chien等 (J. Med. Chem., 1966, Vol. 9: 960-962) が説明しているように、最初の上記フェノチアジンのジアセチル化工程、次いで、ベックマン反応に従って、オキシムを生成させ、その転位を行う第2の工程を実施することによって調製している。また、ジケトンをジ酸に転換する第1工程、次の酸クロリドの形のこれらの官能基を活性化する第2工程、その後の得られた生成物を、ジアミンを得る転移工程を実施する前に、アシルアジドに転換する工程を含む方法も開示されている(Michels and al., 1950, J. Am. Chem. Soc., Vol. 72: 888-892)。また、Michels等(1950年)は、2‐ブロモ‐4‐ニトロアニリンブロミドを相応するチオフェノール化合物に転換する工程を含む方法も開示している。その後、上記チオフェノール化合物を3,4‐ジヨードニトロベンゼンに融合させ、その後、Ullmann分子内カップリング反応を行って2,8‐ジニトロフェノチアジンを得、次いで、これを2,8‐ジアミノフェノチアジンに還元する。Chien等(1966年、前出)は、2,8‐ジアミノフェノチアジン‐5,5‐ジオキシド最終化合物を得るための全くの中間体化合物である上記2,8‐ジアミノフェノチアジン化合物の生物学的活性を試験することを何ら示唆していない。
【0012】
驚くべきことに、本発明により、これらの新規な2,8‐ジアミノフェノチアジン化合物は、光活性化後に、大多数の微生物に対する殺生物活性を有すること、結果として、これらの新規な化合物は殺生物剤として、とりわけ、消毒剤として有用であることを実証した。DAP‐2,8 テトラメチル化合物(または他の化合物)は、驚くべきことに、DAP 3‐7群についてもまた早期の2‐8ジオキサミン類についても決して開示されていない、タンパク質および/または酵母抽出物または動物アルブミンタイプの細菌培養培地成分に対する凝集活性を示す。
【0013】
タンパク質富化培地(ウシアルブミン(BSA)または酵母抽出物)において、DAP‐2,8 テトラメチルは、培地を自然に凝集させ、ペレット内に凝縮させる。溶液は、初期の黄色から強い青緑色陰影に変わる。タンパク質‐細菌‐DAP混合物の沈降による、0.3〜10g/lのタンパク質でもっての投与量対効果関係が存在する。この予期に反する性質は、排水処理の広範囲の試みを可能にし、凝集/沈降/消毒の単一工程を可能にする。これらの、とりわけ水溶性ジクロル水和物形の生成物は、種々の株のグラム+(スタフィロコッカス アウレウス)およびグラム−(大腸菌、シュードモナス エルジノーサ、レジオネラ ニューモフィラ)菌に対する殺菌活性を有する。また、上記生成物は、糸状真核生物、例えば、カンジダ
アルビカンスに対する活性も有する。このDAP 2‐8スペクトル(グラム−に対しての殺菌性)は、3‐7ジアミノフェノチアジンのスペクトル(グラム+に対して厳密に特異的な静菌性)とは完全に異なっている。
【0014】
標準化した方法によれば、感染力価の低減は、白色光下30mmにおいて8ログ(log)、即ち、同じ条件下でのメチレンブルー対照よりも10000倍まで達し得る。この活性は、0.05g/l濃度、即ち、1000当り0.05(質量/質量)から有効である。また、この効果は、暗中でも存在するが、遅く生じる(少なくとも係数2で)。
さらに、本出願人は、これらの新規な2,8‐ジアミノフェノチアジン殺生物性化合物の独創的な製造方法も開発した。
【0015】
本発明の目的は、下記の式(I)の2,8‐ジアミノフェノチアジン(DAP‐2,8);並びに、式(I)の化合物の任意の光学異性体、立体異性体、ジアステレオ異性体、鏡像体またはラセミ混合物;並びに、式(I)の化合物の塩、水和物、溶媒和物および多形態形(但し、R1、R2a、R2b、R3、R4、R5、R7、R8a、R8bおよびR9から選ばれる基の各々が水素原子を示す式(I)の化合物を除く)を提供することである:
【化1】

(式中、
(i) R1、R3、R4、R6、R7およびR9基は、各々、互いに独立して、下記から選ばれる基を示し;
−基水素原子;
−ハロゲン;
−1〜12個の非置換炭素原子を有するアルキル基;
−フェニル基によって置換された1〜12個の炭素原子を有するアルキル基;
−ここで、前記フェニル基は、置換されていないか、またはハロゲン、ヒドロキシ、1〜12個の炭素原子を有するアルキルおよび1〜12個の炭素原子を有するアルコキシから選ばれる1個以上の基によって置換されている、
(ii) R2a、R2b、R8aおよびR8b基は、各々、互いに独立して、下記から選ばれる基を示し;
−水素原子;
−1〜12個の非置換炭素原子を有するアルキル基、ヒドロキシアルキル基またはアルコキシアルキル基;
フェニル基によって置換された1〜12個の炭素原子を有するアルキル基またはアルコキシアルキル基;
−ここで、前記フェニル基は、置換されていないか、または下記から選ばれる基によって置換されている
−ハロゲン、
−ヒドロキシ、
−1〜12個の炭素原子を有するアルキル、
−1〜12個の炭素原子を有するアルコキシ、
−置換されていないか、またはハロゲン、ヒドロキシ、1〜12個の炭素原子を有するアルキルおよび1〜12個の炭素原子を有するアルコキシから選ばれる基によって置換されている2〜12個の炭素原子を有するアルケニル、
−置換されていないか、またはハロゲン、ヒドロキシ、1〜12個の炭素原子を有するアルキル、および1〜12個の炭素原子を有するアルコキシから選ばれる基によって置換されている2〜12個の炭素原子を有するアルキニル、
−置換されていないか、またはハロゲン、ヒドロキシ、1〜12個の炭素原子を有するアルキルおよび1〜12個の炭素原子を有するアルコキシから選ばれる基によって置換されている4〜12個の炭素原子を有するシクロアルキル、
−置換されていないか、またはハロゲン、ヒドロキシ、1〜12個の炭素原子を有するアルキルおよび1〜12個の炭素原子を有するアルコキシから選ばれる基によって置換されている4〜12個の炭素原子を有するシクロアルケニル、
或いは、
(iii) ‐NR2aR2bまたは‐NR8aR8b基は、互いに独立して、飽和または不飽和いずれかの4〜12個の炭素原子を有する複素環を示し;該複素環は、窒素、酸素およびイオウから選ばれる1個以上のさらなるヘテロ原子を含み得、また、該複素環は、置換されていないか、またはハロゲン、ヒドロキシまたは1〜12個の炭素原子を有するアルキルから選ばれる基によって置換されている)。
【0016】
本発明においては、上記ハロゲンは、塩素、フッ素、臭素およびヨウ素原子から選ばれる。
本明細書において使用するとき、“アルキル”は、1価の飽和炭化水素基の上記特定の炭素原子数を有する線状または枝分れ鎖を意味するものとする。枝分れアルキル基においては、線状炭化水素鎖が1個以上のアルキル基によって置換されている。アルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルおよびヘキシル基がある。
本明細書において使用するとき、“アルコキシ”は、ヒドロキシ基中の水素原子を除去することから得られる飽和の1価炭化水素アルコール基の線状または枝分れ鎖を意味するものとする。典型的には、アルコキシ基は、一般式“R‐O‐”を有し、Rはアルキル基である。
本明細書において使用するとき、“アルコキシアルキル”は、酸素原子によって遮断され上記特定の炭素原子数を有するアルキル鎖を意味するものとする。典型的には、アルコキシアルキル基は、一般式“R‐O‐R’‐”を有し、RおよびR’は、各々、アルキル基を示す。
【0017】
本明細書において使用するとき、“アルケニル”は、少なくとも1個の炭素‐炭素二重結合を有し且つ上記特定の炭素原子数を有する1価の部分的に不飽和の炭化水素基の線状または枝分れ鎖を意味するものとする。二重結合炭素原子に結合している原子の配座は、等しくシス‐(Z)またはトランス‐配向させ得る。アルケニル基としては、エテニル、プロペニルおよびブテニル基がある。枝分れアルケニル基においては、不飽和線状炭化水素鎖が、1個以上のアルキルまたはアルケニル基によって置換されている。アルキル置換基としては、メチル、エチルまたはプロピル基がある。アルケニル置換基としては、ビニル、アリルおよびプロぺ‐1‐エニル基がある。
本明細書において使用するとき、“アルキニル”は、少なくとも1個の炭素‐炭素三重結合を有し且つ上記特定の炭素原子数を有する1価の基の線状または枝分れ鎖を意味するものとする。アルキニル基としては、エチニル、プロピニルおよびブチニル基がある。枝分れアルキニル基においては、不飽和線状炭化水素鎖が、1個以上のアルキル、アルケニルまたはアルキニル基によって置換されている。アルキル置換基としては、メチル、エチルまたはプロピル基がある。アルケニル置換基としては、ビニル、アリルおよびプロぺ‐1‐エニル基がある。アルキニル置換基としては、エチニル、プロパルギルおよびプロピ‐1‐イン‐1‐イル基がある。
【0018】
本明細書において使用するとき、“シクロアルキル”は、単環式または多環式の飽和炭化水素基を意味するものとする。シクロアルキル基としては、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルおよびシクロオクチル単環式基がある。また、シクロアルキル基としては、ノルボルナンおよびデカリン多環式基もある。
本明細書において使用するとき、“シクロアルケニル”とは、少なくとも1個の炭素‐炭素二重結合を有する単環式または多環式の部分的に不飽和の炭化水素基を意味するものとする。シクロアルケニル基としては、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニルおよびシクロオクテニル単環式基がある。また、シクロアルケニル基としては、アダマンタンおよびノルボルネン多環式基もある。
【0019】
本明細書において使用するとき、“複素環”は、少なくとも1個の炭素原子が窒素、酸素およびイオウから選ばれるヘテロ原子によって置換されている飽和または部分的に不飽和の単環式炭化水素系を意味するものとする。複素環基としては、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、チオモルホリン、1,4‐ジオキサ‐8‐アザスピロ[4,5]デカンおよび1,2,3,6‐テトラヒドロピリジン基がある。また、複素環基としては、"Handbook of Chemistry and Physics, 76th edition, CRC Press, Inc., 1995-1996", pages 2-25 to 2-26,に記載されているこのタイプの基もある;この引例は、参考として本明細書に合体させる。
【0020】
本明細書において使用するとき、“置換”とは、水素原子の少なくとも1個が別個の化学基によって置換されている参照基を意味するものとする。
一般的には、該当する置換基であっても、1〜12個の炭素原子を有するアルキル基は、好ましくは、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基からなる。
R1、R3、R4、R6、R7およびR9基においては、置換されているまたは置換されていないアルキル基は、好ましくは、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基からなる。
フェニル基によって置換され、該フェニル基が1個以上のアルキルまたはアルコキシ基によって置換されているR1、R3、R4、R6、R7およびR9基においては、1〜12個の炭素原子を有するアルキル基またはアルコキシ基は、好ましくは、1〜6個の炭素原子を有するアルキルまたはアルコキシ基からなる。
【0021】
R2a、R2b、R8aおよびR8b基においては、置換されていないまたは置換されたアルキル、ヒドロキシアルキルまたはアルコキシアルキル基は、好ましくは、好ましくは、1〜6個の炭素原子を有するアルキル、ヒドロキシアルキルまたはアルコキシアルキル基からなる。
フェニル基によって置換され、該フェニル基自体がアルキル基によって置換されているR2a、R2b、R8aおよびR8b基においては、上記アルキル基は、好ましくは、1〜6個の炭素原子を有する。
フェニル基によって置換され、該フェニル基自体がアルコキシアルキル基によって置換されているR2a、R2b、R8aおよびR8b基においては、上記アルコキシアルキル基は、好ましくは、1〜6個の炭素原子を有する。
【0022】
フェニル基によって置換され、該フェニル基自体がアルケニル基によって置換されているR2a、R2b、R8aおよびR8b基においては、上記アルケニル基は、好ましくは、2〜6個の炭素原子を有する。
フェニル基によって置換され、該フェニル基自体がアルキニル基によって置換されているR2a、R2b、R8aおよびR8b基においては、上記アルキニル基は、好ましくは、2〜6個の炭素原子を有する。
フェニル基によって置換され、該フェニル基自体がシクロアルキル基によって置換されているR2a、R2b、R8aおよびR8b基においては、上記シクロアルキル基は、好ましくは、4〜6個の炭素原子を有する。
フェニル基によって置換され、該フェニル基自体がシクロアルケニル基によって置換されているR2a、R2b、R8aおよびR8b基においては、上記の基シクロアルケニルは、好ましくは、4〜6個の炭素原子を有する。
【0023】
光学異性体、鏡像体、立体異性体およびジアステレオ異性体のような式(I)の化合物の各種異性体は、絶対立体化学の決定に基づく、不斉中心の種々の(R−)または(S−)のようなそのような化合物の構造中の1以上の不斉中心によって定義する。光学異性体、鏡像体、立体異性体およびジアステレオ異性体のような式(I)の化合物の各種異性体は、当業者にとって周知の方法に従って調製する("Molecules chirales Stereochimie et proprietes" Andre COLLET, Jean CRASSOUS, Jean-Pierre DUTASTOU, Laure GUY - 01/01/2006 - EDP SCIENCES Isbn: 2-86883-849-9を参照されたい)。
【0024】
本発明は、クロル水和物、ブロム水和物、硫酸塩、硝酸塩およびリン酸塩のような無機酸との付加塩のような式(I)の化合物の塩類を包含する。また、本発明は、酢酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、メタンスルホン酸塩、p‐トルエンスルホン酸塩およびイセチオン酸塩のような有機酸との付加塩も包含する。式(I)の化合物の好ましい塩は、"Handbook of Pharmaceutical salts, Properties, Selection and
Use, Wiley-VCH, 2002" and in "Remington’s Pharmaceutical Sciences, 17th edition, Mack Publishing Company, Easton, PA, 1985", page 1418においてP.H. StahlおよびC.G. Wermuthによって記載されている塩からなる。
【0025】
また、本発明は、例えば、下記によって得ることのできる式(I)の化合物の水和物も包含する:
(a) 式(I)の化合物の結晶を、低温、例えば、20℃〜50℃、好ましくは20℃〜40℃の範囲の温度および6時間〜72時間、好ましくは12時間〜24時間の時間範囲において湿式乾燥させることによって;または、
(b) 式(I)の化合物を高温、例えば、80℃〜130℃、好ましくは90℃〜120℃の範囲の温度で乾燥させ、その後、乾燥させた結晶を、湿潤雰囲気、例えば、40%〜100%飽和の範囲の水分含有量を有する雰囲気に、6時間〜72時間、好ましくは12時間〜24時間の時間範囲で供することによって。
式(I)の化合物の水和物の形成は、この水和物において予測される水分含有量に相応すべきである得られる水和物の水分含有量を測定することによって、例えば、当業者にとって周知であるような、カール・フィッシャー(Karl Fischer)法を使用することによって、また、上記水和物を示差走査熱量測定に供することによって確認することができる。
【0026】
驚くべきことに、式(I)の化合物は、これらの化合物が塩の形である場合の、例えば、ハロゲンとの或いはアルキルカルボン酸のような飽和または不飽和酸との塩のような、それぞれ塩基および溶媒和物としての二通りの形で存在する。
式(I)の化合物の溶媒和物は、当業者が精通している伝統的な方法に従って、例えば、式(I)の化合物を水、メタノールまたはエタノールのような溶媒中に溶解し、その後、上記化合物を、これもまた伝統的な結晶化方法により再結晶させることによって調製し得る。
【0027】
一般に、式(I)の化合物は、疎水性媒質中に溶媒和させ得る。これらの化合物は、例えば、不活性またはそうでない支持体上に、例えば、産業排水または家庭排水の処理方法を実施するのに一般的に使用される膜フィルターのような膜フィルターの表面積上に固定し得る。
また、式(I)の化合物は、親水性媒体中で、例えば、廃水および廃液のような処理すべき流体或いは各種起源の流入液または排出液に直接添加することによって溶媒和させ得る。式(I)の化合物は、とりわけ、クローズドまたは開放システム、例えば、空調、透析またはガス回路;除臭、COVまたは微細汚染物質制御用のシステムにおける、また、酸化に対して感受性で且つそのような方法で除去し得るあらゆる他の生成物を排除するための処理施設に添加することができる。
式(I)の化合物の多形態形としては、これらの化合物の種々の結晶形がある。
【0028】
式(I)の化合物のある種の実施態様においては、R2a基およびR2b基は、各々、水素原子を示す。
式(I)の化合物のある種の実施態様においては、R8a基およびR8b基は、各々、水素原子を示す。
R2a、R2b、R8aおよびR8b基が、各々、互いに独立して、フェニル基によって置換された1〜12個の炭素原子を有するアルキル基、ヒドロキシアルキル基またはアルコキシアルキル基を示す式(I)の化合物の幾つかの実施態様においては、上記フェニル基は、ハロゲン;アルケニル、アルキニル、シクロアルキルまたはシクロアルケニル基から選ばれる基(この基はハロゲンによって置換されており、そのハロゲンは、好ましくはフッ素である)によって置換されている。
【0029】
‐NR2aR2bまたは‐NR8aR8b基が、互いに独立して、飽和または不飽和いずれかの4〜12個の炭素原子を有する複素環を示し;上記複素環が、窒素、酸素およびイオウから選ばれる1個以上のさらなるヘテロ原子を含み得る式(I)の化合物の幾つかの実施態様においては、上記複素環は、置換されていないか、またはハロゲンから選ばれる基によって置換されており、そのハロゲンは、好ましくはフッ素である。
【0030】
本発明に従う式(I)の化合物としては、下記の化合物がある:
N,N,N',N'‐テトラメチル‐10H‐フェノチアジン‐2,8‐ジアミン;
N,N‐ジメチル‐[8‐(4‐メチルピペラジン‐1‐イル)‐10H‐フェノチアジン‐2‐イル]アミン:
N,N‐ジメチル‐(8‐モルホリン‐4‐イル‐10H‐フェノチアジン‐2‐イル)アミン;
N,N‐ジエチル‐N',N'‐ジメチル‐10H‐フェノチアジン‐2,8‐ジアミン;
N,N‐ジエチル‐[8‐(4‐メチル‐ピペラジン‐1‐イル)‐10H‐フェノチアジン‐2‐イル]アミン;
N,N‐ジエチル‐(8‐モルホリン‐4‐イル‐10H‐フェノチアジン‐2‐イル)アミン;
N,N‐ジメチル‐N',N'‐ジプロピル‐10H‐フェノチアジン‐2,8‐ジアミン;
[8‐(4‐メチル‐ピペラジン‐1‐イル)‐10H‐フェノチアジン‐2‐イル]‐ジプロピルアミン;
(8‐モルホリン‐4‐イル‐10H‐フェノチアジン‐2‐イル)‐ジプロピルアミン;
N,N‐ジブチル‐N',N'‐ジメチル‐10H‐フェノチアジン‐2,8‐ジアミン;
N,N‐ジブチル‐[8‐(4‐メチルピペラジン‐1‐イル)‐10H‐フェノチアジン‐2‐イル]アミン;
N,N‐ジブチル‐(8‐モルホリン‐4‐イル‐10H‐フェノチアジン‐2‐イル)アミン;
N,N‐ジメチル‐N'‐プロピル‐10H‐フェノチアジン‐2,8‐ジアミン;
3,N,N,N',N'‐ペンタメチル‐10H‐フェノチアジン‐2,8‐ジアミン;
2‐[N‐(8‐ジメチルアミノ‐10H‐フェノチアジン‐2‐イル)‐N‐(2-ヒドロキシエチル)アミノ]エタノール。
【0031】
式(I)の化合物の製造方法
本出願人は、容易に且つ迅速に実施でき、とりわけ、種々のタイプの置換基を、本発明の2,8‐ジアミノフェノチアジンのアミン官能基(R2a、R2b、R8aおよびR8b基)上または芳香環(R1、R3、R4、R6、R7およびR9)上のいずれかに容易に導入するのを可能にする、式(I)の化合物を特定的に製造する方法を開発した。
【0032】
一般的方法(工程b)
また、本発明の目的は、
下記の式(I’):
【化2】

(式中、
(i) R1、R3、R4、R6、R7およびR9基は、各々、互いに独立して、下記から選ばれる基を示し;
−基水素原子;
−ハロゲン;
−1〜12個の非置換炭素原子を有するアルキル基;
−フェニル基によって置換された1〜12個の炭素原子を有するアルキル基;
−ここで、前記フェニル基は、置換されていないか、またはハロゲン、ヒドロキシ、1〜12個の炭素原子を有するアルキルおよび1〜12個の炭素原子を有するアルコキシから選ばれる1個以上の基によって置換されている、
(ii) R2a、R2b、R8aおよびR8b基は、各々、互いに独立して、下記から選ばれる基を示し;
−水素原子;
−1〜12個の非置換炭素原子を有するアルキル基、ヒドロキシアルキル基またはアルコキシアルキル基;
フェニル基によって置換された1〜12個の炭素原子を有するアルキル基またはアルコキシアルキル基;
−ここで、前記フェニル基は、置換されていないか、または下記から選ばれる基によって置換されている
−ハロゲン、
−ヒドロキシ、
−1〜12個の炭素原子を有するアルキル、
−1〜12個の炭素原子を有するアルコキシ、
−置換されていないか、またはハロゲン、ヒドロキシ、1〜12個の炭素原子を有するアルキルおよび1〜12個の炭素原子を有するアルコキシから選ばれる基によって置換されている2〜12個の炭素原子を有するアルケニル、
−置換されていないか、またはハロゲン、ヒドロキシ、1〜12個の炭素原子を有するアルキル、および1〜12個の炭素原子を有するアルコキシから選ばれる基によって置換されている2〜12個の炭素原子を有するアルキニル、
−置換されていないか、またはハロゲン、ヒドロキシ、1〜12個の炭素原子を有するアルキルおよび1〜12個の炭素原子を有するアルコキシから選ばれる基によって置換されている4〜12個の炭素原子を有するシクロアルキル、
−置換されていないか、またはハロゲン、ヒドロキシ、1〜12個の炭素原子を有するアルキルおよび1〜12個の炭素原子を有するアルコキシから選ばれる基によって置換されている4〜12個の炭素原子を有するシクロアルケニル、
或いは、
(iii) ‐NR2aR2bまたは‐NR8aR8b基は、互いに独立して、飽和または不飽和いずれかの4〜12個の炭素原子を有する複素環を示し;該複素環は、窒素、酸素およびイオウから選ばれる1個以上のさらなるヘテロ原子を含み得、また、該複素環は、置換されていないか、またはハロゲン、ヒドロキシまたは1〜12個の炭素原子を有するアルキルから選ばれる基によって置換されている)
を有する2,8‐ジアミノフェノチアジン化合物の製造方法を提供することであり、この方法は、下記の式(II):
【化3】

(式中、R1、R2a、R2b、R3、R4、R5、R7、R8a、R8bおよびR9基は、式(I)の化合物におけるのと同じ意味を有する)
を有するジフェニルアミン化合物を、下記から選ばれる加熱工程に供する工程(b)を含むことを特徴とする:
(b1) 芳香族溶媒、アルカンまたはポリハロゲノアルカンのような不活性溶媒中でのヨウ素およびイオウの存在下に60℃〜反応混合物の沸騰温度の範囲の温度での1時間乃至1夜の時間範囲での加熱工程;および、
(b2) (b2-1) 無溶媒または不活性溶媒(芳香族溶媒、アルカンまたはポリハロゲノアルカンのような)の存在下での式(II)の化合物とヨウ素およびイオウとの混合物または(b2-2) 式(II)の化合物、ヨウ素およびイオウが式(I)の化合物を得るようにシリカ、アルミナまたはゼオライトのような支持体上に固定されている式(II)の化合物とヨウ素およびイオウとの混合物のいずれかの10秒乃至6×10分の時間範囲でのマイクロ波加熱工程。
【0033】
工程b1)を実施するには、好ましくは、出発物質として、式(I)の化合物、イオウおよびヨウ素を含む混合物を、沸点を選定した反応温度に適応させた溶媒中での還流下での加熱工程において使用する。
好ましくは、工程b1)においては、加熱温度は、100℃〜反応混合物の沸騰温度の範囲である。
工程b1)においては、とりわけ、トルエン、キシレン(オルソ‐キシレン、メタ‐キシレン、パラ‐キシレン)、ジュレン、イソジュレン、(オルソ‐、メタ‐、パラ‐)ジクロロベンゼン、エチルベンゼン、ペンタメチルベンゼン、ヘキサメチルベンゼン、メシチレン、クメンまたはヘミメリテンから選ばれる溶媒を使用する。好ましくは、オルソジクロロベンゼンを使用する。
【0034】
工程b1)においては、式(I)の化合物とイオウは、0.2:1〜1:1範囲の化合物(I)対イオウモル比、例えば、約0.4:1のような0.3:1〜0.5:1範囲のモル比で使用する。
工程b1)においては、ヨウ素は、ヨウ素結晶の形で添加し得る。
工程b1)は、好ましくは、不活性で可能であれば無水雰囲気下で、例えば、アルゴン、窒素または二窒素雰囲気下で実施する。
ある種の実施態様においては、工程b1)の継続時間は、2時間〜4時間であり得る。工程b1)の継続時間は、約3時間であり得る。
加熱後、反応混合物の温度を室温に下げ、その後、式(I)の相応する化合物を回収する。
【0035】
ある種の実施態様においては、式(I)の化合物を回収し、当業者にとって周知である伝統的な適切な溶媒から選ばれる適切な溶媒を添加することによって抽出する。例えば、得られた式(I)の化合物は、ジエチルエーテルによって抽出し、次いで、必要に応じて濾過し、減圧下に濃縮する。
適切な場合、式(I)の化合物を含有する油状液を精製最終工程に供する。そのような精製工程は、式(I)の化合物を、適切な場合、トルエンで溶出させて粉末状の式(I)の化合物を得る前の、例えばシリカゲル上でのクロマトグラフィー工程からなり得る。
【0036】
代替工程b2)を実施するには、加熱を、式(II)の化合物とこれと結合させる1種以上の反応物とをマイクロ波放射線に供することによって行う。
上記のb2-1)と称する代替工程b2)の第1の実施態様においては、加熱を、式(II)の化合物、ヨウ素およびイオウを含む混合物をマイクロ波放射線に供することによって実施して、式(I)の相応する化合物を得、その後回収する。反応条件は、上記の工程b)において説明した条件と実質的に同じであるが、厳密に言えば、加熱に対して特定しているパラメーターは除外する。
マイクロ波放射線は、典型的には、150〜500ワットの範囲の出力でもって使用し、この出力範囲は、適切には70〜700Wに及ぶ。上記のb2-2)と称する代替工程b2)の第2の実施態様においては、加熱を、式(II)の化合物、ヨウ素およびイオウを含み支持体上に吸着させている混合物をマイクロ波放射線に供することによって実施する。反応条件は、厳密に言えば上記のb2-1)と称する第1の実施態様において説明した加熱パラメーターと同様または同じである加熱について特記しているパラメーターを除いては、上記の工程b1)の条件と実質的に同じである。
イオウおよびヨウ素を固定させるための適切な支持体タイプとしては、例えば、アルミナ、シリカまたはゼオライトがある。
【0037】
上記方法の工程a)
一般に、式(I)の化合物の上記製造方法を実施するための原材料として使用する式(II)の各種化合物は、当業者にとって既知の任意の方法によって得ることができる。
しかしながら、本出願人は、式(II)の化合物の製造方法を開発しており、この方法は、上述した式(I)の化合物の一般的製造方法の特定の実施態様からなる。
【0038】
上記方法の工程a)の第1代替法
即ち、第1の特定の実施態様においては、上述したような式(I)の化合物の製造方法は、工程b)の前に実施し、
下記の式(III):
【化4】

(式中、R1、R2a、R2b、R3およびR4基は、特許請求の範囲の請求項1におけるのと同じ意味を有する)
を有する化合物を、下記の式(IV):
【化5】

(式中、R5、R7、R8a、R8bおよびR9基は、特許請求の範囲の請求項1におけるのと同じ意味を有し;Xは、ハロゲンまたはスルホネート基を示す)
を有する化合物と、パラジウムまたはニッケル触媒および触媒リガンドの存在下に、有機または無機塩基と一緒に、80℃〜110℃の範囲の温度および8〜15時間の時間範囲において反応させて式(II)の化合物を得る、式(II)の化合物を得るための工程(a)を含むことを特徴とする。
【0039】
ある種の実施態様においては、Xは、臭素、塩素およびヨウ素から選ばれるハロゲンを示す。
他の実施態様においては、Xは、トリフラート、メシラート、トシラート、ノシラートおよびノナフラートから選ばれるスルホネートを示す。
ある種の実施態様においては、触媒は、白金系触媒、例えば、Pd(dba)2からなる。
ある種の実施態様においては、触媒リガンドは、dppa (ビス(ジフェニルホスフィノ)アミン)、dppf (1,1’‐ ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン)、BINAP、ジョシホスフィホス(6‐ジフェニルホスフィノ‐2‐ピリドネート) (josiphospyphos (6-diphenylphosphino-2-pyridonate)、QUINAP、PyphosおよびQphosから選ばれ、これらは、当業者にとって周知の触媒リガンドである。有利には、dppfを使用する。
ある種の実施態様においては、有機塩基は、炭酸アルカリまたはtert‐酪酸ナトリウムからなる。
【0040】
反応混合物は、有利には、適切な溶媒に溶解する;溶媒は、トルエン、キシレン(オルソ‐キシレン、メタ‐キシレン、パラ‐キシレン)、ジュレン、イソジュレン、(オルソ‐、メタ‐、パラ‐)ジクロロベンゼン、エチルベンゼン、ペンタメチルベンゼン、ヘキサメチルベンゼン、メシチレン‐クメンまたはヘミメリテンから選択し得る。好ましくは、オルソジクロロベンゼンを使用する。
有利には、反応混合物中の化合物(III):(IV)のモル比は、0.5:1〜1:0.5、好ましくは0.8:1〜1.2:1、最も好ましくは約1である。
【0041】
加熱後、反応混合物の温度を室温に低下し、その後、式(II)の相応する化合物を回収する。
ある種の実施態様においては、式(II)の化合物を回収し、当業者にとって周知である伝統的な適切な溶媒から選ばれる適切な溶媒を添加することによって抽出する。得られた式(II)の化合物は、抽出後、濾過し、減圧下に濃縮し得る。
他の実施態様においては、得られた式(II)の化合物を、フラッシュクロマトグラフィーにより、例えば、適切な溶媒勾配を使用することによって精製する。例えば、下記の実施例において例示しているように、ヘキサン中酢酸エチルの5%(容量/容量)から12%(容量/容量)の勾配を使用し得る。
【0042】
上記方法の工程a)の第2代替法
第2の特定の実施態様においては、上述したような式(I)の化合物の製造方法は、工程b)の前に実施し、下記の式(III):
【化6】

(式中、R1、R2a、R2b、R3およびR4基は、特許請求の範囲の請求項1におけるのと同じ意味を有する)
を有する化合物を、下記の式(IV):
【化7】

(式中、R5、R7、R8a、R8bおよびR9基は、特許請求の範囲の請求項1におけるのと同じ意味を有し;Xは、ハロゲンまたはスルホネート基を示す)
を有する化合物と、塩または酸化銅の存在下有機塩基と一緒に、40℃乃至反応混合物の沸騰温度の範囲の温度および2時間乃至1夜の時間範囲において反応させて式(II)の化合物を得る、式(II)の化合物を得るための工程(a)を含むことを特徴とする。
【0043】
ある種の実施態様においては、Xは、臭素、塩素およびヨウ素から選ばれるハロゲンを示す。
他の実施態様においては、Xは、トリフラート、メシラート、トシラート、ノシラートおよびノナフラートから選ばれるスルホネートを示す。
ある種の実施態様においては、有機塩基は、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムおよび炭酸セシウムのような炭酸アルカリからなる。
ある種の実施態様においては、銅塩は、ハロゲン化銅から選択する。
【0044】
式(I)の化合物の他の代替製造方法
また、式(I)の化合物は、R2a、R2b、R8aおよびR8bが水素原子を示す式(I)の化合物から出発して、アルキル化、還元的アミノ化によって或いはアシル化およびその後の還元によって調製し得る。
アルキル化を経て進行する場合、アミンを、ハロゲン化アルキルまたはスルホネートに、炭酸もしくは重炭酸金属塩のような無機塩基または第三級アミンのような有機塩基の存在下に融合させる。
還元的アミノ化を得て進行する場合、アミンを、ケトンまたはアルデヒドに、二水素または二水素供与体(例えば、ホルメート、シクロヘキセン)のような還元剤の存在下、パラジウムのような遷移金属の存在または不存在下に融合させる。また、還元剤としては、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、ナトリウムトリアセトキシボロヒドリドまたは水素化ホウ素ナトリウムのような水素化物も使用することが可能である。
【0045】
アシル化およびその後の還元を経て進行する場合、アシル化は、カルボジイミド、カルボニルジイミダゾールまたは他のペプチドカップリング剤のようなカップリング剤の存在下、必要に応じての4‐ジメチルアミノピリジン、ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)またはHOATのような触媒および有機または無機塩基の存在下での対称形または混合型無水物、酸クロリドまたは酸の作用によって実施し得る。還元は、リチウムアルミニウム二重水素化物を使用して実施し得る。
従って、本発明の式(I)の化合物の製造方法のさらなる実施態様によれば、該方法は、R1、R2a、R2b、R3、R4、R5、R7、R8a、R8bおよびR9から選ばれる基の少なくとも1個が水素原子でない式(I’)の化合物を、R1、R2a、R2b、R3、R4、R5、R7、R8a、R8bおよびR9から選ばれる基の各々が水素原子を示す式(I”)の化合物から、下記の工程に従って調製することを特徴とする:
c) アルキル化工程、還元的アミノ化工程またはアシル化工程から選ばれる反応工程;および、
d) 還元工程。
【0046】
R1、R3、R4、R6、R7およびR9が水素原子と異なる式(I)の化合物は、R1、R3、R4、R6、R7およびR9が水素原子を示す式(I)の化合物から出発して、限定するものではないがハロゲン化、直接金属化、フリーデル反応および転位のような、当業者にとって既知である芳香環官能化方法によって調製し得る。
従って、本発明の式(I)の化合物の製造方法のさらなる実施態様によれば、該方法は、R1、R2a、R2b、R3、R4、R5、R7、R8a、R8bおよびR9基から選ばれる基の少なくとも1個が水素原子でない式(I’)の化合物を、R1、R2a、R2b、R3、R4、R5、R7、R8a、R8bおよびR9基から選ばれる基の各々が水素原子を示す式(I”)の化合物から、下記から選ばれる工程に従って調製することを特徴とする:
ハロゲン化工程;
直接金属化工程;
フリーデル・クラフト反応;
転移反応、例えば、酸素または窒素のアシル成分を芳香族成分に転移させるフリース反応。
【0047】
式(III)のアニリン類および式(IV)の芳香族誘導体は、商業的に入手可能であり、例えば、化学製品供給業者から販売されている。
また、式(III)の化合物は、上記のまた当業者が精通している方法を応用するか或いは適応化することによって調製することもできる(式(IV)の化合物も同様)。
上記の反応においては、ある種の官能基を保護して望ましくない副反応を回避することが必要であり得る。これらの保護は、T.W. GreeneおよびP. G. M. WutsがProtective Groups in Organic Chemistry, John Wiley and Sons, 1991 or par J. F. W. McOmie in Protective Groups in Organic Chemistry, Plenum Press, 1973 において説明している方法によって得ることができる。
【0048】
また、式(I)の化合物は、位置2または8においてハロゲンまたはスルホネートを担持するフェノチアジンのアミノ化によっても調製し得る。そのような反応は、好ましくは、パラジウム、ニッケルまたは銅のような遷移金属とカップリングさせることによって行う。
また、これらの官能基転換は、R.C. LarockがComprehensive Organic Transformations, VCH publishers, 1989 において説明している方法からも適応化し得る。
【0049】
式(I)の化合物の工業的用途
本説明において既に述べているように、式(I)の化合物は、光活性化後、工業的に興味のある殺生物特性を有する。
3,7‐ジアミノフェノチアジン群由来の化合物とは対照的に、式(I)の化合物は、メチレンブルーおよびDAP3‐7群に特有の電荷変位現象を受けない安定なメソメリー塩基からなる。
また、式(I)の化合物は、3‐7群に特有のフェノチアジニウムタイプのイオン構造を何ら有さない。
本説明において既に明記しているように、式(I)の化合物は、塩基および溶媒和物の双方として存在する。
【0050】
一般に、本発明によれば、式(I)の化合物が、式(I)の化合物を既知のジアミノフェノチアジン類のような既知の生成物とは異なるものとする、それぞれ下記のとおりの少なくとも3つの活性特性を有することが証明された:
・式(I)の化合物は、白色光活性化性薬剤からなる。従って、式(I)の化合物を光活性化するのに、これらの化合物を紫外線波長範囲内の光に暴露する必要はない。白色光、即ち、約450ナノメートル〜約750ナノメートルの波長範囲に暴露する場合、式(I)の化合物、例えば、DAP 2‐8テトラメチル(N,N,N',N'‐テトラメチル‐10H‐フェノチアジン‐2,8‐ジアミン)は、黄色陰影から緑色陰影、より正確にはニッケルグリーン陰影に変る。
・式(I)の化合物は、白色光による光活性化後、メチレンブルーの殺生物活性スペクトルとは極めて異なっている、とりわけ細菌および寄生虫に対しての殺生物活性スペクトルを有している。とりわけ、式(I)の化合物は、メチレンブルーのそれとは絶対的にことなる殺生物活性レベルとスペクトルを有し、蒸留水中で1000当り0.05(質量/質量)の濃度から活性である。さらに、式(I)の化合物は、既知の3,7‐ジアミノフェノチアジン化合物を光活性化させるのに必要な光強度よりも低い光強度に暴露することによって光活性化される(標準化試験:NF EN 1040)。
例えば、N,N,N',N'‐テトラメチル‐10H‐フェノチアジン‐2,8‐ジアミンまたはN,N‐ジブチル‐(8‐モルホリン‐4‐イル‐10H‐フェノチアジン‐2‐イル)アミンのようなある種の式(I)の化合物は、凝集特性も有する。とりわけ、本発明によれば、式(I)の化合物は動物または細菌起原のタンパク質凝集剤として作用することを実証している。また、得られる凝集効果は、添加する式(I)の化合物の量に依存することも証明している。実際に、凝集性の式(I)の化合物は、沈降物(フロック)中で濃縮する。式(I)の化合物の凝集効果は、1000当り0.1(質量/質量)ほどの低いまたはさらに低い式(I)の化合物濃度(1000当り0.05付近の閾値)から検出することができる。側鎖長およびアルカンおよび/または複素環基(例えば、ピペラジン、モルホリン)の数と相関する構造と凝集能力の活性との関係が存在する。さらに、ある種の式(I)の化合物は、蒸留水中で光の下で自然に凝集する。
【0051】
式(I)の化合物によって誘発させ得る全ての技術的効果の組合せを、消毒効果を得るべき全ての工業的用途において活かすことができる。
とりわけ、式(I)の化合物は、飲料水に転換する前の水処理或いは自然環境に放出する前に処理すべき廃水のいずれに対処するのであれ、水処理分野において有用である。
特に、100mg/l〜1000mg/l範囲の濃度のDAP‐2,8は、アルビノウサギにおいて何ら刺激または腐蝕活性を有さず(OCDE 404および405分類によれば、皮膚および目に対して非刺激性)、このことは、殺生物剤においては特筆すべきことである。
【0052】
従来技術の説明に関する項において既に述べているように、凝集/沈降工程と消毒工程は、現今、産業または家庭排水のような流体の実際の処理方法においては別個の工程である。通常の方法においては、凝集/沈降工程は、とりわけ、広範囲の多様な微生物タイプに極めて富むスラッジを発生する。このことが、これらの伝統的な処理方法においては、その後の流体の消毒工程を、一旦消毒した排液を環境に放出する前ではヒトおよび動物にとって場合によっては病原性であるこれらの微生物を排除するために必要とすることの理由である。生ずるスラッジに関しては、スラッジは、潜在的に危険である任意のサイズおよび汚染物の生存生物のたまりを示す。
従って、式(I)の2,8‐ジアミノフェノチアジン化合物により、今や、(i) 凝集後の汚染物沈降および(ii) 処理する流体の消毒を同時に行うことが可能である。
今後、式(I)の化合物を使用することにより、凝集/消毒/沈降の単一工程を含む流体、とりわけ、産業または家庭排水の処理方法を開発することができる。
【0053】
式(I)の2,8‐ジアミノフェノチアジン化合物のさらなる利点は、その殺生物活性を誘発させるのに、例えば紫外線発生装置のような特定の光活性化装置を必ずしも必要としないことにある。
例えば、式(I)の2,8‐ジアミノフェノチアジン化合物がその凝集と殺生物の組合せ効果を奏するには、凝集/消毒工程を日光に晒したプールまたは処理タンク内で実施するだけである。
従って、本発明の目的は、本説明において定義したような式(I)の化合物の殺生物剤としての使用を提供することである。これらの化合物の殺生物剤としての使用は、流体の消毒、滅菌および浄化の分野において実施し得る。
ある実施態様においては、上記流体は、産業排水および家庭排水から選択する。
【0054】
さらに、本発明は、本説明において定義したような式(I)の化合物を含む、流体の消毒、滅菌または浄化用の組成物にも関する。
ある実施態様においては、上記組成物は、式(I)の化合物を表面上または内部に固定している支持体の形である。
従って、上記生成物を、種々の硬度および形状を有する、例えばポリウレタンタイプの不活性プラスチック材料(プレート、ビーズ、粉末、発泡体、ブレード、ファンブレード、プロペラ等)中に取込ませ、化学的に架橋させ得る。生成物は、重合前に、疎水性塩基の形で取込ませる。反応後、得られたプレートは、種々の陰影を有する。式(I)の化合物(1種以上)の最終濃度は、最終組成物総質量に対して0.1〜5質量%の範囲である。これらのプレートは、日光または人工光の下で殺生物性光活性化支持体として使用し得る。日光または電光の下で制御された水流またはガス流は、分子および殺生物性ラジカルを発生させて、
2枚のプレート間に貯蔵し得る流出物中の微生物負荷の有意のコスト有効性で迅速な低減をもたらす。このタイプの方法は、飲料水クローズド回路に、これらの回路が、的確な給水ラインはないが不良環境での船、航空機、列車、機動隊内の孤立した人集団社会の雨水または泉水源、小川、溜め池等を有する環境順応にあるときにとりわけ適応化する。反応は触媒作用タイプであり、消毒時に塩析する生成物は存在しない。
【0055】
また、上記方法は、ガスおよび分配ネットワーク(空調システム、空冷塔、医療用ガスまたは工業用ガス)の処理においても実施し得る。ガスは、適切な白色光照射装置に供給し得る。その後、DAP
2‐8を、プラスチックまたはセラミックタイプの不活性支持体中或いは多孔質不活性支持体、例えば、不織布材料、セルロース誘導体または任意の他の連続気泡構造体中に取込ませ得る。
支持体上への生成物の固定は、共有または非共有方式で行い得る。共有結合によると、固定する生成物は、重合反応時に支持体への結合を可能にする反応部位を有さなければならない。例えば、生成物は、R1、R3、R4、R6、R7、R9、R2a、R2b、R8aおよびR8b置換基の1つ中にアルコールを含み得、このアルコールは、ポリウレタン支持体の調製中のイソシアネートと反応する。非共有結合によると、生成物は、重合反応前のモノマーの少なくとも1つと結合させ得る。また、生成物を、支持体上に、必要に応じて生成物を水のような溶媒中または有機溶媒中に希釈することによって適用させることも可能である。適用は、支持体をディッピングすることにより、希釈生成物をスプレーすることにより或いはブラシまたはロールによって行い得る。
【0056】
以下、本発明を、以下の実施例において説明する本発明の実施態様によって具体的に説明する。
【実施例】
【0057】
実施例1
N,N,N',N'‐テトラメチル‐10H‐フェノチアジン‐2,8‐ジアミン
工程A:ビス‐(3‐ジメチルアミノフェニル)アミン
【化8】

二窒素雰囲気下に、1当量の3‐ブロモ‐N,N‐ジメチルアニリン(1g)、1.5当量のtert‐酪酸ナトリウム(0.721g)、0.1当量のPd(dba)2 (0.288 g)、0.12当量のdppf (0.555g)および20mLのトルエンをフラスコに導入する。フラスコにPTFEセプタムを装着し、フラスコに、1.2当量のN,N‐ジメチルベンゼン‐1,3‐ジアミン(0.817g)を、シリンジを使用して添加する。反応媒質を90℃で12時間加熱し、その後、室温に冷却し、減圧下に濃縮する。生成物を、フラッシュクロマトグラフィーにより、ヘキサン中酢酸エチルの5%から12%の勾配(Rf:0.33)を使用して精製して、75%の収率でもって0.963gの予測生成物を得る。
NMR 1H:(CDCl3) 7.13 (t、2H)、6.5 (d、2H)、6.49 (d、2H)、6.38〜6.36 (m、2H)、5.68 (s 大、1H)、2.95 (s、12H)
MS (M+1):256
【0058】
工程B:N,N,N',N'‐テトラメチル‐10H‐フェノチアジン‐2,8‐ジアミン
【化9】

4mLのo‐ジクロロベンゼン中のビス‐(3‐ジメチルアミノフェニル)アミン(0.5g、1.9ミリモル)、イオウ(0.15g、4.6ミリモル)およびヨウ素結晶の混合物を、二窒素雰囲気下で還流下に3時間加熱する。一旦室温に戻し、混合物をジエチルエーテル(15mL)で抽出し、濾過し、減圧下に濃縮する。
相応する油状物を、シリカゲル上で、溶離剤としてのトルエンによりクロマトグラフィー処理して、褐色粉末を得る(140mg)。
【0059】
カップリングの一般的手順
不活性雰囲気(アルゴン)下に、トルエン(ミリモル当り4mL)中で溶液化した臭素化芳香族化合物IV (1当量)に、アニリンIII (1.2当量)、次いで、Pd(dba)2 (0.05当量)、dppf (0.1当量)およびtBuONa (1.5当量)を連続して添加する。反応混合物を脱ガスし、アルゴン雰囲気下に置き、その後、トルエン還流温度に8〜14時間もたらす(IVが完全に消失するまで)。その後、反応混合物を室温に戻し、水と酢酸エチル間に分配し、その後、酢酸エチルで抽出する(2回)。有機相を集め、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、溶媒を蒸発させる。生混合物をシリカゲル上でのクロマトグラフィーによって精製して、60%を越える収率でもってジアリールアミンIIを得る。溶離剤:シクロヘキサン‐酢酸エチル 80:20〜60:40;ジクロロメタンとメタノール(90:10〜80:20)を使用したN‐メチルピペラジンを含む化合物を除く。
【0060】
フェノチアジンI調製の一般的手順
アルゴン雰囲気下に保った1,2‐ジクロロベンゼン(100mgの基質に対して1mL)中のジアリールアミンII (1当量)の溶液に、イオウ(0.3当量)およびヨウ素結晶を添加する。反応混合物を還流にもたらし、撹拌下に、この温度で4〜5時間保持する。一旦室温に戻し、反応混合物に、ジクロロメタンとチオ硫酸ナトリウム飽和溶液を添加する。沈降させた後、有機相を水性相から分離し、その後、硫酸ナトリウム上で乾燥させる。ジクロロメタンを蒸発させた後、1,2‐ジクロロベンゼン中で溶液化した生反応混合物をシリカゲル上でのクロマトグラフィーにより直接精製して、使用した基質に応じて変動する収率でもってフェノチアジンIを得る(クロマトグラフィーカラムは、アルミニウムシートにより光に対して保護されている)。ある状況下においては、精製後の基質を高温ジエチルエーテル中で可溶化し、黒色炭素を添加する。混合物をセライト床によって濾過し、溶媒を蒸発させて、概して、明褐色固形物としてフェノチアジンIを得る。
溶離剤:シクロヘキサン‐酢酸エチル 80:20〜60:40;ジクロロメタンとメタノール(90:10〜80:20)を使用したN‐メチルピペラジンを含む化合物を除く。
【0061】
フェノチアジンIクロル水和物調製の一般的手順
無水エタノール(基質に応じて、0.3ミリモルに対して3〜12mL)中で溶液化した塩基としてのフェノチアジンに、0℃近くの温度で、ジエチルエーテル中HCl溶液(2N、4当量、1.2ミリモル)を添加する。反応混合物を0℃近くの温度で15分間撹拌し、その後、溶媒を減圧下に蒸発させる。残留物を無水ジエチルエーテルで固形物が得られるまで磨砕する。この固形物を焼結フィルター上で分離し、無水ジエチルエーテルで多数回洗浄し、次いで、真空下のオーブン内で乾燥させる。フェノチアジンクロル水和物を、およそ90%の収率でもって単離する。
【0062】
これらの一般的手順を追試することによって、下記の生成物を調製し、これらを、重水素化メタノール中で溶液化したクロル水和物に対して行った270MHzでのこれら生成物の核磁気共鳴スペクトルによって特性決定している:
【表1】

【0063】
さらにまた、ある種の生成物は、重水素化メタノール中での62.5MHzでのクロル水和物の炭素‐13 NMRによっても特性決定している。
【表2】

【0064】
また、幾つかの実施例の構造体を、高解像度質量分析試験によっても確認している。
【表3】

【0065】
融点を、数種の塩基において、目安として示している。
【表4】

【0066】
実施例15
2‐[N‐(8‐ジメチルアミノ‐10H‐フェノチアジン‐2‐イル)‐N‐(2-ヒドロキシエチル)アミノ]エタノールおよび2‐[N‐(8‐ジメチルアミノ‐10H‐フェノチアジン‐2‐イル)‐N‐(2-ヒドロキシエチル)アミノ]エタノール二クロル水和物
工程 15.1:(3‐ブロモフェニル)‐ビス‐[2‐(tert‐ブチルジメチルシラニルオキシ)エチル]アミン
アルゴン雰囲気下に、ジクロロメタン(40mL)中の2‐[N‐(3‐ブロモフェニル)‐N‐(2-ヒドロキシエチル)アミノ]エタノール(1.15g、4.42ミリモル)、tert‐ブチルジメチルシリルクロリド(3当量、2.0g、13.27ミリモル)およびイミダゾール(6当量、1.8g、26.5ミリモル)の混合物を、室温で1夜撹拌する。反応混合物をジクロロメタンと水間に分配させた後、抽出をジクロロメタンで実施する(2回)。有機相を集め、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、溶媒を除去する。シリカゲル上でのクロマトグラフィーによって精製した後、(3‐ブロモフェニル)‐ビス‐[2‐(tert‐ブチルジメチルシラニルオキシ)エチル]アミンを、無色油状物として得る。
1H NMR (270MHz、CDCl3):δ (ppm):0.03 (12H、m)、0.88 (18H、m)、3.47 (4H、t、J = 6.2Hz)、3.74 (4H、t、J = 6.2 Hz)、6.61 (1H、br d、J = 8.1Hz)、6.75 (1H、br d、J = 8.1Hz)、7.6Hz)、6.84 (1H、br s)、7.01 (1H、br t、J = 8.1 Hz)。
【0067】
工程 15.2:[3‐(3‐ジメチルアミノフェニルアミノ)フェニル]‐ビス‐[2‐(tert‐ブチルジメチルシラニルオキシ)エチル]アミン
カップリングの一般的手順において説明したように進行させるが、1.85g (3.8ミリモル)の(3‐ブロモフェニル)‐ビス‐[2‐(tert‐ブチルジメチルシラニルオキシ)エチル]アミンと1.15g (4.42ミリモル)のN,N‐ジメチルベンゼン‐1,3‐ジアミンから出発することによって、[3‐(3‐ジメチルアミノフェニルアミノ)フェニル]‐ビス‐[2‐(tert‐ブチルジメチルシラニルオキシ)エチル]アミンを、淡黄色油状物として得る。
1H NMR (270MHz、CDCl3):δ (ppm):0.02 (12H、m)、0.88 (18H、br s)、2.92 (6H、br s)、3.47 (4H、t、J = 6.2Hz)、3.74 (4H、t、J = 6.2Hz)、5.61 (1H、br s)、6.28 (2H、m)、6.40 (4H、m)、7.10 (2H、m)。
【0068】
工程 15.3:N,N‐ビス‐(tert‐ブチルジメチルシラノキシ)エチル‐N,N’‐ジメチル‐10H‐フェノチアジン‐2,8‐ジアミン
フェノチアジン調製の一般的手順において説明したようにして進行させたが、1.85g
(3.4ミリモル)の[3‐(3‐ジメチルアミノフェニルアミノ)フェニル]‐ビス‐[2‐(tert‐ブチルジメチルシラニルオキシ)エチル]アミンおよび260mg (0.1ミリモル)のイオウから出発して、N,N‐ビス‐(tert‐ブチルジメチルシラノキシ)エチル‐N,N’‐ジメチル‐10H‐フェノチアジン‐2,8‐ジアミンを得、褐色固形物として単離する。
【0069】
工程 15.4:2‐[N‐(8‐ジメチルアミノ‐10H‐フェノチアジン‐2‐イル)‐N‐(2-ヒドロキシエチル)アミノ]エタノール
テトラヒドロフラン(20mL)中のN,N‐ビス‐(tert‐ブチルジメチルシラノキシ)エチル‐N,N’‐ジメチル‐10H‐フェノチアジン‐2,8‐ジアミン(1.08g、1.88ミリモル)の溶液に、テトラヒドロフラン中テトラブチルアンモニウムフルオリド 1Mの溶液(2.5当量、4.7mL、4.7ミリモル)を添加する。混合物を、室温で1時間撹拌する(CCM後、出発物質の完全な除去まで)。そのようにして調製した懸濁液を濾別する。沈降物をテトラヒドロフランで洗浄し、次いで、水と酢酸エチルの混合物中に可溶化する。その後、有機相を水で多数回洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させる。溶媒除去後、薄い暗褐色固形物を得る。
【0070】
工程 15.5:2‐[N‐(8‐ジメチルアミノ‐10H‐フェノチアジン‐2‐イル)‐N‐(2-ヒドロキシエチル)アミノ]エタノール二クロル水和物
クロル水和物調製の一般的手順において説明したように進行させたが、2‐[N‐(8‐ジメチルアミノ‐10H‐フェノチアジン‐2‐イル)‐N‐(2-ヒドロキシエチル)アミノ]エタノールから出発して、2‐[N‐(8‐ジメチルアミノ‐10H‐フェノチアジン‐2‐イル)‐N‐(2-ヒドロキシエチル)アミノ]エタノール二クロル水和物を得る。
1H NMR (270MHz、CDCl3):δ (ppm):3,9 (6H、m)、3.60 (8H、m)、7.05 (6H、m)。
【0071】
式(I)の化合物の光活性化特性
殺生物試験を、Directive NF EN 1040に従って実施した。試験は、暗中および通常の白熱灯およびハロゲン灯を使用しての穏やかな日光(400KJ/M2)に相当する白色光の下に行った。幾つかの試験は、1,3 mW/Cm2まで実施した。
二クロル水和物形の本発明のフェノチアジン‐2,8‐ジアミン(DAP‐2,8)を2回蒸留水またはPPIタイプの水中で溶液化する(100mg/l)。例えば、N,N,N',N'‐テトラメチル‐10H‐フェノチアジン‐2,8‐ジアミン溶液の色は、黄色からニッケルグリーンに15分未満以内で変化する。溶液が白色光に照射されている色変化は、なお一層速い。試験は、消毒試験規格に従う滅菌ガラスフラスコ内で行う。照射は、日光照射および人工光照射であり、暗中で(ガラス材料をアルミニウムホイルで包んで)実施した試験と比較する。
【0072】
式(I)の化合物の殺生物特性
1) 粉末として
殺生物活性試験は、EN規格、例えば、EN 1040、EN 1275に従い、ATCCおよびCIPに登録され、公認試験所によって検証された参照微生物株に対して実施する。
N,N,N',N'‐テトラメチル‐10H‐フェノチアジン‐2,8‐ジアミン作用スペクトルの例

【0073】
これらの試験は、感染力価低下が5よりも大きい場合、ヨーロッパ薬局方が定義した殺生物剤として有効とする。
試験は、暗中対照と対比しての白色光の下で実施する。全ての場合、白色光は、殺生物現象を促進する、例えば、白色光の下での殺生物活性は、暗中での30分と対照的に、15分の接触時間しか必要としない。
DAP 2,8群は“範囲効果”を有すること、即ち、高めの濃度と被殻したとき、より有効である濃度範囲が存在することに注目すべきである。例えば、N,N,N',N'‐テトラメチル‐10H‐フェノチアジン‐2,8‐ジアミンは、カンジダ アルビカンスIP 48.72に対する30分の接触による光の下では、250または500mg/l (感染力価低下 <2.8 ログ)におけるよりも、100mg/l (感染力価低下 3.2 ログ)における方が有効である。
【0074】
式(I)の化合物の凝集特性
タンパク質または酵母抽出物の存在下において、DAP‐2,8群は、褐色フロックを形成することによって、培養培地(ウシアルブミン、酵母抽出物)を自然に沈降させる。溶液中でタンパク質濃度が高いほど、凝集は最強である。DAP‐2,8は、このフロック中で濃縮する。例えば、10g/lの酵母抽出物溶液においては、DAP初期濃度の70%よりも多くがペレット中で回収されている。凝集活性は、以下において、なお一層重要である:
・2‐8に位置する側鎖が、複素環、例えば、モルホリンまたはピペラジン成分を含む。
・および/または、側鎖が、増分するMWを有するアルキル成分を含む(ブチル誘導体はプロピル誘導体よりも有効であり、プロピルはエチルよりも有効であり、最低はメチルである)。
DAP 2‐8群の凝集活性は、構造に応じて、1000当り0.05から現れている。さらに、凝集活性は、DAP 2‐8含浸ディスクを固形培地(例えば、Muller Hinton培地)中の細菌培養物上に付着させたとき、寒天培地中に拡散することによって現れる。含浸ディスク周囲の凝集環を観察し得る。
【0075】
2) 殺生物性支持体
塩基の形の生成物をポリウレタンタイプの不活性プラスチック材料または任意の他の不活性疎水性支持体中に取込ませる。生成物は、その後、液体またはガス状流体における消毒/浄化/脱臭目的で使用することができる。プレートの照射により、周囲または溶解酸素からの一重項酸素および殺生物ラジカルの現場発生を誘発させる。反応は、触媒作用タイプである。これらのプラスチック材料の形状は、その意図する用途によって変化する:組立てブレード、傾斜プレート、粉末、ビーズ、ファンブレード、プロペラ等。その後、例えば、溶媒和物形のDAP 2‐8を親水性多孔質支持体中に取込ませることが可能である。
【0076】
製造例:塩基として生じる0.018gのDAP‐2,8テトラメチルを、11.075gのポリオール中に懸濁させる。室温で撹拌した後、ポリオール全体が透明黄色陰影に変わる。これに、0.016g、次いで、0.086gのDAP‐2,8テトラメチルを添加し、70℃で加熱して、その完全溶解を行う。最終濃度は、11.075gのポリオール中0.120gのDAP‐2,8テトラメチルである。
6/10(質量/質量)の量のイソシアネートとの重合は、PRC 1700タイプのポリウレタン固形物の生成を可能にする。プレートを2つの連続注型において製造し、最初の1枚は、薄層中にポリオール+DAP‐2,8テトラメチルを含む;DAPを含まない2番目の1枚は、最初の注型の完全重合後に冷間注型する。
N,N,N',N'‐テトラメチル‐10H‐フェノチアジン‐2,8‐ジアミン(共有でない)または2‐[(8‐ジメチルアミノ‐10H‐フェノチアジン‐2‐イル)‐(2-ヒドロキシエチル)アミノ]エタノール(共有結合)を含むポリウレタンプレートは、白色光の下、1時間内で、1ログ未満の大腸菌CIP 54 127感染力価に下げている。同じ条件下の暗中対照は、活性を全く有していない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式(I)の2,8‐ジアミノフェノチアジン化合物、並びに、式(I)の化合物の任意の光学異性体、立体異性体、ジアステレオ異性体または鏡像体、並びに、式(I)の化合物の塩、水和物、溶媒和物および多形態形;但し、R1、R2a、R2b、R3、R4、R5、R7、R8a、R8bおよびR9から選ばれる基の各々が水素原子を示す式(I)の化合物を除く:
【化1】

(式中、
(i) R1、R3、R4、R6、R7およびR9基は、各々、互いに独立して、下記から選ばれる基を示し;
−基水素原子;
−ハロゲン;
−1〜12個の非置換炭素原子を有するアルキル基;
−フェニル基によって置換された1〜12個の炭素原子を有するアルキル基;
−ここで、前記フェニル基は、置換されていないか、またはハロゲン、ヒドロキシ、1〜12個の炭素原子を有するアルキルおよび1〜12個の炭素原子を有するアルコキシから選ばれる1個以上の基によって置換されている、
(ii) R2a、R2b、R8aおよびR8b基は、各々、互いに独立して、下記から選ばれる基を示し;
−水素原子;
−1〜12個の非置換炭素原子を有するアルキル基、ヒドロキシアルキル基またはアルコキシアルキル基;
フェニル基によって置換された1〜12個の炭素原子を有するアルキル基またはアルコキシアルキル基;
−ここで、前記フェニル基は、置換されていないか、または下記から選ばれる基によって置換されている
−ハロゲン、
−ヒドロキシ、
−1〜12個の炭素原子を有するアルキル、
−1〜12個の炭素原子を有するアルコキシ、
−置換されていないか、またはハロゲン、ヒドロキシ、1〜12個の炭素原子を有するアルキルおよび1〜12個の炭素原子を有するアルコキシから選ばれる基によって置換されている2〜12個の炭素原子を有するアルケニル、
−置換されていないか、またはハロゲン、ヒドロキシ、1〜12個の炭素原子を有するアルキル、および1〜12個の炭素原子を有するアルコキシから選ばれる基によって置換されている2〜12個の炭素原子を有するアルキニル、
−置換されていないか、またはハロゲン、ヒドロキシ、1〜12個の炭素原子を有するアルキルおよび1〜12個の炭素原子を有するアルコキシから選ばれる基によって置換されている4〜12個の炭素原子を有するシクロアルキル、
−置換されていないか、またはハロゲン、ヒドロキシ、1〜12個の炭素原子を有するアルキルおよび1〜12個の炭素原子を有するアルコキシから選ばれる基によって置換されている4〜12個の炭素原子を有するシクロアルケニル、
或いは、
(iii) ‐NR2aR2bまたは‐NR8aR8b基は、互いに独立して、飽和または不飽和いずれかの4〜12個の炭素原子を有する複素環を示し;該複素環は、窒素、酸素およびイオウから選ばれる1個以上のさらなるヘテロ原子を含み得、また、該複素環は、置換されていないか、またはハロゲン、ヒドロキシまたは1〜12個の炭素原子を有するアルキルから選ばれる基によって置換されている)。
【請求項2】
R2aおよびR2b基が、各々、水素原子を示す、請求項1記載の式(I)の化合物。
【請求項3】
R8aおよびR8b基が、各々、水素原子を示す、請求項1または2記載の式(I)の化合物。
【請求項4】
R2a、R2b、R8aおよびR8bから選ばれる少なくとも1個、多くとも4個が、メチル基を示す、請求項1記載の式(I)の化合物。
【請求項5】
下記の化合物から選ばれる、請求項1記載の式(I)の化合物:
N,N,N',N'‐テトラメチル‐10H‐フェノチアジン‐2,8‐ジアミン;
N,N‐ジメチル‐[8‐(4‐メチルピペラジン‐1‐イル)‐10H‐フェノチアジン‐2‐イル]アミン:
N,N‐ジメチル‐(8‐モルホリン‐4‐イル‐10H‐フェノチアジン‐2‐イル)アミン;
N,N‐ジエチル‐N',N'‐ジメチル‐10H‐フェノチアジン‐2,8‐ジアミン;
N,N‐ジエチル‐[8‐(4‐メチル‐ピペラジン‐1‐イル)‐10H‐フェノチアジン‐2‐イル]アミン;
N,N‐ジエチル‐(8‐モルホリン‐4‐イル‐10H‐フェノチアジン‐2‐イル)アミン;
N,N‐ジメチル‐N',N'‐ジプロピル‐10H‐フェノチアジン‐2,8‐ジアミン;
[8‐(4‐メチル‐ピペラジン‐1‐イル)‐10H‐フェノチアジン‐2‐イル]‐ジプロピルアミン;
(8‐モルホリン‐4‐イル‐10H‐フェノチアジン‐2‐イル)‐ジプロピルアミン;
N,N‐ジブチル‐N',N'‐ジメチル‐10H‐フェノチアジン‐2,8‐ジアミン;
N,N‐ジブチル‐[8‐(4‐メチルピペラジン‐1‐イル)‐10H‐フェノチアジン‐2‐イル]アミン;
N,N‐ジブチル‐(8‐モルホリン‐4‐イル‐10H‐フェノチアジン‐2‐イル)アミン;
N,N‐ジメチル‐N'‐プロピル‐10H‐フェノチアジン‐2,8‐ジアミン;
3,N,N,N',N'‐ペンタメチル‐10H‐フェノチアジン‐2,8‐ジアミン;
2‐[N‐(8‐ジメチルアミノ‐10H‐フェノチアジン‐2‐イル)‐N‐(2-ヒドロキシエチル)アミノ]エタノール。
【請求項6】
下記の式(I’):
【化2】

(式中、
(i) R1、R3、R4、R6、R7およびR9基は、各々、互いに独立して、下記から選ばれる基を示し;
−基水素原子;
−ハロゲン;
−1〜12個の非置換炭素原子を有するアルキル基;
−フェニル基によって置換された1〜12個の炭素原子を有するアルキル基;
−ここで、前記フェニル基は、置換されていないか、またはハロゲン、ヒドロキシ、1〜12個の炭素原子を有するアルキルおよび1〜12個の炭素原子を有するアルコキシから選ばれる1個以上の基によって置換されている、
(ii) R2a、R2b、R8aおよびR8b基は、各々、互いに独立して、下記から選ばれる基を示し;
−水素原子;
−1〜12個の非置換炭素原子を有するアルキル基、ヒドロキシアルキル基またはアルコキシアルキル基;
フェニル基によって置換された1〜12個の炭素原子を有するアルキル基またはアルコキシアルキル基;
−ここで、前記フェニル基は、置換されていないか、または下記から選ばれる基によって置換されている
−ハロゲン、
−ヒドロキシ、
−1〜12個の炭素原子を有するアルキル、
−1〜12個の炭素原子を有するアルコキシ、
−置換されていないか、またはハロゲン、ヒドロキシ、1〜12個の炭素原子を有するアルキルおよび1〜12個の炭素原子を有するアルコキシから選ばれる基によって置換されている2〜12個の炭素原子を有するアルケニル、
−置換されていないか、またはハロゲン、ヒドロキシ、1〜12個の炭素原子を有するアルキル、および1〜12個の炭素原子を有するアルコキシから選ばれる基によって置換されている2〜12個の炭素原子を有するアルキニル、
−置換されていないか、またはハロゲン、ヒドロキシ、1〜12個の炭素原子を有するアルキルおよび1〜12個の炭素原子を有するアルコキシから選ばれる基によって置換されている4〜12個の炭素原子を有するシクロアルキル、
−置換されていないか、またはハロゲン、ヒドロキシ、1〜12個の炭素原子を有するアルキルおよび1〜12個の炭素原子を有するアルコキシから選ばれる基によって置換されている4〜12個の炭素原子を有するシクロアルケニル、
或いは、
(iii) ‐NR2aR2bまたは‐NR8aR8b基は、互いに独立して、飽和または不飽和いずれかの4〜12個の炭素原子を有する複素環を示し;該複素環は、窒素、酸素およびイオウから選ばれる1個以上のさらなるヘテロ原子を含み得、また、該複素環は、置換されていないか、またはハロゲン、ヒドロキシまたは1〜12個の炭素原子を有するアルキルから選ばれる基によって置換されている)
を有する2,8‐ジアミノフェノチアジン化合物の製造方法であって、下記の式(II):
【化3】

(式中、R1、R2a、R2b、R3、R4、R5、R7、R8a、R8bおよびR9基は、式(I)の化合物におけるのと同じ意味を有する)
を有するジフェニルアミン化合物を、下記から選ばれる加熱工程に供する工程(b)を含むことを特徴とする前記製造方法:
(b1) 不活性溶媒中でのヨウ素およびイオウの存在下に60℃〜反応混合物の沸騰温度の範囲の温度での1時間乃至1夜の時間範囲での加熱工程;および、
(b2) (b2-1) 無溶媒または不活性溶媒の存在下での式(II)の化合物とヨウ素およびイオウとの混合物または(b2-2) 式(II)の化合物、ヨウ素およびイオウが式(I)の化合物を得るように支持体上に固定されている式(II)の化合物とヨウ素およびイオウとの混合物のいずれかの10秒乃至6×10分の時間範囲でのマイクロ波加熱工程。
【請求項7】
下記の式(III):
【化4】

(式中、R1、R2a、R2b、R3およびR4基は、請求項1におけるのと同じ意味を有する)
を有する化合物を、下記の式(IV):
【化5】

(式中、R5、R7、R8a、R8bおよびR9基は、請求項1におけるのと同じ意味を有し;Xは、ハロゲンまたはスルホネート基を示す)
を有する化合物と、パラジウムまたはニッケル触媒および触媒リガンドの存在下に、有機または無機塩基と一緒に、80℃〜110℃の範囲の温度および8〜15時間の時間範囲において反応させて式(II)の化合物を得る、式(II)の化合物を得るための事前工程(a)を含む、請求項6記載の方法。
【請求項8】
下記の式(III):
【化6】

(式中、R1、R2a、R2b、R3およびR4基は、請求項1におけるのと同じ意味を有する)
を有する化合物を、下記の式(IV):
【化7】

(式中、R5、R7、R8a、R8bおよびR9基は、請求項1におけるのと同じ意味を有し;Xは、ハロゲンまたはスルホネート基を示す)
を有する化合物と、塩または酸化銅および有機塩基の存在下に、40℃乃至反応混合物の沸騰温度の範囲の温度および2時間乃至1夜の時間範囲において反応させて式(II)の化合物を得る、式(II)の化合物を得るための事前工程(a)を含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
R1、R2a、R2b、R3、R4、R5、R7、R8a、R8bおよびR9基から選ばれる基の少なくとも1個が水素原子でない式(I’)の化合物を、R1、R2a、R2b、R3、R4、R5、R7、R8a、R8bおよびR9基から選ばれる基の各々が水素原子を示す式(I”)の化合物から、下記から選ばれる工程に従って調製する、請求項6〜8のいずれか1項記載の方法:
c) アルキル化工程、還元アミノ化工程またはアシル化工程から選ばれる反応工程;および、
d) 還元工程。
【請求項10】
R1、R2a、R2b、R3、R4、R5、R7、R8a、R8bおよびR9基から選ばれる基の少なくとも1個が水素原子でない式(I’)の化合物を、R1、R2a、R2b、R3、R4、R5、R7、R8a、R8bおよびR9基から選ばれる基の各々が水素原子を示す化合物(I”)から、下記から選ばれる工程に従って調製する、請求項6〜8のいずれか1項記載の方法:
ハロゲン化反応;
直接金属化反応;
フリーデル反応;および、
転移反応。
【請求項11】
請求項1〜5のいずれか1項記載の式(I)の化合物の、殺生物剤としての使用。
【請求項12】
流体消毒、滅菌または浄化分野における、請求項11記載の使用。
【請求項13】
前記流体が、産業排水および家庭排水から選ばれる、請求項12記載の使用。
【請求項14】
請求項1〜7のいずれか1項記載の式(I)の化合物を含む、殺菌、滅菌または浄化流体用の組成物。
【請求項15】
式(I)の化合物を表面上または内部に固定している支持体の形の、請求項14記載の組成物。

【公表番号】特表2010−538051(P2010−538051A)
【公表日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−523572(P2010−523572)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【国際出願番号】PCT/FR2008/051588
【国際公開番号】WO2009/044054
【国際公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(510061690)
【Fターム(参考)】