新規な核内受容体の非ゲノム活性のモジュレーター(MNAR)およびその使用
【課題】新規な蛋白である、核内受容体の非ゲノム活性モジュレーター(MNAR)(これは、エストロゲン受容体α(ERα)、エストロゲン受容体β(ERβ)、および他の核内受容体と相互作用する)の利用。
【解決手段】MNARのポリペプチドまたはポリペプチドフラグメントを含む融合ポリペプチド、およびゲノム活性に対して非ゲノム活性を示す化合物を同定する方法であって、MNAR−核内受容体の複合体を含む細胞に試験化合物を投与し、該試験化合物から由来の非ゲノム活性またはゲノム活性を測定することを含む方法等が提供される。
【解決手段】MNARのポリペプチドまたはポリペプチドフラグメントを含む融合ポリペプチド、およびゲノム活性に対して非ゲノム活性を示す化合物を同定する方法であって、MNAR−核内受容体の複合体を含む細胞に試験化合物を投与し、該試験化合物から由来の非ゲノム活性またはゲノム活性を測定することを含む方法等が提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生化学および内科の分野に関し、そして新規な核内受容体の非ゲノム活性モジュレーター(MNAR)(これは、エストロゲンα(ERα)、およびエストロゲンβ(ERβ)の両方と相互作用する)に関する。より詳細には、本発明は、エストロゲン受容体の転写活性および/またはチロシンキナーゼのsrcファミリーの活性化を調節するための新規な組成物、方法、ならびにアッセイに関する。本発明はまた、核内受容体(例えば、エストロゲン受容体)のゲノム活性と非ゲノム活性との間の区別のための、新規な組成物、方法、およびアッセイに関する。さらに、本発明は、MNARをコードする核酸、アンチセンス、核酸の組み換え発現、ならびに本発明の核酸および蛋白を利用する宿主細胞、組成物、およびアッセイに関する。
【背景技術】
【0002】
核ホルモン受容体は、リガンド誘導性転写因子のスーパーファミリーであり、これは、遺伝子発現のリガンド依存性転写制御に関与する、クラスである。受容体分子において立体配置的な変化を誘導する特定のリガンドの結合は、他の転写因子との受容体相互作用に影響し、そして最終的には前開始複合体の形成に影響する。このプロセスは、遺伝子転写の速度を調節する(D.J.Mangelsdorfら、Cell 83:835〜9,1995(非特許文献1))。
【0003】
核ホルモン受容体のスーパーファミリーとしては、ステロイドホルモン受容体、非ステロイドホルモン受容体、およびオーファン受容体が挙げられる。糖質コルチコイド(GR)、鉱質コルチコイド(MR)、プロゲスチン(PR)、アンドロゲン(AR)、およびエストロゲン(ER)の受容体は、古典的なステロイド受容体の例である。ステロイドホルモン受容体に加えて、この核ホルモン受容体のスーパーファミリーは、ビタミンD、甲状腺ホルモン、およびレチノイドのような非ステロイドホルモンの受容体からなる。さらに、いわゆる「オーファン」受容体をコードする、ある範囲の核内受容体様配列が、同定されている。これらのオーファン受容体は、核ホルモン受容体に構造的に関連しており、従って核ホルモン受容体として分類されるが、推定のリガンドは、まだ同定されていない(Cell,83:851〜857,1995(非特許文献2))。
【0004】
核ホルモン受容体のスーパーファミリーは、6つの別個の構造、かつ機能であるドメイン(A〜F)を含むモジュール構造によって構造的かつ機能的に特徴付けられる。より詳細には、これらの受容体は、可変性のN末端領域(ドメインA/B)を有し;その後ろに、以下を有する:中心に位置した、高度に保存されたDNA結合ドメイン(本明細書において以降では、DBDと呼ばれる;ドメインC);可変性のヒンジ領域(ドメインD);保存されたリガンド結合ドメイン(本明細書において以降はLBDと呼ばれる;ドメインE);および可変性のC末端領域(ドメインF)。Cell(前出)。
【0005】
サイズおよび配列が高度に可変性であるN末端領域は、このスーパーファミリーの異なるメンバーの間でもあまり保存されていない。この受容体のこの部分は、転写活性化の調節に関与する。
【0006】
DBDは、約66〜70のアミノ酸からなっており、DNA結合活性を担う。このドメインは、クロマチン上の特定の標的遺伝子の転写制御単位内の、ホルモン反応性エレメント(本明細書において以降はHREと呼ばれる)と呼ばれる、DNA配列に特異的な受容体を標的する。GR、MR、PR、およびARのようなステロイド受容体は、同様のHRE DNA配列を認識するが、ERは、異なるDNA HRE配列を認識する。DNAへの結合後、このステロイド受容体は、基礎的な転写機構の成分と、そして配列特異的な転写因子と相互作用して、これによって特定の標的遺伝子の発現を調節すると考えられる。
【0007】
LBDは、この受容体のC末端部分に位置しており、主にリガンド結合活性を担う。このように、LBDは、ホルモンリガンドの認識および結合に必須であり、そしてさらに、転写活性化機能を有し、それによってこの受容体のホルモン応答の特異性および選択性を決定する。構造中では中程度に保存されているが、LBDは、核ホルモン受容体スーパーファミリーの個々のメンバーの間では相同性がかなり変化していることが公知である。
【0008】
核内受容体のホルモンリガンドが細胞に進入し、かつLBDによって認識されるとき、それは、特定の受容体蛋白に結合して、それによって受容体蛋白のアロステリックな改変を開始する。(Cell,前出)。この改変の結果として、リガンド/受容体複合体は、転写的に活性な状況に切り替わり、そしてそれ自体が、DBDの存在によって、クロマチンDNA上で対応するHREに高い親和性で結合し得る。このように、リガンド/受容体複合体は、特定の標的遺伝子の発現を調節する。このファミリーの受容体によって達成された多様性は、異なるリガンドに対して応答する能力に起因する。
【0009】
ゲノム活性の調節に加えて、ホルモン受容体複合体は、重要かつ変化した非ゲノム効果を有し得る。この非ゲノム活性は、細胞内のセカンドメッセンジャーにおける高速かつ一過性の増大によって特徴付けられる。次に、これらのセカンドメッセンジャーは、増殖および分化のような細胞機能に影響する、多数の異なる経路およびカスケードに関与する。
【0010】
より詳細には、ステロイドホルモン受容体は、胚の発生、成体の恒常性、および器官の生理学に関連する。種々の疾患および異常が、ステロイドホルモン作用における撹乱に帰せられる。ステロイド受容体は、非ゲノム活性のホルモン活性化転写モジュレーターとして、およびホルモン活性化合物刺激因子として、その影響を及ぼすので、これらの受容体を改変するか、これらの受容体と相互作用するか、またはこれらの受容体を調節するための種々のアプローチへのさらなる検討が、非常に重要な領域である。例えば、これらの受容体における変異および欠損、ならびにこれらの受容体の過剰刺激またはブロックによって、ホルモンシグナル伝達経路の基礎にある機構に対して良好な洞察が提供され得、これによって、ステロイド受容体に関連する疾患および異常の広範な種々の処置における効力の増大がもたらされる。
【0011】
(エストロゲン受容体)
エストロゲン(E2)は、ERとの相互作用を通じて、異なる組織において多くの生物学的効果を発揮する。アミノ酸配列解析、一過性のトランスフェクション研究、およびERの変異分析によって、ERが、上記の古典的なモジュール構造を有することが示される。ERのN末端A/Bドメインは、転写活性化機能1(TAF−1)と呼ばれる、トランス活性化機能を含む。DBDは、2つのジンクフィンガーを含み、かつDNA認識を担う。LBDおよび二次トランス活性化機能(TAF−2と呼ばれる)は、ERのC末端に位置する。
【0012】
ホルモンに対する結合の際、ERは、活性化および形質転換の段階を経験する。活性化されたERは、特定のエストロゲン応答エレメント(ERE)と相互作用する。このEREは、エストロゲン調節遺伝子のプロモーター領域に位置しており、かつその標的遺伝子転写に影響する。過去10年間にわたって、多くの研究が、ER上のリガンド(アゴニスト/アンタゴニスト)の効果、およびERの構造と機能との間の関係の両方の基本的な理解を提供してきた。それにもかかわらず、ERの非ゲノム活性についての機能に関しては、ほとんど明らかになっていない。
【0013】
ERβは、ERαと呼ばれる、さらに一般的に公知のエストロゲン受容体とは異なっていると考えられる。ERαおよびERβは、総称的に、本明細書においてERと呼ばれる。ERβのDBDは、ERαのDBDに対して90%同一である。しかし、ERαのリガンド結合ドメイン(LBD)とERβのリガンド結合ドメインとの間の全体的な相同性は、55%未満である。ERα同様に、ERβは、リガンド依存性の様式でEREからの転写を刺激し得る。
【0014】
エストロゲンは、細胞内セカンドメッセンジャー(カルシウムおよびcAMPを含む)のレベルの高速かつ一過性の増大を誘導すること、およびエストロゲンは、マイトジェン活性化蛋白キナーゼ(MAPK)およびホスホリパーゼCの活性化を誘導することが確認されている(CollinsおよびWebb,1999)。実際、多くの研究によって、エストロゲンが、Src/Ras/MAPキナーゼリン酸化経路の迅速かつ一過性の活性化を誘導することが実証された。この経路の活性化によって、細胞増殖および分化を誘導する重要な細胞機能が誘引される。これらの急性の事象の時間経過は、ペプチドホルモンによって惹起されたものと似ており、これによって、これらの事象はエストロゲンの「古典的な(clasical)」ゲノム作用に関与しないという仮説が、支持される。
【0015】
現在のデータによってまた、エストロゲン受容体と、マイトジェン活性化蛋白(MAP)キナーゼシグナル伝達カスケードとの間の直接のリンクが示唆される。MAPキナーゼは、リン酸化され、かつ種々のシグナルに対する応答において活性化されるセリン−トレオニンキナーゼのファミリーである。これらの酵素は、細胞外シグナルを、複数の膜受容体から細胞内標的(転写因子、細胞骨格蛋白、および酵素を含む)に伝達する。MAPキナーゼファミリーは、細胞外シグナル関連キナーゼ(ERK)、p38、およびcJunN末端キナーゼ(Ras、Raf、およびマイトジェン活性化蛋白キナーゼ(MEK)の連続的活性化に関与する経路を通じてシグナル伝達する)を含む(S.M.Thomas,J.S.Brugge,Annual Review of Cell & Developmental Biology 13,513〜609,1997(非特許文献3))。肺の内皮細胞、ニューロン細胞、骨芽細胞、および破骨細胞において、17βエストラジオール(E2)は、MAPK経路を急速に活性化することが報告されている。
【0016】
より詳細には、肺内皮細胞において、17βエストラジオール(E2)は、一酸化窒素(NO)産生を急速に刺激することが報告されており、したがってこのことは、E2が血管の急性拡張を誘導する能力を説明する。Chenら(Chenら、1999)は最近、単離された肺内皮細胞において、E2が内皮一酸化窒素合成(eNOS)の急速な活性化合物を誘導することを報告している。eNOSのエストロゲン活性化は、MAPキナーゼ経路の急速な活性化を通じて生じることが示された。コンプリメンタリーな研究によってまた、E2が、原形質膜から核に近い細胞内部位へのeNOSのカルシウム依存性転位を誘導すること(急速(5分以内)であり、受容体媒介性であるが、非ゲノムである作用)が示された(Goetzら、1999)。さらに、ホスファチジルイノシトール−3−OHキナーゼ(PI(3)K)のp85α調節性サブユニットとのリガンド依存性ERα相互作用は最近、エストロゲンの心血管保護効果の薬物治療に結び付けられた(Simoncini T、およびJ.K.、2000)。エストロゲンを用いた刺激によって、ERα関連PI(3)K活性が増大され、それによって蛋白キナーゼB/Akt、および内皮一酸化窒素シンターゼ(eNOS)の活性化がもたらされる。
【0017】
ニューロン細胞において、E2によるMAPキナーゼシグナル伝達経路の急速な活性化によって、グルタミン酸塩興奮毒性の後の一次皮質ニューロンにおける神経保護が生じる(Singerら、1999)。エストロゲンのこれらの神経保護効果(曝露の後5分以内に生じることが報告された)は、ER依存性の様式で、c−Src−チロシンキナーゼの一過性の活性化、およびp21(ras)−グアニンヌクレオチド活性化蛋白のチロシンリン酸化を通じて媒介された。
【0018】
同様に、骨芽細胞において、E2は、5分以内にMAPキナーゼリン酸化、および活性化を誘導する(Endohら、1997)。従って、E2は、これらの細胞における細胞増殖および分化を調節し、骨形成の増大を導く。いくつかの研究によってまた、エストロゲンは、Srcキナーゼの活性化を通じて、破骨細胞においてMAPキナーゼ経路を活性化することが示される(Oursler,1998)。これはまた、MAPキナーゼ活性化が、骨再吸収に必要な酵素の調節に関与し得ることを示している(Kristen D.Brubaker,1999)。
【0019】
ヒト乳癌由来細胞株であるMCF−7、およびT47Dにおいて、ならびにヒト結腸癌由来細胞株であるCaco−2において、E2は、Src/Ras/Erk経路を誘導するシグナルを活性化する(Migliaccioら、1993)、(Migliaccioら、1996)、(Migliaccioら、1998)、(Migliaccioら、2000)。この活性化は、直接のER−Src相互作用によって媒介される。興味深いことに、プロゲステロンはまた、T47D細胞において同じ経路を活性化する(Migliaccioら、1998)。Src/Ras/Erkシグナル伝達経路は、増殖因子の周知の標的である。重要なことに、この経路の活性化は、ERとSrcとの直接の相互作用を必要とする。この経路の活性化は、増殖または分化のような異なる細胞応答を誘発する[Cantley,1991];[Marshall,1996];Downward,1997]。ステロイドホルモンのような、エストロゲン受容体リガンドによるこの経路の活性化によって、細胞周期制御におけるその関与が詳細に説明される。
【0020】
これらのデータによって、ERの非転写活性/非ゲノム活性が、細胞増殖の刺激の原因であり得るという見解が支持される。しかし、このプロセスの分子機構の詳細はほとんど未知である。Src活性化は、多数のヒト乳癌および結腸癌において以前に観察されている([Rosen,1986];[Ottenhoff−Kalff,1992])。Srcの活性化によって、トランスジェニックマウスにおける乳房腫瘍が誘導される([Guy,1994])。構成的に活性なRas変異体は、乳癌を含む全ての癌のうち25〜30%で見出されている([Kasid,1987])。
【0021】
最近の研究によって、古典的なERに無関係の原形質膜エストロゲン受容体の存在が示唆されている。この膜ERのクローニングまたは単離は、達成されていないが、他の研究では、古典的なERの小集団は、細胞膜に関連しており、かつエストロゲンの急速な効果の原因であることが示唆されている。
【0022】
核内受容体自体の転写活性が、複数のシグナル伝達経路による緻密な調節のための標的である。これらの経路としては、神経伝達物質ドーパミン([Power,1991];[Smith,1993])、上皮増殖因子(EGF)のような増殖因子、トランスホーミング成長因子−α(TGF−a)、およびインスリン様増殖因子I(IGF−I)([Ignar−Trowbridge,1996]、[Aronica,1993];[Bunone,1996])によって、ならびにプロテインキナーゼCのアクチベーター([Aronica,1994])によって刺激される経路が挙げられる。このような交差カップリングの分子機構は、少なくとも一部は、受容体リン酸化によって媒介されると考えられる。ERは、EGFに対する応答においてMAPキナーゼによってリン酸化され、それによってAF1の刺激が生じることが実証されている([Kato,1996(非特許文献21)];[Bunone,1996])。他の研究によって、ER([Auricchio,1987];[Arnold,1995];[Pietras,1995])、甲状腺ホルモン受容体(TRβ)([Lin,1992])、RARγ([Rochette−Egly,1992])、糖質コルチコイド受容体([Rao,1987])、およびオーファン受容体HNF−4([Ktistaki,1995])がまた、チロシンリン酸化の標的であることが実証された。特定のチロシンリン酸化部位は、ヒトER(hER)のAF2ドメイン内の、アミノ酸537で(Y537)同定された([Castoria,1993];[Arnold,1995])。このチロシンは、AF2配列のすぐN末端に位置しており、かつERβを含む、多様な種由来の全ての公知のER配列において保存されている([Kuiper,1996];[Mosselman,1996])。
【0023】
E2の非ゲノム活性およびゲノム活性の分子機構は、十分解明されていないが、本発明によって、我々は、組織および遺伝子の選択性の活性を用いた新世代の治療法を創出することができるはずである。
【0024】
いくつかのERリガンドの組織選択性作用をさらに理解するために、本発明者らは、異なる細胞株においてER相互作用蛋白の発現および活性を評価した。アフィニティー精製および質量分析(ミクロシーケンシングに基づく)を用いて、本発明者らは、MNAR(核内受容体の非ゲノム活性モジュレーター)と命名された新規なER相互作用蛋白を開発した。
【非特許文献1】D.J.Mangelsdorfら、Cell 83:835〜9,1995
【非特許文献2】Cell,83:851〜857,1995
【非特許文献3】S.M.Thomas,J.S.Brugge,Annual Review of Cell & Developmental Biology 13,513〜609,1997
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
本発明は、新規な蛋白である、核内受容体の非ゲノム活性モジュレーター(MNAR)、およびこの蛋白をコードする核酸を提供する。MNAR蛋白は、エストロゲン受容体のような核ホルモン受容体と相互作用し得る。概して、MNARの蛋白またはポリペプチドとは、MNARのアミノ酸配列をいう。特に好ましい実施形態において、MNAR蛋白は、ERα、およびERβと相互作用する。この相互作用はリガンド依存性である。MNARはまた、ERおよびキナーゼ(例えば、Srcファミリーのメンバー)と複合体を形成する。SrcおよびMAPキナーゼ活性は、ER転写活性の増強をもたらす。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明は、(a)配列番号2の推定アミノ酸配列を有する、MNARをコードするポリヌクレオチドを含む新規な核酸を提供する(図12を参照のこと)。ヒトMNARのヌクレオチド配列は、配列番号1に示される(図15を参照のこと)。ヒトMNARのアミノ酸配列は、配列番号13に示される(図16を参照のこと)。マウスMNARのヌクレオチド配列は、配列番号12に示される(図17を参照のこと)。マウスMNARのアミノ酸配列は、配列番号13に示される(図18を参照のこと)。
【0027】
本発明は、新規な単離された核酸であって、以下:
(a)配列番号2のアミノ酸配列、または配列番号13のアミノ酸配列を含む、新規な蛋白である、核内受容体の非ゲノム活性モジュレーター(MNAR)をコードする、ポリヌクレオチド;
(b)高度にストリンジェントな条件下で、以下:(i)配列番号1のヌクレオチド配列、もしくは配列番号12のヌクレオチド配列のある領域と、(ii)配列番号1のヌクレオチド配列、もしくは配列番号12のヌクレオチド配列の少なくとも100ヌクレオチドの配列と、(iii)または、(i)もしくは(ii)の相補鎖と、ハイブリダイズするポリヌクレオチド;
(c)配列番号1の配列、または配列番号12の配列をコードするポリヌクレオチドに対して少なくとも85%同一性を有する配列を含むポリヌクレオチド;
(d)配列番号1の配列、または配列番号12の配列をコードするポリヌクレオチドを含む、ポリヌクレオチドの変種;ならびに
(e)配列番号20または23のアミノ酸を含むポリヌクレオチドフラグメントをコードするポリヌクレオチド;
(f)(a)、(b)、(c)、(d)、または(e)のポリヌクレオチドの相補型またはアンチセンス型;
からなる群より選択されるポリヌクレオチドであって、ここでこのポリヌクレオチドは、p160蛋白(図1)をコードしない、ポリヌクレオチド、
を含む、新規な単離された核酸配列を提供する。好ましい実施形態において、この単離された核酸は、このポリヌクレオチドの対立遺伝子変種を含む。
【0028】
特定の実施形態において、この核酸は、発現制御配列(例えば、異種制御配列、または同種制御配列)に作動可能に連結される。本発明は、このような単離された核酸を用いて形質転換された宿主細胞(細菌、酵母、昆虫細胞、および哺乳動物細胞を含む)を提供する。
【0029】
本発明はまた、ポリペプチドであって、以下:
(a)配列番号2のアミノ酸配列、または配列番号13のアミノ酸配列を含む、蛋白である、核内受容体の非ゲノム活性モジュレーター(MNAR)のアミノ酸配列;
(b)配列番号14、15、または16のアミノ酸配列を含む、MNARフラグメントのアミノ酸配列;
(c)(a)または(b)の変種、および
(d)(a)、(b)、または(c)のフラグメント、
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチド、に関する。
別の実施形態において、これらのポリペプチドは、配列番号13または14のアミノ酸配列に90%、または95%より多く同一である、アミノ酸配列を含む。特定の実施形態において、本発明のポリペプチドは、配列番号2、13、14、15、16、20、または22のアミノ酸配列を含む。さらなる実施形態において、本発明のポリペプチドは、1つ以上の核内受容体の存在下において、チロシンキナーゼの活性を刺激し得る。この核内受容体は、ステロイド核内受容体、および非ステロイド核内受容体、ならびにオーファン核内受容体から選択され得る。特定の実施形態において、この核内受容体は、エストロゲン受容体である。
【0030】
別の実施形態は、MNARポリペプチドに対応するモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体、ならびにそれらのフラグメントを含む。
【0031】
核内受容体のMNARによる調節の観点において、本発明の多くの実施形態は、核内受容体の転写活性を調節する工程に関する。この工程は、核内受容体の遺伝子座に対してMNARポリペプチドを提供することを含む。例えば、(a)請求項1に記載のMNARの核酸配列を有する組み換えベクターを用いて宿主細胞を形質転換する工程;および(b);この核酸を発現するように形質転換されたこの宿主細胞を、核内受容体の存在下で培養する工程によって、核内受容体の転写活性を調節することができる。
【0032】
本発明はまた、核内受容体の非ゲノム活性またはゲノム活性に影響する化合物を同定するための多くのアプローチを示す。1つの実施形態において、ゲノム活性に対して、非ゲノム活性を示す化合物を同定する方法は、MNAR−核内受容体複合体を含む細胞に対して試験化合物を投与する工程、およびこの試験化合物から生じる非ゲノム活性またはゲノム活性を測定する工程、を含む。これらの方法において、好ましくは、核内受容体の少なくとも1つのリガンドが細胞中に存在するか、またはキナーゼが存在するか、または両方ともが存在する。他の方法は、核内受容体上でMNARの活性を調節する化合物についてのスクリーニングに関する。これは、以下の工程:(a)試験化合物と、MNARポリペプチドとを接触させる工程;および(b)この試験化合物が、このポリペプチドに特異的に結合するか否かを決定する工程、を含む。さらに、核内受容体上でMNARの活性を調節する化合物についてスクリーニングする方法であって、この方法は、以下の工程(a)このポリペプチドおよび核内受容体を含む細胞に、試験化合物を添加する工程;ならびに(b)この添加工程の前後でMNAR活性を比較する工程、を含む方法を実施することができる。この方法に対するさらなるアプローチは、MNAR活性を欠くか、または有意に低下したMNAR活性を有する変異細胞を含むコントロールに対して、試験化合物を投与することを含む。これらの方法のいずれかにおいて、当業者は、コントロールを用いて、ある化合物の非ゲノム活性(またはゲノム活性)を評価し得る。この評価は、MNARおよび核内受容体の存在下で、ある細胞に対してある化合物を投与する工程、次いでMNARの非存在下でこの実験を繰り返す工程、ならびに非ゲノム活性のレベルを比較する工程による。好ましい方法は、MNAR、核内受容体、またはその両方を過剰発現する細胞を使用する。ある化合物のゲノム活性は、レポーターと作動可能に結合した核レポーターを有することによって検出される。
【0033】
本発明の特定の実施形態はまた、非ゲノム活性に対して、選択的ゲノム活性を有する化合物を同定する方法に関しており、この方法は、以下の工程:(a)MNAR−核内受容体複合体を含む細胞に対して試験化合物を添加する工程、および(b)この試験化合物のこの添加の前後に非ゲノム活性に対してゲノム活性を比較する工程、を含む。選択的ゲノム活性は、従来の手段によって測定され得る。好ましくは、測定される非ゲノム活性の増大または正の影響は、MNARの非存在下において試験化合物を用いたゲノム活性と比べて(ここで、この試験化合物の添加後に非ゲノム活性の変化は観察されない)、MNAR核レポーターの存在下において、細胞に対するこの試験化合物の添加後に、2倍増大する。一方では、非ゲノム活性について試験化合物を選択する場合、MNARの非存在下において試験化合物を用いた非ゲノム活性と比べて(ここで、この試験化合物の添加後にゲノム活性の変化は観察されない)、MNAR核内受容体複合体の存在下において、細胞に対するこの試験化合物の添加後に、少なくとも約2倍増大しなければならない。MNARの存在下で核内受容体の転写活性が増大するか低下するかを決定することによって、この効果を測定することができる。
【0034】
種々の細胞(健常、または疾患細胞)において、細胞にとって有益な状態または健常な状態が、非ゲノム活性またはゲノム活性に起因するか否かを理解することが有用であり得る。本発明は、MNARの存在下および非存在下において、細胞の所望の表現型を比較することによって、このような決定を可能にする。
【0035】
本発明はまた、ヒト以外のトランスジェニック動物に関する。ここで1つ以上の細胞が、少なくとも1つの非機能性の内因性MNARポリヌクレオチド配列、少なくとも1つの非機能性内因性核内受容体、またはその両方を含む。好ましい実施形態において、このヒト以外のトランスジェニック哺乳動物は、ERα、およびERβの機能的な内因性形態を有さない。あるいは、トランスジェニック動物は、内因性MNARプロモーターの誘導性/抑制性プロモーターでの置換を含む。請求の範囲のヒト以外のトランスジェニック哺乳動物は、この哺乳動物の少なくとも1つの細胞型において活性なプロモーターの制御下で、内因性選択マーカー遺伝子をさらに含んでもよい。
【0036】
本発明はまた、MNARの機能を破壊する化合物についてスクリーニングする方法に関する。この方法は、MNARと相互作用する化合物を同定するための蛋白間相互作用アッセイを用いることを含む。一旦、任意の周知のツーハイブリッドアッセイまたは他の従来のアッセイを使用すれば、蛋白間相互作用、および試験化合物(これは、天然の産物の単離物、低分子化合物、ペプチドなどであり得る)によるその破壊を研究することができる。
【0037】
MNAR蛋白およびMNARコード核酸は、哺乳動物の細胞および組織(例えば、ヒトおよびマウスの細胞および組織)から入手できる。組み換えMNAR、および抗MNAR抗体は、薬物スクリーニング、診断、および治療法における用途を見出す。詳細には、Srcファミリーのチロシンキナーゼ(遺伝子発現を調節するのに関与する)の酵素活性をアゴナイズまたはアンタゴナイズするERリガンドについて化合物をスクリーニングするための特定の生化学的アッセイを開発するのにおいて、MNARは、有用な試薬を提供する。さらに、種々の核内受容体リガンドについて化合物をスクリーニングするための特定の生化学的アッセイを開発するのにおいて、MNARは有用な試薬を提供する。従って、核内受容体(例えば、ER)、および/またはキナーゼに関与する任意の経路において効果を分析することができる。例えば、以下:(I)癌細胞における細胞周期刺激;(II)骨の発達または調節のための細胞増殖、細胞分化、および細胞保護;(III)神経細胞におけるERリガンド/試験化合物の神経保護活性;ならびに(IV)内皮細胞の肺の指標、に対するERリガンドまたは試験化合物の影響を決定するために、MNARを用いてアッセイを構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
(特定の実施形態の詳細な説明)
(定義)
所定のMNAR蛋白または、所定のMNARに対して「実質的な機能的同一性」を有する蛋白の機能的類似体を、このようなMNARに特異的な1つ以上の生化学的特性を示す蛋白として規定する。
【0039】
「核酸分子」とは、一本鎖分子または二本鎖分子を意味し、そしてこれには、RNA分子、DNA分子、およびRNAまたはDNA分子の類似体が挙げられる。
【0040】
「転写調節」とは、転写の改変を意味し、そしてこれには、以下:転写開始の速度、転写のレベル、または調節性制御に対する転写/転写開始の反応性、の変化が挙げられる。
【0041】
「細胞の新生物状態」とは、細胞(良性であっても悪性であってもよい)の任意の新しい増殖を意味する。
【0042】
「実質的に純粋」、または「単離された」という用語は、MNAR蛋白、MNAR蛋白フラグメント、またはMNARもしくはMNARフラグメントをコードする核酸が、それが正常には、その天然の状態で伴っている、少なくともいくつかの物質を伴わないことを意味する。実質的に純粋なMNARの組成物、またはその一部は、診断、治療、および研究用の試薬において有用な、賦形剤および添加物を含んでもよい。
【0043】
「改変された発現状態」とは、天然に存在する状態のMNARの発現が、天然に存在する状態と比較して、MNAR発現を増大または減少するように改変されていることを意味する。
【0044】
「実質的な配列同一性」とは、蛋白または核酸の一部が、MNAR配列部分と、少なくとも約70%、より好ましくは少なくとも約80%、そして最も好ましくは少なくとも約90%、95%、または99%の配列同一性を示すことを意味する。この配列が本明細書に開示されるネイティブなMNAR配列とは異なる場合、その相違は好ましくは保存的、すなわち、酸性アミノ酸の酸性アミノ酸置換であるか、または冗長性コドンを提供するヌクレオチド変化である。異なる配列は、重合体にわたって均一に分布されるのではなく、領域内で局所的に集合される。実質的に同一な配列は、比較的高いストリンジェンシーのもとで、相補的なMNARコード配列に対してハイブリダイズする。高ストリンジェンシーなサザンハイブリダイゼーション条件を規定する目的で、Sambrookら(1989)第387〜389頁(参考として本明細書に援用される)が都合よく参照され得る。ここで、第11頁における洗浄工程が、高ストリンジェンシーであると考えられる。
【0045】
「融合蛋白またはポリペプチド」とは、第二のアミノ酸配列に融合した少なくとも第一のアミノ酸配列を含む、蛋白またはポリペプチドであって、ここでこのような融合は天然に存在する蛋白またはポリペプチドには生じない、蛋白またはポリペプチドを意味する。好ましくは、この融合蛋白またはポリペプチドにおける少なくとも1つのアミノ酸配列は、MNARのアミノ酸配列である。
【0046】
「変異体または変異」とは、遺伝物質(例えば、DNA)における任意の検出可能な変化、またはこのような変化の任意のプロセス、機構もしくは結果を意味する。これには、遺伝子変異(遺伝子の構造(例えば、DNA配列)が改変されている)、任意の変異プロセスから生じる任意の遺伝子またはDNA、および改変された遺伝子またはDNA配列によって発現される任意の発現産物(例えば、蛋白、ポリペプチド、または酵素)が挙げられる。
【0047】
「変種」は、改変されたかまたは改変された遺伝子、DNA配列、蛋白、ポリペプチド、酵素、細胞など(すなわち、任意の種類の変異体)を示すために用いられる。天然に存在する蛋白またはポリペプチドの変種は、例えば、天然に存在する蛋白またはポリペプチドにおける、1つ以上のアミノ酸の置換、欠失、改変、および/または挿入を含む。
【0048】
「組み換え体」とは、任意の遺伝物質であって、その遺伝物質(例えば、DNA配列)に、もともと生物学的にも天然にも存在しないある配列(例えば、全長または部分的DNA配列)のその配列または鎖への挿入から、生物学的もしくは化学的に生じる遺伝物質(例えば、DNA配列)、を意味する。
【0049】
「蛋白またはポリペプチドフラグメント」とは、より大きい蛋白またはポリペプチドのうちのより小さい任意の部分であって、ここでこのフラグメントは好ましくは、少なくとも約8アミノ酸、そしてより好ましくは25、50、100、または200アミノ酸を有する部分、を意味する。
【0050】
受容体の非ゲノム活性とは、「細胞に対して有益」であり、ここでこの細胞は、この細胞に対する増大した量のMNARの導入の際、所望の活性または表現型の存在を示す。
【0051】
受容体の非ゲノム活性とは、「細胞に対して有益でない」であり、ここでこの細胞は、この細胞に対する増大した量のMNARの導入の際、所望の活性または表現型の非存在を示す。
【0052】
(MNARの特徴づけ)
MNARの配列解析によって、MNARの分子のN末端部分に局在する複数のLXXLLモチーフが明らかになった。他の転写因子における同様のモチーフは、核内受容体のリガンド結合ドメインの表面上の疎水性グルーブとの接触を形成することが以前に示された((Heeryら、1987)、(Torchiaら、1997))。MNAR分子の別の重要な特徴は、プロリンリッチドメインである。このドメインは、SrcファミリーのプロテインキナーゼのSH3ドメインとの相互作用のために利用され得る。初めに、本発明者らは、MNARが、核内受容体とSrcキナーゼとの相互作用を増強し得ると仮定した。本発明者らのデータによって、エストロゲン受容体α、およびβが、MNARと相互作用すること、およびこの相互作用は、17βエストラジオールによって増強されるが、4(OH)タモキシフェンでは増強されないことが示される。興味深いことに、MNAR−ER複合体は、インビトロおよびインビボの両方で、Srcキナーゼの酵素活性と強力に相互作用し、かつこれを刺激する。重要なことに、MNARの過剰発現は、ER転写活性の増強をもたらす。本発明者らは、ERのこの活性が、Srcの下流のキナーゼの1つによる、ERのリン酸化に起因すると予想する。従って、本発明者らは、MNARが、ERとSrcキナーゼとの相互作用を調節し、かつそれによってERの非ゲノム活性を媒介すると提起する。
【0053】
本発明者らのデータによって、ERリガンドについて、本発明者らがアッセイすることを可能にする、ERリガンドのゲノム活性と非ゲノム活性との間を区別し得る実験モデルの開発が支持される。ERの転写活性に影響しないが、Src酵素活性を刺激するリガンドは、重要な骨節約、CNS防御的、かつ心保護的な活性を保有し得る。一方では、ERの転写活性を選択的に制御する化合物は、かなりの選択性作用を有し、それによって多数の副作用を回避する。全体として、本発明者らが核内受容体リガンド、特にERリガンドのゲノム活性および非ゲノム活性を分離する能力によって、本発明者らは、大いに集中した選択性の作用を用いて新世代の治療方法を創出することができるかもしれない。
【0054】
本発明者らのデータによってまた、核内受容体リガンドのゲノム活性と非ゲノム活性との間を区別し得る核内受容体リガンドについて、本発明者らがアッセイすることを可能にする実験モデルの開発が支持される。種々の核内受容体の転写活性に影響しないが、Src酵素活性、または他の非ゲノム酵素活性を刺激するリガンドは、重要な治療的特性、または活性を保有する。一方では、核内受容体の転写活性を選択的に制御する化合物は、かなりの選択性作用を有し、それによって多数の副作用を回避する。全体として、本発明者らが核内受容体リガンドのゲノム活性および非ゲノム活性を分離する能力によって、本発明者らは、大いに集中した選択性の作用を用いて新世代の治療方法を創出することができるかもしれない。
【0055】
(MNARをコードする核酸配列、および対応するMNAR蛋白)
生物学的に活性なMNAR,またはそのMNARフラグメントは、MNARの機能(例えば、ERとの複合体を特異的に形成する能力、またはERの転写活性を調節もしくは強化する能力)のうち1つ以上を保持する。生物学的活性についての例示的なアッセイを、以下、および実施例に記載している。特異的な結合は、MNAR(例えば)を、成分の混合物と接触させること、およびMNARに優先的に結合する成分を同定することによって、経験的に決定される。特異的な結合は、多数の方法(酵母および哺乳動物のハイブリッドシステム、ならびに競合的結合研究が挙げられるがこれらに限定されない)によって都合よく示され得る。例えば、ERまたはMNARについての、可能性のある活性化補助因子、受容体、および/またはリガンドを同定するために、酵母ツーハイブリッドアッセイを用いて、ヒトcDNAライブラリーをスクリーニングした。
【0056】
キナーゼとMNAR−ER複合体との間の相互作用の分析に加えて、MNARを同様のストラテジーで用いて、ERリガンドと、他の公知の転写因子を有するER(他の核内受容体を含む)との間の相互作用を評価し、かつ新規な相互作用する蛋白を同定し得る。例えば、MNAR−ERの相互作用は、17β−エストラジオールによって増強され得るので、試験因子(化合物であっても、蛋白であっても、ペプチドであってもよい)の効果を評価することができる。さらに、Srcの有無において、MNARとERとの間の直接の相互作用を実証するために、酵母ツーハイブリッドシステム、哺乳動物ツーハイブリッドシステム、表面プラズモン共鳴アッセイ、免疫沈降アッセイ、または他のアッセイを用いてもよい。同様に、MNAR−ER複合体、またはMNAR−ER−Src複合体と相互作用する公知の蛋白および新規の蛋白について広範にスクリーニングするために、これらのアッセイシステムを用いることができた。
【0057】
本発明は、組み換え産生されたMNAR蛋白、MNAR類似体、およびそれらのフラグメントを提供する。これらの組み換え産物は、本明細書に開示されるか、または引用された、さもなければ当業者に公知である、物理的技術、化学的技術、および分子技術によって容易に改変される。本発明の特定の実施形態に従って、MNARコード配列のフラグメントは、異種配列と接合されて融合蛋白を生成する。このような融合蛋白は、インビトロおよびインビボでER活性を調節するのにおいて特に有用である。
【0058】
MNARはさらに、当該分野で公知の方法によって改変され得る。例えば、MNARは、リン酸化されても、脱リン酸化されても、グリコシル化されても、脱グリコシル化されても、放射性標識があっても、放射性標識がなくても、その他でもよい。セリン残基、トレオニン残基、およびチロシン残基は特に、有用なリン酸化部分を提供し得る。特に有用なのは、MNARの溶解性、膜輸送能力、安定性、ならびに結合特性および親和性を変更する改変である。いくつかの例としては、脂肪酸アシル化、蛋白分解、および結合を安定化する、核内受容体転写因子相互作用ドメインにおける変異が挙げられる。特に、LXXLLモチーフのうちの1つのプロリンリッチ領域を改変してもよい。
【0059】
実質的に純粋もしくは単離された、MNAR蛋白、またはMNAR部分(核酸によってコードされる)は、一般に、このMNARコード核酸に対して少なくとも約1%;好ましくは少なくとも約10%;より好ましくは少なくとも約50%;そして最も好ましくは少なくとも90%相同性である。核酸重量のパーセンテージは、MNARまたはMNAR部分をコードする核酸(選択的スプライシング型または部分的転写型のような、別の型および類似体を含む)の重量を、存在する総核酸重量で割ることによって決定される。
【0060】
本発明はまた、以下を提供する:転位、転換、欠失、挿入、または他の改変(例えば、選択的スプライシング、およびこのような別の型)によって改変されたMNAR配列、ゲノムMNAR配列、MNAR遺伝子隣接配列(MNAR調節配列、および他の非転写MNAR配列を含む)、MNARのmRNA配列、ならびにMNARコード配列に相補的なRNAおよびDNAのアンチセンス配列、異種MNARをコードする配列、および合成ヌクレオチドを含むMNAR配列。ここで、例えば、リン酸基の酸素は、イオウ、メチルなどで置換されてもよい。
【0061】
改変されたMNARコード配列、または関連の配列は、MNAR様の機能を有する蛋白をコードする。一般に、その少なくとも一部と、MNARの一部との間には、特に保存的置換、特にプロリンリッチ領域、およびLXXLLモチーフ内において、ならびに蛋白間相互作用、特にMNAE−ERもしくはMNAR−ER−キナーゼ相互作用、特にMNAR−核内受容体、もしくはMNAR−核内受容体−キナーゼ相互作用に関与する蛋白ドメインをコードする領域内において、好ましくは少なくとも約40%、より好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%、95%、もしくは99%の実質的な配列同一性が存在する。
【0062】
MNARは、本明細書において記載されるか、さもなければ当該分野で公知の方法によって、別の精製、生合成、改変、または用途に供されてもよい。例えば、そのアミノ酸は、多数の方法(安定性、溶解度、結合親和性、特異性、およびメチル化を改変する工程が挙げられるがこれらに限定されない)で改変されてもよい。本発明のアミノ酸配列はまた、検出可能なシグナルを提供し得る標識を用いて、直接または間接的に、改変されてもよい。例示的な標識としては、放射性同位体、蛍光剤、およびビオチン化が挙げられるがこれらに限定されない。
【0063】
MNARの少なくとも一部をコードする核酸を用いて、そのMNARと相互作用する核因子および核薬剤を同定する。この同定には、Current Protocols in Molecular Biologyにおいて記載されたとおり、酵母または哺乳動物の細胞における発現スクリーニングを用いる(「Protein Expression」第16章(2002)を参照のこと)。MNARと相互作用するこれらの核因子および核薬剤を同定する方法の1つは、哺乳動物、または酵母のツーハイブリッドアッセイまたはスリーハイブリッドアッセイを利用することである。(例えば、以下を参照のこと:Fields S.ら(1994)Trends Genet.10:286〜292;Young Pら(1992)Current Biology 3:408〜420;Zervosら(1993)Cell 72:223〜232;Maduraら(1993)J.Biol.Chem.268:12046〜12054;Bartelら(1993)Biotechniques 14:920〜924;およびIwabuchiら(1993)Oncogene 8:1693〜1696)。本明細書において例証されたように、転写因子(例えば、Gal4)の活性化ドメインをコードするDNAと連結された、融合遺伝子のcDNAを含有する酵母cDNAライブラリーを、MNARの一部、および転写因子のDNA結合ドメインをコードする融合遺伝子を用いてトランスフェクトした。MNAR結合蛋白をコードするクローンは、転写因子の相補性を提供して、レポーター遺伝子の転写を通じて同定される。例えば、FieldsおよびSong(1989)Nature 340,245〜246、およびChienら(1991)Proc.Natl.Acad.Sci USA 88,9578〜9582を参照のこと。
【0064】
本発明はまた、MNAR、またはその一部、またはその類似体をコードし、かつ必要に応じてERおよび/またはキナーゼをコードする核酸を含むベクターを提供する。多数のベクター(これとしては、プラスミドおよびウイルスベクターが挙げられる)が、種々の真核生物宿主、および原核生物宿主における発現について記載されている。ベクターは、しばしば、クローニングまたは発現のための1つ以上の複製システム、宿主での選択のための1つ以上のマーカー(例えば、抗生物質耐性マーカー)、および1つ以上の発現カセットを備える。挿入されたMNARコード配列は、合成されてもよいし、天然の供給源から単離されてもよいし、ハイブリッドとして調製されてもよいし、それ以外でもよい。転写調節配列に対する、このコード配列の連結は、公知の方法によって達成され得る。有利には、ベクターは、MNARコード部分に対して作動可能に連結されたプロモーターを備え得る。
【0065】
適切な宿主細胞を、任意の適切な方法(エレクトロポレーション、CaCl2媒介性DNA取り込み、ウイルス感染、マイクロインジェクション、マイクロプロジェクタイル、または他の確立された方法を含む)によって、形質転換/トランスフェクト/感染させてもよい。あるいは、1つ以上のMNARをコードする核酸は、組み換え事象によって細胞に導入されてもよい。例えば、ある配列を、細胞中にマイクロインジェクションして、それによって、MNARをコードする内因性遺伝子、その類似体もしくは偽遺伝子、またはMNARコード遺伝子に対して実質的な同一性を有する配列の部位での相同組み換えを達成し得る。非相同組み換え、相同組み換えによる内因性遺伝子の欠失(特に多能性細胞などにおける)のような、他の組み換えベースの方法によってさらなる適用が提供される。
【0066】
適切な宿主細胞としては、細菌、古細菌、真菌、特に酵母、ならびに植物および動物の細胞、特に哺乳動物細胞が挙げられる。特に興味があるのは、E.coli、B.Subtilis、Saccharomyces cerevisiae、A549細胞、CHO細胞、COS細胞、HeLa細胞、Hep2細胞、ならびに骨細胞、および不死化された哺乳動物骨髄性細胞株およびリンパ細胞株である。好ましい宿主細胞株としては、MCF−7細胞、およびT47D細胞のようなヒト癌細胞株が挙げられるがこれらに限定されない。理想的には、このような発現系は、市販されているTET オン/オフシステムのような誘導性の発現ストラテジーを利用する。このような細胞株は、非ゲノムER活性におけるMNARの役割を規定するために、そしてMNAR−ER相互作用を調節する潜在的な化合物の効果を評価するために有用である。多数の転写開始のエレメント/領域、および終止調節のエレメント/領域が単離されており、そして種々の宿主における異種蛋白の転写および翻訳に有効であることが示されている。これらの領域、単離の方法、操作の様式などの例は、当該分野で公知である。適切な発現制御配列、および宿主細胞/クローニングビヒクルの組み合わせは周知であり、かつSambrookら(1989)に記載されている。
【0067】
オリゴヌクレオチドをコードするMNARはまた、他のMNAR,または転写因子の活性化補助因子を同定するために用いられ得る。例えば、32P−標識されたMNARコード核酸を用いて、MNAR関連ドメインを有する蛋白をコードする類似のcDNAを同定するために、低ストリンジェンシーにおいてcDNAライブラリーをスクリーニングする。さらに、本明細書に開示された配列を用いる縮重オリゴヌクレオチドプローブによるPCR増幅によって、MNAR関連蛋白を単離する。MNARをクローニングするための他の実験方法もまた、以下の実施例に記載されている。本明細書に開示される本発明を実施するための他の有用なクローニング、発現、および遺伝子操作技術は、当業者に公知である。
【0068】
本明細書に開示される組成物および方法は、遺伝子治療を達成するために用いられてもよい。例えば、Gutierrezら(1992)Lancet.339,715〜721を参照のこと。例えば、MNARの発現または調節の改変を達成し得る遺伝子調節配列に対して作動可能に連結されたMNAR配列を用いて、細胞をトランスフェクトする。MNAR翻訳を調節するために、MNAR相補性アンチセンスポリヌクレオチドを用いて細胞をトランスフェクトしてもよい。
【0069】
アンチセンス調節は、遺伝子調節配列に作動可能に連結されたMNARアンチセンス配列を使用し得る。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、例えば、8、10、15、20、25、30、35、40、45、または50の長さのヌクレオチド配列であり得る。アンチセンス核酸は、化学合成、および酵素連結反応(当該分野で公知の手順を用いる)を用いて構築され得る。例えば、アンチセンス核酸(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド)は、天然に存在するヌクレオチド、または種々の改変されたヌクレオチド(この分子の生物学的活性を増大するように、またはアンチセンスとセンスの核酸との間で形成された二重鎖の物理的安定性を増大するように設計された)を用いて化学的に合成されてもよい。例えば、ホスホロチオエート誘導体、およびアクリジン置換ヌクレオチドが用いられ得る。あるいは、アンチセンス核酸は、発現ベクターを用いて生物学的に生成されてもよい。この発現ベクターには、核酸がアンチセンス方向でサブクローニングされている(すなわち、挿入された核酸から転写されたRNAは、目的の標的核酸に対してアンチセンス方向のRNAである)。本発明においては、その遺伝子の転写がMNARコードmRNAに結合し得るアンチセンス転写物を生じるように配向されたプロモーター配列とともにMNAR配列を含むベクターを用いて、細胞がトランスフェクトされる。転写は、構成的であっても誘導性であってもよく、そしてベクターは、安定な染色体外の維持または組み込みをもたらし得る。あるいは、MNARの少なくとも一部をコードするゲノムDNAまたはmRNAに結合する一本鎖アンチセンス核酸配列は、MNAR発現の実質的な減少を生じる濃度で標的細胞に投与され得る。
【0070】
(核内受容体の非ゲノム活性モジュレーター、および治療因子を同定するためのアッセイ)
本発明は、核内受容体(例えば、ER)のゲノム活性または非ゲノム活性を調節するのに有用な因子を同定するための方法および組成物を提供する。このような因子は、広範な疾患(癌、心血管疾患、微生物および真菌の感染、ならびに特に免疫疾患、骨保護、などが挙げられるがこれらに限定されない)の診断または処置において有用である。ヒト細胞において、核内受容体(例えば、ER)のゲノム活性に対する、核内受容体(例えば、ER)の非ゲノム活性を通じて作用する化合物をスクリーニングするための迅速かつ簡便なハイスループット生化学アッセイを開発する能力によって、薬物開発の新しい道筋が開かれる。さらに、本発明は、細胞内の疾患状態、または細胞の有益な細胞状態が、核内受容体(例えば、ER)のゲノム活性/経路によって達成されるか、非ゲノム活性/経路によって達成されるかを決定するためのツールを提供する。すなわち、核内受容体(例えば、ER)の非ゲノム活性、または核内受容体(例えば、ER)のゲノム活性が低下/増強されるとき、癌細胞が増殖するか否かを決定することができる。一般に、本発明は、核内受容体(例えば、ER)のゲノム/非ゲノム活性を必要とするとして、多くの細胞型を分類する工程を提供する。
【0071】
本明細書において参考として援用される、Young、およびOzenberger(米国特許第5,989,808号)によって開示されるように、通常のアッセイは、酵母ツーハイブリッドアッセイを含む。ツーハイブリッドアッセイは、本発明の低分子化合物、またはペプチド、または蛋白についてスクリーニングするために用いられてもよい。
【0072】
代表的には、見込みのある因子を、合成化合物または天然化合物の大きいライブラリーからスクリーニングする。例えば、糖類、ペプチド、および核酸ベースの化合物のランダムな合成および定方向の合成には多くの手段が利用可能である(例えば、Lamら(1991)Nature 354、82〜86を参照のこと)。あるいは、ライブラリーおよび化合物は、従来の化学的、物理的、および生化学的手段によって容易に改変される。このような改変の例は、本明細書に開示される。
【0073】
MNARまたはMNARコード核酸を使用する広範なアッセイを用いて、有用な因子を同定する。このアッセイはまた、核内受容体、ステロイド受容体、オーファン受容体、ER、ERE(エストロゲン応答エレメント)、ERリガンド、キナーゼ、およびこのようなキナーゼのインヒビターから選択される1つ以上を使用してもよい。例えば、蛋白結合アッセイ、核酸結合アッセイ、およびゲルシフトアッセイは有用なアプローチである。例示的なアッセイは、固定されたMNARに結合している標識された核内受容体(例えば、ER)、標識されたMNAR、または固定された核内受容体(例えば、ER)に結合しているMNARペプチドなどをアッセイする工程を含む。多くの適切なアッセイが、大量薬物スクリーニングに適切な、大規模化されたハイスループット用法を受け入れやすい。用いられる特定のアッセイは、MNAR相互作用の特定の性質によって決定される。アッセイは、単一のMNAR,MNARフラグメント、MNAR融合産物、部分的MNAR複合体、またはMNAR核酸を含む完全な基礎的な転写複合体を使用し得る。
【0074】
有用な因子は、代表的には、MNAR、MNAR−核内受容体複合体、またはMNAR−ER複合体に結合するかまたはそれらの会合を改変する因子である。好ましい因子としては、MNAR遺伝子の発現を調節し得る因子、特に核内受容体スーパーファミリーのメンバーによって転写された遺伝子が挙げられる。
【0075】
有用な因子は、多くの化学的クラス内で見出されるが、代表的にはそれらは、有機化合物(好ましくは低分子有機化合物)である。低分子有機化合物は、50を超えるが約2,500未満、好ましくは約750未満、より好ましくは約250未満の分子量を有する。例示的なクラスとしては、ペプチド、糖類、ステロイド、などが挙げられる。
【0076】
選択された因子は、効率性、安定性、薬学的適合性、などを増強するために改変されてもよい。因子の構造的特定は、さらなる因子を特定、生成、またはスクリーニングするために用いられ得る。例えば、ペプチド因子が同定される場合、それらのペプチドは、その安定性を増強するための種々の方法で、例えば、天然にないアミノ酸(例えば、Dアミノ酸、特にD−アラニン)を用いて、このアミノ末端またはカルボキシ末端を官能化すること(例えば、アミノ基についてはアシル化またはアルキル化、そしてカルボキシル基については、エステル化、またはアミド化)などによって、改変され得る。安定化の他の方法としては、例えば、リポソームなどにおけるカプセル化が挙げられ得る。
【0077】
因子は、当業者に公知の種々の方法で調製され得る。例えば、約60アミノ酸未満のペプチドは、従来の市販の自動シンセサイザーを用いて、今日では容易に合成され得る。あるいは、ペプチド(ならびに蛋白および核酸因子)は、公知の組み換え技術によって容易に産生される。
【0078】
これらのアッセイシステムはまた、潜在的な治療剤(ペプチドおよび化学的リガンドを含む)をスクリーニングするために用いられ得る。MNAR機能のこのような潜在的な治療剤、活性化因子、またはインヒビターは、MNARと、核内受容体(例えば、ER)、もしくはキナーゼ(「クラスI」)のいずれかとの間の相互作用を調節するか、またはMNAR、もしくは核内受容体(例えば、ER)、もしくはキナーゼ(「クラスII」)の活性を調節することによって作用し得る。ツーハイブリッドアッセイ、免疫沈降アッセイ、および表面プラズモン共鳴(SPR)アッセイを含むがこれらに限定されない相互作用アッセイが、(「クラスI」)治療剤を同定するために用いられ得る。例えば、化合物またはペプチドは、それらがMNARと核内受容体(例えば、ER)との間の相互作用を調節する能力について、SPRによってスクリーニングされ得る。哺乳動物トランスフェクションアッセイ(ここで核内受容体(例えば、ER)転写活性が観察される)を含むがこれに限定されない活性アッセイを用いて、「クラスII」の化合物を同定し得る。例えば、化合物は、それらが核内受容体(例えば、ER)活性の強化を調節する能力について、MNARによってスクリーニングされ得る。このような化合物は、MNARと核内受容体(例えば、ER)との相互作用を調節し得るか、またはそれらの化合物は、MNAR、もしくは核内受容体(例えば、ER)の公知の活性もしくは未知の活性(転写の活性またはキナーゼの酵素活性を評価するために用いられ得る、アッセイを含む)を調節し得る。
【0079】
治療用途のために、本明細書に開示される組成物および選択された因子は、その化合物の性質に依存する、任意の都合の良い方法で投与され得る。低分子量の因子については、経口投与が好ましく、そして腸溶性コーティング(その化合物が胃の環境に曝された後に保持しているとは予想されない)が必要とされ得る。一般に、投与された量は、慣用的な用量応答実験によって経験的に決定される。代表的には、量は、レシピエントの体重あたりで、約1〜1000μg/kgに及ぶ。大型の蛋白は好ましくは、非経口的に、好都合には生理学的に受容可能なキャリア(例えば、リン酸緩衝化生理食塩水、生理食塩水、脱イオン水など)中で投与される。代表的には、このような組成物は、血液、または滑液のような、保持されている生理学的液体に添加される。他の添加物としては、安定化剤、殺菌剤などが挙げられ得る。これらの添加物は、従来の量で存在する。
【0080】
MNARはまた、検出可能なシグナルを提供し得る標識を用いて直接または間接的に改変され得る。例示的な標識としては、放射性同位体、蛍光剤などが挙げられる。あるいは、MNARは、35S−メチオニンのような標識されたアミノ酸の存在下で発現され得る。このような標識されたMNARおよびその類似体は、例えば、MNARと相互作用する蛋白について、発現スクリーニングアッセイにおけるプローブとして、または例えば、薬物スクリーニングアッセイにおいてERに結合するMNAR、もしくは他のERと相互作用する蛋白、もしくは転写因子として有用である。
【0081】
他の核蛋白からMNARを識別し得る特定のポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体は、Harlow、およびLane、Antibodies,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,1988、本明細書に援用された他の参考文献に開示された方法および組成物、ならびに当該分野で公知の免疫学的技術およびハイブリドーマ技術を用いて、容易に作成される。詳細には、MNARおよびその類似体およびフラグメントはまた、マウスおよびウサギのような実験動物において抗MNAR抗体を惹起するのに、そして細胞融合または形質転換によるモノクローナル抗体の生成に有用である。
【0082】
抗MNAR抗体、およびそのフラグメント(Fabなど)は、転写複合体におけるMNARの役割を調節すること、MNAR発現ライブラリーをスクリーニングすること、などに有用である。さらに、これらの抗体は、MNARの構造的類似体を同定、単離、および精製するのに用いられ得る。抗MNAR抗体はまた、種々の細胞周期段階の間の感染、サイトカインによる誘導、プロテインキナーゼCおよびAのようなプロテインキナーゼ、などのような、種々の条件下におけるMNARの細胞下局在化のために有用である。他の例示的な適用としては、インビトロ転写抽出物を免疫枯渇するためにMNAR特異的抗体(モノクローナル抗体、またはMNAR由来ペプチド特異的抗体を含む)を用いる工程、ならびにMNAR(類似体を含む)、またはMNARと相互作用する他の核因子を精製するために免疫親和性クロマトグラフィーを用いる工程が挙げられる。
【0083】
組成物はまた、例えば、MNARまたはMNARコード核酸を改変することによる、疾患における治療行為のために提供される。オリゴペプチドは、純粋な形態で合成され得、そして診断および治療において多くの用途を見出し得る。これらのポリペプチドは、例えば、MNAR相互作用蛋白を用いてネイティブなMNAR相互作用を調節するために用いられ得る。このオリゴペプチドは一般に、6アミノ酸より大きく、かつ約60アミノ酸未満、より通常には約30アミノ酸未満であるが、大きいオリゴペプチドが使用されてもよい。MNARまたはその一部は、一般には約50%を超えて、通常は約90%を超えて純粋な精製型で用いられ得る。このような純度までこのようなペプチドを精製するための方法としては、本明細書で開示されるか、さもなければ当業者に公知の種々の形態のクロマトグラフィーによる分離、化学的分離、および電気泳動による分離が挙げられる。
【0084】
(トランスジェニック動物およびトランスジェニック細胞)
動物モデルは、例えば、コレステロールレベル、コレステロール吸収、および胆汁酸合成に対する影響について、化合物をスクリーニングするために有用なビヒクルとして役立つ。トランスジェニック動物(操作されたゲノムを有する動物と規定される)は、特定の適用において特に有用であることが証明されるかもしれない。本出願において、関心は、ER活性の調節または他の核内受容体、およびERの非ゲノム活性に影響するのにおけるMNARの役割に集中している。従って、本発明の実施形態は、MNAR活性を欠くトランスジェニックマウス、および核内受容体活性、ER活性、またはキナーゼ活性を欠くかもしれないトランスジェニック動物を含む。上記の1つ以上を欠いている動物は、MNAR、ER、キナーゼについての化合物またはリガンドの特異性を決定するために有用である。これらの動物は、このシグナル伝達経路の生物学を解明するのに有用なだけでなく、潜在的な治療組成物、および処置方法を検討するのにおけるツールとしても有用である。
【0085】
これらの理由によって、本発明のトランスジェニック非ヒト動物は、少なくとも1つの非機能性の内因性MNAR(および/またはER、および/またはキナーゼ)を有する。本発明のトランスジェニック非ヒト動物が、改変されたMNARおよびERの両方を有し得、これによって、機能的なMNAR−ER複合体を欠く細胞を提供することがさらに意図される。非機能性の特質は、MNAR調節領域において、遺伝子コード配列の中断、蛋白産物を短縮するナンセンス変異、遺伝子コード配列の欠失、または改変を含んでもよい。動物における発現のための異臭遺伝子を設計するのにおいて、遺伝子発現の効率を妨害する配列(例えば、コード配列、プロモーター、イントロン、ポリアデニル化シグナル、ポリメラーゼII終止配列、ヘアピン、コンセンサススプライス部位、など)が排除されてもよい。
【0086】
トランスジェニックのアプローチおよび技術における現在の進歩によって、遺伝子付加、遺伝子欠失、または遺伝子改変を介した、種々の動物ゲノムの操作が可能になった(Franzら、1997)。非ヒト動物における、ヒトのヘモグロビン(本明細書において参考として詳細に援用される、米国特許第5,602,306号)、およびフィブリノーゲン(本明細書において参考として詳細に援用される、米国特許第5,639,940号)のトランスジェニック合成がまた開示されている。その各々は、その全体が参考として本明細書において詳細に援用されている。トランスジェニックマウスモデルの構築は現在、アルツハイマー病のための可能性のある処置をアッセイするために用いられている(本明細書においてその全体が参考として詳細に援用される、米国特許第5,720,936号)。トランスジェニックのMNARノックアウトおよびERノックアウト動物モデルにおいて、MNAR、および/またはERに特異的なリガンドの効果を研究するためのモデルとして、トランスジェニック動物が価値のある情報をもたらすことが、本発明において意図される。
【0087】
(結論)
本発明は、蛋白である核内受容体の非ゲノム活性モジュレーター(MNAR)の分子クローニング、構造分析、および特徴づけに基づく。本発明は、ヒトMNARが、核ホルモン受容体と相互作用して、複合体を形成して、Src蛋白キナーゼの酵素活性に影響することを実証する。
【0088】
ERの細胞表面と、細胞内シグナル伝達経路との間のクロストークは、20年より昔に初めて実証された(Pietras,1975)(Pietras,1977)。それ以来、多数の報告が、血管構造、乳房、骨、子宮、およびニューロン組織において存在する急速なエストロゲン効果を確認したが、その効果は、エストロゲン受容体の「ゲノム」作用では説明できない。反応性細胞におけるエストロゲンの生物学的活性は、特定の高親和性受容体(排他的にその核に位置する)を通してだけでなく、エストロゲンと細胞表面受容体との相互作用を通じても媒介される。この受容体の性質が論議される。いくつかの証拠によって、固有の膜受容体の存在が支持される。他の証拠によって、細胞表面と核エストロゲン受容体との間の同一性、または強力な類似性が支持される(Pietras、およびSzego、1979)、(Bressionら、1986)、(Pappasら、1995)。
【0089】
ERαcDNAを用いてトランスフェクトされたCOS細胞による実験に基づく重要な証拠によって、古典的なエストロゲン受容体が、チロシンリン酸化反応/p21ras/MAPキナーゼ経路の活性化を導くプロセスにおいて、cSrcを活性化し得ることが明確に実証された(Migliaccioら、1996)。
【0090】
MCF7細胞においてER相互作用蛋白のスペクトルを評価して、本発明者らは、新規なER−相互作用蛋白であるMNARを発見した。本発明者らは、ERα、およびERβの両方が、MNARと相互作用して、この相互作用の親和性が、17βエストラジオールによって増強され、かつ4(OH)タモキシフェンによって減少されることを示した(図3)。
【0091】
MNARに相同な蛋白であるp160は、LckのSH2ドメインによるプルダウンアプローチを用いて最近単離された。本発明者らのデータによって、MNARは、MCF7細胞において発現されたこの蛋白の主な形態であることが示される(図2)。
【0092】
次に、本発明者らは、MNARが、Srcファミリーのキナーゼとのエストロゲン受容体の相互作用に影響するか否かを評価した。本発明者らのデータによって、ERαおよびERβの両方が、部分的に精製されたcSrcと相互作用して、この相互作用は、17βエストラジオールによって増強されないことが示される(図4A、およびB)。この結果は、以前に報告されたデータ(Migliaccioら、2000)、(Migliaccioら、1998)と矛盾しない。なぜなら、本発明者らは、インビトロで転写/翻訳されたERおよびMNARを用い、そしてまたcSrcを精製したからである。同時にMigliaccioら(Migliaccioら、2000)、(Migliaccioら、1998)は、MNARを含み得る細胞集出物からSrc相互作用蛋白、またはER相互作用蛋白をプルダウンすることによって彼らの実験を実施した。重要なことに、MNARの存在において、エストロゲン受容体は、リガンド依存性の様式でcSrcおよびLckと相互作用する(図4A、およびB)。本発明者らはまた、MNAR自体は、低い親和性でcSrcまたはLckに結合することを観察した。従って、本発明者らの結果によって、ERおよびMNARは、Srcファミリーキナーゼに対して相乗作用的に結合することが示唆される。基礎的な条件下で、Srcファミリーキナーゼの触媒性ドメインは、分子内相互作用によって不活性な状態に強制される。C末端リン酸化チロシンに対するSH2ドメインの結合は、この分子を阻害された高次構造にロックする([Matsuda,1990])。このリンカー領域のプロリンリッチドメインに対するSH3ドメインの結合はまた、キナーゼ不活性化に重要である([Superti−Furga,1993])。完全な触媒活性には、これらの制限の解除が必要である。Srcのキナーゼ活性は、ホスホチロシン含有配列に対するSH2ドメインの結合によって、およびプロリンリッチ配列に対するSH3ドメインの結合によって増強され得る([Hubbard,1998])。本発明者らは、次に、ER−MNAR結合がcSrc活性化をもたらすか否かを検討した。本発明者らの結果によって、MNARは、cSrc触媒性活性を強力に増強し、この活性は、ER−E2の付加によってさらに刺激され得ることが示唆される(図5)。ERαのホスホチロシン537は、ERとSrcのSH2ドメインとの相互作用に必須の残基として同定された(Migliaccioら、1998))。本発明者らは、ERが、MNAR分子のLXXLLモチーフと相互作用し、そしてERのホスホチロシン537が、SrcのSH2ドメインと相互作用することを提示する。同時に、MNARのプロリンリッチドメインは、おそらくSrcのSH3ドメインと相互作用する。この複合体の形成は、cSrc活性化を導く。
【0093】
EGFに応答するcSrcの活性化は、MAPキナーゼによるERリン酸化、およびER媒介転写の刺激を促進することが以前に示されている([Kato,1996];[Bunone,1996])。本発明者らの結果によって、おそらくcSrc媒介リン酸化カスケードの活性化を通じた、MNARの過剰発現が、ER転写活性を増強することが示される(図6A)。SrcインヒビターであるPP2およびゲニステインの存在におけるMNAR誘導性ER活性化の減弱(図6B)によって、MNARが、cSrc媒介リン酸化カスケードを介してERと相互作用するという見解が支持される。
【0094】
本発明者らの研究は、ERとSrcファミリーのチロシンキナーゼとの間のクロストークを調節し、これによってエストロゲンおよび可能性としては他のステロイドの非ゲノム活性を調節する新しいER相互作用蛋白を記載する。この非ゲノム活性は、重要な機構(これによってエストロゲンが細胞の成長および増殖を調節する)を示す。従ってMNARは、より選択性の作用を有する新しいエストロゲンの開発のための重要な標的を意味し得る。
【0095】
上記の結論は、以下の実施例によって支持される。以下の実施例は、例示の目的で示されるものであって、限定の目的ではない。
【0096】
(実施例)
(機器および試薬)。17β−エストラジオール(E2)および4(OH)タモキシフェンは、Sigmaから入手した。ICI−182,780は、AstraZeneca Pharmaceuticals(Wlimington.DE)から提供された。5’RACEプライマーは、マラソンcDNAキット(BD Biosciences Clontech,Palo Alto,CA)からであった。精製したcSrc、またはLckは、Upstate(Charlottesville,VA)からであった。p34cdc2由来のビオチン化ペプチドは、Wyeth ResearchのPeptide Chemistryグループによって合成された。グルタチオンアガロースビーズは、Sigma−Aldrich(St.Louis,MO)から入手した。抗ホスホチロシン抗体、およびSuperSignal Elisa Picoペルオキシダーゼ基質は、Perbio Science AB(Pierce,Rockford,IL)からであった。SrcインヒビターPP2は、Calbiochem−Novobiochem Corporation(San Diego,CA)からであった。
【0097】
(方法1:)
(NMARの単離および同定)。GST−ERβ−LBD、およびGST−ERα―LBDを、BL21(DE3)E.coli中で発現させた(GSTは、グルタチオン−S−トランスフェラーゼである)。LB中の細胞培養物を、OD0.6で、0.1mM IPTGを用いて誘導し、25℃で3時間インキュベートし、そして細胞を遠心分離によってペレットにした。細菌細胞を、5mlの20mM Tris pH7.2、500mM NaCl,1mM DTT、0.2mM EDTA、0.1mM PMSF中で超音波処理して、40,000gで30分間、遠心分離した。GST−ERβ−LBD、およびGST−ERα−LBDを固定するために、細胞抽出物を、20mM Tris pH7.2,180mM NaCl、1mM DTT、0.005% NP40(結合緩衝液)中に含有される50%のグルタチオンアガローススラリーとともに、4℃でインキュベートした。製造業者の指示に従って、NE−PER Nuclear and Cytoplasmic Extraction Reagents(Perbio Science AB,Pierce,Rockford,IL)を用いて、MCF7細胞抽出物を調製した。17βエストラジオール(0.1μM)とともに、または17βエストラジオールなしで、GST、またはGST−ER−LBD融合蛋白のいずれかとともに、0.5mgのMCF7細胞抽出物を、4℃でインキュベートさせた。結合した材料を、煮沸して2×SDS緩衝液中のアガロースビーズを除いて、10%PAAゲル上で精製した。このゲルを銀染色した。
【0098】
(方法2:)
(精製した蛋白の質量分析解析)。電気泳動によって精製した蛋白サンプルを、手動的に切り出し、次いで還元して、アルキル化して、自動ゲル内トリプシン消化ロボット(Houthaeve T,1997)を用いて、インサイチュでトリプシン(Promega,Madison,WI)を用いて消化した。消化後、Savant Speed Vac Concentrator(ThermoQuest,Holdbrook,NY)を用いて、ペプチド抽出物を、10〜20μlの最終容積まで遠心分離した。自動化マイクロエレクトロスプレー逆相HPLC上で、ペプチド抽出物を分析した。要するに、マイクロエレクトロスプレーの接触面(interface)は、Picofrit溶融シリカスプレーニードル、長さ50cm×内径75μm、10cmの長さまで10μm C18逆相ビーズ(YMC、Wilmington,NC)を充填された8μmの開口部直径(New Objuctive,Cambridge MA)から構成された。Picofritニードルは、質量分析検出器の前面に配置された手製の基礎の上に保持された光ファイバーホルダー(Melles Griot,Irvine,CA)に装着された。このカラムの後ろは、チタンユニオンによって垂直にされ、電気スプレー接触面のための電気的接触を供給する。このユニオンを、FAMOSオートサンプラー(LC−Packings,San Francisco,CA)に配管している溶融シリカキャピラリー(FSC)の長さにそって連結し、そのオートサンプラーを、HPLC溶媒ポンプ(ABI 140C、Perkin−Elmer,Norwalk,CT)に連結した。HPLC溶媒ポンプは、50μL/分の流量を送液し、この流量を、PEEKマイクロタイトスプリッティングティー(Upchurch Scientific,Oak Harbor,WA)を用いて250nL/分に低下させ、次いで、FSCトランスファーラインを用いて、このオートサンプラーに送液した。このLCポンプおよびオートサンプラーを、その内蔵のユーザープログラムを用いて各々制御した。サンプルをプラスチックのオートサンプラーのバイアル中に入れ、密閉して、5μlサンプルループを用いて注入した。表面消化物から抽出したペプチドを、Savant Speed Vac Concentrator(ThermoQuest,Holdbrook,NY)を用いて10倍に濃縮し、次いで0〜50%の溶媒B(A:0.1M HoAc,B:90% MeCN/0.1M HoAc)の50分の勾配を用いて、マイクロエレクトロスプレーHPLCシステムによって分離した。1.5kVのスプレー電圧で作動するFinnigan LCQ−DECAイオントラップ質量分析計(ThermoQuest,San Jose,CA)上で、かつ125℃の加熱キャピラリー温度を用いて、ペプチド分析を行った。この装置に備わったデータ獲得ソフトウェアを用いて、自動化MS/MS様式でデータを獲得した。この獲得方法は、1MSスキャン(375〜600m/z)、その後にMSスキャンにおける上位の2つの最も豊富なイオンのMSスキャンを含んだ。次いで、この装置は、第二のMSスキャン(600〜1000m/z)、その後にそのスキャンにおける上位の2つの最も豊富なイオンのMS/MSスキャンを行った。この動的な排除、および同位体排除機能を使用して、分析されるペプチドイオンの数を増やした(設定:3amu=排除幅、3分=排除期間、30秒=排除前期間、3amu=同位体排除幅)。NCBIゲノムセンターから入手した蛋白の非冗長性(重複のない)(NR)データベースを用いる、Finnigan Bioworksデータ分析パッケージ(ThermoQuest,San Jose,CA)に組み込まれたSEQUESTコンピュータープログラム((Houthaeve T,1997))を用いて、MS/MSデータの自動化分析を実施した。
【0099】
(方法3:)
(MNARのクローニング:)MNARのN末端部分、中間部分、およびC末端部分をクローニングするために、オリゴヌクレオチドの3つの対を設計して用いた。オリゴ#1:TAGGATCCAGATGGCGGCAGCCGTTCTGAG(配列番号3)、およびオリゴ#2:CGATCAGGATCCCAAAGC(配列番号4)を用いて、N末端部分をクローニングした。オリゴ#3:GCTTTGGGATCCTGATCG(配列番号5)、およびオリゴ#4:CAAGGAGATCTCCACATC(配列番号6)を用いて中間部分をクローニングした。オリゴ#5:GATGTGGAGATCTCCTTG(配列番号7)、およびオリゴ#6:GCTAGGAGTCAGGCTCTG(配列番号8)を用いて、C末端部分をクローニングした。1×107個のMCF7細胞を、プロトコールに従って、総RNA単離のために、Trizol(Life Technologies,Rockville,MD)中で溶解した。ワンステップRT−PCRキット(Qiagen,Valencia,CA)を用いるRT−PCR反応物中で、40ngの総RNA、および400nMのオリゴを用いて、MNARを増幅した。この増幅は、50℃で30分で開始し、続いて95℃で15分、次いで95℃で30秒、55℃で30秒、72℃で60秒、および72℃での伸長7分の30サイクルであった。個々の産物をpT−Advベクター(Invitrogen,Carlsbad,CA)中にクローニングして、配列決定した。制限酵素消化および連結によって、全長MNARを構築した。プロトコール(BD Biosciences Clontech,Palo Alto,CA)に従って、ヒトリンパ球マラソンcDNAライブラリーから、オリゴ#1および#6を用いることによって、MNARをまた、独立してクローニングした。MCF−7からクローニングしたMNARは、マラソンcDNAライブラリーからクローニングしたMNARに同一であった。さらなる配列情報を得るために、オリゴ#7CCGAAGCCAAGACACACAGTGCTGCTGGAATAG(配列番号9)、およびマラソンcDNAキット(BD Biosciences Clontech,Palo Alto,CA)由来のアダプタープライマー1オリゴを用いて5’RACEを実施した。
【0100】
(方法4:)
(MNAR発現の解析)HepG2細胞、SaOS2細胞、HOBs02/02細胞、COS−7細胞、MCF−7細胞、T47D細胞、MDA231細胞、イシカワ細胞、I−10細胞、LNCaPLN3細胞、LNCaPFGC細胞、JCA細胞、TSUPRL細胞由来の総RNA(10μg)を、トリドール(Trizol)によって調製し、ゲル上で分離し、膜に転写して、クローニングされたMNARのヌクレオチド367〜400に相当する放射性標識したオリゴ#7を用いてプローブした。ジンバンク(Genbank)配列に寄託されたヌクレオチド1480〜1509に対応する別のオリゴプローブ#8:CTGGAGAAAAAAGGGGCAGAGATAAAGAGT(配列番号10)を用いて、別のノーザンにおいてMCF−7 RNAをプローブした。
【0101】
第二のMNAR発現解析を実施した。MNARのヌクレオチド367〜393に相当する放射性標識したオリゴヌクレオチドプローブを、Perfect Hybridization緩衝液(Sigma−Aldrich,St.Louis,MO)に含有されるヒト複数組織ノーザンブロットII(BD Biosciences Clontech,Palo Alto,CA)に対して、42℃でハイブリダイズさせた。そのブロットを0.2×SSC,0.1%SDS中で42℃で3回洗浄して、フィルムに曝露した。コントロールとして、β−アクチンプローブを用いた。
【0102】
(方法5:)
(一過性トランスフェクション解析:)10%FBSを補充したDMEM中で、HepG2細胞、およびCOS−7細胞を、慣用的に維持した。フェノールレッドを含有せず、10%チャコール剥離血清を補充したDMEM中で96ウェルプレートに、1ウェルあたり50,000個のHepG2細胞、または1ウェルあたり30,000個のCOS−7細胞を播種した。プロトコールに従って、0.5μlのリポフェクタミン2000(Life Technologies,Rockville,MD)を用いて、100ngの2×ERE−tk−lucレポーター、10ngのpCMV−β−gal内部コントロール、1ngのpcDNA3.1 ERα発現ベクター、または5ngのpcDNA3.1ERβ発現ベクターのいずれかを、漸増する量のpcDNA3.1MNAR、またはpcDNA3.1SRC3発現プラスミドの有無において、トランスフェクトした。10−8M 17b−エストラジオール、タモキシフェン、またはICIのいずれかを用いて細胞を24時間刺激し、その後ルシフェラーゼおよびβガラクトシダーゼ活性について処理した。
【0103】
(方法6:)
(MNAR−ER相互作用の解析:)
MNAR−核内受容体相互作用解析を実施した。全長フラッグ−MNARを過剰発現するSF9細胞抽出物を、インビトロにおいて、転写され/翻訳された[35S]標識全長ERα(図5A)、ERβ(図5B)、アンドロゲン(AR)(図5C)、および糖質コルチコイド受容体(GR)(図5D)とともに、それらの対応するリガンド(全て1μMで)の有無において、インキュベートした。抗FLAGセファロースビーズを用いて、形成された複合体を単離し、2×SDS緩衝液中で煮沸して、SDSゲルにロードした。そのゲルを乾燥して、オートラジオグラフィーに供した。
【0104】
(方法7:)
(ER−MNAR−cSrcの相互作用の解析)1μM E2の存在下(図6A、レーン3、5、7、および9)、または非存在下(図6A、レーン2、4、6、および8)において、MNARの存在下(図6A、レーン4、5、および8、9)、または非存在下(図6A、レーン2、3、および6、7)において、インビトロで転写/翻訳されたERαを、精製したcSrc(図6A、レーン2〜5)、またはLck(図6A,レーン6〜9)とともにインキュベートした。抗cSrc抗体または抗Lck抗体、およびプロテインAアガロースを用いたプルダウンによって、形成された複合体を単離し、2×SDS緩衝液中で煮沸して、SDS−PAGEゲル上で分離した。ゲルを乾燥させて、オートラジオグラフィーに供した。
【0105】
(方法8:)
(cSrc酵素活性の解析)基質として酸性化したエノラーゼを用いて、ERの非存在下(図8、レーン1および2)、または存在下(図8、レーン3〜6)、17βエストラジオール(図8、レーン3および5)、およびMNAR(図8、レーン2、5、および6)の存在下で、cSrcチロシンキナーゼ活性を評価した。反応の前に、蛋白を4℃で1時間インキュベートした。[32P]−γATPの添加によって、リン酸化反応を開始して、30℃で10分間継続した。2×SDS緩衝液の添加によって、反応を停止した。リン酸化した蛋白を、SDS−PAGEによって分離して、乾燥したゲルをオートラジオグラフィーに供した。
【0106】
(方法9:)
(ER媒介性転写に対するMNARの効果)
A−HepG2細胞を、ERα、MNAR,および/またはSRC3の発現プラスミドを用いてトランスフェクトした。ルシフェラーゼ遺伝子発現(2×ERE−tk−レポーターによって駆動された)を、E2、4(OH)−タモキシフェン、またはICI 182,780(全て10nM)を用いて処理した細胞中で評価した。B−HepG2細胞を、ERα、およびMNARの発現ベクターを用いてトランスフェクトした。ルシフェラーゼ遺伝子発現(2×ERE−tk−レポーターによって駆動された)を、10nMのE2か、10nMのE2とそれに加えて1μMのPP2か、または1μMのPD98059かを用いて処理した細胞中で評価した。C−MCF−7細胞を、Sequitur,Inc.(Natick,MA)からの100nMのアンチセンス(AS)CATGGAGATGTCCCGGAACAGTGCA(配列番号11)、または1μg/mlのリポフェクタミン2000を複合体化したリバースコントロール(C)オリゴマーを用いて、白色培地中でトランスフェクトした。24時間後、細胞を10nM E2を用いて刺激し、その24時間後、細胞をグアニジウム緩衝液中で溶解して、溶解物から総RNAを単離した。MNAR、pS2、およびカテプシンDを標的するために設計したプライマー/プローブのセットを用いてTaqMan解析を実施した。D−100nMのアンチセンス(AS)−1、またはリバースコントロール(C)−2オリゴマー(10nMのE2を用いて刺激した)を用いてトランスフェクトしたMCF7細胞の抽出物を、ウサギポリクローナルMNAR抗血清を用いるウエスタンブロット解析のために用いた。MNARのアミノ酸509〜520(SHRKGDSNANSD)(配列番号31)をコードする11マーのペプチドに対して、MNAR抗血清を生成した。
【0107】
(方法10:)
(MNAR、およびERの相互作用、およびSrcキナーゼ活性化)
MNAR、およびERαは、Srcと相互作用して、内因性蛋白のリン酸化反応を促進する。FLAG−MNAR発現ベクターを用いてトランスフェクトしたMCF−7細胞、またはFLAG−MNAR発現ベクターを用いてトランスフェクトしていないMCF−7細胞を、E2(10nM)を用いて処理しない(図10、レーン1、および3)か、またはE2(10nM)を用いて5分間処理した(レーン2、および4)。対応する抗体を用いて細胞抽出物から、フラッグ−MNAR(パネルA)、cSrc(パネルB)、またはERα(パネルC、D、およびE)を、免疫沈降させた。免疫沈降物を[32P]−γATPを用いて30分間、30℃(パネルA〜C)、または[32P]−γATPおよびエノラーゼを用いて(パネルD)インキュベートした。2×SDS緩衝液中での煮沸によってキナーゼ反応を停止した。リン酸化した材料をSDSゲル上にロードして、次いで乾燥してオートラジオグラフィーに供した。フラッグ−MNARでトランスフェクトしていない、E2を用いて処理していない細胞(1)、およびE2を用いて処理した細胞(2)からERαプルダウンによって得た材料を、MNAR−抗血清を用いてプローブした(パネルE)。
【0108】
(方法11:)
(E2誘導性のErkキナーゼ1および2活性化に対してMNARは影響する)
エストラジオールによるSrcの活性化が、Ras/Erk5キナーゼ経路を誘発することは以前に報告されている。本発明者らは、MNAR誘導性Src活性化がErkキナーゼ1および2の活性化を導き得ると予想した。本発明者らは、MCF7細胞、MNARを過剰発現する細胞、およびMNAR発現がMNARアンチセンスオリゴヌクレオチド(配列番号11)を用いた処理によって実質的に減弱された細胞における、E2によるErk活性化のレベルを評価した。リン酸化したErk1および2を認識する抗体を用いて、Erk1および2のリン酸化のE2誘導性刺激を検出した。MNAR発現プラスミド(図11、レーン1および2)、またはMNARアンチセンスオリゴヌクレオチド100nM(図11、レーン5および6)を用いてトランスフェクトしたMCF7細胞の抽出物(図11、レーン3、および4);E2(10nM)を用いて刺激していない(図11、レーン1、3、および5)、または5分間刺激した(図11、レーン2、4、および6)MCF7細胞の抽出物を、ウエスタンブロット分析のために用いた。このウエスタンブロット分析には、リン酸化したErk1および2に対する抗体(パネルA);Erk1/2抗体(パネルB);MNAR抗体(パネルC)を用いた。MNAR抗血清オリゴヌクレオチド(配列番号11)は、Sequitur Inc.(Natick,MA)で開発された。
【0109】
(方法12:)
(MNARの構造−機能解析)
MNAR配列解析によって、MNAR分子のN末端部分は、核ホルモンレポーターとの相互作用に重要であることが以前に見出された複数のLXXLLモチーフを含むが、MNARはC末端では、プロリンおよびグルタミン酸の両方がリッチな領域を含むことが明らかになった。エストロゲン受容体およびc−Srcチロシンキナーゼとの相互作用を担うMNARの領域を描写するため、本発明者らは、MNAR欠失変異体の機能的評価を実施した(図12)。適切なフラグメントを増幅すること、およびそれらを適切な発現ベクター中にクローニングすることによって、特別に設計したオリゴヌクレオチドを用いて、MNARの一連のC末端短縮を生成した。HepG2細胞にトランスフェクトされた場合、これらの変異体が、ER刺激された転写物を増強する能力について、これらの変異体を試験した。
【0110】
(方法13:)
(キナーゼ活性に影響する化合物についてのスクリーニング)
以下のとおり化合物をスクリーニングする。用いた反応緩衝液は、50mM Tris−HCl(pH7.0)、50mM MgCl2、50μM Na3VO4である。基質ペプチドを得て、6mgを1.7mLのRB中に溶解し、−20℃で保存する。用いられるATPは、最終濃度400μMである。インヒビターは、例えば、ピセアタノール−3mM(4℃で保存し、かつ遮光する)を用いるべきである。
【0111】
まず、ERを、E2とともにインキュベーションする。例えば、10μlの市販のER(Panvera)を、40μlのRBおよび0.5μlのE2(10−6M)とともにインキュベートする。その混合物を室温で1時間インキュベートする。
【0112】
次に、その混合物をMNAR、E2、およびERの有無の状態に置く。その溶液を室温で30分間インキュベートする。
【0113】
各々のチューブに、10μlのATP(最終濃度400μM)を、10μlの基質ペプチドとともに添加する。これを30℃で60分間インキュベートする。
【0114】
10μlの3mM ピセアタノールを添加して反応を停止する。ここで、この溶液を室温で5分間インキュベートする。
【0115】
希釈およびペプチドの固定を実施する。10μlの反応液を20mlのH2Oで希釈する。200μlの希釈液をNeutrAvidin Plateのウェルに添加する。
【0116】
200μlのPBSを添加することによって洗浄(各々3分間、5回)を実施する。その後に抗−P−Tyr抗体を添加する。その抗体をPBSおよびBSA中で希釈して、溶液をカバーして、37℃で1時間インキュベートさせる。その混合物を上記と同様に洗浄する。
【0117】
次に、HRPプロトコールを用いて、100μlのPierce基質を添加すること、およびVictorで読み取ることによって基質反応を行う。
【実施例1】
【0118】
(MNARの単離および同定、MNARをコードするcDNAのクローニング)
ERリガンドの組織選択性作用をさらによく理解するために、本発明者らは、異なる細胞株においてER相互作用蛋白の発現および活性を評価するためのプロテオミクスアプローチを確立した。本発明者らは、GSTプルダウンアプローチを用いてMNARを同定した。GST−ERβリガンド結合ドメイン(LBD)を、MCF−7細胞抽出物とともにインキュベートした。図2Aは、プルダウン実験によって得られた画分の銀染色を示す。GST−ERβ−E2と特異的に相互作用するが、GST−ERβ、またはGST単独とは相互作用しない多数の蛋白を検出した。
【0119】
対応するバンドを切り出して、トリプシンで消化し、濃縮して、マイクロエレクトロスプレーHPLCシステムによって分離した。Finnigan LCQ−DECAイオントラップ質量分析計(ThermoQuest,San Jose,CA)上でペプチド分析を行った。NCBIゲノムセンターから入手した蛋白の非冗長性(重複のない)データベースを用い、Finnigan Bioworksデータ解析パッケージ(ThermoQuest,San Jose,CA)中に組み込まれたSEQUESTコンピューターアルゴリズム([Houthaeve T,1997])を用いて、質量分析データの自動解析を実施した。
【0120】
図2Aは、上記で方法1において概説されたような実験工程から得られる、銀染色されたゲルを示す。細胞抽出物をグルタチオンビーズ−1、リガンドの非存在下−2、または両方とも10−7MのE2の存在下−3、または4(OH)タモキシフェンの存在下−4において、細菌で発現されたGST−ERβ−LBD融合蛋白とともにインキュベートした。抗GSTアガロースを用いてER相互作用蛋白を単離して、SDS−PAGE上で分離した。対応するバンドを含有するゲル領域を切り出して、トリプシン消化に供した。
【0121】
リガンド依存性相互作用を表す蛋白に相当するバンドを切り出して、トリプシンで消化して、質量分析に基づくペプチドのマイクロシーケンシングを用いて同定した。公知であり十分特徴付けられた活性化補助因子(例えば、SRC3、およびDRIP205)と一緒に、本発明者らは、ERと相互作用することが以前に示された蛋白を同定した。この蛋白は、E2の存在下でGST−ERβ−LBDと相互作用し、かつ約120kDaの見かけの分子量を有した(図2A)。
【0122】
ペプチド配列解析によって、この蛋白が、p56lck(Lck)のSrc相同性ドメイン2(SH2)を用いたプルダウンによって以前に単離された、プロリンおよびグルタミン酸リッチな蛋白であるp160(Genbank U88153)に関連し得ることが明らかになった(21)。図2Bは、質量分析、およびMNAR分子におけるペプチドの位置によって同定されたペプチドの配列を示す。
【0123】
NCIデータベースを検索することによって、本発明者らはまた、この蛋白にマッチしたいくつかのESTを同定した。それらの1つであるAL03939は、N末端でマッチし、そして5’配列をさらに100bp伸長した。整列された配列を用いて、MCF−7細胞からこの蛋白をクローニングするためのオリゴヌクレオチドプライマーを設計した(22)。
【0124】
しかし、クローニングされた蛋白の配列(図1を参照のこと)は、p160(Genbank U88153)とは実質的に異なった。2つの配列の間を識別するため、そしてp160とも呼ばれる核内受容体活性化補助因子のファミリー((Voegelら、1998)、(Hongら、1997)、(Anzickら、1997)、[Suen,1998])との混同を避けるため、本発明者らがMCF7細胞からクローニングしたこの蛋白を、本発明者らは、MNARと命名した。
【0125】
MNARおよびp160の配列アラインメント(図1A)によって、MNARが、p160(Genbank U88153)に存在するヌクレオチドの1075〜1510、および3125〜3151を含まないことが示された。さらに、p160配列と比べて、10個の単一塩基対のギャップ、および1個の二重塩基対のギャップが存在した。
【0126】
MNARはまた、ヒトリンパ球マラソンcDNAライブラリー(Invitrogen)から独立してクローニングされた。重要なことに、MCF−7細胞からクローニングされたMNARは、マラソンcDNAライブラリーを用いてクローニングされたMNARと同一であった。さらなる配列情報を得るために、本発明者らは、マラソンcDNAキット(Clontech)由来のプライマーを用いて5’RACEを実施した。5’RACEを用いて、MNARの推定開始コドンの5’側の3つのリーディングフレームの全てにおいて、終止コドンを見出した。MNARクローンの概念上の翻訳によって、計算上の分子量が119.6kDaである1130個のアミノ酸の蛋白を生じた。このクローンは、質量分析の解析によって最初に同定されたペプチド配列を全て含んだ(図2B)。
【0127】
配列の解析によって、MNAR分子のN末端部分に局在する複数のLXXLLモチーフが明らかになった。本発明者らは、それを、仮定的に、核内受容体相互作用ドメイン(NRID)と呼ぶ。他の転写因子における類似のモチーフは、核ホルモン受容体のリガンド結合ドメインの表面上の疎水性グルーブと相互作用することが示されている(Heeryら、1997)、(Torchiaら、1997)(23)。MNAR分子の興味深い特徴は、MNAR分子のC末端部分に局在する、伸長したプロリンリッチドメイン(PRD)、およびグルタミン酸リッチドメイン(ERD)である。これらのドメインに対する相同性は、NCIデータベースにおいては見出されなかった。
【実施例2】
【0128】
(MNAR発現の解析)HepG2、SaOS2、HOBs02/02、COS−7、MCF−7、T47D、MDA231、イシカワ、I−10、LNCaPLN3、LNCaPFGC、JCA、TSUPRLの各細胞株におけるMNAR発現を、ノーザンブロット解析を用いて評価した。この目的のために、本発明者らは、MNARの配列と、寄託されたp160(GenbankU88153)の配列との間に共通する、MNARのN末端部分由来のオリゴペプチドを用いた。ほとんど全ての細胞株において、MNAR mRNAの発現を、4kbのバンドの存在によって評価されるとおり、検出した(図3)。MNAR発現のレベルは、異なる細胞株の中で有意に異なった。MNAR発現は、肝臓細胞(HepG2)、および前立腺細胞(LNCaPLN3、LNCaPFGC、JCA、TSUPRL)中で高く、そしてERを発現しない乳房腫瘍細胞(T47D、MDA231)においては低度〜検出不能であった(図3)。p160が、MCF−7細胞中で発現されるか否かを評価するために、本発明者らは、MNAR配列を欠いており、Genbankに対して寄託されたp160配列のヌクレオチド1480〜1509によってコードされる、p160の領域に対するオリゴ−プローブを用いたノーザンブロット解析を用いた。このプローブを用いて、本発明者らは、どのようなメッセージも検出できなかった(データ示さず)。この結果によって、MCF−7細胞中で発現したこの蛋白のほとんどの型は、MNARと十分にマッチするが、p160をコードするmRNAは、発現されないか、非常に低いレベルで発現されることが示される。
【0129】
異なる組織におけるMNAR分布を、ノーザンブロットによって解析した。ここでも、本発明者らは、MNARと寄託されたp160配列(GenbankU88153)との間で共通である、MNARのN末端部分由来のオリゴプローブを用いた。またここでも、MNAR mRNAの発現は、4kbのバンドの存在による評価として(図4)、ほとんど全ての組織において検出された(図4)。MNAR発現のレベルは、異なる組織の間では変動すると考えられる。
【実施例3】
【0130】
(MNARは、エストロゲン受容体と特異的に相互作用する)
全長フラッグ−MNARを用いて、本発明者らは、MNARとエストロゲン受容体との相互作用が、ERリガンドによって影響されるか否かをさらに評価した。バキュロウイルス発現系を用いて、SF9細胞において過剰発現された全長フラッグ−MNARを、インビトロで転写/翻訳された、リガンドが結合していない全長のERαおよびβ、またはE2もしくは4−OHタモキシフェンとリガンド結合した受容体、を用いるプルダウン実験において用いた。形成された複合体を、抗フラッグセファロースビーズを用いて単離した。
【0131】
図5A、および5Bによって、ERαおよびβが、MNARと相互作用すること、ならびにこの相互作用は、E2によって増強されて、4(OH)タモキシフェンによって阻害されることが明らかになった。本発明者らは、また、他のいくつかの核ホルモン受容体とのMNARの相互作用を評価した。全長フラッグ−MNARを、転写/翻訳されたアンドロゲン(AR)、および糖質コルチコイド受容体(GR)とともに、それらの対応するホルモンの有無において、インキュベートした。このデータによって、ARおよびGRのリガンドは、MNARと独立して相互作用することが示された(図5B、および5C)。この相互作用は、これらの受容体リガンドの非ゲノム活性を説明し得る。これらおよび他の核ホルモン受容体のMNARとのクロストーク、ならびにSrcリン酸化カスケードの詳細な検討は、将来の検討のための重要な課題である。
【実施例4】
【0132】
(MNARのc−SrcおよびLckとの相互作用は、E2リガンド結合エストロゲン受容体によって増強される)MNARに対して相同な蛋白であるp160が、p56lck(Lck)のSH2ドメインを用いたプルダウンを介して最初に同定されたことを考慮して、本発明者らは、次に、MNARが、Srcファミリーチロシンキナーゼのメンバーと相互作用し、ERとのそれらの相互作用に影響するか否かを検討した。
【0133】
この疑問に取り組むため、本発明者らは、インビトロで転写/翻訳されたエストロゲン受容体であるERα、ERβ、およびMNARを用いた。17βエストラジオール(E2)の存在の有無において、ERを、単独でかまたはMNARと一緒に、市販の部分的に生成されたcSrcまたはLck(Upstate Biotechnology)とともにインキュベートした。形成された複合体を、抗c−Src、または抗Lck抗体、およびプロテインAセファロースを用いてプルダウンし、次いでSDSゲル上で分離した。
【0134】
このデータは、ERαが、cSrcおよびLckと相互作用することを示す(図6A、レーン2、および3、6および7)。驚くべきことに、この相互作用は、E2によって阻害された。ERαを、MNARおよびcSrcの両方(図6A、レーン4、および5)、またはLck(図6A、レーン8、および9)とともにインキュベートした場合、リガンド結合していないERα(図6A、レーン4、および8)と比べて、E2の存在下において(図6A、レーン5、および9)、Src−ER−MNAR複合体形成の有意な刺激が検出された。MNAR自体は、cSrcまたはLckと十分相互作用せず(図6A、レーン11)、ERとのcSrcおよび/またはLckの相互作用は、E2によって阻害される(図6A、レーン3)ので、本発明者らは、全ての3つの蛋白が、E2の存在下で強力に相互作用すること、およびMNARが、ER−Src相互作用に対して重要であることを結論する。ERβについても同一のデータが得られた(図6B)。
【0135】
Auricchioおよび共同研究者による以前の研究によって、ERがSrcのSH2ドメインに直接結合すること、およびこの結合は、E2によって増強されることが示唆された。本発明者らのデータと、彼らのデータとの間の明白な不一致について可能性のある説明は、ER−Src相互作用を評価するために、彼らが細胞抽出物からのSrcプルダウンを用いたという事実に依存するかもしれない。MNARは、これらの抽出物に存在する可能性が最も高く、ER−Src複合体形成を媒介した。
【0136】
基礎的な条件下では、Srcの触媒性ドメインは、分子内相互作用を通じて不活性状態に強制される。C末端リン酸化チロシンに対するSH2ドメインの結合、およびSrcリンカー中のプロリンリッチ領域に対するSH3ドメインの結合によって、この分子は阻害された高次構造にロックされる(図7)。完全な触媒性活性には、これらの拘束の解放が必要である。
【0137】
Srcのキナーゼ活性は、SH2ドメインに対するホスホチロシン含有配列の結合、およびSH3ドメインに対するプロリンリッチ配列の結合によって増強され得る。MNARが、伸長したプロリンリッチドメイン(PRD)を含むこと、およびERのリガンド結合ドメインが、リン酸化され得るチロシン残基を含むことを考慮して、本発明者らは、これらの相互作用がSrc活性化をもたらし得ると仮定した(図7を参照のこと)。
【実施例5】
【0138】
(MNARは、ER駆動トランス活性化を刺激する)EGFに対する応答におけるcSrcの活性化は、ERリン酸化を促進すること、およびMAPキナーゼによって他の転写因子のリン酸化を促進すること(これによってER媒介性転写を刺激する)が、以前に示されている([Kato,1996];[Bunone,1996])。MNARが、ERの転写活性に影響するか否かを評価するため、ERα(図6A),またはERβ(図6B)、およびMNARを用いてCOS7細胞を同時トランスフェクトした。2×ERE−tk−レポーターによって駆動されたルシフェラーゼ遺伝子発現を、17βエストラジオールで処理された細胞、および処理されていない細胞において評価した。本発明者らのデータによって、MNAR発現の増大は、ERαおよびERβの転写活性の刺激に相関することが示される(図6A、および6B)。次に、本発明者らは、cSrcインヒビターが、MNAR促進ER活性化に影響するか否かを評価した。ERα、およびMNARを用いてトランスフェクトしたHepG2細胞(図8)を、17βエストラジオール単独か、17βエストラジオールおよびSrcの選択性インヒビターであるPP2(Calbiochem)か、またはゲニステインを用いて24時間処理した。以前の実験(図8)においてと同様に、MNARは、E2誘導性ERα活性化を刺激した。同時に、SrcインヒビターであるPP2およびゲニステインは、MNAR刺激を阻害した(図8)。これらのデータによって、ER活性のMNAR誘導性刺激は、リン酸化カスケードの活性化とリンクしていることが示される。
【実施例6】
【0139】
(MNAR過剰発現は、ERの転写活性に影響する)
MNAR過剰発現がERの転写活性に影響するか否かを評価するため、ERαおよびMNARの発現のためのプラスミドを用いて、HepG2細胞を一過性に同時トランスフェクトした。2×ERE−tkレポーターによって制御したルシフェラーゼ遺伝子発現を、E2、4(OH)−タモキシフェン、またはICI 182,780(全て10nM)で処理した細胞中で評価した。
【0140】
この結果(図9A)によって、MNAR発現が増大することは、ERα転写活性の刺激と十分に相関することが示される。ER転写活性の同様の刺激が、ER活性化補助因子SRC3の過剰発現によって観察された。本発明者らのデータによってまた、4(OH)−タモキシフェン、およびICI 182,780は、ER活性のNMAR刺激を支持しないことが示される。ERβを用いて同様の結果が観察された(データ示さず)。
【0141】
cSrc活性化が、ER活性のMNAR刺激の原因である否かを検討するため、ERα、MNAR、および2×ERE−tk−レポーターのプラスミドを用いてトランスフェクトしたHepG2細胞(図9B)を、E2単独を用いるか、またはE2と、cSrcインヒビターであるPP2、もしくはMEKキナーゼインヒビターであるPD98059のいずれかを用いて処理した。本発明者らは、PP2およびPD98059が両方ともER活性のMNAR刺激を抑止することを見出した。これらの結果によって、ER転写活性のMNAR促進性刺激は、MAPキナーゼリン酸化カスケードの活性化にリンクしていることが示される。本発明者らは、以前に記載されたように、SrcおよびMEKキナーゼの下流の、ErkによるERリン酸化が、ER転写活性の増強の原因であり得ると仮定する。さらに、Src/MAPキナーゼ経路の活性化が、ER転写活性に重要である、いくつかの他の転写因子のリン酸化をもたらすことは、あり得る。重要なことに、これらのデータによってまた、リン酸化カスケードの活性化を通じた核ホルモン受容体のいわゆる「非ゲノム」作用が、転写因子の活性を調節し得、それによって最終的に遺伝子発現に影響し得ることが示唆される。本発明者らは、この機構が、MNARと相互作用し得る核内受容体と、リン酸化によって活性が調節される他の転写因子との間のクロストークを設け得ると推測する。
【実施例7】
【0142】
(MNARは、ER媒介性遺伝子発現に影響する)
本発明者らは、次にアンチセンスアプローチを用いて、遺伝子転写のエストロゲン調節におけるMNARの役割を評価した。TaqMan(図9C)、およびウエスタンブロット(図9D)解析によって評価されるように、MCF−7細胞におけるMNAR発現を有意に阻害する、アンチセンスオリゴヌクレオチド(配列番号11)が、開発された(Sequitur Inc.,Natick,MA)。MCF−7細胞を100nMのアンチセンスまたはリバースコントロールオリゴマーを用いてトランスフェクトした。24時間後、10nMのE2を用いて細胞を刺激して、その24時間後、細胞を溶解して総RNAを単離した。MNAR、pS2、およびカテプシンDを標的するために設計されたプライマー/プローブセットを用いて、TaqMan解析を実施した(2つの遺伝子は、MCF−7細胞においてエストロゲンによって調節されることが公知)。図9Cは、MNAR、pS2、およびカテプシンDのmRNA発現のレベル(GAPDHのmRNAに対して正規化した)を示す。興味深いことに、MNPA mRNAの発現は、E2処理によって実質的に刺激された。本発明者らのデータによって、MNAR発現の減少は、E2刺激性のpS2およびカテプシンDの発現の劇的な低下をもたらすことが示される。重要なことに、MNARアンチセンスオリゴヌクレオチドは、これらの遺伝子発現の基本的なレベルに有意に影響しない。本発明者らは、ERリン酸化がおそらくpS2およびカテプシンDのE2媒介性発現に重要であると予想する。これらのデータによって、MNARは遺伝子発現のER調節に必須であるという、本発明者らの見解が支持される。
【実施例8】
【0143】
(MCF−7細胞における、MNARおよびERの相互作用、ならびにSrcキナーゼ活性化)
本発明者らは、MNARおよびERがMCF−7細胞において相互作用して、Srcキナーゼを活性化するか否かを評価した。フラッグ−MNAR発現ベクターを用いてトランスフェクトされたMCF−7細胞を、10nMのE2を用いて5分間、処理した。フラッグ−MNAR(図10、パネルA)、ERα(図10、パネルC、およびD)、およびcSrc(図10、パネルB)を、それらの対応する抗体を用いて、細胞抽出物から免疫沈降させた。Erα抗血清を用いて沈殿させた材料を、ウサギポリクローナル抗MNAR抗体を用いてプローブした(図10、パネルE)。ERα−MNAR相互作用のE2増強が明確に検出された。フラッグ−MNARを用いてトランスフェクトされていないMCF7細胞がこの実験に用いられたことを考慮すれば、このデータによって、内因性MNARおよびERαが、MCF7細胞において相互作用することが確認される。免疫沈降物を[32P]−γATPとともに30℃で30分間インキュベートした。2×SDS緩衝液中での煮沸によって反応を停止して、SDS PAAG上で分離した。いくつかの内因性蛋白の強力なMNAR依存性およびE2依存性のリン酸化が検出された。cSrc、ER,およびMNARと同時沈降した、約34kDaの見かけの分子量を有する内因性蛋白のリン酸化が特に明白であった(図10を参照のこと)。
【0144】
重要なことに、MNARでトランスフェクトされていない細胞から抗Src抗体および抗ER抗体を用いて同時沈降した物質中で、この蛋白のリン酸化が検出された(図10、レーン1および2)。このリン酸化は、E2の存在下(図10、レーン2)で刺激され、次いでMNARでトランスフェクトされた細胞中で劇的に増強された(図10、レーン3および4)。これらのデータによって、MNAR、ER、およびcSrcがMCF−7細胞中で相互作用し、そしてMNAR−ER複合体が、cSrcキナーゼ活性を強力に刺激する(これがMCF−7細胞中においていくつかの内因性蛋白のリン酸化を促進する)という本発明者らの見解が強力に支持される。エノラーゼをSrc基質として用いた場合、同一のリン酸化パターンが検出された(図10、パネルD)。
【実施例9】
【0145】
(MNARは、E2誘導性Erkキナーゼ1および2活性化に影響する)
本発明者らは、次に、MCF7細胞(図11、レーン3および4)、MNARを過剰発現する細胞(図11、レーン1および2)、およびMNAR発現がMNARアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いた処理によって実質的に減弱された細胞(図11、レーン5および6)において、E2によるErk活性化のレベルを評価した。リン酸化したErk1および2を認識する抗体を用いて、Erk1および2のリン酸化の強力なE2誘導性刺激を明確に検出した(図11、パネルA)。この活性化は有意に、MNARを過剰発現する細胞(図11、パネルA,レーン1および2)において増強されて、MNARアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いて処理された細胞(図11、パネルA,レーン5および6)において減弱された。MNARアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いた処理でも、E2を用いた短時間処理でも、Erk1および2の総レベルには影響しなかった(図11、パネルB)。ウエスタンブロット解析によって、MNARレベルが、MNAR発現プラスミドを用いてトランスフェクトされた細胞において強力に増大されること(図11、パネルC、レーン1および2)、そしてMNARアンチセンスオリゴヌクレオチド(図11、レーン5および6)を用いて処理された細胞において減少されること(図11、パネルC、レーン5、および6)が示された。これらのデータによって、MNARは、cSrcおよびErk1および2キナーゼのE2誘導性刺激を制御することが示される。
【実施例10】
【0146】
(MNARの構造−機能の組織化)
MNAR配列解析によって、MNAR分子のN末端部分は、核ホルモンレポーターとの相互作用に重要であることが見出された複数のLXXLLモチーフを含むことが明らかになった。MNARはC末端では、プロリンおよびグルタミン酸の両方がリッチな領域を含む。エストロゲン受容体およびc−Srcチロシンキナーゼとの相互作用を担うMNARの領域を描写するため、MNAR欠失変異体の機能的評価を実施した(図12)。適切なフラグメントを増幅すること、およびそれらを適切な発現ベクター中にクローニングすることによって、特別に設計したオリゴヌクレオチドを用いて、MNARの一連のC末端短縮を生成した。HepG2細胞にトランスフェクトされた場合、これらの変異体が、ER刺激された転写物を増強する能力について、これらの変異体を試験した。
【0147】
アミノ酸1〜469(変異体2、配列番号14)、アミノ酸1〜278(変異体3、配列番号15)、およびアミノ酸1〜189(変異体4、配列番号16)を含むMNAR変異体は依然として、ER転写活性を増強し得るが、MNAR分子のC末端部分(アミノ酸555〜1131(変異体9、配列番号17)、アミノ酸595〜962(変異体10、配列番号18)、およびアミノ酸595〜887(変異体11、配列番号19))を含有する変異体は、不活性である。これらのデータによって、ER転写活性を刺激するのに必要かつ十分であるこのドメインが、アミノ酸1と189との間のNRIDのN末端部分に局在することが示唆される(図13)。この領域は、LXXLLモチーフ:4番目(アミノ酸154〜159)(配列番号20)、5番目(アミノ酸176〜181)(配列番号21)、および6番目(アミノ酸181〜185)(配列番号22)を含む(図12)。これらのモチーフが、エストロゲン受容体との相互作用の原因であることを評価するため、本発明者らは、変異されたこれらの3つのLXXLLモチーフを、個々にまたは組み合わせて有するMNARの変異体を作成した。
【0148】
MNARは、LXXLLモチーフを利用してエストロゲン受容体と相互作用するが、MNARは、PXXPモチーフを用いてErcと相互作用する。MNARは、N末端部分内にこれらのPXXPモチーフのうちの3つを含む。欠失分析によれば、最初の2つのPXXPモチーフを失っているMNARの構築物は、トランスフェクションアッセイにおいてエストロゲン受容体活性を刺激できない(図13)。このことは、これらの最初の2つのPXXPモチーフが、Srcとの相互作用に十分であることを示唆する。これらのモチーフの変異によって、最初のPXXPモチーフ(アミノ酸55〜58)(PXXP変異体1、配列番号23)は、ER転写活性を活性化するのに必要かつ十分であるが、第二のPXXPモチーフ(アミノ酸64〜67)(PXXP変異体2、配列番号32)は、除去可能であることが明らかになった(図14)。
【0149】
本研究において作成されたさらなる変異体は以下のとおりであった:アミノ酸1〜120を有する変異体5(配列番号24);アミノ酸1〜79を有する変異体6(配列番号25);アミノ酸1〜40を有する変異体7(配列番号26);アミノ酸190〜469を有する変異体8(配列番号27);アミノ酸888〜1131を有する変異体12(配列番号28);アミノ酸80〜594を有する変異体13(配列番号29);アミノ酸80〜574を有する変異体14(配列番号30)。これらの変異体の各々は、上記に列挙した他の変異体とともに、図12に模式的に図示されており、HepG2細胞にトランスフェクトされた場合、ER刺激性転写を増強する能力について解析された(図13)。
【0150】
結論として、本発明者らは、エストロゲン受容体αおよびβとMNARとの相互作用が、E2によって増強されるが、4(OH)タモキシフェンによっては増強されないことを実証する。本発明者らはまた、MNAR−ER複合体が、Src酵素活性を劇的に刺激するSrcファミリーのチロシンキナーゼであるp60src(Src)およびp56lck(Lck)と相互作用することを示す。本発明者らはまた、MNARが、Srcリン酸化カスケードの活性化を通じて、ER転写活性に影響して、最終的にはER媒介性遺伝子発現に影響することを示す。詳細には、本発明者らは、E2を用いたMCF−7細胞の短時間処理が、MNAR−Src−ER複合体形成、Srcの活性化、およびいくつかの内因性蛋白のリン酸化をもたらすことを実証する。一過性にトランスフェクトされた細胞における増強されたMNAR発現は、ER転写活性の刺激をもたらす。SrcおよびMEKキナーゼの特定のインヒビターは、MNARがER転写活性を増強する能力をブロックするので、本発明者らは、ERのこの活性化は、Srcキナーゼの活性化によって促進されたMAPキナーゼリン酸化カスケードの刺激に起因すると結論する。あるいは、アンチセンスオリゴヌクレオチドを用いる、MCF−7細胞からのMNARの欠失は、ER媒介性遺伝子発現を阻害し、このことは、MNARがER調節性遺伝子発現に関与することを支持する。これらのデータによって、MNARは、SrcファミリーチロシンキナーゼとのERのクロストークを調節し、それによってエストロゲン受容体の非ゲノム活性を媒介することが明らかになる。
【0151】
これらの研究によって、核内受容体との相互作用におけるMNARの重要性が実証される。MNARは、核内受容体の非ゲノム活性に対してゲノム活性を選択的に調節する化合物を開発する手段を提供する。
【0152】
本明細書において引用された全ての刊行物および特許出願は、各々の個々の刊行物または特許出願が参考として援用されることが詳細にかつ個々に示されたかのように、本明細書において参考として援用される。前述の本発明は、理解を明確にするための例示および実施例によって詳細に記載されているが、特定の変化および改変が、添付の特許請求の趣旨からも範囲からも逸脱することなくここでなされ得ることは、本発明の教示の観点から当業者には容易に明らかである。
【0153】
参考文献:
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【図面の簡単な説明】
【0168】
【図1A】図1は、MNAR、およびp160のアミノ酸配列を比較するアラインメントである。
【図1B】図1は、MNAR、およびp160のアミノ酸配列を比較するアラインメントである。
【図1C】図1は、MNAR、およびp160のアミノ酸配列を比較するアラインメントである。
【図2A】図2は、エストロゲン受容体βとMNARとの相互作用を示す。パネルAは、MCF−7細胞抽出物からプルダウンしたGST−ERβ−LBDによって得られた銀染色したゲルを示す。
【図2B】図2は、エストロゲン受容体βとMNARとの相互作用を示す。パネルAは、MCF−7細胞抽出物からプルダウンしたGST−ERβ−LBDによって得られた銀染色したゲルを示す。得られたペプチドは、逆相HPLCカラムを用いて精製し、質量分析に基づくミクロシークエンシングによって同定した。これらのペプチドの配列を、パネルBに提供する。
【図3】図3は、実施例2における実験からのノーザンブロットによって評価した、種々の細胞株におけるMNARの発現解析の結果を示す。
【図4】図4(AおよびB)は、実施例2における実験由来のノーザンブロットによって評価した、種々の組織におけるMNAR発現分析の結果を示す。
【図5】図5Aおよび5Bは、フラッグタグ付けMNARと、ERα、およびERβ、またはE2とリガンド結合された受容体、または4−OHタモキシフェンとの相互作用を示す。また、全長フラッグ−MNARと、転写/翻訳されたアンドロゲン(AR)および糖質コルチコイド受容体(GR)(その対応するリガンドの有無における)との相互作用の結果も、示される(図5C、および5D)。
【図6A】図6Aは、実施例4の実験の結果を示す。ここでは、試験を行って17βエストラジオールの有無における、SrcまたはLckと、MNAR、および/またはERαとのインビトロにおける相互作用を評価する。
【図6B】図6Bは、実施例4の実験の結果を示す。ここでは、試験を行って17βエストラジオールの有無における、SrcまたはLckと、MNAR、および/またはERβとのインビトロにおける相互作用を評価する。
【図7】図7は、ER−MNAR−Src相互作用の提唱されたモデルの模式図である。
【図8】図8は、cSrc酵素活性におけるER−MNARc複合体のSDS−PAGEゲル分析である。基質として酸変性エノラーゼを用いて、ERの非存在(レーン1および3)、またはER(レーン3〜6)、E2(レーン3および5)、およびMNAR(レーン2、5、および6)の存在下において、cSrc酵素活性を評価した。図8に示すデータは、MNAR自体がcSrc酵素活性を強力に刺激することを示す。
【図9A】図9は、実施例7の実験からの結果を示す一連のグラフである。ここで試験を行って、MNARがER媒介転写に影響するか否かを評価する。図9Aは、ERα、MNAR、および/またはSRC3の結果を示す。
【図9B】図9は、実施例7の実験からの結果を示す一連のグラフである。ここで試験を行って、MNARがER媒介転写に影響するか否かを評価する。図9Bは、細胞をE2か、E2に加えてPP2か、またはE2に加えてPD98059かを用いて処理した場合のERα、およびMNARについての結果を示す。
【図9C】図9は、実施例7の実験からの結果を示す一連のグラフである。ここで試験を行って、MNARがER媒介転写に影響するか否かを評価する。図9Cは、アンチセンス(AS)か、E2か、E2に加えてコントロールか、またはE2に加えてアンチセンスかで処理したMCF−7細胞の結果を示す。それぞれMNAR,pS2,およびカテプシンDを標的するようにプライマー/プローブセットを設計する。
【図9D】図9は、実施例7の実験からの結果を示す一連のグラフである。ここで試験を行って、MNARがER媒介転写に影響するか否かを評価する。図9Dは、アンチセンス、またはE2で刺激した逆コントロールオリゴマーでトランスフェクトしたMCF−7細胞の抽出物の、ウサギポリクローナルMNAR抗血清を用いたウエスタンブロット分析の結果を示す。
【図10A】図10は、E2で処理されていないフラッグ−MNAR発現ベクター、およびE2で処理されたフラッグ−MNAR発現ベクターを用いて、トランスフェクトされていないMCF−7細胞、および/またはトランスフェクトされたMCF−7細胞のSDSゲル分析を示す。フラッグ−MNAR(パネルA),ERα(パネルC、およびD)、およびcSrc(パネルB)を、それらの対応する抗体を用いて、細胞抽出物から免疫沈降させた。ERα抗血清を用いて沈殿させた材料を、ウサギポリクローナル抗体である、抗MNAR抗体を用いてプローブした(パネルE)。ERα−MNAR相互作用のE2増強が、明確に検出された。
【図10B】図10は、E2で処理されていないフラッグ−MNAR発現ベクター、およびE2で処理されたフラッグ−MNAR発現ベクターを用いて、トランスフェクトされていないMCF−7細胞、および/またはトランスフェクトされたMCF−7細胞のSDSゲル分析を示す。フラッグ−MNAR(パネルA),ERα(パネルC、およびD)、およびcSrc(パネルB)を、それらの対応する抗体を用いて、細胞抽出物から免疫沈降させた。ERα抗血清を用いて沈殿させた材料を、ウサギポリクローナル抗体である、抗MNAR抗体を用いてプローブした(パネルE)。ERα−MNAR相互作用のE2増強が、明確に検出された。
【図10C】図10は、E2で処理されていないフラッグ−MNAR発現ベクター、およびE2で処理されたフラッグ−MNAR発現ベクターを用いて、トランスフェクトされていないMCF−7細胞、および/またはトランスフェクトされたMCF−7細胞のSDSゲル分析を示す。フラッグ−MNAR(パネルA),ERα(パネルC、およびD)、およびcSrc(パネルB)を、それらの対応する抗体を用いて、細胞抽出物から免疫沈降させた。ERα抗血清を用いて沈殿させた材料を、ウサギポリクローナル抗体である、抗MNAR抗体を用いてプローブした(パネルE)。ERα−MNAR相互作用のE2増強が、明確に検出された。
【図10D】図10は、E2で処理されていないフラッグ−MNAR発現ベクター、およびE2で処理されたフラッグ−MNAR発現ベクターを用いて、トランスフェクトされていないMCF−7細胞、および/またはトランスフェクトされたMCF−7細胞のSDSゲル分析を示す。フラッグ−MNAR(パネルA),ERα(パネルC、およびD)、およびcSrc(パネルB)を、それらの対応する抗体を用いて、細胞抽出物から免疫沈降させた。ERα抗血清を用いて沈殿させた材料を、ウサギポリクローナル抗体である、抗MNAR抗体を用いてプローブした(パネルE)。ERα−MNAR相互作用のE2増強が、明確に検出された。
【図10E】図10は、E2で処理されていないフラッグ−MNAR発現ベクター、およびE2で処理されたフラッグ−MNAR発現ベクターを用いて、トランスフェクトされていないMCF−7細胞、および/またはトランスフェクトされたMCF−7細胞のSDSゲル分析を示す。フラッグ−MNAR(パネルA),ERα(パネルC、およびD)、およびcSrc(パネルB)を、それらの対応する抗体を用いて、細胞抽出物から免疫沈降させた。ERα抗血清を用いて沈殿させた材料を、ウサギポリクローナル抗体である、抗MNAR抗体を用いてプローブした(パネルE)。ERα−MNAR相互作用のE2増強が、明確に検出された。
【図10F】図10は、E2で処理されていないフラッグ−MNAR発現ベクター、およびE2で処理されたフラッグ−MNAR発現ベクターを用いて、トランスフェクトされていないMCF−7細胞、および/またはトランスフェクトされたMCF−7細胞のSDSゲル分析を示す。フラッグ−MNAR(パネルA),ERα(パネルC、およびD)、およびcSrc(パネルB)を、それらの対応する抗体を用いて、細胞抽出物から免疫沈降させた。ERα抗血清を用いて沈殿させた材料を、ウサギポリクローナル抗体である、抗MNAR抗体を用いてプローブした(パネルE)。ERα−MNAR相互作用のE2増強が、明確に検出された。
【図11】図11は、実施例9における実験由来のウエスタンブロットによって評価した、E2誘導性Erk活性化に対するMNARの分析の結果を示す。
【図12】MNARおよび13MNAR変異体(変異体2〜14)の構造−機能の組織化の模式図である。これらの変異体は、実施例10の実験のもとで、HepG2細胞中にトランスフェクトされたとき、生成されて、それらがER刺激転写を強化する能力について試験された。
【図13】図13は、MNAR欠失変異体(変異体2〜14)の分析の結果を示す棒グラフである。これらの変異体は、実施例10の実験においてhepG2細胞中にトランスフェクトされたとき、それらがER刺激転写を強化する能力について試験された。
【図14】図14は、PXXPモチーフMNAR変異体の分析の結果を示す棒グラフである。これらの変異体は、実施例10の実験においてHepG2細胞中にトランスフェクトされたとき、それらがER転写活性を活性化する能力について試験された。
【図15A】図15は、ヒトMNARのポリヌクレオチド配列(配列番号1)を示す。
【図15B】図15は、ヒトMNARのポリヌクレオチド配列(配列番号1)を示す。
【図16】図16は、ヒトMNARのアミノ酸(配列番号2)を示す。
【図17】図17は、マウスMNARのポリヌクレオチド配列(配列番号12)を示す。
【図18】図18は、マウスMNARのアミノ酸(配列番号13)を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、生化学および内科の分野に関し、そして新規な核内受容体の非ゲノム活性モジュレーター(MNAR)(これは、エストロゲンα(ERα)、およびエストロゲンβ(ERβ)の両方と相互作用する)に関する。より詳細には、本発明は、エストロゲン受容体の転写活性および/またはチロシンキナーゼのsrcファミリーの活性化を調節するための新規な組成物、方法、ならびにアッセイに関する。本発明はまた、核内受容体(例えば、エストロゲン受容体)のゲノム活性と非ゲノム活性との間の区別のための、新規な組成物、方法、およびアッセイに関する。さらに、本発明は、MNARをコードする核酸、アンチセンス、核酸の組み換え発現、ならびに本発明の核酸および蛋白を利用する宿主細胞、組成物、およびアッセイに関する。
【背景技術】
【0002】
核ホルモン受容体は、リガンド誘導性転写因子のスーパーファミリーであり、これは、遺伝子発現のリガンド依存性転写制御に関与する、クラスである。受容体分子において立体配置的な変化を誘導する特定のリガンドの結合は、他の転写因子との受容体相互作用に影響し、そして最終的には前開始複合体の形成に影響する。このプロセスは、遺伝子転写の速度を調節する(D.J.Mangelsdorfら、Cell 83:835〜9,1995(非特許文献1))。
【0003】
核ホルモン受容体のスーパーファミリーとしては、ステロイドホルモン受容体、非ステロイドホルモン受容体、およびオーファン受容体が挙げられる。糖質コルチコイド(GR)、鉱質コルチコイド(MR)、プロゲスチン(PR)、アンドロゲン(AR)、およびエストロゲン(ER)の受容体は、古典的なステロイド受容体の例である。ステロイドホルモン受容体に加えて、この核ホルモン受容体のスーパーファミリーは、ビタミンD、甲状腺ホルモン、およびレチノイドのような非ステロイドホルモンの受容体からなる。さらに、いわゆる「オーファン」受容体をコードする、ある範囲の核内受容体様配列が、同定されている。これらのオーファン受容体は、核ホルモン受容体に構造的に関連しており、従って核ホルモン受容体として分類されるが、推定のリガンドは、まだ同定されていない(Cell,83:851〜857,1995(非特許文献2))。
【0004】
核ホルモン受容体のスーパーファミリーは、6つの別個の構造、かつ機能であるドメイン(A〜F)を含むモジュール構造によって構造的かつ機能的に特徴付けられる。より詳細には、これらの受容体は、可変性のN末端領域(ドメインA/B)を有し;その後ろに、以下を有する:中心に位置した、高度に保存されたDNA結合ドメイン(本明細書において以降では、DBDと呼ばれる;ドメインC);可変性のヒンジ領域(ドメインD);保存されたリガンド結合ドメイン(本明細書において以降はLBDと呼ばれる;ドメインE);および可変性のC末端領域(ドメインF)。Cell(前出)。
【0005】
サイズおよび配列が高度に可変性であるN末端領域は、このスーパーファミリーの異なるメンバーの間でもあまり保存されていない。この受容体のこの部分は、転写活性化の調節に関与する。
【0006】
DBDは、約66〜70のアミノ酸からなっており、DNA結合活性を担う。このドメインは、クロマチン上の特定の標的遺伝子の転写制御単位内の、ホルモン反応性エレメント(本明細書において以降はHREと呼ばれる)と呼ばれる、DNA配列に特異的な受容体を標的する。GR、MR、PR、およびARのようなステロイド受容体は、同様のHRE DNA配列を認識するが、ERは、異なるDNA HRE配列を認識する。DNAへの結合後、このステロイド受容体は、基礎的な転写機構の成分と、そして配列特異的な転写因子と相互作用して、これによって特定の標的遺伝子の発現を調節すると考えられる。
【0007】
LBDは、この受容体のC末端部分に位置しており、主にリガンド結合活性を担う。このように、LBDは、ホルモンリガンドの認識および結合に必須であり、そしてさらに、転写活性化機能を有し、それによってこの受容体のホルモン応答の特異性および選択性を決定する。構造中では中程度に保存されているが、LBDは、核ホルモン受容体スーパーファミリーの個々のメンバーの間では相同性がかなり変化していることが公知である。
【0008】
核内受容体のホルモンリガンドが細胞に進入し、かつLBDによって認識されるとき、それは、特定の受容体蛋白に結合して、それによって受容体蛋白のアロステリックな改変を開始する。(Cell,前出)。この改変の結果として、リガンド/受容体複合体は、転写的に活性な状況に切り替わり、そしてそれ自体が、DBDの存在によって、クロマチンDNA上で対応するHREに高い親和性で結合し得る。このように、リガンド/受容体複合体は、特定の標的遺伝子の発現を調節する。このファミリーの受容体によって達成された多様性は、異なるリガンドに対して応答する能力に起因する。
【0009】
ゲノム活性の調節に加えて、ホルモン受容体複合体は、重要かつ変化した非ゲノム効果を有し得る。この非ゲノム活性は、細胞内のセカンドメッセンジャーにおける高速かつ一過性の増大によって特徴付けられる。次に、これらのセカンドメッセンジャーは、増殖および分化のような細胞機能に影響する、多数の異なる経路およびカスケードに関与する。
【0010】
より詳細には、ステロイドホルモン受容体は、胚の発生、成体の恒常性、および器官の生理学に関連する。種々の疾患および異常が、ステロイドホルモン作用における撹乱に帰せられる。ステロイド受容体は、非ゲノム活性のホルモン活性化転写モジュレーターとして、およびホルモン活性化合物刺激因子として、その影響を及ぼすので、これらの受容体を改変するか、これらの受容体と相互作用するか、またはこれらの受容体を調節するための種々のアプローチへのさらなる検討が、非常に重要な領域である。例えば、これらの受容体における変異および欠損、ならびにこれらの受容体の過剰刺激またはブロックによって、ホルモンシグナル伝達経路の基礎にある機構に対して良好な洞察が提供され得、これによって、ステロイド受容体に関連する疾患および異常の広範な種々の処置における効力の増大がもたらされる。
【0011】
(エストロゲン受容体)
エストロゲン(E2)は、ERとの相互作用を通じて、異なる組織において多くの生物学的効果を発揮する。アミノ酸配列解析、一過性のトランスフェクション研究、およびERの変異分析によって、ERが、上記の古典的なモジュール構造を有することが示される。ERのN末端A/Bドメインは、転写活性化機能1(TAF−1)と呼ばれる、トランス活性化機能を含む。DBDは、2つのジンクフィンガーを含み、かつDNA認識を担う。LBDおよび二次トランス活性化機能(TAF−2と呼ばれる)は、ERのC末端に位置する。
【0012】
ホルモンに対する結合の際、ERは、活性化および形質転換の段階を経験する。活性化されたERは、特定のエストロゲン応答エレメント(ERE)と相互作用する。このEREは、エストロゲン調節遺伝子のプロモーター領域に位置しており、かつその標的遺伝子転写に影響する。過去10年間にわたって、多くの研究が、ER上のリガンド(アゴニスト/アンタゴニスト)の効果、およびERの構造と機能との間の関係の両方の基本的な理解を提供してきた。それにもかかわらず、ERの非ゲノム活性についての機能に関しては、ほとんど明らかになっていない。
【0013】
ERβは、ERαと呼ばれる、さらに一般的に公知のエストロゲン受容体とは異なっていると考えられる。ERαおよびERβは、総称的に、本明細書においてERと呼ばれる。ERβのDBDは、ERαのDBDに対して90%同一である。しかし、ERαのリガンド結合ドメイン(LBD)とERβのリガンド結合ドメインとの間の全体的な相同性は、55%未満である。ERα同様に、ERβは、リガンド依存性の様式でEREからの転写を刺激し得る。
【0014】
エストロゲンは、細胞内セカンドメッセンジャー(カルシウムおよびcAMPを含む)のレベルの高速かつ一過性の増大を誘導すること、およびエストロゲンは、マイトジェン活性化蛋白キナーゼ(MAPK)およびホスホリパーゼCの活性化を誘導することが確認されている(CollinsおよびWebb,1999)。実際、多くの研究によって、エストロゲンが、Src/Ras/MAPキナーゼリン酸化経路の迅速かつ一過性の活性化を誘導することが実証された。この経路の活性化によって、細胞増殖および分化を誘導する重要な細胞機能が誘引される。これらの急性の事象の時間経過は、ペプチドホルモンによって惹起されたものと似ており、これによって、これらの事象はエストロゲンの「古典的な(clasical)」ゲノム作用に関与しないという仮説が、支持される。
【0015】
現在のデータによってまた、エストロゲン受容体と、マイトジェン活性化蛋白(MAP)キナーゼシグナル伝達カスケードとの間の直接のリンクが示唆される。MAPキナーゼは、リン酸化され、かつ種々のシグナルに対する応答において活性化されるセリン−トレオニンキナーゼのファミリーである。これらの酵素は、細胞外シグナルを、複数の膜受容体から細胞内標的(転写因子、細胞骨格蛋白、および酵素を含む)に伝達する。MAPキナーゼファミリーは、細胞外シグナル関連キナーゼ(ERK)、p38、およびcJunN末端キナーゼ(Ras、Raf、およびマイトジェン活性化蛋白キナーゼ(MEK)の連続的活性化に関与する経路を通じてシグナル伝達する)を含む(S.M.Thomas,J.S.Brugge,Annual Review of Cell & Developmental Biology 13,513〜609,1997(非特許文献3))。肺の内皮細胞、ニューロン細胞、骨芽細胞、および破骨細胞において、17βエストラジオール(E2)は、MAPK経路を急速に活性化することが報告されている。
【0016】
より詳細には、肺内皮細胞において、17βエストラジオール(E2)は、一酸化窒素(NO)産生を急速に刺激することが報告されており、したがってこのことは、E2が血管の急性拡張を誘導する能力を説明する。Chenら(Chenら、1999)は最近、単離された肺内皮細胞において、E2が内皮一酸化窒素合成(eNOS)の急速な活性化合物を誘導することを報告している。eNOSのエストロゲン活性化は、MAPキナーゼ経路の急速な活性化を通じて生じることが示された。コンプリメンタリーな研究によってまた、E2が、原形質膜から核に近い細胞内部位へのeNOSのカルシウム依存性転位を誘導すること(急速(5分以内)であり、受容体媒介性であるが、非ゲノムである作用)が示された(Goetzら、1999)。さらに、ホスファチジルイノシトール−3−OHキナーゼ(PI(3)K)のp85α調節性サブユニットとのリガンド依存性ERα相互作用は最近、エストロゲンの心血管保護効果の薬物治療に結び付けられた(Simoncini T、およびJ.K.、2000)。エストロゲンを用いた刺激によって、ERα関連PI(3)K活性が増大され、それによって蛋白キナーゼB/Akt、および内皮一酸化窒素シンターゼ(eNOS)の活性化がもたらされる。
【0017】
ニューロン細胞において、E2によるMAPキナーゼシグナル伝達経路の急速な活性化によって、グルタミン酸塩興奮毒性の後の一次皮質ニューロンにおける神経保護が生じる(Singerら、1999)。エストロゲンのこれらの神経保護効果(曝露の後5分以内に生じることが報告された)は、ER依存性の様式で、c−Src−チロシンキナーゼの一過性の活性化、およびp21(ras)−グアニンヌクレオチド活性化蛋白のチロシンリン酸化を通じて媒介された。
【0018】
同様に、骨芽細胞において、E2は、5分以内にMAPキナーゼリン酸化、および活性化を誘導する(Endohら、1997)。従って、E2は、これらの細胞における細胞増殖および分化を調節し、骨形成の増大を導く。いくつかの研究によってまた、エストロゲンは、Srcキナーゼの活性化を通じて、破骨細胞においてMAPキナーゼ経路を活性化することが示される(Oursler,1998)。これはまた、MAPキナーゼ活性化が、骨再吸収に必要な酵素の調節に関与し得ることを示している(Kristen D.Brubaker,1999)。
【0019】
ヒト乳癌由来細胞株であるMCF−7、およびT47Dにおいて、ならびにヒト結腸癌由来細胞株であるCaco−2において、E2は、Src/Ras/Erk経路を誘導するシグナルを活性化する(Migliaccioら、1993)、(Migliaccioら、1996)、(Migliaccioら、1998)、(Migliaccioら、2000)。この活性化は、直接のER−Src相互作用によって媒介される。興味深いことに、プロゲステロンはまた、T47D細胞において同じ経路を活性化する(Migliaccioら、1998)。Src/Ras/Erkシグナル伝達経路は、増殖因子の周知の標的である。重要なことに、この経路の活性化は、ERとSrcとの直接の相互作用を必要とする。この経路の活性化は、増殖または分化のような異なる細胞応答を誘発する[Cantley,1991];[Marshall,1996];Downward,1997]。ステロイドホルモンのような、エストロゲン受容体リガンドによるこの経路の活性化によって、細胞周期制御におけるその関与が詳細に説明される。
【0020】
これらのデータによって、ERの非転写活性/非ゲノム活性が、細胞増殖の刺激の原因であり得るという見解が支持される。しかし、このプロセスの分子機構の詳細はほとんど未知である。Src活性化は、多数のヒト乳癌および結腸癌において以前に観察されている([Rosen,1986];[Ottenhoff−Kalff,1992])。Srcの活性化によって、トランスジェニックマウスにおける乳房腫瘍が誘導される([Guy,1994])。構成的に活性なRas変異体は、乳癌を含む全ての癌のうち25〜30%で見出されている([Kasid,1987])。
【0021】
最近の研究によって、古典的なERに無関係の原形質膜エストロゲン受容体の存在が示唆されている。この膜ERのクローニングまたは単離は、達成されていないが、他の研究では、古典的なERの小集団は、細胞膜に関連しており、かつエストロゲンの急速な効果の原因であることが示唆されている。
【0022】
核内受容体自体の転写活性が、複数のシグナル伝達経路による緻密な調節のための標的である。これらの経路としては、神経伝達物質ドーパミン([Power,1991];[Smith,1993])、上皮増殖因子(EGF)のような増殖因子、トランスホーミング成長因子−α(TGF−a)、およびインスリン様増殖因子I(IGF−I)([Ignar−Trowbridge,1996]、[Aronica,1993];[Bunone,1996])によって、ならびにプロテインキナーゼCのアクチベーター([Aronica,1994])によって刺激される経路が挙げられる。このような交差カップリングの分子機構は、少なくとも一部は、受容体リン酸化によって媒介されると考えられる。ERは、EGFに対する応答においてMAPキナーゼによってリン酸化され、それによってAF1の刺激が生じることが実証されている([Kato,1996(非特許文献21)];[Bunone,1996])。他の研究によって、ER([Auricchio,1987];[Arnold,1995];[Pietras,1995])、甲状腺ホルモン受容体(TRβ)([Lin,1992])、RARγ([Rochette−Egly,1992])、糖質コルチコイド受容体([Rao,1987])、およびオーファン受容体HNF−4([Ktistaki,1995])がまた、チロシンリン酸化の標的であることが実証された。特定のチロシンリン酸化部位は、ヒトER(hER)のAF2ドメイン内の、アミノ酸537で(Y537)同定された([Castoria,1993];[Arnold,1995])。このチロシンは、AF2配列のすぐN末端に位置しており、かつERβを含む、多様な種由来の全ての公知のER配列において保存されている([Kuiper,1996];[Mosselman,1996])。
【0023】
E2の非ゲノム活性およびゲノム活性の分子機構は、十分解明されていないが、本発明によって、我々は、組織および遺伝子の選択性の活性を用いた新世代の治療法を創出することができるはずである。
【0024】
いくつかのERリガンドの組織選択性作用をさらに理解するために、本発明者らは、異なる細胞株においてER相互作用蛋白の発現および活性を評価した。アフィニティー精製および質量分析(ミクロシーケンシングに基づく)を用いて、本発明者らは、MNAR(核内受容体の非ゲノム活性モジュレーター)と命名された新規なER相互作用蛋白を開発した。
【非特許文献1】D.J.Mangelsdorfら、Cell 83:835〜9,1995
【非特許文献2】Cell,83:851〜857,1995
【非特許文献3】S.M.Thomas,J.S.Brugge,Annual Review of Cell & Developmental Biology 13,513〜609,1997
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
本発明は、新規な蛋白である、核内受容体の非ゲノム活性モジュレーター(MNAR)、およびこの蛋白をコードする核酸を提供する。MNAR蛋白は、エストロゲン受容体のような核ホルモン受容体と相互作用し得る。概して、MNARの蛋白またはポリペプチドとは、MNARのアミノ酸配列をいう。特に好ましい実施形態において、MNAR蛋白は、ERα、およびERβと相互作用する。この相互作用はリガンド依存性である。MNARはまた、ERおよびキナーゼ(例えば、Srcファミリーのメンバー)と複合体を形成する。SrcおよびMAPキナーゼ活性は、ER転写活性の増強をもたらす。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明は、(a)配列番号2の推定アミノ酸配列を有する、MNARをコードするポリヌクレオチドを含む新規な核酸を提供する(図12を参照のこと)。ヒトMNARのヌクレオチド配列は、配列番号1に示される(図15を参照のこと)。ヒトMNARのアミノ酸配列は、配列番号13に示される(図16を参照のこと)。マウスMNARのヌクレオチド配列は、配列番号12に示される(図17を参照のこと)。マウスMNARのアミノ酸配列は、配列番号13に示される(図18を参照のこと)。
【0027】
本発明は、新規な単離された核酸であって、以下:
(a)配列番号2のアミノ酸配列、または配列番号13のアミノ酸配列を含む、新規な蛋白である、核内受容体の非ゲノム活性モジュレーター(MNAR)をコードする、ポリヌクレオチド;
(b)高度にストリンジェントな条件下で、以下:(i)配列番号1のヌクレオチド配列、もしくは配列番号12のヌクレオチド配列のある領域と、(ii)配列番号1のヌクレオチド配列、もしくは配列番号12のヌクレオチド配列の少なくとも100ヌクレオチドの配列と、(iii)または、(i)もしくは(ii)の相補鎖と、ハイブリダイズするポリヌクレオチド;
(c)配列番号1の配列、または配列番号12の配列をコードするポリヌクレオチドに対して少なくとも85%同一性を有する配列を含むポリヌクレオチド;
(d)配列番号1の配列、または配列番号12の配列をコードするポリヌクレオチドを含む、ポリヌクレオチドの変種;ならびに
(e)配列番号20または23のアミノ酸を含むポリヌクレオチドフラグメントをコードするポリヌクレオチド;
(f)(a)、(b)、(c)、(d)、または(e)のポリヌクレオチドの相補型またはアンチセンス型;
からなる群より選択されるポリヌクレオチドであって、ここでこのポリヌクレオチドは、p160蛋白(図1)をコードしない、ポリヌクレオチド、
を含む、新規な単離された核酸配列を提供する。好ましい実施形態において、この単離された核酸は、このポリヌクレオチドの対立遺伝子変種を含む。
【0028】
特定の実施形態において、この核酸は、発現制御配列(例えば、異種制御配列、または同種制御配列)に作動可能に連結される。本発明は、このような単離された核酸を用いて形質転換された宿主細胞(細菌、酵母、昆虫細胞、および哺乳動物細胞を含む)を提供する。
【0029】
本発明はまた、ポリペプチドであって、以下:
(a)配列番号2のアミノ酸配列、または配列番号13のアミノ酸配列を含む、蛋白である、核内受容体の非ゲノム活性モジュレーター(MNAR)のアミノ酸配列;
(b)配列番号14、15、または16のアミノ酸配列を含む、MNARフラグメントのアミノ酸配列;
(c)(a)または(b)の変種、および
(d)(a)、(b)、または(c)のフラグメント、
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチド、に関する。
別の実施形態において、これらのポリペプチドは、配列番号13または14のアミノ酸配列に90%、または95%より多く同一である、アミノ酸配列を含む。特定の実施形態において、本発明のポリペプチドは、配列番号2、13、14、15、16、20、または22のアミノ酸配列を含む。さらなる実施形態において、本発明のポリペプチドは、1つ以上の核内受容体の存在下において、チロシンキナーゼの活性を刺激し得る。この核内受容体は、ステロイド核内受容体、および非ステロイド核内受容体、ならびにオーファン核内受容体から選択され得る。特定の実施形態において、この核内受容体は、エストロゲン受容体である。
【0030】
別の実施形態は、MNARポリペプチドに対応するモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体、ならびにそれらのフラグメントを含む。
【0031】
核内受容体のMNARによる調節の観点において、本発明の多くの実施形態は、核内受容体の転写活性を調節する工程に関する。この工程は、核内受容体の遺伝子座に対してMNARポリペプチドを提供することを含む。例えば、(a)請求項1に記載のMNARの核酸配列を有する組み換えベクターを用いて宿主細胞を形質転換する工程;および(b);この核酸を発現するように形質転換されたこの宿主細胞を、核内受容体の存在下で培養する工程によって、核内受容体の転写活性を調節することができる。
【0032】
本発明はまた、核内受容体の非ゲノム活性またはゲノム活性に影響する化合物を同定するための多くのアプローチを示す。1つの実施形態において、ゲノム活性に対して、非ゲノム活性を示す化合物を同定する方法は、MNAR−核内受容体複合体を含む細胞に対して試験化合物を投与する工程、およびこの試験化合物から生じる非ゲノム活性またはゲノム活性を測定する工程、を含む。これらの方法において、好ましくは、核内受容体の少なくとも1つのリガンドが細胞中に存在するか、またはキナーゼが存在するか、または両方ともが存在する。他の方法は、核内受容体上でMNARの活性を調節する化合物についてのスクリーニングに関する。これは、以下の工程:(a)試験化合物と、MNARポリペプチドとを接触させる工程;および(b)この試験化合物が、このポリペプチドに特異的に結合するか否かを決定する工程、を含む。さらに、核内受容体上でMNARの活性を調節する化合物についてスクリーニングする方法であって、この方法は、以下の工程(a)このポリペプチドおよび核内受容体を含む細胞に、試験化合物を添加する工程;ならびに(b)この添加工程の前後でMNAR活性を比較する工程、を含む方法を実施することができる。この方法に対するさらなるアプローチは、MNAR活性を欠くか、または有意に低下したMNAR活性を有する変異細胞を含むコントロールに対して、試験化合物を投与することを含む。これらの方法のいずれかにおいて、当業者は、コントロールを用いて、ある化合物の非ゲノム活性(またはゲノム活性)を評価し得る。この評価は、MNARおよび核内受容体の存在下で、ある細胞に対してある化合物を投与する工程、次いでMNARの非存在下でこの実験を繰り返す工程、ならびに非ゲノム活性のレベルを比較する工程による。好ましい方法は、MNAR、核内受容体、またはその両方を過剰発現する細胞を使用する。ある化合物のゲノム活性は、レポーターと作動可能に結合した核レポーターを有することによって検出される。
【0033】
本発明の特定の実施形態はまた、非ゲノム活性に対して、選択的ゲノム活性を有する化合物を同定する方法に関しており、この方法は、以下の工程:(a)MNAR−核内受容体複合体を含む細胞に対して試験化合物を添加する工程、および(b)この試験化合物のこの添加の前後に非ゲノム活性に対してゲノム活性を比較する工程、を含む。選択的ゲノム活性は、従来の手段によって測定され得る。好ましくは、測定される非ゲノム活性の増大または正の影響は、MNARの非存在下において試験化合物を用いたゲノム活性と比べて(ここで、この試験化合物の添加後に非ゲノム活性の変化は観察されない)、MNAR核レポーターの存在下において、細胞に対するこの試験化合物の添加後に、2倍増大する。一方では、非ゲノム活性について試験化合物を選択する場合、MNARの非存在下において試験化合物を用いた非ゲノム活性と比べて(ここで、この試験化合物の添加後にゲノム活性の変化は観察されない)、MNAR核内受容体複合体の存在下において、細胞に対するこの試験化合物の添加後に、少なくとも約2倍増大しなければならない。MNARの存在下で核内受容体の転写活性が増大するか低下するかを決定することによって、この効果を測定することができる。
【0034】
種々の細胞(健常、または疾患細胞)において、細胞にとって有益な状態または健常な状態が、非ゲノム活性またはゲノム活性に起因するか否かを理解することが有用であり得る。本発明は、MNARの存在下および非存在下において、細胞の所望の表現型を比較することによって、このような決定を可能にする。
【0035】
本発明はまた、ヒト以外のトランスジェニック動物に関する。ここで1つ以上の細胞が、少なくとも1つの非機能性の内因性MNARポリヌクレオチド配列、少なくとも1つの非機能性内因性核内受容体、またはその両方を含む。好ましい実施形態において、このヒト以外のトランスジェニック哺乳動物は、ERα、およびERβの機能的な内因性形態を有さない。あるいは、トランスジェニック動物は、内因性MNARプロモーターの誘導性/抑制性プロモーターでの置換を含む。請求の範囲のヒト以外のトランスジェニック哺乳動物は、この哺乳動物の少なくとも1つの細胞型において活性なプロモーターの制御下で、内因性選択マーカー遺伝子をさらに含んでもよい。
【0036】
本発明はまた、MNARの機能を破壊する化合物についてスクリーニングする方法に関する。この方法は、MNARと相互作用する化合物を同定するための蛋白間相互作用アッセイを用いることを含む。一旦、任意の周知のツーハイブリッドアッセイまたは他の従来のアッセイを使用すれば、蛋白間相互作用、および試験化合物(これは、天然の産物の単離物、低分子化合物、ペプチドなどであり得る)によるその破壊を研究することができる。
【0037】
MNAR蛋白およびMNARコード核酸は、哺乳動物の細胞および組織(例えば、ヒトおよびマウスの細胞および組織)から入手できる。組み換えMNAR、および抗MNAR抗体は、薬物スクリーニング、診断、および治療法における用途を見出す。詳細には、Srcファミリーのチロシンキナーゼ(遺伝子発現を調節するのに関与する)の酵素活性をアゴナイズまたはアンタゴナイズするERリガンドについて化合物をスクリーニングするための特定の生化学的アッセイを開発するのにおいて、MNARは、有用な試薬を提供する。さらに、種々の核内受容体リガンドについて化合物をスクリーニングするための特定の生化学的アッセイを開発するのにおいて、MNARは有用な試薬を提供する。従って、核内受容体(例えば、ER)、および/またはキナーゼに関与する任意の経路において効果を分析することができる。例えば、以下:(I)癌細胞における細胞周期刺激;(II)骨の発達または調節のための細胞増殖、細胞分化、および細胞保護;(III)神経細胞におけるERリガンド/試験化合物の神経保護活性;ならびに(IV)内皮細胞の肺の指標、に対するERリガンドまたは試験化合物の影響を決定するために、MNARを用いてアッセイを構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
(特定の実施形態の詳細な説明)
(定義)
所定のMNAR蛋白または、所定のMNARに対して「実質的な機能的同一性」を有する蛋白の機能的類似体を、このようなMNARに特異的な1つ以上の生化学的特性を示す蛋白として規定する。
【0039】
「核酸分子」とは、一本鎖分子または二本鎖分子を意味し、そしてこれには、RNA分子、DNA分子、およびRNAまたはDNA分子の類似体が挙げられる。
【0040】
「転写調節」とは、転写の改変を意味し、そしてこれには、以下:転写開始の速度、転写のレベル、または調節性制御に対する転写/転写開始の反応性、の変化が挙げられる。
【0041】
「細胞の新生物状態」とは、細胞(良性であっても悪性であってもよい)の任意の新しい増殖を意味する。
【0042】
「実質的に純粋」、または「単離された」という用語は、MNAR蛋白、MNAR蛋白フラグメント、またはMNARもしくはMNARフラグメントをコードする核酸が、それが正常には、その天然の状態で伴っている、少なくともいくつかの物質を伴わないことを意味する。実質的に純粋なMNARの組成物、またはその一部は、診断、治療、および研究用の試薬において有用な、賦形剤および添加物を含んでもよい。
【0043】
「改変された発現状態」とは、天然に存在する状態のMNARの発現が、天然に存在する状態と比較して、MNAR発現を増大または減少するように改変されていることを意味する。
【0044】
「実質的な配列同一性」とは、蛋白または核酸の一部が、MNAR配列部分と、少なくとも約70%、より好ましくは少なくとも約80%、そして最も好ましくは少なくとも約90%、95%、または99%の配列同一性を示すことを意味する。この配列が本明細書に開示されるネイティブなMNAR配列とは異なる場合、その相違は好ましくは保存的、すなわち、酸性アミノ酸の酸性アミノ酸置換であるか、または冗長性コドンを提供するヌクレオチド変化である。異なる配列は、重合体にわたって均一に分布されるのではなく、領域内で局所的に集合される。実質的に同一な配列は、比較的高いストリンジェンシーのもとで、相補的なMNARコード配列に対してハイブリダイズする。高ストリンジェンシーなサザンハイブリダイゼーション条件を規定する目的で、Sambrookら(1989)第387〜389頁(参考として本明細書に援用される)が都合よく参照され得る。ここで、第11頁における洗浄工程が、高ストリンジェンシーであると考えられる。
【0045】
「融合蛋白またはポリペプチド」とは、第二のアミノ酸配列に融合した少なくとも第一のアミノ酸配列を含む、蛋白またはポリペプチドであって、ここでこのような融合は天然に存在する蛋白またはポリペプチドには生じない、蛋白またはポリペプチドを意味する。好ましくは、この融合蛋白またはポリペプチドにおける少なくとも1つのアミノ酸配列は、MNARのアミノ酸配列である。
【0046】
「変異体または変異」とは、遺伝物質(例えば、DNA)における任意の検出可能な変化、またはこのような変化の任意のプロセス、機構もしくは結果を意味する。これには、遺伝子変異(遺伝子の構造(例えば、DNA配列)が改変されている)、任意の変異プロセスから生じる任意の遺伝子またはDNA、および改変された遺伝子またはDNA配列によって発現される任意の発現産物(例えば、蛋白、ポリペプチド、または酵素)が挙げられる。
【0047】
「変種」は、改変されたかまたは改変された遺伝子、DNA配列、蛋白、ポリペプチド、酵素、細胞など(すなわち、任意の種類の変異体)を示すために用いられる。天然に存在する蛋白またはポリペプチドの変種は、例えば、天然に存在する蛋白またはポリペプチドにおける、1つ以上のアミノ酸の置換、欠失、改変、および/または挿入を含む。
【0048】
「組み換え体」とは、任意の遺伝物質であって、その遺伝物質(例えば、DNA配列)に、もともと生物学的にも天然にも存在しないある配列(例えば、全長または部分的DNA配列)のその配列または鎖への挿入から、生物学的もしくは化学的に生じる遺伝物質(例えば、DNA配列)、を意味する。
【0049】
「蛋白またはポリペプチドフラグメント」とは、より大きい蛋白またはポリペプチドのうちのより小さい任意の部分であって、ここでこのフラグメントは好ましくは、少なくとも約8アミノ酸、そしてより好ましくは25、50、100、または200アミノ酸を有する部分、を意味する。
【0050】
受容体の非ゲノム活性とは、「細胞に対して有益」であり、ここでこの細胞は、この細胞に対する増大した量のMNARの導入の際、所望の活性または表現型の存在を示す。
【0051】
受容体の非ゲノム活性とは、「細胞に対して有益でない」であり、ここでこの細胞は、この細胞に対する増大した量のMNARの導入の際、所望の活性または表現型の非存在を示す。
【0052】
(MNARの特徴づけ)
MNARの配列解析によって、MNARの分子のN末端部分に局在する複数のLXXLLモチーフが明らかになった。他の転写因子における同様のモチーフは、核内受容体のリガンド結合ドメインの表面上の疎水性グルーブとの接触を形成することが以前に示された((Heeryら、1987)、(Torchiaら、1997))。MNAR分子の別の重要な特徴は、プロリンリッチドメインである。このドメインは、SrcファミリーのプロテインキナーゼのSH3ドメインとの相互作用のために利用され得る。初めに、本発明者らは、MNARが、核内受容体とSrcキナーゼとの相互作用を増強し得ると仮定した。本発明者らのデータによって、エストロゲン受容体α、およびβが、MNARと相互作用すること、およびこの相互作用は、17βエストラジオールによって増強されるが、4(OH)タモキシフェンでは増強されないことが示される。興味深いことに、MNAR−ER複合体は、インビトロおよびインビボの両方で、Srcキナーゼの酵素活性と強力に相互作用し、かつこれを刺激する。重要なことに、MNARの過剰発現は、ER転写活性の増強をもたらす。本発明者らは、ERのこの活性が、Srcの下流のキナーゼの1つによる、ERのリン酸化に起因すると予想する。従って、本発明者らは、MNARが、ERとSrcキナーゼとの相互作用を調節し、かつそれによってERの非ゲノム活性を媒介すると提起する。
【0053】
本発明者らのデータによって、ERリガンドについて、本発明者らがアッセイすることを可能にする、ERリガンドのゲノム活性と非ゲノム活性との間を区別し得る実験モデルの開発が支持される。ERの転写活性に影響しないが、Src酵素活性を刺激するリガンドは、重要な骨節約、CNS防御的、かつ心保護的な活性を保有し得る。一方では、ERの転写活性を選択的に制御する化合物は、かなりの選択性作用を有し、それによって多数の副作用を回避する。全体として、本発明者らが核内受容体リガンド、特にERリガンドのゲノム活性および非ゲノム活性を分離する能力によって、本発明者らは、大いに集中した選択性の作用を用いて新世代の治療方法を創出することができるかもしれない。
【0054】
本発明者らのデータによってまた、核内受容体リガンドのゲノム活性と非ゲノム活性との間を区別し得る核内受容体リガンドについて、本発明者らがアッセイすることを可能にする実験モデルの開発が支持される。種々の核内受容体の転写活性に影響しないが、Src酵素活性、または他の非ゲノム酵素活性を刺激するリガンドは、重要な治療的特性、または活性を保有する。一方では、核内受容体の転写活性を選択的に制御する化合物は、かなりの選択性作用を有し、それによって多数の副作用を回避する。全体として、本発明者らが核内受容体リガンドのゲノム活性および非ゲノム活性を分離する能力によって、本発明者らは、大いに集中した選択性の作用を用いて新世代の治療方法を創出することができるかもしれない。
【0055】
(MNARをコードする核酸配列、および対応するMNAR蛋白)
生物学的に活性なMNAR,またはそのMNARフラグメントは、MNARの機能(例えば、ERとの複合体を特異的に形成する能力、またはERの転写活性を調節もしくは強化する能力)のうち1つ以上を保持する。生物学的活性についての例示的なアッセイを、以下、および実施例に記載している。特異的な結合は、MNAR(例えば)を、成分の混合物と接触させること、およびMNARに優先的に結合する成分を同定することによって、経験的に決定される。特異的な結合は、多数の方法(酵母および哺乳動物のハイブリッドシステム、ならびに競合的結合研究が挙げられるがこれらに限定されない)によって都合よく示され得る。例えば、ERまたはMNARについての、可能性のある活性化補助因子、受容体、および/またはリガンドを同定するために、酵母ツーハイブリッドアッセイを用いて、ヒトcDNAライブラリーをスクリーニングした。
【0056】
キナーゼとMNAR−ER複合体との間の相互作用の分析に加えて、MNARを同様のストラテジーで用いて、ERリガンドと、他の公知の転写因子を有するER(他の核内受容体を含む)との間の相互作用を評価し、かつ新規な相互作用する蛋白を同定し得る。例えば、MNAR−ERの相互作用は、17β−エストラジオールによって増強され得るので、試験因子(化合物であっても、蛋白であっても、ペプチドであってもよい)の効果を評価することができる。さらに、Srcの有無において、MNARとERとの間の直接の相互作用を実証するために、酵母ツーハイブリッドシステム、哺乳動物ツーハイブリッドシステム、表面プラズモン共鳴アッセイ、免疫沈降アッセイ、または他のアッセイを用いてもよい。同様に、MNAR−ER複合体、またはMNAR−ER−Src複合体と相互作用する公知の蛋白および新規の蛋白について広範にスクリーニングするために、これらのアッセイシステムを用いることができた。
【0057】
本発明は、組み換え産生されたMNAR蛋白、MNAR類似体、およびそれらのフラグメントを提供する。これらの組み換え産物は、本明細書に開示されるか、または引用された、さもなければ当業者に公知である、物理的技術、化学的技術、および分子技術によって容易に改変される。本発明の特定の実施形態に従って、MNARコード配列のフラグメントは、異種配列と接合されて融合蛋白を生成する。このような融合蛋白は、インビトロおよびインビボでER活性を調節するのにおいて特に有用である。
【0058】
MNARはさらに、当該分野で公知の方法によって改変され得る。例えば、MNARは、リン酸化されても、脱リン酸化されても、グリコシル化されても、脱グリコシル化されても、放射性標識があっても、放射性標識がなくても、その他でもよい。セリン残基、トレオニン残基、およびチロシン残基は特に、有用なリン酸化部分を提供し得る。特に有用なのは、MNARの溶解性、膜輸送能力、安定性、ならびに結合特性および親和性を変更する改変である。いくつかの例としては、脂肪酸アシル化、蛋白分解、および結合を安定化する、核内受容体転写因子相互作用ドメインにおける変異が挙げられる。特に、LXXLLモチーフのうちの1つのプロリンリッチ領域を改変してもよい。
【0059】
実質的に純粋もしくは単離された、MNAR蛋白、またはMNAR部分(核酸によってコードされる)は、一般に、このMNARコード核酸に対して少なくとも約1%;好ましくは少なくとも約10%;より好ましくは少なくとも約50%;そして最も好ましくは少なくとも90%相同性である。核酸重量のパーセンテージは、MNARまたはMNAR部分をコードする核酸(選択的スプライシング型または部分的転写型のような、別の型および類似体を含む)の重量を、存在する総核酸重量で割ることによって決定される。
【0060】
本発明はまた、以下を提供する:転位、転換、欠失、挿入、または他の改変(例えば、選択的スプライシング、およびこのような別の型)によって改変されたMNAR配列、ゲノムMNAR配列、MNAR遺伝子隣接配列(MNAR調節配列、および他の非転写MNAR配列を含む)、MNARのmRNA配列、ならびにMNARコード配列に相補的なRNAおよびDNAのアンチセンス配列、異種MNARをコードする配列、および合成ヌクレオチドを含むMNAR配列。ここで、例えば、リン酸基の酸素は、イオウ、メチルなどで置換されてもよい。
【0061】
改変されたMNARコード配列、または関連の配列は、MNAR様の機能を有する蛋白をコードする。一般に、その少なくとも一部と、MNARの一部との間には、特に保存的置換、特にプロリンリッチ領域、およびLXXLLモチーフ内において、ならびに蛋白間相互作用、特にMNAE−ERもしくはMNAR−ER−キナーゼ相互作用、特にMNAR−核内受容体、もしくはMNAR−核内受容体−キナーゼ相互作用に関与する蛋白ドメインをコードする領域内において、好ましくは少なくとも約40%、より好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%、95%、もしくは99%の実質的な配列同一性が存在する。
【0062】
MNARは、本明細書において記載されるか、さもなければ当該分野で公知の方法によって、別の精製、生合成、改変、または用途に供されてもよい。例えば、そのアミノ酸は、多数の方法(安定性、溶解度、結合親和性、特異性、およびメチル化を改変する工程が挙げられるがこれらに限定されない)で改変されてもよい。本発明のアミノ酸配列はまた、検出可能なシグナルを提供し得る標識を用いて、直接または間接的に、改変されてもよい。例示的な標識としては、放射性同位体、蛍光剤、およびビオチン化が挙げられるがこれらに限定されない。
【0063】
MNARの少なくとも一部をコードする核酸を用いて、そのMNARと相互作用する核因子および核薬剤を同定する。この同定には、Current Protocols in Molecular Biologyにおいて記載されたとおり、酵母または哺乳動物の細胞における発現スクリーニングを用いる(「Protein Expression」第16章(2002)を参照のこと)。MNARと相互作用するこれらの核因子および核薬剤を同定する方法の1つは、哺乳動物、または酵母のツーハイブリッドアッセイまたはスリーハイブリッドアッセイを利用することである。(例えば、以下を参照のこと:Fields S.ら(1994)Trends Genet.10:286〜292;Young Pら(1992)Current Biology 3:408〜420;Zervosら(1993)Cell 72:223〜232;Maduraら(1993)J.Biol.Chem.268:12046〜12054;Bartelら(1993)Biotechniques 14:920〜924;およびIwabuchiら(1993)Oncogene 8:1693〜1696)。本明細書において例証されたように、転写因子(例えば、Gal4)の活性化ドメインをコードするDNAと連結された、融合遺伝子のcDNAを含有する酵母cDNAライブラリーを、MNARの一部、および転写因子のDNA結合ドメインをコードする融合遺伝子を用いてトランスフェクトした。MNAR結合蛋白をコードするクローンは、転写因子の相補性を提供して、レポーター遺伝子の転写を通じて同定される。例えば、FieldsおよびSong(1989)Nature 340,245〜246、およびChienら(1991)Proc.Natl.Acad.Sci USA 88,9578〜9582を参照のこと。
【0064】
本発明はまた、MNAR、またはその一部、またはその類似体をコードし、かつ必要に応じてERおよび/またはキナーゼをコードする核酸を含むベクターを提供する。多数のベクター(これとしては、プラスミドおよびウイルスベクターが挙げられる)が、種々の真核生物宿主、および原核生物宿主における発現について記載されている。ベクターは、しばしば、クローニングまたは発現のための1つ以上の複製システム、宿主での選択のための1つ以上のマーカー(例えば、抗生物質耐性マーカー)、および1つ以上の発現カセットを備える。挿入されたMNARコード配列は、合成されてもよいし、天然の供給源から単離されてもよいし、ハイブリッドとして調製されてもよいし、それ以外でもよい。転写調節配列に対する、このコード配列の連結は、公知の方法によって達成され得る。有利には、ベクターは、MNARコード部分に対して作動可能に連結されたプロモーターを備え得る。
【0065】
適切な宿主細胞を、任意の適切な方法(エレクトロポレーション、CaCl2媒介性DNA取り込み、ウイルス感染、マイクロインジェクション、マイクロプロジェクタイル、または他の確立された方法を含む)によって、形質転換/トランスフェクト/感染させてもよい。あるいは、1つ以上のMNARをコードする核酸は、組み換え事象によって細胞に導入されてもよい。例えば、ある配列を、細胞中にマイクロインジェクションして、それによって、MNARをコードする内因性遺伝子、その類似体もしくは偽遺伝子、またはMNARコード遺伝子に対して実質的な同一性を有する配列の部位での相同組み換えを達成し得る。非相同組み換え、相同組み換えによる内因性遺伝子の欠失(特に多能性細胞などにおける)のような、他の組み換えベースの方法によってさらなる適用が提供される。
【0066】
適切な宿主細胞としては、細菌、古細菌、真菌、特に酵母、ならびに植物および動物の細胞、特に哺乳動物細胞が挙げられる。特に興味があるのは、E.coli、B.Subtilis、Saccharomyces cerevisiae、A549細胞、CHO細胞、COS細胞、HeLa細胞、Hep2細胞、ならびに骨細胞、および不死化された哺乳動物骨髄性細胞株およびリンパ細胞株である。好ましい宿主細胞株としては、MCF−7細胞、およびT47D細胞のようなヒト癌細胞株が挙げられるがこれらに限定されない。理想的には、このような発現系は、市販されているTET オン/オフシステムのような誘導性の発現ストラテジーを利用する。このような細胞株は、非ゲノムER活性におけるMNARの役割を規定するために、そしてMNAR−ER相互作用を調節する潜在的な化合物の効果を評価するために有用である。多数の転写開始のエレメント/領域、および終止調節のエレメント/領域が単離されており、そして種々の宿主における異種蛋白の転写および翻訳に有効であることが示されている。これらの領域、単離の方法、操作の様式などの例は、当該分野で公知である。適切な発現制御配列、および宿主細胞/クローニングビヒクルの組み合わせは周知であり、かつSambrookら(1989)に記載されている。
【0067】
オリゴヌクレオチドをコードするMNARはまた、他のMNAR,または転写因子の活性化補助因子を同定するために用いられ得る。例えば、32P−標識されたMNARコード核酸を用いて、MNAR関連ドメインを有する蛋白をコードする類似のcDNAを同定するために、低ストリンジェンシーにおいてcDNAライブラリーをスクリーニングする。さらに、本明細書に開示された配列を用いる縮重オリゴヌクレオチドプローブによるPCR増幅によって、MNAR関連蛋白を単離する。MNARをクローニングするための他の実験方法もまた、以下の実施例に記載されている。本明細書に開示される本発明を実施するための他の有用なクローニング、発現、および遺伝子操作技術は、当業者に公知である。
【0068】
本明細書に開示される組成物および方法は、遺伝子治療を達成するために用いられてもよい。例えば、Gutierrezら(1992)Lancet.339,715〜721を参照のこと。例えば、MNARの発現または調節の改変を達成し得る遺伝子調節配列に対して作動可能に連結されたMNAR配列を用いて、細胞をトランスフェクトする。MNAR翻訳を調節するために、MNAR相補性アンチセンスポリヌクレオチドを用いて細胞をトランスフェクトしてもよい。
【0069】
アンチセンス調節は、遺伝子調節配列に作動可能に連結されたMNARアンチセンス配列を使用し得る。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、例えば、8、10、15、20、25、30、35、40、45、または50の長さのヌクレオチド配列であり得る。アンチセンス核酸は、化学合成、および酵素連結反応(当該分野で公知の手順を用いる)を用いて構築され得る。例えば、アンチセンス核酸(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド)は、天然に存在するヌクレオチド、または種々の改変されたヌクレオチド(この分子の生物学的活性を増大するように、またはアンチセンスとセンスの核酸との間で形成された二重鎖の物理的安定性を増大するように設計された)を用いて化学的に合成されてもよい。例えば、ホスホロチオエート誘導体、およびアクリジン置換ヌクレオチドが用いられ得る。あるいは、アンチセンス核酸は、発現ベクターを用いて生物学的に生成されてもよい。この発現ベクターには、核酸がアンチセンス方向でサブクローニングされている(すなわち、挿入された核酸から転写されたRNAは、目的の標的核酸に対してアンチセンス方向のRNAである)。本発明においては、その遺伝子の転写がMNARコードmRNAに結合し得るアンチセンス転写物を生じるように配向されたプロモーター配列とともにMNAR配列を含むベクターを用いて、細胞がトランスフェクトされる。転写は、構成的であっても誘導性であってもよく、そしてベクターは、安定な染色体外の維持または組み込みをもたらし得る。あるいは、MNARの少なくとも一部をコードするゲノムDNAまたはmRNAに結合する一本鎖アンチセンス核酸配列は、MNAR発現の実質的な減少を生じる濃度で標的細胞に投与され得る。
【0070】
(核内受容体の非ゲノム活性モジュレーター、および治療因子を同定するためのアッセイ)
本発明は、核内受容体(例えば、ER)のゲノム活性または非ゲノム活性を調節するのに有用な因子を同定するための方法および組成物を提供する。このような因子は、広範な疾患(癌、心血管疾患、微生物および真菌の感染、ならびに特に免疫疾患、骨保護、などが挙げられるがこれらに限定されない)の診断または処置において有用である。ヒト細胞において、核内受容体(例えば、ER)のゲノム活性に対する、核内受容体(例えば、ER)の非ゲノム活性を通じて作用する化合物をスクリーニングするための迅速かつ簡便なハイスループット生化学アッセイを開発する能力によって、薬物開発の新しい道筋が開かれる。さらに、本発明は、細胞内の疾患状態、または細胞の有益な細胞状態が、核内受容体(例えば、ER)のゲノム活性/経路によって達成されるか、非ゲノム活性/経路によって達成されるかを決定するためのツールを提供する。すなわち、核内受容体(例えば、ER)の非ゲノム活性、または核内受容体(例えば、ER)のゲノム活性が低下/増強されるとき、癌細胞が増殖するか否かを決定することができる。一般に、本発明は、核内受容体(例えば、ER)のゲノム/非ゲノム活性を必要とするとして、多くの細胞型を分類する工程を提供する。
【0071】
本明細書において参考として援用される、Young、およびOzenberger(米国特許第5,989,808号)によって開示されるように、通常のアッセイは、酵母ツーハイブリッドアッセイを含む。ツーハイブリッドアッセイは、本発明の低分子化合物、またはペプチド、または蛋白についてスクリーニングするために用いられてもよい。
【0072】
代表的には、見込みのある因子を、合成化合物または天然化合物の大きいライブラリーからスクリーニングする。例えば、糖類、ペプチド、および核酸ベースの化合物のランダムな合成および定方向の合成には多くの手段が利用可能である(例えば、Lamら(1991)Nature 354、82〜86を参照のこと)。あるいは、ライブラリーおよび化合物は、従来の化学的、物理的、および生化学的手段によって容易に改変される。このような改変の例は、本明細書に開示される。
【0073】
MNARまたはMNARコード核酸を使用する広範なアッセイを用いて、有用な因子を同定する。このアッセイはまた、核内受容体、ステロイド受容体、オーファン受容体、ER、ERE(エストロゲン応答エレメント)、ERリガンド、キナーゼ、およびこのようなキナーゼのインヒビターから選択される1つ以上を使用してもよい。例えば、蛋白結合アッセイ、核酸結合アッセイ、およびゲルシフトアッセイは有用なアプローチである。例示的なアッセイは、固定されたMNARに結合している標識された核内受容体(例えば、ER)、標識されたMNAR、または固定された核内受容体(例えば、ER)に結合しているMNARペプチドなどをアッセイする工程を含む。多くの適切なアッセイが、大量薬物スクリーニングに適切な、大規模化されたハイスループット用法を受け入れやすい。用いられる特定のアッセイは、MNAR相互作用の特定の性質によって決定される。アッセイは、単一のMNAR,MNARフラグメント、MNAR融合産物、部分的MNAR複合体、またはMNAR核酸を含む完全な基礎的な転写複合体を使用し得る。
【0074】
有用な因子は、代表的には、MNAR、MNAR−核内受容体複合体、またはMNAR−ER複合体に結合するかまたはそれらの会合を改変する因子である。好ましい因子としては、MNAR遺伝子の発現を調節し得る因子、特に核内受容体スーパーファミリーのメンバーによって転写された遺伝子が挙げられる。
【0075】
有用な因子は、多くの化学的クラス内で見出されるが、代表的にはそれらは、有機化合物(好ましくは低分子有機化合物)である。低分子有機化合物は、50を超えるが約2,500未満、好ましくは約750未満、より好ましくは約250未満の分子量を有する。例示的なクラスとしては、ペプチド、糖類、ステロイド、などが挙げられる。
【0076】
選択された因子は、効率性、安定性、薬学的適合性、などを増強するために改変されてもよい。因子の構造的特定は、さらなる因子を特定、生成、またはスクリーニングするために用いられ得る。例えば、ペプチド因子が同定される場合、それらのペプチドは、その安定性を増強するための種々の方法で、例えば、天然にないアミノ酸(例えば、Dアミノ酸、特にD−アラニン)を用いて、このアミノ末端またはカルボキシ末端を官能化すること(例えば、アミノ基についてはアシル化またはアルキル化、そしてカルボキシル基については、エステル化、またはアミド化)などによって、改変され得る。安定化の他の方法としては、例えば、リポソームなどにおけるカプセル化が挙げられ得る。
【0077】
因子は、当業者に公知の種々の方法で調製され得る。例えば、約60アミノ酸未満のペプチドは、従来の市販の自動シンセサイザーを用いて、今日では容易に合成され得る。あるいは、ペプチド(ならびに蛋白および核酸因子)は、公知の組み換え技術によって容易に産生される。
【0078】
これらのアッセイシステムはまた、潜在的な治療剤(ペプチドおよび化学的リガンドを含む)をスクリーニングするために用いられ得る。MNAR機能のこのような潜在的な治療剤、活性化因子、またはインヒビターは、MNARと、核内受容体(例えば、ER)、もしくはキナーゼ(「クラスI」)のいずれかとの間の相互作用を調節するか、またはMNAR、もしくは核内受容体(例えば、ER)、もしくはキナーゼ(「クラスII」)の活性を調節することによって作用し得る。ツーハイブリッドアッセイ、免疫沈降アッセイ、および表面プラズモン共鳴(SPR)アッセイを含むがこれらに限定されない相互作用アッセイが、(「クラスI」)治療剤を同定するために用いられ得る。例えば、化合物またはペプチドは、それらがMNARと核内受容体(例えば、ER)との間の相互作用を調節する能力について、SPRによってスクリーニングされ得る。哺乳動物トランスフェクションアッセイ(ここで核内受容体(例えば、ER)転写活性が観察される)を含むがこれに限定されない活性アッセイを用いて、「クラスII」の化合物を同定し得る。例えば、化合物は、それらが核内受容体(例えば、ER)活性の強化を調節する能力について、MNARによってスクリーニングされ得る。このような化合物は、MNARと核内受容体(例えば、ER)との相互作用を調節し得るか、またはそれらの化合物は、MNAR、もしくは核内受容体(例えば、ER)の公知の活性もしくは未知の活性(転写の活性またはキナーゼの酵素活性を評価するために用いられ得る、アッセイを含む)を調節し得る。
【0079】
治療用途のために、本明細書に開示される組成物および選択された因子は、その化合物の性質に依存する、任意の都合の良い方法で投与され得る。低分子量の因子については、経口投与が好ましく、そして腸溶性コーティング(その化合物が胃の環境に曝された後に保持しているとは予想されない)が必要とされ得る。一般に、投与された量は、慣用的な用量応答実験によって経験的に決定される。代表的には、量は、レシピエントの体重あたりで、約1〜1000μg/kgに及ぶ。大型の蛋白は好ましくは、非経口的に、好都合には生理学的に受容可能なキャリア(例えば、リン酸緩衝化生理食塩水、生理食塩水、脱イオン水など)中で投与される。代表的には、このような組成物は、血液、または滑液のような、保持されている生理学的液体に添加される。他の添加物としては、安定化剤、殺菌剤などが挙げられ得る。これらの添加物は、従来の量で存在する。
【0080】
MNARはまた、検出可能なシグナルを提供し得る標識を用いて直接または間接的に改変され得る。例示的な標識としては、放射性同位体、蛍光剤などが挙げられる。あるいは、MNARは、35S−メチオニンのような標識されたアミノ酸の存在下で発現され得る。このような標識されたMNARおよびその類似体は、例えば、MNARと相互作用する蛋白について、発現スクリーニングアッセイにおけるプローブとして、または例えば、薬物スクリーニングアッセイにおいてERに結合するMNAR、もしくは他のERと相互作用する蛋白、もしくは転写因子として有用である。
【0081】
他の核蛋白からMNARを識別し得る特定のポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体は、Harlow、およびLane、Antibodies,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,1988、本明細書に援用された他の参考文献に開示された方法および組成物、ならびに当該分野で公知の免疫学的技術およびハイブリドーマ技術を用いて、容易に作成される。詳細には、MNARおよびその類似体およびフラグメントはまた、マウスおよびウサギのような実験動物において抗MNAR抗体を惹起するのに、そして細胞融合または形質転換によるモノクローナル抗体の生成に有用である。
【0082】
抗MNAR抗体、およびそのフラグメント(Fabなど)は、転写複合体におけるMNARの役割を調節すること、MNAR発現ライブラリーをスクリーニングすること、などに有用である。さらに、これらの抗体は、MNARの構造的類似体を同定、単離、および精製するのに用いられ得る。抗MNAR抗体はまた、種々の細胞周期段階の間の感染、サイトカインによる誘導、プロテインキナーゼCおよびAのようなプロテインキナーゼ、などのような、種々の条件下におけるMNARの細胞下局在化のために有用である。他の例示的な適用としては、インビトロ転写抽出物を免疫枯渇するためにMNAR特異的抗体(モノクローナル抗体、またはMNAR由来ペプチド特異的抗体を含む)を用いる工程、ならびにMNAR(類似体を含む)、またはMNARと相互作用する他の核因子を精製するために免疫親和性クロマトグラフィーを用いる工程が挙げられる。
【0083】
組成物はまた、例えば、MNARまたはMNARコード核酸を改変することによる、疾患における治療行為のために提供される。オリゴペプチドは、純粋な形態で合成され得、そして診断および治療において多くの用途を見出し得る。これらのポリペプチドは、例えば、MNAR相互作用蛋白を用いてネイティブなMNAR相互作用を調節するために用いられ得る。このオリゴペプチドは一般に、6アミノ酸より大きく、かつ約60アミノ酸未満、より通常には約30アミノ酸未満であるが、大きいオリゴペプチドが使用されてもよい。MNARまたはその一部は、一般には約50%を超えて、通常は約90%を超えて純粋な精製型で用いられ得る。このような純度までこのようなペプチドを精製するための方法としては、本明細書で開示されるか、さもなければ当業者に公知の種々の形態のクロマトグラフィーによる分離、化学的分離、および電気泳動による分離が挙げられる。
【0084】
(トランスジェニック動物およびトランスジェニック細胞)
動物モデルは、例えば、コレステロールレベル、コレステロール吸収、および胆汁酸合成に対する影響について、化合物をスクリーニングするために有用なビヒクルとして役立つ。トランスジェニック動物(操作されたゲノムを有する動物と規定される)は、特定の適用において特に有用であることが証明されるかもしれない。本出願において、関心は、ER活性の調節または他の核内受容体、およびERの非ゲノム活性に影響するのにおけるMNARの役割に集中している。従って、本発明の実施形態は、MNAR活性を欠くトランスジェニックマウス、および核内受容体活性、ER活性、またはキナーゼ活性を欠くかもしれないトランスジェニック動物を含む。上記の1つ以上を欠いている動物は、MNAR、ER、キナーゼについての化合物またはリガンドの特異性を決定するために有用である。これらの動物は、このシグナル伝達経路の生物学を解明するのに有用なだけでなく、潜在的な治療組成物、および処置方法を検討するのにおけるツールとしても有用である。
【0085】
これらの理由によって、本発明のトランスジェニック非ヒト動物は、少なくとも1つの非機能性の内因性MNAR(および/またはER、および/またはキナーゼ)を有する。本発明のトランスジェニック非ヒト動物が、改変されたMNARおよびERの両方を有し得、これによって、機能的なMNAR−ER複合体を欠く細胞を提供することがさらに意図される。非機能性の特質は、MNAR調節領域において、遺伝子コード配列の中断、蛋白産物を短縮するナンセンス変異、遺伝子コード配列の欠失、または改変を含んでもよい。動物における発現のための異臭遺伝子を設計するのにおいて、遺伝子発現の効率を妨害する配列(例えば、コード配列、プロモーター、イントロン、ポリアデニル化シグナル、ポリメラーゼII終止配列、ヘアピン、コンセンサススプライス部位、など)が排除されてもよい。
【0086】
トランスジェニックのアプローチおよび技術における現在の進歩によって、遺伝子付加、遺伝子欠失、または遺伝子改変を介した、種々の動物ゲノムの操作が可能になった(Franzら、1997)。非ヒト動物における、ヒトのヘモグロビン(本明細書において参考として詳細に援用される、米国特許第5,602,306号)、およびフィブリノーゲン(本明細書において参考として詳細に援用される、米国特許第5,639,940号)のトランスジェニック合成がまた開示されている。その各々は、その全体が参考として本明細書において詳細に援用されている。トランスジェニックマウスモデルの構築は現在、アルツハイマー病のための可能性のある処置をアッセイするために用いられている(本明細書においてその全体が参考として詳細に援用される、米国特許第5,720,936号)。トランスジェニックのMNARノックアウトおよびERノックアウト動物モデルにおいて、MNAR、および/またはERに特異的なリガンドの効果を研究するためのモデルとして、トランスジェニック動物が価値のある情報をもたらすことが、本発明において意図される。
【0087】
(結論)
本発明は、蛋白である核内受容体の非ゲノム活性モジュレーター(MNAR)の分子クローニング、構造分析、および特徴づけに基づく。本発明は、ヒトMNARが、核ホルモン受容体と相互作用して、複合体を形成して、Src蛋白キナーゼの酵素活性に影響することを実証する。
【0088】
ERの細胞表面と、細胞内シグナル伝達経路との間のクロストークは、20年より昔に初めて実証された(Pietras,1975)(Pietras,1977)。それ以来、多数の報告が、血管構造、乳房、骨、子宮、およびニューロン組織において存在する急速なエストロゲン効果を確認したが、その効果は、エストロゲン受容体の「ゲノム」作用では説明できない。反応性細胞におけるエストロゲンの生物学的活性は、特定の高親和性受容体(排他的にその核に位置する)を通してだけでなく、エストロゲンと細胞表面受容体との相互作用を通じても媒介される。この受容体の性質が論議される。いくつかの証拠によって、固有の膜受容体の存在が支持される。他の証拠によって、細胞表面と核エストロゲン受容体との間の同一性、または強力な類似性が支持される(Pietras、およびSzego、1979)、(Bressionら、1986)、(Pappasら、1995)。
【0089】
ERαcDNAを用いてトランスフェクトされたCOS細胞による実験に基づく重要な証拠によって、古典的なエストロゲン受容体が、チロシンリン酸化反応/p21ras/MAPキナーゼ経路の活性化を導くプロセスにおいて、cSrcを活性化し得ることが明確に実証された(Migliaccioら、1996)。
【0090】
MCF7細胞においてER相互作用蛋白のスペクトルを評価して、本発明者らは、新規なER−相互作用蛋白であるMNARを発見した。本発明者らは、ERα、およびERβの両方が、MNARと相互作用して、この相互作用の親和性が、17βエストラジオールによって増強され、かつ4(OH)タモキシフェンによって減少されることを示した(図3)。
【0091】
MNARに相同な蛋白であるp160は、LckのSH2ドメインによるプルダウンアプローチを用いて最近単離された。本発明者らのデータによって、MNARは、MCF7細胞において発現されたこの蛋白の主な形態であることが示される(図2)。
【0092】
次に、本発明者らは、MNARが、Srcファミリーのキナーゼとのエストロゲン受容体の相互作用に影響するか否かを評価した。本発明者らのデータによって、ERαおよびERβの両方が、部分的に精製されたcSrcと相互作用して、この相互作用は、17βエストラジオールによって増強されないことが示される(図4A、およびB)。この結果は、以前に報告されたデータ(Migliaccioら、2000)、(Migliaccioら、1998)と矛盾しない。なぜなら、本発明者らは、インビトロで転写/翻訳されたERおよびMNARを用い、そしてまたcSrcを精製したからである。同時にMigliaccioら(Migliaccioら、2000)、(Migliaccioら、1998)は、MNARを含み得る細胞集出物からSrc相互作用蛋白、またはER相互作用蛋白をプルダウンすることによって彼らの実験を実施した。重要なことに、MNARの存在において、エストロゲン受容体は、リガンド依存性の様式でcSrcおよびLckと相互作用する(図4A、およびB)。本発明者らはまた、MNAR自体は、低い親和性でcSrcまたはLckに結合することを観察した。従って、本発明者らの結果によって、ERおよびMNARは、Srcファミリーキナーゼに対して相乗作用的に結合することが示唆される。基礎的な条件下で、Srcファミリーキナーゼの触媒性ドメインは、分子内相互作用によって不活性な状態に強制される。C末端リン酸化チロシンに対するSH2ドメインの結合は、この分子を阻害された高次構造にロックする([Matsuda,1990])。このリンカー領域のプロリンリッチドメインに対するSH3ドメインの結合はまた、キナーゼ不活性化に重要である([Superti−Furga,1993])。完全な触媒活性には、これらの制限の解除が必要である。Srcのキナーゼ活性は、ホスホチロシン含有配列に対するSH2ドメインの結合によって、およびプロリンリッチ配列に対するSH3ドメインの結合によって増強され得る([Hubbard,1998])。本発明者らは、次に、ER−MNAR結合がcSrc活性化をもたらすか否かを検討した。本発明者らの結果によって、MNARは、cSrc触媒性活性を強力に増強し、この活性は、ER−E2の付加によってさらに刺激され得ることが示唆される(図5)。ERαのホスホチロシン537は、ERとSrcのSH2ドメインとの相互作用に必須の残基として同定された(Migliaccioら、1998))。本発明者らは、ERが、MNAR分子のLXXLLモチーフと相互作用し、そしてERのホスホチロシン537が、SrcのSH2ドメインと相互作用することを提示する。同時に、MNARのプロリンリッチドメインは、おそらくSrcのSH3ドメインと相互作用する。この複合体の形成は、cSrc活性化を導く。
【0093】
EGFに応答するcSrcの活性化は、MAPキナーゼによるERリン酸化、およびER媒介転写の刺激を促進することが以前に示されている([Kato,1996];[Bunone,1996])。本発明者らの結果によって、おそらくcSrc媒介リン酸化カスケードの活性化を通じた、MNARの過剰発現が、ER転写活性を増強することが示される(図6A)。SrcインヒビターであるPP2およびゲニステインの存在におけるMNAR誘導性ER活性化の減弱(図6B)によって、MNARが、cSrc媒介リン酸化カスケードを介してERと相互作用するという見解が支持される。
【0094】
本発明者らの研究は、ERとSrcファミリーのチロシンキナーゼとの間のクロストークを調節し、これによってエストロゲンおよび可能性としては他のステロイドの非ゲノム活性を調節する新しいER相互作用蛋白を記載する。この非ゲノム活性は、重要な機構(これによってエストロゲンが細胞の成長および増殖を調節する)を示す。従ってMNARは、より選択性の作用を有する新しいエストロゲンの開発のための重要な標的を意味し得る。
【0095】
上記の結論は、以下の実施例によって支持される。以下の実施例は、例示の目的で示されるものであって、限定の目的ではない。
【0096】
(実施例)
(機器および試薬)。17β−エストラジオール(E2)および4(OH)タモキシフェンは、Sigmaから入手した。ICI−182,780は、AstraZeneca Pharmaceuticals(Wlimington.DE)から提供された。5’RACEプライマーは、マラソンcDNAキット(BD Biosciences Clontech,Palo Alto,CA)からであった。精製したcSrc、またはLckは、Upstate(Charlottesville,VA)からであった。p34cdc2由来のビオチン化ペプチドは、Wyeth ResearchのPeptide Chemistryグループによって合成された。グルタチオンアガロースビーズは、Sigma−Aldrich(St.Louis,MO)から入手した。抗ホスホチロシン抗体、およびSuperSignal Elisa Picoペルオキシダーゼ基質は、Perbio Science AB(Pierce,Rockford,IL)からであった。SrcインヒビターPP2は、Calbiochem−Novobiochem Corporation(San Diego,CA)からであった。
【0097】
(方法1:)
(NMARの単離および同定)。GST−ERβ−LBD、およびGST−ERα―LBDを、BL21(DE3)E.coli中で発現させた(GSTは、グルタチオン−S−トランスフェラーゼである)。LB中の細胞培養物を、OD0.6で、0.1mM IPTGを用いて誘導し、25℃で3時間インキュベートし、そして細胞を遠心分離によってペレットにした。細菌細胞を、5mlの20mM Tris pH7.2、500mM NaCl,1mM DTT、0.2mM EDTA、0.1mM PMSF中で超音波処理して、40,000gで30分間、遠心分離した。GST−ERβ−LBD、およびGST−ERα−LBDを固定するために、細胞抽出物を、20mM Tris pH7.2,180mM NaCl、1mM DTT、0.005% NP40(結合緩衝液)中に含有される50%のグルタチオンアガローススラリーとともに、4℃でインキュベートした。製造業者の指示に従って、NE−PER Nuclear and Cytoplasmic Extraction Reagents(Perbio Science AB,Pierce,Rockford,IL)を用いて、MCF7細胞抽出物を調製した。17βエストラジオール(0.1μM)とともに、または17βエストラジオールなしで、GST、またはGST−ER−LBD融合蛋白のいずれかとともに、0.5mgのMCF7細胞抽出物を、4℃でインキュベートさせた。結合した材料を、煮沸して2×SDS緩衝液中のアガロースビーズを除いて、10%PAAゲル上で精製した。このゲルを銀染色した。
【0098】
(方法2:)
(精製した蛋白の質量分析解析)。電気泳動によって精製した蛋白サンプルを、手動的に切り出し、次いで還元して、アルキル化して、自動ゲル内トリプシン消化ロボット(Houthaeve T,1997)を用いて、インサイチュでトリプシン(Promega,Madison,WI)を用いて消化した。消化後、Savant Speed Vac Concentrator(ThermoQuest,Holdbrook,NY)を用いて、ペプチド抽出物を、10〜20μlの最終容積まで遠心分離した。自動化マイクロエレクトロスプレー逆相HPLC上で、ペプチド抽出物を分析した。要するに、マイクロエレクトロスプレーの接触面(interface)は、Picofrit溶融シリカスプレーニードル、長さ50cm×内径75μm、10cmの長さまで10μm C18逆相ビーズ(YMC、Wilmington,NC)を充填された8μmの開口部直径(New Objuctive,Cambridge MA)から構成された。Picofritニードルは、質量分析検出器の前面に配置された手製の基礎の上に保持された光ファイバーホルダー(Melles Griot,Irvine,CA)に装着された。このカラムの後ろは、チタンユニオンによって垂直にされ、電気スプレー接触面のための電気的接触を供給する。このユニオンを、FAMOSオートサンプラー(LC−Packings,San Francisco,CA)に配管している溶融シリカキャピラリー(FSC)の長さにそって連結し、そのオートサンプラーを、HPLC溶媒ポンプ(ABI 140C、Perkin−Elmer,Norwalk,CT)に連結した。HPLC溶媒ポンプは、50μL/分の流量を送液し、この流量を、PEEKマイクロタイトスプリッティングティー(Upchurch Scientific,Oak Harbor,WA)を用いて250nL/分に低下させ、次いで、FSCトランスファーラインを用いて、このオートサンプラーに送液した。このLCポンプおよびオートサンプラーを、その内蔵のユーザープログラムを用いて各々制御した。サンプルをプラスチックのオートサンプラーのバイアル中に入れ、密閉して、5μlサンプルループを用いて注入した。表面消化物から抽出したペプチドを、Savant Speed Vac Concentrator(ThermoQuest,Holdbrook,NY)を用いて10倍に濃縮し、次いで0〜50%の溶媒B(A:0.1M HoAc,B:90% MeCN/0.1M HoAc)の50分の勾配を用いて、マイクロエレクトロスプレーHPLCシステムによって分離した。1.5kVのスプレー電圧で作動するFinnigan LCQ−DECAイオントラップ質量分析計(ThermoQuest,San Jose,CA)上で、かつ125℃の加熱キャピラリー温度を用いて、ペプチド分析を行った。この装置に備わったデータ獲得ソフトウェアを用いて、自動化MS/MS様式でデータを獲得した。この獲得方法は、1MSスキャン(375〜600m/z)、その後にMSスキャンにおける上位の2つの最も豊富なイオンのMSスキャンを含んだ。次いで、この装置は、第二のMSスキャン(600〜1000m/z)、その後にそのスキャンにおける上位の2つの最も豊富なイオンのMS/MSスキャンを行った。この動的な排除、および同位体排除機能を使用して、分析されるペプチドイオンの数を増やした(設定:3amu=排除幅、3分=排除期間、30秒=排除前期間、3amu=同位体排除幅)。NCBIゲノムセンターから入手した蛋白の非冗長性(重複のない)(NR)データベースを用いる、Finnigan Bioworksデータ分析パッケージ(ThermoQuest,San Jose,CA)に組み込まれたSEQUESTコンピュータープログラム((Houthaeve T,1997))を用いて、MS/MSデータの自動化分析を実施した。
【0099】
(方法3:)
(MNARのクローニング:)MNARのN末端部分、中間部分、およびC末端部分をクローニングするために、オリゴヌクレオチドの3つの対を設計して用いた。オリゴ#1:TAGGATCCAGATGGCGGCAGCCGTTCTGAG(配列番号3)、およびオリゴ#2:CGATCAGGATCCCAAAGC(配列番号4)を用いて、N末端部分をクローニングした。オリゴ#3:GCTTTGGGATCCTGATCG(配列番号5)、およびオリゴ#4:CAAGGAGATCTCCACATC(配列番号6)を用いて中間部分をクローニングした。オリゴ#5:GATGTGGAGATCTCCTTG(配列番号7)、およびオリゴ#6:GCTAGGAGTCAGGCTCTG(配列番号8)を用いて、C末端部分をクローニングした。1×107個のMCF7細胞を、プロトコールに従って、総RNA単離のために、Trizol(Life Technologies,Rockville,MD)中で溶解した。ワンステップRT−PCRキット(Qiagen,Valencia,CA)を用いるRT−PCR反応物中で、40ngの総RNA、および400nMのオリゴを用いて、MNARを増幅した。この増幅は、50℃で30分で開始し、続いて95℃で15分、次いで95℃で30秒、55℃で30秒、72℃で60秒、および72℃での伸長7分の30サイクルであった。個々の産物をpT−Advベクター(Invitrogen,Carlsbad,CA)中にクローニングして、配列決定した。制限酵素消化および連結によって、全長MNARを構築した。プロトコール(BD Biosciences Clontech,Palo Alto,CA)に従って、ヒトリンパ球マラソンcDNAライブラリーから、オリゴ#1および#6を用いることによって、MNARをまた、独立してクローニングした。MCF−7からクローニングしたMNARは、マラソンcDNAライブラリーからクローニングしたMNARに同一であった。さらなる配列情報を得るために、オリゴ#7CCGAAGCCAAGACACACAGTGCTGCTGGAATAG(配列番号9)、およびマラソンcDNAキット(BD Biosciences Clontech,Palo Alto,CA)由来のアダプタープライマー1オリゴを用いて5’RACEを実施した。
【0100】
(方法4:)
(MNAR発現の解析)HepG2細胞、SaOS2細胞、HOBs02/02細胞、COS−7細胞、MCF−7細胞、T47D細胞、MDA231細胞、イシカワ細胞、I−10細胞、LNCaPLN3細胞、LNCaPFGC細胞、JCA細胞、TSUPRL細胞由来の総RNA(10μg)を、トリドール(Trizol)によって調製し、ゲル上で分離し、膜に転写して、クローニングされたMNARのヌクレオチド367〜400に相当する放射性標識したオリゴ#7を用いてプローブした。ジンバンク(Genbank)配列に寄託されたヌクレオチド1480〜1509に対応する別のオリゴプローブ#8:CTGGAGAAAAAAGGGGCAGAGATAAAGAGT(配列番号10)を用いて、別のノーザンにおいてMCF−7 RNAをプローブした。
【0101】
第二のMNAR発現解析を実施した。MNARのヌクレオチド367〜393に相当する放射性標識したオリゴヌクレオチドプローブを、Perfect Hybridization緩衝液(Sigma−Aldrich,St.Louis,MO)に含有されるヒト複数組織ノーザンブロットII(BD Biosciences Clontech,Palo Alto,CA)に対して、42℃でハイブリダイズさせた。そのブロットを0.2×SSC,0.1%SDS中で42℃で3回洗浄して、フィルムに曝露した。コントロールとして、β−アクチンプローブを用いた。
【0102】
(方法5:)
(一過性トランスフェクション解析:)10%FBSを補充したDMEM中で、HepG2細胞、およびCOS−7細胞を、慣用的に維持した。フェノールレッドを含有せず、10%チャコール剥離血清を補充したDMEM中で96ウェルプレートに、1ウェルあたり50,000個のHepG2細胞、または1ウェルあたり30,000個のCOS−7細胞を播種した。プロトコールに従って、0.5μlのリポフェクタミン2000(Life Technologies,Rockville,MD)を用いて、100ngの2×ERE−tk−lucレポーター、10ngのpCMV−β−gal内部コントロール、1ngのpcDNA3.1 ERα発現ベクター、または5ngのpcDNA3.1ERβ発現ベクターのいずれかを、漸増する量のpcDNA3.1MNAR、またはpcDNA3.1SRC3発現プラスミドの有無において、トランスフェクトした。10−8M 17b−エストラジオール、タモキシフェン、またはICIのいずれかを用いて細胞を24時間刺激し、その後ルシフェラーゼおよびβガラクトシダーゼ活性について処理した。
【0103】
(方法6:)
(MNAR−ER相互作用の解析:)
MNAR−核内受容体相互作用解析を実施した。全長フラッグ−MNARを過剰発現するSF9細胞抽出物を、インビトロにおいて、転写され/翻訳された[35S]標識全長ERα(図5A)、ERβ(図5B)、アンドロゲン(AR)(図5C)、および糖質コルチコイド受容体(GR)(図5D)とともに、それらの対応するリガンド(全て1μMで)の有無において、インキュベートした。抗FLAGセファロースビーズを用いて、形成された複合体を単離し、2×SDS緩衝液中で煮沸して、SDSゲルにロードした。そのゲルを乾燥して、オートラジオグラフィーに供した。
【0104】
(方法7:)
(ER−MNAR−cSrcの相互作用の解析)1μM E2の存在下(図6A、レーン3、5、7、および9)、または非存在下(図6A、レーン2、4、6、および8)において、MNARの存在下(図6A、レーン4、5、および8、9)、または非存在下(図6A、レーン2、3、および6、7)において、インビトロで転写/翻訳されたERαを、精製したcSrc(図6A、レーン2〜5)、またはLck(図6A,レーン6〜9)とともにインキュベートした。抗cSrc抗体または抗Lck抗体、およびプロテインAアガロースを用いたプルダウンによって、形成された複合体を単離し、2×SDS緩衝液中で煮沸して、SDS−PAGEゲル上で分離した。ゲルを乾燥させて、オートラジオグラフィーに供した。
【0105】
(方法8:)
(cSrc酵素活性の解析)基質として酸性化したエノラーゼを用いて、ERの非存在下(図8、レーン1および2)、または存在下(図8、レーン3〜6)、17βエストラジオール(図8、レーン3および5)、およびMNAR(図8、レーン2、5、および6)の存在下で、cSrcチロシンキナーゼ活性を評価した。反応の前に、蛋白を4℃で1時間インキュベートした。[32P]−γATPの添加によって、リン酸化反応を開始して、30℃で10分間継続した。2×SDS緩衝液の添加によって、反応を停止した。リン酸化した蛋白を、SDS−PAGEによって分離して、乾燥したゲルをオートラジオグラフィーに供した。
【0106】
(方法9:)
(ER媒介性転写に対するMNARの効果)
A−HepG2細胞を、ERα、MNAR,および/またはSRC3の発現プラスミドを用いてトランスフェクトした。ルシフェラーゼ遺伝子発現(2×ERE−tk−レポーターによって駆動された)を、E2、4(OH)−タモキシフェン、またはICI 182,780(全て10nM)を用いて処理した細胞中で評価した。B−HepG2細胞を、ERα、およびMNARの発現ベクターを用いてトランスフェクトした。ルシフェラーゼ遺伝子発現(2×ERE−tk−レポーターによって駆動された)を、10nMのE2か、10nMのE2とそれに加えて1μMのPP2か、または1μMのPD98059かを用いて処理した細胞中で評価した。C−MCF−7細胞を、Sequitur,Inc.(Natick,MA)からの100nMのアンチセンス(AS)CATGGAGATGTCCCGGAACAGTGCA(配列番号11)、または1μg/mlのリポフェクタミン2000を複合体化したリバースコントロール(C)オリゴマーを用いて、白色培地中でトランスフェクトした。24時間後、細胞を10nM E2を用いて刺激し、その24時間後、細胞をグアニジウム緩衝液中で溶解して、溶解物から総RNAを単離した。MNAR、pS2、およびカテプシンDを標的するために設計したプライマー/プローブのセットを用いてTaqMan解析を実施した。D−100nMのアンチセンス(AS)−1、またはリバースコントロール(C)−2オリゴマー(10nMのE2を用いて刺激した)を用いてトランスフェクトしたMCF7細胞の抽出物を、ウサギポリクローナルMNAR抗血清を用いるウエスタンブロット解析のために用いた。MNARのアミノ酸509〜520(SHRKGDSNANSD)(配列番号31)をコードする11マーのペプチドに対して、MNAR抗血清を生成した。
【0107】
(方法10:)
(MNAR、およびERの相互作用、およびSrcキナーゼ活性化)
MNAR、およびERαは、Srcと相互作用して、内因性蛋白のリン酸化反応を促進する。FLAG−MNAR発現ベクターを用いてトランスフェクトしたMCF−7細胞、またはFLAG−MNAR発現ベクターを用いてトランスフェクトしていないMCF−7細胞を、E2(10nM)を用いて処理しない(図10、レーン1、および3)か、またはE2(10nM)を用いて5分間処理した(レーン2、および4)。対応する抗体を用いて細胞抽出物から、フラッグ−MNAR(パネルA)、cSrc(パネルB)、またはERα(パネルC、D、およびE)を、免疫沈降させた。免疫沈降物を[32P]−γATPを用いて30分間、30℃(パネルA〜C)、または[32P]−γATPおよびエノラーゼを用いて(パネルD)インキュベートした。2×SDS緩衝液中での煮沸によってキナーゼ反応を停止した。リン酸化した材料をSDSゲル上にロードして、次いで乾燥してオートラジオグラフィーに供した。フラッグ−MNARでトランスフェクトしていない、E2を用いて処理していない細胞(1)、およびE2を用いて処理した細胞(2)からERαプルダウンによって得た材料を、MNAR−抗血清を用いてプローブした(パネルE)。
【0108】
(方法11:)
(E2誘導性のErkキナーゼ1および2活性化に対してMNARは影響する)
エストラジオールによるSrcの活性化が、Ras/Erk5キナーゼ経路を誘発することは以前に報告されている。本発明者らは、MNAR誘導性Src活性化がErkキナーゼ1および2の活性化を導き得ると予想した。本発明者らは、MCF7細胞、MNARを過剰発現する細胞、およびMNAR発現がMNARアンチセンスオリゴヌクレオチド(配列番号11)を用いた処理によって実質的に減弱された細胞における、E2によるErk活性化のレベルを評価した。リン酸化したErk1および2を認識する抗体を用いて、Erk1および2のリン酸化のE2誘導性刺激を検出した。MNAR発現プラスミド(図11、レーン1および2)、またはMNARアンチセンスオリゴヌクレオチド100nM(図11、レーン5および6)を用いてトランスフェクトしたMCF7細胞の抽出物(図11、レーン3、および4);E2(10nM)を用いて刺激していない(図11、レーン1、3、および5)、または5分間刺激した(図11、レーン2、4、および6)MCF7細胞の抽出物を、ウエスタンブロット分析のために用いた。このウエスタンブロット分析には、リン酸化したErk1および2に対する抗体(パネルA);Erk1/2抗体(パネルB);MNAR抗体(パネルC)を用いた。MNAR抗血清オリゴヌクレオチド(配列番号11)は、Sequitur Inc.(Natick,MA)で開発された。
【0109】
(方法12:)
(MNARの構造−機能解析)
MNAR配列解析によって、MNAR分子のN末端部分は、核ホルモンレポーターとの相互作用に重要であることが以前に見出された複数のLXXLLモチーフを含むが、MNARはC末端では、プロリンおよびグルタミン酸の両方がリッチな領域を含むことが明らかになった。エストロゲン受容体およびc−Srcチロシンキナーゼとの相互作用を担うMNARの領域を描写するため、本発明者らは、MNAR欠失変異体の機能的評価を実施した(図12)。適切なフラグメントを増幅すること、およびそれらを適切な発現ベクター中にクローニングすることによって、特別に設計したオリゴヌクレオチドを用いて、MNARの一連のC末端短縮を生成した。HepG2細胞にトランスフェクトされた場合、これらの変異体が、ER刺激された転写物を増強する能力について、これらの変異体を試験した。
【0110】
(方法13:)
(キナーゼ活性に影響する化合物についてのスクリーニング)
以下のとおり化合物をスクリーニングする。用いた反応緩衝液は、50mM Tris−HCl(pH7.0)、50mM MgCl2、50μM Na3VO4である。基質ペプチドを得て、6mgを1.7mLのRB中に溶解し、−20℃で保存する。用いられるATPは、最終濃度400μMである。インヒビターは、例えば、ピセアタノール−3mM(4℃で保存し、かつ遮光する)を用いるべきである。
【0111】
まず、ERを、E2とともにインキュベーションする。例えば、10μlの市販のER(Panvera)を、40μlのRBおよび0.5μlのE2(10−6M)とともにインキュベートする。その混合物を室温で1時間インキュベートする。
【0112】
次に、その混合物をMNAR、E2、およびERの有無の状態に置く。その溶液を室温で30分間インキュベートする。
【0113】
各々のチューブに、10μlのATP(最終濃度400μM)を、10μlの基質ペプチドとともに添加する。これを30℃で60分間インキュベートする。
【0114】
10μlの3mM ピセアタノールを添加して反応を停止する。ここで、この溶液を室温で5分間インキュベートする。
【0115】
希釈およびペプチドの固定を実施する。10μlの反応液を20mlのH2Oで希釈する。200μlの希釈液をNeutrAvidin Plateのウェルに添加する。
【0116】
200μlのPBSを添加することによって洗浄(各々3分間、5回)を実施する。その後に抗−P−Tyr抗体を添加する。その抗体をPBSおよびBSA中で希釈して、溶液をカバーして、37℃で1時間インキュベートさせる。その混合物を上記と同様に洗浄する。
【0117】
次に、HRPプロトコールを用いて、100μlのPierce基質を添加すること、およびVictorで読み取ることによって基質反応を行う。
【実施例1】
【0118】
(MNARの単離および同定、MNARをコードするcDNAのクローニング)
ERリガンドの組織選択性作用をさらによく理解するために、本発明者らは、異なる細胞株においてER相互作用蛋白の発現および活性を評価するためのプロテオミクスアプローチを確立した。本発明者らは、GSTプルダウンアプローチを用いてMNARを同定した。GST−ERβリガンド結合ドメイン(LBD)を、MCF−7細胞抽出物とともにインキュベートした。図2Aは、プルダウン実験によって得られた画分の銀染色を示す。GST−ERβ−E2と特異的に相互作用するが、GST−ERβ、またはGST単独とは相互作用しない多数の蛋白を検出した。
【0119】
対応するバンドを切り出して、トリプシンで消化し、濃縮して、マイクロエレクトロスプレーHPLCシステムによって分離した。Finnigan LCQ−DECAイオントラップ質量分析計(ThermoQuest,San Jose,CA)上でペプチド分析を行った。NCBIゲノムセンターから入手した蛋白の非冗長性(重複のない)データベースを用い、Finnigan Bioworksデータ解析パッケージ(ThermoQuest,San Jose,CA)中に組み込まれたSEQUESTコンピューターアルゴリズム([Houthaeve T,1997])を用いて、質量分析データの自動解析を実施した。
【0120】
図2Aは、上記で方法1において概説されたような実験工程から得られる、銀染色されたゲルを示す。細胞抽出物をグルタチオンビーズ−1、リガンドの非存在下−2、または両方とも10−7MのE2の存在下−3、または4(OH)タモキシフェンの存在下−4において、細菌で発現されたGST−ERβ−LBD融合蛋白とともにインキュベートした。抗GSTアガロースを用いてER相互作用蛋白を単離して、SDS−PAGE上で分離した。対応するバンドを含有するゲル領域を切り出して、トリプシン消化に供した。
【0121】
リガンド依存性相互作用を表す蛋白に相当するバンドを切り出して、トリプシンで消化して、質量分析に基づくペプチドのマイクロシーケンシングを用いて同定した。公知であり十分特徴付けられた活性化補助因子(例えば、SRC3、およびDRIP205)と一緒に、本発明者らは、ERと相互作用することが以前に示された蛋白を同定した。この蛋白は、E2の存在下でGST−ERβ−LBDと相互作用し、かつ約120kDaの見かけの分子量を有した(図2A)。
【0122】
ペプチド配列解析によって、この蛋白が、p56lck(Lck)のSrc相同性ドメイン2(SH2)を用いたプルダウンによって以前に単離された、プロリンおよびグルタミン酸リッチな蛋白であるp160(Genbank U88153)に関連し得ることが明らかになった(21)。図2Bは、質量分析、およびMNAR分子におけるペプチドの位置によって同定されたペプチドの配列を示す。
【0123】
NCIデータベースを検索することによって、本発明者らはまた、この蛋白にマッチしたいくつかのESTを同定した。それらの1つであるAL03939は、N末端でマッチし、そして5’配列をさらに100bp伸長した。整列された配列を用いて、MCF−7細胞からこの蛋白をクローニングするためのオリゴヌクレオチドプライマーを設計した(22)。
【0124】
しかし、クローニングされた蛋白の配列(図1を参照のこと)は、p160(Genbank U88153)とは実質的に異なった。2つの配列の間を識別するため、そしてp160とも呼ばれる核内受容体活性化補助因子のファミリー((Voegelら、1998)、(Hongら、1997)、(Anzickら、1997)、[Suen,1998])との混同を避けるため、本発明者らがMCF7細胞からクローニングしたこの蛋白を、本発明者らは、MNARと命名した。
【0125】
MNARおよびp160の配列アラインメント(図1A)によって、MNARが、p160(Genbank U88153)に存在するヌクレオチドの1075〜1510、および3125〜3151を含まないことが示された。さらに、p160配列と比べて、10個の単一塩基対のギャップ、および1個の二重塩基対のギャップが存在した。
【0126】
MNARはまた、ヒトリンパ球マラソンcDNAライブラリー(Invitrogen)から独立してクローニングされた。重要なことに、MCF−7細胞からクローニングされたMNARは、マラソンcDNAライブラリーを用いてクローニングされたMNARと同一であった。さらなる配列情報を得るために、本発明者らは、マラソンcDNAキット(Clontech)由来のプライマーを用いて5’RACEを実施した。5’RACEを用いて、MNARの推定開始コドンの5’側の3つのリーディングフレームの全てにおいて、終止コドンを見出した。MNARクローンの概念上の翻訳によって、計算上の分子量が119.6kDaである1130個のアミノ酸の蛋白を生じた。このクローンは、質量分析の解析によって最初に同定されたペプチド配列を全て含んだ(図2B)。
【0127】
配列の解析によって、MNAR分子のN末端部分に局在する複数のLXXLLモチーフが明らかになった。本発明者らは、それを、仮定的に、核内受容体相互作用ドメイン(NRID)と呼ぶ。他の転写因子における類似のモチーフは、核ホルモン受容体のリガンド結合ドメインの表面上の疎水性グルーブと相互作用することが示されている(Heeryら、1997)、(Torchiaら、1997)(23)。MNAR分子の興味深い特徴は、MNAR分子のC末端部分に局在する、伸長したプロリンリッチドメイン(PRD)、およびグルタミン酸リッチドメイン(ERD)である。これらのドメインに対する相同性は、NCIデータベースにおいては見出されなかった。
【実施例2】
【0128】
(MNAR発現の解析)HepG2、SaOS2、HOBs02/02、COS−7、MCF−7、T47D、MDA231、イシカワ、I−10、LNCaPLN3、LNCaPFGC、JCA、TSUPRLの各細胞株におけるMNAR発現を、ノーザンブロット解析を用いて評価した。この目的のために、本発明者らは、MNARの配列と、寄託されたp160(GenbankU88153)の配列との間に共通する、MNARのN末端部分由来のオリゴペプチドを用いた。ほとんど全ての細胞株において、MNAR mRNAの発現を、4kbのバンドの存在によって評価されるとおり、検出した(図3)。MNAR発現のレベルは、異なる細胞株の中で有意に異なった。MNAR発現は、肝臓細胞(HepG2)、および前立腺細胞(LNCaPLN3、LNCaPFGC、JCA、TSUPRL)中で高く、そしてERを発現しない乳房腫瘍細胞(T47D、MDA231)においては低度〜検出不能であった(図3)。p160が、MCF−7細胞中で発現されるか否かを評価するために、本発明者らは、MNAR配列を欠いており、Genbankに対して寄託されたp160配列のヌクレオチド1480〜1509によってコードされる、p160の領域に対するオリゴ−プローブを用いたノーザンブロット解析を用いた。このプローブを用いて、本発明者らは、どのようなメッセージも検出できなかった(データ示さず)。この結果によって、MCF−7細胞中で発現したこの蛋白のほとんどの型は、MNARと十分にマッチするが、p160をコードするmRNAは、発現されないか、非常に低いレベルで発現されることが示される。
【0129】
異なる組織におけるMNAR分布を、ノーザンブロットによって解析した。ここでも、本発明者らは、MNARと寄託されたp160配列(GenbankU88153)との間で共通である、MNARのN末端部分由来のオリゴプローブを用いた。またここでも、MNAR mRNAの発現は、4kbのバンドの存在による評価として(図4)、ほとんど全ての組織において検出された(図4)。MNAR発現のレベルは、異なる組織の間では変動すると考えられる。
【実施例3】
【0130】
(MNARは、エストロゲン受容体と特異的に相互作用する)
全長フラッグ−MNARを用いて、本発明者らは、MNARとエストロゲン受容体との相互作用が、ERリガンドによって影響されるか否かをさらに評価した。バキュロウイルス発現系を用いて、SF9細胞において過剰発現された全長フラッグ−MNARを、インビトロで転写/翻訳された、リガンドが結合していない全長のERαおよびβ、またはE2もしくは4−OHタモキシフェンとリガンド結合した受容体、を用いるプルダウン実験において用いた。形成された複合体を、抗フラッグセファロースビーズを用いて単離した。
【0131】
図5A、および5Bによって、ERαおよびβが、MNARと相互作用すること、ならびにこの相互作用は、E2によって増強されて、4(OH)タモキシフェンによって阻害されることが明らかになった。本発明者らは、また、他のいくつかの核ホルモン受容体とのMNARの相互作用を評価した。全長フラッグ−MNARを、転写/翻訳されたアンドロゲン(AR)、および糖質コルチコイド受容体(GR)とともに、それらの対応するホルモンの有無において、インキュベートした。このデータによって、ARおよびGRのリガンドは、MNARと独立して相互作用することが示された(図5B、および5C)。この相互作用は、これらの受容体リガンドの非ゲノム活性を説明し得る。これらおよび他の核ホルモン受容体のMNARとのクロストーク、ならびにSrcリン酸化カスケードの詳細な検討は、将来の検討のための重要な課題である。
【実施例4】
【0132】
(MNARのc−SrcおよびLckとの相互作用は、E2リガンド結合エストロゲン受容体によって増強される)MNARに対して相同な蛋白であるp160が、p56lck(Lck)のSH2ドメインを用いたプルダウンを介して最初に同定されたことを考慮して、本発明者らは、次に、MNARが、Srcファミリーチロシンキナーゼのメンバーと相互作用し、ERとのそれらの相互作用に影響するか否かを検討した。
【0133】
この疑問に取り組むため、本発明者らは、インビトロで転写/翻訳されたエストロゲン受容体であるERα、ERβ、およびMNARを用いた。17βエストラジオール(E2)の存在の有無において、ERを、単独でかまたはMNARと一緒に、市販の部分的に生成されたcSrcまたはLck(Upstate Biotechnology)とともにインキュベートした。形成された複合体を、抗c−Src、または抗Lck抗体、およびプロテインAセファロースを用いてプルダウンし、次いでSDSゲル上で分離した。
【0134】
このデータは、ERαが、cSrcおよびLckと相互作用することを示す(図6A、レーン2、および3、6および7)。驚くべきことに、この相互作用は、E2によって阻害された。ERαを、MNARおよびcSrcの両方(図6A、レーン4、および5)、またはLck(図6A、レーン8、および9)とともにインキュベートした場合、リガンド結合していないERα(図6A、レーン4、および8)と比べて、E2の存在下において(図6A、レーン5、および9)、Src−ER−MNAR複合体形成の有意な刺激が検出された。MNAR自体は、cSrcまたはLckと十分相互作用せず(図6A、レーン11)、ERとのcSrcおよび/またはLckの相互作用は、E2によって阻害される(図6A、レーン3)ので、本発明者らは、全ての3つの蛋白が、E2の存在下で強力に相互作用すること、およびMNARが、ER−Src相互作用に対して重要であることを結論する。ERβについても同一のデータが得られた(図6B)。
【0135】
Auricchioおよび共同研究者による以前の研究によって、ERがSrcのSH2ドメインに直接結合すること、およびこの結合は、E2によって増強されることが示唆された。本発明者らのデータと、彼らのデータとの間の明白な不一致について可能性のある説明は、ER−Src相互作用を評価するために、彼らが細胞抽出物からのSrcプルダウンを用いたという事実に依存するかもしれない。MNARは、これらの抽出物に存在する可能性が最も高く、ER−Src複合体形成を媒介した。
【0136】
基礎的な条件下では、Srcの触媒性ドメインは、分子内相互作用を通じて不活性状態に強制される。C末端リン酸化チロシンに対するSH2ドメインの結合、およびSrcリンカー中のプロリンリッチ領域に対するSH3ドメインの結合によって、この分子は阻害された高次構造にロックされる(図7)。完全な触媒性活性には、これらの拘束の解放が必要である。
【0137】
Srcのキナーゼ活性は、SH2ドメインに対するホスホチロシン含有配列の結合、およびSH3ドメインに対するプロリンリッチ配列の結合によって増強され得る。MNARが、伸長したプロリンリッチドメイン(PRD)を含むこと、およびERのリガンド結合ドメインが、リン酸化され得るチロシン残基を含むことを考慮して、本発明者らは、これらの相互作用がSrc活性化をもたらし得ると仮定した(図7を参照のこと)。
【実施例5】
【0138】
(MNARは、ER駆動トランス活性化を刺激する)EGFに対する応答におけるcSrcの活性化は、ERリン酸化を促進すること、およびMAPキナーゼによって他の転写因子のリン酸化を促進すること(これによってER媒介性転写を刺激する)が、以前に示されている([Kato,1996];[Bunone,1996])。MNARが、ERの転写活性に影響するか否かを評価するため、ERα(図6A),またはERβ(図6B)、およびMNARを用いてCOS7細胞を同時トランスフェクトした。2×ERE−tk−レポーターによって駆動されたルシフェラーゼ遺伝子発現を、17βエストラジオールで処理された細胞、および処理されていない細胞において評価した。本発明者らのデータによって、MNAR発現の増大は、ERαおよびERβの転写活性の刺激に相関することが示される(図6A、および6B)。次に、本発明者らは、cSrcインヒビターが、MNAR促進ER活性化に影響するか否かを評価した。ERα、およびMNARを用いてトランスフェクトしたHepG2細胞(図8)を、17βエストラジオール単独か、17βエストラジオールおよびSrcの選択性インヒビターであるPP2(Calbiochem)か、またはゲニステインを用いて24時間処理した。以前の実験(図8)においてと同様に、MNARは、E2誘導性ERα活性化を刺激した。同時に、SrcインヒビターであるPP2およびゲニステインは、MNAR刺激を阻害した(図8)。これらのデータによって、ER活性のMNAR誘導性刺激は、リン酸化カスケードの活性化とリンクしていることが示される。
【実施例6】
【0139】
(MNAR過剰発現は、ERの転写活性に影響する)
MNAR過剰発現がERの転写活性に影響するか否かを評価するため、ERαおよびMNARの発現のためのプラスミドを用いて、HepG2細胞を一過性に同時トランスフェクトした。2×ERE−tkレポーターによって制御したルシフェラーゼ遺伝子発現を、E2、4(OH)−タモキシフェン、またはICI 182,780(全て10nM)で処理した細胞中で評価した。
【0140】
この結果(図9A)によって、MNAR発現が増大することは、ERα転写活性の刺激と十分に相関することが示される。ER転写活性の同様の刺激が、ER活性化補助因子SRC3の過剰発現によって観察された。本発明者らのデータによってまた、4(OH)−タモキシフェン、およびICI 182,780は、ER活性のNMAR刺激を支持しないことが示される。ERβを用いて同様の結果が観察された(データ示さず)。
【0141】
cSrc活性化が、ER活性のMNAR刺激の原因である否かを検討するため、ERα、MNAR、および2×ERE−tk−レポーターのプラスミドを用いてトランスフェクトしたHepG2細胞(図9B)を、E2単独を用いるか、またはE2と、cSrcインヒビターであるPP2、もしくはMEKキナーゼインヒビターであるPD98059のいずれかを用いて処理した。本発明者らは、PP2およびPD98059が両方ともER活性のMNAR刺激を抑止することを見出した。これらの結果によって、ER転写活性のMNAR促進性刺激は、MAPキナーゼリン酸化カスケードの活性化にリンクしていることが示される。本発明者らは、以前に記載されたように、SrcおよびMEKキナーゼの下流の、ErkによるERリン酸化が、ER転写活性の増強の原因であり得ると仮定する。さらに、Src/MAPキナーゼ経路の活性化が、ER転写活性に重要である、いくつかの他の転写因子のリン酸化をもたらすことは、あり得る。重要なことに、これらのデータによってまた、リン酸化カスケードの活性化を通じた核ホルモン受容体のいわゆる「非ゲノム」作用が、転写因子の活性を調節し得、それによって最終的に遺伝子発現に影響し得ることが示唆される。本発明者らは、この機構が、MNARと相互作用し得る核内受容体と、リン酸化によって活性が調節される他の転写因子との間のクロストークを設け得ると推測する。
【実施例7】
【0142】
(MNARは、ER媒介性遺伝子発現に影響する)
本発明者らは、次にアンチセンスアプローチを用いて、遺伝子転写のエストロゲン調節におけるMNARの役割を評価した。TaqMan(図9C)、およびウエスタンブロット(図9D)解析によって評価されるように、MCF−7細胞におけるMNAR発現を有意に阻害する、アンチセンスオリゴヌクレオチド(配列番号11)が、開発された(Sequitur Inc.,Natick,MA)。MCF−7細胞を100nMのアンチセンスまたはリバースコントロールオリゴマーを用いてトランスフェクトした。24時間後、10nMのE2を用いて細胞を刺激して、その24時間後、細胞を溶解して総RNAを単離した。MNAR、pS2、およびカテプシンDを標的するために設計されたプライマー/プローブセットを用いて、TaqMan解析を実施した(2つの遺伝子は、MCF−7細胞においてエストロゲンによって調節されることが公知)。図9Cは、MNAR、pS2、およびカテプシンDのmRNA発現のレベル(GAPDHのmRNAに対して正規化した)を示す。興味深いことに、MNPA mRNAの発現は、E2処理によって実質的に刺激された。本発明者らのデータによって、MNAR発現の減少は、E2刺激性のpS2およびカテプシンDの発現の劇的な低下をもたらすことが示される。重要なことに、MNARアンチセンスオリゴヌクレオチドは、これらの遺伝子発現の基本的なレベルに有意に影響しない。本発明者らは、ERリン酸化がおそらくpS2およびカテプシンDのE2媒介性発現に重要であると予想する。これらのデータによって、MNARは遺伝子発現のER調節に必須であるという、本発明者らの見解が支持される。
【実施例8】
【0143】
(MCF−7細胞における、MNARおよびERの相互作用、ならびにSrcキナーゼ活性化)
本発明者らは、MNARおよびERがMCF−7細胞において相互作用して、Srcキナーゼを活性化するか否かを評価した。フラッグ−MNAR発現ベクターを用いてトランスフェクトされたMCF−7細胞を、10nMのE2を用いて5分間、処理した。フラッグ−MNAR(図10、パネルA)、ERα(図10、パネルC、およびD)、およびcSrc(図10、パネルB)を、それらの対応する抗体を用いて、細胞抽出物から免疫沈降させた。Erα抗血清を用いて沈殿させた材料を、ウサギポリクローナル抗MNAR抗体を用いてプローブした(図10、パネルE)。ERα−MNAR相互作用のE2増強が明確に検出された。フラッグ−MNARを用いてトランスフェクトされていないMCF7細胞がこの実験に用いられたことを考慮すれば、このデータによって、内因性MNARおよびERαが、MCF7細胞において相互作用することが確認される。免疫沈降物を[32P]−γATPとともに30℃で30分間インキュベートした。2×SDS緩衝液中での煮沸によって反応を停止して、SDS PAAG上で分離した。いくつかの内因性蛋白の強力なMNAR依存性およびE2依存性のリン酸化が検出された。cSrc、ER,およびMNARと同時沈降した、約34kDaの見かけの分子量を有する内因性蛋白のリン酸化が特に明白であった(図10を参照のこと)。
【0144】
重要なことに、MNARでトランスフェクトされていない細胞から抗Src抗体および抗ER抗体を用いて同時沈降した物質中で、この蛋白のリン酸化が検出された(図10、レーン1および2)。このリン酸化は、E2の存在下(図10、レーン2)で刺激され、次いでMNARでトランスフェクトされた細胞中で劇的に増強された(図10、レーン3および4)。これらのデータによって、MNAR、ER、およびcSrcがMCF−7細胞中で相互作用し、そしてMNAR−ER複合体が、cSrcキナーゼ活性を強力に刺激する(これがMCF−7細胞中においていくつかの内因性蛋白のリン酸化を促進する)という本発明者らの見解が強力に支持される。エノラーゼをSrc基質として用いた場合、同一のリン酸化パターンが検出された(図10、パネルD)。
【実施例9】
【0145】
(MNARは、E2誘導性Erkキナーゼ1および2活性化に影響する)
本発明者らは、次に、MCF7細胞(図11、レーン3および4)、MNARを過剰発現する細胞(図11、レーン1および2)、およびMNAR発現がMNARアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いた処理によって実質的に減弱された細胞(図11、レーン5および6)において、E2によるErk活性化のレベルを評価した。リン酸化したErk1および2を認識する抗体を用いて、Erk1および2のリン酸化の強力なE2誘導性刺激を明確に検出した(図11、パネルA)。この活性化は有意に、MNARを過剰発現する細胞(図11、パネルA,レーン1および2)において増強されて、MNARアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いて処理された細胞(図11、パネルA,レーン5および6)において減弱された。MNARアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いた処理でも、E2を用いた短時間処理でも、Erk1および2の総レベルには影響しなかった(図11、パネルB)。ウエスタンブロット解析によって、MNARレベルが、MNAR発現プラスミドを用いてトランスフェクトされた細胞において強力に増大されること(図11、パネルC、レーン1および2)、そしてMNARアンチセンスオリゴヌクレオチド(図11、レーン5および6)を用いて処理された細胞において減少されること(図11、パネルC、レーン5、および6)が示された。これらのデータによって、MNARは、cSrcおよびErk1および2キナーゼのE2誘導性刺激を制御することが示される。
【実施例10】
【0146】
(MNARの構造−機能の組織化)
MNAR配列解析によって、MNAR分子のN末端部分は、核ホルモンレポーターとの相互作用に重要であることが見出された複数のLXXLLモチーフを含むことが明らかになった。MNARはC末端では、プロリンおよびグルタミン酸の両方がリッチな領域を含む。エストロゲン受容体およびc−Srcチロシンキナーゼとの相互作用を担うMNARの領域を描写するため、MNAR欠失変異体の機能的評価を実施した(図12)。適切なフラグメントを増幅すること、およびそれらを適切な発現ベクター中にクローニングすることによって、特別に設計したオリゴヌクレオチドを用いて、MNARの一連のC末端短縮を生成した。HepG2細胞にトランスフェクトされた場合、これらの変異体が、ER刺激された転写物を増強する能力について、これらの変異体を試験した。
【0147】
アミノ酸1〜469(変異体2、配列番号14)、アミノ酸1〜278(変異体3、配列番号15)、およびアミノ酸1〜189(変異体4、配列番号16)を含むMNAR変異体は依然として、ER転写活性を増強し得るが、MNAR分子のC末端部分(アミノ酸555〜1131(変異体9、配列番号17)、アミノ酸595〜962(変異体10、配列番号18)、およびアミノ酸595〜887(変異体11、配列番号19))を含有する変異体は、不活性である。これらのデータによって、ER転写活性を刺激するのに必要かつ十分であるこのドメインが、アミノ酸1と189との間のNRIDのN末端部分に局在することが示唆される(図13)。この領域は、LXXLLモチーフ:4番目(アミノ酸154〜159)(配列番号20)、5番目(アミノ酸176〜181)(配列番号21)、および6番目(アミノ酸181〜185)(配列番号22)を含む(図12)。これらのモチーフが、エストロゲン受容体との相互作用の原因であることを評価するため、本発明者らは、変異されたこれらの3つのLXXLLモチーフを、個々にまたは組み合わせて有するMNARの変異体を作成した。
【0148】
MNARは、LXXLLモチーフを利用してエストロゲン受容体と相互作用するが、MNARは、PXXPモチーフを用いてErcと相互作用する。MNARは、N末端部分内にこれらのPXXPモチーフのうちの3つを含む。欠失分析によれば、最初の2つのPXXPモチーフを失っているMNARの構築物は、トランスフェクションアッセイにおいてエストロゲン受容体活性を刺激できない(図13)。このことは、これらの最初の2つのPXXPモチーフが、Srcとの相互作用に十分であることを示唆する。これらのモチーフの変異によって、最初のPXXPモチーフ(アミノ酸55〜58)(PXXP変異体1、配列番号23)は、ER転写活性を活性化するのに必要かつ十分であるが、第二のPXXPモチーフ(アミノ酸64〜67)(PXXP変異体2、配列番号32)は、除去可能であることが明らかになった(図14)。
【0149】
本研究において作成されたさらなる変異体は以下のとおりであった:アミノ酸1〜120を有する変異体5(配列番号24);アミノ酸1〜79を有する変異体6(配列番号25);アミノ酸1〜40を有する変異体7(配列番号26);アミノ酸190〜469を有する変異体8(配列番号27);アミノ酸888〜1131を有する変異体12(配列番号28);アミノ酸80〜594を有する変異体13(配列番号29);アミノ酸80〜574を有する変異体14(配列番号30)。これらの変異体の各々は、上記に列挙した他の変異体とともに、図12に模式的に図示されており、HepG2細胞にトランスフェクトされた場合、ER刺激性転写を増強する能力について解析された(図13)。
【0150】
結論として、本発明者らは、エストロゲン受容体αおよびβとMNARとの相互作用が、E2によって増強されるが、4(OH)タモキシフェンによっては増強されないことを実証する。本発明者らはまた、MNAR−ER複合体が、Src酵素活性を劇的に刺激するSrcファミリーのチロシンキナーゼであるp60src(Src)およびp56lck(Lck)と相互作用することを示す。本発明者らはまた、MNARが、Srcリン酸化カスケードの活性化を通じて、ER転写活性に影響して、最終的にはER媒介性遺伝子発現に影響することを示す。詳細には、本発明者らは、E2を用いたMCF−7細胞の短時間処理が、MNAR−Src−ER複合体形成、Srcの活性化、およびいくつかの内因性蛋白のリン酸化をもたらすことを実証する。一過性にトランスフェクトされた細胞における増強されたMNAR発現は、ER転写活性の刺激をもたらす。SrcおよびMEKキナーゼの特定のインヒビターは、MNARがER転写活性を増強する能力をブロックするので、本発明者らは、ERのこの活性化は、Srcキナーゼの活性化によって促進されたMAPキナーゼリン酸化カスケードの刺激に起因すると結論する。あるいは、アンチセンスオリゴヌクレオチドを用いる、MCF−7細胞からのMNARの欠失は、ER媒介性遺伝子発現を阻害し、このことは、MNARがER調節性遺伝子発現に関与することを支持する。これらのデータによって、MNARは、SrcファミリーチロシンキナーゼとのERのクロストークを調節し、それによってエストロゲン受容体の非ゲノム活性を媒介することが明らかになる。
【0151】
これらの研究によって、核内受容体との相互作用におけるMNARの重要性が実証される。MNARは、核内受容体の非ゲノム活性に対してゲノム活性を選択的に調節する化合物を開発する手段を提供する。
【0152】
本明細書において引用された全ての刊行物および特許出願は、各々の個々の刊行物または特許出願が参考として援用されることが詳細にかつ個々に示されたかのように、本明細書において参考として援用される。前述の本発明は、理解を明確にするための例示および実施例によって詳細に記載されているが、特定の変化および改変が、添付の特許請求の趣旨からも範囲からも逸脱することなくここでなされ得ることは、本発明の教示の観点から当業者には容易に明らかである。
【0153】
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【図面の簡単な説明】
【0168】
【図1A】図1は、MNAR、およびp160のアミノ酸配列を比較するアラインメントである。
【図1B】図1は、MNAR、およびp160のアミノ酸配列を比較するアラインメントである。
【図1C】図1は、MNAR、およびp160のアミノ酸配列を比較するアラインメントである。
【図2A】図2は、エストロゲン受容体βとMNARとの相互作用を示す。パネルAは、MCF−7細胞抽出物からプルダウンしたGST−ERβ−LBDによって得られた銀染色したゲルを示す。
【図2B】図2は、エストロゲン受容体βとMNARとの相互作用を示す。パネルAは、MCF−7細胞抽出物からプルダウンしたGST−ERβ−LBDによって得られた銀染色したゲルを示す。得られたペプチドは、逆相HPLCカラムを用いて精製し、質量分析に基づくミクロシークエンシングによって同定した。これらのペプチドの配列を、パネルBに提供する。
【図3】図3は、実施例2における実験からのノーザンブロットによって評価した、種々の細胞株におけるMNARの発現解析の結果を示す。
【図4】図4(AおよびB)は、実施例2における実験由来のノーザンブロットによって評価した、種々の組織におけるMNAR発現分析の結果を示す。
【図5】図5Aおよび5Bは、フラッグタグ付けMNARと、ERα、およびERβ、またはE2とリガンド結合された受容体、または4−OHタモキシフェンとの相互作用を示す。また、全長フラッグ−MNARと、転写/翻訳されたアンドロゲン(AR)および糖質コルチコイド受容体(GR)(その対応するリガンドの有無における)との相互作用の結果も、示される(図5C、および5D)。
【図6A】図6Aは、実施例4の実験の結果を示す。ここでは、試験を行って17βエストラジオールの有無における、SrcまたはLckと、MNAR、および/またはERαとのインビトロにおける相互作用を評価する。
【図6B】図6Bは、実施例4の実験の結果を示す。ここでは、試験を行って17βエストラジオールの有無における、SrcまたはLckと、MNAR、および/またはERβとのインビトロにおける相互作用を評価する。
【図7】図7は、ER−MNAR−Src相互作用の提唱されたモデルの模式図である。
【図8】図8は、cSrc酵素活性におけるER−MNARc複合体のSDS−PAGEゲル分析である。基質として酸変性エノラーゼを用いて、ERの非存在(レーン1および3)、またはER(レーン3〜6)、E2(レーン3および5)、およびMNAR(レーン2、5、および6)の存在下において、cSrc酵素活性を評価した。図8に示すデータは、MNAR自体がcSrc酵素活性を強力に刺激することを示す。
【図9A】図9は、実施例7の実験からの結果を示す一連のグラフである。ここで試験を行って、MNARがER媒介転写に影響するか否かを評価する。図9Aは、ERα、MNAR、および/またはSRC3の結果を示す。
【図9B】図9は、実施例7の実験からの結果を示す一連のグラフである。ここで試験を行って、MNARがER媒介転写に影響するか否かを評価する。図9Bは、細胞をE2か、E2に加えてPP2か、またはE2に加えてPD98059かを用いて処理した場合のERα、およびMNARについての結果を示す。
【図9C】図9は、実施例7の実験からの結果を示す一連のグラフである。ここで試験を行って、MNARがER媒介転写に影響するか否かを評価する。図9Cは、アンチセンス(AS)か、E2か、E2に加えてコントロールか、またはE2に加えてアンチセンスかで処理したMCF−7細胞の結果を示す。それぞれMNAR,pS2,およびカテプシンDを標的するようにプライマー/プローブセットを設計する。
【図9D】図9は、実施例7の実験からの結果を示す一連のグラフである。ここで試験を行って、MNARがER媒介転写に影響するか否かを評価する。図9Dは、アンチセンス、またはE2で刺激した逆コントロールオリゴマーでトランスフェクトしたMCF−7細胞の抽出物の、ウサギポリクローナルMNAR抗血清を用いたウエスタンブロット分析の結果を示す。
【図10A】図10は、E2で処理されていないフラッグ−MNAR発現ベクター、およびE2で処理されたフラッグ−MNAR発現ベクターを用いて、トランスフェクトされていないMCF−7細胞、および/またはトランスフェクトされたMCF−7細胞のSDSゲル分析を示す。フラッグ−MNAR(パネルA),ERα(パネルC、およびD)、およびcSrc(パネルB)を、それらの対応する抗体を用いて、細胞抽出物から免疫沈降させた。ERα抗血清を用いて沈殿させた材料を、ウサギポリクローナル抗体である、抗MNAR抗体を用いてプローブした(パネルE)。ERα−MNAR相互作用のE2増強が、明確に検出された。
【図10B】図10は、E2で処理されていないフラッグ−MNAR発現ベクター、およびE2で処理されたフラッグ−MNAR発現ベクターを用いて、トランスフェクトされていないMCF−7細胞、および/またはトランスフェクトされたMCF−7細胞のSDSゲル分析を示す。フラッグ−MNAR(パネルA),ERα(パネルC、およびD)、およびcSrc(パネルB)を、それらの対応する抗体を用いて、細胞抽出物から免疫沈降させた。ERα抗血清を用いて沈殿させた材料を、ウサギポリクローナル抗体である、抗MNAR抗体を用いてプローブした(パネルE)。ERα−MNAR相互作用のE2増強が、明確に検出された。
【図10C】図10は、E2で処理されていないフラッグ−MNAR発現ベクター、およびE2で処理されたフラッグ−MNAR発現ベクターを用いて、トランスフェクトされていないMCF−7細胞、および/またはトランスフェクトされたMCF−7細胞のSDSゲル分析を示す。フラッグ−MNAR(パネルA),ERα(パネルC、およびD)、およびcSrc(パネルB)を、それらの対応する抗体を用いて、細胞抽出物から免疫沈降させた。ERα抗血清を用いて沈殿させた材料を、ウサギポリクローナル抗体である、抗MNAR抗体を用いてプローブした(パネルE)。ERα−MNAR相互作用のE2増強が、明確に検出された。
【図10D】図10は、E2で処理されていないフラッグ−MNAR発現ベクター、およびE2で処理されたフラッグ−MNAR発現ベクターを用いて、トランスフェクトされていないMCF−7細胞、および/またはトランスフェクトされたMCF−7細胞のSDSゲル分析を示す。フラッグ−MNAR(パネルA),ERα(パネルC、およびD)、およびcSrc(パネルB)を、それらの対応する抗体を用いて、細胞抽出物から免疫沈降させた。ERα抗血清を用いて沈殿させた材料を、ウサギポリクローナル抗体である、抗MNAR抗体を用いてプローブした(パネルE)。ERα−MNAR相互作用のE2増強が、明確に検出された。
【図10E】図10は、E2で処理されていないフラッグ−MNAR発現ベクター、およびE2で処理されたフラッグ−MNAR発現ベクターを用いて、トランスフェクトされていないMCF−7細胞、および/またはトランスフェクトされたMCF−7細胞のSDSゲル分析を示す。フラッグ−MNAR(パネルA),ERα(パネルC、およびD)、およびcSrc(パネルB)を、それらの対応する抗体を用いて、細胞抽出物から免疫沈降させた。ERα抗血清を用いて沈殿させた材料を、ウサギポリクローナル抗体である、抗MNAR抗体を用いてプローブした(パネルE)。ERα−MNAR相互作用のE2増強が、明確に検出された。
【図10F】図10は、E2で処理されていないフラッグ−MNAR発現ベクター、およびE2で処理されたフラッグ−MNAR発現ベクターを用いて、トランスフェクトされていないMCF−7細胞、および/またはトランスフェクトされたMCF−7細胞のSDSゲル分析を示す。フラッグ−MNAR(パネルA),ERα(パネルC、およびD)、およびcSrc(パネルB)を、それらの対応する抗体を用いて、細胞抽出物から免疫沈降させた。ERα抗血清を用いて沈殿させた材料を、ウサギポリクローナル抗体である、抗MNAR抗体を用いてプローブした(パネルE)。ERα−MNAR相互作用のE2増強が、明確に検出された。
【図11】図11は、実施例9における実験由来のウエスタンブロットによって評価した、E2誘導性Erk活性化に対するMNARの分析の結果を示す。
【図12】MNARおよび13MNAR変異体(変異体2〜14)の構造−機能の組織化の模式図である。これらの変異体は、実施例10の実験のもとで、HepG2細胞中にトランスフェクトされたとき、生成されて、それらがER刺激転写を強化する能力について試験された。
【図13】図13は、MNAR欠失変異体(変異体2〜14)の分析の結果を示す棒グラフである。これらの変異体は、実施例10の実験においてhepG2細胞中にトランスフェクトされたとき、それらがER刺激転写を強化する能力について試験された。
【図14】図14は、PXXPモチーフMNAR変異体の分析の結果を示す棒グラフである。これらの変異体は、実施例10の実験においてHepG2細胞中にトランスフェクトされたとき、それらがER転写活性を活性化する能力について試験された。
【図15A】図15は、ヒトMNARのポリヌクレオチド配列(配列番号1)を示す。
【図15B】図15は、ヒトMNARのポリヌクレオチド配列(配列番号1)を示す。
【図16】図16は、ヒトMNARのアミノ酸(配列番号2)を示す。
【図17】図17は、マウスMNARのポリヌクレオチド配列(配列番号12)を示す。
【図18】図18は、マウスMNARのアミノ酸(配列番号13)を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
MNARのポリペプチドまたはポリペプチドフラグメントを含む、融合ポリペプチド。
【請求項2】
ゲノム活性に対して非ゲノム活性を示す化合物を同定する方法であって、MNAR−核内受容体の複合体を含む細胞に試験化合物を投与し、該試験化合物から由来の非ゲノム活性またはゲノム活性を測定することを含む、方法。
【請求項3】
ERの少なくとも1つのリガンドが細胞中に存在するか、またはキナーゼが存在するか、または両方ともが存在する、請求項2記載の方法。
【請求項4】
一の化合物の非ゲノム活性を検出する方法であって、MNAR−核内受容体の存在下、およびMNARの非存在下において、一の化合物を細胞に投与し、非ゲノム活性のレベルを比較することを含む、方法。
【請求項5】
一の化合物のゲノム活性を検出する方法であって、MNAR−核内受容体の複合体を含む細胞にある化合物を投与し、MNARの非存在下でのゲノム活性のレベルと比較することを含む、方法。
【請求項6】
MNAR−ER細胞がMNARを過剰発現する、請求項5に記載の化合物のゲノム活性を検出する方法。
【請求項7】
MNAR−ER細胞がERを過剰発現する、請求項5に記載の化合物のゲノム活性を検出する方法。
【請求項8】
ERが受容体に作動可能に結合する、請求項5に記載の化合物のゲノム活性を検出する方法。
【請求項9】
非ゲノム活性に対して選択的ゲノム活性を有する化合物を同定する方法であって、(a)MNAR−核内受容体の複合体を含む細胞に試験化合物を添加し;(b)試験化合物の添加の前後にて非ゲノム活性に対するゲノム活性を比較する工程を含む、方法。
【請求項10】
MNARの非存在下での、試験化合物を用いたゲノム活性と比較した場合に、MNAR−核内受容体の存在下、試験化合物を細胞に添加した後での選択的ゲノム活性が2倍に増大して測定され、かつ試験化合物の添加後に非ゲノム活性における変化が観察されないところの、請求項9記載の方法。
【請求項11】
MNARの非存在下での、試験化合物を用いた非ゲノム活性と比較した場合に、MNAR−核内受容体の複合体の存在下、試験化合物を細胞に添加した後での非ゲノム活性が2倍に増大し、かつ試験化合物の添加後にゲノム活性における変化が観察されないところの、請求項9記載の方法。
【請求項12】
核内受容体の非ゲノム活性を調節する化合物を同定する方法であって、MNARの存在下で核内受容体の転写活性における増大または低下を測定することを含む、方法。
【請求項13】
細胞の望ましい表現型が核内受容体の非ゲノム活性またはゲノム活性によって影響を受けるかを測定する方法であって、該細胞が添加量のMNARに曝露される場合に、細胞の選択された表現型の効果が増大するか低下するかを測定し;ついで、望ましい表現型の有無を検出することを含み、ここで添加したMNARの存在下にて望ましい活性または表現型が存在しないことは、核内受容体の非ゲノム活性の増大が望ましい表現型に負に影響する(すなわち、非ゲノム活性は細胞にとって有益ではない)ことを示し、かつ望ましい表現型が増大することは、核内受容体の非ゲノム活性の増大が該細胞に正に影響することを示す、ことを含む、方法。
【請求項14】
核内受容体の非ゲノム活性を調節する化合物を同定する方法であって、核内受容体の転写活性の増大または低下を測定し、キナーゼが、MNARおよび核内受容体の存在によって影響を受けて、酵素活性が増大するか、または低下するかを測定することを含む、方法。
【請求項15】
少なくとも1つの非機能性の内因性MNARポリヌクレオチド配列を含む、1またはそれ以上の細胞を含む、ヒト以外のトランスジェニック哺乳動物。
【請求項16】
マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、ウシおよびヒツジからなる群より選択される、請求項15記載のヒト以外のトランスジェニック哺乳動物。
【請求項17】
少なくとも1つの非機能性内因性核内受容体を含む、請求項15記載のヒト以外のトランスジェニック哺乳動物。
【請求項18】
非機能性内因性受容体がステロイド受容体である、請求項15記載のヒト以外のトランスジェニック哺乳動物。
【請求項19】
非機能性内因性受容体が非ステロイド受容体である、請求項15記載のヒト以外のトランスジェニック哺乳動物。
【請求項20】
非機能性内因性受容体がオーファン受容体である、請求項15記載のヒト以外のトランスジェニック哺乳動物。
【請求項21】
非機能性内因性レセプタがエストロゲン受容体である、請求項15記載のヒト以外のトランスジェニック哺乳動物。
【請求項22】
ERαおよびERβの内因性形態が非機能性である、請求項21記載のヒト以外のトランスジェニック哺乳動物。
【請求項23】
MNARコード化配列の中断を含む、請求項15記載のヒト以外のトランスジェニック哺乳動物。
【請求項24】
MNARおよびERコード配列の中断を含む、請求項21記載のヒト以外のトランスジェニック哺乳動物。
【請求項25】
ナンセンスMNAR変異を含む、請求項15記載のヒト以外のトランスジェニック哺乳動物。
【請求項26】
MNARおよびERのナンセンス変異を含む、請求項21記載のヒト以外のトランスジェニック哺乳動物。
【請求項27】
MNARコード化配列の欠失を含む、請求項15記載のヒト以外のトランスジェニック哺乳動物。
【請求項28】
MNARを非機能性にさせる、MNAR遺伝子の調節領域における改変を含む、請求項15記載のヒト以外のトランスジェニック哺乳動物。
【請求項29】
内因性MNARプロモーターの代わりに誘導性/抑制性プロモーターを用いることを含む、請求項28記載のヒト以外のトランスジェニック哺乳動物。
【請求項30】
内因性MNARプロモーターの代わりの少なくとも1つの誘導性/抑制性プロモーター、およびエストロゲン受容体を含む、請求項29記載のヒト以外のトランスジェニック哺乳動物。
【請求項31】
哺乳動物の細胞が、該哺乳動物の少なくとも1つの細胞型にて活性なプロモーターの制御下、さらに内因性選択マーカー遺伝子を含む、請求項15〜30のいずれか1項記載のヒト以外のトランスジェニック哺乳動物。
【請求項32】
MNARの機能を破壊する化合物をスクリーニングする方法であって、MNARと相互作用する化合物を同定するのに蛋白−蛋白の相互作用アッセイを用いることを含む、方法。
【請求項33】
MNARの機能を破壊する化合物をスクリーニングする方法であって、MNARと相互作用する蛋白を同定するためのツーハイブリッドアッセイを用いることを含む、方法。
【請求項34】
ツーハイブリッドが酵母または哺乳動物細胞において実施される、請求項33記載の方法。
【請求項1】
MNARのポリペプチドまたはポリペプチドフラグメントを含む、融合ポリペプチド。
【請求項2】
ゲノム活性に対して非ゲノム活性を示す化合物を同定する方法であって、MNAR−核内受容体の複合体を含む細胞に試験化合物を投与し、該試験化合物から由来の非ゲノム活性またはゲノム活性を測定することを含む、方法。
【請求項3】
ERの少なくとも1つのリガンドが細胞中に存在するか、またはキナーゼが存在するか、または両方ともが存在する、請求項2記載の方法。
【請求項4】
一の化合物の非ゲノム活性を検出する方法であって、MNAR−核内受容体の存在下、およびMNARの非存在下において、一の化合物を細胞に投与し、非ゲノム活性のレベルを比較することを含む、方法。
【請求項5】
一の化合物のゲノム活性を検出する方法であって、MNAR−核内受容体の複合体を含む細胞にある化合物を投与し、MNARの非存在下でのゲノム活性のレベルと比較することを含む、方法。
【請求項6】
MNAR−ER細胞がMNARを過剰発現する、請求項5に記載の化合物のゲノム活性を検出する方法。
【請求項7】
MNAR−ER細胞がERを過剰発現する、請求項5に記載の化合物のゲノム活性を検出する方法。
【請求項8】
ERが受容体に作動可能に結合する、請求項5に記載の化合物のゲノム活性を検出する方法。
【請求項9】
非ゲノム活性に対して選択的ゲノム活性を有する化合物を同定する方法であって、(a)MNAR−核内受容体の複合体を含む細胞に試験化合物を添加し;(b)試験化合物の添加の前後にて非ゲノム活性に対するゲノム活性を比較する工程を含む、方法。
【請求項10】
MNARの非存在下での、試験化合物を用いたゲノム活性と比較した場合に、MNAR−核内受容体の存在下、試験化合物を細胞に添加した後での選択的ゲノム活性が2倍に増大して測定され、かつ試験化合物の添加後に非ゲノム活性における変化が観察されないところの、請求項9記載の方法。
【請求項11】
MNARの非存在下での、試験化合物を用いた非ゲノム活性と比較した場合に、MNAR−核内受容体の複合体の存在下、試験化合物を細胞に添加した後での非ゲノム活性が2倍に増大し、かつ試験化合物の添加後にゲノム活性における変化が観察されないところの、請求項9記載の方法。
【請求項12】
核内受容体の非ゲノム活性を調節する化合物を同定する方法であって、MNARの存在下で核内受容体の転写活性における増大または低下を測定することを含む、方法。
【請求項13】
細胞の望ましい表現型が核内受容体の非ゲノム活性またはゲノム活性によって影響を受けるかを測定する方法であって、該細胞が添加量のMNARに曝露される場合に、細胞の選択された表現型の効果が増大するか低下するかを測定し;ついで、望ましい表現型の有無を検出することを含み、ここで添加したMNARの存在下にて望ましい活性または表現型が存在しないことは、核内受容体の非ゲノム活性の増大が望ましい表現型に負に影響する(すなわち、非ゲノム活性は細胞にとって有益ではない)ことを示し、かつ望ましい表現型が増大することは、核内受容体の非ゲノム活性の増大が該細胞に正に影響することを示す、ことを含む、方法。
【請求項14】
核内受容体の非ゲノム活性を調節する化合物を同定する方法であって、核内受容体の転写活性の増大または低下を測定し、キナーゼが、MNARおよび核内受容体の存在によって影響を受けて、酵素活性が増大するか、または低下するかを測定することを含む、方法。
【請求項15】
少なくとも1つの非機能性の内因性MNARポリヌクレオチド配列を含む、1またはそれ以上の細胞を含む、ヒト以外のトランスジェニック哺乳動物。
【請求項16】
マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、ウシおよびヒツジからなる群より選択される、請求項15記載のヒト以外のトランスジェニック哺乳動物。
【請求項17】
少なくとも1つの非機能性内因性核内受容体を含む、請求項15記載のヒト以外のトランスジェニック哺乳動物。
【請求項18】
非機能性内因性受容体がステロイド受容体である、請求項15記載のヒト以外のトランスジェニック哺乳動物。
【請求項19】
非機能性内因性受容体が非ステロイド受容体である、請求項15記載のヒト以外のトランスジェニック哺乳動物。
【請求項20】
非機能性内因性受容体がオーファン受容体である、請求項15記載のヒト以外のトランスジェニック哺乳動物。
【請求項21】
非機能性内因性レセプタがエストロゲン受容体である、請求項15記載のヒト以外のトランスジェニック哺乳動物。
【請求項22】
ERαおよびERβの内因性形態が非機能性である、請求項21記載のヒト以外のトランスジェニック哺乳動物。
【請求項23】
MNARコード化配列の中断を含む、請求項15記載のヒト以外のトランスジェニック哺乳動物。
【請求項24】
MNARおよびERコード配列の中断を含む、請求項21記載のヒト以外のトランスジェニック哺乳動物。
【請求項25】
ナンセンスMNAR変異を含む、請求項15記載のヒト以外のトランスジェニック哺乳動物。
【請求項26】
MNARおよびERのナンセンス変異を含む、請求項21記載のヒト以外のトランスジェニック哺乳動物。
【請求項27】
MNARコード化配列の欠失を含む、請求項15記載のヒト以外のトランスジェニック哺乳動物。
【請求項28】
MNARを非機能性にさせる、MNAR遺伝子の調節領域における改変を含む、請求項15記載のヒト以外のトランスジェニック哺乳動物。
【請求項29】
内因性MNARプロモーターの代わりに誘導性/抑制性プロモーターを用いることを含む、請求項28記載のヒト以外のトランスジェニック哺乳動物。
【請求項30】
内因性MNARプロモーターの代わりの少なくとも1つの誘導性/抑制性プロモーター、およびエストロゲン受容体を含む、請求項29記載のヒト以外のトランスジェニック哺乳動物。
【請求項31】
哺乳動物の細胞が、該哺乳動物の少なくとも1つの細胞型にて活性なプロモーターの制御下、さらに内因性選択マーカー遺伝子を含む、請求項15〜30のいずれか1項記載のヒト以外のトランスジェニック哺乳動物。
【請求項32】
MNARの機能を破壊する化合物をスクリーニングする方法であって、MNARと相互作用する化合物を同定するのに蛋白−蛋白の相互作用アッセイを用いることを含む、方法。
【請求項33】
MNARの機能を破壊する化合物をスクリーニングする方法であって、MNARと相互作用する蛋白を同定するためのツーハイブリッドアッセイを用いることを含む、方法。
【請求項34】
ツーハイブリッドが酵母または哺乳動物細胞において実施される、請求項33記載の方法。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図10E】
【図10F】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図16】
【図17】
【図18】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図10E】
【図10F】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2008−156360(P2008−156360A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−3392(P2008−3392)
【出願日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【分割の表示】特願2004−522009(P2004−522009)の分割
【原出願日】平成14年4月4日(2002.4.4)
【出願人】(591011502)ワイス (573)
【氏名又は名称原語表記】Wyeth
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【分割の表示】特願2004−522009(P2004−522009)の分割
【原出願日】平成14年4月4日(2002.4.4)
【出願人】(591011502)ワイス (573)
【氏名又は名称原語表記】Wyeth
【Fターム(参考)】
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