説明

新規な調味醤油及びその製造方法

【課題】醤油、砂糖を成分とするかえしと、大豆いろり、鰹いろり、昆布いろりを主成分とするいろりとを混合して得られ、優れた味覚を呈し食材の腐敗防止をも図ることができる調味醤油を提供する。
【解決手段】所定量の醤油に、前記醤油に見合う量の砂糖を投入し、溶解して得られたかえしと、水に浸けた所定量の大豆を加圧、蒸らした後、こし布を使用して引き出した大豆いろりに、前記大豆いろりに見合う量の鰹いろり、昆布いろり、塩を溶解させ、前記大豆いろりに見合う量の酒を加えて得たいろりと、を所定量ずつの割合で所定の温度条件で混合した調味醤油。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な調味醤油及びその製造方法に関するものであり、詳しくは、醤油、砂糖を成分とするかえし(煮かえし)と、大豆いろり(だし汁、煎汁)、鰹いろり(だし汁、煎汁)、昆布いろり(だし汁、煎汁)を主成分とするいろり(だし汁、煎汁)とを混合して得られ、優れた味覚を呈し食材の腐敗防止をも図ることができる新規な調味醤油及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
まず、本発明に係る新規な調味醤油が開発されるに至ったことに関連する歴史的背景について説明する。
【0003】
愛知県尾張一宮に臨済宗妙心寺派長嶋山妙興寺報恩禅寺があり、貞治3年(1364年)、足利2代将軍義詮によって五山十刹に次ぐ大寺に列せられている。
【0004】
慶長13年(1608年)6月21日、尾張長岡庄に住する妙興禅林沙門恵順が『蕎麦覚書』なる書簡を残している。
【0005】
この書簡の既述中、大豆・昆布・椎茸・干した大根の皮などをだし汁として列挙している。
【0006】
本願発明者の先代である伊藤徳義が、上記する書簡を入手し、15品のそば料理とだし汁を模倣し、町方とは異なるそば、寺方蕎麦を看板に昭和2年4月、開業したのである。
【0007】
大豆と昆布・椎茸による精進汁に鰹節を添加することによって、町方のそばつゆとは異なる特異な旨味をもたらせ、寺方蕎麦長浦を今日にいたらしめたのである。
【0008】
この大豆だし汁の旨味は鰹、昆布を圧倒するほどの力を持っているが、何処にも存在せず誰も知らないのが現状である。
【0009】
貞治4年(1365年)12月編纂における『妙興寺文書・妙興寺年中行事用途注文』の記中には、「・・・弐拾貫文 醤豆并粥汁 馬料 六十表比内四十醤二十両用。塩三十表加醤塩定。・・・」と、ある。
【0010】
120名の禅僧たちの朝食における粥が大豆の煮汁で作られている。南北朝時代の大豆だし汁と江戸初期の恵順の大豆だし汁とが、ここでぴたりと結びついたのである。すなわち、妙興寺内では、この大豆だし汁が、江戸初期まで連綿として受け継がれていたのである。
【0011】
そして、鎌倉時代末(1330年頃)、この妙興寺文書の40年ほど前、紀伊氏の作と言われる『厨事類記』(群書類従第346)がある。
【0012】
厨事類記には、
調備部
四種器
酢。酒。塩。醤。
或止醤用色利
裏書 色利煎汁。イロリトハ大豆ヲ煎(センジ)タル汁也。云々。
或鰹ヲ煎タル汁也云々、
醤(醤油)を止めて色利のにつめ汁を用いる旨記されている。
とある。
【0013】
すなわち、大豆色利は、鰹色利、醤油をもしのぐ調味料として認識されているのである。
平安時代、この色利と呼ばれる煎汁は、庸(労役)の代償として各地から朝廷に貢納されて、大いに利用されている。
【0014】
更に、『延喜式』(927年完成)には、堅魚(鰹)の煎(につめ)汁が以下の如く多数箇所で散見でき、下記の旨が記されている。
『主計上』、「煮堅魚。煎汁各十二両二分。」
『主計上』、「駿河国・行程上十八日。下九日。煮塩年魚(あゆ)。堅魚煎汁。堅魚。」
『大膳上・平野夏祭雑給料』、「白米一斛三斗四升。糯米一斛二斗八升。・・・。堅魚煎汁七瓶。・・・」
『大膳上・松尾神祭雑給料』、「堅魚煎汁三升」、
『大膳上・五位已上三十人』、「堅魚煎汁一両一分。鮨二斤四両。」
『大膳下・勘解由使百度料』、「駿河国堅魚煎汁二斛」
【0015】
しかし、この『延喜式』には大豆の煎(につめ)汁、大豆色利は存在しない。したがって、大豆色利は鎌倉以降に作られた調味料と判断して間違いないところでる。
【0016】
本出願の数年前、「永平寺の精進料理」に、典座が、「大豆の出し汁を復活させたい。」旨書いている。すなわち、大豆のだし汁は永平寺にも存在していたのである。
【0017】
その後、2003年に同名の書が刊行され、ここに大豆のだし汁が復活使用されている。その使用状況を永平寺典座は、下記のように寸評している。
【0018】
「大豆だし、かんぴょうだし、ともに水にひと晩浸けてだしをとります。こくのある粘度の高いだしがとれますが、すぐに傷んでしまうので注意が必要です。」
【0019】
ところで、だし汁の概念を中国から持ち帰ったのは、栄西、道元を始とする禅僧達である。
【0020】
こぶだしも大豆だしも、臨済宗、曹洞宗を問わず、禅林内で開発された調味法なのである。しかし、両だし汁は、永平寺典座の指摘するように、傷みの早いのが難点である。
【0021】
本願発明者の先代である伊藤徳義は、これを巧みに乗り切り、塩分濃度の高いそばつゆを元汁として作成し、使用する段階で、更に鰹だしを使い薄める。そうした腐敗防止策の改良を加えながら現在に至るのである。
【0022】
本発明に係る新規な調味醤油の製造にあたり、克服すべき問題はまさに腐敗防止にある。その腐敗防止の鍵は古代の鰹色利、中世の大豆色利が示している。
【0023】
鰹色利は駿河から九日をかけて京の都に運び入れている。そして大豆色利は、醤(醤油)の代替調味料として使用されている。ともに醤同等の塩分濃度をもってすれば、腐敗は防げるという暗示なのである。
【0024】
今日、古代から中世に用いられた調味料である鰹いろりは鰹エキス、昆布いろりは昆布エキスとして流布している。これに大豆いろりを加え、醤油と混合することによって新たな醤油、すなわち、本発明に係る新規、斬新な調味醤油の作製が可能であると本願発明者は着想して本発明を開発するに至ったのである。
【0025】
こうした観点は製造した後の分析であり、作製過程では、これら知識と先代より受け継いだもろもろの知識が一体となり、意識中無意識の直感力が手先に表現されたまでのことである。
すなわち、苦もなく難もなくよどみなく本発明に係る新規、斬新な調味醤油を作製したものである。これこそ正に職人の六勘であり技である。その六勘が未来を指向する現代醤油の在り方を示したのである。
【0026】
従来においても、かえしを調整する技術や醤油を製造する方法に関しては種々提案されている。
例えば、特許文献1には、醤油にみりんや砂糖を加えて混和し、これを加熱冷却後、または加熱せずに瓶などの容器に入れて冷暗所に数日から数週間放置して、熟成されたかえしを調整する技術が開示されている。
【0027】
また、特許文献2には、通常の濃口醤油製造過程における仕込み後の発酵熟成過程の適当な時期に醤油と醤油麹を添加し、更に熟成させることで、濃厚醤油を製造する技術が開示さている。
【0028】
しかしながら、醤油を主原料とするかえしと、大豆いろりを主原料とするいろりとを混合してなる調味醤油やその製造方法は全く見当たらないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0029】
【特許文献1】特開2005−287433号公報
【特許文献2】特開2005−245433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
本発明が解決しようとする問題点は、醤油を主原料とするかえしと、大豆いろりを主原料とするいろりとを混合して、優れた味覚を呈し食材の腐敗防止をも図ることができるような新規、斬新な調味醤油やその製造方法が存在しない点である。
【課題を解決するための手段】
【0031】
本発明に係る新規な調味醤油は、醤油と、砂糖とを成分とするかえしと、水に浸けた大豆を処理して引き出した大豆いろりと、鰹いろり、昆布いろり、塩、酒とを成分とするいろりと、を混合してなることを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0032】
請求項1〜3記載の発明によれば、本発明の調味醤油を各種料理に使用することで、醤油による醤油味、砂糖による甘み、大豆いろり、鰹いろり、昆布いろり及び酒の各成分による旨みが一体となった極めて優れた味覚を呈し、かつ、鰹いろり、昆布いろり及び塩の塩分による食材の腐敗防止を図ることもできる新規、斬新な調味醤油を実現し提供することができる。
【0033】
請求項4〜6記載の発明によれば、上述したかえし製造、いろり製造の二段階の製造工程を行い、更に、得られたかえしといろりとを上述したように混合する工程を経て上記斬新、斬新な調味醤油を簡略に製造することができる新規な調味醤油の製造法を実現し提供することができる。
【0034】
この場合、調味醤油の目的とする仕上がり量を増加させる場合には、前記かえし、いろりの量をその仕上がり量に応じて各々同一倍数量ずつ増加させて60℃前後の温度条件で混合し、常温まで放置するだけで良く、新規な調味醤油の増産が極めて簡略容易である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は本発明の実施例1〜3に係る新規な調味醤油の製造方法におけるかえし製造工程の各成分及び使用量を示す表である。
【図2】図2は本実施例1〜3に係る新規な調味醤油の製造方法におけるいろり製造工程の各成分及び使用量を示す表である。
【図3】図3は本実施例1〜3に係る新規な調味醤油の製造方法におけるかえし、いろりの配合量及び調味醤油の仕上がり量を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明は、醤油を主原料とするかえしと、大豆いろりを主原料とするいろりとを混合して、優れた味覚を呈し食材の腐敗防止をも図ることができるようにした新規な調味醤油を実現し提供するという目的を、醤油に、砂糖を投入し、溶解して得られたかえしと、水に浸けた大豆を加圧、蒸らした後、こし布を使用して引き出した大豆いろりに、鰹いろり、昆布いろり、塩を溶解させて、酒を加えて得たいろりと、を混合してなる構成により実現した。
【実施例】
【0037】
以下、本発明の実施例に係る新規、斬新な調味醤油及びその製造方法について詳細に説明する。
【0038】
本実施例に係る新規な調味醤油は、以下に詳述するようにかえし製造、いろり製造の二段階の製造工程を行い、更に、得られたかえしといろりとを混合する工程を経て従来にない斬新な調味醤油として製造されるものである。
【0039】
具体的には、所定量の醤油に、前記醤油に見合う量の砂糖を投入し、溶解して得られたかえしと、水に浸けた所定量の大豆を加圧、蒸らした後、こし布を使用して引き出した大豆いろりに、前記大豆いろりに見合う量の鰹いろり、昆布いろり、塩を溶解させ、前記大豆いろりに見合う量の酒を加えて得たいろりと、を所定量ずつの割合で所定の温度条件で混合してなる調味醤油である。
【0040】
(実施例1)
本実施例1に係る新規な調味醤油の製造方法について説明する。
【0041】
(1)かえし製造
図1中のA欄に示すように、醤油12リットルに、砂糖4kgを投入し、60℃前後の温度で溶解してかえしを得た。そして、このかえしの温度を常温に下げ、なごみきるまで、例えば24時間放置する。これにより、12リットルのかえしを取り出す。
【0042】
(2)いろり製造
図2中のA欄に示すように、上述したかえしを12リットル使用することを目安にして、一昼夜、水に浸けた大豆(360g)を圧力釜で加圧後、25分間煮て火を止め、蒸らして時間をおく。
【0043】
次に、こし布を使用し、大豆いろりを引き出す(取り出す)。
【0044】
次に、予め用意した鰹いろり300g、昆布いろり100gと、塩350gを計量して、上記大豆いろりに投入して60℃前後の温度で容器を火で加熱し溶解する。鰹いろり、昆布いろりは、各濃縮だし(又はエキス)を使用する。
【0045】
上記溶解工程終了後、360ccの酒を加えて火を切る。そして、常温に戻るまで放置する。この場合、いろりの仕上がり量は2リットルとなる。
【0046】
(3)(かえし、いろりの混合工程)
図3中のA欄に示すように、かえし12リットルに対していろり2リットルを投入して60℃前後の温度で混合させた後、常温に戻し、調味醤油の製品を得た。この場合の調味醤油の仕上がり量は13680cc(13.68リットル)になる。
【0047】
(実施例2)
本実施例2は、前記実施例1の場合における3倍量の調味醤油を製造するものである。
【0048】
(1)かえし製造
図1中のB欄に示すように、醤油36リットルに、砂糖12.1kgを投入し、60℃前後の温度で溶解してかえしを得る。そして、このかえしの温度を常温に下げ、なごみきるまで、例えば24時間放置する。これにより、36リットルのかえしが得られた。
【0049】
(2)いろり製造
図2中のB欄に示すように、上述したかえしを36リットル使用することを目安にして、一昼夜、水に浸けた大豆(1080g)を圧力釜で加圧後、25分間煮て火を止め、蒸らして時間をおく。
【0050】
次に、こし布を使用し、大豆いろりを引き出す(取り出す)。
【0051】
次に、予め用意した鰹いろり900g、昆布いろり300gと、塩1050gを計量して、上記大豆いろりに投入して60℃前後の温度で容器を火で加熱し溶解する。鰹いろり、昆布いろりは、各濃縮だし(又はエキス)を使用する。
【0052】
上記溶解工程終了後、1080ccの酒を加えて火を切る。そして、常温に戻るまで放置する。この場合、いろりの仕上がり量は6リットルとなる。
【0053】
(3)(かえし、いろりの混合工程)
図3中のB欄に示すように、かえし36リットルに対していろり6リットルを投入して60℃前後の温度で混合させた後、常温に戻し、調味醤油の製品を得た。この場合の調味醤油の仕上がり量は41040cc(41リットル)になる。
【0054】
(実施例3)
本実施例3は、前記実施例2の場合における28倍量の調味醤油を製造するものである。
【0055】
(1)かえし製造
図1中のC欄に示すように、醤油1008リットルに、砂糖340kgを投入し、60℃前後の温度で溶解してかえしを得る。そして、このかえしの温度を常温に下げ、なごみきるまで、例えば24時間放置する。これにより、1008リットルのかえしが得られた。
【0056】
(2)いろり製造
図2中のC欄に示すように、上述したかえしを1008リットル使用することを目安にして一昼夜、水に浸けた大豆(30240g)を圧力釜で加圧後、25分間煮て火を止め、蒸らして時間をおく。
【0057】
次に、こし布を使用し、大豆いろりを引き出す(取り出す)。
【0058】
次に、予め用意した鰹いろり25.2kg、昆布いろり8.4kgと、塩29.40kgを計量し、上記大豆いろりに投入して、60℃前後の温度で容器を火で加熱して溶解する。鰹いろり、昆布いろりは、各濃縮だし(又はエキス)を使用する。
【0059】
上記溶解工程終了後、30.24リットルの酒を加えて火を切る。そして、常温に戻るまで放置する。この場合、いろりの仕上がり量は168リットルとなる。
【0060】
(3)(かえし、いろりの混合工程)
図3中のC欄に示すように、かえし1008リットルに対していろり168リットルを投入して60℃前後の温度で混合させた後、常温に戻し、調味醤油の製品を得た。この場合の調味醤油の仕上がり量は1,149,120cc(1,149リットル)になる。
【0061】
本実施例1〜3の調味醤油によれば、この調味醤油を各種料理に使用することで、醤油による醤油味、砂糖による甘み、大豆いろり、鰹いろり、昆布いろり及び酒の各成分による旨みが一体となった極めて優れた味覚を呈し、かつ、鰹いろり、昆布いろり及び塩の塩分による食材の腐敗防止を図ることもできる斬新な調味醤油を実現することができる。
【0062】
また、本実施例1〜3によれば、上述したかえし製造、いろり製造の二段階の製造工程を行い、更に、得られたかえしといろりとを上述したように混合する工程を経て上記斬新で新規な調味醤油を簡略に製造できる調味醤油の製造法を実現することができる。
【0063】
この場合、調味醤油の目的とする仕上がり量を増加させる場合には、前記かえし、いろりの量をその仕上がり量に応じて各々同一倍数量ずつ増加させて60℃前後の温度条件で混合し、常温まで放置するだけでよく、調味醤油の増産が極めて簡略容易である。
【0064】
次に、本願出願人が調査した9人の調理実施者についての本実施例に係る調味醤油を使用した具体的料理例、及び、その味覚検査について説明する。
【0065】
(a)主婦:4人家族
親子丼と天ぷらの天つゆに、各々上記調味醤油適量をそれぞれ水で薄めて使用した(希釈の割合は適当とした)。また、食感は、濃くてとろみのある味であり、料理にアレンジして使用する場合は水で薄めても大丈夫という感じが得られた。更に、だしがとっても効いていて、味がまろやかで、かどがない味覚がした。また、甘みもほど良く、市販のものより上品な味であるため、料理を高級な味に仕上げることができた。ともに食した友人はつゆが美味しいと絶賛していた。
【0066】
(b)主婦:4人家族
使用した調味醤油は、市販品:(株)にんべんの「つゆの素」に比べ、濃厚な味わいで、変な甘味は無く美味しいというのが率直な感想である。また、卵焼き、親子丼、やっこなどにかけても美味しそうという味覚が得られた。
【0067】
(c)主婦
使用した調味醤油は、もりそば、ざるそば、そーめん、たぬきうどん、すき焼き、肉豆腐、野菜炒め、和風スパゲッティ、煮物等、各種料理に使用できる万能の調味料で、過去に出会ったことのない美味しいものである。ともに食した友人7人も美味しいと絶賛していた。
【0068】
(d)主婦:4人家族
市販のつゆに関してはみりんが結構入っていて甘さがあるため、いままであまり使用しておらず、自分でだしを取り醤油で味付けするなどして調味料としていた。今回使用した調味醤油は、非常に口に合い、何回も繰り返し各種料理に使用した。例えば、だし巻きたまご、天つゆ、麺つゆ、煮魚、きんぴら、そぼろご飯の味付け、などに使用した。
【0069】
(e)主婦:3人家族
(煮魚);かさごや、あいなめ等の煮魚用として、調味醤油50cc、酒50cc、さとう大匙2杯、水400cc、しょうが汁小匙2杯を加えた。魚が切身のときはもう少し薄めたほうがいいと思った。
(親子丼);親子丼用として、調味醤油50cc、さとう小匙1杯半から2杯、水90ccを加えた。なお、かつ丼用としては水85ccとした。簡単に調整できるので楽であった。調味醤油は5倍に薄めて使用したので、仕上がりが薄味であった。
(おでん);おでん用として、調味醤油100cc、酒50cc、水950ccを加えた。最初に900ccの水にしたら濃すぎであった。煮詰まっても味に変化が無く、翌日も美味しくいただけた。
(和風ドレッシング);和風ドレッシング用として、この調味醤油小匙2杯、酢50cc、油50cc、こしょう少々を使用した。今まで醤油を素に作っていたが、調味醤油を使用すると塩分のバランスも良くだしの味でドレッシングが美味しかった。
(その他);焼きうどんや和風パスタには、この調味醤油を薄めずにそのまま既存の醤油代わりに使用した。塩は使用しなくなった。
(総評);市販されている2〜3倍濃縮のつゆやストレートつゆには、一種独特の薬品を思わせる匂いや後味の嫌みな甘さがあり、このため、家族がいやがりずっと市販品を使用していなかった。今回使用した調味醤油は、家族に大好評でいろいろな料理に使用している。その理由は、まず、第一に、いやな匂いや甘さがなく、素材本来の味が十分に感じられ、風味も楽しめる。第二に、だし、醤油味、塩、そして甘さのバランスが絶妙で、大体の日本料理に合い、しかも、家庭で簡単に味付けできるので、とても重宝している。いままでおそばやうどんを作っても麺つゆを残していた子も全部飲み干しているので驚いている。
【0070】
(f)主婦:3人家族
(焼うどん);たまねぎ、豚肉、油揚げ、人参を適当な大きさに切り、油で炒める。更に、うどんを入れ、調味醤油を適量注ぐ。
(松茸ご飯);米をといで炊飯器に米と水、松茸、調味醤油適量を入れ、炊飯する。
(牛筋と牛蒡の煮物);牛筋、牛蒡に調味醤油適量、砂糖、水を入れて水分が無くなるまで煮詰める。
(鍋もののつけだれとして);麺つゆでしゃぶしゃぶを食する店もあることを参考にして、調味醤油適量にポン酢を割って鍋もののつけだれとして使用する。
(野菜炒め);肉と野菜を炒め、調味醤油適量を加えて野菜炒め料理の出来上がりとする。
(親子丼);親子丼の味付けに調味醤油適量を加える。お好みで砂糖少量添加も良好な味となる。
(総評);このように活用することで、とても奥深い和風味の種々の料理に手軽に使用でき、また、味を決めてくれるため万能の調味料として重宝できる。また、調味醤油の原液をそのまま種々の料理に使用できるので、調理が迅速に仕上がる利点がある。抜群に美味しいことから、調味醤油中心に献立を考えるようになった。和食より洋食を好む3歳の子供もとても気に入り良く食べてくれる。市販化されたら和食を好まない若い人向けに好適であると思われる。
【0071】
(g)主婦
調味醤油適量を加えて煮物を調理した。手間要らずで、深いこくのある味付けの煮物を食することができた。家族みんなが美味しいと喜んでいた。
【0072】
(h)主婦:4人家族
調味醤油適量を加えてだし巻きたまごを調理した。従来の場合に比べ調味醤油の量が少なめで良好な味に仕上がった。調味醤油適量を加えて釜あげうどんを調理した。市販のつゆは醤油を足してちょうど良かったが、この調味醤油の場合にはこれだけで美味しい味に仕上がった。
【0073】
(i)主婦
がんも煮付け、キャベツには調味醤油を8倍に薄めて加え調理した。生ゆば、ブロッコリーのゆでものには、調味醤油を2倍に薄めて回しかけで加え調理した。春菊や椎茸のおひたしには、調味醤油を2倍に薄めて加え調理した。もやし炒めには、調味醤油をそのまま適量加え、しらす干しであえて調理した。
【0074】
(j)主婦
以下の内容で各料理を実施した。切干大根の場合には調味醤油45cc位が適量であるとの感覚を得た。
料理名 水 調味醤油 感想
肉じゃが 300cc 50cc とても美味
冬瓜汁 1000cc 50cc とても美味
高野豆腐 300cc 50cc とても美味
煮魚(ブリ) 100cc 40cc 少々濃い目
切干大根 450cc 40cc 少々薄味
舞茸うどん うどん、舞茸で煮込んで7倍に薄めた。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の新規な調味醤油は、鍋物、煮物、炒め物、揚げ物、ご飯物、麺つゆ、そばつゆ、ドレッシングなど、極めて広範な料理の味付け用として好適に幅広く適用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
醤油と、砂糖とを成分とするかえしと、
水に浸けた大豆を処理して引き出した大豆いろりと、鰹いろりと、昆布いろりと、塩と、酒とを成分とするいろりと、
を混合してなることを特徴とする新規な調味醤油。
【請求項2】
醤油に、砂糖を投入し、溶解して得られたかえしと、
水に浸けた大豆を加圧、蒸らした後、こし布を使用して引き出した大豆いろりに、鰹いろり、昆布いろり、塩を溶解させ、酒を加えて得たいろりと、
を混合してなることを特徴とする新規な調味醤油。
【請求項3】
所定量の醤油に、前記醤油に見合う量の砂糖を投入し、溶解して得られたかえしと、
水に浸けた所定量の大豆を加圧、蒸らした後、こし布を使用して引き出した大豆いろりに、前記大豆いろりに見合う量の鰹いろり、昆布いろり、塩を溶解させ、前記大豆いろりに見合う量の酒を加えて得たいろりと、
を所定量ずつの割合で所定の温度条件で混合してなることを特徴とする新規な調味醤油。
【請求項4】
所定量の醤油に、前記醤油に見合う量の砂糖を投入し、所定の温度条件で溶解して所定量のかえしを得る工程と、
水に浸けた所定量の大豆を加圧し、蒸らした後、こし布を使用して引き出した所定量の大豆いろりに、前記大豆いろりに見合う量の鰹いろりと、昆布いろりと、塩を投入し所定の温度条件で溶解させ、前記大豆いろりに見合う量の酒を加えて所定量のいろりを得る工程と、
前記かえし、いろりを所定量ずつの割合で所定の温度条件で混合して調味醤油を得る工程と、
を含むことを特徴とする新規な調味醤油の製造方法。
【請求項5】
所定量の醤油に、前記醤油に見合う量の砂糖を投入し、60℃前後の温度条件で溶解して所定量のかえしを得る工程と、
水に浸けた所定量の大豆を圧力釜で加圧し、蒸らした後、こし布を使用して引き出した所定量の大豆いろりに、前記大豆いろりに見合う量の鰹いろり、昆布いろり、塩を投入し60℃前後の温度条件で溶解させ、溶解終了後前記大豆いろりに見合う量の酒を加えて混合し、常温まで放置して所定量のいろりを得る工程と、
前記かえし、いろりを所定量ずつの割合で60℃前後の温度条件で混合し、常温まで放置して調味醤油を得る工程と、
を含むことを特徴とする新規な調味醤油の製造方法。
【請求項6】
所定量の醤油に、前記醤油に見合う量の砂糖を投入し、60℃前後の温度条件で溶解して所定量のかえしを得る工程と、
水に浸けた所定量の大豆を圧力釜で加圧し、蒸らした後、こし布を使用して引き出した所定量の大豆いろりに、前記大豆いろりに見合う量の鰹いろり、昆布いろり、塩を投入し60℃前後の温度条件で溶解させ、溶解終了後前記大豆いろりに見合う量の酒を加えて混合し、常温まで放置して所定量のいろりを得る工程と、
目的とする仕上がり量の増加に応じて、前記かえし、いろりの量を各々同一倍数量ずつ増加させて60℃前後の温度条件で混合し、常温まで放置して目的とする仕上がり量の調味醤油を得る工程と、
を含むことを特徴とする新規な調味醤油の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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