説明

新規な非晶質9−デオキソ−9a−アザ−9a−メチル−9a−ホモエリスロマイシンA、その調製方法、およびその使用

実質的に純粋な非晶質9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンA。さらに、本開示は、一般式I×H2O×SIの9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAの斜方晶系同型構造の疑似多形体を経由して粗製の9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAからのその調製法に関するものであり、式中、Sは、水混和性または水不混和性有機溶媒であり、a、bおよびcが、結晶軸長を表し、α、βおよびγが、結晶軸間の角度を表す平均単位格子パラメータa=8.2から9.7Å、b=11.5から13.5Å、c=44.5から47.0Å、α=β=γ=90°を有する斜方晶系空間群P212121を特徴とする。さらに、実質的に純粋な非晶質9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAを含有する薬剤組成物、ならびにそれを含有する薬剤組成物の投与により、ヒトおよび動物における細菌感染および原生動物感染、ならびに炎症関連疾患の治療方法を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、参照として本明細書に組み込まれている、2002年7月22日に出願のクロアチア国特許出願第P20020614A号に基づく優先権の利益を享受する。
【0002】
本発明は、新規の実質的に純粋な非晶質9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンA、中間体として9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAの新規な斜方晶系同型構造の疑似多形体を経由するその調製方法、非晶質9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAおよび/または9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAの斜方晶系同型構造の疑似多形体を取り込む製薬製剤、および細菌感染および原生動物感染、ならびに炎症関連疾患の治療方法に関する。
【背景技術】
【0003】
9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAは、最初かつ依然として唯一の市販されている、アザリドグループの15員環半合成マクロライド抗生物質である[The Merck Index、第12版(1996)、157頁(946)]。これは、式
【化1】

の構成を有する。
【0004】
9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAの合成は、米国特許第4,517,359号に記載されている。抗菌スペクトルにおける(J. Antimicrob. Chemother.、1987年、19、275頁)、作用機序(Antimicrob. Ag. Chemother.、1987年、31、1939頁)および薬理学(J. Antimicrob. Chemother.、1993年、31、Suppl.、E、1〜198頁)は、よく知られている。
【0005】
9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAは、非晶質体および結晶ネットワークにおいて原子の各種配列を特徴とする何種もの各種結晶を生じる。大部分の形態は結晶性であり、その結晶単位格子は、9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAに加えて、種々の数の水分子および/または溶媒分子を含有する(疑似多形体)。
【0006】
113〜115℃の融点を有する無水非晶質9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAは、米国特許第4,517,359号に記載されている。これは、粗製の9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAのクロロホルム溶液から溶媒の蒸発により得ることができる。これは、結晶性ではなくて、むしろ固体泡状物に似た非晶質生成物である。純粋な実験室スケールの生成物は、粗製最終化合物のクロマトグラフィにより、または有機溶媒中の純粋な結晶性9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンA一水和物または二水和物の溶出に続いて溶媒の溶出により得ることができる。したがって、純粋な非晶質無水9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAを得ることができる。この方法は、大スケール製造にとって好適ではない。
【0007】
9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAの非晶質形態、結晶溶媒和形態および水和形態の調製は、特許文献に記載されている。例えば、米国特許第4,474,,768号; 米国特許第6,245,903号; EP 1 103 558; CN 1 093370; CN 1 161971; WO 99/58541; WO 00/32203; WO 01/00640; WO 02/09640; WO 02/10144; WO 02/15842; WO 02/10181およびWO 02/42315を参照されたい。そのように生成された物質は、純度の欠如、不安定性、吸湿性などを含む種々の不利益を受けた。
非吸湿性9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンA二水和物は、アセトン-水混合液中、9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAの酸性溶液の中和により1980年代中頃に早くも調製されていた。その結晶構造(単結晶)は、エーテルからの再結晶で評価され、斜方晶系空間群P 212121を特徴とした。単位格子パラメータ、すなわち結晶軸a=17.860Å、b=16.889Åおよびc=14.752Å、および結晶軸間の角度α=β=γ=90°が、1987年のクロアチアの化学者会議で公表された(Book of Abstracts、Meeting of Chemists of Croatia、1987年2月19〜20日、29頁)。その後、その結晶構造および調製は、詳細に記載された(J. Chem. Res.(S)、1988年、152頁、同書ミニプリント、1988年、1239頁; 1987年7月4日受理; Cambridge Crystallographic Data Base: GEGJAD)。
【0008】
引き続き米国特許第6,268,489号において、9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンA二水和物が記載された。その特許は、水が添加されたテトラヒドロフランおよびヘキサンからの結晶化により二水和物の調製を開示した。このように形成された生成物は、結晶性であり、純粋形態の商業スケールで得ることができる。しかしながら、その調製は、水不混和性で毒性有機溶媒の使用およびその乾燥を注意深く制御する必要性を伴う何らかの不利益を被る。
【0009】
二水和物を調製する他の技法は、特許文献、例えば、米国特許第5,869,629号; EP 0 941 999; EP 1 103 558; HR P 921491; WO 01/49697; およびWO 01/87912に開示されている。記載された種々の方法は、水の添加による水混和性溶媒からの再結晶による二水和物の沈殿を含む。しかしながら、文献記載されたこれらおよび他の方法により形成された生成物は、製薬上純粋な9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンA物質を処理する必要性から生成物自体の収率、純度および均質性に渡る、多くの著しい不利益を被る。実際、種々の先行技術により形成された生成物は、結合および吸着された溶媒および水を種々の量で含み、したがって製薬製剤に取り込まれた場合、安定性、純度、放出および効力特性を一貫して与えることができない。
【0010】
HR特許出願第P20020231 A号において、9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAの単斜晶系同型構造の疑似多形体が記載されている。
【0011】
ここで、驚くべきことに、実質的に純粋な非晶質9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAは、9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンA中間体の新規な斜方晶系同型構造の疑似多形体を経由して、クロマトグラフィ技法を用いることなく粗製9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAからも調製し得ることを見出した。
【特許文献1】2002年7月22日に出願のクロアチア国特許出願第P20020614A号
【非特許文献1】The Merck Index、第12版(1996)、157頁(946)
【特許文献2】米国特許第4,517,359号
【非特許文献2】J. Antimicrob. Chemother.、1987年、19、275頁
【非特許文献3】Antimicrob. Ag. Chemother.、1987年、31、1939頁
【非特許文献4】J. Antimicrob. Chemother.、1993年、31、Suppl.、E、1〜198頁
【特許文献3】米国特許第4,474,,768号
【特許文献4】米国特許第6,245,903号
【特許文献5】EP 1 103 558
【特許文献6】CN 1 093370
【特許文献7】CN 1 161971
【特許文献8】WO 99/58541
【特許文献9】WO 00/32203
【特許文献10】WO 01/00640
【特許文献11】WO 02/09640
【特許文献12】WO 02/10144
【特許文献13】WO 02/15842
【特許文献14】WO 02/10181
【特許文献15】WO 02/42315
【非特許文献5】Book of Abstracts、Meeting of Chemists of Croatia、1987年2月19〜20日、29頁
【非特許文献6】J. Chem. Res.(S)、1988年、152頁、同書ミニプリント、1988年、1239頁; 1987年7月4日受理; Cambridge Crystallographic Data Base: GEGJAD
【特許文献16】米国特許第6,268,489号
【特許文献17】米国特許第5,869,629号
【特許文献18】EP 0 941 999
【特許文献19】EP 1 103 558
【特許文献20】HR P 921491
【特許文献21】WO 01/49697
【特許文献22】WO 01/87912
【特許文献23】HR特許出願第P20020231 A号
【特許文献24】米国特許第4,328,334号
【非特許文献7】J. Chem Res.(M)1988年、1239頁
【非特許文献8】J. Chem. Soc. Perkin Trans. I 1986年、1881頁
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、中間体として9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAの新規な斜方晶系同型構造の疑似多形体を経由した、粗製の9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAから実質的に純粋な非晶質9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAの新規な調製方法に関するものであって、該方法は、
a)(1)水混和性または水不混和性である有機溶媒、
(2)このような有機溶媒の混合物、
(3)有機溶媒と水もしくは有機カウンター溶媒(organic counter solvent)との混合物、または
(4)有機溶媒と水および少なくとも1種の無機酸または有機酸との混合物
に9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンA物質を溶解する工程と;
b)一般式I
【化2】

(式中、Sは、水混和性または水不混和性有機溶媒である)の9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAの新規な斜方晶系同型構造の疑似多形体を結晶化する工程であって、
疑似多形体が、斜方晶系空間群P212121ならびに
a=8.2から9.7Å、b=11.5から13.5Å、c=44.5から47.0Åの結晶軸長、および
α=β=γ=90°の結晶軸間の角度の平均単位格子パラメータを特徴とする工程と;
c)一般式Iの9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAの新規な斜方晶系同型構造の疑似多形体を単離する工程と;
d)一般式Iの9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAの新規な斜方晶系同型構造の疑似多形体を実質的に純粋な非晶質9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAに変換する工程とを含む。
【0013】
さらに、本発明はまた、一般式I
【化3】

(式中、Sは、水混和性または水不混和性有機溶媒である)の9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAの新規な斜方晶系同型構造の疑似多形体に関するものであって、
該疑似多形体は、斜方晶系空間群P212121、および
a=8.2から9.7Å、b=11.5から13.5Å、c=44.5から47.0Å、および
α=β=γ=90°の結晶軸間の角度の平均単位格子パラメータを有することを特徴とする。一般式Iの9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAのこれらの新規な斜方晶系同型構造の疑似多形体は、実質的に純粋な非晶質9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAならびに製薬混合物および製薬製剤における有効成分の調製における中間体として有用である。
【0014】
さらに、本発明は、新規の実質的に純粋の安定な非晶質9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAに関する。
【0015】
本発明はまた、(a)新規の実質的に純粋な非晶質9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAおよび/または一般式Iの9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAの新規な斜方晶系同型構造の疑似多形体、および(b)製薬上許容し得る賦形剤を含有する製薬混合物に関する。
【0016】
本発明はまた、実質的に純粋な非晶質9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAおよび/または有効物質として一般式Iの9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAの斜方晶系同型構造の疑似多形体を含有する製薬製剤に関する。
【0017】
本発明はまた、ヒトおよび動物対象における細菌感染および原生動物感染、ならびに炎症関連疾患を治療する方法であって、薬剤組成物を、このような治療を必要とする対象に投与することを含む方法に関する。
【0018】
好ましい本発明によって、実質的に純粋な非晶質9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAおよび新規な斜方晶系疑似多形体を経由するその調製法は、9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAおよびその調製に用いられる方法の既存形態と比べて多くの利点を示す。
【0019】
本発明により調製された実質的に純粋な非晶質9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAは、現存する二水和体とは異なり、広範囲の調製条件下で再現性よく調製され得る。
【0020】
第2に、これは、何らかの純粋な9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンA物質からよりもむしろ、粗製の9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAのそのままの溶液または粗製の9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンA自体から直接調製され得る。それによって、調製工程数が減少し、方法は簡便化され、全収率も増加する。
【0021】
第3に、新規の実質的に純粋な非晶質9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAは、本法において高純度かつ製薬上許容し得る品質で調製し得る。
【0022】
第4に、新規の実質的に純粋な非晶質9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAは、顆粒状生成物であり、自由流動形態を有する。
【0023】
第5に、実質的に純粋な非晶質9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAは、通常の貯蔵条件下で安定である。
【0024】
第6に、実質的に純粋な非晶質9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンA(ならびに一般式Iの9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAの斜方晶系同型構造の疑似多形体)は、その二水和体と比較して著しく良好な(改善された)溶解速度を有する。
【0025】
第7に、実質的に純粋な非晶質9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAの固有溶解速度(IDR)は、その二水和物の溶解速度よりも著しく高い。
【0026】
第8に、実質的に純粋な非晶質9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAは、即時、制御または持続放出適用に意図される優れた安定性プロファイルを有し、種々の製薬製剤の調製に使用できる。
【0027】
第9に、優れた溶解特性のため、安定な実質的に純粋な非晶質9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAは、9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAの他の形態とは異なり、即効性の経口用および局所用、特に局所有効の経皮用製剤の調製に首尾よく利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
非晶質9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAに関して本明細書に用いられる用語の「実質的に純粋な」とは、少なくとも90%純粋である非晶質9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAを意味する。より具体的にいうと、語句の「少なくとも90%純粋な」とは、本発明の非晶質9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAにおける、10%以上もない他の化合物の含有、特に9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAの何らかの化合物または疑似多形体あるいは他のある結晶形態の含有が10%以下であることを言う。好ましくは、「実質的に純粋な」非晶質9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAにおいて、疑似多形体または9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAの何らかの化合物あるいは他のある結晶の含有は5%以下である。より好ましくは、「実質的に純粋な」非晶質9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAにおいて、疑似多形体または9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAの何らかの化合物あるいは他のある結晶の含有は3%以下である。
【0029】
一般式Iの新規な斜方晶系同型構造の疑似多形体に関して本明細書に用いられる用語の「実質的に純粋な」とは、少なくとも90%純粋である一般式Iの新規な斜方晶系同型構造の疑似多形体を意味する。より具体的にいうと、語句の「少なくとも90%純粋な」とは、10%以下の他のある化合物、特に10%以下の他のある疑似多形体または9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAの他のある結晶を含有する本発明の一般式Iの新規な斜方晶系同型構造の疑似多形体を言う。好ましくは、「実質的に純粋な」一般式Iの新規な斜方晶系同型構造の疑似多形体において、疑似多形体または9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAの何らかの化合物あるいは他のある結晶の含有は5%以下である。より好ましくは、「実質的に純粋な」一般式Iの斜方晶系同型構造の疑似多形体では、疑似多形体または9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAの何らかの化合物あるいは他のある結晶の含有は3%以下である。
【0030】
さらに、本明細書に用いられる、実質的に純粋な非晶質9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAを形成する方法の工程(a)で使用される「9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンA物質」という用語は、9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAのいかなる形態をも表し、結晶(単斜晶体または斜方晶系疑似多形体など)または非晶質の、粗製もしくは純粋9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAまたはその溶媒和物もしくは水和物などの形態;あるいは合成の最終工程において(例えば、最終中間体の一つとして9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンA(「9a-DeMet」)から)形成された9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAの「そのままの溶液」を包含する。
【0031】
本明細書に用いられる用語の「粗製9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンA」は、その最終精製前に得られた9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAなど、製薬上許容し得る純度以下のいずれの純度の9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAをも含むことを意図している。
【0032】
本明細書に用いられる用語の「9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAのそのままの溶液」とは、粗製9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAの単離前に、その最終中間体(9a-DeMet)から9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAを調製する最終工程で利用された、水または有機溶媒、またはそれらの混液中の9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAの溶液を言う。
【0033】
今回請求した方法における出発物質として使用される9-デオキソ-9a-アザ-9a-ホモエリスロマイシンA(「9a-DeMet」)は、当業界では11-アザ-10-デオキソ-10-ジヒドロエリスロマイシンA(10-ジヒドロ-10-デオキソ-11-アザエリスロマイシンA )とも言う(米国特許第4,328,334号; J. Chem Res.(M)1988年、1239頁)。これは知られており、例えば、従来の方法(米国特許第4,328,334号; J. Chem. Soc. Perkin Trans. I 1986年、1881頁)により得ることができる。
【0034】
9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAのそのままの溶液に利用される溶媒としては、水、塩素化溶媒、例えば、クロロホルムまたはジクロロメタンなどの1個または2個の炭素原子を有するハロアルカン類;酢酸エチル、酢酸イソプロピルまたは酢酸n-ブチルなどのC2〜C4低級アルキル基を有する酢酸エステル類;イソプロパノールまたは2-ブタノールなどのモノヒドリックC2〜C4アルカノール類;アセトンまたはイソブチルケトンなどのC1〜C4ケトン類;またはトルエンなどの芳香族もしくは置換芳香族溶媒を挙げることができる。
【0035】
1. 本発明の実質的に純粋な非晶質9-デオキソ-9a-アザ-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAの調製
工程(a)-9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンA物質の溶解
上記に開示されたように、9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンA物質を、本発明での同型構造の斜方晶系疑似多形体の調製方法の工程(a)で、 (1)水混和性または水不混和性である有機溶媒、(2)このような有機溶媒の混合物、(3)有機溶媒と水もしくは有機カウンター溶媒との混合物、または(4)水と少なくとも1種の無機酸または有機酸の混合物、中に溶解させる。
【0036】
有機溶媒の好適な例としては、限定はしないが、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソ-オクタン、デカンおよびドデカンなどの直鎖状または分枝状C5〜C12アルカン類; シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタンおよびシクロオクタンなどのC5〜C8シクロアルカン類; メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソ-プロパノール、n-ブタノール、イソ-ブタノール、s-ブタノール、tert-ブタノール、およびアリルアルコールなどの飽和または不飽和の直鎖状または分枝状C1〜C6アルカノール類; シクロペンタノールおよびシクロヘキサノールなどのC5〜C8シクロアルカノール類; ベンジルアルコールなどのアリールアルカノール類; 1,2-エタンジオール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオールおよび2-ブテン-1,4-ジオールなどの飽和または不飽和C2〜C4ジオール類;グリセロールなどのトリオール類; ジエチルエーテル、モノグライム、および1,4-ジオキサンなどのC1〜C6エーテル類; アセトン、および2-ブタノンなどのC3〜C5ケトン類; ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチルおよび乳酸エチルなどのC1〜C4アルコン酸およびヒドロキシアルカン酸のC1〜C4アルキルエステル類; ジメチルホルムアミドおよびジメチルアセトアミドなどのアミド類;N,N,N',N'-テトラメチル尿素などの尿素類; アセトニトリルおよびプロピオニトリルなどのC2〜C4ニトリル類; ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類; スルホランなどのスルホン類; N-メチルモルホリンなどの1つ以上の複素環式アミン類; 2-ピロリドンなどのラクタム類; N-メチルピロリドンまたはその混合物;あるいは、それらと水または直鎖状もしくは分枝状C5〜C12アルカン類もしくはシクロアルカン類などの他のある有機カウンター溶媒との混合物が挙げられる。
【0037】
好適な有機カウンター溶媒としては、限定はしないが、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソ-オクタン、デカンおよびドデカンなどの直鎖状または分枝状C5〜C12アルカン類; シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタンおよびシクロオクタンなどのC5〜C8シクロアルカン類が挙げられる。
【0038】
本発明の方法の工程(a)に使用される酸性化に利用され得る酸類は、1種または複数の任意の一般的な鉱酸または有機酸を含むことができる。好適な例としては、限定はしないが、塩酸;スルホン酸;硫酸;亜硫酸;リン酸;炭酸;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、クエン酸、酒石酸、マレイン酸、シュウ酸、クロロ酢酸などの飽和または不飽和C1〜C4非置換またはハロまたはヒドロキシ-置換モノアルカン酸およびジカルボン酸類;安息香酸などのアリールアルカン酸類;メタンスルホン酸などのアルキルスルホン酸類;p-トルエンスルホン酸などのアリールスルホン酸類;およびそれらの混合物が挙げられる。
【0039】
工程(a)における9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンA物質の溶解は、一般に約30℃から約100℃、好ましくは約30℃から約80℃、より好ましくは約40℃から約60℃の温度で実施される。溶媒は、それに投入される9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAを溶解するのに十分であるような量を使用する。
【0040】
工程(b)-斜方晶系疑似多形体の結晶化
実質的に純粋な非晶質9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAの調製において中間体として有用な9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAの新規な斜方晶系疑似多形体は、一般式I:
【化4】

(式中、Sは、水混和性または水不混和性有機溶媒である)の構成を有し;
疑似多形体は、斜方晶系空間群P212121、ならびに
a=8.2から9.7Å、b=11.5から13.5Å、c=44.5から47.0Åの結晶軸長、および
α=β=γ=90°の結晶軸間の角度という平均単位格子パラメータを特徴とする。
【0041】
本発明の新規な斜方晶系疑似多形体は、制御した冷却、溶液にわずかな混濁が生じるまで、溶媒を水によって等温的に飽和状態にすること、または酸性溶液を通常の無機塩基または有機塩基により中和すること、のいずれによっても、ここでの方法の工程(b)で9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンA溶液から結晶化される。
【0042】
そのように利用され得る無機塩基としては、元素周期律表のグループIまたはIIの水酸化物、酸化物または炭酸塩などの通常の無機塩基、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウムまたは水酸化カルシウム; 酸化ナトリウム、酸化マグネシウムまたは酸化カルシウム; 炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウム; またはアンモニア溶液、などのアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩基が挙げられる。そのように有用な有機塩基としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピペリジン、3-メチルピリジン、ピペラジン、トリエタノールアミンまたはエチレンジアミンなどの有機アミン類; または水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、もしくは水酸化テトラブチルアンモニウムなどの第四級有機水酸化物、が挙げられる。
【0043】
結晶化は、結晶の接種、すなわち処理される最初の9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンA物質量を基準にして約0.01%から約5.0%の量で、本発明の斜方晶系疑似多形体を少量添加すること、を行っても行わなくても実施され得る。
【0044】
結晶化は、制御した冷却、等温的な飽和、または酸性溶液の塩基による中和のいずれにしても、一般に約-10℃から約80℃、好ましくは約0℃から約65℃、最も望ましくは約25℃から約60℃で実施される。結晶化は、典型的には約30分から約7日の期間で完了する。
【0045】
工程(c)斜方晶系疑似多形体の単離
この結晶性斜方晶系疑似多形体は、従来の様式の工程(c)で、例えば、遠心分離、ろ過などにより、減圧、大気圧または加圧下で単離できる。次に、単離された斜方晶系疑似多形体は、有機溶媒(上記工程(a)における(1)、(2)または(3)で記載されたものなど)または水で混合した溶媒などで洗浄される。次に生じた中間体生成物を、従来の方法、例えば、流動床乾燥、約20℃から約120℃の温度で大気圧下、または約2kPaから約80kPaの減圧下、約30℃から約120℃の温度で操作して乾燥する。
【0046】
本発明の方法にしたがって調製した一般式Iの9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAの斜方晶系同型構造の疑似多形体は、一般式Iにより定義されたように、9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンA分子: 水: 水混和性または水不混和性有機溶媒(S)を1 : 1 : 1の量論比で含む。これは、X線結晶回折構造により確認される(表1および図2から5を参照)。結晶学的データは、新規な斜方晶系同型構造の疑似多形体が、a=8.2から9.7Å、b=11.5から13.5Å、c=44.5から47.0Å、α=β=γ=90°である平均単位格子パラメータ(式中a、bおよびcは、結晶軸長を表し、α、βおよびγは、結晶軸間の角度を表す)を有する斜方晶系空間群P212121を特徴とすることを示す。これらの斜方晶系疑似多形体の同型構造性は、それらの極めて類似した、実際上同一の粉末回折図により確認される。
【0047】
また、やはり斜方晶系空間群P212121で結晶化し、水分子を収容した結晶格子のカナル(canal)を有する9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンA二水和物と比較して(図1および表1を参照)、本発明の一般式Iの9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAの斜方晶系同型構造の疑似多形体は、結晶格子内に孔を有し、この中に水分子および溶媒分子が配置されている。本発明の一般式Iの斜方晶系疑似多形体の単位格子は、9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンA二水和体の対応する単位格子測定値よりも、略50%短い結晶軸a、略3倍長い結晶軸cを有している。
【0048】
工程(d)-斜方晶系疑似多形体の安定な実質的に純粋の非晶質9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAへの変換
最後に、工程(b)で形成された結晶性の乾燥(または湿った)式Iの斜方晶系疑似多形体の実質的に純粋な非晶質への変換を、凍結乾燥により、または約0.01kPaから約80kPaの減圧下、もしくは大気圧下、約100℃から約120℃の温度で乾燥することにより溶媒および過剰の水を除去することにより実施することができる。
【0049】
本発明の方法に従って工程(d)で調製した実質的に純粋な非晶質9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAは、粉末回折図で分離ピークの不存在、1.5%から2.5%の水分量、および顆粒形成傾向(granular habit)(例えば、実施例11で調製した非晶質9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAの走査型電子顕微鏡(SEM)画像である図7を参照)を特徴とする。
【0050】
本発明の方法に従って工程(d)で調製した実質的に純粋な非晶質9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAは、特定の溶解プロファイルならびに特定の固有溶解速度(IDR)を特徴とし、これは同じ条件下で測定された9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンA二水和物の溶解プロファイルおよびIDRとは実質的に異なる。
【0051】
本方法に従って工程(d)で調製した実質的に純粋な非晶質9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAは、吸湿性ではなく、また化学的安定性ならびに「結晶」形の安定性に関して、通常の貯蔵条件下で安定である。
【0052】
本発明の方法の再現で調製した実質的に純粋な非晶質9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAは、同一の収率で得られ、同一の特性を有する。すなわち、本方法は確固たるものであり、再現性が極めてよい。
【0053】
本発明の実質的に純粋な非晶質9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAおよび/または9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAの斜方晶系同型構造の疑似多形体の製剤
本発明の方法に従って調製した実質的に純粋な非晶質9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAおよび/または9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAの斜方晶系同型構造の疑似多形体は、経口、直腸、非経口、経皮、口腔内、経鼻、舌下、皮下または静脈内適用のために即時放出製剤、制御放出製剤、また持続放出製剤の調製に利用でき、このような製剤は、ヒトおよび動物における細菌感染および原生動物感染ならびに感染疾患などの他の病態の治療に有用であり得る。
【0054】
本製剤は、好ましくは、即時放出または制御放出用の、錠剤、微粒子剤、ミニ錠剤、カプセル剤および経口液剤または懸濁剤、あるいはこれらの調製用の粉体の形態で経口投与される。有効物質としての、本発明の新規の実質的に純粋な非晶質9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAおよび/または9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAの斜方晶系同型構造の疑似多形体に加えて、経口製剤は、種々の標準的製薬用担体ならびに結合剤、充填剤、緩衝剤、潤滑剤、滑剤、崩壊剤、付臭剤、甘味剤、界面活性剤およびコーティング剤などの賦形剤(excipients)を場合によって含むことができる。特定の賦形剤は、製剤において複数の役割を有することができ、例えば結合剤および崩壊剤の双方として働く。
【0055】
本発明に有用な経口製剤用の製薬上許容し得る崩壊剤の例としては、限定はしないが、澱粉、前ゼラチン化澱粉、グリコール酸ナトリウム澱粉、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、微結晶セルロース、アルギン酸塩、樹脂、界面活性剤、発泡組成物、水性ケイ酸アルミニウムおよび架橋ポリビニルピロリドンが挙げられる。
【0056】
本発明に有用な経口製剤用の製薬上許容し得る結合剤の例としては、限定はしないが、アラビアゴム; メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースまたはヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース誘導体;ゼラチン、グルコース、デキストロース、キシリトール、ポリメタクリレート類、ポリビニルピロリドン、ソルビトール、澱粉、前ゼラチン化澱粉、トラガカントゴム、キサンタン樹脂、アルギン酸塩、ケイ酸マグネシウム-アルミニウム、ポリエチレングリコールまたベントナイトが挙げられる。
【0057】
経口製剤用の製薬上許容し得る充填剤の例としては、限定はしないが、乳糖、無水乳糖、乳糖一水和物、ショ糖、デキストロース、マンニトール、ソルビトール、澱粉、セルロース(特に微結晶セルロース)、ジヒドロ-または無水リン酸カルシウム、炭酸カルシウムおよび硫酸カルシウムが挙げられる。
【0058】
本発明の製剤に有用な製薬上許容し得る潤滑剤の例としては、限定はしないが、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコール、エチレンオキシドのポリマー類、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、オレイン酸ナトリウム、ステアリルフマル酸ナトリウム、DL-ロイシンおよびコロイド状二酸化シリコンが挙げられる。
【0059】
経口製剤用の好適な製薬上許容し得る付臭剤の例としては、限定はしないが、合成芳香剤およびオイル類、花、果実およびそれらの組合わせなどの天然芳香油が挙げられる。バニラおよびバナナ、リンゴ、スミノミザクラ、モモおよび同様の芳香剤などの果実芳香剤が好ましい。これらの使用は、多くの因子に依存し、最も重要なことは、製薬製剤を服用しようとする集団にとっての感応受容性である。
【0060】
経口製剤用の好適な製薬上許容し得る色素の例としては、限定はしないが、二酸化チタン、ベータ-カロテンおよびグレープフルーツ果皮の抽出物などの合成および天然色素が挙げられる。
【0061】
嚥下を促進し、放出性を修飾し、外観を改善し、および/または製剤の味覚をマスクするために典型的に用いられる経口製剤に有用な製薬上許容し得るコーティング剤の例としては、限定はしないが、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースおよびアクリレート-メタクリレートコポリマー類が挙げられる。
【0062】
経口製剤に好適な製薬上許容し得る甘味剤の例としては、限定はしないが、アスパルテーム、サッカリン、サッカリンナトリウム、シクラミン酸ナトリウム、キシリトール、マンニトール、ソルビトール、乳糖およびショ糖が挙げられる。
【0063】
製薬上許容し得る緩衝剤の好適な例としては、限定はしないが、クエン酸、クエン酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、二塩基性リン酸ナトリウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウムおよび水酸化マグネシウムが挙げられる。
【0064】
製薬上許容し得る界面活性剤の好適な例としては、限定はしないが、ラウリル硫酸ナトリウムおよびポリソルベート類が挙げられる。
【0065】
本発明の実質的に純粋な非晶質9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAおよび/または9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAの斜方晶系同型構造の疑似多形体はまた、輸液または注射により静脈内または腹腔内に投与できる。分散物を、液体ポリエチレングリコール類、トリアセチン油類およびこれらの混合物などの液体担体または中間物中で調製できる。貯蔵安定性を改善するために、このような製剤はまた、微生物の増殖を防止するために防腐剤を含有できる。
【0066】
注射または輸液に好適な薬剤組成物は、有効成分を含有する無菌水溶液、分散液または無菌粉末の形態であり得、必要ならば、輸液または注射に好適なこのような無菌溶液または分散液の製剤用に調整される。これは、場合によってはリポソーム中に封入される。全ての場合、最終製剤は、製造および貯蔵条件下で無菌、液状、安定でなければならない。
【0067】
液体担体または中間物は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、ポリプロピレングリコールなど)、植物油、非毒性グリセリンエステル類およびこれらの好適な混合物を含有する溶媒または液体分散性媒体であり得る。好適な流動性は、リポソーム類の生成、分散液の場合には好適な粒径の投与、または界面活性剤の添加により維持され得る。微生物の活動防止は、種々の抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、またはソルビン酸の添加により達成できる。多くの場合において、体液、特に血液と同様の浸透圧を確実にするために、例えば、糖類、緩衝剤および塩化ナトリウムなどの等張物質が推奨される。このような注射可能な混合物の持続吸収は、モノステアリン酸アルミニウムまたはゼラチンなどの吸収遅延化剤の導入によって達成できる。
【0068】
無菌注射液は、適切な溶媒および1種または複数の前述の賦形剤と共に、実質的に純粋な9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAおよび/または9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAの斜方晶系同型構造の疑似多形体を混合し、次に滅菌ろ過により調製できる。無菌注射液の調製の使用に好適な無菌粉末の場合、好ましい調製法としては、無菌溶液調製後、斜方晶系疑似多形体および所望の賦形剤の粉末状混合物を提供する真空乾燥および凍結乾燥が挙げられる。
【0069】
特定の放出性のために、実質的に純粋な9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAおよび/または9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAの斜方晶系同型構造の疑似多形体はまた、局所作用、局所用製剤の調製に使用され得る。このような製剤には、ポリマー類、油類、液体担体、界面活性剤、緩衝剤、防腐剤、安定化剤、抗酸化剤、湿潤剤、皮膚軟化剤、着色剤および付臭剤などの他の製薬上許容し得る賦形剤も含有し得る。
【0070】
このような局所用製剤に好適な製薬上許容し得るポリマー類の例としては、限定はしないが、アクリルポリマー類; カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロースまたはヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース誘導体; アルギン酸塩、トラガカントゴム、ペクチン、キサンタンおよびシトサンなどの天然ポリマー類が挙げられる。
【0071】
有用で製薬上許容し得る油類の好適な例としては、限定はされないが、鉱油類、シリコーン油類、脂肪酸類、アルコール類、およびグリコール類が挙げられる。
【0072】
好適な製薬上許容し得る液体担体の例としては、限定はされないが、水、エタノール、イソプロパノール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、グリセロールおよびポリエチレングリコール、またはこれらの混合物などのアルコール類またはグリコール類が挙げられ、これに実質的に純粋な非晶質9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAおよび/または9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAの斜方晶系同型構造の疑似多形体を、非毒性アニオン性、カチオン性または非イオン性界面活性剤、および無機または有機緩衝剤を場合によっては添加して、溶解または分散させる。
【0073】
製薬上許容し得る防腐剤の好適な例としては、限定はされないが、溶媒類、例えば、エタノール、プロピレングリコール、ベンジルアルコール、クロロブタノール、第四級アンモニウム塩、およびパラベン類(メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベンなど)などの種々の抗菌剤および抗真菌剤が挙げられる。
【0074】
製薬上許容し得る安定化剤および抗酸化剤の好適な例としては、限定はされないが、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、チオ尿素、トコフェロールおよびブチルヒドロキシアニソールが挙げられる。
【0075】
製薬上許容し得る湿潤剤の好適な例としては、限定はされないが、グリセリン、ソルビトール、尿素およびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0076】
製薬上許容し得る皮膚軟化剤の好適な例としては、限定はされないが、鉱油類、ミリスチン酸イソプロピル、およびパルミチン酸イソプロピルが挙げられる。
【0077】
本発明の局所用製剤において着色剤および付臭剤の使用は、多くの因子に依存し、最も重要なことは、製薬製剤を使用しようとする集団にとっての感応受容性である。
【0078】
投与される本発明の実質的に純粋な非晶質9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAおよび/または9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAの斜方晶系同型構造の疑似多形体の治療上許容し得る量は、選択された化合物、投与様式、治療条件、患者または動物種の年令および状態によって異なり、治療過程をモニタリングして医師、臨床医または獣医の最終的判定に供される。
【0079】
好適な経口および非経口用量は、体重1kg当たり1日約1mgから約200mg、好ましくは、体重1kg当たり約5mgから約100mg、より好ましくは、体重1kg当たり1日約5mgから約50mgの範囲内で変化し得る。実質的に純粋な非晶質9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAおよび/または9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAの斜方晶系同型構造の疑似多形体は、1単位用量当たり有効物質の約1mgから約3000mg、好ましくは、約100mgから約200mg、より望ましくは、約150mgから約600mgを含有する単一剤形で製剤化され得る。
【0080】
本発明に従って調製した実質的に純粋な非晶質9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAおよび/または9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAの斜方晶系同型構造の疑似多形体は、例えば、1剤形単位当たり有効物質の約1mgから約3000mg、通常は、約100mgから約2000mgまたは最良には約150mgから約600mgを含有する剤形単位で製剤化され得る。
【実施例】
【0081】
本発明の非晶質および斜方晶系疑似多形体を、それに最初に使用される物質として、種々の純度および結晶形態たとえば無水形態、水和および溶媒和形態などの9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAを利用して、下記の実施例1〜17に記載されるとおり調製した。そのように利用される種々の9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンA物質は、市販されているか、または調製条件が確認され得る程度に先行技術で開示された方式で調製した。実施例で報告された実験において、それぞれの9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンA生成物の含量を、HPLCにより分析し、残った溶媒含量を、GCにより測定した。TGAおよびDSC測定は、Perkin-Elmer TGA-7装置で実行された。回折実験は、非外界データ採取に用いられるAnton Paar TTK-100湿度カメラで装備されたBruker-Nonius FR591/KappaCCD単結晶X線回折計およびPhilips X'PertPRO粉末X線回折計で実施された。このように生成された数種の斜方晶系疑似多形体の結晶構造は、表1に示されている。
【0082】
斜方晶系疑似多形体の調製
(実施例1)
式Ia(S=1,4-ジオキサン)の斜方晶系疑似多形体の調製(方法A)
粗製9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンA(5.7%の水分含量を有する10.0g)を、80℃の温度で20mlジオキサン中に溶解した。この溶液を活性炭で処理し、ろ過し、3時間かけて室温に冷却した。沈殿した結晶を、さらに15時間室温に放置した。この結晶を単離し、大気圧および室温で一定重量に乾燥した。生成物は、1,4-ジオキサン溶媒和物(S=1,4-ジオキサン)の形態で3.8gの式Iaの結晶性斜方晶系同型構造の疑似多形体であった。水分含量(KF滴定により測定)は、2.54%であり、1,4-ジオキサン含量(GCにより測定)は、10.5%であった。単結晶X線回折分析において、斜方晶系疑似多形体は、表1および図2に確認されるとおり特徴づけられた。
【0083】
(実施例2)
式Ib(S=tert-ブタノール)の斜方晶系疑似多形体の調製(方法A)
粗製9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンA(5.7%の水分含量を有する10.0g)を、60℃の温度で20ml tert-ブタノール中に溶解した。この溶液を活性炭で処理し、ろ過し、2時間かけて室温に冷却した。沈殿した結晶を、さらに15時間室温に放置した。この結晶を単離し、大気圧および室温で一定重量に乾燥した。生成物は、10.0gの式Ib(S=tert-ブタノール)の結晶性斜方晶系同型構造の疑似多形体であった。水分含量は、2.17%であり、tert-ブタノール含量は、8.6%であった。単結晶X線回折分析において、斜方晶系疑似多形体は、表1および図3に確認されるとおり特徴づけられた。
【0084】
(実施例3)
式Ic(S=メチルtert-ブチルエーテル)の斜方晶系疑似多形体の調製(方法A)
粗製9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンA(5.7%の水分含量を有する10.0g)を、50℃の温度で45mlメチルtert-ブチルエーテル(MTBE)中に溶解した。この溶液を活性炭で処理し、ろ過し、2時間かけて室温に冷却した。沈殿した結晶を、さらに15時間室温に放置した。この結晶を単離し、大気圧および室温で一定重量に乾燥した。生成物は、8.8gの式Ic(S=メチルtert-ブチルエーテル)の結晶性斜方晶系同型構造の疑似多形体であった。水分含量は、2.4%であり、MTBE含量は、7.9%であった。単結晶X線回折分析において、斜方晶系疑似多形体は、表1および図4に確認されるとおり特徴づけられた。
【0085】
(実施例4)
式Id(S=シクロヘキサン)の斜方晶系疑似多形体の調製(方法A)
粗製9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンA(5.7%の水分含量を有する5.0g)を、70℃の温度で55mlシクロヘキサン中に溶解した。この溶液を活性炭で処理し、ろ過し、2時間かけて室温に冷却した。沈殿した結晶を、さらに15時間室温に放置した。この結晶を単離し、大気圧および室温で一定重量に乾燥した。生成物は、4.7gの式Id(S=シクロヘキサン)の結晶性斜方晶系同型構造の疑似多形体であった。水分含量は、2.35%であり、シクロヘキサン含量は、7.9%であった。単結晶X線回折分析において、斜方晶系疑似多形体は、表1および図5に確認されるとおり特徴づけられた。
【0086】
(実施例5)
式Ia(S=1,4-ジオキサン)の斜方晶系疑似多形体の調製(方法B)
9-デオキソ-9a-アザ-9a-ホモエリスロマイシンA(9a-DeMet)(1モル)、ギ酸(1.8モル/モルから2.5モル/モル9a-DeMet)およびホルマリン(1モルから1.5モルのホルムアルデヒド/モル9a-DeMet)を1,4-ジオキサン(4 l/kgから8 l/kg 9a-DeMet)に加えた。この混合物を、約60℃に加熱し、この温度で4時間攪拌した。この温度を維持しながら、活性炭を反応混合物に加えた。混合物をろ過し、フィルタ上に残っている活性炭を1,4-ジオキサン(9a-DeMet基質の0.5 l/kgから2 l/kg)で洗浄した。次に、1,4-ジオキサン溶液を合わせて(ろ液および洗浄液の双方)、予め調製した水の量(10 l/kgから20 l/kg 9a-DeMet)に約25℃から30℃の温度で加えた。生じた混合物を、10% NaOH溶液により段階的にpH 9.8のアルカリ性にし、次いで室温で2時間攪拌した。沈殿物は、一般式Ia(S=1,4-ジオキサン)の結晶性の同型構造の疑似多形体であった。この沈殿物をろ過し、水性1,4-ジオキサン溶液(10% v/v)で洗浄し、室温、大気圧下で一定重量に乾燥した。このように、最少0.4モルの疑似多形体を調製した。得られた疑似多形体Iaは、実施例1で調製したものと形態が類似していた。
【0087】
(実施例6)
式Ib(S=tert-ブタノール)の斜方晶系疑似多形体の調製(方法B)
実施例5に記載されたものと類似の様式で、9-デオキソ-9a-アザ-9a-ホモエリスロマイシンAを、溶媒としてtert-ブタノールを用いて30℃の結晶化温度で70時間かけて、一般式Ib(S=tert-ブタノール)の結晶性の斜方晶系同型構造の疑似多形体に変換した。生成物をろ過し、水性tert-ブタノール溶液(5% v/v)で洗浄し、3kPaから5kPaの減圧下、30℃から40℃の温度で乾燥した。収量: 0.7モル。このように、得られた疑似多形体Ibは、実施例2で調製したものと類似していた。
【0088】
(実施例7)
式Id(S=シクロヘキサン)の斜方晶系同型構造の疑似多形体の調製(方法C)
非晶質9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンA(3.8%の水分含量を有する5.0g)を、55mlシクロヘキサンに加えた。この混合物を攪拌しながら40〜50℃に加熱した。溶液を活性炭で処理し、ろ過し、2時間かけて15度の温度に冷却した。混合物に、式Id(S=シクロヘキサン)の9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンA同型構造の疑似多形体を接種し、攪拌しながら24時間かけて段階的に0℃に冷却した。このように形成された沈殿物は、シクロヘキサン溶媒和物(S=シクロヘキサン)の形態で結晶性同型構造の疑似多形体Idであった。沈殿物をろ過し、最少量の冷シクロヘキサンで洗浄し、大気圧および室温で一定重量に乾燥した。このように、実施例4で調製したものと類似した4.7gの疑似多形体Idを生成した。
【0089】
(実施例8)
式Id(S=シクロヘキサン)の斜方晶系同型構造の疑似多形体の調製(方法D)
非晶質9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンA(3.8%の水分含量を有する5.0g)を、40℃の温度で攪拌しながら55mlシクロヘキサンに溶解した。n-ヘキサンを、僅かな混濁が形成されるまで攪拌しながらこの温度で段階的に徐々に加えた。次に、この溶液を5時間かけて室温まで徐々に冷却し、さらに18時間攪拌しないでこの温度で放置した。生じた沈殿物は、式Id(S=シクロヘキサン)の結晶性同型構造の疑似多形体であった。沈殿物をろ過し、最少量の冷n-ヘキサン中10%v/vシクロヘキサンで洗浄し、大気圧および室温で一定重量に乾燥した。このように、実施例4で調製したものと類似した4.9gの疑似多形体Idを生成した。
【0090】
(実施例9)
式Ic(S=メチルtert-ブタノールエーテル)の疑似多形体の調製(方法D)
9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンA二水和物(5.0g、純度: USP 25)を、54mlメチルtert-ブチルエーテルに溶解した。この攪拌溶液を30〜40℃に加熱し、引き続き70mlヘキサンに、一般式Ic(S=メチルtert-ブチルエーテル)の250mgの斜方晶系同型構造の疑似多形体の接種下、40℃で2時間かけて徐々に加えた。次に、この混合物を24時間かけて-10℃に徐々に冷却した。このように沈殿した一般式Ic(S=メチルtert-ブチルエーテル)の結晶性斜方晶系同型構造の疑似多形体をろ過し、最少量の冷メチルtert-ブチルエーテルで洗浄し、大気圧および室温で一定重量に乾燥した。このように、実施例3で調製したものと類似した7.8gの疑似多形体Icを得た。
【0091】
(実施例10)
9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAのそのままの溶液から式Ia(S=1,4-ジオキサン)の斜方晶系疑似多形体の調製(方法E)
WO 01/00640に記載されたとおり調製した9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAの60ml酢酸エチルのそのままの溶液を、さらに40mlの酢酸エチルで希釈した。生じた混合物を10% NaOH溶液でpH値9.8のアルカリ性にし、層を分離した。酢酸エチル層を飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、活性炭で処理した。混合物をろ過し、フィルタ上に残っている活性炭を5mlの酢酸エチルで洗浄した。合わせた酢酸エチル溶液(ろ液および洗浄液の双方)に、10mlの1,4-ジオキサンを加えた。酢酸エチルを大気圧で留去した。蒸留後の残渣を5時間かけて100℃から30℃に緩やかに冷却した。生じた沈殿物は、一般式Ia(S=1,4-ジオキサン)の結晶性の同型構造の疑似多形体であった。この沈殿物をろ過し、最少量の冷水性1,4-ジオキサン溶液(10% v/v)で洗浄し、室温、大気圧下で一定重量に乾燥した。実施例1で調製したものと類似した1.9gの疑似多形体Iaが得られた。
【0092】
(実施例11および12)
疑似多形体Ic(S=メチル-tert-ブチルエーテル)から安定な非晶質9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAの調製
(実施例11)
実施例3に従って得られた一般式Ic(S=メチル-tert-ブチルエーテル)の斜方晶系疑似多形体を、2kPaの減圧下、80℃の温度で一定重量に乾燥した。このように得られた安定な非晶質9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAの収率は定量的であった; 純度: USP 25による。このように得られた安定な非晶質生成物の粉末回折図および走査電子顕微鏡(SEM)画像は、それぞれ図6および図7に記載されている。
【0093】
(実施例12)
実施例10および9に記載された方法と同様の様式で、一般式Ic(S=メチル-tert-ブチルエーテル)の結晶性同型構造の疑似多形体を、9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAのそのままのジクロロメタン溶液から得た。この疑似多形体Icをろ過し、冷メチル-tert-ブチルエーテルで洗浄し、2kPaから5kPaの減圧下、70℃から80℃の間の温度で乾燥して、非晶質9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAを得た。収率: 0.6モル; 純度: USP 25。この生成物は、実施例11で生成された生成物と同一のx線粉末回折パターンを有した。
【0094】
(実施例13)
疑似多形体Ia(S=1,4-ジオキサン)から安定な非晶質9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAの調製
実施例1に従って得られた式Ia(S=1,4-ジオキサン)の斜方晶系疑似多形体を、50℃で0.1kPaの減圧下、一定重量に乾燥した。このように得られた安定な非晶質9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAの収率および純度は、実施例11のものと同一であった。
【0095】
(実施例14)
疑似多形体Ib(S=tert-ブタノール)から安定な非晶質9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAの調製
実施例2に従って得られた式Ib(S=tert-ブタノール)の斜方晶系疑似多形体を、80℃で13 Paの減圧下、一定重量に乾燥した。このように得られた安定な非晶質9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAの収率および純度は、実施例11のものと同一であった。
【0096】
(実施例15)
疑似多形体Id(S=シクロヘキサン)から安定な非晶質9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAの調製
実施例4に従って得られた式Id(S=シクロヘキサン)の斜方晶系疑似多形体を、80℃で2kPaの減圧下、一定重量に乾燥した。このように得られた安定な非晶質9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAの収率および純度は、実施例11のものと同一であった。
【0097】
(実施例16)
疑似多形体Ib(S=tert-ブタノール)から安定な非晶質9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAの調製
実施例2に従って得られた式Ib(S=tert-ブタノール)の斜方晶系疑似多形体を、95℃で1 Paの減圧下、一定重量に乾燥した。このように得られた安定な非晶質9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAの収率および純度は、実施例11のものと同一であった。
【0098】
(実施例17)
式Ia(S=1,4-ジオキサン)の斜方晶系疑似多形体の再沈殿
実施例1に従って得られた式Ia(S=1,4-ジオキサン)の5.0gの結晶性の斜方晶系疑似多形体を、50℃で10ml 1,4-ジオキサンに溶解した。この50℃溶液に、水を、僅かな混濁が生じるまで、攪拌しながら滴下により加えた。次に混合物を30分かけて室温に冷却し、この温度でさらに24時間維持した。このように得られた精製された式Ia(S=1,4-ジオキサン)の斜方晶系疑似多形体をろ過し、最少量の冷水で洗浄し、25℃、大気圧で一定重量に乾燥した。このように2.0gの式Iaの精製疑似多形体を得た。
【0099】
【表1】

【0100】
(実施例18)
一般式I(Ia: S=MTBE)の9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAの新規な同型構造の疑似多形体および新規な非晶質9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンA対市販の9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンA二水和物の溶解プロファイル
本発明の一般式I(Ic: S=MTBE)の9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAの新規な斜方晶系同型構造の疑似多形体および新規な非晶質9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAと、市販の9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンA二水和物とのインビトロ挙動を比較するために、溶解プロファイルを、37℃、pH 3およびpH6で測定した。比較のため、上記の実施例3の方法で調製した新規な疑似多形体Icおよび上記の実施例11の方法で調製した新規な非晶質9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAを用いた。比較溶解プロファイルを、USP Method 2、PharmaTest Dissolution Tester、PTW SIIにより測定し; 溶解した9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAの含量をHPLCにより測定した。このように得られたデータは、下記の表2に記載され、図8(pH 3)および図9(pH6)にプロットされている。
【0101】
【表2】

【0102】
(実施例19)
pH 6および37℃の媒体中、実施例11の方法に従って調製した新規な非晶質9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンA、および市販の9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンA二水和物に関する固有溶解速度(IDR)は、固有溶解テスター、Van Kelタイプにより測定された。新規な非晶質9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンA に関するIDRは、約2.79mg min-1 cm-2であり、先行技術のIDR、すなわち、9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンA二水和物(約1.8mg min-1 cm-2)よりも約40%高かった。
【0103】
(実施例20)
錠剤の製剤化
非晶質9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAの標準的な顆粒化技法による製剤化は、非晶質生成物(97%)を無水リン酸水素カルシウム、前ゼラチン化澱粉、乳糖一水和物、微結晶セルロースおよびクロスカルメロースナトリウムと共に顆粒化することにより調製した。乾燥顆粒を、ステアリン酸マグネシウムおよびラウリル硫酸ナトリウムと共に均質化し、標準的錠剤機を用いて錠剤化した。錠剤コアは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、二酸化チタン、ポリソルベート、タルクおよび色素を含有するHPMCが主体のフィルムコーティングでコーティングされた。250mg、500mgおよび600mg錠剤に関する成分量は、表3に掲載されている。
【0104】
【表3】

【0105】
(実施例21)
局所用製剤
水、共溶媒(グリセロール、ポリエチレングリコール)、防腐剤(メチルパラベンおよびプロピルパラベン)、安定化剤およびゲル化ポリマーは、水相を形成するための標準的な技法により均質化される。
【0106】
非晶質9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAは、このような水相に添加され、分散/溶解した。乳化剤を添加した油性成分(液体パラフィンおよびセチルアルコール)を融解し、冷却後、予め調製した水相と混合した。最終均質化を減圧下で実施した。付臭剤は、最終相、例えば均質ゲルに添加でき、場合によってはpHを調整できる。このように調製した、非晶質9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAを含有する典型的な製剤は、表4に掲載されている。
【0107】
【表4】

【0108】
これらの混合物において、非晶質9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAの幅広い濃度範囲を利用でき;防腐剤もまた、剤形(すなわち、多剤または単剤)に応じて製剤中に含ませることができる。
【0109】
本明細書に引用されている全ての引用文献、試験方法、特許および特許公報は、参照として組み込まれている。
【0110】
本発明は、本明細書の具体的実施形態による範囲に限定されない。本明細書に記載されたものに加えて本発明の種々の改変は、前述の記載から当業者にとって明らかになるであろう。このような改変は、本願添付の請求項の範囲内に入るように意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンA二水和物(Cambridge Structural Databaseに記載されたGEGJADコードの構造)の結晶パッキングを示す図である。
【図2】一般式I(化合物Ia: S=1,4-ジオキサン)の9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAの斜方晶系同型構造の疑似多形体の結晶パッキングを示す図である。
【図3】一般式I(化合物Ib: S=tert-ブタノール)の9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAのさらなる斜方晶系同型構造の疑似多形体の結晶パッキングを示す図である。
【図4】一般式I(化合物Ic: S=メチルtert-ブチルエーテル(MTBE))の9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAのさらなる斜方晶系同型構造の疑似多形体の結晶パッキングを示す図である。
【図5】一般式I(化合物Id: S=シクロヘキサン)の9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAのさらなる斜方晶系同型構造の疑似多形体の結晶パッキングを示す図である。
【図6】実施例11の方法に従って調製した非晶質9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAの粉末回折図である。
【図7】実施例11に記載された手順で調製した非晶質9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンA表面の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す図である。
【図8】37℃でpH 3の媒体中、(i)実施例11に記載された手順で調製した非晶質9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンA、(ii)実施例3の手順で調製した一般式I(Ic: S=MTBE)の9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAの新規な斜方晶系同型構造の疑似多形体、および(iii)市販の9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンA二水和物、の溶解速度を示すグラフである。
【図9】37℃でpH 6の媒体中、(i)実施例11に記載された手順で調製した非晶質9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンA、(ii)実施例3の手順で調製した一般式I(Ic: S=MTBE)の9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAの新規な斜方晶系同型構造の疑似多形体、および(iii)市販の9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンA二水和物、の溶解速度を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に純粋な非晶質9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAの調製方法であって、
a)(1)水混和性または水不混和性である有機溶媒、
(2)有機溶媒の混合物、
(3)有機溶媒と水との混合物、または
(4)水と少なくとも1種の無機酸もしくは有機酸との混合物
に9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンA物質を溶解する工程と;
b)一般式I
【化1】

(式中、Sは、水混和性または水不混和性有機溶媒である)
の9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAの斜方晶系同型構造の疑似多形体をこのように調製された溶液から結晶化する工程であって、
疑似多形体が、斜方晶系空間群P212121ならびに
a=8.2から9.7Å、b=11.5から13.5Å、c=44.5から47.0Åの結晶軸長、および
α=β=γ=90°の結晶軸間の角度
の平均単位格子パラメータを特徴とする工程と;
c)一般式Iの斜方晶系同型構造の疑似多形体を単離する工程と;
d)一般式Iの9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAの斜方晶系同型構造の疑似多形体を実質的に純粋な非晶質9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAに変換する工程と
を含む方法。
【請求項2】
工程(a)で溶解する9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンA物質が、
(i)粗製形態または純粋形態の結晶9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンA、
(ii)粗製形態または純粋形態の非晶質9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンA、
(iii)粗製形態または純粋形態のいずれかの9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAの溶媒和物または水和物、あるいは
(iv)いずれかの最終中間体から、合成の最終工程において形成された9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAのそのままの溶液
である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
実質的に純粋な非晶質9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAを調製するために利用する、工程(a)で溶解する9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAが、任意の知られた形態で、製薬上許容し得る純度未満の純度を有する粗製9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAである請求項2に記載の方法。
【請求項4】
実質的に純粋な非晶質9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAを調製するために使用する、工程(a)で溶媒中に溶解された9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAのそのままの溶液が、いずれかの最終中間体から、合成の最終工程においてそのままの溶媒中に形成された9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAの溶液である請求項2に記載の方法。
【請求項5】
実質的に純粋な非晶質9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAを調製するために使用する、工程(a)で溶解された9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAのそのままの溶液が、最終中間体として9-デオキソ-9a-アザ-9a-ホモエリスロマイシンAから、合成の最終工程においてそのままの溶媒中に形成された9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAの溶液である請求項2に記載の方法。
【請求項6】
工程(a)で溶解する9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAが、9-デオキソ-9a-アザ-9a-ホモエリスロマイシンA、および、粗製の9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAの合成の最終工程時に使用したそのままの溶媒中の9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンA中間体の分散物の形態である請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記そのままの溶液におけるそのままの溶媒が、1個または2個の炭素原子を有するハロアルカン類、C2〜C4低級アルキル基を有する酢酸のエステル類、モノヒドロキシルC2〜C4アルカノール類、C1〜C4ケトン類、鎖状または環状エーテル類、芳香族または置換芳香族化合物、およびこれらの混合物からなる群から選択される請求項4に記載の方法。
【請求項8】
工程(a)で溶解する9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAが、式Iの非晶質9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンA; 9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAの無水結晶、一水和物、二水和物または溶媒和物; または9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAの斜方晶系同型構造の疑似多形体である請求項2に記載の方法。
【請求項9】
工程(a)で溶解する9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAが、製薬上許容し得る純度である請求項2に記載の方法。
【請求項10】
工程(a)を、約30℃から約100℃の温度で行う請求項1に記載の方法。
【請求項11】
工程(a)で9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンA物質を溶解する有機溶媒が、直鎖状または分枝状C1〜C5アルカン類、C5〜C8シクロアルカン類、直鎖状または分枝状C1〜C6アルカノール類、C5〜C8シクロアルカノール類、アリールアルカノール類、C2〜C4ジオール類、トリオール類、C1〜C4エーテル類、C3〜C5ケトン類、C1〜C4アルカン酸およびヒドロキシアルカン酸のC1〜C4アルキルエステル類、アミド類、尿素類、C2〜C4ニトリル類、スルホキシド類、スルホン類、複素環式アミン類、ラクタム類、ならびにそれらの混合物からなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項12】
無機酸が、塩酸、硫酸(VI)、硫酸(IV)、およびそれらの混合物からなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項13】
有機酸が、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、クエン酸、酒石酸、マレイン酸、シュウ酸、クロロ酢酸、安息香酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、およびそれらの混合物からなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項14】
9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAの斜方晶系同型構造の疑似多形体を、約80℃から約-10℃の温度で9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAを含有する溶液を制御して冷却することにより工程(b)で結晶化する請求項1に記載の方法。
【請求項15】
9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAの斜方晶系同型構造の疑似多形体を、水混和性または水不混和性有機溶媒中、等温性条件で工程(a)で形成した溶液を放置または混合することにより約25℃から約60℃の温度で等温的に工程(b)で結晶化する請求項1に記載の方法。
【請求項16】
9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAの斜方晶系同型構造の疑似多形体を、工程(a)で形成された溶液を水混和性または水不混和性有機溶媒中、有機カウンター溶媒を用いて溶液がわずかに混濁するまで飽和させることにより、約25℃から約60℃の温度で等温的に工程(b)で結晶化する請求項1に記載の方法。
【請求項17】
有機カウンター溶媒が水である請求項16に記載の方法。
【請求項18】
9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAの斜方晶系同型構造の疑似多形体を、工程(a)で形成された9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAの酸性水溶液を約80℃から約-10℃の温度で中和することにより工程(b)で結晶化する請求項1に記載の方法。
【請求項19】
一般式Iの斜方晶系同型構造の疑似多形体を、1種または複数の無機塩基または有機塩基にて工程(a)による9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンA物質の酸性溶液を中和することにより工程(b)で結晶化する請求項1に記載の方法。
【請求項20】
無機塩基が、水酸化、酸化または炭酸アルカリ金属またはアルカリ土類金属、あるいはアンモニア溶液である請求項18に記載の方法。
【請求項21】
有機塩基が有機アミンである請求項19に記載の方法。
【請求項22】
有機アミンが、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピペリジン、3-メチルピリジン、ピペラジン、トリエタノールアミン、およびエチレンジアミンからなる群から選択される請求項21に記載の方法。
【請求項23】
有機塩基が第四級有機水酸化物である請求項19に記載の方法。
【請求項24】
第四級有機水酸化物が、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、および水酸化テトラブチルアンモニウムからなる群から選択される請求項23に記載の方法。
【請求項25】
式Iの9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAの斜方晶系同型構造の疑似多形体を、出発の9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAの量を基準にして約0.01重量%から約5.0重量%の量で工程(b)の溶液に加えて、その中での一般式Iの斜方晶系同型構造の疑似多形体の結晶化を開始させる請求項1に記載の方法。
【請求項26】
式Iの9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAの斜方晶系同型構造の疑似多形体を、
(i)工程(a)で形成された溶液から疑似多形体を分離すること;
(ii)得られた生成物を、約-10℃から約40℃の温度で工程(a)で使用した溶媒(1)、(2)または(3)で洗浄すること;
(iii)約20℃から約80℃の温度で大気圧下、または約2kPaから約80kPaの減圧下で、洗浄した生成物を乾燥すること
により工程(c)で単離する請求項1に記載の方法。
【請求項27】
式Iの斜方晶系同型構造の疑似多形体を、約0.01kPaから約80kPaの減圧下、約-100℃から約100℃の温度で斜方晶系同型構造の疑似多形体をさらに乾燥または凍結乾燥することにより、工程(d)で、実質的に純粋で安定な非晶質9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAに変換する請求項1に記載の方法。
【請求項28】
工程(d)で調製された実質的に純粋な非晶質9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAが、粉末回折図での分離ピークの不存在、約1.5%から約2.5%の水分量、顆粒形成傾向、特定の溶解プロファイルならびに37℃での特定の固有溶解速度(IDR)により、を特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項29】
請求項1に記載の方法で調製された式Iの実質的に純粋な斜方晶系同型構造の疑似多形体。
【請求項30】
一般式I
【化2】

(式中、Sは、水混和性または水不混和性有機溶媒である)の9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAの実質的に純粋な斜方晶系同型構造の疑似多形体であって、
斜方晶系空間群P212121、および
a=8.2から9.7Å、
b=11.5から13.5Å、
c=44.5から47.0Å、α=β=γ=90°
(式中、a、bおよびcは、結晶軸長を表し、α、βおよびγは、結晶軸間の角度を表す)の平均単位格子パラメータを有することを特徴とする斜方晶系同型構造の疑似多形体。
【請求項31】
下記の疑似多形体(Ia)〜(Id)の群から選択される請求項29に記載の9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンAの実質的に純粋な斜方晶系同型構造の疑似多形体であって、式IのSおよび平均単位格子パラメータ、すなわち結晶軸長a、bおよびc、ならびに結晶構造の結晶軸間の角度α、βおよびγは:
(Ia)S=1,4-ジオキサン、および22℃:
a=8.8290(20)Å、
b=12.167(2)Å、
c=45.853(8)Å、および
α=β=γ=90°、
(Ib)S=tert-ブタノール、および-173℃:
a=8.84240(10)Å、
b=11.917 30(10)Å、
c=45.9493(6)Å、および
α=β=γ=90°、
(Ic)S=メチルtert-ブチルエーテル、および22℃:
a=8.92080(10)Å、
b=12.34770(10)Å、
c=45.71900(10)Å、および
α=β=γ=90°、
(Id)S=シクロヘキサン、および22℃:
a=8.8573(23)Å、
b=12.520(7)Å、
c=45.624(11)Å、および
α=β=γ=90°
である斜方晶系同型構造の疑似多形体。
【請求項32】
請求項1に記載の方法で調製された実質的に純粋な非晶質9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンA。
【請求項33】
粉末回折図での分離ピークの不存在、約1.5%から約2.5%の水分量、顆粒形成傾向、特定の溶解プロファイルならびに37℃での特定の溶解速度(IDR)を特徴とする請求項1に記載の方法で調製した実質的に純粋な非晶質9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンA。
【請求項34】
請求項1に記載の方法で調製した実質的に純粋な非晶質9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンA、および1種または複数の製薬上許容し得る賦形剤を含む薬剤組成物。
【請求項35】
請求項1に記載の方法で調製した実質的に純粋な非晶質9-デオキソ-9a-アザ-9a-メチル-9a-ホモエリスロマイシンA、および1種または複数の製薬上許容し得る賦形剤を含む経口、直腸、非経口、経皮、口腔内、経鼻、舌下、皮下または静脈内適用のための薬剤組成物。
【請求項36】
ヒトおよび動物における細菌感染および原生動物感染、ならびに炎症関連疾患を治療する方法であって、請求項34に記載の薬剤組成物を、その治療を必要とするヒトまたは動物に投与する工程を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2006−501197(P2006−501197A)
【公表日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−522378(P2004−522378)
【出願日】平成15年7月21日(2003.7.21)
【国際出願番号】PCT/HR2003/000040
【国際公開番号】WO2004/009608
【国際公開日】平成16年1月29日(2004.1.29)
【出願人】(505011361)プリヴァ−イストラジヴァキ・インスティトゥ・ディー・オー・オー (3)
【Fターム(参考)】