説明

新規な4−(4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−1−ヒドロキシベンゼン類

【課題】一方のフェノール核にのみ、低級アルキル基を置換基として有する新規な4−(4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−1−ヒドロキシベンゼン類の立体異性体を提供する。
【解決手段】一般式(I)


(式中、Rは炭素原子数1〜4のアルキル基を示し、nは1〜3の整数を示す。)で表される4−(4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−1−ヒドロキシベンゼン類のトランス体とシス体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方のフェノール核にのみ低級アルキル基を置換基として有する新規な4−(4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−1−ヒドロキシベンゼン類に関する。
【0002】
更に、本発明は、上記化合物の立体異性体のうちのトランス体である4−(トランス−4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−1−ヒドロキシベンゼン類とシス体である4−(シス−4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−1−ヒドロキシベンゼン類に関する。
【0003】
このような4−(4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−1−ヒドロキシベンゼン類は、それ自体で、液晶ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン等の合成樹脂の原料やポリイミド、ポリアミド等の中間原料のほか、液晶表示素子に代表される各種液晶材料の原料や、半導体等のフォトレジスト等の原料、有機エレクトロルミネッセンス素子材料の原料等として有用性が期待されるほか、種々の化合物の製造のための中間体としても有用である。
【0004】
例えば、それ自体で、分子の両末端にヒドロキシル基を持つジオール化合物として、例えば、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン等の合成樹脂の原料として有用である。また、分子の中間のシクロヘキシル環部分を脱水素することによって、4,4”−ジヒドロキシフェニル−p−ターフェニル類を得ることができる。
【0005】
本発明による新規な4−(4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−1−ヒドロキシベンゼン類は、通常、シス体とトランス体の混合物であるが、それらの一方を分離することができ、また、一方を他方に異性化して、一方の異性体のみを得ることもできる。特に、トランス体は、液晶化合物の構成成分又は原料として有用性が期待される。
【背景技術】
【0006】
従来、例えば、4−(4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−1−ヒドロキシベンゼン類としては、シクロヘキシル基に対して、対称形の1,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンが特開平1−168634号公報や米国特許第3408407号公報に記載されている。
【0007】
しかし、一方のフェノール核にのみ、低級アルキル基を置換基として有する4−(4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−1−ヒドロキシベンゼン類や、それらのトランス体とシス体は、従来、知られていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明は、一方のフェノール核にのみ、低級アルキル基を置換基として有する4−(4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−1−ヒドロキシベンゼン類を提供することを目的とする。更に、本発明は、上記化合物のトランス異性体である4−(トランス−4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−1−ヒドロキシベンゼン類とシス異性体である4−(シス−4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−1−ヒドロキシベンゼン類を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、一般式(I)
【0010】
【化1】

【0011】
(式中、Rは炭素原子数1〜4のアルキル基を示し、nは1〜3の整数を示す。)で表される4−(4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)1−ヒドロキシベンゼン類が提供される。
【0012】
更に、本発明によれば、上記一般式((I)で表される4−(トランス−4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)1−ヒドロキシベンゼン類と4−(シス−4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)1−ヒドロキシベンゼン類とが提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、一方のフェノール核にのみ、低級アルキル基を置換基として有する新規な4−(4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−1−ヒドロキシベンゼン類が提供される。このような4−(4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−1−ヒドロキシベンゼン類は、それ自体で、液晶ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン等の合成樹脂の原料のほか、液晶表示素子や半導体等のフォトレジスト等の原料として有用性が期待されるほか、種々の化合物の製造のための中間体としても有用である。
【0014】
更に、本発明によれば、上記化合物のトランス異性体である4−(トランス−4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−1−ヒドロキシベンゼン類とシス異性体である4−(シス−4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−1−ヒドロキシベンゼン類が提供される。これらのうち、例えば、トランス体は、液晶化合物の構成成分又は原料として有用性が期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明による新規な4−(4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)1−ヒドロキシベンゼン類は、一般式(I)
【0016】
【化2】

【0017】
(式中、Rは炭素原子数1〜4のアルキル基を示し、nは1〜3の整数を示す。)で表される。
【0018】
上記一般式(I)において、Rは炭素数1〜4のアルキル基を表し、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基であり、プロピル基又はブチル基は、直鎖状でも分岐状でもよい。
【0019】
従って、本発明による4−(4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)1−ヒドロキシベンゼン類の具体例としては、例えば、4−(4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−2−メチル−1−ヒドロキシベンゼン、4−(4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−3−メチル−1−ヒドロキシベンゼン、4−(4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−2,6−ジメチル−1−ヒドロキシベンゼン、4−(4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−2,3−ジメチル−1−ヒドロキシベンゼン、4−(4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−2,5−ジメチル−1−ヒドロキシベンゼン、4−(4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−2,3,5−トリメチル−1−ヒドロキシベンゼン、4−(4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−2,3,6−トリメチル−1−ヒドロキシベンゼン、4−(4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−2−エチル−1−ヒドロキシベンゼン、4−(4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−3−エチル−1−ヒドロキシベンゼン、4−(4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−2−イソプロピル−1−ヒドロキシベンゼン、4−(4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−3−イソプロピル−1−ヒドロキシベンゼン、4−(4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−2−n−プロピル−1−ヒドロキシベンゼン、4−(4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−3−n−プロピル−1−ヒドロキシベンゼン、4−(4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−2−n−ブチル−1−ヒドロキシベンゼン、4−(4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−3−n−ブチル−1−ヒドロキシベンゼン、4−(4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−2−t−ブチル−1−ヒドロキシベンゼン、4−(4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−3−t−ブチル−1−ヒドロキシベンゼン、4−(4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−2,6−ジエチル−1−ヒドロキシベンゼン、4−(4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−2,3−ジエチル−1−ヒドロキシベンゼン、4−(4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−2,5−ジエチル−1−ヒドロキシベンゼン、4−(4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−2,3,5−トリエチル−1−ヒドロキシベンゼン、4−(4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−2,3,6−トリエチル−1−ヒドロキシベンゼン、4−(4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−2,6−ジイソプロピル−1−ヒドロキシベンゼン、4−(4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−2,3−ジイソプロピル−1−ヒドロキシベンゼン、4−(4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−2,5−ジイソプロピル−1−ヒドロキシベンゼン、4−(4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−2,6−ジ−t−ブチル−1−ヒドロキシベンゼン、4−(4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−2,3−ジ−t−ブチル−1−ヒドロキシベンゼン、4−(4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−2,5−ジ−t−ブチル−1−ヒドロキシベンゼン、4−(4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−2−メチル−6−イソプロピル−1−ヒドロキシベンゼン、4−(4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−2−t−ブチル−5−メチル−1−ヒドロキシベンゼン、4−(4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−2−メチル−6−t−ブチル−1−ヒドロキシベンゼン、4−(4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−2,6−ジ−t−ブチル−5−メチル−1−ヒドロキシベンゼン等を挙げることができる。
【0020】
このような、本発明による4−(4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−1−ヒドロキシベンゼン類は、例えば、一般式(II)
【0021】
【化3】

【0022】
(式中、R及びnは前記と同じである。)で表される1,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセン類を水素化触媒の存在下にそのシクロヘキセン環を水素添加することにより得ることができる。
【0023】
また、上記1,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセン類は、例えば、一般式(III)
【0024】
【化4】

【0025】
(式中、R及びnは前記と同じである。)で表されるヒドロキシフェニル置換シクロヘキシリデンビスフェノール類を、好ましくは、アルカリ触媒の存在下に、熱分解することによって得ることができる。
【0026】
従って、本発明による4−(4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−1−ヒドロキシベンゼン類は、一つの方法として、1,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセン類を水素添加することによって得ることができる。
【0027】
また、別の方法として、上記ヒドロキシフェニル置換シクロヘキシリデンビスフェノール類を熱分解して得られた1,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセン類を含む反応混合物を、熱分解にアルカリ触媒を用いた場合には、反応終了後、得られた反応混合物を、これに酸を加えてアルカリを中和した後、晶析、濾過等の精製を施すことなく、そのまま、水素化触媒の存在下に水素添加することによって、本発明による4−(4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−1−ヒドロキシベンゼン類を得ることができる。他方、上記ヒドロキシフェニル置換シクロヘキシリデンビスフェノール類の熱分解にアルカリ触媒を用いなかった場合には、反応終了後、得られた1,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセン類を含む反応混合物に晶析濾過等の精製を施すことなく、そのまま、これを水素化触媒の存在下に水素添加すれば、本発明による4−(4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−1−ヒドロキシベンゼン類を得ることができる。
【0028】
このようにして、1,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセン類から出発すれば、本発明による4−(4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−1−ヒドロキシベンゼン類を、通常、95%以上の収率で得ることができる。また、ヒドロキシフェニル置換シクロヘキシリデンビスフェノール類から出発すれば、本発明による4−(4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−1−ヒドロキシベンゼン類を、通常、90%以上の収率にて得ることができる。
【0029】
上記一般式(II)で表される1,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセン類において、Rおよびnは前記一般式(I)で表される4−(4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−1−ヒドロキシベンゼン類におけるものと同じである。
【0030】
従って、1,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセン類の具体例としては、例えば、1,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセン、1−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセン、1−(2−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセン、1−(3−エチル−4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセン、1−(2−エチル−4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセン、1−(3−n−プロピル−4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセン、1−(2−n−プロピル−4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセン、1−(3−イソプロピル−4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセン、1−(2−イソプロピル−4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセン、1−(3−n−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセン、1−(2−n−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセン、1−(3−イソブチル−4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセン、1−(2−イソブチル−4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセン、1−(3−s−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセン、1−(2−s−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセン、1−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセン、1−(2−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセン、1−(3,6−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセン、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセン、1−(2,3,6−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセン、1−(2,3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセン、1−(3−イソプロピル−6−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセン、1−(3−イソプロピル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセン、1−(3−t−ブチル−6−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセン、1−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセン、1−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセン、1−(3,5−ジイソプロピル−4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセン等を挙げることができる。
【0031】
このような1,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセン類の水素添加、詳しくは、シクロヘキセン環の水素添加によって、本発明による4−(4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−1−ヒドロキシベンゼン類を得るには、例えば、水素化触媒の存在下に、溶媒中、1,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセン類を20〜60℃の範囲の温度にて水素添加すればよい。
【0032】
上記水素化触媒としては、従来より知られているものが適宜に用いられる。従って、例えば、ラネーニッケル、ニッケル担持触媒等のニッケル触媒、ラネーコバルト、コバルト担持触媒等のコバルト触媒、ラネー銅等の銅触媒、酸化パラジウム、パラジウム黒、カーボン担持パラジウム等のパラジウム触媒、プラチナ黒、カーボン担持プラチナ等のプラチナ触媒、ロジウム触媒、クロム触媒、銅クロム触媒等が用いられる。これらのなかでは、特に、パラジウム等の白金族触媒が好ましく、特に、パラジウム触媒が好ましく用いられる。
【0033】
このような水素化触媒は、通常、原料である1,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセン類100重量部に対して、通常、0.1〜20重量部、好ましくは、0.2〜10重量部の範囲で用いられる。
【0034】
上述したような1,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセン類の水素添加は、好ましくは、有機溶媒中で行われる。この溶媒としては、反応の選択性を高めると共に、熱分解生成物である1,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセン類や得られる4−(4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−1−ヒドロキシベンゼン類が溶解しやすいという理由から、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の炭素原子数3以下の脂肪族飽和アルコール類やテトラヒドロフラン等の環状脂肪族エーテル類が好ましく用いられる。これらの溶媒は、単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0035】
このような溶媒は、用いる1,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセン類の種類や、また、用いる溶媒それ自体の種類によっても異なるが、1,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセン類100重量部に対して、通常、100〜2000重量部、好ましくは、500〜1000重量部の割合で用いられる。
【0036】
本発明によれば、上記溶媒を上記割合で用いることによって、1,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセン類の転化率が高く、しかも、目的とする4−(4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−1−ヒドロキシベンゼン類の選択率も高くすることができるので、目的とする4−(4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−1−ヒドロキシベンゼン類を高収率で得ることができる。
【0037】
1,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセン類の水素化は、反応器内を窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガスで置換した後、水素置換して行うことが望ましい。反応に供給する水素の量は、1,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセン類を水素化して、4−ヒドロキシフェニルシクロヘキシル−1−ヒドロキシベンゼン類を得るのに必要な理論水素量とすればよい。
【0038】
1,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセン類の水素化の反応温度は、通常、0〜100℃の範囲であり、好しくは、20〜60℃の範囲である。水素圧力は、通常、1〜10kg/cm2 Gの範囲であり、好ましくは、2〜4kg/cm2 Gの範囲である。また、反応時間は、反応条件にもよるが、通常、0.1〜10時間の範囲であり、好ましくは、0.2〜2時間の範囲である。
【0039】
このようにして、1,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセン類を水素化して、得られた4−(4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−1−ヒドロキシベンゼン類は、必要に応じて精製される。4−(4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−1−ヒドロキシベンゼン類を精製するには、例えば、上記反応によって得られた反応混合物から触媒を濾過分離して除去した後、常法に従って、晶析、濾過し、得られた目的物を乾燥すればよい。
【0040】
本発明による4−(4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−1−ヒドロキシベンゼン類は、シクロヘキサン環の異なる炭素に2つの置換基を有するシクロヘキサン化合物であるので、シス体とトランス体の立体異性体を有し、上述した1,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセン類を水素すれば、得られる4−(4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−1−ヒドロキシベンゼン類は、通常、これらシス体とトランス体の混合物である。
【0041】
即ち、上述した方法によって得られる4−(4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−1−ヒドロキシベンゼン類のシス体とトランス体の割合は、反応条件等によって異なるが、通常、シス体/トランス体の割合は、50/50〜70/30の範囲である。
【0042】
本発明によれば、1,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセン類の水素化によって得られた4−(4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−1−ヒドロキシベンゼン類を、例えば、溶剤再結晶法、カラムクロマトグラフィー法等の従来より知られている手段によって、シス体とトランス体とに分離し、それぞれ精製することができる。また、1,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセン類の水素化によって得られた4−(4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−1−ヒドロキシベンゼン類を、例えば、光異性化法、異性化触媒法等のシクロヘキサン化合物について従来より知られている異性化反応を適用することによっても、特定の異性体を得ることもできる。
【0043】
本発明によれば、1,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセン類の水素化によって得られた4−(4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−1−ヒドロキシベンゼン類を含む反応混合物から、常法によって精製品とし、これをカラム分離に適したメタノール、アセトニトリル、テトラヒドロフラン等の溶媒に溶解し、又は上記反応混合物の溶媒を溶媒置換によってカラム分離に適したメタノール、アセトニトリル、テトラヒドロフラン等の溶媒に置換した後、例えば、分取高速液体クロマログラフィー等の手段を用いて、保持時間の違いを利用して、シス体とトランス体を分離して、4−(トランス−4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−1−ヒドロキシベンゼン類と4−(シス−4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−1−ヒドロキシベンゼン類をそれぞれ分取することができる。
【0044】
本発明による4−(4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−1−ヒドロキシベンゼン類の製造のための出発原料である1,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセン類は、例えば、前記一般式(III)で表されるヒドロキシフェニル置換シクロヘキシリデンビスフェノール類を、好ましくはアルカリ触媒の存在下に、熱分解することによって得ることができる。
【0045】
このようなヒドロキシフェニル置換シクロヘキシリデンビスフェノール類としては、具体的には、例えば、1−(4−ヒドロキシフェニル)−4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1−(4−ヒドロキシフェニル)−4,4−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1−(4−ヒドロキシフェニル)−4,4−ビス(2−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1−(4−ヒドロキシフェニル)−4,4−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1−(4−ヒドロキシフェニル)−4,4−ビス(3,6−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1−(4−ヒドロキシフェニル)−4,4−ビス(2,3,5−トリメチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1−(4−ヒドロキシフェニル)−4,4−ビス(2,3,6−トリメチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1−(4−ヒドロキシフェニル)−4,4−ビス(3−エチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1−(4−ヒドロキシフェニル)−4,4−ビス(2−エチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1−(4−ヒドロキシフェニル)−4,4−ビス(3−イソプロピル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1−(4−ヒドロキシフェニル)−4,4−ビス(2−イソプロピル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1−(4−ヒドロキシフェニル)−4,4−ビス(3−イソブチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1−(4−ヒドロキシフェニル)−4,4−ビス(2−イソブチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1−(4−ヒドロキシフェニル)−4,4−ビス(3−s−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1−(4−ヒドロキシフェニル)−4,4−ビス(2−s−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1−(4−ヒドロキシフェニル)−4,4−ビス(3−イソプロピル−6−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1−(4−ヒドロキシフェニル)−4,4−ビス(3−イソプロピル−5−メチル)−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1−(4−ヒドロキシフェニル)−4,4−ビス(3−t−ブチル−6−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1−(4−ヒドロキシフェニル)−4,4−ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等を挙げることができる。
【0046】
上記一般式(III)で表されるヒドロキシフェニル置換シクロヘキシリデンビスフェノール類は、例えば、特開2000−63308号公報に記載されているように、酸触媒の存在下に、4−(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサノンに置換フェノール類を反応させることによって容易に得ることができる。
【実施例】
【0047】
以下に参考例と共に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はそれら実施例によって何ら制約を受けるものではない。
【0048】
参考例1
(1−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセンの製造)
1−(4−ヒドロキシフェニル)−4,4−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン60.9g(0.157モル)と48%水酸化ナトリウム水溶液0.6gとテトラエチレングリコール18.0gとを反応容器(300mL容量四つ口フラスコ)に仕込み、反応容器を窒素置換した後、反応容器内を圧力40mmHgの減圧とし、温度210℃程度において、約3時間、熱分解反応を行った。留出物の留出がなくなった時点を反応の終点とした。反応終了後、得られた反応混合物に50%酢酸水溶液を加えて、pH6程度に中和した後、含水油状混合物63.4gを得た。
【0049】
このようにして得られた上記含水油状混合物にメチルイソブチルケトンと水とを加え、分液して、上記酢酸による中和によって生成した塩と反応溶剤として用いたテトラエチレングリコールとを水層として除去した後、上記メチルイソブチルケトンを留去し、残余の油層にトルエンを加えて、晶析濾過を行った。得られた固体を乾燥して、純度97.9%(高速液体クロマトグラフィー分析による。)の1−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセン26.5gを白色結晶として得た。1−(4−ヒドロキシフェニル)−4,4−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンに対する反応収率は80.8モル%であった。
【0050】
融点:201℃(示差熱分析法)
分子量(質量分析法)(M+ ):280
プロトンNMR(400MHz、溶媒DMSO−d)(δ(ppm)):
1.71〜1.79(1H,m)
1.88〜1.97(1H,m)
2.11(3H,s)
2.16〜2.24(1H,m)
2.28〜2.50(4H,m)
2.63〜2.72(1H,m)
6.02(1H,d,J=3.2Hz)
6.70(3H,t,J=9.6Hz)
7.06(4H,d,J=8.0Hz)
9.14(1H,s)
9.22(1H,s)
【0051】
実施例1
(4−(4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−2−メチル−−1−ヒドロキシベンゼンの製造)
参考例1で得られた1−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセン21g(0.075モル)とイソプロピルアルコール170gとカーボン坦持5%パラジウム触媒2.5g(50重量%含水品、エヌ・イー ケムキャット(株)製)を反応容器(1L容量のオートクレーブ)に仕込んだ後、反応容器内を窒素置換した。次いで、反応容器内を水素置換し、その後、反応容器内を昇温し、約45℃に達した時点で反応容器内の水素圧が0.2MPaになるように調整した。
【0052】
反応を開始して約30分後に水素吸収が停止したので、得られた反応混合物にジメチルホルムアミド60gを添加した後、触媒を濾過にて除去した。次いで、得られた濾液からイソプロピルアルコールとジメチルホルムアミドを留去して、目的物である4−(4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−2−メチル−1−ヒドロキシベンゼン21.5gを白色固体として得た。純度94.6%(高速液体クロマトグラフィー分析による。)。1−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセンに対する収率は96.1モル%であった。
【0053】
融点:159℃(示差熱分析法)
分子量(質量分析法)(M−H)- :281
プロトンNMR(400MHz、溶媒DMSO−d)(δ(ppm)):
1.50(2H,t,J=9.6Hz)
1.70(2H,brs)
1.83(4H,d,J=7.2Hz)
2.09(1.8H,s)
2.11(1.2H,s)
2.37〜2.48(0.8H,m)
2.65〜2.76(1.2H,m)
6.79(3H,d,J=8.0Hz)
6.85(1H,d,J=8.0Hz)
6.91(1H,brs)
7.02〜7.07(2H,m)
9.00(1H,s)
9.14(1H,s)
【0054】
実施例2
実施例1において得られた4−(4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−2−メチル−1−ヒドロキシベンゼン1gを採取し、室温にてメタノール10gに溶解し、得られた溶液を分取高速液体クロマトグラフィーに注入し、分離操作を行った(溶媒:60%メタノール水溶液、時間40分)。その結果、保持時間17.6分で、白色結晶の4−(トランス−4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−2−メチル−1−ヒドロキシベンゼン約50mgを得た。純度99%、融点214℃(示差熱分析法)。
【0055】
更に、保持時間28.2分で、淡黄色油状の4−(シス−4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−2−メチル−1−ヒドロキシベンゼン約100mgを得た。純度99%。
【0056】
また、上記結果から、上記実施例1において得られた4−(4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−2−メチル−1−ヒドロキシベンゼンのトランス体/シス体の選択率は、37/63(分取高速液体クロマトグラフィーによる)であった。
【0057】
同定データ
トランス異性体(4−(トランス−4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−2−メチル−1−ヒドロキシベンゼン)
融点:214℃(示差熱分析法)
1H−NMR(400MHz、溶媒DMSO−d)(δ(ppm)):
1.49(4H,t,J=9.6Hz)
1.82(4H,d,J=8.4Hz)
2.09(3H,s)
2.41(2H,d,J=10Hz)
6.08(3H,d,J=7.6Hz)
6.84(1H,d,J=8.0Hz)
6.91(1H,s)
7.02(2H,d,J=8.4Hz)
9.06(2H,brs)
【0058】
シス異性体(4−(シス−4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−2−メチル−1−ヒドロキシベンゼン)
1H−NMR(400MHz、溶媒DMSO−d)(δ(ppm)):
1.69(4H,d,J=4.8Hz)
1.84(4H,s)
2.11(3H,s)
2.71(2H,d,J=11Hz)
6.68〜6.72(3H,m)
6.86(1H,d,H=8.0Hz)
6.92(1H,s)
7.04(2H,d,J=7.6Hz)
9.09(2H,brs)
【0059】
参考例2
(1−(3−イソプロピル−4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセンの製造)
1−(4−ヒドロキシフェニル)−4,4−ビス(3−イソプロピル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン459g(1.03モル)と48%水酸化ナトリウム水溶液9.2gとテトラエチレングリコール200gとを反応容器(1L容量四つ口フラスコ)に仕込み、実施例2と同様にして、含水油状混合物385gを得た。
【0060】
このようにして得られた上記含水油状混合物にメチルイソブチルケトンと水とを加え、分液して、上記酢酸による中和によって生成した塩と反応溶剤として用いたテトラエチレングリコールとを水層として除去した後、上記メチルイソブチルケトンを留去し、残余の油層にトルエンを加えて、晶析濾過を行った。得られた固体を乾燥して、目的とする1−(3−イソプロピル−4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセン112gを白色結晶として得た。純度は99.4%(高速液体クロマトグラフィー分析による。)であり、1−(4−ヒドロキシフェニル)−4,4−ビス(3−イソプロピル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンに対する収率は85.1モル%であった。
【0061】
融点(示差熱分析法):178℃
分子量(質量分析法、(M+H)+) :309
プロトンNMR(400MHz、溶媒DMSO−d)(δ(ppm)):
1.17(6H,d,J=7.2Hz)
1.68〜1.81(1H,m)
1.89〜1.97(1H,m)
2.13〜2.23(1H,m)
2.31〜2.41(1H,m)
2.42〜2.48(2H,d,J=4.0Hz)
2.63〜2.72(1H,m)
3.20(1H,q,J=6.8Hz)
6.03(1H,d,J=2.0Hz)
6.70(2H,d,J=8.8Hz)
6.72(1H,d,J=8.0Hz)
7.02〜7.08(3H,m)
7.18(1H,d,J=2.4Hz)
9.14(1H,s)
9.22(1H,s)
【0062】
実施例3
(4−(4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−2−イソプロピル−1−ヒドロキシベンゼンの製造)
参考例2で得られた1−(3−イソプロピル−4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセン12.5g(0.040モル)とイソプロピルアルコール300gとラネーニッケル触媒3.8gを反応容器(1L容量のオートクレーブ)に仕込んだ後、反応容器内を窒素置換した。次いで、反応容器内を水素置換し、その後、反応容器内を昇温し、約45℃に達した時点で反応容器内の水素圧が0.3MPaになるように調整した。
【0063】
反応を開始して約2時間後に水素吸収が停止したので、得られた反応混合物を50℃に保ちながら濾過して、触媒を除去した。次いで、得られた濾液からイソプロピルアルコールを留去して、目的物である4−(4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−2−イソプロピル−1−ヒドロキシベンゼン12.0gを白色固体として得た。純度97.6%(高速液体クロマトグラフィー分析による。)。1−(3−イソプロピル−4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセンに対する収率は94.4モル%であった。また、4−(4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−2−イソプロピル−1−ヒドロキシベンゼンのトランス体/シス体の選択率は64/36であった(高速液体クロマトグラフィー分析による。)。
【0064】
このようにして得られた4−(4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−2−イソプロピル−1−ヒドロキシベンゼン0.2gを採取し、室温にてメタノール2gに溶解し、得られた溶液を分取高速液体クロマトグラフィーに注入し、分離操作を行った(溶媒:78%メタノール水溶液、時間20分)。その結果、保持時間8.1分で、白色結晶の4−(トランス−4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−2−イソプロピル−1−ヒドロキシベンゼン約100mgを得た。純度99%(高速液体クロマトグラフィー分析による。)。
【0065】
更に、保持時間13.1分で、無色透明油状の4−(シス−4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−2−イソプロピル−1−ヒドロキシベンゼン約50mgを得た。純度99%(高速液体クロマトグラフィー分析による。)。
【0066】
同定データ
トランス異性体(4−(トランス−4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−2−イソプロピル−1−ヒドロキシベンゼン)
融点:165℃(示差熱分析法)
分子量(質量分析法)(M−H)- :309
1H−NMR(400MHz、溶媒DMSO−d)(δ(ppm)):
1.16(6H,d,J=6.8Hz)
1.51(4H,t,J=10.8Hz)
1.84(4H,d,J=7.2Hz)
2.38〜2.49(2H,m)
3.19(1H,q,J=6.8Hz)
6.69(3H,dd,J=8.0,2.0Hz)
6.84(1H,dd,J=8.4,2.4Hz)
6.97(1H,d,J=2.4Hz)
7.03(2H,d,J=8.4Hz)
8.98(1H,s)
9.10(1H,s)
【0067】
シス異性体(4−(シス−4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−2−イソプロピル−1−ヒドロキシベンゼン)
分子量(質量分析法)(M−H)- :309
1H−NMR(400MHz、溶媒DMSO−d)(δ(ppm)):
1.16(3H,s)
1.18(3H,s)
1.68〜1.79(4H,m)
1.79〜1.92(4H,m)
2.73(2H,s)
3.16〜3.25(1H,m)
6.72(3H,dd,J=8.4,2.8Hz)
6.86(1H,dd,J=8.4,2.8Hz)
7.00(1H,s)
7.05(2H,d,J=8.4Hz)
9.05(2H,s)
【0068】
参考例3
(1−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセンの製造)
1−(4−ヒドロキシフェニル)−4,4−ビス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン581g(1.23モル)と48%水酸化ナトリウム水溶液11.7gとテトラエチレングリコール200gとを反応容器(2L容量四つ口フラスコ)に仕込み、熱分解温度を205℃、時間を5時間とした以外は、実施例2と同様にして、含水油状混合物556gを得た。
【0069】
このようにして得られた上記含水油状混合物を参考例2と同様に処理して、目的とする1−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセン332gを白色結晶として得た。純度は98.8%(高速液体クロマトグラフィー分析による。)であり、1−(4−ヒドロキシフェニル)−4,4−ビス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンに対する収率は82.8モル%であった。
【0070】
融点(示差熱分析法):188℃
分子量(質量分析法、(M+H)+) :323
プロトンNMR(400MHz、溶媒DMSO−d)(δ(ppm)):
1.36(9H,s)
1.70〜1.82(1H,m)
1.89〜1.97(1H,m)
2.13〜2.24(1H,m)
2.31〜2.41(1H,m)
2.46(2H,brs)
2.63〜2.73(1H,m)
6.02(1H,brs)
6.70(2H,d,J=8.4Hz)
6.73(1H,d,J=8.4Hz)
7.06(3H,d,J=8.4Hz)
7.21(1H,d,J=2.8Hz)
9.14(1H,s)
9.29(1H,s)
【0071】
実施例4
(4−(4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−2−t−ブチル−1−ヒドロキシベンゼンの製造)
参考例3で得られた1−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセン26.6g(0.081モル)とイソプロピルアルコール266gとラネーニッケル触媒5.5gを反応容器(1L容量のオートクレーブ)に仕込んだ。この後、実施例3と同様にして、4−(4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−2−t−ブチル−1−ヒドロキシベンゼン26.6gを白色固体として得た。純度97.9%(高速液体クロマトグラフィー分析による。)。1−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセンに対する収率は99.2モル%であった。また、4−(4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−2−t−ブチル−1−ヒドロキシベンゼンのトランス体/シス体の選択率は64/36であった(高速液体クロマトグラフィー分析による。)。
【0072】
このようにして得られた4−(4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−2−t−ブチル−1−ヒドロキシベンゼン0.2gを採取し、室温にてメタノール2gに溶解し、得られた溶液を分取高速液体クロマトグラフィーに注入し、分離操作を行った(溶媒:80%メタノール水溶液、時間20分)。その結果、保持時間9.5分で、白色結晶の4−(トランス−4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−2−t−ブチル−1−ヒドロキシベンゼン約100mgを得た。純度99%(高速液体クロマトグラフィー分析による。)。
【0073】
更に、保持時間15.4分で、無色透明油状の4−(シス−4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−2−t−ブチル−1−ヒドロキシベンゼン約50mgを得た。純度99%(高速液体クロマトグラフィー分析による。)。
【0074】
同定データ
トランス異性体(4−(トランス−4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−2−t−ブチル−1−ヒドロキシベンゼン)
融点:185℃(示差熱分析法)
分子量(質量分析法)(M−H)- :323
1H−NMR(400MHz、溶媒DMSO−d)(δ(ppm)):
1.35(9H,s)
1.51(4H,t,J=10.8Hz)
1.84(4H,d,J=8.0Hz)
2.44(2H,s)
6.70(3H,dd,J=8.0,7.6Hz)
6.87(1H,d,J=8.0Hz)
6.99〜7.04(3H,m)
9.05(1H,s)
9.10(1H,s)
【0075】
シス異性体(4−(シス−4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−2−t−ブチル−1−ヒドロキシベンゼン)
分子量(質量分析法)(M−H)- :323
1H−NMR(400MHz、溶媒DMSO−d)(δ(ppm)):
1.34(9H,s)
1.65〜1.92(8H,m)
2.74(2H,s)
6.69(3H,d,J=8.4Hz)
6.86(1H,d,J=8.4Hz)
7.01〜7.07(3H,m)
9.08(2H,s)
【0076】
参考例4
(1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセンの製造)
1−(4−ヒドロキシフェニル)−4,4−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン541g(1.80モル)と48%水酸化ナトリウム水溶液10.8gとテトラエチレングリコール200gとを反応容器(2L容量四つ口フラスコ)に仕込み、熱分解時間を2時間とした以外は、実施例2と同様にして、含水油状混合物676gを得た。
【0077】
このようにして得られた上記含水油状混合物を参考例2と同様に処理して、目的とする1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセン428gを白色結晶として得た。純度は96.6%(高速液体クロマトグラフィー分析による。)であり、1−(4−ヒドロキシフェニル)−4,4−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンに対する収率は78.1モル%であった。
【0078】
融点(示差熱分析法):224℃
分子量(質量分析法、(M+H)+):295
プロトンNMR(400MHz、溶媒DMSO−d)(δ(ppm)):
1.67〜1.79(1H,m)
1.88〜1.96(1H,m)
2.15(6H,s)
2.17〜2.23(1H,m)
2.29〜2.39(1H,m)
2.40〜2.46(2H,m)
2.62〜2.71(1H,m)
6.02(1H,d,J=2.2Hz)
6.69(2H,d,J=8.8Hz)
6.98(2H,s)
7.06(2H,d,J=8.4Hz)
8.14(1H,s),9.13(1H,s)
【0079】
実施例5
(4−(4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−2,6−ジメチル−1−ヒドロキシベンゼンの製造)
参考例4で得られた1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセン19.6g(0.063モル)とイソプロピルアルコール300gとラネーニッケル触媒5.2gを反応容器(1L容量のオートクレーブ)に仕込んだ。この後、実施例3と同様にして、4−(4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−2,6−ジメチル−1−ヒドロキシベンゼン18.6gを白色固体として得た。純度92.7%(高速液体クロマトグラフィー分析による。)。1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセンに対する収率は92.0モル%であった。また、4−(4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−2,6−ジメチル−1−ヒドロキシベンゼンのトランス体/シス体の選択率は69/31であった(高速液体クロマトグラフィー分析による。)。
【0080】
このようにして得られた4−(4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−3,5−ジメチル−1−ヒドロキシベンゼン0.2gを採取し、室温にてメタノール2gに溶解し、得られた溶液を分取高速液体クロマトグラフィーに注入し、分離操作を行った(溶媒:70%メタノール水溶液、時間20分)。その結果、保持時間9.9分で、白色結晶の4−(トランス−4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−2,6−ジメチル−1−ヒドロキシベンゼン約120mgを得た。純度99%(高速液体クロマトグラフィー分析による。)。
【0081】
更に、保持時間16.1分で、無色透明油状の4−(シス−4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−2,6−ジメチル−1−ヒドロキシベンゼン約50mgを得た。純度99%(高速液体クロマトグラフィー分析による。)。
【0082】
同定データ
トランス異性体(4−(トランス−4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−2,6−ジメチル−1−ヒドロキシベンゼン)
融点:224℃(示差熱分析法)
分子量(質量分析法)(M−H)- :295
1H−NMR(400MHz、溶媒DMSO−d)(δ(ppm)):
1.50(4H,t,J=9.6Hz)
1.83(4H,d,J=9.2Hz)
2.13(6H,s)
2.35〜2.45(2H,m)
6.67(2H,d,J=8.8Hz)
6.77(2H,s)
7.03(2H,d,J=8.4Hz)
7.91(1H,s)
9.10(1H,s)
【0083】
シス異性体(4−(シス−4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−2,6−ジメチル−1−ヒドロキシベンゼン)
分子量(質量分析法)(M−H)- :295
1H−NMR(400MHz、溶媒DMSO−d)(δ(ppm)):
1.55〜1.75(4H,m)
1.75〜1.89(4H,m)
2.12(6H,s)
2.65(1H,s)
2.74(1H,s)
6.68(2H,d,J=7.6Hz)
6.76(2H,s)
7.04(2H,d,J=8.4Hz)
7.91(1H,m)
9.11(1H,s)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】

(式中、Rは炭素原子数1〜4のアルキル基を示し、nは1〜3の整数を示す。)
で表される4−(4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−1−ヒドロキシベンゼン類のトランス体。
【請求項2】
一般式(I)
【化2】

(式中、Rは炭素原子数1〜4のアルキル基を示し、nは1〜3の整数を示す。)
で表される4−(4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−1−ヒドロキシベンゼン類のシス体。
【請求項3】
4−(トランス−4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−2−メチル−1−ヒドロキシベンゼン。
【請求項4】
4−(トランス−4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−2−イソプロピル−1−ヒドロキシベンゼン。
【請求項5】
4−(トランス−4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−2−t−ブチル−1−ヒドロキシベンゼン。
【請求項6】
4−(トランス−4’−(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−2,6−ジメチル−1−ヒドロキシベンゼン。

【公開番号】特開2008−273975(P2008−273975A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−129104(P2008−129104)
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【分割の表示】特願2002−25452(P2002−25452)の分割
【原出願日】平成14年2月1日(2002.2.1)
【出願人】(000243272)本州化学工業株式会社 (44)
【Fターム(参考)】