説明

新規のアシル基転移酵素活性を有するタンパク質及びそれをコードする遺伝子

【課題】新規の花色を付与した花卉を得る手段を提供する。
【解決手段】新規アシル基転移酵素活性を有する特定アミノ酸配列からなるタンパク質及びそれをコードする特定塩基配列からなる遺伝子ならびに当該遺伝子を有する植物を作成する方法。新規のアシル基転移酵素活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を該遺伝子を持たない植物、当該転移酵素を持たない植物や当該酵素が機能していない植物などに導入すると、いままでにないリンゴ酸を含むアシルアントシアニンを持つ植物、新規の花色を持つ植物を育種することが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規のアシル基転移酵素活性を有するタンパク質及びそれをコードする遺伝子、ならびに当該遺伝子を有する植物を作成する方法に関する。詳しくは、本発明の新規のアシル基転移酵素活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を該遺伝子を持たない植物、前記新規アシル基転移酵素を持たない植物や前記新規アシル基転移酵素が機能していない植物などの前記アシル基転移酵素が有する活性を有しない植物、例えば、カーネーション等のダイアンサス属に属する植物以外の植物に導入すると、いままでにないリンゴ酸を含むアシルアントシアニンを持つ植物、新規の花色を持つ植物を育種することが可能になる。
【背景技術】
【0002】
花卉の特性で最も重要な性質は花色である。そのなかでもアントシアニンの花色はピンク・赤・青・紫の花色と深く関与し重要である。これまでに様々な花色を得るため、交雑や変異や遺伝子組換えによる育種が行われてきた。その中でも同じ花弁に二色の花色を持つバイカラーの品種は珍重されてきた。しかし、その遺伝子や遺伝的背景が遺伝子レベルで明らかになることはなかった。
【0003】
アントシアニンは様々なアシル基により修飾されることで、さまざまな色調を持つ分子になることが知られている。近年、その分子機構が明らかになるにつれ共通の配列を持つ植物BAHDアシル基転移酵素とそれをコードする一群の遺伝子が存在することがわかった(非特許文献1を参照)。
【0004】
3大園芸花卉の一つであるカーネーション花弁にある色素は、通常はアシル基を持つアントシアニンである(非特許文献2を参照)。このアシル基は他の植物とは異なりリンゴ酸で修飾されていることに特徴がある。近年、アシル基を持たない品種(例えば、‘ナザレノ’、キリンアグリバイオ(株))が育成され、いままでの花色と明らかに異なる一群のカーネーションが作出されている(非特許文献3及び4を参照)。しかし、その独特なカーネーションの花色を生み出す分子機構は明らかにされていなかった。
【0005】
【非特許文献1】D’Auria, Curr. Opin. Plant Biol., 9, 331-340 (2006)
【非特許文献2】中山真義ら, Phytochemistry, 55, 937-939 (2000)
【非特許文献3】山口雅篤, 南九州大学園芸学部研究報告., 19, 1-78 (1989)
【非特許文献4】吉田洋之ら, 園芸学雑誌, 72別1, 130 (2003)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、アシル基としてリンゴ酸をアントシアニンに転移する遺伝子を利用し、該遺伝子を花弁で発現させることにより新規な花色を有する花卉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、独特なカーネーションの花色を生み出す分子機構について鋭意研究を重ねた結果、新たにカーネーションから新規のアシル基転移酵素活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を見出し、これがカーネーションで機能していることを確認した。すなわち、カーネーションのアシル基を転移する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子は、公知の植物BAHDアシル基転移酵素という一群の遺伝子ではないことが判明した。また、アシル基を有しない非アシルアントシアニンとアシル基を有するアシルアントシアニンを同時にもつバイカラーの育種系統から、同遺伝子がトランスポゾンの挿入によって中断されていること、及びアシルアントシアニンを含む花弁では同トランスポゾンが脱離していることを確認した。本発明者らは、さらに本トランスポゾンで中断されている変異遺伝子は単純な遺伝を示すことを明らかにし、新規のアシル基転移酵素活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を該遺伝子を持たない植物、前記新規アシル基転移酵素を持たない植物や前記新規アシル基転移酵素が機能していない植物などの前記アシル基転移酵素が有する活性を有しない植物、例えば、カーネーション等のダイアンサス属に属する植物以外の植物に導入すると、いままでにないリンゴ酸を含むアシルアントシアニンを持つ植物、新規の花色を持つ植物を育種することが可能になることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
即ち、本発明は以下の発明を包含する。
[1] 以下の(a)又は(b)のタンパク質。
(a) 配列番号1に示すアミノ酸配列からなるタンパク質
(b) 配列番号1に示すアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入、又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、アシル基としてリンゴ酸をアントシアニンに転移する活性を有するタンパク質
【0009】
[2] 以下の(c)〜(f)のいずれかのDNAからなる遺伝子。
(c) 配列番号2に示す塩基配列からなるDNA
(d) 配列番号2に示す塩基配列からなるDNAに相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、アシル基としてリンゴ酸をアントシアニンに転移する活性を有するタンパク質をコードするDNA
(e) 配列番号2に示す塩基配列と80%以上の相同性を有する塩基配列からなり、かつ、アシル基としてリンゴ酸をアントシアニンに転移する活性を有するタンパク質をコードするDNA
(f) 配列番号2に示す塩基配列の縮重異性体からなるDNA
【0010】
[3] [2]の遺伝子を含有する組換えベクター。
[4] [3]の組換えベクターを導入した植物細胞。
[5] [2]の遺伝子を植物細胞に導入し、該植物細胞から植物体を再生することを特徴とする、新規な花色の花弁を有する遺伝子組み換え植物体を作成する方法。
[6] 遺伝子を導入する植物が、ダイアンサス属に属する植物以外の植物である、[5]の新規な花色の花弁を有する遺伝子組み換え植物体を作成する方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、新規のアシル基転移酵素活性を有するタンパク質及びそれをコードする遺伝子、ならびに当該遺伝子を有する植物を作成する方法に関する。詳しくは、本発明は、新規のアシル基転移酵素活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を、該遺伝子を持たない植物に導入すると、いままでにない、リンゴ酸をアシル基として含むアントシアニンを持つ植物、新規の花色を持つ植物を育種することが可能になる。
【0012】
本発明によれば、新規のアシル基転移酵素活性を有するタンパク質及びそれをコードする遺伝子、ならびに当該遺伝子を有する植物を作成する方法が提供される。本発明の新規のアシル基転移酵素活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を該遺伝子を持たない植物、前記新規アシル基転移酵素を持たない植物や前記新規アシル基転移酵素が機能していない植物などの前記アシル基転移酵素が有する活性を有しない植物、例えば、カーネーション等のダイアンサス属に属する植物以外の植物に導入すれば、いままでにない、リンゴ酸をアシル基として含むアントシアニンを持つ植物、すなわち新規の花色を持つ植物を育種することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
1.新規アシル基転移酵素
本発明のタンパク質は、3位にグルコースをもつアントシアニンにアシル基としてリンゴ酸を付加する活性ならびに3位及び5位にグルコースをもつアントシアニンをサイクリックマリルアントシアニンに変換する活性を持つ新規アシル基転移酵素である。図1Aに3位にグルコースをもつアントシアニンにリンゴ酸を付加する反応、図1Bに3位及び5位にグルコースをもつアントシアニンをサイクリックマリルアントシアニンに変換する反応を示す。
本発明のタンパク質のアミノ酸配列は配列番号1に示される。
【0014】
2.新規のアシル基転移酵素活性を有するタンパク質をコードする遺伝子
本発明の遺伝子は、3位にグルコースをもつアントシアニンにアシル基としてリンゴ酸を付加する活性ならびに3位及び5位にグルコースをもつアントシアニンをサイクリックマリルアントシアニンに変換する活性を持つ新規アシル基転移酵素をコードする遺伝子である。
本発明の遺伝子の塩基配列は配列番号2に示される。
【0015】
本発明のタンパク質は、配列番号1に示すアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入、又は付加されたアミノ酸配列からなり、上記の新規アシル基転移酵素活性を有するタンパク質を含む。ここで、「1から数個」の範囲は特には限定されないが、例えば、1から20個、好ましくは1から10個、より好ましくは1から7個、さらに好ましくは1から5個、特に好ましくは1から3個程度を意味する。
【0016】
アミノ酸の欠失、置換、挿入、又は付加は、上記タンパク質をコードする遺伝子を、当該技術分野で公知の手法によって改変することによって行うことができる。遺伝子に変異を導入するには、Kunkel法又はGapped duplex法等の公知手法又はこれに準ずる方法により行うことができ、例えば部位特異的突然変異誘発法を利用した変異導入用キット(例えばMutant-K(TAKARA社製)やMutant-G(TAKARA社製))などを用いて、あるいは、TAKARA社のLA PCR in vitro Mutagenesis シリーズキットを用いて変異が導入される。
【0017】
上記の「新規アシル基転移酵素活性」とは、3位にグルコースをもつアントシアニンにアシル基としてリンゴ酸を付加する活性ならびに3位及び5位にグルコースをもつアントシアニンをサイクリックマリルアントシアニンに変換することできる活性をいう。「配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質が有する活性と実質的に同等である活性」を有する場合、新規アシル基転移酵素活性を有するという。ここで、「活性が実質的に同等」とは、酵素の比活性を測定した場合に、80%以上、好ましくは90%以上の活性を示すことをいう。
【0018】
上記のような変異タンパク質が、実際に新規アシル基転移酵素活性を有するか否かは、カリフラワーモザイクウイルス35S RNAプロモーター等のプロモーターを上記タンパク質をコードする遺伝子の下流域に連結したベクターを作製し、該ベクターを用いて従来より周知慣用されている種々の形質転換法(後述)によりナザレノ(キリンアグリバイオ(株))等の非アシルアントシアニンを蓄積する植物に導入した後、花弁の色素を測定することにより確認できる。
【0019】
本発明の配列番号1に示すアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする遺伝子は、配列番号1に示すアミノ酸配列に基づいてプライマーを作成し、カーネーション花弁からmRNAを抽出し、これを鋳型に前記プライマーを用いて逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCRともいう)を行い、増幅することにより得ることができる。
【0020】
本発明の新規のアシル基転移酵素活性を有するタンパク質をコードする遺伝子は、具体的には、配列番号2に示す塩基配列からなるDNAである。
【0021】
また、本発明の新規のアシル基転移酵素活性を有するタンパク質をコードする遺伝子には、例えば、配列番号2に示す塩基配列からなるDNAに相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ新規のアシル基転移酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAが含まれる。
【0022】
ここで、ストリンジェントな条件とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいい、例えば、ナトリウム濃度が、10mM〜300mM、好ましくは20〜100mMであり、温度が25℃〜70℃、好ましくは42℃〜55℃での条件をいう。
【0023】
また、本発明の新規のアシル基転移酵素活性を有するタンパク質をコードする遺伝子には、例えば配列番号2に示す塩基配列と80%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の相同性を有する塩基配列からなり、かつ、上記の新規アシル基転移酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAも含まれる。ここでいう相同性の数値は、塩基配列比較用プログラム:例えばDNASIS-Mac v3.7(日立ソフトウェアエンジニアリング社)やGENETYX ver4.0(ゼネティックス社)を用いて、デフォルト(初期設定)のパラメーターにより算出されるものである。
【0024】
さらに本発明の新規のアシル基転移酵素活性を有するタンパク質をコードする遺伝子には、その縮重異性体も含まれる。ここでいう縮重異性体とは、縮重コドンにおいてのみ異なっていて同一のタンパク質をコードすることのできるDNAを意味する。例えば、配列番号2の塩基配列をもつDNAに対して、そのアミノ酸のどれかに対応するコドンが、これと縮重関係にあるコドンに変わったものを本発明では縮重異性体と呼ぶ。例えばAsnに対応するコドン(AAC)が、これと縮重関係にあるコドン、例えばAATに変わったものを本発明では縮重異性体と呼ぶ。
【0025】
また、上記の変異型遺伝子(変異型DNA)は、Kunkel法やGapped duplex法などの公知の手法又はこれに準ずる方法により、例えば部位特異的突然変異誘発法を利用した変異導入用キット(例えばMutant-K(TAKARA社製)やMutant-G(TAKARA社製)など)を用いて、あるいは、TAKARA社のLA PCR in vitro Mutagenesisシリーズキットを用いて作製することができる。上記突然変異誘発法については、遺伝子の塩基配列を参照すれば、Molecular Cloning [Sambrookら編集, 15, Site-directed Mutagenesis of Cloned DNA, 15.3〜15.113, Cold Spring Harbor Lab. Press, New York (1989)]等の文献の記載に従って、当業者であれば格別の困難性なしに選択し実施することができる。また、当業者であれば、遺伝子の塩基配列を基にして、当該塩基配列から1以上(1又は数個以上)の塩基の置換、欠失、挿入又は付加を人為的に行う技術(部位特異的突然変異誘発)については、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81, 5662-5666 (1984); WO85/00817; Nature, 316, 601-605 (1985); Gene, 34, 315-323 (1985); Nucleic Acids Res., 13, 4431-4442 (1985); Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 79, 6409-6413 (1982); Science, 224, 1431-1433 (1984) 等に記載の技術に従って実施することができる。
【0026】
3. 組換えベクター
本発明の組換えベクターは、上記2.の遺伝子を適当なベクターに導入することにより構築することができる。ここで、ベクターとしては、アグロバクテリウムを介して植物に目的遺伝子を導入することができる、pBI系、pPZP系、pSMA系のベクターなどが好適に用いられる。特にpBI系のバイナリーベクター又は中間ベクター系が好適に用いられ、例えば、pBI121、pBI101、pBI101.2、pBI101.3等が挙げられる。バイナリーベクターとは大腸菌(Escherichia coli)及びアグロバクテリウムにおいて複製可能なシャトルベクターである。バイナリーベクターを保持するアグロバクテリムを植物に感染させると、ベクター上にあるLB配列とRB配列よりなるボーダー配列で囲まれた部分のDNAを植物核DNAに組み込むことが可能である[EMBO Journal, 10(3), 697-704 (1991)]。一方、pUC系のベクターは、植物に遺伝子を直接導入することができる。例えば、pUC18、pUC19、pUC9等が挙げられる。また、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV))、インゲンマメモザイクウイルス(BGMV))、タバコモザイクウイルス(TMV)等の植物ウイルスベクター等も用いることができる。
【0027】
ベクターに遺伝子を挿入するには、まず、単離された挿入しようとするDNAを適当な制限酵素で切断し、次いで適当なベクターDNAの制限酵素部位又はマルチクローニングサイトに挿入することにより、ベクターのDNAに連結する方法などが採用される。
【0028】
上記の遺伝子は、その遺伝子の機能が発揮されるようにベクターに組み込むことが必要である。そのためには、ベクターには、遺伝子の上流、内部、又は下流に、プロモーター、イントロン、エンハンサー、翻訳終止コドン、ターミネーター、ポリA付加シグナル、5'-UTR配列等の構成要素を含ませればよい。また、選抜マーカー遺伝子を含ませてもよい。これらは、公知のものを適宜組み合わせて用いることができる。
【0029】
プロモーターとしては、目的遺伝子である本発明の新規タンパク質をコードする遺伝子が花弁で発現されるように、全身発現型プロモーター又は花弁で機能することが知られているプロモーターを用いればよい。例えば、全身発現型プロモーターとしては、カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーター(35SP)が挙げられる。花弁で機能することが知られているプロモーターとしてはペチュニアのEPSP合成酵素プロモーターやchsAプロモーターが挙げられる。また、アグロバクテリウムのイソペンテニルトランスフェラーゼ(ipt)遺伝子若しくはノパリン合成酵素(nos)遺伝子のプロモーター、形質転換宿主の対象となる植物のゲノムから取得した高発現遺伝子のプロモーター等を利用したプロモーター[Genschikら, Gene, 148, 195-202 (1994)]を用いてもよい。さらに、上記のプロモーターを複数個組み合わせたキメラ型プロモーターであって、プロモーター活性が著しく上昇したもの[Plant J., 7, 661-676 (1995)]を用いることもできる。
【0030】
但し、花弁で機能し得る限り、上記プロモーターに限定されるものではない。なお、これらのプロモーターは、該プロモーターを含むDNAの塩基配列に基づいて設計したプライマーを用いて、ゲノムDNAを鋳型として、PCRによる増幅反応によって得ることができる。ここでPCRに用いることができる鋳型DNAとしては、カリフラワーモザイクウイルスのゲノムDNAが挙げられる。
【0031】
また、必要に応じてプロモーター配列と遺伝子との間に、遺伝子の発現を増強させる機能を持つイントロン配列、例えばトウモロコシのアルコールデヒドロゲナーゼ(Adh1)のイントロン[Genes & Development, 1, 1183-1200 (1987)]を導入することができる。
【0032】
エンハンサーとしては、ウイルス起源の翻訳エンハンサーや植物起源の翻訳エンハンサーを用いることができる。ウイルス起源の翻訳エンハンサーとしては、例えば、タバコモザイクウイルス、アルファルファモザイクウイルスRNA4、ブロモモザイクウイルスRNA3、ポテトウイルスX、タバコエッチウイルスなどの配列が挙げられる[Gallieら, Nuc. Acids Res., 15, 8693-8711 (1987)]。また、植物起源の翻訳エンハンサーとして、ダイズのβ−1,3グルカナーゼ(Glu)由来の配列[石田功, 三沢典彦著, 講談社サイエンティフィク編, 細胞工学実験操作入門, 講談社, p.119 (1992)]、タバコのフェレドキシン結合性サブユニット(PsaDb)由来の配列[Yamamotoら, J. Biol. Chem., 270, 12466-12470 (1995)]などが挙げられる。翻訳終止コドンとしてはTAA,TAG,TGAなどの配列が挙げられる[Molecular Cloning 前出等の記載]。
【0033】
ターミネーターとしては、前記プロモーターにより転写された目的遺伝子の転写を終結できる配列であればよく、例えば、ノパリン合成酵素(nos)遺伝子のターミネーター(nosT)、オクトピン合成酵素(ocs)遺伝子のターミネーター、CaMV 35S RNA遺伝子のターミネーター等が挙げられる[Annu. Rev. Plant Physiol. Plant Mol. Biol., 44, 985-994 (1993); Plant Genetic Transformation and Gene Expression; a laboratory manual, J. Draper et al. 編, Blackwell Scientific Publication (1988)]。
【0034】
また、プロモーター中の転写エンハンサーとして、35S遺伝子のエンハンサー部分が同定され、それらを複数個並べて繋げることにより、活性を高めることが報告されており[Plant Cell, 1, 141-150 (1989)]、上記エンハンサー部分を組換えベクターの一部として用いることも可能である。
【0035】
選抜マーカー遺伝子としては、例えば、アンピシリン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、ビアラホス耐性遺伝子などが挙げられる。上記のように選抜マーカー遺伝子を目的遺伝子とともに同一のプラスミドに連結させて組換えベクターを調製してもよく、あるいは、選抜マーカー遺伝子をプラスミドに連結して得られる組換えベクターと、目的遺伝子をプラスミドに連結して得られる組換えベクターとを別々に調製してもよい。別々に調製した場合は、各ベクターを宿主にコトランスフェクト(共導入)する。
【0036】
これらの各種構成要素は、その性質に応じて、それぞれが機能し得る形で組換えベクターに組み込まれることが好ましい。そのような操作は、当業者であれば適切に行うことができる。
【0037】
4.形質転換植物体
上記3.で調製した組換えベクターを用いて、対象植物の細胞を形質転換し、再生することで形質転換植物体を作成することができる。
【0038】
形質転換植物体を調製する際には、既に報告され、確立されている種々の方法を適宜利用することができ、その好ましい例として、例えば、生物学的方法としては、ウイルス、アグロバクテリウムのTiプラスミド、Riプラスミド等をベクターとして用いる方法が挙げられ、物理学的方法としては、エレクトロポレーション、ポリエチレングリコール、パーティクルガン、マイクロインジェクション[Plant Genetic Transformation and Gene Expression; a laboratory manual, J. Draper et al. 編, Blackwell Scientific Publication (1988)]、シリコンウイスカー[Euphytica, 85, 75-80 (1995); In Vitro Cell. Dev. Biol., 31, 101-104 (1995); Plant Science, 132, 31-43 (1998)]によって遺伝子を導入する方法等が挙げられる。当該導入方法については、当業者であれば適宜選択し、使用することができる。
【0039】
一般に、植物に導入した遺伝子は、宿主植物のゲノム中に組み込まれるが、その場合、導入されるゲノム上での位置が異なることにより導入遺伝子の発現が異なるポジションイフェクトと呼ばれる現象が見られる。従って、遺伝子が植物体に組み込まれたことの確認の他、導入遺伝子の位置の確認が必要である。
【0040】
遺伝子が植物体に組み込まれたか否かの確認は、PCR法、サザンハイブリダイゼーション法、ノーザンハイブリダイゼーション法、ウェスタンブロッティング法等により行うことができる。例えば、形質転換植物体からDNAを調製し、該DNAに特異的なプライマーを設計してPCRを行う。PCRを行った後、増幅産物についてアガロースゲル電気泳動、ポリアクリルアミドゲル電気泳動又はキャピラリー電気泳動等を行い、臭化エチジウム、SYBR Green液等により染色し、増幅産物を1本のバンドとして検出することにより、形質転換されたことを確認することができる。また、予め蛍光色素等により標識したプライマーを用いてPCRを行い、増幅産物を検出することもできる。さらに、マイクロプレート等の固相に増幅産物を結合させ、蛍光又は酵素反応等により増幅産物を確認する方法でもよい。
【0041】
本発明の新規アシル基転移酵素をコードする遺伝子を用いて形質転換する対象植物としては、ユリ、ラン、サトイモ科の観葉植物等の単子葉植物、バレイショ、キク、バラ、カーネーション、ペチュニア、カスミソウ、シクラメン、アスター、サルビア、リンドウ等の双子葉植物などが挙げられる。特に好ましい植物の種類としては、世界での生産流通消費数量が多い3大花卉であるキク、カーネーション、バラや近年栄養系でも世界的に生産流通消費量が飛躍的に伸びているペチュニアなどが挙げられる。
【0042】
これらの中でも、本発明の新規アシル基転移酵素を用いて形質転換する対象植物として、本発明の新規アシル基転移酵素が有する活性を有しない植物、すなわち本発明の新規アシル基転移酵素を持たない植物又は本発明の新規アシル基転移酵素が機能していない植物が挙げられる。例えば、カーネーション等のダイアンサス属に属する植物以外の植物が挙げられる。
【0043】
本発明において、形質転換植物体を作成するために、本発明の遺伝子を用いて形質転換する植物材料としては、例えば、生長点、苗条原基、分裂組織、葉片、茎片、根片、塊茎片、葉柄片、プロトプラスト、カルス、葯、花粉、花粉管、花柄片、花茎片、花弁、がく片等の細胞が挙げられる。
【0044】
植物細胞を対象とする場合において、得られた形質転換細胞からの形質転換植物体の再生は既知の組織培養法により行えばよい。このような操作は、植物細胞から植物体への再生方法として一般的に知られている方法により、当業者であれば容易に行うことができる。植物細胞から植物体への再生の方法については、例えば、「植物細胞培養マニュアル」[山田康之編著、講談社サイエンティフィク、1984]等の文献を参照することができる。
【0045】
具体的には、まず、形質転換した植物細胞を無機栄養素、ビタミン、炭素源、エネルギー源としての糖類、植物生長調節物質(オーキシン、サイトカイニン等の植物ホルモン)等を加えて滅菌したカルス形成用培地中で培養し、不定形に増殖する脱分化したカルスを形成させる(以下「カルス誘導」という)。このように形成されたカルスをオーキシン等の植物生長調節物質を含む新しい培地に移しかえて更に増殖(継代培養)させる。
【0046】
カルス誘導は寒天等の固型培地で行い、継代培養は例えば液体培養で行うと、それぞれの培養を効率良くかつ大量に行うことができる。次に、上記の継代培養により増殖したカルスを適当な条件下で培養することにより器官の再分化を誘導し(以下、「再分化誘導」という)、最終的に完全な植物体を再生させることができる。再分化誘導は、培地中のオーキシンやサイトカイニン等の植物生長調節物質、炭素源等の各種成分の種類や量、光、温度等を適切に設定することにより行うことができる。再分化誘導により、不定胚、不定根、不定芽、不定茎葉等が形成され、これを培養することにより完全な植物体へと育成させることができる。あるいは、完全な植物体になる前の状態(例えばカプセル化された人工種子、乾燥胚、凍結乾燥細胞及び組織等)で貯蔵等を行い、必要に応じて培養等により植物体を再生させてもよい。
【0047】
また、形質転換した植物細胞を前記の各種成分の種類や量、光、温度等を適切に設定した条件で培養・生育させることによりカルスを経ることなく、形質転換植物体を再生させることも可能である。
【0048】
本発明の新規アシル基転移酵素を導入した形質転換植物体において、花弁で新規アシル基転移酵素が機能し、アントシアニンにアシル基としてリンゴ酸を転移する。すなわち、3位にグルコースをもつアントシアニンにアシル基としてリンゴ酸を付加する活性ならびに3位及び5位にグルコースをもつアントシアニンをサイクリックマリルアントシアニンに変換する。この結果、花弁においてアシルアントシアンが蓄積し、花弁の色が今までに存在しない色である植物を得ることができる。例えば、本発明の新規アシル基転移酵素を、該アシル基転移酵素を持たないペチュニアに導入した場合、花弁にはリンゴ酸を含むアントシアニンを持つ花が得られる。さらに具体的には、赤いペチュニア(サカタのタネ社の品種「バカラレッド」など)は主要色素にシアニジン3グルコシドを持っている。このようなペチュニアに新規アシル基転移酵素を導入し発現させることによりシアニジン3マリルグルコシドの色素を持ついままでにないペチュニアを育種することが可能となる。
【0049】
花色は、目視により判定することもできるし、表色測定試験により判定することもできる。表色測定試験においては、植物が開花し、花弁が充分に開ききった状態において、系統ごとに3個体の花弁についてその色度を日本電色工業の簡易型分光色差計(NF333型)で3回測定し、平均値を出すことにより花色を評価すればよい。なお、表色測定は観察された色の表現型を記述するための代替的な手段であり、認識された色の指標としてみなされるべきものであり、得られうる潜在的な色を限定するものではない。
【0050】
本発明の形質転換植物体は、形質転換処理を施した再分化当代である「T1世代」のほか、その植物の自殖や他殖の種子から得られた後代である「T2世代」、薬剤選抜あるいはサザン法等による解析によりトランスジェニックであることが判明した「T2世代」、植物の花を自殖や他殖して得られる次世代(T3世代)などの後代植物やT1世代を栄養系で増殖維持した個体、さらにはT1世代等の後代から特定の形質が変化したような変異個体等、T1世代を元にした、あらゆる栽培や育種の手段により得られ得る世代や個体をも含むものとする。
【実施例】
【0051】
本発明を以下の実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0052】
以下の実施例で用いられたカーネーションの系統や品種は、キリンアグリバイオ(株)にて保存されており、販売又は実験材料として分譲要請に応じることができる。連絡先は、〒104-0032 日本国東京都中央区八丁堀2−24−2 日米ビル8F 電話番号03−5541−5875 ファクシミリ番号03−5541−5879である。
【0053】
(実施例1)カーネーション花弁で発現する新規のアシル基転移酵素活性を有するタンパク質をコードする候補cDNA断片の取得
カーネーション品種Lucia(キリンアグリバイオ(株)育成系統の桃色カーネーションで、主要色素はアシルアントシアニンであるペラルゴニジン-3マリルグルコシド)を定法に従って温室で栽培し開花させた。花弁からのmRNAの調製は、RNeasy(キアゲン社)を用い、全cDNAの合成はスーパースクリプト ファーストストランド システム(インビトロジェン社)を用いて行った。
【0054】
このcDNAに対し、トマトの耐虫性物質アシルアセタールを合成するグルコース・イソ酪酸転移酵素[Liら, PNAS, 97, 6902-6907 (2000)]とその配列に相同性があるイネのゲノム配列から予想されるセリンカルボキシペプチダーゼ[Genbank ACCESSION XP_474646]、同じく相同性のあるオオムギのセリンカルボキシペプチダーゼ[Genbank ACCESSION CAA70816]、同じく相同性のあるシロイヌナズナのセリンカルボキシペプチダーゼSNG2 [Genbank ACCESSION NP_568215]の遺伝子情報を基に作成したプライマー[U592: ATGATTTGGCTTACAGGNGGNCCNGGNTG (配列番号4)、U593: GCTGTRTGNCCNGCNCCYTT (配列番号5)]を用いてPCR(条件:95℃5分、(95℃30秒、55℃30秒、72℃1分)を30回、72℃10分)を行った。PCR用酵素には以降の実験においても同様に宝酒造製のExTaqを用いた。増幅産物は1%アガロースゲルを用い100Vで20分間電気泳動することにより分離し、エチジウムブロマイド染色により可視化した。予想される約1kベースの分子量にDNA断片が増幅していることが分かった。得られた増幅産物をTOPOTAクローニングキットシークエンシング用(インビトロジェン社製)を用いてクローニングし、ABI310(アプライドバイオシステムズ社)を用いて塩基配列を決定した。24のクローンの塩基配列を決定し4種のクローンAT3-1(13クローン)、AT3-2(9クローン)、AT3-3(1クローン)及びAT3-4(1クローン)を得た。4種のクローンに対してそれぞれ特異的なプライマーを合成した。[AT3-1: U609: GGTTGCTCTGCTTTCTCTGGCCTC (配列番号6)とU610: TTAACTGTAGCATAAACTAAGCGG (配列番号7)、AT3-2: U611: GGGTGCTCTTCTTGGAACGGTCTCG (配列番号8)とU612: CCCTTGACTGTCGCGTACGTCAAAG (配列番号9)、AT3-3: U622: CTGCTTTTTCTGGTTTAGCC (配列番号10)とU623: CAGTAGTATAGGTTAACCGG (配列番号11)、AT3-4: U624: GCTCTGCTTTGTCGGGCCTC (配列番号12)とU625: ACCGTAGCATAGACTAATCG (配列番号13)]
【0055】
(実施例2)新規のアシル基転移酵素活性を有するタンパク質をコードする遺伝子の単離
MFA1系統とMFA2系統はキリンアグリバイオ(株)の育種系統である。MFA1系統(図2)とその後代の4系統(MFA1-1からMFA1-4、いずれもキリンアグリバイオ(株))、MFA2系統とその後代の2系統(MFA2-1とMFA2-2、いずれもキリンアグリバイオ(株))は、画期的なバイカラーの系統で、いずれも花弁の地の色が薄紫で主要色素が非アシルアントシアニンであるペラルゴニジン-3,5ジグルコシド、斑がピンクで主要色素がアシルアントシアニンであるサイクリック5-3マリルペラルゴニジンである。葉からゲノムDNAをDNeasy(キアゲン社)を用いて抽出した。対照としてカーネーション品種Luciaの葉からもゲノムDNAを抽出した。MFA1系統、MFA2系統、Luciaの葉のゲノムDNAに対し実施例1で合成したプライマーを用いてゲノムを比較解析した。AT3-1特異的なプライマー(配列番号6及び7)ではMFA1系統に特異的な挿入配列を認めたが、その後代の4系統(MFA1-1からMFA1-4)では遺伝はしていなかった。AT3-2とAT3-4特異的なプライマー(それぞれ配列番号8及び9並びに12及び13)ではMFA1系統とMFA2系統に特異的な挿入は認められなかった。AT3-3特異的プライマー(配列番号10)ではMFA1系統とMFA2系統いずれにも約4kbの挿入断片が存在することがわかった。それぞれの後代系統(それぞれMFA1-1からMFA1-4および、MFA2-1とMFA2-2)にも遺伝していることが、同プライマー(AT3-3特異的プライマー(配列番号10及び11))を用いた解析で明らかになった。
【0056】
AT3-3遺伝子の全長配列を決定するため、実施例1で取得したLuciaのmRNAに対しジーンレーサーキット(インビトロジェン社)を使用し全長のcDNA配列を決定した(配列番号2)。その遺伝子がコードする新規アシル基転移酵素タンパク質(配列番号1)につき、それをコードする遺伝子を取得する元になったトマトの耐虫性物質アシルアセタールを合成するグルコース・イソ酪酸転移タンパク質とのアミノ酸の相同性を図3に示す。部分的な相同性が認められるが、全体としては44.6%の相同性を示す。植物のアシル基転移酵素の殆どが、D’Auria, Curr. Opin. Plant Biol., 9, 331-340 (2006)にある植物BAHDアシル基転移酵素という一群の遺伝子にコードされている。驚くべきことに、本遺伝子は植物BAHDアシル基転移酵素という一群の遺伝子との相同性は全く認められなかった。
【0057】
(実施例3)新規アシル基転移タンパク質をコードする遺伝子にあるMFA1系統とMFA2系統の特異的挿入配列
Luciaの全長cDNAの配列(配列番号2)に基づいて作成したプライマー[U627: GAATATGAACGTCGCGTATCAC(配列番号14)とU628: CATTGCAACTGATCTTGGCCG (配列番号15)]を用いてMFA1系統、MFA2系統の葉のゲノム断片を増幅し、TOPOTAクローニングキットシークエンシング用を用いてクローニングし、塩基配列を決定した。挿入断片が配列番号2に示す塩基配列の732番と733番の塩基の間にある148bpのイントロン(図4)の内部にあり、図4に示す配列の117番から119番のAGTが重複していた。すなわち、AGT配列がTarget site duplication(TSD)を示す形で約3.6kbの挿入断片が挿入していた。挿入断片の塩基配列は配列番号3に示す。MFA1系統、MFA2系統は同一位置に同一の挿入が認められた。MFA1系統とMFA2系統の育種上の類縁関係は不明であるが、同じ挿入断片を持つものから育種されたことが推定された。
【0058】
(実施例4)斑部分での特異的挿入断片の脱離
MFA1系統の後代の2系統(MFA1-2, MFA1-3)及びMFA2系統の花弁のピンクの斑の部分からゲノムDNAをDNeasyを用いて抽出した。実施例3で用いたプライマー(U627とU628)でゲノム断片を増幅し、TOPOTAクローニングキットシークエンシング用を用いてクローニングし、塩基配列を決定した。その結果、いずれの花弁からも実施例3の挿入断片が脱離しておりフットプリントが認められた(図5)。
【0059】
以上の結果から、実施例3で見出された特異的挿入断片はトランスポゾンであることが分かった。葉や非アシルアントシアニンが蓄積している花弁では該トランスポゾンが挿入されたままである。このため、アシル基転移酵素活性を有するタンパク質をコードする遺伝子は機能しないので非アシルアントシアニンが蓄積する。一方、アシルアントシアニンが蓄積している斑では同トランスポゾンが脱離している。その結果、アシル基転移酵素活性を有するタンパク質をコードする遺伝子が機能するようになりアシルアントシアニンに変換されることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の新規のアシル基転移酵素活性を有するタンパク質、及びそれをコードする遺伝子を用いる植物作成方法は、花卉植物の花色を変化させることにより、花色の幅を広げることができ、新たな特性を有する観賞用植物の開発に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】新規アシル基転移酵素が触媒する反応を示す図である。図1Aに3位にグルコースをもつアントシアニンにリンゴ酸を付加する反応、図1Bに3位及び5位にグルコースをもつアントシアニンをサイクリックマリルアントシアニンに変換する反応を示す。
【図2】MFA1系統の花の写真である。
【図3】本発明の新規のアシル基転移酵素活性を有するタンパク質をコードするcDNA配列から予想されるタンパク質(上段)と公知であり本発明の遺伝子を取得する元になったトマトの耐虫性物質アシルアセタールを合成するグルコース・イソ酪酸転移タンパク質(下段)のアミノ酸配列とをDNA解析ソフトGENETYX(ver4.0、ゼネティックス社)で解析した結果を示す図である。部分的な相同性が認められるが、全体としては44.6%の相同性を示す。図中、*は同一アミノ酸、.は相同なアミノ酸を示す。
【図4】トランスポゾンが挿入していたイントロンの配列を示す図である。図中、下線部分がTSDを示す。
【図5】バイカラー系統の斑で確認されたトランスポゾン脱離後のフットプリントを示す図である。MFA1-3系統については2種のフットプリントが確認できた。
【配列表フリーテキスト】
【0062】
配列番号4〜15:プライマーA

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(a)又は(b)のタンパク質。
(a) 配列番号1に示すアミノ酸配列からなるタンパク質
(b) 配列番号2に示すアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入、又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、アシル基としてリンゴ酸をアントシアニンに転移する活性を有するタンパク質
【請求項2】
以下の(c)〜(f)のいずれかのDNAからなる遺伝子。
(c) 配列番号2に示す塩基配列からなるDNA
(d) 配列番号2に示す塩基配列からなるDNAに相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、アシル基としてリンゴ酸をアントシアニンに転移する活性を有するタンパク質をコードするDNA
(e) 配列番号2に示す塩基配列と80%以上の相同性を有する塩基配列からなり、かつ、アシル基としてリンゴ酸をアントシアニンに転移する活性を有するタンパク質をコードするDNA
(f) 配列番号2に示す塩基配列の縮重異性体からなるDNA
【請求項3】
請求項2に記載の遺伝子を含有する組換えベクター。
【請求項4】
請求項3に記載の組換えベクターを導入した植物細胞。
【請求項5】
請求項2に記載の遺伝子を植物細胞に導入し、該植物細胞から植物体を再生することを特徴とする、新規な花色の花弁を有する遺伝子組み換え植物体を作成する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−161149(P2008−161149A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−356451(P2006−356451)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(000253503)キリンホールディングス株式会社 (247)
【Fターム(参考)】