説明

新規のペプチジルアルファ−ヒドロキシグリシンアルファ−アミド化リアーゼ

本特許出願は、α-ヒドロキシグリシンからα-アミドへの変換を触媒することが可能である酵素、およびC末端α-アミド化ペプチドを生成するためのそのような酵素の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペプチジル-α-ヒドロキシグリシンアルファ-アミド化リアーゼ活性を有する単離ポリペプチド、そのようなポリペプチドを調製するための方法、およびC末端α-アミド化ペプチドを生成するための方法における、そのようなポリペプチドの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
多細胞生物では、神経ペプチドのような特定のペプチド(「前駆体」)が、一連の酵素のステップにおいて翻訳後に修飾され、これらのステップにより、ペプチド基質が、切断され、さらに修飾されて、完全に機能性の生体反応性(bioreactive)ペプチドが生じる。このプロセスは、トランス-ゴルジ体内から始まり、未熟な分泌顆粒として継続する。これらのペプチドのうちの多くにとって非常に重要な後期翻訳後修飾は、カルボキシ末端のアルファアミド化である。
【0003】
C末端残基のアルファ-アミド化は、ヒトまたは動物の代謝に関与するいくつかのペプチドホルモンの活性にとって極めて重要である。いくつかのペプチドホルモンが現在、薬物として、ヒトの治療において、例えば、肥満および/または糖尿病の制御のために使用されているか、または潜在的な薬物として開発中である。そのようなペプチドホルモンの例が、アミリン(例えば、Symlin(登録商標)、すなわち、ヒトアミリンの類似体である酢酸プラムリンチド)である。ヒトアミリンは、肥満および/または糖尿病を治療または予防するために使用することができる37個のアミノ酸残基のペプチドである。したがって、完全な生物学的活性を得るために、アミリンのC末端はアミド化されることが必要となる。同様に、ペプチドYY(PYY)も、アルファアミド化されて、完全な生物学的活性を得るはずである。
【0004】
大腸菌(E.coli)および酵母が、真核生物起源のペプチドの組換え発現のために広く使用されている。しかし、C末端α-アミド基の性質に起因して、ペプチドホルモンを、大腸菌および酵母に基づく現況技術の微生物発現系を使用して、活性な形態として発現させることができない。これは、アルファアミド化酵素が、これらの生物体中では天然に発現しないことによる。したがって、C末端アルファアミドを、組換えにより発現させたペプチド中に、例えば、アルファアミド化酵素を用いるex vivoにおける修飾を使用して導入しなければならない。
【0005】
二機能性のペプチジルα-アミド化モノオキシゲナーゼ(PAM)による、C末端Glyを有するペプチド前駆体のα-アミドへの酵素による修飾が、いくつかの真核生物中に見出されている。この酵素について、異なるアイソフォームをコードする複数の選択的にスプライシングされた転写物のバリアントが記載されている。この酵素は、多細胞生物(後生動物)についてもっぱら記載されている。ペプチド中のC末端Gly残基からα-アミドへの変換は、二段階プロセスであり、PAMのN末端ドメイン(PHMと名付けられている)が、グリシンからα-ヒドロキシグリシンへの変換を触媒し、PAMのC末端ドメイン(PALと名付けられている)が、α-ヒドロキシグリシンからα-アミドへの変換を触媒する。真核生物中で、これら2つの触媒ドメインが順次に働いて、神経内分泌ペプチドを触媒して、活性なアルファ-アミド化産物をもたらす。2つのジスルフィド架橋が、真核生物由来のPALドメイン中では高度に保存されている。
【0006】
アミド基をC末端の終点に含有する小さなペプチド(アルファアミド)を化学的手段により合成することが可能である場合があるが、より大きなアルファ-アミド化ペプチドは生成するのが困難であり、生成には費用もかかる。したがって、アルファアミド化酵素は、組換え前駆体ペプチドから成熟ペプチドへの変換に有用である。
【0007】
US4708934は、髄様甲状腺癌の細胞株および組織試料から抽出したペプチジル-グリシンα-アミド化モノオキシゲナーゼを記載している。
【0008】
US5789234は、アルファ-アミド化酵素の、組換えDNA技法による生成を記載している。
【0009】
WO90/08194は、真核生物のC末端アルファアミド化酵素の使用による、前駆体ペプチドからのC末端アルファアミド化ペプチドの生成のための方法に関する。また、これらのC末端アルファアミド化酵素の真核生物発現ための方法も記載されている。
【0010】
WO89/02460は、ウシ由来PAM酵素、そのクローニング、cDNAおよび組換えDNA技術による発現を記載している。
【0011】
EP0448513は、アフリカツメガエル(Xenopus Laevis)に由来するペプチジルグリシンアルファ-ヒドロキシル化モノオキシゲナーゼの組換え発現のための方法を記載し、この方法は、ペプチジルグリシンアルファ-ヒドロキシル化モノオキシゲナーゼをコードするDNAが組み込まれている組換えバキュロウイルスをトランスフェクトした昆虫細胞を培養して、酵素を生成する工程を含む。
【0012】
EP0465404は、C末端α-ヒドロキシル化ペプチドのα-ヒドロキシルグリシン部分中のN-C結合の切断を触媒する、アフリカツメガエルに由来する酵素(PHL;PAL)、酵素のクローニング、および昆虫細胞中でのその組換え発現を記載している。
【0013】
US20060292672は、PAMまたはその2つの触媒ドメインのうちの1つを発現させるための細胞株を記載している。
【0014】
EP2172550は、アフリカツメガエルに由来するC末端アルファ-アミド化酵素中に通常出現する5つのジスルフィド結合のうちの1つの形成を欠く組換えC末端アルファ-アミド化酵素誘導体、および前記誘導体を大腸菌中で組換えにより生成する方法を記載しており、大腸菌内で、得られた封入体が、可溶化され、リフォールディングの手順に付される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】US4708934
【特許文献2】US5789234
【特許文献3】WO90/08194
【特許文献4】WO89/02460
【特許文献5】EP0448513
【特許文献6】EP0465404
【特許文献7】US20060292672
【特許文献8】EP2172550
【特許文献9】WO2006/108826
【特許文献10】WO2008/043847
【特許文献11】US4,683,202
【特許文献12】US4,599,311
【特許文献13】EP238023
【特許文献14】EP383779
【特許文献15】US4,870,008
【特許文献16】WO87/02670
【特許文献17】US4,546,082
【特許文献18】EP16201
【特許文献19】EP123294
【特許文献20】EP123544
【特許文献21】EP163529
【特許文献22】WO89/02463
【特許文献23】WO92/11378
【特許文献24】EP215594
【特許文献25】US4,931,373
【特許文献26】5,037,743
【特許文献27】US4,845,075
【特許文献28】US4,882,279
【特許文献29】EP272277
【特許文献30】EP184438
【特許文献31】EP244234
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】NeedlemanおよびWunsch、J.Mol.Biol.(1970)48:443〜453頁
【非特許文献2】J.Mol.Biol.(1981)147:195〜197頁
【非特許文献3】Kolhekar A.Sら、Biochemistry 2002年、41、12384〜12394頁
【非特許文献4】Chufan EE、De M、Eipper BA、Mains RE、Amzel LM、Amidation of Bioactive Peptides:The Structure of the Lyase Domain of the Amidating Enzyme、Structure. 2009年7月15日;17(7):965〜73頁
【非特許文献5】De,M.、Bell,J.、Blackburn,N.J.、Mains,R.E.およびEipper,B.A.、(2006)、Role for an essential tyrosine in peptide amidation、J.Biol.Chem.281、20873〜20882頁
【非特許文献6】Katopodis AGら、Biochemistry、1990年、29(26):6115〜6120頁
【非特許文献7】Scopes,R.、Protein Purification、Springer-Verlag、N.Y.、1982年
【非特許文献8】BeaucageおよびCaruthers、Tetrahedron Letters 22(1981年)、1859〜1869頁
【非特許文献9】Matthesら、EMBO Journal 3(1984)、801〜805頁
【非特許文献10】Saikiら、Science 239(1988)、487〜491頁
【非特許文献11】Subramaniら、Mol.Cell Biol.1(1981)、854〜864頁
【非特許文献12】Palmiterら、Science 222(1983)、809〜814頁
【非特許文献13】Boshartら、Cell 41:521〜530頁、1985年
【非特許文献14】KaufmanおよびSharp、Mol.Cell.Biol、2:1304〜1319頁、1982年
【非特許文献15】Hitzemanら、J.Biol.Chem.255(1980)、12073〜12080頁
【非特許文献16】AlberおよびKawasaki、J.Mol.Appl.Gen.1(1982)、419〜434頁
【非特許文献17】Youngら、Genetic Engineering of Microorganisms for Chemicals(Hollaenderら編)、Plenum Press、New York、1982年
【非特許文献18】Russellら、Nature 304(1983)、652〜654頁
【非特許文献19】McKnightら、The EMBO J.4(1985)、2093〜2099頁
【非特許文献20】P.R.Russell、Gene 40、1985年、125〜130頁
【非特許文献21】DeNotoら、Nucl.Acids Res.9:3719〜3730頁、1981年
【非特許文献22】O.Hagenbuchleら、Nature 289、1981年、643〜646頁
【非特許文献23】L.A.Vallsら、Cell 48、1987、887〜897頁
【非特許文献24】M.Egel-Mitaniら、Yeast 6、1990年、127〜137頁
【非特許文献25】Gleesonら、J.Gen.Microbiol.132、1986年、3459〜3465頁
【非特許文献26】Malardierら、1989年、Gene 78:147〜156頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、ペプチド中のα-ヒドロキシグリシンからα-アミドへの変換を触媒することが可能である新規の酵素(ペプチジル-α-ヒドロキシグリシンアルファ-アミド化リアーゼ活性)に関する。
【0018】
新規の酵素は、原核生物に由来し、真核生物のPAL酵素について記載されている特性とは異なる物理化学的および構造的な特性を有する。
【0019】
したがって、本発明は、原核生物に由来することを特徴とする、ペプチジル-α-ヒドロキシグリシンアルファ-アミド化リアーゼ活性を有する酵素を提供する。
【0020】
また、本発明は、大腸菌中で、可溶性の、酵素的に活性なタンパク質として発現させることができることを特徴とする、ペプチジル-α-ヒドロキシグリシンアルファ-アミド化リアーゼ活性を有する酵素も提供する。
【0021】
また、本発明は、システイン残基を含まないか、または最大1つもしくは最大2つのシステイン残基を含むアミノ酸配列を有することを特徴とする、ペプチジル-α-ヒドロキシグリシンアルファ-アミド化リアーゼ活性を有する酵素も提供する。
【0022】
また、本発明は、(i)酵素をコードするヌクレオチド配列を含む核酸コンストラクトを含む組換え大腸菌株の宿主細胞を、酵素の発現に適している条件下で培養する工程と、(ii)宿主細胞の破壊および遠心分離の後に、上清から酵素を回収する工程とを含む方法により生成され得ることを特徴とする、ペプチジル-α-ヒドロキシグリシンアルファ-アミド化リアーゼ活性を有する酵素も提供する。
【0023】
また、ペプチド中のα-ヒドロキシグリシンからα-アミドへの変換を触媒することが可能である酵素も提供し、前記酵素が、モチーフ(モチーフ1と名付ける)、すなわち、Xaa1 Val Xaa2 Asp Arg Xaa3 Xaa4 Xaa5 Arg Xaa6 Gln Xaa7 Xaa8 Xaa9 Xaa10 Xaa11 Gly Xaa12 Xaa13 Xaa14 Xaa15 Xaa16 Trpを含むアミノ酸配列を有し、Xaa1〜Xaa16が、天然に存在するアミノ酸から独立に選択され、ただし、Xaa1およびXaa7は、Cysではない。
【0024】
また、ペプチド中のα-ヒドロキシグリシンからα-アミドへの変換を触媒することが可能である酵素も提供し、前記酵素が、モチーフ(モチーフ2と名付ける)、すなわち、Asp Gly Tyr Xaa17 Asn Xaa18 Arg Xaa19 Xaa20 Xaa21 Phe Xaa22 Xaa23 Xaa24 Gly Xaa25 Xaa26 Xaa27 Xaa28 Xaa29 Xaa30 Xaa31 Xaa32 Xaa33 Gly Xaa34 Xaa35 Xaa36 Gly Xaa37 Pheを含むアミノ酸配列を有し、Xaa17〜Xaa37が、天然に存在するアミノ酸から独立に選択され、ただし、Xaa17はCysではない。
【0025】
また、(a)配列番号1のアミノ酸2〜306;(b)配列番号2のアミノ酸3〜336;(c)配列番号3のアミノ酸3〜305;(D)配列番号4のアミノ酸3〜279;(e)配列番号19;(f)配列番号20;(g)配列番号21;(h)配列番号22;および(i)配列番号23から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を示すアミノ酸配列を含むペプチジル-α-ヒドロキシグリシンアルファ-アミド化リアーゼ活性を有する酵素も提供する。
【0026】
本発明は、ペプチド中のC末端α-ヒドロキシグリシン残基からα-アミド残基への変換を触媒することによってα-アミド化ペプチドを調製するための方法における、本発明の酵素の使用をさらに提供する。また、α-アミド化ペプチドを、本発明の酵素を使用して生成するための方法も提供される。さらに本発明は、本発明の酵素をコードする単離核酸、核酸を含むベクターおよび宿主細胞を提供することによって、組換え技術により本発明の酵素を生成するための方法にも関する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】N末端融合パートナー(配列番号7)および介在リンカー領域中のHRV14 3Cプロテアーゼ切断部位(配列番号8)を伴う、エリスロバクター属(Erythrobacter)由来の細菌性PAL様ドメイン(予測されるシグナルペプチドを有さない)をコードするプラスミドCの代表的なpET11aベクターマップ(配列番号1)を示す図である(融合タンパク質全体が、タンパク質3という対象物で印されている)。NdeI、XhoIおよびBamHIの制限酵素部位を描写する。また、T7プロモーター領域、アンピシリン耐性遺伝子、lacIリプレッサー領域および複製開始点部位も、ベクターマップ中に示す。
【図2】RL9_THEMA TAPタグ付きのエリスロバクターPAL様ドメイン(A)およびラットPAL(B)の発現プロファイル示すSDS-PAGEの図である。Uind:未誘導の細胞培養対照(陰性対照(neg. control))、Ind:0.5mMのIPTGを用いて30℃で3時間誘導した後の状態、Sup:可溶性画分、Pel:不溶性画分。矢印は、ゲル上の、PALの分子量の位置のバンドを示す。 発現レベルは同等であるが、不溶性であり、機能性の酵素を得るためには、リフォールディングを必要とするラットPALとは対照的に、エリスロバクターPAL様ドメインは、溶解性が高いタンパク質として発現する。
【図3】A:RL9_THEMAタグ付きエリスロバクターPAL様ドメインのSP Sepharose FFによる精製プロファイルを示すFPLCクロマトグラムである。融合タンパク質は、矢印により示す約0.25MのNaCl濃度で溶出する。点線は、導電率曲線を示し、実線は、280nmにおけるUV吸収シグナルを示す。X軸上の数は、画分およびmlを示す。 B:図3Aからのクロマトグラム上の主要ピークからの画分を示すSDS-PAGEゲルである。Apl:カラム上に負荷されたアプリケーション、Ft:フロースルー画分。TAPタグは、1回の陽イオン交換クロマトグラフィーのステップの後に効率的な捕捉および高い純度をもたらす。
【図4A】融合タンパク質の、HRV14 3Cプロテアーゼを用いたプロセシングに続く、RL9_THEMAタグから放出させた、成熟したエキシグオバクテリウム(Exiguobacterium)PAL様ドメインのQ Sepharose HPによる分離を示すFPLCクロマトグラムである。主要ピークが、矢印により示すように、約0.4MのNaClで溶出する。点線は、導電率曲線を示し、実線は、280nmにおけるUVシグナルを示す。X軸上の数は、画分およびmlを示す。
【図4B】図4Aに示すFPLCによる分離から溶出した画分のSDS-PAGE分析を示す。Apl:カラム上に添加されたアプリケーション、Ft:フロースルー画分。アプリケーションのレーン中、2つのバンドは、成熟したエキシグオバクテリウムPAL様ドメイン(約30キロダルトン)と、放出された精製タグ(約18キロダルトン)とを示す。精製からの主要ピークは、ほとんどもっぱら成熟PALを含有し(実線の矢印)、一方、放出されたTAPタグは、陰イオン交換カラムには結合せず、フロースルー画分中に存在する(点線の矢印)。
【図5A】α-ヒドロキシグリシン(Gly(OH))およびα-アミド(-NH2)を、それぞれ代表する(関連のピークの下に印す)合成α-ヒドロキシ馬尿酸およびベンズアミドのUPLC分析を示す図である(関連のピークの下に印す)。α-ヒドロキシ馬尿酸を、N末端中にTAPタグを有するまたは有さない細菌のPAL様酵素と共に、関連の補助因子を添加して、37℃で3時間インキュベートした。肉太の矢印は、最も顕著な、酵素によるベンズアミドへの変換を指し示す。酸性(MES、pH5.5)または塩基性(Tris、pH7.5)の緩衝液条件を使用して試験した、精製タグ(配列番号7)を有する(+TAP)または精製タグを有さない(-TAP)エリスロバクターPAL様ドメインの分析を示す図である。陰性(neg.)の対照(ctrl)は、酵素を添加しなかった試料についてのクロマトグラムである。アルファヒドロキシ馬尿酸からベンズアミドへの変換は、文献に以前に記載されているように、高いpHで自発的に生じ得る(図5A6/7)。しかし、α-ヒドロキシ馬尿酸およびベンズアミドの基質ピーク面積の相対面積から、変換は、酵素の添加により、TAPタグがある場合(図5A2/7)およびTAPタグがない場合(図5A4/7)の両方において、pH7.5で最も効率的に触媒され得ると結論付けられる。
【図5B】α-ヒドロキシグリシン(Gly(OH))およびα-アミド(-NH2)を、それぞれ代表する(関連のピークの下に印す)合成α-ヒドロキシ馬尿酸およびベンズアミドのUPLC分析を示す図である。α-ヒドロキシ馬尿酸を、N末端中にTAPタグを有するまたは有さない細菌のPAL様酵素と共に、関連の補助因子を添加して、37℃で3時間インキュベートした。肉太の矢印は、最も顕著な、酵素によるベンズアミドへの変換を指し示す。酸性(MES、pH5.5)または塩基性(Tris、pH7.5)の緩衝液条件を使用して試験した、精製タグ(配列番号7)を有する(+TAP)、クトニオバクター(Chthoniobacter)PAL様ドメインの分析を示す図である。クトニオバクターの酵素は、エリスロバクターの酵素と比較して、より低いpH範囲においてより活性である。これは、ベンズアミドのピーク面積が、neg.ctrl.(図5B3/7)と比較して、pH5.5における酵素とのインキュベーションの後に顕著に増加する(図5B1/7)からである。
【図6】細菌のPAL様ドメインのPAL活性を、ラットPHMとの同時インキュベーションにより確認する、アミリン類似体モデルペプチドの抽出およびデコンボリューション処理したMSスペクトルを示す図である。X軸:ダルトンで示す質量電荷比。Y軸:MSピークの相対強度。顕著なMSピークの質量を、スペクトル中に示す;前駆体ペプチドの対照(C末端Gly残基を含有する):13934.66Da、α-ヒドロキシグリシン中間体ペプチド(C末端α-ヒドロキシグリシンを含む):13951Da、α-アミド化ペプチド:13876.62Da。A:未処理の対照、B:ラットPHM単独(2時間)、C: プランクトマイセス(Planctomyces)PAL様ドメイン、タンパク質10(2時間)、D:エリスロバクターPAL様ドメイン、タンパク質3(2時間)、E:プランクトマイセスPAL様ドメイン、タンパク質10(5時間)、F:エリスロバクターPAL様ドメイン、タンパク質3(5時間)。
【図7A】エリスロバクター属細菌のPAL様ドメイン(配列番号1)と共にインキュベートした精製C末端アルファヒドロキシ-グリシン伸長プラムリンチドペプチドの抽出およびデコンボリューション処理したMSスペクトルを示す図である。X軸:ダルトンで示す質量電荷比。Y軸:MSピークの相対強度。2つの顕著なMSピークの質量を、スペクトル中に示す。α-ヒドロキシグリシン中間体ペプチド(C末端α-ヒドロキシグリシンを含む:約4023Da)のピークおよびα-アミド化ペプチド(約3949Da)のピークは全て、計算した平均同位体質量に非常に近いことが決定された。それぞれの反応についての酵素対基質の比(w/w)を示す。i)PHM処理した対照(ctrl)、ii)1:1250、iii)1:500、iv)1:100。
【図7B】プランクトマイセス属細菌のPAL様ドメイン(配列番号4)と共にインキュベートした精製C末端アルファヒドロキシ-グリシン伸長プラムリンチドペプチドの抽出およびデコンボリューション処理したMSスペクトルを示す図である。X軸:ダルトンで示す質量電荷比。Y軸:MSピークの相対強度。2つの顕著なMSピークの質量を、スペクトル中に示す。α-ヒドロキシグリシン中間体ペプチド(C末端α-ヒドロキシグリシンを含む:約4023Da)のピークおよびα-アミド化ペプチド(約3949Da)のピークは全て、計算した平均同位体質量に非常に近いことが決定された。それぞれの反応についての酵素対基質の比(w/w)を示す。i)PHM処理した対照(ctrl)、ii)1:1250、iii)1:500、iv)1:100。
【図7C】クトニオバクター属細菌のPAL様ドメイン(配列番号3)と共にインキュベートした精製C末端アルファヒドロキシ-グリシン伸長プラムリンチドペプチドの抽出およびデコンボリューション処理したMSスペクトルを示す図である。X軸:ダルトンで示す質量電荷比。Y軸:MSピークの相対強度。2つの顕著なMSピークの質量を、スペクトル中に示す。α-ヒドロキシグリシン中間体ペプチド(C末端α-ヒドロキシグリシンを含む:約4023Da)のピークおよびα-アミド化ペプチド(約3949Da)のピークは全て、計算した平均同位体質量に非常に近いことが決定された。それぞれの反応についての酵素対基質の比(w/w)を示す。i)PHM処理した対照(ctrl)、ii)1:100、iii)1:50、iv)、1:25。
【図7D】エキシグオバクテリウム(Exiquobacterium)属細菌のPAL様ドメイン(配列番号2)と共にインキュベートした精製C末端アルファヒドロキシ-グリシン伸長プラムリンチドペプチドの抽出およびデコンボリューション処理したMSスペクトルを示す図である。X軸:ダルトンで示す質量電荷比。Y軸:MSピークの相対強度。2つの顕著なMSピークの質量を、スペクトル中に示す。α-ヒドロキシグリシン中間体ペプチド(C末端α-ヒドロキシグリシンを含む:約4023Da)のピークおよびα-アミド化ペプチド(約3949Da)のピークは全て、計算した平均同位体質量に非常に近いことが決定された。それぞれの反応についての酵素対基質の比(w/w)を示す。i)PHM処理した対照(ctrl)、ii)1:100、iii)1:50、iv)1:25。
【発明を実施するための形態】
【0028】
定義
「PAM」または「ペプチジル-グリシンアルファ-アミド化モノオキシゲナーゼ」は、C末端グリシン残基からα-ヒドロキシグリシンへの変換およびα-ヒドロキシグリシンからα-アミドへの変換の両方を触媒する二機能性の酵素を指す。また、この酵素は、ペプチジルグリシン2-ヒドロキシラーゼ、ペプチジルアルファ-アミド化酵素、ペプチジルグリシンアルファ-ヒドロキシル化モノオキシゲナーゼ、およびペプチジル-アルファ-ヒドロキシグリシンアルファ-アミド化リアーゼとしても公知である。
【0029】
「PHM」または「ペプチジルグリシンアルファ-ヒドロキシル化モノオキシゲナーゼ」は、C末端グリシン残基からα-ヒドロキシグリシンへの変換を触媒することが可能である酵素である。PHMについてのその他の用語は、ペプチジルグリシン2-ヒドロキシラーゼ、ペプチジルグリシンアルファ-アミド化モノ-オキシゲナーゼ、ペプチジルグリシンアルファ-ヒドロキシラーゼ、ペプチジルグリシンアルファ-ヒドロキシル化モノオキシゲナーゼ、ペプチジルグリシンアルファ-ヒドロキシル化-モノオキシゲナーゼ、ペプチジルグリシンアルファ-モノオキシゲナーゼ、EC1.14.17.3、およびペプチジルグリシンモノオキシゲナーゼである。
【0030】
本明細書で使用する場合、「PAL酵素」、「PAL」または「ペプチジル-α-ヒドロキシグリシンアルファ-アミド化リアーゼ」は、α-ヒドロキシグリシンからα-アミドへの変換を触媒することが可能である酵素である。PALについての同義語は、ペプチジルアミドグリコレート(peptidylamidoglycolate)リアーゼα-ヒドロキシグリシンアミド化デアルキラーゼ、HGAD、PGL、ペプチジルアミドグリコレートペプチジルアミド-リアーゼ、EC4.3.2.5、およびペプチジルヒドロキシグリシンN-Cリアーゼ(PHL)である。アッセイ(I)の記載に従って、PAL酵素の活性を実証することができる。
【0031】
「C末端α-ヒドロキシグリシンからα-アミドへの変換を触媒することが可能である酵素」を用いて、R-Gly(OH)->R-NH2の反応を触媒することが可能である酵素を意味し、ただし、Rは、ペプチド、タンパク質または化合物である。
【0032】
本明細書で使用する場合、表現「本発明の酵素」は、ペプチジル-α-ヒドロキシグリシンアルファ-アミド化リアーゼ活性を有する本発明のポリペプチドを意味する。
【0033】
また、非ペプチド基質、例として、アルファ-ヒドロキシ馬尿酸も、PALについての基質として働く。
【0034】
用語「PAL様」は、公知の真核生物のPAL酵素と同じ活性を有する酵素を意味することを意図する。
【0035】
「標的ペプチド」により、α-アミド化の方法において修飾されて、C末端α-アミド基を得るペプチドを意味する。標的ペプチドは、C末端中にGly残基を含まなければならない。標的ペプチドは、式R'-X-Glyを有すると記載することができ、式中、Xは、任意のアミノ酸を示し、Xは、アミノ酸のアミドに変換されるべきアミノ酸である、すなわち、このアミノ酸について、-COOHが、酵素によるα-アミド化の方法の反応においてCO-NH2に変換されるはずであり、R'は、ペプチドの残りの部分を示し、Glyは、C末端グリシン残基を示す。
【0036】
標的ペプチドの1つの例が、アミリンの前駆体であり、この前駆体は、アミリンの配列に加えて、C末端中にGly残基を含む。本発明に適切なGly伸長ペプチド前駆体のその他の非限定的な実施例として、神経ペプチドY(NPY)、ペプチドYY(PYY)、PYY-3-36、膵臓ポリペプチド(PP)、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)、ガストリン、カルシトニン、カルシトニン関連ペプチド(CGRP)、ガストリン放出ペプチド、バソプレシン、オキシトシン、ニューロキニンA、セクレチン、パンクレアスタチン、プロ-オピオメラノコルチン(POMC)、アルファ-メラノサイト刺激ホルモン(アルファMSH)、ガンマ-メラノサイト刺激ホルモン(ガンマ1MSH)およびアミド化ヒンジペプチド(HP-N)、またはそれらの機能性の類似体が挙げられる。
【0037】
用語「単離ポリペプチド」または「単離ポリヌクレオチド」は、本明細書で使用する場合、その天然の供給源から単離されたポリペプチドまたはポリヌクレオチドを指す。
【0038】
本明細書において使用する場合、用語「精製した」または「回収した」は、試料からの混入物の除去を指す。例えば、本発明のPAL酵素を、溶液または調製物内に混入しているタンパク質およびその他の化合物の除去により精製する。いくつかの態様では、本発明のPAL酵素を、細菌を使用して発現させ、これらの組換えPAL酵素を、その他の宿主細胞構成要素の除去により精製し、それによって、組換えPALのパーセントが試料中で増加する。
【0039】
用語「実質的に純粋なポリペプチド」は、本明細書では、重量に関して最大20%、最大10%または最大5%の、未変性の状態に伴うかまたは組換えに起因して伴うその他のポリペプチド材料を含有するポリペプチド調製物を意味する。したがって、実質的に純粋なポリペプチドは、調製物中に存在する総ポリペプチド材料の重量に関して、少なくとも80%純粋、少なくとも90%純粋、または好ましくは、少なくとも95%純粋であることが好ましい。本発明のポリペプチドは、好ましくは、実質的に純粋な形態をとる、すなわち、ポリペプチド調製物には、未変性の状態に伴うかまたは組換えに起因して伴うその他のポリペプチド材料が本質的にない。このことは、例えば、ポリペプチドを周知の組換えの方法または古典的な精製の方法により調製することによって達成することができる。
【0040】
一態様では、「%純度」を、目的のタンパク質の量/(目的のタンパク質の量+宿主細胞の混入物の量)×100と定義する。量の決定は、SDS-PAGE分析またはHPLC分離により決定することができる。
【0041】
一態様では、本発明のポリペプチドは、少なくとも1%純粋、例えば、少なくとも5%純粋、少なくとも10%純粋、少なくとも20%純粋、少なくとも40%純粋、少なくとも60%純粋、少なくとも80%純粋、少なくとも90%純粋である。
【0042】
用語「回収した」または「回収する」は、本発明のポリペプチドについて本明細書で使用する場合、一実施形態では、ポリペプチド/酵素には、ポリペプチドが生成された系、例えば、細胞培養物内に含有されている、任意の外来性のかつ望ましくない生物学的な分子が、顕著なレベル(例えば、最大1%、最大2%、最大3%、最大5%、最大10%または最大25%)で伴うことがないことを意味する。回収したポリペプチドは、(自動、手動または両方のいずれであれ)ヒトの介入による純度を高める段階を経ている本発明のポリペプチドを指す。また、組成物中に存在する、回収した本発明のポリペプチドおよび単離した本発明のポリペプチドも本発明に属することを理解されたい。換言すると、用語「回収した」または「単離した」は、その他の化合物または材料との人工または合成の混合物を除外することを意味しない。
【0043】
用語「タンパク質」、「ペプチド」および「ポリペプチド」を、本明細書では互換的に使用する。ペプチドはタンパク質の一部であるが、当業者であれば、文脈により、この用語の使用を理解する。表現「本発明の酵素」および「本発明のポリペプチド」を、本明細書では互換的に使用する。
【0044】
アミノ酸配列の「改変」により、配列中の1つまたは複数のアミノ酸の置換、欠失および/または付加(挿入を包含する)を意味する。さらなる態様ではまた、この用語は、1つまたは複数のアミノ酸側鎖の置換えも包含する。
【0045】
用語「発現ベクター」を、本明細書では、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含み、その発現をもたらす追加のヌクレオチドに作動可能に連結されている直鎖または環状のDNA分子と定義する。用語「プラスミド」、「発現ベクター」および「ベクター」を、互換的に使用する。これは、プラスミドが、現在のところ最も一般に使用されているベクターの形態であることによる。しかし、本発明は、同等の機能を果たすようなその他の形態の発現ベクターを包含することを意図する。本明細書で使用する場合、「発現ベクター」または「ベクター」は、適切な宿主中でDNAの発現をもたらすことが可能である適切な制御配列に作動可能に連結されているDNA配列を含有するDNAコンストラクトを指す。そのような制御配列は、例えば、転写をもたらすプロモーター、そのような転写を制御する任意選択のオペレーター配列、適切なmRNAリボソーム結合部位をコードする配列、ならびに転写および翻訳の終結を制御する配列を包含することができる。ベクターは、例えば、プラスミド、ファージであっても、または単に、使用可能なゲノムの挿入部であってもよい。ベクターは、適切な宿主中に形質転換されたら、例えば、宿主ゲノムとは独立に複製および機能し得、または場合によっては、ゲノム自体中に組み込まれ得る。
【0046】
2つのアミノ酸配列間の関連性は、パラメータ「同一性」(「%同一性」)により記載される。本発明のアミノ酸配列の文脈における同一性を、任意の適切な技法/プログラムにより、典型的には、Needleman-Wunschアラインメント解析(NeedlemanおよびWunsch、J.Mol.Biol.(1970)48:443〜453頁を参照されたい)により、BLO-SUM50スコア化行列を使用して、-12の開始ギャップペナルティおよび-2の伸長ペナルティを用いて決定することができる。(-nobriefオプションを使用して得られる)Needle標識された「最長同一性(longest identity)」のアウトプットを使用する。これは、パーセント同一性を以下に従って計算することができるからである:(同一残基×100)/(アラインメントの長さ-アラインメント中のギャップの総数)。Needleman-Wunschアラインメントは、2つの配列間の全般的または全体的な同一性を測定するので、より大きなペプチド配列の部分またはサブ配列であり得る標的配列も、完全配列に類似する様式で使用することができることを認識すべきであり、または代わって、例えば、利用可能なプログラムを通して得ることができるSmith-Watermanアラインメント(J.Mol.Biol.(1981)147:195〜197頁)により決定した局所アラインメントの値を使用して、サブ配列間の関係を評価することもできる。同一性を解析するのに適切であり得るその他の局所アラインメントによる方法は、発見的局所アラインメントアルゴリズムを適用するプログラム、例として、FastAプログラムおよびBLASTプログラムを包含する。
【0047】
本明細書で使用する場合、用語「コード配列」は、ヌクレオチド配列を意味し、ヌクレオチド配列は、そのタンパク質産物のアミノ酸配列を直接特定する。コード配列の境界は一般に、オープンリーディングフレームにより決定され、オープンリーディングフレームは通常、ATGの開始コドン、または代替の開始コドン、例として、GTGおよびTTGで始まり、終止コドン、例として、TAA、TAGおよびTGAで終わる。コード配列は、DNA、cDNA、合成または組換えのヌクレオチド配列であり得る。用語「cDNA」を、本明細書では、真核細胞から得られた成熟RNA分子、スプライスRNA分子、mRNA分子から逆転写により調製することができるDNA分子と定義する。cDNAは、対応するゲノムDNA中には通常存在するイントロン配列を欠く。最初の一次RNA転写物は、mRNAへの前駆体であり、この前駆体は、一連のステップを通ってプロセシングされてから、成熟スプライスmRNAとして出現する。これらのステップは、イントロン配列の、スプライシングと呼ばれるプロセスによる除去を包含する。したがって、mRNAに由来するcDNAは、いずれのイントロン配列も欠いている。
【0048】
用語「コードする核酸分子」、「コードする核酸配列」、「コードするDNA配列」および「コードするDNA」は、デオキシリボ核酸の紐に沿うデオキシリボヌクレオチドの順番または配列を指す。これらのデオキシリボヌクレオチドの順番が、タンパク質の鎖に沿うアミノ酸の順番を決定する。したがって、DNA配列が、タンパク質、例えば、酵素のアミノ酸配列をコードする。用語「核酸コンストラクト」は、本明細書で使用する場合、一本鎖または二本鎖のいずれかの核酸分子であって、天然に存在する遺伝子から単離した核酸分子、または改変して、含有させなければ本来存在しないような核酸のセグメントを含有させた核酸分子、または合成である核酸分子を指す。核酸コンストラクトという用語は、核酸コンストラクトが、本発明のコード配列の発現に必要な制御配列を含有する場合、用語「発現カセット」と同義である。
【0049】
用語「作動可能に連結されている」は、本明細書では、制御配列が、ポリヌクレオチド配列のコード配列に対して適切な位置に置かれており、したがって、制御配列が、ポリペプチドのコード配列の発現を導く配置を意味する。用語「発現」は、ポリペプチドの生成に関与する任意のステップを包含し、それらのステップとして、例えば、転写、転写後修飾、翻訳、翻訳後修飾および分泌が挙げられる。
【0050】
用語「に由来する(derived from)」は、所与の供給源(すなわち、生物体(biological organism))からポリペプチドまたはポリヌクレオチドを誘導することに関連させて本明細書で使用する場合、ポリヌクレオチド(ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド)が、ポリヌクレオチド配列が、供給源の生物中に挿入されているか、またはポリペプチドが、供給源の生物とは別の生物により生成されるかどうかに関わらず、その供給源の生物中に天然に存在するポリヌクレオチド配列と同一またはそのバリアントであることを意味する。また、「に由来する」は、本発明の文脈においては、「から同定される(identified from)」も意味する。また、「に由来する」は、本発明の文脈においては、細菌のヌクレオチド/タンパク質の配列を有するデータベースからの本発明の酵素の同定、すなわち、タンパク質データベース、例えば、Uniprot、trEMBLまたはRef-SeqPにおけるコンピュータ支援検索を実施することによる同定も意味する。
【0051】
野生型という用語により、本発明の文脈において本明細書で使用する場合、本来生じる形態(例えば、遺伝子、またはタンパク質配列)を意味する。また、細菌のヌクレオチド/タンパク質の配列のデータを含有するデータベース中の検索により推定されるヌクレオチド配列がコードするタンパク質も包含される。一実施形態では、野生型という用語は、シグナルペプチドおよびリーダーペプチドを有さないペプチド配列を包含する。
【0052】
(本発明の酵素、ポリペプチドまたはアミノ酸配列)の「成熟」という用語により、本明細書で使用する場合、ポリペプチドの推定上の最低限の機能性の配列であって、天然または人工のアミノ酸の伸長(例えば、シグナルペプチドまたは融合パートナー)が付加されていない配列を意味する。
【0053】
用語「宿主細胞」は、本明細書で使用する場合、本発明のポリヌクレオチドを含む核酸コンストラクトまたは発現ベクターを用いて形質転換、トランスフェクション、形質導入等を行い得る任意の細胞型を包含する。
【0054】
表現「精製タグ」は、酵素に、酵素のN末端またはC末端のいずれかの終点において融合させたペプチド配列を意味し、酵素を精製するために使用する。
【0055】
表現「TAP」タグは、好熱細菌に由来する熱安定性アルカリ性タンパク質タグを指し、第WO2006/108826号および第WO2008/043847号の下に公開されている国際特許出願に開示されているように、このタグを、酵素のペプチド配列に、N末端またはC末端のいずれかにおいて融合させると、このタグを使用して、酵素を精製することができる。
【0056】
表現「融合酵素」、「融合タンパク質」または「タグ付き酵素」は、酵素のC末端またはN末端のいずれかの終点につながる「融合パートナー」を有する酵素を意味する。融合パートナーの1つの例がタンパク質タグであり、このタグは、融合タンパク質の発現レベル、溶解性または精製を向上させることができる。
【0057】
表現「リンカー」を用いて、融合パートナー、例えば、精製タグと酵素とを一緒に連結させるアミノ酸配列を意味する。リンカー配列は、例えば、標的タンパク質の、および/または精製タグを切断して離すための切断部位のより良好なフォールディングを促す配列を含むことができる。
【0058】
「ヘリックス構造」は、鎖間水素結合により安定化したコイル構造が生じるアミノ酸配列を有することによって特徴付けられる。
【0059】
「%溶解性」を、宿主細胞の可溶化液からの可溶性タンパク質の量/(宿主細胞の可溶化液からの可溶性タンパク質+不溶性タンパク質の量)×100と定義する。%溶解性は、SDS-PAGE分析により、細胞可溶化液の不溶性画分と可溶性画分との比較に基づいて決定することができる。
【0060】
本明細書の文脈では、用語「機能性の酵素」は、未変性の酵素に類似する機能を示すタンパク質を示すことを意味する。タンパク質は、未変性の酵素に構造的に類似することができ、未変性の酵素に由来することができるが、1つまたは複数のアミノ酸の、未変性の酵素のC末端およびN末端のいずれかまたは両方の終点への付加;1つまたは複数のアミノ酸の、未変性のアミノ酸配列中の1つの部位またはいくつかの異なる部位における置換;1つまたは複数のアミノ酸の、未変性の酵素のいずれかもしくは両方の終点におけるまたはアミノ酸配列中の1つもしくはいくつかの部位における欠失;あるいは1つまたは複数のアミノ酸の、未変性のアミノ酸配列中の1つまたは複数の部位における挿入が生じている。
【0061】
「アプリケーション」は、精製カラム上に負荷される酵素を含有する試料を意味する。「フロースルー」は、精製カラムに結合しない宿主細胞タンパク質および混入物を含有するアプリケーションの部分を意味する。「主要ピーク」は、最も高いUV強度を示し、タンパク質を含有する、精製クロマトグラム中のピークを指す。「mAU」は、ミリ吸光度単位である。「UV280の強度」は、ミリ吸光度単位で測定する、280nmの波長における、タンパク質が吸収する吸光度である。「IPTG」は、イソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシドである。SDS-PAGEは、ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動である。FPLC(高速タンパク質液体クロマトグラフィー)は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に類似する液体クロマトグラフィーの形態であり、これは、複合混合物からタンパク質を分離または精製するために使用する。LC-MS(液体クロマトグラフィー-質量分析)は、液体クロマトグラフィー(またはHPLC)の物理学的分離機能と、質量分析の質量を分析する機能とを組み合わせた分析技法である。
【0062】
アミノ酸:本明細書の文脈では、アミノ酸の3文字または1文字による表示を、Table 1(表1)に示す、それらの従来からある意味で使用している。明確に示されない限り、本明細書で言及するアミノ酸は、L-アミノ酸である。さらに、ペプチドのアミノ酸配列の左および右の終点はそれぞれ、別段の特定がない限り、N末端およびC末端である。
【0063】
【表1】

【0064】
二機能性のペプチジルアルファ-アミド化モノオキシゲナーゼ(PAM)による、C末端Glyを有するペプチド前駆体のアルファ-アミド化ペプチドへの酵素による修飾は、いくつかの真核生物中に見出されている。神経ホルモンまたは神経毒に属する、PAMの天然の基質、ならびにペプチドのアルファアミド化に関与する酵素(PAM、PHMおよびPHL)はもっぱら、多細胞生物(後生動物)について記載されている。細菌または古細菌に属する生物体が、ペプチド中のC末端Glyをアルファアミド部分に変換するのに必要な酵素のステップを実施することができるポリペプチドを有することは今までに証明されたことがない。
【0065】
産業用のin-vitroにおけるC末端グリシン伸長ペプチド前駆体からアルファアミド化ペプチドへの変換のために使用する、真核生物のPAL酵素、PHM酵素およびPAM酵素は、哺乳動物細胞発現系における組換え発現により得なければならない。これは、その他の発現系、例えば、大腸菌等中で発現させる場合の活性な酵素の不十分な収率に起因する。大腸菌中では、それらの酵素が、リフォールディングの必要がある不溶性タンパク質として発現する。
【0066】
哺乳動物細胞発現系における発現は、細菌、真菌または酵母を起源とする系における発現と比較して、わずかな収率をもたらすに過ぎない。さらに、哺乳動物細胞中においては、発現プロセスの持続可能性は限定的であり、培養時間はしばしば長く、時間単位当たりの発現収率も低い。一般に、大腸菌中でタンパク質を発現させると、哺乳動物発現系と比較して、より短い発酵サイクルおよび数倍大きい細胞当たりの収率が得られる。
【0067】
真核生物のPAL酵素、PHM酵素またはPAM酵素の場合、組換えα-アミド化ペプチドの産業生産において使用するために高い量のα-アミド化酵素を得るための経済的に持続可能な方法を設計するのは困難である。これは、哺乳動物細胞発現系が、正しくフォールドされた活性な酵素の生成のために必要であることに起因する。
【0068】
真核生物のPAM酵素、PHM酵素およびPAL酵素は、多くのCys残基をそれらの構造的完全性の基礎として有し、これらの酵素を、細胞質環境が劣る大腸菌細胞中で発現させる場合、これらの酵素は、正しいジスルフィド連結を未変性の酵素の場合のようには形成することができない。Kolhekar A.Sら、Biochemistry 2002年、41、12384〜12394頁は、ジスルフィド架橋の観点から、ラットPALの触媒ドメインの特徴付けを記載している。PAL中の2つのジスルフィド架橋が、特徴付けられたPALドメインと真核生物由来のPALドメインとの間で完全に保存されており(12388頁)、このことは、ジスルフィド架橋は、酵素の構造的完全性にとって重要であることを示している。Kolhekar A.Sら、Biochemistry 2002年、41、12384〜12394頁から、ジスルフィド架橋を、B-メルカプトエタノールを用いて還元すると、酵素活性の低下が生じることが明らかであり、したがって、このことは、真核生物のPALドメインにおけるジスルフィド架橋の構造上の重要性を支持している。
【0069】
WO90/08194に、大腸菌中で発現させたアルファアミド化酵素を、還元剤、例として、ジチオスレイトールまたは2-メルカプトエタノールを変性剤と組み合わせて用いて処理し、次いで、還元したタンパク質を酸化することによって、酵素活性を増強する試みが記載されているが、この方法は、酵素活性を増強することができなかった。
【0070】
EP2172550は、アフリカツメガエルに由来するC末端アルファ-アミド化酵素(PHM活性)中に通常出現する5つのジスルフィド結合のうちの少なくとも1つの形成を欠く組換えC末端アルファ-アミド化酵素誘導体、および前記誘導体を大腸菌中で組換えにより生成する方法を記載している。
【0071】
本発明は、本明細書に記載するように、α-ヒドロキシグリシンからα-アミドへの変換を触媒することが可能である新規の酵素(本発明のポリペプチド)を提供する。本発明の新規の酵素は、原核生物に由来し、真核生物のPAL酵素について記載されているものとは異なる物理化学的特性および構造的な特徴を有する。
【0072】
特に、組換えの方法のプロセス経済性(process economy)に極めて重要な、α-アミド化酵素を生成する持続可能な方法が提供される。大腸菌中で本発明の新規の酵素を発現させると、哺乳動物発現PAM/PAL酵素と比較して、より高い最終的な収率が得られる。
【0073】
本発明の酵素の特徴は、それらの真核生物の対応物とは対照的に、本発明の酵素は、大腸菌中で可溶性タンパク質として高い収率で発現させることができ、下流のプロセシングで取り扱うのが非常に容易であることである。これは、これらの酵素は、活性を得るのにリフォールディングを必要としないからである。
【0074】
本発明の酵素の別の重要な特徴は、N末端の融合パートナーへの融合にもかかわらず、それらの活性が維持されることである。これらの融合パートナーの1つの例が、本発明において使用するTAPタグであり、このタグは、酵素生成のステップに続く酵素の容易な精製および酵素の容易な取出しを可能にする。別の例が、His6タグである。いくつかのTAPタグ付き酵素が、クローニングされ、大腸菌中で発現した。したがって、本発明による酵素は、それらの真核生物の対応物とは対照的に、大腸菌中で、可溶性の、TAPタグ付き融合タンパク質として高い収率で発現させることができ、下流のプロセシングで取り扱うのが非常に容易である。
【0075】
したがって、本発明の酵素は、時間および費用がかかる恐れがあるリフォールディングを必要としない。したがって、非哺乳動物宿主細胞、例えば、大腸菌中における、酵素の高い収率の生成方法が提供される。
【0076】
以下に、本発明の異なる態様を記載する。
【0077】
本発明の一態様では、酵素は、モチーフ1、すなわち、Xaa1 Val Xaa2 Asp Arg Xaa3 Xaa4 Xaa5 Arg Xaa6 Gln Xaa7 Xaa8 Xaa9 Xaa10 Xaa11 Gly Xaa12 Xaa13 Xaa14 Xaa15 Xaa16 Trpを含み、
Xaa1およびXaa7は、Cysを除く任意の天然に存在するアミノ酸であり得、Xaa2、Xaa3、Xaa4、Xaa5、Xaa6、Xaa8、Xaa9、Xaa10、Xaa11、Xaa12、Xaa13、Xaa14、Xaa15、Xaa16は、任意の天然に存在するアミノ酸であり得る。
【0078】
一態様では、Xaa4はAsnである。一態様では、Xaa14はLeuである。一態様では、Xaa7は、ValまたはIleである。一態様では、Xaa8は、PheまたはLeuである。一態様では、Xaa9は、AspまたはSerである。
【0079】
本発明の一態様では、酵素は、モチーフ2、すなわち、Asp Gly Tyr Xaa17 Asn Xaa18 Arg Xaa19 Xaa20 Xaa21 Phe Xaa22 Xaa23 Xaa24 Gly Xaa25 Xaa26 Xaa27 Xaa28 Xaa29 Xaa30 Xaa31 Xaa32 Xaa33 Gly Xaa34 Xaa35 Xaa36 Gly Xaa37 Pheを含み、Xaa17〜Xaa37は、天然に存在するアミノ酸から独立に選択され、ただし、Xaa17は、Cysではない。
【0080】
モチーフ1は、活性部位領域中に局在し、Arg残基を、ラット(Rattus norvegicus)PALの活性部位領域中のArg706に類似する位置において含有する。ラットPALと本発明の酵素との間では、モチーフ1が網羅する、Arg706残基の周囲の領域中のアミノ酸は、限定的な配列同一性を示すに過ぎないが、Arg706自体は、特徴付けた本発明の酵素中で保存されている(配列番号1〜4)。Chufanら、2009は、ラットPALcc R706A突然変異体の相対的Vmaxが、野生型ラットPALccの相対的Vmaxのわずか3%であることを決定し、この残基は、活性部位ポケット中に置かれていること示し、したがって、PAL酵素の酵素触媒作用のためのArg706の不可欠な役割が確認されている(969頁)(Chufan EE、De M、Eipper BA、Mains RE、Amzel LM、Amidation of Bioactive Peptides:The Structure of the Lyase Domain of the Amidating Enzyme、Structure. 2009年7月15日;17(7):965〜73頁)。
【0081】
モチーフ2は、別の活性部位領域中に局在し、このモチーフは、Tyr残基を、ラットPAL中のTyr654に類似する位置において含有し、この残基は、変異誘発および構造の研究が示すように、高度に保存されており、酵素触媒作用のための不可欠な残基である(De,M.、Bell,J.、Blackburn,N.J.、Mains,R.E.およびEipper,B.A.、(2006)、Role for an essential tyrosine in peptide amidation、J.Biol.Chem.281、20873〜20882頁)。
【0082】
一態様では、本発明は、α-ヒドロキシグリシンからα-アミドへの変換を触媒することが可能である単離ポリペプチドに関し、このポリペプチドは、(a)配列番号1のアミノ酸2〜306;(b)配列番号2のアミノ酸3〜336;(c)配列番号3のアミノ酸3〜305;(d)配列番号4のアミノ酸3〜279;(e)配列番号13;(f)配列番号15;(g)配列番号19;(h)配列番号20;(i)配列番号21;(j)配列番号22;および(j)配列番号23からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して、少なくとも70%、または少なくとも75%、例えば、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%もしくは少なくとも98%等、または100%の同一性を示すアミノ酸配列を含むまたはからなるポリペプチドからなる群から選択される。
【0083】
一態様では、酵素は、原核生物、例えば、細菌に由来する。
【0084】
本発明の一態様では、酵素は、バークホルデリア属、アルファプロテオバクテリア綱のメタノサルキナ属、ソランギウム属(Sorangium)、メソリゾビウム属(Mesorhizobium)、ブラジリゾビウム属(Bradyrhizobium)またはソリバクター属(Solibacter)の種に由来する。
【0085】
本発明の一態様では、酵素は、エリスロバクター属種に由来する。一態様では、酵素は、エキシグオバクテリウム属種に由来する。一態様では、酵素は、クトニオバクター属の種に由来する。一態様では、酵素は、プランクトマイセス属の種に由来する。
【0086】
本発明の一態様では、酵素は、エリスロバクター属、エキシグオバクテリウム属、クトニオバクター属またはプランクトマイセス属の種に由来する。一態様では、本発明の酵素は、エリスロバクター属、エキシグオバクテリウム属、クトニオバクター属、プランクトマイセス属、バークホルデリア属の種、アルファプロテオバクテリア綱、メタノサルキナ属の種、ソランギウム属、サリニスポラ属(Salinispora)の種、メソリゾビウム属、ブラジリゾビウム属およびソリバクター属の種からなる群から選択される原核生物に由来する。
【0087】
一態様では、酵素は、野生型酵素である。一態様では、本発明のポリペプチドは、シグナルペプチドを有さない成熟配列である。
【0088】
一態様では、本発明の酵素は、野生型酵素と比較して、最高30個の改変を含む。一態様では、酵素は、野生型酵素と比較して、1〜30個の改変を含む。一態様では、酵素は、野生型酵素と比較して、5〜25個の改変を含む。一態様では、酵素は、野生型酵素と比較して、10〜20個の改変を含む。一態様では、酵素は、野生型酵素と比較して、12〜18個の改変を含む。一態様では、本明細書に記載する改変の数は、成熟野生型配列と比較する。
【0089】
一態様では、本発明の酵素は、最高30個の改変を含む。一態様では、酵素は、1〜30個の改変を含む。一態様では、酵素は、5〜25個の改変を含む。一態様では、酵素は、10〜20個の改変を含む。一態様では、酵素は、12〜18個の改変を含む。原核生物の供給源に由来するとして、本明細書において例示する配列は、そのような改変のための基礎を形成することができることを理解されたい(例えば、配列番号1)。
【0090】
本発明の一実施形態では、酵素を改変し、したがって、少なくとも1つのCys残基が、例えば、その他の適切なアミノ酸、例として、Ala、SerまたはValにより置換されているか、または欠失している。
【0091】
一実施形態では、本発明のポリペプチドは、融合パートナーを含む。
【0092】
これらの融合パートナーの1つの例が、TAPタグ、例えば、本発明において使用するTAPタグであり、このタグは、酵素生成のステップに続く酵素の容易な精製および酵素の容易な取出しを可能にする。別の例が、Hisタグ、例えば、His6タグである。
【0093】
一実施形態では、本発明による酵素は、精製タグを含むことができる。一実施形態では、本発明による酵素は、第WO2006/108826号および第WO2008/043847号の下に公開されている国際特許出願に記載されている、好熱細菌に由来する極めて塩基性のリボソームタンパク質を含む精製タグを含む。
【0094】
実施形態では、タグは、精製後、酵素上に留まる。
【0095】
本発明の一実施形態では、精製タグは、固定化されたHis6またはHis8等の金属親和性タグ、グルタチオントランスフェラーゼタグ、FLAGタグ、HAタグ、MYCタグ等の抗体を用いて回収されるタグ、ビオチンまたはストレプトアビジンである。
【0096】
一実施形態では、タグは、酵素を得るために、精製タグのin vitroにおける切断のための切断部位を含むリンカー配列を含む。
【0097】
本発明の一実施形態では、本発明のポリペプチドは、融合パートナーである配列番号7または配列番号11を含む。
【0098】
リンカーは、例えば、1〜30、1〜25、1〜20または1〜15個のアミノ酸残基を有することができ、一態様では、リンカーは、アミノ酸残基、例として、Leu、ProおよびAlaを含むことができ、こうしたアミノ酸残基は、アルファヘリックスの形成またはその他の特徴を増加させ、結果として、構造的な剛性をもたらす。別の態様では、リンカーは、Gly残基およびSer残基を含み、こうした残基は、リンカーに柔軟性を与える。
【0099】
一実施形態では、リンカーを、下記の群から選択することができる。
Ser Ser Ser Gly Gly Ser Gly Ser Glu Val Leu Phe Gln (配列番号8)
Ser Ser Ser Gly Ser Gly Glu Val Leu Phe Gln (配列番号9)
SER SER SER GLY GLY SER GLY GLY SER GLY (配列番号10)
Ser Ser Gly Gly Ser Gly Ser Glu Val Leu Phe Gln (配列番号12)
Ser Ser Ser Gly Gly Ser Gly Ser Glu Thr Leu Phe Gln (配列番号14)
SER SER SER GLY GLY SER GLY GLY SER (配列番号16)
【0100】
リンカーを、酵素のC末端またはN末端のいずれかの終点につなぐことができる。切断部位は、酵素からの精製タグのin vitroにおける切断を可能にする任意の切断部位であり得る。
【0101】
本発明の一実施形態では、酵素は、配列番号1を含み、α-ヒドロキシグリシンからα-アミドへの変換を触媒することが可能である。本発明の一態様では、酵素は、配列番号2を含み、α-ヒドロキシグリシンからα-アミドへの変換を触媒することが可能である。本発明の一態様では、酵素は、配列番号3を含み、α-ヒドロキシグリシンからα-アミドへの変換を触媒することが可能である。本発明の一態様では、酵素は、配列番号4を含み、α-ヒドロキシグリシンからα-アミドへの変換を触媒することが可能である。本発明の一態様では、酵素は、配列番号13を含み、α-ヒドロキシグリシンからα-アミドへの変換を触媒することが可能である。本発明の一態様では、酵素は、配列番号15を含み、α-ヒドロキシグリシンからα-アミドへの変換を触媒することが可能である。
【0102】
本発明の一態様では、本発明のポリペプチドは、最大2つのシステイン残基を含む。本発明の一態様では、本発明のポリペプチドは、システイン残基を含まない。本発明の一態様では、本発明のポリペプチドは、1つのシステイン残基を含む。
【0103】
本発明の一態様では、本発明の酵素が機能して、標的ペプチドのC末端α-ヒドロキシグリシンからα-アミドへの変換を触媒するα-アミド化の方法を実施する。
【0104】
本発明の一態様では、本発明の酵素を、α-アミド化ペプチドを調製するための方法において使用する。
【0105】
本発明の一態様では、α-アミド化の方法の第1の工程を、PHM活性を有する酵素をタンパク質に作用させることによって実施し、それによって、C末端Gly残基がα-ヒドロキシグリシンに変換されるのを可能にし、次いで、本発明の酵素が、α-ヒドロキシグリシンからα-アミドへの変換を触媒するのを可能にする。
【0106】
真核生物のPHM活性は、アスコルビン酸およびCu2+に依存し、真核生物のPAL活性は、Zn2+および補助因子としてのその他の二価イオンに依存する。活性のためのZn2+への類似の依存性を、本発明のPAL様酵素についても観察した。
【0107】
本発明の一態様では、標的ペプチドのα-アミド化を、i)PHM活性を有する酵素を、C末端Gly残基を有する標的ペプチドに、Cu2+および/またはアスコルビン酸を添加して作用させ、それによって、ペプチドのC末端Gly残基がα-ヒドロキシグリシンに変換されるのを可能にする工程と、ii)本発明の酵素が、前記ペプチドのα-ヒドロキシグリシンからα-アミドへの変換を触媒するのを可能にする工程とを含む方法により実施し、前記ペプチドにおける、前記PHMおよび前記本発明の酵素を用いる反応を、2つの別個の工程においてかまたは同時に実施する。
【0108】
本発明の一態様では、標的ペプチドのα-アミド化を、i)PHM活性を有する酵素をC末端Gly残基を有する標的ペプチドに、PHM酵素がC末端Gly残基をα-ヒドロキシグリシンに変換するような条件下で作用させる工程と、ii)本発明の酵素を使用して、前記ペプチドのα-ヒドロキシグリシンからα-アミドへの変換を触媒する工程とを含む方法により実施する。一態様では、標的ペプチドに、PHM活性を有する酵素を、Cu2+および/またはアスコルビン酸の存在下で作用させる。一態様では、標的ペプチドに、PHM活性を有する酵素および本発明の酵素を同時に作用させる。一態様では、標的ペプチドに、PHM活性を有する酵素および本発明の酵素を、同時にかつCu2+および/またはアスコルビン酸の存在下で作用させる。
【0109】
一態様では、本発明の酵素は、α-ヒドロキシ馬尿酸をベンズアミドに変換することができる。酵素の活性を、Katopodis AGら、Biochemistry、1990年、29(26):6115〜6120頁、またはアッセイ(I)の記載に従って、α-ヒドロキシ馬尿酸からベンズアミドへの変換を測定することによって実証することができる。
【0110】
本発明の一態様では、酵素を、α-アミド化ペプチドを調製するための方法において使用する。特定のペプチドの生物学的活性が、ペプチドをC末端においてα-アミド化すると、顕著に増加する。C末端においてα-アミド化されることから利益を得る標的ペプチドの例は、アミリン、神経ペプチドY(NPY)、ペプチドYY(PYY)、PYY-3-36、膵臓ポリペプチド(PP)、ガストリン、カルシトニン、カルシトニン関連ペプチド(CGRP)、ガストリン放出ペプチド、バソプレシン、オキシトシン、ニューロキニンA、セクレチン、パンクレアスタチン、プロ-オピオメラノコルチン(POMC)、アルファ-メラノサイト刺激ホルモン(アルファMSH)、ガンマ-メラノサイト刺激ホルモン(ガンマ1MSH)およびアミド化ヒンジペプチド(HP-N)である。
【0111】
一態様では、ペプチド標的は、アミリンのC末端Gly伸長前駆体またはその機能性の類似体である。一態様では、ペプチド標的は、GLP-1のC末端Gly伸長前駆体またはその機能性の類似体である。一態様では、ペプチド標的は、PYYのC末端Gly伸長前駆体またはその機能性の類似体である。
【0112】
本発明の一態様では、酵素を、PHM活性を有する酵素と一緒に使用する。
【0113】
一態様では、酵素を、PHM活性を有する酵素と一緒にかつCu2+および/またはアスコルビン酸の存在下で使用する。
【0114】
α-アミド化ペプチドを、本発明による酵素を用いて調製する場合、酵素を、ペプチドの前駆体と反応させ、この前駆体は、C末端Gly残基を有する。Gly残基は、アスコルビン酸および/またはCu2+の存在下で、酵素のプロセスによりα-ヒドロキシグリシンに変換され得る。Glyをα-ヒドロキシグリシンに変換することができる酵素1つの例が、PHM活性を有する酵素である。本発明による酵素は、α-ヒドロキシグリシンからα-アミドへの変換を触媒する。
【0115】
一態様では、α-アミド化ペプチドを、例えば、肥満、ストレス誘発高血糖、2型糖尿病、耐糖能異常、1型糖尿病を包含する高血糖、熱傷、手術創、治療に同化作用を必要とするその他の疾患または傷害、心筋梗塞、脳卒中、冠状動脈心臓疾患、その他の心血管系障害の治療または予防、危篤状態の糖尿病患者および非糖尿病患者ならびに多発ニューロパシーの治療等のための医薬の調製のために使用する。
【0116】
別の態様では、α-アミド化ペプチドを、2型糖尿病の疾患の進行を遅延させるかまたは予防するための医薬として使用する。
【0117】
本発明の一態様では、α-アミド化ペプチドを、肥満、ストレス誘発高血糖、2型糖尿病、耐糖能異常、1型糖尿病を包含する高血糖、ならびに熱傷、手術創、ならびに治療に同化作用を必要とするその他の疾患または傷害、心筋梗塞、脳卒中、冠状動脈心臓疾患およびその他の心血管系障害の治療または予防ための医薬として使用する。
【0118】
さらなる態様では、本発明は、肥満、ストレス誘発高血糖、2型糖尿病、耐糖能異常、1型糖尿病を包含する高血糖、ならびに熱傷、手術創、ならびに治療に同化作用を必要とするその他の疾患または傷害、心筋梗塞、冠状動脈心臓疾患およびその他の心血管系障害、脳卒中の治療または予防のための方法に関し、この方法は、α-アミド化ペプチドのそのような治療のための有効量を、そのような治療を必要とする患者に投与する工程を含む。
【0119】
一態様では、本発明は、α-アミド化ペプチドを生成するための方法を含み、この方法は、標的ペプチドを本発明による酵素と反応させる工程と、α-アミド化ペプチドを精製する工程とを含む。一態様では、この方法は、PHM活性を有する酵素の使用を含む。
【0120】
一態様では、この方法は、標的ペプチドを、アミリン、神経ペプチドY(NPY)、ペプチドYY(PYY)、PYY-3-36、膵臓ポリペプチド(PP)、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)、ガストリン、カルシトニン、カルシトニン関連ペプチド(CGRP)、ガストリン放出ペプチド、バソプレシン、オキシトシン、ニューロキニンA、セクレチン、パンクレアスタチン、プロ-オピオメラノコルチン(POMC)、アルファ-メラノサイト刺激ホルモン(アルファMSH)、ガンマ-メラノサイト刺激ホルモン(ガンマ1MSH)およびアミド化ヒンジペプチド(HP-N)、またはそれらの機能性の類似体からなる群から選択する工程を含む。
【0121】
本発明の一態様では、本発明は、本発明の酵素をコードする単離核酸に関する。一態様では、プロモーターおよび前記単離核酸を含む組換え核酸が提供される。
【0122】
一態様では、精製タグをさらにコードする前記組換え核酸が提供される。
【0123】
一態様では、前記組換え核酸を含むベクターが提供される。一態様では、前記組換え核酸を含む宿主細胞が提供される。本発明の一態様では、組換え核酸は、宿主細胞のゲノム中にかまたは宿主細胞中で自律的に複製するベクター中に存在する。
【0124】
一実施形態では、宿主細胞は、哺乳動物細胞、例えば、CHO細胞等である。一実施形態では、宿主細胞は、非哺乳動物宿主細胞である。一態様では、細菌、真菌、例えば、酵母を、本発明のポリペプチドの生成のための宿主細胞として使用する。適切な宿主細胞は、例えば、エシェリキア属、例えば、大腸菌、バチルス属、サッカロミセス属、例えば、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)、またはピキア属の種である。一態様では、宿主細胞は大腸菌である。
【0125】
本発明の一態様では、α-ヒドロキシグリシンからα-アミドへの変換を触媒することが可能である本発明の酵素を生成するための方法が提供され、この方法は、本明細書に記載する本発明の宿主細胞を、本発明による酵素の生成に適している条件下で維持する工程を含む。
【0126】
本発明の一実施形態は、ペプチジル-α-ヒドロキシグリシンアルファ-アミド化リアーゼ(PAL)活性を有する酵素を生成するための方法に関し、この方法は、(i)本明細書に記載する本発明の酵素をコードするヌクレオチド配列を含む核酸コンストラクトを含む、非哺乳動物を起源とする、組換え発現の宿主細胞を、酵素の発現に適している条件下で培養する工程と、(ii)(a)細胞の破壊および遠心分離の後の上清、ならびに/または(b)増殖培地から酵素を回収する工程とを含み、宿主細胞が、非哺乳動物を起源とし、例えば、大腸菌株であり、酵素が、工程(ii)において回収する際に、可溶性である。一実施形態では、酵素は、工程(ii)において回収する際に、触媒として活性な形態をとり、したがって、酵素が触媒活性(本明細書に記載するPAL様の活性)を得るためにリフォールディングのステップを必要としない。したがって、ポリペプチドをリフォールディングするステップを含まない、本発明のポリペプチドを、例えば、大腸菌中で生成するための方法が、本発明に属する。一態様では、本明細書に記載する組換えの宿主細胞、例えば、大腸菌中で生成した本発明のポリペプチドは、少なくとも50%または少なくとも80%可溶性である、すなわち、触媒活性を得るためにリフォールディングする必要がない。
【0127】
一態様では、宿主細胞は、本発明の酵素をコードする組換え核酸、精製タグおよびプロモーターを含むベクターを含む大腸菌であり、宿主細胞を、前記酵素の生成に適している条件下に保つ。
【0128】
一態様では、酵素を、陽イオン交換クロマトグラフィーの1つの工程の使用により発酵ブロスから精製し、結果として、約80%、例えば、少なくとも80%の純度を得る。
【0129】
大腸菌中では、大半の豊富に存在するタンパク質が、pI4〜7およびpI8〜10の範囲に及ぶpIのクラスター中に見出され、中でも、大半のこれらのタンパク質および最も豊富に存在するタンパク質は、pI4〜7の範囲に見出される。本発明の酵素を精製するために使用することができるTAPタグは、極めてアルカリ性であり、酵素に融合させると、酵素の全体的な正の電荷およびpIを顕著に増加させ、したがって、酵素が、宿主細胞の混入物の主要なバルクとは明らかに区別される。このことにより、酵素を、宿主細胞の混入物が所与の陽イオン交換マトリックスに結合することができない塩濃度またはpIにおいて溶出することが可能になる。一実施形態では、精製タグは、約9超、例えば、9超のpIを有する。一実施形態では、精製タグは、約10超、すなわち、10超のpIを有する。一実施形態では、精製タグのpIは、約9と約12.5との間、すなわち、9〜12.5の範囲であり、さらなる態様では、pIは、約10、すなわち、pIは、10である。
【0130】
任意の適切な陽イオン交換マトリックスを、本発明による方法において使用することができ、適切な陽イオン交換カラムの材料の非制限的なリストは、SP-Sepharose XL、Amershamカタログ番号17-5073-01;Streamline SP XL、Amershamカタログ番号17-5076-01;Streamline Direct CST、Amershamカタログ番号17-5266-03;Obelix SP、Amershamカタログ番号11-0010-86;S-Support Unosphere、BioRadカタログ番号156-0113;SP-Sepharose High Performance、Amershamカタログ番号17-1087-03;Source30S、Amershamカタログ番号17-1273-02、およびToyopearl SP650S、Toso-Haasカタログ番号08437である。
【0131】
TAPタグは、選ばれた精製タグのpIおよび電荷に応じて、特定の酵素の全体的な電荷に対する寄与が異なる。したがって、特定の標的タンパク質の精製を、最低限の量の宿主細胞の混入物のみが同時に溶出する塩濃度またはpHにおける融合タンパク質の溶出を可能にする精製タグを選ぶことによって最適化することができる。
【0132】
リンカー中のアミノ酸残基を、タグ付き酵素の構造の柔軟性を低下させるようなアミノ酸残基から選択することができる。これにより、酵素と精製タグとの間の干渉を、最小限に留めることができる。一実施形態では、リンカーは、構造要素、例として、アルファヘリックス構造を含むことができる。
【0133】
細胞が発現し、生成したタグ付き酵素を、従来からある手順により、培地から回収することができ、これらの手順は、遠心分離またはろ過により、培地から宿主細胞を分離すること、機械的な細胞破壊、例として、超音波処理または圧力により、融合タンパク質を放出させること、塩、例えば、硫酸アンモニウムにより、上清またはろ液のタンパク質性の構成成分を沈殿させることを包含する。陽イオン交換クロマトグラフィーにより捕捉する工程の後に、タグ付き酵素を、塩勾配中で溶出することができ、融合タンパク質を含有する溶出液画分を収集した。
【0134】
タグを付けない酵素として発現させた本発明のポリペプチドを、精製の手段、例えば、陰イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィーおよびゲルろ過クロマトグラフィー等により回収することができる(例えば、Scopes,R.、Protein Purification、Springer-Verlag、N.Y.、1982年を参照されたい)。
【0135】
本発明のポリペプチドの純度を、例えば、クーマシー染色したPAGEゲルを、ゲルの画像解析ソフトウエアを使用して分析すること、またはHPLCのUV214nmのクロマトグラムの分析によって評価することができる。
【0136】
最初の精製の工程の後に、精製タグを、適切なプロセシング酵素(例えば、EK)を直接用いて切断して離すことができる。塩濃度が高過ぎる場合、酵素が、切断の前に脱塩する恐れがある。切断部位は、精製した酵素を単離した後の効率的なin vitroにおける切断を可能にする任意の切断部位であり得る。最も一般に使用されているエンテロキナーゼ切断部位は、配列DDDDKを有し、切断は、Kの後で生じる。その他の非限定的なプロセシング酵素の切断部位として、第Xa因子切断部位(最も一般にはIEGRであり、切断は、Rの後で生じる)、トロンビン切断部位(最も一般にはLVPRGまたはLVPRGSであり、切断は、Rの後で生じる)、タバコエッチ病ウイルス(TEV)プロテアーゼ切断部位(最も一般にはENLYFQG/Sであり、切断は、Qの後で生じる)、およびHRV14 3Cプロテアーゼ切断部位(最も一般にはLEVLFQ/GPであり、切断は、Qの後で生じる)が挙げられる。特許出願第WO2006/108826号を参照されたい。
【0137】
切断に続く工程は、最初の工程における精製と同様の、さらなる陽イオン交換カラムによる精製を包含することができる。そのようなシナリオにおいては、プロセシング酵素が放出させた精製タグは、極めて高いpIを有し、非常に効率的な陽イオン交換マトリックスへの結合をもたらす。ここに至り、切断された酵素を、カラムからのフロースルー中に収集することができ、一方、切断して離した精製タグ、および生成に用いた細胞株由来の残りの高電荷の混入物は、陽イオン交換カラム上に保持される。
【0138】
また、切断に続く精製の工程は、その他の精製の手段、例として、陰イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィーおよびゲルろ過クロマトグラフィーも含むことができる(例えば、Scopes,R.、Protein Purification、Springer-Verlag,N.Y.、1982年を参照されたい)。
【0139】
本発明の一態様では、酵素を、少なくとも約90〜95%の均一性(すなわち、90〜95%の均一性)、少なくとも約98%の均一性(すなわち、98%の均一性)に精製する。純度は、例えば、ゲル電気泳動、アミノ酸分析またはその他のHPLCに基づく方法により評価することができる。
【0140】
また、酵素をコードする組換え核酸は、タグがあってもまたはなくても、確立された標準的な方法、例えば、BeaucageおよびCaruthers、Tetrahedron Letters 22(1981年)、1859〜1869頁が記載しているホスホラミダイト法、またはMatthesら、EMBO Journal 3(1984)、801〜805頁が記載している方法によって合成により調製することもできる。ホスホラミダイト法によれば、オリゴヌクレオチドを、例えば、自動DNA合成機中で合成し、精製し、アニールし、ライゲーションし、適切なベクター中にクローニングする。また、酵素をコードするDNA配列は、タグがあってもまたはなくても、例えば、US4,683,202、Saikiら、Science 239(1988)、487〜491頁またはSambrookら、上記に記載の、特定のプライマーを使用する、重複伸長PCRによるスプライシング等のポリメラーゼ連鎖反応により調製することもできる。
【0141】
さらに、組換え核酸は、標準的な技法に従って、合成核酸とゲノム核酸とを混合したもの、合成核酸とcDNA核酸とを混合したもの、またはゲノム核酸と、合成、ゲノムもしくはcDNAの起源の断片、すなわち、核酸コンストラクト全体の種々の部分に対応する断片をライゲーションすることによって(必要に応じて)調製したcDNA起源の核酸とを混合したものであってもよい。
【0142】
酵素をコードするDNA配列を通常、組換えベクター中に挿入し、このベクターは、任意のベクターであってよく、このベクターに対して、組換えDNAの手順を好都合に行うことができ、ベクターの選択は、ベクターを導入しようとする宿主細胞にしばしば依存する。したがって、ベクターは、自律的に複製するベクター、すなわち、染色体外の実体として存在し、その複製は、染色体の複製に依存しないベクター、例えば、プラスミドであり得る。あるいは、ベクターは、宿主細胞中に導入されると、宿主細胞のゲノム中に組み込まれ、中にベクターが組み込まれている染色体と一緒に複製されるベクターであってもよい。
【0143】
ベクターは、好ましくは、中で、酵素をコードするDNA配列が、DNAの転写に必要な追加のセグメントに作動可能に連結されている発現ベクターである。一般に、発現ベクターは、プラスミドDNAまたはウイルスDNAに由来するか、または両方のエレメントを含有することができる。用語「作動可能に連結されている」は、セグメントが、それらの意図する目的に従って、例えば、融合タンパク質等として機能する、例えば、転写が、プロモーター中で開始し、本発明のポリペプチドをコードするDNA配列を通って進行するように並ぶことを示す。
【0144】
酵素の発現において使用するための発現ベクターは、クローニングした遺伝子またはcDNAの転写を導くことが可能であるプロモーターを含む。プロモーターは、最適な宿主細胞中で転写活性を有する任意のDNA配列であってよく、宿主細胞と同種であるかまたは宿主細胞とは異種であるタンパク質をコードする遺伝子に由来することができる。
【0145】
哺乳動物細胞中でDNAの転写を導くのに適切なプロモーターの例が、SV40プロモーター(Subramaniら、Mol.Cell Biol.1(1981)、854〜864頁)、MT-1(メタロチオネイン遺伝子)プロモーター(Palmiterら、Science 222(1983)、809〜814頁)、CMVプロモーター(Boshartら、Cell 41:521〜530頁、1985年)、またはアデノウイルス2型主要後期プロモーター(KaufmanおよびSharp、Mol.Cell.Biol、2:1304〜1319頁、1982年)である。
【0146】
酵母宿主細胞中で使用するのに適切なプロモーターの例として、酵母の糖分解遺伝子由来のプロモーター(Hitzemanら、J.Biol.Chem.255(1980)、12073〜12080頁;AlberおよびKawasaki、J.Mol.Appl.Gen.1(1982)、419〜434頁)、またはアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子(Youngら、Genetic Engineering of Microorganisms for Chemicals(Hollaenderら編)、Plenum Press、New York、1982年)、もしくはTPI1(US4,599,311)、もしくはADH2-4c(Russellら、Nature 304(1983)、652〜654頁)のプロモーターが挙げられる。
【0147】
糸状性真菌の宿主細胞中で使用するのに適切なプロモーターの例は、例えば、ADH3プロモーター(McKnightら、The EMBO J.4(1985)、2093〜2099頁)、またはtpiAプロモーターである。その他の有用なプロモーターの例は、ニホンコウジカビ(A.oryzae)TAKAアミラーゼ、リゾムコル・ミエヘイ(Rhizomucor miehei)アスパラギン酸プロテイナーゼ、クロコウジカビ(A.niger)中性アルファ-アミラーゼ、クロコウジカビ酸安定性アルファ-アミラーゼ、クロコウジカビまたはアワモリコウジカビ(A.awamori)のグルコアミラーゼ(gluA)、リゾムコル・ミエヘイリパーゼ、ニホンコウジカビアルカリ性プロテアーゼ、ニホンコウジカビトリオースリン酸イソメラーゼまたは偽巣性コウジ菌(A.nidulans)アセトアミダーゼをコードする遺伝子に由来するプロモーターである。TAKA-アミラーゼのプロモーターおよびgluAのプロモーターが好ましい。適切なプロモーターは、例えば、EP238023およびEP383779に言及されている。
【0148】
細菌の宿主細胞中で使用するのに適切なプロモーターの例として、バチルス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus)マルトース生成アミラーゼ遺伝子、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)アルファ-アミラーゼ遺伝子、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)BANアミラーゼ遺伝子、枯草菌(Bacillus subtilis)アルカリ性プロテアーゼ遺伝子もしくはバチルス・プミルス(Bacillus pumilus)キシロシダーゼ遺伝子のプロモーター、またはファージラムダPRもしくはPLのプロモーター、または大腸菌中の発現のために使用するプロモーター、例えば、lac、trp、phoA、araBAD、tac、バクテリオファージT7およびcspAが挙げられる。
【0149】
また、ベクターは、選択マーカー、例えば、宿主細胞中の欠損を補足する遺伝子産物、例として、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)をコードする遺伝子もしくはシゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)TPI遺伝子(P.R.Russell、Gene 40、1985年、125〜130頁による記載がある)、または薬物、例えば、アンピシリン、カナマイシン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、ネオマイシン、ハイグロマイシンまたはメトトレキサートに対する耐性を付与するマーカー遺伝子を含むこともできる。糸状性真菌については、選択マーカーとして、amdS、pyrG、arqB、niaDおよびsCが挙げられる。
【0150】
また、酵素をコードするDNA配列を、必要であれば、適切な転写終結コドン、例として、ヒト成長ホルモン転写終結コドン(Palmiterら、Science 222、1983年、809〜814頁)、またはTPI1転写終結コドン(AlberおよびKawasaki、J.Mol.Appl.Gen.1、1982年、419〜434頁)、またはADH3転写終結コドン(McKnightら、The EMBO J.4、1985年、2093〜2099頁)に作動可能に接続することもできる。また、発現ベクターは、プロモーターからは下流に、かつ例えば、融合タンパク質等としてのポリペプチド配列自体についての挿入部位からは上流に位置付けられる一連のRNAスプライス部位を含有することもできる。好ましいRNAスプライス部位は、アデノウイルスおよび/または免疫グロブリンの遺伝子から得ることができる。また、発現ベクター中には、挿入部位の下流に位置付けられるポリアデニル化シグナルも含有される。特に好ましいポリアデニル化シグナルは、SV40由来の早期または後期のポリアデニル化シグナル(KaufmanおよびSharp、前記)、アデノウイルスの5Elb領域由来のポリアデニル化シグナル、ヒト成長ホルモン遺伝子の転写終結コドン(DeNotoら、Nucl.Acids Res.9:3719〜3730頁、1981年)を包含する。また、発現ベクターは、ウイルスの非コードリーダー配列、例として、プロモーターとRNAスプライス部位との間に位置付けられるアデノウイルス2型の三区分リーダー、およびエンハンサー配列、例として、SV40のエンハンサーを包含することもできる。
【0151】
酵素を宿主細胞の分泌経路に導くために、分泌シグナル配列(また、リーダー配列、プレプロ配列またはプレ配列としても公知である)を、組換えベクター中に提供することができる。分泌シグナル配列を、酵素をコードするDNA配列に、正しいリーディングフレームでつなぎ合わせる。分泌シグナル配列は一般に、ペプチドをコードするDNA配列に対して5'に位置する。分泌シグナル配列は、酵素と通常関連があるものであってもよく、または別の分泌タンパク質をコードする遺伝子に由来してもよい。
【0152】
酵母細胞からの分泌のために、分泌シグナル配列は、発現したポリペプチドを細胞の分泌経路中に確実に効率的に導くいずれかのシグナルペプチドをコードすることができる。シグナルペプチドは、天然に存在するシグナルペプチドもしくはその機能性の部分であってもよく、または合成のペプチドであってもよい。適切なシグナルペプチドは、アルファ因子シグナルペプチド(US4,870,008を参照)、マウス唾液アミラーゼのシグナルペプチド(O.Hagenbuchleら、Nature 289、1981年、643〜646頁を参照)、改変されたカルボキシペプチダーゼシグナルペプチド(L.A.Vallsら、Cell 48、1987、887〜897頁を参照)、酵母BAR1シグナルペプチド(WO87/02670を参照)、または酵母アスパラギン酸プロテアーゼ3(YAP3)シグナルペプチド(M.Egel-Mitaniら、Yeast 6、1990年、127〜137頁を参照)であることが見出されている。
【0153】
酵母における効率的な分泌のためにもまた、リーダーペプチドをコードする配列を、シグナル配列の下流に、かつポリペプチドをコードするDNA配列の上流に挿入することができる。リーダーペプチドの機能は、発現したペプチドが、小胞体から、ゴルジ体へ、さらに分泌ベシクルへ導かれて(すなわち、ポリペプチドの酵母細胞における、細胞壁を越えるか、または少なくとも、細胞膜を通る細胞膜周辺腔中への移出)、培地中へ分泌されるのを可能にすることである。リーダーペプチドは、酵母アルファ因子のリーダー(その使用が、例えば、US4,546,082、US4,870,008、EP16201、EP123294、EP123544およびEP163529に記載されている)であり得る。あるいは、リーダーペプチドは、合成のリーダーペプチド、すなわち、本来見出されないリーダーペプチドであってもよい。合成のリーダーペプチドは、例えば、WO89/02463またはWO92/11378の記載に従って構築することができる。
【0154】
糸状性真菌において使用するためには、シグナルペプチドは好都合には、アスペルギルス属の菌種のアミラーゼもしくはグルコアミラーゼをコードする遺伝子、リゾムコル・ミエヘイのリパーゼもしくはプロテアーゼまたはフミコーラ・ラヌギノサ(Humicola lanuginose)のリパーゼをコードする遺伝子に由来することができる。シグナルペプチドは、好ましくは、ニホンコウジカビのTAKAアミラーゼ、クロコウジカビの中性アルファ-アミラーゼ、クロコウジカビの酸安定性アミラーゼまたはクロコウジカビのグルコアミラーゼをコードする遺伝子に由来する。適切なシグナルペプチドは、例えば、EP238023およびEP215594に開示されている。
【0155】
酵素をコードするDNAを導入する宿主細胞は、本発明の酵素を生成することが可能である任意の細胞であってよく、細菌、酵母、真菌および高等真核細胞を包含する。
【0156】
培養すると、本発明のポリペプチドを生成することが可能である細菌の宿主細胞の例が、グラム陽性細菌、例として、バチルス属の株、例として、枯草菌、バチルス・リケニフォルミス(B.licheniformis)、バチルス・レンタス(B.lentus)、バチルス・ブレビス(B.brevis)、バチルス・ステアロサーモフィルス(B.stearothermophilus)、バチルス・アルカロフィルス(B.alkalophilus)、バチルス・アミノリクファシエンス(B.amyloliquefaciens)、バチルス・コアグランス(B.coagulans)、バチルス・サーキュランス(B.circulans)、バチルス・ロータス(B.lautus)、バチルス・メガテリウム(B.megatherium)もしくはバチルス・チューリンゲンシス(B.thuringiensis)の株、またはストレプトミセス属、例として、ストレプトミセス・リビダンス(S.lividans)もしくはストレプトミセス・ミュリナス(S.murinus)の株、あるいはグラム陰性細菌、例として、大腸菌の株である。細菌の形質転換は、プロトプラストの形質転換によってかまたはコンピテントな細胞を、それ自体は公知の様式で使用することによって行うことができる(Sambrookら、上記を参照)。
【0157】
適切な酵母細胞の例として、サッカロミセス属の種またはシゾサッカロミセス属の種の細胞、特に、出芽酵母またはサッカロマイセス・クルイベリ(Saccharomyces kluyveri)の株が挙げられる。酵母細胞を異種のDNAを用いて形質転換し、そこから異種のポリペプチドを生成するための方法が、例えば、US4,599,311、US4,931,373、US4,870,008、5,037,743およびUS4,845,075に記載されており、それらの全てが、参照により本明細書に組み込まれている。形質転換した細胞を、選択マーカーにより決定される表現型、すなわち、一般に、薬物耐性または特定の栄養素、例えば、ロイシンの非存在下で増殖する能力によって選択する。酵母において使用するのに好ましいベクターは、US4,931,373に開示されているPOT1ベクターである。適切な酵母細胞のさらなる例が、クリベロミセス属、例として、クリベロミセス・ラクチス(K.lactis)、ハンゼヌラ属、例えば、H.ポリモルファ(H.polymorpha)、またはピキア属、例えば、P.パストリス(P.pastoris)の株である(Gleesonら、J.Gen.Microbiol.132、1986年、3459〜3465頁;US4,882,279を参照)。
【0158】
その他の真菌細胞例が、糸状性真菌、例えば、アスペルギルス属の種、アカパンカビ属の種、フサリウム属の種またはトリコデルマ属の種の細胞、特に、ニホンコウジカビ、偽巣性コウジ菌またはクロコウジカビの株である。タンパク質の発現のためのアスペルギルス属の種の使用が、例えば、EP272277、EP238023、EP184438に記載されている。フザリウム・オキシスポラム(F.oxysporum)の形質転換を、例えば、Malardierら、1989年、Gene 78:147〜156頁による記載に従って実施することができる。トリコデルマ属の種の形質転換を、例えば、EP244234の記載に従って実施することができる。
【0159】
糸状性真菌を宿主細胞として使用する場合、この細胞を、本発明の組換え核酸を用いて、好都合には、核酸を宿主の染色体中に組み込むことによって形質転換して、組換えの宿主細胞を得ることができる。この組込みは一般に、組換え核酸が細胞中で安定に維持される可能性が高いことから、有利であるとみなされている。組換え核酸の宿主の染色体中への組込みは、従来法に従って、例えば、同種組換えまたは異種組換えにより実施することができる。
【0160】
次いで、形質転換またはトランスフェクトした宿主細胞を、適切な栄養培地中で、酵素の発現を可能にする条件下で培養し、その後、得られた酵素、例えば、タグを付けない酵素の全部または一部を、培養物から回収することができる。細胞を培養するために使用する培地は、宿主細胞を増殖するのに適している任意の従来からある培地、例として、適切な補充物質を含有する最少培地または複合培地であってよい。適切な培地は、商業的な供給元から入手可能であるか、または(例えば、American Type Culture Collectionのカタログ中に)公開されているレシピに従って調製することができる。
【0161】
本発明を、以下の項(実施形態)にさらに要約する。
1a.α-ヒドロキシグリシンからα-アミドへの変換を触媒することが可能である単離ポリペプチドであって、前記ポリペプチドが、モチーフ1、すなわち、
Xaa1 Val Xaa2 Asp Arg Xaa3 Xaa4 Xaa5 Arg Xaa6 Gln Xaa7 Xaa8 Xaa9 Xaa10 Xaa11 Gly Xaa12 Xaa13 Xaa14 Xaa15 Xaa16 Trp
を含むアミノ酸配列を有し、
Xaa1、Xaa2、Xaa3、Xaa4、Xaa5、Xaa6、Xaa7、Xaa8、Xaa9、Xaa10、Xaa11、Xaa12、Xaa13、Xaa14、Xaa15およびXaa16(Xaa1〜Xaa16)が、天然に存在するアミノ酸から独立に選択され、ただし、Xaa1およびXaa7は、Cysではないポリペプチド。
2a.Xaa4がAsnである、項1aに記載のポリペプチド。
3a.Xaa14がLeuである、項1aまたは2aに記載のポリペプチド。
4a.Xaa7が、ValまたはIleである、項1aから3aのいずれかに記載のポリペプチド。
5a.Xaa8が、PheまたはLeuである、項1aから4aのいずれかに記載のポリペプチド。
6a.Xaa9が、AspまたはSerである項1aから5aのいずれかに記載のポリペプチド。
7a.Xaa4がAsnであり、Xaa14がLeuであり、Xaa7が、ValまたはIleであり、Xaa8が、PheまたはLeuであり、Xaa9が、AspまたはSerである、項1aに記載のポリペプチド。
8a.α-ヒドロキシグリシンからα-アミドへの変換を触媒することが可能である単離ポリペプチドであって、前記ポリペプチドが、モチーフ2、すなわち、Asp Gly Tyr Xaa17 Asn Xaa18 Arg Xaa19 Xaa20 Xaa21 Phe Xaa22 Xaa23 Xaa24 Gly Xaa25 Xaa26 Xaa27 Xaa28 Xaa29 Xaa30 Xaa31 Xaa32 Xaa33 Gly Xaa34 Xaa35 Xaa36 Gly Xaa37 Phe
を含むアミノ酸配列を有し、
Xaa17、Xaa18、Xaa19、Xaa20、Xaa21、Xaa22、Xaa23、Xaa24、Xaa25、Xaa26、Xaa27、Xaa28、Xaa29、Xaa30、Xaa31、Xaa32、Xaa33、Xaa34、Xaa35、Xaa36、Xaa37(Xaa17〜Xaa37)が、天然に存在するアミノ酸から独立に選択され、ただし、Xaa17はCysではないポリペプチド。
9a.原核生物に由来する、項1aから8aのいずれかに記載のポリペプチド。
10a.前記原核生物が、エリスロバクター属、エキシグオバクテリウム属、クトニオバクター属およびプランクトマイセス属の種からなる群から選択されるか、またはエリスロバクター属、エキシグオバクテリウム属、クトニオバクター属、プランクトマイセス属、バークホルデリア属の種、アルファプロテオバクテリア綱、メタノサルキナ属の種、ソランギウム属、サリニスポラ属の種、メソリゾビウム属、ブラジリゾビウム属(Bradyrhizobium)およびソリバクター属の種からなる群から選択される、項9aに記載のポリペプチド。
11a.野生型配列である、項9aまたは10aに記載のポリペプチド。
12a.シグナルペプチドを有さない成熟配列である、項11aに記載のポリペプチド。
13a.0、1または2つのシステイン残基を含む、項1aから12aのいずれかに記載のポリペプチド。
14a.α-ヒドロキシグリシンからα-アミドへの変換を触媒することが可能である単離ポリペプチドであって、
(a)配列番号1のアミノ酸2〜306に対して少なくとも75%の同一性を示すアミノ酸配列を含むまたはからなるポリペプチド、
(b)配列番号2のアミノ酸3〜336に対して少なくとも75%の同一性を示すアミノ酸配列を含むまたはからなるポリペプチド、
(c)配列番号3のアミノ酸3〜305に対して少なくとも75%の同一性を示すアミノ酸配列を含むまたはからなるポリペプチド、および
(d)配列番号4のアミノ酸3〜279に対して少なくとも75%の同一性を示すアミノ酸配列を含むまたはからなるポリペプチド、
(e)配列番号13のアミノ酸に対して少なくとも75%の同一性を示すアミノ酸配列を含むまたはからなるポリペプチド、および
(f)配列番号15のアミノ酸に対して少なくとも75%の同一性を示すアミノ酸配列を含むまたはからなるポリペプチド
からなる群から選択されるポリペプチド。
15a.配列番号1のアミノ酸2〜306に対して少なくとも75%、例えば、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%または少なくとも98%等の同一性の程度を示すアミノ酸配列を含むまたはからなるポリペプチドである、項14aに記載のポリペプチド。
16a.配列番号2のアミノ酸3〜336に対して少なくとも75%、例えば、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%または少なくとも98%等の同一性の程度を示すアミノ酸配列を含むまたはからなるポリペプチドである、項14aに記載のポリペプチド。
17a.配列番号3のアミノ酸3〜305に対して少なくとも75%、例として、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%または少なくとも98%の同一性の程度を示すアミノ酸配列を含むまたはからなるポリペプチドである、項14aに記載のポリペプチド。
18a.配列番号4のアミノ酸3〜279に対して少なくとも75%、例えば、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%または少なくとも98%等の同一性の程度を示すアミノ酸配列を含むまたはからなるポリペプチドである、項14aに記載のポリペプチド。
19a.前記アミノ酸配列が、0、1または2つのシステイン残基を含む、項14aから18aのいずれかに記載のポリペプチド。
20a.項14aから19aのいずれかの記載と組み合わせた項1aに記載のポリペプチド。
21a.項14aから19aのいずれかの記載と組み合わせた、項2aから12aのいずれかに記載のポリペプチド。
22a.前記アミノ酸配列が、原核生物に由来する野生型アミノ酸配列と比較して、最高30個の改変を含む、項1aから13aのいずれかに記載のポリペプチド。
23a.前記アミノ酸配列が、原核生物に由来する成熟野生型PAL様酵素のアミノ酸配列と比較して、1〜30個の改変、1〜25個の改変、5〜25個の改変、1〜20個の改変、10〜20個の改変、1〜12個の改変、1〜18個の改変または12〜18個の改変の範囲の改変を含む、項1aから13aのいずれかに記載のポリペプチド。
24a.α-ヒドロキシグリシンからα-アミドへの変換を触媒することが可能である単離ポリペプチドであって、
(a)配列番号1のアミノ酸2〜306と比較して改変を有するアミノ酸配列を含むまたはからなるポリペプチド、
(b)配列番号2のアミノ酸3〜336と比較して改変を有するアミノ酸配列を含むまたはからなるポリペプチド、
(c)配列番号3のアミノ酸3〜305と比較して改変を有するアミノ酸配列を含むまたはからなるポリペプチド、および
(d)配列番号4のアミノ酸3〜279と比較して改変を有するアミノ酸配列を含むまたはからなるポリペプチド
からなる群から選択され、
前記改変が、1〜30個の改変、1〜25個の改変、5〜25個の改変、1〜20個の改変、10〜20個の改変、1〜12個の改変、1〜18個の改変または12〜18個の改変であるポリペプチド。
25a.前記改変が、配列中の1つまたは複数のアミノ酸の1つまたは複数の置換、欠失、挿入を包含する付加からなる、項22aから24aのいずれかに記載のポリペプチド。
26a.(i)α-ヒドロキシグリシンからα-アミドへの変換を触媒することが可能である酵素である単離ポリペプチドであって、酵素が原核生物に由来することを特徴とする単離ポリペプチド、
(ii)α-ヒドロキシグリシンからα-アミドへの変換を触媒することが可能である酵素である単離ポリペプチドであって、大腸菌中で可溶性タンパク質として発現できることを特徴とする単離ポリペプチド、
(iii)ペプチジル-α-ヒドロキシグリシンアルファ-アミド化リアーゼ活性を有する単離ポリペプチドであって、大腸菌中で可溶性タンパク質として発現させることができることを特徴とする単離ポリペプチド、
(iv)ペプチジル-α-ヒドロキシグリシンアルファ-アミド化リアーゼ活性を有する単離ポリペプチドであって、0、1または2つのシステイン残基を含むことを特徴とする単離ポリペプチド、
(v)ペプチジル-α-ヒドロキシグリシンアルファ-アミド化リアーゼ活性を有する単離ポリペプチドであって、システイン残基を含まないことを特徴とする単離ポリペプチド
からなる群から選択される単離ポリペプチド。
27a.酵素が、野生型酵素と比較して、最高30個の改変を含む、項26a(i)に記載のポリペプチド。
28a.前記アミノ酸配列が、前記原核生物に由来する成熟野生型PAL様酵素のアミノ酸配列と比較して、1〜30個の改変、1〜25個の改変、5〜25個の改変、1〜20個の改変、10〜20個の改変、1〜12個の改変、1〜18個の改変または12〜18個の改変に及ぶ改変を含む、項27aに記載のポリペプチド。
29a.α-ヒドロキシグリシンからα-アミドへの変換を触媒することが可能である単離ポリペプチドであって、配列番号1のアミノ酸配列2〜306を含むまたはからなるポリペプチド。
30a.α-ヒドロキシグリシンからα-アミドへの変換を触媒することが可能である単離ポリペプチドであって、配列番号2のアミノ酸配列3〜336を含むまたはからなるポリペプチド。
31a.α-ヒドロキシグリシンからα-アミドへの変換を触媒することが可能である単離ポリペプチドであって、配列番号3のアミノ酸配列3〜305を含むまたはからなるポリペプチド。
32a.α-ヒドロキシグリシンからα-アミドへの変換を触媒することが可能である単離ポリペプチドであって、配列番号4のアミノ酸配列3〜279を含むまたはからなるポリペプチド。
33a.α-ヒドロキシグリシンからα-アミドへの変換を触媒することが可能である単離ポリペプチドであって、配列番号13のアミノ酸配列を含むまたはからなるポリペプチド。
34a.α-ヒドロキシグリシンからα-アミドへの変換を触媒することが可能である単離ポリペプチドであって、配列番号15のアミノ酸配列を含むまたはからなるポリペプチド。
35a.ペプチジル-α-ヒドロキシグリシンアルファ-アミド化リアーゼ活性を有する単離ポリペプチドであって、
(i)ペプチジル-α-ヒドロキシグリシンアルファ-アミド化リアーゼ(PAL)活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸コンストラクトを含む、非哺乳動物を起源とする、組換え発現の宿主細胞を、前記ポリペプチドの発現に適している条件下で培養する工程と
(ii)ポリペプチドを、(a)細胞の破壊および遠心分離の後の上清ならびに/または(b)増殖培地から回収する工程と
を含む方法により得ることができ、
宿主細胞が、非哺乳動物を起源とし、例えば、大腸菌株等であり、ポリペプチドが、可溶性であり、工程(ii)において回収する際に、触媒活性を得るためにポリペプチドがリフォールディングのステップを必要としないという意味で、活性な形態をとっているポリペプチド。
36a.ペプチジル-α-ヒドロキシグリシンアルファ-アミド化リアーゼ活性を有する単離ポリペプチドであって、
(i)ペプチジル-α-ヒドロキシグリシンアルファ-アミド化リアーゼ(PAL)活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸コンストラクトを含む、非哺乳動物を起源とする、組換え発現の宿主細胞を、前記ポリペプチドの発現に適している条件下で培養する工程と
(ii)ポリペプチドを、(a)細胞の破壊および遠心分離の後の上清ならびに/または(b)増殖培地から回収する工程と
を含む方法により得ることができ、
宿主細胞が、非哺乳動物を起源とし、例えば、大腸菌株等であるポリペプチド。
37a.項1aをさらなる特徴とする、項35aまたは36aに記載のポリペプチド。
38a.項2aから14aのいずれかの記載をさらなる特徴とする、項35aまたは36aに記載のポリペプチド。
39a.0、1または2つのシステイン残基を含む、項365または36aに記載のポリペプチド。
40a.原核生物に由来する、項35aまたは36aまたは39aに記載のポリペプチド。
41a.前記原核生物が、エリスロバクター属、エキシグオバクテリウム属、クトニオバクター属、プランクトマイセス属、バークホルデリア属の種、アルファプロテオバクテリア綱、メタノサルキナ属の種、ソランギウム属、メソリゾビウム属、ブラジリゾビウム属、サリニスポラ属の種およびソリバクターの種からなる群から選択され、好ましくは、前記原核生物が、エリスロバクター属、エキシグオバクテリウム属、クトニオバクター属またはプランクトマイセス属の種である、項40aに記載のポリペプチド。
42a.野生型配列である、項40aまたは41aに記載のポリペプチド。
43a.シグナルペプチドを含有しない成熟野生型配列である、項42aに記載のポリペプチド。
44a.前記ポリペプチドの前記アミノ酸配列が、前記原核生物に由来する成熟野生型PAL様酵素のアミノ酸配列と比較して、1〜30個の改変、1〜25個の改変、5〜25個の改変、1〜20個の改変、10〜20個の改変、1〜12個の改変、1〜18個の改変または12〜18個の改変に及ぶ改変を含む、項40aから43aのいずれかに記載のポリペプチド。
45a.前記改変が、配列中の1つまたは複数のアミノ酸の1つまたは複数の置換、欠失、挿入を包含する付加からなる、項44aに記載のポリペプチド。
46a.前記アミノ酸配列が、前記原核生物に由来する成熟野生型PAL様酵素のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%または少なくとも98%の同一性を示す、項40aから43aのいずれかに記載のポリペプチド。
47a.ポリペプチドが、α-ヒドロキシ馬尿酸をベンズアミドに変換することができる、項1aから46aのいずれかに記載のポリペプチド。
48a.前記α-ヒドロキシグリシンが、式R-Gly(OH)のC末端-α-ヒドロキシグリシンであり、式中、Rがペプチドであり、Gly(OH)が、前記ペプチドのC末端に連結されているα-ヒドロキシグリシン残基であり、前記α-アミドが、式R-NH2を有する、項1aから46aのいずれかに記載のポリペプチド。
49a.ペプチジル-α-ヒドロキシグリシンアルファ-アミド化リアーゼ(PAL)である、項1aから46aのいずれかに記載のポリペプチド。
50a.ポリペプチドが、融合パートナーを含む、項1aから49aのいずれかに記載のポリペプチド。
51a.ポリペプチドが、TAPタグを含む、項1aから49aのいずれかに記載のポリペプチド。
52a.ポリペプチドが、例えば、固定化された金属親和性タグ(His6またはHis8)、グルタチオントランスフェラーゼタグ、抗体を用いて回収されるタグ(FLAGタグ、HAタグ、MYCタグ)、ビオチンおよびストレプトアビジンからなる群から選択された精製タグを含む、項1aから49aのいずれかに記載のポリペプチド。
53a.酵素が、融合パートナーにリンカー配列によりつながっている、項50aから52aのいずれかに記載のポリペプチド。
54a.リンカー配列が、1〜30個、1〜25個、1〜20個または1〜15個のアミノ酸を有する、項53aに記載のポリペプチド。
55a.実質的に純粋である、項1aから54aのいずれかに記載のポリペプチド。
56a.ポリペプチド調製物が、(i)重量に関して最大50%もしくは最大10%もしくは最大5%の未変性の状態に伴うかもしくは組換えに起因して伴うその他のポリペプチド材料を含有するか、または(ii)ポリペプチドが、未変性の状態に伴うかもしくは組換えに起因して伴うその他のポリペプチド材料と比較して、重量に関して少なくとも50%純粋、少なくとも90%純粋もしくは少なくとも95%純粋である、項1aから54aのいずれかに記載のポリペプチド。
57a.前記ポリペプチドが、SDS-PAGEにより決定した場合、その他のポリペプチド材料と比較して、少なくとも5%純粋、少なくとも10%純粋、少なくとも25%純粋、少なくとも50%純粋、少なくとも75%純粋、少なくとも80%純粋、少なくとも90%純粋である、項1aから54aのいずれかに記載のポリペプチド。
58a.項1aから57aまたは73aのいずれかに記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む単離ポリヌクレオチド。
59a.項58aに記載のポリヌクレオチドを含む、単離組換え核酸コンストラクト。
60a.ヌクレオチド配列が、発現の宿主中でポリペプチドの生成を導く1つまたは複数の制御配列に作動可能に連結されている、項59aに記載の核酸コンストラクト。
61a.プロモーターを含む、項60aまたは61aに記載の核酸コンストラクト。
62a.核酸が、精製タグおよび/またはリンカーをさらにコードする、項59aから61aのいずれかに記載の核酸。
63a.項59aから62aのいずれかに記載の核酸コンストラクトを含む組換え発現の宿主細胞。
64a.組換え核酸が、宿主細胞のゲノム中にかまたは宿主細胞中で自律的に複製するベクター中に存在する、項63aに記載の宿主細胞。
65a.宿主細胞が、(i)細菌または真菌、(ii)酵母、(iii)哺乳動物宿主細胞、および(iv)原核生物宿主細胞からなる群から選択される、項63aまたは64aに記載の宿主細胞。
66a.宿主細胞が大腸菌である、項63aから65aのいずれかに記載の宿主細胞。
67a.α-ヒドロキシグリシンからα-アミドへの変換を触媒することが可能である酵素を生成するための方法であって、項63aから66aのいずれかに記載の宿主細胞を、前記酵素の生成に適している条件下で維持する工程を含む方法。
68a.項1aから57aまたは73aのいずれかに記載のポリペプチドを生成する方法であって、
(i)前記ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸コンストラクトを含む宿主細胞を、ポリペプチドの生成を促す条件下で培養する工程と、(ii)ポリペプチドを回収する工程と
を含む方法。
69a.ポリペプチドを、細胞破壊後の上清から可溶性の形態で回収する、項68aに記載の方法。
70a.ペプチジル-α-ヒドロキシグリシンアルファ-アミド化リアーゼ(PAL)活性を有する酵素を生成するための方法であって、
i)酵素をコードするヌクレオチド配列を含む核酸コンストラクトを含む、非哺乳動物を起源とする、組換え発現の宿主細胞を、酵素の発現に適している条件下で培養する工程と、
ii)a)細胞の破壊および遠心分離の後の上清、ならびに/または
b)増殖培地
から酵素を回収する工程と
を含み、
宿主細胞が、非哺乳動物を起源とし、例えば、大腸菌株等であり、酵素が、工程ii)において回収する際に、可溶性である方法。
71a.酵素が、0、1または2つのCys残基を含むアミノ酸配列を有する、項70aに記載の方法。
72a.酵素が、工程ii)において回収する際に、触媒活性を得るために酵素がリフォールディングのステップを必要としないという意味で、触媒として活性な形態をとっている、項70aまたは71aに記載の方法。
73a.項70aから72aのいずれかに記載の方法により得ることができる、ペプチジル-α-ヒドロキシグリシンアルファ-アミド化リアーゼ活性を有する酵素である単離ポリペプチドであって、前記酵素が、R-Gly(OH)->R-NH2の反応を触媒することが可能であり、式中、Rがペプチドであり、Gly(OH)が、前記ペプチドのC末端に連結されているα-ヒドロキシグリシン残基であるポリペプチド。
74a.ペプチド中のC末端α-ヒドロキシグリシン残基からα-アミド残基への変換を触媒するための、項1aから57aまたは73aのいずれかに記載のポリペプチドの使用。
75a.ポリペプチドを、α-アミド化ペプチドを調製するための方法において使用する、項74aに記載の使用。
76a.前記ポリペプチドを使用する場合に、Cu2+イオンおよび/またはアスコルビン酸が存在する、項74aまたは75aに記載の使用。
77a.PHM活性を有する酵素を、α-アミド化ペプチドを調製するための方法において使用する、項74aから76aのいずれかに記載の使用。
78a.α-アミド化ペプチドを生成するための方法であって、(i)C末端グリシン残基を有する標的ペプチドを、ペプチジルグリシンアルファ-ヒドロキシル化モノオキシゲナーゼ(PHM)および項1aから57aまたは73aのいずれかに記載のポリペプチドの両方と、酵素活性に適している条件下で反応させる工程であって、前記標的ペプチドにおける、前記PHMおよび前記ポリペプチドを用いる反応を、2つの別個のステップにおいてかまたは同時に実施する工程と、(ii)C末端α-アミド化ペプチドを回収する工程とを含む方法。
79a.α-アミド化ペプチドを生成するための方法であって、
(i)原核生物宿主中で、アミド化するペプチドの前駆体(標的ペプチド)を、ペプチドの組換え発現により生成する工程であって、前記前駆体がC末端Glu残基を有する工程と、
(ii)前記前駆体を、PHM様酵素を用いて処理して、前記ペプチドのC末端α-ヒドロキシグリシンを得る工程と、
(iii)前記C末端α-ヒドロキシグリシンを、項1aから57aまたは73aのいずれかに記載のポリペプチドを用いて処理する工程と、
(iv)C末端α-アミド化ペプチドを回収する工程と
を含む方法。
80a.PHMを有する酵素のアミノ酸配列が、哺乳動物生物に由来する、項74aから79aのいずれかに記載の使用または方法。
81a.回収されるα-アミド化ペプチドが、医薬として使用するためのものである、項74aから80aのいずれかに記載の使用または方法。
82a.回収したC末端α-アミド化ペプチドを含む医薬製剤を調製する工程(iii)を含む、項81aに記載の使用または方法。
83a.前記標的ペプチドが、アミリン、神経ペプチドY(NPY)、ペプチドYY(PYY)、PYY-3-36、膵臓ポリペプチド(PP)、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)、ガストリン、カルシトニン、カルシトニン関連ペプチド(CGRP)、ガストリン放出ペプチド、バソプレシン、オキシトシン、ニューロキニンA、セクレチン、パンクレアスタチン、プロ-オピオメラノコルチン(POMC)、アルファ-メラノサイト刺激ホルモン(アルファMSH)、ガンマ-メラノサイト刺激ホルモン(ガンマ1MSH)およびアミド化ヒンジペプチド(HP-N)、またはそれらの機能性の類似体からなる群から選択される、項74aから82aのいずれかに記載の使用または方法。
84a.α-アミド化ペプチドを、以下の状態および/または疾患、すなわち、肥満、高血圧、ストレス誘発高血糖、2型糖尿病、耐糖能異常、1型糖尿病を包含する高血糖、熱傷、手術創、治療に同化作用を必要とするその他の疾患または傷害、心筋梗塞、脳卒中、冠状動脈心臓疾患、その他の心血管系障害のうちの1つの治療または予防のために、危篤状態の糖尿病患者および非糖尿病患者ならびに多発ニューロパシーの治療のために使用する、項74aから83aのいずれかに記載の使用または方法。
85a.α-ヒドロキシグリシンからα-アミドへの変換を触媒することが可能である単離ポリペプチドであって、前記ポリペプチドが、モチーフ(モチーフ2と名付ける)、すなわち、Asp Gly Tyr Xaa17 Asn Xaa18 Arg Xaa19 Xaa20 Xaa21 Phe Xaa22 Xaa23 Xaa24 Gly Xaa25 Xaa26 Xaa27 Xaa28 Xaa29 Xaa30 Xaa31 Xaa32 Xaa33 Gly Xaa34 Xaa35 Xaa36 Gly Xaa37 Pheを含むアミノ酸配列を有し、Xaa17〜Xaa37が、天然に存在するアミノ酸から独立に選択され、ただし、Xaa17はCysではないポリペプチド。
86a.原核生物に由来する、項85aに記載の単離ポリペプチド。
87a.0、1または2つのシステイン残基を含む、項85aまたは86aに記載のポリペプチド。
88a.前記α-ヒドロキシグリシンが、式R-Gly(OH)のC末端-α-ヒドロキシグリシンであり、式中、Rがペプチドであり、Gly(OH)が、前記ペプチドのC末端に連結されているα-ヒドロキシグリシン残基であり、前記α-アミドが、式R-NH2を有する、項85aから87aのいずれかに記載のポリペプチド。
89a.ペプチジル-α-ヒドロキシグリシンアルファ-アミド化リアーゼ活性を有する単離ポリペプチドであって、配列番号19のアミノ酸配列
(PNSQPNPYRTVEGWFQMPAGRTMGSTSAVFVAPGGHIWVAERCGANTCAGSDVAPLLEFDTAGKWSSFGAGMFQFPHGIWIEPDGSIWLTDGQGANGKGHQVFKFSPQGKVLMTLGKAGVAGDGPDTFNQPNAVAVSANGDVFISDGHNAGRGNARVLKYSKDGTFIKQWGGHGSGPGQFEVPHTLAFDSKGRLFVGDRANNRIQIFDQDGKFLDEWKQFGRPSGIFIDRNDAMYVTDSESTDRDGYGHNPGWKRGIRIGSAKDGSVTAFIPDPSPGAGATSAAEGVAADAKGNVYGAEVGPKDVKKYVRK、ソリバクター属の種に由来する)を含むまたはからなるポリペプチド。
90a.ペプチジル-α-ヒドロキシグリシンアルファ-アミド化リアーゼ活性を有する単離ポリペプチドであって、配列番号20のアミノ酸配列
(TVSDPAVGAIPEDRLLRPWGRLPATARIGTGITVGPTGEIALLHRAGTAFAYDAVIDTDTVVVLNPRDGTVRQTWGAGRFRSPHSITADSEGRYWVTDVSTNKITTFDAAGRQVGELGHDYPTGLETALRVRNVLSNLPCTLDEYIFARPTDVAVSADGSIVVADGYRNSRVARFDTHRVLTGQWGELGDQPAQFNIPHGVALDSNGAVYVADRRNARVQVFNADGSVRHVWHSSALGRPYDVAIGPDDAVYVLDGGDLLDENNGEQRGYVCRLSTTGRVTHRWALADQRANPHQLAIGVRGEIYVAALAGAPLWRWAPQ、サリニスポラ属の種に由来する)を含むまたはからなるポリペプチド。
91a.ペプチジル-α-ヒドロキシグリシンアルファ-アミド化リアーゼ活性を有する単離ポリペプチドであって、配列番号21のアミノ酸配列
(MLTSGHGMYITAQDDLFVVTYDAHQVLHFDPNQELVKALGTFNEPHWEAPFNHPTDVAVGAEGDIYVADGYGNAQVHRFASDGSYLNGWGTPGISAGEFSTPHAIWVLPDERVLVVDRDNDRIQVFDRNGAVLDEWRGLVRPMDIWADPEGQRIYVTEQAPRITCLDSAGVVIGRARTFGIYPHGIWGAPDGSLYVAEQGYPHQIVKYERI、バークホルデリア属の種に由来する)を含むまたはからなるポリペプチド。
92a.ペプチジル-α-ヒドロキシグリシンアルファ-アミド化リアーゼ活性を有する単離ポリペプチドであって、配列番号22のアミノ酸配列
(MLPGPSVITDGQYRYHADQHWAKLPAGQQFGPISQLAVDASNRVIVVQRDTPAVLVFSHDGTLELAWHHPKLTSVHGLCVAPDESLFIVSFDAHQVLKFSRSGELLLELGKFSSPNWIEPFNHPTDVAVANDGEIYVTDGYGNARVHRFAADGTYIGGWGQHGNKTGEFSCPHGIWIDEDVGRVLAVDRDNDRVQVFDRSGQYLSEWTGFRRPMDIWGTPNGTFYIVDQAPGLSIVDRNGRLRARARMYPTYSHGIGGDANGNLFVAAQGPSRVVRLERLDNEE、バークホルデリア属の種に由来する)を含むまたはからなるポリペプチド。
93a.ペプチジル-α-ヒドロキシグリシンアルファ-アミド化リアーゼ活性を有する単離ポリペプチドであって、配列番号23のアミノ酸配列
QLGPSDAYRTTYGWEKMPAGRALGVSSGVFPDRDGKHIWILARCGGNNCAGSDADPILKFDMAGNLVTSFGKGVLAFPHGFFIDAEGNVWVTEGAPVGDRRGDAGFKIGKGHQVFKFSPEGKLLMTLGVAGVAGDDNKHFNGPSGVAIAPNGDIWVVDGHRGGNNRVVRFSKDGKFIRAIGGGVGSESADTGRFSDPHGIAIDSAGRIFVADRGNNRIQILDPEGNFLAEWKQFGKPSGVYIDARDRIYVGDGMSTPERNPGVVPGIRVGDAKTGKVTAFIPDNEKYKQGESGVEFLAADADGNIYAGEVTRQRFGKHIPLK
を含むまたはからなるポリペプチド。
94a.ペプチジル-α-ヒドロキシグリシンアルファ-アミド化リアーゼ活性を有する単離ポリペプチドであって、配列番号19に対して少なくとも75%、例として、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%または少なくとも98%の同一性の程度を示すアミノ酸配列を含むまたはからなるポリペプチド。
95a.ペプチジル-α-ヒドロキシグリシンアルファ-アミド化リアーゼ活性を有する単離ポリペプチドであって、配列番号20に対して少なくとも75%、例として、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%または少なくとも98%の同一性の程度を示すアミノ酸配列を含むまたはからなるポリペプチド。
96a.ペプチジル-α-ヒドロキシグリシンアルファ-アミド化リアーゼ活性を有する単離ポリペプチドであって、配列番号21に対して少なくとも75%、例として、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%または少なくとも98%の同一性の程度を示すアミノ酸配列を含むまたはからなるポリペプチド。
97a.ペプチジル-α-ヒドロキシグリシンアルファ-アミド化リアーゼ活性を有する単離ポリペプチドであって、配列番号22に対して少なくとも75%、例として、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%または少なくとも98%の同一性の程度を示すアミノ酸配列を含むまたはからなるポリペプチド。
98a.ペプチジル-α-ヒドロキシグリシンアルファ-アミド化リアーゼ活性を有する単離ポリペプチドであって、配列番号23に対して少なくとも75%、例として、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%または少なくとも98%の同一性の程度を示すアミノ酸配列を含むまたはからなるポリペプチド。
99a.前記アミノ酸配列が、0、1または2つのシステイン残基を含む、項89aから98aのいずれかに記載のポリペプチド。
100a.融合パートナーを含む、項85aから99aのいずれかに記載のポリペプチド。
101a.前記ポリペプチドが、α-ヒドロキシグリシンからα-アミドへの変換を触媒することが可能であり、前記α-ヒドロキシグリシンが、式R-Gly(OH)のC末端-α-ヒドロキシグリシンであり、式中、Rがペプチドであり、Gly(OH)が、前記ペプチドのC末端に連結されているα-ヒドロキシグリシン残基であり、前記α-アミドが、式R-NH2を有する、項85aから100aのいずれかに記載のポリペプチド。
102a.項74aから84aのいずれかの定義に従う使用または方法における、項85aから101aのいずれかの記載により定義したポリペプチドの使用。
103a.項85aから101aのいずれかに記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む単離ポリヌクレオチド。
104a.項85aから101aに記載のポリヌクレオチドを含む単離組換え核酸コンストラクト。
105a.ヌクレオチド配列が、発現の宿主中でポリペプチドの生成を導く1つまたは複数の制御配列に作動可能に連結されている、項104aに記載の核酸コンストラクト。
106a.プロモーターを含む、項104aまたは105aに記載の核酸コンストラクト。
107a.核酸が、精製タグおよび/またはリンカーをさらにコードする、項104aから106aのいずれかに記載の核酸。
108a.項104aから107aのいずれかに記載の核酸コンストラクトを含む組換え発現の宿主細胞。
109a.組換え核酸が、宿主細胞のゲノム中にかまたは宿主細胞中で自律的に複製するベクター中に存在する、項108aに記載の宿主細胞。
110a.宿主細胞が、(i)細菌または真菌、(ii)酵母、(iii)哺乳動物宿主細胞、および(iv)原核生物宿主細胞からなる群から選択される、項107aまたは109aに記載の宿主細胞。
111a.宿主細胞が大腸菌である、項108aから110aのいずれかに記載の宿主細胞。
【0162】
本発明を、以下の項にさらに要約する。
1.酵素が原核生物に由来することを特徴とする、α-ヒドロキシグリシンからα-アミドへの変換を触媒することが可能である酵素。
2.酵素が、モチーフ、すなわち、Xaa1 Val Xaa2 Asp Arg Xaa3 Xaa4 Xaa5 Arg Xaa6 Gln Xaa7 Xaa8 Xaa9 Xaa10 Xaa11 Gly Xaa12 Xaa13 Xaa14 Xaa15 Xaa16 Trpを含み、Xaa1およびXaa7が、Cysを除く任意の天然に存在するアミノ酸であり得、Xaa2、Xaa3、Xaa4、Xaa5、Xaa6、Xaa8、Xaa9、Xaa10、Xaa11、Xaa12、Xaa13、Xaa14、Xaa15、Xaa16が、任意の天然に存在するアミノ酸であり得る、項1に記載の酵素。
3.Xaa4がAsnであり得る、項2に記載の酵素。
4.Xaa14がLeuであり得る、項2または3に記載の酵素。
5.Xaa7が、ValまたはIleであり得る、項2から4に記載の酵素。
6.Xaa8が、PheまたはLeuである、項2から5に記載の酵素。
7.Xaa9が、AspまたはSerであり得る、項2から6に記載の酵素。
8.エリスロバクター属、エキシグオバクテリウム属、クトニオバクター属またはプランクトマイセス属の種から単離される、項1から7に記載の酵素。
9.α-ヒドロキシ馬尿酸をベンズアミドに変換することができる、項1から3に記載の酵素。
10.野生型酵素である、項1から9に記載の酵素。
11.野生型酵素と比較して、最高30個の改変を含む、項1から5に記載の酵素。
12.1〜30個の改変を含む、項1から11に記載の酵素。
13.5〜25個の改変を含む、項1から12に記載の酵素。
14.10〜20個の改変を含む、項1から13に記載の酵素。
15.12〜18個の改変を含む、項1から14に記載の酵素。
16.少なくとも1つのCys残基が、置換されているかまたは欠失している、項1および11から15に記載の酵素。
17.融合パートナーを含む、項1から16に記載の酵素。
18.TAPタグを含む、項1から17に記載の酵素。
19.固定化された金属親和性タグ(His6またはHis8)、グルタチオントランスフェラーゼタグ、抗体を用いて回収されるタグ(FLAGタグ、HAタグ、MYCタグ)、ビオチンまたはストレプトアビジンからなる群から選択される精製タグを含む、項1から17に記載の酵素。
20.融合パートナーにリンカー配列によりつながっている、項17から19に記載の酵素。
21.リンカー配列が、1〜30個、1〜25個、1〜20個または1〜15個のアミノ酸を有する、項20に記載の酵素。
22.Xaa4がAsnであり得、Xaa14がLeuであり得、Xaa7が、ValまたはIleであり得、Xaa8が、PheまたはLeuであり、Xaa9が、AspまたはSerであり得る、項1から21のいずれかに記載の酵素。
23.α-ヒドロキシグリシンからα-アミドへの変換を触媒することが可能である、配列番号1を含む酵素。
24.α-ヒドロキシグリシンからα-アミドへの変換を触媒することが可能である、配列番号2を含む酵素。
25.α-ヒドロキシグリシンからα-アミドへの変換を触媒することが可能である、配列番号3を含む酵素。
26.α-ヒドロキシグリシンからα-アミドへの変換を触媒することが可能である、配列番号4を含む酵素。
27.α-ヒドロキシグリシンからα-アミドへの変換を触媒することが可能である配列番号13を含む酵素。
28.α-ヒドロキシグリシンからα-アミドへの変換を触媒することが可能である配列番号15を含む酵素。
29.1〜30個の改変を含む、項23から27に記載の酵素。
30.5〜25個の改変を含む、項23から28に記載の酵素。
31.10〜20個の改変を含む、項23から29に記載の酵素。
32.12〜18個の改変を含む、項23から30に記載の酵素。
33.少なくとも1つのCys残基が、置換されているかまたは欠失している、項23から31に記載の酵素。
34.ペプチド中のC末端α-ヒドロキシグリシンからα-アミドへの変換を触媒するための、項1から33のいずれかに記載の酵素の使用。
35.α-アミド化ペプチドを調製するための方法における、項34に記載の使用。
36.Cu2+イオンおよび/またはアスコルビン酸が存在する、項34から35に記載の使用。
37.PHM活性を有する酵素を、α-アミド化ペプチドを調製するための方法において使用する、項34から36に記載の使用。
38.ペプチドが、アミリン、NPY、PYY-3-36、PP、GLP-1、ガストリン、カルシトニン、ガストリン放出ペプチド、バソプレシン、オキシトシン、ニューロキニンA、セクレチン、POMC、アルファMSH、ガンマ1MSHおよびHP-N、またはそれらの機能性の類似体からなる群から選択される標的ペプチドである、項34から37に記載の使用。
39.α-アミド化ペプチドを、以下の状態、すなわち、肥満、高血圧、ストレス誘発高血糖、2型糖尿病、耐糖能異常、1型糖尿病を包含する高血糖、熱傷、手術創、治療に同化作用を必要とするその他の疾患または傷害、心筋梗塞、脳卒中、冠状動脈心臓疾患、その他の心血管系障害の治療または予防のため、危篤状態の糖尿病患者および非糖尿病患者ならびに多発ニューロパシーの治療のために使用する、項34から38に記載の使用。
40.α-アミド化ペプチドを生成するための方法であって、標的ペプチドを項1から33に記載の酵素と反応させる工程と、α-アミド化ペプチドを精製する工程とを含む方法。
41.PHM活性を有する酵素を使用する、項40に記載の方法。
42.標的ペプチドが、アミリン、NPY、PYY-3-36、PP、GLP-1、ガストリン、カルシトニン、ガストリン放出ペプチド、バソプレシン、オキシトシン、ニューロキニンA、セクレチン、POMC、アルファMSH、ガンマ1MSHおよびHP-N、またはそれらの機能性の類似体からなる群から選択される、項40から41に記載の方法。
43.項1から33のいずれかに記載の酵素をコードする単離核酸。
44.a.プロモーター、
b.項43に記載の単離核酸
を含む組換え核酸。
45.精製タグをさらにコードする、項44に記載の組換え核酸。
46.リンカーをさらにコードする、項44から45に記載の組換え核酸。
47.項44から46に記載の組換え核酸を含むベクター。
48.項44から46に記載の組換え核酸を含む宿主細胞。
49.組換え核酸が、宿主細胞のゲノム中にかまたは宿主細胞中で自律的に複製するベクター中に存在する、項48に記載の宿主細胞。
50.宿主細胞が、細菌、真菌、例えば、酵母である、項48から49に記載の宿主細胞。
51.宿主細胞が大腸菌である、項48から50に記載の宿主細胞。
52.α-ヒドロキシグリシンからα-アミドへの変換を触媒することが可能である酵素を生成するための方法であって、項47に記載の宿主細胞を、前記酵素の生成に適している条件下で維持する工程を含む方法。
【0163】
(実施例)
データベースの使用および以下の特徴づけによって同定された本発明の酵素に関するすべての実施例は、Signal P(Henrik Nielsenら、「Identification of prokaryotic and eukaryotic signal peptides and prediction of their cleavage sites」Protein Engineering 10、1〜6頁(1997))を用いて高い信頼性をもって予測されたシグナルペプチドを含有した。シグナルペプチドは、通常、成熟した機能酵素の一部ではないので、予測に従ってオリジナル配列から除去した。下記に記載する実施例1〜6における酵素は、配列GluValLeuPheGln/GlyProを認識するHRV14 3Cプロテアーゼを用いるTAP融合パートナーの除去を促進するために、GlyPro N末端伸張部分を有するように設計した。
【0164】
(実施例1)
精製タグとしてのリボソームタンパク質L9およびエリスロバクター属種SD-21由来のPAL様ドメインを有する融合タンパク質のクローニング
エリスロバクターPAL様ドメインの4つの配列変異体をクローニングして発現させ、評価した。これらの変異体は、PAL様ドメインのN末端に対する異なる融合パートナー、リンカーまたは伸長部分が発現および溶解性に影響するかどうかを評価するために作製した。
【0165】
タンパク質1
配列番号13は、エリスロバクター属種SD-21細菌に由来するPAL様ドメインをコードする。このタンパク質の分子量は33467.1Daと計算された。Gly/Serリッチで柔軟なリンカー(配列番号10)を介して耐熱性アルカリ性タンパク質(TAP)精製タグ(配列番号7)に融合すると、この融合酵素は、51231.7Daの分子量を有し、Table1(表2)に記載のタンパク質1に相当するものになる。
【0166】
タンパク質1をコードするプラスミドAを得るために、配列番号13をコードするXhol/BamHI遺伝子断片を大腸菌における発現のためにコドン最適化し、5'末端Xholおよび3'末端BamHIのクローニング部位を有する合成遺伝子断片として得る(GeneScript)。5'-末端では、リンカー(配列番号10)パートナーをコードする短い断片を、PAL様ドメイン(配列番号13)をコードするヌクレオチド断片の上流に直接導入した。
【0167】
Xhol/BamHI断片は、Ndel/Xhol断片(国際公開第2006/108826号パンフレットおよび国際公開第2008/043847号パンフレットで公開された国際特許出願に記載のT.マリティマ(T. maritima)由来のリボソームタンパク質L9(配列番号7))に含まれた精製タグをすでにコードするpET11a(Novagen)発現ベクターに、製造業者により記載の方法により、LigaFast(商標)Rapid Ligation System (Promega)を用いて、ライゲーションした。このライゲーション生成物を使用してTOP10(Invitrogen)コンピテント大腸菌細胞を形質転換し、アンピシリン寒天プレート150μg/mlを用いて、LB(Luria-Bertani)培地上で一晩インキュベートした。液体培地でのプラスミド増殖およびプラスミドの標準ミニ調製に続いて、培養陽性クローンから目的の融合タンパク質をコードするプラスミドAを得た。プラスミドAの正確なヌクレオチド配列は、T7プロモーター/ターミネーター配列特異的プライマーを用いて、DNAシークエンシングにより確認した。
【0168】
タンパク質2
リンカー領域およびエリスロバクターPAL様ドメインのN末端部分の中に小さな変化を含む約110bpのXhol/Ncol合成断片(Geneart)をプラスミドAのXhol/Ncol部位にライゲーションし、それによってタンパク質2を生じさせることにより、エリスロバクター属種SD-21のPAL様ドメイン(プラスミドB)の別の変異体を得た。タンパク質2はタンパク質1に記載のものと同じ精製タグ配列番号7を含むが、HRV14 3Cプロテアーゼ切断部位(ELTFQ)を有するリンカー(配列番号14)を有しかつPAL様ドメイン(配列番号15)のN末端中に変化を有する。この融合タンパク質の理論分子量は52092.6Daであり、HRV14 3Cプロテアーゼが遊離するPAL様ドメインについては33823.5Daである。
【0169】
タンパク質3
リンカー領域およびエリスロバクターPAL様ドメインのN末端部分の中に小さな変化を含むXhol/Ncol合成断片(Geneart)をプラスミドBのXhol/Ncol部位にライゲーションし、それによってタンパク質3を生じさせることにより、エリスロバクターPAL様ドメインの別の変異体(図1のベクターマップ上に例示したプラスミドC)を得た。タンパク質3は、配列番号7の精製タグを含むが、タンパク質2と比較して、HRV14 3Cプロテアーゼによる切断が可能であるわずかに改変されたリンカー(配列番号8)、ならびにタンパク質2と比較して4個のアミノ酸(配列番号1)およびタンパク質1と比較して1個のアミノ酸が切り詰められ、かつN末端Gly残基を含む(配列番号1)PAL様エリスロバクタードメインを有する。この融合タンパク質の理論分子量は51591.1Daであり、HRV14 3Cプロテアーゼが遊離するPAL様ドメインについては33324Daである。
【0170】
His6精製タグおよびエリスロバクター属種SD-21由来のPAL様ドメインを有する融合タンパク質のクローニング
タンパク質4
プラスミドDを得るために、ベクターCからXhol/BamHI断片を切り取り、一続きの配列番号9および10の配列をコードする融合パートナーを含むベクターにこの断片をライゲーションすることにより、エリスロバクター属種SD-21 PAL様ドメイン配列番号1の別の変異体を得た。このコードされた融合タンパク質は、エリスロバクターPAL様ドメイン配列番号1の前にN末端ヒスチジン6タグ(配列番号9)およびHRV14 3Cプロテアーゼ切断部位(配列番号12)を有するリンカーを含み、理論分子量35645.4Daを有する。
【0171】
比較分析用の真核生物PALドメインのクローニング
十分な記載のあるPALドメインと本発明において開示の細菌由来新規PAL様ドメインとを比較するために、ラット(Rattus norvegicus)(リンカー中に相違を含む、タンパク質5をコードするプラスミドEおよびタンパク質6をコードするプラスミドF)ならびにアフリカツメガエル(タンパク質7をコードするプラスミドG)のPALドメインを、基本的にタンパク質1について記載のように、同じ融合パートナー(配列番号7)を用いてクローニングし、以前に記載されている、2つのジスルフィド架橋を含有する典型的な真核生物PAL(例えば、Stoffers, D.Aら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 86:735〜739頁(1989)およびMizuno Kら、Biochem. Biophys. Res. Commun. 148:546〜552頁(1987))の発現プロファイルを評価した。
【0172】
以下のコンストラクトを作製した(Table 1(表2))。
【0173】
【表2】

【0174】
これらのヌクレオチド配列を以下に記載する。
プラスミド番号:A (エリスロバクター1):配列番号26
ATGAAAGTGATTCTGCTGCGTGATGTGCCGAAAATTGGCAAAAAAGGCGAAATCAAAGAAGTGAGCGACGGCTACGCGCGTAACTATCTGATTCCGCGTGGCTTTGCGAAAGAATATACCGAAGGCCTGGAACGTGCGATTAAACACGAAAAAGAAATCGAAAAACGCAAAAAAGAACGCGAACGTGAAGAAAGCGAAAAAATCCTGAAAGAACTGAAAAAACGTACCCATGTGGTGAAAGTGAAAGCGGGCGAAGGCGGCAAAATTTTTGGCGCGGTGACCGCGGCGACCGTGGCGGAAGAAATTAGCAAAACCACCGGCCTGAAACTGGATAAACGCTGGTTCAAACTGGACAAACCGATTAAAGAACTGGGCGAATATAGCCTGGAAGTGAGCCTGCCGGGTGGCGTGAAAGATACCATTAAAATTCGCGTGGAACGCGAAGAAAGCTCGAGCGGTGGCAGCGGCGGTAGCGGTGAAGCCCCGCCGGTTACCATCGATGAAAGCTGGCCGGATATTCCGGAAAGCGCCGTGTTTGGCGAACCGACCGCCATTGATGTGGATAGCCATGGCCATATCTTTGTGCTGCATCGTGCCGGTCGCGAATGGACCCAGCCGTTTCCGAGCGATCCGATTAGCGAACCGACCGTGTTCATGTTCGCCGCGAACGGCAAACTGCTGAGCAAATGGGGCGCGGGCGAACTGGTTATGCCGCATGGTCTGAGCATTGATGGTGATAACAAAGTGTGGATTACCGATGTGGCGCGTGAACAGGTTCTGCGTTTTACCCATGAAGGTGCGGAAGAACTGGTTCTGGGCACCCGTGGCGAAACCGGCCAGGATGAAAGCCATTTCGGCCGTCCGGCGGATGTTACCTTTGTGGGTGATCGTGTGCTGGTGGCCGATGGCTATCTGAACCGTCGTATTATGGTGTTTGATCGCGCGGGCAACTTCCTGGAACAGTGGGGTAAAGAAGGTGAAGATGCGGGCGAATTTAATCTGCCGCATGCGATCGCGGCCGATAGCGAACGTATTTATGTGGCGGATCGTGAAAACGCGCGTGTTCAGGTGCTGAGCCTGGATGGTGAACCGCTGGCCCGCTGGCGCCAGGATGGCACCGGCCATCCGTATGCCGTGAAACCGATTGGCAGCGGCTATGTTCTGGCGATTGAAGGCCGCGATCGCGCGGGTCGCAATACCGCCATTGGCCGCATTTATCGTGCGGATGGTGGCCTGGAACGTGTGTTTGATGCGGGCGTTGAACCGCATACCGGCACCAGCCTGGGCCATGATGTGGCGATTGGTCCGGATGGTAGCGCGTATATGGTCGACAACAAAGCGAATCGTGTTATTAAATTTGATCTGAGCCGCGCCGGCGTTGAAGAAGCGGATGCGGAT
プラスミド番号:B (エリスロバクター2):配列番号27
ATGAAAGTGATTCTGCTGCGTGATGTGCCGAAAATTGGCAAAAAAGGCGAAATCAAAGAAGTGAGCGACGGCTACGCGCGTAACTATCTGATTCCGCGTGGCTTTGCGAAAGAATATACCGAAGGCCTGGAACGTGCGATTAAACACGAAAAAGAAATCGAAAAACGCAAAAAAGAACGCGAACGTGAAGAAAGCGAAAAAATCCTGAAAGAACTGAAAAAACGTACCCATGTGGTGAAAGTGAAAGCGGGCGAAGGCGGCAAAATTTTTGGCGCGGTGACCGCGGCGACCGTGGCGGAAGAAATTAGCAAAACCACCGGCCTGAAACTGGATAAACGCTGGTTCAAACTGGACAAACCGATTAAAGAACTGGGCGAATATAGCCTGGAAGTGAGCCTGCCGGGTGGCGTGAAAGATACCATTAAAATTCGCGTGGAACGCGAAGAAAGCTCGAGCGGCGGCAGCGGTAGCGAAACCCTGTTTCAGGCGCGTGAAGAAGCGCCGCCGGTTACCATTGATGAAAGCTGGCCGGATATTCCGGAAAGCGCGGTGTTTGGCGAACCGACCGCGATTGATGTGGATAGCCATGGCCATATTTTTGTGCTGCATCGCGCGGGCCGCGAATGGACCCAGCCGTTTCCGAGCGATCCGATTAGCGAACCGACCGTGTTTATGTTTGCGGCGAACGGCAAACTGCTGAGCAAATGGGGCGCGGGCGAACTGGTGATGCCGCATGGCCTGAGCATTGATGGCGATAACAAAGTGTGGATTACCGATGTGGCGCGCGAACAGGTGCTGCGCTTTACCCATGAAGGCGCGGAAGAACTGGTGCTGGGCACCCGCGGCGAAACCGGCCAGGATGAAAGCCATTTTGGCCGCCCGGCGGATGTGACCTTTGTGGGCGATCGCGTGCTGGTGGCGGATGGCTATCTGAACCGCCGCATTATGGTGTTTGATCGCGCGGGCAACTTTCTGGAACAGTGGGGCAAAGAAGGCGAAGATGCGGGCGAATTTAACCTGCCGCATGCGATTGCGGCGGATAGCGAACGCATTTATGTGGCGGATCGCGAAAACGCGCGCGTGCAGGTGCTGAGCCTGGATGGCGAACCGCTGGCGCGCTGGCGCCAGGATGGCACCGGCCATCCGTATGCGGTGAAACCGATTGGCAGCGGCTATGTGCTGGCGATTGAAGGCCGCGATCGCGCGGGCCGCAACACCGCGATTGGCCGCATTTATCGCGCGGATGGCGGCCTGGAACGCGTGTTTGATGCGGGCGTGGAACCGCATACCGGCACCAGCCTGGGCCATGATGTGGCGATTGGCCCGGATGGCAGCGCGTATATGGTCGACAACAAAGCGAACCGCGTGATTAAATTTGATCTGAGCCGCGCGGGCGTGGAAGAAGCGGATGCGGAT
プラスミド番号:C (エリスロバクター3):配列番号28
ATGAAAGTGATTCTGCTGCGTGATGTGCCGAAAATTGGCAAAAAAGGCGAAATCAAAGAAGTGAGCGACGGCTACGCGCGTAACTATCTGATTCCGCGTGGCTTTGCGAAAGAATATACCGAAGGCCTGGAACGTGCGATTAAACACGAAAAAGAAATCGAAAAACGCAAAAAAGAACGCGAACGTGAAGAAAGCGAAAAAATCCTGAAAGAACTGAAAAAACGTACCCATGTGGTGAAAGTGAAAGCGGGCGAAGGCGGCAAAATTTTTGGCGCGGTGACCGCGGCGACCGTGGCGGAAGAAATTAGCAAAACCACCGGCCTGAAACTGGATAAACGCTGGTTCAAACTGGACAAACCGATTAAAGAACTGGGCGAATATAGCCTGGAAGTGAGCCTGCCGGGTGGCGTGAAAGATACCATTAAAATTCGCGTGGAACGCGAAGAAAGCTCGAGCGGCGGCAGCGGTAGCGAAGTGCTGTTTCAGGGCCCGCCGGTTACCATTGATGAAAGCTGGCCGGATATTCCGGAAAGCGCGGTGTTTGGCGAACCGACCGCGATTGATGTGGATAGCCATGGCCATATCTTTGTGCTGCATCGTGCCGGTCGCGAATGGACCCAGCCGTTTCCGAGCGATCCGATTAGCGAACCGACCGTGTTCATGTTCGCCGCGAACGGCAAACTGCTGAGCAAATGGGGCGCGGGCGAACTGGTTATGCCGCATGGTCTGAGCATTGATGGTGATAACAAAGTGTGGATTACCGATGTGGCGCGTGAACAGGTTCTGCGTTTTACCCATGAAGGTGCGGAAGAACTGGTTCTGGGCACCCGTGGCGAAACCGGCCAGGATGAAAGCCATTTCGGCCGTCCGGCGGATGTTACCTTTGTGGGTGATCGTGTGCTGGTGGCCGATGGCTATCTGAACCGTCGTATTATGGTGTTTGATCGCGCGGGCAACTTCCTGGAACAGTGGGGTAAAGAAGGTGAAGATGCGGGCGAATTTAATCTGCCGCATGCGATCGCGGCCGATAGCGAACGTATTTATGTGGCGGATCGTGAAAACGCGCGTGTTCAGGTGCTGAGCCTGGATGGTGAACCGCTGGCCCGCTGGCGCCAGGATGGCACCGGCCATCCGTATGCCGTGAAACCGATTGGCAGCGGCTATGTTCTGGCGATTGAAGGCCGCGATCGCGCGGGTCGCAATACCGCCATTGGCCGCATTTATCGTGCGGATGGTGGCCTGGAACGTGTGTTTGATGCGGGCGTTGAACCGCATACCGGCACCAGCCTGGGCCATGATGTGGCGATTGGTCCGGATGGTAGCGCGTATATGGTCGACAACAAAGCGAATCGTGTTATTAAATTTGATCTGAGCCGCGCCGGCGTTGAAGAAGCGGATGCGGAT
プラスミド番号:D (エリスロバクター4):配列番号29
ATGGGCAGCAGCCATCATCATCATCATCACTCGAGCGGCGGCAGCGGTAGCGAAGTGCTGTTTCAGGGCCCGCCGGTTACCATTGATGAAAGCTGGCCGGATATTCCGGAAAGCGCGGTGTTTGGCGAACCGACCGCGATTGATGTGGATAGCCATGGCCATATCTTTGTGCTGCATCGTGCCGGTCGCGAATGGACCCAGCCGTTTCCGAGCGATCCGATTAGCGAACCGACCGTGTTCATGTTCGCCGCGAACGGCAAACTGCTGAGCAAATGGGGCGCGGGCGAACTGGTTATGCCGCATGGTCTGAGCATTGATGGTGATAACAAAGTGTGGATTACCGATGTGGCGCGTGAACAGGTTCTGCGTTTTACCCATGAAGGTGCGGAAGAACTGGTTCTGGGCACCCGTGGCGAAACCGGCCAGGATGAAAGCCATTTCGGCCGTCCGGCGGATGTTACCTTTGTGGGTGATCGTGTGCTGGTGGCCGATGGCTATCTGAACCGTCGTATTATGGTGTTTGATCGCGCGGGCAACTTCCTGGAACAGTGGGGTAAAGAAGGTGAAGATGCGGGCGAATTTAATCTGCCGCATGCGATCGCGGCCGATAGCGAACGTATTTATGTGGCGGATCGTGAAAACGCGCGTGTTCAGGTGCTGAGCCTGGATGGTGAACCGCTGGCCCGCTGGCGCCAGGATGGCACCGGCCATCCGTATGCCGTGAAACCGATTGGCAGCGGCTATGTTCTGGCGATTGAAGGCCGCGATCGCGCGGGTCGCAATACCGCCATTGGCCGCATTTATCGTGCGGATGGTGGCCTGGAACGTGTGTTTGATGCGGGCGTTGAACCGCATACCGGCACCAGCCTGGGCCATGATGTGGCGATTGGTCCGGATGGTAGCGCGTATATGGTCGACAACAAAGCGAATCGTGTTATTAAATTTGATCTGAGCCGCGCCGGCGTTGAAGAAGCGGATGCGGAT
プラスミド番号:E (ラット1):配列番号30
ATGAAAGTGATTCTGCTGCGTGATGTGCCGAAAATTGGCAAAAAAGGCGAAATCAAAGAAGTGAGCGACGGCTACGCGCGTAACTATCTGATTCCGCGTGGCTTTGCGAAAGAATATACCGAAGGCCTGGAACGTGCGATTAAACACGAAAAAGAAATCGAAAAACGCAAAAAAGAACGCGAACGTGAAGAAAGCGAAAAAATCCTGAAAGAACTGAAAAAACGTACCCATGTGGTGAAAGTGAAAGCGGGCGAAGGCGGCAAAATTTTTGGCGCGGTGACCGCGGCGACCGTGGCGGAAGAAATTAGCAAAACCACCGGCCTGAAACTGGATAAACGCTGGTTCAAACTGGACAAACCGATTAAAGAACTGGGCGAATATAGCCTGGAAGTGAGCCTGCCGGGTGGCGTGAAAGATACCATTAAAATTCGCGTGGAACGCGAAGAAAGCTCGAGCGGGAGCGGCGAAGTTCTGTTTCAGGGCGATTTTCATGTGGAAGAGGAACTGGATTGGCCGGGTGTTTATCTGCTGCCGGGGCAGGTGAGCGGCGTTGCCCTGGATAGTAAAAACAACCTGGTGATTTTCCACCGTGGAGATCATGTGTGGGATGGTAACTCATTCGATAGCAAATTTGTCTATCAGCAGCGCGGCCTGGGTCCTATTGAAGAAGATACCATCCTGGTTATCGATCCGAATAATGCGGAAATTCTGCAAAGTTCTGGAAAAAACCTGTTCTACCTGCCTCATGGGCTGAGCATCGATACCGATGGTAACTACTGGGTTACCGATGTAGCCCTGCATCAGGTCTTCAAACTGGACCCACATTCAAAAGAAGGTCCGCTGCTGATTCTGGGACGTTCTATGCAGCCTGGCAGCGATCAGAACCATTTTTGCCAACCAACAGATGTCGCCGTGGAGCCGTCGACTGGTGCTGTGTTTGTGTCGGACGGCTACTGTAACTCCCGTATCGTCCAGTTTAGCCCGTCAGGTAAATTTGTTACACAGTGGGGCGAAGAGTCGTCTGGCTCTAGTCCGCGCCCGGGCCAGTTTTCGGTGCCGCATAGCCTGGCCCTGGTGCCGCATCTGGACCAGCTGTGTGTGGCCGACCGTGAGAACGGCCGCATTCAATGCTTTAAAACTGATACAAAGGAATTTGTTCGCGAAATTAAACACGCCAGCTTTGGACGTAATGTTTTCGCGATTTCATACATTCCAGGCTTTCTGTTTGCAGTCAACGGCAAACCATATTTTGGCGATCAGGAACCGGTACAGGGTTTTGTTATGAATTTTTCATCGGGCGAAATTATTGATGTTTTTAAACCTGTGCGCAAACATTTCGATATGCCACATGATATTGTGGCTAGCGAGGACGGTACGGTTTATATTGGGGATGCGCACACGAACACCGTGTGGAAATTCACCCTGACCGAAAAAATGGAACACCGTTCGGTC
プラスミド番号:F (ラット2):配列番号31
ATGAAAGTGATTCTGCTGCGTGATGTGCCGAAAATTGGCAAAAAAGGCGAAATCAAAGAAGTGAGCGACGGCTACGCGCGTAACTATCTGATTCCGCGTGGCTTTGCGAAAGAATATACCGAAGGCCTGGAACGTGCGATTAAACACGAAAAAGAAATCGAAAAACGCAAAAAAGAACGCGAACGTGAAGAAAGCGAAAAAATCCTGAAAGAACTGAAAAAACGTACCCATGTGGTGAAAGTGAAAGCGGGCGAAGGCGGCAAAATTTTTGGCGCGGTGACCGCGGCGACCGTGGCGGAAGAAATTAGCAAAACCACCGGCCTGAAACTGGATAAACGCTGGTTCAAACTGGACAAACCGATTAAAGAACTGGGCGAATATAGCCTGGAAGTGAGCCTGCCGGGTGGCGTGAAAGATACCATTAAAATTCGCGTGGAACGCGAAGAAAGCTCGAGCGGGGGTAGCGGCGGCTCTGGCGATTTTCATGTGGAAGAGGAACTGGATTGGCCGGGTGTTTATCTGCTGCCGGGGCAGGTGAGCGGCGTTGCCCTGGATAGTAAAAACAACCTGGTGATTTTCCACCGTGGAGATCATGTGTGGGATGGTAACTCATTCGATAGCAAATTTGTCTATCAGCAGCGCGGCCTGGGTCCTATTGAAGAAGATACCATCCTGGTTATCGATCCGAATAATGCGGAAATTCTGCAAAGTTCTGGAAAAAACCTGTTCTACCTGCCTCATGGGCTGAGCATCGATACCGATGGTAACTACTGGGTTACCGATGTAGCCCTGCATCAGGTCTTCAAACTGGACCCACATTCAAAAGAAGGTCCGCTGCTGATTCTGGGACGTTCTATGCAGCCTGGCAGCGATCAGAACCATTTTTGCCAACCAACAGATGTCGCCGTGGAGCCGTCGACTGGTGCTGTGTTTGTGTCGGACGGCTACTGTAACTCCCGTATCGTCCAGTTTAGCCCGTCAGGTAAATTTGTTACACAGTGGGGCGAAGAGTCGTCTGGCTCTAGTCCGCGCCCGGGCCAGTTTTCGGTGCCGCATAGCCTGGCCCTGGTGCCGCATCTGGACCAGCTGTGTGTGGCCGACCGTGAGAACGGCCGCATTCAATGCTTTAAAACTGATACAAAGGAATTTGTTCGCGAAATTAAACACGCCAGCTTTGGACGTAATGTTTTCGCGATTTCATACATTCCAGGCTTTCTGTTTGCAGTCAACGGCAAACCATATTTTGGCGATCAGGAACCGGTACAGGGTTTTGTTATGAATTTTTCATCGGGCGAAATTATTGATGTTTTTAAACCTGTGCGCAAACATTTCGATATGCCACATGATATTGTGGCTAGCGAGGACGGTACGGTTTATATTGGGGATGCGCACACGAACACCGTGTGGAAATTCACCCTGACCGAAAAAATGGAACACCGTTCGGTC
プラスミド番号:G (アフリカツメガエル):配列番号32
ATGAAAGTGATTCTGCTGCGTGATGTGCCGAAAATTGGCAAAAAAGGCGAAATCAAAGAAGTGAGCGACGGCTACGCGCGTAACTATCTGATTCCGCGTGGCTTTGCGAAAGAATATACCGAAGGCCTGGAACGTGCGATTAAACACGAAAAAGAAATCGAAAAACGCAAAAAAGAACGCGAACGTGAAGAAAGCGAAAAAATCCTGAAAGAACTGAAAAAACGTACCCATGTGGTGAAAGTGAAAGCGGGCGAAGGCGGCAAAATTTTTGGCGCGGTGACCGCGGCGACCGTGGCGGAAGAAATTAGCAAAACCACCGGCCTGAAACTGGATAAACGCTGGTTCAAACTGGACAAACCGATTAAAGAACTGGGCGAATATAGCCTGGAAGTGAGCCTGCCGGGTGGCGTGAAAGATACCATTAAAATTCGCGTGGAACGCGAAGAAAGCTCGAGCGGGAGCGGCGAAGTTCTGTTTCAGGGCGATGTGCATCTGGAAGAAGATACCGACTGGCCGGGTGTGAACCTTAAAGTGGGCCAGGTGAGCGGGCTAGCCCTGGACCCGAAAAACAACCTGGCCATTTTTCATCGTGGCGATCATGTGTGGGATGAAAACAGCTTTGATCGCAACTTTGTGTATCAGCAGCGTGGCATTGGCCCGATTCAGGAAAGCACCATTCTGGTTGTTGATCCGAGCAGCAGCAAAGTGCTGAAAAGCACCGGCAAAAACCTGTTTTTTCTGCCGCATGGCCTGACCATTGATCGTGATGGCAACTATTGGGTGACCGATGTGGCGCTGCATCAGGTGTTTAAACTGGGTGCGGGCAAAGAAACCCCGCTGCTGGTGCTGGGTCGTGCGTTTCAGCCGGGCAGCGATCGTAAACATTTTTGCCAGCCGACCGATGTTGCGGTTGATCCGATTACCGGCAACTTTTTTGTGGCGGATGGCTATTGCAACAGCCGTATTATGCAGTTTAGCCCGAACGGCATGTTTATTATGCAGTGGGGCGAAGAAACCAGCAGCAACGTGCCGCGTCCGGGCCAGTTTCGTATTCCGCACAGCCTGACCATGGTGCCGGATCAGGGCCAGCTGTGCGTGGCGGATCGTGAAAACGGCCGTATTCAGTGCTTTCATGCGGAAACCGGCAATTTTGTGAAACAAATCAAACATCAGGAATTTGGCCGCGAAGTTTTTGCGGTGAGCTATGCGCCGGGTGGTGTGCTGTATGCGGTGAACGGCAAACCGTATTATGGCTATAGCGCACCGGTGCAGGGCTTTATGCTGAACTTTAGCAACGGCGATATTCTGGATACCTTTATTCCGGCGCGTAAAAACTTTGATATGCCGCATGATATTGCGGCAGCGGATGATGGCACCGTGTATGTGGGCGATGCGCATGCGAACGCGGTGTGGAAATTTAGCCCGAGCAAAGCGGAACATCGGTCCGTG
【0175】
コンストラクトの発現
正確なDNA配列を有するプラスミドを大腸菌発現株BL21(DE3)に形質転換し、LB/アンピシリンプレート上で一晩培養した。プラスミドを有するBL21(DE3)宿主細胞をLB培地中で増殖させ、T7/IPTG発現系を用いてタンパク質発現を誘導した。
【0176】
融合コンストラクトをコードするプラスミドを用いて形質転換した大腸菌BL21(DE3)細胞を、LB/アンピシリン培地中37℃で、約0.4〜0.6の光学密度(OD600nm)までシェーカーフラスコを用いて増殖させた。試験誘導温度を18℃または30℃とした場合には、それに応じて温度を約30分間18℃または30℃に低下させ、0.5mM IPTGを3時間培養物に添加した。タンパク質誘導の後、培養物をペレット化し、25mM NaP04 pH7緩衝液中で超音波処理により細胞を溶解した。誘導細胞および非誘導細胞を含有する、試料緩衝液中の溶解物試料ならびに誘導細胞の可溶性および不溶性の分画(25mM NaP04 pH7からなる緩衝液中での超音波処理および遠心分離により得た)についてSDS-PAGE分析を実施した。この分析を実施して変異体の発現レベルおよび溶解性を評価した。
【0177】
エリスロバクター変異体の発現プロファイルならびにラットおよびアフリカツメガエルに由来する十分な記載のある真核生物PALドメインとの比較
1Lのバッフル付シェーカーフラスコ中で30℃にて3時間、BL21(DE3)中のプラスミドから発現する際には、エリスロバクタータンパク質変異体であるタンパク質3、タンパク質1またはタンパク質2は、約50kDaの推定分子量および極めて類似した発現レベルを示した。一貫して高い溶解度(約80%)が中性pHで観察された(25mM NaP04 pH7を含有する緩衝液中、図2Aにタンパク質2について例示した)。
【0178】
タンパク質1と同じN末端タグおよびリンカーを用いるラット由来PAL(タンパク質6)またはアフリカツメガエルPAL(タンパク質7)について、同じ発現レベルが観察された。しかしながら、エリスロバクターPAL様ドメインとは対照的に、同じ発現条件を用いると、ラットおよびアフリカツメガエルに由来するPALドメインは一貫して不溶性タンパク質を生じた(図2Bにタンパク質6について例示した)。異なるリンカーを有するラットPAL(タンパク質5)は発現プロファイルを変化させなかったが、同じ発現条件を用いると、不溶性タンパク質を依然として生じた。18℃、30℃または37℃での発現条件における発現プロファイルの比較(タンパク質6に対するタンパク質3)により、エリスロバクタータンパク質は3つの温度すべてで可溶性タンパク質であるが、ラットPALは3つの温度すべてで不溶性であることが示された。これは、発現の間に凝集物を作る可能性が高い真核生物PALと比較して、ジスルフィド架橋を含有しない原核生物PALを発現させることの利点を示す。エリスロバクターPAL様ドメインはまた、PALタンパク質のN末端の5アミノ酸領域中およびリンカー領域中に変異があっても、可溶性融合タンパク質として作製することができる。
【0179】
エリスロバクタータンパク質のHisタグ付き変異体(タンパク質4)は、発現させた場合、30℃および37℃の両方で可溶性タンパク質を生じ、したがって、エリスロバクタータンパク質の高い溶解性は、使用するN末端融合タグの性質には依存せず、むしろタンパク質の固有の性質であることが実証された。
【0180】
配列番号7タグ付きエリスロバクターPAL様融合タンパク質のSP Sepharose FFによる精製
上記のように、1〜2Lのバッフル付シェーカーフラスコ中で30℃にて3時間、PAL様酵素(タンパク質1、タンパク質2もしくはタンパク質3)またはラットPAL(タンパク質6)を発現させた後に、SP Sepharose FF 5mlカラムを用いる陽イオン交換クロマトグラフィーによる精製を、以下に記載のように実施した。
【0181】
酵素変異体の細胞培養物ペレット(OD600:約1.6〜1.8の培養物80mlに由来)を、全量20mlの25mM NaP04 pH7緩衝液中で超音波処理により破壊した。細胞片は、遠心分離(4000rpm、15分間)により沈殿させた。上清を無菌濾過(0.45uMフィルター)し、25mM NaP04 pH7緩衝液で全容量40mlまで希釈し、タンパク質アプリケーションを得た。精製はAKTA explorer 100精製システム(GE Healthcare)を用いて実施した。カラム容量5mlのプレパックSP Sepharose FF HiTrapカラム(GE Healthcare、製品番号:17-5157-01)を用い、下記の緩衝液により流速3ml/minで分離した。
緩衝液A: 50mMリン酸ナトリウム、pH7
緩衝液B: 50mMリン酸ナトリウム、pH7 + 1M NaCl
【0182】
7カラム容量の緩衝液Aで最初にカラムを平衡化した。アプリケーションを負荷した後、7カラム容量の緩衝液Aを用いて洗浄することにより未結合タンパク質を除去した。緩衝液Bの0〜100%直線グラジエント20カラム容量を用いて、カラムから酵素を溶出した。
【0183】
アプリケーション、フロースルー分画、およびグラジエント内で溶出したタンパク質が占める分画をSDS-PAGEにより分離し、ゲルをクーマシーブリリアントブルー染色またはLC-MS分析により分析した。
【0184】
タンパク質1、タンパク質2またはタンパク質3はいずれも、約0.3M NaClの塩濃度において単一ピークでカラムから溶出し、このピークは、SDS-PAGEによれば約80%の高純度を示した(図3AおよびBにタンパク質3について例示した)。多量のタンパク質はフロースルー分画中には観察されず、エリスロバクター変異体はすべて、SP Sepharose FFカラムに効果的に捕捉されることが示された。
【0185】
これと対照的に、試料の調製および精製のために正確に同じ条件を用いて、ラット(タンパク質6)またはアフリカツメガエルPAL(タンパク質7)融合タンパク質を精製する試みは失敗し、真核生物PALは、大腸菌中の発現において不正確にフォールディングされたコンフォメーションを取り、それによって、陽イオンクロマトグラフィーによる精製が容易ではなくなることが示された。
【0186】
溶出エリスロバクターPAL様酵素を含有する分画を一緒にプールし、Vivaspin MWCO10.000カラム(Vivaspin)を用いて、製造業者の説明書に従い、50mM Tris pH7.5を含有する緩衝液中で濃縮および脱塩を行った。グリセロールを全濃度10%まで添加し、使用するまで酵素を20℃で保存した。
【0187】
精製タグなしの成熟エリスロバクターPAL様(配列番号1)の精製およびLC-MS分析
TAPタグ付きHRV14 3Cプロテアーゼによる切断
タンパク質3から精製タグを除去するために、50mM Tris HCl pH7.5、10%グリセロール緩衝液、1mM TCEPの中に存在する融合タンパク質約1.5mgを、TAPタグ付きHRV14 3Cプロテアーゼ(国際公開第2008/043847号パンフレットから)を用いて、反応容量3ml、酵素対基質比1:25で30℃にて一晩切断した(NanoDrop2000、Thermo Scientificを用いて、製造業者の説明書に従いタンパク質濃度を測定した後、比を評価した)。クーマシー染色SDS-PAGEゲルおよびLC-MS分析を用いて、以下のプロトコールにより酵素切断が起こったことを確認した。LC-MSD_TOF(Agilent technologies)機器を、製造業者が推奨するMSセッティングと共に使用して、分析用Poroshell 300SB-C8、Micro Bore 1.0×75mm、5ミクロン(Agilent Technologies)カラムを用い、流速0.3ml/分およびカラム温度40℃の標準的HPLC条件で試料を分析した。グラジエント溶出は20分で形成され、8.8mMギ酸アンモニウムを含有する0.1%ギ酸水溶液(緩衝液A)およびアセトニトリル(緩衝液B)を用いて以下のとおり実施した。
【0188】
【表3】

【0189】
タンパク質3の一晩HRV14 3Cプロテアーゼ消化物のLC-MS分析により、遊離されたPAL様ドメイン(配列番号1、計算質量33323.97Da)ならびに遊離された精製タグおよびHRV14 3Cリンカー(配列番号7 + 配列番号8、計算質量18285.18Da)に対応する、33323Daおよび18284.78Daと測定される2つの断片が得られた。目に見える分解産物は、未切断の対照でも、また消化物でもSDS-PAGE分析によって観察されず、成熟PAL様ドメインおよび融合タンパク質の両方とも安定性が高いことが示された。
【0190】
Q-sepharose HPによる成熟ドメインの精製
遊離された成熟PALドメインを含有する消化物を、25mM NaP04 pH7を用いて1:3に希釈して、試料アプリケーションを、1mlのHiTrap Q Sepharose High Performance(HP)陰イオン交換カラム(GE Healthcare 17-1153-01)に負荷し、AKTA Explorer 100システム(GE Healthcare)を用いて、以下の精製緩衝液により分離した。
緩衝液A: 50mMリン酸ナトリウム、pH 7
緩衝液B: 50mMリン酸ナトリウム、pH7 + 1M NaCl
【0191】
7カラム容量の緩衝液Aで最初にカラムを平衡化した。アプリケーションを負荷した後、7カラム容量の緩衝液Aを用いて洗浄することにより未結合タンパク質を除去した。緩衝液Bの0〜100%直線グラジエント20カラム容量を用いて、カラムから酵素を溶出した。
【0192】
NaCl濃度約0.3Mのグラジエント内に、単一ピークが観察された。
【0193】
アプリケーション、フロースルー分画および溶出タンパク質をカバーする分画のSDS-PAGEにより、精製タグおよびHRV14 3Cリンカーに相当する、配列番号7 + 配列番号8の遊離された断片がフロースルー中に存在し、遊離されたPAL様ドメイン(配列番号1)がグラジエントにより溶出された単一の主要ピーク中に存在することが示された。溶出タンパク質の純度は約90%であると評価され、成熟PAL様ドメインは、わずか2つのクロマトグラフィーステップで高純度に精製できることが示された。
【0194】
溶出された成熟酵素(配列番号1)を含有する分画は一緒にプールし、Vivaspin MWCO 10.000Daカラム(Vivaspin)を用いて、50mM Tris、pH7.5、10%グリセロールを含有する緩衝液中で濃縮および脱塩を行い、使用するまで20℃で保存した。
【0195】
実施例1は、PALタンパク質のN末端の5アミノ酸領域に変異があっても本発明のPAL酵素を可溶性タンパク質として作製できることを示す。
【0196】
(実施例2)
クローニング、精製タグとしてのリボソームタンパク質L9およびエキシグオバクテリウム属種(株ATCC BAA-1283/AT1b)由来のPAL様ドメインを有する発現融合タンパク質、ならびに融合タンパク質および成熟PAL様ドメインの精製
タンパク質8は、N末端精製タグ(配列番号7)およびHRV14 3Cプロテアーゼ部位を含有するリンカー(配列番号8)と連結したエキシグオバクテリウム(Exiguibacterium)PAL様ドメイン(配列番号2)である。この融合タンパク質の計算分子量は56.115Daであり、成熟PAL様ドメインの計算分子量は37848.5Daである。
【0197】
下記のコンストラクトを作製した。
【表4】

【0198】
プラスミド番号: H (エキシグオバクテリウム): 配列番号33
ATGAAAGTGATTCTGCTGCGTGATGTGCCGAAAATTGGCAAAAAAGGCGAAATCAAAGAAGTGAGCGACGGCTACGCGCGTAACTATCTGATTCCGCGTGGCTTTGCGAAAGAATATACCGAAGGCCTGGAACGTGCGATTAAACACGAAAAAGAAATCGAAAAACGCAAAAAAGAACGCGAACGTGAAGAAAGCGAAAAAATCCTGAAAGAACTGAAAAAACGTACCCATGTGGTGAAAGTGAAAGCGGGCGAAGGCGGCAAAATTTTTGGCGCGGTGACCGCGGCGACCGTGGCGGAAGAAATTAGCAAAACCACCGGCCTGAAACTGGATAAACGCTGGTTCAAACTGGACAAACCGATTAAAGAACTGGGCGAATATAGCCTGGAAGTGAGCCTGCCGGGTGGCGTGAAAGATACCATTAAAATTCGCGTGGAACGCGAAGAAAGCTCGAGCGGCGGCAGCGGTAGCGAAGTGCTGTTTCAGGGTCCGCGTACCGATCCGATTTTTAAAGATGAATATGATGAAAAAGCCAAAAGCAGCCGTTATACCAGCAGCTGGGTTTGGCCTGAAAAAGATAGCGTTAGCCATCGTGGTGGTGAAGGTAGCGGTGTTAGCACCAGCCCGAGCGGTTATGTTTATTATCTGCATCGTGGTGATGGTAGCTATGCAAATGAAGAACTGATTACCACCCCGACCATTACCGTTTTTGATCCGAATACCAATGAAATTGTGGATGAATTTGGCGATAACCTGTTTCAGTCTCCGCATGGTATTGAAGTTGATAGCCAGAATAATATTTGGGTGACCGATATTATGCTGAATAAAGTGTTTAAACTGGATGAACGTGGTAATGTTCTGGCCACCTTTGGTGATGATTATCGTCTGGGCACCGAAACCAGCCTGCGTATTCGTAATGAACTGCCGAATTTTCCGGTTCCGATGAATGAATACACCTTTGCACGTCCGACCGATGTTACCGTTATGGAAGATGGCAGCTTTATTGTTGCAGATGGCTATCGCAATCATCGTATTGTGAAATTTAATCGTGATGGCAATATTCAGTGGGAAGTTGATGCATATGGTAGCTCTGATGGCGAATTTAATCTGCCGCATGGCATTACCCATGATCAGAGCGGCAATATTTATGTTGCCGATCGCAATAATGCACGTATTCAGGTGTTTGATCAGGATGGTCAGCATCTGAGCACCTGGGATGATACCGAAATTGGCCGTCCTTATGGAATCGATGCAGGCAATGATGGTAATATTTATCTGGTGGATGGTGGCGATTATCTGAATGGTGAACGTGAAACCCCGAAAAGCCAGATTGTTGTTCTGAGCCCGAAAGGTGAAGTTATTGAACGTTTTGGTAGCTGGGGTAACAAAATGGGTCAGCTGCGTATTCCGCATGATCTGACCGTGCTGGAAGATGGTACAATTTTTGTTGCCGAACTGCTGAATGAACGTCTGCAGAAATTTACCATTACCGAA
【0199】
タンパク質8をコードするプラスミドHは、リンカーおよびPAL様領域をコードする合成Xhol/BamHI断片を、TAPタグ(配列番号7)をすでにコードするpET11にライゲーションし、実施例1に記載の確認ステップを実施することにより得た。30℃で3時間の発現およびSDS-PAGE分析を、実施例1に記載のように実施した。
【0200】
タンパク質8の発現レベルは、エリスロバクター変異体に極めて類似していた。タンパク質は、この場合も高度に可溶性であり、細胞溶解物の不溶性分画にはタンパク質をほとんど検出しなかった。
【0201】
陽イオン交換による捕捉、HRV14 3Cによる切断、および成熟エキシグオバクテリウム(Exiguobacteriaum)PAL様ドメインの精製は、基本的に実施例1に記載のように実施した。SP Sepharose FFによる捕捉に続いて、NaCl濃度約0.25Mで主要ピークが溶出し、SDS-PAGE分析に基づくと、精製融合タンパク質の初期純度が約80%であるように、その捕捉は極めて効果的であった。
【0202】
プールして濃縮した融合タンパク質のHRV14 3Cプロテアーゼによる切断(酵素対基質比1:25を用いて一晩)に続いて、成熟エキシグオバクテリウムPAL様タンパク質(配列番号2)の精製を実施例1に記載のものと同じ効率で実施した。成熟PAL様ドメインはNaCl濃度約0.5MでQ Sepharose HPカラムから溶出した(図4A)。SDS-PAGE分析により、成熟エキシグオバクテリウムPAL様ドメイン(配列番号2)(上部バンド)および遊離されたTAPタグ(配列番号7-配列番号8)(下部バンド)に対応する2つの断片がアプリケーション中に存在することが示された(図4B)。陰イオン交換による分離に続いて、成熟エキシグオバクテリウムPAL様ドメインはグラジエントで溶出される主要ピーク(12〜15分画)中に見出され、遊離されたタグはフロースルー分画中に存在した(図4B)。
【0203】
溶出された酵素を含有する分画を一緒にプールし、Vivaspin MWCO10.000Daカラム(Vivaspin)を用いて、50mM Tris pH7.5を含有する緩衝液中で濃縮および脱塩を行い、使用するまで20℃で保存した。
【0204】
(実施例3)
精製タグとしてのリボソームタンパク質L9およびクトニオバクター・フラバス(Chthoniobacter flavus) Ellin428由来のPAL様ドメインを有する融合タンパク質のクローニング、発現および精製
タンパク質9は、N末端精製タグ(配列番号7)およびHRV14 3Cプロテアーゼ部位含有リンカー(配列番号8)と連結したクトニオバクター・フラバスEllin428(配列番号3)である。この融合タンパク質の計算分子量は51650.4Daであり、N末端がGly-Proである成熟PAL様ドメインの計算分子量は33383.3Daである。
【0205】
以下のコンストラクトを作製した。
【0206】
【表5】

【0207】
プラスミド番号: I (クトニオバクター): 配列番号34
ATGAAAGTGATTCTGCTGCGTGATGTGCCGAAAATTGGCAAAAAAGGCGAAATCAAAGAAGTGAGCGACGGCTACGCGCGTAACTATCTGATTCCGCGTGGCTTTGCGAAAGAATATACCGAAGGCCTGGAACGTGCGATTAAACACGAAAAAGAAATCGAAAAACGCAAAAAAGAACGCGAACGTGAAGAAAGCGAAAAAATCCTGAAAGAACTGAAAAAACGTACCCATGTGGTGAAAGTGAAAGCGGGCGAAGGCGGCAAAATTTTTGGCGCGGTGACCGCGGCGACCGTGGCGGAAGAAATTAGCAAAACCACCGGCCTGAAACTGGATAAACGCTGGTTCAAACTGGACAAACCGATTAAAGAACTGGGCGAATATAGCCTGGAAGTGAGCCTGCCGGGTGGCGTGAAAGATACCATTAAAATTCGCGTGGAACGCGAAGAAAGCTCGAGCGGCGGCAGCGGTAGCGAAGTGCTGTTTCAGGGTCCGGAAAGCCGTTATGAAGTTGTTCCGCATTGGCCTGTTCTGCCGGAAGGTCGTAGCCTGGGTGTTTGTGCAGGTGTTGGTGTTGATAGCCATGGTAATGTGTTTGTGTTTCATCGTAATGAACGTAATTGGACCGCAGCATTTCCGGAAGAACCGATTGCAGAACCGACCATTTCTGTTTTTGATGGTCAGAGCGGCAAACTGCTGACCGAATGGGGTGCAGGTGAATTTATTATGCCGCATGGTCTGACCCTGGATCGTGAAGATAATGTTTGGCTGACCGATGTTGGTCGTCAGCAGGTTTTTAAATATGCCCATGATGGTCATCTGCTGCTGACCCTGGGTGAACGTGGTGTTGCAGGTAGCGATCAGACCCATTTTAATCTGCCGACCGATGTTGCAGTGCTGCCTGATGGAAGCTTTTATGTGTCTGATGGCTATCGTAATACCCGTGTGGTTAAATTTGATGCCGCAGGCCATTATCAGTTTGAATGGGGTGGTAAAGGCACCGAACCGGGTAAATTTCGTCTGCCTCATGGAGTTGCAGTTGATTCTCATGGTCGTGTTTTTGTTTGCGATCGTACCAATAGCCGTCTGCAGGTTTTTGATCCGAAAGGTAAATTTCTGGCCGAATGGAAAGGTCCGCAGGTTGGTCGTCCGTATGGTGTTAGCGTTGCAGCAAATGATCATGTGTTTGTGATTGATGGTGGTGATCAGCTGCCGAATCAGCCGGAACATGCAAAAGCAGTTGAACTGGACCCTGAAGGTAATGTTGTTCCGCGTTTTGGTAGCTATGGTCGTGATCCGGGTCAGTTTCAGCTGGGTCATGATATTGCAGTTGCACCGGATGGTTCTGTTTATGTTGGTGATGCCAAAGGTAAACGCGTTCAGAAATTTGTTCCGGTGCATCCG
【0208】
タンパク質9をコードするプラスミドIは、リンカーおよびPAL様領域をコードする合成Xhol/BamHI断片を、精製タグ(配列番号7)をすでにコードするpET11にライゲーションし、実施例1に記載の確認ステップを実施することにより得た。30℃で3時間の発現およびSDS-PAGE分析を、実施例1に記載のように実施した。
【0209】
タンパク質9の発現レベルは、エリスロバクターおよびエキシグオバクテリウムのPAL様変異体より低下していた。しかし、このタンパク質は中性pHで顕著に可溶性であった。
【0210】
SP Sepharose FF上の陽イオン交換による捕捉では、主要ピークはNaCl濃度約0.25Mで観察された。しかしながら、SDS-PAGE分析に基づく純度は比較的高いものであったが、この捕捉は、前の2つのドメインに対して観察されたものほど効果的ではなかった。
【0211】
溶出された酵素を含有する分画を一緒にプールし、Vivaspin MWCO10.000Daカラム(Vivaspin)を用いて、50mM Tris pH7.5を含有する緩衝液中で濃縮および脱塩を行い、使用するまで20℃で保存した。
【0212】
(実施例4)
精製タグとしてのリボソームタンパク質L9およびプランクトマイセス・マレス(Planctomyces mares) DSM 8797由来のPAL様ドメインを有する融合タンパク質のクローニング、発現および精製
タンパク質10は、N末端精製タグ(配列番号7)およびHRV14 3Cプロテアーゼ部位含有リンカー(配列番号8)と連結したプランクトマイセスDSM8797由来のPAL様ドメイン(配列番号4)である。プランクトマイセスPAL様ドメインについては、野生型配列に存在する2つのCys残基はアラニンおよびバリン残基に置換した。
【0213】
この融合タンパク質の計算分子量は48678.56Daであり、N末端がGly-Proである成熟PAL様ドメインの計算分子量は30411.4Daである。
【0214】
以下のコンストラクトを作製した。
【0215】
【表6】

【0216】
プラスミド番号: J プランクトマイセス: 配列番号35
ATGAAAGTGATTCTGCTGCGTGATGTGCCGAAAATTGGCAAAAAAGGCGAAATCAAAGAAGTGAGCGACGGCTACGCGCGTAACTATCTGATTCCGCGTGGCTTTGCGAAAGAATATACCGAAGGCCTGGAACGTGCGATTAAACACGAAAAAGAAATCGAAAAACGCAAAAAAGAACGCGAACGTGAAGAAAGCGAAAAAATCCTGAAAGAACTGAAAAAACGTACCCATGTGGTGAAAGTGAAAGCGGGCGAAGGCGGCAAAATTTTTGGCGCGGTGACCGCGGCGACCGTGGCGGAAGAAATTAGCAAAACCACCGGCCTGAAACTGGATAAACGCTGGTTCAAACTGGACAAACCGATTAAAGAACTGGGCGAATATAGCCTGGAAGTGAGCCTGCCGGGTGGCGTGAAAGATACCATTAAAATTCGCGTGGAACGCGAAGAAAGCTCGAGCGGTGGTAGCGGTAGCGAAGTTCTGTTTCAGGGTCCGGCAGATAAAATTGATTTTGAACCGGCAGCCATTAATATTGAACTGCCGGAAGGTCTGGCACTGGGTCCTGCAAGCGCAGTTGATTTTGATAGCAAAGGTCGCATGTACCTGTTTCATCGTGGTCCGCAGCCGATTCTGGTTTTTGATCAGAGCGGTAAATTTGTTCGTAGCTGGGGTGATAAACTGATTAGCCAGGCACATGGCTTAAGAGTTGCACCGGATGAAACCATTTGGGTTACCGATATTGGCAACCACATGGTGTTTCAGTTTAACCCGGAAGGTAAACTGCTGCTGGCCCTGGGTCAGGCAGGTAAACCGGGTGATAGCCAGGATCAGTTTAATAAACCGACCGATATTGCATTTGGTCCGCAGGGCGAATTCTATATTTCTGACGGCTATGGTAATAGCCGTGTGATGAAATTTGCAGCCAATGGTAAAAATCTGGGTCAGTGGGGTACACCGGGTAAAGGTCCGGGTGAATTTAATCTGCCGCATAGCATTCTGGTTGATGCAAAAGGTCGTGTTCTGGTTGGTGATCGTGAAAATGATCGCGTGCAGATCTTTGATCTGGAAGGCAATCTGCTGGAAATTTGGACCGGTTTTGCACCGTATGGTATGGAATTTGATAGCCGTGGTAACCTGTTTGTTGCAGATGGTCGTGCAAATAAAGTTCTGCAGCTGAATGCAAGCGGTAAAGTTGAAAATAGCTGGGGTAAAACCGGCAAAGAACCGGGTGAGTATAACCTGCCTCACATGCTGGCAGTCGACGCAGCAGGCAACCTGTTTGTGACCGAAATTGGTGGTAAACGTCTGCAGAAACTGCAGCGCAAA
【0217】
タンパク質10をコードするプラスミドJは、リンカーおよびPAL様領域をコードする合成Xhol/BamHI断片を、精製タグ(配列番号7)をすでにコードするpET11にライゲーションし、実施例1に記載の確認ステップを実施することにより得た。BL21(DE3)における発現により、実施例1に記載のLC-MS分析で判断すると、推定分子量を有するタンパク質が生じ、タンパク質10の発現レベルおよび高い溶解特性は、実施例1に記載のエリスロバクター変異体に類似していた。
【0218】
陽イオン交換による捕捉は、基本的に実施例1に記載のように実施した。SP Sepharose FFによる捕捉に続いて、NaCl濃度約0.25MでSDS-PAGE分析に基づいて主要ピークが観察された。この捕捉は、極めて小量のタンパク質がフロースルー中に検出されたので、効果的であり、主ピークからのタンパク質の純度は約80%であると評価された。
【0219】
溶出された酵素を含有する分画を一緒にプールし、Vivaspin MWCO10.000Daカラム(Vivaspin)を用いて、50mM Tris pH7.5を含有する緩衝液中で濃縮および脱塩を行い、使用するまで20℃で保存した。
【0220】
(実施例5)
α-ヒドロキシ馬尿酸およびベンズアミドの変換を評価するための酵素活性アッセイ
酵素反応
PAL活性を測定するための酵素アッセイは、以前に記載されており(Katopodis AGら: Biochemistry. (1990) 29(26):6115〜20頁)、α-ヒドロキシ馬尿酸のベンズアミドへの変換を測定する。α-ヒドロキシ馬尿酸をベンズアミドに変換するPALドメインの能力を試験するために、酵素反応を以下のようにセットアップした。
酵素(上記実施例に記載のもの): 約0.2mg/ml
α-ヒドロキシ馬尿酸(Sigma): 1mg/ml
Zn2S04: 1mM
緩衝液: MES pH5.5またはTris pH7.5: 100mM
【0221】
反応混合物を37℃で3時間インキュベートし、α-ヒドロキシ馬尿酸およびベンズアミドに対応するピークを、以前に記載されたHPLCの代わりにUPLC(超高速液体クロマトグラフィー)を用いて分離した後に評価した。
UPLC分離条件
Waters ACQ-TUV機器のセットアップ:
カラム: Waters社製のUPLC BEH300 C18、1.7mm、2.1×150mmカラム(部品番号186003687)
溶媒A: 0.1% TFA、
溶媒B: 90% MeCN、0.1% TFA(v/v)
【0222】
【表7】

【0223】
酵素とのインキュベーションの後に、α-ヒドロキシグリシンおよびα-アミドをそれぞれ代表する合成α-ヒドロキシ馬尿酸およびベンズアミドのレベルをUPLC分析することにより、酵素がα-ヒドロキシグリシンをα-アミド基に変換するかどうかが示される。酵素非存在下の対照に比べて、α-ヒドロキシ馬尿酸のピーク面積に対するベンズアミドのピーク面積が増加することにより、酵素がPAL活性を有することが確認される。α-ヒドロキシ馬尿酸およびベンズアミドを表わすピークの下の面積を半定量分析することによって、4つの酵素(タンパク質3、タンパク質8、タンパク質9およびタンパク質10)がすべて、α-ヒドロキシグリシンのα-アミドへの変換を触媒できることが確認された。エリスロバクターおよびエキシグオバクテリウムに由来するPAL様ドメイン(タンパク質3およびタンパク質8)は、高いpH(pH7.5)で主に活性であるが、一方クトニオバクターおよびプランクトマイセスに由来するPAL様ドメインは、低いpH(pH5.5)で著しく活性であり、酵素の至適pHに相違があることが示された(図5に、エリスロバクターおよびクトニオバクターのPAL様ドメインについて例示されている)。エリスロバクターPAL様タンパク質(タンパク質3)およびエキシグオバクテリウムPAL様タンパク質(タンパク質8)の成熟およびTAPタグ付きの変異体を分析することにより、TAPタグ付きPAL様タンパク質は、N末端融合パートナー(配列番号7)を連結していない成熟酵素に匹敵する活性を有する機能的酵素であることが示された(図5)。
【0224】
(実施例6)
ラットPHMで共同処理された、C末端にGlyが伸長したTAPタグ付きアミリン(Amylin)アナログ基質に対するPAL様ドメインの活性についての試験
細菌PAL様ドメインがC末端にGlyが伸長した組換えペプチドのα-アミド化に適しているかどうかを試験するために、細菌PAL様ドメインおよびラット(ラット)由来の周知のPHMドメインによる酵素反応をセットアップした。ラットPHMドメイン(完全長ラットPAM配列976アミノ酸のうちの36〜497のアミノ酸配列を含む)は、C末端α-ヒドロキシグリシンの形成を促進するために使用した。このドメインは、基本的に、Husten EJら (1993) J. Biol. Chem.; 268(13):9709〜17頁に記載のように、HEK293細胞における一時的な組換え発現の後に精製したものである。
【0225】
配列番号17に示す配列を含む、これらの酵素に適したモデルペプチド基質を設計した。このペプチドは、T.マリティマ(T. maritima)由来のリボソームタンパク質L27を含むN末端TAPタグ、エンテロキナーゼ部位を有する介在リンカー、およびC末端にGlyが伸長したヒトアミリンアナログ(以下のアミノ酸置換を含有する: Val17His、Ala25Pro、Ser28ProおよびSer29Pro)からなる。この配列を含む遺伝子断片を、大腸菌における発現のためにコドン最適化して、pET11aベクターにライゲーションし、BL21(DE3)の中で30℃にて3時間発現させた。精製は、基本的に実施例1に記載の緩衝液とセッティングを用いて、SP Sepharose FFカラムにより行った。分画はプールして、100mM Tris pH7.5を含有する緩衝液中で、0.3mg/ml濃度まで濃縮した。
【0226】
このモデルペプチドを、PAL様ドメインおよび下記に記載の他の関係する成分と共にインキュベートした。
5μL ラットPHM-His(0.15mg/ml)
5μL PAL様ドメイン(タンパク質3(0.4mg/ml)またはタンパク質10(0.6mg/ml))
10μL 100mM Tris pH7.5
10mM アスコルビン酸
10μM ZnS04
10μM CuS04
30μg/ml カタラーゼ
30μL TAPタグ付きアミリンアナログ(V17H)(0.3mg/ml)
【0227】
試料を37℃でインキュベートし、100% 酢酸3μLで酵素反応を停止させ、実施例1に記載のように、Poroshell C8 SB300 1mm×7.5mmの逆相カラム上のLC-MSにより、LC-MSD-TOFにより、1時間、2時間、4時間および5時間後の試料を分析した。
【0228】
モデルタンパク質配列番号17前駆体の予測平均同位体質量を計算した(開始メチオニンは、配列番号17の2番目の位置にアラニンがあるので、大腸菌のメチオニンアミノペプチダーゼにより除去する)。
前駆体形態(C末端にGly残基を含有する): 13934.66Da
中間体形態(C末端にα-ヒドロキシグリシンを含む): 13951Da
C-末端がアルファアミド化された形態: 13876.62Da
【0229】
ラットPHM単独によるモデルペプチドの2時間処理の後に、LC-MS分析により測定すると、モデルペプチドの大部分はC末端にα-ヒドロキシグリシンを含む中間体形態を取っていることが観察された(図6B)。少量のアルファアミド化生成物もまた、実施例5において合成ベンゾール誘導体基質について観察されたように、自発的な変換により出現した。しかしながら、PAL様ドメインを追加すると、アルファアミド化タンパク質への顕著な変換が観察されたが、2つの試験酵素の比活性には相違があった。タンパク質10については、記載のインキュベーション条件を用いて、1時間〜2時間インキュベートした後に、前駆体の全変換がすでに観察された(図6C)。比較すると、アルファアミド化形態へのほとんど完全な変換にはタンパク質3酵素とのインキュベーションが5時間必要であった(図6Dおよび6F)。これらのデータをまとめると、細菌PAL様ドメインは、PHM活性を有する酵素の存在下で、C末端にGlyが伸長した組換えタンパク質前駆体の、C末端が完全にアルファアミド化されたタンパク質への変換を触媒できることが示される。
【0230】
(実施例7)
C末端にGlyが伸長したTAPタグ付きアミリンアナログ基質(プラムリンチド(Pramlintide))に対するPAL様ドメインの活性についての試験
プラムリンチドと呼ばれる、ヒトアミリンのC末端にGlyが伸長したペプチドアナログ(以下のアミノ酸置換を含有する: Ala25Pro、Ser28ProおよびSer29Pro)(配列番号25)について、細菌PAL様ドメインを試験した。プラムリンチドは、固相ペプチド合成により得て、精製の後に凍結乾燥した。プラムリンチドの3つの形態についての理論的な平均同位体質量は次のとおりである。
Glyが伸長したプラムリンチド: 4007.5Da
アルファヒドロキシグリシンが伸長したプラムリンチド: 4023.5Da
アルファアミド化プラムリンチド 3949.4Da
配列番号25: KCNTATCATQRLANFLVHSSNNFGPILPPTNVGSNTYG
【0231】
ラットPHMを用いる、C末端にアルファ-ヒドロキシグリシンが伸長したプラムリンチドの調製
C末端にGlyが伸長した合成プラムリンチドを、最終濃度1mg/mlになるように100mM Tris pH7.5中に溶解した。この溶液を、下表に記載のように酵素対基質比1:20(w/w)を用いて、ラットPHMドメイン(実施例6で使用した)と共にインキュベートした。
【0232】
【表8】

【0233】
反応を37℃で2時間行い、次いで、TFAを最終濃度0.1%まで加えることにより停止させた。反応後、反応混合物からの試料20ulをLC-MSにより分析し(C18逆相カラムを使用すること以外は、基本的に実施例6に記載のとおり)、プラムリンチドの中間体アルファ-ヒドロキシグリシン形態を得たことを確認した。
【0234】
ラットPHM処理試料を、Agilent 1100 HPLC機器上でAgilent Zorbac C18 Extendカラムを用いて、逆相C18調製用HPLCにより精製した。条件およびアセトニトリルのグラジエントは下表のとおりである。
緩衝液A: 95% H2O 5% ACN 0.1% TFA
緩衝液B: 70% ACN 20%イソプロパノール 0.1% TFA。
【0235】
【表9】

【0236】
C末端にアルファ-ヒドロキシグリシンが伸長したプラムリンチド中間体を精製した。ペプチドの回収および関係する分画のプールに続いて、Therm DNA120 Speed Vacを用いて試料を乾固し、100mM Tris pH7.5緩衝液1mL中にペプチドを再溶解した。アルファ-ヒドロキシグリシンが伸長したプラムリンチドの最終的な量を、UV280吸収により測定し、その濃度を0.5mg/mlペプチドに調整した。
【0237】
プラムリンチドのアルファ-ヒドロキシグリシン中間体ペプチドに対する細菌PAL様ドメインの活性についての評価
PAL様ドメイン(配列番号1、2、3および4)の活性を試験するために、調製したアルファ-ヒドロキシル化配列番号25をペプチド基質として用いる、100mM Tris pH7.5緩衝液中の下記の反応をセットアップした。
【0238】
【表10】

【0239】
反応混合物を37℃で1時間インキュベートし、TFAを0.1%まで添加して停止させた後、LC-MS分析により試料を分析した。アルファヒドロキシグリシン中間体および完全アルファアミド化プラムリンチドを表わす主要な2つのピークが、デコンボリューションされたスペクトル上で観察された。4つの細菌PAL様ドメインすべてが、プラムリンチドのアルファヒドロキシグリシン中間体をアルファアミド化プラムリンチドに変換することができた。エリスロバクター(図7A)およびプランクトマイセス(図7B)のPAL様ドメインは、この試験条件下で酵素対基質比1:100を用いると、ペプチド基質を完全アルファ-アミド化ペプチドにほとんど完全に変換することができたので、この反応の触媒として著しく効率的なものであった。エキシグオバクテリウム(図7C)およびクトニオバクター(図7D)のPALは、ペプチド基質をすべてアルファアミド化ペプチドに変換することができなかったが、4023Da(アルファヒドロキシグリシンが伸長したプラムリンチド)および3948Da(アルファアミド化プラムリンチド)の相対ピーク強度が観察されたので、これらのPALは、この反応を触媒するが、高濃度の酵素を必要とするほど遅い速度であると結論づけることができる。2セットのPAL様ドメイン間の相違は、実施例5に記載されたpH選択性の観察された相違が原因である可能性がある。
【0240】
これらの結果は、4つの細菌PAL様ドメインがすべて、ペプチジルヒドロキシグリシンアルファアミド化リアーゼ活性を有し、生物活性を得るためにアルファアミド化される必要がある典型的なペプチド基質に関して真核生物のPALについて以前に記載されたものと同じ反応を触媒できるという証拠を提供する。
【0241】
アッセイ
アッセイ(I)
活性の評価
PAL酵素の活性は、実施例5に記載のように測定することができる。PAL酵素の活性は、Katopodis AGら、Biochemistry 1990、29(26):6115〜6120頁に記載のように、α-ヒドロキシ馬尿酸のベンズアミドへの変換を測定することにより実証することができる。記載のHPLC法を用いる代わりに、適応UPLC法を用いる方が利点がある。UPLC法のための条件は、実施例5に記載している。
【0242】
本明細書に引用した、出版物、特許出願および特許を含むすべての参考文献は、各参考文献を個々にかつ具体的に示して参照により組み込むのと同程度に、またその内容全体を本明細書に記載するのと同程度に(法律によって許可されている最大限度まで)、その内容全体を本明細書に組み込むものとする。
【0243】
題目および副題目はすべて、便宜のためのみに本明細書において使用するもので、本発明を限定するものとして解釈されるべきものではまったくない。
【0244】
本明細書に提示するあらゆる例または例示的な言葉(例えば「など」)の使用は、本発明をよりよく説明することだけを意図し、特に特許請求されない限り、本発明の範囲に制限を設けるものではない。本明細書中のいかなる言葉も、特許請求の範囲に記載のない要素を、本発明の実施に不可欠ものとして示していると解釈すべきではない。
【0245】
本明細書中の特許文献の引用および組込みは、便宜のためのみになされたものであり、そのような特許文献の有効性、特許性および/または法的強制力に関するいかなる見解も反映するものではない。
【0246】
本発明は、準拠法で許されているように、本明細書に添付された特許請求の範囲に記載の内容の修正物および等価物をすべて含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
α-ヒドロキシグリシンからα-アミドへの変換を触媒することが可能である単離ポリペプチドであって、前記ポリペプチドが、モチーフ1、すなわち、
Xaa1 Val Xaa2 Asp Arg Xaa3 Xaa4 Xaa5 Arg Xaa6 Gln Xaa7 Xaa8 Xaa9 Xaa10 Xaa11 Gly Xaa12 Xaa13 Xaa14 Xaa15 Xaa16 Trp
を含むアミノ酸配列を含み、
Xaa1、Xaa2、Xaa3、Xaa4、Xaa5、Xaa6、Xaa7、Xaa8、Xaa9、Xaa10、Xaa11、Xaa12、Xaa13、Xaa14、Xaa15およびXaa16が、天然に存在するアミノ酸から独立に選択され、ただし、Xaa1およびXaa7は、Cysではないポリペプチド。
【請求項2】
α-ヒドロキシグリシンからα-アミドへの変換を触媒することが可能である単離ポリペプチドであって、
(a)配列番号1のアミノ酸2〜306に対して少なくとも80%の同一性を示すアミノ酸配列を含むポリペプチド、
(b)配列番号2のアミノ酸3〜336に対して少なくとも80%の同一性を示すアミノ酸配列を含むポリペプチド、
(c)配列番号3のアミノ酸3〜305に対して少なくとも80%の同一性を示すアミノ酸配列を含むポリペプチド、
(d)配列番号4のアミノ酸3〜279に対して少なくとも80%の同一性を示すアミノ酸配列を含むポリペプチド、および
(f)システイン残基を含まないか、または最大1つもしくは最大2つのシステイン残基を含むアミノ酸配列を有することを特徴とする、ペプチジル-α-ヒドロキシグリシンアルファ-アミド化リアーゼ活性を有するポリペプチド
からなる群から選択されるポリペプチド。
【請求項3】
ペプチジル-α-ヒドロキシグリシンアルファ-アミド化リアーゼ活性を有する単離ポリペプチドであって、大腸菌中で可溶性タンパク質として発現させることができることを特徴とするポリペプチド。
【請求項4】
0、1または2つのシステイン残基を含む、請求項1から3のいずれかに記載のポリペプチド。
【請求項5】
原核生物に由来する、請求項1から4のいずれかに記載のポリペプチド。
【請求項6】
α-ヒドロキシグリシンからα-アミドへの変換を触媒することが可能であり、前記α-ヒドロキシグリシンが、式R-Gly(OH)のC末端-α-ヒドロキシグリシンであり、式中、Rがペプチドであり、Gly(OH)が、前記ペプチドのC末端に連結されているα-ヒドロキシグリシン残基であり、
前記α-アミドが、式R-NH2を有する、
請求項1から5のいずれかに記載のポリペプチド。
【請求項7】
ペプチジル-α-ヒドロキシグリシンアルファ-アミド化リアーゼ(PAL)活性を有する酵素を生成するための方法であって、
(i)酵素をコードするヌクレオチド配列を含む核酸コンストラクトを含む、非哺乳動物を起源とする、組換え発現の宿主細胞を、酵素の発現に適している条件下で培養する工程と、
(ii)(a)細胞の破壊および遠心分離の後の上清、ならびに/または
(b)増殖培地
から酵素を回収する工程と
を含み、宿主細胞が、非哺乳動物を起源とし、例えば、大腸菌株であり、前記酵素が、工程(ii)において回収する際に、可溶性である方法。
【請求項8】
酵素が、工程(ii)において回収する際に、触媒活性を得るために酵素がリフォールディングのステップを必要としないという意味で、触媒として活性な形態をとっている、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
請求項7または8に記載の方法により得ることができる、ペプチジル-α-ヒドロキシグリシンアルファ-アミド化リアーゼ活性を有する酵素である単離ポリペプチドであって、前記酵素が、
R-Gly(OH)→R-NH2
の反応を触媒することが可能であり、
式中、Rがペプチドであり、Gly(OH)が、前記ペプチドのC末端に連結されているα-ヒドロキシグリシン残基であるポリペプチド。
【請求項10】
請求項1から6のいずれかの記載をさらなる特徴とする、請求項9に記載のポリペプチド。
【請求項11】
ペプチジル-α-ヒドロキシグリシンアルファ-アミド化リアーゼ活性を有する酵素を生成するための方法であって、請求項1から6のいずれかまたは請求項8もしくは9いずれかに記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む組換え核酸を含む組換え発現の宿主細胞を、前記酵素の生成に適している条件下で維持する工程を含む方法。
【請求項12】
ペプチド中のC末端α-ヒドロキシグリシンからα-アミドへの変換を触媒するための、請求項1から6のいずれかまたは請求項8もしくは9いずれかに記載のポリペプチドの使用。
【請求項13】
α-アミド化ペプチドを生成するための方法であって、
(i)C末端グリシン残基を有する標的ペプチドを、ペプチジルグリシンアルファ-ヒドロキシル化モノオキシゲナーゼ(PHM)および請求項1から6のいずれかまたは請求項8もしくは9に記載のポリペプチドの両方と、酵素活性に適している条件下で反応させる工程であって、前記標的ペプチドにおける、前記PHMおよび前記ポリペプチドを用いる反応を、2つの別個のステップにおいてかまたは同時に実施する工程と、
(ii)C末端α-アミド化ペプチドを回収する工程と
を含む方法。
【請求項14】
回収されるα-アミド化ペプチドが、医薬として使用するためのものである、請求項12に記載の使用または請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ペプチドが、アミリン、神経ペプチドY(NPY)、ペプチドYY(PYY)、PYY-3-36、膵臓ポリペプチド(PP)、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)、ガストリン、カルシトニン、カルシトニン関連ペプチド(CGRP)、ガストリン放出ペプチド、バソプレシン、オキシトシン、ニューロキニンA、セクレチン、パンクレアスタチン、プロ-オピオメラノコルチン(POMC)、アルファ-メラノサイト刺激ホルモン(アルファMSH)、ガンマ-メラノサイト刺激ホルモン(ガンマ1MSH)およびアミド化ヒンジペプチド(HP-N)、またはそれらの機能性の類似体からなる群から選択される、請求項11から14のいずれかに記載の方法または使用。

【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A1】
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【図5A2】
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【図5A3】
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【図5A4】
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【図5A5】
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【図5A6】
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【図5B1】
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【図5B2】
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【図5B3】
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【図5B4】
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【図1】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【公表番号】特表2013−511997(P2013−511997A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−541487(P2012−541487)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【国際出願番号】PCT/EP2010/068630
【国際公開番号】WO2011/067283
【国際公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(509091848)ノヴォ ノルディスク アー/エス (42)
【Fターム(参考)】