説明

新規アセン系付加化合物およびその製造方法

【課題】 規則性の高い導電性薄膜を簡単な方法で多量に製造することができるアセン系付加化合物およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 一般式
【化1】


(式中、Xは−C(=O)S−または−C(=S)S−を表わし、R、Rはそれぞれ独立して、H、C1〜C6の低級アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルキルチオ、またはハロゲンのいずれかを表わす。a,b,c,dは0以上の整数を表わす。但し、Xが−C(=O)S−である場合、(a,b,c,d)=(0,0,0,0),(1,0,0,1)を除く。)で表わされるチオラクトン型またはジチオラクトン型アセン系付加化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機半導体デバイス等を構成する導電性薄膜の原材料として有用な新規アセン系付加化合物に関する。また、本発明はかかるアセン系付加化合物の容易な製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスのパターンは微細化しており、回路の集積度も増々高くなっていく傾向にある。従って、数ナノメートル(nm)〜数十nmの導電性薄膜を形成する技術の確立が望まれている。このような薄い導電性薄膜は、規則性の高い分子膜によって実現できる。半導体上に導電性薄膜を形成する技術の一例として、有機分子を用いて自己組織化(Self Assembling)薄膜(以下、SA薄膜と称する)を形成させる方法が近年提唱されている。この技術は有機分子が規則的な構造に配列する性質を利用したものであり、極めて欠陥が少なくかつ高い秩序性をもった薄膜を製造することができる。SA薄膜は、印刷やインクジェットなどの手法により有機分子またはその前駆体を半導体等の基体上に付与することにより形成することができる。
【0003】
SA薄膜の作成に適した材料として、アセン系化合物の一種であるペンタセンの前駆体となる各種のペンタセン付加化合物が報告されている(下記の特許文献1〜3および非特許文献1および2参照)。しかし、これらのペンタセン付加化合物をペンタセンに変換してSA薄膜を形成させるためには高価な設備を伴う光照射が必要である。また、たとえ熱分解によりペンタセン付加化合物をペンタセンに変換する場合であっても、熱分解により副生する付加部分を除去するために煩雑な洗浄工程が必要である。従って、従来のアセン系付加化合物のように煩雑な工程を用いずに規則的な構造を有する薄膜を製造することができる方法が求められている。
【特許文献1】米国特許公開第2003/0144562号公報
【特許文献2】米国特許公開第2004/0119073号公報
【特許文献3】米国特許公開第2004/0183070号公報
【非特許文献1】Tetrahedoron Letters,46,1981(2005)
【非特許文献2】J.Am.Chem.Soc.2004,126,12740−12741(1994)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明はかかる従来技術の現状に鑑み創案されたものであり、その目的は規則性の高い導電性薄膜を簡単な方法で多量に製造することができるアセン系付加化合物およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、かかる目的を達成するためにアセン系化合物の付加体の反応性について鋭意検討した結果、アセン系化合物のチオホスゲン付加化合物に存在する反応性に富むジクロロ置換基を利用して、各種のチオラクトン型付加化合物やジチオラクトン型付加化合物へ容易に変換できることを見出した。
【0006】
さらに、本発明者らは、かくして得られたチオラクトンおよびジチオラクトン型アセン系付加化合物の熱分解性を検討した結果、加熱工程によりアセン系化合物が効率よく遊離することを見出した。また、この熱分解によりCOSまたはCSが副生するが、これらはいずれも気体として容易に除去できることを見出した。さらに、かくして得られたアセン系化合物は良質で安定な導電性薄膜を形成し、有機半導体デバイス、有機トランジスタ、有機導電性薄膜、薄膜電極、有機薄膜センサー等の広範な有機デバイスの製造に広く使用できることを見出した。これらの知見に基づき、本発明者らは遂に本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明によれば、一般式(1)
【化1】

(式中、Xは−C(=O)S−を表わし、R、Rはそれぞれ独立して、H、C1〜C6の低級アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルキルチオ、またはハロゲンのいずれかを表わす。a,b,c,dは0以上の整数を表わす。但し、(a,b,c,d)=(0,0,0,0),(1,0,0,1)を除く。)で表わされるチオラクトン型アセン系付加化合物が提供される。
【0008】
また、本発明によれば、一般式(2)
【化2】

(式中、Xは−C(=S)S−を表わし、R、Rはそれぞれ独立して、H、C1〜C6の低級アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルキルチオ、またはハロゲンのいずれかを表わす。a,b,c,dは0以上の整数を表わす。)で表わされるジチオラクトン型アセン系付加化合物が提供される。
【0009】
また、本発明によれば、一般式(3)
【化3】

(式中、Yは−C(Cl)S−を表わし、R、Rはそれぞれ独立して、H、C1〜C6の低級アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルキルチオ、またはハロゲンのいずれかを表わす。a,b,c,dは0以上の整数を表わす。但し、(a,b,c,d)=(0,0,0,0)を除く。)で表わされるアセン系チオホスゲン付加化合物が提供される。
【0010】
また、本発明によれば、一般式(4)
【化4】

(式中、R、Rはそれぞれ独立して、H、C1〜C6の低級アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルキルチオ、またはハロゲンのいずれかを表わす。a,b,c,dは0以上の整数を表わす。但し、(a,b,c,d)=(0,0,0,0)を除く。)で表わされるアセン系化合物をチオホスゲンと、好ましくは溶媒の存在下で反応させることを特徴とする上記一般式(3)で表わされるアセン系チオホスゲン付加化合物(以下、単に化合物(3)または付加体(3)と称する)の製造方法が提供される。
【0011】
また、本発明によれば、上記一般式(3)で表わされるアセン系チオホスゲン付加化合物をプロトン性反応試剤と、好ましくは酸触媒の存在下で反応させることを特徴とする上記一般式(1)で表わされるチオラクトン型アセン系付加化合物(以下、単に化合物(1)と称する)の製造方法が提供される。
【0012】
また、本発明によれば、上記一般式(3)で表わされるアセン系チオホスゲン付加化合物をチオ化反応試剤と、好ましくは相間移動触媒の存在下で反応させることを特徴とする上記一般式(2)で表わされるジチオラクトン型アセン系付加化合物(以下、単に化合物(2)と称する)の製造方法が提供される。
【0013】
また、本発明によれば、上記一般式(1)で表わされるチオラクトン型アセン系付加化合物または上記一般式(2)で表わされるジチオラクトン型付加体化合物に熱または光を作用させることを特徴とする上記一般式(4)で表わされるアセン系化合物(以下、単に化合物(4)と称する)の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、有機半導体デバイス等の分野で有用な規則性の高い導電性薄膜の材料となるアセン系化合物を簡単な方法で多量に製造することができるアセン系付加化合物を提供することができる。本発明のアセン系付加化合物は、熱分解により前記アセン系化合物を効率良く遊離することができ、熱分解時に発生する副生物(COSまたはCS)は気体として容易に除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明のアセン系付加化合物は、チオラクトン型またはジチオラクトン型のアセン系付加化合物であり、これらのアセン系付加化合物は、アセン系化合物からそのチオホスゲン付加体を経て合成されることができる。合成されたチオラクトン型またはジチオラクトン型のアセン系付加化合物は加熱されるとCOSまたはCSの気体を発生して元のアセン系化合物に戻り、このアセン系化合物が自己組織化して導電性薄膜を形成する。
【0016】
自己組織化により薄膜を形成させる場合、薄膜の材料となる有機分子を適当な溶媒に溶解させて基体上に付与する必要がある。しかし、アセン系化合物は一般に有機溶媒に対する溶解度が極めて低く、通常の方法では溶媒に溶解させて基体上に付与することができない。そこで、本発明では、アセン系化合物をそのチオラクトン型またはジチオラクトン型付加体に変換することにより、溶解度を高め、基体上に溶液の状態で付与できるようにしている。基体上に付与されたチオラクトン型またはジチオラクトン型のアセン系付加化合物は、次に加熱により元のアセン系化合物に熱分解され、自己組織化して基体上に導電性薄膜を形成する。従って、本発明によれば溶解度の低いアセン系化合物の薄膜を容易に基体上に形成させることができる。
【0017】
以下、本発明のチオラクトン型アセン系付加化合物(1)およびジチオラクトン型アセン系付加化合物(2)を、アセン系化合物(4)からそのチオホスゲン付加体(3)を経て製造する製造方法について具体的に説明する。まず、中間体のチオホスゲン付加体(3)はアセン系化合物(4)をチオホスゲンと反応させることによって製造することができる。その反応を下記の反応式(I)に示す。

【0018】
本発明のチオラクトン型アセン系付加化合物(1)は上記反応式(I)で得られたアセン系チオホスゲン付加体(3)を水やアルコール等のプロトン性反応試剤と反応させることによって製造することができる。その反応を下記の反応式(II)に示す。

【0019】
本発明のジチオラクトン型アセン系付加化合物(2)は上記反応式(I)で得られたアセン系チオホスゲン付加体(3)をチオ化反応試剤と反応させることによって製造することができる。その反応を下記の反応式(III)に示す。

【0020】
かくして製造されたチオラクトン型アセン系付加化合物(1)およびジチオラクトン型アセン系付加化合物(2)は熱または光の作用によりアセン系化合物(4)に容易に変換することができる。その反応を下記の反応式(IV)に示す。

【0021】
本発明の化合物(1)、(2)は各々、架橋部:X=−C(=O)S−、−C(=S)S−の結合の向きにより立体異性を生じる可能性があるが、いずれの立体異性体においても同様なCOS、CS脱離性を有し、アセン系化合物の薄膜形成に好適な物性を示す。
また、本発明の化合物(3)も同様に架橋部:X=−C(Cl)S−の結合の向きにより立体異性を生じる可能性があるが、いずれの立体異性体においても同様な反応性を有し、化合物(1)または(2)を生成する。
【0022】
次に、前記の反応式(I)〜(IV)によって示される各化合物の製造方法について具体的に説明する。
反応式(I)によって示されるアセン系チオホスゲン付加体(3)の製造方法
反応式(I)において、原料である化合物(4)はアントラセン、テトラセン、ペンタセン、ヘキサセン、ノナセン、オクタセン等のアセン系化合物であり、1次元方向に縮合した芳香環構造を特徴とする。アセン系化合物(4)は末端の芳香環に置換基R、Rを有しており、置換基R、Rはそれぞれ独立して、H、C1〜C6の低級アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルキルチオ、またはハロゲンのいずれかを表わす。かかるアセン系化合物(4)は市販試薬として容易に入手することができ、あるいは公知文献(例えば米国特許公開第2003/0100779号公報、Chem. Ber.,96,707(1963))を参考に容易に合成することができる。
【0023】
反応式(I)において、生成物である化合物(3)は化合物(4)とチオホスゲンの付加体である。チオホスゲンが化合物(4)に付加する数は通常1であるが、化合物(4)の縮合環の数もしくは反応に使用するチオホスゲンの量によって2以上になりうる。
【0024】
チオホスゲンの使用量は原料化合物(4)の1重量部に対して0.5〜10重量部であることが好ましく、さらに好ましくは1.0〜8重量部である。
【0025】
反応式(I)の反応は0〜200℃、好ましくは10〜140℃、1〜100時間、好ましくは3〜60時間、常圧もしくは加圧の反応条件で行うことができる。
【0026】
反応式(I)の反応は溶媒の不存在下でも進行するが、本発明の製造方法では、溶媒を使用することが人体に対して有害なチオホスゲンの使用量を減少させる上で好ましい。溶媒としては、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、ジエチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒;クロルベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、フルオロベンゼン、ジフルオロベンゼン、ヘキサフルオロベンゼン、α、α、α−トリフルオロトルエン等のハロゲン化芳香族炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジグライム、アニソール、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル等のエーテル系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶媒、アセトニトリル、ブチロニトリル等のニトリル系溶媒などを使用することができる。これらの溶媒はチオホスゲンの変性を防止するため十分に乾燥して用いることが好ましい。これらの溶媒は1種単独で使用してもよいし、2種以上を同時に使用してもよい。溶媒の使用量は原料化合物(3)の1重量部に対して5〜200重量部であることが好ましく、さらに好ましくは5〜100重量部である。
【0027】
本発明の製造方法においては、反応式(I)の反応によって生成したチオホスゲン付加化合物(3)は単離せずにそのまま反応式(II)または(III)の原料として用いることもできるが、反応式(II)または(III)の収率を向上させるためには生成したチオホスゲン付加化合物(3)を単離した後に反応式(II)または(III)の原料として用いることが好ましい。反応式(I)の反応生成物の単離方法としては抽出、晶析もしくはこれらを組み合わせた工程を用いることができる。場合によっては濃縮や溶媒置換を行ってから抽出、晶析等を行うことが適当であり、精製を行うことにより容易に高純度の目的物を得ることができる。また、必要な場合には単離物をさらにカラムクロマトグラフィー、晶析などの精製工程に1回または複数回供することにより容易に高純度の目的物を得ることができる。
【0028】
反応式(II)によって示されるチオラクトン型アセン系付加物(1)の製造方法
反応式(II)の反応は、上記の反応式(I)により製造されたチオホスゲン付加化合物(3)を原料とする。この化合物(3)は反応性に富むジクロロ置換基を有するため、下記の反応式(II-a)および反応式(II-b)に示すように種々のプロトン性反応試剤と容易に反応し、化合物(1)のチオラクトン型アセン系付加体を生成する。反応式(II-a)では化合物(3)に水が一段階的に反応して化合物(1)を生成し、反応式(II-b)では化合物(3)にアルコール類が反応し、次いで水が反応することにより化合物(1)を生成する二段階工程を経る。

【0029】
反応式(II)で用いるプロトン性反応試剤としては水やメタノール、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類を挙げることができる。プロトン性反応試剤が水の場合、その使用量は原料化合物(3)の1重量部に対して0.9〜100重量部であることが好ましく、さらに好ましくは1.0〜20重量部である。プロトン性反応試剤がアルコール類の場合、その使用量は原料化合物(3)の1重量部に対して2.0〜500重量部であることが好ましく、さらに好ましくは2.0〜100重量部である。
【0030】
反応式(II)の反応は0〜200℃、好ましくは0〜100℃、および0.5〜50時間、好ましくは1〜20時間、常圧もしくは加圧の反応条件で行うことができる。
【0031】
反応式(II)の反応では、必要に応じて溶媒を使用する。溶媒としては、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、ジエチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒;クロルベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、フルオロベンゼン、ジフルオロベンゼン、ヘキサフルオロベンゼン、α、α、α−トリフルオロトルエン等のハロゲン化芳香族炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジグライム、アニソール、ジエチレンクリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル等のエーテル系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール系溶媒などを使用することができる。これらの溶媒は1種単独で使用してもよいし、2種以上を同時に使用してもよい。プロトン性反応試剤がアルコール類の場合、反応試剤のアルコール類を溶媒として使用してもよい。溶媒の使用量は原料化合物(3)の1重量部に対して5〜100重量部であることが好ましく、さらに好ましくは5〜50重量部である。
【0032】
反応式(II)の反応は触媒の不存在下でも進行するが、反応を早く進めるためには酸触媒の存在下で行うことが好ましい。本発明の製造方法で使用可能な酸触媒としては従来公知のいかなるものも用いることができるが、例えば塩酸、臭化水素酸、フッ化水素酸、硫酸、燐酸、ホウ酸などを用いることができる。これらの酸触媒は1種単独で使用してもよいし、2種以上を同時に使用してもよい。酸触媒の使用量は原料化合物(3)の1重量部に対して0.0001〜0.1重量部であることが好ましく、さらに好ましくは0.0005〜0.05重量部である。
【0033】
反応式(II)の反応生成物の単離方法としては抽出、晶析もしくはこれらを組み合わせた工程を用いることができる。場合によっては濃縮や溶媒置換を行ってから抽出、晶析を行うことが適当であり、精製を行うことにより容易に高純度の目的物を得ることができる。また、必要な場合には単離物をさらにカラムクロマトグラフィー、晶析などの精製工程に1回または複数回供することにより容易に高純度の目的物を得ることができる。
【0034】
反応式(III)によって示されるジチオラクトン型アセン系付加体(2)の製造方法
反応式(III)の反応は、上記の反応式(I)により製造されたチオホスゲン付加体化合物(3)を原料とする。この化合物(3)は反応性に富むジクロロ置換基を有するため、チオ化反応試剤中の硫黄原子と容易に反応して化合物(2)のジチオラクトン型アセン系付加体を生成する。
【0035】
反応式(III)で用いるチオ化反応試剤としては水硫化ソーダ、硫化ソーダ、硫化カリウム、メチルキサントゲン酸ナトリウム、エチルキサントゲン酸カリウムなどを挙げることができる。これらのチオ化反応試剤の使用量は原料化合物(3)の1重量部に対して0.9〜50重量部であることが好ましく、さらに好ましくは1.0〜10重量部である。
【0036】
反応式(III)の反応は0〜200℃、好ましくは10〜140℃、1〜50時間、好ましくは3〜20時間、常圧もしくは加圧の反応条件で行うことができる。
【0037】
反応式(III)の反応では、必要に応じて溶媒を使用する。溶媒としては、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、ジエチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒;クロルベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、フルオロベンゼン、ジフルオロベンゼン、ヘキサフルオロベンゼン、α、α、α−トリフルオロトルエン等のハロゲン化芳香族炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジグライム、アニソール、ジエチレンクリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル等のエーテル系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶媒、アセトニトリル、ブチロニトリル等のニトリル系溶媒などを使用することができる。これらの溶媒は十分に乾燥、脱酸素して用いることが好ましい。これらの溶媒は1種単独で使用してもよいし、2種以上を同時に使用してもよい。溶媒の使用量は原料化合物(3)の1重量部に対して5〜100重量部であることが好ましく、さらに好ましくは5〜50重量部である。
【0038】
反応式(III)の反応は触媒の不存在下でも進行するが、反応を早く進めるためには相間移動触媒の存在下で行うことが好ましい。本発明の製造方法で使用できる相間移動触媒としては従来公知のいかなるものも用いることができるが、例えばテトラ−N−ブチルアンモニウムブロミド、N−ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、N−ベンジルトリメチルアンモニウムブロミドなどの四級アンモニウム塩類、18−クラウン−5、18−クラウン−6、ベンゾ−15−クラウン−5、ベンゾ−18−クラウン−6、ジベンゾ−18−クラウン−6、5,6−ベンゾ−4,7,13,16,21,24−ヘキサオクサ−1,10−ジアザビシクロ[8,8,8]ヘキサコサンなどのクラウンエーテル類、[(MeN)P=N]]OH、[(MeN)P=N]]Cl、[(MeN)P=N]]Brなどのホスファゼン塩を用いることができる。相間移動触媒の使用量は原料化合物(3)の1重量部に対して0.0001〜0.05重量部であることが好ましく、さらに好ましくは0.001〜0.02重量部である。
【0039】
反応式(III)の反応生成物の単離方法としては抽出、晶析もしくはこれらを組み合わせた工程を用いることができ、場合によっては濃縮や溶媒置換を行ってから抽出、晶析を行うことが適当である。また、必要な場合には単離物をさらにカラムクロマトグラフィー、晶析などの工程に1回または複数回供することより容易に高純度の目的物を得ることができる。
【0040】
反応式(IV)によって示されるアセン系化合物(4)の製造方法
反応式(IV)の反応は、上記の反応式(II)または(III)により製造された化合物(1)または化合物(2)を原料とする。化合物(1)または(2)は熱または光により分解されて付加部分のCOSまたはCSを脱離してアセン系化合物(4)を生成する。
【0041】
反応式(IV)の反応において、化合物(1)および化合物(2)の分解は熱および光のいずれによっても進行するが、光を用いると高価な光照射設備が必要となるため、熱を用いて分解することが製造コストの観点から好ましい。分解に熱を用いる場合、加熱条件は60℃以上であることが好ましい。60℃以上であれば、分解により副生するCOSまたはCSが気体として得られるため、副生成物を容易に除去することができる。加熱条件は80〜250℃であることがさらに好ましく、140〜200℃であることが特に好ましい。
【0042】
その他の反応条件については、反応式(IV)の反応は、化合物(1)、(2)のいずれを原料とする場合も1〜200分、好ましくは10〜100分の反応、常圧もしくは加圧の反応条件で行うことができる。
【0043】
反応式(IV)の反応では、必要に応じて溶媒を使用する。溶媒としては、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、ジエチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒;クロルベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、フルオロベンゼン、ジフルオロベンゼン、ヘキサフルオロベンゼン、α、α、α−トリフルオロトルエン等のハロゲン化芳香族炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジグライム、アニソール、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル等のエーテル系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶媒などを使用することができる。これらの溶媒は十分に乾燥、脱酸素して用いることが好ましい。これらの溶媒は1種単独で使用してもよいし、2種以上を同時に使用してもよい。溶媒の使用量は原料化合物(1)または(2)の1重量部に対して10〜100,000重量部、好ましくは20〜10,000重量部である。
【0044】
化合物(1)、(2)の分解反応は通常、ガラス、シリコンウエハーのような基板上に化合物(1)または(2)の溶液を付与した状態で行なわれ、生成するアセン系化合物(4)はその場で自己組織化して導電性薄膜を形成するため、生成する化合物(4)を単離する必要はない。しかし、用途によって化合物(4)の単離が必要となる場合、その単離方法としては抽出、晶析、昇華もしくはこれらを組み合わせた工程を用いることができる。場合によっては濃縮や溶媒置換を行ってから抽出、晶析、昇華を行うことが適当である。また、必要な場合には単離物をさらにカラムクロマトグラフィー、晶析、昇華などの工程に1回または複数回供することにより容易に高純度の目的物を得ることができる。
【実施例】
【0045】
以下本発明の内容を実施例により具体的に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本実施例で合成した化合物(A)〜(D)を以下に示す。

【0046】
実施例1:反応式(I)に従った化合物(A)の合成
窒素で置換した四つ口フラスコにペンタセン0.56g(2mmol)、α,α,α−トリフルオロトルエン20ml、およびチオホスゲン1.15g(10mmol)を封入し、60℃で30時間反応した。反応終了後、クロロホルムを加えて析出結晶を溶解し、微量の不溶物をろ過により除いてから濃縮した。得られた粗結晶にn−ヘプタンを加えてスラリー化し、ろ過した。さらに粗結晶をn−ヘプタンで洗浄し、乾燥すると灰白色粉末結晶の目的化合物(A)が710mg(単離収率90%)得られた。そのNMRデータおよび分解温度を以下に示す。
H−NMR](CDCl3:δ)5.37(s,H),5.51(s,H),7.44−7.50(m,4H),7.76−7.80(m,2H),7.80−7.88(m,4H),7.96−8.02(m,2H)
分解温度(示差熱分析):247〜255℃
【0047】
実施例2:反応式(II)に従った化合物(B)を経由した二段階反応による化合物(C)の合成
(1)化合物(B)の合成
窒素で置換した四つ口フラスコに実施例1で得た化合物(A)0.45g(1.14mmol)およびメタノール30mlを加え、窒素気流下、5℃に冷却した。これにナトリウムメトキシド0.12g(2.3mmol)のメタノール溶液(5ml)を滴下してから50〜60℃に加温し、1時間反応した。反応終了後、反応液の濃縮物をクロロホルムで抽出し、有機相を水洗、分液した。次いでクロロホルム抽出液の濃縮物を少量のメタノールに懸濁させ、氷水冷却後にろ過した。さらに少量のメタノールで洗浄し、乾燥すると白色粉末結晶の目的化合物(B)が350mg(単離収率80%)得られた。そのNMRデータおよび分解温度を以下に示す。
H−NMR](CDCl3:δ)3.37(s,6H),5.08(s,H),5.41(s,3H),7.40−7.48(m,4H),7.74−7.76(m,2H),7.76−7.80(m,4H),7.84−7.88(m,2H)
分解温度(示差熱分析):196〜220℃
(2)化合物(C)の合成
四つ口フラスコに(1)で得た化合物(B)0.20g(0.5mmol)、テトラヒドロフラン(10ml)、5N塩酸0.2mlを入れ、室温にて15時間反応した。反応終了後、酢酸エチルを加えて抽出、水洗、分液、濃縮の操作を行なった。得られた濃縮物についてアセトニトリルを用いて再結晶を行い、ろ過、乾燥すると白色粉末結晶の目的化合物(C)が140mg(単離収率83%)得られた。そのNMRデータおよび分解温度を以下に示す。
H−NMR](CDCl3:δ)5.48(s,H),5.84(s,H),7.46−7.54(m,4H),7.76−7.84(m,4H),7.86−7.94(m,4H)
分解温度(示差熱分析):188〜210℃
【0048】
実施例3:反応式(II)に従った一段階反応式による化合物(C)の合成
四つ口フラスコに実施例1で得た化合物(A)0.20g(0.5mmol)、テトラヒドロフラン(6ml)、および10N塩酸水溶液0.1mlを入れ、室温にて15時間反応した。反応終了後、酢酸エチルを加えて抽出、水洗、分液、濃縮の操作を行なった。得られた濃縮物についてアセトニトリルを用いて再結晶を行い、ろ過、乾燥すると白色粉末結晶の目的化合物(C)が140mg(単離収率83%)得られた。
【0049】
実施例4:反応式(II)に従った一段階反応による化合物(C)の合成
四つ口フラスコに実施例1で得た化合物(A)0.20g(0.5mmol)、テトラヒドロフラン(8ml)、水50mgおよびトリフルオロ酢酸60mg(0.5mmol)を入れ、室温にて15時間反応した。反応終了後、酢酸エチルを加えて抽出、水洗、分液、濃縮の操作を行なった。得られた濃縮物についてアセトニトリルを用いて再結晶を行い、ろ過、乾燥すると白色粉末結晶の目的化合物(C)が140mg(単離収率83%)得られた。
【0050】
実施例5:反応式(III)に従った化合物(D)の合成
窒素で置換した四つ口フラスコに実施例1で得た化合物(A)398mg(1.0mmol)、エチルキサントゲン酸カリウム357mg(2.2mmol)、およびジメチルアセトアミド(40ml)を入れ、窒素気流下110℃で1時間反応した。反応終了後、水およびクロロホルムを加えて抽出、水洗、分液、濃縮の操作を行なった。得られた濃縮物についてシリカゲルカラムクロマトグラフを行なうことにより黄色粉末結晶の目的化合物(D)が122mg(単離収率34%)得られた。そのNMRデータおよび分解温度を以下に示す。
H−NMR](CDCl3:δ)5.94(s,H),6.12(s,H),7.44−7.52(m,4H),7.76−7.84(m,4H),7.86−7.95(m,4H)
分解温度(示差熱分析):193〜210℃
【0051】
実施例6:反応式(III)に従った化合物(D)の合成
窒素で置換した四つ口フラスコに実施例1で得た化合物(A)398mg(1.0mmol)、エチルキサントゲン酸カリウム357mg(2.2mmol)、ジメチルアセトアミド(40ml)および18−クラウン−6 13mg(0.05mmol)を入れ、窒素気流下110℃で1時間反応した。反応終了後、水およびクロロホルムを加えて抽出、水洗、分液、濃縮の操作を行なった。得られた濃縮物についてシリカゲルカラムクロマトグラフを行なうことにより黄色粉末結晶の目的化合物(D)が190mg(単離収率53%)得られた。
【0052】
実施例7:反応式(I)に従った化合物(E)の合成
窒素で置換した四つ口フラスコにヘキサセン0.66g(2mmol)、α,α,α−トリフルオロトルエン30ml、およびチオホスゲン1.15g(10mmol)を封入し、60℃で50時間反応した。反応終了後、クロロホルムを加えて析出結晶を溶解し、不溶物をろ過により除いてから濃縮した。得られた粗結晶にn−ヘプタンを加えてスラリー化し、ろ過した。さらに粗結晶をn−ヘプタンで洗浄し、乾燥すると灰白色粉末結晶の目的化合物(E)が700mg(単離収率79%)得られた。
H−NMR](CDCl3:δ)5.37(s,H),5.52(s,H),7.44−7.51(m,4H),7.76−7.80(m,2H),7.80−7.90(m,4H),7.95−8.02(m,2H),8.27−8.34(m,2H)
分解温度(示差熱分析):252〜263℃
【0053】
実施例8:反応式(II)に従った一段階反応式による化合物(F)の合成
四つ口フラスコに実施例1で得た化合物(E)220mg(0.5mmol)、テトラヒドロフラン(12ml)、および10N塩酸水溶液0.1mlを入れ、室温にて20時間反応した。反応終了後、酢酸エチルを加えて抽出、水洗、分液、濃縮の操作を行なった。得られた濃縮物についてアセトニトリルを用いて再結晶を行い、ろ過、乾燥すると白色粉末結晶の目的化合物(F)が160mg(単離収率82%)得られた。
H−NMR](CDCl3:δ)5.48(s,H),5.85(s,H),7.46−7.55(m,4H),7.76−7.85(m,4H),7.86−7.95(m,4H),8.28−8.36(m,2H)
分解温度(示差熱分析):195〜220℃
【0054】
実施例9:反応式(I),(II)に従った化合物(G)の合成
窒素で置換した四つ口フラスコにクロロテトラセン0.79g(3mmol)、α,α,α−トリフルオロトルエン30ml、およびチオホスゲン2.50g(22mmol)を封入し、65℃で18時間反応した。反応終了後、メチレンクロライドを加えて析出結晶を溶解し、不溶物をろ過により除いてから濃縮した。得られた濃縮物を1%含水テトラヒドロフラン溶液50mlに溶解し、室温で20時間攪拌してから再度濃縮した。得られた濃縮物についてシリカゲルカラムクロマトグラフを行うと黄色粉末結晶の目的化合物(G)が0.95g(単離収率98%)得られた。
H−NMR](CDCl3:δ)5.27〜5.33(m,H),5.63〜5.69(m,H),7.14−7.31(m,2H),7.35−7.54(m,3H),7.66−7.90(m,4H)
[FT−IR](KBr)C=O:1690cm−1
【0055】
実施例10:反応式(I),(II)に従った一段階反応による化合物(H)の合成
窒素で置換した四つ口フラスコにブロモテトラセン0.60g(1.9mmol)、α,α,α−トリフルオロトルエン30ml、およびチオホスゲン1.50g(13mmol)を封入し、65℃で18時間反応した。反応終了後、メチレンクロライドを加えて析出結晶を溶解し、不溶物をろ過により除いてから濃縮した。得られた濃縮物を1%含水テトラヒドロフラン溶液40mlに溶解し、室温で20時間攪拌してから再度濃縮した。得られた濃縮物についてシリカゲルカラムクロマトグラフを行うと黄色粉末結晶の目的化合物(H)が0.54g(単離収率78%)得られた。
H−NMR](CDCl3:δ)5.27〜5.33(m,H),5.63〜5.69(m,H),7.10−7.40(m,2H),7.43−7.70(m,3H),7.72−7.97(m,4H)
[FT−IR](KBr)C=O:1691cm−1
【0056】
実施例11:反応式(IV)に従ったペンタセンの合成
窒素で置換した反応器に実施例5で得た化合物(D)11mgを入れ、窒素気流下に100℃から210℃まで加熱したところ、この間に21%の重量減少および黒色への変化が確認された。得られた加熱分解物についてTOFF-Massスペクトルを測定し、ペンタセンに相当する分子量278のピークを検出した。
【0057】
実施例12:反応式(IV)に従ったヘキサセンの合成
窒素で置換した反応器に実施例8で得た化合物(F)5mgを入れ、窒素気流下に100℃から250℃まで加熱したところ、この間に15%の重量減少および黒色への変化が確認された。得られた加熱分解物についてTOFF-Massスペクトルを測定し、ヘキサセンに相当する分子量328のピークを検出した。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明のアセン系付加化合物は規則性の高い導電性薄膜を製造することができるので、有機半導体デバイス、有機トランジスタ等の広範囲の分野において極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】

(式中、Xは−C(=O)S−を表わし、R、Rはそれぞれ独立して、H、C1〜C6の低級アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルキルチオ、またはハロゲンのいずれかを表わす。a,b,c,dは0以上の整数を表わす。但し、(a,b,c,d)=(0,0,0,0),(1,0,0,1)を除く。)で表わされるチオラクトン型アセン系付加化合物。
【請求項2】
一般式(2)
【化2】

(式中、Xは−C(=S)S−を表わし、R、Rはそれぞれ独立して、H、C1〜C6の低級アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルキルチオ、またはハロゲンのいずれかを表わす。a,b,c,dは0以上の整数を表わす。)で表わされるジチオラクトン型アセン系付加化合物。
【請求項3】
一般式(3)
【化3】

(式中、Yは−C(Cl)S−を表わし、R、Rはそれぞれ独立して、H、C1〜C6の低級アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルキルチオ、またはハロゲンのいずれかを表わす。a,b,c,dは0以上の整数を表わす。但し、(a,b,c,d)=(0,0,0,0)を除く。)で表わされるアセン系チオホスゲン付加化合物。
【請求項4】
一般式(4)
【化4】

(式中、R、Rはそれぞれ独立して、H、C1〜C6の低級アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルキルチオ、またはハロゲンのいずれかを表わす。a,b,c,dは0以上の整数を表わす。但し、(a,b,c,d)=(0,0,0,0)を除く。)で表わされるアセン系化合物をチオホスゲンと反応させることを特徴とする請求項3に記載のアセン系チオホスゲン付加化合物の製造方法。
【請求項5】
反応が溶媒の存在下で行われることを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
請求項3に記載のアセン系チオホスゲン付加化合物をプロトン性反応試剤と反応させることを特徴とする請求項1に記載のチオラクトン型アセン系付加化合物の製造方法。
【請求項7】
反応が酸触媒の存在下で行われることを特徴とする請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
請求項3に記載のアセン系チオホスゲン付加化合物をチオ化反応試剤と反応させることを特徴とする請求項2に記載のジチオラクトン型アセン系付加化合物の製造方法。
【請求項9】
反応が相間移動触媒の存在下で行われることを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
請求項1に記載のチオラクトン型アセン系付加化合物に熱または光を作用させることを特徴とする
一般式(4)
【化4】

(式中、R、Rはそれぞれ独立して、H、C1〜C6の低級アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルキルチオ、またはハロゲンのいずれかを表わす。a,b,c,dは0以上の整数を表わす。但し、(a,b,c,d)=(0,0,0,0)(1,0,0,1)を除く。)で表わされるアセン系化合物の製造方法。
【請求項11】
請求項2に記載のジチオラクトン型付加化合物に熱または光を作用させることを特徴とする
一般式(4)
【化4】

(式中、R、Rはそれぞれ独立して、H、C1〜C6の低級アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルキルチオ、またはハロゲンのいずれかを表わす。a,b,c,dは0以上の整数を表わす。)で表わされるアセン系化合物の製造方法。

【公開番号】特開2007−238494(P2007−238494A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−62184(P2006−62184)
【出願日】平成18年3月8日(2006.3.8)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【出願人】(394004860)ダイトーケミックス株式会社 (14)
【Fターム(参考)】