説明

新規アゾ化合物及びアゾ色素

【課題】鮮明で色濃度が高く、熱及び光などに対する堅牢性に優れ、十分な染着性及び移行性を有する新規なアゾ化合物及びアゾ色素を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表される化合物。


[式中、Zは環を形成するのに必要な原子群を表し、Zは複素芳香環を形成するのに必要な原子群を表す。V及びVは、それぞれZ及びZによって形成される芳香環または複素芳香環上の置換基を表す。rは0〜3を表し、sは0〜3を表す。Rはカプラー成分を表す。Rはアゾ基に炭素原子を介して結合する。Xは炭素原子もしくは窒素原子を表す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアゾ化合物及びアゾ色素に関する。さらに詳しくは、本発明は着色剤として好適に使用しうるアゾ化合物及びアゾ色素に関する。
【背景技術】
【0002】
アゾ色素は、活性水素を持った化合物やフェノール類またはp−ジアルキルアミノベンゼン類等のいわゆるカプラー成分と、アミノアリール化合物またはアミノヘテロ芳香族化合物(いわゆるジアゾ成分)から調製されたジアゾニウム塩とをアゾカップリングさせて形成させた色素で、様々な構造のカプラー成分とアゾ成分とを選択できるため、その色調が多岐に渡り、色素の中でも代表的なものである。
アゾ色素は、またその高い染色性、熱や光及び洗濯に対する堅牢性、及び低い製造コストなど優れた性質を数多く有している為、古くから、多様な製品の着色剤として広く使用されてきた。今日では、染色などの伝統的な着色用途に加え、ディスプレイ用部材などの先端画像関連機器にも応用されており、幅広い範囲で使用されている(非特許文献1参照)。
【0003】
近年、画像記録材料としてカラー画像が主流となり、上述の様に色素の使用用途も多様化してきた。これらのカラー画像記録材料やカラーフィルターでは、フルカラー画像を再現あるいは記録するために、いわゆる加法混色法や減法混色法の3原色の着色剤(染料や顔料)が使用されている。しかし、好ましい色再現域を実現できる吸収特性を有し、且つさまざまな使用条件、環境条件に耐えうる、色相が良く堅牢な着色剤が無いのが現状であり、改善が強く望まれている。
これら各用途で使用する着色剤には、色再現上所望の吸収特性を有すること、使用される環境条件化での堅牢性、モル吸光係数が大きいこと等が要求される。
【0004】
他方、環内にアゾ基を有する新規ヘテロ環化合物については1,10−ヘテロジ置換ベンゾ[c]シノリン誘導体の合成が報告されているが、環形成反応のメカニズムおよび構造化学的な議論を中心とするものであった(非特許文献2参照)。
【0005】
【非特許文献1】K.Hunger編、Indastrial Dyes、Chemistry,Properties,Applications、Wiley−VCH発行、2003年発行
【非特許文献2】V.Benin他著、J.Org.Chem.、65巻、6388頁、2000年発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、鮮明で色濃度が高く、熱及び光などに対する堅牢性に優れ、十分な染着性及び移行性を有する新規なアゾ化合物及びアゾ色素の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的は以下の手段により達成された。
【0008】
(1)下記一般式(1)で表されるアゾ化合物。
【化1】

[式中、Zは芳香環または複素芳香環を形成するのに必要な原子群を表し、Zは複素芳香環を形成するのに必要な原子群を表す。V及びVは、それぞれZ及びZによって形成される芳香環または複素芳香環上の置換基を表す。rは0〜3を表し、sは0〜3を表す。Rはカプラー成分を表す。R、V、及びVはいずれもカルボキシ基、スルホ基、又は四級アンモニウム基を含まない。Rはアゾ基に炭素原子を介して結合する。Xは炭素原子もしくは窒素原子を表す。]
(2)上記一般式(1)で表される化合物が下記一般式(2)で表されることを特徴とする(1)記載のアゾ化合物。
【化2】

[式中、Zは複素芳香環を形成するのに必要な原子群を表す。Vは芳香環上の置換基を表し、Vは、Zによって形成される複素芳香環上の置換基を表す。rは0〜3を表し、sは0〜3を表す。Rはカプラー成分を表す。R、V、及びVはいずれもカルボキシ基、スルホ基、又は四級アンモニウム基を含まない。Rはアゾ基に炭素原子を介して結合する。Xは炭素原子もしくは窒素原子を表す。]
(3)上記一般式(1)または(2)で表される化合物が下記一般式(3)で表されることを特徴とする(1)または(2)記載のアゾ化合物。
【化3】

[式中、V及びVは置換基を表わす。rは0〜3を表わす。Rはカプラー成分を表す。R、V、及びVはいずれもカルボキシ基、スルホ基、又は四級アンモニウム基を含まず、Rはアゾ基に炭素原子を介して結合する。]
(4)上記一般式(1)または(2)で表される化合物が下記一般式(4)で表されることを特徴とする(1)または(2)記載のアゾ化合物。
【化4】

[式中、V、V、及びVは置換基を表わす。rは0〜3を表わす。Rはカプラー成分を表す。R、V、V、及びVはいずれもカルボキシ基、スルホ基、又は四級アンモニウム基を含まず、Rはアゾ基に炭素原子を介して結合する。V及びVは、互いに結合して飽和又は不飽和の5員又は6員環を形成してもよい。V及びVにより環が形成されるとき、その環は複素環でも芳香環でもよく、飽和環でも不飽和環でもよい。V及びVにより環が形成されるとき、その環の炭素原子とヘテロ原子との総数は3〜6である。]
(5)前記カプラー成分Rが下記一般式(5)で表されることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載のアゾ化合物。
【化5】

[式中、Yはアゾ基と結合する結合手を表す。R、R、R、及びRは各々独立して水素原子又は置換基を表し、互いに結合して縮合環を形成してもよい。Wは炭素原子又は窒素原子を表し、Wが炭素原子のときnは1であり、Wが窒素原子のときnは0である。]
(6)(1)〜(5)のいずれか1項に記載のアゾ化合物からなるアゾ色素。
【発明の効果】
【0009】
本発明のアゾ化合物及びアゾ色素は、鮮明で高い色濃度を示し、光や熱等に対して十分な堅牢性を発揮するという優れた効果を奏する。また、本発明のアゾ化合物及びアゾ色素は染料ないし着色剤として好適に用いることができ、十分な染着性及び転写画像形成における十分な転写移行性を有し、高い分光吸収係数を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明のアゾ化合物は下記一般式(1)で表される。
【化6】

式中、Zは芳香環または複素芳香環を形成するのに必要な原子群を表し、Zは複素芳香環を形成するのに必要な原子群を表す。V及びVは、それぞれZ及びZによって形成される芳香環または複素芳香環上の置換基を表す。rは0〜3を表し、sは0〜3を表す。Rはカプラー成分を表す。R、V、及びVはいずれもカルボキシ基、スルホ基、又は四級アンモニウム基を含まない。Rはアゾ基に炭素原子を介して結合する。Xは炭素原子もしくは窒素原子を表す。
【0011】
ここでV、V、又は後述するVが表す置換基とは、それぞれ芳香環及び複素芳香環のいずれかの水素原子に対して置換可能な基を意味する。このような置換基としては、例えば、脂肪族炭化水素基(好ましくは炭素原子数1〜15の基、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、プロパルギル基、ビニル基等)、アリール基(好ましくは炭素原子数6〜16の基、例えばフェニル基、4−ニトロフェニル基、2,4−ジクロロフェニル基等)、ヘテロ環基(好ましくは5〜10員環の基、例えば2−テトラヒドロフリル基、2−ピリジル基、ピリミジン−2−イル基、1−イミダゾリル基、1−ピラゾリル基、2−ピロリル基、ベンゾチアゾール−2−イル基、ベンゾイミダゾール−2−イル基等)、アシル基(好ましくは炭素原子数1〜15、例えばアセチル基、2−メチルプロパノイル基、ピバロイル基、ベンゾイル基等)、アシルオキシ基(好ましくは炭素原子数1〜16の基、例えばアセトキシ基、プロパノイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等)、アシルアミノ基(好ましくは炭素原子数1〜8の基、例えばアセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基、2−メチルプロパノイルアミノ基、クロロアセチルアミノ基、ベンズアミド基等)、脂肪族オキシ基(好ましくは炭素原子数1〜16の基、例えばメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、2−メトキシエトキシ基等)、アリールオキシ基(好ましくは炭素原子数6〜17の基、例えばフェノキシ基、4−ニトロフェノキシ基等)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは5〜10員環の基、例えば2−ピリジルオキシ基、2−フリルオキシ基、3−ピラゾイルオキシ基等)、脂肪族オキシカルボニル基(好ましくは炭素原子数1〜15の基、例えばメトキシカルボニル基、2−プロピルオキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素原子数7〜17の基、例えばフェノキシカルボニル基、4−メトキシフェノキシカルボニル基等)、ヘテロ環オキシカルボニル基(好ましくは5〜10員環の基、例えば2−ピリジルオキシカルボニル基、2−チエニルオキシカルボニル基等)、カルバモイル基(好ましくは炭素原子数1〜12の基、例えばカルバモイル基、N−エチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基等)、脂肪族スルホニル基(好ましくは炭素原子数1〜15の基、例えばメタンスルホニル基、ブタンスルホニル基、メトキシエタンスルホニル基等)、アリールスルホニル基(好ましくは炭素原子数6〜16の基、例えばフェニルスルホニル基、4−t−ブチルフェニルスルホニル基、p−トルエンスルホニル基等)、ヘテロ環スルホニル基(好ましくは5〜10員環の基、例えば2−テトラヒドロピラニルスルホニル基等)、脂肪族スルホニルオキシ基(好ましくは炭素原子数1〜15の基、例えばメタンスルホニルオキシ基、エタンスルホニルオキシ基等)、アリールスルホニルオキシ基(好ましくは炭素原子数6〜16の基、例えばフェニルスルホニルオキシ基等)、ヘテロ環スルホニルオキシ基(好ましくは5〜10員環の基、例えば2−ピリジルスルホニルオキシ基等)、スルファモイル基(好ましくは炭素原子数0〜12の基、例えばスルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基等)、脂肪族スルホンアミド基(好ましくは炭素原子数1〜15の基、例えばメタンスルホンアミド基、ブタンスルホンアミド基等)、アリールスルホンアミド基(好ましくは炭素原子数6〜16の基、例えばベンゼンスルホンアミド基、p−トルエンスルホンアミド基等)、ヘテロ環スルホンアミド基(5〜10員環の基、例えば2−ピリジルスルホニルアミド基等)、アミノ基、脂肪族アミノ基(好ましくは炭素原子数1〜16の基、例えばメチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基、ブチルアミノ基等)、アリールアミノ基(好ましくは炭素原子数6〜16の基、例えばフェニルアミノ基等)、ヘテロ環アミノ基(5〜10員環の基、例えば2−ピリジルアミノ基、ピラゾール−4−イルアミノ基、ベンゾイミダゾール−2−イルアミノ基、ベンゾチアゾール−2−イルアミノ基、ベンゾオキサゾール−2−イルアミノ基、2−オキサゾリルアミノ基、1,2,4−トリアゾール−3−イルアミノ基、1,2,4−チアジアゾール−2−イルアミノ基、1,3,4−チアジアゾール−2−イルアミノ基、1,2,4−オキサジアゾール−2−イルアミノ基、1,3,4−オキサジアゾール−2−イルアミノ基等)、脂肪族オキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素原子数2〜12の基、例えばメトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、t−ブトキシカルボニルアミノ基等)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素原子数7〜17の基、例えばフェノキシカルボニルアミノ基等)、ヘテロ環オキシカルボニルアミノ基(5〜10員環の基、例えば2−ピリジルオキシカルボニルアミノ基等):脂肪族スルフィニル基(好ましくは炭素原子数1〜12の基、例えばメチルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基等)、アリールスルフィニル基(好ましくは炭素原子数6〜16の基、例えばフェニルスルフィニル基等)、脂肪族チオ基(好ましくは炭素原子数1〜18の基、例えばメチルチオ基、エチルチオ基、2−エトキシエチルチオ基、ブチルチオ基等)、アリールチオ基(好ましくは炭素原子数6〜18の基、例えばフェニルチオ基等)、脂肪族オキシアミノ基(好ましくは炭素原子数1〜12の基、例えばメトキシアミノ基、ブトキシアミノ基等)、アリールオキシアミノ基(好ましくは炭素原子数6〜16の基、例えばフェノキシアミノ基等)、カルバモイルアミノ基(好ましくは炭素原子数0〜18の基、例えばカルバモイルアミノ基等)、スルファモイルアミノ基(好ましくは炭素原子数0〜18の基、例えばスルファモイルアミノ基、N,N−ジメチルスルファモイルアミノ基等)、スルファモイルカルバモイル基(好ましくは炭素原子数1〜12の基、例えばN−(スルファモイル)カルバモイル基、N−(N’,N’−ジメチルスルファモイル)カルバモイル基等)、カルバモイルスルファモイル基(好ましくは炭素原子数1〜12の基、例えばN−(カルバモイル)スルファモイル基等)、ジ脂肪族オキシホスフィニル基(好ましくは炭素原子数2〜16の基、例えばジメトキシホスホニル基等)、ジアリールオキシホスフィニル基(好ましくは炭素原子数6〜16の基、例えばフェノキシホスフィニル基)、ヒドロキシ基;メルカプト基;シアノ基;ハロゲン原子等が含まれる。
【0012】
、V、又はVが表す置換基としては、なかでも、脂肪族基、アリール基、ハロゲン原子、シアノ基、カルバモイル基、スルファモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、又はアシルアミノ基が好ましい。脂肪族基の具体例としては、メチル、エチル、又はtert−ブチル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。アリール基の具体例としては、フェニル基又はナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。ハロゲン原子としてはクロロ原子又はフッ素原子が好ましい。カルバモイル基又はスルファモイル基としては無置換のものが特に好ましい。アルキルスルホニル基としては、メチルスルホニル基又はエチルスルホニル基が好ましい。アリールスルホニル基としてはフェニルスルホニル基又はトシルスルホニル基が好ましい。アシルアミノ基としてはアセチルアミノ基又はプロピオニルアミノ基が好ましい。
【0013】
上記の置換基V、V、又はVの中で、水素原子を有するものは、これを取り去り更に上記の基でさらに置換されていてもよい。そのような、さらなる置換基の例としては、−CONHSO−基(スルホニルカルバモイル基、カルボニルスルファモイル基)、−CONHCO−基(カルボニルカルバモイル基)、−SONHSO−基(スルフォニルスルファモイル基)、が挙げられる。より具体的には、アルキルカルボニルアミノスルホニル基(例えば、アセチルアミノスルホニル)、アリールカルボニルアミノスルホニル基(例えば、ベンゾイルアミノスルホニル基)、アルキルスルホニルアミノカルボニル基(例えば、メチルスルホニルアミノカルボニル)、アリールスルホニルアミノカルボニル基(例えば、p−メチルフェニルスルホニルアミノカルボニル)が挙げられる。
【0014】
によって形成される芳香環(以下、芳香族炭素環ということもある。)としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン、又はフェナントレン、あるいは以下に説明する芳香族複素環が縮環したベンゼン環などが挙げられる。
によって形成される芳香族炭素環としてはベンゼン環、ベンゾチアゾール環、ベンゾイミダゾール環が好ましく、特にベンゼン環が好ましい。
又はZによって形成される複素芳香環(以下、芳香族複素環ということもある。)としては5、6、7、または8員の芳香族ヘテロ環などが挙げられる。
又はZによって形成される芳香族複素環として好ましくは5又は6員の含窒素複素環である。5又は6員の含窒素ヘテロ環としては、如何なる含窒素複素環でもよく、更にベンゼン環や他の複素環が縮環して多環複素環構造をとっていてもよい。
【0015】
又はZによって形成される芳香族複素環に含まれるヘテロ原子として好ましくは、窒素原子、硫黄原子、酸素原子、セレン原子、テルル原子、リン原子、ケイ素原子、又はホウ素原子であり、より好ましくは、窒素原子、硫黄原子、酸素原子、又はセレン原子であり、さらに好ましくは、窒素原子、硫黄原子、又は酸素原子であり、特に好ましくは窒素原子又は硫黄原子である。
【0016】
これらの芳香族複素環として好ましいものは具体的には、フラン環、ピロール環、チオフェン環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、チアジアゾール環、オキサジアゾール環、ピラン環、ジオキサン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、チアジアジン環、オキサジアジン環、オキサトリアゾール環、チアトリアゾール環、インドリジン環、及び、これらにベンゾ縮環したベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾトリアゾール環、ベンゾチアジアゾール環、ベンゾオキサジアゾール環、ピラノン環、ピリリウム環、トリアジン環、テトラジン環、インドール環、キノリジン環、キノリン環、フタラジン環、キノキサリン環、イソキノリン環、カルバゾール環、フェナントリジン環、フェナントロリン環、アクリジン環、及び、プリン、プテリジン等が挙げられる。なかでも、ピリジン環、ピラゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、チアゾール環が好ましい。
【0017】
これらの複素環には、いかなる置換基が置換していても縮環していてもよく、置換基としては前述のV及びVが挙げられる。なお、複素環の別の互変異性構造を書くことができるどのような場合も、化学的に等価である。
【0018】
rは置換基Vの数を表わし、好ましくは0〜3の数であり、より好ましくは1〜3の数であり、1又は2が特に好ましい。sは置換基Vの数を表わし、好ましくは0〜3の数であり、より好ましくは1〜3の数であり、1又は2が特に好ましい。
一般式(1)で表されるアゾ化合物においては、V及びVの少なくとも一方を置換基として有していることが好ましく、V及びVの両方を置換基として有していることがより好ましい。
【0019】
次に、本発明の一般式(2)、(3)、又は(4)で表される化合物について説明する。
上記一般式(1)で表されるアゾ化合物は下記一般式(2)で表されることが好ましい。
【化7】

式中、Zは複素芳香環を形成するのに必要な原子群を表す。Vは芳香環上の置換基を表し、Vは、Zによって形成される複素芳香環上の置換基を表す。rは0〜3を表し、sは0〜3を表す。Rはカプラー成分を表す。R、V、及びVはいずれもカルボキシ基、スルホ基、又は四級アンモニウム基を含まない。Rはアゾ基に炭素原子を介して結合する。Xは炭素原子もしくは窒素原子を表す。
【0020】
上記一般式(1)または(2)で表されるアゾ化合物は、さらに下記一般式(3)で表されることが好ましい。
【化8】

式中、V及びVは置換基を表わす。rは0〜3を表わす。Rはカプラー成分を表す。R、V、及びVはいずれもカルボキシ基、スルホ基、又は四級アンモニウム基を含まず、Rはアゾ基に炭素原子を介して結合する。
上記一般式(1)または(2)で表されるアゾ化合物は、また、下記一般式(4)で表されることが好ましい。
【0021】
【化9】

式中、V、V、及びVは置換基を表わす。rは0〜3を表わす。Rはカプラー成分を表す。R、V、V、及びVはいずれもカルボキシ基、スルホ基、又は四級アンモニウム基を含まず、Rはアゾ基に炭素原子を介して結合する。V及びVは、互いに結合して飽和又は不飽和の5員又は6員環を形成してもよい。V及びVにより環が形成されるとき、その環は複素環でも芳香環でもよく、飽和環でも不飽和環でもよい。V及びVにより環が形成されるとき、その環の炭素原子とヘテロ原子との総数は3〜6である。
【0022】
なお、前記一般式(2)、(3)、又は(4)で表されるアゾ化合物においてZ、V、V、及びVの好ましい範囲は、上述した一般式(1)で表されるアゾ化合物について示したものと同義である。
【0023】
一般式(4)においては、上述のとおり、VとVとが結合して環(芳香族、非芳香族の炭化水素環、又は複素環。これらは、さらに組み合わされて多環縮合環を形成することができる。例えばベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、フルオレン環、トリフェニレン環、ナフタセン環、ビフェニル環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、インドリジン環、インドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、イソベンゾフラン環、キノリジン環、キノリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、キノキサリン環、キノキサゾリン環、イソキノリン環、カルバゾール環、フェナントリジン環、アクリジン環、フェナントロリン環、チアントレン環、クロメン環、キサンテン環、フェノキサチイン環、フェノチアジン環、フェナジン環、が挙げられる。)を形成することもできる。なかでも、ベンゼン環もしくはピリジン環が好ましい。
【0024】
一般式(1)、(2)、(3)、又は(4)で表されるアゾ化合物は、アミノ基を有するビ(ヘテロ)アリール化合物を分子内アゾカップリングする方法(例えば、V. Benin他著、J.Org.Chem.、2000年発行の65巻、6388頁の記載に準じて形成する方法)、ビ(ヘテロ)アリール化合物上のアミノ基と含窒素化合物を反応させて形成する方法(例えば、酸の存在下で亜硝酸塩と反応させて形成する方法)などにより合成することができる。前記アミノ基を有するビ(ヘテロ)アリール化合物の合成法のいずれかを採用するかは、置換基V及びVの構造を含め目的の化合物の構造に応じて定めることができる。
前記置換基V、V、及びVは、どの反応過程で導入してもよいが、前記分子内アゾカップリングを行う前に導入することが好ましい。反応過程の初期または途中で導入する場合は、V、V、及びVを適宜に保護・脱保護することにより目的の構造を有する化合物を得ることができる。
本発明のアゾ化合物の合成においてジアゾ成分の合成手順については、特開2006−143902号公報、同2006−169239号公報及びLiebigs Annalen der Chemie;GE;1979;1534−1546等を参考にすることができる。
【0025】
Rで表されるカプラー成分とは、ジアゾニウム塩と反応し、アゾ染料を得ることの可能なカプラー化合物由来の部分構造を意味する。この概念はアゾ染料の分野で一般に用いられる。
本発明において、カプラー成分Rとしては、下記一般式(5)〜(17)で表される構造のカプラー成分が好ましい。なお、これらはそれぞれ一般に、フェノール系カプラー、ナフトール系カプラー、活性メチレン系カプラー、ピラゾロン系カプラー、ピラゾロアゾール系カプラー、ピロロトリアゾール系カプラーと総称される成分である。一般式(5)〜(17)において、Yは一般式(1)〜(4)で示したアゾ基と結合する結合手を表す。
【0026】
【化10】

【0027】
式中、R、R、R8、及びRは各々独立して水素原子又は置換基を表し、互いに結合して縮合環を形成してもよい。Wは炭素原子又は窒素原子を表し、Wが炭素原子のときnは1であり、Wが窒素原子のときnは0である。
【0028】
、R、R、及びRで表される置換基としては、前述のV、V、もしくはVで表される置換基として例示したものが挙げられる。また、R、R、R、Rが互いに結合して縮合環を形成するとき、RとRとが結合して形成される及び/又はRとRとが結合して形成される、芳香環であっても非芳香環であってもよく、炭素環であっても複素環であってもよい5〜7員環(例えばベンゼン環、ピリジン環)が挙げられる。
【0029】
、R、R、及びRで表される置換基として、具体的には、水素原子、脂肪族炭化水素基、アリール基、ヘテロ環基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、脂肪族オキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、脂肪族スルホンアミド基、アリールスルホンアミド基、ヘテロ環スルホンアミド基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、脂肪族オキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、ヘテロ環オキシカルボニルアミノ基、脂肪族チオ基、アリールチオ基、ヒドロキシ基、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、カルバモイルアミノ基、スルファモイルアミノ基、ハロゲン原子が挙げられる。より好ましくは、水素原子、脂肪族炭化水素基、ヘテロ環基、アシルアミノ基、脂肪族オキシ基、アリールオキシ基、脂肪族スルホンアミド基、アリールスルホンアミド基、脂肪族アミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、脂肪族チオ基、アリールチオ基、ハロゲン原子が挙げられる。
【0030】
このうち、R及びRで表される置換基としては、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、−CONR1819、−SONR1819、−NHCOR18、−NHCONR1819、及び−NHSONR1819から選ばれる基が好ましい。ここで、R18及びR19は水素原子又は置換基を示し、水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜10のアリール基、もしくは炭素原子数1〜10のヘテロ環基が好ましい。
【0031】
また、R及びRで表される置換基としては、水素原子、アシルアミノ基、もしくはハロゲン原子が好ましい。
【0032】
カプラー成分Rは、下記一般式(6)〜(9)で表される活性メチレン系カプラー成分であることもまた好ましい。
【化11】

式中、R10は置換基を有していてもよいアシル基、シアノ基、ニトロ基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基、アルキルスルホニル基又はアリールスルホニル基を表す。R11は置換基を有してもよいアルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を表す。R12は置換基を有してもよいアリール基、又はヘテロ環基を表す。
【0033】
10、R11、又はR12が有してもよい置換基としては、前述の置換基V、V、もしくはVとして例示したものが挙げられる。また、一般式(6)〜(9)において、R10とR11とが互いに結合して環を形成してもよく、またR10とR12とが互いに結合して環を形成してもよい。
【0034】
カプラー成分Rは、下記一般式(10)で表される5−ピラゾロン系カプラー成分であることもまた好ましい。
【化12】

式中、R13はシアノ基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アシルアミノ基、アリールアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、又はアルキル基を表す。R14はフェニル基又は1個以上のハロゲン原子、アルキル基、シアノ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、又はアシルアミノ基が置換したフェニル基を示す。
【0035】
カプラー成分Rは、下記一般式(11)で表されるピラゾロアゾール系カプラー成分であることもまた好ましい。
【化13】

【0036】
式中、R15は水素原子又は置換基を表す。Qは窒素原子を2〜4個含む5員のアゾール環を形成するのに必要な非金属原子群を表し、そのようなアゾール環は置換基(縮合環を含む)を有してもよい。
【0037】
カプラー成分Rは、下記一般式(12)〜(15)で表されるピロロトリアゾール系カプラー成分であることもまた好ましい。
【化14】

【0038】
式中、R20、R21、及びR22は水素原子又は置換基を表す。R20、R21、及びR22の置換基としては、前述の置換基V、V、もしくはVとして例示したものが挙げられる。
【0039】
また、そのほかにも、カプラー成分Rは、縮環フェノール系カプラー、イミダゾール系カプラー、ピロール系カプラー、3−ヒドロキシピリジン系カプラー(特開平1−315736号公報等に記載のカプラー)、上記以外の活性メチレン系カプラー活性性メチン系カプラー、5,5−縮環複素環系カプラー、5,6−縮環複素環系カプラー等が挙げられる。
【0040】
カプラー成分Rとしては、さらに以下の一般式(16)又は(17)で表されるカプラー成分であることもまた好ましい。
【0041】
【化15】

【0042】
一般式(16)はフェノール系カプラー、一般式(17)はナフトール系カプラーと称されるカプラーであり、式中、R16は水素原子、ハロゲン原子、−CONR1819、−SONR1819、−NHCOR18、−NHCONR1819、及び−NHSONR1819から選ばれる基を表す。ここで、R18及びR19は水素原子又は置換基を表す。R17は置換基を示し、lは0〜2から選ばれる整数、mは0〜4から選ばれる整数を表す。l、mが2以上のときは、複数のR17は同じでもそれぞれ異なっていてもよい。
【0043】
17、R18、又はR19で表される置換基としては、前述の置換基V、V、もしくはVとして例示したものが挙げられる。特に、R18及びR19としては、水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜10のアリール基、又は炭素原子数1〜10のヘテロ環基が好ましい。また、一般式(16)においては、水酸基のオルト位若しくはR16のパラ位にR17が位置することが好ましく、一般式(17)においては、ナフトール環の5位若しくは8位にR17が位置することが好ましい。
【0044】
カプラー成分Rとしては、なかでも、フェノール、2−クロロフェノール、2,5−ジクロロもしくはジフロロフェノール、2−カルバモイルフェノール、2−スルファモイルフェノール、1−ナフトール、2−ナフトール、2−プロピオニルアミノフェノール、2−プロピオニルアミノ−1−ナフトール、5−メチルスルホニルアミノ−1−ナフトール、5−フェニルスルホニルアミノ−2−プロピオニルアミノ−1−ナフトールが好ましく、フェノール、2−クロロフェノール、2,5−ジフロロフェノール、2−カルバモイルフェノールが特に好ましい。
【0045】
次に、一般式(1)で表されるアゾ化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0046】
【化16】

【0047】
【化17】

【0048】
【化18】

【0049】
なお、本発明の化合物が分子内に不斉炭素を複数個有する場合、同一構造に対して複数の立体異性体が存在するが、本発明のアゾ化合物はすべての立体異性体を含み、複数の立体異性のうち1つだけを使用することも、あるいはそのうちの数種を混合物として使用することもできる。
【0050】
本発明のアゾ化合物は色素として好適に用いることができ、具体的には、木綿、毛、若しくは合成繊維などの織物繊維、革、紙、プラスチック、または毛皮などの染色用、食品用、染毛剤用、インク用、インクジェットプリント用、レーザープリント用、コピー用、感熱転写方式画像形成用、光記録材料用、有機EL用発光材料用、レーザー用、有機半導体用、太陽電池用、蛍光プローブ用、非線形光学材料用、固体撮像管他各種フィルター用、及びカラー液晶などのディスプレイ用に使用される色素として用いることができる。
本発明のアゾ色素は、所望の吸収波長領域に吸収極大を有することが好ましく、特に限定されないが、例えば400〜800nmに吸収極大を有することが好ましく、500〜700nmに吸収極大を有することがより好ましい。また、モル吸光係数εは10000〜150000であることが好ましく、10000〜100000であることがより好ましい。
【0051】
本発明のアゾ化合物もしくはアゾ色素を染料や着色用組成物として用いるとき、その含有量は特に限定されないが、本発明の化合物もしくは色素を0.1〜90重量%含有させることが好ましい。
【実施例】
【0052】
以下に本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0053】
例示化合物D−12を以下のスキーム1のとおり合成した。なお、スキーム中、Acはアセチル基を表し、%は重量%を表す。
【0054】
【化19】

【0055】
(A)化合物Aの合成
m−ニトロフェニルヒドラジン硫酸塩75gにエタノール240mlを加え攪拌下、トリエチルアミン55mlを添加した。この液を加熱還流し、これにエトキシメチレンマロノニトリル76gのエタノール50ml溶液を滴下した。滴下終了後、3時間加熱還流攪拌した。その後、反応液を全量で150mlぐらいになるまで減圧濃縮した。濃縮された反応液を水冷し、得られた結晶を濾取、乾燥することで化合物Aを63.6g(収率75%)得た。
【0056】
(B)化合物Bの合成
鉄粉104g、塩化アンモニウム11.4g、水85gを混合し、外温100℃で10分攪拌した。これに2−プロパノ−ル850mlを加え、加熱還流攪拌しながら、化合物A81.8gをゆっくりと30分かけて分割添加した。添加終了後さらに加熱還流を1時間した。反応液をセライトで熱時濾過した後、濾液を減圧濃縮し、これに水を加え、室温で3時間放置した。析出した結晶を濾取し、メタノールでかけ洗いした結晶を乾燥することで化合物Bを60g(収率84%)得た。
【0057】
(C)化合物Dの合成
化合物A10gをアセトニトリル50mlに懸濁させ無水酢酸4.5mlを室温にて加え1時間撹拌後、反応液を減圧下濃縮乾涸し、これを酢酸エチル/水で抽出、水洗し、硫酸マグネシウムにて一夜乾燥後、硫酸マグネシウムを濾別し濾液を濃縮乾涸した(化合物C)。これに85重量%リン酸150gを加え0℃以下で撹拌しながらこれに亜硝酸ナトリウム3.1gを約60分かけて分割添加した。0〜5℃で後反応を2時間行い、反応液に氷水500mlを加え析出した結晶を濾別、アセトニトリルにてかけ洗いした。この結晶をカラムクロマトにて精製し、化合物Dを5g得た。
【0058】
(D)化合物Eの合成
化合物D5gを35重量%塩酸30mlとイソプロパノール30ml中に懸濁させ60〜70℃で3時間加熱撹拌した。反応混合物を減圧濃縮し、残渣に氷水200mlを加え析出した結晶を濾別、乾燥し化合物Eを2.5g得た。
(E)化合物D−12の合成
室温下、化合物E1gを85重量%リン酸20ml中に溶解し、0℃以下で撹拌しながら亜硝酸ナトリウム0.36gを30分かけて分割添加した。更に0〜5℃で2時間撹拌を続けて化合物Fを得た。
化合物G1.4gをメタノール150mlに溶解し0℃以下で撹拌しながら、先に合成したジアゾニウム塩(化合物F)を0℃以下になるように分割添加した。0〜5℃で1時間、20〜25℃(室温)で1時間撹拌を続けた。この反応混合物に水200mlを加え析出した結晶を濾別乾燥し、カラムクロマトにて精製した。収量0.5gの化合物D−12を得た(収率20%)。
【0059】
化合物D−12の融点は258〜260℃であった。また、同化合物についてDMF(N,N’−ジメチルホルムアミド)中で吸収スペクトルを測定したところ、吸収極大λmax677nm(ε82,300)を示し、色素の色相が良好であることを確認した(図−1参照)。
【0060】
上記の化合物D−12と同様な合成法で、スキーム−1のカプラー成分を3−エチルイソオキサゾロンに代えて化合物D−9を、2,5−ジフロロフェノールに代えて化合物D−25を、2−クロロフェノールに代えて化合物D−36をそれぞれ合成した。合成した各化合物の融点と極大吸収を以下に示す。
D−9;融点210〜212℃(分解)、極大吸収;564nm(図−2参照)
D−25;融点233℃、極大吸収;624nm(図−3参照)
D−36;融点237〜238℃、極大吸収;653nm(図−4参照)
その他、下記表1に記載の化合物を、上記化合物D−12の合成スキームと同様にして合成した。但し、スキーム−1のカプラー成分をそれぞれ所定のものに代えて、またジアゾ成分について必要に応じて特開2006−143902号公報、同2006−169239号公報及びLiebigs Annalen der Chemie;GE;1979;1534−1546の文献等を参考して合成した。
得られた各化合物について、吸収極大波長(λmax)及びモル吸光係数(εmax)を測定し、その結果を各化合物の色相とあわせて下記表1に示した。
【0061】
【表1】

【0062】
上記の化合物D−12について、以下のようにして、染着性、移行性、及び堅牢性を確認した。
【0063】
[熱転写色素供与材料(P−1)の作製]
片面に耐熱滑性層を設けた、厚さ5μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを支持体とし、この支持体の、耐熱滑性層を設けた側と反対の側に、下記組成の色素供与層塗布用組成物(1)を、グラビアコーターを用いて、乾燥後の厚みが0.6μmになるように塗布して、熱転写色素供与材料(P−1)(以下、単に色素供与材料ともいう)を得た。
【0064】
<色素供与層塗布用組成物(1)>
化合物D−12 10g
ポリビニルブチラール(デンカブチラール5000A:電気化学社製、商品名)10g
シリコーンオイル(KF−96:信越化学社製、商品名) 0.2g
ポリイソシアネート(タケネートD110N:武田薬品社製、商品名)0.5g
メチルエチルケトン 100ml
トルエン 80ml
【0065】
[熱転写受像材料(1)の作製]
支持体として、厚さ150μmの積層型合成紙を用い、表面に下記組成の受容層塗布用組成物(1)をワイヤーバーコーターを用いて、乾燥時の厚さが5μmとなるように塗布して、熱転写受像材料(1)(以下、単に受像材料ともいう)を作製した。乾燥はドライヤーで仮乾燥後、80℃のオーブン中で1時間行った。
【0066】
<受容層塗布用組成物(1)>
色素固定剤;A−9(三共(株)社製、商品名:AEA) 26g
ポリイソシアネート(KP−90:大日本インキ化学社製、商品名) 4g
アミノ変性シリコーンオイル(信越シリコーン社製、商品名:KP−857)0.5g
メチルエチルケトン 100ml
トルエン 50ml
シクロヘキサノン 10ml
【0067】
【化20】

【0068】
上記のようにして得られた熱転写色素供与材料(D−1)を用いて色素供与層と熱転写受像材料(1)の受容層とが接するようにして重ね合わせ、熱転写色素供与材料の支持体側から、サーマルヘッドを使用し、サーマルヘッドの出力0.25W/ドット、パルス幅0.1〜10msec、ドット密度6ドット/mmの条件で加熱を行い、受像材料の受容層に色素を像状に染着させたところ、転写むらの無い鮮明な画像記録が得られた。
【0069】
このとき得られた記録済みの受像材料の濃度が飽和している部分(Dmax部分)を反射型濃度計(X Rite Inc.社製、ステータスAフィルター内蔵)を用いて測定し、画像の最大転写濃度を測定した。次に、記録済みの受像材料を7日間、17,000ルクスの蛍光灯に照射し、画像の光堅牢性を調べた。反射濃度1.0を示す部分の試験後の反射濃度を測定し、試験前の反射濃度1.0に対する残存率(%)でその安定性を評価した。また、60℃のオーブンに1週間保存し画像の熱安定性を調べたが、本発明の化合物D−12を用いた材料は殆ど濃度低下や変色が観察されず安定であった。
【0070】
さらに、記録済の受像材料を60℃のオーブンに2週間保存した後の画像のにじみの程度を観察した。判断基準は、画像が保存前とほとんど変化していない場合は○、少し滲んでいる場合を△、非常に滲んでぼけている場合を×とした。本発明の化合物D−12を用いて形成した画像は保存前とほとんど変化していなかった(○)。
【0071】
以上の結果より、本発明のアゾ化合物によれば、転写濃度が高く(十分な染着性及び移行性を有し)、光や熱に対する堅牢性に優れた鮮明な画像が得られ、しかも経時による画像ボケがほとんどないことがわかる。
【0072】
化合物D−12に代えて、化合物D−9、D−25、及びD−36をそれぞれ用いた以外上記と同様にして、色素供与層塗布用組成物P−2〜P−4を作製し、各々について上記の試験を行った。その結果、化合物D−9、D−25、及びD−36はいずれも化合物D−12と同様に良好な染着性、移行性、及び堅牢性を示した。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の例示化合物D−12の吸収スペクトル(溶媒:N,N’−ジメチルホルムアミド)である。
【図2】本発明の例示化合物D−9の吸収スペクトル(溶媒:N,N’−ジメチルホルムアミド)である。
【図3】本発明の例示化合物D−25の吸収スペクトル(溶媒:N,N’−ジメチルホルムアミド)である。
【図4】本発明の例示化合物D−36の吸収スペクトル(溶媒:N,N’−ジメチルホルムアミド)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるアゾ化合物。
【化1】

[式中、Zは芳香環または複素芳香環を形成するのに必要な原子群を表し、Zは複素芳香環を形成するのに必要な原子群を表す。それぞれV及びVは、Z及びZによって形成される芳香環または複素芳香環上の置換基を表す。rは0〜3を表し、sは0〜3を表す。Rはカプラー成分を表す。R、V、及びVはいずれもカルボキシ基、スルホ基、又は四級アンモニウム基を含まない。Rはアゾ基に炭素原子を介して結合する。Xは炭素原子もしくは窒素原子を表す。]
【請求項2】
上記一般式(1)で表される化合物が下記一般式(2)で表されることを特徴とする請求項1記載のアゾ化合物。
【化2】

[式中、Zは複素芳香環を形成するのに必要な原子群を表す。Vは芳香環上の置換基を表し、Vは、Zによって形成される複素芳香環上の置換基を表す。rは0〜3を表し、sは0〜3を表す。Rはカプラー成分を表す。R、V、及びVはいずれもカルボキシ基、スルホ基、又は四級アンモニウム基を含まない。Rはアゾ基に炭素原子を介して結合する。Xは炭素原子もしくは窒素原子を表す。]
【請求項3】
上記一般式(1)または(2)で表される化合物が下記一般式(3)で表されることを特徴とする請求項1または2記載のアゾ化合物。
【化3】

[式中、V及びVは置換基を表わす。rは0〜3を表わす。Rはカプラー成分を表す。R、V、及びVはいずれもカルボキシ基、スルホ基、又は四級アンモニウム基を含まず、Rはアゾ基に炭素原子を介して結合する。]
【請求項4】
上記一般式(1)または(2)で表される化合物が下記一般式(4)で表されることを特徴とする請求項1または2記載のアゾ化合物。
【化4】

[式中、V、V、及びV3は置換基を表わす。rは0〜3を表わす。Rはカプラー成分を表す。R、V、V、及びVはいずれもカルボキシ基、スルホ基、又は四級アンモニウム基を含まず、Rはアゾ基に炭素原子を介して結合する。V及びVは、互いに結合して飽和又は不飽和の5員又は6員環を形成してもよい。V及びVにより環が形成されるとき、その環は複素環でも芳香環でもよく、飽和環でも不飽和環でもよい。V及びVにより環が形成されるとき、その環の炭素原子とヘテロ原子との総数は3〜6である。]
【請求項5】
前記カプラー成分Rが下記一般式(5)で表されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のアゾ化合物。
【化5】

[式中、Yはアゾ基と結合する結合手を表す。R、R、R、及びRは各々独立して水素原子又は置換基を表し、互いに結合して縮合環を形成してもよい。Wは炭素原子又は窒素原子を表し、Wが炭素原子のときnは1であり、Wが窒素原子のときnは0である。]
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のアゾ化合物からなるアゾ色素。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−266546(P2008−266546A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−134786(P2007−134786)
【出願日】平成19年5月21日(2007.5.21)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】