説明

新規シクロスポリン製剤

【課題】 有効成分としてシクロスポリンを含有する新規製剤を提供すること。
【解決手段】 (a)有効成分としてのシクロスポリン、
(b)脂肪酸サッカリドモノエステル、および
(c)希釈剤または担体
を含有する医薬組成物により解決される。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
この発明は、有効成分としてシクロスポリンを含有する新規製剤に関するものである。
【0002】
シクロスポリン(cyclosporin)類は、普通薬理学的、特に免疫抑制、抗炎症および/または抗寄生虫活性を有する、構造が特有の環状ポリ−N−メチル化エンデカペプチドの1群を包含する。シクロスポリン類の中で最初に単離されたのは、シクロスポリンAとしても知られ、サンディムン(SANDIMMUNまたはSANDIMMUNE)という商標名で市販されている天然菌類代謝物「シクロスポリン」(CiclosporinまたはCyclosporine)であった。「シクロスポリン」は、式(A)で示されるシクロスポリンである。
【0003】
【化1】

[式中、−MeBmt−は、式(B)
【化2】

(式中、−x−y−は−CH=CH−(トランス)である)
で示されるN−メチル−(4R)−4−ブタ−2E−エン−1−イル−4−メチル−(L)トレオニル残基を表す]
【0004】
この種類の母体として、「シクロスポリン」はこれまで最も注目されてきた。「シクロスポリン」に関する臨床研究の主領域は、免疫抑制剤として、特に臓器移植、例えば心臓、肺、心肺同時、肝臓、腎臓、すい臓、骨髄、皮膚および角膜移植並びに特に異型臓器移植の受容者に対するその適用に関するものであった。この分野で「シクロスポリン」は、著しい成果および評判を得ている。
【0005】
同時に、様々な自己免疫疾患および炎症状態、特に自己免疫要素を含む病因による炎症状態、例えば関節炎(例えばリューマチ様関節炎、慢性進行性関節炎および変形性関節炎)およびリューマチ疾患に対する「シクロスポリン」の適用性は非常に強く、インビトロ、動物モデルおよび臨床試験における報告および結果は文献に広く記載されている。「シクロスポリン」療法が提案または適用されている具体的な自己免疫疾患としては、自己免疫血液疾患(例えば溶血性貧血、再生不能性貧血、先天性形成不良性貧血および特発性血小板減少症を含む)、全身性エリテマトーデス、多発性軟骨炎、硬皮症、ウェゲネル肉芽腫症、皮膚筋炎、慢性活動性肝炎、重症筋無力症、乾せん、スティーブン-ジョンソン症候群、特発性スプルー、自己免疫炎症性腸疾患(例えば、潰よう性大腸炎およびクローン病を含む)、内分泌性眼病、グレーブス病、サルコイドーシス、多発性硬化症、原発性胆汁性肝硬変、若年型糖尿病(真性糖尿病I型)、ブドウ膜炎(前部および後部)、乾燥性角結膜炎および春季角結膜炎、間質性肺線維症、乾せん性関節炎および糸球体腎炎(例えば、特発性ネフローゼ症候群または微細病変ネフロパシーを含むネフローゼ症候群を伴う場合または伴わない場合)がある。
【0006】
研究の別の領域は、抗寄生虫、特に抗原生動物剤としての潜在的適用性であり、マラリア、コクシジオイデス症および住血吸虫症の処置を含む可能な用途、さらに最近では例えば他の抗新生物または細胞増殖抑制療法に対する抵抗を解除または排除する薬剤としての癌治療における用途が示唆されている。
【0007】
シクロスポリンの最初の発見以来、広範囲の天然シクロスポリン類が単離および同定されており、多くのさらに別の非天然シクロスポリン類が、全もしくは半合成手段または修正培養技術の適用により製造されてきた。すなわち、シクロスポリン類が包含する種類は豊富であり、例えば天然シクロスポリンA〜Z[参考、トラバー等、1、「ヘルベティカ・シミカ・アクタ」(Helv.Chim.Acta.)60、1247−1255(1977)、トラバー等、2、「ヘルベティカ・シミカ・アクタ」(Helv.Chim.Acta.)65、ナンバー162、1655−1667(1982)、コーベル等、「ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・アプライド・マイクロバイオロジー・アンド・バイオテクノロジー」(Europ.J.Applied Microbiology and Biotechnology)14、273−240(1982)、およびフォン・バルトバーグ等、「プログレス・イン・アラージー」(Progress in Allergy)、38、28−45(1986)]、並びに様々な非天然シクロスポリン誘導体および人工もしくは合成シクロスポリン類、例えばいわゆるジヒドロ−シクロスポリン類[この場合、−MeBmt−残基の−x−y−部分(上記式B)を飽和させることにより、−x−y−=−CH−CH−が得られる]、誘導体化シクロスポリン類(例、別の置換基をシクロスポリン分子の3位のサルコシル残基のα−炭素原子に導入する場合)、−MeBmt−残基が異性体形態で存在するシクロスポリン類(例、−MeBmt−残基の6'および7'位間の立体配置がトランスではなくシスである場合)、および例えばウェンガーにより開発された全合成的シクロスポリン製造方法の使用により、変異型アミノ酸がペプチド配列の特定位置に組み込まれているシクロスポリン類[例えばトラバー1、トラバー2およびコーベル、前出、アメリカ合衆国特許第4108985号、同第4210581号および同第4220641号、ヨーロッパ特許公開第0034567号、同第0056782号および同第0296122号、国際特許公開第WO86/02080号、ウェンガー1、「トランスプランテーション・プロシーディングス」(Transp.Proc.)15、補遺1:2230(1983)、ウェンガー2、「アンゲバンテ・ヘミー・インターナショナル・エディション・イン・イングリッシュ」(Angew.Chem.Int.Ed.)、24、77(1985)およびウェンガー3、「プログレス・イン・ザ・ケミストリー・オブ・オーガニック・ナチュラル・プロダクツ」(Progress in the Chemistry of Organic Natural Products)、50、123(1986)参照]が挙げられる。
【0008】
すなわち、シクロスポリン類に含まれる種類としては、例えば[Thr]−、[Val]−、[Nva]−および[Nva]−[Nva]−「シクロスポリン」(各々、シクロスポリンC、D、GおよびMとしても知られている)、[3'−O−アシル−MeBmt]−「シクロスポリン」(シクロスポリンA酢酸塩としても知られている)、ジヒドロ−[MeBmt]−[Val]−「シクロスポリン」(ジヒドロ−シクロスポリンDとしても知られている)、3'−デスオキシ−3'−オキソ−[MeBmt]−[Val]−および−[Nva]−「シクロスポリン」、[(D)フルオロメチル−Sar]−「シクロスポリン」、[(D)Ser]−「シクロスポリン」、[MeIle]11−「シクロスポリン」、[(D)MeVal]11−「シクロスポリン」(シクロスポリンHとしても知られている)、[MeAla]−「シクロスポリン」、[(D)Pro]−「シクロスポリン」などがある。
【0009】
[シクロスポリン類に関する現行の慣用的命名法に従い、「シクロスポリン」(すなわち、シクロスポリンA)の構造を基準にしてこれらを定義する。これは、まず「シクロスポリン」に存在するアミノ酸残基とは異なった(存在する)アミノ酸残基を示し(例、「[(D)Pro]」は、問題のシクロスポリンが、3位に−Sar−残基ではなく−(D)Pro−を有することを示す)、次に「シクロスポリン」なる語を適用して「シクロスポリン」に存在する残基と一致する残りの残基の特徴を示すことにより行なわれる。個々の残基については、1位の残基−MeBmt−、−ジヒドロ−MeBmt−またはその均等残基から出発して番号を付す。]
【0010】
さらにこれらのシクロスポリン類の非常に多くは、「シクロスポリン」に匹敵する医薬的有用性またはさらに特異的有用性、例えば特に細胞増殖抑制療法に対する腫よう耐性を打ち消す活性を呈し、治療剤としてのそれらの適用性に関する提案が文献に多く記載されている。
【0011】
「シクロスポリン」は、特に臓器移植領域および自己免疫疾患の治療に対して非常に大きく貢献したが、より有効で好都合な投与手段を提供する場合に直面する困難、および望ましくない副作用、特に腎臓毒性反応の発生が報告されていることは、その広範な使用または適用にとって明白で深刻な障害となっている。シクロスポリン類は、高い疎水性を特徴としている。例えばシクロスポリン類の経口投与用に提案された液体製剤は、従来、主に担体媒質としてエタノールおよび油類または類似賦形剤の使用に基づくものであった。すなわち、市販されている「シクロスポリン」飲用液は、界面活性剤としてラブラフィル(登録商標)と共に担体媒質としてエタノールおよびオリーブ油を使用している(例えば、アメリカ合衆国特許第4388307号参照)。しかしながら、当業界で提案されてきた飲用液および類似組成物の使用は、多様な困難を伴う。
【0012】
第一に、油類または油を基剤とする担体を使用する必要性から、不快な味が製剤に付加され得、さもなくば特に長期治療目的の場合に口あたりが劣化し得る。これらの作用は、ゼラチンカプセル形態に製剤化することにより遮蔽され得る。しかしながら、溶液中でシクロスポリンを維持するためには、エタノール含有量を高く保たなければならない。例えば開いたときに、例えばカプセルまたは他の形態からエタノールが蒸発した結果、シクロスポリンの沈澱が現れる。それらの組成物を例えばゼラチン軟カプセル形態に製剤化する場合、この特別な問題点故に、気密性区画、例えば気密性ブリスターまたはアルミニウム・ホイル・ブリスター-パッケージに封入した製品を包装する必要がある。この結果、製品はかさばり、かつ製造費用も高くつく。上記製剤の貯蔵特性は理想とはほど遠いものである。
【0013】
また現存の経口シクロスポリン用量システムを用いて達成される生物学的利用能レベルは低く、個体、個々の患者のタイプ間および単一個体の場合でも治療経過中の異なる時点により広範な変動を呈する。すなわち、文献における報告は、市販されている「シクロスポリン」飲用液を用いた現在利用可能な療法がもたらす平均絶対生物学的利用能は、約30%にすぎず、個々の群間、例えば肝臓(比較的低い生物学的利用能)および骨髄(比較的高い生物学的利用能)移植受容者間で著しい変動を呈する。対象間の生物学的利用能における変動の範囲は、患者によって1または数パーセント程度の場合もあれば90%またはそれ以上にまで達する場合もあることが報告されている。そして既に述べた通り、個体に関する生物学的利用能において顕著な経時的変化が頻繁に観察される。
【0014】
有効な免疫抑制治療を達成するため、シクロスポリン血中または血清レベルを特定の範囲内に維持しなければならない。この場合、要求される範囲は、処置される特定の状態、例えば、その治療が、移植拒絶の阻止を目的とするのか自己免疫疾患の制御を目的とするのか、また別の免疫抑制療法をシクロスポリン療法と同時に用いているのか否かにより変化し得る。常用の用量形態により達成される生物学的利用能レベルは広範に変動するため、要求される血清レベルの達成に必要とされる一日用量はまた、個体間および単一個体の場合でもかなり変化する。この理由により、一定した頻繁な間隔でシクロスポリン療法を受けている患者の血液/血清レベルをモニターすることが必要である。一般にRIAまたは均等な免疫検定技術、例えばモノクローナル抗体に基づく科学技術を用いて行なわれている血液/血清レベルのモニターは、規則正しい体制で行なわれなければならない。これは必然的に時間の浪費かつ不都合であり、実質的に治療の全費用がかさむことになる。
【0015】
何よりも、これらの非常に明白な実践上の障害は、利用可能な経口用量形態を用いたときに観察される、上記で既に少し述べた望ましくない副作用の発生に存する。
【0016】
固体および液体経口用量形態の両方を含め、それらの問題を克服するための様々な提案が当技術分野において示唆されている。すなわち、高田等による日本国特願昭60−71682号(特開昭61−280435号)は、具体的には界面活性剤と組み合わせて投与することによる、シクロスポリン類のリンパ腺送達を増やす手段の適用を示している。使用され得る界面活性剤の全般的リストには、サッカロース(スクロース)脂肪酸エステル類、例えばサッカロース・オレエート、パルミテートまたはステアレート、並びに他の脂肪酸エステル類、特にソルビタン脂肪酸エステル類、例えばソルビタン・オレエート、パルミテートまたはステアレートが含まれる。モノ−およびポリ−エステルの両方の使用が示されているが、モノ−またはジ−エステルが一般的に好ましいものとして提案されている。列挙された他の界面活性剤には、ポリオキシエチル化水素添加植物油、例えばクレモフォーRHおよびニッコールHCO60の商標名で市販されている公知製品があり、これらは、明らかに例えば上述のサッカロース・エステル界面活性剤よりも好ましいことが示されている。
【0017】
前記日本国出願の実施例3は、界面活性成分として、F160と確認されたサッカロース脂肪酸エステルを含む水性製剤の入手方法を記載している。この製剤は、1mlのHO中に3.5mgの「シクロスポリン」および2mgのサッカロース・エステルを含有する。「シクロスポリン」の分散を達成するため、5分間100Wでの音波処理が必要とされる。「透明溶液」として記載されている得られた製剤を動物モデルにおいて直接使用することにより、相対リンパ腺吸収を調査する。HOにおける「シクロスポリン」の溶解度が非常に低く、使用される界面活性剤が少量である場合、主張された溶液が音波処理方法の人工的産物であることは明白である。達成された「シクロスポリン」濃度は例えば経口用量形態には不適当に低く、かつ、この製剤は本質的に不安定であるため、いかなる種類にせよ実用的または市販用製剤としては事実上排除されている。それは、本質的に実験室研究を可能にする実験システムにすぎない。リンパ腺送達に関する部分以外、明細書の他のどの部分にも界面活性剤の使用は提案されていない。
【0018】
同じく高田等による日本国特願昭62−193129号(特開平1−038029号)は、少量の界面活性剤と一緒に、例えばスクロース、ソルビトール、酒石酸、尿素、酢酸セルロース・フタレート、メタクリル酸/メチルメタクリレートまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース・フタレートを含む固体非界面活性担体相に分散させたシクロスポリンを含有する粉末製剤を開示している。また、リンパ腺送達を高める目的物と共に界面活性剤を加えており、この明細書の意義において、この出願は、明らかに前述の日本国特願昭60−71682号の教理の適用を意図した実践的手段の提供を指向している。可能な界面活性成分としてのサッカロース・エステルについては、この場合省かれている。可能な界面活性成分のリストのうち、ソルビタン・エステルについては保留されている。しかしながら、ニッコールHCO60タイプの製品はまた、界面活性剤として好ましいことが示されており、ニッコールHCO60は実施例で使用されている唯一の界面活性剤である。主張されているリンパ腺送達の向上が、何らかの実用的な利益を提供するか、または当業界がこれまで直面してきたシクロスポリン療法における例えば前述の問題点の幾つかを克服することは示されていない。
【0019】
この発明は、主要担体成分として脂肪酸サッカリド・モノエステルを含む新規シクロスポリン製剤を提供する。これらは、当業界がこれまで直面してきたシクロスポリン、例えば「シクロスポリン」療法における問題点を解決または実質的に低減化させる。特に、この発明の組成物は、例えば慣用的経口投与を可能にする程度に充分高い濃度でシクロスポリンを含む固体、半固体および液体組成物の製造を可能にすると同時に、例えば生物学的利用能特性に関して効力の改善を達成することが見出された。
【0020】
さらに詳しくは、この発明による組成物は、吸収/生物学的利用能レベルを同時に高め、かつ、シクロスポリン療法を受けている個々の患者において、および個体間の両方に関して、達成される吸収/生物学的利用能レベルの変動性を低下させる有効なシクロスポリン投与を可能にすることが見出された。この発明の教理を適用することにより、個々の患者に対する用量間および個体/個々の患者群間で達成されるシクロスポリン血液/血清レベルの変動性を低下させるシクロスポリン用量形態を得ることができる。すなわち、この発明は、有効な治療の達成に必要とされるシクロスポリン用量レベルの低減化を可能にする。さらにこの発明は、シクロスポリン療法を受けている個々の対象および均等な治療が行なわれている患者群に関する継続中の一日用量必要条件のより精密な標準化および最適化を可能にする。
【0021】
個々の患者の用量割合および血液/血清レベル応答、並びに患者群に関する用量および応答パラメーターをより精密に標準化することにより、モニター必要条件が縮小され得、すなわち実質的に治療コストを減らすことができる。
【0022】
必要とされるシクロスポリン用量の低減化/達成される生物学的利用能特性の標準化により、この発明はまた、シクロスポリン療法が施されている患者における、望ましくない副作用、特に腎臓毒性反応の発生を減少させ得る手段を提供する。
【0023】
さらにこの発明は、非アルカノール基剤である、例えばエタノール不含有または実質的不含有であり得る組成物の製造を可能にする。それらの組成物は、既知アルカノール性組成物に特有な、前述の安定性および関連した処理上の問題点を回避する。すなわち、この発明は、特に例えばカプセル、例えばゼラチン硬または軟カプセル形態としての製剤化により適合し、および/または例えばゼラチン軟カプセル封入形態に関して例えば先に述べた、包装上の問題点を排除または実質的に低減化させる組成物を提供する。
【0024】
さらに詳しくは、この発明は、
a)有効成分としてのシクロスポリン、
b)脂肪酸サッカリド・モノエステルおよび
c)希釈剤または担体
を含み、
(i)成分(c)が成分(a)および(b)の両方に対する溶媒であり、成分(a)および(b)が各々独立して周囲温度で成分(c)中少なくとも10%の溶解度を有するか、または、
(ii)成分(c)が成分(a)および(b)の両方に対する溶媒であり、成分(a)および(c)が前記組成物中1:0.5〜50ppw[(a):(c)]の割合で存在するか、または、
(iii)成分(c)が成分(a)および(b)の両方に対する溶媒であり、前記組成物が経口投与に適した固体単位用量形態で製剤化されるか、または、
(iv)成分(c)が、多くとも7000の平均分子量または多くとも15000mPa.s.の50℃での粘度を有するポリ-(C-アルキレン)−グリコールを含むか、またはC-アルキレンポリオールエーテルもしくはエステルを含むか、または、
(v)前記組成物が非水性、または実質的に非水性であるか、または、
(vi)成分(c)が、固体ポリマー担体、有機酸化珪素ポリマー(organo-silicon oxide polymer)または過−流動パラフィン(paraffinum per-liquidum)もしくは亜−流動パラフィン(paraffinum sub-liquidum)を含み、成分(a)が、(b)中固溶体として前記組成物に存在する、
医薬組成物を提供する。
【0025】
上記で定義されている組成物は、フランス国特許出願第8811953号並びにUSSN07/243577、DOS第38304945号、日本国特願昭63−231396号およびイギリス国出願第8821443.9号(フランス国における最初の公開、1989年3月17日第2620336号)を含む他の世界諸国における対応出願において包括的に主張されている対象の新規で特に有利な改変物である。
【0026】
上記定義(i)〜(vi)は、互いに両立するものとして理解すべきである。すなわち、この発明の組成物は、定義された制限事項(i)〜(vi)のいずれか1項またはそれ以上に従い定義される組成物を包含する。すなわち、この発明による好ましい組成物は、例えば(i)〜(v)のいずれか2項またはそれ以上に従うものである。
【0027】
特許請求の範囲を含め、この明細書で使用されている「医薬組成物」という語は、定義されている組成物に関して、その個々の成分または材料が、それら自体医薬的に許容し得、例えば経口投与が予測される場合、経口用として許容し得、または局所投与が予測される場合、局所用として許容し得るものとして理解すべきである。
【0028】
成分(a)として好ましいシクロスポリンは、「シクロスポリン」である。さらに好ましい成分(a)は、シクロスポリンGとしても知られている[Nva]−「シクロスポリン」である。
【0029】
この発明の組成物で使用される好ましい成分(b)は、水溶性脂肪酸サッカリド・モノエステル類、例えば周囲温度で水に対して少なくとも3.3%の溶解度を有する、すなわち、周囲温度で水30ml当たり少なくともモノエステル1gの量で水に溶解し得るサッカリドの脂肪酸モノエステル類である。
【0030】
成分(b)の脂肪酸部分は、飽和または不飽和脂肪酸またはそれらの混合物を含み得る。特に適当な成分(b)は、C-18脂肪酸サッカリド・モノエステル類、特に水溶性C-18脂肪酸サッカリド・モノエステル類である。殊に適当な成分(c)は、カプロン酸(C)、カプリル酸(C)、カプリン酸(C10)、ラウリル酸(C12)、ミリスチン酸(C14)、パルミチン酸(C16)、オレイン酸(C18)、リシノール酸(C18)および12−ヒドロキシステアリン酸(C18)サッカリド・モノエステル類、特にラウリル酸サッカリド・モノエステル類である。
【0031】
成分(b)のサッカリド部分は、適当な糖残基、例えばモノ−、ジ−またはトリ−サッカリド残基を含み得る。好適には、サッカリド部分は、ジ−またはトリ−サッカリド残基を含む。好ましい成分(b)は、C-14脂肪酸ジ−サッカリド・モノエステルおよびC-18脂肪酸トリ−サッカリド・モノエステルを含む。
【0032】
特に適当なサッカリド部分は、サッカロースおよびラフィノース残基である。すなわち、特に適当な成分(b)は、サッカロース・モノカプロエート、サッカロース・モノラウレート、サッカロース・モノミリステート、サッカロース・モノオレエート、サッカロース・モノリシノレエート、ラフィノース・モノカプロエート、ラフィノース・モノラウレート、ラフィノース・モノミリステート、ラフィノース・モノパルミテートおよびラフィノース・モノオレエートである。最も好ましい成分(b)は、ラフィノース・モノラウレートおよび特にサッカロース・モノラウレートである。
【0033】
成分(b)は、好適には少なくとも10の親水性−親油性バランス(HLB)を有する。
成分(b)は、好適には少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%のエステル残基純度を有する。成分(b)は、好適には約15℃〜約60℃、さらに好ましくは約25℃〜約50℃の融点を有する。
【0034】
この発明の組成物に適用された前述の定義(ii)および(iii)によると、定義された成分(c)は、(a)および(b)の両成分が周囲温度、例えば約20℃の温度でかなりの溶解度を呈する材料である。好ましい成分(c)は、(a)および(b)が、独立して周囲温度で少なくとも10%[定義(i)により要求される]、好ましくは少なくとも25%、最も好ましくは少なくとも50%(例えば、成分(a)または(b)が、独立して少なくとも100mg、好ましくは250mg、最も好ましくは少なくとも500mg/ml程度の溶解度を有する場合)の溶解度を有する材料である。特に好ましい材料の条件は、成分(a)が、少なくとも10%、好ましくは少なくとも25%、最も好ましくは50%の溶解度を有する場合、および/または、成分(b)が、少なくとも100%、さらに好ましくは少なくとも200%、最も好ましくは少なくとも300%の溶解度を有する場合(例えば、成分(b)が、少なくとも1000、さらに好ましくは2000、最も好ましくは少なくとも3000mg/ml程度の溶解度を有する場合)である。
【0035】
この発明の組成物における使用に適した成分(c)は、
c)エタノール、
c)C-アルキレングリコール類、
c)C-アルキレン−ポリオール類、
c)ポリ−(C-アルキレン)グリコール類およびc)C-アルキレン-ポリオールエーテル類またエステル類
並びにそれらの混合物
を含有する。
【0036】
しかしながら、この発明の全般的目的によると、エタノールの使用は、単独であれ、または任意の他の成分(c)と混合した形であれ、一般的にはあまり好ましくない。
【0037】
成分(c)がC-アルキレングリコール(c)を含むとき、これは、好ましくはプロピレングリコール、最も好ましくは1,2−プロピレングリコールである。成分(c)がC-アルキレンポリオール(c)を含むとき、これは、好ましくはC-アルキレントリオール、最も好ましくはグリセリンである。
【0038】
成分(c)がポリ−(C-アルキレン)グリコール(c)を含むとき、これは好適にはポリエチレングリコールである。この発明の組成物で使用する場合、それらの成分は、好ましくは多くとも約7000[定義(vi)参照]、例えば6600以下、さらに好ましくは多くとも約2000、例えば1600以下、最も好ましくは多くとも約500の平均分子量を有する。好ましくは、それらの成分は、50℃またはさらに好適には周囲温度で、多くとも約15000mPa.s.、さらに好ましくは多くとも約1000mPa.s.、最も好ましくは多くとも約200mPa.s.の粘度を有する[定義(iv)参照]。成分(c)としての使用に好適なポリエチレングリコール類は、例えばフィードラー、「レキシコン・デル・ヒルフストッフェ」(Lexikon der Hilfstoffe)、第2改定および拡充版、(1981)第2巻、726〜731頁に記載されているもの、特にPEG製品(ポリエチレングリコール)200、300、400および600並びにPEG1000、2000、4000または6000、殊に200、300および400、例えば下記物理特性にほぼ従うものである。
【表1】

【0039】
成分(c)がC-アルキレンポリオールエーテルまたはエステル(c)を含むとき、これは、好適にはC-アルキレントリオール、特にグリセリン、エーテルまたはエステルである。適当な成分(c)は、混合エーテル類またはエステル類、すなわち他のエーテルまたはエステル材料を含む成分、例えばC-アルキレントリオールエステルと他のモノ−、ジ−またはポリ−オール類とのエステル交換生成物を含む。
【0040】
特に適当な成分(c)は、混合C-アルキレントリオール/ポリ−(C-アルキレン)グリコール脂肪酸エステル類、特に混合グリセリン/ポリエチレン−またはポリプロピレン−グリコール脂肪酸エステル類である。
【0041】
この発明による使用に特に適した成分(c)としては、グリセリド類、例えばトリグリセリド類とポリ−(C-アルキレン)グリコール類、例えばポリ−エチレングリコール類および所望によりグリセリンとのとエステル交換により得られる生成物がある。それらのエステル交換生成物は、一般に、ポリ−(C-アルキレン)グリコール、例えばポリエチレングリコールおよび所望によりグリセリンの存在下におけるグリセリド類、例えばトリグリセリド類のアルコール分解により得られる(すなわち、グリセリドからポリ-アルキレングリコール/グリセリン成分へのエステル交換の実施、すなわち、ポリ−アルキレン解糖/グリセリン分解によるもの)。一般に、前記反応は、連続撹はんしながら高温で不活性雰囲気下、指示された成分(グリセリド、ポリアルキレングリコールおよび所望によりグリセリン)の反応により行なわれる。
【0042】
好ましいグリセリド類は、天然および硬化油、特に植物油を含む、脂肪酸トリグリセリド類、例えば(C10-22脂肪酸)トリグリセリド類である。適当な植物油には、例えばオリーブ、アーモンド、落花生、ココヤシ、パーム、大豆および小麦麦芽油、並びに特に(C12-16脂肪酸)エステル残基に富む天然または硬化油がある。
【0043】
好ましいポリアルキレングリコール材料は、ポリエチレングリコール類、特に約500〜約4000、例えば約1000〜約2000の分子量を有するポリエチレングリコール類である。
【0044】
すなわち適当な成分(c)は、少量の遊離C-アルキレントリオールおよび遊離ポリ−(C-アルキレン)グリコールと一緒に、変動し得る相対量でのC-アルキレントリオールエステル類、例えばモノ−、ジ−およびトリ−エステル類並びにポリ(C-アルキレン)グリコールモノ−およびジ−エステル類から成る混合物を含む。この明細書で前述した通り、好ましいアルキレントリオール部分はグリセリルである。好ましいポリアルキレングリコール部分は、特に約500〜約4000の分子量を有するポリエチレングリシルであり、そして好ましい脂肪酸部分は、C10-22脂肪酸エステル残基、特に飽和C10-22脂肪酸エステル残基である。
【0045】
すなわち、別の言い方をすれば、特に適当な成分(c)は、天然または硬化植物油およびポリエチレングリコールおよび所望によりグリセリンのエステル交換生成物、またはグリセリル・モノ−、ジ−およびトリ−C10-22脂肪酸エステル類およびポリエチレングリシル・モノ−およびジ−C10-22脂肪酸エステル類(所望により例えば少量の遊離グリセリンおよび遊離ポリエチレングリコールを一緒に含み得る)を含むかまたはこれらを成分とする組成物として定義され得る。
【0046】
上記定義に関して好ましい植物油、ポリエチレングリコール類またはポリエチレングリコール部分および脂肪酸部分は、上述した通りである。この発明での使用に関して前述した特に適当な成分(c)は、ゲルシル(Gelucir)という商標名で市販されている公知製品、特に
i)ゲルシル33/01、 融点=約33−38℃および
鹸化数=約240/260、
ii)ゲルシル35/10、 融点=約29−34℃および
鹸化数=約120−140、
iii)ゲルシル37/02、 融点=約34−40℃および
鹸化数=約200−220、
iv)ゲルシル42/12、 融点=約41−46℃および
鹸化数=約95−115、
v)ゲルシル44/14、 融点=約42−46℃および
鹸化数=約75−95、
vi)ゲルシル46/07、 融点=約47−52℃および
鹸化数=約125−145、
vii)ゲルシル48/09、 融点=約47−52℃および
鹸化数=約105−125、
viii)ゲルシル50/02、融点=約48−52℃および
鹸化数=約180−200、
ix)ゲルシル50/13、 融点=約46−41℃および
鹸化数=約65−85、
x)ゲルシル53/10、 融点=約48−53℃および
鹸化数=約95−115、
xi)ゲルシル62/05、 融点=約60−65℃および
鹸化数=約70−90といった製品である。
【0047】
上記製品(i)〜(x)は全て酸価=<2を有する。製品(xi)は、酸価=<5を有する。上記製品(ii)、(iii)および(vi)〜(x)は全て、ヨウ素数=<3を有する。製品(i)はヨウ素数=≦8を有する。製品(iv)および(v)は、ヨウ素数=<5を有する。製品(xi)はヨウ素数=<10を有する。ヨウ素数=<1を有する成分(c)が一般に好ましい。明らかに、上記成分(c)の混合物はまた、この発明の組成物において使用され得る。
【0048】
これまでに特記した成分(c)[すなわち、上記定義(i)〜(iv)のいずれかに従う成分または(c)〜(c)項に記載された成分]を使用する場合、この発明の組成物は、一般に成分(b)および(c)を含む担体媒質中に成分(a)を含む。通例、成分(a)および(b)は、各々この発明の組成物の分散液または溶液、例えば分子またはミセル分散液または溶液(適当な場合、固溶体を含む)形態中に存在する。すなわち、成分(a)は、一般に(b)および(c)の両成分を含む分散液または溶液に存在し、成分(b)の方は、(c)を含む溶液に存在する。成分(b)は、一般にこの発明の組成物中成分(a)に関する担体または可溶化剤(投与前および/または投与後)として作用し、成分(c)は、担体または流動化剤として作用する。(勿論、この発明について、特記しない場合、成分(a)、(b)および(c)間の特定の機能的関係に対して何らかの形で限定されるものとして理解すべきではない。)
【0049】
さらに、前述の成分(c)を使用する場合、この発明の組成物は、経口投与に適した固体単位用量形態、例えば経口投与に適したゼラチン硬または軟カプセル形態として製剤化されるのが好ましい[定義(iii)参照]。それらの単位用量形態は、後でさらに詳しく述べるが、好適には1単位用量当たり例えば2〜200mgの成分(a)を含む。
【0050】
前述の成分(c)を使用する場合、成分(a)および(c)は、好ましくは1:0.5〜50ppw[(a):(c)][定義(ii)参照]の割合でこの発明の組成物中に存在する。成分(a)および(b)は、好適には1:3〜200ppw[(a):(b)]の割合で存在する。
【0051】
前述の成分(c)を使用する場合、さらにこの発明の組成物は、非水性または実質的に非水性である[定義(v)参照]、例えば組成物の全重量に基づいた含水率が、20%未満、さらに好ましくは10%未満、さらに好ましくは5%、2%または1%未満であるのが好ましい。
【0052】
前述したことから、この発明はまた、一連の実施態様において、
−前記成分(a)および成分(b)並びに前記成分(c)〜(c)のいずれか1つから選ばれる希釈剤またはそれらの混合物を含み、上記定義(ii)〜(v)のいずれか1項に従う医薬組成物、
−前記成分(a)、(b)および(c)を含み、前記定義(ii)、(iii)または(v)に従う医薬組成物、および
−前記成分(a)、(b)および(c)を含む医薬組成物を提供する。
【0053】
上記で特に述べた成分(c)[すなわち、定義(i)〜(iv)のいずれか1項に従う成分または(c)〜(c)のいずれかの成分]をこの発明の組成物中で使用する場合、成分(a)および(c)は、好適には前記組成物中約1:0.5〜50ppwの割合で存在する。さらに好適には、成分(a)および(c)は、約1:1〜10、さらに好ましくは1:1〜5、最も好ましくは約1:1.5〜2.5、例えば約1:1.6または1:2ppw[(a):(c)]の割合で存在する。成分(a)および(b)は、好適には前記組成物中約1:3〜200、好ましくは約1:3〜100、さらに好ましくは約1:3〜50ppwの割合で存在する。さらに好適には、成分(a)および(b)は、約1:5〜20、好ましくは約1:5〜10、最も好ましくは約1:6.0〜6.5、例えば約1:6.25ppw[(a):(b)]の割合で存在する。
【0054】
この発明の組成物が、成分(b)としてサッカロース・モノラウレートおよび成分(c)として1,2−プロピレングリコールを含む場合、成分(a)および(b)は、好ましくは約1:6〜7ppwの割合[(a):(b)]で存在し、成分(a)および(c)は、好ましくは約1:1.5〜2.5、例えば約1:2ppw[(a):(c)]の割合で存在する。
【0055】
前述の成分(c)を含むこの発明による組成物は、例えば目の自己免疫状態、例えば前記状態の処置または例えば乾せんの処置における病変部内注射用として、例えば経口、非経口または局所適用、例えば皮膚または眼科適用、例えば目の表面への適用に適した用量形態で製造され得る。
【0056】
好適には、それらの組成物は、経口投与であれ、他の方法によるものであれ、単位用量形態で製造される。
勿論、それらの単位用量形態中に存在する成分(a)の量は、例えば処置される状態、予定した投与方法および所望の効果により変化する。しかしながら、一般に、それらの単位用量形態は、好適には1単位用量当たり約2〜約200mgの成分(a)、例えば「シクロスポリン」を含有する。
【0057】
経口投与に適した用量形態には、例えば液体、か粒剤などがある。しかしながら、好ましいのは、固体単位用量形態、例えば錠剤または封入形態、特にゼラチン硬または軟カプセル形態である。それらの経口単位用量形態は、好適には1単位用量当たり約5〜約200mg、さらに好適には約10または20〜約100mg、例えば15、20、25、50、75または100mgの成分(a)、例えば「シクロスポリン」を含有する。
【0058】
前記成分(c)を含むこの発明による組成物は、それらが、修飾された放出特性、例えば経口投与後、例えば成分(a)の遅延型放出または長期間にわたる成分(a)の放出特性を呈する組成物の基剤を提供し得るというさらに別の利点を有する。それらの組成物は、さらに成分(a)に関して組成物の放出特性を修飾し得る成分(d)を含む。それらの成分(d)には、例えばポリマー性賦形剤、特に増粘剤、例えばポリマー性またはコロイド状増粘剤並びに水中で膨潤可能な薬剤、例えば水膨潤性ポリマーまたはコロイドがある。
【0059】
適当な成分(d)は当業界において公知であり、次のものが含まれる。
d)ポリアクリレートおよびポリアクリレート・コポリマー樹脂、例えばポリアクリル酸およびポリアクリル酸−メタクリル酸樹脂、例えばカルボポールという商標名で市販されている公知製品(Carbopol、フィードラー、前出、、206−207頁参照)、特にカルボポール製品934、940および941、並びにユードラジット(フィードラー、前出、、372−373頁参照)、特にユードラジット製品E、L、S、RLおよびRS、最も限定すればユードラジット製品E、LおよびS。
【0060】
d)セルロース類およびセルロース誘導体、例えばアルキルセルロース類、例えばメチル−、エチル−およびプロピル−セルロース類、ヒドロキシアルキル−セルロース類、例えばヒドロキシプロピル−セルロース類およびヒドロキシプロピルアルキル−セルロース類、例えばヒドロキシプロピル−メチル−セルロース類、アシル化セルロース類、例えば酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、酢酸こはく酸セルロースおよびフタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース並びにそれらの塩類、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム。この発明による使用に適した前記製品の例は、公知であり、例えばクルセル(Klucel)およびメトセル(Methocel)という商標名で市販されており(フィードラー、前出、、521頁および、601頁参照)、特にクルセルLF、MF、GFおよびHF並びにメトセルK100、K15M、K100M、E5M、E15、E15MおよびE100Mといった製品がある。
【0061】
d)ポリビニルピロリドン類、例えばポリ−N−ビニルピロリドン類およびビニルピロリドン・コポリマー類、例えばビニルピロリドン−酢酸ビニルコポリマー。この発明による使用に適した前記化合物の例は公知であり、例えばコリドン(Kollidon)(フィードラー、前出、、526および527頁参照)という商標名で市販されており、特にコリドン製品30および90がある。
【0062】
d)ポリビニル樹脂、例えばポリビニルアセテート類およびポリビニルアルコール類、並びに他のポリマー性材料、例えばトラガカントゴム、アラビアゴム、アルギナート類、例えばアルギン酸およびそれらの塩類、例えばアルギン酸ナトリウム。
【0063】
d)二酸化珪素類、例えば親水性二酸化珪素生成物、例えばアルキル化(例えばメチル化)シリカゲル、特にアエロシル(Aerosil)という商標名で市販されている公知コロイド状二酸化珪素製品[「ハンドブック・オブ・ファーマシューティカル・エクシピアンツ」(Handbook of Pharmaceutical Excipients)、ファーマシューティカル・ソサエティー・オブ・グレート・ブリテンにより出版、253〜256頁参照]、特にアエロシル製品130、200、300、380、O、OX50、TT600、MOX80、MOX170、LK84およびメチル化アエロシルR972。
【0064】
成分(d)が存在する場合、それは、好適には成分(a)+(b)+(c)+(d)の全重量に対して約0.5〜50重量%、さらに好ましくは約1〜20重量%、最も好ましくは約2〜10重量%の量で存在する。
【0065】
この発明の組成物中の成分(c)が、(c)前記定義(vi)により必要とされる固体ポリマー性担体を含む場合、これは、好ましくは水不溶性または実質的に水不溶性のポリマー性担体である。
【0066】
成分(c)として特に好ましいのは、ポリビニルピロリドン類[フィードラー、前出、、748−750頁参照]、特に架橋ポリビニルピロリドン類である。この発明における使用に適したそれらの材料の例は公知であり、コリドン[フィードラー、前出、、527頁参照]、コリセプト(Kollisept)[フィードラー、前出、、719−720頁参照]、ポビドン(Povidone)およびクロスポビドン(Crospovidone)[フィードラー、前出、、751頁参照]という商標名で市販されている。
【0067】
特に適当な成分(c)は、少なくとも約10000、さらに好適には少なくとも約20000または25000の分子量、例えば約40000またはそれ以上の分子量を有するポリビニルピロリドン類である。架橋ポリビニルピロリドン類は特に興味深い。(c)としてこの発明における使用に適した具体的な製品の例には、プラスドン(Plasdone)XL、プラスドンXL10およびクロスポビドンがある。
【0068】
この発明の組成物が成分(c)を含む場合、それらはまた、好ましくは(d)水膨潤性または水溶性成分、例えば上記(d)項で定義されたセルロースまたはセルロース誘導体を含む。
【0069】
成分(c)を含むこの発明の組成物に関して特に興味深いそれらの材料のさらに別の例には、アビセル(Avicel)[フィードラー、前出、、160−161頁参照]、エルセマ(Elcema)[フィードラー、前出、、326頁]およびファーマコート(Pharmacoat)[フィードラー、前出、、707頁参照]という商標名で市販されている公知製品、例えばアビセルPH101およびPH102、エルセマおよびファーマコート603製品がある。
【0070】
成分(c)を含むこの発明の組成物の場合、成分(a)は、固溶体、例えば完全または実質的に完全な固体ミセル溶液、分子またはミセル分散液である成分(b)中に存在する。[実際上、成分(b)は、例えば周囲温度または僅かに高温で、少なくともある程度の流動性を呈することが多いため、最も厳密な意味では「固体」ではない。従って、特許請求の範囲を含むこの明細書中で使用されている「固溶体」(solid solution)という語は、例えば粘ちゅう性または高度粘ちゅう性の系を含むものとして解釈すべきである]。(a)および(b)を成分とする固溶体は、好適には成分(c)内、例えば成分(c)全体に例えば粒子、例えば微粒子形態で分散している。すなわち、成分(c)は、一般にこの発明の組成物中で[(a)+(b)]に対する崩壊可能なマトリックスとして機能する。成分(d)は、一般に例えば胃腸管の内容物との接触時における崩壊補助剤として機能する。
【0071】
成分(c)を含むこの発明の組成物はまた、好適には(e)結合剤および/または滑沢剤を含む。結合剤/滑沢剤としての使用に適した材料は、特に例えば脂肪酸/アルキル部分に10個またはそれ以上の炭素原子を有する脂肪酸およびアルキルスルホン酸塩類、例えば金属塩類、例えばC10-22脂肪酸およびC10-22アルキルスルホン酸アルカリ金属またはアルカリ土類金属塩類、例えばナトリウム、カルシウムまたはマグネシウム塩類である。この発明における使用に適したそれらの材料の例は、ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムである[フィードラー、前出、、584頁参照]。
【0072】
この発明の組成物が成分(c)を含む場合、成分(a)および(b)は、好適には約1:2〜20、好ましくは約1:2.5〜10、最も好ましくは約1:3〜8[(a)+(b)]の割合で存在する。
【0073】
成分(c)は、組成物の全重量に対して好適には少なくとも10重量%、さらに好ましくは少なくとも15重量%、より好ましくは少なくとも20重量%の量でこの発明の組成物中に存在する。好適には、成分(c)は、組成物の全重量に対して10〜60重量%、さらに好ましくは15〜50重量%、例えば約20〜40重量%、例えば約25、30または35重量%の量でこの発明の組成物中に存在する。
【0074】
成分(d)が存在する場合、成分(d)および(c)は、好適には約1:0.5〜4、さらに好ましくは約1:1〜3、最も好ましくは約1:1.5〜2.5、例えば約1:2または約1:2.5ppwの割合[(d):(c)]で存在する。
【0075】
成分(e)が存在する場合、成分(e)および(c)は、好適には約1:5〜25、さらに好ましくは約1:5〜20、最も好ましくは約1:7〜15ppwの割合[(e):(c)]で存在する。
この発明の組成物が3成分(c)、(d)および(e)を全て含む場合、これらは、組成物の全重量に対して好適には約25〜75%、さらに好ましくは約30〜65%、最も好ましくは約40〜65%の量で一緒に存在する。成分割合[(a)+(b)]:[(c)+(d)+(e)]は、好適には1:0.25〜7.5、さらに好ましくは1:0.5〜5、最も好ましくは1:0.5〜2、例えば約1:0.8、1:1.2または1:1.3ppw程度である。
【0076】
成分(c)を含むこの発明による組成物は、例えば経口、非経口または局所適用に適した任意の用量形態で製造され得る。好適には、この発明によるそれらの組成物は、経口投与にせよ他の投与方法にせよ、単位用量形態で製造される。
【0077】
勿論、それらの単位用量形態中に存在する成分(a)の量は、例えば処置される状態、予定された投与方法および所望の効果により変化する。しかしながら、一般に、それらは好適には1単位用量当たり約2〜約200mgの成分(a)、例えば「シクロスポリン」を含む。
【0078】
経口投与に適した用量形態としては、か粒などがある。しかしながら、好ましいのは、固体単位用量形態、例えば錠剤またはカプセル形態である。それらの経口単位用量形態は、1単位用量当たり好適には約5〜約200mg、さらに好適には約10または20〜約100mg、例えば15、20、25、50、75または100mgの成分(a)、例えば「シクロスポリン」を含有する。
【0079】
この発明の組成物における成分(c)が、(c)上記定義(vi)により必要とされる有機酸化珪素ポリマーまたは過−もしくは亜−流動パラフィンを含む場合、成分(c)は、好ましくは150℃以下、好ましくは100℃以下、さらに好ましくは50℃以下の温度で容易に流動し得る。好適には成分(c)は、指示温度で15000mPa.s.、さらに好ましくは1000mPa.s.の最大粘度を有する。
【0080】
成分(c)としての使用に適したパラフィン炭化水素は、液体および半固体パラフィンおよびそれらの混合物、すなわち亜流動パラフィンおよび過流動パラフィンである[フィードラー、前出、、690−691頁参照]。製剤化を容易にするため、成分(c)は、好適には流体または半固体パラフィン類、すなわち過流動パラフィンまたは亜流動パラフィンまたはそれらの混合物により構成または本質的に構成される。しかしながら、例えばより緩慢な有効成分放出特性を有する組成物の製造が望まれる場合、これは、固体パラフィン、すなわち固形(durum)パラフィンをさらに加えることにより達成され得る。
【0081】
この発明による組成物が成分(c)として液体または半固体パラフィンのみを含む場合、これらは、好ましくは約1:0.5〜1.0[液体:半固体]の割合で存在する。この場合、成分(a)および(c)は、好適には約1:6〜200、さらに好ましくは約1:6〜100、最も好ましくは1:6〜20、例えば約1:8ppw[(a):(c)]の割合で存在する。
【0082】
この発明による組成物が成分(c)として追加的に固体パラフィンを含む場合、液体/半固体パラフィン:固体パラフィン成分の割合は、好適には約1:0.06〜0.1ppwである。この場合、成分(a)および(c)は、好適には1:6〜200、さらに好ましくは1:6〜100、最も好ましくは1:8〜20、例えば約1:10ppw[(a):(c)]の割合で存在する。
【0083】
成分(c)としての使用に適した有機酸化珪素ポリマーには、特に流体、すなわち式−RSi−O−(式中、各Rは1価有機基、例えばC-アルキル、特にメチルまたはフェニルである)で示される構造単位を有する液体および半固体ポリマー材料が含まれる。特に好ましいのは、約0.65〜10cP、特に約10または50〜500または1000cPの粘度を有するオルガノシロキサンポリマーである。
【0084】
製剤化を容易にするため、成分(c)は、好適には液体オルガノシロキサンポリマー、例えばポリ−メチルシロキサンポリマー、例えば様々な公知珪素油のいずれか、例えば珪素油550、DC200、SF−1066およびSF−1091[フィードラー、前出、、826頁参照]を含む。この発明による組成物が液体オルガノシロキサンポリマーのみを含む場合、成分(a)および(c)は、好適には約1:6〜200、さらに好ましくは約1:6〜100、最も好ましくは1:6〜20、例えば約1:8ppwの割合[(a):(c)]で存在する。
【0085】
例えばより緩慢な有効成分放出特性を有する組成物は、成分(c)として半固体オルガノシロキサンポリマー、例えば様々な公知珪素ペーストのいずれか、例えば珪素ペーストA[フィードラー、前出、、826頁参照]を用いるか、またはこれらを例えば他の前記酸化有機珪素ポリマーに加えることにより生成され得る。後者の場合、この発明の組成物に存在する液体:半固体有機珪素ポリマーの割合は、好適には約1:0.5〜1程度である。この場合、成分(a):(c)の割合は、好適には約1:6〜100、好ましくは約1:6〜20ppw[(a):(c)]の程度である。
【0086】
明白なことであるが、前記成分(c)の混合物もまた、この発明の組成物において使用され得る。
この発明の組成物が成分(c)を含む場合、成分(a)および(b)は、好適には約1:6〜20、好ましくは約1:6〜10、最も好ましくは約1:6.0〜6.5、例えば約1:6.25ppwの割合[(a):(b)]で存在する。
【0087】
成分(c)を含むこの発明の組成物の場合、成分(a)は、完全または実質的に完全に分子またはミセル分散液、例えば固溶体または固体ミセル溶液の形態で成分(b)中に存在する[ただし、「固溶体」という語は、ここでは組成物に関して成分(c)と同じ広い意味で使用されている]。(a)および(b)により構成される固溶体は、好適には成分(c)と共に、例えば成分(c)全体に粒子、例えば微粒子形態で分散している。
【0088】
成分(c)を含むこの発明による組成物は、例えば目の自己免疫状態、例えば前述の状態の処置用、または例えば乾せんの処置における病変部内注射用に、例えば経口、非経口または局所適用、例えば皮膚または眼科適用、例えば目の表面への適用に適した用量形態で製造され得る。好適には、経口投与にせよ他の投与方法にせよ、それらは単位用量形態で製造される。
【0089】
勿論、それらの単位用量形態に存在する成分(a)の量は、例えば処置される状態、予定された投与方法および所望の効果により変化する。しかしながら、一般に、それらは、好適には1単位用量当たり約2〜約200mgの成分(a)、例えば「シクロスポリン」を含有する。
【0090】
経口投与に適した用量形態には、液体、か粒などがある。しかしながら、好ましいのは、固体単位用量形態、例えば錠剤またはカプセル封入形態、特にゼラチン硬または軟カプセル形態である。それらの経口単位用量形態は、1単位用量当たり好適には約5〜約200mg、さらに好適には約10または20〜約100mg、例えば15、20、25、50、75または100mgの成分(a)、例えば「シクロスポリン」を含有する。
【0091】
成分(c)を含むこの発明による組成物は、それらが、修飾された放出特性、例えば経口投与後、例えば成分(a)の遅延型放出または長期間にわたる成分(a)の放出といった特性を呈する組成物用の基剤を提供し得るという別の利点を有する。それらの組成物は、適当な量で固体または半固体成分(c)を封入することにより前記要領で製造され得る。別法として、それらは、追加成分(d):成分(a)に関して組成物の放出特性を修飾し得る成分を含ませることにより製造され得る。それらの成分(d)には、例えばポリマー性賦形剤、特に増粘剤、例えばポリマー性またはコロイド状増粘剤、および水中で膨潤し得る薬剤、例えば水膨潤性ポリマーまたはコロイド、例えば上記(d)〜(d)項で定義された材料のいずれかが含まれる。
【0092】
成分(d)が存在する場合、これは、好適には成分(a)+(b)+(c)+(d)の合計重量に対して約0.5〜30%、さらに好ましくは約1〜20%、最も好ましくは約1〜10%の量で存在する。
【0093】
成分(d)は、特に成分(c)として酸化有機珪素ポリマーを含むこの発明による組成物中での使用に適している。
成分(c)または(c)を含むこの発明による組成物は、例えば他の成分(c)を含む組成物に関して前述した通り、非水性または実質的に非水性であるか、または好ましくはその状態である。
【0094】
この発明による組成物は、選ばれた成分(c)[例、成分(c)が、前述の成分(c)〜(c)のいずれか1つまたはそれらの混合物を含むか否か]とは無関係で、追加的添加剤、例えば当業界で常用されている公知の薬剤、例えば酸化防止剤[例、アスコルビル−パルミテート、トコフェロール類、ブチル−ヒドロキシ−アニソール(BHA)またはブチル−ヒドロキシ−トルエン(BHT)]、風味剤などを含み得る。
【0095】
特に、この発明の組成物はまた、好適には特に処理工程中または貯蔵時における成分(b)の加水分解または成分(a)の分解を防ぐために、1種またはそれ以上の安定剤または緩衝剤を含む。それらの安定剤は、酸性安定剤、例えばくえん酸、酢酸、酒石酸またはフマル酸、および塩基性安定剤、例えば燐酸水素カリウム、グリシン、リジン、アルギニンまたはトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを含み得る。
【0096】
それらの安定剤または緩衝剤は、好適には約3〜8、さらに好ましくは約5〜7、例えば6ないし7の範囲内のpHを達成または維持するのに充分な量で加えられる。それらの安定剤は、例えばくえん酸または酢酸を使用する場合、一般に組成物の全重量に対して5重量%以下、または10重量%以下の量で存在する。上記範囲内のpHを有するこの発明による組成物、特に成分(a)が「シクロスポリン」である組成物が好ましい。
【0097】
この発明による組成物はまた、好適にはポリオキシアルキレン不含有界面活性剤、例えばジオクチルスクシナート、ジオクチル-スルホ-スクシナート、ジ[2−エチルヘキシル]−スクシナート、ラウリル硫酸ナトリウムまたは燐脂質、例えばレシチン類を含む。前記界面活性剤が存在する場合、これは、好適には成分(b)の重量に対して5〜50、さらに好ましくは10〜50、例えば10〜25%の量で存在する。
【0098】
成分(b)における固溶体として成分(a)を含むこの発明の組成物の場合、例えば成分(c)が前述の成分(c)または(c)である場合、前述の安定剤、緩衝剤および/または界面活性剤は、好適には固溶体相に混入される。それらの材料はまた、成分(c)等に含まれ得る。
【0099】
この発明による組成物は、やはり選ばれた成分(c)とは無関係に、好ましくはエタノール不含有または実質的に不含有であり、例えば組成物の全重量に対して5.0%未満、さらに好ましくは2.5%未満、例えば0〜1.0%のエタノールを含む。
【0100】
前記内容に加えて、この発明はまた、前記医薬組成物の製造方法であって、前記成分(a)、(b)および(c)を、所望により成分(d)および/または他の成分、例えば前述の安定剤、緩衝剤または界面活性剤と一緒に緊密混合または調合し、必要ならば、例えば錠剤化、ゼラチンカプセルへの充填または他の適当な手段により、得られた組成物を単位用量形態、例えば経口投与用単位用量形態に製剤化することを含む方法を提供する。
【0101】
成分(c)が成分(a)および(b)に対する溶媒であるか、または前述の成分(c)、(c)、(c)、(c)または(c)を含む場合、成分(a)、(b)および(c)は、好適には例えば50℃以下から150℃、好ましくは70または75℃を越えない温度で温めながら、成分(a)および(b)を一緒に成分(c)に溶かすことにより上記プロセスで一緒にされる。次に、こうして得られた混合物は、例えば当業界における公知技術に従い緊密混合することにより、さらに成分(d)等と混合され得る。例えばゼラチン硬または軟カプセルへの充填を、好適には高温、例えば50℃以下で行うことにより、例えば暖気中における組成物の流動性を達成させる。
【0102】
成分(b)中に固溶体として成分(a)を含むこの発明による組成物、例えば前述の成分(c)または(c)を含む組成物の場合、前記方法は、好適にはまず(b)中(a)を含む固溶体を製造し、次いで得られた固溶体を残りの成分(c)および所望により(d)等と緊密混合または調合する工程を含む。
【0103】
(b)中に成分(a)を含む固溶体は、当業界における公知技術に従い、例えば(b)中(a)を溶かしたものを含む溶融物を固化するか、または成分(a)および(b)から成る溶液から溶媒を除去することにより製造され得る。この発明の目的としては、後者の方法が一般に好ましい。
【0104】
成分(a)および(b)に対する溶媒には、アルカノール類、例えばエタノールが含まれる。安定剤、緩衝剤および/または界面活性剤は、好適には溶解段階で混入される。
【0105】
次に、こうして得られた固溶体を、好適には、例えば成分(c)に分布させることにより、例えば微粒子形態で成分(c)および所望により成分(d)および(e)等と混合する。
【0106】
エタノールは、例えば前記固溶体の製造において、この発明の組成物の製造目的に使用され得るが、これは、好ましくは例えば最終用量形態の完了前に蒸発させることにより除去され、その結果、前述のエタノール不含有または実質的エタノール不含有生成物が得られる。
【実施例】
【0107】
以下、実施例によりこの発明の説明を行う。
実施例で使用されている製品サッカロース・モノラウレートL−1695は、三菱化成食品会社(日本国、東京104)から市販されている。HLB値=少なくとも12.3、ラウリルエステル残基純度=少なくとも95%、MP=約35℃、約235℃で分解、0.1重量%水溶液の表面張力=25℃で約72.0dyn/cm。
【0108】
実施例
成分 相対量(mg)
1.a)シクロスポリン(例、「シクロ
スポリン」) 50.0
b)サッカロース・モノラウレート
L−1695 312.5
c)1,2−プロピレングリコール 100.0
合計 462.5
【0109】
2.a)シクロスポリン(例、「シクロ
スポリン」) 50.0
b)サッカロース・モノラウレート
L−1695 312.5
c)グリセリン 100.0
合計 462.5
【0110】
3.a)シクロスポリン(例、「シクロ
スポリン」) 50.0
b)サッカロース・モノラウレート
L−1695 312.5
c)PEG200 100.0
合計 462.5
【0111】
4.a)シクロスポリン(例、「シクロ
スポリン」) 50.0
b)サッカロース・モノラウレート
L−1695 312.5
c)PEG400 100.0
合計 462.5
【0112】
5.a)シクロスポリン(例、「シクロ
スポリン」) 50.0
b)サッカロース・モノラウレート
L−1695 350.0
c)1,2−プロピレングリコール 100.0
d)ユードラジットE 50.0
合計 550.0
【0113】
6.a)シクロスポリン(例、「シクロ
スポリン」) 50.0
b)サッカロース・モノラウレート
L−1695 350.0
c)1,2−プロピレングリコール 100.0
d)メトセルK100 110.0
合計 610.0
【0114】
7.a)シクロスポリン(例、「シクロ
スポリン」) 50.0
b)サッカロース・モノラウレート
L−1695 350.0
c)1,2−プロピレングリコール 100.0
d)アエロシル200 15.0
合計 515.0
【0115】
8.a)シクロスポリン(例、「シクロ
スポリン」) 50.0
b)サッカロース・モノラウレート
L−1695 350.0
c)PEG400 200.0
d)ユードラジットL 2.5
合計 602.5
【0116】
9.a)シクロスポリン(例、「シクロ
スポリン」) 50.0
b)サッカロース・モノラウレート
L−1695 312.5
c)ゲルシル(例、ゲルシル42/12、
44/14または35/10) 100.0
合計 462.5
【0117】
10.a)シクロスポリン(例、「シクロ
スポリン」) 50.0
b)サッカロース・モノラウレート
L−1695 312.5
c)ゲルシル 100.0
d)クルセルLF 50.0
合計 512.5
【0118】
実施例1の組成物は、成分(a)および(b)を撹はんしながら溶かし、成分(c)中100℃での油浴において温めることにより製造される。実施例2〜10の組成物も同様の方法で製造される。実施例5および8の場合、成分(d)を、成分(a)〜(c)の最初に得られた混合物に溶かす。実施例6、7および10の場合、成分(d)を(a)〜(c)に懸濁する。
【0119】
得られた組成物を温めながらゼラチン硬カプセル、サイズ1(実施例1〜4および9)またはサイズ0(実施例5〜7および10)に充填することにより、カプセルに封入された最終製品が得られる。各カプセルは、50mgのシクロスポリン(例、「シクロスポリン」)を含み、移植拒絶の予防または自己免疫疾患の処置における投与に適したものであり、例えば一日1〜5カプセルの投与が行なわれる。
【0120】
実施例
成分 相対量(mg)
11.a)シクロスポリン(例、「シクロ
スポリン」) 100.0
b)サッカロース・モノラウレート
L−1695 300.0
c)プラスドンXL 350.0
d)アビセルPH102 150.0
e)ラウリル硫酸ナトリウム 25.0
合計 925.0
【0121】
12.a)シクロスポリン(例、「シクロ
スポリン」) 50.0
b)サッカロース・モノラウレート
L−1695 350.0
b)サッカロース・モノ
ステアレート 50.0
c)クロスポビドン 250.0
d)エルセマ 150.0
e)ステアリン酸マグネシウム 30.0
合計 980.0
【0122】
13.a)シクロスポリン(例、「シクロ
スポリン」) 50.0
b)サッカロース・モノラウレート
L−1695 160.0
c)プラスドンXL10 200.0
d)ファーマコート603 25.0
d)アビセルPH101 75.0
e)ステアリン酸マグネシウム 20.0
合計 605.0
【0123】
上記組成物11〜13は、好適には各々さらに25mgの(f)酒石酸および/または50mgの(g)ジオクチルスクシナート、好ましくは両方を含み、最終重量は、組成物11の場合1000mg、組成物12の場合1055mgおよび組成物13の場合6180mgとなる。
【0124】
組成物11〜13は次の要領で製造される。成分(a)および(b)を無水エタノールに溶かし、減圧下50℃でエタノールを徹底的に蒸発させる。慣用的混合技術を用いて成分(c)〜(e)を充分混合する[(f)および(g)を使用する場合はこれらを加える]。[(a)+(b)]を含む固溶体を微粉末に粉砕し、[(c)−(g)]中へ均一に混合し、生成した均一な塊を、各々100、50または25mgの(a)を含み、移植拒絶の予防または自己免疫疾患の処置における投与、例えば一日1〜5錠剤の投与に適した錠剤に圧縮成型する。
【0125】
実施例
成分 相対量(mg)
14.a)シクロスポリン(例、「シクロ
スポリン」) 50.0
b)サッカロース・モノラウレート
L−1695 312.5
c)過流動パラフィン 397.5
合計 760.0
【0126】
15.a)シクロスポリン(例、「シクロ
スポリン」) 50.0
b)サッカロース・モノラウレート
L−1695 312.5
c)珪素油DC200 397.5
合計 760.0
【0127】
成分(a)および(b)を無水エタノールに溶かし、減圧下50℃でエタノールを徹底的に蒸発させる。得られた固溶体を微粉末に粉砕し、成分(c)に均一に懸濁する。得られた液体懸濁液を、ゼラチン硬カプセル、サイズ0に充填することにより、カプセルに封入された最終製品が得られる。各カプセルは、50mgのシクロスポリン(例、「シクロスポリン」)を含み、移植拒絶の予防または自己免疫疾患の処置における投与に適したものであり、例えば一日1〜5カプセルの投与が行なわれる。
【0128】
実施例
成分 相対量(mg)
16.a)シクロスポリン(例、「シクロ
スポリン」) 50.0
b)サッカロース・モノラウレート
L−1695 312.5
c)亜流動パラフィン 372.5
d)固形パラフィン 25.0
合計 760.0
【0129】
17.a)シクロスポリン(例、「シクロ
スポリン」) 50.0
b)サッカロース・モノラウレート
L−1695 312.5
c)過流動パラフィン 397.5
d)アエロシル 10.0
合計 770.0
【0130】
組成物16および17も上記14および15と同様にして製造される。組成物16の場合、まず(c)および(d)を溶かすことにより合わせ、一緒に緊密撹はんする。次いで、[(a)+(b)]を含む固溶体を[(c)+(d)]に懸濁する。組成物17の場合、(d)を[(a)+(b)]と一緒に(c)に懸濁する。
【0131】
上記実施例1〜17の組成物と均等な組成物は、成分(a)として「シクロスポリン」を他のシクロスポリン、例えば[Nva]−「シクロスポリン」と置き換えるか、または成分(b)としてサッカロース・モノラウレートを例えば前述した他の脂肪酸サッカリド・モノエステル、例えばラフィノース・モノラウレートと置き換える(ただし、各場合とも同一または均等量または相対比率で)ことにより製造され得る。
【0132】
この発明による組成物の有用性は、例えば次の要領で行なわれる動物または臨床試験で示され得る。
イヌにおけるこの発明の組成物に関する生物学的利用能試験。
【0133】
a)試験組成物
実施例1による組成物I
実施例14による組成物II
b)試験方法
8匹のビーグル犬(雄、約11−13kg)から成る群を用いる。試験組成物投与の18時間以内は動物に食物を与えないが、投与時まで水には自由に近付ける状態にする。試験組成物を胃管栄養法により投与し、次いでNaClの0.9%溶液20mlを投与する。試験組成物投与の3時間後、動物を食物および水に自由に近付ける状態にする。
【0134】
2mlの血液試料(またはブランクの場合5ml)を伏在静脈から採取し、投与の−15分(ブランク)、30分、および1、1.5、2、3、4、6、8、12および24時間後、EDTAを含む5mlのプラスチック管に集める。検定実施まで血液試料を−18℃で貯蔵する。
【0135】
血液試料をRIAにより分析する。台形規則により血中薬剤濃度対時間曲線下領域を計算する。分散量の分析は、AUC(曲線下領域)、Cmax(最大濃度)およびTmax(最大値の時間)に関して行なわれる。
【0136】
c)結果
代表的試験経過から計算された平均AUC(ng・時/ml-)およびCmax(ng/ml-)値を、同じ組成物を投与した試験動物間の応答において算出された変動率(CV)と一緒に下表に示す。
【0137】
組成物 AUC CV(%) Cmax CV%
(0-24時)
I 3058 19.9 583 30.9
II 2894 14.91 544 19.7
【0138】
上表から明らかな通り、この発明による組成物は、AUCおよびCmaxの両方に関して対象応答における比較的低い変動性と結び付いた高い生物学的利用能(AUCおよびCmax)を呈する。
【0139】
これらに匹敵する有利な結果は、上記実施例1〜17による他の組成物、特に実施例1〜10の組成物を用いても得られる。
【0140】
臨床試験
経口投与におけるこの発明の組成物の有利な特性はまた、例えば次の要領で行なわれる臨床試験において立証され得る。
試験対象は成人ボランティア、例えば専門的な教育を受けた30〜55歳の男性である。試験群は好適には12対象により構成される。
【0141】
次の包含/除外基準を適用する。
包含: 正常スクリーニングECG、正常血圧および心拍数、体重=50−95kg。
除外: 薬剤吸収、分布、代謝、排出または安全性に抵触し得る臨床上重大な介入的医学状態、試験前2週間における臨床的に重大な疾患の徴候、臨床的に意味のある異常な実験値または心電図、試験の全過程における付随医療の必要性、試験前3箇月以内における主要臓器系に対して充分定義された潜在的毒性を有することが知られている薬剤の投与、試験開始前6週間以内における研究薬剤の投与、薬物またはアルコール依存症歴、過去3箇月以内における500mlまたはそれ以上の血液の喪失、薬剤副作用または過敏症、薬剤治療を必要とするアレルギーの病歴、B型肝炎/HIV陽性。
【0142】
試験の前後に、完全な身体検査およびECGを実施する。試験の前後1箇月以内に下記のパラメーターを評価する。
血液:−赤血球数、ヘモグロビン、ヘマトクリット、赤血球沈降、白血球数、スミア、血小板数および空腹時グルコース。
【0143】
血清/血しょう−総蛋白および電気泳動、コレステロール、トリグリセリド類、Na、K、Fe++、Ca++、Cl、クレアチニン、尿素、尿酸、SGOT、SGPT、−GT、アルカリ性ホスファターゼ、総ビリルビン、α−アミラーゼ。
尿−pH、マイクロアルブミン、グルコース、赤血球、ケトン体、沈澱物。
【0144】
またクレアチニン・クリアランスを、試験開始1箇月前に測定する。
各対象にはランダムな順序で試験組成物を与える。組成物を経口投与し(1回総用量150mgのシクロスポリン、例えば「シクロスポリン」)、各投与の間は少なくとも14日あける。
【0145】
10時間の一夜絶食(ただし、水のみ認める)後の朝に投与を行う。投与後24時間以内はカフェイン不含有飲料のみ許可する。投与後12時間以内は対象の喫煙を認めない。投与の4時間後、対象に標準的昼食を与える。
【0146】
投与の1時間前並びに投与の0.25、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、6、9、12、14、24、28および32時間後に血液試料(2ml)を採取する。クレアチニンを測定するため、2mlの血液試料を投与直前並びに投与の12、24および48時間後に採取する。シクロスポリン測定用試料を、各時点で2本のEDTA被覆ポリスチレン管(各々1ml)に集め、穏やかに撹はん後−20℃で急速冷凍する。特異および/または非特異MAB検定によるRIAを用いて全血中のシクロスポリンを測定する。両場合における検出限界=約10ng/ml。
【0147】
上記プロトコルに従い実施された試験では、例えばゼラチン硬カプセル形態の実施例1の組成物を、標準として「シクロスポリン」飲用液(「シクロスポリン」=50mg、ラブラフィル=150mg、エタノール=50mg、とうもろこし油=213mg、ゼラチン軟カプセル形態中、内容物の最終重量=463mg/用量)と比較すると、確立されたAUC(0−32時間)およびCmaxの両値に反映している通り、標準と比べて、実施例1の組成物の場合生物学的利用能レベルのかなりの増加が記録されている。さらに、試験組成物(150mgの「シクロスポリン」用量)の1回投与後の経時的な全血「シクロスポリン」濃度の変化(特異的モノクローナルRIAにより測定)を比較すると、標準組成物を投与した全対象の場合と比べて、実施例1による組成物を投与した全対象間の応答の変動性が著しく減少していることが立証される。
【0148】
この発明による他の組成物、例えば実施例に記載されている組成物の経口投与後にも類似または均等の結果が得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)固溶体中、有効成分としてのシクロスポリン、
(b)脂肪酸サッカリドモノエステル、および
(c)固体ポリマー担体
を含む医薬組成物。
【請求項2】
成分(c)がポリビニルピロリドンを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
成分(a)および(b)が、1:2〜20ppw[(a):(b)]の割合で存在する、請求項1または2記載の組成物。
【請求項4】
割合が1:3〜8ppwである、請求項3記載の組成物。
【請求項5】
成分(c)が、組成物の全重量に基づき少なくとも10重量%の量で存在する、請求項1〜4のいずれか1項記載の組成物。
【請求項6】
成分(c)が、組成物の全重量に基づき15〜50重量%の量で存在する、請求項5記載の組成物。
【請求項7】
さらに(d)水膨張性成分を含む、請求項1〜6のいずれか1項記載の組成物。
【請求項8】
成分(d)および(c)が、1:0.5〜4ppw[(d):(c)]の割合で存在する、請求項7記載の組成物。
【請求項9】
単位用量形態で、1単位用量当たり2〜200mgの成分(a)を含む、請求項1〜8のいずれか1項記載の組成物。
【請求項10】
さらに安定剤または緩衝剤を含む、請求項1〜9のいずれか1項記載の組成物。
【請求項11】
(a)有効成分としてのシクロスポリン、
(b)脂肪酸サッカリドモノエステル、および
(c)希釈剤または担体
を含有する医薬組成物であって、
(i)成分(c)が成分(a)および(b)の両方に対する溶媒であり、成分(a)および(b)が各々独立して周囲温度で成分(c)中少なくとも10%の溶解度を有するか、または、
(ii)成分(c)が成分(a)および(b)の両方に対する溶媒であり、成分(a)および(c)が前記組成物中1:0.5〜50ppw[(a):(c)]の割合で存在するか、または、
(iii)成分(c)が成分(a)および(b)の両方に対する溶媒であり、前記組成物が経口投与に適した固体単位用量形態で製剤化されるか、または、
(iv)成分(c)が、多くとも7000の平均分子量または50℃の温度で多くとも15000mPa.s.の粘度を有するポリ−(C-アルキレン)−グリコールを含むか、またはC-アルキレンポリオールエーテルもしくはエステルを含むか、または
(v)前記組成物がその重量に基づく含水率20%未満のものであるか、または、
(vi)成分(c)が、固体ポリマー担体、有機酸化珪素ポリマーまたは過(per)−もしくは亜(sub)−流動パラフィンを含み、成分(a)が、成分(b)中固溶体として前記組成物中に存在する、
組成物。

【公開番号】特開2006−1947(P2006−1947A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−265724(P2005−265724)
【出願日】平成17年9月13日(2005.9.13)
【分割の表示】特願2001−127538(P2001−127538)の分割
【原出願日】平成2年2月8日(1990.2.8)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】