説明

新規シルフェニレン骨格含有シリコーン型高分子化合物及びその製造方法

【課題】耐薬品性、基材への接着性を満足させ、基板や回路、配線等の保護用皮膜等を形成するための熱硬化性樹脂の材料として用いることが可能な新規なシルフェニレン骨格含有高分子化合物及びその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】下記一般式(1)で示される繰り返し単位を有し、重量平均分子量が5,000〜40,000のシルフェニレン骨格含有シリコーン型高分子化合物。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、基板や回路、配線等の保護用皮膜等に用いることが可能なカルボキシル基を有する新規なシルフェニレン骨格含有シリコーン型高分子化合物及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シリコーン型高分子化合物は、特に可とう性に優れているため、保護被覆膜、絶縁被覆膜、剥離塗料等の基本材料として用いられる。例えば、アルコール性水酸基を有するシリコーン型高分子化合物(特許文献1)や、更に耐薬品性、基材との接着性を向上させたシルフェニレン骨格含有シリコーン型高分子化合物が提案された(特許文献2)。
しかし、上記のようなシリコーン型高分子にカルボキシル基を導入した樹脂は知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−224856号公報
【特許文献2】特開2008−184571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、例えば、基板や回路、配線等の保護用皮膜等に用いることが可能な、カルボキシル基が置換した新規なシルフェニレン骨格含有シリコーン型高分子化合物及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明は、下記一般式(1)で示される繰り返し単位を有し、重量平均分子量が5,000〜40,000のシルフェニレン骨格含有シリコーン型高分子化合物を提供する。
【化1】

(式中、R〜Rは同一でも異なっていてもよい炭素数1〜12の1価炭化水素基を示す。また、kは1〜100の整数であり、a、bは0又は正数、c、dは正数であり、かつ、0<(c+d)/(a+b+c+d)≦1.0である。Xは下記一般式(2)で示される2価の有機基であり、Yは下記一般式(3)で示される2価の有機基である。
【化2】

(式中、Z、Wは、
【化3】

のいずれかより選ばれる2価の有機基である。m、pは0又は1であり、nは0、1、2のいずれかである。また、R、Rは炭素数1〜4のアルキル基又はアルコキシル基であり、同一でも異なっていてもよい。R〜R10は水素原子又はカルボキシル基含有有機基であり、同一でも異なっていてもよい。ただし、R〜R10の少なくとも一部はカルボキシル基含有有機基である。))
【0006】
このようなシルフェニレン骨格含有シリコーン型高分子化合物であれば、例えば熱硬化性樹脂の材料として用いた際、耐薬品性、基材との接着性を同時に満足するものとなる。
【0007】
この場合、前記一般式(3)中のR〜R10のうちカルボキシル基含有有機基の含有率が50〜100%であり、重量平均分子量が10,000〜30,000であることが好ましい。
【0008】
このように、前記一般式(3)中のR〜R10のうちカルボキシル基含有有機基の含有率が50〜100%かつ、重量平均分子量が10,000〜30,000であれば、硬化が十分で、硬化膜として用いた場合にも、高耐湿性を有するものとなる。
【0009】
また、前記一般式(3)中のR〜R10の少なくとも一部が下記に示す基
【化4】

であることが好ましい。
このように、前記一般式(3)中のR〜R10の少なくとも一部が上記に示す基であれば、製造も容易となる。
【0010】
また、本発明は、前記シルフェニレン骨格含有シリコーン型高分子化合物の製造方法であって、少なくとも、下記一般式(4)
【化5】

で示されるハイドロジェンシルフェニレンと、下記一般式(5)
【化6】

(式中、R〜R、kは上記と同様である)
で示されるジヒドロオルガノシロキサンと、下記一般式(6)
【化7】

(式中、R、R、Z、m、nは上記と同様である)
で示されるジアリル基を有するフェノール化合物と、下記一般式(7)
【化8】

(式中、W、pは上記と同様である)
で示されるジアリル基を有するフェノール化合物とを、触媒の存在下、重合反応を行うことにより、前記一般式(3)中のR〜R10が水素原子であるアルコール性水酸基を有するシルフェニレン骨格含有シリコーン型高分子化合物を調製する工程、及び該調製した高分子化合物のアルコール性水酸基の水素原子の少なくとも一部を、カルボキシル基含有有機基に置換する工程を含むことを特徴とするシルフェニレン骨格含有シリコーン型高分子化合物の製造方法を提供する。
【0011】
この場合、前記置換工程として、例えば、前記調製した高分子化合物をヘキサヒドロフタル酸無水物と反応させて、前記高分子化合物のアルコール性水酸基の水素原子の少なくとも一部を2−カルボキシルシクロヘキシルカルボニル基に置換する工程を行うことができる。
【0012】
このような製造方法であれば、例えば基板や回路保護用等に適用される熱硬化性樹脂の材料として有用な本発明のシルフェニレン骨格含有シリコーン型高分子化合物を、収率よく製造することができる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明の新規なシルフェニレン骨格含有シリコーン型高分子化合物は、例えば基板や回路、配線等の保護用皮膜等に用いることができる熱硬化性樹脂の材料として有用であり、また、その製造方法によりカルボキシル基を有するシルフェニレン骨格含有高分子化合物を収率よく製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
前述のように、耐薬品性、基材への接着性を満足できるような熱硬化性樹脂の材料としてカルボキシル基が置換したシルフェニレン骨格含有シリコーン型高分子化合物は合成されておらず、このような高分子化合物の開発が望まれていた。
【0015】
本発明者らは、前記目的を達成すべく、鋭意研究検討した。
その結果、シルフェニレン骨格を有し、かつ、カルボキシル基を有する繰り返し単位を含有する高分子化合物であれば、熱硬化性樹脂組成物の主成分として用いた際、耐薬品性と基材への接着性を同時に達成できることを知見し、本発明を完成させるに至った。
【0016】
以下、本発明の実施形態について、より具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明の新規シルフェニレン骨格含有シリコーン型高分子化合物は下記一般式(1)で示される繰り返し単位を有し、重量平均分子量5,000〜40,000の高分子化合物である。
【化9】

【0017】
上記一般式(1)中、R〜Rは同一でも異なってもよい炭素数1〜12、好ましくは1〜6の1価炭化水素基を示す。
具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、シクロヘキシル基等の直鎖状、分岐状、又は環状のアルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基等の直鎖状、分岐状、又は環状のアルケニル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基等が挙げられる。
【0018】
また、kは1〜100、好ましくは1〜40の整数である。kが100を超えると、合成の際、下記一般式(2)及び(3)で示される芳香族基との相溶性が悪化し、十分な反応が進行しなくなる恐れがある。
a、bは0又は正数、c、dは正数であり、かつ、0<(c+d)/(a+b+c+d)≦1.0であり、好ましくは0.3≦(c+d)/(a+b+c+d)≦0.6、更に好ましくは0.4≦(c+d)/(a+b+c+d)≦0.5である。
尚、0<(c+d)/(a+b+c+d)≦1.0は、樹脂の熱硬化性を付与するためには必須である。
【0019】
更に、Xは下記一般式(2)で示される親水性基(フェノール性水酸基)を有する2価の芳香族基、Yは下記一般式(3)で示されるカルボキシル基を有する2価の芳香族基である。
【化10】

(式中、Z、Wは、
【化11】

のいずれかより選ばれる2価の有機基である。m、pは0又は1であり、nは0、1、2のいずれかである。また、R、Rは炭素数1〜4のアルキル基又はアルコキシル基であり、同一でも異なっていてもよい。R〜R10は水素原子又はカルボキシル基含有有機基であり、同一でも異なっていてもよい。ただし、R〜R10の少なくとも一部はカルボキシル基含有有機基である。))
【0020】
、Rの具体例としては、好ましくは、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基等が挙げられる。
【0021】
、R、R、R10は、水素原子又はカルボキシル基含有有機基であり、同一でも異なっていてもよいが、R〜R10の少なくとも一部はカルボキシル基含有有機基である。
カルボキシル基含有有機基として、好ましくは、下記に示す1価の有機基
【化12】

が挙げられる。
【0022】
上記一般式(1)で示される繰り返し単位を有する本発明のシルフェニレン含有高分子化合物の重量平均分子量は、5,000〜40,000、好ましくは15,000〜25,000である。
尚、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算値である。
【0023】
〜R10の少なくとも一部は1価のカルボキシル基含有有機基であるが、その含有率は、好ましくは50〜100%、より好ましくは60〜80%、更に好ましくは、70〜80%であり、このとき、重量平均分子量は、10,000〜30,000であることが好ましい。
【0024】
このようにカルボキシル基含有有機基の含有率が50%以上であれば、樹脂組成物の熱硬化性が著しく高くなる。
また、このカルボキシル基含有有機基を有するシルフェニレン含有高分子化合物を組成化した場合、重量平均分子量が10,000以上であれば、確実に十分な硬化が得られ、重量平均分子量が30,000以下であれば、硬化膜の耐湿性が低下する恐れもない。
【0025】
更に、1価のカルボキシル基含有有機基が2−カルボキシルシクロヘキシルカルボニル基である場合、上記一般式(1)で示される繰り返し単位を有する重量平均分子量は、好ましくは10,000〜30,000、より好ましくは20,000〜30,000である。
【0026】
このような本発明のシルフェニレン骨格含有シリコーン型高分子化合物は、少なくとも上記一般式(3)中のR〜R10が水素原子である、アルコール性水酸基を有するシルフェニレン骨格含有シリコーン型高分子化合物を調製する工程、及び該調製した高分子化合物のアルコール性水酸基の水素原子の少なくとも一部を、カルボキシル基含有有機基に置換する工程を行うことにより製造することができる。
【0027】
〜R10が水素原子であるシルフェニレン骨格含有シリコーン型高分子化合物は、下記一般式(4)
【化13】

で示されるハイドロジェンシルフェニレン(1,4−ビス(ジメチルシリル)ベンゼン)と、下記一般式(5)
【化14】

(式中、R〜R及びkは、上記と同様である。)
で示されるジヒドロオルガノシロキサンと、下記一般式(6)
【化15】

(式中、Z、R、R、m、nは、上記と同様である。)
で示されるジアリル基を有する特定のフェノール化合物と、下記一般式(7)
【化16】

(式中、W、pは、上記と同様である。)
で示されるジアリル基を有する特定のフェノール化合物とを、触媒の存在下、所謂「ハイドロシリレーション」重合反応を行うことにより、調製することができる。
【0028】
尚、本発明の上記一般式(1)で示される繰り返し単位を有する水酸基含有高分子化合物の重量平均分子量は、上記一般式(6)、及び上記一般式(7)で表されるフェノール化合物のアリル基総数と、上記一般式(4)で示されるハイドロジェンシルフェニレンと上記一般式(5)で示されるジヒドロオルガノシロキサンのヒドロシリル基総数との比(アリル基総数/ヒドロシリル基総数)を調整することにより、容易に制御することが可能である。あるいは、上記ジアリルフェノール化合物とハイドロジェンシルフェニレン及びジヒドロオルガノシロキサンの重合時に、例えば、O−アリルフェノールのようなモノアリル化合物、あるいは、トリエチルヒドロシランのようなモノヒドロシランやモノヒドロシロキサンを分子量調整剤として使用し、目的の分子量の高分子化合物を重合することもできる。
【0029】
上記重合反応において、触媒としては、例えば白金(白金黒を含む)、ロジウム、パラジウム等の白金族金属単体;HPtCl・xHO、HPtCl・xHO、NaHPtCl・xHO、KHPtCl・xHO、NaPtCl・xHO、KPtCl・xHO、PtCl・xHO、PtCl、NaHPtCl・xHO(式中、xは0〜6の整数が好ましく、特に0又は6が好ましい。)等の塩化白金、塩化白金酸及び塩化白金酸塩;アルコール変性塩化白金酸(米国特許第3,220,972号公報);塩化白金酸とオレフィンとの錯体(米国特許第3,159,601号公報、米国特許第3,159,662号公報、米国特許第3,775,452号公報);白金黒やパラジウム等の白金族金属をアルミナ、シリカ、カーボン等の担体に担持させたもの;ロジウム−オレフィン錯体;クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(所謂ウィルキンソン触媒);塩化白金、塩化白金酸又は塩化白金酸塩とビニル基含有シロキサン(特にビニル基含有環状シロキサン)との錯体等が挙げられる。
【0030】
上記重合反応においては、必要に応じ溶剤を使用してもよい。溶剤としては、例えばトルエン、キシレン等の炭化水素系溶剤が好ましい。
本発明における溶媒の使用量は、特に限定はされないが、通常、上記一般式(6)、及び上記一般式(7)で表されるフェノール化合物と、上記一般式(4)で示されるハイドロジェンシルフェニレンと上記一般式(5)で示されるジヒドロオルガノシロキサンとの総重量に対する濃度が20〜40重量%であり、特に好ましくは30〜35重量%である。このような範囲であれば、重量濃度が低すぎることにより、重合完結まで長時間を要する場合があったり、逆に重量濃度が高すぎることにより分散度が大きくなる、等という恐れがなくなる。
【0031】
上記重合条件として、重合温度は、例えば40〜150℃、特に60〜120℃が好ましい。重合温度が40℃以上であれば、短時間で重合を完結させることができ、150℃以下であれば、触媒が失活する恐れもない。
【0032】
また、重合時間は、重合物の種類及び量にもよるが、重合系中に湿気の介入を防ぐため、およそ0.5〜100時間、特に0.5〜30時間以内で終了するのが好ましい。このようにして重合反応を終了後、溶剤を使用した場合はこれを留去することにより、本発明の上記一般式(1)で示される繰り返し単位を有するアルコール性水酸基含有高分子化合物を得ることができる。
【0033】
このような上記重合反応により合成した上記一般式(3)中のR〜R10が水素原子であるシルフェニレン骨格含有シリコーン型高分子化合物に対して、例えば、塩基触媒存在下、ヘキサヒドロフタル酸無水物を作用させることで、R〜R10の少なくとも一部分が2−カルボキシルシクロヘキシルカルボニル基に置換した高分子化合物を製造することができる。ヘキサヒドロフタル酸無水物の添加量は、樹脂中のアルコール性水酸基に対するモル比として、0.95〜1.10mol%が好ましく、特に0.98〜1.05mol%が好ましい。
【0034】
上記反応では、ヘキサヒドロフタル酸無水物が塩基触媒により活性化、開環することで反応が進行する。塩基触媒としてピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン等のアミン類が挙げられるが、好ましくはN,N−ジメチル−4−アミノピリジンがよい。触媒量は樹脂中のアルコール性水酸基に対するモル比として、好ましくは0.01〜0.05mol%であるが、より好ましくは0.02〜0.03mol%、特に好ましくは0.025〜0.03mol%である。使用量が0.01mol%以上であれば、反応速度が低下する恐れもなく、0.05mol%以下であれば、製造コストを掛けることなく、効果的に反応を促進できる。
【0035】
また生成したカルボキシル基が塩基触媒と塩を形成するのを防止するため、補助塩基として別のアミン類を添加した方がよい。このようなアミン類としては、好ましくは三級アミンであり、特に好ましくはトリエチルアミンである。用いられる補助塩基の量は、樹脂中のアルコール性水酸基に対するモル比として、好ましくは2.0〜3.0mol%であるが、より好ましくは2.2〜2.8mol%、特に好ましくは2.4〜2.5mol%である。使用量が2.0mol%以上であれば、塩基触媒が失活する恐れもなく、3.0mol%以下であれば、後処理で中和をする際にも、用いる酸が少量で済む。
これらの塩基でヘキサヒドロフタル酸無水物を活性化させることが、付加率、反応速度の向上などの点で理想的である。
【0036】
上記反応においては、必要に応じ溶剤を使用してもよい。溶剤としては、上記一般式(3)の二級アルコール性水酸基とヘキサヒドロフタル酸無水物との反応を進行させるため、好ましくはエーテル系溶媒であり、特に好ましくはテトラヒドロフランがよい。本発明における溶媒の使用量は、特に限定はされないが、通常、水酸基含有高分子化合物に対する濃度が10〜50重量%であり、好ましくは15〜40重量%であり、より好ましくは20〜30重量%である。
【0037】
上記反応条件として、反応温度は、例えば40〜60℃、特に50〜55℃が好ましい。反応温度が40℃以上であれば、短時間で反応を完結させることができ、60℃以下であれば、R〜R10に置換した2−カルボキシルシクロヘキシルカルボニル基が更にヘキサヒドロフタル酸無水物と副反応を引き起す恐れもない。
【0038】
反応時間は、重合物の種類及び量にもよるが、塩基触媒が失活しないためにも、およそ1〜50時間、特に1〜30時間以内で終了するのが好ましい。このようにして反応を終了後、有機酸により塩基触媒を除く必要があり、前記有機酸として、特に好ましくは酢酸が用いられる。また、溶剤を使用した場合はこれを留去することにより、本発明の上記一般式(1)で示される繰り返し単位を有するカルボキシル基含有高分子化合物を得ることができる。
【0039】
このようにして得られる本発明のカルボキシル基を有するシルフェニレン骨格含有シリコーン型高分子化合物は、基板や回路、配線等の保護用皮膜等に用いることができるシリコーン樹脂として有用である。
【実施例】
【0040】
以下、合成例及び参考例を示して本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[合成例1−1]
撹拌機、温度計、窒素置換装置及び還流冷却器を具備したフラスコ内に9,9’−ビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン]349.9g、2、2−ビス[2−アリル−4−(2、3−ジヒドロキシプロポキシ)フェニル]プロパン248.1g、トルエン1494.7g、カーボン担持白金触媒(5重量%)2.81gを仕込み、60℃に昇温した。その後、下記平均構造式
【化17】

で示されるオルガノハイドロジェンシロキサン190.9gを1時間かけてフラスコ内に滴下した。滴下終了後、90℃に昇温し3時間熟成し、次に1,4−ビス(ジメチルシリル)ベンゼン210.7gを1時間掛けてフラスコ内に滴下した。滴下終了後、更に90℃で4時間熟成した後、本反応溶液を濾過し、メチルイソブチルケトンを800g、水1500gを加え、分液を行い、下層の水層を取り除いた。この溶液の溶媒を減圧留去することで、下記に示す樹脂固形分(A−1)を得た。この樹脂をテトラヒドロフランに溶解させた溶液の分子量をGPCにより測定すると、ポリスチレン換算で重量平均分子量18,000であった。
【化18】

また、上記一般式(1)において、(c+d)/(a+b+c+d)=0.40である。
【0041】
[合成例1−2]
上記合成例1−1で合成した高分子化合物120.8gをテトラヒドロフラン1200gに溶解させ、撹拌機、温度計、窒素置換装置及び還流冷却器を具備したフラスコ内に仕込んだ。続いて、ヘキサヒドロフタル酸無水物40.1g、トリエチルアミン65.9g、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン0.8gを仕込み、室温で10分間攪拌した。完全に溶解させた後、55℃に昇温し32時間攪拌し、テトラヒドロフランを留去した後、メチルイソブチルケトン400g、水500gを加え、中和洗浄を行った。水層を除いた後、溶液の溶媒を減圧留去し、シクロペンタノンを150g添加して、樹脂固形分濃度50%のシクロペンタノンを主溶剤とする、下記に示す樹脂溶液(A−2)を得た。この樹脂溶液の分子量をGPCにより測定すると、ポリスチレン換算で重量平均分子量23,000であった。
【化19】

【0042】
[合成例2−1]
撹拌機、温度計、窒素置換装置及び還流冷却器を具備したフラスコ内に9,9’−ビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン]30.8g、2、2−ビス[2−アリル−4−(2、3−ジヒドロキシプロポキシ)フェニル]プロパン12.4g、トルエン346.9g、カーボン担持白金触媒(5重量%)0.19gを仕込み、60℃に昇温した。その後、下記平均構造式
【化20】

で示されるオルガノハイドロジェンシロキサン92.8g及び下記構造式
【化21】

で示されるオルガノハイドロジェンシロキサン0.6gを1時間かけてフラスコ内に滴下し、終了後、90℃に昇温し3時間熟成した。続いて、1,4−ビス(ジメチルシリル)ベンゼン110.7gを1時間掛けてフラスコ内に滴下した。滴下終了後、更に90℃で6時間熟成した後、本反応溶液を濾過し、メチルイソブチルケトンを200g、水800gを加えて、分液を行い、下層の水層を取り除いた。この溶液の溶媒を減圧留去することで、下記に示す樹脂固形分(B−1)を得た。この樹脂をテトラヒドロフランに溶解させた溶液の分子量をGPCにより測定すると、ポリスチレン換算で重量平均分子量19,000であった。
【化22】

また、上記一般式(1)において、(c+d)/(a+b+c+d)は0.30である。
【0043】
[合成例2−2]
上記合成例2−1で合成した高分子化合物40.0gをテトラヒドロフラン134.1gに溶解させ、撹拌機、温度計、窒素置換装置及び還流冷却器を具備したフラスコ内に仕込んだ。続いて、ヘキサヒドロフタル酸無水物4.7g、トリエチルアミン7.6g、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン0.09gを仕込み、室温で10分間攪拌した。完全に溶解させた後、55℃に昇温し25時間攪拌し、テトラヒドロフランを留去した後、メチルイソブチルケトン200g、水300gを加え、中和洗浄を行った。水層を除いた後、溶液の溶媒を減圧留去し、シクロペンタノンを100g添加して、樹脂固形分濃度55%のシクロペンタノンを主溶剤とする、下記に示す樹脂溶液(B−2)を得た。この樹脂溶液の分子量をGPCにより測定すると、ポリスチレン換算で重量平均分子量24,000であった。
【化23】

【0044】
[参考例1−4]
熱硬化性樹脂組成物の調製
上記合成例1−2、2−2で合成したシリコーン樹脂(A−2、B−2)、硬化剤及び溶剤を表1に示す配合比率で混合し、樹脂組成物を調製した。
尚、表1中、H−1はビスフェノールAジグリシジルを、H−2はN,N−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリンを、S−1はシクロペンタノンを表す。
【表1】

【0045】
樹脂組成物の硬化皮膜の形成及びその性能評価
(1)耐薬品性
得られた各熱硬化性樹脂組成物を、フッ素樹脂がコートされた板上に乾燥後の厚さが約0.1mmになるように塗布し、80℃で30分、更に180℃で1時間加熱し、シリコーン樹脂硬化皮膜を形成した。得られた硬化皮膜を常温のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に10分浸漬した後、皮膜の膨潤の有無を目視観察した。結果を表2に示す。
【0046】
(2)接着性
各樹脂組成物を銅基板上に塗布し、80℃で30分、更に、表1に示す各最終硬化温度で1時間加熱し、硬化皮膜を形成した。得られた硬化皮膜付きの銅基板を、150℃の乾燥機に200時間放置した後の接着性(「耐熱接着性」とする)、又は、120℃、2気圧の飽和水蒸気中に168時間放置した後の接着性(「高温高湿接着性」とする)を、碁盤目剥離テスト(JISK5400)により評価した。結果を表2に示す。
【0047】
尚、表2中の数値(分子/分母)は、分画数 100(分母)当たり、剥離しない分画数(分子)を表す。即ち、100/100の場合は全く剥離せず、0/100の場合はすべて剥離したことを示す。
【0048】
【表2】

【0049】
表2から分かるように、本発明のシルフェニレン含有シリコーン樹脂組成物は、耐薬品性に優れ、耐熱及び高温高湿接着性(耐熱性及び耐湿性)に優れる硬化物を与えることが実証された。
即ち、このような本発明のシリコーン樹脂であれば、例えば、電気部品、半導体材料の保護膜、層間絶縁膜、接着テープ等として有用であり、特に比較的耐熱性の低い基材や熱で変質する材料に施与するのに好適であるといえる。
また、本発明の方法により、本発明のシリコーン樹脂を収率良く製造することができた。
【0050】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0051】
例えば、本発明のシリコーン樹脂の用途として、電気部品の保護膜等を例に挙げたが、本発明のシリコーン樹脂の用途は、もちろんこれらに限定されるものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示される繰り返し単位を有し、重量平均分子量が5,000〜40,000のシルフェニレン骨格含有シリコーン型高分子化合物。
【化1】

(式中、R〜Rは同一でも異なっていてもよい炭素数1〜12の1価炭化水素基を示す。また、kは1〜100の整数であり、a、bは0又は正数、c、dは正数であり、かつ、0<(c+d)/(a+b+c+d)≦1.0である。Xは下記一般式(2)で示される2価の有機基であり、Yは下記一般式(3)で示される2価の有機基である。
【化2】

(式中、Z、Wは、
【化3】

のいずれかより選ばれる2価の有機基である。m、pは0又は1であり、nは0、1、2のいずれかである。また、R、Rは炭素数1〜4のアルキル基又はアルコキシル基であり、同一でも異なっていてもよい。R〜R10は水素原子又はカルボキシル基含有有機基であり、同一でも異なっていてもよい。ただし、R〜R10の少なくとも一部はカルボキシル基含有有機基である。))
【請求項2】
前記一般式(3)中のR〜R10のうちカルボキシル基含有有機基の含有率が50〜100%であり、重量平均分子量が10,000〜30,000であることを特徴とする請求項1に記載のシルフェニレン骨格含有シリコーン型高分子化合物。
【請求項3】
前記一般式(3)中のR〜R10の少なくとも一部が下記に示す基
【化4】

であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のシルフェニレン骨格含有シリコーン型高分子化合物。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のシルフェニレン骨格含有シリコーン型高分子化合物の製造方法であって、少なくとも、下記一般式(4)
【化5】

で示されるハイドロジェンシルフェニレンと、下記一般式(5)
【化6】

(式中、R〜R、kは上記と同様である)
で示されるジヒドロオルガノシロキサンと、下記一般式(6)
【化7】

(式中、R、R、Z、m、nは上記と同様である)
で示されるジアリル基を有するフェノール化合物と、下記一般式(7)
【化8】

(式中、W、pは上記と同様である)
で示されるジアリル基を有するフェノール化合物とを、触媒の存在下、重合反応を行うことにより、前記一般式(3)中のR〜R10が水素原子であるアルコール性水酸基を有するシルフェニレン骨格含有シリコーン型高分子化合物を調製する工程、及び該調製した高分子化合物のアルコール性水酸基の水素原子の少なくとも一部を、カルボキシル基含有有機基に置換する工程を含むことを特徴とするシルフェニレン骨格含有シリコーン型高分子化合物の製造方法。
【請求項5】
前記置換工程として、前記調製した高分子化合物をヘキサヒドロフタル酸無水物と反応させて、前記高分子化合物のアルコール性水酸基の水素原子の少なくとも一部を2−カルボキシルシクロヘキシルカルボニル基に置換する工程を含むことを特徴とする請求項4に記載のシルフェニレン骨格含有シリコーン型高分子化合物の製造方法。

【公開番号】特開2011−236296(P2011−236296A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−107600(P2010−107600)
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】