説明

新規ジオキソラン及びジオキサン誘導体並びにそれらを製造する方法

本発明は、一般式(I)〔式中、R、R、R及びnは、本明細書中で定義されているのと同様に定義される〕で表される新規アシルメチレン−1,3−ジオキソラン類及びアシルメチレン−1,4−ジオキサン類、並びに、それらを製造するための新規方法に関する。アシルメチレン−1,3−ジオキソラン類及びアシルメチレン−1,4−ジオキサン類は、殺虫剤として使用することが可能ピラゾール類及びアントラニルアミド類を製造するための重要な中間体生成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規アシルメチレン−1,3−ジオキソラン類及びアシルメチレン−1,4−ジオキサン類並びにそれらを調製するための新規方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アシルメチレン−1,3−ジオキソラン類及びアシルメチレン−1,4−ジオキサン類は、殺虫剤として使用することが可能なピラゾール類及びアントラニルアミド類を調製するための重要な中間体である。
【0003】
文献には、酸無水物の存在下における特定のジオキソラン誘導体がどの程度自然重合する傾向を有しているかについて既に記載されている(Spontaneous co−polymerization of 4−methylene−1,3−dioxolanes with maleic anhydride, Fukuda, Hiroyuki; Hirota, Masahiro; Nakashima, Yoshihiro, Nagoya Munic. Ind. Res. Inst., Rokuban, Japan, Journal of Polymer Science, Polymer Chemistry Edition (1982), 20(6), 1401−9)。しかしながら、本発明によるアシルメチレン−1,3−ジオキソラン類及びアシルメチレン−1,4−ジオキサン類は記載されておらず;それらを調製する方法も当該文献には記載されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Spontaneous co−polymerization of 4−methylene−1,3−dioxolanes with maleic anhydride, Fukuda, Hiroyuki; Hirota, Masahiro; Nakashima, Yoshihiro, Nagoya Munic. Ind. Res. Inst., Rokuban, Japan, Journal of Polymer Science, Polymer Chemistry Edition (1982), 20(6), 1401−9
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、目的は、既知4−メチレン−1,3−ジオキソラン類及び6−メチレン−1,4−ジオキサン類から、工業規模で、従来技術において記載されている不利点を有さない簡潔な方法でアシルメチレン−1,3−ジオキソラン類及びアシルメチレン−1,4−ジオキサン類を調製することを可能とする調製方法を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、上記目的は、式(I)
【0007】
【化1】

〔式中、
及びRは、互いに独立して、水素、アルキル、ハロアルキル、アリール又はアルキルアリールであり;
、Rは、さらに、4員、5員、6員又は7員の飽和環(ここで、該環は、置換されていてもよく、並びに、N、S及びOから選択される1個又は2個のヘテロ原子を含んでいてもよい)も形成し;
nは、0又は1であり;
は、CX、(C=O)Oアルキル又は(C=O)Oアリールであり;
Xは、ハロゲンである〕
で表される新規アシルメチレン−1,3−ジオキソラン類及びアシルメチレン−1,4−ジオキサン類を調製する方法であって、式(II)
【0008】
【化2】

〔式中、R、R及びnは、上記で与えられている意味を有する〕
で表される化合物を、一般式(III)
【0009】
【化3】

〔式中、
及びXは、上記で与えられている意味を有し;及び、
は、X、O(C=O)R又は(CHCOOである〕
で表される化合物(例えば、酸塩化物又は酸無水物)と反応させて一般式(I)で表される本発明によるアシルメチレン−1,3−ジオキソラン類及びアシルメチレン−1,4−ジオキサン類を生成させる前記調製方法によって達成された。
【0010】
本発明の調製方法によって、厄介な二次反応を認めることなく、式(I)で表される新規アシルメチレン−1,3−ジオキソラン類及びアシルメチレン−1,4−ジオキサン類を選択的に且つ高収率で調製することが可能であるということは、驚くべきことであると考えられる。
【0011】
本発明の調製方法によって調製することが可能な式(I)で表される化合物の例は、以下のとおりである:
1,1,1−トリクロロ−3−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イリデン)アセトン、3−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イリデン)−2−オキソプロパン酸メチル、3−(1,3−ジオキソラン−4−イリデン)−2−オキソプロパン酸メチル、3−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イリデン)−2−オキソプロパン酸エチル、3−(5,5−ジメチル−1,4−ジオキサン−2−イリデン)−2−オキソプロパン酸エチル。
【発明を実施するための形態】
【0012】
一般的な定義
本発明に関連して、用語ハロゲン(X)は、特に別途定義されていない限り、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素からなる群から選択される元素を包含し、ここで、好ましくはフッ素、塩素及び臭素が使用され、特に好ましくはフッ素及び塩素が使用される。置換されている基は、1置換又は多置換されることが可能であり、ここで、複数置換されている場合、それらの置換基は、同一であっても又は異なっていてもよい。
【0013】
1個以上のハロゲン原子(−X)で置換されているアルキル基=(ハロアルキル基)は、例えば、トリフルオロメチル(CF)、ジフルオロメチル(CHF)、CCl、CFCl、CFCH、ClCH、CFCClから選択される。
【0014】
本発明に関連して、特に別途定義されていない限り、アルキル基は、直鎖又は分枝鎖の炭化水素基である。
【0015】
アルキル及びC−C12アルキルの定義は、例えば、以下の意味を包含する:メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、1,3−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、n−ヘプチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル。
【0016】
本発明に関連して、特に別途定義されていない限り、シクロアルキル基は、環状飽和炭化水素基である。
【0017】
本発明に関連して、特に別途定義されていない限り、アリール基は、O、N、P及びSから選択される1個又は2個以上のヘテロ原子を有することができ且つさらなる基で置換されていてもよい芳香族炭化水素基である。
【0018】
本発明に関連して、特に別途定義されていない限り、アルキルアリール基は、アルキル基で置換されているアリール基(ここで、該アルキル基で置換されているアリール基は、C1−8−アルキレン鎖を有することができ、且つ、アリール骨格中にO、N、P及びSから選択される1個以上のヘテロ原子を有することができる)である。
【0019】
本発明による化合物は、適切な場合には、種々の可能な異性体(特に、立体異性体、例えば、E−異性体及びZ−異性体、トレオ−異性体及びエリトロ−異性体、並びに、さらに、光学異性体、さらに、場合により、互変異性体)の混合物として存在し得る。E−異性体とZ−異性体の両方とも、及び、トレオ−異性体とエリトロ−異性体の両方とも、及び、さらに、光学異性体、それら異性体の任意の望ましい混合物、及び、可能な互変異性体が開示されており、そして、特許請求されている。
【0020】
式(II)で表される4−メチレン−1,3−ジオキソラン誘導体及び6−メチレン−1,4−ジオキサン誘導体
本発明による調製方法を実施するための出発物質として使用される4−メチレン−1,3−ジオキソラン類及び6−メチレン−1,4−ジオキサン類は、一般的に、式(II)
【0021】
【化4】

〔式中、
及びRは、互いに独立して、水素、アルキル、ハロアルキル、アリール又はアルキルアリールであり;
、Rは、さらに、4員、5員、6員又は7員の飽和環(ここで、該環は、置換されていてもよく、並びに、N、S及びOから選択される1個又は2個のヘテロ原子を含んでいてもよい)も形成し;
及びRは、互いに独立して、好ましくは、水素又は(C−C12)−アルキルであり;
及びRは、互いに独立して、特に好ましくは、水素又はメチルであり;
nは、0又は1であり、好ましくは及び特に好ましくは、nは、0である〕
によって定義される。
【0022】
本発明に従って適切な出発物質の例は、2,2−ジメチル−4−メチレン−1,3−ジオキソラン、4−メチレン−1,3−ジオキソラン、又は、2,2−ジメチル−6−メチレン−1,4−ジオキサンである。該化合物は、既知であり、そして、「Gevorkyan, A. A. et al. Khimiya Geterotsiklicheskikh Soedinenii (1991), (1), 33−6」、「J. Mattay et al Synthesis (1983), (3), 208−10」又は「A. Kankaanpera et al., Acta Chemica Scandinavica (1966), 20(9), 2622」に記載されているようにして調製することができる。
【0023】
式(III)で表される化合物
本発明による調製方法を実施するための出発物質として使用される化合物は、一般的に、式(III)
【0024】
【化5】

〔式中、
は、CX、(C=O)Oアルキル又は(C=O)Oアリールであり;
は、好ましくは、CX、(C=O)Oアルキルであり;
は、特に好ましくは、(C=O)Oアルキルであり;
Xは、ハロゲンであり;
Xは、好ましくは、及び、特に好ましくは、塩素であり;
は、X、O(C=O)R又は(CHCOOであり;
は、好ましくは、Xであり、特に好ましくは、塩素である〕
によって定義される。
【0025】
本発明による調製方法において使用することが可能な式(III)で表される化合物の例は、CFCOCl、CClCOCl、ClCOCOOMe、ClCOCOOEt、(CFCO)O、CClCOF、CFHCOOCOC(CHである。これらの化合物は、市販されている。
【0026】
反応手順
本発明によるプロセス段階は、好ましくは、−20℃〜100℃の温度範囲内で、好ましくは、−10℃〜40℃の温度範囲内で、特に好ましくは、0℃〜30℃の温度で実施する。本発明によるプロセス段階は、一般に、大気圧下で実施する。
【0027】
反応時間は、重要ではなく、そして、バッチサイズ及び温度に応じて、30分間〜数時間の範囲内で選択することができる。
【0028】
本発明によるプロセス段階を実施する場合、1molの式(II)で表される4−メチレン−1,3−ジオキソラン誘導体又は6−メチレン−1,4−ジオキサン誘導体を、0.8mol〜1.5mol(好ましくは、0.9mol〜1.2mol、特に好ましくは、当モル量)の式(III)で表される化合物と反応させる。
【0029】
該アシル化は、一般に、塩基の存在下で実施する。適切な塩基は、例えば、以下のものである:脂肪族、脂環式、環状又は芳香族の第3級アミン類、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、メチルジイソプロピルアミン、ベンジルジメチルアミン、ピリジン、2−メチルピリジン、3−メチルピリジン、4−メチルピリジン、2,3−ジメチルピリジン、2−メチル−5−エチルピリジン、2,6−ジメチルピリジン、2,5−ジメチルピリジン、2,4,6−トリメチルピリジン、DBU、DABCO、N−メチルモルホリン、ジメチルシクロヘキシルアミン。無機塩基は、NaHCO、LiOH、NaOH、KOH、NaCO、KCOである。特に好ましくは、トリエチルアミン、ピリジン、ベンジルジメチルアミン、ジメチルピリジン、炭酸カリウムを使用する。
【0030】
適切な溶媒は、例えば、以下のものである:脂肪族、脂環式又は芳香族の炭化水素類、例えば、石油エーテル、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン又はデカリン、及び、ハロゲン化炭化水素類、例えば、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン、ジクロロエタン又はトリクロロエタン、エーテル類、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、メチルtert−アミルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン又はアニソール;ニトリル類、例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、n−ブチロニトリル、イソブチロニトリル又はベンゾニトリル;アミド類、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルホルムアニリド、N−メチルピロリドン又はヘキサメチルリン酸トリアミド;スルホキシド類、例えば、ジメチルスルホキシド、又はスルホン類、例えば、スルホラン。特に好ましくは、塩化メチレン、ジクロロエタン、トルエン、クロロベンゼン、メチルtert−ブチルエーテル又はTHFを使用する。
【0031】
該反応混合物は、その混合物から塩類を除去し(濾過)、及び、減圧下に溶媒を除去することにより、無水的に後処理する。水性の後処理も可能である。前もって単離することなくその混合物をさらに反応させることも可能である。
【0032】
式(I)で表される化合物の純度は、極めて高く、95〜97%の範囲内にある。式(I)で表される化合物は、精製段階に付すことなく、さらに使用することができる。特に、本発明による反応は、有利な原料を使用することを特徴とし、また、工業規模においてさえ特に充分に且つ容易に実施することが可能なプロセス制御も特徴とする。
【0033】
本発明による式(I)で表される化合物は、ピラゾール類の合成における有益な中間体であり、ここで、該ピラゾール類は、殺虫効果を有するアントラニルアミド類を製造するための重要な構成単位であり(WO 2007/112893、WO 2007/144100)、そして、例えば下記スキーム(I)に従って、さらに反応させることができる。例えば、式(I)で表される化合物をスキーム(I)に従うさらなる反応に付すことによって、以下の化合物を得ることができる: 1−(3−クロロピリジン−2−イル)−5−ヒドロキシ−3−(ヒドロキシメチル)−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾール−5−カルボン酸メチル(cf. 調製実施例No.6); 1−(3−クロロピリジン−2−イル)−5−ヒドロキシ−3−(ヒドロキシメチル)−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾール−5−カルボン酸エチル(調製実施例No.7); 1−(3−クロロピリジン−2−イル)−3−{[(メチルスルホニル)オキシ]メチル}−1H−ピラゾール−5−カルボン酸メチル(調製実施例No.8); 3−(クロロメチル)−1−(3−クロロピリジン−2−イル)−1H−ピラゾール−5−カルボン酸メチル(調製実施例No.9)。
【0034】
スキーム(I)
【0035】
【化6】

上記スキームにおいて、
、R、R及びnは、上記で与えられている意味を有し;
は、ハロゲン、シアノ、ニトロ、アルキル、シクロアルキル、ハロアルキル、ハロシクロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、シクロアルキルアミノであり;
は、ハロゲン、OSOMe、O(C=O)CHであり;
Zは、CH、Nである。
【実施例】
【0036】
調製実施例
以下の調製実施例により本発明について例証するが、該調製実施例は、本発明を限定するものではない。特に、調製実施例1A、調製実施例1〜4及び調製実施例5は、本発明の調製方法による式(I)で表される化合物の調製について示しており、調製実施例6〜9及び実施例10は、さらに反応させてピラゾール類(ここで、該ピラゾール類は、殺虫効果を有するアントラニルアミド類の合成における重要な構成単位である)とするための中間体としての式(I)で表される化合物の使用について実証している。
【0037】
実施例1A
(3E)−3−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イリデン)−2−オキソプロパン酸メチル
2,2−ジメチル−4−メチレン−1,3−ジオキソラン(114g、1mol)とピリジン(79g、1mol)を200mLのCHClに溶解させた溶液に、0℃で、塩化メチルオキサリル(122g、1mol)を100mLのCHClに溶解させた溶液を添加した。その反応混合物を、20℃で1時間、後撹拌し、500mLの水で希釈した。その有機相を分離し、MgSOで乾燥し、減圧下にCHClを留去した。収量180g(90%)。
M.p.61〜63℃;
H NMR(CDCl)δ:6.88(1Н,s),5.10(2Н,s),3.8(3H,s),1.5(6H,s)。
【0038】
実施例1B
【0039】
【化7】

(E)−エチル 3−(1,3−ジオキソラン−4−イリデン)−2−オキソプロパノエート
メチレンジオキソラン(6.5g、75.5mmol)とピリジン(6.3g、80mmol)をCHCl(80mL)に溶解させた溶液に、0℃で、塩化エチルオキサリル(10.3g、75.5mmol)をCHCl(10mL)に溶解させた溶液を添加した。その反応混合物を、5℃で10時間撹拌し、200mLの水で希釈した。生成物を200mLのヘキサンで抽出し、そのヘキサン溶液をMgSOで乾燥し、エバポレーターで溶媒を留去することにより濃縮した。これにより、11.9g(85%)の生成物(b.p.106〜110℃/0.5mmHg)が得られた。
H NMR(CDCl)δ:6.60(1Н,s,CН),5.45(2Н,s,СНО),5.01(2Н,s,CHO),4.33(2Н,q,OСН),1.38(3Н,t,СН)。
【0040】
実施例1
(E)−3−(1,3−ジオキソラン−4−イリデン)−1,1,1−トリフルオロプロパン−2−オン
4−メチレン−1,3−ジオキソラン(16.1g、187mmol)とピリジン(16.3g、15.3mL、205mmol)を150mLのCHClに溶解させた溶液に、0℃で、無水トリクロロ酢酸(39.3g、187mmol)を30mLのCHClに溶解させた溶液を滴下して加えた。その反応混合物を、5℃で20時間撹拌し、100mLの水で希釈した。生成物をトルエンで抽出し、その有機相をMgSOで乾燥し、減圧下にトルエンを留去した。その生成物を蒸留によって精製した。(E)−3−(1,3−ジオキソラン−4−イリデン)−1,1,1−トリフルオロプロパン−2−オンの収量は28.3g(83%)である(b.p.:83〜85℃/15mbar)。
【0041】
分析的特徴付け
H NMR(CDCl)δ:6.16(1Н,s),5.51(2Н,s),5.05(2Н,s)ppm;
13C NMR(125MHz,CDCl)δ:180.20(q),175.76,116.29(q),99.15,90.83,71.02ppm;
19F NMR(CDCl)δ:−77.55(s)ppm。
【0042】
実施例2
(E)−3−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イリデン)−1,1,1−トリフルオロプロパン−2−オン
4−メチレン−1,3−ジオキソランの代わりに2,2−ジメチル−4−メチレン−1,3−ジオキソランを使用した以外は、手順は実施例1に記載されている手順と同様である。
収率(80%)、b.p.72〜74℃/20mbar。
【0043】
分析的特徴付け
H NMR(CDCl)δ:6.03(1Н,s),5.12(2Н,s),1.59(6H,s);
13C NMR(CDCl)δ:180.09(q),176.76,117.08,116.39(q),90.01,71.19,24.86ppm;
19F NMR(CDCl)δ:−77.63(s)ppm。
【0044】
実施例3
(E)−1,1,1−トリクロロ−3−(1,3−ジオキソラン−4−イリデン)プロパン−2−オン
4−メチレン−1,3−ジオキソラン(4.7g、55mmol)とピリジン(4.8g、4.5mL、60mmol)からなる溶液に、0℃で、塩化トリクロロアセチル(10.0g、55mol)を20mLのCHClに溶解させた溶液を添加した。その反応混合物を、20℃で4時間、後撹拌し、100mLの水で希釈した。生成物をヘキサンで抽出し、その有機相をMgSOで乾燥し、減圧下にヘキサンを留去した。その生成物をヘキサンから結晶化させることにより精製した。
(E)−1,1,1−トリクロロ−3−(1,3−ジオキソラン−4−イリデン)プロパン−2−オンの収量 7.5g(59%);
M.p.64℃。
【0045】
分析的特徴付け
H NMR(CDCl)δ:6.38(1Н,br.s),5.46(2Н,s),5.02(2H,s)ppm;
13C NMR(CDCl)δ:181.45,174.71,98.92,96.50,89.87,70.55ppm。
【0046】
実施例4
(E)−1,1,1−トリクロロ−3−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イリデン)プロパン−2−オン
4−メチレン−1,3−ジオキソランの代わりに2,2−ジメチル−4−メチレン−1,3−ジオキソランを使用した以外は、手順は実施例3に記載されている手順と同様である。
1,1,1−トリクロロ−3−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イリデン)プロパン−2−オンの収率:
(72%)、b.p.140℃/0.5mbar、m.p.40〜42℃。
【0047】
分析的特徴付け
H NMR(CDCl)δ:6.28(1Н,br.t),5.12(2Н,br.d),1.59(6H,s)ppm;
13C NMR(CDCl)δ:181.25,175.24,116.15,96.16,88.97,70.60,25.05ppm。
【0048】
実施例5
(3E)−3−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イリデン)−2−オキソプロパン酸エチル
塩化トリクロロアセチルの代わりにクロロ(オキソ)酢酸エチルを使用した以外は、手順は実施例4に記載されている手順と同様である。収率85%(油状物)。
【0049】
分析的特徴付け
H NMR(CDCl)δ:6.28(1Н,br.t),5.12(2Н,br.d),1.59(6H,s)ppm;
13C NMR(CDCl)δ:181.25,175.24,116.15,96.16,88.97,70.60,25.05ppm。
【0050】
実施例6
1−(3−クロロピリジン−2−イル)−5−ヒドロキシ−3−(ヒドロキシメチル)−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾール−5−カルボン酸メチル
150mLのイソプロパノールの中の(3E)−3−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イリデン)−2−オキソプロパン酸メチル(20g、0.1mol)と2−ヒドラジノ−3−クロロピリジン(21.4g、0.15mol)の混合物を、室温で8時間撹拌した。沈澱物をろ過し、ヘキサンで洗浄した。これにより、27.6g(85%)の当該生成物が113〜115℃の融点を有する淡黄色の固体として得られた。
H NMR(DMSO d)δ:7.99(1H,d);7.65(1H,d);6.85(1H,dd);6.4(1H,bs);4.51(2Н,br.s);3.25(1H,d);3.05(1H,d),2.55(s,1H)ppm。
【0051】
実施例7
1−(3−クロロピリジン−2−イル)−5−ヒドロキシ−3−(ヒドロキシメチル)−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾール−5−カルボン酸エチル
150mLのエタノールの中の(3E)−3−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イリデン)−2−オキソプロパン酸エチル(21.4g、0.1mol)と2−ヒドラジノ−3−クロロピリジン(21.4g、0.15mol)の混合物を、室温で8時間撹拌した。減圧下にエタノールを留去し、その残渣を200mLのメチルtert−ブチルエーテルの中に取り入れた。その有機相を、いずれの場合にも50mLの1% HCl水溶液で、3回洗浄し、エバポレーターで溶媒を留去することにより濃縮した。これにより、36g(収率86%)の当該生成物が97%の純度(HPLC)を有する粘性の油状物として得られた。
【0052】
分析的特徴付け
H NMR(DMSO d)δ:7.99(1H,d);7.65(1h,d);6.85(1H,dd);6.0(OH,bs);4.51(2Н,br.s);4.25(2H,q);3.25(1H,d);3.05(1H,d),1,28(t,3H)ppm。
【0053】
実施例8
1−(3−クロロピリジン−2−イル)−3−{[(メチルスルホニル)オキシ]メチル}−1H−ピラゾール−5−カルボン酸メチル
1−(3−クロロピリジン−2−イル)−5−ヒドロキシ−3−(ヒドロキシメチル)−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾール−5−カルボン酸メチル(28.5g、0.1mol)及び15gのトリエチルアミンを初期充填として150mLのTHFの中に導入し、その溶液を5℃まで冷却した。0〜5℃で、11.4gの塩化メシレンを20分間かけて添加し、その混合物を、0℃で2時間、後撹拌した。その反応混合物を水で希釈し、生成物を酢酸エチルで抽出した。その溶液を洗浄し、乾燥し、エバポレーターで溶媒を留去することにより濃縮した。その粘性の油状残渣31gは、LC/MSによれば、98%の当該生成物(m/e 345)を含んでいた。
【0054】
実施例9
3−(クロロメチル)−1−(3−クロロピリジン−2−イル)−1H−ピラゾール−5−カルボン酸メチル
1−(3−クロロピリジン−2−イル)−5−ヒドロキシ−3−(ヒドロキシメチル)−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾール−5−カルボン酸メチル(28.5g、0.1mol)を100mLのCHClに溶解させ、その溶液を5℃まで冷却した。この温度で、30mLのCHClに溶解したSOCl(0.12mol)をゆっくりと滴下して加えた。その混合物を、室温で4時間、後撹拌し、減圧下にエバポレーターで溶媒を留去することにより濃縮した。生成物をSiOカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 ヘキサン/酢酸エチル)で精製した。油状物。
【0055】
分析的特徴付け
H NMR(CDCN)δ:8.52(1H,d);8.06(1H,d),7.55(1H,dd);7.10(1H,s);4.75(2H,s);3.75(3H,s)ppm。
【0056】
実施例10
1−(3−クロロピリジン−2−イル)−3−(ヒドロキシメチル)−1H−ピラゾール−5−カルボン酸メチル
28.5g(0.1mol)の1−(3−クロロピリジン−2−イル)−5−ヒドロキシ−3−(ヒドロキシメチル)−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾール−5−カルボン酸メチルを100mLのメタノールに懸濁させた懸濁液に、HCl溶液(9.1g、メタノール中の4%溶液として)を添加した。25〜30℃で約30分間経過した後、透明で黄色の溶液が形成された。減圧下にメタノールを留去し、沈澱物を水で洗浄した。収量26.7g、100%。M.p.104℃。
【0057】
分析的特徴付け
H NMR(DMSO d)δ:8.52(1H,d);8.06(1H,d),7.55(1H,dd);7.10(1H,s);5.4(1H,b.s);4.5(2H,s);3.75(3H,s)ppm。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】

〔式中、
及びRは、互いに独立して、水素、アルキル、ハロアルキル、アリール又はアルキルアリールであり;
、Rは、さらに、4員、5員、6員又は7員の飽和環(ここで、該環は、置換されていてもよく、並びに、N、S及びOから選択される1個又は2個のヘテロ原子を含んでいてもよい)も形成し;
nは、0又は1であり;
は、CX、(C=O)Oアルキル又は(C=O)Oアリールであり;
Xは、ハロゲンである〕
で表されるアシルメチレン−1,3−ジオキソラン及びアシルメチレン−1,4−ジオキサン。
【請求項2】
及びRが、互いに独立して、水素又はメチルであり;
nが、0であり;
が、CX又は(C=O)Oアルキルであり;
Xが、塩素である;
ことを特徴とする、請求項1に記載の式(I)で表される化合物。
【請求項3】
及びRが、互いに独立して、水素又はメチルであり;
nが0であり;
が、(C=O)Oメチルである;
ことを特徴とする、請求項1又は2の一に記載の式(I)で表される化合物。
【請求項4】
請求項1、2又は3の一に記載の一般式(I)で表される化合物を調製する方法であって、式(II)
【化2】

〔式中、R、R及びnは、請求項1、2又は3の一に記載されている意味を有する〕
で表される化合物を、一般式(III)
【化3】

〔式中、
は、請求項1、2又は3の一に記載されている意味を有し;
Xは、請求項1又は2の一に記載されている意味を有し;及び、
は、X、O(C=O)R又は(CHCOOである〕
で表される化合物と反応させて、一般式(I)で表される化合物を生成させることを特徴とする、前記方法。
【請求項5】
、R、R、n及びXが請求項1、2又は3の一に記載されている意味を有し、並びに、RがXであることを特徴とする、請求項4に記載の式(I)で表される化合物を調製する方法。
【請求項6】
前記調製方法を−20℃〜100℃の温度範囲内で実施することを特徴とする、請求項4又は5の一に記載の式(I)で表される化合物を調製する方法。
【請求項7】
1molの式(II)で表される化合物を0.8〜1.5molの式(III)で表される化合物と反応させることを特徴とする、請求項4〜6の一に記載の式(I)で表される化合物を調製する方法。
【請求項8】
ピラゾール類及びアントラニルアミド類を調製するための、一般式(I)で表される化合物の使用。

【公表番号】特表2013−513634(P2013−513634A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543630(P2012−543630)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【国際出願番号】PCT/EP2010/069380
【国際公開番号】WO2011/073100
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(507203353)バイエル・クロップサイエンス・アーゲー (172)
【氏名又は名称原語表記】BAYER CROPSCIENCE AG
【Fターム(参考)】