説明

新規ジルコニウム化合物、触媒及びポリウレタン製造のためのその使用

本発明は、式:Zr(L)(A)(A)(A)[式中、Lはケトアミド配位子を表し、A、A及びAは同じでも異なっていてもよく、それぞれ、アルコール、ポリオール、アルキルアセトアセテート、ジケトン、ケトアミド、カルボン酸またはそのエステル、アルカノールアミン、リン酸エステル、及びスルホン酸またはそのエステル、からなる群から選択される化合物から誘導される配位子を表す]、の触媒化合物を包含する。その化合物は、ジルコニウムアルコキシドまたはハロアルコキシドとケトアミドの反応により製造することができる。その化合物は、ポリイソシアネートとヒドロキシル含有化合物の反応のために、例えば、ポリウレタン、または繊維板等のセルロース複合材料の製造のために、触媒として有用である。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、ジルコニウムキレート化合物を含有する新規な触媒、及びポリウレタンまたはポリ尿素を製造するためのイソシアネート含有化合物とアルコールまたはアミンとの反応を触媒するためのその使用に関する。
【0002】
ポリウレタンは典型的には、有機金属触媒の存在下、ポリイソシアネート化合物とポリオールとを反応することによって製造される。ポリウレタン製造のための触媒は、従来、ジラウリン酸ジブチルスズ等のスズ化合物、またはフェニル水銀ネオデカン酸等の水銀の組成物に基づいている。最近になって、チタンまたはニッケル等の金属に基づく化合物が使用されてきている。
【0003】
WO2004/044027には、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、鉄(III)、コバルト(III)またはアルミニウムの化合物が記載されている。それらの化合物は、一般式:RO−M(L(L(Lを有する(式中、Rはアルキルまたはヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルコキシアルキルまたは(ヒドロキシ)ポリオキシアルキル基であり、L乃至Lの二つまでは、アセト酢酸のアミドであることができる)。これらの化合物は、一つの不安定な−OR配位子を有しており、そして、そのOR基の置換による、有機金属組成物上の不安定な部位でのポリオールまたはイソシアネートの交換または挿入によって、硬化触媒として機能すると考えられていた。
【0004】
米国特許第5846897号には次の化学構造:
Me(X1,X2,X3,X4)
[式中、Meはジルコニウム(Zr)またはハフニウム(Hf)であり、
X1、X2、X3及びX4は同一でも異なっていてもよく、構造:RCOCHCOR及びROCOCHCOR(式中、R及びRは、それぞれ、分岐または直鎖のC1からC20の炭化水素である)を有するジケトン及びアルキルアセトアセテートからなる群から選択され、
そして、X1、X2、X3及びX4の少なくとも一つは式(II)のジケトンであり、
ここで、RとRの全炭素数は少なくとも4である]
を有する、イソシアネート−アルコールの反応を触媒するジケトンまたはアルキルアセトアセテートを有するジルコニウム化合物が開示されている。Patilらは、二酸化ジルコニウムの金属−有機物化学蒸着のための前駆体としてジルコニウムビス(イソプロポキシド)ビス(N,N−ジエチルアセトアセトアミド)を用いている(J. Mater Chem 2003, 13, 2177-2184)。
【0005】
本発明の目的は、ポリウレタン製造のための、代替となる触媒を提供することである。
その触媒は、式:Zr(L)(A)(A)(A
[式中、Lはケトアミド配位子を表し、A、A及びAは同じでも異なっていてもよく、それぞれ、アルコール、ポリオール、アルキルアセトアセテート、ジケトン、ケトアミド、カルボン酸またはそのエステル、アルカノールアミン、リン酸エステル、及びスルホン酸またはそのエステル、からなる群から選択される化合物から誘導される配位子を表し、ただし、
(i)A、A及びAはいずれも、配位子−OR(ここで、Rはアルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルコキシアルキルまたは(ヒドロキシ)ポリオキシアルキル基である)を表さず、または
(ii)A、A及びAの少なくとも二つが、配位子−OR(ここで、Rはアルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルコキシアルキルまたは(ヒドロキシ)ポリオキシアルキル基である)を表す、ことを条件とする]
を有する。
【0006】
本明細書において、発明者らは、化合物「から誘導される配位子」、を、その配位子が、その化合物とジルコニウム化合物との反応によって形成されて請求項記載の触媒またはその触媒の前駆体を形成する、という意味において用いる。すなわち、例えば、アルコールROHから誘導される配位子はアルコキシドRO−として触媒中に存在し、カルボン酸RCOOHから誘導される配位子はRCOO−として触媒中に存在する。それゆえ、当業者は、配位子LまたはAを形成するとして言及された化合物は、その反応した形態で触媒に存在し、通例、その化合物の未反応の形態では存在しない、ということを理解するであろう。本発明において、ほとんどの配位子形成化合物は反応性−OHを介してジルコニウム化合物と反応し、触媒中の−O−Zr連結を形成する。
【0007】
ケトアミド配位子Lは、式1で示される一般構造を有するケトアミドから誘導される。そして、それは、式1’で示されるその「エノール」を通してジルコニウムアルコキシドまたはジルコニウムハロアルコキシドと反応し、配位子RCOCRCRO−を形成すると考えられる。
【0008】
【化1】

【0009】
式1及び1’において、R、R及びRは独立して、H、直鎖または分岐鎖のアルキル、またはアリールから選択される。R、R及び/またはRがアルキル基の場合、それらは好ましくは、1〜22個の炭素原子、より好ましくは1〜8個の炭素原子を有する。R、R及び/またはRがアリール基の場合、それは未置換であってよく、またはアルキル基、ハロゲン基またはエーテル基によって置換されていてもよい。「アリール」には多環式芳香族基も含まれる。R、R及び/またはRがHではないことが好ましく、そして、三級アミド、すなわち、RもRもHでないこと、が好ましい。RはH、または直鎖または分岐鎖のアルキルから選択され、好ましくは、アルキルは、1〜22個の炭素原子、より好ましくは1〜8個の炭素原子を有する。
【0010】
Lは好ましくは、N,N−ジアルキルアセトアセトアミド(DAAA)から誘導される配位子であり、そして、好ましいジアルキルアセトアセトアミドはN,N−ジエチルアセトアセトアミド(DEAA)を包含する。他の好ましいケトアミドには、アセトアセトアニリド、o−アセトアセトアニシド、2’−ベンゾイルアセトアリルド、4’−クロロアセトアセトアニリド、p−アセトアセトアニシド、N,N−ジメチルアセトアセトアミド、N−メチルアセトアセトアミド、N−エチルアセトアセトアミド、N−(2−アセトアミドフェネチル)−1−ヒドロキシ−2−ナフトアミド、2’,5’−ジクロロアセトアセトアニリド、2’,4’−ジメチルアセトアセトアニリド及び2−メチルアセトアセトアニリドが包含される。
【0011】
、A及びAの少なくとも一つがケトアミドから誘導される場合、反応生成物は、ジルコニウム1モルあたり、1モルより多いケトアミドを含むことができる。反応生成物は、ジルコニウム原子に結合してキレートを形成するケトアミドを4モルまで含むことができる。各々のケトアミド配位子は同じであってもよく、また、互いに異なっていてもよい。2個または4個のケトアミド配位子を含む好ましい構成において、各ケトアミド配位子は同じケトアミド化合物から誘導される。反応生成物はまた、遊離のケトアミド化合物を含むことができる、すなわち、ジルコニウム1モルあたり4モルより多いケトアミドが存在していてもよい。一つの態様において、触媒は、ジルコニウム1モルあたり、1〜10モル、好ましくは2〜4モルの遊離のケトアミドを含有する組成物である。一つの好ましい態様は、式[Zr(DEAA)+2DEAA]の組成物を包含する。簡便のために、Zr(DEAA)xについて言及した場合、これは、ジルコニウム化合物が、触媒中に反応した形態で存在する、DEAAから誘導されたx個の配位子を有することを意味する。
【0012】
、A及びAは同じでも異なっていてもよく、それぞれ、アルコール、ポリオール、アルキルアセトアセテート、ジケトン、ケトアミド、カルボン酸またはそのエステル、アルカノールアミンまたはリン酸エステル、からなる群から選択される化合物から誘導される配位子を表す。アルコールは一般式R−OHであり、ここでRはアルキル基またはアリール基(ポリアリールを含む)である。Rがアリールの場合、フェノール、ナフトール及びそれらの置換された形態、例えばドデシルフェノールのようなアルキルフェノール、が含まれる。Rは好ましくはアルキルであり、より好ましくは1〜12個の炭素原子を有するアルキル基、さらに好ましくは2〜8個の炭素原子を有するアルキル基である。A、A及びAの一つより多いものがアルコールから誘導される場合、各Rは同じでも異なっていてもよい。好ましいアルコールとしては、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、ターシャリーブタノール、n−ブタノール、2−エチルヘキサノール、アミルアルコール、tert−アミルアルコール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、フェノール、ドデシルフェノール及びナフトールが挙げられる。アルコールはジルコニウム化合物と反応して、アルコキシドまたはアリールオキシド、RO−配位子、を形成する。A、A及びAの一つのみがアルコールから誘導される場合、そのアルコールは、単独に官能化されたアルキルアルコール、R−OH(Rはアルキル)、ではない。A、A及びAの一つより多いものがアルコールから誘導される場合、そのアルコールのいずれもが単独に官能化されたアルキルアルコール、R−OH(Rはアルキル)、ではないか、または、そのアルコールの少なくとも二つが単独に官能化されたアルキルアルコール、R−OH(Rはアルキル)、である。これによって、WO−A−2004/044027に開示された化合物は本発明の範囲から排除される。WO−A−2004/044027に開示されている化合物はすべて、単一の不安定なアルコキシ配位子を有しており、それが触媒に活性部位を提供している。本発明の一つの好ましい態様において、触媒は、一般式Zr(ケトアミド)(OR)を有し、ここでRは、アルキル基、好ましくは1〜12個の炭素原子を有するアルキル基、さらに好ましくは2〜8個の炭素原子を有するアルキル基である。そのような化合物の例には、Zr(DEAA)(2−エチルヘキソキシド)、Zr(n−ブトキシド)(DEAA)、Zr(n−プロポキシド)(DEAA)、Zr(DEAA)(tert−アミルアルコキシド)及びZr(イソプロポキシド)(DEAA)が含まれる。
【0013】
ポリオールは、一つより多いヒドロキシ基を有する単量体アルコール(例えば、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール)であってよく、または、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の二量体または多量体アルコールであってもよい。ポリオールにはまた、ポリウレタンの製造に一般的に使用され、そして商業的に入手可能である、ポリエステルポリオール及びポリエーテルポリオールが包含される。ヒドロキシ−官能化樹脂もまた、一般式1のA配位子の一つ以上を形成するために適したものであることができる。そのような樹脂には、印刷用インクにおける使用のために販売されているヒドロキシル含有樹脂、好ましくは、約100〜約500、特には、約200〜約400mgKOH/gのヒドロキシル数(DIN53 240に従って試験される)を有する樹脂が包含される。適した合成樹脂の例には、ケトン−アルデヒド樹脂、特には、水素化アセトフェノンホルムアルデヒド縮合樹脂、シクロヘキサノン−ホルムアルデヒド縮合樹脂及びウレタン修飾ケトンアルデヒド樹脂等のケトン−ホルムアルデヒド樹脂が包含される。そのような樹脂は、例えば、合成樹脂1201、CA及びSKとしてデグサ(Degussa AG)から入手可能である。
【0014】
ポリオールが使用される場合、それは多座配位子としてジルコニウムに結合することが考えられる。その場合、A、A及びAの一つより多いものが同一分子として表されることがある、すなわち、A、A及び/またはAは互いに連結していることができる。そのような多座配位子が使用される場合、各分子は、同じジルコニウム原子に複数の点で結合することができ、また、一つより多くのジルコニウム原子に結合してジルコニウム原子間に橋架けを形成することもできる。そのような化合物の場合、橋架け構造体と非橋架け構造体を含有する混合物が存在することが考えられる。そのような多座配位子を含む触媒の好ましい態様において、触媒は、一般式Zr(ケトアミド)(ポリオール)及び/またはZr(ケトアミド)(ポリオール)及び/または高次のオリゴマー体橋架け構造を有する。各構造において、(ポリオール)は二つのヒドロキシ基とジルコニウムとの反応で二つのアルコキシド結合を形成することによってポリオールから誘導される配位子である。そのため、Zr(L)(A)(ポリオール)化合物への言及は実験的な式を意味し、そして、それは、橋架け二量体及びオリゴマー体が存在する化合物を包含するものである。このような様式の好ましい例には、Zr(DEAA)(1,3−プロパンジオキシド)、Zr(DEAA)(1,4−ブタンジオキシド)及びZr(DEAA)(ジエチレングリオキシド)が含まれる。
【0015】
、A及び/またはAはそれぞれ、アルキルアセトアセテートから誘導される配位子を表すことができる。すなわち、A、A及び/またはAはそれぞれ、アルキルアルコールROHとアセト酢酸のエステルから誘導される配位子を表す。ここで、Rは分岐鎖または直鎖のC1〜C20の炭化水素であるであり、Rは好ましくは1〜8の炭素原子を有する。エチルアセトアセテート(EAA)は具体的な好ましいアルキルアセトアセテート化合物である。Zr(EAA)nに言及する場合、エチルアセトアセテートから誘導されるn個の配位子を有するジルコニウム化合物を意味する。
【0016】
、A及び/またはAはそれぞれ、ジケトンから誘導される配位子を表すことができ、そのジケトンは、好ましくは、一般式RCOCHCOR(式中、R及びRはそれぞれ、分岐鎖または直鎖のC1〜C20の炭化水素である)で表されるβ−ジケトンである。好ましいジケトンとしては、アセチルアセトン(2,4−ペンタンジオン)、2,4−ヘプタンジオン及びそのアルキル置換体、並びに、3,5−ヘプタンジオン及びそのアルキル置換体、が挙げられる。
【0017】
、A及び/またはAはそれぞれ、カルボン酸またはそのエステルから誘導される配位子を表すことができる。適したカルボン酸には、安息香酸及びアルキルカルボン酸が包含され、例えば、C2〜C30のカルボン酸であり、特には、酪酸、ネオデカン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸または2−エチルヘキシルカルボン酸などのC4〜C22のカルボン酸である。カルボン酸またはそのエステルは、マロン酸、酒石酸及びそれらのエステル(特には、ジエチルマロン酸等のアルキルエステル)等のように、一つより多いカルボン酸基を有していてもよい。乳酸、クエン酸、シュウ酸等のヒドロキシカルボン酸もまた、ジルコニウムについての適した配位子を形成することができる。
【0018】
、A及び/またはAはそれぞれ、アルカノールアミン、すなわち、一般式HO(CH)xNR(ここで、RはHO(CH)xまたはアルキル基または水素を構成する)の化合物、から誘導される配位子を表すことができる。xは整数であり、好ましくは1〜8の範囲の整数である。好適なアルカノールアミンにはエタノールアミン、ジエタノールアミン及びトリエタノールアミンが包含されるが、他のアルカノールアミンも適している。
【0019】
、A及び/またはAはそれぞれ、P−OH基を有する有機リン化合物から誘導される配位子を表すことができる。有機リン化合物は特には、リン酸エステル、すなわち、リン酸ジアルキル、リン酸ジアルール、リン酸モノアルキル、リン酸モノアリール、または、リン酸ジアルキル、リン酸ジアルール、リン酸モノアルキル及びリン酸モノアリールの二つ以上の混合物、を包含するリン酸アルキルもしくはリン酸アリール、またはその塩;アルキルホスホン酸もしくはアリールホスホン酸またはその塩を包含するホスホン酸エステル、またはその塩;アルキルピロリン酸またはアリールピロリン酸;アルキルホスホン酸またはアリールホスホン酸、またはそのアルキルまたはアリールエステルまたは塩;または、ジアルキルまたはアリールホスフィン酸、またはその塩、である。すべての場合において、有機リン化合物はP−OH基、すなわち、酸性基、またはその塩、すなわちP−O基(式中、Mは金属またはアンモニウムである)を有する。好ましい有機リン化合物はリン酸アルキル化合物を包含する。リン酸アルキル化合物はリン酸モノアルキルまたはリン酸ジアルキルであってよく、また、リン酸アルキル化合物は、好都合には、リン酸モノアルキル及びリン酸ジアルキルの混合物である。そのような混合物は純粋なリン酸モノアルキルまたはリン酸ジアルキルより容易に入手できる。リン酸モノアルキルは、通例、式(RO)PO(OH)を有する。リン酸ジアルキルは、通例、式(RO)(R10O)PO(OH)を有する。R及びR10は同一でも異なっていてもよく、通例、8個までの炭素原子、好ましくは5個までの炭素原子を含む直鎖または分岐鎖のアルキル基を表すことができる。通例、R及びR10は同一であるが、同一である必要はない。R及びR10は、好ましくは、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、iso−プロピル、n−プロピル、エチル、メチル、フェニル、アミル及びエチル−ヘキシルから選択される。
【0020】
好適なリン酸エステル、ホスホン酸、ホスフィン酸またはそれらの塩は、リン酸アルキルまたはリン酸アリール、ホスホン酸、またはそれらの塩を包含し、そして、通例、式(R11PO(OR122−n(OH)(式中、R11及びR12はそれぞれ、水素原子、アリール基、または8個までの炭素原子、好ましくは5個までの炭素原子を含むアルキル基を表し、nは1または2である)で表される。
【0021】
、A及び/またはAはそれぞれ、スルホン酸またはそのエステル、すなわち、一般式R13SOH(式中Rはアルキルまたはアリールである)の化合物またはそのエステル、から誘導される配位子を表すことができる。適したスルホン酸の例としては、メタンスルホン酸、及びドデシルベンゼンスルホン酸等の置換ベンゼンスルホン酸が挙げられる。これらのスルホン酸の塩もまた適しており、例えば、ナトリウム塩等のアルカリ金属塩及び四級アンモニウム塩が挙げられる。
【0022】
本発明の触媒は、好ましくは、ジルコニウムアルコキシドまたはジルコニウムハロアルコキシドと、ケトアミド化合物及び任意の少なくとも一つの他の配位子形成化合物、との反応生成物を含有する。本発明の化合物は、ジルコニウムアルコキシド、ジルコニウムハロゲン化物またはジルコニウムハロアルコキシドのようなジルコニウム化合物を、ケトアミドと、そして必要であればA配位子を形成する他の化合物、とを反応させることによって製造することができる。A−配位子がアルコキシドの場合、それらは出発のジルコニウム化合物の一部を構成することができる。混合アルコキシド配位子が必要な場合、それは、より安定なアルコキシドを形成するアルコールを、最初のアルコールのアルコキシドと反応させて、出発化合物から最初のアルコールのいくらかを追い出して混合アルコキシドを形成することによって達成することができる。nモルのケトアミドまたは、A配位子を形成するnモルの化合物と、ジルコニウムアルコキシドまたはジルコニウムハロアルコキシドとの反応は、ジルコニウムアルコキシドまたはジルコニウムハロアルコキシドに由来するnモルのアルコールまたはハロゲン化水素を生じる。そのような反応でアルコールが生じる場合、それは、通例、蒸留によって生成物から除くことができ、または、必要であれば、そのアルコールを遊離のアルコールとして生成物中に留めることもできる。
【0023】
ジルコニウムハロアルコキシドは、式Zr(OR)(4−x)(式中、Rは上記のアルキル基であり、Bはハライドであり、xは0から4より小さい数である)で表すことができる。ハロアルコキシドは、混合した形態であってもよく、そのため、xは整数である必要はない。好ましいハライドはクロリドまたはブロミドであり、特にはクロリドである。
ジルコニウムアルコキシドまたはジルコニウムハロアルコキシドは好ましくは、式Zr(OR)(式中、Rは上記の意味を有する)のジルコニウムアルコキシドである。各Rは同じであっても、同じでなくてもよい。一つの態様において、ジルコニウムアルコキシドは、すべてのアルコキシド基が同一であるテトラアルキルアルコキシドである。容易に入手できる市販されている材料であるので、好ましいジルコニウムアルコキシド化合物としては、テトラ−i−プロポキシジルコニウム、テトラエチルジルコニウム、テトラ−n−プロポキシジルコニウム、及びテトラ−n−ブトキシジルコニウムが挙げられる。他の態様において、ジルコニウムアルコキシドは混合アルコキシドである。OR基の一つまたはそれ以上が容易に入手できないアルコキシドである場合、この態様は特に有用である。このような場合では、テトラアルコキシジルコニウム化合物Zr(OR)をアルコールR’OHと反応させて混合アルコキシドZr(OR)(OR’)(式中、y及びzは1〜3で変化することができ、そしてy+z=4である)を形成することができる。4モルより少ないケトアミドと反応する場合、ROH及びR’OHのより容易に追い出されやすいアルコールが最初に置き換えられ、ROHがR’OHより追い出されやすい場合、式Zr(L)(OR’)(4−x)の生成物を与える。そのため、適したジルコニウムアルコキシドとしては、Zr(イソプロポキシド)(2−エチルヘキソキシド)、Zr(n−ブトキシド)(2−エチルヘキソキシド)、Zr(n−ブトキシド)(tert−アミルアルコキシド)、Zr(イソプロポキシド)(tert−アミルアルコキシド)を挙げることができる。
【0024】
本発明の触媒組成物は、さらに溶媒または希釈剤を含有することができる。溶媒または希釈剤はジルコニウム触媒に配位する化合物であってよく、また、配位しない化合物であってもよい。溶媒は、アルコール(このアルコールはジルコニウムアルコキシドとケトアミドの反応で遊離したアルコールであってもよい)を含むことができる。適した溶媒には、1,4−ブタンジオール、1,3−プロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエステルポリオール等のポリオール(例えば、化合物が触媒として使用されるポリウレタン反応において使用されるポリオールに類似したポリオール)、ケトアミド(特に触媒を形成するために使用されるケトアミド)、エチルアセトアセテート、アセチルアセトン、マロン酸ジエチル、またはA配位子の一つを形成するための使用される過剰の化合物、が包含される。
【0025】
好ましい触媒の例は、以下、Zr(DEAA)(2−エチルヘキソキシド)、Zr(n−ブトキシド)(DEAA)、Zr(n−プロポキシド)(DEAA)、Zr(DEAA)(tert−アミルアルコキシド)、Zr(イソプロポキシド)(DEAA)、Zr(DEAA)、Zr(t−ブトキシド)(DEAA)、Zr(DEAA)、Zr(DEAA)(プロパンジオキシド)、Zr(DEAA)(ジエチレングリコキシド)、Zr(DEAA)(エチルアセトアセテート)、Zr(DEAA)(2,4−ペンタンジオネート)、Zr(DEAA)(ジエチルマロネート)、Zr(DEAA)(1,3−プロパンジオール)、Zr(DEAA)(1,4−ブタンジオール)及びZr(DEAA)(ジエチレングリコール)、を包含する。これらの触媒は、錯体を形成していない状態で存在していると考えられる配位子形成化合物の少なくとも一つを追加的な量で含んでいてもよい。特に、遊離のDEAA、エチルアセトアセテート、アセチルアセトンまたはポリオール(特にジエチレングリコール)が有益であることが判明している。
【0026】
好ましい態様において、本発明の触媒は、助触媒としてビスマス化合物を含有しない。
本発明の触媒組成物は、ポリウレタンの製造において有用である。すなわち、本発明の触媒組成物は、ポリイソシアネートと活性水素を有する化合物、特にヒドロキシ基、特にはポリオール、またはアミノ化合物、との反応のための硬化触媒として有用である。そのようなポリウレタンの用途は非常に多様であり、成形品、発泡体、接着剤、塗膜、キャストまたはスプレーエラストマー、注型用樹脂等の用途を含む。本発明の触媒組成物はまた、ポリイソシアネートバインダーと木材または植物繊維に由来する材料等の含水材料との反応を触媒することができ、例えば、建築産業用の複合板の製造において使用することができる。
【0027】
少なくとも二つのイソシアネート基を有することを条件として、有機ポリイソシアネート化合物または有機ポリイソシアネート化合物の混合物が適している。有機ポリイソシアネート化合物としては、ジイソシアネート、特に芳香族ジイソシアネート、及びより多くの官能基を有するイソシアネートが挙げられる。有機ポリイソシアネートの例には、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート;m−及びp−フェニレンジイソシアネート、トリレン−2,4−及びトリレン−2,6−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、クロロフェニレン−2,4−ジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、ジフェニレン−4,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジイソシアネート−3,3’−ジメチル−ジフェニル、3−メチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート及びジフェニルエーテルジイソシアネート等の芳香族イソシアネート;シクロヘキサン−2,4−及び−2,3−ジイソシアネート、1−メチルシクロヘキシル−2,4−及び−2,6−ジイソシアネート及びそれらの混合物、及びビス−(イソシアネートシクロヘキシル)メタン等の脂環式ジイソシアネート;及び
2,4,6−トリイソシアネートトルエン及び2,4,4−トリ−イソシアネートジフェニルエーテル等のトリイソシアネート、が包含される。イソシアヌレート基、カルボジイミド基またはウレトンイミン基を有する修飾ポリイソシアネートを用いることもでき、それらは、通例、特定の物理的特性が望まれる場合に選択される。フェノールまたはオキシムとポリイソシアネートとの反応生成物のような、ブロックポリイソシアネートを用いることもでき、それらは、使用時に適用される温度より低い脱ブロック温度を有する。有機ポリイソシアネートは、過剰のジイソシアネートまたはより多くの官能基を有するポリイソシアネートとポリオール、例えばポリエーテルポリオールまたはポリエステルポリオール、との反応によって製造されるイソシアネート−末端プレポリマーであってもよい。英国特許第1444933号、欧州特許出願公開第516361号及び国際出願公開91/03082に記載されているような水で乳化可能な(water-emulsifiable)有機ポリイソシアネートを用いることもできる。
【0028】
イソシアネートの混合物を用いることもでき、例えば、市販されている2,4−及び2,6−異性体の混合物等のトリレンジイソシアネートの異性体の混合物を使用することができ、また、ジイソシアネートとより高次のポリイソシアネートの混合物を用いることもできる。商業的に「粗MDI(crude MDI)」として知られているジイソシアネートの混合物は、約60%の4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを他の異性体及び類似のより高次のポリイソシアネートと共に含有する。ポリイソシアネートの混合物は、p−エチルフェニルイソシアネート等の一官能化イソシアネートを含有することもできる。そのような混合物は当分野では周知であり、ジイソシアネート、トリイソシアネート及びより高次のポリイソシアネートをホスゲン化副生成物と共に含有するメチレン橋かけされたポリフェニルポリイソシアネートを含有する粗ホスゲン化生成物が挙げられる。
【0029】
イソシアネートは、純粋なジフェニルメタンジイソシアネートまたは、ジイソシアネート、トリイソシアネート及びより高次に官能基化されたポリイソシアネートを含有する、メチレンで橋かけされたポリフェニルポリイソシアネートの混合物等の、芳香族ジイソシアネートまたは、より高次に官能基化されたポリイソシアネート、であることが好ましい。メチレンで橋かけされたポリフェニルポリイソシアネートは当分野では周知である。それらは、対応するポリアミンの混合物のホスゲン化(phosgenation)によって製造される。簡便のために、ジイソシアネート、トリイソシアネート及びより高次に官能基化されたポリイソシアネートを含有する、メチレンで橋かけされたポリフェニルポリイソシアネートのポリマー混合物を、以後、ポリマーMDI、と呼ぶ。本発明の有機金属錯体と共に使用するのに適したポリイソシアネートとしては、SUPRASECTMDNR、SUPRASECTM 2185、RUBINATETM M、及びRUBINATETM 1840が挙げられ、これらはいずれもHuntsman Polyurethanesから入手することができる。
【0030】
室温で液体であるポリイソシアネートが好ましい。適するポリイソシアネートは当分野で周知である。
ポリオール成分は、ポリウレタンの製造に適するものであることができ、そして、ポリオール成分には、ポリエステル−ポリオール、ポリエステル−アミドポリオール、ポリエーテル−ポリオール、ポリチオエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリアセタールポリオール、ポリオレフィンポリオール、ポリシロキサンポリオール、前記のタイプのポリオールの付加ポリマーまたは縮合ポリマーの分散物または溶液、が包含され、これらはしばしば、「ポリマー」ポリオールと呼ばれる。非常に多様なポリオールが先行技術に記載されており、そして、それらはポリウレタン材料の製造者に周知である。
【0031】
典型的には、ポリオールの混合物は、特定の物理特性を有するポリウレタンの製造に使用される。ポリオールは、製造者の要求に合わせた、分子量、骨格タイプ及びヒドロキシ官能性を有するように選択される。典型的には、ポリオールは鎖延長剤を含む。鎖延長剤は多くの場合、1,4−ブタンジオールまたはジエチレングリコールのような比較的短鎖のジオール、または低分子量ポリエチレングリコールである。ジアミン、例えば、MOCA(4,4−メチレンビス(2−クロロアニリン))等の商業的に使用される他の鎖延長剤も、使用することができる。
【0032】
適したポリオールにはポリアルキレンエーテルポリオール及びポリエステルポリオールが含まれる。ポリアルキレンエーテルポリオールは、ポリ(エチレンオキシド)ポリマー及びポリ(プロピレンオキシ)ポリマー、並びにジオール及びトリオール、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ペンタエリトリトール、グリセロール、ジグリセロール、トリメチロールプロパン及び同様の低分子量ポリオール、を包含するポリヒドリック(polyhydric)化合物から誘導される、末端ヒドロキシル基とのコポリマー、等のポリ(アルキレンオキシド)ポリマーが包含される。高分子量ポリエーテルポリオールを用いることもできる。また、任意の低分子量成分または異なった化学組成の物質といっしょでもよい、二官能性物質及び三官能性物質の混合物等の高分子量ポリエーテルの混合物を使用することもできる。有用なポリエステルポリオールとしては、ポリラクトン(例えば、ポリカプロラクトン)、及び、ジカルボン酸(脂肪族または芳香族のジカルボン酸または無水物であってよい)と過剰のジオールとを反応させることによって生じる物質、例えば、アジピン酸とエチレングリコールまたはブタンジオールを反応させることによって生じる物質、テレフタル酸または無水物とエチレングリコールまたはブタンジオールを反応させることによって生じる物質、または、ラクトンと過剰のジオールとを反応させることによって(例えば、カプロラクトンとプロピレングリコールとを反応させることによって)生じる物質、が挙げられる。
【0033】
ポリイソシアネート、ポリオール及び触媒に加えて、他の化合物がポリウレタン反応混合物に存在することもできる。そのような化合物としては、離型剤、充填剤、着色剤、架橋剤、鎖延長剤、発泡剤、殺菌剤、ワックス、衝撃改質剤、界面活性剤、可塑剤、水、結合剤及び難燃剤が挙げられる。この羅列は網羅的なものではない。
【0034】
本発明の以下の実施例で、さらに説明する。
実施例1
テトラ−n−プロポキシジルコニウムのn−プロパノール溶液(140g、0.316モル)をロータリーエバポレーターに収容し、2−エチル−1−ヘキサノール(2−EHA)(82g、0.63モル)、続いてN,N−ジエチルアセトアセトアミド(DEAA)(99.4g、0.63モル)を加えた。混合物を70℃で15〜20分間撹拌し、真空下で蒸留してすべての遊離のn−プロパノール(111g)を除いた。NMR分析は、100%の生成物、Zr(O−CHCH(C)C(OC(CH)CHCON(Cを示した。
【0035】
実施例2
1−プロパノール(2モル、120g)中のジルコニウム(IV)プロポキシド(1モル、323g)の溶液にN,N−ジエチルアセトアセトアミド(4モル、629g)を、周囲温度でゆっくりと加えた。混合物を45℃でさらに15分間撹拌後、減圧下、60〜70℃で、過剰の1−プロパノール(5モル、300g)を蒸留で除いた。得られた生成物には、Zr(OC(CH)CHCON(C(1モル)と約1モルの1−プロパノールが含まれている。固体のZr(DEAA)を、トルエン溶液からヘプタンを用いて再結晶することによって、プロパノールを完全に除くことができる。
【0036】
実施例3
1−プロパノール(20モル、1.2kg)中のジルコニウム(IV)プロポキシド(10モル、3.2kg)の溶液にN,N−ジエチルアセトアセトアミド(60モル、9.4kg)を、周囲温度でゆっくりと加えた。混合物を45℃でさらに15分間撹拌後、減圧下、60〜70℃で、すべての1−プロパノール(48.6モル、2.9kg)を蒸留で除いた。得られた生成物は、Zr(OC(CH)CHCON(Cと遊離のN,N−ジエチルアセトアセトアミドを1モル:2モルの割合で含んでいる。
【0037】
実施例4
テトラ−n−プロポキシジルコニウムのn−プロパノール溶液(90.8g、0.205モル)をロータリーエバポレーターに収容し、tert−ブタノール(30.3g、0.41モル)、続いてDEAA(64.5g、0.41モル)を加えた。混合物を70℃で15〜20分間撹拌し、真空下で蒸留して、すべての遊離のn−プロパノール(73g)を除いた。得られた生成物はZr(O−C(CH(OC(CH)CHCON(Cを含んでいる。
【0038】
実施例5
実施例1及び実施例4の触媒を、ポリウレタンのキャスティングフォーミュレーションにおいて使用した。70gのポリオール(市販されている、一級及び二級のポリオールの混合物)をスピードミキサーカップに収容し、触媒(ポリオールに基づいて3%または5%)と混合し、次いで72.16gのポリイソシアネートプレポリマー(DesmodurTMW、脂肪族イソシアネート(メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート))と10秒間、混合した。混合物の一部を、室温で表面上に注ぎ、残部(約135g)を、室温(約20〜25℃)でビーカー中に放置した。ゲル化時間(撹拌できなくなるまでの時間)及び不粘着時間を測定した。結果を表1に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
ビーカー中での速いゲル化時間及び不粘着時間は、イソシアネートとポリオールの発熱反応の熱が保持されているためである。混合物を表面上で被膜として硬化した場合、被膜はビーカー中の塊より相対的に薄いので、熱は容易に消散する。
【0041】
実施例6
実施例2で製造した触媒を、市販のポリオール/ポリイソシアネート系を用いた硬発泡体の製造に使用した。発泡触媒(ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル(DMEA))(0.27g)と本発明のその触媒が入っているミキサーカップにポリオール(45g)を収容して10秒間混合し、そして、イソシアネート(45g)を加えた。混合物をビーカーに入れ、クリーム時間、ストリング時間(string-time)、泡の膨張が終了するまでの時間(time till the foam finished rising)、及び不粘着時間を観察した。本発明の触媒を市販されているゲル化触媒(DABCOTM33LV)で置き換えた比較と共に、結果を表2に示す。
【0042】
【表2】

【0043】
実施例7
市販のポリオール(MW6000)を実施例1の触媒と混合し、次いで、可塑剤/ポリイソシアネートの混合物と混合した。得られた混合物を10秒間、高速で混合し、室温で硬化させた。市販の水銀系ゲル化触媒(ThorcatTM535)を用いた比較も実施した。結果を表3に示す。
【0044】
【表3】

【0045】
実施例8
窒素でパージし、撹拌器、温度計及び凝縮器を装着し、水浴中に設置された反応フラスコに、VERTECTMNPZ(n−プロパノール中のテトラ−n−プロポキシジルコニウム)(443g、1モルの金属)を収容した。撹拌しながら、滴下漏斗からN,N−ジエチルアセトアセトアミド(314.42g、2モル)を反応器に加えた。発熱反応が観察される。減圧下(70℃/30ミリHg)、n−プロパノール(NPA)(225.65g、3.76モル)を生成物、Zr(DEAA)(NPA)、から除いた。
【0046】
実施例9
窒素でパージし、撹拌器、温度計及び凝縮器を装着し、水浴中に設置された反応フラスコに、VERTECTMNPZ(443g、1モル)を収容した。撹拌しながら、滴下漏斗からN,N−ジエチルアセトアセトアミド(628.84g、4モル)を反応器に加えた。発熱反応が観察される。撹拌しながら、滴下漏斗からジエチレングリコール(DEG)(106.12g、1モル)を反応器に加えた。発熱反応は観察されなかった。減圧下(70℃/30ミリHg)、n−プロパノール(354g、5.9モル)を生成物、Zr(DEAA)及びDEG、から除いた。
【0047】
実施例10
凝縮器を装着し、温度制御水浴中に設置された反応フラスコに、VERTECTMNPZ(100.00g、0.2272モル)を収容した。フラスコを回転させながら、滴下漏斗からN,N−ジエチルアセトアセトアミド(71.46g、0.4544モル)を反応器に加えた。10分間混合したした時点で、わずかな発熱が観察された。次いで、1,3−プロパンジオール(17.30g、0.2272モル)を反応器に滴下し、そしてさらに10分間、混合した。減圧下(87℃/29ミリHg)、n−プロパノール(68.29g、1.14モル)を生成物、Zr(DEAA)(1,3−プロパンジオール)、から除いた。
【0048】
実施例11:保存寿命試験
0.1%の触媒を市販のポリエステルポリオールに加え、混合し、そして、0、4及び7日間40℃で熟成した後、その触媒を含有するポリオールと市販の修飾MDIポリイソシアネートを反応させた。予熱したアルミニウム皿にその配合物を注ぎ、80℃で硬化させた。その間、間隔を置いて、1時間まで、硬度を測定した。結果を表4に示す。
【0049】
【表4】

【0050】
その結果は、ポリオールと混合後、少なくとも数日間は、本発明の触媒がポリウレタン反応の硬化に対して活性を保っている、ということを示している。米国特許第5965686号に開示されている先行技術の触媒、Zr(EAA)、を、4モルのエチルアセトアセテートとVERTEC NPZを反応させ、そして反応混合物から生じたn−プロパノールを除去することによって製造した。この触媒は、最初にポリオールと混合した時には活性であるが、ポリオールとの接触で熟成した場合には活性を失うようである。本発明の触媒の改善された保存寿命は、ポリウレタン製造にプロセスの柔軟性を与える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:Zr(L)(A)(A)(A
[式中、Lはケトアミド配位子を表し、A、A及びAは同じでも異なっていてもよく、それぞれ、アルコール、ポリオール、アルキルアセトアセテート、ジケトン、ケトアミド、カルボン酸またはそのエステル、アルカノールアミン、リン酸エステル、及びスルホン酸またはそのエステル、からなる群から選択される化合物から誘導される配位子を表し、ただし、
(i)A、A及びAはいずれも、配位子−OR(ここで、Rはアルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルコキシアルキルまたは(ヒドロキシ)ポリオキシアルキル基である)を表さず、または
(ii)A、A及びAの少なくとも二つが、配位子−OR(ここで、Rはアルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルコキシアルキルまたは(ヒドロキシ)ポリオキシアルキル基である)を表す、ことを条件とする]
を有する触媒化合物。
【請求項2】
Lが式1”:
【化1】

[式中、R、R及びRは独立して、H、直鎖または分岐鎖のアルキル、またはアリール(ここで、該アリール基は非置換でもよく、またはアルキル、ハロゲンまたはエーテル基により置換されていてもよい)から選択され、そして、RはH、または直鎖または分岐鎖のアルキルから選択される]
で示される一般構造のケトアミド配位子を表す、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
、R及び/またはRが1〜22個の炭素原子を有するアルキル基であり、RがHである、請求項1または請求項2に記載の触媒。
【請求項4】
、R及び/またはRが1〜8個の炭素原子を有するアルキル基であり、RがHである、請求項3に記載の触媒。
【請求項5】
前記ケトアミドがN,N−ジエチルアセトアセトアミドを含む、請求項4に記載の触媒。
【請求項6】
、A及びAの少なくとも一つが、一般式R−OH(ここで、Rは1〜12個の炭素原子を有するアルキル基、アリール基、置換アリール基またはポリアリール基である)のアルコールから誘導される、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項7】
、A及びAの少なくとも一つがケトアミドから誘導される、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項8】
一般式:Zr(ケトアミド)(OR)
[式中、各Rは同じでも異なっていてもよく、1〜12個の炭素原子を有するアルキル基、アリール基、置換アリール基またはポリアリール基である]
を有する、請求項7に記載の触媒。
【請求項9】
前記触媒が、Zr(DEAA)(イソプロポキシド)(ここで、DEAAはN,N−ジエチルアセトアセトアミドから誘導される配位子である)で構成されない、請求項8に記載の触媒。
【請求項10】
、A及びAの少なくとも一つが、1より多いヒドロキシ基を有するアルコールから誘導される、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項11】
前記アルコールが、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールまたはヒドロキシ官能化樹脂を含む、請求項10に記載の触媒。
【請求項12】
、A及び/またはAがたがいに連結するように、前記アルコールが多座配位子としてジルコニウムに結合する、請求項10または11に記載の触媒。
【請求項13】
前記触媒が、橋かけした二量化形態及びオリゴマー形態が存在する化合物を含む、一般式Zr(ケトアミド)(ポリオール)、である、請求項10乃至12のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項14】
、A及びAの少なくとも一つが、アルキルアセトアセテートから誘導される、請求項1乃至7、10乃至12のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項15】
、A及びAの少なくとも一つが、ジケトンから誘導される、請求項1乃至7、10乃至12のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項16】
、A及びAの少なくとも一つが、カルボン酸またはそのエステルから誘導される、請求項1乃至7、10乃至12のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項17】
、A及びAの少なくとも一つが、アルカノールアミンから誘導される、請求項1乃至7、10乃至12のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項18】
、A及びAの少なくとも一つが、リン酸エステルから誘導される、請求項1乃至7、10乃至12のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項19】
、A及びAの少なくとも一つが、スルホン酸またはそのエステルから誘導される、請求項1乃至7、10乃至12のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項20】
Zr(DEAA)(2−エチルヘキソキシド)、Zr(n−ブトキシド)(DEAA)、Zr(n−プロポキシド)(DEAA)、Zr(DEAA)(tert−アミルアルコキシド)、Zr(DEAA)、Zr(t−ブトキシド)(DEAA)、Zr(DEAA)(プロパンジオキシド)、Zr(DEAA)(ジエチレングリコキシド)、Zr(DEAA)(エチルアセトアセテート)、Zr(DEAA)(2,4−ペンタンジオネート)、Zr(DEAA)(ジエチルマロネート)、Zr(DEAA)(1,3−プロパンジオール)、Zr(DEAA)(1,4−ブタンジオール)及びZr(DEAA)(ジエチレングリコール)(ここで、DEAAはN,N−ジエチルアセトアセトアミドから誘導される配位子である)、から選択される化合物を含む、請求項1に記載の触媒。
【請求項21】
さらに溶媒を含む、請求項1乃至20のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項22】
前記溶媒が、アルコール、ポリオール、ケトアミド、エチルアセトアセテート、アセチルアセトン、ジエチルマロネートまたはA配位子の一つを形成するために使用された化合物の過剰分、を含む、請求項21に記載の触媒。
【請求項23】
1モルのジルコニウムあたり1〜10モルの溶媒を含む、請求項21または22に記載の触媒。
【請求項24】
助触媒としてのビスマス化合物を含まない、請求項1乃至23のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項25】
(i)ポリイソシアネート及び(ii)ポリオールの少なくとも一つ、及び請求項1乃至24のいずれか一項に記載の触媒、を含む組成物。
【請求項26】
前記触媒が、Zr(DEAA)(2−エチルヘキソキシド)、Zr(イソプロポキシド)(DEAA)、Zr(n−ブトキシド)(DEAA)、Zr(n−プロポキシド)(DEAA)、Zr(DEAA)(tert−アミルアルコキシド)、Zr(DEAA)、Zr(t−ブトキシド)(DEAA)、Zr(DEAA)(プロパンジオキシド)、Zr(DEAA)(ジエチレングリコキシド)、Zr(DEAA)(エチルアセトアセテート)、Zr(DEAA)(2,4−ペンタンジオネート)、Zr(DEAA)(ジエチルマロネート)、Zr(DEAA)(1,3−プロパンジオール)、Zr(DEAA)(1,4−ブタンジオール)及びZr(DEAA)(ジエチレングリコール)(ここで、DEAAはN,N−ジエチルアセトアセトアミドから誘導される配位子である)、から選択される化合物を含む、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
離型剤、充填剤、着色剤、架橋剤、鎖延長剤、発泡剤、殺菌剤、ワックス、衝撃改質剤、界面活性剤、可塑剤、水、カップリング剤及び難燃剤からなるリストから選択される一つ以上の化合物をさらに含む、請求項25または26に記載の組成物。
【請求項28】
助触媒としてのビスマス化合物を含まない、請求項25乃至27のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項29】
請求項1乃至24のいずれか一項に記載の触媒の存在下、ポリイソシアネート化合物と活性水素を有する化合物とを反応させることを含む、ポリウレタンの製造方法。
【請求項30】
活性水素を有する前記化合物が、ヒドロキシル含有化合物を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記ヒドロキシル含有化合物がポリオールを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記ヒドロキシル含有化合物がリグノセルロース系物質を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記触媒が、Zr(DEAA)(2−エチルヘキソキシド)、Zr(イソプロポキシド)(DEAA)、Zr(n−ブトキシド)(DEAA)、Zr(n−プロポキシド)(DEAA)、Zr(DEAA)(tert−アミルアルコキシド)、Zr(DEAA)、Zr(t−ブトキシド)(DEAA)、Zr(DEAA)(プロパンジオキシド)、Zr(DEAA)(ジエチレングリコキシド)、Zr(DEAA)(エチルアセトアセテート)、Zr(DEAA)(2,4−ペンタンジオネート)、Zr(DEAA)(ジエチルマロネート)、Zr(DEAA)(1,3−プロパンジオール)、Zr(DEAA)(1,4−ブタンジオール)及びZr(DEAA)(ジエチレングリコール)(ここで、DEAAはN,N−ジエチルアセトアセトアミドから誘導される配位子である)、から選択される、請求項29乃至32のいずれか一項に記載の方法。

【公表番号】特表2008−545058(P2008−545058A)
【公表日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−520010(P2008−520010)
【出願日】平成18年7月4日(2006.7.4)
【国際出願番号】PCT/GB2006/050187
【国際公開番号】WO2007/003966
【国際公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(590004718)ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー (152)
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
【Fターム(参考)】