説明

新規ディスコティック液晶性化合物

【課題】スタッキング間隔の極めて狭いカラムナー相を示すディスコティック液晶材料を提供する。
【解決手段】液晶相としてディスコティックカラムナー相を示し、カラムナー相中における分子のスタッキング間隔がグラファイト層間距離である3.345オングストロームより狭いことを特徴とするディスコティック液晶性化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規ディスコティック液晶性化合物に関する。詳しくは、液晶相としてディスコティックカラムナー相を示すことを特徴とする新規なディスコティック液晶性化合物であり、エレクトロルミネッセンス素子材料、イメージスキャナー材料、ホトリソグラフティブ材料、太陽電池材料、強磁性材料、ガスセンサー、触媒、配向膜等に有用な化合物とその化合物を用いたディスコティックカラムナー液晶配向物ならびにこれらを応用したデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
ディスコティック液晶性化合物はフタロシアニンを用いたディスコティック液晶性化合物などで、一次元性のカラムナー相を示すものが知られており、この種の化合物はカラム内での円盤状のディスコティック液晶性分子がお皿を積み重ねたようにスタッキングすることで、分子間の相互作用が増大し、分子のスタッキング方向すなわちカラムの軸と同一方向の伝導度が非常に大きくなることが知られている。このとき、カラム中での分子のスタッキング間隔が伝導度を大きくする上では重要であり、一般に狭いほど伝導度は向上する。一般に、スタッキング間隔は3.5〜4Åの範囲であり、平面性のsp炭素だけで構成されるグラファイトの面間距離である3.345Åより狭いスタッキング間隔を得る事は難しい。伝導度向上のため、スタッキング間隔を狭める試みがなされているが、そのためには水素結合の導入(非特許文献1)するなど、特殊な方法が必要である。
【非特許文献1】チェリドゥアン(Cheriduan)他,「モレキュラークリスタルズ・アンド・リキッドクリスタルズ(Molecular Crystals and Liquid Crysatals)」,1991年,196巻,p.103
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は液晶相として,グラファイトの層間距離よりもスタッキング間隔が狭いディスコティックカラムナー相を示すディスコティック液晶性化合物を提供することである。さらには当該液晶性化合物を用いることで、スタッキング間隔が狭いディスコティックカラムナー相となったディスコティックカラムナー液晶配向物を提供することである。さらには当該ディスコティックカラムナー液晶配向物を用いて作製した液晶配向物デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
すなわち、本発明は、液晶相としてディスコティックカラムナー相を示し、カラムナー相中における分子のスタッキング間隔が3.345オングストローム以下であることを特徴とするディスコティック液晶性化合物に関する。
【0005】
また、本発明は、フタロシアニン構造を含むことを特徴とする前記のディスコティック液晶性化合物に関する。
【0006】
また、本発明は、前記化合物が、下記の一般式(1)で表わされることを特徴とするディスコティック液晶性化合物に関する。
【化2】

(ここで、Mはプロトン2個または金属カチオンであって、金属カチオンは、Mg、Al、Si、P、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、PbおよびBiから選ばれる金属のカチオンを示し、Rは全て同じでもまたは異なっていても良く、Rは炭素数1〜30のアルキル基、アルコキシ基及びアルキルチオ基から選ばれる基を示す。)
【0007】
また、本発明は、前記ディスコティック液晶性化合物を配向させて得られるディスコティックカラムナー液晶配向物に関する。
【0008】
また、本発明は前記ディスコティックカラムナー液晶配向物を用いて作製した液晶配向物デバイスに関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、特定のディスコティック液晶性化合物を用いることで、簡単な手段によりディスコティックカラムナー相中における分子のスタッキング間隔がグラファイト層間距離である3.345オングストロームより狭いディスコティックカラムナー相を示すディスコティックカラムナー液晶配向物を得ることができ、エレクトロルミネッセンス素子材料、イメージスキャナー材料、ホトリソグラフティブ材料、太陽電池材料、強磁性材料、ガスセンサー、触媒等に有用に適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の新規ディスコティック液晶性化合物について説明する。
ディスコティック液晶とは、中心に堅い円盤状コアを持ち、その周辺にフレキシブルなアルキル長鎖を持つ液晶化合物のことである。ディスコティック液晶性とは、中心の円盤状コア分子同士にπ−π相互作用とその周辺のアルキル長鎖が揺らぐことによって液体のような構造柔軟性を持ちながらも、固体固有の構造配向性を示すことである。
さらにディスコティック液晶性をもつ分子は、分子自身が図1のように自発的にスタックしてカラムを形成する。これをディスコティックカラムナー相といい、カラム内では分子間を電子やホールなどのキャリアが移動する、「ホッピング伝導」と呼ばれる事象を持つため、一次元伝導体として応用できることが報告されている。
【0011】
電子やホールなどのキャリアの移動度は、半導体デバイスに応用する際の特性として重要であり、より大きいことが望ましい。前述のとおり、キャリアはホッピング伝導という方法により移動すると通常考えられていることから、キャリアがホッピングする距離、即ち、ディスコティック液晶においては、ディスコティック液晶分子のスタッキング間隔が重要であり、一般にその距離は短い方がホッピング伝導は加速される。よって、半導体デバイスに応用する際には、狭いスタッキング間隔を得る必要がある。
本発明のディスコティック液晶性化合物は、そのスタッキング間隔が通常のディスコティック液晶性化合物のスタッキング間隔より狭いことを特徴としており、さらに具体的に明示すれば、スタッキング間隔は3.345オングストローム以下であり、グラファイトの層間距離である3.345オングストロームよりも狭いことを特徴としている。
【0012】
本発明のディスコティック液晶性化合物は中心に平面性の分子構造をもつものが用いられるが、芳香環または複素芳香環からなるか、あるいは、芳香環または複数芳香環が縮環した構造、またそれらの金属錯体(以後、中心錯体と呼ぶ)を有するものが好適に用いられる。
例えば、ナフタレン、ピレン、ペリレン、トリフェニレン、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、コロネン、ヘキサベンゾコロネン、フラーレン類または、ポルフィリン類、アザポルフィリン類、フタロシアニン類、ナフタロシアニン類、などが挙げられる。
より具体的な構造としては、下記に示すような中心錯体を挙げることができるが、本発明の目的に適うものであれば、これに制限されるものではない。
【0013】
【化3】

【0014】
【化4】

【0015】
【化5】

【0016】
【化6】

【0017】
【化7】

【0018】
【化8】

【0019】
上記式中、Mはプロトン2個か金属カチオンであって、例えば、Mg、Al、Si、P、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Pb、Biなどのカチオンを1つまたは2つ以上用いることができる。好ましくは、プロトン2個か2価の金属カチオンを一つ用いた場合であって、2価カチオンとしてはMg2+、Al2+、Mn2+、Fe2+、Ni2+、Cu2+、Zn2+を用いたものである。
【0020】
中心錯体としてこの中でも特に好ましいのは、金属錯体構造であり、その中でも特に好ましいのはフタロシアニンの金属錯体である。
【0021】
本発明においては、上記中心錯体は、目的の性能を得るために、特定の修飾基を持つことを特徴とする。該修飾基としては、フェノキシ構造を持つ化合物が挙げられる。本発明においては、フェノキシ基はさらに置換基を有することが必要であり、ベンゼン環をアルキル基、アルコキシル基で置換したアルキル置換フェノキシ基、アルコキシ置換フェノキシ基が修飾基として挙げられる。その置換数は1置換体が好ましく、置換位置は、メタ位が特に好ましく、3−アルキル置換フェノキシ置換体、3−アルコキシ置換フェノキシ置換体を特に好ましい例として挙げることができる。用いるアルキル鎖部分は炭素数1以上60以下、好ましくは40以下、さらに好ましくは30以下である。また上記アルキル基等の末端が、ヒドロキシル基、チオール基、カルボキシル基、スルホン酸基、シアノ基、イソシアナート基、アルデヒド基、アミノ基などであっても良い。また、アルキル鎖の途中に、エステル結合(−COO−)、酸アミド結合(−NH−CO−)、ウレタン結合(−NH−COO−)、エーテル結合(−O−)などを含んでも良く、繰り返し単位が1から15のエチレンオキシド基でも良い。2つの置換基が末端で結合をつくり環状となっていても良い。例えば、環状エーテル、環状エステル、酸無水物、カルボジイミドなどを挙げることができる。また、さらに芳香環が縮環している構造でもよい。末端が水酸基やアミノ基などのヘテロ元素を持つ反応性置換基、例えばエステル基、エーテル基等を有していても良い。
【0022】
具体的な構造例を挙げると次の一般式(1)で表わされるものであるが、特にこれに制限されるものではない。
【0023】
【化9】

【0024】
ここで、Mはプロトン2個または金属カチオンであって、例えば、Mg、Al、Si、P、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Pb、Biなどのカチオンを1つまたは2つ以上用いることができる。好ましくは、プロトン2個、または2価の金属カチオンを一つ用いた場合であって、2価カチオンとしてはMg2+、Al2+、Mn2+、Fe2+、Ni2+、Cu2+、Zn2+を用いたものである。Rは全て同じでもまたは異なっても良く、上記構造から任意の数を組み合わせて選ぶことが出来る。Rは、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基から任意に選ぶことができ、R中のアルキル鎖部分は炭素数1以上30以下、好ましくは25以下、さらに好ましくは18以下である。また上記アルキル基等の末端が、ヒドロキシル基、チオール基、カルボキシル基、スルホン酸基、シアノ基、イソシアナート基、アルデヒド基、アミノ基などであっても良い。また、アルキル鎖の途中に、エステル結合、酸アミド結合、ウレタン結合、エーテル結合などを含んでも良く、繰り返し単位が1から15のエチレンオキシド鎖でも良い。2つの置換基が末端で結合をつくり環状となっていても良い。例えば、環状エーテル、環状エステル、酸無水物、カルボジイミドなどを挙げることができる。また、さらに芳香環が縮環している構造でもよい。末端が水酸基やアミノ基などのヘテロ元素を持つ反応性置換基、たとえばエステル基、エーテル基等を有していても良い。
【0025】
次に本発明のディスコティック液晶性化合物を用いて作製されるディスコティックカラムナー液晶配向物を形成する方法について説明する。
最も簡便な方法としては、本発明のディスコティック液晶性化合物を二枚の平滑な基板間に挟むことにより、この目的は達成される。用いる基板としては、形成するディスコティック液晶配向物の厚みに比べて充分平滑であれば特に限定されず、材質、厚さ、寸法、形状等は目的に応じて適宜選択することができ、例えば無色あるいは有色ガラス、網入りガラス、ガラスブロック等が用いられる他、無色あるいは有色の透明性を有する樹脂でも良い。かかる樹脂としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリアミド、ポリスルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、トリ酢酸セルロース、ポリメチルペンテンなどが挙げられる。なお、本発明における基板とは、常温において平滑な面を有するものであり、その面は平面あるいは曲面であってもよく、また応力によって変形するものであってもよい。また、例えば金属板のように不透明であっても良く、金、銀、クロム、銅、タングステン、アルミニウム、クロムやステンレスなどの平滑な金属板などが挙げられる。二枚の基板に挟む際には、必要に応じて加熱・加圧等を行っても良い。
【0026】
また、本発明のディスコティック液晶性化合物を溶解可能な溶媒に溶解して溶液とし、基板に塗布した後、溶媒を除去する方法も可能である。用いる溶媒はディスコティック液晶性化合物を溶解し得るものであれば特に制限されるものではなく、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、四塩化炭素、エチルベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、プロピルベンゼン、二塩化エチレン、塩化メチル等を挙げることができる。また、溶液中のディスコティック液晶性化合物の濃度については特に制限はないが、作製上の観点から0.1〜5質量%程度が好ましい。また、ディスコティック液晶性化合物が溶解し難い場合には、撹拌、加熱等の操作を行ってもよい。
次いで、ディスコティック液晶性化合物溶液を基板表面に塗布する。基板としては、先に示した基板と同様で、適度に平滑性があれば問題はない。本発明のディスコティック液晶性化合物の溶液を基板表面に塗布する方法としては特に制限はなく、例えば、キャスト、スピンコート、スプレーコート、バーコート等の方法によって実施することができる。また、塗布量については特に制限はないが、通常は、基板1cm2当たり0.002〜0.1ml程度が好ましい。次いで、上記溶媒を蒸発させることによりディスコティック液晶性化合物による機能性材料を形成することができる。溶媒を蒸発させる方法としては、例えば、基板を加熱する方法が挙げられる。
【0027】
作製法および用いたディスコティック液晶性化合物の構造によっては、基板に挟むことで、あるいは溶液状態のディスコティック液晶性化合物を塗布することで、自然に基板に対してディスコティックカラムナー相をもつディスコティック液晶状態が達せられる場合もある。しかしながら、自然に基板に対してディスコティックカラムナー相をもつディスコティック液晶状態が達せられない場合には、必要に応じて配向させるための操作を行うことができる。配向させる手段としては、例えばディスコティック液晶性化合物を基板ごと加熱するなどにより、一旦液晶相における等方相が得られるまで昇温させた後、ゆっくりと冷却する方法などをとることが出来る。
【0028】
ディスコティック液晶性化合物がディスコティックカラムナー相となるようなディスコティック液晶相をとって配向していることの確認方法は、例えばX線回折測定法によって機能性材料にディスコティックカラムナー相特有の規則構造があることを観察することで確認できる。
【0029】
次に、本発明のディスコティック液晶性化合物を用いた配向型機能性デバイスについて説明する。配向型機能性デバイスは、エレクトロルミネッセンス素子材料、イメージスキャナー材料、ホトリソグラフティブ材料、太陽電池材料、強磁性材料、ガスセンサー、触媒、配向膜等に応用可能であり、特に光電変換素子に応用可能である。
以下、本発明の配向型機能性デバイスの一例として、本発明のディスコティック液晶性化合物を光電変換素子に用いる場合を示す。すなわち、透明導電性基板上に光吸収剤として本発明のディスコティック液晶性化合物によるディスコティック液晶配向物、対極を順次積層配置した構造をもつものが挙げられる。あるいは、本発明のディスコティック液晶配向物による薄膜を作製した導電性基板上と対極の間に適当な電解質を有する形を挙げることができる。本配向型機能性デバイスは、例えばディスコティック液晶配向物が光吸収による電荷発生を行うことで、光照射により取り出し電荷量、すなわち電流値の変化する光電変換素子としての特性を示す。
【0030】
透明導電性基板は、通常、透明基板上に透明電極層を積層させて製造される。透明基板としては特に限定されず、材質、厚さ、寸法、形状等は目的に応じて適宜選択することができ、例えば、無色あるいは有色ガラス、網入りガラス、ガラスブロック等が用いられる他、無色あるいは有色の透明性を有する樹脂でも良い。かかる樹脂としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリアミド、ポリスルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、トリ酢酸セルロース、ポリメチルペンテンなどが挙げられる。なお、本発明における透明とは、10〜100%の透過率を有することであり、また、本発明における基板とは、常温において平滑な面を有するものであり、その面は平面あるいは曲面であってもよく、また応力によって変形するものであってもよい。
【0031】
また、電極の導電層を形成する透明導電膜としては、本発明の目的を果たすものである限り特に限定されることはなく、例えば、金、銀、クロム、銅、タングステンなどの金属薄膜、金属酸化物からなる導電膜などが挙げられる。金属酸化物としては、例えば、酸化錫や酸化亜鉛に、他の金属元素を微量ドープしたIndium Tin Oxide(ITO(In:Sn))、Fluorine doped Tin Oxide(FTO(SnO:F))、Aluminum doped Zinc Oxide(AZO(ZnO:Al))などが好適なものとして用いられる。
膜厚は通常、1nm〜50μm、好ましくは10nm〜10μmである。また、表面抵抗(抵抗率)は、本発明の基板の用途により適宜選択されるところであるが、通常、0.01〜500Ω/sq、好ましくは0.1〜50Ω/sqである。
【0032】
対極は、通常、金、白金、銀、銅、アルミニウム、マグネシウム、リチウム、カリウムなどの金属、あるいはカーボン電極などを用いることができる。対極の設置方法については、真空蒸着法、電子ビーム真空蒸着法、スパッタリング法や、溶媒に分散した金属微粒子を塗布し、溶媒を揮発除去する等の公知の方法で成膜しても良い。
また、本発明の液晶性組成物を用いたデバイスとしては、本発明の液晶性組成物薄膜を形成した導電性基板を一つの電極として、もう一つの電極として上記透明導電性基板または上記対極を用い、中間に電解質を設けた電気化学デバイスを用いることも可能である。
本発明において用いられる電解質としては特に限定されず、液体系でも固体系のいずれでもよく、可逆な電気化学的酸化還元特性を示すものが望ましい。ここで、可逆な電気化学的酸化還元特性を示すということは、光電変換素子の作用する電位領域において、可逆的に電気化学的酸化還元反応を起こし得ることをいう。典型的には、通常、水素基準電極(NHE)に対して−1〜+2V vs NHEの電位領域で可逆的であることが望ましい。
【0033】
電解質のイオン伝導度は、通常、室温で1×10−7S/cm以上、好ましくは1×10−6S/cm以上、さらに好ましくは1×10−5S/cm以上であることが望ましい。
電解質層の厚さは特に制限されないが、1μm以上であることが好ましく、より好ましくは10μm以上であり、また、3mm以下が好ましく、より好ましくは1mm以下である。かかる電解質としては、上記の条件を満足すれば特に制限されるものでなく、液体系および固体系とも、本技術分野で公知のものを使用することができる。
素子特性の評価については、透明電極および対極にそれぞれ電流測定用の端子を取り付け、光照射の有無による電流値の変化について測定を実施すれば良い。
【実施例】
【0034】
[実施例1(化合物1の合成)]
4,5−ビス(3−ドデシルオキシフェニル)−1,2−ジシアノベンゼン(0.500g, 0.734mmol), 1−ヘキサノール (5 ml), ジアザビシクロウンデセン(8滴) とCuCl(0.0278g, 0.202mmol)を加え、14時間加熱還流した。反応溶液をメタノールに注ぎ入れ、目的物質を沈殿させた。メタノールを自然ろ過で取り除き、沈殿物をエタノールとアセトンで洗浄した。カラムクロマトグラフィー(シリカゲル,CHCl,Rf=1.00)と酢酸エチル中で再沈殿により精製し、緑色の液晶0.321gを得た(化合物1)。収率は64%であった。
【0035】
[実施例2(化合物2の合成)]
4,5−ビス(3−ドデシルオキシフェニル)−1,2−ジシアノベンゼンの代わりに、4,5−ビス(3−テトラデシルオキシフェニル)−1,2−ジシアノベンゼンを原料として用い、実施例1と同様の方法により化合物2を得た。
【0036】
なお、化合物1、2は下記式(2)で示される化合物であって、式中のRがそれぞれ以下に示すものである。
化合物1:R=C1225
化合物2:R=C1429
【化10】

【0037】
[実施例3(化合物1、2のキャラクタリゼーション)]
液晶相の同定は加熱X線構造解析とDSC、偏光顕微鏡(POM)観察で行った。
化合物1を一度等方相液体となる185℃まで加熱した。等方性液体となったことを確認した後、室温まで冷却した。冷却後のX線構造解析を行うと、XRDパターンには、低角度側に鋭いピークが3本、高角度側にアルコキシ鎖の融解に相当するピークとカラム内のスタッキング距離に相当する鋭いピークが観察された。低角度側のピークのスペーシング比は1:1/√3:1/2:1/√7:1/3:1/√13となり、さらに、スタッキング距離として3.33オングストロームが確認されたことから、ヘキサゴナルオーダードカラムナー相(ColhO)であることが確認できた。
【0038】
[比較例1]
4,5−ビス(3−ドデシルオキシフェニル)−1,2−ジシアノベンゼンの代わりに、4,5−ビス(4−デシルオキシフェニル)−1,2−ジシアノベンゼンを原料として用い、実施例1と同様の方法により化合物3を得た。
【0039】
[比較例2]
4,5−ビス(3−ドデシルオキシフェニル)−1,2−ジシアノベンゼンの代わりに、4,5−ビス(4−ドデシルオキシフェニル)−1,2−ジシアノベンゼンを原料として用い、実施例1と同様の方法により化合物4を得た。
【0040】
なお、化合物3、4は下記式(3)で示される化合物であって、式中のRがそれぞれ以下に示すものである。
化合物3:R=C1021
化合物4:R=C1225
【化11】

【0041】
[比較例3]
実施例3と同様のキャラクタリゼーションを行った結果、低角度側のピークのスペーシング比は1:1/√3:1/2:1/√7:1/3:1/√13となり、ヘキサゴナルカラムナー相が確認されたが、スタッキング距離に相当するピークは認められず、ヘキサゴナルディスオーダードカラムナー相(ColdO)であった。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】一次元性のカラムナー相となったディスコティック液晶性分子の配置状態を示す図である。
【図2】化合物1のX線解析結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶相としてディスコティックカラムナー相を示し、カラムナー相中における分子のスタッキング間隔が3.345オングストローム以下であることを特徴とするディスコティック液晶性化合物。
【請求項2】
フタロシアニン構造を含むことを特徴とする請求項1記載のディスコティック液晶性化合物。
【請求項3】
請求項1または2記載の化合物が、下記の一般式(1)で表わされることを特徴とするディスコティック液晶性化合物。
【化1】

(ここで、Mはプロトン2個または金属カチオンであって、金属カチオンは、Mg、Al、Si、P、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、PbおよびBiから選ばれる金属のカチオンを示し、Rは全て同じでもまたは異なっていても良く、Rは炭素数1〜30のアルキル基、アルコキシ基及びアルキルチオ基から選ばれる基を示す。)
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のディスコティック液晶性化合物を配向させて得られるディスコティックカラムナー液晶配向物。
【請求項5】
請求項4記載のディスコティックカラムナー液晶配向物を用いて作製した液晶配向物デバイス。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−222599(P2008−222599A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−60604(P2007−60604)
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【出願人】(000004444)新日本石油株式会社 (1,898)
【出願人】(504180239)国立大学法人信州大学 (759)
【Fターム(参考)】