説明

新規バクテリオシン及びそれをコードする遺伝子

【課題】Lactococcus属の菌が産生する、新規なバクテリオシン及びそれをコードする遺伝子を提供する。
【解決手段】バクテリオシンは、全61アミノ酸残基からなり、分子量約6060 Da、環状である。また、酵素感受性が低く、低pH域において安定である。バクテリオシンは、Lactococcus属、Enterococcus属、Pediococcus属、Bacillus属に対して顕著な抗菌効果を示しており、広い抗菌スペクトルを有する。諸性質、抗菌スペクトル及び分子量から、本バクテリオシンは、安定な構造を有したクラスIIcに属すると推定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なバクテリオシン及びそれをコードする遺伝子に関する。本発明によって開示される新規なバクテリオシンは、Lactococcus属に属する菌によって生産され、Bacillus属等に対して顕著な抗菌活性を有している。本発明は、食品、医薬品等の様々な分野での応用が期待できる。
【背景技術】
【0002】
近年、消費者の健康・天然・安全志向は高まる傾向にある。その一方では、薬剤の多用により、VRE(バンコマイシン耐性腸球菌)などの抗生物質耐性菌の出現や薬剤の残留が問題となっている。健康被害が懸念される化学薬剤や耐性菌を誘導する抗生物質に頼らない、安全性の高い微生物制御技術の構築が望まれている。乳酸菌が生産する抗菌ペプチド(バクテリオシン)の利用はその解決手段の一つとして期待されている。
【0003】
乳酸菌が生産する環状バクテリオシンとしては、現在までuberolysin、enterocin AS-48、gassericin A、reutericin 6が報告されている。これらの分離源は、乳幼児の糞便又は牛の乳房炎由来である。現在、enterocin AS-48は、E. faecium 7C5が生産することも明らかとなっており(非特許文献1)、さらにenterococcin EFS2(非特許文献2)、enterocin 4(非特許文献3)、bacteriocin 21(非特許文献4)として様々なE. faecalisからも分離されている。さらにチーズより分離されたE. faecium RJ16が生産するenterocin AS-48RJは、20残基目のGluがValに置換した、enterocin AS-48の類縁体として報告されている(非特許文献5)。
【0004】
環状バクテリオシンであるgassericin A(5652 Da)(非特許文献6〜9)及びuberolysin(7048 Da)(非特許文献10)は、SDS-PAGEに供した際、それぞれ3800 Da、4500 Daにバンドが検出される。これは、構成している疎水性アミノ酸数とコンパクトな構造とに起因すると考えられている。また、gassericin Aと98%の相同性を示すacidocin Bは、約2.4 kDaの位置にバンドが検出される(非特許文献11)。Acidocin Bの分子量は、完全には決定されていないが、構造遺伝子は解明されており、発見当初、アミノ酸組成分析等によって、推定で59残基からなる5753.5 Daの分子量を有するクラスI又はクラスIIに属するバクテリオシンであると考えられていた。その後、発見された環状バクテリオシンgassericin Aと同じリーダーペプチドを有すること、かつクラスII特有の-Gly-Gly-部位を有していないことなどから、現在では、58残基からなる5620 Daの環状バクテリオシンではないかと予想されている。しかしながら、未だ完全なアミノ酸解析や分子量は決定されていない(非特許文献12、13)。
【0005】
一方、7140 Daのenterocin AS-48は、SDS-PAGEに供した際、約6.5 kDaの位置にバンドが検出される(非特許文献14、15)。またenterocin AS-48は、低いpHでの熱処理に対して、全く活性を失わない(非特許文献16)。またenterocin AS-48の構造は、5つのα-ヘリックスを形成していることがNMRによってすでに明らかにされている(非特許文献17〜19)。さらにenterocin AS-48は、EDTAなどとの相乗効果により、Salmonella属やEsherichia coliに対しても抗菌効果を示す(非特許文献20)。このような優れた特性を持つenterocin AS-48を応用する研究は、今日まで盛んに行われている(非特許文献21、22)。
【0006】
【非特許文献1】Folli, C., I. Ramazzina, P. Arcidiaco, M. Stoppini, and R. Berni. 2003. Purification of bacteriocin AS-48 from an Enterococcus faecium strain and analysis of the gene cluster involved in its production. FEMS Microbiol Lett 221:143-149
【非特許文献2】Maisnier-Patin, S., E. Forni, and J. Richard. 1996. Purification, partial characterisation and mode of action of enterococcin EFS2, an antilisterial bacteriocin produced by a strain of Enterococcus faecalis isolated from a cheese. Int J Food Microbiol 30:255-270.
【非特許文献3】Joosten, H. M., M. Nunez, B. Devreese, J. Van Beeumen, and J. D. Marugg. 1996. Purification and characterization of enterocin 4, a bacteriocin produced by Enterococcus faecalis INIA 4. Appl Environ Microbiol 62:4220-4223.
【非特許文献4】Tomita, H., S. Fujimoto, K. Tanimoto, and Y. Ike. 1997. Cloning and genetic and sequence analyses of the bacteriocin 21 determinant encoded on the Enterococcus faecalis pheromone-responsive conjugative plasmid pPD1. J Bacteriol 179:7843-7855.
【非特許文献5】Abriouel, H., R. Lucas, N. Ben Omar, E. Valdivia, M. Maqueda, M. Martinez-Canamero, and A. Galvez. 2005. Enterocin AS-48RJ: a variant of enterocin AS-48 chromosomally encoded by Enterococcus faecium RJ16 isolated from food. Syst Appl Microbiol 28:383-397.
【非特許文献6】Kawai, Y., T. Saito, H. Kitazawa, and T. Itoh. 1998. Gassericin A; an uncommon cyclic bacteriocin produced by Lactobacillus gasseri LA39 linked at N- and C-terminal ends. Biosci Biotechnol Biochem 62:2438-2440.
【非特許文献7】Kawai, Y., Y. Ishii, K. Arakawa, K. Uemura, B. Saitoh, J. Nishimura, H. Kitazawa, Y. Yamazaki, Y. Tateno, T. Itoh, and T. Saito. 2004. Structural and functional differences in two cyclic bacteriocins with the same sequences produced by lactobacilli. Appl Environ Microbiol 70:2906-2911.
【非特許文献8】Kawai, Y., R. Kemperman, J. Kok, and T. Saito. 2004. The circular bacteriocins gassericin A and circularin A. Curr Protein Pept Sci 5:393-398.
【非特許文献9】Kawai, Y., T. Saito, M. Suzuki, and T. Itoh. 1998. Sequence analysis by cloning of the structural gene of gassericin A, a hydrophobic bacteriocin produced by Lactobacillus gasseri LA39. Biosci Biotechnol Biochem 62:887-892.
【非特許文献10】Wirawan, R. E., K. M. Swanson, T. Kleffmann, R. W. Jack, and J. R. Tagg. 2007. Uberolysin: a novel cyclic bacteriocin produced by Streptococcus uberis. Microbiology 153:1619-1630.
【非特許文献11】ten Brink, B., M. Minekus, J. M. van der Vossen, R. J. Leer, and J. H. Huis in't Veld. 1994. Antimicrobial activity of lactobacilli: preliminary characterization and optimization of production of acidocin B, a novel bacteriocin produced by Lactobacillus acidophilus M46. J Appl Bacteriol 77:140-148.
【非特許文献12】Leer, R. J., J. M. van der Vossen, M. van Giezen, J. M. van Noort, and P. H. Pouwels. 1995. Genetic analysis of acidocin B, a novel bacteriocin produced by Lactobacillus acidophilus. Microbiology 141:1629-1635.
【非特許文献13】Maqueda, M., M. Sanchez-Hidalgo, M. Fernandez, M. Montalban-Lopez, E. Valdivia, and M. Martinez-Bueno. 2008. Genetic features of circular bacteriocins produced by Gram-positive bacteria. FEMS Microbiol Rev 32:2-22.
【非特許文献14】Abriouel, H., E. Valdivia, A. Galvez, M. Maqueda. 2001. Influence of physico-chemical factors on the oligomerization and biological activity of bacteriocin AS-48. Curr. Microbiol. 42: 89-95.
【非特許文献15】Abriouel, H., E. Valdivia, M. Martinez-Bueno, M. Maqueda, and A. Galvez. 2003. A simple method for semi-preparative-scale production and recovery of enterocin AS-48 derived from Enterococcus faecalis subsp. liquefaciens A-48-32. J Microbiol Methods 55:599-605.
【非特許文献16】Gonzalez, C., G. M. Langdon, M. Bruix, A. Galvez, E. Valdivia, M. Maqueda, and M. Rico. 2000. Bacteriocin AS-48, a microbial cyclic polypeptide structurally and functionally related to mammalian NK-lysin. Proc Natl Acad Sci U S A 97:11221-11226.
【非特許文献17】Maqueda, M., A. Galvez, M. M. Bueno, M. J. Sanchez-Barrena, C. Gonzalez, A. Albert, M. Rico, and E. Valdivia. 2004. Peptide AS-48: prototype of a new class of cyclic bacteriocins. Curr Protein Pept Sci 5:399-416.
【非特許文献18】Langdon, G. M., M. Bruix, A. Galvez, E. Valdivia, M. Maqueda, and M. Rico. 1998. Sequence-specific 1H assignment and secondary structure of the bacteriocin AS-48 cyclic peptide. J Biomol NMR 12:173-175
【非特許文献19】Sanchez-Barrena, M. J., M. Martinez-Ripoll, A. Galvez, E. Valdivia, M. Maqueda, V. Cruz, and A. Albert. 2003. Structure of bacteriocin AS-48: from soluble state to membrane bound state. J Mol Biol 334:541-549.
【非特許文献20】Galvez, A., M. Maqueda, E. Valdivia, A. Quesada, and E. Montoya. 1986. Characterization and partial purification of a broad spectrum antibiotic AS-48 produced by Streptococcus faecalis. Can J Microbiol 32:765-771.
【非特許文献21】Rodriguez, E., J. L. Arques, M. Nunez, P. Gaya, and M. Medina. 2005. Combined effect of high-pressure treatments and bacteriocin-producing lactic acid bacteria on inactivation of Escherichia coli O157:H7 in raw-milk cheese. Appl Environ Microbiol 71:3399-3404.
【非特許文献22】Galvez, A., H. Abriouel, R. L. Lopez, and N. B. Omar. 2007. Bacteriocin-based strategies for food biopreservation. Int J Food Microbiol 120:51-70.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
現在まで、Lactococcus属が生産する環状バクテリオシンの報告例はない。
本発明者らは、チーズの製造工程中である、一晩寝かせたミルクからLactococcus sp. QU 12を単離した。このチーズは、特別な殺菌方法を行わないにも関わらず、雑菌による汚染をうけない。培養液上清は、特にBacillus属に抗菌効果を示す特徴的な抗菌スペクトルを有しており、本菌株が新規な抗菌性物質を生産している可能性が示唆された。
【0008】
そこで当該菌の培養上清から抗菌活性のある物質を単離・精製し、本発明を完成した。
I. 新規バクテリオシン及びそのホモログ
本発明は、Lactococcus属に属する(好ましくは、Lactococcus sp. QU 12菌株と同じ種に属し、より好ましくは、Lactococcus sp. QU 12菌株である)菌が生産する、分子量約6,060 Daの新規バクテリオシンlactocyclicin Q、及びそのホモログ、すなわち下記の(P1)、(P2)、(P3)又は(P4)のポリペプチドを提供する:
(P1)配列番号:9のアミノ酸配列からなる、線状又は環状のポリペプチド;
(P2)配列番号:9に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加したアミノ酸配列からなり、かつ抗菌活性を有する環状ポリペプチド;
(P3)配列番号:9に記載のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ抗菌活性を有する環状ポリペプチド。
(P4)(P1)、(P2)又は(P3)の環状ポリペプチドを少なくとも1カ所切断することにより得ることができ、かつ抗菌活性を有する線状ポリペプチド。
【0009】
配列番号:9のアミノ酸配列は、Lactococcus sp. QU 12の培養液上清の培養上清から精製された分子量約6,060 Daの新規な環状ポリペプチド(図13参照)の、全61アミノ酸長の配列である。
【0010】
本発明において、配列番号:nのアミノ酸からなる「環状ポリペプチド」とは、特別な場合を除き、配列番号:nのアミノ酸からなる線状のポリペプチドの、N末端とC末端とがペプチド結合し、環を形成することにより得られうる(そのようにして得られた環状ペプチド、及びそれと同一の構造を有する環状ペプチドを含む。)ものをいう。
【0011】
本発明はまた、Lactococcus属、好ましくは、Lactococcus sp. QU 12菌株(受領番号:NITE AP-610)と同じ種、より好ましくは、Lactococcus sp. QU 12菌株である菌が生産する、Bacillus属に属する菌に対して抗菌作用を有し、pH 3.0〜4.0で安定である、分子量約6,060 Daのポリペプチドを提供する。
【0012】
本発明でポリペプチドについて「抗菌活性を有する」というときは、特別な場合を除き、少なくとも環状の構造を採った場合に、Bacillus属に属する菌、例えばBacillus coagulansB. circulans又はB. subtilisに対して抗菌作用を有することをいう。Bacillus属に属する菌以外に、Lactococcus属、Enterococcus属、Pediococcus属に対して抗菌効果を有していてもよい。
【0013】
あるポリペプチドが抗菌活性を有するか否かは、当業者であれば、適宜評価することができる。例えば、Spot-on-lawn法により評価することができる。評価に際しては、Bacillus属に属する菌として、検定菌Bacillus coagulansを用いることができ、また一般に入手可能なBacillus coagulansJCM 2257、B. circulans JCM 2504、B. subtilis JCM 1465を用いることができる。より詳細な条件は、本明細書の実施例の項を参照することができる。
【0014】
本発明でポリペプチドに関し「1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列」というときの置換等されるアミノ酸の個数は、特別な場合を除き、そのアミノ酸配列を有するポリペプチドが所望の機能を有する限り特に限定されないが、1〜9個又は1〜4個程度であるか、性質の似たアミノ酸(例えば、グリシンとアラニン、バリンとロイシンとイソロイシン、セリンとトレオニン、アスパラギン酸とグルタミン酸、アスパラギンとグルタミン、リシンとアルギニン、システインとメチオニン、フェニルアラニンとチロシンは、性質が似ているということができる。)同士の置換等であれば、さらに多くの個数の置換等がありうる。このようなアミノ酸配列に係るポリペプチドを調製するための手段は、当業者にはよく知られている。
【0015】
本発明でいうアミノ酸配列に関する高い同一性とは、少なくとも50%、好ましくは70%、より好ましくは80%、さらに好ましくは90%、最も好ましくは95%の配列の同一性を指す。アミノ酸配列の同一性に関する検索・解析は、当業者には周知のアルゴリズム又はプログラム(例えば、BLASTN、BLASTP、BLASTX、ClustalW)により行うことができる。プログラムを用いる場合のパラメーターは、当業者であれば適切に設定することができ、また各プログラムのデフォルトパラメーターを用いてもよい。これらの解析方法の具体的な手法もまた、当業者には周知である。
【0016】
本発明において、ポリペプチドについて分子量を示すときは、特別な場合を除き、ESI/MSを用いて決定した値をいう(実施例参照)。
本発明の新規バクテリオシン及びそのホモログは、合成することができ、またLactococcus属に属する(好ましくは、Lactococcus sp. QU 12菌株(受領番号:NITE AP-610)と同じ種に属し、より好ましくは、Lactococcus sp. QU 12菌株である)菌の培養上清から単離・精製することができる。このための詳細な条件は、本明細書の実施例の項を参照することができる。さらに、本発明の新規バクテリオシン及びそのホモログは、後述する本発明の遺伝子及びそのホモログを利用して、遺伝子工学的に調製することもできる。
【0017】
II. 新規バクテリオシンlactocyclicin Qの性質及び構造
[性質]
本発明者らによって命名されたlactocyclicin Qは、Lactococcus sp. QU 12の培養液上清を適切な条件でRP-HPLCに供した際に、アセトニトリル濃度、約64%に活性のある単一ピークとして認められる(実施例及び図2参照)。培養液上清1000 mlからは、約0.4 mg(収率25%)の精製が可能であり、精製物をESI/MSに供した結果、分子量は6062.8 Daである(実施例及び図3参照)。
【0018】
精製物は、モル比1:1で、ペプシン及びプロテイナーゼKで完全に分解するが、モル比100:1では、ほとんど活性が残存し、酵素感受性が低いといえる。また、精製物の耐pH及び耐熱性試験を行ったところ、酸性から中性域で安定していることが示された。また特筆すべき点として、pH 3.0及びpH 4.0において、121℃、15分間の熱処理においても全く失活せず(実施例及び表11参照)、低pH域において安定した構造を有していることが示唆された。
【0019】
精製物は、抗菌活性試験から、Lactococcus属、Enterococcus属、Pediococcus属、Bacillus属に対して顕著な抗菌効果を示しており、広い抗菌スペクトルを有していた。(実施例、表12及び表13参照)。また、Escherichia coli NBRC 3301及びE. coli JM109対しては、それぞれ17.3 μM 及び34.3 μMで抗菌活性を示した。
【0020】
諸性質、抗菌スペクトル及び分子量から、本バクテリオシンは、安定な構造を有したクラスIIcに属するバクテリオシンであることが推定された。
[構造]
Lactocyclicin Qは、全61残基からなる環状バクテリオシンである(実施例及び参照図13)。全61残基の分子量の計算値は、6078.07 Daであるが、lactocyclicin Qは、N末端とC末端が結合した環状構造であるため、1脱水され18 Daの分子量の減少が起きていることから、lactocyclicin Qの分子量の計算値は、6060.08 Daである。この値は、ESI/MSで得られた分子量6062.8 Daとほぼ完全に一致する。
【0021】
既知環状バクテリオシンとlactocyclicin Qの二次構造予測を比較した結果、lactocyclicin Qは、いくつかのα-ヘリックスを有しており、enterocin AS-48と類似した構造を形成している可能性が考えられた(実施例及び表19参照)。
【0022】
III. lactocyclicin Qをコードする遺伝子及びそのホモログ
本発明はまた、lactocyclicin Qをコードする遺伝子及びそのホモログ、すなわち下記の(N1)、(N2)、(N3)、(N4)又は(N5)のポリヌクレオチドを提供する:
(N1)配列番号:33に記載のヌクレオチド配列の全部、又は少なくとも61〜246番のヌクレオチド配列を含む一部からなるポリヌクレオチド;
(N2)(N1)に記載のポリヌクレオチドのヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ抗菌活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(N3)(N1)に記載のポリヌクレオチドのヌクレオチド配列において1若しくは複数のヌクレオチドが置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたヌクレオチド配列からなり、かつ抗菌活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(N4)(N1)に記載のポリヌクレオチドのヌクレオチド配列と少なくとも80%の同一性を有し、かつ抗菌活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(N5)新規バクテリオシンlactocyclicin Q、及びそのホモログをコードするポリヌクレオチド、すなわち上述した(P1)、(P2)、(P3)又は(P4)のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【0023】
配列番号:33に記載のヌクレオチド酸配列は、lactocyclicin Qをコードする遺伝子を含む、全長300ヌクレオチド長の配列である(図17参照)。
配列番号:33の42〜47番目の部分はリボソーム結合部位(ribosome binding site; RBS、SD配列ということもある。)であると考えられる。55〜60番目はleader peptideに対応し、263〜291番目はterminator sequenceと推定される。
【0024】
本発明でポリヌクレオチドに関し、「ストリンジェントな条件」というときは、特別な場合を除き、6 M尿素、0.4% SDS、0.5×SSCの条件又はこれと同等のハイブリダイゼーション条件を指し、さらに必要に応じ、本発明には、よりストリンジェンシーの高い条件、例えば、6 M尿素、0.4% SDS、0.1×SSC又はこれと同等のハイブリダイゼーション条件を適用してもよい。それぞれの条件において、温度は約40℃以上とすることができ、よりストリンジェンシーの高い条件が必要であれば、例えば約50℃、さらに約65℃としてもよい。
【0025】
また、発明でポリヌクレオチドに関し「1若しくは複数のヌクレオチドが置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたヌクレオチド配列」というときの置換等されるヌクレオチドの個数は、特別な場合を除き、そのヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドがコードするポリペプチドが所望の機能を有する限り特に限定されないが、1〜9個又は1〜4個程度であるか、同一又は性質の似たアミノ酸(性質の似たアミノ酸については前述した。)配列をコードするような置換等であれば、さらに多くの個数の置換等がありうる。このようなヌクレオチド配列に係るポリヌクレオチドを調製するための手段は、当業者にはよく知られている。
【0026】
本発明に置いてヌクレオチド配列に関し、高い同一性とは、少なくとも50%、好ましくは70%、より好ましくは80%、さらに好ましくは90%、最も好ましくは95%の配列の同一性を指す。同一の性の計算は、本明細書の新規バクテリオシン及びそのホモログの項で述べたのと同様、当業者には周知のアルゴリズム又はプログラムにより行うことができる。
【0027】
本発明のポリヌクレオチドは、合成することができ、また天然物からハイブリダイゼーション技術、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術等を利用して得ることができる。詳細な条件は、明細書の実施例の項を参照することができる。
【0028】
本発明でいう「ポリヌクレオチド」には、特別な場合を除き、DNA及びRNAが含まれ、DNAには、ゲノムDNA、cDNA及び化学合成DNAが含まれる。DNAは、一本鎖DNA及び二本鎖DNAでありうる。
【0029】
本発明のポリヌクレオチドの好ましい例は、Lactococcus属由来のものである。
本発明はまた、本発明のポリヌクレオチドを含む組換えベクター、その組換えベクターにより形質転換された、形質転換体(例えば形質転換大腸菌、形質転換乳酸菌、形質転換酵母、形質転換昆虫細胞)も提供する。本発明はさらに、本発明のポリヌクレオチドを用いて宿主(例えば大腸菌、乳酸菌、酵母、昆虫細胞)を形質転換する工程(例えば、本発明の組換えベクターにより形質転換する工程)を含む、形質転換方法も提供する。
【0030】
本発明のポリヌクレオチドが挿入されるベクターは、宿主内で挿入物を発現させることが可能なものであれば特に制限はなく、ベクターは、通常、プロモーター配列、ターミネーター配列、外的な刺激により誘導的に挿入物を発現させるための配列、目的遺伝子を挿入するための制限酵素により認識される配列、及び形質転換体を選択するためのマーカーをコードする配列を有する。組換えベクターの作成、組換えベクターによる形質転換方法は、当業者に周知の方法を適用することができる。
【0031】
IV. Lactococcus sp. QU 12菌株
本発明はまた、新規バクテリオシンを生産することができる、Lactococcus sp. QU 12を提供する。Lactococcus sp. QU 12は、チーズの製造工程中である、一晩寝かせたミルクから単離され、糖資化性パターン及び16S rRNAの解析から、Lactococcus属の新種の株である可能性が示唆された。Lactococcus sp. QU 12は、本発明者らにより製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(NITE)に、受領番号:NITE AP-610として寄託されている。
【0032】
[菌学的性質]
Lactococcus sp. QU 12は、グラム陽性、球菌、非運動性、非胞子形成性、カタラーゼ陰性、通性嫌気性である。また、API 50 CHL kit(bioMerieux、フランス)を用いて糖類資化性試験を行った(実施例参照)結果を下表に示す。
【0033】
【表1】

【0034】
[変異体]
本発明により、Lactococcus sp. QU 12菌株と同一の菌学的性質を有する、菌株又はその変異体、及びLactococcus sp. QU 12菌株の16S rRNA遺伝子断片(配列番号:3)と高い同一性を有する(例えば、96%より高い同一性を有する、好ましくは97%同一である、さらに好ましくは98%同一である、さらに好ましくは99%同一である)部分を含むヌクレオチド配列からなる16S rRNA遺伝子を有する、菌株又はその変異体も提供する。配列番号:3と高い同一性を有する部分は、16S rRNA遺伝子の上流部分の約500 bpであり得る。なお、本発明者らの検討に拠れば、公知の菌でもっとも近いもので96%であった。
【0035】
[菌株を用いた新規バクテリオシンの製造]
本発明の菌株及びその変異体の菌株は、本発明の新規バクテリオシン及びそのホモログ製造のために用いることができる。なお、一般に乳酸菌の培養に用いられる2種類の培地を用いた場合、MRS液体培地では抗菌活性が確認できないが、M17液体培地では抗菌活性が顕著に確認できるため、生産条件はM17液体培地での培養が良いと考えられる。また、20時間、37℃以上では、バクテリオシン生産性は、急激に低下する場合がある。
【実施例】
【0036】
Lactococcus sp. QU 12の同定]
1. 方法
1.1. 16S rRNA配列解析
分離された本菌株の菌種同定のために、大腸菌を基準としたポジション8〜1510について解析を行った。本菌株のDNAを抽出し、それを鋳型として下記に示したプライマーとTaqDNAポリメラーゼ(Promega、米国)を用いてPCRを行った。
【0037】
16s-8f AGA GTT TGA TCC TGG CTC AG(配列番号:1)
16s-1510r ATT ACC GCS GCT GCT G(配列番号:2)
定法に従って、TAクローニング後、シーケンス解析を行った。得られた配列は、データベース(BLAST program of the National Center for Biotechnology Information、)で相同検索を行った。
【0038】
1.2. 糖類資化性試験
API 50 CHL kit(bioMerieux、フランス)を用いて糖類資化性試験を行い、菌種同定を行った。本キット付属のマニュアルに従い、24時間と48時間に記録した糖類資化性パターンをAPILAB Plusソフトウェアで解析した。
【0039】
2. 結果及び考察
上流部分約500 bpの塩基配列(図1、配列番号:3)について解析した結果、本断片はLactococcus raffinolactis 16S rRNA(ID: EU091467)と96%の相同性を示した。また、L. piscium 16S rRNA(ID: DQ343754)と95%、とL. plantarum 16S rRNA(ID: EF694029)94%の相同性を示した。さらにAPI 50CHLの結果から、L.lactis ssp. lactisと69.9%の確率で同定された。しかしながら、L. raffinolactisL. plantarumL. pisciumがバクテリオシンを生産した報告は未だない。また、上記の株との相同性が低かったことから、Lactococcus属の新種の株である可能性が示唆された。以降、本菌株をLactococcus sp. QU 12とする。
【0040】
Lactococcus sp. QU 12が生産するバクテリオシンの精製及び諸性質]
1. 方法
1.1. 抗菌活性試験
抗菌活性試験は、Spot-on-lawn法で行った。はじめに0.6% 酵母エキス(ナカライテスク、日本)を加えたTryptic soy agar(TSA、Difco、米国、表2)プレートを作製した。次に、あらかじめ溶解させ55℃に保っておいたMRS agar(MRS + 1% agar、OXOID、米国、表3)に検定菌を1%(v/v)接種し、TSAプレートに重層した。なお、使用した検定菌を表4及び表5に示す。重層した寒天培地が固化した後、55℃に設定した恒温槽で15分間乾燥させた。試料は、0.20 μmのメンブランフィルター(DISMIC-13 cp、ADVANTEC、日本)を用いて、フィルター滅菌をおこなったものを使用した。試料は、0.1% ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート(Tween 80、ナカライテスク)を含む滅菌蒸留水で2倍段階希釈し、10 μlを寒天培地上に滴下した。滴下した試料液が乾燥後、検定菌の最適培養温度で18時間培養し、検定菌の生育阻止円を形成する最大希釈液を求めた。特にE. coli JM109及びNBRC 3301は、48時間培養後に阻止円を確認した。抗菌活性は(AU/ml)は、下記に示す式によって算出した。(AU; arbitrary unit)。 抗菌活性(AU/ml) = 2n(AU) / 0.01(ml) (n; 希釈倍数)
この方法では、抗菌活性が強いほど阻止円を形成する最大希釈倍数が大きくなるため、抗菌活性値が大きくなる。
【0041】
【表2】

【0042】
【表3】

【0043】
【表4】

【0044】
【表5】

【0045】
1.2. バクテリオシンの精製
Lactococcus sp. QU 12をM17培地(Merck、 ドイツ、表6)1000 mlで30℃・20時間培養し、1 M HClを用いてpH 3.0に調整し、遠心分離(9000×g、10 min、4℃)により培養液上清を得た。調製した培養液上清は、陽イオン交換クロマトグラフィーに供した。SP-Sepharose fast flow(GEヘルスケア、スウェーデン)を、エコノカラム(Ф1.0×10 cm、 BIO-RAD、米国)に充填し、送液はMicro tube pump MP3(東京理化、日本)を用いた。SP-Sepharoseは、50 mMクエン酸ナトリウム緩衝液(pH 3.0、緩衝液A)100 mlで平衡化した後に試料を負荷し、緩衝液A 100 mlで洗浄した。その後、1 M 塩化ナトリウム(NaCl、ナカライテスク)を含む緩衝液A 、50 mlで活性画分を溶出し分取した。次に、疎水性相互作用クロマトグラフィーを行うため、活性画分に終濃度が1 Mになるように硫酸アンモニウム(SIGMA、米国)を添加した。担体はエコノカラム(Ф1.0×5.0 cm、BIO-RAD)に充填したOctyl-Sepharose CL-4B(GEヘルスケア)を使用した。
Octyl-Sepharoseは、50 mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH 5.6、緩衝液B)で洗浄した。その後、1 M 硫酸アンモニウムを含む緩衝液B 100 mlで平衡化し、カラムに1 M硫酸アンモニウムを溶解させた活性画分を負荷した。次に、緩衝液B 50 mlで洗浄し、70%エタノールを含む緩衝液Bで活性画分を溶出した。その後、活性画分を逆相高速液体クロマトグラフィー(Reversed-phase high-performance liquid chromatography; RP-HPLC)に供した。カラムはResource RPC 3 ml (GEヘルスケア)を使用し、溶離液はA液として0.1% TFAを含むMilliQ水、B液として0.1% TFAを含むアセトニトリル (HPLC用、関東化学)を用い、表7に示すA液とB液の濃度勾配により溶出し、フラクションコレクター(SF2100、東京理化、日本)で分取した。
【0046】
1.3. タンパク質定量
タンパク質の定量には、NanoDrop(登録商標) ND-1000(NanoDrop Technologies, Inc. 米国)を用いてA280法で自動測定し、濃度を求めた。
【0047】
1.4. 分子量の測定
分子量の測定は、electrospray ionization法(ESI-TOF/MS、JMS-T100LC AccuTOF、日本分光、日本)を使用した。0.05% TFA含有アセトニトリルを0.2 ml/minで送液しながら、サンプルを3 μl注入し、分子量を測定した。
【0048】
1.5. 酵素感受性試験
精製した本バクテリオシンの酵素感受性について実験を行った。使用した酵素は、トリプシン(1000 units/mg)、α-キモトリプシン(37 units/mg)、プロテイナーゼ K (0.6 units/mg)、パパイン(17 units/mg)(SIGMA、米国)を用いた。なお、ペプシンの最適pHは、2.0であるため、1 M HClを用いて調製した滅菌蒸留水を用いた。酵素とバクテリオシン溶液のモル比が1:1、100:1、またバクテリオシン溶液の終濃度が100 μg/mlになるように、各酵素溶液を添加した。37℃・3時間処理後、100℃・5分間の熱処理を行い、酵素を失活させた。全ての処理産物をpH 7.0に調製して、測定を行った。残存活性は、検定菌B. coagulansを用いて、spot-on-lawn法によって測定した。また、コントロールとして未処理のものを用いた。
【0049】
1.6. pH及び耐熱性試験
精製した本バクテリオシンのpH及び熱安定性について検討した。100 μg/mlの濃度に調製したバクテリオシン溶液20 μlは、1 M NaOH又は1 M HClを用いて、pH 3.0からpH 11.0まで調整した。さらに、各pHに処理したバクテリオシン溶液に、80℃・30分間、100℃・30分間、121℃・15分間(オートクレーブ)の熱処理をそれぞれ行った。熱処理後、全てのサンプルをpH 7.0に調整し、30 μlにメスアップした。残存活性は、検定菌B. coagulansを用い、spot-on-lawn法によって測定した。また、コントロールとして、各pHに調製したバクテリオシン溶液を37℃・24時間インキュベートしたものを用いた。
【0050】
【表6】

【0051】
【表7】

【0052】
2. 結果及び考察
Lactococcus sp. QU 12の培養液上清の抗菌スペクトルを表8に示す。その結果、Bacillus属などに対して顕著な抗菌活性を示す、特徴的な抗菌スペクトルを有していた。次に本菌株が生産する抗菌性物質を精製した結果、最終的にRP-HPLCに供した際に、アセトニトリル濃度、約64%に活性のある単一ピークが得られた(図2)。このことから本菌株は、単一の抗菌性物質を生産していると考えられ、また溶出したアセトニトリル濃度から疎水性の高いペプチドであることが示唆された。得られた条件を基に培養液上清1000 mlから、最終的にRP-HPLCに供した際、25%の収率で精製でき、0.4 mgのペプチドが得られた(表9)。この精製物をESI/MSに供した結果、本ペプチドは、6062.8 Daであることが決定された(図3)。さらに精製物を酵素処理した結果、モル比1:1で、ペプシン及びプロテイナーゼKで完全に分解したことから、ペプチド性抗菌性物質、バクテリオシンであることが強く示唆された(表10)。またモル比100:1では、ほとんど活性が残存していたことから、酵素感受性が低いことが示された。さらに、精製バクテリオシンのpH及び耐熱性試験を行った結果、酸性から中性域で安定していることが示され、また特筆すべき点として、pH 3.0及びpH 4.0において、121℃、15分間の熱処理においても全く失活しなかった(表11)。これらの結果は、一般的なバクテリオシンと比較して、本バクテリオシンは、酵素感受性が低く、さらに低pH域において安定した構造を有していることが示唆された。精製バクテリオシンの抗菌活性試験から、Lactococcus属、Enterococcus属、Pediococcus属、Bacillus属に対して顕著な抗菌効果を示しており、広い抗菌スペクトルを有していた。(表12、13)。また、Escherichiacoli NBRC 3301及びE. coli JM109対しては、それぞれ17.3 μM 及び34.3 μMで抗菌活性を示した。諸性質、抗菌スペクトル及び分子量から、本バクテリオシンは、安定な構造を有したクラスIIcに属するバクテリオシンであることが推定された。
【0053】
【表8】

【0054】
【表9】

【0055】
【表10】

【0056】
【表11】

【0057】
【表12】

【0058】
【表13】

【0059】
[バクテリオシンの構造解析]
1. 方法
1.1. アミノ酸配列解析
精製バクテリオシン溶液は、冷却遠心型濃縮機SpeedVac(Savant、米国)を用いて終濃度2.0 mg/mlになるように濃縮した。これを自動気相プロテインシーケンサー(PPSQ-21、島津製作所、日本)に供した。
【0060】
1.2. ペプチド断片化処理
各断片化処理は、バクテリオシン溶液1モルに対してモル比100倍量になるよう酵素又は試薬を添加し、表14及び表15に記した条件で行った。特に、BNPS-skatole(3-bromo-3-methyl-2- (2-nitrophenylthio)-3H-indole、Sigma-Aldrich、米国)処理は、定法の反応時間を37℃・72時間に変えて行った。その後、MilliQ水を用いて、2 mlにメスアップし、遠心分離(8000×g、10 min、25℃)を行い、上清をRP-HPLCに供した。なお本反応機構を図4に示す。塩酸処理は、濃縮したバクテリオシン溶液200 μlに0.03 M HCl 又は、0.6 M HClを800 μl添加し、それぞれ110℃・3時間、37℃・48時間の反応後、RP-HPLCに供した。
【0061】
【表14】

【0062】
【表15】

【0063】
1.3. 還元ピリジルエチル化処理
還元ピリジルエチル化処理は、一般的にジスルフィド結合の還元後に、システイン残基に4-ビニルピリジンを付加する処理で、アミノ酸シーケンスによるシステイン残基の検出が可能となる。しかし方法においては、ペプチド中の末端α-アミノ基及びリジン残基のε-アミノ基が修飾される可能性がある。 終濃度0.2 mg/mlのペプチド溶液に7 Mグアニジン塩酸塩(ナカライテスク)10 mM EDTAを含む0.5 M Tris-HCl緩衝液(pH 8.5)800 μlを添加した。1 μlの4-ビニルピリジン(分子量105.1、SIGMA)を加えてよく混合したのち、2 μlのトリ-n-ブチルホスフィン(SIGMA)を加えた。次に容器内を窒素で置換し、55 ℃・4時間、暗所で反応させた。その後、1 μlの1 M 氷酢酸を添加し反応を止め、RP-HPLCに供した。
【0064】
1.4. アミノ酸組成分析
精製したバクテリオシンの加水分解により、そのペプチドを構成しているアミノ酸の組成を解析した。約100 μgの精製バクテリオシンを6 M HClと2%フェノールの存在下で、110℃・24時間、反応させ加水分解した。この加水分解物のアミノ酸組成をJIC-500全自動アミノ酸分析機(日本電子)で分析した。
【0065】
1.5. Tricine-SDSゲル電気泳動
精製したペプチド(0.2 mg/ml)について、10%トリシン-SDSゲル電気泳動を行い、分子量の測定を行った。方法は、定法に従って、表16に示したゲル濃度で行った。比較対象として、還元ピリジルエチル化処理ペプチド(0.01 mg/ml)及び0.6 M 塩酸処理(0.2 mg/ml)を行った精製ペプチドを用いた。
【0066】
【表16】

【0067】
2. 結果及び考察
QU 12株が生産する精製バクテリオシンをN末端アミノ酸シーケンスに供した結果、エドマン分解が進行しなかった。このことより、本バクテリオシンのN末端α-アミノ基が何らかの修飾を受けていると考えられた。そこで、各酵素及び化学試薬を用いたペプチド断片化処理を行った。しかしながら、V8プロテアーゼ、リシルエンドペプチダーゼ及びエンドプロテアーゼ、また臭化シアン及びNTCB処理ではペプチド断片化は行えなかった。これらの結果は本バクテリオシンが、酵素に感受性が低いこと、またメチオニン残基及びシステイン残基を有していないためであると考えられた。
【0068】
そこで、トリプトファン残基のC末端を特異的に切断するBNPS-skatole処理を行った結果、分子量の異なる3つ断片が得られた(図5)。最初に検出されたピークNo.1をESI/MSに供すると、1190.7 Daであった(図6)。このペプチド断片をアミノ酸シーケンスに供した結果、LIDHIGAPR(配列番号:4)の9残基のアミノ酸配列を得た。ESI/MSによる分子量情報から、本ペプチド断片には、さらに10残基目のトリプトファンが存在することが推定された。長時間のBNPS-skatole処理を行った場合、C末端のトリプトファン残基は、臭素(Br=79.9)によって修飾を受け、構造変化したために検出されなかったものと推測される。よって、得られたアミノ酸配列の計算値は、1176.43 Daであるが、C末端に存在すると推定される構造変化したトリプトファンが酸化を受けたため、ESI/MSで検出された分子量と約16 Daの違いが生じたと考えられる。No.2のピーク(分子量2290.1 Da)をアミノ酸シーケンスに供した結果、AVKAGLATAAAIVKHQGKAAAAA(配列番号:5)からなる23残基の配列が得られた(図7)。No.3の分子量1022.7 DaからVLALVPGPG(配列番号:6)の9残基の配列が得られた(図8)。これらの断片は、C末端にトリプトファンが存在していた場合、計算上、それぞれ2275.66 Daと1008.20 Daとなる。また、ピークNo.1で得られた結果と同様に、ESI/MSによる分子量情報から得られた値と約16 Daの差が生じていたことから、C末端に存在すると考えられるトリプトファンが酸化したためであると考えられた。また、表15で示した定法の温度・時間で行った場合、得られた1118.2 Daの分子量の断片からもNo.3(1022.3 Da)と同様の配列が得られた。この断片は、No.3のC末端トリプトファン残基の臭素化とアミノ酸の酸化した分子量とほぼ完全に一致した。この結果は、BNPS-skatole処理を行った場合、上記の短時間処理と長時間処理で、検出される分子量に差が生じることを示唆した。 精製バクテリオシンに対して、0.6 M及び0.03 Mの塩酸処理をそれぞれ、37℃・48時間、105℃・3時間行った結果、6080.8 Daのペプチドと5963.1 Daのペプチド断片が得られた(図9〜12)。前者の結果から、18 Daの分子量の増加が見られたことは、0.6 M塩酸処理によって断片化されたのではなく、一箇所が加水分解されたことを意味する。これは、この精製バクテリオシン分子にジスルフィド結合などを有する複雑な架橋構造を形成しているか、又は環状であることを強く示唆した。また6080.8 Daから、GKAAAAAWLIDHLGAPRWAVDTILGAIAV(配列番号:7)の29残基の配列が得られた。そこで、ネイティブの本バクテリオシンに対して還元ピリジルエチル化処理を行った結果、4-ビニルピリジン3分子分の分子量の増加が見られた。この結果は、少なくとも分子内に2つ以上のジスルフィド結合又はシステイン残基が存在すると推測された。さらに、0.03 M 塩酸処理によって得られた5963.1 Daの断片からTILGAIAVGNLASWVLALVPGPGWAVKAG(配列番号:8)の29残基の配列を決定した。これまで得られたアミノ酸配列を統合すると重複している部分が存在していた(表17)。以上のことより全てのペプチド断片は、連続していることが示され、本バクテリオシンは、全61残基からなる環状バクテリオシンであることが示された(図13)。全配列LIDHLGAPRWAVDTILGAIAVGNLASWVLALVPGPGWAVKAGLATAAAIVKHQGKAAAAAW(配列番号:9)を相同性検索した結果、一致するバクテリオシンは存在していなかったことから、本バクテリオシンは、新奇環状バクテリオシンであることが示された。Lactococcus属が生産する環状バクテリオシンの報告例は、未だ無い。よって、本バクテリオシンをlactocyclicin Qと命名した。得られた全61残基の分子量の計算値は、6078.07 Daである。しかしながら、本バクテリオシンは、N末端とC末端が結合した環状構造であるため、1脱水され18 Daの分子量の減少が起きていることから、6060.08 Daである。この値は、ESI/MSで得られた分子量6062.8 Daとほぼ完全に一致した。さらに、0.03 M塩酸処理によって得られたペプチド断片のN末端は、スレオニン残基であった。このペプチド断片のC末端に存在する、アスパラギン酸残基が切断された計算上の分子量は、5963.0 Daであり、ESI/MSで得られた分子量5963.1 Daとほぼ完全に一致した(表17)。また、全61残基中にシステイン残基が存在しなかったことから、還元ピリジルエチル化処理は、システイン残基以外のアミノ酸が修飾された可能性が示唆された。そこで、アミノ酸組成解析を行った結果、アミノ酸シーケンスによって得られたアミノ酸残基数とほぼ一致していた(表18)。違いが見られたプロリン残基は、イミノ基を有するため、トリプトファン残基は、酸によって加水分解したため検出できなかったと考えられた。よって、ピリジルエチル化処理により、リジン残基が修飾を受けたと考えられた。
【0069】
さらにピリジルエチル化処理ペプチド(0.01 mg/ml)、0.6 M HCl処理ペプチド(0.2 mg/ml)、未処理のlactocyclicin Q(0.2 mg/ml)をSDS-PAGEに供した。ピリジルエチル化処理ペプチドは、精製収率が低かったため、他の処理ペプチドと比べて検出されたバンドに強弱の差が見られたが、3つとも実際の分子量とほぼ同じ約6200 Daの位置にバンドが検出された(図14)。
【0070】
環状バクテリオシンgassericin A(5652 Da)及びuberolysin(7048 Da)は、SDS-PAGEに供した際、それぞれ3800 Da、4500 Daにバンドが検出される。これは、構成している疎水性アミノ酸数とコンパクトな構造とに起因すると考えられている。7140 Daの環状バクテリオシンenterocin AS-48は、SDS-PAGEに供した際、約6.5 kDaの位置にバンドが検出される。enterocin AS-48は、低いpHでの熱処理に対して、全く活性を失わない。またenterocin AS-48の構造は、5つのα-ヘリックスを形成していることがNMRによってすでに明らかにされている。
【0071】
そこで、上記の既知環状バクテリオシンとlactocyclicin Qの二次構造予測を比較した結果、lactocyclicin Qは、いくつかのα-ヘリックスを有しており、enterocin AS-48と類似した構造を形成している可能性が考えられた(表19、配列番号:10〜12)。
【0072】
【表17】

【0073】
【表18】

【0074】
【表19】

【0075】
[Lactocyclicin Qの遺伝子解析]
1. 方法
1.1. ゲノム抽出
Lactococcus sp. QU 12をM17培地100 mlを用いて30℃で12時間培養を行った。次いで10000×g、10分間、4℃で遠心により菌体を回収した。得られた菌体は、1 mlの蒸留水に懸濁し、10 mgの卵白リゾチーム(生化学工業、日本)を加え37℃で20分間反応させた。反応終了後にあらかじめ60℃に加温しておいたCTAB溶液(2% ヘキサデシトルトリメチルアンモニウムブロミド(和光純薬、日本)、100 mM Tris-HCl(pH 8.0)、1.4 M NaCl、20 mM EDTA)を用いて、定法に従ってゲノム抽出及び精製を行った。なお、精製したゲノムの定量は、NanoDrop(登録商標) ND-1000を用いた。
【0076】
1.2. 制限酵素処理
得られたゲノムを以下の方法で制限酵素処理し、ベクターへのライゲーションを行った。EcoRI、HindIII、KpnI、MboI、SacI、XbaI(ニッポンジーン、日本)を用いて、表20に示す条件に従い、37℃で一晩反応を行った。ベクターは、pUC18を使用し、表21に示す条件で制限酵素処理を行った。その後、脱リン酸化(BAP)処理を行った。BAP処理は、東洋紡のキット(E. coli alkaline phosphase)を使用し、使用法は、説明書に従った。ライゲーションは、ligation high(東洋紡、日本)を用いた。なお、使用方法は説明書に従った。反応終了後に、PCR産物精製キット(QIA quick PCR purification kit、QIAGEN、米国)により精製を行った。
【0077】
1.3. PCR
1.3.1. Degenerated PCR
今回使用した条件を表22に、プライマーの位置を図15に、構築したプライマーを表23に示す。プライマーは、アミノ酸シーケンスで得られたアミノ酸配列を基に、コドンが1つであるトリプトファンを中心として作製した。プライマーの作成は、北海道システムサイエンスに委託した。
【0078】
1.3.2.Anchored PCR
Degenerated PCRで得られた増幅断片を用いて、TAクローニングを行い、一部のヌクレオチド配列を解析した。得られた遺伝子配列を基に特異的プライマーを作製した。 プライマーの作成は、北海道システムサイエンスに委託した。作製したLact.F1及びベクター上の1stMup 13F、13Rを用い、鋳型にはLactococcussp. QU 12のゲノムをベクターに組み込んだpUC18を使用してPCRを行った。反応液の組成及び反応条件は、表24、表25に示す。得られたPCR産物は、蒸留水で100倍希釈し、nested PCRを行った。プライマーは、Lact.F2及び2ndMup 13F、13Rを用いて同様の条件でPCRを行った。得られたPCR産物を鋳型として、Lact.F3及び3rdMup 13F、13Rを用いてnested PCRを行った。さらに上記に記した同様の方法でLact.R1,R2,R3プライマーを用いても行った。これらのプライマーによって得られたPCR産物はPCR産物精製キットにより精製を行った。さらに、Taqポリメラーゼを用いて、表26、表27に示す条件でA付加を行った後に、pGEM-Tに組み込んだ。E.coli JM109コンピテントセル50 μlと、ライゲーションしたプラスミドDNA 20 μlを氷浴上で混和後、42℃のヒートショックを1分間行い、プラスミドをコンピテント細胞に導入した。本細胞液にSOC培地(Table 2-28)950 μlを加え、37℃で3 h培養後、アンピシリン10 μg/mlとX-gal、20 μg/mlを含む1.5% LB寒天培地に、50 μl散布し、37℃で一晩培養した。生育したシングルコロニーを同じ組成のLB液体培地に接種し、37℃で一晩培養した。培養終了後、菌体からQIAprep Spin Miniprep Kit(QIAGEN、米国)を使用し、プラスミド抽出を行った。
【0079】
1.4. DNA シーケンス
DNAシーケンスは、Macrogen社(韓国)に依頼した。
2. 結果及び考察
Degenerated PCRを行った結果、QU12.F3とQU12.R1を用いた際、増幅断片が得られた。QU12.F2及びR2で増幅断片を得られなかったことから、図15で示したトリプトファン残基の位置に、本バクテリオシンのN末端及びC末端が存在していることが示唆された。乳酸菌が生産する4つの既知環状バクテリオシンのN末端又はC末端側には、チロシン残基やトリプトファン残基などの芳香族アミノ酸が存在している。このことからもこの位置にあるトリプトファン残基周辺領域が、N末端又はC末端であることが推定された。(図16)。さらに、新たに得られたDNA配列から、特異的なプライマー(Lact.F1、R1〜F3、R3)を構築した。これらを用いてAnchored PCRを行い、得られた増幅断片のDNAシーケンスを行った結果、リボソーム結合部位、リーダー配列、ステムループと予想される配列及びlactocyclicin Qの構造遺伝子が明らかとなった(図17、配列番号:33)。さらにLyc.F及びLyc.Rプライマーを構築して、PCRをおこなった。得られた増幅断片のDNAシーケンスを行った結果、Anchored PCRで得られたDNA配列と完全に一致した。これにより、2残基のリーダーペプチドを有する全61残基からなるバクテリオシンであることが示された。
【0080】
【表20】

【0081】
【表21】

【0082】
【表22】

【0083】
【表23】

【0084】
【表24】

【0085】
【表25】

【0086】
【表26】

【0087】
【表27】

【0088】
【表28】

【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】図1は、Lactococcus sp. QU 12の16S rRNA遺伝子の上流部分約500 bpの塩基配列を示したものである。
【図2】図2は、Lactococcus sp. QU 12により産生されたバクテリオシンのRP-HPLCクロマトグラムである。矢印で示した保持時間において抗菌活性が認められた。
【図3】図3は、Lactococcus sp. QU 12により産生された精製バクテリオシンの質量分析結果である。
【図4】図4は、BNPS-skatoleによるトリプトファン-X結合の切断機構を示したものである。反応は、ペプチドに対して100倍molar過剰のBNPS-skatoleを用い、70%酢酸(v/v)混合物中で実施した。
【図5】図5は、BNPS-skatole処理により得られた断片のHPLCクロマトグラムである。円で示したNo.1〜3のピークをESI/MS及びアミノ酸シーケンスに供した。
【図6】図6は、BNPS-skatole処理により得られたNo.1断片の質量分析結果である。
【図7】図7は、BNPS-skatole処理により得られたNo.2断片の質量分析結果である。
【図8】図8は、BNPS-skatole処理により得られたNo.3断片の質量分析結果である。
【図9】図9は、0.6 M塩酸処理により得られたペプチドのRP-HPLCクロマトグラムである。矢印で示した保持時間において抗菌活性が認められた。円で示したピークをESI/MS及びアミノ酸シーケンスに供した。
【図10】図10は、0.6 M塩酸処理により得られた断片の質量分析結果である。
【図11】図11は、0.03 M塩酸処理により得られたペプチドのRP-HPLCクロマトグラムである。円で示したピークをESI/MS及びアミノ酸シーケンスに供した。
【図12】図12は、0.03 M塩酸処理により得られた断片の質量分析結果である。
【図13】図13は、lactocyclicin Qの予想される一次構造を示したものである。
【図14】図14は、lactocyclicin Qのトリシン-SDS PAGEの結果を示した写真である。レーン1: standard markers、レーン2: native lactocyclicin Q (0.2 mg/ml)、レーン3: ピリジルエチル化処理 (0.01 mg/ml)、レーン4: 0.6 M HCl (0.2 mg/ml. 推定線状構造)
【図15】図15は、lactocyclicin Qのアミノ酸シーケンスのための、degenerated PCRに用いるオリゴヌクレオチドプライマーを示したものである。
【図16】図16は、lactocyclicin Q構造遺伝子の部分DNA配列を示したものである。矢印で示したアミノ酸配列を基に、プライマーを設計した。
【図17】図17は、lactocyclicin Qの構造遺伝子のヌクレオチド配列を示したものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(P1)、(P2)、(P3)又は(P4)のポリペプチド:
(P1)配列番号:9のアミノ酸配列からなる、線状又は環状のポリペプチド;
(P2)配列番号:9に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加したアミノ酸配列からなり、かつ抗菌活性を有する環状ポリペプチド;
(P3)配列番号:9に記載のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ抗菌活性を有する環状ポリペプチド;又は
(P4)(P1)、(P2)又は(P3)の環状ポリペプチドを少なくとも1カ所切断することにより得ることができ、かつ抗菌活性を有する線状ポリペプチド。
【請求項2】
配列番号:9のアミノ酸配列からなる、線状又は環状の、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
Lactococcus属に属する菌が生産する、Bacillus属に属する菌に対して抗菌作用を有し、pH 3.0〜4.0で安定である、分子量約6060 Daのポリペプチド。
【請求項4】
Lactococcus属に属する菌が、Lactococcus sp. QU 12(受領番号:NITE AP-610)である、請求項3に記載のポリペプチド。
【請求項5】
下記の(N1)、(N2)、(N3)、(N4)又は(N5)のポリヌクレオチド:
(N1)配列番号:33のヌクレオチド配列の全部、又は少なくとも61〜246番のヌクレオチド配列を含む一部からなるポリヌクレオチド;
(N2)(N1)に記載のポリヌクレオチドのヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ抗菌活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(N3)(N1)に記載のポリヌクレオチドのヌクレオチド配列において1若しくは複数のヌクレオチドが置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたヌクレオチド配列からなり、かつ抗菌活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(N4)(N1)に記載のポリヌクレオチドのヌクレオチド配列と少なくとも80%の同一性を有し、かつ抗菌活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;又は
(N5)請求項1に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項6】
Lactococcus属に属する菌由来である、請求項5に記載のポリヌクレオチド。
【請求項7】
Lactococcus属に属する菌が、Lactococcus sp. QU 12(受領番号:NITE AP-610)である、請求項6に記載のポリヌクレオチド。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項9】
請求項8に記載のベクターにより形質転換された、形質転換体。
【請求項10】
Lactococcus属に属する菌の菌体を用いることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリペプチドの製造方法。
【請求項11】
Lactococcus属に属する菌が、Lactococcus sp. QU 12(受領番号:NITE AP-610)である、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
Lactococcus sp. QU 12(受領番号:NITE AP-610)、
Lactococcus sp. QU 12と同一の菌学的性質を有するその変異体、又は
Lactococcus属に属する菌であって、配列番号:3のヌクレオチド配列と少なくとも95%同一性を有するヌクレオチド配列からなる部分を含む16S rRNA遺伝子を有する、その変異体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図16】
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【図17】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−29130(P2010−29130A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−196534(P2008−196534)
【出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成2年1月30日国立大学法人 九州大学主催の「博士論文公聴会」において文書をもって発表
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18年度から平成20年度、農林水産省、新たな農林水産政策を推進する実用技術開発事業「乳酸菌バクテリオシンを利用した乳房炎予防・治療抗菌剤の開発」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【Fターム(参考)】