説明

新規モノクローナル抗体および線虫幼虫抗原

本発明は、線虫L3の表面抗原と結合する、2002年1月24日にATCCに寄託され受託番号PTA‐4005を与えられた、単離されたモノクローナル抗体mAb PAB‐1に関する。また本発明は、該モノクローナル抗体と結合する抗原、および線虫感染の診断および治療または予防における該モノクローナル抗体および抗原の使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モノクローナル抗体および線虫幼虫抗原に関する。詳しくは、本発明は、寄生性線虫の第3期幼虫(L3)の表面抗原に特異的なモノクローナル抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒツジおよびウシなどの動物への線虫寄生生物による感染は、農業関係者にとっては経済的観点から重要である。従来、線虫感染は駆虫薬の投与によって治療されてきた。
しかし、従来の駆虫薬に関する主要な欠点は、広範なスペクトルの駆虫薬に対する線虫の耐性が現在ますます広くなってきているため、重大な懸念となっていることである(非特許文献1〜3)。
【0003】
免疫を有するヒツジの腸から線虫が排除されることについて説明するために、いくつかの機構が提案されている(非特許文献4)。即時型の過敏性応答の要素が関与している証拠があり、その場合、IgEに感作された粘膜肥満細胞が抗原の刺激を受けることにより線虫の生存に影響し得る物質が粘膜に蓄積される(非特許文献5,6)。粘液の抗線虫性としては、化学メディエータ(非特許文献7,8)および抗体(非特許文献9〜11)の存在が挙げられる。最近、本発明者らは、複数回の不完全感染によって免疫化されたヒツジから得た腸粘液が、幼虫と粘液との混合物を未処置の受け手側のヒツジの十二指腸に注入した後の幼虫定着の正常なパターンを変更し得ることを示した(非特許文献12)。寄生性線虫トリコストロンギルス・コルブリフォルミス(Trichostrongylus colubriformis)に対して免疫を有するヒツジの小腸から集めた粘液は、抗幼虫活性を有し、in vitroでは幼虫を凝集させ、十二指腸カニューレを介して幼虫と粘液とを注入した後の未処置ヒツジにおいて幼虫定着数の大幅な減少をもたらすことがわかった。
【0004】
イムノブロッティングにより、免疫性粘液には、主に推定分子量35kDaの抗原を認識するIgGおよびIgA抗体が含まれていることが示された。免疫性粘液中でインキュベートした幼虫の表面から溶出した抗体も、幼虫ホモジネートのブロット上で35kDaの抗原と反応した。免疫蛍光および免疫金電子顕微鏡観察により、35kDaの抗原はL3のエピクチクラに存在し、L4への脱皮の際に脱ぎ捨てられることが示された。該抗原は卵、L1、L2、L4または成虫には存在せず、感染前および感染後5日までのL3の抽出物中にのみ見られた。この結果は、抗体が幼虫の表面に結合することにより、幼虫がその好ましい部位に定着するのを防ぎ、これによって幼虫が腸から排除されたということを示唆する。部分精製した35kDa抗原でヒツジを免疫化した結果、T.コルブリフォルミス負荷投与後の卵数が大幅に減少したが、このことは、ワクチンにおけるこの抗原の実用性の可能性を示唆する。
【0005】
PAB‐1と名付けられた、幼虫表面抗原に対するモノクローナル抗体を調製した。mAb PAB‐1およびヒツジ粘液抗体はいずれも、35kDaのT.コルブリフォルミス幼虫抗原を認識し、また、寄生性線虫ハエモンカス・コントルツス(Haemonchus contortus)およびオステルタギア・シルキュムシンクタ(Ostertagia circumcincta)のL3抽出物のブロットで同様の分子量の抗原とも交差反応し、かつクーペリア・クルチセイ(Cooperia curticei)およびネマトジルス・スパチゲル(Nematodirus spathiger)から抽出したL3抗原のブロットで22kDa抗原と交差反応した。このことから、他の線虫種に、免疫化の可能性を有する共通表面抗原が存在し、mAb PAB‐1によって同定可能であることが示唆された。35kDa幼虫抗原および関連分子は、宿主免疫の新たな標
的である可能性があり、したがって、線虫感染に対するワクチンまたはその他の免疫療法において利用できる可能性がある。
【0006】
モノクローナル抗体PAB‐1は、標準的なアフィニティー・クロマトグラフィー技術によって表面抗原を免疫精製するために使用可能である。アガロースまたはセファロースなどの固相支持体と結合しているモノクローナル抗体PAB‐1は、L3の粗抽出物由来の表面抗原と結合する。該表面抗原は、低pHバッファーを用いて抗体マトリックスから溶出可能であり、SDS PAGEによって実質的に純粋であると示すことが可能である。このように精製した表面抗原は、免疫粘液由来のヒツジ抗体に対するイムノブロッティングによって検出され、かつ炭水化物を検出するために用いられる方法によって染色され得る。
【0007】
35kDaの幼虫抗原および関連分子は主に炭水化物構造を有することがわかる。これは、この抗原がプロテイナーゼKによる消化に対して耐性であり、高感度のタンパク質染色液で処理したゲル中で染色されず、炭水化物染色液で染色され、ビオチン‐ヒドラジドなどの炭水化物標識試薬で標識され得るためである。
【0008】
したがって、mAb PAB‐1は、線虫感染に対するワクチンまたはその他の免疫療法を開発するための表面抗原の同定および単離において有用となり得る。
T.コルブリフォルミスに感染したヒツジの血清および腸粘液には、35kDa幼虫抗原および関連分子を認識する抗体が含まれている。したがって、幼虫抗原に対する抗体の存在は寄生体に対する曝露を示すので、モノクローナル抗体PAB‐1は、感染動物の特定のための診断ツールとして有用となり得る。
【0009】
本明細書に記載した、特許または特許出願をはじめとするすべての参照文献を、本願明細書に援用する。先行技術を構成する参照文献は認められない。参照文献の考察には、著者の主張することが記載されており、本出願者らは記載された文書の正確性および妥当性を批判する権利を留保する。本明細書にはいくつかの先行技術出版物が援用されているが、この援用は、これらの文書のいずれかが、ニュージーランドまたは他の国における当技術分野の共通の一般的な知識の一部を形成するということを是認するものではないことは明確に理解されるであろう。
【非特許文献1】ウォラー(Waller)、「駆虫薬耐性(Anthelmintic Resistance )」、Veterinary Parasitology 、1997年、391‐412ページ
【非特許文献2】サングスター(Sangster)ら、「駆虫薬耐性の薬理学(Pharmacology of Anthelmintic Resistance )」、Parasitology Today、1999年、第15巻、第4号
【非特許文献3】ヴァン・ウィック(Van Wyk)ら、「南アフリカにおける駆虫薬耐性:調査により示される、ヒツジおよびヤギの飼育における著しく深刻な状況(Anthelmintic Resistance in South Africa: Surveys indicate an extremely serious situation in sheep and goat farming)」、1999年
【非特許文献4】ロスウェル(Rothwell)、Int J Parasitol 、1989年、第19巻、139‐168ページ
【非特許文献5】ミラー(Miller)、Vet Immunol Immunopathol、1996年、第54巻、331‐336ページ
【非特許文献6】エメリー(Emery)ら、「ヒツジ胃腸管の線虫に対する免疫における、過敏性応答の役割の研究(Investigations of the role of hypersensitivity responses in immunity against ovine gastrointestinal nematodes )」、ハズバンド(Husband)編「粘液:粘膜の免疫学(Mucosal Solutions: Advances in Mucosal Immunology )」、シドニー大学出版、1997年、359‐366ページ
【非特許文献7】ダッチ(Douch)ら、Int J Parasitol 、1983年、第13巻、207‐212ページ
【非特許文献8】ジョーンズ(Jones)ら、Int J Parasitol 、1990年、第20巻、1075‐1079ページ
【非特許文献9】リーおよびオーグルビ(Lee & Ogilvie)、「腸の線虫感染における粘液層(The mucus layer in intestinal nematode infections )」、オグラ(Ogra)およびビエネンストック(Bienenstock)編「健康状態と疾患における粘膜免疫システム(The Mucosal Immune System in Health and Disease )」、コロンブス:ロス・ラボラトリーズ(Columbus:Ross Laboratories)、1981年、175‐183ページ
【非特許文献10】ミラー(Miller)、Parasitology、1987年、第94巻、S77‐S100
【非特許文献11】カーライル(Carlisle)ら、Immunology、1991年、第74巻、546‐551ページ
【非特許文献12】ハリソン(Harrison)ら、Int J Parasitol 、1999年、第29巻、459‐468ページ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、モノクローナル抗体および線虫幼虫抗原を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の要約)
本発明の第1の態様によれば、2002年1月24日にATCCに寄託され受託番号PTA‐4005を与えられた、線虫のL3の表面抗原と結合する、単離モノクローナル抗体mAb PAB‐1が提供される。
【0012】
本発明の第2の態様によれば、T.コルブリフォルミスのL3に由来し、還元条件下のSDS PAGEゲルで実質的に35kDaに泳動する抗原と結合する、前記の単離モノクローナル抗体が提供される。
【0013】
本発明の第3の態様によれば、
a)還元条件下のSDS PAGEゲルで実質的に46kDaおよび実質的に22kDaに泳動する、C.クルチセイ(C.curticei)の表面抗原、
b)還元条件下のSDS PAGEゲルで実質的に22kDaに泳動する、N.スパチゲル(N.spathiger)の表面抗原、
c)還元条件下のSDS PAGEゲルで実質的に35kDaに泳動する、H.コントルツス(H.contortus)の表面抗原および
d)還元条件下のSDS PAGEゲルで実質的に35〜39kDaに泳動する、O.シルキュムシンクタ(O.circumcincta)の表面抗原、
e)還元条件下のSDS PAGEゲルで実質的に35kDaに泳動する、T.アクセイ(T.axei)またはT.ビトリヌス(T.vitrinus)の表面抗原、
f)還元条件下のSDS PAGEゲルで実質的に30〜45kDaに泳動する、O.オステルタギ(O.ostertagi)の表面抗原、
g)還元条件下のSDS PAGEゲルで実質的に20kDaおよび実質的に45kDaに泳動する、C.オンコフェラ(C.oncophera)の表面抗原、
h)還元条件下のSDS PAGEゲルで実質的に9kDAおよび実質的に12kDaに泳動する、N.ブラジリエンシス(N.brasiliensis)の表面抗原、
i)還元条件下のSDS PAGEゲルで実質的に30kDaに泳動する、D.エッケルチ(D.eckerti)の表面抗原
から構成される群から選択されるL3の表面抗原と結合する、前記の単離モノクローナル
抗体が提供される。
【0014】
本発明の第4の態様によれば、固体支持体と結合している場合には、イムノアフィニティー・クロマトグラフィーによって表面抗原を精製するために利用可能である、前記の単離モノクローナル抗体が提供される。
【0015】
本発明の第5の態様によれば、2002年1月24日にATCCに寄託され受託番号PTA‐4005を与えられたモノクローナル抗体mAb PAB1と結合する、線虫L3由来の単離された炭水化物表面抗原が提供される。
【0016】
前記抗原が1M NaOH中での煮沸にも耐えることが最も好ましい。
本発明の第6の態様によれば、還元条件下のSDS PAGEゲルで実質的に20〜35kDaの間に、または実質的に9kDaおよび12kDaに泳動する、実質的に前記のような単離抗原が提供される。
【0017】
本発明の第7の態様によれば、T.コルブリフォルミスL3に由来する、実質的に前記のような単離抗原が提供される。
本発明の第8の態様によれば、C.クルチセイ、N.スパチゲル、H.コントルツス、O.シルキュムシンクタ、T.アクセイ、T.ビトリヌス、O.オステルタギ、C.オンコフェラ、N.ブラジリエンシスおよびD.エッケルチから構成される群から取り出された線虫L3に由来する、実質的に前記のような単離抗原が提供される。
【0018】
本発明の第9の態様によれば、実質的に前記のような抗原と、製薬上または獣医学上許容可能な担体または希釈剤とを含んでなる組成物が提供される。
本発明の第10の態様によれば、線虫感染を予防し、治療し、または該感染に対する感受性を低下させる組成物の製造における、実質的に前記のような抗原の使用が提供される。
【0019】
本発明の第11の態様によれば、T.コルブリフォルミス、C.クルチセイ、N.スパチゲル、H.コントルツス、O.シルキュムシンクタ、T.アクセイ、T.ビトリヌス、O.オステルタギ、C.オンコフェラ、N.ブラジリエンシスおよびD.エッケルチから構成される群から選択される線虫による、感受性のヒツジにおける線虫感染を予防、治療するための、または該感染に対する感受性を低下させるための、実質的に前記のような組成物の使用が提供される。
【0020】
本発明の第12の態様によれば、これら他の種の線虫も前記のモノクローナル抗体PAB‐1との反応によって同定される幼虫表面抗原を有することを特徴とする、ヒツジ以外の感受性の動物において線虫感染を予防し、治療し、または該感染に対する感受性を低下させるための実質的に前記のような組成物が提供される。
【0021】
これらの他の動物は、前記のように線虫感染に対して感受性の任意の動物であることが好ましく、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ウマ、ブタ、イヌ、ネコ、ニワトリ、ウシ、シカなどが挙げられる。
【0022】
本発明の第13の態様によれば、少なくとも1種のアジュバントまたはサイトカインも含む、実質的に前記のような組成物が提供される。
本発明の第14の態様によれば、
a)動物から血液試料を得る工程、および
b)適切なアッセイによって、前記の本発明の第3の態様に記載の抗原に対する抗体の存在について該試料を分析する工程
からなる、感受性の動物における線虫感染の診断方法が提供される。
【0023】
アッセイはELISAまたはウェスタン・ブロッティング・アッセイであることが好ましいが、他の種類のアッセイが想定されるのを制限するほどとみなされるべきではない。
本発明の第15の態様によれば、T.コルブリフォルミス、C.クルチセイ、N.スパチゲル、H.コントルツス、O.シルキュムシンクタ、T.アクセイ、T.ビトリヌス、O.オステルタギ、C.オンコフェラ、N.ブラジリエンシスおよびD.エッケルチから構成される群から選択された線虫を用いた不完全感染によって免疫化済みの動物の胃腸管粘液に由来している、実質的に前記のような単離抗体が提供される。
【0024】
本発明の第16の態様によれば、本発明の組成物を投与することによって、動物の線虫感染を予防または治療する方法が提供される。
本発明の第17の態様によれば、ヒツジにおいて線虫感染を治療し、予防し、または該感染に対する感受性を低下させるために、ヒツジまたは他の感受性動物の腸粘液において抗体応答を惹起するための、本発明の抗原の使用が提供される。
【0025】
本発明の第18の態様によれば、ヒツジにおいて線虫感染を検出するための、実質的に前記のようなモノクローナル抗体の使用が提供される。
用語「単離(された)」とは、本発明のモノクローナル抗体または炭水化物がその本来の環境から取り出され、該抗体または炭水化物が得られた天然の系の中の一部またはすべての共存物質から分離されていることを意味する。
【0026】
用語「L3」とは、線虫の生活環における特定の幼虫発生段階を指す。
35kDa抗原という用語は、特に断りのない限り、通常は、ほぼこの分子量に泳動するT.コルブリフォルミス抗原を指す。用語「感受性の動物」とは、以下の種の線虫、T.コルブリフォルミス、C.クルチセイ、N.スパチゲル、H.コントルツス、O.シルキュムシンクタ、T.アクセイ、T.ビトリヌス、O.オステルタギ、C.オンコフェラ、N.ブラジリエンシスおよびD.エッケルチによる線虫感染に対して易発性のヒツジ、または、これらの線虫が既述のモノクローナル抗体PAB‐1によって検出される抗原を有することを特徴とする線虫感染に対して易発性の他の動物を指す。
【0027】
(発明の開示)
本発明のモノクローナル抗体は、寄生性線虫のL3の炭水化物表面抗原を認識するモノクローナル抗体である。本発明者らによって、本モノクローナル抗体が、T.コルブリフォルミスに対して免疫化されたヒツジの腸粘液に存在する抗幼虫抗体と同一の特異性を有することが見出された。モノクローナル抗体mAb PAB‐1を産生するハイブリドーマは、2002年1月24日にATCCに寄託され、受託番号PTA‐4005を与えられた。
【0028】
以降、概括的な、非限定的な言葉で、本発明の抗体を同定および産生する手順について概説する。
線虫感染に対して易発性のヒツジを誕生から4カ月齢まで線虫のない状態で飼育し、4カ月齢の時点で、所定の数を、T.コルブリフォルミスL3を用いる一連の不完全感染によって免疫化した。免疫化したヒツジの残りは線虫のない条件下で飼育を続けた。使用するヒツジは、一定期間をかけて3回の不完全感染に供され、各感染が所定の時間枠後に終結されたことが好ましい。指定時間枠が14日であり、再感染が終結の約7日後に生じることが好ましいが、当然のことながらこれらの時間枠は限定的なものと捉えられるべきではない。
【0029】
最後の感染の終結後、ヒツジを屠殺し、ほぼハリソンら(Harrison et a
l)、1999年の方法に従って、粘液を小腸から採取したが、この方法は限定的なものと捉えられるべきではなく、他の方法も使用可能である。未処置のヒツジ由来の粘液も、先に概説したのと同様に採取した。
【0030】
免疫および未処置の粘液試料を得ると、次いで、タンパク質のプロファイルの相違について、例えば、SDS PAGEゲル、およびクマシーブルーもしくは銀での染色によって分析した。
【0031】
次いで、粘液抗体の特性決定が可能となる。これはL3ホモジネート抗原をイムノブロッティングし、免疫および未処置粘液試料を用いて探査することによって達成することが好ましい。抗体の結合は、ヒツジ免疫グロブリンに対して作製され酵素とコンジュゲートされた市販の抗血清を用いた反応によって検出可能である。抗体結合はRAS/IgG‐HRPによって検出可能であることが好ましい。
【0032】
L3ホモジネートは、本願明細書に列挙した寄生性線虫種のいずれかの脱鞘したL3を、適切な界面活性剤または変性剤の存在または不在下で、機械的または化学的手段を用いて破壊し、続いて遠心分離および/または濾過により抽出物を清澄化することによって調製可能である。
【0033】
L3ホモジネートは、液体N中で凍結したT.コルブリフォルミスの脱鞘L3を、凍結L3が破壊されるまで粉砕するために乳鉢および乳棒を用いて破壊することによって調製可能であることが最も好ましい。次いで、幼虫成分を中性バッファー、例えば、CHAPS、デオキシコール酸ナトリウム、尿素またはSDSなどの可溶化剤を1〜2%含有する50mMトリス‐HCl pH7.5に抽出する。100000×gで1時間の遠心分離か、または、例えば5.0μmから0.2μmへと孔径を小さくした一連の膜を通す濾過によって抽出物を清澄化する。
【0034】
モノクローナル抗体mAb PAB−1を生産する方法は、コーラー(Kohler)およびミルステイン(Milstein)(1975)の方法など、任意の適当な方法でもよい。
【0035】
例えば、35kDaの抗原をポリアクリルアミド・ゲルの薄片から切り出し、等量の不完全オイル・アジュバントに浸して混合し、次いで、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ウマ、ブタ、イヌ、ネコ、ニワトリ、ウシ、シカなどの免疫化しようとする動物の腹腔、皮下組織、足蹠などに投与することが可能である。これらの動物の中では、マウスを用いることが好ましい。
【0036】
脾細胞、リンパ球または末梢血細胞などの抗体産生細胞を免疫化した動物から回収し、骨髄腫細胞(腫瘍細胞株)と融合してハイブリドーマを形成することが可能である。抗体産生細胞としては脾細胞が好ましい。
【0037】
細胞融合に用いる骨髄腫細胞としては、免疫化動物と同種(アロジェニック)である細胞株が好ましい。しかし、種々の動物の細胞株も使用可能である。
骨髄腫細胞としてNS‐1細胞を使用するのが好ましい。しかし、これは本発明の範囲を限定するものとみなすべきではない。
【0038】
本発明のモノクローナル抗体は通常はハイブリドーマによって産生された抗体であるが、かかる抗体を、プラスミン、ペプシンおよびパパインなどの、抗原結合部位(Fab)を分解しないプロテアーゼで処理することによって得られる抗体断片、すなわち、Fab、F(ab’)、Facbなど、または分子クローニング技術によって得られる抗体断
片も、それらが本発明のモノクローナル抗体の特性を有する限りは、本発明のモノクローナル抗体に包含される。
【0039】
本発明の炭水化物表面抗原は、T.コルブリフォルミス、C.クルチセイ、N.スパチゲル、H.コントルツス、O.シルキュムシンクタ、T.アクセイ、T.ビトリヌス、O.オステルタギ、C.オンコフェラ、N.ブラジリエンシスおよびD.エッケルチのL3の表面に見られる。
【0040】
以降、概括的な、非限定的な言葉で、本発明の炭水化物抗原を同定および単離する手順について概説する。
本発明の炭水化物表面抗原は、本願明細書に列挙した線虫のL3の抽出物から単離可能である。炭水化物抗原は、前記のように調製したT.コルブリフォルミスL3の抽出物から単離可能であることが好ましい。まず、モノクローナル抗体PAB‐1を、固相支持体媒体、好ましくはプロテインA‐アガロースまたはプロテインG‐アガロースと結合させ、ゲルからの抗体漏出を防ぐために共有結合によって結合させることが可能である。
【0041】
次いで、該ゲルをクロマトグラフィー・カラムに充填し、L3抽出物を供すればよい。中性バッファー、好ましくは、非特異的結合を防ぐために0.05% Tween20を含有するPBSで洗浄した後、結合している炭水化物抗原を、高pHもしくは低pHまたは高塩濃度の溶出バッファーを供することによってカラムから溶出させ得る。抗原を溶出するためにグリシン‐HClバッファーpH2.5〜2.8を使用することが好ましい。溶出後、1M トリスを加えることによって炭水化物抗原のpHを中性まで上昇させることが可能である。次いで、電気泳動および免疫ヒツジ粘液由来の抗体に対するブロッティングを用いてさらに分析することによって、炭水化物抗原を同定する。炭水化物抗原の性質の決定は、炭水化物検出性銀染色で染色することによって、および炭水化物結合試薬ビオチン‐ヒドラジドを用いてブロットで標識することによって可能である。
【0042】
当業者には当然のことであるが、他の炭水化物検出法も使用可能である。かかる方法としては、それだけには限らないが、レクチン結合、HPLC、TLC、フルオロフォアを補助とする炭水化物電気泳動、MSおよびNMRが挙げられる。
【0043】
薬剤組成物を調製するための方法および製薬上の担体は、「レミントンの薬剤科学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)」、第19版、マックパブリッシング社(Mack Publishing Company)[米国ペンシルバニア州イーストン所在]などの教本に記されているように、当技術分野では十分に公知である。
【0044】
本発明の化合物、ワクチンおよび組成物は、任意の適切な経路で投与可能であり、当業者ならば、治療しようとする状態に最も適した経路および用量を容易に決定できるであろう。投与量は主治医または担当獣医師の裁量にあり、治療しようとする状態の性質および状況、治療しようとする対象者の年齢および全身の健康状態、投与経路、および施された可能性がある何らかのこれまでの治療によって変わる。
【0045】
担体または希釈剤、およびその他の賦形剤は、投与経路次第であり、この場合も同様に、当業者ならば、各個々の事例に最も適した処方を容易に決定し得るであろう。
本願明細書の目的上、単語「からなる(comprising)」とは、「それだけには限らないが含む」を意味すること、および単語「含んでなる(comprises)」が対応する意味を有することは明確に理解されよう。
【0046】
本発明のさらなる態様は、実施例のみを用いて、また添付の図面を参照して示される以
下の説明から明らかとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
1.材料および方法
1.1 不完全感染によるヒツジの免疫化
すべてのヒツジの実験は、ワラセビル(Wallaceville)動物倫理委員会の承認のもとで実施した。ロムニー種ヒツジを、囲いの中で、市販のヒツジ用固形飼料、干草および水を随意与えて、誕生から線虫のない状態で飼育した。ヒツジは、免疫化感染の開始時に少なくとも4カ月齢であった。ヒツジを、40000のT.コルブリフォルミスL3を用いる、少なくとも3回の不完全感染によって免疫化した。各感染は、オクスフェンダゾール(Systamex(登録商標)、シェリングプラウリミテッド社(Schering Plough Ltd.)、4.5mg・kg−1)の経口ドレンチによって14日後に終結させ、ドレンチの7日後にヒツジを再感染させた。一部の実験では、ヒツジに4回目の感染(追加免疫用量)を施したが、これらのヒツジは追加免疫の2〜3日後に屠殺したので、ドレンチによる終結はしなかった。
【0048】
1.2 試料収集
ヒツジを家畜銃によって屠殺し、放血させた。小腸を5m区分に結紮し、各部を4×150mlの生理食塩水を通して洗浄して幼虫を回収した。生化学的分析およびin vivoでの負荷投与(challenge)のために、小腸の最初の6mから粘液を回収し、以下の改変を加え既述(ハリソン(Harrison)ら、1999)のように処理した。100mlの生理食塩水で穏やかにすすいで腸内容物を回収した後、腸を4℃に2時間維持し、次いで、親指と指の間で強く圧迫することによって粘液を搾り出し、続いて生理食塩水を用いて2×5mlの洗浄を行った。粘液および洗浄液をプールし、既述(ハリソン(Harrison)ら、1999)の通りに処理し、−20℃で保存した。
【0049】
4回の不完全感染のヒツジの群から、最後の免疫化後3日目、16日目および35日目に粘液の生検試料を回収した。手術では、十二指腸の位置を確認し、鉗子で穏やかに締めることによって5cmの部位を孤立させた。平滑断端の18ゲージニードルを用いて3mlの生理食塩水を注入した。液体を10回前後させて粘液を生理食塩水と混合し、次いで2〜3mlの試料を採取した。切開を閉じヒツジを回復させた。
【0050】
1.3 in vitroにおける種々の処理の粘液活性に対する効果
幼虫と結合する粘液の能力は、揺れ台上のエッペンドルフチューブ中37℃で2000の脱鞘L3を0.4mlの粘液とともにインキュベートする幼虫凝集試験によって評価した。4時間後、試料を調べ、幼虫の凝集を測定し、未処置粘液または生理食塩水とともにインキュベートしたL3の対照物と比較した。
【0051】
免疫粘液を種々の処置に供し、次いで、幼虫凝集活性について分析した。免疫粘液IP5のアリコート1mlを生理食塩水に対して4℃で24時間透析し、10000×g、50000×g、もしくは100000×gで遠心分離し、60℃または100℃で5分間加熱し、10mMのDTTを用いて1時間処理してから氷上で30分間20mMヨードアセトアミドと反応させることにより還元およびアルキル化し、続いてpH7.4のTBSに対して一晩透析して過剰の塩を除去した。ペプシン処理のためには、1M HClを用いて粘液をpH4.5に調整し、0.1M酢酸バッファーpH4.5に溶解した3mgのペプシンを3mlの粘液に加え、揺れ台上で37℃で20時間インキュベートした。トリスを2Mまで加えることによって反応を停止させた。粘液1mlにつき、pH7.5の0.1Mトリスに溶かしたプロナーゼ1mgを加え、揺れ台上で37℃で20時間インキュベートすることによってプロテアーゼ処理を実施した。プロテアーゼ阻害剤を加えることによって反応を停止させた。粘液1ml当たり、pH7.2のPBSに溶かしたリパーゼ
1mgを用いて粘液を処理し、37℃で20時間インキュベートし、次いで凍結保存した。酢酸を用いてpH4.5に調整し、50mM酢酸ナトリウムバッファーpH4.5中の過ヨウ素酸を加えて20mMとし、攪拌しながら暗所で室温で2時間インキュベートすることによって、粘液を酸化させた。次いで、水素化ホウ素ナトリウムを50mMまで加え、攪拌しながら1時間インキュベートした。免疫粘液IP5 5mlを250mlのpH7.2のPBSに希釈し、Filtron(商品名)100000mw膜で5mlに濃縮し直すことによって、粘液を限外濾過した。次いで、10000mw膜で濾液を5mlに濃縮し、この濾液を3000mw膜で5mlまで減量させた。低mwの濾液を凍結乾燥し、5mlの蒸留水に再溶解し、mw1000のチューブ中で蒸留水に対して透析した。
【0052】
前記の処理の後、粘液試料をアッセイするまで凍結保存した。
1.4 in vivo粘液アッセイ
40000の脱鞘L3を、2.5〜10ml容量の免疫または未処置粘液とともに4〜24時間インキュベートし、その後、手術で埋め込んだカテーテルによって、寄生虫未処置のヒツジの十二指腸に注入した(ハリソン(Harrison)ら、1999)。1週間後、ヒツジを屠殺し、腸の各5m区分における幼虫定着数を測定した。
【0053】
40000の脱鞘L3を、10ml容量の免疫または未処置粘液とともに、または2×10ml容量の100000×gで遠心分離した後の粘液上清とともに37℃で4時間インキュベートした。インキュベーション後、未処置上清および免疫上清の1アリコートを200×gで3分間遠心分離し、幼虫をペレットとした。上清を吸引によって除去し、L3を10mlの生理食塩水で洗浄し、前記のように遠心分離し、上清を除去し、L3を10mlの生理食塩水に再懸濁した。次いで、各10mlアリコートを十二指腸カニューレによって、未処置ヒツジの腸に注入した。1週間後、ヒツジを屠殺して幼虫を計数した。
【0054】
1.5 粘液の生化学的分析
免疫および未処置粘液の試料群を、SDS PAGEおよびクマシーブルーもしくは銀を用いた染色によって、タンパク質のプロファイルの相違について分析した。グリコシル化の相違は、ビオチン標識したレクチンを用いるレクチンのブロッティングで調べ、ストレプトアビジン‐ペルオキシダーゼによって検出した。粘液中のIgGの存在は、RAS/IgG‐HRPに対するブロッティングによって証明した。
【0055】
1.6 粘液抗体の特性決定
L3ホモジネート抗原のイムノブロットを、免疫および未処置粘液試料で探査した。抗体の結合は、RAS/IgG‐HRPを用いて、またはヒツジIgG、IgG、IgMおよびIgAに対するmAbとそれに続いてGAM/Ig‐HRPを用いて検出した。
【0056】
脱鞘L3を、粘液上清、45%硫酸アンモニウム沈殿させた粘液由来の抗体、またはプロテインG精製した粘液由来の抗体とともに37℃で4時間インキュベートした。インキュベーション後、幼虫をTBS‐Twで3回洗浄し、pH2.4の0.1Mグリシン−HCl中で5分間インキュベートすることによって結合している抗体をすべて溶出させた。該溶出物を、1mトリスを用いて中和し、Tc、NsおよびCc由来のL3抗原のブロットを探査するために用いた。
【0057】
免疫ヒツジ由来の500ml容量の腸内容物を、45%硫酸アンモニウムで処理して抗体を回収した。透析後、これらの抗体をL3抗原のブロットを探査するために用いた。幼虫を、粘液上清またはプロテインG‐セファロースから溶出した粘液抗体とともに2時間インキュベートし、TBS‐Twで3回洗浄し、FITC‐RAS/IgGと反応させた。洗浄後、幼虫を蛍光顕微鏡観察によって調べた。
【0058】
幼虫を、感染後種々の時点でヒツジから回収し、前記のような免疫蛍光およびイムノブロッティングによって、および免疫金電子顕微鏡観察によって分析した。幼虫を、BGPA固定液(0.1Mリン酸バッファーpH7.2中の1%グルタルアルデヒド、15%飽和ピクリン酸、90℃)で固定した。包埋された切片を、プロテインG精製した粘液抗体、続いて、金標識した抗ヒツジIgを用いて染色した。
【0059】
in vivoでの負荷投与実験に用いた粘液試料の抗体力価は、EIAによって測定した。マイクロタイター・プレートをTcL3抗原でコーティングし、粘液の希釈物と反応させた。洗浄後、結合している抗体を、RAS/IgG‐HRPを用いて、またはヒツジIgAに対するmAb(セロテック(Serotek))に続いてRAM/Ig‐HRPを用いて検出した。
【0060】
1.7 モノクローナル抗体PAB−1の調製
Tc幼虫表面抗原を含むポリアクリルアミド・ゲルの薄片でマウスを免疫化した。ゲル中の抗原の位置は、隣接するレーンをブロッティングし、既述のように抗原を粘液抗体で検出することによって調べた。抗原含有ゲルの薄片を、等容量の不完全オイル・アジュバントに浸し、混合し、2週間の間隔を空けて2回マウスに注射した。10日後、試験用血液を採取し、未精製のTc L3抗原および部分精製した表面抗原に対してスクリーニングした。最も強い陽性のマウスの脾細胞を、モノクローナル抗体を調製する標準的な方法を用いてNS‐1細胞と融合させた。ELISAおよびブロッティング法を用いて1次および2次スクリーニングを実施し、特異性を確認した。mAb PAB‐1の大量培養物を調製し、小分け(アリコート)にして−20℃で保存した。
【0061】
モノクローナル抗体PAB‐1を、幼虫抗原のブロットを探査するために用いた。結合している抗体は、RAM/IgG‐HRPを用いて検出した。脱鞘幼虫を90℃で20分間加熱することによって固定し、PAB‐1と反応させ、TBS‐Twで徹底的に洗浄し、RAM/IgG‐FITCと反応させ、uv光下で調べた。無関係のタンパク質(ヒツジサイトカイン)に対して産生させたPAB‐1と同一サブクラスのmAbを、負の対照として用いた。
【0062】
1.8 幼虫抗原のイムノアフィニティー精製
モノクローナル抗体PAB‐1をプロテインA‐アガロースと反応させ、同抗体を結合させた。PBSで洗浄して結合していない抗体を除去した後、結合している抗体を、架橋剤DSS(スベリン酸ジスクシンイミジル)と反応させることによって、プロテインAに不可逆的に固定化した。さらに洗浄した後、L3抽出物を該PAB‐1‐プロテインA‐アガロースカラムに通し、0.05%Tween20を含有するPBSで徹底的に洗浄し、そして結合しているすべての抗原をpH2.5の0.2Mグリシン‐HCl中に溶出させた。溶出物を1Mトリスで中和し、pH8.0の5mMトリスに対して透析し、Speedvac(登録商標)濃縮器で濃縮した。抗体カラムを、PBSで徹底的に洗浄することによって再平衡化した。
【0063】
カラムから溶出した抗原の試料を、SDS PAGEおよびブロッティングによって分析した(図23)。炭水化物は、改良銀染色液で染色することによってゲル中で(キテルバーガーら(Kittelberger,et al)1993)、あるいはビオチン‐ヒドラジドと反応させることによってブロット上で(ブシェーズ‐マイヨットら(Bouchez−Mahiout,et al)、1999)検出した。
【0064】
1.9 幼虫抗原の特性決定
脱鞘したTc L3を液体Nで凍結し、乳鉢と乳棒で粉砕し、2%Chaps+2%Tween20、1%デオキシコール酸ナトリウム(DOC)、2%SDSまたは9M尿
素のいずれかに可溶化することによってタンパク質を抽出した。抽出物を、10000gで遠心分離し、上清を−20℃で保存した。卵、L1、L2および成虫線虫は、SDS PAGE試料用バッファー(50mMトリス‐HCl pH6.8中の2%SDS、20mM DTT)に直接可溶化した。SDS抗原抽出物を、電気泳動およびブロッティング試験に用いた。Chapsおよび尿素抽出物は、2D電気泳動に用いた。尿素抽出物は、化学的または酵素的処理の前に、pH7.4の50mMトリス‐HClに対して2日間透析して尿素を除去した。電気泳動も、バッファーのみ、0.5%DOCまたは6M尿素を使用して、適切に可溶化した抗原で実施した。
【0065】
2D電気泳動は、IPGphor(商標)(ファルマシア(Pharmacia))を用いたpI3〜10のストリップ上のImmobiline(登録商標)IEFでTc L3尿素抽出物を泳動し、続くSDS PAGEにより実施した。タンパク質はクマシーブルーもしくは銀で染色するか、ブロット上で粘液由来の抗体と反応させて抗原を検出するかのいずれかとした。Tc L3の尿素可溶化抗原を前記のように透析し、等量の10%TCA、10容量の冷アセトン、9容量のクロロホルム:メタノール(2:1)、または9容量のヘキサン:イソプロパノール(3:2)のいずれかを加えることによって沈殿させた。試料を渦流処理し、10分間振動させ、10000gで10分間遠心分離し、沈殿したペレットをイムノブロッティングによって分析した。化学的および酵素的分解によって炭水化物の役割を調べた。抗原を、20mM過ヨウ素酸を用いて37℃で24時間、または1M NaOH±8M NaBHを用いて60℃で18時間処理した。試料を透析した後、電気泳動した。抗原を、ヒドラジンを用いて100℃で7および14日間、またはトリフルオロ酢酸を用いて4℃で4および16時間処理し、その後、Speedvac(登録商標)遠心分離機を用いて化学物質を蒸発させ、残った抗原をSDS PAGE試料用バッファーに再び可溶化した。酵素消化は、各酵素を製造業者が推奨するバッファーに溶解し、抗原とともに37℃で22時間インキュベートすることによって実施した。用いた酵素は、N‐グリコシダーゼF、トリプシン、ペプシン、パパイン、プロナーゼ、プロテイナーゼK、ズブチリシン、リパーゼ、リゾチーム、エラスターゼ、コラゲナーゼ、ホスホイノシトール‐ホスホリパーゼC、ホスホリパーゼA2、ホスホリパーゼDであった。着色基質のカゼイン‐レゾルフィン(resorufin)およびエラスチン‐コンゴレッドを、プロテアーゼおよびエラスターゼ活性の対照として用いた。ある実験では、抗原を90℃で20分間加熱変性させ、その後トリプシンまたはNaOHを用いて消化した。プロテイナーゼK消化も、0.5% SDS、15mM DTT、50mM EDTAもしくは2mM CaClを用いて、または用いずに、50℃で18時間実施した。ハエモンカス・コントルツス、オステルタギア・シルキュムシンクタ、クーペリア・クルチセイおよびネマトジルス・スパチゲルの幼虫抽出物も、同様の条件下でプロテイナーゼKを用いて処理した。
【0066】
1.10 35kDa抗原を用いた免疫化
12カ月齢のロメニーヒツジ5頭に、Span85、Tween85およびゴマ油を含有する(比5.4:4.6:90)植物油アジュバントに含めた35kDa抗原を用いて、2週間の間隔を空けて3回腹腔内注射した。抗原は、電気泳動によって分離されたTc
L3抗原のゲルの薄片から得た。電気泳動後、各ゲルの横側のストリップをニトロセルロースにブロッティングし、免疫粘液と反応させて35kDa抗原を検出した。RAS/IgG‐HRPで明らかにした後、該ブロットをゲルの主要な部分と再度そろえて並べ、35kDa抗原の位置に対応する薄片を切り出した。ゲルの薄片を、pH7.8の100mMトリスHCl中で透析チューブに入れ、該透析チューブを50vで3時間ブロッティング槽に入れることによって抗原をゲルから電気的に溶出させた。複数の溶出物をプールし、BCAタンパク質アッセイによりタンパク質収率を0.2mg/mlであると推定した。抗原を、Ultraturrax(商品名)ホモジナイザーを用いて等容量の植物油アジュバントと混和した。各ヒツジには各注入において約0.2mgの総タンパク質を投
与したが、炭水化物抗原の量は不明であった。対照のヒツジには生理食塩水およびアジュバントを腹腔内注射した。3回目の注射の2週間後、すべてのヒツジに40000のTc
L3を用いて経口感染で負荷投与した。負荷投与の3および4週間後に糞便の卵数データをとった。
【0067】
2.結果
2.1 in vitroアッセイ
全粘液または種々の処理に供した粘液の、in vitroにおける幼虫凝集力を表1に示す。この結果は、透析または低速の遠心分離は免疫粘液の幼虫凝集力に影響を及ぼさなかったということを示している。100000×gでの遠心分離は、界面活性剤Tx‐100またはCHAPSが存在する場合を除き、幼虫凝集作用を低下させた。幼虫凝集活性は、60℃で5分間加熱した後も依然として存在していたが、100℃で加熱した後には存在しなかった。プロテアーゼ消化または過ヨウ素酸酸化を用いて処理した粘液は活性を失ったが、リパーゼ処理では影響はなかった。幼虫凝集活性は、粘液の高分子量画分と関連していた。
【0068】
2.2 in vivoアッセイ
粘液容量を増加させてL3とともにインキュベートし、未処置の受け手側のヒツジにおけるその後の幼虫の排除と数の減少に及ぼす効果を図1に示す。5または10mlの未処置粘液中でインキュベートされた幼虫は、小腸の最初の5mに正常に定着することができた。免疫粘液中でインキュベートされた幼虫は、粘液容量が増すにつれて徐々に排除されるか、または拒絶された。幼虫を10mlの免疫粘液とともにインキュベートした結果、未処置粘液と比較して幼虫定着が82%減少し、腸の最初の5mからは幼虫が100%排除された。
【0069】
L3を10ml容量の粘液とともに種々な時間インキュベートすることによる影響を図2に示す。免疫粘液およびL3の、わずか1時間のインキュベーションの結果、幼虫定着が46%低下し、最初の5mから81%が排除された。4、10または24時間のインキュベーションの結果、>94%低下し、>93%が排除された。
【0070】
L3を16の未処置粘液試料および25の免疫粘液試料とともにインキュベートすることによる幼虫定着に対する影響を図3に示す。全体では、L3+免疫粘液を投与された受け手側のヒツジにおける幼虫定着(0〜95%にわたる)が67%減少し、L3+免疫粘液を投与されたヒツジの腸の最初の5mにおける幼虫定着が80%少なかった(P<0.001)。
【0071】
粘液の抗幼虫性に対する粘液回収時間の影響を図4に示す。幼虫を最後に免疫化投与して2〜3日後に回収した粘液は、概して、1週間以上で回収した粘液よりも高活性であった。回帰分析により、保護と免疫化後の粘液回収時間との間に有意な負の相関が示された。
【0072】
未処置または免疫粘液の100000×gの上清とともにL3をインキュベートし、その後の洗浄を伴う、または伴わない場合の効果を表2に示す(34ページ参照)。この結果は、未処置の粘液、上清、または上清に洗浄を伴ってインキュベートされたL3は、未処置ヒツジにおいて定着可能であったことを示す。対照的に、免疫性の粘液、上清、または上清に洗浄を伴ってインキュベートされたL3は、ほとんどが定着を阻まれ、未処置粘液で処理されたL3を投与されているヒツジよりもL3が91%少なかった。
【0073】
2.3 粘液の生化学
粘液の電気泳動による分離を図5に示す。免疫および未処置粘液のタンパク質プロファ
イルは非常に複雑であり、これら2セットの粘液間では明確な相違は観察されなかった。レクチン・ブロッティングでも、両セットの粘液について複雑な糖タンパク質プロファイルが示され(図6、7、8)、このことから多様な炭水化物部分が存在することが示唆された。この場合も同様に免疫または未処置粘液とのレクチンの結合には明確な相違はなかったが、例外はピーナッツ凝集素であり(図7A)、免疫試料のほとんどに関して、Ig重鎖および軽鎖に相当し得る約70000および28000のmwにおいて染色の増加が見られた。しかし、粘液をRAS/IgG‐HRPと反応させると、すべての試料において主要なバンドが55000および27000に見られ、これらはおそらくIgG重鎖および軽鎖に相当する(図8B)。
【0074】
2.4 粘液ブロッティング
粘液または粘液から回収した抗体で探査した、TcL3抗原のイムノブロットを図9に示す。6つの未処置粘液試料(レーン13〜18)は、L3抗原と反応しなかった。免疫粘液試料は主に35kDaのバンドと反応し、2個体の免疫ヒツジの腸内容物の硫酸アンモニウム沈殿によって回収した抗体も同様であった(レーン8および9)。プロテインG‐アガロースで精製した免疫粘液上清由来の抗体および免疫粘液とともにインキュベートしたL3から酸溶出させた抗体も、35kDaのバンドと反応した(レーン4、7および6、20)。L3からIgGおよびIgA抗体の双方を溶出可能であった(図9、レーン6および20)。Tcを用いて3回の不完全感染を受けたヒツジの血清も、35kDaのバンドおよび多数のその他のバンド(示していない)を認識する抗体を含んでいた。35kDaバンドと反応する粘液中の抗体の抗体アイソタイプ特異性を図10に示す。IgGおよびIgAアイソタイプの抗体が存在したが、IgGまたはIgM抗体は検出されなかった。
【0075】
腸寄生性線虫ネマトジルス・スパチゲル(Ns)およびクーペリア・クルチセイ(Cc)由来のL3抗原抽出物をTc免疫ヒツジ由来の粘液で探査したイムノブロットは、22kDaのバンドと主な反応性を示した(図11、レーン9および13)。Nsの不完全感染を受けたヒツジの血清は、NsおよびCcのいずれの抗原とも反応し(レーン12および16)、またTcの35kDaバンドとも反応した(レーン8)。2mlの免疫粘液を260000の脱鞘Tc L3とともにインキュベートした結果、粘液から抗体が完全に枯渇した(レーン1)。コロイド金タンパク質染色を用いて、ブロット上のタンパク質を検出した(レーン4)。免疫粘液由来の抗体によって検出されるものに相当する領域には染色は見られなかった(レーン3および4)。腸線虫N.スパチゲルおよびC.クルチセイおよび第四胃線虫H.コントルツスおよびO.シルキュムシンクタのL3の抽出物を、Tc免疫ヒツジ粘液を用いて探査したが、TcおよびHcについては35kDa、Ocについては39kDa、Ccについては46および22kDa、Nsについては22で反応が示された(図12)。図33は、腸線虫T.アクセイ(Ta)、T.ビトリヌス(Tv)、O.オステルタギ(Ooi)、C.オンコフェラ(Co)およびD.エッケルチ(De)および第四胃線虫H.コントルツス(Hc)およびO.シルキュムシンクタ(Oc)の1M NaOH抽出物のブロットを示すが、これらのブロットはTc免疫ヒツジ粘液を用いて探査され、Ta、TvおよびHcについては35kDa、Ooについては45、35、33および30kDa、Coについては45および20kDa、Nbについては12および9kDa、ならびにDeについては30kDaで反応が示された。
【0076】
粘液のIgGおよびTgA抗体の力価と、in vivoの負荷投与に用いた粘液によって提供される保護との相関関係を、直線回帰によって分析した(図13)。L3抗原に対するIgGおよびIgA抗体の力価と保護との間には有意な関係があった(R=0.6、P<0.01)。
【0077】
粘液生検試料の抗体力価は免疫化後3日目では高かった(図14)が、IgGおよびI
gAの力価はいずれも16日目までに減少した。しかし免疫化後37日でも依然としてバックグラウンドは超えていた。
【0078】
幼虫の免疫蛍光染色を図15に示す。脱鞘L3は、免疫粘液由来の抗体とともにインキュベートした後に強い表面蛍光を示したが、未処置粘液を用いた場合は示さなかった(上部パネル)。2、3または4日間感染させたヒツジから集めた幼虫も、表面染色を示したが(示していない)、感染後5日では多数の幼虫が抗体では染まらず、一部は脱皮過程中と認められた(下部パネル)。脱皮したL3のクチクラは、免疫粘液由来の抗体と反応したが、新生L4は染まらなかった。感染後6および7日に回収したL4も表面染色を示さなかった。
【0079】
免疫金電子顕微鏡観察により、L3の切片がエピクチクラ上で金粒子による表面標識を示す、同様のパターンの結果が示された(パネルB,図16)。
金標識は感染後2日目でも観察され、3日目および4日目ではより弱く、5日目では存在しなかった(それぞれ、パネルC、D、EおよびF)。
【0080】
卵、L1、L2、L3由来の抗原抽出物、および感染後種々の時点で回収した幼虫由来の抗原抽出物のイムノブロットを、粘液抗体で探査した(図17&18)。感染前および感染後5日までのL3には35kDa抗原が見られたが、卵期、L1もしくはL2、または感染後7日もしくは14日後のL4、または成虫線虫では存在しなかった。
【0081】
2.5 モノクローナル抗体PAB‐1
Tc L3抗原に対する、mAb PAB‐1とTc免疫ヒツジ粘液抗体の比較ブロッティング反応を図19に示す。mAbは、35kDaの主なTc L3抗原、35〜40kDaの拡散した抗原およびいくつかの低分子量抗原と反応した。
【0082】
その他の線虫種における抗原の同定を図20に示す。腸線虫N.スパチゲルおよびC.クルチセイおよび第四胃線虫H.コントルツスおよびO.シルキュムシンクタのL3の抽出物を、mAb PAB‐1で探査したところ、TcおよびHcについては約35kDaで、Ocについては39kDaで、Ccについては46および22kDaで、およびNsについては22で反応を示した(図20)。L3抽出物をプロテイナーゼKで消化した後の、免疫粘液由来の抗体またはmAb PAB‐1に対するイムノブロッティングによって、幼虫抗原がこの酵素によっては破壊されないことが示された(図19および20)。
【0083】
mAb PAB‐1の脱鞘Tc L3との反応により、抗マウスFITCコンジュゲートを用いた染色後に強い表面蛍光が示された(図21)。IgGの対照mAbは、幼虫表面と反応しなかった。
【0084】
2.6 幼虫抗原のイムノアフィニティー精製
プロテインA‐アガロースに結合させたモノクローナル抗体PAB‐1を用いた、幼虫抗原のイムノアフィニティー精製の結果を図22に示す。溶出物の銀染色により、幼虫抗原が泳動すると予想される領域にはタンパク質染色バンドが見られないことが示された。溶出物中には、免疫ヒツジ粘液由来の抗体を用いたイムノブロッティングによって検出された抗原と同一の分子量の位置に泳動した、単一の炭水化物の染色バンドが検出された。このバンドは、過ヨウ素酸酸化後の曝露されている糖残基と結合するビオチン‐ヒドラジド試薬でin situ標識された。
【0085】
2.7 幼虫抗原の特性決定
L3抗原の種々の化学的および酵素的処理による、該35kDa抗原に対する粘液抗体のイムノブロット反応に対する影響を図23〜30に示す。抗原を37℃で18時間加熱
しても、35kDa抗原とのイムノブロット反応に対して影響を及ぼさなかった(図23、レーン2)。過ヨウ素酸またはリパーゼを用いた処理は、シグナル強度をわずかに低下させた(図23、レーン3、5)が、プロナーゼは影響を及ぼさなかった(レーン4)。35kDa抗原は、酸または溶媒による沈殿処理後には沈殿中に見られた(レーン6〜9)。
【0086】
トリプシン、ペプシン、プロテイナーゼKまたはホスホリパーゼA2を用いたL3抗原の処理により、ブロット反応がより拡散したものになったが、分子量は減少しなかった(図24、レーン2、3、5、11)。パパイン、ズブチリシンまたは溶解酵素を用いた処理によりシグナルが減少したが、分子量には変化はなかった(レーン6〜8)。プロナーゼ、リパーゼ、リゾチーム、ホスホイノシトール‐ホスホリパーゼCおよびホスホリパーゼDは影響を及ぼさなかった(レーン4、9、10、12、13)。エラスターゼを用いた処理はわずかに低い分子量のバンドの出現をもたらした(図25、レーン1)。37℃でのコラゲナーゼおよびプロテイナーゼKでは影響を及ぼさなかった(レーン2、3、4)。種々の条件下での50℃で18時間のプロテイナーゼK処理も、35kDa抗原を破壊せず、同抗原は依然としてブロットで検出可能であった(レーン6〜9)。N‐グリコシダーゼFを用いたL3抗原の処理によりブロット・シグナルがわずかに減少したが、該酵素が活性であることを示す、対照の糖タンパク質フェチュインが分解された(レーン2)条件下では35kDa抗原の分子量は減少しなかった(図26、レーン4)。60℃で18時間1M NaOHで処理した結果、ブロットで見られる低分子量バンド数が増加したが、35kDaでの反応が依然として優勢であった(図27、レーン2)。NaOHおよびNaBHで処理した後、銀染色によるタンパク質は見られなかったが、35kDa抗原のブロット反応は対照の抗原と比較して減少していなかった(図27、レーン3)。
【0087】
4℃で48時間のヒドロフルオラス酸(hydrofluorous acid)、または20℃で1時間もしくは100℃で16時間のヒドラジンを用いたL3抗原の処理では、35kDa抗原は破壊されなかった(図28)。100℃で7日または14日間のヒドラジン処理により、未処理の対照抗原と比較してブロット・シグナルが減少した(図29、レーン1、2)。4時間または16時間のトリフルオロ酢酸処理により抗原が破壊された(図29、レーン4、5)。
【0088】
以下の手順によるL3抗原の処理は、イムノブロッティングによって示されるように35kDa抗原を破壊しなかった(図30):50℃で4時間または20時間のプロテイナーゼK+SDS(レーン1&2):37℃で18時間の0.1〜1.0M NaOH処理(図30、レーン3、6、7、8):90℃で20分間の加熱変性とその後の1M NaOHによる消化(レーン4):90℃で20分間の加熱変性を伴う、または伴わない、37℃で22時間のトリプシン消化(レーン10&14):50℃で22時間のプロテイナーゼK+SDS+DTT(レーン12)。5種の線虫種由来のL3抽出物のプロテイナーゼK消化では、Tcの35kDa抗原、または46、35もしくは22kDaで存在する他の種の交差反応性の抗原は破壊されなかった(図20)。
【0089】
Tc L3抽出物を、非変性条件下および0.5%DOCもしくは6M尿素存在下での電気泳動およびブロッティングによって分析した。抗原はこれらの条件下では高分子量のスメアとして泳動した(図32)。試料および電気泳動バッファーに還元剤(20mM DTT)を加えても、これらのプロファイルは変わらなかった(図示せず)。
【0090】
pH3〜10の範囲に及ぶ、Tc L3尿素抽出物の2D電気泳動分析により、35kDaで強いイムノブロット反応が示された(図33)。強いブロット・シグナルにもかかわらず、相当する領域にタンパク質は見られなかった。
【0091】
3.6 ヒツジ免疫化試験
FECのデータを表3に示す。負荷投与の3週間後では群間でFECに有意な相違はなかったが、4週間後では、免疫化された群においてカウントが有意に低かった(P<0.05)。両方のカウントを合わせると、免疫化された群におけるFEC全体の有意な低下も認められた(P<0.05)。
【0092】
図34は、非変性条件下(界面活性剤または還元剤を含まない)で実施した、T.コルブリフォルミスL3抽出物(L3)および精製した炭水化物の幼虫抗原(C)のゲル電気泳動(8% PAGE)およびイムノブロット分析を示す。ゲルをタンパク質または炭水化物について染色した。ブロットは、mAb PAB‐1に続いてウサギ抗マウスIg‐HRPコンジュゲートと、または免疫ヒツジ粘液に続いてウサギ抗ヒツジIg‐HRPコンジュゲートと反応させた。
【0093】
【表1】

【0094】
【表2】

【0095】
【表3】

3.考察
幼虫を粘液とともにインキュベーションすることにより幼虫の篩から外への移動が阻害されるという初期の研究によって、免疫ヒツジの粘液の、線虫幼虫の生存に影響を及ぼす能力が示されていた(ダッチ(Douch)ら、1983)。最近、本発明者らは、幼虫は免疫粘液中でのインキュベーション後に凝集することが多いこと、およびこれらの幼虫が、十二指腸カニューレによって未処置ヒツジに注入されても正常に定着できないことを観察した(ハリソン(Harrison)ら、1999)。これらの知見を本研究に拡大し、免疫粘液が幼虫の定着を効率的に防ぎ得ることを最終的に示した。感染に対する保護の程度は、免疫化後の粘液回収の時間、ならびに用量に応じて変化した。これは、免疫化後5週までの不完全感染ヒツジから採取した粘液生検試料に見られるような、経時的な粘
液中抗体レベルの減少と相関している。免疫粘液の100000×g上清も幼虫の定着を防ぎ得たという知見から、この活性は粘液の可溶性画分にあり、粘液による物理的な遮断、例えば、粘性によるものではないことが示される。インキュベーション後に幼虫を洗浄しても免疫粘液上清の定着を防ぐ能力は影響を受けなかったが、このことはアクティバイト(activite)因子が幼虫と結合していることを示している。
【0096】
透析、遠心分離または分子量に応じた濾過による免疫粘液の処理後の、幼虫凝集のin
vitro分析により、凝集活性は粘液の高分子量画分と関係があることが示された。加熱処理およびプロテアーゼ消化により、凝集には粘液のタンパク質成分が必要であることが示唆された。しかしながら、SDS PAGE分析およびクマシーブルーもしくは銀染色によるタンパク質検出では、免疫粘液と未処置粘液の試料群の粗タンパク質プロファイルについて相違は示されなかった。同様に、レクチン・ブロッティングではピーナッツ凝集素を除いて2種の粘液間の糖タンパク質組成に相違は示されず、ピーナッツ凝集素では、重鎖および軽鎖に存在し免疫粘液試料に見られる炭水化物を検出した可能性がある。重鎖は70kDaであり、これはIgAの存在を示す可能性がある。ブロッティングにより、すべての粘液試料中にIgGが存在することも示された。
【0097】
前記の知見および免疫粘液中のIgGおよびIgAの存在により、線虫抗原を認識する抗体が幼虫の凝集およびin vivoにおける保護を担っていることが示唆された。免疫粘液で探査した幼虫抗原のイムノブロットにより、35kDaの主要抗原および9、12、20、30〜45kDaの拡散領域と主に反応するIgGおよびIgA抗体の存在が示された。注目すべきことに、免疫粘液中でインキュベートした後のそのままの脱鞘幼虫から溶出した抗体で探査したL3抗原のブロットも、この抗原との顕著な反応を示した。この結果と、さらに表面蛍光染色および免疫金電子顕微鏡観察により、エピトープが幼虫の表面に存在することが示される。抗35kDa抗体は、in vivoの負荷投与実験に用いた粘液試料中に存在しており、免疫粘液によって与えられる保護の程度とIgGおよびIgAの力価との間には有意な相関があった。T.コルブリフォルミス免疫ヒツジ由来の粘液抗体は、他の腸線虫C.クルチセイ、N.スパチゲル、T.アクセイ、T.ビトリヌス、O.オステルタギ、C.オンコフェラ、N.ブラジリエンシスおよびD.エッケルチ由来の、および第四胃線虫H.コントルツスおよびO.シルキュムシンクタ由来の幼虫抽出物のブロット上の抗原も認識した。この交差反応性は、T.コルブリフォルミス35kDa抗原と同様の機能を有する表面分子が他の線虫種に存在し、免疫化の標的となりうることを示す。モノクローナル抗体PAB‐1もこれらの抗原と反応し、したがって、寄生性線虫種由来のこれらの表面抗原を同定および精製するために使用できる可能性がある。これまでに調べたすべての交差反応性抗原がプロテイナーゼKによる消化に対して耐性であるという知見は、それらもタンパク質ではなく、したがって、T.コルブリフォルミス35kDa抗原と同様の特性を共有するという証拠となる。
【0098】
プロテインAアガロースと結合させたモノクローナル抗体PAB‐1は、T.コルブリフォルミスの幼虫表面抗原を精製可能であった。このT.コルブリフォルミス幼虫表面抗原は、プロテイナーゼKをはじめとする一連のプロテアーゼによる消化に対し該抗原が耐性であること、炭水化物基を検出するように改良された銀染色液による染色、および曝露された糖残基と結合するビオチン‐ヒドラジド試薬を用いた標識によって示されるように、大部分は炭水化物であるとわかった。抗原は、銀染色、クマシーブルーまたは金などのタンパク質検出法では染まらなかった。抗原はリパーゼの作用による分解に対して耐性であり、有機溶媒に可溶性ではなかったが、このことは、脂質成分が存在しないか、接触できない状態にあることを示唆する。N‐グリコシダーゼF処理は抗原に影響を及ぼさなかったが、このことは、糖がN結合型でないか、酵素の攻撃に接触できない状態にあるかのいずれかであることを示す。アルカリ処理または広範なヒドラジン分解では抗原は破壊されなかったが、このことは、通常の炭水化物構造ではないことを示している可能性がある
。トリフルオロ酢酸を用いた強力な酸加水分解によって、抗原は分解された。
【0099】
mAb PAB‐1で探査したT.コルブリフォルミス幼虫抽出物のブロットにおいて、低分子量抗原のラダー状態の多重バンド形成パターンが観察されたことから、35kDa抗原の構造が比較的小さなユニットの重合体で構成されることを示す可能性があった。しかし、幼虫表面の自然の状態では、非変性条件を用いた電気泳動の結果によって示されるように抗原は高分子量の複合体である。SDS+DTTに可溶化することにより該複合体はブロット上で35kDaに検出可能な抗原へと小さくなるが、このことは、該複合体が35kDa抗原の重合体または35kDa抗原とまだ同定されていない他の構成要素とのヘテロ多量体であることを示唆している。抗原は、等電点電気泳動によって分離すると電荷の負均一性を示し、このことも複合体構造を示している。これらの結果は、幼虫の外表面に存在するこの分子複合体が、線虫の宿主の胃および腸で見られるすべての生理学的条件による分解に対して耐性であるらしいことを示唆している。幼虫表面抗原のこれらの特性の機能的意味についてはさらに調ベる必要があるが、この複合体は、幼虫が小腸の好みの部位に到達するまでに宿主系の不都合な環境を通過する間、幼虫を保護するために進化したと思われる。35kDa抗原は、感染前および感染後5日までのL3でのみ見られたが、このことは、胃を通過する際の保護に被膜が必要であることを示唆している。小腸でのL4期への脱皮の際、該保護被膜は、もはや必要ないので脱ぎ捨てられる。この保護被膜に対する免疫応答により、線虫がその宿主中でうまく定着する能力を大きく損なわせることが可能であり、したがって、該免疫応答が線虫防除にとって広い意味を有し得ることは理解されよう。ヒツジでの予備的なワクチン試験では、部分精製した35kDa抗原とオイル・アジュバントを含有するワクチンを用いた免疫化により、ワクチン接種群では対照と比較して糞便の卵数が有意に低下するという結果が得られた。
【0100】
本発明の態様を単なる例として記載してきたが、当然のことながら、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく該態様に改変および付加を行うことが可能である。
【0101】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】種々の量の未処置ヒツジの粘液または免疫ヒツジの粘液とともに幼虫をインキュベートした後の、未処置ヒツジにおける幼虫数を示す図。
【図2】未処置または免疫ヒツジの粘液とともに様々な時間幼虫をインキュベートした後の、未処置ヒツジにおける幼虫数を示す図。
【図3】未処置または免疫粘液中のL3の混合物を未処置の受け手側のヒツジに注入した後の、未処置ヒツジの腸の近位区分および遠位区分における幼虫数を示す図。
【図4】免疫化後種々の時点での免疫粘液の抗幼虫活性を示す図。
【図5】免疫および未処置粘液のSDS PAGE分析の結果を示す図。
【図6】免疫および未処置粘液のレクチン・ブロッティングの結果を示す図。A:UEA‐1(α‐L‐フコース) B:JAC(α‐gal‐Me‐ピラノシド) C:WGA(N‐アセチルグルコサミン) D:LL(マンノース、グルコース)
【図7】免疫および未処置粘液のレクチン・ブロッティングの結果を示す図。A:PNA(β‐ガラクトース‐N‐アセチルガラクトサミン)B:EcorA(β‐ガラクトース‐N‐アセチルグルコサミン)C:SBA(N‐アセチルガラクトサミン)D:ECA(β‐ガラクトース‐N‐アセチルガラクトサミン)
【図8】免疫および未処置粘液のレクチン・ブロッティングの結果を示す図。A:SNA(シアル酸)B:RAS/IgG‐HRPで探査したイムノブロット
【図9】T.コルブリフォルミスL3抗原を、免疫ヒツジの腸粘液(レーン1、5、10、11、12および19)または未処置ヒツジの腸粘液(レーン13〜18)、免疫粘液の100000×g上清(レーン3)、プロテインG‐アガロースから精製した免疫粘液上清(レーン4および7)、脱鞘T.コルブリフォルミスL3から溶出させた抗体(レーン6および20)、免疫ヒツジ由来の腸管内腔液を硫酸アンモニウム沈殿させて得た抗体(レーン8および9)で探査した、イムノブロットの結果を示す図。レーン2は、コロイド金を用いて染色したT.コルブリフォルミスL3タンパク質を示す。IgG抗体はRAS/IgG‐HRPを用いて検出し(レーン1〜18)、IgAはMAS/IgAに続いてRAM/IgG‐HRPを用いて検出した(レーン19および20)。
【図10】未処置または免疫粘液でT.コルブリフォルミスL3抗原を探査した結果を示す図。抗原ストリップを未処置粘液または免疫粘液と反応させ、続いてRAS/IgG;ヒツジIgGに対するmAB;ヒツジIgGに対するmAB;ヒツジIgAに対するmAB;ヒツジIgMに対するmABのいずれかと反応させた。
【図11】T.コルブリフォルミスL3抗原、C.クルチセイL3抗原、N.スパチゲルL3抗原のイムノブロットの結果を示す図。
【図12】H.コントルツス、O.シルキュムシンクタ、N.スパチゲル、C.クルチセイおよびT.コルブリフォルミスのL3抽出物のイムノブロット分析結果を示す図。
【図13】感染からの保護と、T.コルブリフォルミスL3抗原に対する腸粘液IgGおよびIgA抗体力価との相関関係を示す図。
【図14】腸粘液中のIgGおよびIgA抗体力価の経時的低下を示す図。
【図15】免疫または未処置粘液と反応させた脱鞘T.コルブリフォルミスL3を示す図(上部パネル)および感染後5日で回収し、免疫粘液と反応させたT.コルブリフォルミス幼虫を示す図(下部パネル)。
【図16】未処置粘液(A)または免疫粘液(B)との反応後の脱鞘T.コルブリフォルミスL3の電子顕微鏡写真を示す図。パネルC〜Fは、感染後2、3、4または5日で回収して免疫粘液と反応させたT.コルブリフォルミス幼虫を示す図である。
【図17】T.コルブリフォルミスの卵、幼虫および成虫のSDS PAGEおよびイムノブロッティング分析の結果を示す図。パネルA、CおよびDは免疫粘液と反応させた。パネルBはタンパク質を銀染色した。
【図18】感染前および感染後の様々な時点における、T.コルブリフォルミスL3のSDS PAGEおよびイムノブロッティング分析の結果を示す図。
【図19】免疫粘液またはモノクローナル抗体PAB‐1と反応させた、T.コルブリフォルミスL3抽出物およびプロテイナーゼK消化したL3抽出物のイムノブロット分析の結果を示す図。
【図20】モノクローナル抗体PAB‐1と反応させた、5種の線虫種のL3抗原抽出物およびプロテイナーゼK消化したL3抽出物のイムノブロット分析を示す図。
【図21】対照モノクローナル抗体(左および中央パネル)、またはモノクローナル抗体PAB‐1(右パネル)と反応させた、脱鞘T.コルブリフォルミスL3の表面蛍光を示す図。
【図22】モノクローナル抗体PAB‐1を用いるイムノアフィニティー・クロマトグラフィーによって精製したTc幼虫表面抗原の分析を示す図。
【図23】加熱、酸化、消化または有機溶媒による沈殿後の、T.コルブリフォルミスL3抽出物のイムノブロット分析の結果を示す図。
【図24】プロテアーゼまたはリパーゼによる消化後の、T.コルブリフォルミスL3抽出物のイムノブロット分析の結果を示す図。
【図25】プロテアーゼによる消化後の、T.コルブリフォルミスL3抽出物のイムノブロット分析の結果を示す図。
【図26】グリコシダーゼによる消化後の、T.コルブリフォルミスL3抽出物のイムノブロット分析の結果を示す図。
【図27】アルカリ分解後の、T.コルブリフォルミスL3抽出物のイムノブロット分析の結果を示す図。
【図28】加熱およびアルカリまたは酸による分解後の、T.コルブリフォルミスL3抽出物のイムノブロット分析の結果を示す図。
【図29】加熱およびアルカリまたは酸による分解後の、T.コルブリフォルミスL3抽出物のイムノブロット分析の結果を示す図。
【図30】加熱、アルカリ分解またはプロテアーゼ消化後の、T.コルブリフォルミスL3抽出物のイムノブロット分析の結果を示す図。
【図31】未変性条件下、または尿素もしくはデオキシコール酸ナトリウムの存在下での電気泳動後の、T.コルブリフォルミスL3抽出物のイムノブロット分析およびタンパク質染色の結果を示す図。
【図32】2次元電気泳動後の、T.コルブリフォルミスL3抽出物のイムノブロット分析およびタンパク質染色の結果を示す図。
【図33】6種のさらなる線虫のL3抽出物中の炭水化物染色性分子の存在を示す図。
【図34】非変性条件下(界面活性剤または還元剤を含まない)で実施した、T.コルブリフォルミスL3抽出物(L3)および精製した炭水化物の幼虫抗原(C)のゲル電気泳動(8%PAGE)およびイムノブロット分析を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2002年1月24日にATCCに寄託され受託番号PTA‐4005を与えられた、線虫L3の表面抗原と結合する、単離モノクローナル抗体mAb PAB‐1。
【請求項2】
T.コルブリフォルミス(T.colubriformis)のL3に由来し、還元条件下のSDS PAGEゲルで実質的に35kDaに泳動する抗原と結合する、請求項1に記載の単離モノクローナル抗体。
【請求項3】
a)還元条件下のSDS PAGEゲルで実質的に46kDaおよび実質的に22kDaに泳動するC.クルチセイ(C.curticei)の表面抗原、
b)還元条件下のSDS PAGEゲルで実質的に22kDaに泳動するN.スパチゲル(N.spathiger)の表面抗原、
c)還元条件下のSDS PAGEゲルで実質的に35kDaに泳動するH.コントルツス(H.contortus)の表面抗原、
d)還元条件下のSDS PAGEゲルで実質的に35〜39kDaに泳動するO.シルキュムシンクタ(O.circumcincta)の表面抗原、
e)還元条件下のSDS PAGEゲルで実質的に35kDaに泳動するT.アクセイ(T.axei)またはT.ビトリヌス(T.vitrinus)の表面抗原、
f)還元条件下のSDS PAGEゲルで実質的に30〜45kDaに泳動するO.オステルタギ(O.ostertagi)の表面抗原、
g)還元条件下のSDS PAGEゲルで実質的に20kDaおよび実質的に45kDaに泳動するC.オンコフェラ(C.oncophera)の表面抗原、
h)還元条件下のSDS PAGEゲルで実質的に9kDAおよび実質的に12kDaに泳動するN.ブラジリエンシス(N.brasiliensis)の表面抗原、
i)還元条件下のSDS PAGEゲルで実質的に30kDaに泳動するD.エッケルチ(D.eckerti)の表面抗原
から構成される群から選択されるL3の表面抗原と結合する、請求項1に記載の単離モノクローナル抗体。
【請求項4】
固体支持体と結合している場合に、イムノアフィニティー・クロマトグラフィーによって表面抗原を精製するために利用可能である、請求項1に記載の単離モノクローナル抗体。
【請求項5】
2002年1月24日にATCCに寄託され受託番号PTA‐4005を与えられたモノクローナル抗体mAb PAB1と結合する、線虫L3由来の単離された炭水化物表面抗原。
【請求項6】
還元条件下のSDS PAGEゲルで実質的に20〜35kDaの間に、または実質的に9kDaおよび12kDaに泳動する、請求項5に実質的に記載の単離された抗原。
【請求項7】
T.コルブリフォルミスL3に由来する、請求項5に記載の単離された抗原。
【請求項8】
C.クルチセイ、N.スパチゲル、H.コントルツス、O.シルキュムシンクタ、T.アクセイ、T.ビトリヌス、O.オステルタギ、C.オンコフェラ、N.ブラジリエンシスおよびD.エッケルチから構成される群から取り出された線虫L3に由来する、請求項5に記載の単離された抗原。
【請求項9】
請求項5に記載の抗原と製薬上または獣医学上許容可能な担体または希釈剤とを含んでなる組成物。
【請求項10】
線虫感染を予防し、治療し、該感染に対する感受性を低下させる組成物の製造における、請求項5に記載の抗原の使用。
【請求項11】
T.コルブリフォルミス、C.クルチセイ、N.スパチゲル、H.コントルツス、O.シルキュムシンクタ、T.アクセイ、T.ビトリヌス、O.オステルタギ、C.オンコフェラ、N.ブラジリエンシスおよびD.エッケルチから構成される群から選択される線虫による、感受性のヒツジにおける線虫感染を予防し、治療し、該感染に対する感受性を低下させるための請求項9に記載の組成物の使用。
【請求項12】
これら他の種の線虫も前記のモノクローナル抗体PAB‐1との反応によって同定される幼虫表面抗原を有することを特徴とする、ヒツジ以外の感受性の動物における線虫感染を予防し、治療し、該感染に対する感受性を低下させるための請求項9に記載の組成物。
【請求項13】
少なくとも1種のアジュバントまたはサイトカインも含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項14】
感受性動物において線虫感染を診断する方法であって、
a)動物から血液試料を得る工程、および
b)適切なアッセイによって、請求項3に記載の抗原に対する抗体の存在について試料を分析する工程
からなる方法。
【請求項15】
T.コルブリフォルミス、C.クルチセイ、N.スパチゲル、H.コントルツス、O.シルキュムシンクタ、T.アクセイ、T.ビトリヌス、O.オステルタギ、C.オンコフェラ、N.ブラジリエンシスおよびD.エッケルチから構成される群から選択された線虫を用いた不完全感染によって免疫化済みの動物の胃腸管粘液に由来している、請求項3に記載の単離抗体。
【請求項16】
請求項9に記載の組成物を投与することによって、動物の線虫感染を予防し、治療し、または該感染に対する感受性を低下させる方法。
【請求項17】
ヒツジまたは他の感受性動物において線虫感染を治療し、予防し、または該感染に対する感受性を低下させるために、ヒツジまたは他の感受性動物の腸粘液において抗体応答を惹起するための、請求項5〜8のいずれか1項に記載の抗原の使用。
【請求項18】
ヒツジにおいて線虫感染を検出するための、請求項1〜3のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体の使用。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2002年1月24日にATCCに寄託され受託番号PTA‐4005を与えられた、線虫L3の表面抗原と結合する、単離モノクローナル抗体mAb PAB‐1。
【請求項2】
T.コルブリフォルミス(T.colubriformis)のL3に由来し、還元条件下のSDS PAGEゲルで実質的に35kDaに泳動する抗原と結合する、請求項1に記載の単離モノクローナル抗体。
【請求項3】
a)還元条件下のSDS PAGEゲルで実質的に46kDaおよび実質的に22kDaに泳動するC.クルチセイ(C.curticei)の表面抗原、
b)還元条件下のSDS PAGEゲルで実質的に22kDaに泳動するN.スパチゲル(N.spathiger)の表面抗原、
c)還元条件下のSDS PAGEゲルで実質的に35kDaに泳動するH.コントルツス(H.contortus)の表面抗原、
d)還元条件下のSDS PAGEゲルで実質的に35〜39kDaに泳動するO.シルキュムシンクタ(O.circumcincta)の表面抗原、
e)還元条件下のSDS PAGEゲルで実質的に35kDaに泳動するT.アクセイ(T.axei)またはT.ビトリヌス(T.vitrinus)の表面抗原、
f)還元条件下のSDS PAGEゲルで実質的に30〜45kDaに泳動するO.オステルタギ(O.ostertagi)の表面抗原、
g)還元条件下のSDS PAGEゲルで実質的に20kDaおよび実質的に45kDaに泳動するC.オンコフェラ(C.oncophera)の表面抗原、
h)還元条件下のSDS PAGEゲルで実質的に9kDAおよび実質的に12kDaに泳動するN.ブラジリエンシス(N.brasiliensis)の表面抗原、
i)還元条件下のSDS PAGEゲルで実質的に30kDaに泳動するD.エッケルチ(D.eckerti)の表面抗原
から構成される群から選択されるL3の表面抗原と結合する、請求項1に記載の単離モノクローナル抗体。
【請求項4】
固体支持体と結合している場合に、イムノアフィニティー・クロマトグラフィーによって表面抗原を精製するために利用可能である、請求項1に記載の単離モノクローナル抗体。
【請求項5】
2002年1月24日にATCCに寄託され受託番号PTA‐4005を与えられたモノクローナル抗体mAb PAB1と結合する、線虫L3由来の単離された炭水化物表面抗原。
【請求項6】
還元条件下のSDS PAGEゲルで実質的に20〜35kDaの間に、または実質的に9kDaおよび12kDaに泳動する、請求項5に実質的に記載の単離された抗原。
【請求項7】
T.コルブリフォルミスL3に由来する、請求項5に記載の単離された抗原。
【請求項8】
C.クルチセイ、N.スパチゲル、H.コントルツス、O.シルキュムシンクタ、T.アクセイ、T.ビトリヌス、O.オステルタギ、C.オンコフェラ、N.ブラジリエンシスおよびD.エッケルチから構成される群から取り出された線虫L3に由来する、請求項5に記載の単離された抗原。
【請求項9】
請求項5に記載の抗原と製薬上または獣医学上許容可能な担体または希釈剤とを含んでなる組成物。
【請求項10】
線虫感染を予防し、治療し、該感染に対する感受性を低下させる組成物の製造における、請求項5に記載の抗原の使用。
【請求項11】
T.コルブリフォルミス、C.クルチセイ、N.スパチゲル、H.コントルツス、O.シルキュムシンクタ、T.アクセイ、T.ビトリヌス、O.オステルタギ、C.オンコフェラ、N.ブラジリエンシスおよびD.エッケルチから構成される群から選択される線虫による、感受性のヒツジにおける線虫感染を予防し、治療し、該感染に対する感受性を低下させるための請求項9に記載の組成物の使用。
【請求項12】
これら他の種の線虫も前記のモノクローナル抗体PAB‐1との反応によって同定される幼虫表面抗原を有することを特徴とする、ヒツジ以外の感受性の動物における線虫感染を予防し、治療し、該感染に対する感受性を低下させるための請求項9に記載の組成物。
【請求項13】
少なくとも1種のアジュバントまたはサイトカインも含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項14】
感受性動物において線虫感染を診断する方法であって、
a)動物から血液試料を得る工程、および
b)適切なアッセイによって、請求項3に記載の抗原に対する抗体の存在について試料を分析する工程
からなる方法。
【請求項15】
T.コルブリフォルミス、C.クルチセイ、N.スパチゲル、H.コントルツス、O.シルキュムシンクタ、T.アクセイ、T.ビトリヌス、O.オステルタギ、C.オンコフェラ、N.ブラジリエンシスおよびD.エッケルチから構成される群から選択された線虫を用いた不完全感染によって免疫化済みの動物の胃腸管粘液に由来している、請求項3に記載の単離抗体。
【請求項16】
請求項9に記載の組成物を投与することによって、動物の線虫感染を予防し、治療し、
または該感染に対する感受性を低下させる方法。
【請求項17】
ヒツジまたは他の感受性動物において線虫感染を治療し、予防し、または該感染に対する感受性を低下させるために、ヒツジまたは他の感受性動物の腸粘液において抗体応答を惹起するための、請求項5〜8のいずれか1項に記載の抗原の使用。
【請求項18】
ヒツジにおいて線虫感染を検出するための、請求項1〜3のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体の使用。
【請求項19】
動物において線虫感染を判定するための、請求項5〜8のいずれか1項に記載の抗原の使用。
【請求項20】
動物において線虫感染を判定するためのアッセイにおける、請求項5〜8のいずれか1項に記載の抗原の使用。
【請求項21】
線虫感染の程度を測定するための、請求項5〜8のいずれか1項に記載の抗原の使用。
【請求項22】
a)請求項5〜8のいずれか1項に記載の抗原、および
b)請求項1〜3のいずれか1項に記載の抗体
のうち少なくともいずれかから構成される群から選択される物質を用いて動物由来の試料をアッセイすることにより、動物における線虫耐性を判定する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【公表番号】特表2006−500316(P2006−500316A)
【公表日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−564095(P2003−564095)
【出願日】平成15年1月30日(2003.1.30)
【国際出願番号】PCT/NZ2003/000010
【国際公開番号】WO2003/064475
【国際公開日】平成15年8月7日(2003.8.7)
【出願人】(502381483)オビタ リミテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】OVITA LIMITED
【Fターム(参考)】