説明

新規剤形

本発明は、新規剤形、剤形の調製法ならびに神経学的および精神学的障害の治療における剤形の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規剤形、剤形の調製法および医薬としての剤形の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
国際特許出願、公開番号WO2004/056369は、6−(3−シクロブチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピン−7−イルオキシ)−N−メチル−ニコチンアミドを含む、特定のベンズアゼピン誘導体を開示する。
【0003】
WO2004/056369は、ベンズアゼピン誘導体が標準的方法を用いて処方されうることを教示している。しかしながら、6−(3−シクロブチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピン−7−イルオキシ)−N−メチル−ニコチンアミドを含有する剤形は、明確に開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開2004/056369号パンフレット
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様において、本発明は、
a)6−(3−シクロブチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピン−7−イルオキシ)−N−メチル−ニコチンアミドまたはその医薬上許容される塩;
b)安定化剤を含まない剤形と比べた場合に剤形中の6−(3−シクロブチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピン−7−イルオキシ)−N−メチル−ニコチンアミドの崩壊を減少させる、安定化剤;および
c)医薬上許容される賦形剤
からなる剤形を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0006】
剤形は、いずれか所望の投与経路によって患者に投与するのに適当であってもよい。例えば、剤形には、(1)経口投与、例えば、錠剤、カプセル、カプレット、ピル、ロゼンジ、粉末、シロップ、エリキシル剤、懸濁液、液剤、乳剤、サシェおよびカシェ;(2)非経口投与、例えば、滅菌溶液、懸濁液、インプラントおよび再調製用粉末;(3)経皮投与、例えば、経皮パッチ;(4)直腸および膣投与、例えば、坐剤、ペッサリーおよび泡沫;(5)吸入および鼻腔内投与、例えば、ドライ・パウダー、エアロゾル、懸濁液、および溶液(スプレーおよび滴剤);(6)局所投与、例えば、クリーム、軟膏、ローション、溶液、ペースト、滴剤、スプレー、泡沫およびゲル;(7)眼、例えば、滴剤、軟膏、スプレー、懸濁液およびインサート;および(8)口腔および舌下投与、例えば、ロゼンジ、パッチ剤、スプレー、滴剤、チューイングガムおよび錠剤に適したものが含まれる。
【0007】
本発明において、「医薬上許容される賦形剤」なる語は、6−(3−シクロブチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピン−7−イルオキシ)−N−メチル−ニコチンアミドまたはその医薬上許容される塩および安定化剤以外の剤形に存在する任意の医薬上許容される物質をいう。適当な医薬上許容される賦形剤は、選択される特定の剤形によって変化するであろう、そして、希釈剤、結合剤、崩壊剤および超崩壊剤(superdisintegrant)、潤滑剤、流動促進剤、造粒剤、コーティング剤、湿潤剤、溶媒、共溶媒、懸濁化剤、乳化剤、甘味剤、香味剤、フレーバー・マスキング剤、着色剤、アンチケーキング剤、保湿剤、キレート剤、可塑剤、増粘剤、速度変性剤、保存剤、界面活性剤を含む。特定の医薬上許容される賦形剤が、1以上の機能を果たしていてもよく、どのくらいの賦形剤が処方中に存在するのかおよび他のどんな成分が処方中に存在するのかによって別の機能を果たしていてもよいことを当業者は分かるであろう。適当な医薬上許容される賦形剤の選択に関するガイダンスは、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Company)から入手可能である。
【0008】
本発明の剤形は、当業者に既知の技法および方法を用いて調製されうる。いくつかの当該分野にて一般的に用いられる方法は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Company)に記載されている。
【0009】
1の実施態様において、本発明は、6−(3−シクロブチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピン−7−イルオキシ)−N−メチル−ニコチンアミドまたはその医薬上許容される塩、安定化剤および希釈剤を含む固体経口剤形、例えば、錠剤またはカプセルを対象とする。適当な希釈剤には、糖類(例えば、ラクトース、スクロース、デキストロース)、糖アルコール(例えば、マンニトール、ソルビトール)、スターチ(例えば、コーン・スターチ、ジャガイモデンプンおよびアルファ化デンプン)、セルロースおよびその誘導体(例えば、微結晶性セルロース)、硫酸カルシウムおよび二塩基性リン酸カルシウムが含まれる。剤形は、他の通常の賦形剤、例えば、結合剤、崩壊剤、潤滑剤および流動促進剤をさらに含んでいてもよい。適当な結合剤には、スターチ(例えば、コーン・スターチ、ジャガイモデンプンおよびアルファ化デンプン)、ゼラチン、アカシア、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸、トラガカント、グァーガム、ポリビニルピロリドン、ならびにセルロールおよびその誘導体(例えば、エチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロース)が含まれる。適当な崩壊剤には、スターチ、架橋ポリビニルピロリドン、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロース、アルギン酸およびカルボキシルメチル・セルロース・ナトリウムが含まれる。適当な潤滑剤には、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウムおよびステアリン酸カルシウムが含まれる。適当な流動促進剤には、タルクまたはコロイド状二酸化ケイ素が含まれる。経口固体剤形は、審美的または機能的特性を有していてもよい外側コーティングをさらに含んでいてもよい。
【0010】
より具体的な態様において、本発明は、
a)6−(3−シクロブチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピン−7−イルオキシ)−N−メチル−ニコチンアミドまたはその医薬上許容される塩、および
b)安定化剤を含まない剤形と比べた場合に、剤形中の6−(3−シクロブチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピン−7−イルオキシ)−N−メチル−ニコチンアミドの崩壊を減少させる安定化剤
からなるフィルムによって少なくとも部分的に被覆されている、キャリアー錠剤を含む経口投与用剤形を提供する。
【0011】
本発明において、「キャリアー錠剤」なる語は、6−(3−シクロブチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピン−7−イルオキシ)−N−メチル−ニコチンアミドまたはその医薬上許容される塩を実質的に含有していない錠剤をいう。典型的には、該錠剤は任意の治療剤を含有しないけれども、キャリアー錠剤が1種または複数の治療剤を含有する実施態様は、本発明に包含される。
【0012】
キャリアー錠剤の組成は重要ではない、ただし、それは医薬上許容されるものである。しかしながら、キャリアー錠剤は、経口投与用錠剤として機能するように適当な大きさおよび形状でなければならない。任意の種類の錠剤は、例えば、Remington,The Science and Practice of Pharmacy,第21版,2005(Ed.D.B.Troy)に記載のものを用いてもよい。1の実施態様において、キャリアー錠剤は、通常の圧縮法によって形成され、最大100重量%の希釈剤、または希釈剤の混合物を含む。通常の希釈剤には、糖類(例えば、ラクトース、スクロース、デキストロース)、糖アルコール(例えば、マンニトール、ソルビトール)、スターチ(例えば、コーン・スターチ、ジャガイモデンプンおよびアルファ化デンプン)、セルロースおよびその誘導体(例えば、微結晶性セルロース)、硫酸カルシウムおよび二塩基性リン酸カルシウムが含まれる。錠剤は、最大100重量%の結合剤、または結合剤の混合物をさらに含んでいてもよい。適当な結合剤には、スターチ(例えば、コーン・スターチ、ジャガイモデンプンおよびアルファ化デンプン)、ゼラチン、アカシア、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸、トラガカント、グァーガム、ポリビニルピロリドン、ならびにセルロースおよびその誘導体(例えば、エチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロース)が含まれる。キャリアー錠剤はまた、他の通常の賦形剤、例えば、潤滑剤(例えば、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウムおよびステアリン酸カルシウム)および流動促進剤(例えば、タルクまたはコロイド状二酸化ケイ素)を含有していてもよい。1の実施態様において、潤滑剤および流動促進剤は、各々、最大10重量%、より具体的には最大5重量%の量で存在する。別の実施態様において、成形錠剤またはカプセル殻などの射出成形により形成された材料は、キャリアー錠剤として用いられうる。適当な射出成形の熱可塑性プラスチック材料には、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、メタクリル樹脂および酢酸ポリビニルが含まれる。
【0013】
1の実施態様において、キャリアー錠剤は、微結晶性セルロース(例えば、Avicel PH−102)、アルファ化デンプン(例えば、Starch 1500)およびステアリン酸マグネシウムからなる錠剤である。より具体的な実施態様において、キャリアー錠剤は、以下の組成を有する:
【表1】

【0014】
別の実施態様において、キャリアー材料は、経口投与した場合に口の中で崩壊する、いわゆる、「口腔内崩壊錠」または「ODT」材料のように処方されてもよい。あるいは、キャリアー材料は、水中で崩壊する、いわゆる、「急速溶解錠」または「FDT」材料のように処方されてもよい。
【0015】
キャリアー錠剤は、フィルムの材料または担体を提供する。1の実施態様において、キャリアー錠剤は、キャリアー錠剤による6−(3−シクロブチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピン−7−イルオキシ)−N−メチル−ニコチンアミドまたはその医薬上許容される塩の吸収を実質的に阻止するようにコーティングされている。しかしながら、キャリアー錠剤による6−(3−シクロブチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピン−7−イルオキシ)−N−メチル−ニコチンアミドまたはその医薬上許容される塩の吸収が存在する実施態様は、本発明に包含される。
【0016】
キャリアー錠剤の適当なコーティングには、水性フィルム被膜、例えば、Colorconから商業的に入手可能であるもの、例えば、Opadry(登録商標)コーティング(「OPADRY WHITE 00F18484」または「OPADRY WHITE YS−1−7003」)が含まれる。他の適当なコーティングには、Surelease(登録商標)(エチルセルロース)が含まれる。あるいは、剤形は、胃耐性および腸溶性ポリマー材料のフィルムでコーティングされていてもよい。適当なポリマー材料には、アセトフタル酸セルロース、アセトプロピオン酸セルロース、トリメリット酸セルロースならびにアクリルおよびメタクリル共重合体が含まれる。着色剤を加えることができる。
【0017】
1の実施態様において、キャリアー錠剤は、重量が2−6%になるようにフィルム被膜でコーティングされている。
【0018】
キャリアー錠剤が6−(3−シクロブチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピン−7−イルオキシ)−N−メチル−ニコチンアミドまたはその医薬上許容される塩の吸収を実質的に阻止するようにコーティングされている実施態様において、選択されたフィルム被膜は、剤形の製造方法にて用いられる溶媒に溶解する必要がないことは分かるであろう。例えば、水性溶媒系を用いる場合、(Opadry(登録商標)のような)水性フィルム被膜は直ぐに崩壊するであろうし、水に溶解しないコーティング(例えば、Surelease(登録商標)またはEudragit(登録商標))が適している。
【0019】
1の実施態様において、6−(3−シクロブチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピン−7−イルオキシ)−N−メチル−ニコチンアミドまたはその医薬上許容される塩を含有するフィルムは、キャリアー錠剤を部分的にのみコーティングする。より具体的な実施態様において、キャリアー錠剤は、1つまたは複数の凹部またはくぼみを含有するように成形される。かかる実施態様において、6−(3−シクロブチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピン−7−イルオキシ)−N−メチル−ニコチンアミドまたはその医薬上許容される塩を含有するフィルムは、キャリアー錠剤の凹部内に実質的に存在していてもよい。
【0020】
キャリアー錠剤を少なくとも部分的に被覆する剤形および/またはフィルムは、6−(3−シクロブチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピン−7−イルオキシ)−N−メチル−ニコチンアミド(「遊離塩基」)またはその医薬上許容される塩を含む。本発明において、遊離塩基または医薬上許容される塩への言及は、遊離塩基または医薬上許容される塩の溶媒和物および水和物を包含する。
【0021】
6−(3−シクロブチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピン−7−イルオキシ)−N−メチル−ニコチンアミドは、既知の製法、例えば、WO2004/056369に記載されるものにしたがって調製されうる。WO2004/056369の開示は、出典明示により本明細書の一部とする。
【0022】
6−(3−シクロブチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピン−7−イルオキシ)−N−メチル−ニコチンアミドの医薬上許容される酸付加塩には、臭化水素酸塩、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、乳酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩(例えば、2−ナフタレンスルホン酸塩)またはヘキサン酸塩が含まれる。かかる塩は、所望により適当な溶媒、例えば、有機溶媒中で適当な酸と反応させることによって形成され、例えば、結晶化および濾過により単離されうる塩が得られうる。
【0023】
剤形および/またはフィルムは、遊離塩基、医薬上許容される塩(化学量論的または非化学量論的)、またはこれらの任意の混合物を含有していてもよい。1の実施態様において、剤形は塩酸塩を含有する。1の実施態様において、フィルムは塩酸塩を含有する。
【0024】
本発明の1の実施態様において、剤形および/またはフィルムは、存在する塩基の量(すなわち、塩を形成するために加えられた酸の任意の量を除く)として換算すると、1μg〜1mgの6−(3−シクロブチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピン−7−イルオキシ)−N−メチル−ニコチンアミドを含有する。より具体的な実施態様において、剤形および/またはフィルムは、存在する遊離塩基の量として換算すると、1μg〜500μg、より具体的には2μg〜250μgの6−(3−シクロブチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピン−7−イルオキシ)−N−メチル−ニコチンアミドを含有する。
【0025】
剤形および/またはフィルムは、安定化剤を含まない剤形と比べた場合に、安定化剤を含有する剤形中の6−(3−シクロブチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピン−7−イルオキシ)−N−メチル−ニコチンアミド(またはその医薬上許容される塩)の崩壊を減少させる医薬上許容される安定化剤をさらに含有する。剤形中の6−(3−シクロブチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピン−7−イルオキシ)−N−メチル−ニコチンアミド(またはその医薬上許容される塩)の崩壊は、下記の方法を用いる、勾配HPLCを用いて剤形の全不純物/崩壊産物含量を測定することによって分析されうる。安定化剤の存在または不存在は別にして、剤形が同等である以外に、類似期間類似条件下で保存されるであろうことを当業者は分かるであろう。
【0026】
1の実施態様において、40℃、75%相対湿度で1ヵ月間保存した安定化剤を含有する剤形の少なくとも3種のサンプルから算出した平均全不純物/崩壊産物含量は、同等の条件下で保存された前記安定化剤を含まない同等の剤形の少なくとも3種のサンプルから算出した平均全不純物/崩壊産物含量の少なくとも50%以下である。
【0027】
別の実施態様において、30℃、65%相対湿度で3ヵ月間保存すると、安定化剤を含有する剤形の少なくとも3種のサンプルの平均全不純物/崩壊産物含量は、10%、より具体的には5%を超えないであろう。
【0028】
特定の医薬上許容される抗酸化剤は、本発明において安定化剤として作用しうる。医薬上許容される抗酸化剤には、The Handbook of Pharmaceutical Excipients,第3版,2000(Ed.A.H.Kibbe)に記載されるものが含まれる。1の実施態様において、安定化剤は、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸およびその塩、例えば、パルミチン酸アスコルビル、乳酸、酒石酸、HCl(pH1−5)、ブチル化ヒドロキシアニソールおよびブチル化ヒドロキシトルエンからなる群より選択される。安定化剤の組み合わせはまた、本発明に用いられてもよい。
【0029】
より具体的な実施態様において、安定化剤は、クエン酸、アスコルビン酸、HCl(pH1−5)、ブチル化ヒドロキシアニソールまたはブチル化ヒドロキシトルエンから選択される。さらにより具体的には、安定化剤はクエン酸である。
【0030】
安定化剤または複数の安定化剤は、6−(3−シクロブチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピン−7−イルオキシ)−N−メチル−ニコチンアミドまたはその医薬上許容される塩の崩壊を減少させるのに十分な量で剤形および/またはフィルムに存在しなければならない。クエン酸を含む特定の実施態様において、クエン酸の遊離塩基に対するモル比は、典型的には、0.5:1〜550:1の範囲でありうる。
【0031】
フィルムは、フィルム形成剤、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カラゲニン(κ、ιまたはλ)、ゼラチン、ポリエチレングリコール、ポリエチレン・オキシド、プルランまたはアクリルポリマー(例えば、EUDRAGIT 等級RL、RS、E、L、S、FS30D)またはその任意の組み合わせをさらに含有していてもよい。1の実施態様において、フィルム形成剤はヒドロキシプロピルセルロースである。剤形中に含まれる任意のフィルム形成剤がその製造に用いられる溶媒に溶解するであろうことは当業者であれば分かるであろう。
【0032】
フィルムは、他の賦形剤をさらに含有していてもよい。例えば、特定の溶媒系、例えば、水溶液系は界面活性剤(例えば、ポリソルベート(20、40、80)、トリトン(Triton)100、ラウリル硫酸ナトリウムまたはチロキサポール)および/または消泡剤(ポリジメチルシロキサンまたはジメチコーン)の添加を必要とすることが見出されている。したがって、さらなる実施態様において、フィルムは、1種もしくは複数の界面活性剤および/または1種もしくは複数の消泡剤をさらに含有する。
【0033】
剤形はさらにコーティングされていてもよい。適当なコーティングには、キャリアー錠剤のコーティングに適している上記のものが含まれる。1の実施態様において、剤形は重量が2−6%になるようにコーティングされている。
【0034】
剤形は、所望により、低酸素環境中で包装されうる。これは、剤形の包装に脱酸素剤を含有させることによって達成されうる。適当な脱酸素剤には、PharmaKeep(登録商標) KHまたはKD(Sud Chemieから商業的に入手可能)およびStabilOx(商標)特殊性脱酸素剤(Multisorb Technologiesから商業的に入手可能)が含まれる。あるいは、剤形は、酸素に不浸透性であるボトル中に包装されうる。アルミニウム−アルミニウムブリスターはまた、低酸素環境中で剤形を包装するために用いられうる。
【0035】
別の態様において、本発明は、本発明の剤形の調製法を提供する。該方法は、キャリアー錠剤上に6−(3−シクロブチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピン−7−イルオキシ)−N−メチル−ニコチンアミドまたはその医薬上許容される塩および安定化剤の溶液または懸濁液を分散させることを含む。任意の溶媒を用いてもよい、ただし、安定化剤およびフィルムに存在するその他の賦形剤は溶媒に溶解する。溶媒は、典型的には、揮発性であり、使用した剤形中に見られる(残存)量で医薬上許容されなければならない。
【0036】
適当な溶媒には、水、有機溶媒、高圧ガス、液化ガスおよび揮発性シリコーンが含まれる。1の実施態様において、6−(3−シクロブチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピン−7−イルオキシ)−N−メチル−ニコチンアミドまたはその医薬上許容される塩および安定化剤の溶液または懸濁液は、有機溶媒、例えば、メタノール、エタノール、アセトン、酢酸または塩化メチレンを用いて調製される。溶媒の混合液(例えば、水−エタノール)も用いられうる。1の実施態様において、溶媒はメタノールである。
【0037】
さらなる態様において、本発明は、6−(3−シクロブチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピン−7−イルオキシ)−N−メチル−ニコチンアミドまたはその医薬上許容される塩および安定化剤の溶媒系中溶液または懸濁液を提供する。1の実施態様において、溶液または懸濁液は、1種または複数のフィルム形成剤および/または界面活性剤および/または消泡剤をさらに含む。別の実施態様において、溶媒は有機溶媒、例えば、メタノール、エタノール、アセトン、酢酸または塩化メチレン、より具体的にはメタノールである。
【0038】
安定化剤がクエン酸である特定の実施態様において、それは0.5−12%w/vの量で溶液または懸濁液に存在する。非常に高濃度のクエン酸で、得られた剤形は「スティッキー(sticky)」であり、フィルムコーティングする必要がありうる。安定化剤がクエン酸であるより具体的な実施態様において、それは0.5−6%w/v、具体的には2−3%w/v、より具体的には3%w/vの量で溶液または懸濁液に存在する。
【0039】
安定化剤がブチル化ヒドロキシアニソールである特定の実施態様において、それは0.01−0.1%w/vの量で溶液または懸濁液に存在する。
【0040】
安定化剤がブチル化ヒドロキシトルエンである特定の実施態様において、それは0.01−0.1%w/vの量で溶液または懸濁液に存在する。
【0041】
安定化剤がアスコルビン酸である特定の実施態様において、それは0.09%w/vで溶液または懸濁液に存在する。
【0042】
フィルム形成剤がヒドロキシプロピルセルロースである特定の実施態様において、4−6%w/v、具体的には5%w/vの量で溶液または懸濁液中に存在する。
【0043】
キャリアー錠剤および分散溶液/懸濁液は、過剰な液体を蒸発させるために(例えば、強制空気乾燥機中で)加熱し、キャリアー錠剤の少なくとも一部の表面上でフィルムを形成してもよい。次いで、剤形は、所望により、当該分野にて既知の方法にしたがってフィルムコーティングされていてもよい。
【0044】
剤形の調製法に用いられるキャリアー錠剤は、分散させた後に得られる6−(3−シクロブチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピン−7−イルオキシ)−N−メチル−ニコチンアミドまたはその医薬上許容される塩および安定化剤の溶液または懸濁液のベイスン(basin)を得る凹部またはくぼみを有していてもよい。典型的には、錠剤の2つの表面に凹部を有する両凹錠剤を用いる。2つの凹部は、6−(3−シクロブチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピン−7−イルオキシ)−N−メチル−ニコチンアミドまたはその医薬上許容される塩および安定化剤の溶液または懸濁液を得るために用いられうる。あるいは、1つの凹部は、6−(3−シクロブチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピン−7−イルオキシ)−N−メチル−ニコチンアミドまたはその医薬上許容される塩および安定化剤の溶液または懸濁液を得るために用いられ得、残りの凹部は、2種の異なる治療剤を含有する剤形を製造するための別の治療剤の溶液または懸濁液を得るために用いられうる。さらなる実施態様において、異なる治療剤の溶液は、他のものの上にその層を形成してもよい。
【0045】
本発明の剤形は、その全体を本明細書の一部とするWO2005/123569に記載の装置を用いて製造されうる。より具体的には、本発明の剤形は、6−(3−シクロブチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピン−7−イルオキシ)−N−メチル−ニコチンアミドまたはその医薬上許容される塩および安定化剤の溶液または懸濁液の所定量をキャリアー錠剤上に正確に分散するための分散モジュールを含有する装置によって製造されうる。該装置はまた、分散モジュールが溶液/懸濁液を各キャリアー錠剤上に分散する場合に装置に沿って頻繁に移動しうる、キャリアー錠剤を保持するための保持部を有しうる。
【0046】
該装置はまた、各錠剤上に堆積した溶液/懸濁液から溶媒を乾燥または蒸発させる乾燥システムを有しうる。保持部は、乾燥システムが各キャリアー錠剤上で剤形を乾燥する場合に装置に沿って頻繁に移動しうる。乾燥システムは、熱風、赤外線またはマイクロ波加熱の使用によって剤形を乾燥しうる。
【0047】
該装置はまた、剤形表面にコーティングを施すコーティングシステムを有しうる。コーティングシステムは、各キャリアー材料にコーティングを施すパッド印刷機または噴霧器を有しうる。保持部は、該コーティングシステムが各キャリアー錠剤にコーティングを施す場合に装置に沿って頻繁に移動しうる。装置はまた、各キャリアー錠剤上のコーティングを乾燥させるコーティング乾燥機を有しうる。
【0048】
上記の装置が異なる治療剤の溶液または懸濁液を加えるために何回もキャリアー錠剤を再処理できることは分かるであろう。あるいは、装置は、各溶液/懸濁液をキャリアー錠剤に順に加えるためのさらなる分散システムを有しうる。
【0049】
6−(3−シクロブチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピン−7−イルオキシ)−N−メチル−ニコチンアミドおよびその医薬上許容される塩は、有用な治療的性質を有するH3アンタゴニストである。より具体的には、6−(3−シクロブチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピン−7−イルオキシ)−N−メチル−ニコチンアミドおよびその医薬上許容される塩は、アルツハイマー病、認知症(レヴィー小体認知症および血管性認知症を含む)、加齢に伴う記憶障害、軽度認識障害、認知障害、てんかん、片頭痛、パーキンソン病、多発性硬化症(疲労を含む)、卒中、神経障害由来疼痛(神経痛、神経炎および背痛を含む)、炎症性疼痛(変形性関節症、関節リウマチ、急性炎症性疼痛および背痛を含む)および睡眠障害(睡眠過剰、日中の過剰な眠気、ナルコレプシー、パーキンソン病および疲労、特に多発性硬化症に付随する睡眠不足を含む)を含む神経疾患;精神病性障害(例えば、統合失調症(特に、統合失調症の認知障害)および双極性障害)、注意欠如過活動性障害、うつ病(大うつ病性障害を含む)、不安症および嗜癖を含む精神障害;ならびに、肥満症および胃腸障害を含む他の疾患の治療に用いることが可能であると考えられる。
【0050】
したがって、さらなる態様において、本発明は、療法に用いる剤形を提供する。より具体的には、本発明は、上記障害、特に神経および精神障害の治療または予防に用いる剤形を提供する。
【0051】
本発明は、ヒトを含む、哺乳動物における上記障害の治療または予防方法であって、本発明の剤形を患者に投与することを含む方法をさらに提供する。
【0052】
別の態様において、本発明は、上記障害の治療に用いるための本発明の剤形の製造における6−(3−シクロブチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピン−7−イルオキシ)−N−メチル−ニコチンアミドまたはその医薬上許容される塩の使用を提供する。
【0053】
6−(3−シクロブチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピン−7−イルオキシ)−N−メチル−ニコチンアミドまたはその医薬上許容される塩は、他の治療剤と組み合わせて用いられうる。6−(3−シクロブチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピン−7−イルオキシ)−N−メチル−ニコチンアミドまたはその医薬上許容される塩がアルツハイマー病の治療における使用を意図とする場合、それはアルツハイマー病の予防維持または対症療法のいずれかとして有用であることが求められる医薬と組み合わせて用いられうる。かかる他の治療剤の適当な例は、対症薬剤、例えば、コリン作動性伝達を修飾することが知られている薬剤、例えば、M1ムスカリン受容体アゴニストまたはアロステリック調節因子、M2ムスカリン性アンタゴニスト、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬(例えば、テトラヒドロアミノアクリジン、ドネペジル塩酸塩およびリバスティグミン)、ニコチン性受容体アゴニストまたはアロステリック調節因子(例えば、α7アゴニストもしくはアロステリック調節因子またはα4β2アゴニストもしくはアロステリック調節因子)、PPARアゴニスト(例えば、PPARγアゴニスト)、5−HT受容体部分的アゴニスト、5−HT受容体アンタゴニストまたは5HT1A受容体アンタゴニストおよびNMDA受容体アンタゴニストまたは調節因子、あるいは予防維持薬、例えば、βまたはγ−セクレターゼ阻害薬でありうる。
【0054】
6−(3−シクロブチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピン−7−イルオキシ)−N−メチル−ニコチンアミドまたはその医薬上許容される塩がナルコレプシーの治療における使用を意図とする場合、それはナルコレプシーの治療として有用であることが求められる医薬と組み合わせて用いられうる。かかる他の治療剤の適当な例として、モダフィニル、アルモダフィニルおよびモノアミン取り込み阻害薬が挙げられる。
【0055】
6−(3−シクロブチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピン−7−イルオキシ)−N−メチル−ニコチンアミドまたはその医薬上許容される塩が統合失調症の治療における使用を意図とする場合、それはi)定型抗精神病薬(例えば、クロルプロマジン、チオリダジン、メソリダジン、フルフェナジン、ペルフェナジン、プロクロルペラジン、トリフルオロペラジン、チオチキセン、ハロペリドール、モリンドンおよびロキサピン)、非定型抗精神病薬(例えば、クロザピン、オランザピン、リスペリドン、クエチアピン、アリピラゾール、ジプラシドン、アミスルプリドおよびアリピプラゾール)、グリシントランスポーター1阻害薬および代謝調節型受容体リガンドを含む抗精神病薬;ii)錐体外路副作用治療薬、例えば、抗コリン作用薬(例えば、ベンズトロピン、ビペリデン、プロシクリジン、およびトリヘキシフェニジル)およびドーパミン作動薬(例えば、アマンタジン);iii)セロトニン再取り込み阻害薬(例えば、シタロプラム、エスシタロプラム、フルオキセチン、パロキセチン、ダポキセチンおよびセルトラリン)、デュアルセロトニン/ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(例えば、ベンラファクシン、デュロキセチンおよびミルナシプラン)、ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(例えば、レボキセチン)、三環系抗うつ薬(例えば、アミトリプチリン、クロミプラミン、イミプラミン、マプロチリン、ノルトリプチリンおよびトリミプラミン)、モノアミンオキシダーゼ阻害薬(例えば、イソカルボキサジド、モクロベミド、フェネルジンおよびトラニルシプロミン)、およびその他(例えば、ブプロプリオン、ミアンセリン、ミルタザピン、ネファゾドンおよびトラゾドン)を含む抗うつ薬;iv)ベンゾジアゼピン系、例えば、アルプラゾラムおよびロラゼパムを含む抗不安薬;およびv)向知性薬、例えば、コリンエステラーゼ阻害薬(例えば、タクリン、ドネペジル、リバスティグミンおよびガランタミン)を含む統合失調症の治療として有用であることが求められる医薬と組み合わせて用いられうる。
【0056】
したがって、本発明は、さらなる態様において、6−(3−シクロブチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピン−7−イルオキシ)−N−メチル−ニコチンアミドまたはその医薬上許容される塩および安定化剤からなるフィルムによって少なくとも部分的にコーティングされるキャリアー錠剤を含む剤形であって、さらに付加的な治療剤または複数の薬剤を含む剤形を提供する。
【0057】
付加的な治療剤がキャリアー錠剤に存在しうることは分かるであろう。あるいは、上記のように、付加的な治療剤を含有するフィルムは、キャリアー錠剤上に堆積されうる。キャリアー錠剤が2つの凹部を有する場合、第1の凹部は、6−(3−シクロブチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピン−7−イルオキシ)−N−メチル−ニコチンアミドまたはその医薬上許容される塩および安定化剤を含有するフィルムを含有していてもよく、第2の凹部は、付加的な治療剤または複数の薬剤を含有するフィルムを含有していてもよい。あるいは、6−(3−シクロブチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピン−7−イルオキシ)−N−メチル−ニコチンアミドまたはその医薬上許容される塩および安定化剤、ならびに付加的な治療剤を含有するフィルムは、他のものの上でその層を形成しうる。
【0058】
6−(3−シクロブチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピン−7−イルオキシ)−N−メチル−ニコチンアミドまたはその医薬上許容される塩が同一の病状に対し活性な第2の治療剤と組み合わせて用いられる場合、6−(3−シクロブチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピン−7−イルオキシ)−N−メチル−ニコチンアミドまたはその医薬上許容される塩の投与量は、6−(3−シクロブチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピン−7−イルオキシ)−N−メチル−ニコチンアミドまたはその医薬上許容される塩を単独で処方する場合のものとは異なっていてもよい。適当な投与量は、当業者であれば容易に分かるであろう。
【0059】
以下の実施例は、本発明を説明するものであるが、決して限定するものではない。
【実施例】
【0060】
実施例1:6−(3−シクロブチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピン−7−イルオキシ)−N−メチル−ニコチンアミド塩酸塩の調製
6−(3−シクロブチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピン−7−イルオキシ)−N−メチル−ニコチンアミド(4.0kg)およびメタノール(7.9kg)を、少なくとも30分間20〜25℃で攪拌しながら反応器に加える。塩化アセチル(1.0kg)を、0〜10℃でメタノール(7.9kg)に加え、次いで、15〜25℃で上記反応溶液に徐々に加える。次いで、反応混合物が褐色透明溶液になるまで、反応物を45〜55℃で攪拌する。反応溶液を熱濾過し、次いで、50℃以内で約1/2量に真空濃縮し、白色スラリー状混合物を得る。酢酸エチル(18.0kg)を45〜55℃で反応溶液に徐々に加え、次いで、少なくとも1時間該温度で攪拌する。白色スラリー状混合物を、勾配速度10℃/時間で15〜25℃に冷却し、次いで、少なくとも24時間該温度で攪拌する。スラリー状混合物を濾過し、ケークを酢酸エチル(3.6Kgx2)で2回洗浄し、白色固体として「ウェット・ケーク」6−(3−シクロブチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピン−7−イルオキシ)−N−メチル−ニコチンアミド塩酸塩を得る(6.203Kg)。
【0061】
中間体6−(3−シクロブチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピン−7−イルオキシ)−N−メチル−ニコチンアミド塩酸塩(6.203Kg)およびメタノール(7.2Kg)を反応器に加え、45〜55℃に加熱する。酢酸エチル(17.7Kg)を45〜55℃で徐々に加え、次いで、溶液を少なくとも1時間該温度で攪拌する。白色スラリー状混合物を勾配速度10℃/時間で15〜25℃に冷却し、次いで、少なくとも24時間該温度で攪拌する。スラリー状混合物を濾過し、ウェット・ケークを酢酸エチル(3.6Kgx2)で洗浄する。生成物を50℃以内で真空乾燥し、白色固体として6−(3−シクロブチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピン−7−イルオキシ)−N−メチル−ニコチンアミド塩酸塩を得る(3.034Kg、77%)。
【0062】
実施例2:0.002mgの6−(3−シクロブチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピン−7−イルオキシ)−N−メチル−ニコチンアミドを含有する円形錠剤の調製
コア成分を、名目30メッシュスクリーンにかけ、次いで、適当なブレンダー中で一緒に混合し、回転式錠剤圧縮機で圧縮し、直径7.94mmの円形両凹錠剤を製造した。脱ダスティングおよび金属チェックの後に圧縮した。次いで、錠剤をコーティングパンに移し、4%(w/w)になるように標的にコーティングした。
【0063】
キャリアー錠剤の組成は以下のとおりである:
【表2】

【表3】

【0064】
6−(3−シクロブチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピン−7−イルオキシ)−N−メチル−ニコチンアミド塩酸塩をキャリアー溶液(5%w/vヒドロキシプロピルセルロース、3%w/vメタノール中クエン酸)で溶解し、0.58mg/g(w/w)の最終濃度を得た。
【0065】
約3.9mgの投与溶液を、一連のキャリアー錠剤における各錠剤上に分散した。錠剤を、約50℃で強制空気乾燥機にて乾燥した。
【0066】
実施例3:0.01mgの6−(3−シクロブチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピン−7−イルオキシ)−N−メチル−ニコチンアミドを含有する円形錠剤の調製
0.01mgの6−(3−シクロブチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピン−7−イルオキシ)−N−メチル−ニコチンアミドを含有する錠剤を、投与溶液中の6−(3−シクロブチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピン−7−イルオキシ)−N−メチル−ニコチンアミド塩酸塩の濃度が2.83mg/g(w/w)であり、分散させた量が約4mgであることを除き、実施例2に記載の方法で調製した。
【0067】
実施例4−7:0.002mg、0.01mg、0.05mgおよび0.25mgの6−(3−シクロブチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピン−7−イルオキシ)−N−メチル−ニコチンアミドを含有する円形錠剤の調製
0.002mg、0.01mg、0.05mgおよび0.25mgの6−(3−シクロブチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピン−7−イルオキシ)−N−メチル−ニコチンアミドを含有する錠剤を、キャリアー錠剤が2%w/vクエン酸を含有し、投与溶液中の6−(3−シクロブチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピン−7−イルオキシ)−N−メチル−ニコチンアミド塩酸塩の濃度および分散させた投与溶液の量が以下のように変化することを除き、実施例2に記載の方法で調製した:
【表4】

【0068】
実施例8−11:0.002mg、0.01mg、0.05mgおよび0.25mgの6−(3−シクロブチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピン−7−イルオキシ)−N−メチル−ニコチンアミドを含有する円形錠剤の調製
0.002mg、0.01mg、0.05mg、および0.25mgの6−(3−シクロブチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピン−7−イルオキシ)−N−メチル−ニコチンアミドを含有する錠剤を、キャリアー溶液が12%w/vクエン酸および4%w/vヒドロキシプロピルセルロースを含有し、投与溶液中の6−(3−シクロブチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピン−7−イルオキシ)−N−メチル−ニコチンアミド塩酸塩の濃度および分散させた投与溶液の量が以下のように変化することを除き、実施例2記載の方法で調製した:
【表5】

【0069】
以下の実施例(実施例12および実施例13)は、本発明にしたがって調製されうる錠剤の代表例である:
【0070】
実施例12:口腔内崩壊錠(ODT)キャリアー材料の調製
a)ODTキャリアー材料の調製
スターラック(StarLac)およびネオテーム(Neotame)を、名目20メッシュスクリーンにかける。混合物および篩にかけていないミント・フレーバーを、適当なブレンダーに移し、約10分間混合する。ステアリン酸マグネシウムを、名目30メッシュスクリーンにかけ、ブレンダーに移し、全混合物を約2分間混合する。用いられる材料の重量を、表Aに示される重量%から算出する。混合物を、適当な打錠機を利用する適当な回転式圧縮機で所望の規格(例えば、直径約8mm〜約9.5mmの範囲の円形両凹錠剤)になるように圧縮する。錠剤を、脱ダスターおよび金属チェッカーにかけてもよい。
【表6】

【0071】
b)パッド印刷によって錠剤に適用するためのエチルセルロース被膜の調製
エチルセルロースを、攪拌しながらメタノールで溶解し、クエン酸トリエチルを加える。用いられる材料の重量は、表Bに示される重量%から算出する。十分な量のメタノールを、重量ベースで標的に加える。溶液を、円形画像の、わずかに小さい直径、次いで、実際の錠剤直径を伴う適当な画像クリシェを完備したパッド印刷機のインクカップに移す。適当なポリマーパッドを、クリシェ画像プレートに適合するようにインストールする。錠剤を、クリシェに適合する、所定の配置でパッド印刷機に移す。パッドプリンターは、液体分散工程中にコーティングされていないキャリアー材料への溶媒浸潤を抑制する保護層を提供するであろう被膜を施すために2−4個のタンプをキャリアー錠剤に適用してもよい。
【表7】

【0072】
実施例13:口腔内崩壊錠(ODT)キャリアー材料の別の調製
マンニトール、クロスポビドンXL、キシリトールおよびネオテームを、名目20メッシュスクリーンにかけ、混合物および篩にかけていないミント・フレーバーを適当なブレンダーに移し、約10分間混合する。ステアリン酸マグネシウムおよびコロイド状二酸化ケイ素を、名目30メッシュスクリーンにかけ、ブレンダーに移し、全混合物を約2分間混合する。用いられる材料の重量を、表Cに示される重量%から算出する。混合物を、適当な打錠機を利用する適当な回転式圧縮機で所望の規格(例えば、直径約8mm〜約9.5mmの範囲の円形両凹錠剤)になるように圧縮する。錠剤を、脱ダスターおよび金属チェッカーにかける。
【0073】
エチルセルロース被膜を、実施例12に記載されるように調製および適用してもよい。
【表8】

【0074】
特性:錠剤中の製剤原料の安定性は、以下のとおりに試験されうる:
5−10個の錠剤を希釈剤(0.1M塩酸)で溶解し、活性剤の最終濃度を0.025mg/mlとし、時折振盪させながら約15分間超音波分解する。10,000rpmで5分間アリコートのサンプルを遠心分離し(低量錠剤について、所望の2工程の遠心分離、最初に3,500rpmで15分間遠心分離し、次いで、10,000rpmで5分間上清を遠心分離する)、HPLC上で注射用透明溶液を得る。対照サンプルとして作用するようにプラセボ錠を用いてサンプルを調製する。
【0075】
以下の機器条件を用いて、クロマトグラフシステムとAとを平衡にする。サンプルおよびプラセボ製剤のクロマトグラムを記録する。
カラム:Phenomenex Luna C18(2),3μm,150x4.6mm
カラム温度:40℃
移動相A:水+0.05%(v/v)トリフルオロ酢酸
移動相B:アセトニトリル+0.05%(v/v)トリフルオロ酢酸
流速:1.0ml/分
検出器波長:240nm
注入量:100μl
勾配プロファイル:
【表9】

【0076】
不純物および崩壊産物を特定するためにクロマトグラムを比較した後、対照およびサンプル注入における各不純物/崩壊産物の含有率を、不純物/崩壊産物ピークの領域を6−(3−シクロブチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピン−7−イルオキシ)−N−メチル−ニコチンアミドおよび全不純物/崩壊産物の全ピークの合計で割って、100を掛けることにより算出することができる。
【0077】
全不純物含量を、存在する各不純物/崩壊産物の含有率を合計することにより算出することができる。典型的には、0.05または0.03%以上の量で存在する不純物/崩壊産物のみが、全不純物/崩壊産物含量の計算に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)6−(3−シクロブチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピン−7−イルオキシ)−N−メチル−ニコチンアミドまたはその医薬上許容される塩;
b)安定化剤を含まない剤形と比べた場合に剤形中の6−(3−シクロブチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピン−7−イルオキシ)−N−メチル−ニコチンアミドの崩壊を減少させる、安定化剤;および
c)医薬上許容される賦形剤
からなる剤形。
【請求項2】
a)6−(3−シクロブチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピン−7−イルオキシ)−N−メチル−ニコチンアミドまたはその医薬上許容される塩,および
b)安定化剤を含まない剤形と比べた場合に剤形中の6−(3−シクロブチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピン−7−イルオキシ)−N−メチル−ニコチンアミドの崩壊を減少させる安定化剤
からなるフィルムで少なくとも部分的に被覆されている、キャリアー錠剤を含む、請求項1記載の剤形。
【請求項3】
存在する遊離塩基の量として換算した場合に、1μg〜1mgの6−(3−シクロブチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピン−7−イルオキシ)−N−メチル−ニコチンアミドを含有する、請求項1または請求項2記載の剤形。
【請求項4】
6−(3−シクロブチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピン−7−イルオキシ)−N−メチル−ニコチンアミド塩酸塩を含む、前記請求項のいずれか1項に記載の剤形。
【請求項5】
該安定化剤が、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸およびその塩、ブチル化ヒドロキシアニソールならびにブチル化ヒドロキシトルエンからなる群より選択される、前記請求項のいずれか1項に記載の剤形。
【請求項6】
該安定化剤がクエン酸であり、クエン酸の遊離塩基に対するモル比が0.5:1〜550:1の範囲である、請求項2記載の剤形。
【請求項7】
該キャリアー錠剤が少なくとも1つの凹部を有する、前記請求項のいずれか1項に記載の剤形。
【請求項8】
該フィルムが該キャリアー錠剤の凹部に存在する、請求項7記載の剤形。
【請求項9】
キャリアー錠剤による6−(3−シクロブチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピン−7−イルオキシ)−N−メチル−ニコチンアミドまたはその医薬上許容される塩の吸収が実質的に存在しない、前記請求項のいずれか1項に記載の剤形。
【請求項10】
該キャリアー錠剤がコーティングされている、請求項9記載の剤形。
【請求項11】
該剤形がさらにコーティングされている、前記請求項のいずれか1項に記載の剤形。
【請求項12】
実質的に実施例に記載されている剤形。
【請求項13】
実施例2−11に記載されている剤形。
【請求項14】
請求項2記載の剤形の製造方法であって、キャリアー錠剤上に6−(3−シクロブチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピン−7−イルオキシ)−N−メチル−ニコチンアミドまたはその医薬上許容される塩および安定化剤の溶液または懸濁液を分散させることを含む方法。
【請求項15】
神経疾患の治療方法であって、請求項1〜13のいずれか1項に記載の剤形をそれを必要とする宿主に投与することを含む方法。
【請求項16】
神経疾患の治療のための請求項1〜13のいずれか1項に記載の剤形の製造における6−(3−シクロブチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピン−7−イルオキシ)−N−メチル−ニコチンアミドまたはその医薬上許容される塩の使用。
【請求項17】
神経疾患の治療に用いる請求項1〜13のいずれか1項に記載の剤形。
【請求項18】
6−(3−シクロブチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピン−7−イルオキシ)−N−メチル−ニコチンアミドまたはその医薬上許容される塩および安定化剤の溶媒系中溶液または懸濁液。

【公表番号】特表2010−520173(P2010−520173A)
【公表日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−551215(P2009−551215)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際出願番号】PCT/EP2008/052429
【国際公開番号】WO2008/104589
【国際公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(397009934)グラクソ グループ リミテッド (832)
【氏名又は名称原語表記】GLAXO GROUP LIMITED
【住所又は居所原語表記】Glaxo Wellcome House,Berkeley Avenue Greenford,Middlesex UB6 0NN,Great Britain
【Fターム(参考)】