説明

新規形状を有する医療用ドレナージチューブ

【課題】本発明は、新規形状を有する医療用ドレナージチューブに関する。
【解決手段】チューブの少なくとも一方の端部の側面に体液を流通させるための側孔を一つ以上有し、少なくとも該側孔を有する端部が生体内に挿入され、前記側孔から体液を導きドレナージするための医療用ドレナージチューブであって、前記端部が螺旋形状を有し、該螺旋形状は前記端部の先端部に向かって縮経した形状であり、前記螺旋形状の先端部はフック形状であることを特徴とする医療用ドレナージチューブ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規形状を有する医療用ドレナージチューブに関する。
【背景技術】
【0002】
胆道等の体腔に狭窄部が生じると、胆汁あるいは膵液(体液)が十二指腸に流出しなくなるため、狭窄の発生した部位に医療用チューブ(ドレナージチューブ、カテーテル)を通して体液を流通させる治療が一般的に行われる。
【0003】
このような治療法として、例えば、胆管にドレナージチューブを挿入して留置し、胆汁を排出する治療方法として、内視鏡を使用し、経鼻的にドレナージチューブを挿入して胆汁を排出する内視鏡的経鼻胆道ドレナージ法(ENBD:endoscopic nasal biliary drainage)が知られている。(例えば、実開平5−65349号公報参照)
【0004】
従来、胆道ドレナージ用のチューブの先端部の形状は、直線形状のものが主流であった。
しかしながら、留置作業の際やその後長期にわたって留置されている間に、患者の呼吸性移動、体位変換等により、胆管からの逸脱が生じる場合があるため、処置位置から抜け出てこないように工夫する必要がある。
【0005】
そのため、一般に使用されている医療用チューブの先端の形状はピッグテイル型のものが主流となっている(例えば、実開平2−65937号公報参照)。
【0006】
【非特許文献1】実開平5−65349号公報
【非特許文献2】実開平2−65937号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の形状のドレナージチューブを用いて胆道ドレナージ法を行うと、結石が容易に肝側へ移動してしまうという問題があることが本発明者によって明らかとなった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、胆管内の結石がチューブ先端より上流(肝側)に移動することを防止する形状を有する医療用ドレナージチューブを提供することを目的とする。
【0009】
すなわち、本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、チューブの少なくとも一方の端部の側面に体液を流通させるための側孔を一つ以上有し、少なくとも該側孔を有する端部が生体内に挿入され、前記側孔から体液を導きドレナージするための医療用ドレナージチューブであって、前記端部が螺旋形状を有し、該螺旋形状は前記端部の先端部に向かって縮経した形状であり、前記螺旋形状の先端部はフック形状であることを特徴とする医療用ドレナージチューブである(請求項1)。
【0010】
このような形状を有する医療用ドレナージチューブであれば、例えば、本発明における医療用ドレナージチューブを用いて胆道ドレナージを行う際、螺旋形状を有する端部により胆管内の結石を捕獲することができ、ドレナージ中に結石が上流側に移動してしまうという問題を解決することができる。また、先端部がフック形状となっているので、小さな結石であっても確実に捕獲することができ、かつ、胆管壁への突き刺さり等を防止することができる。
【0011】
ここで、前記螺旋形状を有する部位は、前記チューブの先端から22mm〜33mmの長さであることが好ましい(請求項2)。
【0012】
また、前記螺旋形状の最大経は10mm〜14mmであって、最小経は7mm〜9mmであることが好ましい(請求項3)。
【0013】
さらに、前記螺旋形状は円形螺旋形状であり、該螺旋形状を形成する回転数は3〜4回であることが好ましい(請求項4)。
【0014】
本発明における医療用ドレナージチューブが上記のような形状であれば、例えば、胆道ドレナージに用いた場合、より効率的に胆管内の結石の移動を防止でき、特に経乳頭的胆道ドレナージ術に特に有用である。
【0015】
尚、本発明における医療用チューブは、経乳頭的に胆道内に挿入し、胆液を導きドレナージするための胆道ドレナージチューブとして好適に用いることができる(請求項5)。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、例えば、総胆管結石症による閉塞性黄胆ないしは胆管炎合併症に対する経乳頭的胆道ドレナージのツールとして極めて好適な医療用ドレナージチューブを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
上記のように、従来の医療用ドレナージチューブは先端の形状は直線型もしくはピッグテイル型が主流であった。しかしながら、これらの医療用ドレナージチューブは立体的構造を有せず、平面状の形状であるために、胆管内の結石が容易に移動してしまうという問題があることが本発明者により明らかとなった。
【0018】
本発明者は、上記問題を解決すべく、鋭意・検討を行い、医療用ドレナージチューブの先端の形状を立体的な円錐螺旋型形状にすることにより、結石の肝側への移動を防止できることを見出し、本発明を完成させた。
【0019】
図1は本発明における医療用ドレナージチューブの一例を示す図である。図1に示されるように、本発明における医療用ドレナージチューブ1は、チューブの少なくとも一方の端部2の側面に体液を流通させるための側孔3を一つ以上有し、少なくとも側孔3を有する端部2が生体内に挿入され、側孔3から体液を導きドレナージするための医療用チューブであって、前記端部2が螺旋形状を有しており、該螺旋形状は前記端部2の先端部4に向かって縮経した形状であることを特徴としている。そして、前記螺旋形状の先端部4はフック形状となっている。
【0020】
このような形状を有する医療用ドレナージチューブであれば、例えば、胆道ドレナージを行う際、胆管内の結石を捕獲することができ、ドレナージ中に結石が上流側に移動してしまうという問題を解決することができる。また、先端部がフック形状となっているので、小さな結石等であっても確実に捕獲することができる上に、胆管壁への突き刺さりを防止することができる。尚、先端部4のフック形状は特に限定されないが、先端が内側向きの軽度のフック形状であるのが好ましい。
【0021】
ここで、側孔3は、螺旋形状を有する端部2の内側に施されることが好ましいが、特に限定されない。また、チューブ1において、螺旋形状を有する端部2以外の部位はほぼ直線状であることが好ましい。
【0022】
図2は本発明における医療用ドレナージチューブ1における螺旋形状の寸法を示す図である。
上記の螺旋形状を有する端部2の長さaは、医療用ドレナージチューブチューブ1の先端から22mm〜33mmの長さであることが好ましい。
また、上記のように、本発明における医療用ドレナージチューブ1における端部2が有する螺旋形状は先端部4に向かって縮径した形状を有しているが、この螺旋形状の最大経bは10mm〜14mmであって、最小経cは7mm〜9mmであることが好ましい。
【0023】
このような寸法であれば、例えば、胆道ドレナージを行う際、胆管内の結石を効率よく捕獲することができる。また、胆管内に程よく収まり、留置した場合等に胆管内を傷つける恐れも少ない。
【0024】
さらに、端部2における螺旋形状は円形螺旋形状であることが好ましく、螺旋形状を形成する回転数は3〜4回であることが好ましい。回転数が3回以上であれば胆管内の結石の把持能力に優れ、4回以下であれば操作性に問題が生じる恐れがなく好ましい。尚、螺旋の回転方向は特に限定されるものではなく、右巻き、左巻きのいずれでもよい。
【0025】
尚、本発明における医療用ドレナージチューブ1は、弾力性・柔軟性を有し、縦方向に伸展可能であることが好ましく、芯等により外力を加えることで螺旋形状を直線状にすることも可能である。例えば、挿入時に心材等により外力を加えて直線状にしておき、挿入後心材等を外して螺旋形状に戻すようにすれば、挿入時の操作が容易になり好ましい。
【0026】
また、チューブ状である医療用ドレナージチューブ1の平均外径は、特に限定されないが、1.7〜2.3mm(5〜7フレンチ)程度であるのが好ましい。尚、この外径は、医療用ドレナージチューブ1の先端に向かって細径化しているものであることが好ましい。
また、医療用ドレナージチューブ1の断面形状は、円形でも楕円形でもよく、特に限定されるものではない。
【0027】
ここで、上記本発明における医療用ドレナージチューブの材質は、特に限定されるものではないが、例えば、天然ゴム、合成ゴム、プロピレンゴム、ウレタンゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム等の高分子得ストラマー材料、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリアミド、ポリエーテルポリアミド、ポリエステルポリアミド、ポリエステルポリアミド、ポリウレタン、軟質ポリ塩化ビニル、ABS樹脂、AS樹脂、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂、形状記憶樹脂等の各種樹脂材料、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エストラマー等が挙げられる。尚、上記のうち2種以上を組み合わせたものから構成されてもよい。
【0028】
本発明における医療用ドレナージチューブ1は、例えば初回の内視鏡的乳頭的結石除去術後、遺残結石の明らかな総胆管結石症もしくは抗血小板薬ないしは抗凝固薬等を投与中の胆肝炎を伴う総胆管結石患者等に対するドレナージ術に好適に用いることができる。
また、医療用ドレナージチューブ1の全体の長さは4〜260cmであることが好ましく、例えば、経鼻胆道ドレナージ用チューブとして用いる場合、240〜260cm程度の長さであるのが好適である。
【0029】
以下、本発明における医療用ドレナージチューブ1を用いて胆道ドレナージを行う場合について説明する。
【0030】
例えば、一般的に、総胆管結石症による閉塞性黄胆ないしは胆肝炎合併例の患者に対し、まず、胆管結石、十二指腸内視鏡(側視鏡)を口から十二指腸下行脚まで挿入し、経乳頭的逆行性胆道造影が行われる。そして、総胆管結石を透視下に確認した後、総胆管内にガイドワイヤーを挿入、留置し、可能であれば乳頭括約筋切開術を付加し、結石除去が行われる。
【0031】
ここで、上記のような一回の処置ではすべての結石を除去しえず、遺残結石が明らかであったり、抗血小板薬や抗凝固薬等を投与中で乳頭括約筋切開術が不可能である場合等に、本発明における医療用ドレナージチューブ1を好適に用いることができる。
【0032】
具体的には、例えば、予め胆管内に挿入、留置したガイドワイヤー沿いに本発明における医療用ドレナージチューブ1を挿入する。この際、螺旋形状を有する先端部2が最上流結石よりも上流に位置するように留置し、胆管内の結石を捕獲した状態で、側孔3から体液を流通させることでドレナージを行う。ここで、上流とは、胆管内の肝臓側を示す。
【0033】
このように、螺旋形状を有する先端部2を最上流結石よりも上流に位置するように留置することで、先端部2の螺旋形状内に胆管内の結石を保持することができる。
【0034】
尚、留置期間は、例えば、遺残結石例の場合、次回の処理まで(おおむね1週間程度)、抗血小板薬や抗凝固薬等を投与中の患者の場合はその効果の切れるまで(おおよそ4日から1週間程度)とすることが好ましい。
【0035】
以下、本発明について実施例を参照して詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【実施例】
【0036】
初回の内視鏡的経乳頭的結石除去術後、遺残結石の明らかな総胆管結石症もしくは抗血小板薬ないしは抗凝固薬を投与中の胆管炎を伴う総胆管結石症患者を対象とした。
【0037】
十二指腸内視鏡を口から十二指腸下行脚まで挿入し、経乳頭的逆行性胆道造影を行った。総胆管結石を透視下に確認した後、総胆管内にガイドワイヤーを挿入、留置し、可能であれば乳頭括約筋切開術を付加し、結石除去を行った。この際、1回の処置ではすべての結石を除去しえず遺残結石が明らか、若しくは、抗血小板薬ないしは抗凝固薬を投与中で乳頭括約筋切開術が不可能であった被験者に対し、表1に示される本発明における医療用ドレナージチューブA−D(実施例1−4)、および、従来型(ピッグテイル型)の医療用ドレナージチューブE(比較例1)を用いて経乳頭的胆道ドレナージ術を行った。
【0038】
【表1】

【0039】
胆管内に挿入、留置したガイドワイヤー沿いにカテーテルを挿入、この際、先端が最上流結石よりも上流に位置するように留置した。留置期間は遺残結石例では次回の処置まで(おおむね1週間)、抗血小板薬ないしは抗凝固薬を投与中の患者の場合はその効果の切れる4日〜1週間程度とした。また、平均留置期間は7.4日であった。
実施例1−4、比較例1それぞれの医療用ドレナージチューブを用いて施行した結果、比較例1では結石の上流への移動が発生する場合があったのに対し、実施例1−4では結石の上流への移動例はみられず、胆管壁への突き刺さりもなく、カテーテル挿入および留置による合併症は見られなかった。
【0040】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明によれば、例えば、本発明における医療用ドレナージチューブを用いて胆道ドレナージを行う際、螺旋形状を有する端部により胆管内の結石を捕獲することができ、ドレナージ中に結石が上流側に移動してしまうという問題を解決することができる。また、先端部がフック形状となっているので、小さな結石であっても捕獲することができる上に、胆管壁への突き刺さり等を防止することができる。そのため、総胆管結石症による閉塞性黄胆ないしは胆管炎合併症に対する経乳頭的胆道ドレナージ等のツールとして極めて好適な医療用ドレナージチューブを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の医療用ドレナージチューブを示す図である。
【図2】本発明の医療用ドレナージチューブの先端部が有する螺旋形状の寸法を示す図である。
【符号の説明】
【0043】
1 医療用ドレナージチューブ、 2 螺旋形状を有する端部、 3 側孔、
4 先端部、 a 螺旋形状を有する端部の寸法、 b 螺旋形状の最大径、
c 螺旋形状の最小径。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チューブの少なくとも一方の端部の側面に体液を流通させるための側孔を一つ以上有し、少なくとも該側孔を有する端部が生体内に挿入され、前記側孔から体液を導きドレナージするための医療用ドレナージチューブであって、前記端部が螺旋形状を有し、該螺旋形状は前記端部の先端部に向かって縮経した形状であり、前記螺旋形状の先端部はフック形状であることを特徴とする医療用ドレナージチューブ。
【請求項2】
前記螺旋形状を有する端部は、前記チューブの先端から22mm〜33mmの長さであることを特徴とする請求項1に記載の医療用ドレナージチューブ。
【請求項3】
前記螺旋形状の最大径は10mm〜14mmであって、最小径は7mm〜9mmであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の医療用ドレナージチューブ。
【請求項4】
前記螺旋形状は円形螺旋形状であり、該螺旋形状を形成する回転数は3〜4回であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の医療用ドレナージチューブ。
【請求項5】
前記医療用チューブは、経乳頭的に胆道内に挿入し、胆液を導きドレナージするための胆道ドレナージチューブとして用いられるものであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のドレナージチューブ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−42159(P2010−42159A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−208812(P2008−208812)
【出願日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【出願人】(596165589)学校法人 聖マリアンナ医科大学 (53)
【Fターム(参考)】