説明

新規抗カビ・静菌剤およびその脱臭方法

【課題】食品に直接使うことができ、かつ、食品の味覚に影響を及ぼさない抗カビ・静菌剤を提供すること。
【解決手段】
この発明の抗カビ・静菌剤は、テルペン系炭化水素、特に好ましくはアルファ−ターピネオールを0.05%を含有し、食用酢、好ましくは米酢を0.05%から0.1%含有しエチルアルコールを25%から35%又は50%含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、テルペン系炭化水素を含んでなる新規抗カビ・静菌剤と、それを用いたテルペン系炭化水素系抗カビ・静菌剤の持つ苦み臭を除去することからなる脱臭方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
我々は、テルペン系炭化水素を含んでなる新規でかつ安全性の高い抗カビ・静菌剤について特許出願をしている(特許文献1)。しかしながら、かかる抗カビ・静菌剤を使用してみると、確かに安全で効果も確実に発揮できることが観察されるけれども、実際に食品に使用してみると食品に苦みが付着することが認められた。かかる抗カビ・静菌剤を実際に市場で使用するためには、その苦みをどうしても除去する必要がある。しかしながら、当然のことであるが、我々の見いだした新規抗カビ・静菌剤の使用に伴って発生する苦みの除去についての報告は未だない。あらたな研究を必要とした。
【特許文献1】特願2003−272481
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、この発明の目的は、テルペン系化合物と、エチルアルコールとを含む抗カビ・静菌剤であって、かかる抗カビ・静菌剤を食品に使用したときに発生する苦み臭みを除去する脱臭方法に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、鋭意努力した結果、先の発明で完成させた新規抗カビ・静菌剤(特願2003−272481)において、試みた多くの種類の香料等では目的を達成することができないこと、また微量の酢酸を添加すると共に、エチルアルコール濃度を先の発明よりも低下させることによって、抗カビ・静菌効果を維持しながら苦み臭を除去することができることを見出して、この発明を完成した。
【0005】
上記目的を達成する為、この発明は、0.03%〜0.06%のテルペン系化合物、例えば、リモネン、ピネン、シネオールまたはターピネオール、特にアルファ−ターピネオールと、25〜35%、好ましくは50%のエチルアルコールと、0.05%〜0.15%の食用酢、特に米酢とを含んでなる抗カビ・静菌剤を提供する。この発明に係る新規抗カビ・静菌剤は食品の味には影響を与えないものである。
【0006】
この発明の好ましい態様として、テルペン系化合物と、エチルアルコールとを含む抗カビ・静菌剤に、食用酢を添加することによって、上記抗カビ・静菌剤が有する苦み臭を除去することができる抗カビ・静菌剤の脱臭方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
この発明に係る新規抗カビ・静菌剤は、テルペン系炭化水素を0.03%から0.06%と、エチルアルコールを25%から35%または50%と、食用酢を0.05%から0.15%とを含んでなり、かつ、食品の味には影響を与えない新規抗カビ・静菌剤である。
【0008】
この発明に使用することができるテルペン系炭化水素としては、例えば、リモネン、ピネン、シネオールまたはターピネオールが挙げられ、特にアルファ−ターピネオールが好ましい。また、食用酢としては米酢が好ましい。
【実施例1】
【0009】
(抗カビ・静菌剤の調製)
α−ターピネオールと、エチルアルコールと、米酢とを下表で示す割合で混合して抗カビ・静菌剤を調製した。
【0010】
(試験方法)
この発明において、カビ発生試験と味覚への影響試験は次のように行った。
先ず、カビ発生を観察するために、防カビ剤の添加されていない食パンを6×3cmに切り、上記実施例で調製した抗カビ・静菌剤を2度噴霧して室温に放置した後ビニール袋に保存して、食パンへのカビ発生を観察した。この発明の抗カビ・静菌剤を用いた場合にはいずれもカビの発生は認められなかったが、対象の場合には、5日目にカビの発生が認められた。なお、対象としては蒸留水を用いた。
更に、味覚への影響は、上記抗カビ・静菌剤を2回噴霧した後、実際に食して嗜好検査を行って調べた。
【0011】
下表で示すように、この発明に係る抗カビ・静菌剤は、食パンに対して抗カビ効果を発揮していると共に、食パンの味に影響を及ぼしていないことが判明した。
なお、下表に示したように、他の組成の濃度変化は非常に微妙であるが食パンの味覚に変化が見られた。
【0012】
【表1】

【0013】
【表2】

【0014】
【表3】

【0015】
【表4】

【0016】
上記結果から、この発明に係る抗カビ・静菌剤は、テルペン系炭化水素、特に好ましくはアルファ−ターピネオールを0.05%を含有し、食用酢、好ましくは米酢を0.05%から0.1%含有しエチルアルコールを25%から35%又は50%含んでいるのがよい。
【産業上の利用可能性】
【0017】
この発明に係る抗カビ・静菌剤は、食品に直接使用することのでき、かつ、食品の味覚に影響を与えることが無く、またカビの発生も防止することができるので、産業上利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テルペン系化合物0.03%〜0.06%と、エチルアルコール25〜35%または50%と、食用酢0.05%〜0.15%とが含まれていることを特徴とする抗カビ・静菌剤。
【請求項2】
請求項1に記載の抗カビ・静菌剤において、前記テルペン系化合物がリモネン、ピネン、シネオールまたはターピネオールであることを特徴とする抗カビ・静菌剤。
【請求項3】
請求項1または2に記載の抗カビ・静菌剤において、前記テルペン系化合物がアルファ−ターピネオールであることを特徴とする抗カビ・静菌剤。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の抗カビ・静菌剤において、前記食用酢が米酢であることを特徴とする抗カビ・静菌剤。
【請求項5】
テルペン系化合物と、エチルアルコールとを含む抗カビ・静菌剤に、食用酢を添加することによって、前記抗カビ・静菌剤が有する苦み臭を除去することを特徴とする抗カビ・静菌剤の脱臭方法。