説明

新規核酸誘導体及びそれを用いたポリヌクレオチドの製造方法

【課題】新規な核酸誘導体を提供する。
【解決手段】下記一般式で表される7位置換デアザデオキシアデノシン誘導体、または7位置換デアザデオキシグアノシン誘導体を提供する。


式中、Rは、−OR1又は−NH−(CH2)n−NR23を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なC7位置換デオキシアデノシン誘導体、新規なC7位置換デオキシグアノシン誘導体、及びそれらを用いたポリヌクレオチドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
機能性ポリヌクレオチドを合成したり、ポリヌクレオチドにヌクレアーゼ耐性などの特性を付与したりするために、非天然の核酸誘導体を合成し、それを用いてDNAやRNAなどの修飾ポリヌクレオチドを作製する研究が行われている。
核酸誘導体としては、C5位にトリフロロアセチルアミノヘキシルアミノカルボニルメチルなどの置換基が結合したデオキシウリジン誘導体が知られている(特許文献1参照)。しかしながら、この誘導体はDNAポリメラーゼの基質とはなりにくく、ポリヌクレオチドを得るためにはDNA合成機などを用いて化学合成する必要があった。
また、2004年にドイツのFamulokらが、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による高密度修飾DNAの調製法を報告している(非特許文献1参照)。しかしながら、この方法では、耐熱性DNAポリメラーゼに対して基質特性に乏しい修飾基質ヌクレオシド三リン酸を用いるため、目的物生成のために、DMSOやホルムアミドなどの添加剤(変性剤)などいくつかの添加剤の組み合わせの最適化が必要であった。
DNAポリメラーゼの基質として働く核酸誘導体がいくつか知られている。例えば、特許文献2では、C5位にメチルエステルやヘキサメチレンジアミンなどを含む置換基が結合したデオキシウリジン誘導体を用いたポリヌクレオチドの合成法が報告されている。また、特許文献3では、C5位に1−アミノ−3,6−オキサヘプチル基などが結合したデオキシウリジン誘導体又はデオキシシチジン誘導体を用いたポリヌクレオチドの合成法が報告されている。さらに、特許文献4では、C5位に(6−アミノヘキシル)カルバミルメチル基などが結合したデオキシシチジン誘導体やN6位に4−アミノブチル基などが結合したデオキシアデノシン誘導体を用いたポリヌクレオチドの合成法が報告されている。このように、これまでにもいくつかの核酸誘導体が知られていたが、より効率よく機能性の修飾ポリヌクレオチドを得るためには、さらなる種類の核酸誘導体が要望されていた。
【特許文献1】特開平7−165786号公報
【特許文献2】特開2002−085079号公報
【特許文献3】特開2004−238353号公報
【特許文献4】特開2005−060240号公報
【非特許文献1】Angew.Chem.Int.Ed. 2004, 43, 3337-3340
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、DNAポリメラーゼの優れた基質として働くことができ、効率よく機能性修飾ポリヌクレオチドを生成させることのできる新規な核酸誘導体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意検討を行った。その結果、新規なC7位置換デオキシアデノシン誘導体と新規なC7位置換デオキシグアノシン誘導体を合成することに成功し、さらに、それらの誘導体を用いることによりポリヌクレオチドを効率よく得ることができることを見出して、本発明を完成させるに至った。
【0005】
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)下記一般式(I-1)または(I-2)で表される7位置換デアザデオキシアデノシン誘導体。
【化1】

式中、Rは、−OR1又は−NH−(CH2)n−NR23を示し、ここで、nは2〜10の整数であり、R1はアルキル基であり、R2、R3はそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、−COCF3基、−COCH3基、カルボニルメチルイミダゾール基、−C(=NH)NH2、ビオチニル基、各種アミノ酸をアミド結合を介して結合させたもの、又は−(CH22N[(CH22NH22基から選ばれる置換基である。
(2)下記一般式(II-1)または(II-2)で表される7位置換デアザデオキシグアノシン誘導体。
【化2】

式中、Rは、−OR1又は−NH−(CH2)n−NR23を示し、ここで、nは2〜10の整数であり、R1はアルキル基であり、R2、R3はそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、−COCF3基、−COCH3基、カルボニルメチルイミダゾール基、−C(=NH)NH2、ビオチニル基、各種アミノ酸をアミド結合を介して結合させたもの、又は−(CH22N[(CH22NH22基から選ばれる置換基である。
(3)(1)の7位置換デアザデオキシアデノシン誘導体のヌクレオチド残基を含むポリヌクレオチド。
(4)(2)の7位置換デアザデオキシグアノシン誘導体のヌクレオチド残基を含むポリヌクレオチド。
(5)(1)の7位置換デアザデオキシアデノシン誘導体または(2)の7位置換デアザデオキシグアノシン誘導体を含む、修飾ポリヌクレオチド合成用基質溶液。
(6)(5)の修飾ポリヌクレオチド合成用基質溶液を含む、修飾ポリヌクレオチド合成用試薬。
(7)(1)の7位置換デアザデオキシアデノシン誘導体及び(2)の7位置換デアザデオキシグアノシン誘導体の少なくとも一方を基質に用いて、修飾ポリヌクレオチドを製造する方法。
(8)(1)の7位置換デアザデオキシアデノシン誘導体又は(2)の7位置換デアザデオキシグアノシン誘導体に標識物質を導入することによって得られた標識核酸を用いて標識ポリヌクレオチドを製造する方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明のC7位置換デオキシアデノシン誘導体とC7位置換デオキシグアノシン誘導体(これらをまとめて本発明の核酸誘導体と呼ぶことがある)は、耐熱性DNAポリメラーゼに対する基質特性に優れているため、DMSOやホルムアミドなどの添加剤(変性剤)を使用することなく、修飾基が高密度に修飾されたポリヌクレオチドを簡便に調製することが可能である。本発明のC7位置換デオキシアデノシン誘導体とC7位置換デオキシグアノシン誘導体を用いてポリヌクレオチドを合成することによって、SELEX法によって創製される機能性DNAの高性能化や遺伝子標識の高密度化、アンチセンス・アンチジーン分子やsiRNAへの機能付与などが達成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に本発明を詳しく説明する。
本発明の7位置換デアザデオキシアデノシン誘導体は、一般式(I-1)または(I-2)で表される。
【化3】

式中、Rは、−OR1又は−NH−(CH2)n−NR23を示す。ここで、nは2〜10の整数であり、好ましくは6の整数である。R1はアルキル基であり、R2、R3はそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、−COCF3基、−COCH3基、カルボニルメチルイミダゾール基、−C(=NH)NH2、ビオチニル基、各種アミノ酸をアミド結合を介して結合させたもの、及び−(CH22N[(CH22NH22基から選ばれる置換基である。なお、上記アルキル基は、直鎖アルキル基であっても分岐鎖アルキル基であってもよいが、炭素数が6のアルキル基が好ましい。アルケニル基、アルキニル基については、直鎖状あるいは分岐鎖状のいずれでもよく、2重結合又は3重結合の位置及び個数も特に制限されないが、炭素数が6のものが好ましい。アリール基は非置換アリール基、置換アリール基のいずれでもよい。
各種アミノ酸をアミド結合を介して結合させたものとして具体的には、グリシル基、アラニル基、バリル基、ロイシル基、イソロイシル基、メチオニル基、プロリル基、フェニルアラニル基、トリプトファニル基、セリル基、スレオニル基、アスパラギニル基、グルタミニル基、アスパラチル基、グルタミル基、システイニル基、チロシル基、ヒスチジル基、リシル基、アルギニル基が挙げられる。これらはタンパク質に含まれる機能性残基という観点から、好ましく用いることができる。
【0008】
上記7位置換デアザデオキシアデノシン誘導体は、後述の実施例に示される方法によって合成することができる。なお、実施例では、7-Deaza-7-(methoxycarbonylethenyl) -2'-deoxyadenosine-5'-triphosphate、7-Deaza-7-[N-(6-trifluoroacetyamidohexyl)-carbonylethenyl]-2'-deoxyadenosine-5'-triphosphate及び7-Deaza-7-[N-(6-amidohexyl)-carbonylethenyl]-2'-deoxyadenosine-5'-triphosphate、7-Deaza-7-[N-(6-trifluoroacetyamidohexyl)-carbonylethyl]-2'-deoxyadenosine-5'-triphosphate、7-Deaza-7-[N-(6-amidohexyl)-carbonylethyl]-2'-deoxyadenosine-5'-triphosphate、7-Deaza-7-[N-(6-guanidinumhexyl)-carbonylethyl]-2'-deoxyadenosine-5'-triphosphateの合成例について示したが、一般式(I-1)または(I-2)で示されるその他の7位置換デアザデオキシアデノシン誘導体についても同様の方法によって得ることができる。
【0009】
本発明の7位置換デアザデオキシグアノシン誘導体は、下記一般式(II-1)又は(II-2)で表される。
【化4】

式中、Rは、−OR1又は−NH−(CH2)n−NR23を示す。ここで、nは2〜10の整数であり、好ましくは6の整数である。R1はアルキル基であり、R2、R3はそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、−COCF3基、−COCH3基、カルボニルメチルイミダゾール基、−C(=NH)NH2、ビオチニル基、各種アミノ酸をアミド結合を介して結合させたもの、及び−(CH22N[(CH22NH22基から選ばれる置換基である。なお、上記アルキル基は、直鎖アルキル基であっても分岐鎖アルキル基であってもよいが、炭素数が6のアルキル基が好ましい。アルケニル基、アルキニル基については、直鎖状あるいは分岐鎖状のいずれでもよく、2重結合又は3重結合の位置及び個数も特に制限されないが、炭素数が6のものが好ましい。アリール基は非置換アリール基、置換アリール基のいずれでもよい。
各種アミノ酸をアミド結合を介して結合させたものとして具体的には、グリシル基、アラニル基、バリル基、ロイシル基、イソロイシル基、メチオニル基、プロリル基、フェニルアラニル基、トリプトファニル基、セリル基、スレオニル基、アスパラギニル基、グルタミニル基、アスパラチル基、グルタミル基、システイニル基、チロシル基、ヒスチジル基、リシル基、アルギニル基が挙げられる。これらはタンパク質に含まれる機能性残基という観点から、好ましく用いることができる。
【0010】
上記7位置換デアザデオキシグアノシン誘導体は、後述の実施例に示される方法によって合成することができる。なお、実施例では、7-Deaza-7-[2-(methoxycarbonyl)ethenyl]-N2-pivaloyl-2'-deoxyguanosineの合成例について示したが、一般式(II-1)で示されるその他の7位置換デアザデオキシグアノシン誘導体についても同様の方法によって得ることができる。例えば、7-Deaza-7-[2-(methoxycarbonyl)ethenyl]-N2-pivaloyl-2'-deoxyguanosineにジアミンなどを反応させることによってRが−NH−(CH2)n−NR23のものを合成することができる。また、一般式(II-2)で示される7位置換デアザデオキシグアノシン誘導体については、例えば、7-Deaza-7-(methoxycarbonylethyl) -2'-deoxyguanosineを出発物質とし、実施例に示される一般式(I-2)で示される7位置換デアザデオキシアデノシン誘導体の合成と同様の手順で合成することができる。
【0011】
本発明の核酸誘導体を用いてDNAなどの修飾ポリヌクレオチドを合成することができる。得られた、本発明の核酸誘導体のヌクレオチド残基を含む修飾ポリヌクレオチドも本発明の範囲に含まれる。C7位置換デオキシアデノシン誘導体とC7位置換デオキシグアノシン誘導体は、両方用いて修飾ポリヌクレオチドを合成してもよいし、いずれか一方を用いて修飾ポリヌクレオチドを合成してもよい。さらに、これら本発明の核酸誘導体と、後述するような既知の核酸誘導体とを組み合わせて、ポリヌクレオチドを合成してもよい。本発明の核酸誘導体を用いて合成されるポリヌクレオチドは一本鎖でも二本鎖でもよい。合成法は特に制限されず、化学合成法でもよいが、DNAポリメラーゼなどを用いた酵素合成法が好ましい。
【0012】
DNAポリメラーゼなどを用いた酵素合成法は、一般的な核酸増幅法にしたがって行うことができる。具体的には、核酸基質、DNA合成酵素、鋳型DNA及びプライマーを用い
て合成を行うことができる。ここで、核酸基質として、本発明の核酸誘導体と、通常の核酸増幅に用いられる天然型dNTP(dATP、dTTP、dCTP、dGTP)を用いる。場合によってはさらに既知の核酸誘導体を用いてもよい。天然型dNTPは、基質として加えられる核酸誘導体と同種類のdNTP(例えば、C7位置換デオキシアデノシン誘導体を用いる場合はdATP)を除いたものを用いてもよいが、全種類用いることが好ましい。増幅に用いることのできる酵素の種類は特に制限されないが、Taq DNA ポリメラーゼ、Tth DNA ポリメラーゼ(東洋紡)、Vent(exo-) DNA ポリメラーゼ(New England Biolabs)、KOD Dash DNA ポリメラーゼ(東洋紡)などを用いることができる。鋳型DNAとしては、天然のDNA,化学合成したDNA又は天然のRNAを逆転写して形成されたcDNAなどを挙げることができる。
ポリヌクレオチドを増幅する方法はPCRに限定されず、LAMP法(特許第3313358号明細書)、NASBA法(Nucleic Acid Sequence-Based Amplification;特許2843586号明細書)、ICAN法(特開2002-233379号公報)などでもよい。
【0013】
また、ポリヌクレオチド増幅において、本発明の核酸誘導体とともに用いてもよい既知の核酸誘導体としては、例えば、以下のようなものが挙げられる。
既知のデオキシウリジン誘導体としては、以下のようなものが挙げられる。
【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

上記式中、Rは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、またはアリール基、−COCF3基、−COCH3基、カルボニルメチルイミダゾール基、−C(=NH)NH2、ビオチニル基、各種アミノ酸をアミド結合を介して結合させたもの、又は−(CH22N[(CH22NH22基を示す。)からなる群から選択される置換基である。
【0014】
既知のデオキシアデノシン誘導体としては、以下のようなものが挙げられる。
【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

上記式中、Rは水素原子、アルキニル基、アルケニル基、アルキニル基、またはアリール基、−COCF3基、−COCH3基、カルボニルメチルイミダゾール基、−CH(=NH)NH2、ビオチニル基、各種アミノ酸をアミド結合を介して結合させたもの、又は−(CH22N[(CH22NH22基を示す。)からなる群から選択される置換基である。
【0015】
また、特開2005-0602540号公報に開示された以下のN6位置換デオキシアデノシン誘導体でもよい。
【化15】

式中、Rは−NHXを表し、Xは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、またはアリール基、−COCF3基、−COCH3基、カルボニルメチルイミダゾール基、−C(=NH)NH2、ビオチニル基、各種アミノ酸をアミド結合を介して結合させたもの、又は−(CH22N[(CH22NH22基を示す。)からなる群から選択される置換基である。
【0016】
既知のデオキシシチジン誘導体としては、特開2005-060240号公報に開示された式xiiのC5位置換デオキシシチジン誘導体が挙げられる。
【化16】

式中、Rは−NHXを表し、Xは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、またはアリール基、−COCF3基、−COCH3基、カルボニルメチルイミダゾール基、−C(=NH)NH2、ビオチニル基、各種アミノ酸をアミド結合を介して結合させたもの、又は−(CH22N[(CH22NH22基を示す。)からなる群から選択される置換基である。
【0017】
また、特開2004-238353号公報に開示された式xiiiのC5位置換デオキシシチジン誘導体でもよい。
【化17】

(但し、式中、Rは−NHXを表し、Xは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、またはアリール基、−COCF3基、−COCH3基、カルボニルメチルイミダゾール基、−C(=NH)NH2、ビオチニル基、各種アミノ酸をアミド結合を介して結合させたもの、又は−(CH22N[(CH22NH22基を示す。)からなる群から選択される置換基である。
【0018】
さらに、特開2004-238353号公報に開示された式xivのC5位置換デオキシシチジン誘導体でもよい。
【化18】

(但し、式中、Rは−NHXを表し、Xは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、またはアリール基、−COCF3基、−COCH3基、カルボニルメチルイミダゾール基、−C(=NH)NH2、ビオチニル基、各種アミノ酸をアミド結合を介して結合させたもの、又は−(CH22N[(CH22NH22基を示す。)で表される置換基である。
【0019】
本発明の核酸誘導体には蛍光物質などの標識物質を結合させることが可能であり、標識物質を結合させた核酸を含むポリヌクレオチドは、有用なプローブ等となり得る。標識物質としては、従来核酸の標識に用いられている物質であれば特に制限されない。例えば、蛍光標識物質として、フルオレスセイン,Cy5,テトラメチルカルボキシローダミン,ピレンなどを挙げることができる。標識物質は、例えば、本発明の核酸誘導体のアミノ基に導入することができる。蛍光標識を本発明の核酸誘導体に結合させ、得られた標識核酸を基質に用いてポリヌクレオチドを合成することにより、標識物質が導入された修飾ポリヌクレオチドを得ることができる。
蛍光物質などの標識物質が導入された修飾ポリヌクレオチドは、一本鎖にしてマイクロアレイのプローブに用いたりすることができる。
なお、蛍光標識以外に、種々の機能性物質を本発明の核酸誘導体に結合させることにより、機能性修飾ポリヌクレオチド,例えば触媒、アプタマーなどを合成することもできる。また、阻害剤を結合させることも可能である。
【0020】
本発明の核酸誘導体を用いて合成されたポリヌクレオチドはSELEX法に適用することもできる。すなわち、本発明の核酸誘導体を用いてランダムなポリヌクレオチドを複数合成し、その中から、種々の生体関連物質等に対するアプタマーや特定反応を触媒するリボザイムなど、実用可能性があるさまざまな機能性核酸をスクリーニングすることができる。すなわち、ランダムな修飾ポリヌクレオチドを複数合成し、その中から酵素活性などを指標に特定のポリヌクレオチドを選択することにより、生理活性を有するアプタマーやリボザイムを得ることができる。
【0021】
本発明の核酸誘導体を用いて合成されたポリヌクレオチドはアンチセンス分子やアンチジーン分子などの遺伝子発現を調節するための核酸医薬として利用することもできる。本発明の核酸誘導体を含むことでポリヌクレオチドの細胞膜透過性や遺伝子抑制作用の向上、副作用の緩和、ヌクレアーゼ耐性の向上が達成でき、より有効な核酸医薬として利用できる。
【0022】
上述したように、本発明の核酸誘導体は、機能性ポリヌクレオチドを合成するために用いることができるため、本発明の核酸誘導体を含む修飾ポリヌクレオチド合成用基質溶液や修飾ポリヌクレオチド合成用試薬などとして提供されうる。
【実施例】
【0023】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0024】
<1>修飾プリンヌクレオシド三リン酸の合成
<1-1>使用機器および試剤
イオン交換カラムクロマトグラフィー
BIO-RAD ECONO SYSTEM CONTOROLLER
BIO-RAD ECONO PUMP
BIO-RAD ECONO UV MONITER
ADVATEC SF-160 FRACTION COLLECTOR
中圧カラムクロマトグラフィー
EYELA CERAMIC PUMP VSP-3050
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)
日本分光 PU-980 Intelligent HPLC Pump
日本分光 UV-970 Intelligent UV/VIS Detector
三和通商 DG-3310 Degasys
視外可視分光高度計 島津 UV 1200
日立 U-3000
核磁気共鳴分光光度計(NMR) 日本電子 JNM-AL 300 FT-NMR system
ESI質量分析装置(ESI-MS) Perkin Elmer Sciex API-100
【0025】
修飾プリンヌクレオシドの出発原料には以下のものを使用した。
2'-デオキシグアノシン Gene ACT, Inc.
7-デアザヒポキサンチン BERRY ASSOCIATES
7-デアザグアノシン BERRY ASSOCIATES
【0026】
<1-2>修飾7-デアザアデノシン三リン酸の合成
6-Chloro-7-deazaadenine 8の合成
【化19】

真空乾燥した7-デアザヒポキサンチン7(1.493 g, 11.0 mmol, F.W.135.12)に塩化ホスホリル(10 mL, 110 mmol, 10当量)を加えて懸濁させ、115℃で1時間還流した。反応液を減圧留去し、残渣に冷水(100 mL)を入れクエンチした。これをジエチルエーテル(100 L)で4回抽出した。有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、ろ過し、ろ液を減圧留去し、目的物8を得た。Rf値 0.41 [10%メタノール/ジクロロメタン]
収量 1.536 g(10.0 mmol) 収率 91%
1H NMR (300 MHz, CDCl3)
δ9.82 (1H, s, 9-NH), 8.68 (1H, s, H-2), 7.38 (1H, q, H-8), 6.68 (1H, q, H-7)
ESI-MS(ポジティブ・モード) m/z [帰属]
Found:154.2, Calc.:154.01 [(M+H)+]
【0027】
6-Chloro-7-deaza -7-iodoadenine 9の合成
【化20】

デアザプリン8(0.591 g, 3.58 mmol, F.W.153.57)をdry-DMF(15 mL)に溶かし、N-ヨードスクシンイミド(0.963 g, 4.28 mmol, 1.1当量)のdry-DMF溶液(15 mL)を加え、アルゴン雰囲気下、室温で3時間撹拌した。反応液を減圧留去し、残渣を酢酸エチル(75mL)に溶かした後、飽和NaHCO3水(30 mL)で2回洗浄した。有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過し、ろ液を減圧留去した。これを、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(Silica gel 60,230-400mesh, 1〜6%メタノール/ジロロメタン)で精製し、白黄色の粉の目的物9を得た。Rf値 0.5 [10%メタノール/ジクロロメタン]
収量 0.840 g(3.00 mmol) 収率 84%
1H NMR (300 MHz, CDCl3)
δ8.66 (1H, s, H-2), 7.52 (1H, d, J=2.4, H-8)
ESI-MS(ポジティブ・モード) m/z [帰属]
Found:280.1, Calc.:279.91 [(M+H)+]
【0028】
3',5'-Di-O-(4-toluoyl)-6-chloro-7-deaza-7-iodo-2'-deoxyadenosine10の合成
【化21】

真空乾燥させた9(1.048 g, 3.75 mmol, F.W.279.47)をdry-アセトニトリル(77 mL)に懸濁させ、水素化ナトリウム(60% in oil ,0.165 mg, 4.13 mmol, 1.1当量)を加えアルゴン雰囲気下、室温で30分間撹拌した。続いて1-chloro-2-deoxy-3,5-di-O-p-toluoyl-α-D-erythro-pentfuranose(2.041 g, 5.25 mmol, 1.4当量)を20分間かけてゆっくり加えた後、Ar雰囲気下、室温で2時間撹拌した。反応液を減圧留去し、残渣をジクロロメタン(150 mL)に溶かし、蒸留水(100 mL)で洗浄した。有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過し、ろ液を減圧留去した。これを、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(Silica gel 60,230-400mesh, 20〜33%酢酸エチル/ヘキサン)で精製した。さらに酢酸エチルに溶かし、ヘキサンを加えて生じた結晶を濾取し、白色粉末状の目的物10を得た。Rf値 0.40 [酢酸エチル/ヘキサン= 1/4]
収量 1.493 g(2.36 mmol) 収率 63%
1H NMR (300 MHz, CDCl3)
δ8.60 (1H, s, H-2), 7.95 (4H, m, toluoyl), 7.28 (4H, m, toluoyl),
6.79 (1H, t, J=7.0 Hz, H-1'), 5.75 (1H, m, H-3'), 4.71 (1H, m, H-4'),
4.61 (2H, m, H-5'), 2.78 (2H, m, H-2'), 2.42 (6H, m, toluoyl methyl)
ESI-MS(ポジティブ・モード) m/z [帰属]
Found:632.1, Calc.:631.04 [(M+H)+]
Found:654.1, Calc.:654.04 [(M+Na)+]
【0029】
7-Deaza -7-iodo-2'-deoxyadenosine11の合成
【化22】

ヌクレオシド10(500 mg, 0.791 mmol, F.W.631.85)を飽和アンモニアエタノール溶液に懸濁させ、耐圧容器中65℃で35時間撹拌し、反応液を減圧留去した。続いて、残渣をメタノール(39 mL)に溶かし、濃アンモニア水(37 mL)を加え室温で5時間撹拌した。反応液を減圧留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(Silica gel 60,230-400mesh,5〜10%メタノール/ジクロロメタン)で精製して白色粉末状の目的物11を得た。Rf値 0.31
[10%メタノール/ジクロロメタン]
収量 184 mg(0.489 mmol) 収率 61%
1H NMR (300 MHz, CD3OD)
δ8.03 (1H, s, H-2), 7.58 (1H, s, H-8), 6.50 (1H, t, J=6.3 Hz, H-1'),
4.49 (1H, m, H-3'), 3.98 (1H, m, H-4'), 3.74 (2H, m, H-5'), 2.59 (1H, m, H-2'),
2.32 (1H, m, H-2')
ESI-MS(ポジティブ・モード) m/z [帰属]
Found:377.2, Calc.:376.00 [(M+H)+]
Found:399.2, Calc.:399.00 [(M+Na)+]
【0030】
7-Deaza-7-(methoxycarbonylethenyl) -2'-deoxyadenosine12の合成
【化23】

ヌクレオシド11(389 mg, 1.03 mmol, F.W.376.15)をdry-DMF(6 mL)に溶かし、Arを10分間吹き込ませた後、メチルアクリレート(40 mL, 446 mmol,433当量)、ヨウ化銅(CuI, 41 mg, 0.215 mmol, 0.2当量)、トリフェニルホスフィンパラジウム(Pd(PPh3)4, 125mg, 0.108 mmol, 0.1当量)、トリエチルアミン(0.3 mL, 2.15 mmol, 2当量)を順に加え70℃で20時間撹拌した。反応液を減圧留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(Silica gel 60, 40〜50μm,2〜6%メタノール/酢酸エチル)で精製し、オイル状の目的物12を得た。Rf値 0.31 [10%メタノール/酢酸エチル]
収量 249 mg(0.745 mmol) 収率 72 %
1H NMR (300 MHz, CD3OD)
δ8.13 (1H, s, H-2), 7.99 (1H, s, H-8), 7.95 (1H, d, J=15.9 Hz, CH),
6.53 (1H, t, J=7.2 Hz, H-1'), 6.40 (1H, d, J=15.9 Hz, CH),
4.54 (1H, m, H-3'), 4.01 (1H, m, H-4'), 3.76 (5H, m, H-5' and OCH3),
2.63 (1H, m, H-2'), 2.37 (1H, m, H-2')
ESI-MS(ポジティブ・モード) m/z [帰属]
Found:335.1, Calc.:335.13 [(M+H)+]
Found:357.2, Calc.:357.13 [(M+Na)+]
【0031】
7-Deaza-7-(methoxycarbonylethenyl) -2'-deoxyadenosine-5'-triphosphate A4の合成
【化24】

ヌクレオシド12 (128 mg, 0.383 mmol, F.W.334.33)をDMF(6 mL)で2回、アセトニトリル(3 mL)で3回共沸し、3時間真空乾燥後、N,N,N',N'-テトラメチル-1,8-ナフタレンジアミン(Proton Sponge, 126mg, 0.588 mmol, 1.5当量)を一晩乾燥させた。これにリン酸トリメチル(2.9 mL)をアルゴン雰囲気下で加えて溶かした後、0℃に冷却した。塩化ホスホニル(58μL, 0.62 mmol, 1.6当量)を滴下し0℃で45分間撹拌した。さらにトリブチルアミン(0.34 mL, 1.4 mmol, 3.7当量 )と0.5Mピロリン酸トリブチルアンモニウムのDMF溶液(3.8 mL, 1.9 mmol, 5当量)を0℃で加え、反応液を室温に戻し1時間反応させた。1.0M炭酸水素トリエチルアンモニウム水溶液(pH8.0, 5mL)と水(5mL)を加えて反応を止め反応液を減圧留去した。続いて残渣を水に溶かしジエチルエーテルで2回洗浄し、水相をDEAE-Sephadex A-25カラムを用い、炭酸水素トリエチルアンモニウム水溶液(pH8.0)の塩濃度勾配(0.3〜1.0M)緩衝液により溶出した。これを高速液体クロマトグラフィーで精製し、目的物A4を得た。なお、収率は2'-デオキシアデノシン三リン酸のモル吸光係数(ε260 nm= 15300 mol-1L cm-1)を用いて計算した。
収量 3.30 OD260 nm(0.216 mmol) 収率 0.06 %
ESI-MS(ネガティブ・モード) m/z [帰属] Found:573.1, Calc.:573.3 [(M-H)-]
<HPLC>
カラム TSK-GEL(ODS-80Ts,φ20×250mm)
溶媒 A : 50mM TEAA 流速 8ml/min
B: 50mM TEAA 70%MeCN
【0032】
【表1】

【0033】
7-Deaza-7-[N-(6-trifluoroacetyamidohexyl)-carbonylethenyl]-2'-deoxyadenosine21の合成
【化25】

ヌクレオシド12(338 mg, 1.01 mmol, F.W.334.33)とDMAP(13 mg, 0.106 mmol, 0.1当量)を一晩真空乾燥し、1,6-diaminohexane(1.220 g, 10.5 mmol, 10当量)のdryメタノール(8 mL)溶液を加えて52℃で18時間還流した。反応が終了していなかったので、1,6-diaminohexane(548 mg, 4.72 mmol, 4.7当量)追加して17時間還流した。反応が終了していたので反応液を減圧留去した。次に、大量に含まれている1,6-diaminohexaneをできる限り除去するために、再沈殿を行った。残渣をメタノール(10 mL)に溶かし、氷冷下でジエチルエーテル(450 mL)を撹拌しているところに、ゆっくり滴下して沈殿を析出
させた。これを吸引ろ過し目的物を含む薄い褐色の粉を425 mg得た。
この粗生成物の粉(425 mg, 1.02 mmol, F.W.418.49)をメタノール(8 mL)に溶かし、トリエチルアミン(0.65 mL, 4.02 mmol, 4当量)とトリフルオロ酢酸エチル(1.2 mL,
10.1 mmol, 10当量)を加えて室温で13.5時間撹拌した。反応が終了していなかったので、トリフルオロ酢酸エチル(1.2 mL, 10.1 mmol, 10当量)を追加して室温で2.5時間撹拌した。反応液を減圧留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(Silica gel 60, 40〜50μm,1〜6%メタノール/クロロホルム)で精製し、薄い褐色の粉の目的物21を得た。Rf値 0.37 [20%メタノール/クロロホルム]
収量 70 mg(0.136 mmol) 収率 13 % (12からの収率)
目的物21はNMRとESI-MSで同定した。
1H NMR (300 MHz, CD3OD)
δ8.11 (1H, s, H-2), 7.80 (1H, s, H-8), 7.75 (1H, d, J=15.6 Hz, CH),
6.53 (1H, t, J=7.2 Hz, H-1'), 6.42 (1H, d, J=15.3 Hz, CH),
4.52 (1H, m, H-3'), 4.02 (1H, m, H-4'), 3.77 (2H, m, H-5'),
3.31 (4H, m, -CH2NH-), 2.66 (1H, m, H-2'), 2.35 (1H, m, H-2'),
1.58〜1.28 (8H, m, -CH2CH2CH2NH-)
ESI-MS(ポジティブ・モード) m/z [帰属]
Found:515.2, Calc.:515.22 [(M+H)+]
Found:537.3, Calc.:537.22 [(M+Na)+]
【0034】
7-Deaza-7-[N-(6-trifluoroacetyamidohexyl)-carbonylethenyl]-2'-deoxyadenosine-5'-triphosphate 22の合成
【化26】

ヌクレオシド12 (65 mg, 0.126 mmol, F.W.514.50)をDMF(6 mL)で2回、アセトニトリル(3 mL)で3回共沸し、3時間真空乾燥後、N,N,N',N'-テトラメチル-1,8-ナフタレンジアミン(Proton Sponge, 41mg, 0.189 mmol, 1.5当量)を一晩乾燥させた。これにリン酸トリメチル(0.9 mL)をアルゴン雰囲気下で加えて溶かした後、0℃に冷却した。塩化ホスホニル(19μL, 0.20 mmol, 1.6当量)を滴下し0℃で45分間撹拌した。さらにトリブチルアミン(0.12 mL, 0.50 mmol, 4.0当量 )と0.5Mピロリン酸トリブチルアンモニウムのDMF溶液(1.3 mL, 0.65 mmol, 5当量)を0℃で加え、反応液を室温に戻し1時間反応させた。1.0M炭酸水素トリエチルアンモニウム水溶液(pH8.0, 4mL)と水(4mL)を加えて反応を止め反応液を減圧留去した。続いて残渣を水に溶かしジエチルエーテルで2回洗浄し、水相をDEAE-Sephadex A-25カラムを用い、炭酸水素トリエチルアンモニウム水溶液(pH8.0)の塩濃度勾配(0.3〜1.0M)緩衝液により溶出した。これを高速液体クロマトグラフィーで精製し、目的物22を得た。なお、収率は2'-デオキシアデノシン三リン酸のモル吸光
係数(ε260 nm= 15300 mol-1L cm-1)を用いて計算した。
収量 10.9 OD260 nm(7.12×10-7mol) 収率 0.6 %
ESI-MS(ネガティブ・モード) m/z [帰属]
Found:753.1, Calc.:753.11 [(M-H)-]
<HPLC条件>
カラム TSK-GEL(ODS-80Ts,φ20×250mm)
溶媒 A : 50mM TEAA 流速 8ml/min
B: 50mM TEAA 70%MeCN
【0035】
【表2】

【0036】
7-Deaza-7-[N-(6-amidohexyl)-carbonylethenyl]-2'-deoxyadenosine-5'-triphosphate 23の合成
【化27】

ヌクレオチド22(360μL, 3.9 OD260nm, 2.55×10-7 mol,F.W.754.44)に4Nアンモニア水(360μL)を加え室温で3.5時間撹拌した。反応終了後、反応液を減圧留去し残渣を高速液体クロマトグラフィーによって精製し目的物23を収率47%で1.82 OD260nm得た。なお、収率は2'-デオキシアデノシン三リン酸のモル吸光係数(ε260 nm= 15300 mol-1L cm-1)を用いて計算した。
収量 1.82 OD260 nm(1.19×10-7 mol) 収率 47%
ESI-MS(ネガティブ・モード) m/z [帰属]
Found:657.0, Calc.:657.13 [(M-H)-]
<HPLC条件>
カラム Wakosil 5C18(φ4.6×250mm)
溶媒 A : 50mM TEAA 流速 1ml/min
B: 50mM TEAA 70%MeCN
【0037】
【表3】

【0038】
<1-3>修飾7-デアザグアノシンの合成
2-Amino-6-chloro-7-deazaguanine 14の合成
【化28】

7-デアザグアニン13(1.00 g, 6.66 mmol, F.W.150.10)を塩化ホスホリル(80 mL, 883 mmol, 133当量)に懸濁させ、ジメチルアニリン(0.2 mL, 1.58 mmol, 0.2当量)を加えて115℃で1.5時間還流した。反応液を減圧留去し、氷と冷水でクエンチした。生じた沈殿を吸引ろ過し、ろ液に濃アンモニア水を滴下して結晶を析出させ、一晩室温で静置した。結晶を濾取し、目的物14を得た。ろ液は酢酸エチルで抽出し、有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過し、ろ液を減圧留去した。この残渣をヘキサンで洗浄し、ジメチルアニリンを除去し、目的物14を得た。
Rf値 0.46 [10%メタノール/ジクロロメタン]
収量 0.639 g(5.71 mmol) 収率 86 %
1H NMR (300 MHz, CD3OD)
δ7.02 (1H, d, J=3.6 Hz, H-8), 7.62 (1H, d,J=3.6 Hz, H-7)
ESI-MS(ポジティブ・モード) m/z [帰属]
Found:169.0, Calc.:169.0 [(M+H)+]
Found:191.1, Calc.:191.0 [(M+Na)+]
【0039】
2-Pivaloylamino-6-chloro-7-deazaguanine 15の合成
【化29】

化合物14(0.960 g, 5.70 mmol, F.W.168.52)をdryピリジン(8.4 mL)に懸濁させ、塩化ピバロイル(0.9 mL,7.4 mmol, 1.3当量)を加え、アルゴン雰囲気下、室温で4.5時間撹拌した。さらに、塩化ピバロイル(0.2 mL,1.7 mmol, 0.3当量)を追加して室温で1時間撹拌した。反応液を減圧留去した後、蒸留水を加えて懸濁させ減圧留去した。これを3回繰り返した。この残渣に冷水を加えて懸濁させ、ろ過し、赤紫色の目的物15を得た。Rf 値 0.60 [5%メタノール/クロロホルム]
収量 1.191 g(4.71 mmol) 収率 83 %
1H NMR (300 MHz, CDCl3)
δ11.75 (1H, s, N(9)-H), 8.21 (1H, s, N(2)-H), 7.50 (1H, m, H-8),
6.53 (1H, m, H-7), 1.39 (9H, s, pivaloyl methyls)
ESI-MS(ポジティブ・モード) m/z [帰属]
Found:253.3, Calc.:253.0 [(M+H)+]
Found:275.3, Calc.:275.0 [(M+Na)+]
【0040】
2-Pivaloylamino-6-chloro-7-deaza-7-iodoguanine 16の合成
【化30】

化合物15(1.877 g, 7.43 mmol, F.W.252.70)をdryDMF(11mL)に懸濁させ、N-ヨードスクシンイミド(1.674 g, 7.44 mmol, 1当量)をdryDMF(7.5mL)に溶かして加えた。これをアルゴン雰囲気下、室温で2時間撹拌した後、反応液を減圧留去した。この残渣に冷水(30 mL)を入れ、生じた沈殿をろ過し、黄褐色粉末状の目的物16を得た。Rf値 0.71 [5%メタノール/クロロホルム]
収量 2.741 g(7.24 mmol) 収率 97 %
1H NMR(300 MHz, CDCl3
δ11.87 (1H, s, N(9)-H), 8.23 (1H, s, N(2)-H), 7.58 (1H, d, J=2.7 Hz, H-8),
1.38 (9H, s, pivaloyl methyl)
ESI-MS(ポジティブ・モード) m/z [帰属]
Found:379.1, Calc.:378.9 [(M+H)+]
Found:401.1, Calc.:400.9 [(M+Na)+]
【0041】
3',5'-Di-O-(4-toluoyl)-N2-pivaloyl-6-chloro-7-deaza-7-iodo-2'-deoxyguanosine 17
の合成
【化31】

化合物16(1.343 g,3.55 mmol, F.W.378.60)をdry アセトニトリル(24 mL)に懸濁させ、水素化ナトリウム(60% in oil ,0.365 g, 9.13 mmol, 2.6当量)を加えアルゴン雰囲気下、室温で10min撹拌し、48℃で30秒加熱した後、室温まで冷ました。続いて、1-chloro-2-deoxy-3,5-di-O-p-toluoyl-α-D-erythro-pentfuranose(1.548 g, 3.98 mmol, 1.1当量)を加えて室温で4時間撹拌した。反応が終了していなかったので1-chloro-2-deoxy-3,5-di-O-p-toluoyl-α-D-erythro-pentfuranose(0.270g,0.694 mmol, 0.2当量)加えて17時間撹拌した。反応液を濾過して沈殿物を除去し、ろ液を減圧留去した。残渣をクロロホルムに溶かし、冷飽和NaHCO3、冷食塩水、冷水で洗浄した。有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過してろ液を減圧留去した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(Silica gel 60, 40〜50μm, クロロホルム/ヘキサン=9/1)で精製した。さらに、メタノールから結晶を析出させて、白色粉末状の目的物17を得た。Rf値 0.71 [酢酸エチル/ヘキサン= 1/2]
収量 0.666 g(0.911 mmol) 収率 26 %
1H NMR(300 MHz, CDCl3
δ8.15 (1H, s, N(2)-H), 7.94 (4H, m, toluoyl), 7.41 (1H, s, H-8),
7.25 (4H, m, toluoyl), 6.73 (1H, t, J=6.0 Hz, H-1'), 5.77 (1H, m, H-3'),
4.69 (2H, m, H-5'), 4.56 (2H, m, H-4'), 2.85 (2H, m, H-2'),
2.43 (6H, 2s, toluoyl methyl), 1.32 (9H, s, pivaloyl methyl)
ESI-MS(ポジティブ・モード) m/z [帰属]
Found:731.2, Calc.:731.1 [(M+H)+]
Found:753.2, Calc.:753.2 [(M+Na)+]
【0042】
3',5'-Di-O-(4-toluoyl)-6-chloro-7-deaza-7-[2-(methoxycarbonyl)ethenyl]-N2-pivaloyl- 2'-deoxyguanosine 18の合成
【化32】

ヌクレオシド17(575 mg, 0.784 mmol, F.W.730.98)をdryDMF(7.8 mL)に溶かし、この溶液にアルゴンを10分間吹き込ませた。この溶液に、メチルアクリレート(29 mL, 323
mmol, 412当量)、ヨウ化銅(299 mg, 1.57 mmol, 2当量)、トリフェニルホスフィンパラジウム(Pd(PPh3)4, 905 mg, 0.783 mmol, 1当量)、トリエチルアミン(0.34 mL, 2.44 mmol, 3当量)を順に加え70℃で3時間撹拌した。反応液を減圧留去し、残渣をCH2Cl2(120 mL)に懸濁させ、飽和重ソウ水、飽和食塩水、蒸留水でそれぞれ1回ずつ洗浄した。有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過し、ろ液を減圧留去した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(Silica gel 60, 40-50μm,2〜8%酢酸エチル/クロロホルム)で精製し、白色粉末状の目的物18を得た。Rf値 0.51 [ジクロロメタン/酢酸エチル= 9/1]
収量 402 mg(0.584 mmol) 収率 74 %
1H NMR(300 MHz, CDCl3
δ8.16 (1H, s, N(2)-H), 8.07 (1H, d, J=15.0 Hz, CH), 7.94 (4H, m, toluoyl),
7.61 (1H, s, H-8), 7.27 (4H, m, toluoyl), 6.77 (1H, t, J=6.0 Hz, H-1'),
5.96 (1H, d, J=15.9 Hz, CH), 5.81 (1H, m, H-3'), 4.80 (2H, m, H-4'),
4.63 (2H, m, H-5'), 3.80 (3H, s, OCH3), 2.88 (2H, m, H-2'),
2.43 (6H, 2s, toluoyl methyl), 1.34 (9H, s, pivaloyl methyl)
ESI-MS(ポジティブ・モード) m/z [帰属]
Found:689.1, Calc.:689.2 [(M+H)+]
Found:711.1, Calc.:711.2 [(M+Na)+]
【0043】
7-Deaza-O6-methoxy-7-[2-(methoxycarbonyl)ethenyl]-N2-pivaloyl-2'-deoxyguanosine 19の合成
【化33】

ヌクレオシド18(172 mg, 0.250 mmol, F.W.689.15)を0.5 N NaOMeメタノール溶液(1.5 mL, 0.78 mmol, 3当量)に懸濁させ、77℃で1時間還流した。反応終了後、氷冷下で反応液(pH 9)を6 N 塩酸で中和し(pH 6)、これを減圧留去した。残渣に2-プロパノール(2 mL)加えて懸濁させた後、減圧留去した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(Silica gel 60, 40〜50μm, 1〜5%メタノール/ジクロロメタン)で精製し、目的物19を得た。Rf値 0.49 [10%メタノール/ジクロロメタン]
収量 68 mg(0.19 mmol) 収率 76 %
1H NMR(300 MHz, CD3OD)
δ7.73 (1H, d, J=15.6 Hz, CH), 7.55 (1H, s, H-8), 6.64 (1H, d, J=15.9 Hz, CH),
6.39 (1H, t, J=6.6 Hz, H-1'), 4.50 (1H, m, H-3'), 4.05 (3H, s, O(6)CH3),
3.97 (2H, m, H-4'), 3.75 (5H, m, H-5' and OCH3), 2.60 (1H, m, H-2'),
2.30 (1H, m, H-2')
ESI-MS(ポジティブ・モード) m/z [帰属]
Found:365.2, Calc.:365.1 [(M+H)+]
Found:387.2, Calc.:387.1 [(M+Na)+]
【0044】
7-Deaza-7-[2-(methoxycarbonyl)ethenyl]-N2-pivaloyl-2'-deoxyguanosine 20の合成
【化34】

ヌクレオシド19(94 mg, 0.21 mmol, F.W.448.47)をdryアセトニトリル(23.5 mL)に懸濁させ、ヨウ化ナトリウム(70 mg, 0.47 mmol, 2.2当量)と塩化トリメチルシラン(64μL, 0.51 mmol, 2.4当量)を加えアルゴン雰囲気下、室温で1時間撹拌した。さらに92℃で2時間還流し、反応液を減圧留去した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(Silica gel 60, 40-50μm, 0.5〜10%メタノール/ジクロロメタン)で精製し、黄色粉末状の目的物20(F.W.434.44)を得た。
Rf値 0.37 [10%メタノール/ジクロロメタン]
収量 53 mg(0.12 mmol) 収率 57 %
1H NMR(300 MHz, CD3OD)
δ7.73 (3H, d, H-8 and CH), 7.18 (1H, d, J=15.6 Hz, CH),
6.54 (1H, t, J=6.9 Hz, H-1'), 4.48 (1H, m, H-3'), 3.94 (2H, m, H-4'),
3.74 (5H, m, H-5' and OCH3), 2.46 (1H, m, H-2'), 2.34 (1H, m, H-2')
ESI-MS(ポジティブ・モード) m/z [帰属]
Found:435.3, Calc.:435.1 [(M+H)+]
Found:457.3, Calc.:457.1 [(M+Na)+]
【0045】
<2>PCRにおける基質特性
<2-1>使用機器および試剤
PCR 増幅装置 TECHNE Progege
TECHNE Techgene
電気泳動装置 コスモバイオ Mupid-2
コスモバイオ Mupid-21
解析装置 BIO-RAD Molecular Imager FX PRO
PCRに使用した酵素等は以下のものを使用した。
pUC18 DNA(鋳型) 宝酒造
Primer 1,2(配列番号1,2) 北海道システム・サイエンス
100 bp DNA Ladder Bio Labs
Vent(exo-) DNA polymerase Bio Labs
KOD Dash DNA polymerase 東洋紡
Taq DNA polymerase 宝酒造
Tth DNA polymerase 東洋紡
【0046】
<2-2>PCR条件
修飾基質A1,A2,A3を用いたPCRの反応溶液は、表4、表5に従ってそれぞれ調製し、表6の温度条件でPCRを行った。結果を図1に示した。
【0047】
【表4】

【0048】
【表5】

【0049】
【表6】

【0050】
2種類の修飾基質(A2とT1or T2, A3とC1 or C2)或いは3種類の修飾基質(A2とT1とC1, A3とT2とC2)を同時に使用し、DNAポリメラーゼにVent(exo-)を用いたPCRの反応液は、表7に従って調製し、表6の温度条件でPCRを行った。また、2種類の修飾基質(A2とT1or T2, A3とC1 or C2)或いは3種類の修飾基質(A2とT1とC1, A3とT2とC2)を同時に使用し、DNAポリメラーゼにKOD Dashを用いたPCRの反応液は、表8に従って調製し、表6の温度条件でPCRを行った。結果を図2に示した。
【0051】
【表7】

【0052】
【表8】

【0053】
<2-3>ゲル電気泳動によるPCR生成物の確認
PCR終了後、反応液(20μL)に色素液(1mM EDTA , 0.25%キシレンシアノール, 30%グリセロール)2μLを加え、遠心とボルテックスで均一な溶液にし、その内10μLを2%アガロースゲル電気泳動(0.5×TBE buffer, 100V, 45 分間)させた後、5μg/mL臭化エチジウム水溶液で50分間染色し、解析装置(BIO-RAD Molecular Imager FX PRO)によって確認した。
【0054】
dATPアナログA2はいずれのポリメラーゼにも良い基質として認識され、対応する生成物を与えた。また、修飾基質A3はDNAポリメラーゼにKOD Dashを用いた場合、副生成物が見られた(図1 レーン20)。一方、A1はKOD Dashを除くいずれのDNAポリメラーゼの基質にならなかったが、KOD Dashには認識され、対応するPCR産物が生成した。
PCRにおいて最も基質特性が優れていたA2を用いて二重修飾DNAおよび三重修飾DNAのPCRによる調製を行ったところ、全ての組み合わせにおいて、多重修飾DNAが生成した(図2)。
【0055】
<3>修飾7-デアザアデノシン三リン酸の合成〜その2
7-Deaza-7-(methoxycarbonylethyl) -2'-deoxyadenosine 24の合成
【化35】

ナスフラスコに乾燥させたヌクレオシド12(262 mg, 0.784 mg)をMeOH(70 mL)に溶かした後、PtO2(5mg)を加えて撹拌し、さらに水素ガスを吹き込み、室温で1時間反応させた。反応終了後、反応液をろ過して、濾液を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラム(MeOH:CH2Cl2=1:9)で精製した。
収量 146 mg(0.435 mmol) 収率 55 %
1H NMR (300 MHz, CD3OD)
δ8.04 (1H, s, H-2), 7.13 (1H, s, H-8), 6.47 (1H, t, H-1'),
4.52 (1H, m, H-3'), 4.00 (1H, m, H-4'), 3.75 (2H, m, H-5'),
3.68 (3H, s, -OMe), 3.08 (2H, t, -CH2-), 2.68 (2H, t, -CH2-),
2.63 (1H, m, H-2'), 2.27 (1H, m, H-2')
ESI-MS(ポジティブ・モード) m/z [帰属]
Found:337.2, Calc.:337.14 [(M+H)+]
Found:359.0, Calc.:559.14 [(M+Na)+]
【0056】
7-Deaza-7-(methoxycarbonylethyl) -2'-deoxyadenosine-5'-triphosphate 25の合成
【化36】

ヌクレオシド24(145 mg, 0.432 mmol, F.W.336)とDMAP(5.3 mg, 0.0432 mmol, 0.1当量)を一晩真空乾燥し、1,6-diaminohexane(0.502 g, 1.07 mmol, 10当量)のdryメタノール(3.5 mL)溶液を加えて52℃で15時間還流した。反応が終了していなかったので、1,6-diaminohexane(251 mg, 0.535 mmol, 5当量)追加して24時間還流した。反応が終了していたので反応液を減圧留去した。この粗生成物の粉(1.01 g, 2.4 mmol, F.W.420)をメタノール(20 mL)に溶かし、トリエチルアミン(0.97 mL, 9.6 mmol, 4当量)とトリフルオロ酢酸エチル(3.4 mL, 24 mmol, 10当量)を加えて室温で4時間撹拌した。反応液を減圧留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(Silica gel 60, 40〜50μm,5〜11%メタノール/クロロホルム)で精製し、目的物25を得た。
収量 203 mg(0.432 mmol) 収率 91 % (12からの収率)
目的物25はNMRとESI-MSで同定した。
1H NMR (300 MHz, CD3OD)
δ8.09 (1H, s, H-2), 7.26 (1H, s, H-8), 6.53 (1H, t, H-1'),
4.50 (1H, m, H-3'), 3.99 (1H, m, H-4'), 3.72 (2H, m, H-5'),
3.31-3.06 (4H, m, -CH2NH-), 3.08 (2H, t, -CH2-), 2.54 (1H, m, H-2'),
2.53 (2H, t, -CH2-), 2.29 (1H, m, H-2'), 1.61-1.23(8H, m, -CH2CH2CH2NH-)
ESI-MS(ポジティブ・モード) m/z [帰属]
Found:517.2, Calc.:516.23 [(M+H)+]
Found:539.2, Calc.:539.23 [(M+Na)+]
【0057】
7-Deaza-7-[N-(6-trifluoroacetyamidohexyl)-carbonylethyl]-2'-deoxyadenosine-5'-triphosphate 26の合成
【化37】

ヌクレオシド25 (106 mg, 0.205 mmol, F.W.516)をDMF(6 mL)で2回、アセトニトリル(3 mL)で3回共沸し、3時間真空乾燥後、N,N,N',N'-テトラメチル-1,8-ナフタレンジアミン(Proton Sponge, 66mg, 0.308 mmol, 1.5当量)を一晩乾燥させた。これにリン酸トリメチル(1.47 mL)をアルゴン雰囲気下で加えて溶かした後、0℃に冷却した。塩化ホスホニル(31μL, 0.33 mmol, 1.6当量)を滴下し0℃で45分間撹拌した。さらにトリブチルアミン(0.197 mL, 0.82 mmol, 4.0当量 )と0.5Mピロリン酸トリブチルアンモニウムのDMF溶液(2.12 mL, 1.03 mmol, 5当量)を0℃で加え、反応液を室温に戻し1時間反応させた。1.0M炭酸水素トリエチルアンモニウム水溶液(pH8.0, 4mL)と水(4mL)を加えて反応を止め反応液を減圧留去した。続いて残渣を水に溶かしジエチルエーテルで2回洗浄し、水相をDEAE-Sephadex A-25カラムを用い、炭酸水素トリエチルアンモニウム水溶液(pH8.0)の塩濃度勾配(0.3〜1.0M)緩衝液により溶出した。これを高速液体クロマトグラフィーで精製し、目的物26を得た。なお、収率は2'-デオキシアデノシン三リン酸のモル吸光係数(ε260 nm= 15300 mol-1L cm-1)を用いて計算した。
収量 89.9 OD260 nm(5.88×10-6mol) 収率 3 %
ESI-MS(ネガティブ・モード) m/z [帰属]
Found:755.2, Calc.:755.13 [(M-H)-]
<HPLC条件>
カラム TSK-GEL(ODS-80Ts,φ20×250mm)
溶媒 A : 50mM TEAA 流速 8ml/min
B: MeCN
【0058】
【表9】

【0059】
7-Deaza-7-[N-(6-amidohexyl)-carbonylethyl]-2'-deoxyadenosine-5'-triphosphate 27の合成
【化38】

ヌクレオチド26を含む水溶液(830μL, 74.6 OD260nm, 4.90×10-6 mol, F.W.756)に4Nアンモニア水(5 mL)を加え室温で2時間撹拌した。反応終了後、反応液を減圧留去し残渣を高速液体クロマトグラフィーによって精製し目的物27を収率97%で72.0 OD260nm得た。なお、収率は2'-デオキシアデノシン三リン酸のモル吸光係数(ε260 nm= 15300 mol-1L cm-1)を用いて計算した。
収量 72.0 OD260 nm(4.71×10-6 mol) 収率 97%
ESI-MS(ネガティブ・モード) m/z [帰属]
Found:658.9, Calc.:659.15 [(M-H)-]
<HPLC条件>
カラム TSK-GEL(ODS-80Ts,φ20×250mm)
溶媒 A : 50mM TEAA 流速 8ml/min
B: MeCN
【0060】
【表10】

【0061】
7-Deaza-7-[N-(6-guanidinumhexyl)-carbonylethyl]-2'-deoxyadenosine-5'-triphosphate 28の合成
【化39】

乾燥させたヌクレオシド27(35 OD260nm, 2.33×10-6 mol, F.W.660)に1 M エチルチ
オウレアのDMF溶液(513μL, 5.13×10-6 mol, 220当量)およびトリエチルアミン(143μL, 440当量)を加え、室温で3時間撹拌した。反応液を減圧留去し、残渣を高速液体クロマトグラフィーで精製し、目的物28を収率51%で得た。なお、収率は2'-デオキシアデノシン三リン酸のモル吸光係数(ε260 nm= 15300 mol-1L cm-1)を用いて計算した。
収量 17.9 OD260 nm(1.17×10-6mol) 収率 51 %
ESI-MS(ネガティブ・モード) m/z [帰属]
Found:701.3, Calc.:701.17 [(M-H)-]
<HPLC条件>
カラム TSK-GEL(ODS-80Ts,φ20×250mm)
溶媒 A : 50mM TEAA 流速 8ml/min
B: MeCN
【0062】
【表11】

【0063】
<4>PCRにおける基質特性
<4-1>使用機器および試剤
PCR 増幅装置 TECHNE Progege
TECHNE Techgene
電気泳動装置 コスモバイオ Mupid-2
コスモバイオ Mupid-21
解析装置 BIO-RAD Molecular Imager FX PRO
PCRに使用した酵素等は以下のものを使用した。
pUC18 DNA(鋳型) 宝酒造
Primer 1,2(配列番号1,2) 北海道システム・サイエンス
100 bp DNA Ladder Bio Labs
KOD Dash DNA polymerase 東洋紡
【0064】
<4-2>PCR条件
修飾基質26,27,28を用いたPCRの反応溶液は、表12、表13に従ってそれぞれ調製し、表14の温度条件でPCRを行った。
【0065】
【表12】

【0066】
【表13】

【0067】
【表14】

【0068】
<4-3>ゲル電気泳動によるPCR生成物の確認
PCR終了後、反応液(20μL)に色素液(1mM EDTA , 0.25%キシレンシアノール, 30%グリセロール)2μLを加え、遠心とボルテックスで均一な溶液にし、その内10μLを2%アガロースゲル電気泳動(0.5×TBE buffer, 100V, 45 分間)させた後、5μg/mL臭化エチジウム水溶液で50分間染色し、解析装置(BIO-RAD Molecular Imager FX PRO)によって確認した。
結果を図3に示した。dATPアナログ26,27,28はKOD Dash DNAポリメラーゼにも良い基質として認識され、対応する生成物を与えた。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の7位置換デアザデオキシアデノシン誘導体を用いたポリヌクレオチドの合成を示す図(一部写真)。(A)は用いたアデノシン誘導体の構造を示す。TfaはCF3CO-を意味している。(B)は各種DNAポリメラーゼを用いたときの増幅結果を示す。Mは分子量マーカーを示す。
【図2】本発明の7位置換デアザデオキシアデノシン誘導体(A2)とともに、各種既知のデオキシシチジン誘導体またはデオキシウリジン誘導体を用いてポリヌクレオチドを合成した結果を示す図(一部写真)。
【図3】本発明の7位置換デアザデオキシアデノシン誘導体(26,27,28)を用いてポリヌクレオチドを合成した結果を示す図(写真)。POS:ポジティブコントロール、NEG:ネガティブコントロール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I-1)または(I-2)で表される7位置換デアザデオキシアデノシン誘導体。
【化1】

式中、Rは、−OR1又は−NH−(CH2)n−NR23を示し、ここで、nは2〜10の整数であり、R1はアルキル基であり、R2、R3はそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、−COCF3基、−COCH3基、カルボニルメチルイミダゾール基、−C(=NH)NH2、ビオチニル基、各種アミノ酸をアミド結合を介して結合させたもの、又は−(CH22N[(CH22NH22基から選ばれる置換基である。
【請求項2】
下記一般式(II-1)または(II-2)で表される7位置換デアザデオキシグアノシン誘導体。
【化2】

式中、Rは、−OR1又は−NH−(CH2)n−NR23を示し、ここで、nは2〜10の整数であり、R1はアルキル基であり、R2、R3はそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、−COCF3基、−COCH3基、カルボニルメチルイミダゾール基、−C(=NH)NH2、ビオチニル基、各種アミノ酸をアミド結合を介して結合させたもの、又は−(CH22N[(CH22NH22基から選ばれる置換基である。
【請求項3】
請求項1に記載の7位置換デアザデオキシアデノシン誘導体のヌクレオチド残基を含むポリヌクレオチド。
【請求項4】
請求項2に記載の7位置換デアザデオキシグアノシン誘導体のヌクレオチド残基を含むポリヌクレオチド。
【請求項5】
請求項1に記載の7位置換デアザデオキシアデノシン誘導体または請求項2に記載の7位置換デアザデオキシグアノシン誘導体を含む、修飾ポリヌクレオチド合成用基質溶液。
【請求項6】
請求項5に記載の修飾ポリヌクレオチド合成用基質溶液を含む、修飾ポリヌクレオチド合成用試薬。
【請求項7】
請求項1に記載の7位置換デアザデオキシアデノシン誘導体及び請求項2に記載の7位置換デアザデオキシグアノシン誘導体の少なくとも一方を基質に用いて、修飾ポリヌクレオチドを製造する方法。
【請求項8】
請求項1に記載の7位置換デアザデオキシアデノシン誘導体又は請求項2に記載の7位置換デアザデオキシグアノシン誘導体に標識物質を導入することによって得られた標識核酸を用いて標識ポリヌクレオチドを製造する方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2007−56001(P2007−56001A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−71549(P2006−71549)
【出願日】平成18年3月15日(2006.3.15)
【出願人】(504145364)国立大学法人群馬大学 (352)
【Fターム(参考)】