説明

新規構造制御剤を使用してCHA型モレキュラーシーブを調製する方法

本発明は、少なくとも1種の陽イオン性1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン系構造制御剤を少なくとも1種の陽イオン性環状窒素含有構造制御剤と組み合わせて使用する、CHA型モレキュラーシーブを調製する方法を対象とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種の陽イオン性1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン系構造制御剤(structure directing agent)を、少なくとも1種の陽イオン性環状窒素含有構造制御剤と組み合わせて使用する、CHA型モレキュラーシーブを調製する方法を対象とする。
【背景技術】
【0002】
モレキュラーシーブは実用的に重要な種類の結晶性材料である。これらは、明瞭なX線回折パターンによって示される規則的な孔構造をもつ明瞭な結晶構造を有する。結晶構造は、相異なる化学種の特徴である空洞(cavities)及び孔(pores)を規定する。
【0003】
国際ゼオライト協会(International Zeolite Associate)(IZA)により構造コードCHAを有するものとして識別されるモレキュラーシーブは公知である。例えば、SSZ−13として知られているモレキュラーシーブは、公知の結晶性CHA材料である。これは1985年10月1日付けで発行されたZonesの米国特許第4,544,538号に開示されている。この特許において、SSZ−13モレキュラーシーブは、SDAとしてN−アルキル−3−キヌクリジノール陽イオン、N,N,N−トリアルキル−1−アダマントアンモニウム陽イオン、及び/又は、N,N,N−トリアルキル−2−エキソアミノノルボルナン陽イオンの存在下で調製される。
【0004】
2007年12月13日に公開されたCaoらの米国特許出願公開第2007/0286798号は、N,N,N−トリメチル−2−アダマントアンモニウム陽イオンを包含する様々なSDAを使用するCHA型モレキュラーシーブの調製を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、これらのSDAは複雑で高価であり、これらのSDAを使用するCHA型モレキュラーシーブの合成を複雑で高価にする。このコストは、実用的方法においてCHA型モレキュラーシーブの有用性を限定し得るものである。したがって、CHA型モレキュラーシーブの合成において、これらの高価なSDAの使用を低減する又はなくす方法を見出すことが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
CHA型モレキュラーシーブは、これらの複雑で高価なSDAの部分的な代替品として、陽イオン性1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン系構造制御剤を使用して調製することができることが、ここで見出された。
【0007】
本発明によれば、(1)四価元素の少なくとも1種の酸化物の少なくとも1種の供給源、(2)場合によって、三価元素の酸化物、五価元素の酸化物及びこれらの混合物からなる群から選択される1種又は複数の酸化物の1種又は複数の供給源、(3)周期表の1及び2族から選択される元素の少なくとも1種の供給源、(4)水酸化物イオン、(5)少なくとも1種の陽イオン性1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン系SDA、及び(6)少なくとも1種の陽イオン性環状窒素含有SDAを、結晶化条件下で接触させることによるCHA型モレキュラーシーブを調製する方法が、提供される。
【0008】
本発明はまた、
(a)(1)四価元素の少なくとも1種の酸化物の少なくとも1種の供給源、(2)場合によって、三価元素の酸化物、五価元素の酸化物及びこれらの混合物からなる群から選択される1種又は複数の酸化物の1種又は複数の供給源、(3)周期表の1及び2族から選択される元素の少なくとも1種の供給源、(4)水酸化物イオン、(5)少なくとも1種の陽イオン性1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン系SDA、(6)少なくとも1種の陽イオン性環状窒素含有SDA、及び(7)水を含む反応混合物を調製すること;並びに
(b)CHA型モレキュラーシーブの結晶を形成するのに十分な条件下で反応混合物を維持すること
によってCHA型モレキュラーシーブを調製する方法を包含する。
【0009】
形成されたモレキュラーシーブが中間素材である場合、本発明の方法は、目標モレキュラーシーブを達成するためにさらなるポスト結晶化加工(例えば、ポスト合成ヘテロ原子格子置換又は酸浸出による)を包含する。
【0010】
本発明はまた、以下のような合成したままの、モル比で無水状態の組成を有するCHA型モレキュラーシーブを提供する。
【表1】


ここで、
(1)Tは、周期表の4〜14族からの四価元素及びこれらの混合物からなる群から選択され、
(2)Xは、周期表の3〜13族からの三価及び五価元素及びこれらの混合物からなる群から選択され、
(3)化学量論可変項(stoichiometric variable)bは、組成可変項Xの原子価状態と等しく(例えば、Xが三価の場合、b=3;Xが五価の場合、b=5である)、
(4)Mは、周期表の1及び2族からの元素からなる群から選択され、
(5)Qは、少なくとも1種の陽イオン性1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン系SDAであり、また
(6)Aは、少なくとも1種の陽イオン性環状窒素含有SDAである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】例3において調製された合成したままのモレキュラーシーブの粉体X線回折(XRD)分析の結果を示す図である。
【図2】例3において調製された、か焼したモレキュラーシーブの粉体XRD分析の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明の詳細な説明
序論
用語「周期表」は、IUPACの元素周期表の2007年6月22日付けの版を指す。また、周期表の族についての番号付け体系は、Chemical and Engineering News、63(5)、27(1985)に記載されている通りである。
【0013】
用語「モレキュラーシーブ」は、(a)中間体、及び(b)(1)直接合成又は(2)ポスト結晶化処理(二次的合成)により製造される最終又は目標のモレキュラーシーブ及びゼオライトを含む。二次的合成技法は、ヘテロ原子格子置換又は他の技法によって、中間素材から目標材料への合成を可能にする。例えば、アルミノケイ酸塩は、BをAlにポスト結晶化ヘテロ原子格子置換することにより中間体ホウケイ酸塩から合成することができる。そのような技法は知られており、例えば、2004年9月14日に発行された、C.Y.Chen及びStacey Zonesの米国特許第6,790,433号に記載されている。
【0014】
状況が許せば、本出願において引用されたすべての刊行物、特許及び特許出願は、そのような開示が本発明と矛盾しない限り、それらの全体が引用により本明細書に包含される。
【0015】
別段の記載がない限り、個別の成分又は成分の混合物を選択することができる元素、物質又は他の成分の種類の記載は、リストされた成分及びそれらの混合物のあらゆる可能な亜種の組合せを含有するように意図される。また、「包含する」(“include”)及びその変形は、リスト中の項目の記載が、本発明の物質、組成及び方法にもまた有用であり得る他の類似の項目を排除しないように、非限定的とするように意図される。
【0016】
本発明は、陽イオン性1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン系構造制御剤(「SDA」)を陽イオン性環状窒素含有SDAと組み合わせて使用するCHA型モレキュラーシーブを得る方法を対象とする。
【0017】
一実施形態において、陽イオン性1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン系SDAは、N−アルキル−1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンカチオン、N,N’−ジアルキル−1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンジカチオン及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0018】
N−アルキル−1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンカチオン及びN,N’−ジアルキル−1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンジカチオンは、構造(1)及び(2):
【化1】


[式中、RからRは、C〜Cアルキル基からなる群からそれぞれ独立して選択される。]
によってそれぞれ表される。一副実施形態において、各R〜Rはメチル基である。
【0019】
別の実施形態において、陽イオン性1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン系SDAは、N−アルキル−1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンカチオン及びN,N’−ジアルキル−1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンジカチオンからなる群から選択される。
【0020】
本発明の一実施形態において、陽イオン性環状窒素含有SDAは、構造(3)から(17):
【化2−1】


【化2−2】


【化2−3】


【化2−4】


[式中、RからR52は、C〜Cアルキル基からなる群からそれぞれ独立して選択される。]
によって表される以下のSDA及びこれらの混合物からなる群から選択されるSDAである。一副実施形態において、R〜R52の各々はメチル基である。別の副実施形態において、R〜R30及びR32〜R52の各々はメチル基であり、R31はエチル基である。
【0021】
SDAカチオンは、モレキュラーシーブの形成を損なわない任意のアニオンであってよいアニオンと組み合わせる。代表的なアニオンは、周期表の17族から選択される元素、水酸化物、アセテート、スルフェート、テトラフルオロボレート及びカルボキシレートを包含する。水酸化物は最も好ましいアニオンである。SDAは反応混合物に水酸化物イオンを与えるために使用することができる。したがって、例えばハロゲン化物を水酸化物対イオンへイオン交換することは有益である。
【0022】
反応混合物
一般に、CHA型モレキュラーシーブは、
(a)(1)四価元素の少なくとも1種の酸化物の少なくとも1種の供給源、(2)場合によって、三価元素、五価元素の酸化物及びこれらの混合物からなる群から選択される1種又は複数の酸化物の1種又は複数の供給源、(3)周期表の1及び2族から選択される元素の少なくとも1種の供給源、(4)水酸化物イオン、(5)少なくとも1種の陽イオン性1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン系SDA、(6)少なくとも1種の陽イオン性環状窒素含有SDA、及び(7)水を含む反応混合物を調製すること、並びに
(b)CHA型モレキュラーシーブの結晶を形成するのに十分な条件下で反応混合物を維持すること
によって調製される。
【0023】
形成されるモレキュラーシーブが中間素材である場合、本発明の方法は、ヘテロ原子格子置換技法及び酸浸出などのポスト合成技法によって目標モレキュラーシーブを合成するさらなるステップを包含する。
【0024】
CHA型モレキュラーシーブが形成される反応混合物の組成は、モル比に関して、下記表1に識別される。
【表2】


ここで、
(a)組成可変項T、X、M、Q及びAは本明細書の上記の通りであり;また
(b)化学量論可変項aは、組成可変項Xの原子価状態と等しい(例えば、Xが三価の場合、a=3;Xが五価の場合、a=5である)。
【0025】
TO/Xのモル比10〜∞は、Xが存在しない、すなわち、TO対Xのモル比が無限大である場合を包含することに留意するべきである。その場合、モレキュラーシーブは、本質的にすべてTOを含む。
【0026】
一実施形態において、CHA型モレキュラーシーブが形成される反応混合物の組成は、モル比に関して、下記表2に識別される。ただし、組成可変項Q及びAは本明細書の上記の通りである。
【表3】

【0027】
一実施形態において、CHA型モレキュラーシーブが形成される反応混合物の組成は、モル比に関して、上記表2に識別される。ただし、組成可変項Q及びAは本明細書の上記の通りであり、SiO/Al=∞である。
【0028】
本明細書に記載された各実施形態について上に示したように、Tは、周期表の4〜14族の元素からなる群から選択される。一副実施形態において、Tは、ゲルマニウム(Ge)、シリコン(Si)、チタン(Ti)及びこれらの混合物からなる群から選択される。別の副実施形態において、Tは、ゲルマニウム(Ge)、シリコン(Si)及びこれらの混合物からなる群から選択される。一副実施形態において、TはSiである。組成可変項Tについて選択される元素の供給源は、T及びXについて選択される元素(単数又は複数)の酸化物、水酸化物、アセテート、オキザレート、アンモニウム塩及びスルフェートを包含する。一副実施形態において、組成可変項Tについて選択される元素(単数又は複数)の各供給源は酸化物である。TがSiである場合、本明細書においてSiについて有用な供給源は、フュームドシリカ、沈降ケイ酸塩、シリカヒドロゲル、ケイ酸、コロイダルシリカ、オルトケイ酸テトラアルキル(例えば、オルトケイ酸テトラエチル)及びシリカ水酸化物を包含する。CHA型モレキュラーシーブの高シリカ形態を得るのに有用なシリカ源の例は、フュームドシリカ(例えば、CAB−O−SIL M−5,Cabot Corporation)及びケイ酸(例えば、HI−SIL 233,PPG Industries)並びにこれらの混合物を包含する。固形分が30〜40重量%SiOであるコロイダルシリカもまた有用であり、これらの物質は小量のナトリウム又はアンモニウムカチオンによって安定させることができる。さらに、アルミニウムがシリカゾル中に分散されたコロイド性ゾルを使用して、所望される即席のSiO/Al比を用意することができる。本明細書においてGeについて有用な供給源は、酸化ゲルマニウム及びゲルマニウムエトキシドを包含する。
【0029】
本明細書に記載される各実施形態について、Xは、周期表の3〜13族からの元素からなる群から選択される。一副実施形態において、Xは、ガリウム(Ga)、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、ホウ素(B)、インジウム(In)及びこれらの混合物からなる群から選択される。別の副実施形態において、Xは、Al、B、Fe、Ga及びこれらの混合物からなる群から選択される。別の副実施形態において、Xは、Al、Fe、Ga及びこれらの混合物からなる群から選択される。場合による組成可変項Xについて選択される元素の供給源は、Xについて選択される元素(単数又は複数)の酸化物、水酸化物、アセテート、オキザレート、アンモニウム塩及びスルフェートを包含する。酸化アルミニウムの代表的な供給源は、アルミネート、アルミナ、及びAlCl、Al(SO、水酸化アルミニウム(Al(OH))、カオリン粘土及び他のゼオライトなどのアルミニウム化合物を包含する。酸化アルミニウムの供給源の例は、LZ−210ゼオライト(1種のYゼオライト)である。ホウ素、ガリウム及び鉄は、これらのアルミニウム及びシリコンの相当物に対応する形態で添加することができる。
【0030】
本明細書に記載される各実施形態について、モレキュラーシーブ反応混合物は2種以上の供給源によって供給することができる。また、2種以上の反応成分は1種の供給源によって用意することもできる。
【0031】
反応混合物は、バッチ式に又は連続的に調製することができる。本明細書において記載されるモレキュラーシーブの結晶の大きさ、形態及び結晶化時間は、反応混合物及び結晶化条件の性質とともに変動し得る。
【0032】
結晶化及びポスト合成処理
実際上、モレキュラーシーブは、
(a)本明細書の上記の反応混合物を調製すること、及び
(b)モレキュラーシーブの結晶を形成するのに十分な結晶化条件の下で反応混合物を維持すること
によって調製される。
【0033】
モレキュラーシーブが形成されるまで、反応混合物は高温で維持される。水熱結晶化は、反応混合物が自原性の圧力(autogenous pressure)を受けるように、圧力下で、通常オートクレーブ内で、130℃から200℃の間の温度で、1から6日間、通常、行われる。
【0034】
反応混合物は、結晶化ステップの間、穏やかな撹拌又は揺動にさらしてもよい。本明細書において記載されたモレキュラーシーブが、非晶質物質、モレキュラーシーブと一致しない骨組みトポロジー(framework topologies)を有する単位格子などの不純物及び/又は他の不純物(例えば有機炭化水素)を含んでいてもよいことは、当業者により理解されよう。
【0035】
水熱結晶化ステップの間、モレキュラーシーブ結晶を、反応混合物から自然に核形成させることができる。種材料としてモレキュラーシーブ結晶を使用すると、完全結晶化が起こるのに必要な時間を短縮する点で有利となり得る。さらに、種を施すことによって、核形成及び/又はモレキュラーシーブの形成を、何らかの望ましくない相より促進することによって、得られる生成物の純度を上げることができる。種として使用される場合、種結晶は、反応混合物に使用される組成可変項Tの供給源の重量の1%から10%の間の量が加えられる。
【0036】
一旦モレキュラーシーブ結晶が形成したなら、固体生成物は濾過などの標準的機械的分離技法により反応混合物から分離される。結晶は水洗浄され、次いで、乾燥され合成したままのモレキュラーシーブ結晶を得る。乾燥ステップは、大気圧で又は真空下で実施することができる。
【0037】
モレキュラーシーブは合成したままで使用することができるが、通常熱処理される(か焼される)。用語「合成したまま」(“as−synthesized”)は、結晶化後のSDAを除去する前の形態のモレキュラーシーブを指す。熱処理(例えばか焼)により、好ましくは、酸化雰囲気(例えば空気、0kPaを超える酸素分圧のガス)中で、モレキュラーシーブからSDAを除去するのに十分であり且つ当業者にとって容易に決定できる温度で、SDAを除去することができる。SDAはまた、2005年11月1日に発行された、NavrotskyとParikhの米国特許第6,960,327号に記載されている光分解技法(例えば、モレキュラーシーブから有機化合物を選択的に除去するのに十分な条件下で可視光線より短い波長の光又は電磁波にSDA含有モレキュラーシーブ生成物をさらす)により除去することができる。
【0038】
モレキュラーシーブは、続いて、水蒸気、空気又は不活性ガス中で、約200℃から約800℃の範囲の温度で、1から48時間、又はそれを超える範囲の時間、か焼することができる。通常、骨組み外のカチオン(例えば、H)をイオン交換又は他の既知の方法により除去し、それを水素、アンモニウム又は任意の所望の金属イオンに代えることが望ましい。
【0039】
形成されたモレキュラーシーブが中間素材である場合、目標モレキュラーシーブはヘテロ原子格子置換技法などのポスト合成技法を使用して達成することができる。目標モレキュラーシーブ(例えば、ケイ酸塩SSZ−13)はまた、酸浸出などの既知の技法によって格子からヘテロ原子を除去することにより達成することができる。
【0040】
本発明の方法から製造されるモレキュラーシーブは、種々の物理的形状に形成することができる。概して言えば、モレキュラーシーブは、2メッシュ(Tyler)ふるいを通過し、400メッシュ(Tyler)ふるい上に保持されるのに十分な粒子サイズを有する、粉末、顆粒又は押出物などの成形物の形態であってよい。有機結合剤を用いる押出加工などによって触媒を成型する場合、モレキュラーシーブは乾燥の前に押出し加工し、又は乾燥し若しくは部分的に乾燥し、次いで、押出し加工することができる。
【0041】
モレキュラーシーブは、有機変換工程において使用される温度及び他の条件に耐性のある他の物質と複合することができる。そのようなマトリクス物質は、活性及び不活性物質並びに合成又は天然ゼオライト、加えて、粘土、シリカ及び金属酸化物などの無機物質を含む。そのような物質及び使用することができる手法の例は、1990年5月20日に発行されたZonesらの米国特許第4,910,006号、及び1994年5月31日に発行されたNakagawaの米国特許第5,316,753号に開示されている。
【0042】
モレキュラーシーブの特性評価
本発明の方法により製造されるモレキュラーシーブは、表3(モル比で)に記載されているような、合成したままの無水物の状態の組成を有する。ここで、組成可変項T、X、M、A及びQ、並びに化学量論可変項bは、本明細書の上記の通りである。
【表4】

【0043】
一副実施形態において、本発明の方法により製造されるモレキュラーシーブは、表4(モル比で)に記載されている合成したままの組成を有する。ここで、M、Q及びAは本明細書の上記の通りである。
【表5】

【0044】
別の副実施形態において、本発明の方法により製造されるモレキュラーシーブは、表4(モル比で)に記載されている、合成したままの組成を有する。ここで、M、Q及びAは本明細書の上記の通りであり、またSiO/Al=∞である。
【0045】
本発明の方法により合成されるモレキュラーシーブは、これらのX線回折パターンによって特徴づけられる。表5のX線回折パターン線は、本発明によって製造される、合成したままのモレキュラーシーブを代表する。回折パターンにおける軽微な変化が、格子定数の変化により特定の試料の骨組み種のモル比における変化によって生じることがある。さらに、十分に小さい結晶はピークの形状及び強度に影響し、かなりのピークブロードニング(peak broadening)をもたらす。回折パターンにおける軽微な変化がまた、調製に使用される有機化合物における変化、及び試料ごとのT/Xモル比における変化に起因する場合がある。か焼はまた、X線回折パターンの軽微なずれを引き起こす場合がある。これらの軽微な揺らぎにもかかわらず、基本的な結晶格子構造は変わらない。
【表6】

【0046】
表6のX線回折パターンラインは、本発明によって製造されるか焼したCHA型ゼオライトを代表する。
【表7】

【0047】
本明細書において示された粉体X線回折パターンは、標準技法によって収集した。照射はCuK−α照射であった。θがブラッグ角である2θの関数としてのピークの高さと位置は、ピークの相対強度から読み取り、記録線に対応するオングストロームで面間隔dを計算することができる。
【実施例】
【0048】
以下の実施例は本発明を説明するが、限定するものではない。
【0049】
(例1)
N,N’−ジメチル−1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン水酸化物の合成
1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンをメタノールに溶解し、反応溶液が高温過ぎないことを確実にするように注意して、過剰ヨウ化メチルを徐々に添加する。生成物は数分で形成される。1日の撹拌後、生成物を濾過によって集め、アセトン、次いでエーテルでよく洗浄する。
【0050】
この方法によって合成した乾燥試料は、ジ四級SDAと良好に分析された。次に固形分は、5倍の過剰量の水に溶解した。次いで2.5倍の過剰量のAG1−X8樹脂(Bio−Rad Laboratories)樹脂を添加した。この物質を終夜イオン交換にかけた。生成物を集め、樹脂はさらに1/4の割合(初めに比べて)の水で洗浄した。洗浄液及び収集した物質を合わせ、SDA系のモル濃度を示すために滴定した。
【0051】
(例2)
N−メチル−1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン水酸化物の合成
例1に記載した合成経路を、溶媒として酢酸エチルを使用し、およそ1/1比の1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン及びヨウ化メチルを使用して繰り返した。モノ四級を滴定し、モル濃度を求めた。
【0052】
(例3)
例2で合成したN−メチル−1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン水酸化物の0.45mM溶液81g、1N KOH溶液112g、12mM N,N,N−トリメチル−1−アダマントアンモニウム水酸化物を含有する溶液6.7g、F−2000水酸化アルミニウム(Reheis,Inc.)2.70g、脱イオン水70g、類似した組成バッチから合成したSSZ−13種物質(seed material)1g、及びCAB−O−SIL M−5フュームドシリカ(Cabot Corporation)27gを、風袋を計った1Lテフロン(登録商標)ライナーに一緒に合わせた。
【0053】
次いで、ライナーはふたをし、Parr Steelオートクレーブ反応器中に装入した。反応混合物を170℃で加熱し、毎分72回転(RPM)で撹拌した。その温度で20時間後、反応混合物の試料採取を始め、主要なSSZ−13相が観察された。反応器は24時間で停止し、冷却した反応器から固体生成物を回収した。製造されたままの物質の収率は、反応に利用可能なSiOに対して90%を超えた。
【0054】
結果として得られたモレキュラーシーブ生成物は、粉体XRDによって分析した。結果として得られたXRDパターンを図1に示す。これにより、物質がSSZ−13であったことが示される。下記の表7は、生成物の粉体X線回折線を示す。製造されたままの生成物のCHN燃焼分析は、孔中に合計約17重量%の有機分(13%炭素、2%窒素及び2%水素)を示し、これにより、両方のSDAが生成物モレキュラーシーブ中に存在したことが示される。
【表8】

【0055】
結果として得られた生成物は、マッフル炉内で>20ft/時間(>1.9m/時間)の気流下で以下のようにか焼した。試料を1℃/分の速度で120℃に加熱し、2時間保持し、次いで1℃/分の速度で540℃に加熱し、5時間保持した。次いで1℃/分の速度で595℃に加熱し5時間保持し、冷却し、次いで、粉体XRDによって分析した。下記の表8は、生成物の粉体X線回折線を示す。結果として得られたXRDパターンを図2に示す。図2の垂直線は、か焼したSSZ−13の予想ピークを示す。
【表9】

【0056】
(例4)
Parr 23mL反応器のテフロン(登録商標)カップに、以下の試薬:1N NaOH2.7g、0.6mM N,N,N−トリメチル−1−アダマンタンアンモニウム水酸化物(溶液1.13g中)及び2.1mM N−メチル−1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン水酸化物を含有する溶液4.8gを合わせて混合し、透明な溶液とした。次いで、HiSil 233フュームドシリカ(PPG Industries)(15mM SiO及びSiO/Al=200)1.00g、及び例3からの種0.04gを中に添加した。次いで、ライナーはふたをし、Parr steelオートクレーブ反応器に装入した。次いで、170℃加熱のオーブン内で回転移動棒(spit)(43rpm)に、オートクレーブを固定した。
【0057】
2週間後に、反応生成物を粉体XRDによって評価したところ、また同様に一部層物質をもつ高シリカCHA(2006年6月1日に公開されたYuenの米国出願第2006/0115416号に記載されている)の混合物であった。継続的な加熱が、経時的に層物質(主としてSiO)をCHAに変換するものと期待される。
【0058】
さらに、Yuenの米国出願第2006/0115416号の教示に従うと、当業者には、さらなる合成調製において種としてこの実施例の生成物を使用すれば、全シリカCHA組成物の合成に向けて進行させることが可能になろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)四価元素の少なくとも1種の酸化物の少なくとも1種の供給源、(2)場合によって、三価元素の酸化物、五価元素の酸化物及びこれらの混合物からなる群から選択される1種又は複数の酸化物の1種又は複数の供給源、(3)水酸化物イオン、(4)少なくとも1種の1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン系カチオン、及び(5)少なくとも1種の環状窒素含有カチオンを、結晶化条件下で接触させることを含むCHA型モレキュラーシーブを調製する方法。
【請求項2】
少なくとも1種の1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン系カチオンが、N−アルキル−1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンカチオン、N,N’−ジアルキル−1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンジカチオン及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1種の1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン系カチオンが、N−アルキル−1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンカチオン、及びN,N’−ジアルキル−1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンジカチオンからなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1種の1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン系カチオンが、N−アルキル−1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンカチオンからなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1種の1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン系カチオンが、N,N’−ジアルキル−1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンジカチオンからなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1種の1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン系カチオンの各々が、以下の構造:
【化1】


[式中、RからRは、C〜Cアルキル基からなる群からそれぞれ独立して選択される。]
を有するカチオンからなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1種の環状窒素含有カチオンの各々が、以下の構造:
【化2−1】


【化2−2】


【化2−3】


[式中、RからR52は、C〜Cアルキル基からなる群からそれぞれ独立して選択される。]
を有するカチオンからなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
〜R52の各々がメチル基である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
〜R30及びR32〜R52の各々がメチル基であり、R31がエチル基である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
モレキュラーシーブが、モル比に関して、下記:
【表1】


を含む反応混合物から調製され、
(1)Tが、周期表の4〜14族からの四価元素及びこれらの混合物からなる群から選択され、
(2)Xが、周期表の3〜13族からの三価及び五価の元素並びにこれらの混合物からなる群から選択され、
(3)aが、Xの原子価状態に等しく、
(4)Mが、周期表の1及び2族からの元素からなる群から選択され、
(5)Qが、少なくとも1種の陽イオン性1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン系SDAであり、かつ
(6)Aが少なくとも1種の陽イオン性環状窒素含有SDAである、
請求項1に記載の方法。
【請求項11】
Tが、Ge、Si及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
TがSiである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
Xが、Ga、Al、Fe、B、In及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
Xが、Ga、Al、Fe、B、In及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
モレキュラーシーブが、モル比に関して、下記:
【表2】


を含む反応混合物から調製される、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
モレキュラーシーブが、モル比に関して、下記:
【表3】


を含む反応混合物から調製される、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
モレキュラーシーブが、モル比に関して、下記:
【表4】


を含む反応混合物から調製される、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
モレキュラーシーブが、か焼後、以下の表:
【表5】


に示されるX線回折パターンを実質的に有する、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−522718(P2012−522718A)
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−503701(P2012−503701)
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【国際出願番号】PCT/US2010/029624
【国際公開番号】WO2010/114996
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(503148834)シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド (258)
【Fターム(参考)】