説明

新規硬化性ワックスを含む硬化性固体インク組成物

【課題】室温では固体であり、高温では溶融し、この温度で、溶融したインクを基材に塗布することを特徴とする、高い光沢があり、紫外線(UV)硬化性である新規転相インク組成物を提供する。
【解決手段】インク媒剤の一部として、融点が40℃未満の硬化性アクリレートワックスを含み、着色剤と、ゲル化剤、反応性希釈剤、光開始剤のパッケージ、を含むインク媒剤とを含み、高い光沢があり、紫外線(UV)硬化性であるインクジェット印刷に適した硬化性固体インク組成物。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本実施形態は、室温では固体であり、高温では溶融し、この温度で、溶融したインクを基材に塗布することを特徴とする、硬化性転相インク組成物に関する。これらの固体インク組成物は、一般的に、インク媒剤と着色剤とを含み、インクジェット印刷に用いることができる。本実施形態は、着色剤と、ゲル化剤、反応性希釈剤(例えば、モノマーまたはコモノマー)、光開始剤のパッケージ、硬化性ワックスを含むインク媒剤とを含む、高い光沢があり、紫外線(UV)硬化性である新規転相インク組成物に関する。
【0002】
一般的に、転相インク(「ホットメルトインク」と呼ばれることもある)は、室温または周囲温度では固相であるが、インクジェット印刷デバイスを操作する高い温度では液相で存在する。インクジェットの操作温度で、液体インクの液滴が印刷デバイスから放出され、このインク液滴を、記録基材の表面に接触させると、インク液滴はすばやく固化し、固化したインク液滴が所定の模様を形成する。
【0003】
カラー印刷用の転相インクは、典型的には、転相インクと適合性の着色剤を組み合わせた転相インクキャリア組成物を含む。特定の実施形態では、一連の着色した転相インクは、インクキャリア組成物と、適合性の減法原色の着色剤を組み合わせることによって作ることができる。減法原色の着色した転相インクは、4成分の染料または顔料、つまり、シアン、マゼンタ、イエロー、黒色を含んでいてもよいが、インクは、これら4色に限定されない。これらの減法原色の着色したインクは、1種類の染料または顔料を用いるか、または染料または顔料の混合物を用いることによって作ることができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書に示される実施形態によれば、インク媒剤の一部として、融点が40℃未満、特定的には、25℃〜40℃の硬化性ワックスを含み、高い光沢および/または光沢度を変えることができることが必要な用途で、インクジェット印刷に適した新規硬化性固体インク組成物が提供される。
【0005】
特に、本実施形態は、以下の式
【化1】

〔式中、nは、22未満である〕
を有する1つ以上のアクリレートを含み、融点が25〜40℃である硬化性ワックスと、任意要素の着色剤とをさらに含むインク媒剤を含む、硬化性転相インクを提供する。
【0006】
さらに他の実施形態では、画像を作成する方法が提供され、この方法は、上述の硬化性転相インクを、画像になるような様式で、基材に塗布することと;硬化性転相インクに放射線をあて、インクを硬化させることとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1A】図1Aは、本実施形態にしたがって、硬化性アクリレートワックスの溶融特性を確認する示差走査熱量測定(DSC)データである。
【図1B】図1Bは、コントロールである硬化性ワックスの溶融特性を確認する示差走査熱量測定(DSC)データである。
【図2】図2は、本開示の低融点硬化性アクリレートワックスを含有する硬化性転相インクのレオロジーデータを、本実施形態のコントロールである高融点硬化性ワックスを含有する硬化性転相インクと比較して示すグラフである。
【図3】図3は、低融点硬化性アクリレートワックスを含む試験インクを、本実施形態のコントロールである高融点硬化性ワックスを含むインクと比較した、75°光沢値を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
硬化性転相インク技術は、印刷の可能性を広げ、多くの市場にわたる客層の可能性を広げ、印刷ヘッド技術、印刷プロセス、インク材料を有効に組み合わせることによって、多様な印刷用途を可能にするだろう。転相インク組成物は、室温では固体であり、高温では溶融し、この温度で、溶融したインクを基材に塗布することを特徴とする。上述のように、現行インクの選択肢でも、種々の基材へ首尾よく印刷することができ、高い堅牢性を与えるが、これらの選択肢は、高い光沢度またはさまざまな光沢度を必要とする特定の用途では、常に満足のいくものとは限らない。
【0009】
本実施形態は、インクジェット印刷、特定的には、プロダクションインクジェット印刷で用いるための、高い光沢があり、紫外線(UV)硬化性である転相インクを含む新規配合物を提供する。放射線硬化性転相インクは、一般的に、少なくとも硬化性モノマーと、硬化性ワックスと、ゲル化剤と、インクの硬化性成分(特定的には、硬化性モノマー)の重合を開始させる、放射線で活性化される開始剤(特定的には、光開始剤)と、場合により、着色剤とを含むインク媒剤を含む。
【0010】
本実施形態では、新規転相インク組成物は、融点が約40〜約25℃、または25〜40℃、または約25〜約35℃、または約30〜約35℃の硬化性ワックスを含む。この配合物は、オーバーコーティングすることなく、高い光沢の画像を直接印刷することができるため、以前の転相インクに比べ、顕著に改良されている。
【0011】
いくつかの実施形態では、インク媒剤のワックスとして硬化性アクリレートを用いることによって、一般的に用いられる、約85〜約90℃の吐出温度に近い融点を有するアクリレートワックス(例えば、Unilin 350−アクリレート)よりも融点が低く、かつ溶融状態への転移が鋭敏であり、高い光沢があるインク組成物が得られる。適切なアクリレートは、C18アクリレート、C20アクリレート、C22アクリレート、および任意に組み合わせたこれらの混合物からなる群から選択されてもよい。一般的な実施形態では、適切なアクリレートは、ワックス混合物の融点が40℃未満である限り、鎖長がC22以下のアクリレートの任意の組み合わせを含む。例えば、アクリレートは、以下の式を有していてもよく、
【化2】

式中、nは、22未満、または約22〜約16、または約22〜約18である。特定の実施形態では、適切なアクリレートは、約40〜約55重量%のC18アクリレート、約0〜約15重量%のC20アクリレート、約35〜約45重量%のC22アクリレートの組み合わせを含む。
【0012】
さらなる実施形態では、光沢度を変えることが可能なインク組成物は、高い光沢がある上述のインク組成物と、光沢が中程度または低いインクとを用い、印刷物の光沢を調整することによって得られる。例えば、光沢度の変更は、光沢度の低いインクと高いインクまたは光沢度の中程度のインクと高いインクとを、ハーフトーンパターンで別個に吐出することによって、または、光沢度の異なるインクを混合することによって得られてもよい。したがって、この配合物は、オーバーコーティングすることなく、高い光沢の画像を直接印刷することができ、真に光沢度を数値化して変える方法を得ることができるため、以前の転相インクに比べ、顕著に改良されている。
【0013】
硬化性ワックスは、インク組成物中に、インク組成物の合計重量の約15重量%〜約1重量%、または約15重量%〜約5重量%、または約10重量%〜約5重量%の量で存在しているが、その量は、これらの範囲から外れていてもよい。この高い光沢がある新規インク組成物を用いて製造した印刷物は、BYK TriGloss光沢計で測定した場合に、標準的なインクと比べてかなり高い光沢度を示し、約50〜約60GU(75°)増加している。それに加えて、レオロジーの測定結果は、室温および吐出温度での粘度は、標準的なインクと本質的に同じであることを示している。
【0014】
吐出後に、組成物を硬化させるために、組成物を硬化エネルギーにさらしてもよい。用語「硬化性」は、例えば、重合(例えば、遊離ラジカル経路を含む)によって硬化させることが可能な材料、および/または、放射線感受性の光開始剤を用いることによって、重合が光によって開始する材料を記述する。用語「放射線硬化性」は、例えば、放射線源(光源および熱源を含み、開始剤が存在する状態または存在しない状態を含む)にさらされると硬化する、すべての形態を指す。例示的な放射線硬化技術としては、限定されないが、紫外(UV)光(例えば、波長が200〜400nmの光)を用いる硬化、または、紫外線よりも稀ではあるが、場合により、光開始剤および/または感作剤存在下で、任意の適切な供給源(例えば、発光ダイオード(LED)、水銀アークランプ、キセノンランプなど)からの可視光を用いる硬化、場合により、光開始剤が存在しない状態で、電子線照射を用いる硬化、高温熱開始剤(主に、吐出温度では不活性であってもよい)が存在する状態または存在しない状態での熱硬化を用いる硬化、およびこれらの適切な組み合わせが挙げられる。インク組成物の粘度は、適切な硬化エネルギー源にさらされると、さらに増加し、インク組成物は固体へと硬化し、硬化したインク組成物の粘度は、通常の方法では測定することができない。
【0015】
さらなる実施形態では、反応性希釈剤、モノマー、コモノマーおよび/またはオリゴマーは、インク中に、例えば、インク組成物の合計量の約10〜約90重量%、例えば、約20〜約80重量%、または約50〜約70重量%の量で存在してもよいが、その量は、これらの範囲から外れていてもよい。特定の実施形態では、インクは、ゲル化薬剤またはゲル化剤を任意の適切な量で、例えば、インク組成物の合計量の約1重量%〜約30重量%、例えば、約2重量%〜約20重量%、例えば、約5重量%〜約12重量%の量で含んでいてもよいが、その量は、これらの範囲から外れていてもよい。特定の実施形態では、放射線で活性化される開始剤は、例えば、インク組成物の合計重量の約0.5〜約15重量%、例えば、約1〜約12重量%、または約2〜約10重量%であってもよいが、その量は、これらの範囲から外れていてもよい。本実施形態では、着色剤は、顔料または染料であってもよく、インク中に任意の適切な量で、例えば、インク組成物の合計重量の約0.1〜約25重量%、例えば、約0.5または約20重量%〜約1または約15重量%の量で含まれていてもよいが、その量は、これらの範囲から外れていてもよい。特定の実施形態では、着色剤は、顔料分散物である。このような実施形態では、顔料分散物は、任意の適切な分散剤と組み合わせて、以下のリストから選択される適切な顔料を含む。
【0016】
(硬化性モノマー)
いくつかの実施形態では、硬化性転相インクは、少なくともゲル化剤と、少なくとも硬化性ワックスと、任意要素の光開始剤と、任意要素の着色剤と、少なくとも硬化性モノマーとで構成されるインク媒剤を含む。いくつかの実施形態では、2種類以上の硬化性液体モノマーが硬化性転相インク中に存在する場合、硬化性液体モノマーは、「コモノマー」と呼ばれる。コモノマーは、任意の適切な硬化性モノマーから選択されてもよい。
【0017】
本実施形態のインク組成物は、ゲル化材料(例えば、エポキシ−ポリアミドコンポジットゲル化剤)の溶解度およびゲル化性のために、第1のコモノマーを含んでいてもよく、このことは、熱によって発生する可逆性のゲル相を含むインク媒剤を含むインク組成物を製造するのに有用であり、インク媒剤は、硬化性液体モノマー(例えば、UV−硬化性液体モノマー)で構成されている。このようなインク組成物のゲル相によって、インク滴を、受け入れる基材に固定することができる。
【0018】
それに加えて、多官能アクリレートモノマー/オリゴマーを、反応性希釈剤としてだけではなく、硬化した画像の架橋密度を高めることが可能な材料として用い、それによって、硬化した画像の靱性を高めることができる。
【0019】
用語「硬化性モノマー」は、硬化性オリゴマーを包含することも意図されており、硬化性オリゴマーを組成物中で用いてもよい。組成物で使用可能な、適切な硬化性オリゴマーの例は、粘度が低いものであり、例えば、粘度は、約50cPs〜約10,000cPs、例えば、約75cPs〜約7,500cPs、または約100cPs〜約5,000cPsである。このようなオリゴマーの例としては、CN549、CN131、CN131B、CN2285、CN3100、CN3105、CN132、CN133、CN132(Sartomer Company,Inc.(エクセター、PA)から入手可能)、Ebecryl 140、Ebecryl 1140、Ebecryl 40、Ebecryl 3200、Ebecryl 3201、Ebecryl 3212(Cytec Industries Inc(スミュルナ、GA)から入手可能)、PHOTOMER 3660、PHOTOMER 5006F、PHOTOMER 5429、PHOTOMER 5429F(Cognis Corporation(シンシナティ、OH)から入手可能)、LAROMER PO 33F、LAROMER PO 43F、LAROMER PO 94F、LAROMER UO 35D、LAROMER PA 9039V、LAROMER PO 9026V、LAROMER 8996、LAROMER 8765、LAROMER 8986(BASF Corporation(フローラムパーク、NJ)から入手可能)などが挙げられる。多官能アクリレートおよび多官能メタクリレートとして、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、1,2−エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12−ドデカノールジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、アミン修飾されたポリエーテルアクリレート(PO 83F、LR 8869、および/またはLR 8889として利用可能(いずれもBASF Corporationから入手可能))、トリメチロールプロパントリアクリレート、グリセロールプロポキシレートトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ−/ヘキサ−アクリレート、エトキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレート(Sartomer Co.Inc.からSR399LVおよびSR494として入手可能)などから作られるものを挙げることができる。
【0020】
いくつかの実施形態では、硬化性モノマーは、短鎖アルキルグリコールジアクリレートまたはエーテルジアクリレート、または短鎖アルキルエステル置換基を有するアクリレート(例えば、カプロラクトンアクリレート)、市販の製品CD536、CD2777、CD585、CD586(Sartomer Co.Inc.から入手可能)から選択されてもよい。
【0021】
それに加えて、硬化性モノマーまたは硬化性オリゴマーは、粘度低下剤として、組成物が硬化するときにはバインダーとして、接着促進剤として、反応性希釈剤として、硬化した画像の架橋密度を高めることができる架橋剤として、種々の機能を発揮してもよく、それによって、硬化した画像の靱性を高めてもよい。適切なモノマーは、分子量が低く、粘度が低く、表面張力が低く、UV光のような放射線をあてると重合が起こる官能基を含んでいてもよい。
【0022】
上に述べたように、1つ以上のモノマーは、インク中に、例えば、インク組成物合計の約10〜約90重量%、例えば、約20〜約80重量%、または約50〜約70重量%の量で存在していてもよいが、その量は、これらの範囲から外れていてもよい。
【0023】
(硬化性ゲル化剤)
硬化性転相インク組成物は、少なくとも1つのゲル化剤を含んでいてもよい。
【0024】
有機ゲル化剤は、所望の温度範囲内で、インク媒剤およびインク組成物の粘度を顕著に上げるように機能する。特に、ゲル化剤は、インク組成物が吐出される特定の温度より低い温度では、インク媒剤中で半固体ゲルを形成している。半固体ゲル相は、1つ以上の固体ゲル化分子と液体溶媒とで構成される動的平衡として存在する物理的なゲルである。半固体ゲル相は、非共有結合による相互作用、例えば、水素結合、ファンデルワールス相互作用、芳香族の結合以外の相互作用、イオン結合または配位結合、ロンドン分散力などによって一緒に保持される、分子成分が力学的に網目状になった集合体であり、物理的な力(例えば、温度または機械的撹拌)または化学的な力(例えば、pHまたはイオン強度)によって刺激を加え、巨視的なレベルで液体状態から半固体状態へと可逆的に転移させることができる。インク組成物は、温度が、ゲル相転移よりも高い温度または低い温度に変わると、半固体ゲル状態と液体状態とを熱によって可逆的に転移する。半固体ゲル相と液相との可逆的な転移サイクルは、インク配合物で何回も繰り返されてもよい。転相転移を行なうために、1つ以上のゲル化剤の混合物を用いてもよい。
【0025】
このように、ゲル化剤の転相性を利用し、インクを基材に吐出した後に、吐出したインク組成物の粘度を基材の上ですばやく上昇させることができる。特に、吐出したインク滴は、インク組成物が、液体状態からゲル状態(または半固体状態)へと顕著な粘度変化を起こす転相転移作用によって、インク組成物のインク吐出温度よりも低い温度の受け入れる基材(例えば、画像を受け入れる媒体(例えば、紙))の上の所定の位置に固定されるだろう。
【0026】
いくつかの実施形態では、インク組成物がゲル状態を形成する温度は、インク組成物の吐出温度よりも低い任意の温度であり、例えば、インク組成物の吐出温度よりも約10℃以上低い任意の温度である。インク組成物が液体状態である吐出温度から、このインク組成物がゲル状態へと変わるゲル転移温度まで冷えると、インクの粘度がすばやく、大きく上昇する。
【0027】
インク組成物に適したゲル化剤は、インク媒剤中のモノマー/オリゴマーをすばやく、可逆的にゲル化し、例えば、約10℃〜約85℃の温度範囲で、狭い転相転移を示すだろう。例示的なインク組成物のゲル状態は、基材温度(例えば、約30℃〜約60℃)で、吐出温度での粘度と比較して、粘度が最小でも102.5mPa・s、例えば、10mPa・s上昇しなければならない。特定の実施形態では、ゲル化剤を含有するインク組成物は、吐出温度より5℃〜10℃低い温度で粘度がすばやく上昇し、最終的には、吐出粘度の10倍を超え、例えば、約10倍を超える粘度に達する。
【0028】
インク組成物中で使用するのに適したゲル化剤としては、硬化性アミド、硬化性ポリアミド−エポキシアクリレート成分、ポリアミド成分、硬化性エポキシ樹脂およびポリアミド樹脂で構成される硬化性コンポジットゲル化剤、これらの混合物などで構成される硬化性ゲル化剤が挙げられる。組成物にゲル化剤が含まれると、組成物を塗布した後に冷えると、組成物の粘度が急速に増加するため、基材に過剰に浸透することなく、この組成物を基材(例えば、基材の1つ以上の部分)の上に、および/または、基材上にすでに作成されている画像の1つ以上の一部分の上に塗布することができる。液体が多孔性基材(例えば、紙)に過剰に浸透すると、基材の不透明性が望ましくないほど低下する場合がある。硬化性ゲル化剤は、組成物のモノマーを硬化させるのにも関与していてもよい。
【0029】
組成物で使用するのに適したゲル化剤は、組成物をシリコーンまたは他の油を含む基材の上で利用する場合に、濡れ性を高めるために、両親媒性であってもよい。両親媒性とは、分子に極性部分と非極性部分の両方を有する分子を指す。例えば、ゲル化剤は、非極性の長い炭化水素鎖と、極性のアミド結合を有していてもよい。
【0030】
アミドゲル化剤は、以下の式の化合物であってもよく、
【化3】

式中、
は、
(i)炭素原子が約1個〜約12個、例えば、炭素原子が約1個〜約8個、または炭素原子が約1個〜約5個のアルキレン基(アルキレン基は、直鎖および分岐、飽和および不飽和、環状および非環状、置換および非置換のアルキレン基を含み、ヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素など)が、アルキレン基に存在していてもよく、存在していなくてもよい、二価の脂肪族基またはアルキル基である)、
(ii)炭素原子が約1個〜約15個、例えば、炭素原子が約3個〜約10個、または炭素原子が約5個〜約8個のアリーレン基(アリーレン基は、置換および非置換のアリーレン基を含み、ヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素など)が、アリーレン基に存在していてもよく、存在していなくてもよい、二価の芳香族基またはアリール基である)、
(iii)炭素原子が約6個〜約32個、例えば、炭素原子が約6個〜約22個、または炭素原子が約6個〜約12個のアリールアルキレン基(アリールアルキレン基は、置換および非置換のアリールアルキレン基を含み、アリールアルキレン基のアルキル部分が、直鎖または分岐、飽和または不飽和、環状または非環状であってもよく、ヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素など)が、アリールアルキレン基のアリール部分またはアルキル部分のいずれかに存在していてもよく、存在していなくてもよい、二価のアリールアルキル基である)、または
(iv)炭素原子が約5個〜約32個、例えば、炭素原子が約6個〜約22個、または炭素原子が約7個〜約15個のアルキルアリーレン基(アルキルアリーレン基は、置換および非置換のアルキルアリーレン基を含み、アルキルアリーレン基のアルキル部分は、直鎖または分岐、飽和または不飽和、環状または非環状であってもよく、ヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素など)が、アルキルアリーレン基のアリール部分またはアルキル部分のいずれかに存在していてもよく、存在していなくてもよい、二価のアルキルアリール基である)
であり、
置換アルキレン基、置換アリーレン基、置換アリールアルキレン基、置換アルキルアリーレン基の置換基は、ハロゲン原子、シアノ基、ピリジン基、ピリジニウム基、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、エステル基、アミド基、カルボニル基、チオカルボニル基、スルフィド基、ニトロ基、ニトロソ基、アシル基、アゾ基、ウレタン基、尿素基、これらの混合物などであってもよく、2個以上の置換基が結合して環を形成していてもよく;
およびR’は、それぞれ互いに独立して、
(i)炭素原子が約1個〜約54個、例えば、炭素原子が約1個〜約48個、または炭素原子が約1個〜約36個のアルキレン基、
(ii)炭素原子が約5個〜約15個、例えば、炭素原子が約5個〜約13個、または炭素原子が約5個〜約10個のアリーレン基、
(iii)炭素原子が約6個〜約32個、例えば、炭素原子が約7個〜約33個、または炭素原子が約8個〜約15個のアリールアルキレン基、または
(iv)炭素原子が約6個〜約32個、例えば、炭素原子が約6個〜約22個、または炭素原子が約7個〜約15個のアルキルアリーレン基
であり、
置換アルキレン基、置換アリーレン基、置換アリールアルキレン基、置換アルキルアリーレン基の置換基は、ハロゲン原子、シアノ基、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、エステル基、アミド基、カルボニル基、チオカルボニル基、ホスフィン基、ホスホニウム基、ホスフェート基、ニトリル基、メルカプト基、ニトロ基、ニトロソ基、アシル基、酸無水物基、アジド基、アゾ基、シアネート基、ウレタン基、尿素基、これらの混合物などであってもよく、2個以上の置換基が結合して環を形成していてもよく;
およびR’は、それぞれ互いに独立して、
(a)光開始基、例えば、以下の式の1−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オンから誘導される基
【化4】

以下の式の1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンから誘導される基
【化5】

以下の式の2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンから誘導される基
【化6】

以下の式のN,N−ジメチルエタノールアミンまたはN,N−ジメチルエチレンジアミンから誘導される基
【化7】

などのいずれか、または、
(b)
(i)炭素原子が約2個〜約100個、例えば、炭素原子が約3個〜約60個、または炭素原子が約4個〜約30個のアルキル基(直鎖および分岐、飽和および不飽和、環状および非環状、置換および非置換のアルキル基を含み、ヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素など)が、アルキル基に存在していてもよく、存在していなくてもよい)、
(ii)炭素原子が約5個〜約100個、例えば、炭素原子が約5個〜約60個、または炭素原子が約6個〜約30個のアリール基(置換および非置換のアリール基を含み、ヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素など)が、アリール基に存在していてもよく、存在していなくてもよい)、例えば、フェニルなど、
(iii)炭素原子が約5個〜約100個、例えば、炭素原子が約5個〜約60個、または炭素原子が約6個〜約30個のアリールアルキル基(置換および非置換のアリールアルキル基を含み、アリールアルキル基のアルキル部分は、直鎖または分岐、飽和または不飽和、環状または非環状であってもよく、ヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素など)は、アリールアルキル基のアリール部分またはアルキル部分のいずれかに存在していてもよく、存在していなくてもよい)、例えば、ベンジルなど、または
(iv)炭素原子が約5個〜約100個、例えば、炭素原子が約5個〜約60個、または炭素原子が約6個〜約30個のアルキルアリール基(置換および非置換のアルキルアリール基を含み、アルキルアリール基のアルキル部分は、直鎖または分岐、飽和または不飽和、環状または非環状であってもよく、ヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素など)は、アルキルアリール基のアリール部分またはアルキル部分のいずれかに存在していてもよく、存在していなくてもよい)、例えば、トリルなど
の基であり、
置換アルキル基、置換アリールアルキル基、置換アルキルアリール基の置換基は、ハロゲン原子、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、エステル基、アミド基、カルボニル基、チオカルボニル基、スルフィド基、ホスフィン基、ホスホニウム基、ホスフェート基、ニトリル基、メルカプト基、ニトロ基、ニトロソ基、アシル基、酸無水物基、アジド基、アゾ基、シアネート基、イソシアネート基、チオシアネート基、イソチオシアネート基、カルボキシレート基、カルボン酸基、ウレタン基、尿素基、これらの混合物などであってもよく、2個以上の置換基が結合して環を形成していてもよく;
XおよびX’は、それぞれ互いに独立して、酸素原子であるか、式−NR−の基であり、Rは、
(i)水素原子;
(ii)炭素原子が約5個〜約100個、例えば、炭素原子が約5個〜約60個、または炭素原子が約6個〜約30個の、直鎖および分岐、飽和および不飽和、環状および非環状、置換および非置換のアルキル基を含み、ヘテロ原子が、アルキル基に存在していてもよく、存在していなくてもよい、アルキル基、
(iii)炭素原子が約5個〜約100個、例えば、炭素原子が約5個〜約60個、または炭素原子が約6個〜約30個の、置換および非置換のアリール基を含み、ヘテロ原子が、アリール基に存在していてもよく、存在していなくてもよい、アリール基、
(iv)炭素原子が約5個〜約100個、例えば、炭素原子が約5個〜約60個、または炭素原子が約6個〜約30個の、置換および非置換のアリールアルキル基を含み、アリールアルキル基のアルキル部分は、直鎖または分岐、飽和または不飽和、環状または非環状であってもよく、ヘテロ原子は、アリールアルキル基のアリール部分またはアルキル部分のいずれかに存在していてもよく、存在していなくてもよい、アリールアルキル基、または
(v)炭素原子が約5個〜約100個、例えば、炭素原子が約5個〜約60個、または炭素原子が約6個〜約30個の、置換および非置換のアルキルアリール基を含み、アルキルアリール基のアルキル部分は、直鎖または分岐、飽和または不飽和、環状または非環状であってもよく、ヘテロ原子は、アルキルアリール基のアリール部分またはアルキル部分のいずれかに存在していてもよく、存在していなくてもよい、アルキルアリール基
であり、
置換アルキル基、置換アリール基、置換アリールアルキル基、置換アルキルアリール基の置換基は、ハロゲン原子、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、エステル基、アミド基、カルボニル基、チオカルボニル基、サルフェート基、スルホネート基、スルホン酸基、スルフィド基、スルホキシド基、ホスフィン基、ホスホニウム基、ホスフェート基、ニトリル基、メルカプト基、ニトロ基、ニトロソ基、スルホン基、アシル基、酸無水物基、アジド基、アゾ基、シアネート基、イソシアネート基、チオシアネート基、イソチオシアネート基、カルボキシレート基、カルボン酸基、ウレタン基、尿素基、これらの混合物などであってもよく、2個以上の置換基が結合して環を形成していてもよい。
【0031】
いくつかの実施形態では、ゲル化剤は、以下のものを含む混合物を含んでいてもよく、
【化8】

【化9】

【化10】

式中、−C3456+a−は、不飽和部および環状基を含んでいてもよい分岐アルキレン基をあらわし、変数「a」は、0〜12の整数である。
【0032】
いくつかの実施形態では、インクのゲル化剤は、以下の一般的な構造
【化11】

【化12】

【化13】

を有する化合物であってもよい。
【0033】
上に述べたように、インクは、ゲル化薬剤またはゲル化剤を任意の適切な量で、例えば、インク組成物合計の約1重量%〜約30重量%、例えば、約2重量%〜約20重量%、例えば、約5重量%〜約12重量%の量で含まれていてもよいが、その量は、これらの範囲から外れていてもよい。
【0034】
上に述べたように、インクは、ゲル化薬剤またはゲル化剤を任意の適切な量で、例えば、インク組成物合計の約1重量%〜約30重量%、例えば、約2重量%〜約20重量%、例えば、約5重量%〜約12重量%の量で含まれていてもよいが、その量は、これらの範囲から外れていてもよい。
【0035】
上述のように、インク組成物は、硬化性アクリレートを含む少なくとも1つの硬化性ワックスを含む。ワックスを含むことにより、組成物が塗布温度から冷却するにつれて、インク組成物の粘度上昇を促進する場合がある。したがって、ワックスは、組成物が基材を通ってにじみ出てしまうのを避ける際に、ゲル化剤を補佐するだろう。
【0036】
硬化性ワックスは、融点が25〜40℃であり、硬化性モノマーと重合してポリマーを形成する他の要素と混和性である、任意の低融点ワックス成分であってもよい。ワックスとの用語は、例えば、一般的にワックスと呼ばれる、任意の種々の天然材料、改質された天然材料、合成材料を含む。
【0037】
硬化性ワックスは、組成物中に、例えば、組成物の約0.1重量%〜約30重量%、例えば、約0.5重量%〜約20重量%、または約0.5重量%〜15重量%の量で含まれていてもよい。
【0038】
(着色剤)
インク組成物は、場合により、着色剤を含んでいてもよい。染料、顔料、これらの混合物などを含め、着色剤がインク媒剤に溶解するか、または分散させることができるならば、任意の望ましい着色剤または有効な着色剤をインク組成物中で用いてもよい。特定の実施形態では、顔料(典型的には、染料よりも安価であり、堅牢性が高い)が含まれてもよい。多くの染料の色は、硬化段階中に生じる重合プロセスによって、おそらく遊離ラジカルが染料の分子構造を攻撃することによって変わってしまうことがある。組成物を、例えば、Color Index(C.I.)Solvent Dye、Disperse Dye、改質されたAcid and Direct Dye、Basic Dye、Sulphur Dye、Vat Dyeなどの従来のインク着色剤材料と組み合わせて用いてもよい。
【0039】
また、顔料は、硬化性転相インクに適した着色剤である。
【0040】
また、米国特許第7,053,227号、米国特許第7,381,831号、米国特許第7,427,323号(それぞれの開示内容全体が、本明細書に参考として組み込まれる)に開示されている着色剤も適切である。
【0041】
また、インクは、インクセットの着色したインクで用いられる種々の顔料に対して優れた吸着親和性を有する部分または基を含む、顔料を安定化する界面活性剤または分散剤を含んでいてもよく、また、インク媒剤への分散を可能にする部分または基も含むことが望ましい。インクセットの着色した全インクに適切な分散剤の選択は、分散剤/顔料の組み合わせが予測できない性質を有するため、当業者によって行うことが可能な試行錯誤による評価を必要とする場合がある。
【0042】
分散剤の例として、ランダムポリマーおよびブロックコポリマーが適切な場合がある。特に望ましいブロックコポリマーは、アミノアクリレートブロックコポリマー、例えば、アミノまたはアミノアクリレートのブロックAと、アクリレートブロックBを含むアミノアクリレートブロックコポリマーであり、アクリレート部分は、分散剤をインク媒剤中で安定かつ十分に分散させることができ、一方、アミノ部分は、顔料表面に十分に吸着することができる。本明細書で使用するのに適切であることがわかっているブロックコポリマー分散剤の市販の例は、DISPERBYK−2001(BYK Chemie GmbH)およびEFKA 4340(Ciba Specialty Chemicals)である。
【0043】
着色剤は、インク組成物中に、例えば、インク組成物の約0.1〜約15重量%、例えば、約2.0〜約9重量%の量で含まれていてもよい。
【0044】
(開始剤)
硬化性転相インク組成物は、場合により、開始剤(例えば、光開始剤)を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、このような開始剤は、インクの硬化を補佐するために望ましい。
【0045】
いくつかの実施形態では、インクの硬化性成分の硬化を開始させるために、放射線(例えば、UV線)を吸収する光開始剤を使用してもよい。遊離ラジカル重合によって硬化される、本実施形態のインク組成物(例えば、アクリレート基を含むインク組成物、またはポリアミドで構成されるインク)のための光開始剤として、ベンゾフェノン、ベンゾインエーテル、ベンジルケタール、α−ヒドロキシアルキルフェノン、α−ヒドロキシケトン、α−アルコキシケトン、α−アミノケトン、α−アルコキシアルキルフェノン、α−アミノアルキルフェノンから作られるもの、IRGACUREおよびDAROCURの商品名でBASFから販売されているアシルホスフィン光開始剤などのような光開始剤が挙げられる。適切な光開始剤の特定の例としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(BASF LUCIRIN TPOとして入手可能);2,4,6−トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキシド(BASF LUCIRIN TPO−Lとして入手可能);ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニル−ホスフィンオキシド(BASF IRGACURE 819として入手可能)、他のアシルホスフィン;2−メチル−1−(4−メチルチオ)フェニル−2−(4−モルホリニル)−1−プロパノン(BASF IRGACURE 907として入手可能)、1−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン(BASF IRGACURE 2959として入手可能);2−ベンジル 2−ジメチルアミノ 1−(4−モルホリノフェニル)ブタノン−1(BASF IRGACURE 369として入手可能);2−ヒドロキシ−1−(4−(4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)−ベンジル)−フェニル)−2−メチルプロパン−1−オン(BASF IRGACURE 127として入手可能);2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルホリン−4−イルフェニル)−ブタノン(BASF IRGACURE 379として入手可能);チタノセン;イソプロピルチオキサントン;1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン;ベンゾフェノン;2,4,6−トリメチルベンゾフェノン;4−メチルベンゾフェノン;ジフェニル−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド;2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィン酸エチルエステル;オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン);2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノン;ベンジル−ジメチルケタール、およびこれらの混合物が挙げられる。また、アミン共力剤、すなわち、水素原子を光開始剤に供与し、それによってラジカル種が生成し、重合を開始させることができる補助開始剤から作られるものも挙げることができ(アミン共力剤は、遊離ラジカル重合を阻害する溶存酸素を消費し、重合速度を高めることができ)、例えば、エチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、2−エチルヘキシル−4−ジメチルアミノ−ベンゾエートを挙げることができる。このリストは、排他的なものではなく、望ましい波長の放射線(例えば、UV光)をあてると遊離ラジカル反応を開始させる任意の既知の光開始剤を、制限なく用いることができる。
【0046】
いくつかの実施形態では、光開始剤は、硬化を開始するために、約200〜約420nmの波長の放射線を吸収してもよいが、もっと長い波長を吸収する開始剤(例えば、560nmまでを吸収し得るチタノセン)を、制限なく用いることができる。
【0047】
インク組成物中に含まれる開始剤の合計量は、例えば、インク組成物の約0.5〜約15重量%、例えば、約1〜約10重量%であってもよい。
【0048】
(任意要素の添加剤)
インクセットの1つ以上のインクのインク媒剤は、さらなる任意要素の添加剤を含んでいてもよい。任意要素の添加剤としては、界面活性剤、入射するUV光を吸収し、これを熱エネルギーに変換して最終的には消散してしまう光安定化剤、酸化防止剤、画像の外観を高め、マスクの黄変を向上させることができる任意要素の増白剤、チクソトロピー剤、ディウェッティング剤、すべり剤、気泡剤、消泡剤、流動剤、他の非硬化性ワックス、油、可塑剤、バインダー、導電性剤、防カビ剤、抗菌剤、有機および/または無機のフィラー粒子、異なる光沢レベルを作り出すか、または減らす薬剤であるレベリング剤、乳白剤、帯電防止剤、分散剤などが挙げられる。
【0049】
インクは、安定化剤として、ラジカル捕捉剤(例えば、IRGASTAB UV 10(BASF))を含んでいてもよい。また、インクは、貯蔵中のオリゴマー成分およびモノマー成分の重合を抑制するか、または少なくとも遅らせ、組成物の貯蔵寿命を延ばすことによって組成物を安定化するために、阻害剤、例えば、ヒドロキノンまたはモノメチルエーテルヒドロキノン(MEHQ)も含んでいてもよい。
【0050】
インクは、場合により、画像が酸化するのを防ぐために酸化防止剤を含んでいてもよく、また、インク容器中で加熱した溶融物として存在している間にインク成分が酸化するのを防いでもよい。インク組成物の任意要素の酸化防止剤は、画像が酸化するのを防ぎ、また、インク調製プロセスの加熱部分の間でインク成分が酸化するのを防ぐ。酸化防止剤が存在する場合、任意要素の酸化防止剤は、本実施形態のインク組成物中に任意の望ましい量または有効な量で、例えば、インク組成物の少なくとも約0.01重量%、少なくとも約0.1重量%、または少なくとも約1重量%の量で存在する。
【0051】
硬化性転相インクは、室温で固体であるか、またはほぼ固体である。硬化性転相インクの粘度が、インクの吐出温度で約30mPa未満、例えば、約20mPas未満、例えば、約3〜約20mPas、約5〜約20mPas、または約8〜約15mPasであることが望ましい。したがって、インクを液体状態で吐出し、この操作は、吐出前にインクに熱を加えて溶融させることによって達成される。インクは、望ましくは、低温で、特に、約120℃未満、例えば、約50℃〜約110℃、または約60℃〜約100℃、または約70℃〜約90℃で吐出される。したがって、インクは、理想的には、圧電式インクジェットデバイスで使用するのに適している。
【0052】
ゲル化薬剤をインク中で用いる場合、インクがゲル状態を形成する温度は、インクの吐出温度よりも低い任意の温度、例えば、インクの吐出温度から約5℃以上低い任意の温度である。いくつかの実施形態では、ゲル状態は、約25℃〜約100℃、例えば、約40℃〜約80℃、または約40℃〜約65℃の温度で生成してもよい。インクが液体状態である吐出温度から、インクがゲル状態であるゲル温度まで冷えると、インクの粘度がすばやく、大きく上昇する。粘度は、例えば、少なくとも約102.5倍上昇する。
【0053】
インク組成物は、任意の望ましい方法または適切な方法で調製することができる。例えば、インクキャリアのそれぞれの要素を混合し、次いで、混合物を少なくともその融点まで、例えば、約60℃〜約120℃、80℃〜約110℃、85℃〜約100℃、または約85℃〜約95℃まで加熱してもよい。インク成分を加熱する前、またはインク成分を加熱した後に、着色剤を加えてもよい。次いで、加熱した混合物を約5秒〜約10分間、またはそれ以上撹拌し、実質的に均質で均一な溶融物を得て、次いで、このインクを周囲温度(典型的には、約20℃〜約25℃)まで冷却する。インクは、周囲温度ではゲルである。インクを、直接印刷するインクジェットプロセスのための装置で使用してもよい。本明細書に開示される別の実施形態は、本明細書に開示されているインクをインクジェット印刷装置に組み込むことと、このインクを溶融することと、溶融したインクの液滴を、画像になるような様式で、記録する基材に放出することととを含むプロセスに関する。ある特定の実施形態では、印刷装置は、インクの液滴が圧電振動要素の振幅によって画像のパターンになるように吐出される圧電式印刷プロセスを利用する。本明細書に開示されるようなインクを、例えば、ホットメルト音響インクジェット印刷、ホットメルト連続流インクジェット印刷または偏向インクジェット印刷などのような他のホットメルト印刷プロセスで使用してもよい。また、本明細書に開示した転相インクを、ホットメルトインクジェット印刷プロセス以外の印刷プロセスで使用してもよい。任意の適切な基材または記録シートを使用してもよい。
【実施例】
【0054】
(実施例1)
(硬化性転相インクの調製)
以下の表1に与えられている組成を有するUV硬化性転相インクを、13000rpm、85℃で1〜約1.5時間均質化することによって、250gスケールで調製した。これらのインクの主な違いは、硬化性ワックス成分であり、標準的なインクの場合には、硬化性ワックスは、UNILIN−350アクリレート(DSCによる融点=82℃)であり、本発明の実施形態の場合には、標準的なワックス成分を、C18、C20、C22アクリレートの混合物であり、融点が約38℃である(図1Aに示されるように)AGEFLEX FA1822(Ciba,Inc.(バーゼル、スイス))と交換した。さらに、以下のDSCデータは、AGEFLEXワックス(図1A)の溶融状態への転移は、UNILIN 350系材料(図1B)の場合よりもかなり鋭敏であることを示している。
【表1】

【0055】
(試験結果)
得られるインクは、好ましいレオロジーを示し、吐出温度での粘度は10cps未満であり、室温での粘度は10cpsであった。50mmの平行板を取り付けた、TA Instruments製のRFS3 controlled strainレオメーターを用い、ダイナミックな温度工程データを記録し、以下の図2に示している。
【0056】
表1のインクを85℃で、改変したXerox PHASER 8860プリンタを用い、コーティングされていないMYLAR基材に直接吐出した。次いで、印刷した画像を、コンベヤ速度100fpmで、UV照射下(Fusion UV、HgランプにD球を取り付けたもの)で硬化した。次いで、得られた硬化した印刷物について、BYK光沢計を用い、75°光沢を測定することによって光沢度を分析した。図3に示したグラフからわかるように、新規インク配合物は、現行の標準的な配合物よりもかなり光沢が強い。この違いは、肉眼で簡単に識別可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下式を有する1つ以上のアクリレート
【化1】

〔式中、nは22未満である〕
を含み、融点が25〜40℃である硬化性ワックスをさらに含むインク媒剤と;
任意要素の着色剤とを含む、硬化性転相インク。
【請求項2】
前記硬化性ワックスが、約40〜約55重量%のC18アクリレート、約0〜約15重量%のC20アクリレート、約35〜約45重量%のC22アクリレートの組み合わせを含む、請求項1に記載の硬化性転相インク。
【請求項3】
前記硬化性ワックスが、前記硬化性転相インクの合計重量の約15重量%〜約1重量%の量で存在する、請求項1に記載の硬化性転相インク。
【請求項4】
前記硬化性ワックスが、前記硬化性転相インクの合計重量の約10重量%〜約5重量%の量で存在する、請求項3に記載の硬化性転相インク。
【請求項5】
前記硬化性ワックスは、融点が約25〜約35℃である、請求項1に記載の硬化性転相インク。
【請求項6】
前記インク媒剤が、ゲル化剤、反応性希釈剤、開始剤をさらに含む、請求項1に記載の硬化性転相インク。
【請求項7】
前記ゲル化剤が、下式を有する化合物であり、
【化2】

式中、Rは、(i)直鎖および分岐、飽和および不飽和、環状および非環状、置換および非置換のアルキレン基を含み、ヘテロ原子が、アルキレン基に存在していてもよく、存在していなくてもよい、アルキレン基、(ii)置換および非置換のアリーレン基を含み、ヘテロ原子が、アリーレン基に存在していてもよく、存在していなくてもよい、アリーレン基、(iii)置換および非置換のアリールアルキレン基を含み、アリールアルキレン基のアルキル部分が、直鎖または分岐、飽和または不飽和、環状または非環状であってもよく、ヘテロ原子が、アリールアルキレン基のアリール部分またはアルキル部分のいずれかに存在していてもよく、存在していなくてもよい、アリールアルキレン基、または、(iv)置換および非置換のアルキルアリーレン基を含み、アルキルアリーレン基のアルキル部分は、直鎖または分岐、飽和または不飽和、環状または非環状であってもよく、ヘテロ原子が、アルキルアリーレン基のアリール部分またはアルキル部分のいずれかに存在していてもよく、存在していなくてもよい、アルキルアリーレン基であり、RおよびR’は、それぞれ互いに独立して、(i)直鎖および分岐、飽和および不飽和、環状および非環状、置換および非置換のアルキレン基を含み、ヘテロ原子が、アルキレン基に存在していてもよく、存在していなくてもよい、アルキレン基、(ii)置換および非置換のアリーレン基を含み、ヘテロ原子が、アリーレン基に存在していてもよく、存在していなくてもよい、アリーレン基、(iii)置換および非置換のアリールアルキレン基を含み、アリールアルキレン基のアルキル部分は、直鎖または分岐、飽和または不飽和、環状または非環状であってもよく、ヘテロ原子は、アリールアルキレン基のアリール部分またはアルキル部分のいずれかに存在していてもよく、存在していなくてもよい、アリールアルキレン基、または(iv)置換および非置換のアルキルアリーレン基を含み、アルキルアリーレン基のアルキル部分は、直鎖または分岐、飽和または不飽和、環状または非環状であってもよく、ヘテロ原子は、アルキルアリーレン基のアリール部分またはアルキル部分のいずれかに存在していてもよく、存在していなくてもよい、アルキルアリーレン基であり、RおよびR’は、それぞれ互いに独立して、(a)光開始基、または(b)(i)直鎖および分岐、飽和および不飽和、環状および非環状、置換および非置換のアルキル基を含み、ヘテロ原子が、アルキル基に存在していてもよく、存在していなくてもよい、アルキル基、(ii)置換および非置換のアリール基を含み、ヘテロ原子が、アリール基に存在していてもよく、存在していなくてもよい、アリール基、(iii)置換および非置換のアリールアルキル基を含み、アリールアルキル基のアルキル部分は、直鎖または分岐、飽和または不飽和、環状または非環状であってもよく、ヘテロ原子は、アリールアルキル基のアリール部分またはアルキル部分のいずれかに存在していてもよく、存在していなくてもよい、アリールアルキル基、または(iv)置換および非置換のアルキルアリール基を含み、アルキルアリール基のアルキル部分は、直鎖または分岐、飽和または不飽和、環状または非環状であってもよく、ヘテロ原子は、アルキルアリール基のアリール部分またはアルキル部分のいずれかに存在していてもよく、存在していなくてもよい、アルキルアリール基である基であり、XおよびX’は、それぞれ互いに独立して、酸素原子であるか、または式NRの基であり、ここで、Rは、(i)水素原子、(ii)直鎖および分岐、飽和および不飽和、環状および非環状、置換および非置換のアルキル基を含み、ヘテロ原子が、アルキル基に存在していてもよく、存在していなくてもよい、アルキル基、(iii)置換および非置換のアリール基を含み、ヘテロ原子が、アリール基に存在していてもよく、存在していなくてもよい、アリール基、(iv)置換および非置換のアリールアルキル基を含み、アリールアルキル基のアルキル部分は、直鎖または分岐、飽和または不飽和、環状または非環状であってもよく、ヘテロ原子は、アリールアルキル基のアリール部分またはアルキル部分のいずれかに存在していてもよく、存在していなくてもよい、アリールアルキル基、または(v)置換および非置換のアルキルアリール基を含み、アルキルアリール基のアルキル部分は、直鎖または分岐、飽和または不飽和、環状または非環状であってもよく、ヘテロ原子は、アルキルアリール基のアリール部分またはアルキル部分のいずれかに存在していてもよく、存在していなくてもよい、アルキルアリール基である、請求項6に記載の硬化性転相インク。
【請求項8】
前記反応性希釈剤が、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、アルコキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、アクリル酸イソデシル、アクリル酸トリデシル、アクリル酸イソボルニル、プロポキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、ジ−トリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、エトキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、プロポキシル化グリセロールトリアクリレート、メタクリル酸イソボルニル、アクリル酸ラウリル、メタクリル酸ラウリル、ネオペンチルグリコールプロポキシレートメチルエーテルモノアクリレート、メタクリル酸イソデシル、カプロラクトンアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、アクリル酸イソオクチル、メタクリル酸イソオクチル、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ジオキサングリコールジアクリレート、ブタンジオールジアクリレート、アクリル酸ブチル、これらの混合物からなる群から選択される硬化性モノマーまたは硬化性コモノマーである、請求項6に記載の硬化性転相インク。
【請求項9】
前記開始剤が、ベンゾフェノン、ベンゾフェノン誘導体、ベンジルケトン、α−アルコキシベンジルケトン、ヒドロキシルケトンモノマー、ヒドロキシルケトンポリマー、α−アミノケトン、アルコキシケトン、アシルホスフィンオキシド、メタロセン、ベンゾインエーテル、ベンジルケタール、α−ヒドロキシアルキルフェノン、α−アミノアルキルフェノン、アシルホスフィン光開始剤、これらの混合物からなる群から選択される、請求項6に記載の硬化性転相インク。
【請求項10】
画像を作成する方法であって、この方法は、
請求項1に記載の硬化性転相インクを、画像になるような様式で、基材に塗布することと;
前記硬化性転相インクに放射線をあて、インクを硬化させることとを含む、方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−184406(P2012−184406A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−25954(P2012−25954)
【出願日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】