説明

新規調節タンパク質および阻害剤

本発明は、γ−セクレターゼを活性化し、β−アミロイドタンパク質(Aβ)を生産する、以前に特徴付けられていないタンパク質(ガンマセクレターゼを活性化するタンパク質またはgSAP)を提供する。Aβの沈着は、アルツハイマー病および他の病理と関連している。したがって、本発明は、例えば、該新規タンパク質のスクリーニング方法および新規研究手段、阻害剤、ならびにアルツハイマー病およびAβの沈着と関連する他の神経変性状態の診断、処置およびコントロールの方法をさらに提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本分野は、γ−セクレターゼを活性化し、β−アミロイドタンパク質(Aβ)を生産する、以前に特徴付けられていないタンパク質に関する。Aβの沈着は、アルツハイマー病および他の病理と関連している。本発明は、例えば、該新規タンパク質のスクリーニング方法および新規研究手段、阻害剤、ならびにアルツハイマー病およびAβの沈着と関連する他の神経変性状態の処置およびコントロールの方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
現在、世界中で1200万を越える人々がアルツハイマー病(AD)に罹患している。この数は、次の40年後に4倍になると予測されている。そのため、ADの処置は、満たされていない大きな医薬的要求の典型である。ADを処置するための現在承認されている医薬は、症状の改善を助け得るが、疾患の進行を停止するために有効ではない。
【0003】
特定の理論に束縛されることなく、アルツハイマー病(「AD」)の病理には、アミロイド−β(「Aβ」)が関与しており、これは、β−アミロイド前駆体タンパク質(アルツハイマー病関連前駆体タンパク質または「APP」)の代謝物であり、ADの主要な病理学的決定因子であると考えられている。これらのペプチドは、主に、40または42個のアミノ酸形態で存在し、それぞれAβ1−40(「Aβ40」)またはAβ1−42(「Aβ42」)である。Aβ40およびAβ42は、ベータセクレターゼによる開裂の後でAPPのC末端近くで起こる2つの酵素的開裂によって産生される。開裂に関与する酵素であるβ−セクレターゼおよびγ−セクレターゼは、それぞれAβのN末端およびC末端を生じる。Aβのアミノ末端は、APPのメチオニン残基596とアスパラギン酸残基597の間のβ−セクレターゼ開裂によって形成される(番号は、APP695アイソフォームに基づく)。γ−セクレターゼは、このβ−セクレターゼ開裂産物のC末端を、種々の位置、38残基、40残基または42残基で開裂し、Aβペプチドを放出する。第3の酵素であるα−セクレターゼは、βおよびγ開裂部位間で前駆体タンパク質を開裂し、Aβ生産を排除し、非病理学的であるP3として知られる約3kDaのペプチドを放出する。β−セクレターゼおよびα−セクレターゼ開裂の両方は、また、それぞれsAPPβおよびsAPPαとして知られる、APPの可溶性の分泌される末端フラグメントをもたらす。sAPPαフラグメントは、神経保護性であることが示唆されている。例えば、γ−セクレターゼは、また、Notch−1タンパク質を開裂し、他の基質を有することが考えられている。直接作用するガンマ−セクレターゼ阻害剤は、Notch開裂を必要とする発達経路における効果による実質的な、および望ましくない副作用を有する。乱雑な可能性のある酵素における基質特異性を与える分子メカニズムについては、あまり知られていない。ガンマセクレターゼ酵素は、4つのサブユニット:プレセニリンニカストリン、前部咽頭欠損1(anterior pharynx−defective 1)(APH−1)、およびプレセニリンエンハンサー2(PEN−2)を含むことが知られている。
【0004】
正常個体において、Aβペプチドは、それぞれ異なるCOOH−末端を有する2つの優性型である多数のAβ−40(Aβ1−40としても知られている)形態および少数のAβ42(Aβ1−42としても知られている)形態において見られる。ADの主な組織学的病変は、冒された脳領域において起こる老人斑および神経原線維のもつれである。老人斑は、Aβペプチド、主にAβ40およびAβ42からなる。健常なニューロンはAβ42と比較して少なくとも10倍以上のAβ40を生産するが、プラークは高い割合であまり可溶性でないAβ42を含む。家族性アルツハイマー病の最も一般的な形態を有する患者は、Aβ42形態の量において増加を示す。Aβ40形態は、アミロイドプラークの早期沈着と関連しない。対照的に、Aβ42形態は実質性プラークにおいて早期に、および主に蓄積し、Aβ42が家族性アルツハイマー病患者におけるアミロイドプラーク沈着において主な役割を果たすという強力な証拠がある。神経原線維のもつれは、凝集されたtauタンパク質からなり、AD病理学的におけるそれらの役割はあまり明白でない。AD症状は、プラークよりもむしろ全ての脳のAβと非常に密接に相関している。AD事象の約10%は、APPまたはプレセニリン1およびプレセニリン2遺伝子のいずれかにおける変異の常染色体優性遺伝に起因する。両方の場合において、全AβまたはAβ42 対 Aβ40の生産の増加をもたらす。
【0005】
N2a細胞系は、ADにおける神経変性に関連するAβ生産のモデル系として、広範囲に試験されている。N2a細胞におけるAβの生産を測定するアッセイは既知であり、Aβ生産活性は、例えば、Aβ ELISAアッセイおよび/またはウェスタンブロット法により評価される。Gleevec(イマチニブ、STI571)のような化合物を含む種々の薬剤は、10μM以下の薬物濃度で、N2a細胞系におけるAβレベルを低下させることができることが以前に示されている。
【0006】
国際特許公報WO03/057165は、以前に既知のチロシンキナーゼ阻害剤、例えば、イマチニブが、Aβの生産および蓄積を阻害するために有用であることを記載している。Netzerら Proc Natl Acad Sci., 100(21):12444−9 (2003)は、イマチニブがNotch−1のγ−セクレターゼ開裂に影響せず、神経に対して許容されない毒性を有さずAβの生産を阻害することが示した。しかしながら、イマチニブは、血液脳関門をあまり透過せず、他の生物学的効果を有するため、ADを処置するための理想的な薬物ではない。Aβの生産および蓄積の阻害のためのイマチニブの特異的な標的は明確にされておらず、したがって、改善された誘導体の発見という課題を示す。
【発明の概要】
【0007】
発明の概要
本発明者らは、γ−セクレターゼおよびその基質であるアミロイド前駆体タンパク質のC−末端フラグメント(APP−CTF)の両方との相互作用に関与するメカニズムを介してAβ生産を選択的に調節する、新規のγ−セクレターゼを活性化するタンパク質(gSAP)を見出した。gSAPはNotchと相互作用せず、γ−セクレターゼによる開裂に影響しない。組換えgSAPは、インビトロおよび無傷の細胞でAβ生産を刺激する。細胞系におけるgSAPの減少はAβレベルを減少させる。アルツハイマー病のマウスモデルにおけるgSAPのノックダウンは、Aβのレベルおよびプラーク発生を減少させる。gSAPは、gSAPの阻害がAβ形成における有意な減少をもたらすため、アルツハイマー病および他のAβ介在状態の処置のための新規治療標的を示す。
【0008】
出願人は、gSAPを阻害し、したがってAβの減少を引き起こすが、いくつかのガンマ−セクレターゼ阻害剤の使用で起こりうる副作用であるNOTCH代謝に影響しない化合物を合成した。
【0009】
したがって、本発明は、例えば、gSAPを選択的に阻害する能力を測定することを含むAβの減少における潜在的な有用性に関する化合物をスクリーニングする方法、および有効量のgSAPを選択的に阻害する化合物を投与することを含む、Aβ介在状態、例えば、ADを処置する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、種々の動物種、ヒト、イヌ、ウシ、マウス、ラットおよびニワトリ由来のgSAPに関する配列アラインメントを示す。太字の残基は6種にわたって同一である。イタリックの残基は保存的に置換されている。
【図2】図2は、異なる組織におけるgSAPの発現レベルを示す。3月齢の野生型BL/6マウス由来の組織を回収し、gSAPレベルをリアルタイムPCRを使用して定量する。アクチンおよびGAPDHの両方を内部コントロール(n=6)として使用する。組織抽出物を分析前に同じタンパク質レベルに調節する。
【図3】図3は、ADマウスモデルにおいてAβ生産およびプラーク発生を減少させるshRNAによるgSAPの阻害を示す。
【図4】図4は、二重トランスジェニックADマウスにおけるアミロイドプラーク発生の減少におけるgSAPに対するAAV2を有するshRNAの海馬内注射の効果を示す。
【図5】図5は、APP処理におけるgSAP作用を示す。gSAP、APPおよびγ−セクレターゼの三重複合体(上)は、γ−開裂(Aβ−ベータ生産)の増加およびε−開裂(AICD生産)の減少と関連する。gSAPの非存在下(下)で、APPおよびε−セクレターゼの二元複合体は、γ−開裂の減少およびε−開裂の増加と関連する。
【図6】図6は、APP−CTFの切断およびgSAPを介するgSAP抗体を使用する免疫沈降を示し、gSAPがAPP−CTFの膜近傍領域と相互作用することを証明する。APP−CTF−T1は、N−末端からHHGV64にわたるAPP−β−CTFの短縮された形態である。APP−CTF−T2は、N−末端からVMLKK55にわたるAPP−β−CTFの短縮された形態である。短縮された形態は、HEK293細胞において過剰発現し、gSAP抗体と免疫沈降する。6E10抗体を免疫検出のために使用する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
詳細な説明
詳細な説明において提供される実施例および図面は単に説明であり、あらゆる特許請求の範囲の解釈または説明において特許請求の範囲を限定するために使用すべきでない。
【0012】
主にAβペプチドから成る老人斑は、アルツハイマー病の特徴である。Aβは、γ−セクレターゼによる開裂時にAPP−CTFから生じる。γ−セクレターゼは、また、多数の他のI型膜タンパク質(例えば、Notch)を開裂し、重要な細胞機能を有する細胞内ドメインの放出をもたらす。結果として、非選択的γ−セクレターゼ阻害剤は、それらの臨床的使用を妨げる有害な副作用を有し得る。本研究室は、イマチニブ(STI571、Gleevec(登録商標))がNotch開裂に影響することなく全ての種のAβの生産を阻害することができることを以前に証明した Netzerら Proc Natl Acad Sci., 100(21):12444−9 (2003)。本発明者らは、今回、イマチニブのAβを低下させる活性が、本発明者らがγ−セクレターゼを活性化するタンパク質(gSAP)と称する以前に知られていない因子との相互作用からもたらされることを決定した。
【0013】
イマチニブの選択的なAβを低下させる活性に関与する標的を同定するために、本発明者らは、イマチニブのビオチン化された誘導体である「ビオチン−イマチニブ」を合成した。プレセニリン−1、PEN2およびニカストリンを含む可溶化γ−セクレターゼ成分は、固定化されたビオチン−イマチニブにより特異的に捕捉される。イマチニブが直接相互作用するタンパク質を同定するために、本発明者らは、光活性化可能なアジドイマチニブ誘導体であるG01を合成した。125I−G01を膜調製物と共にインキュベートし、次に光分解したとき、γ−セクレターゼの4つの成分は標識されない。むしろ、125I−G01は、よりゆっくり移動する18kDaのプレセニリン−1−CTFと共免疫沈降する〜16kDaのタンパク質を標識する。この結果は、細胞透過性H−G01を使用して無傷の細胞を光標識することにより確認する。125I−G01と同様に、H−イマチニブ誘導体は4つのγ−セクレターゼ成分のいずれとも結合せず、PS1と共免疫沈降した〜16kDaのバンドを標識しない。
【0014】
可能性のある標的タンパク質を精製するために、固定化されたビオチン−イマチニブを可溶化膜調製物と共にインキュベートし、結合したタンパク質をSDS−PAGEにより分離する。銀染色後、〜16kDaバンドを観察する。トリプシン消化後の該バンドから得られ、タンデム質量分析により分析されたペプチドフラグメントは、特徴付けられていないタンパク質であるハトホモログタンパク質(PION)(ヒト受入番号:NP_059135)のC−末端領域に対応した。該同定は、16KDaのフラグメントの約20%をカバーする2つのユニークな(unique)トリプシンペプチド(766LWDHPMSSNIISR778および779NHVTRLLQNYKK790)に基づいて行う。その配列、とりわけC−末端領域は、ニワトリからヒトまでの多様な種のなか高度に保存されている。発現パターン分析は、該遺伝子が種々の組織において発現されることを示す。本発明者らは、ガンマ−セクレターゼを活性化するタンパク質(gSAP)としてPIONを特徴付ける。
【0015】
その予測された配列に基づいて、ヒトgSAPの全オープンリーディングフレームは、854個のアミノ酸のタンパク質(〜98kDa)をコードする。16kDaのフラグメントが高分子量の前駆体から得ることができるか否かを決定するために、神経芽腫細胞中の内因性gSAPの代謝をパルス・チェイス分析によりモニタリングする。該結果は、gSAPがホロ(holo)タンパク質(〜98kDa)として合成され、〜16kDaのC−末端フラグメント(gSAP−16K)に迅速にプロセッシングされることを示した。定常状態において、16kDaのフラグメントは優性型である。神経芽腫細胞と光活性化可能なH−G01とのインキュベーション、次に抗gSAP抗体との免疫沈降によって、イマチニブがgSAP−16Kに直接結合することを確認する。プレセニリン1/2(−/−)胚幹細胞において、イマチニブはまた、gSAPにも結合し、gSAPへのその結合がプレセニリンを必要としないことを示す。gSAPレベルがsiRNAを使用して減少するとき、ビオチン−イマチニブと関連するγ−セクレターゼの量は有意に減少する。これは、γ−セクレターゼ複合体に対するイマチニブのアフィニティーがgSAPに依存することを示す。
【0016】
siRNAを使用して、APP695を過剰発現する神経芽腫細胞中のgSAPレベルが(72±15%)減少されるとき、Aβのレベルは約50%減少する。イマチニブの添加は、Aβレベルに対してわずかな付加的な効果を有するか、または付加的な効果がない。APP Swedish変異体を発現するHEK293細胞におけるShRNA介在gSAPノックダウン(65±12%まで)は、また、Aβ40およびAβ42レベルにおいてそれぞれ61%および48%の減少をもたらす。逆に、APP Swedish変異体を発現するHEK293細胞におけるgSAPの過剰発現は、約38%のAβ生産を刺激する;該増加はイマチニブ処理により無効にされる。全体として、これらの発見は、gSAPが、イマチニブおよび関連分子がAβを低下させる間の分子であることを示す。
【0017】
イマチニブの1つの示差的特徴は、Notch開裂に影響しないが、Aβ生産の選択的な阻害である(Netzerら 2003)。Notch開裂におけるgSAPの効果は、γ−セクレターゼに対するNotch基質であるNotch ΔE(細胞外ドメインを有さないNotch)を安定に発現するHEK293細胞を使用して評価する。Notch細胞内ドメイン(NICD)であるγ−セクレターゼ開裂産物のレベルは、shRNAを使用するgSAPレベルの減少、またはgSAPの過剰発現のいずれかにより変化しない。したがって、gSAPは、Notchではなく、APPのγ−セクレターゼ開裂を調節する。
【0018】
gSAPがγ−セクレターゼ活性を調節することができるか否かをさらに試験するために、Aβ生産に対する精製されたgSAPの効果を、インビトロでのγ−セクレターゼアッセイで試験する。大腸菌における発現後に単離される組換えgSAP−16K(全長ヒトgSAPのaa 733−854)を、過剰発現されたAPP−β−CTFを含むHEK293細胞由来の膜調製物に加えると、Aβ生産は2.4±0.3倍に刺激される。これらのインビトロの結果は、gSAPがγ−セクレターゼ活性の直接的調節によりAβ生産を刺激することを示す。
【0019】
内因性gSAPがγ−セクレターゼとの複合体中にあり得るか否かを決定するために、本発明者らは、1%のCHAPSOに可溶化された神経芽腫細胞由来の膜タンパク質のゲル濾過分析を使用する。内因性gSAP−16Kおよびγ−セクレターゼは、高い分子量複合体として共遊走する。加えて、内因性gSAPは、γ−セクレターゼ成分と共免疫沈降し、これらのタンパク質が細胞中で複合体で存在するというさらなる証拠を提供する。これらの結果は、インビトロでのγ−セクレターゼ活性アッセイからの結果と共に、gSAP−16Kがγ−セクレターゼとの複合体中にあり、プロテアーゼを活性化することができることを強く示唆する。
【0020】
γ−セクレターゼ活性の他のいくつかの調節因子とは対照的に、gSAPは、Notchではなく、APPの開裂に選択的であり、影響する。γ−セクレターゼによる基質選択のメカニズムは不明なままであるが、広範な基質認識を有する多くの他のプロテアーゼおよびホスファターゼは、コア酵素を基質の一部へ結合する補助因子を介して特異性を達成することができる。gSAPがこのような特異性を与え得るメカニズムを決定するために、本発明者らは、HEK293細胞における特異的な基質へのその結合を分析する。gSAP−16Kは、Notch ΔEとではなく、APP−CTFと免疫沈降する。イマチニブ(10μM)の添加は、gSAPおよびAPP−CTF間の相互作用を47±14%(n=3)減少させる。Notchへではなく、APP−CTFへのgSAPの結合は、APP処理におけるgSAPの選択的な効果を説明し得る。イマチニブによるこの相互作用の破壊は、そのAβを低下させる活性を説明できる可能性がある。
【0021】
gSAPおよびAPP間の相互作用の部位は、APP−CTFの膜近傍領域における部位にあると決定される(図6)。APP−CTFは、膜貫通ドメインの中央でγ−セクレターゼにより開裂され、Aβを産生し(γ−開裂)、サイトゾル膜境界付近で開裂され、APP細胞内ドメイン(AICD)を産生する(ε−開裂)。AICD生産におけるgSAPの効果を、APP695を過剰発現するN2a細胞において試験する。gSAPノックダウンおよびイマチニブ処理の両方は、AICDのレベルを増加させる(補助的な図7a)。HEK293細胞におけるgSAP過剰発現は、AICD生産を減少させる(補助的な図7b)。これらの結果は、gSAPがAPP−CTFのγおよびε−開裂を特異的に調節し、それぞれAβおよびAICDを形成することを示す。
【0022】
本発明者らの見出したことがAD病理と関連しているか否かを決定するために、可溶性Aβレベルおよびプラーク発生に対するgSAPの効果をインビボで試験する。gSAPノックダウンマウス系を、マウスのゲノム遺伝子座へのテトラサイクリン誘導gSAP shRNAベクターの組み込みにより産生する。誘導すると、マウスの脳におけるgSAPのmRNAレベルは〜85%減少する。インビボでのAβレベルにおけるgSAPの効果を評価するために、gSAP RNAiマウスを、APPsweおよびPS1Δ9変異体を有するADマウスモデル(AD 2×マウス)(Jankowskyら 2001)と交雑する。gSAP shRNA誘導の1月後、交雑されたマウスにおけるAβ40およびAβ42レベルは、それぞれ〜28%および〜32%低下する。AD 2×マウスにおけるプラーク発生に対するgSAPの効果を評価するために、gSAP shRNAを有する組換えアデノ随伴ウイルス2(AAV2)を脳の片側におけるプラーク発生の海馬に注射するが、対側部位にはshRNAを有さないAAV2を与える。gSAPノックダウンの同側部位におけるアミロイドプラーク発生は、1月後に、対側部位と比較して26±8%(p<0.001、n=4)抑制される。これらのデータは、gSAPがインビボでAβ形成およびプラーク発生において重要な役割を果たすことを示す。
【0023】
要約すると、ガンマ−セクレターゼは、これらの開裂部位と低い相同性を有する種々の基質を処理する。発育中および組織ホメオスタシスにおけるγ−セクレターゼの種々の役割には、その活性がしっかりと調節されている必要がある。最近の報告は、γ−セクレターゼによる開裂の選択性を修飾する生物学的分子の存在を示している。機能が以前に知られていない新規タンパク質であるgSAPの発見、およびAβ形成を選択的に刺激するその能力は、ADおよび他のAβ介在疾患、例えば、アルツハイマー病、進行性核上まひ、ダウン症候群、記憶および認知障害、認知症、アミロイドニューロパシー、脳の炎症、神経および脳外傷、血管アミロイドーシス、アミロイドーシス(amyloeiosis)での脳出血、パーキンソン病、ハンチントン病、プリオン病ならびに/またはtauまたはアミロイドタンパク質、例えば、Aβの異常発現または蓄積と関連する血管、神経学的および/もしくは神経変性障害に対処する薬物の開発のための新規戦略を可能にする。gSAPの阻害剤は、γ−セクレターゼの他の重要な機能に影響することなくβアミロイド形成を選択的に防止するであろう。この展望のサポートにおいて、本発明者らは、広範に使用される抗癌剤であるイマチニブが、他のγ−セクレターゼ機能に影響することなく、Aβを産生するためのγ−セクレターゼのgSAP活性化を防止することによりAβを低下する効果をなし遂げることを証明する。gSAPの強力かつ直接的な薬理学的阻害剤の発見は、アルツハイマー病の処置のための新規治療薬の開発を容易にするはずである。
【0024】
gSAPは、例えば、図1に記載されている、種々の動物種において存在することが見出され、高度に保存されている。gSAPペプチドは、以下のペプチドである。
a.BLASTアルゴリズム(例えば、http://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi参照)を使用して、図1に記載されている配列から選択される配列と少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、例えば、少なくとも80%、例えば、少なくとも90%類似しているペプチド
b.図1において太字の保存された残基に対応する残基を有するペプチド、または
c.配列番号7(LWDHPMSSNIISR)および/または配列番号8(NHVTRLLQNYKK)の配列を含むペプチド、または
d.図1に記載されている配列番号1−6のいずれかのペプチド、とりわけヒトgSAP、または
e.ガンマセクレターゼとの複合体を形成することができるgSAPのフラグメント、例えば、図1に記載されている配列番号1−6のいずれかのC−末端由来の約16kDaのフラグメント、とりわけヒトgSAP−16K。
【0025】
1つの局面において、本発明は、例えば、細菌、バキュロウイルスまたは哺乳動物細胞により生産される、天然環境から単離され、精製された上記定義のgSAPペプチド、例えば、トランスジェニックgSAPペプチドを提供する。
【0026】
別の局面において、本発明は、異種プロモーターに作動可能に連結したgSAPペプチドに対する遺伝子を含むベクターを提供する。
【0027】
別の局面において、本発明は、gSAPペプチドを発現する異種遺伝子を含む細胞を提供する。
【0028】
別の局面において、本発明は、哺乳動物細胞におけるgSAP発現を阻害することができる阻害性RNA構築物を提供する。
【0029】
別の局面において、本発明は、
a.例えば、ガンマ−セクレターゼとの相互作用を阻害し、それによりAβ生産および蓄積を阻害または減少することができる、gSAPに対するモノクローナル抗体;
b.gSAPの免疫原性フラグメントを適当なアジュバントおよび/または担体と共に含むワクチン;および
c.免疫原性担体に連結したgSAPの免疫原性フラグメントを含む免疫原性複合体
を提供する。
【0030】
別の局面において、本発明は、gSAPに対する遺伝子が破壊されている、gSAPノックアウト哺乳動物、例えば、哺乳動物、例えば、マウスを提供する。
【0031】
別の局面において、本発明は、以下の1つ以上のことを含む、Aβ沈着を阻害する化合物を同定するためのアッセイ、例えば、Aβ沈着の阻害剤を同定する方法における、例えば上記定義の、gSAPペプチドの使用を提供する:
a.i.例えば、競合的結合アッセイにおいて、
ii.例えば、イマチニブ
【化1】

の標識化された誘導体を使用して:
iii.例えば、メチルピペリジニル部分にて標識基による置換または標識基での修飾により標識化されている、
iv.例えば、
1.光標識された誘導体、例えば、4−アジド−2−ヒドロキシ−N−(4−メチル−3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル)ベンズアミド、
2.放射性標識された誘導体、例えば、4−アジド−2−ヒドロキシ−5−125ヨード−N−(4−メチル−3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル)ベンズアミドまたはH−イマチニブ、および
3.例えば、IC339239およびIC2000001(不活性な対照化合物)
【化2】

から選択されるビオチン化された誘導体
から選択される、
例えば上記定義の、gSAPペプチドへの試験化合物の結合を測定すること。
【0032】
したがって、本発明は、例えば上記定義の、イマチニブの標識化された誘導体をさらに提供する。
【0033】
本発明は、対照集団を使用して同定される正常値と比較して、向上したgSAPにおける発現レベルおよび/または変異を調べることを含む、ADを発症する危険性がある個体を同定する方法をさらに提供する。
【0034】
本発明のこの局面のさらなる特徴において、処置を必要とする温血動物、例えば、ヒトにおける異常タンパク質凝集体の蓄積に対する阻害効果を生産するための方法であって、有効量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を該動物に投与することを含む方法を提供する。
【0035】
さらに、本発明の化合物は、とりわけ脳における異常タンパク質凝集体の蓄積により特徴付けられる疾患、例えば、アルツハイマー病、進行性核上まひ、ダウン症候群、記憶および認知障害、認知症、アミロイドニューロパシー、脳の炎症、神経および脳外傷、血管アミロイドーシス、アミロイドーシスでの脳出血、パーキンソン病、ハンチントン病、プリオン病ならびに/またはtauまたはアミロイドタンパク質、例えば、Aβの異常発現または蓄積と関連する血管、神経学的および/もしくは神経変性障害のような疾患の処置、コントロールおよび管理において有用である。このような異常タンパク質凝集体は、例えば、i)アミロイドプラークおよび神経原線維のもつれ、ならびにii)tauまたはアミロイドタンパク質、例えば、Aβの沈殿物を含む。
【0036】
したがって、本発明は、有効量のgSAP活性を阻害する化合物を投与することを含む、アルツハイマー病、進行性核上まひ、ダウン症候群、記憶および認知障害、認知症、アミロイドニューロパシー、脳の炎症、神経および脳外傷、血管アミロイドーシス、アミロイドーシスでの脳出血、パーキンソン病、ハンチントン病、プリオン病ならびに/またはtauまたはアミロイドタンパク質、例えば、Aβの異常発現または蓄積と関連する血管、神経学的および/もしくは神経変性障害の処置の方法を提供する。
【0037】
gSAP活性を阻害するために有用な化合物は、既知の小分子、例えば、
a.国際特許公報WO03/057165および米国特許第5,521,184号(これらの内容を出典明示により本明細書に包含させる)において記載されているイマチニブおよび他の化合物、
b.WO05/072826;J. Zimmermannら Bioorganic & Medicinal Chem. Lett., 7(2): 187−192;EP 1 533 304;WO04/005281;WO05/039586;米国特許第5,521,184号;およびWO04/110452(これらの内容を出典明示により本明細書に包含させる)に記載されている化合物、および
c.WO/2008/153974、WO/2008/153959およびWO/2008/057599(これらの内容を出典明示により本明細書に包含させる)において記載されている化合物
を含む。
【0038】
gSAP活性を阻害するために有用な化合物は、また、本明細書に記載されている新規生物学的薬物、例えば、
a.例えば、gSAPに対するmRNAの一部に対応し、gSAPの転写または翻訳を阻害することができる二本鎖、ヘアピン、センスまたはアンチセンスRNAから選択される阻害性RNA分子;例えば、
i.センス配列、例えば、AUGCAGAGCUGGACGACAUUUおよびアンチセンス配列、例えば、5’−P.AUGUCGUCCAGCUCUGCAUUUを含むsiRNA;または
ii.gSAP shRNAコード配列、例えば、TCCCGGAACTCCATGATTGACAAATTTCAAGAGAATTTGTCAATCATGGAGTTCC TTTTTAまたは
TGCTGTTGACAGTGAGCGCGGAAATAGAGTGGTGATTAAATAGTGAAGCCACAGATGTATTTAATCACCACTCTATTTCCATGCCTACTGCCTCGGAにより生産されるヘアピン転写産物;
b.阻害性RNA分子を生産するベクターおよび細胞、例えば、gSAP shRNAを有する組換えアデノ随伴ウイルス2(AAV2);
c.gSAPに対する抗体、とりわけモノクローナル抗体、例えば、C−末端領域からのフラグメント、例えば、16K−gSAPに対する抗体、例えば、より完全に以下に記載されているペプチドCFEGHDNVDAEFVEEAALKHT(複合体化のために結合されたN−末端システインを有するヒトgSAPのaa829−848に対応する)に対する抗体;
d.gSAPのフラグメントを免疫原性アジュバントおよび/または担体と共に、例えば、免疫原性担体、例えば、細菌トキソイド、例えば、ジフテリアまたは破傷風菌トキソイド、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、ブルー(blue)担体タンパク質、オボアルブミンまたはウシ血清アルブミンと複合体化されて、および/またはアジュバント、例えば、フロイントアジュバントまたはアラムアジュバントと一緒に送達されることを含むgSAPに対するワクチン
を含む。
【0039】
本発明は、さらなる態様において、gSAP標的療法、例えば、上記のgSAP阻害剤またはワクチンの投与での処置のための候補を同定するための方法、例えば、
1.例えば、発現が高いことがgSAP標的療法での処置のための候補において見られる、gSAPに対する抗体またはgSAP発現に対する定量PCRを使用して、gSAP発現を測定すること;または
2.gSAPまたはgSAP発現に影響する変異を有する、例えば、以下の群のSNP
a)rs6976567|rs1468682|rs1819814、
b)rs1468682|rs1819814|rs4729535、
c)rs1819814|rs4729535|rs4729540、
d)rs7781642|rs6955503|rs7776973
のいずれかを含むハプロタイプを有する患者を同定することであって、
このような変異体またはハプロタイプを有する患者がgSAP標的療法での処置のための候補であると同定すること;
3.gSAP活性に影響する変異、例えば、APP−CTFの膜近傍領域をコードする配列での変異を有する患者を同定することであって、このような変異体またはハプロタイプを有する患者がgSAP標的療法での処置のための候補であると同定すること
から選択される方法を提供する。
【0040】
本発明は、例えば、gSAPに対するモノクローナル抗体、またはgSAP遺伝子に対するプライマーもしくはそれらのフラグメント、およびgSAP 遺伝子またはAPP−CTFに対する遺伝子の膜近傍領域における変異を検出するためのオリゴヌクレオチドプローブを含む、このような方法における使用のための診断アッセイキットをさらに提供する。
【実施例】
【0041】
実施例1−標識されたイマチニブ誘導体の合成
2,5−ジオキソピロリジン−1−イル 4−アジド−2−ヒドロキシベンゾエート(NHS−ASA)を、ProChem. Inc (Rockford, IL)から購入する。6−メチル−N−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イル)ベンゼン−1,3−ジアミンおよびN−(4−メチル−3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル)−4−(ピペラジン−1−イルメチル)ベンズアミド(N−デスメチルイマチニブ)を、ChemPacific Inc (Baltimore, MD)から購入する。2,5−ジオキソピロリジン−1−イル 5−((3aS,4S,6aR)−2−オキソ−ヘキサヒドロ−1H−チエノ[3,4−d]イミダゾール−4−イル)ペンタノエート(ビオチン−OSu)、N−(クロロ(ジメチルアミノ)メチレン)−N−メチルメタンアミニウムヘキサフルオロホスフェート(TCFH)、トリフルオロ酢酸(TFA)、1H−ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール−1−オール(HOBt)およびN,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)を、Sigma−Aldrich (St. Louis, MO)から購入する。Tert−ブチル2−(ピペラジン−1−イル)エチルカルバメートを、Astatech Inc (Bristol, PA)から購入する。
【0042】
(a)ビオチン−イマチニブ(活性な、および不活性な形態)の合成およびキナーゼプロファイリング:ビオチンイマチニブの2つの形態が合成され、一方はイマチニブの特徴的なキナーゼ活性を有し、もう一方はキナーゼ活性を欠いている。
【化3】

【0043】
不活性なビオチン−イマチニブ(IC200001)は、N−デスメチルイマチニブをビオチン−OSuと反応させることにより合成される。活性なビオチン−イマチニブ(IC339239)は、重要な中間体であるtert−ブチル2−(ピペラジン−1−イル)エチルカルバメートおよび6−メチル−N−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イル)ベンゼン−1,3−ジアミンから4つの工程を介して合成される:
【化4】

試薬および条件:(a)4−(ブロモメチル)安息香酸、KCO、DMF、室温、2時間。(b)6−メチル−N−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イル)ベンゼン−1,3−ジアミン、TCFH、DIPEA、DMF、室温、一晩。(c)TFA、CHCl、室温、30分。(d)ビオチン−OSu、HOBt、DIPEA、室温、一晩、次にHPLC精製。
【0044】
キナーゼプロファイリングを、AblキナーゼおよびPDGF受容体(ATP=45μM)の標準アッセイを使用するMillipore Incにより行う。化合物IC200001は、どちらのキナーゼに対しても有意な阻害活性を示さないが、化合物IC339239は、Ablキナーゼに対して146nMのIC50(イマチニブは79nMのIC50を有する)およびPDGF受容体に対して6.6μMのIC50(イマチニブは4.8μMのIC50を有する)を有する。したがって、本発明者らは、IC200001を「不活性なビオチン−イマチニブ」と、IC339239を「活性なビオチン−イマチニブ」と称する。
【0045】
(b)フォトアフィニティー標識のイマチニブであるG01の合成:イマチニブ誘導体である4−アジド−2−ヒドロキシ−N−(4−メチル−3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル)ベンズアミドは、光活性化されることができる。N,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)(63μl、0.36mmol)を、DMF(2ml)中のNHS−ASA(50mg、0.18mmol)、HOBt(25mg、0.18mmol)および6−メチル−N−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イル)ベンゼン−1,3−ジアミン(50mg、0.18mmol)の溶液に加える。反応混合物を、アルゴン雰囲気下で一晩室温で撹拌する。産生された粗生成物を半分取HPLCにより精製し、54mgの表題化合物を68%の収率で得る。生成物であるG01の4−アジド−2−ヒドロキシ−N−(4−メチル−3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル)ベンズアミドをポジティブモード[M+H]においてESI−MSを使用する質量スペクトル分析により行い、439.1のm/zを証明する。
【0046】
(c)125IによるG01の放射性ヨウ素化をクロラミン−T処理の修飾を使用して担体なしで行い、ヨウ素化生成物をHPLCにより精製する。具体的には、全容量0.9mlのUV保護「V」バイアルにおいて、〜10mCiの125I貯蔵アイソトープ(容量=25μl)を200μlの0.2Mのリン酸バッファー、pH7.2に加える。G01をエタノールに1mg/mlで溶解し、25μlのこの溶液を水(50μl)中1mg/mLでクロラミン−Tと混合し、次にV−バイアルに加える。反応を1分間行い、50μLの1mg/mlのメタ−亜硫酸水素塩の添加により終了させる。反応混合物を、「A」溶媒として水中0.1%のTFAおよび「B」溶媒としてアセトニトリル中0.1%のTFAを使用して、25cmのWaters RP−C18カラムでクロマトグラフィーする。勾配は、1ml/分で、0%のBから50%のBで45分間行い、50%のBで15分保持する。生成物は54.5分の保持時間を証明し、放射化学検出し、ミリモルあたり2000キュリーの比活性を有した。I125標識実験をPerkinElmer Life and Analytical Sciences, Incにより行う。イマチニブと比較して、G01、125I−G01の構造は以下のとおりである:
【化5】

H−G01を、G01の触媒トリチウム交換を介してViTrax放射化学により製造する。標識された生成物をHPLCにより精製する。精製された生成物の組成を、トリチウム標識生成物とそのコールド(cold)前駆体との共インジェクションおよび両化合物を分析的HPLCで共クロマトグラフィーすることにより確かめる。
【0047】
(d)Aβ生産の細胞アッセイおよびG01とのインキュベーション
ヒトAPP695を安定に過剰発現する神経芽腫2a細胞を、10μMのG01で3時間処理する。DMSOまたはDMSO プラス イマチニブで処理された細胞を対照として使用する。3時間後、馴化培地を回収し、Aβ免疫沈降を4G8抗体を使用して行う。免疫沈降されたAβを10−20%のトリス−トリシンゲルで分離し、PVDF膜に移し、6E10抗体により検出する。イマチニブほど強力ではないが、G01は、10μMのレベルでDMSOビヒクルと比較して、Aβを有意に減少させる。
【0048】
実施例2:イマチニブの固定化およびアフィニティー精製
アフィニティー精製のために、HEK293細胞をプロテアーゼ阻害剤の存在下で10mMのHepes、250mMのスクロース、pH7.4とホモジェナイズする。細胞残屑を1,000gで5分間の遠心分離により取り除いた後、上清を100,000gで1時間超遠心分離に付す。次に、膜ペレットをプロテアーゼ阻害剤(Roche Inc. cat#04 693 132 001)を含む50mMのHepes、150mMのNaCl、5mMのMgCl、5mMのCaClおよび1%のCHAPSO中で氷上で1時間可溶化し、100,000gで1時間、超遠心分離に付す。可溶性膜抽出物を、結合した活性なビオチン−イマチニブを含むMyoneTMストレプトアビジンT1ビーズ(cat#656−01, Invitrogen)と4℃で3時間インキュベートする。次に、ビーズを溶解物バッファーで3回洗浄する。結合したタンパク質をトリシンSDS−PAGEサンプルバッファーで溶離し、10−20%のトリス−トリシンゲルで分離する。免疫ブロット法のために、ゲルを次にPVDF膜に移し、γ−セクレターゼ抗体で調べる:PS1抗体(cat#529592)およびPen−2抗体(cat#NE1008)はEMD Biosciencesからであり、ニカストリン抗体はBD Transduction Laboratories(cat # 612290)からである。銀染色を使用して、SDS−PAGEゲルにおけるタンパク質バンドを同定する。〜16kDaのバンドを切り取り、トリプシン処理し、タンデムMS/MS質量分析により配列決定する。
【0049】
イマチニブの選択的なAβを低下させる活性に関与する標的を同定するために、本発明者らは、プレセニリン−1、PEN2およびニカストリンを含む可溶化γ−セクレターゼ成分を特異的に捕獲するイマチニブのビオチン化された誘導体「ビオチン−イマチニブ」を合成する。イマチニブが直接相互作用するタンパク質を同定するために、本発明者らは光活性化可能なアジドイマチニブ誘導体であるG01を合成する。125I−G01を膜調製物とインキュベートし、次に光分解すると、γ−セクレターゼの4つの成分は標識されない。むしろ、125I−G01は、よりゆっくり移動する18kDaのプレセニリン−1−CTFと共免疫沈降する〜16kDaのタンパク質を標識する。この結果は、細胞透過性H−G01を使用して無傷の細胞を光標識することにより確認する。125I−G01と同様に、H−イマチニブ誘導体は4つのγ−セクレターゼ成分のいずれかと結合せず、PS1と共免疫沈降した〜16kDaのバンドを標識しない。
【0050】
可能性のある標的タンパク質を精製するために、固定化された活性なビオチン−イマチニブを可溶化膜調製物とインキュベートし、結合したタンパク質をSDS−PAGEにより分離する。銀染色後、〜16kDaバンドを観察する。ペプチドフラグメントは、トリプシン消化後のこのバンドから得られ、タンデム質量分析により分析し、特徴付けられていないタンパク質であるハトホモログタンパク質(PION)(ヒト受入番号:NP_059135)のC−末端領域に対応した。該同定は、16KDaのフラグメントの約20%をカバーする2つのユニークなトリプシンペプチド(766LWDHPMSSNIISR778および779NHVTRLLQNYKK790)に基づいて行う。その配列、とりわけC−末端領域は、ニワトリからヒトへ多重種中で高度に保存されている。発現パターン分析は、この遺伝子が種々の組織において発現されることを示す。本発明者らは、ガンマ−セクレターゼを活性化するタンパク質(gSAP)としてPIONを特徴付ける。
【0051】
実施例3:インビトロでの無傷の細胞の光標識化
インビトロでの標識化のために、膜ペレットを上記のとおりに調製し、50mMのHepes、pH7.4、150mMのNaCl、5mMのMgCl、5mMのCaClに再懸濁する。再懸濁された膜を20nMの125I−G01と4℃で3時間インキュベートし、254nMで2分間、緻密化UVランプ(4ワット、モデル UVGL−25、UVP Inc.)を使用して光分解する。標識化特異性を試験するために、50μMのイマチニブを平行アッセイに加える。光分解後、膜を100,000gで1時間の超遠心分離によりペレット化し、50mMのHepes、150mMのNaCl、1% CHAPSO、5mMのMgCl、5mMのCaClで可溶化する。上清をタンパク質G プラス/タンパク質Aビーズ(EMD Biosciences, cat#IP05)で30分間で前除去し、タンパク質をタンパク質G プラス/タンパク質Aビーズと結合しているPS1抗体(EMD Biosciences, cat#529592)を使用して2時間で沈澱させ、溶解バッファーで4回洗浄する。結合した物質をSDS−トリシンサンプルバッファーで溶離し、10−20%のトリス−トリシンゲルを使用して分離し、次にPVDF膜に移す。該膜を乾燥させ、オートラジオグラフィー用のKodak MSフィルムに暴露させる。無傷の細胞の標識化のために、〜80%の密集度(〜10細胞)にまで増殖させたヒト胚腎臓細胞(HEK293)を、Opti−MEM中の0.1μMのH−G01でインキュベーター中で5%のCOで37℃で2時間インキュベートし、1時間氷に移す。培地を取り出し、細胞を冷リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、pH7.4で2回洗浄する。光分解を254nMで緻密化UVランプ(4ワット、モデル UVGL−25、UVP Inc.)を使用して氷上で2分間行う。対照として、細胞を、UV架橋なし、または50μMの標識されていないイマチニブの存在下のいずれかでインキュベートする。光分解後、細胞(それぞれの処置に対して〜10細胞)を、氷上でプロテアーゼ阻害剤混合物(Roche)を有する1mlの50mMのHepes、pH7.4、150mMのNaCl、1%のCHAPSO、5mMのMgCl、5mMのCaCl中で即座にホモジェナイズする。タンパク質G プラス/タンパク質Aビーズでの前除去後、タンパク質を10μlのPS1−ループ抗体(cat#529592 EMD Biosciences)を使用して2時間、免疫沈降する。免疫沈降物を溶解バッファーで3回洗浄する。免疫精製された(IP)物質をSDSサンプルバッファーで溶離し、生成物を10−20%のトリス−トリシンSDS−PAGEゲルを使用して分離し、PVDF膜に移し、該膜を乾燥させ、オートラジオグラフィー用のKodak MSフィルムに暴露させる。
【0052】
実施例4:gSAP抗体生産および代謝物標識化
gSAPに対するウサギポリクローナル抗血清を、キーホールリンペットヘモシアニン(cat#PI−77563, Fisher Scientific)と結合しているペプチドCFEGHDNVDAEFVEEAALKHT(複合体化のために結合されたN−末端システインを有するヒトgSAPのaa829−848に対応する)をニュージーランド 白色ウサギに注射することにより産生する。ウサギ注射、出血および飼育は、Cocalico Biologicals(Reamstown, PA)により行う。抗体を、会社の指示にしたがって固定化され、溶離される抗原ペプチドを有するSulfolink樹脂(Thermo Scientific, cat#44999)に血清を通すことにより精製する。パルス・チェイス標識化のために、神経芽腫2a細胞を、メチオニンおよびシステインを欠くDME最小必須培地(Met−Cys−DMEM)で30分間インキュベートする。細胞タンパク質を、EXPRESS 35Sタンパク質標識化ミックス(cat#NEG772014MC, Perkin Elmer)を含むMet−Cys−DMEMで37℃で15分標識化する。追跡期間は、培地を完全培養培地50%のDMEM/50%のOpti−MEM、5%のウシ胎児血清(FBS)と置き換えることにより開始し、細胞を37℃で種々の時間インキュベートする。連続的な標識化のために、細胞を追跡なしで4時間、35Sタンパク質標識化ミックス(Perkin Elmer)で標識化し、ダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)で洗浄する。細胞単層を、プロテアーゼ阻害剤を含むRIPAバッファー(10mMのTris、1%のデオキシコール酸塩、1%のTriton X−100、0.1%のSDS、pH7.4)に溶解させる。該溶解物を13,000rpmで20分の遠心分離により浄化し、上清をタンパク質G プラス/タンパク質Aビーズで前除去し、gSAP抗体を使用して2時間免疫沈降する。ビーズをトリス−トリシンサンプルバッファーとインキュベートし、結合したタンパク質を溶離し、10−20%のトリス−トリシンゲルにより分離し、PVDF膜に移し、オートラジオグラフィー用のKodak MRフィルムに暴露させる。
【0053】
実施例5:細胞ノックダウンおよび過剰発現
細胞gSAPノックダウン試験のために、gSAPの低分子干渉RNA(siRNA)をDharmacon Incから購入する。使用されるsiRNAの配列は以下のとおりである:センス配列:AUGCAGAGCUGGACGACAUUU;アンチセンス配列:5’−P.AUGUCGUCCAGCUCUGCAUUU。APP695を安定に過剰発現する神経芽腫2a細胞系に、製造業者により提供される指示にしたがって50nMの濃度でDharmaFect2試薬を使用してsiRNAをトランスフェクトする。非標的対照siRNA(cat# D−001810−01, Dharmacon Inc.)を対照として平行にトランスフェクトする。gSAPの小ヘアピンRNA(shRNA)をOpen Biosystemsから購入し、リポフェクタミン 2000を使用して細胞にトランスフェクトする。pGIPZ shRNAmir−GFPベクター中のマウスgSAP shRNAの配列は、以下のとおりである:TGCTGTTGACAGTGAGCGCGGGTATAGCCTTATTTGCATATAGTGAAGCCACAGATGTATATGCAAATAAGGCTATACCCATGCCTACTGCCTCGGA。pGIPZ shRNAmir−GFPベクター中のヒトgSAP shRNAの配列は、以下のとおりである:TGCTGTTGACAGTGAGCGCGGAAATAGAGTGGTGATTAAATAGTGAAGCCACAGATGTATTTAATCACCACTCTATTTCCATGCCTACTGCCTCGGA。ノックダウン有効性は、リアルタイムRT−PCRキット(cat#12183, Invitrogen)を使用して試験する。
【0054】
細胞におけるgSAP過剰発現のために、全長およびC−末端HAタグをコードするgSAPの16KDaのC−末端フラグメント(アミノ酸配列733−854)を有する哺乳動物発現ベクター pReceiver−M07を、Genecopoeia Incから購入する。プラスミドでXL1ブルーコンピテント細胞(cat#200249−11, Stratagene)を形質転換し、EndoFree Maxi調製キット(cat#12362, Qiagen)を使用して精製する。プラスミドを、Fugene 6(cat# 11815091001, Roche)を使用して、Swedish変異を含むAPP695を過剰発現する安定なHEK293細胞系にトランスフェクトする。
【0055】
Aβアッセイのために、培地をトランスフェクションの48時間後に取り出し、3時間のインキュベーション用のOpti−MEMと置き換える。次に、Aβを、4G8抗体を使用して馴化培地から免疫沈降する。馴化培地中のAβレベルの定量を、また、Aβ40およびAβ42 ELISAキット(Invitrogen)を使用して評価する。該処理は、製造業者の指示にしたがって行う。
【0056】
siRNAを使用して、APP695を過剰発現する神経芽腫細胞中のgSAPレベルを(72±15%)減少されるとき、Aβのレベルは約50%減少する。イマチニブの添加は、Aβレベルに対してわずかな付加的な効果を有するか、または付加的な効果がない。APP Swedish変異体を発現するHEK293細胞におけるShRNA介在gSAPノックダウン(65±12%まで)は、また、Aβ40およびAβ42レベルにおいてそれぞれ61%および48%の減少をもたらす。逆に、APP Swedish変異体を発現するHEK293細胞におけるgSAPの過剰発現は、約38%のAβ生産を刺激する;該増加はイマチニブ処理により無効にされる。
【0057】
実施例6:共免疫沈降
共免疫沈降のために、〜10個の細胞を、氷上でプロテアーゼ阻害剤を有する1mlの50mMのHepes、150mMのNaCl、1%のCHAPSO、5mMのMgCl、5mMのCaClで30分溶解させる。細胞残屑および核を13,000rpmで20分、遠心分離により除去する。タンパク質G プラス/タンパク質Aビーズで30分間前除去後、免疫沈降を、対応する抗体および30μlのビーズを使用して氷上で2時間行う。該ビーズを溶解バッファーで4回洗浄し、30μlのSDSサンプルバッファーで95℃で5分間溶離する。免疫沈降されたタンパク質をSDS−PAGEにより決定し、免疫ブロット法により分析する。プレセニリン1ループ抗体AB14(EMD Biosciences #529594)をPS1−NTFを検出するために使用し、Pen−2抗体はEMD Biosciences(#NE1008)から購入する。ニカストリン抗体はBD Biosciences(#612290)からである。HAモノクローナル抗体(#A0089)およびMycタグ ポリクローナル抗体(#A00172)は、Genscript Incからである。APP−CTFを369抗体(Xu et al. 1998)を使用して検出する。Covanceからの6E10(#SIG39320)および4G8(#SIG39220)抗体をAβを検出するために使用する。
【0058】
HEK293細胞膜調製物からの可溶化γ−セクレターゼ成分を、固定化されたイマチニブ誘導体であるビオチン−イマチニブに結合させ、免疫ブロット法により検出する。ビオチン被覆ビーズおよび不活性なビオチン−イマチニブ誘導体の両方を対照として使用した。内因性γ−セクレターゼ成分を、ニカストリン、PS1−CTFおよびPen−2に対する特異的抗体により検出する。光活性化可能な125IおよびH−G01を、膜調製物または無傷なHEK293細胞のそれぞれを標識化するために使用する。溶解およびPS1抗体での免疫沈降後、結合したタンパク質を10−20%のトリス−トリシンSDS−PAGEにより分離する。16kDaのバンドを、両方とも光標識化条件下でオートラジオグラフィーにより検出する。この標識化は、光分解前の50μMの標識されていないイマチニブとの共インキュベーションにより除去される。PS1−CTF抗体で調べられた同じ膜は、PS1−CTFが16kDaのバンドよりもゆっくりな移動度で移動し、G01により標識化されていないことを示す。ビオチン−イマチニブビーズに結合するHEK293細胞溶解物中のタンパク質をSDS−PAGEで分離し、銀染色で可視化する。ビオチン単独または不活性なビオチン−イマチニブに結合していない〜16kDaのバンドを検出する(アロー(arrow)および標識「gSAP」)。トリプシン処理後、16kDaのバンドを、MS/MS質量分析によりgSAPのC−末端ドメインとして同定する。
【0059】
N2a細胞中の内因性gSAPの35S−メチオニン パルス・チェイス標識化の次に、gSAPのC−末端に対するポリクローナル抗体を使用する免疫沈降を行う。gSAPは、全長98kDaの前駆体タンパク質として合成され、16kDaに移動するC−末端フラグメントに迅速に処理される。連続的な35S−メチオニン標識化(定常状態条件)の4時間後、gSAPの優勢な細胞型は、16kDaの種類である。無傷なN2a細胞の標識化をH−G01とのインキュベーションにより行う。細胞をRIPAバッファーで溶解し、タンパク質をgSAP抗体と免疫沈降する。SDS−PAGEおよびラジオグラフィーでの分離後、gSAP−16Kは、H−G01により特異的に標識化されることが見られる;この標識化は50μMのイマチニブとの細胞の前インキュベーションによりクエンチされる。ビオチン−イマチニブと結合したプレセニリンヌル胚幹細胞においてPS1で、またはPS1なしで過剰発現されるgSAPを、免疫ブロット法により検出する。gSAP siRNAノックダウン条件下で、PS1は、もはやビオチン−イマチニブを捕獲しない。
【0060】
実施例7:ゲル濾過クロマトグラフィー
N2a細胞を、上記のとおり、35Sタンパク質標識化ミックス(Perkin Elmer)で4時間で標識する。可溶化膜調製物(0.2ml、50mMのHepes、150mMのNaCl、1%のCHAPSO、5mMのMgCl、5mMのCaCl中で〜1mgの可溶化タンパク質)を、100,000gで1時間遠心し、可能性のある凝集物質を除去する。得られる上清を、AKTA高速液体クロマトグラフィー系(Amersham Biosciences)のSuperdex 200 10/300 GLカラム(Amersham Biosciences)に負荷する。分別を0.5ml/分の流速で溶解バッファー中で行い、1mlの画分を分析のために回収する。それぞれの画分を、γ−セクレターゼ抗体に対するウェスタンブロットにより分析する。内因性gSAPを検出するために、それぞれの画分をgSAP抗体と免疫沈降する。免疫沈降した物質をトリス−トリシン サンプルバッファーで溶離し、10−20%のトリス−トリシンゲルにより分離し、PVDF膜に移し、オートラジオグラフィー用のKodak MRフィルムに暴露する。
【0061】
実施例8:インビトロでのγ−セクレターゼアッセイ
膜ペレットを、上記のとおり、APP−β−CTF(CT−100)でトランスフェクトされたHEK293細胞から調製し、該膜をアッセイバッファー(10mMのHepes、140mMのKOAc、2.5mMのMgOAc、0.1mMのCaCl、1mMのATP、pH7.2)で洗浄し、4℃で100,000gで30分間ペレット化する。組換えgSAP−16K(ヒトgSAPのaa733−854)を、BL21 DE3大腸菌から発現させ、精製する。該膜を、2μgの組換えgSAP−16Kまたは対照として同量のBSAを含む200μlのアッセイバッファーに再懸濁する。1μMのL685,458(γ−セクレターゼ阻害剤)での平行系を、また、対照として使用する。膜懸濁液を4℃で1時間、前インキュベートし、次に37℃で2時間インキュベートし、インビトロでAβの産生を可能にする。該膜を、1/4の容量の200mMのTris、pH7.8、760mMのNaCl、24mMのEDTA、10%のTriton X−100において可溶化し、不溶性物質を10,000gで20分間の遠心分離により除去する。Aβを、4G8抗体を使用して溶解物から免疫沈降し、10−20%のトリス−トリシンゲルで分離し、PVDF膜に移し、Kodak MRフィルムを使用するオートラジオグラフィーに付す。
【0062】
実施例9:Notch開裂分析
NotchΔE(C−末端mycタグを有する、Notch細胞外ドメインのほとんどを欠いている短縮されたNotch−1)をコードするプラスミドは、以前に記載されている(Netzer et al. 2003)。NotchΔEでトランスフェクトされた細胞を、gSAP−shRNAまたはgSAPプラスミドと共トランスフェクトする。トランスフェクションの2日後、Notch発現および開裂を、抗−myc抗体で検出する。開裂されたNotch細胞内ドメイン(NICD)を、開裂−特異的抗体(Notch1 Val−1744, Cell Signaling Inc.)で検出する。L−685,458で処理された細胞を対照として使用する。
【0063】
gSAPは、Ab生産を調節するが、Notch開裂に影響しない。APP695を過剰発現するN2a細胞におけるgSAPのsiRNA介在ノックダウンは、Aβ生産の低下をもたらす。イマチニブおよびsiRNAのAβを低下する効果は、付加的でない。Swedish変異を含むヒトAPPを安定に発現するHEK293細胞のgSAP shRNAでのトランスフェクションは、Ab40およびAb42の両方のレベルを減少させる。HEK293細胞におけるgSAP過剰発現はAbレベルを増加させ、この効果はイマチニブにより遮断される。gSAPノックダウンまたは過剰発現条件下のいずれかで、Notch処理は、細胞外ドメインを短縮されたNotch(C−末端mycタグを有するNotchΔE)を過剰発現するHEK293細胞において影響しない。NICDを、myc抗体および開裂生成物特異的抗体(Notch1 Val−1744)を使用して検出する。大腸菌から精製される組換えgSAP−16Kは、インビトロでのγ−セクレターゼアッセイにおいてAb生産を刺激する。γ−セクレターゼ阻害剤であるL685,458(1μM)は、Aβ生産を破壊する。
【0064】
gSAPは、γ−セクレターゼおよびAPP−CTFと相互作用するが、NotchΔEと相互作用しない。N2a細胞由来の膜調製物を調製し、1%のCHAPSOに溶解させ、ゲル濾過に付し、ウェスタンブロット法により検出する。内因性gSAP−16Kは、γ−セクレターゼ成分と共遊走する。カラム空隙比=6。内因性gSAPの免疫沈降は、γ−セクレターゼ成分の共免疫沈降をもたらす。NotchΔE−myc、APP−CTFおよびgSAP−16K−HAを共発現するHEK293細胞において、gSAP−16Kの免疫沈降は、APP−CTFの共免疫沈降と関連するが、NotchΔEの共免疫沈降と関連しない。NotchΔEではなく、APP−CTFの免疫沈降は、gSAP−16Kの共免疫沈降と関連する。イマチニブでの処置は、gSAP−16KおよびAPP−CTF間の関連性を減少させる。
【0065】
実施例10:gSAP RNAiマウス系産生およびAβレベル測定
RNAiマウスを、前記の処理にしたがって生産する(Seibler et al. 2007)。具体的には、gSAP shRNA コード配列TCCCGGAACTCCATGATTGACAAATTTCAAGAGAATTTGTCAAT CATGGAGTTCCTTTTTAを有する交換ベクターは、H1−Tetプロモーターのコントロール下である。リコンビナーゼ介在カセット交換(RMCE)技術を使用して、ベクターをマウスES細胞ゲノムに組み込む(B6/129S6 背景)。次に、トランスフェクトされたES細胞を4倍体胚盤胞に注射し、誘導RNAiマウスを産生する。次に、ヘテロ接合体RNAiマウスをAPPsweおよびPS1Δ9変異を有するADマウスモデル(AD 2×マウス)と交雑し、gSAP−RNAi ADマウスを産生する。shRNA誘導を、10%のスクロースを含む飲料水中の2mg/mlのドキシサイクリン(Sigma D−9891)を導入することにより行う。対照マウスを、10%のスクロースを含む飲料水で飼育する。飲料水を2日毎に交換し、暗所を維持する。マウスにおけるgSAPノックダウン効率を、定量リアルタイムRT−PCRを使用してアッセイする。全RNAを標準処理にしたがって単離し、cDNAを逆転写Core Kit(Eurogentec)を使用して合成する。リアルタイムPCR反応は、iCycler Thermal cycler instrument(Bio−Rad)を使用して行う。マウス脳のAβレベル測定のために、2月齢gSAP−RNAi ADマウスを1月間ドキシサイクリンで誘導し、脳組織をELISAアッセイのためにギ酸で抽出する。
【0066】
gSAPのノックダウンは、ADマウスモデルにおけるAβ生産およびプラーク発生を減少させる。gSAP RNAi−ADマウスを、二重トランスジェニックADマウスと誘導gSAP RNAiマウスの異種交配により産生する。gSAP shRNA発現(ドキシサイクリン誘導下)は、マウスの脳におけるAβ40およびAβ42レベルの両方をそれぞれ〜28%および〜32%減少させる(**:P<0.01。n=4)(図3)。
【0067】
実施例11:PS/APPトランスジェニックマウスへのAAV2−gSAP shRNAの海馬内注射
マウスGIPZ shRNAmirの個々のクローン(V2LMM_88580:マウスgSAP遺伝子に関するヘアピン配列
TGCTGTTGACAGTGAGCGCGGGTATAGCCTTATTTGCATATAGTGAAGCCACAGATGTATATGCAAATAAGGCTATACCCATGCCTACTGCCTCGGAを含む)を、Openbiosystems/Thermo Scientificから購入する。ヘアピン領域を切り出し、BamHIおよびHindIIIサイトを介してAAV2−siln4.1−MCS−EGFPベクター(Vector biolabs)に挿入する。三重トランスジェニックADマウス(6月齢)をAβに対して分析する。二重トランスジェニックADマウス(13月齢)をプラークに関して分析する。それぞれのグレープにおいて、マウスを、ケタミン(100mg/kg)およびキシラジン(10mg/kg)の混合物で深く麻酔し、定位フレームに置く。AVV2−gSAP shRNA−GFPまたはAVV2−GFPを有するAAV2ウイルスを、右または左の海馬に左右相称に注射する。定位座標をマウスの脳のPaxinos Atlasにしたがって決定する:前後方向2.18mm、中外側1.97mmおよび背腹2mm。1μlのそれぞれのAAV2(gSAPまたはGFP対照に関してshRNA)(3.3×1013vg/ml)を、0.2μl/分の速度で5分間、電動注射ポンプを備えた10ulのHamiltonシリンジで注射する。注射針をさらに5分間、脳に維持し、液体溢出を防止する。マウスを注射4週間後に殺す。
【0068】
Aβレベルを決定するために、海馬を取り出し、プロテアーゼ阻害剤を含む2%のSDSに可溶化する。溶解物を13,000rpmで20分間遠心し、上清をAβ40およびAβ42アッセイキット(Invitrogen Inc.)を使用するELISA分析のために使用する。
【0069】
免疫学的局在決定試験のために、マウスを0.1MのPBS、次に4%のパラホルムアルデヒド/PBSで心臓内潅流に付す。潅流後、脳を取り出し、4%のパラホルムアルデヒド/PBSで4℃で一晩で固定し、次に15%のスクロースで、次に30%のスクロースで24時間インキュベーションする。冷凍保護された脳を、クライオスタットを使用して25−50uMの薄い切片に切る。切片を、M.O.M免疫検出キット(Vector laboratories, PK−2200)を使用して、細胞外アミロイドプラークを可視化するために抗Aβ抗体6E10(1:1000、Novus Biologicals)、およびAAVウイルスをコードするshRNAで確実に形質導入されたニューロンを可視化するために抗EGFP抗体(1:500、Invitrogen)で標識化する。画像化をZeiss LSM510共焦点顕微鏡を使用して行う。
【0070】
gSAPに対するshRNAを有するAAV2の海馬内注射は、二重トランスジェニックADマウスにおけるアミロイドプラーク発生を減少させる。GFP染色を示す領域はAAV2ベクター発現の領域を示し、赤色の蛍光はアミロイドプラークを示し、ベクター発現がプラーク形成の減少と一致することを示す。5つの連続的な切片からのGFP陽性領域を共焦点顕微鏡により分析する。データは、mmあたりのプラークとして示す(n=4。***:P<0.001)(図4)。
【0071】
実施例12:N−(6−メチル−5−(4−フェニルピリミジン−2−イルアミノ)ピリジン−3−イル)−4−((1−メチルピペリジン−4−イル)メチル)ベンズアミドは、gSAPに結合し、Aβを低下させる
N−(6−メチル−5−(4−フェニルピリミジン−2−イルアミノ)ピリジン−3−イル)−4−((1−メチルピペリジン−4−イル)メチル)ベンズアミド(WO/2008/153974、ex.7)を、40個のキナーゼに対して試験されるとき(データは示していない)、少しのキナーゼ阻害活性を有する典型的なイマチニブ類似体として選択する。約100nMのK 対 Ablキナーゼ(承認された抗癌適応に対する主要標的)を有するイマチニブと比較して、N−(6−メチル−5−(4−フェニルピリミジン−2−イルアミノ)ピリジン−3−イル)−4−((1−メチルピペリジン−4−イル)メチル)ベンズアミドは、約12,000nMのKi 対 このキナーゼの100倍弱い活性を有する。この化合物は、それにもかかわらず、イマチニブと度応用の様式においてAβを阻害する。これは、イマチニブのキナーゼ阻害活性がgSAPに対する活性の根拠ではなく、むしろ、それがgSAPおよびガンマセクレターゼ間の相互作用における特異的な効果を有することをさらにサポートする。
【0072】
HEK293細胞をC−末端ヘマグルチニン(HA)タグを有するgSAPでトランスフェクトする。膜ペレットを調製し、50mMのHepes、150mMのNaCl、5mMのMgCl2、5mMのCaCl2に再懸濁し、指定量のイマチニブまたはN−(6−メチル−5−(4−フェニルピリミジン−2−イルアミノ)ピリジン−3−イル)−4−((1−メチルピペリジン−4−イル)メチル)ベンズアミドのいずれかと2時間インキュベートし、次に2uMのビオチン−NCGを添加し、1時間インキュベートする。膜をペレットダウン(pellet down)し、50mMのHepes、150mMのNaCl、1%のオクチルβ−D−グルコピラノシドに可溶化し、MyoneストレプトアビジンT1ビーズと1時間結合させ、次に3回洗浄する。捕獲されたタンパク質をSDSサンプルバッファーとのインキュベーションにより放出させ、ウェスタンブロットにより検出する。
【0073】
N2a細胞系における全ヒトAβを、検出のためにAβ40およびAβ42を補足する特異的モノクローナル抗体(6E10, Signet Laboratories)およびA17−24に対する抗体(4G8, Signet Laboratories, Dedham, MA)を使用することにより標準サンドウィッチELISAにおいて測定する。細胞培養培地(5μL/ウェル)をリン酸緩衝塩水/0.2%のTween 20において100μLに希釈し、ELISAプレートに負荷する。ウェスタンブロットアッセイにおいて、細胞培地を2×トリシンドデシル硫酸ナトリウムサンプルバッファーで希釈し、95℃で5分加熱する。Aβを16%のトリシンポリアクリルアミドゲル(BioRad)における電気泳動法により分離し、タンパク質をニトロセルロース膜に移し、LiCor ブロッキングバッファー(LiCor, Lincoln, NE)で一晩ブロックする。Aβを抗体4G8およびAlexa 680−接合ウサギ抗−マウス二次で検出し、LiCor Odyssey赤外線走査装置でスキャンする。N−(6−メチル−5−(4−フェニルピリミジン−2−イルアミノ)ピリジン−3−イル)−4−((1−メチルピペリジン−4−イル)メチル)ベンズアミドは、<500nMの濃度でAβを有意に低下させる。
【0074】
Notch開裂の検出のために、HEK293ヒト胚腎臓細胞をC−末端 mycタグを有するマウスΔE−Notch cDNAでトランスフェクトする。E−Notch開裂の分析のために、細胞を試験化合物と4時間インキュベートする。細胞抽出物を、細胞溶解バッファー(50mMのTris、pH7.5、10mMのNaCl、5mMのEGTA、1mMのEDTAおよび完全プロテアーゼ阻害剤(Roche Diagnostics, Indianapolis, IN)に細胞を溶解させることにより調製する。タンパク質濃度をタンパク質検出試薬を使用して決定する。容量を細胞溶解バッファーで調節し、次に4×サンプル ローディングバッファー(トリス−トリシンゲル ローディングバッファー)を加え、サンプルを95℃で5分加熱し、それぞれの処理に対して等量の細胞タンパク質を10%のBis−Trisゲルに負荷する。C−末端 Notch種を、モノクローナル 抗−c−myc抗体9E10(Roche Diagnostics)および蛍光ヤギ抗マウス二次抗体で検出する。蛍光抗体を、LiCor Odyssey赤外蛍光検出器を介して定量する。
【0075】
N−(6−メチル−5−(4−フェニルピリミジン−2−イルアミノ)ピリジン−3−イル)−4−((1−メチルピペリジン−4−イル)メチル)ベンズアミドおよびイマチニブは、記載されている細胞系におけるNOTCH代謝に影響しない。競合および直接ガンマ−セクレターゼ阻害剤DAPTを、アッセイにおける陽性コントロールとして使用する。NOTCH処理の阻害が望ましくない副作用を引き起こす可能性があるため、NOTCHの処理を防止する化合物は、薬物候補としてあまり望ましくない。N−(6−メチル−5−(4−フェニルピリミジン−2−イルアミノ)ピリジン−3−イル)−4−((1−メチルピペリジン−4−イル)メチル)ベンズアミドは、このアッセイにおいてイマチニブに匹敵する。
【0076】
実施例13:N−(6−メチル−5−(4−フェニルピリミジン−2−イルアミノ)ピリジン−3−イル)−4−((1−メチルピペリジン−4−イル)メチル)ベンズアミドの合成
以下に記載されているN−(6−メチル−5−(4−フェニルピリミジン−2−イルアミノ)ピリジン−3−イル)−4−((1−メチルピペリジン−4−イル)メチル)ベンズアミドは、WO/2008/153974において記載されているが、合成を便宜上の目的で提供する:
【化6】

【0077】
a)(2−メチル−5−ニトロ−ピリジン−3−イル)−(4−フェニル−ピリミジン−2−イル)−アミン
乾燥トルエン(25mL)中の3−ブロモ−2−メチル−5−ニトロ−ピリジン(4.46g、2.10mmol)および4−フェニル−2−ピリミジンアミン(1.3g、1.75mmol)の混合物にCsCO(0.85g、2.62mmol)、Pd(dba)(32mg、0.035mmol)およびXantphos(60mg、0.105mmol)を加える。混合物をNで空気を抜き、パージし、窒素下で90℃に24時間加熱する。反応混合物を室温に冷却し、EtOAcで希釈し、濾過する。濾液を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、生成物を黄色固体として得る(320mg、収率59%)。1H NMR (200 MHz, CDCl3): δ 2.75 (s, 3H), 7.19 (s, 1H), 7.37 (d, J = 4.0 Hz, 1H), 7.57−7.54 (m, 3H), 8.17−8.12 (m, 2H), 8.59 ( d, J = 4.0 Hz, 1H), 9.02 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 9.87 (d, J = 2.0 Hz, 1H); MS ESI) m/z 308 [M+H]
【0078】
(b)2−メチル−N−(4−フェニルピリミジン−2−イル)ピリジン−3,5−ジアミン
ヒドラジン水和物(12mL)およびメタノール(20mL)中の触媒塩化第二鉄(12mg)、(2−メチル−5−ニトロ−ピリジン−3−イル)−(4−フェニル−ピリミジン−2−イル)−アミン(320mg、1.04mmol)の混合物を15分還流する。反応混合物を室温に冷却し、減圧下濃縮し、粗残渣を水に溶解し、EtOAcで抽出する。合わせた抽出物を無水NaSO上で乾燥させ、減圧下濃縮する。残渣をEtOと5分間撹拌し、エーテル層をデカントし、残渣を真空乾燥させ、生成物を黄色固体として得る(270mg、収率93%)。Mp: 133.1−133.4 ℃; 1H NMR (200 MHz, CDCl3): δ 2.51 (s, 3H), 3.62 (bs, 2H), 6.93 (s, 1H), 7.20 (d, J = 6.0 Hz, 1H), 7.52−7.49 (m, 3H), 7.74 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 8.08−8.03 (m, 2H), 8.13 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 8.48 (d, J = 4.0 Hz, 1H); MS (ESI) m/z 278 [M+H]
【0079】
(c)4−((1−メチルピペリジン−4−イル)メチル)安息香酸
4−(ピペリジン−4−イルメチル)安息香酸(114mg、0.342mmol)を2mLのメタノールに溶解し、次に37%のホルムアルデヒド水溶液(56μL、0.685mmol)を加える。反応混合物を室温で5分間撹拌し、次にNaBHCN(26mg、0.41mmol)を加える。混合物を室温で2時間撹拌し、少量の水でクエンチし、次に高真空下で乾燥のために蒸発させ、白色の泡状固体を得、これをさらなる精製なしに次の反応のために使用する。MS (ESI) m/z 234.1 [M+H]
【0080】
d)N−(6−メチル−5−(4−フェニルピリミジン−2−イルアミノ)ピリジン−3−イル)−4−((1−メチルピペリジン−4−イル)メチル)ベンズアミド
DIEA(149μL、0.86mmol)を、DMF中の2−メチル−N−(4−フェニルピリミジン−2−イル)ピリジン−3,5−ジアミン(47mg、0.17mmol)、4−((1−メチルピペリジン−4−イル)メチル)安息香酸(40mg、0.17mmol)、BOP(91mg、0.21mmol)の懸濁液に加える。反応混合物をアルゴン雰囲気下で室温で一晩撹拌する。混合物を0.45μmのマイクロフィルターを介して濾過し、濾液をWaters半分取HPLCにより精製し、16mgの最終産物を白色粉末として得る。MS (ESI) m/z 493.1 [M+H]
【0081】
温度はセ氏温度(℃)で与えられる;操作は18−25℃の範囲である室温または環境温度(「rt」)で行う。有機溶液を無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ;溶媒の蒸発を、60℃までの浴槽温度で減圧下で(600−4000 Pascals; 4.5−30mmHg)ロータリーエバポレーターを使用して行う。一般的に、反応コースは、TLCに続き、反応時間は説明のためにのみに挙げられる;最終産物は満足のいくプロトン核磁気共鳴(NMR)スペクトルおよび/または質量スペクトルデータを有する。収率は説明のためのみに与え、必ずしも熱心な処理開発により得ることができるものでない;さらなる物質が必要であるとき、製造を繰り返す。得られるとき、NMRデータは、内部標準としてのテトラメチルシラン(TMS)と比較して100万分の1(ppm)において挙げられる主な診断プロトンに対するデルタ値の形態である。化学記号は通常の意味を有する;SI単位および記号を使用する。以下の略語を使用している:
【表1】

【0082】
実施例15:結合アッセイ
1つの例において、アッセイは、gSAPタンパク質の阻害剤に対して試験するために使用され得る。gSAPタンパク質の選択される配列は、可能性のある阻害剤との結合を検出するために使用され得る。
【0083】
実施例16:診断アッセイ
a.診断アッセイをgSAPタンパク質のレベルを測定するために使用する。gSAPタンパク質のレベルの増加は、疾患と相関であり得る。
【0084】
b.gSAP領域中の変異の遺伝学的分析を、gSAPを標的とする治療に対する候補を同定するために使用する。gSAPに対する遺伝子の領域中の9つのSNPを同定する(PION)。単一のマーカー分析において、SNPは多重検定に関する補正後、ADと関連しない。しかしながら、スライドウィンドウハプロタイプ分析において、4つのハプロタイプはADと関連する:
a)rs6976567|rs1468682|rs1819814、
b)rs1468682|rs1819814|rs4729535、
c)rs1819814|rs4729535|rs4729540、
d)rs7781642|rs6955503|rs7776973。
これらのハプロタイプにおける2つのSNP(rs4729540およびrs7776973)は、また、単一のマーカー分析における遅延型認識試験と有意に関連する。したがって、これらのハプロタイプを有すると同定された患者は、gSAP阻害剤での処置のための候補である。
【0085】
実施例17:gSAPおよびAPP間の相互作用の領域の同定
提供される例の代替的組合せおよび変化が、本記載に基づいて明らかである。記載されている態様の全ての多数の可能性のある組合せおよび変化に関する特定の例を提供することは不可能であるが、このような組合せおよび変化は、記載されている特許請求の範囲の範囲内である。
【図1−1】

【図1−2】

【図1−3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
1.a.図1に記載されている配列から選択される配列と少なくとも60%類似するペプチド(類似性はBLASTアルゴリズムにより測定される)、
b.図1において太字の保存された残基に対応する残基を有するペプチド、
c.配列番号7(LWDHPMSSNIISR)および/または配列番号8(NHVTRLLQNYKK)の配列を含むペプチド、
d.図1に記載されている配列番号1−6のいずれかのペプチド、
e.任意の哺乳動物種、例えば、マウス、ラットまたはサル由来のgSAP、
f.ガンマセクレターゼとの複合体を形成することができるgSAPのフラグメント、
g.図1に記載されている配列番号1−6のいずれかのC−末端由来の約16kDaのフラグメント
から選択されるgSAPペプチドであって、天然環境から単離または分離されているペプチド。
【請求項2】
例えば、細菌細胞、バキュロウイルスまたは哺乳動物細胞から選択される組換え細胞により生産される、請求項1に記載のgSAPペプチド。
【請求項3】
異種プロモーターに作動可能に連結したgSAPペプチドに対する遺伝子を含むベクター。
【請求項4】
請求項1に記載のgSAPペプチドを発現する異種遺伝子を含むトランスジェニック細胞。
【請求項5】
哺乳動物細胞におけるgSAP発現を阻害することができるRNA構築物であるか、または該構築物を発現する核酸。
【請求項6】
gSAPに対する抗体。
【請求項7】
gSAPの免疫原性フラグメントを適当なアジュバントおよび/または担体と共に含むワクチン。
【請求項8】
gSAPに対する遺伝子が破壊されている、非ヒトgSAPノックアウト哺乳動物。
【請求項9】
Aβ沈着を阻害する化合物を同定するためのアッセイにおける、請求項1に記載のgSAPペプチドの使用。
【請求項10】
gSAPペプチドへの試験化合物の結合を測定することを含む、Aβ沈着を阻害する化合物を同定する方法。
【請求項11】
イマチニブのメチルピペリジニル部分が標識基で置換または修飾されている、イマチニブの誘導体。
【請求項12】
光標識された誘導体、放射性標識された誘導体およびビオチン化された誘導体から選択される、請求項11に記載の誘導体。
【請求項13】
対照集団を使用して同定された正常値と比較してgSAPにおける発現レベルおよび/または変異の増加を調べることを含む、アルツハイマー病を発症する危険性がある個体を同定する方法。
【請求項14】
阻害を必要とする温血動物における異常タンパク質凝集体の蓄積を阻害するための方法であって、gSAP活性を阻害するための有効量の化合物を該動物に投与することを含む方法。
【請求項15】
有効量のgSAP活性を阻害するための化合物を投与することを含む、アルツハイマー病、進行性核上まひ、ダウン症候群、記憶および認知障害、認知症、アミロイドニューロパシー、脳の炎症、神経および脳外傷、血管アミロイドーシス、アミロイドーシス(amyloeiosis)での脳出血、パーキンソン病、ハンチントン病、プリオン病ならびに/またはtauまたはアミロイドタンパク質、例えば、Aβの異常発現または蓄積と関連する血管、神経学的および/もしくは神経変性障害を処置する方法。
【請求項16】
gSAP活性を阻害するための化合物が、小分子、阻害性RNA分子、阻害性RNA分子を生産するベクターおよび細胞、gSAPに対する抗体ならびにgSAPに対するワクチンから選択される、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
標識されている請求項1に記載のgSAPペプチド。
【請求項18】
疾患介入に対する別の標的として機能することができるgSAP高分子複合体中のさらなるタンパク質を同定するための生化学的または遺伝学的スクリーニングシステムにおけるgSAP誘導体の使用。
【請求項19】
gSAPに対する抗体またはgSAP発現のための定量PCRを使用して、gSAP発現を測定することを含む、gSAP標的療法での処置のための候補を同定する方法であって、発現の増加がgSAP標的療法での処置のための候補において見られる方法。
【請求項20】
gSAPまたはgSAP発現またはgSAP活性に影響する変異または遺伝的変異を有する患者を同定することを含む、gSAP標的療法での処置のための候補を同定する方法であって、このような変異またはハプロタイプを有する患者がgSAP標的療法での処置のための候補である方法。
【請求項21】
変異体が以下の群のSNPから選択されるハプロタイプである、請求項20に記載の方法:
a)rs6976567|rs1468682|rs1819814、
b)rs1468682|rs1819814|rs4729535、
c)rs1819814|rs4729535|rs4729540、
d)rs7781642|rs6955503|rs7776973。
【請求項22】
変異体がAPP−CTFの膜近傍領域をコードする配列の変異体である、請求項20に記載の方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−500741(P2013−500741A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−523606(P2012−523606)
【出願日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際出願番号】PCT/US2010/002173
【国際公開番号】WO2011/016861
【国際公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(507401225)イントラ−セルラー・セラピーズ・インコーポレイテッド (21)
【氏名又は名称原語表記】INTRA−CELLULAR THERAPIES, INC.
【Fターム(参考)】