説明

新規p−メトキシフェニル糖誘導体

【課題】 本発明の課題は,枝分かれしたり結合位置が異なったりしている複雑な種々のオリゴ糖鎖の合成に適した糖誘導体を提供することにある。
【解決手段】 アノマー−位の保護基がグリコシル化条件下で安定で,目的の位置でグリコシド結合を形成させるために任意独立に保護基の除去が可能で,必要に応じてアノマー位に活性な脱離基を導入して容易に糖供与体に変換できる糖誘導体を採用することにより,上記課題を達成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規p−メトキシフェニル糖誘導体に関するもので,オリゴ糖鎖あるいは複合糖質の合成に供するものである。
【背景技術】
【0002】
近年,オリゴ糖鎖の研究が活発に行われている。糖タンパク質,糖脂質,プロテオグリカンなどの複合糖質は,オリゴ糖鎖を有しており,このオリゴ糖鎖は発生や細胞の分化,細胞の増殖,細胞接着,感染や炎症,癌化,老化,免疫応答などのさまざまな生命現象へ関与していることが,明らかになりつつある。オリゴ糖鎖の機能解明をさらに進めてゆくためには,構造の明確なオリゴ糖鎖の標品を入手する必要がある。しかしながら,生体内に存在するオリゴ糖鎖は極微量であり,構造の明確なオリゴ糖鎖を入手することは困難な場合が多い。そのため,化学合成により,構造の明確なオリゴ糖鎖を入手する試みが行われている。
【0003】
生体内に存在する複雑に枝分かれしたオリゴ糖鎖の化学合成は,水酸基の保護と脱保護,糖と糖をつなぐグリコシル化反応などを繰り返して糖の結合位置やアノマー位の立体の制御を行わなければならない。そのためには目的のオリゴ糖鎖合成に適した糖に変換容易な糖誘導体を用いる必要があり,さまざまな糖誘導体が報告されている。
【0004】
例えば,G.Magnussonらはアノマー位の水酸基を2−(トリメチルシリル)エチル基で保護した糖誘導体を報告している。この2−(トリメチルシリル)エチル糖誘導体は,通常のグリコシル化反応条件で安定であり,糖受容体として用いることができる。また,2−(トリメチルシリル)エチル糖誘導体は,グリコシルクロライドに容易に高収率で変換することができ,糖供与体として利用できる[J.Org.Chem.,55,3181(1990)]。アノマー位の水酸基をp−メトキシフェニル基で保護した糖誘導体を報告している。このp−メトキシフェニル糖誘導体においても同様にグリコシル化反応条件で安定であり,グリコシルブロミドやチオグリコシドのような糖供与体に容易に変換できる[Carbohydr.Res.,925,41(1996)]。KunzらおよびPaulsenらは,アノマー位の水酸基をメチル基で,4,6−位の水酸基をベンジリデン基で保護し,2−位をアジド基とした糖誘導体を利用している。この糖誘導体とトリクロロイミデート糖のグリコシル化反応により二糖とした後,アノマー位のメチル基を脱保護してグリコシルブロミドに変換し,続いて糖供与体として利用しムチン型糖鎖を合成している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上のようにオリゴ糖合成のための糖誘導体が報告され,近年その数が増加している。しかしながら,G.Magnussonらの2−(トリメチルシリル)エチル糖誘導体はデオキシ糖においてグリコシル化反応条件となるルイス酸存在下で不安定である。また水素化ナトリウム,アルキルハライドなどを用いた通常のアルキル化の条件で不安定である。一方p−メトキシフェニルグリコシド糖誘導体は,ほぼ全ての糖においてグリコシル化反応条件に安定であるが,水酸基が同一あるいは二種の保護基で保護されているものが殆どであり,複雑なオリゴ糖鎖合成には適さない場合が多い。KunzらおよびPaulsenらの糖誘導体は異なる条件で目的の位置を除去できる保護基で保護されているが,アノマー位のメチル保護基の脱離反応は強酸性下で行われるため他の保護基も脱離し,低収率となる。そのため,アノマー−位の保護基がグリコシル化条件下で安定で,目的の位置でグリコシド結合を形成させるために任意独立に保護基の除去が可能で,必要に応じてアノマー位に活性な脱離基を導入して容易に糖供与体に変換できる糖誘導体が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明者らは鋭意研究を重ね,アノマー位の保護基をp−メトキシフェニル基とし,アノマー位以外の水酸基について位置選択的に脱保護が可能な保護基を採用することにより,上記課題を解決し,本発明を完成するに至った。すなわち,本発明は下記構造式1
【0007】
【化1】

(式中,Rはアジド基,アミノ基,フタルイミド基,水酸基,アリルオキシ基,ベンジルオキシ基,ベンゾイルオキシ基,トルオイルオキシ基,レブリノイルオキシ基,アセチルオキシ基,クロロアセチルオキシ基,Rは水素,アリル基,ベンジル基,ベンゾイル基,トルオイル基,レブリノイル基,アセチル基,クロロアセチル基,R,Rは,水素,アリル基,ベンジル基,ベンゾイル基,トルオイル基,レブリノイル基,アセチル基,クロロアセチル基から選択され,それぞれ独立して異なる保護基であり,R,Rはベンジリデン基,イソプロピリデン基,トリフルオロメタンスルフォニル基,メタンスルフォニル基,p−トルエンスルフォニル基,4−ブロモベンゼンスルフォニル基から選択され,同一の保護基である場合もある)で示される新規p−メトキシフェニル糖誘導体および
【化2】

(式中,Rはアジド基,アミノ基,フタルイミド基,水酸基,アリルオキシ基,ベンジルオキシ基,ベンゾイルオキシ基,トルオイルオキシ基,レブリノイルオキシ基,アセチルオキシ基,クロロアセチルオキシ基,R,R,Rは,水素。アリル基,ベンジル基,ベンゾイル基,トルオイル基,レブリノイル基,アセチル基,クロロアセチル基,ベンジリデン基,イソプロピリデン基から選択され,それぞれ独立して異なる保護基であり,R,Rはベンジリデン基,イソプロピリデン基,トリフルオロメタンスルフォニル基,メタンスルフォニル基,p−トルエンスルフォニル基,4−ブロモベンゼンスルフォニル基から選択され,同一の保護基である場合もある)で示される新規p−メトキシフェニル糖誘導体に関するものである。
【0008】
本発明に係る新規p−メトキシフェニルグリコシル誘導体の代表例として下記構造式3
【0009】
【化3】

(式中,Allはアリル基,Phはフェニル基,Meはメチル基である)で示される新規p−メトキシフェニルグリコシル誘導体を取り上げ,本発明の有用性を明らかにする。構造式3で示されるp−メトキシフェニルグリコシル誘導体は文献未記の新規化合物で,グリコシル化反応で安定で,種々の脱保護条件で目的とする位置の保護基を除去でき,さらに,アノマー位に活性な脱離基を容易に導入でき糖供与体に変換することができる。目的の位置を脱保護する方法を下記の例をあげて説明する。
【0010】
【化4】

(式中,Bnはベンジル基である)エタノール中でトリストリフェニルホスフィンロジウムクロライドと1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンを作用させた後,水銀(II)を作用させてpH2として3−位を[(J.Org.Chem.,38,3224(1973)],テトラヒドロフラン中トリメチルアミンボランと塩化アルミを作用させて4−位を[Pure Appl.Chem.,56,845(1984)],トルエン中トリメチルアミンボランと塩化アルミを作用させて6−位を[Pure Appl.Chem.,56,845(1984)]脱保護することができる。また,アノマー位への活性な脱離基の導入により容易に糖供与体に変換する方法を下記反応式の参考例に従って説明する。
【0011】
【化5】

【0012】
参考例1
4−メトキシフェニル2−アジド−3−アリル−4,6−O−ベンジリデン−2−デオキシ−β−D−ガラクトピラノシド0.90g(2.05mmol)をトルエン:アセトニトリル:水=3:4:1の混合溶媒248mlに溶解し,硝酸第二セリウムアンモニウム13.61g(24.84mmol)を加え室温下,1時間激しく攪拌した。反応混合物を酢酸エチルにて希釈し,水と飽和重曹水,飽和食塩水にて順次洗浄後,硫酸マグネシウムにて乾燥し減圧下溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン−酢酸エチル)にて精製し2−アジド−3−アリル−4,6−O−ベンジリデン−2−デオキシ−D−ガラクトピラノシル0.38gを69%の収率で得た。続いて,アルゴンガス雰囲気下,2−アジド−3−アリル−4,6−O−ベンジリデン−2−デオキシ−D−ガラクトピラノシル122mg(0.366mmol)のジクロロメタン溶液3.7mlに氷冷下,トリクロロアセトニトリル0.37ml(3.69mmol)および1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン6.5μL(0.045mmol)を加え1.3時間攪拌した。反応混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル)にて精製し,2−アジド−3−アリル−4,6−O−ベンジリデン−2−デオキシ−D−ガラクトピラノシルトリクロロアセトイミデート128mgを73%の収率で得た。
TLC:Rf0.59(トルエン:酢酸エチル=3:1)
400MHzH−NMR(CDCl):δ5.59(s,1H,benzylidene),δ5.97−6.04(m,1H,Allyl),δ6.52(d,1H,J=3.2Hz,H−1),δ7.37−7.54(m,5H,aromatic),δ8.71(s,1H,NH)
【0013】
上記参考例のように,トルエンおよびアセトニトリル,水の混合溶媒中に3をセリウム(II)アンモニウムナイトレートで処理し,ヘミアセタールとした後,塩化メチレン中1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン存在下トリクロロアセトニトリルを作用させることによりトリクロロアセトイミデート基を導入し,糖供与体に容易に変換できる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように本発明を用いることにより,任意独立に保護基の除去が可能で目的とする位置でグリコシド結合を形成することができ,必要に応じてアノマー位に活性な脱離基を容易に導入して糖供与体として用いることができる。このことは,枝分かれしたり結合位置が異なったりしている複雑な種々のオリゴ糖鎖の合成に役立ち,糖鎖機能の解明や薬理活性のあるオリゴ糖鎖の開発に大きく貢献できることを示している。
【実施例】
【0015】
以下に本発明の好ましい実施例を記載するが,これは例示であり,本発明を制限するものではない。本発明の範囲内では変形が可能なことは当業者には明らかであろう。
【0016】
実施例14−メトキシフェニル2−アミノ−4,6−O−ベンジリデン−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシドの合成
4−メトキシフェニル4,6−O−ベンジリデン−2−デオキシ−2−フタルイミド−β−D−グルコピラノシド600g(1.19mol)をn−ブタノール2Lに溶解し,エチレンジアミン890ml(13.3mol)を加え,130℃のオイルバス上で1.5時間攪拌した。反応液を減圧濃縮して得られた残留物をメタノールから再結晶し,4−メトキシフェニル2−アミノ−4,6−O−ベンジリデン−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシド432gを97%の収率で得た。
TLC:Rf0.44(クロロホルム−メタノール 9:1)
400MHzH−NMR(CDl:CDOD=1:1):δ3.026(t,1H,J=8.2Hz,H−2),δ3.78(s,3H,OMP),δ4.89(d,1H,J=8.2Hz,H−1),δ5.60(s,1H,benzylidene),δ6.84−7.64(m,9H,aromatic)
【0017】
実施例24−メトキシフェニル2−アジド−4,6−O−ベンジリデン−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシドの合成
4−メトキシフェニル2−アミノ−4,6−O−ベンジリデン−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシド5.00g(13.39mmol)と4−ジメチルアミノピリジン7.20g(58.9mmol)をアセトニトリル60mlに溶かし,別途調整したトリフルオロメタンスルフォニルアジドの塩化メチレン溶液86ml(0.217M)を室温で滴下した。室温で更に2時間攪拌後,反応液にトルエンを加え約50mlまで減圧濃縮し,得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン−酢酸エチル)にて精製して4−メトキシフェニル2−アジド−4,6−O−ベンジリデン−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシド5.00gを93%の収率で得た。
TLC:Rf0.47(トルエン−酢酸エチル 4:1)
400MHzH−NMR(CDCl):δ3.78(s,3H,OMP),δ4.8701(d,1H,J=7.8Hz,H−1),δ5.56(s,1H,benzylidene),δ6.84−7.49(m,9H,aromatic)
【0018】
実施例34−メトキシフェニル3−アリル−2−アジド−4,6−O−ベンジリデン−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシドの合成
4−メトキシフェニル2−アジド−4,6−O−ベンジリデン−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシド22.00g(55mmol)をN,N−ジメチルフォルムアミド165mlに溶解し,室温で水素化ナトリウム3.60g(82.5mmol)を加え,室温で15分攪拌した。次いで,臭化アリル6.7ml(77mmol)を加え,室温で30分攪拌した。メタノールにて過剰の水素化ナトリウムを分解後,減圧濃縮して得られた残渣をエタノールから再結晶し,4−メトキシフェニル2−アジド−3−アリル−4,6−O−ベンジリデン−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシド19.73gを82%の収率で得た。
TLC:Rf0.56(トルエン−酢酸エチル 9:1)
400MHzH−NMR(CDCl):δ3.78(s,3H,OMP),δ4.81(d,1H,J=8.2Hz,H−1),δ5.58(s,1H,benzylidene),δ5.90−6.0500(m,1H,Allyl),δ6.83−7.4920(m,9H,aromatic)
【0019】
実施例44−メトキシフェニル2−アジド−3−アリル−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシドの合成
4−メトキシフェニル2−アジド−3−アリル−4,6−O−ベンジリデン−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシド3.54g(8.06mmol)をメタノール17ml,ジオキサン17mlに溶解し,p−トルエンスルホン酸159mg(0.836mmol)を加え,60℃で5時間攪拌した。反応液をナトリウムメチラートで中和後,減圧乾固して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン−酢酸エチル)にて精製して4−メトキシフェニル2−アジド−3−アリル−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシド1.16gを41%の収率で得た。
TLC:Rf0.37(トルエン−酢酸エチル 4:1)
400MHzH−NMR(CDCl):δ3.78(s,3H,OMP),δ4.80(d,1H,J=8.2Hz,H−1),δ5.93−6.03(m,1H,Allyl),δ6.82−7.03(m,4H,aromatic)
【0020】
実施例54−メトキシフェニル2−アジド−3−アリル−2−デオキシ−4,6−ジ−O−トリフルオロメタンスルフォニル−β−D−グルコピラノシドの合成
4−メトキシフェニル2−アジド−3−アリル−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシド1.16g(3.29mmol)をピリジン1.3mlと塩化メチレン16mlの混合溶媒に溶解し,トリフルオロメタンスルフォン酸無水物159mg(0.836mmol)を−15℃で滴下した後,反応液を徐々に0℃まで昇温させながら4.5時間攪拌した。反応液をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン−酢酸エチル)にて精製して4−メトキシフェニル2−アジド−3−アリル−2−デオキシ−4,6−ジ−O−トリフルオロメタンスルフォニル−β−D−グルコピラノシド0.93gを46%の収率で得た。
TLC:Rf0.57(トルエン−酢酸エチル 17:3)
400MHzH−NMR(CDCl):δ3.78(s,3H,OMP),δ5.93−6.02(m,1H,Ally1),δ6.84−7.04(m,4H,aromatic)
【0021】
実施例64−メトキシフェニル4,6−ジ−O−アセチル−2−アジド−3−アリル−2−デオキシ−β−D−ガラクトピラノシドの合成
4−メトキシフェニル2−アジド−3−アリル−2−デオキシ−4,6−ジ−O−トリフルオロメタンスルフォニル−β−D−グルコピラノシド74mg(0.12mmol)と酢酸セシウム115mg(0.599mmol)をN,N−ジメチルフォルムアミド2.4mlに加え室温で一夜攪した。反応液を塩化メチレンで希釈し,飽和重層水と飽和食塩水で順次洗浄後,無水硫酸マグネシウムで乾燥して溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン−酢酸エチル)にて精製し4−メトキシフェニル4,6−ジ−O−アセチル−2−アジド−3−アリル−2−デオキシ−β−D−ガラクトピラノシル54mgを85%の収率で得た。
TLC:Rf0.38(トルエン−酢酸エチル 4:1)
400MHzH−NMR(CDCl):δ2.17,2.08(2s,6H,2Ac),δ3.78(s,3H,OMP),δ4,69(d,1H,J=8.2Hz,H−1),δ5.85−5.95(m,1H,Allyl),δ6.82−7.05(m,4H,aromatic)
【0022】
実施例74−メトキシフェニル2−アジド−3−アリル−2−デオキシ−β−D−ガラクトピラノシドの合成
4−メトキシフェニル4,6−ジ−O−アセチル−2−アジド−3−アリル−2−デオキシ−β−D−ガラクトピラノシル15.8g(36.3mmol)をメタノール360mlに溶解し,28%ナトリウムメチラード159mg(0.836mmol)を加え,室温で30分攪拌した。反応液をアンバーリスト15にて中和し,樹脂をセライトライトで濾過した。濾液を減圧乾固して4−メトキシフェニル3−アリル−2−アジド−2−デオキシ−β−D−ガラクトピラノシド12.25gを96%の収率で得た。
TLC:Rf0.41(酢酸エチル)
400MHzH−NMR(CDCl):δ3.78(s,3H,OMP),δ4.69(d,1H,J=8.2Hz,H−1),δ5.85−5.95(m,1H,Allyl),δ6.82−7.05(m,4H,aromatic)
【0023】
実施例84−メトキシフェニル2−アジド−3−アリル−4,6−O−ベンジリデン−2−デオキシ−β−D−ガラクトピラノシルの合成
4−メトキシフェニル2−アジド−3−アリル−2−デオキシ−β−D−ガラクトピラノシド17.57g(0.050mol)とベンズアルデヒドジメチルアセタール22.5ml(0.15mol)をアセトニトリル200mlに溶解し,p−トルエンスルホン酸1.90g(0.01mol)を加え,室温で1時間攪拌した。反応液をナトリウムメチラートで中和後,減圧乾固して得られた残渣をエタノールから再結晶して4−メトキシフェニル2−アジド−3−アリル−4,6−O−ベンジリデン−2−デオキシ−β−D−ガラクトピラノシル19.37gを88%の収率で得た。
TLC:Rf0.55(トルエン−酢酸エチル 1:1)
400MHzH−NMR(CDCl):δ3.41(dd,1H,J=3.2,10.1Hz,H−3),δ3.78(s,3H,OMP),δ4.74(d,1H,J=8.2Hz,H−1),δ5.58(s,1H,benzylidene),δ5.93−6.02(m,1H,Allyl),δ6.81−7.55(m,9H,aromatic)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記構造式
【化1】

(式中,Rはアジド基,アミノ基,フタルイミド基,水酸基,アリルオキシ基,ベンジルオキシ基,ベンゾイルオキシ基,トルオイルオキシ基,レブリノイルオキシ基,アセチルオキシ基,クロロアセチルオキシ基,Rは水素,アリル基,ベンジル基,ベンゾイル基,トルオイル基,レブリノイル基,アセチル基,クロロアセチル基,R,Rは,水素,アリル基,ベンジル基,ベンゾイル基,トルオイル基,レブリノイル基,アセチル基,クロロアセチル基から選択され,それぞれ独立して異なる保護基であり,R,Rはベンジリデン基,イソプロピリデン基,トリフルオロメタンスルフォニル基,メタンスルフォニル基,p−トルエンスルフォニル基,4−ブロモベンゼンスルフォニル基から選択され,同一の保護基である場合もある)で示される新規p−メトキシフェニル糖誘導体。
【請求項2】
【化2】

(式中,Rはアジド基,アミノ基,フタルイミド基,水酸基,アリルオキシ基,ベンジルオキシ基,ベンゾイルオキシ基,トルオイルオキシ基,レブリノイルオキシ基,アセチルオキシ基,クロロアセチルオキシ基,R,R,Rは,水素,アリル基,ベンジル基,ベンゾイル基,トルオイル基,レブリノイル基,アセチル基,クロロアセチル基,ベンジリデン基,イソプロピリデン基から選択され,それぞれ独立して異なる保護基であり,R,Rはベンジリデン基,イソプロピリデン基,トリフルオロメタンスルフォニル基,メタンスルフォニル基,p−トルエンスルフォニル基,4−ブロモベンゼンスルフォニル基から選択され,同一の保護基である場合もある)で示される新規p−メトキシフェニル糖誘導体。
【請求項3】
がアミノ基,Rが水素,R,Rがベンジリデン基である請求項1記載の新規p−メトキシフェニル糖誘導体。
【請求項4】
がアジド基,Rが水素,R,Rがベンジリデン基である請求項1記載の新規p−メトキシフェニル糖誘導体。
【請求項5】
がアジド基,Rがアリル基,R,Rがベンジリデン基である請求項1記載の新規p−メトキシフェニル糖誘導体。
【請求項6】
がアジド基,Rがアリル基,R,Rが水素である請求項1記載の新規p−メトキシフェニル糖誘導体。
【請求項7】
がアジド基,Rがアリル基,R,Rがトリフルオロメタンスルフォニル基である請求項1記載の新規p−メトキシフェニル糖誘導体。
【請求項8】
がアジド基,Rがアリル基,R,Rがアセチル基である請求項2記載の新規p−メトキシフェニル糖誘導体。
【請求項9】
がアジド基,Rがアリル基,R,Rが水素である請求項2記載の新規p−メトキシフェニル糖誘導体。
【請求項10】
がアジド基,Rがアリル基,R,Rがベンジリデン基である請求項2記載の新規p−メトキシフェニル糖誘導体。