説明

方位・距離測定装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、航法援助装置である方位・距離測定装置(タカン装置)に関する。
【0002】
【従来の技術】周知のように、航法援助装置である方位・距離測定装置(タカン装置)は、航空機に搭載されるインタロゲータと地上に設置されるトランスポンダとで構成されるが、従来の方位・距離測定装置は、図3に示すように、インタロゲータ31がパルス発生器32、送信機3、受信機5、空中線4、信号処理器36及び表示指示器7を備え、また、トランスポンダ41が空中線12、受信機13、送信機16、信号処理器44及びパルス発生器15を備え、航空機(インタロゲータ31)が質問パルスを発して地上局(トランスポンダ41)から方位と距離の情報を得、インタロゲータ31において距離測定と方位測定をし(信号処理器36)、その結果を表示指示器7に表示するよう構成される。以下、図4乃至図9を参照して距離測定と方位測定の概要を説明する。
【0003】トランスポンダ41は、図4に示すような各種のパルスを発生し送信する。まず、距離測定は次のようにして行う。これは、レーダの測距原理と同様である。即ち、トランスポンダ41は、インタロゲータ31からの質問パルスに対し応答パルスを送信するが、トランスポンダ41の処理時間として50μsの一定値が与えられているので、図5に示すように、インタロゲータ31は質問パルスを発した時間から応答パルスを受信するまでの時間を求め、その時間から一定値(50μs)を差し引くことで距離を測定する。
【0004】次いで、方位測定は、地上局から発射される電波のみを利用して行われる。即ち、トランスポンダ41のパルス発生器15で作られる北方位基準パルス(NRB)と40度方位基準パルス(ARB)とランダムパルスとが信号処理器44、送信機16を通って空中線12から放射される際に、図6及び図7に示すように、15Hzと135Hzの合成波によって空間変調を受ける。この変調パターンと北方位基準パルス(NRB)及び40度方位基準パルス(ARB)との位置関係は予め定められている。即ち、北方位基準パルス(NRB)は、空間変調パターンの最大値が真東を向いた時発射される。また、40度方位基準パルス(ARB)は、北方位基準パルス(NRB)発射後の電気角40度毎に空中線の1回転につき8回発射される。従って、空間変調パターンと北方位基準パルス(NRB)及び40度方位基準パルス(ARB)との位置関係によって方位を知ることができる。具体的には、図8及び図9に示すようにして行う。なお、40度方位基準パルス(ARB)と135Hz変調波は、北方位基準パルス(NRB)と15Hz変調波に対する方位精度を9倍良くするために使用される。これは、ノギスにおけるバーニャの機能と同じである。
【0005】図8と図9は、真東にいる航空機(この位置は航空機から見ると西側、即ち、270°の位置になる)の受信波形と信号処理を示したものである。インタロゲータ31は、図8に示す受信波形の信号から北方位基準パルス(NRB)を選別すると共に、15Hzと135Hzの合成波から15Hzのみをフィルタを用いて取りだす。そして、選別された北方位基準パルス(NRB)信号と15Hz信号の負から正へ向かう零クロス点までの電気角を粗方位として40°毎のセクタ指定を行う。次に、同様にして、図8に示す受信波形の信号から40度方位基準パルス(ARB)信号と135Hz信号を選別し、40度方位基準パルス(ARB)信号と135Hz信号の負から正へ向かう零クロス点までの電気角を求め、図9に示す要領で方位を求める。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上述したように、従来の方位・距離測定装置は、航空機に地上局からの方位と距離の情報を与えることを目的として構成され、地上局は航空機の位置及び方位を知る手段を備えていない。従って、トランスポンダの飛行点検時に、インタロゲータの受信状態を確認する場合、いちいち無線で確認しなければならず面倒であり、またパイロットからの、自己の方位・距離把握が不能となったことを表示するアンロックの通知等に対するトランスポンダ側の点検問題を迅速に処理できないという問題がある。
【0007】本発明の目的は、地上局において航空機の位置及び方位を知る手段を備えた方位・距離測定装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するために、本発明の方位・距離測定装置は次の如き構成を有する。即ち、本発明の方位・距離測定装置は、航空機に搭載されるインタロゲータと地上に設置されるトランスポンダとで構成される方位・距離測定装置において;前記インタロゲータに、前記トランスポンダから送出する特定信号としての北方位基準パルスに対する受信状態の良否を所定の間隔を有する複数のパルスより成る特定の応答パルス列の形式で応答送信する手段; を設け、前記トランスポンダに、インタロゲータの前記応答送信を対象として受信し航空機の方位を決定可能とする配列形式の複数の空中線及び前記複数の空中線で捕捉した前記特定の応答パルス列を受信処理する受信機と; 前記受信機の出力する受信信号の含む前記特定パルス列の前記複数の空中線により航空機の方位を決定可能とすべく形成する各指向方向の強度に対応する受信レベルの強度に基づいて航空機の方位を算定するとともに、受信状態の良否を判定し、前記北方位基準パルスの送信から受信までの時間に基づいて航空機までの距離を算出し出力するデータ処理器と;前記データ処理器の出力する方位と距離並びに受信状態を表示する指示器と;設けたことを特徴とするものである。
【0009】
【作用】次に、前記の如く構成される本発明の方位・距離測定装置の作用を説明する。本発明では、トランスポンダは、インタロゲータから受信状態を示す応答信号を、トランスポンダの送出する特定信号としての北方位基準パルスの受信に基づいて送出する特定パルス列としての、3パルスで形成する3パルス連として受け、その航空機の方位と距離、受信状態を特定パルス列の受信レベルと送受信間の時間とに基づいて判定するものであって、複数の空中線によって形成される各指向方向の強度(指向特性)に対応する受信レベルに基づいて航空機の方位を算定し、且つ送受信間の時間に基づいて航空機までの距離を算定して表示する。従って、地上局で航空機の方位と距離を知ることができ、且つ3パルス連の受信状態を介してインタロゲータ側の受信状態の良否も確認できる。その結果、地上局の飛行点検において、アンロック等の問題処理を迅速に決定できる。更に、航法援助システムとしての安全性をより一層高めることができる。
【0010】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施例に係る方位・距離測定装置を示す。なお、従来と同一構成部分には同一符号を付してある。本発明では、インタロゲータ1は、構成要素的には従来と同様であるが、パルス発生器2と信号処理器6とに若干の機能追加をし、また、トランスポンダ11は、航空機の方位を決定可能とする配列形式、本実施例ではTACANアンテナと同様な円筒配列形式の複数の空中線(1〜n)17と、受信機18と、データ処理器19と、指示器20とを追加して設け、信号処理器14からデータ処理器19に制御信号(受信機ゲート)bを出力するようにしてある。以下、図2を参照して説明する。
【0011】トランスポンダ11では、従来と同様に、パルス発生器15が北方位基準パルス、40度方位基準パルスのほかランダムパルス、又は応答パルスを含む各種のパルスを含む送信パルスを発生し(図2(a))、信号処理器14、送信機16を介した空中線12から送信される。その際に、信号処理器14は、北方位基準(NRB)パルスに同期して受信機ゲートb(図2(b))を形成し、それをデータ処理器19に出力する。
【0012】インタロゲータ1では、空中線4、受信機5を介した信号処理器6で受信入力された信号中の北方位基準(NRB)パルスを解読処理をし、その受信レベルに基づいて受信状態の良否を判定し、それに応じた定の応答パルス列としての応答パルス(図2(c))を発生させる指令cをパルス発生器2に送り、応答パルス(図2(c))を発生させ、応答送信させる。ここで、応答パルスとしては、図2(c)に示すように、3パルス連を使用し、第2パルスを距離算定のための距離ビットに、第3パルスを方位算定のための方位ビットにそれぞれ割り当てる。
【0013】トランスポンダ11では、インタロゲータ1からの3パルス連を複数の空中線17で受信し、受信機18を介したデータ処理器19で受信機ゲートbを用いて3パルス連の受信処理をしそれぞれのレベル比較をして方位を算定する。また、データ処理器19では、北方位基準(NRB)パルス送信後3パルス連を受信するまでの時間を求め、その時間から予め定めた処理時間びに3パルス連の距離ビットまでの時間を差し引いて距離を求める。更にデータ処理器19は、受信状態を3パルス連の受信レベルに基づいて判定し、3パルス連が受信できれば、方位及び距離の情報は正常であってインタロゲータの受信状態は良好であると判定し、また、方位ビットを除く2パルス連の受信であれば距離のみ正常である旨データを作成する。データ処理器19は、以上の方法で求めた航空機の方位及び距離並びに受信状態データの情報dを指示器20に出力し、表示させる。
【0014】なお、本装置は、2次レーダと同じ原理であるので、その覆域は、200〜300NMであり、広範囲の航空機の方位と距離を知ることができる。
【0015】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の方位・距離測定装置によれば、TACANのトランスポンダは、インタロゲータから受信状態を示す応答信号を特定の応答パルス列の形式で得、このパルス列の受信レベルと北方位基準パルスから応答パルス列受信までの時間とに基づいてその航空機の方位と距離、受信状態を算定、判定して表示するようにしたので、地上局で航空機の方位と距離を知ることができる。その結果、地上局の飛行点検において、アンロック等の問題処理を迅速に決定できる効果がある。更に、航法援助システムとしての安全性をより一層高めることができるという効果もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係る方位・距離測定装置の構成ブロック図である。
【図2】本発明の一実施例に係る方位・距離測定装置の動作タイムチャートである。
【図3】従来の方位・距離測定装置の構成ブロック図である。
【図4】トランスポンダが送信する各種パルスのタイムチャートである。
【図5】インタロゲータにおける距離測定の説明図である。
【図6】トランスポンダ(地上局)のアンテナの放射パターン図である。
【図7】放射パターンと基準パルス(NRB、ARB)との関係図である。
【図8】インタロゲータにおける方位測定の説明図である。
【図9】インタロゲータにおける方位測定の説明図である。
【符号の説明】
1 インタロゲータ6 信号処理器
11 トランスポンダ
17 空中線(1〜n)
18 受信機
19 データ処理器
20 指示器

【特許請求の範囲】
【請求項1】 航空機に搭載されるインタロゲータと地上に設置されるトランスポンダとで構成される方位・距離測定装置において; 前記インタロゲータに、前記トランスポンダから送出する特定信号としての北方位基準パルスに対する受信状態の良否を所定の間隔を有する複数のパルスより成る特定の応答パルス列の形式で応答送信する手段; を設け、前記トランスポンダに、インタロゲータの前記応答送信を対象として受信し航空機の方位を決定可能とする配列形式の複数の空中線及び前記複数の空中線で捕捉した前記特定の応答パルス列を受信処理する受信機と; 前記受信機の出力する受信信号の含む前記特定パルス列の前記複数の空中線により航空機の方位を決定可能とすべく形成する各指向方向の強度に対応する受信レベルの強度に基づいて航空機の方位を算定するとともに、受信状態の良否を判定し、前記北方位基準パルスの送信から受信までの時間に基づいて航空機までの距離を算出し出力するデータ処理器と; 前記データ処理器の出力する方位と距離並びに受信状態を表示する指示器と; 設けたことを特徴とする方位・距離測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図8】
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【特許番号】第2743626号
【登録日】平成10年(1998)2月6日
【発行日】平成10年(1998)4月22日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−181973
【出願日】平成3年(1991)6月26日
【公開番号】特開平5−2070
【公開日】平成5年(1993)1月8日
【審査請求日】平成7年(1995)5月30日
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【参考文献】
【文献】特開 昭60−97287(JP,A)