説明

方向性のある拡張をする脈管内器具

血管形成術およびステント術の分野で有益な方法と器具を提供する。いくつかの実施形態では、その方法と器具は、例えば、プラークで閉塞された血管内において、方向性のある拡張をする。いくつかの実施形態では、この器具の方向性のある拡張により、プラークを所望の方向に移動させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願については、2008年8月28日に出願された米国仮特許出願番号61/092・561を基礎とする優先権を主張する。
【0002】
本発明は脈管内医療器具に関する。いくつかの実施形態では、本発明は、方向性のある膨張、例えば、器具の近位端部から遠位端部に向かっての膨張あるいは遠位端部から近位端部への膨張をする血管形成バルーンやバルーン膨張型ステントのような拡張可能な器具に関する。
【背景技術】
【0003】
多くの病気が血管内腔での狭窄または閉塞を引き起こす。例えば、プラークの沈着のような病状は、心臓や脳のような人体の重要な部分への血液の流れをふさぐ原因になる。
【0004】
バルーン血管形成術は、膨張可能なカテーテル搭載型バルーンを使って、狭窄や閉塞を起こしている血管の内腔部分を拡張するための技術である。ガイドワイアを血管の皮膚の切開部から血管内に挿入する。バルーンが病変部位の位置に置かれるように、カテーテルが、ガイドワイアにより案内されて血管内に挿入される。バルーンを膨らませるが、その場合、通常、カテーテルを通して生理食塩水のような液体を注入する。バルーンは、血管を拡張させている時、血管の内腔壁に外向きの力を加える。いくつかの実施形態では、血管内腔を拡張する際に、プラークのような柔らかい沈着物が血管壁に付着することになる。血管形成術には色々なタイプがあり、これには、末梢血管形成術が含まれ、経皮的腔内血管形成術(PTA) として知られており、この血管形成術には、冠動脈以外の血管も広げる術も含まれる。さらに、経皮的冠動脈血管形成術(PCTA)があり、これは冠動脈狭窄を治療する。ほかに、腎動脈血管形成術、頚動脈血管形成術、脳動脈血管形成術がある。
【0005】
ある場合には、ステントがバルーン血管形成術の際に同時に留置されることがある。
【0006】
ステントは、血管の内腔に留置される器具であり、血管の機能を維持するために、血管の内腔壁に外向きの軸方向の力を加える。ステント治療が適応となる血管は、通常、呼吸管、胃腸管、リンパ管、血管、特に、閉塞・狭窄を起こした動脈、動脈瘤、物理的損傷、物理的病変、物理的崩壊、弱体化状態の動脈である。
【0007】
ステントは、外向きの軸方向の拡張をして、軸方向の小さい寸法の未拡張状態と、軸方向の大きな寸法の拡張状態の両方において、実質的に管状の形状を有する。ステントの多様な構造が知られており、例えば、巻き上げたシート状のステント、穴をあけるか切り取ったチューブ状のステント、曲がったワイア状のステントなどがある。このようなステントが以下の特許文献で開示されている。米国特許番号4、655、771;4,733,665;4,739,762;4,800,882;4,907,336;4,994,071;5、019,090;5,035,706;5,037,392;5,149,385などである。
【0008】
血管の内腔に留置するために、拡張可能ステントが未拡張状態で留置カテーテル上に配置されて、皮膚の切開口を通して挿入され、留置位置まで体内を通過して届けられることになる。そのあと、ステントは、適当な大きさに広げられた状態で軸方向に拡張されて治療対象の血管の内部壁に到着する。拡張可能なステントは、一般的には、拡張用のデバイス、即ち、カテーテル搭載バルーンにより、未拡張状態から拡張状態に広げられる。ステントが留置位置に届くと、上記拡張デバイスが未拡張ステント内で作動して外向きの軸方向の力をステントの内側に加え、それにより、ステントを適当な大きさに拡張された状態にする。
【0009】
いくつかの例では、バルーン血管形成術に続いて、ステントが留置されることになる。つまり、普通のステントが血管形成バルーン上に配置され、血管形成術と同時にステントの留置が実施される。
【0010】
一般的には、血管形成術により治療された血管の崩壊を防ぐために物理的に血管を支持するステントが留置される。
【0011】
別の例では、薬剤溶出ステントが血管内に留置される。血管を物理的に支持する目的の他に、薬剤溶出ステントには有効薬剤成分が含まれ、例えば、狭窄の再発を防ぐ薬剤や治癒率を上げる薬剤が含まれている。市販されている薬剤溶出ステントには、次のようなものがある。TAXUS、Express、Atomなど(TAXUS、Express、Atomは、いずれも、Boston Scientific Scimed Inc, Maple Grove , MN, USAの商標登録)。
【0012】
いくつかの例では、カバードステントが血管内に留置される。このカバードステントは、血管内腔またはステントの表面の全部または一部に装着されるカバー(ジャケットとも呼ばれる)を有する。ステントカバーは、適切な人工素材(例えば、PTFEのようなポリマー)と天然素材(例えば、採集組織)から成る。上記ステントカバーには多様な機能があり、有効薬剤成分を投与する機能、血管プロテアーゼとしての機能、物理的に血管を強化する機能、プラークの沈着を抑止する機能、バルーンを膨張させている間や、プラークを血管とステントカバーとの間に閉じ込めている間に、血管に物理的な損傷がある場合に備えて血管破裂を防止する機能である。
【0013】
当業者であればすでに知っているように、人体内の多くの血管は分枝している。ここで、「分枝」という語の意味は、「ある対象が、その対象の長さに沿って2つに分かれている」ことである。この分枝血管は、図1に示されている通り、体幹血管10から、分枝点14を起点として、分枝血管12が分かれている。分枝血管14の内腔が、体幹血管12より細いとは限らない。
【0014】
分枝病変の分類をするために、多数の分類システム(図2を参照)が開発されており、デユーク分類(図2A)、パリ心臓血管研究所の分類(図2B)、メディナ(Medina)分類(図2C)などがある。ディナ(Medina)分類によれば、分枝病変は、体幹血管の遠位病変、体幹血管の近位病変、分枝血管病変の3つの型に分類されている。この病変の中のうちのいずれか1つに当てはまる場合には、接尾文字「1」が割り当てられ、そうでない場合には、「0」が割り当てられる。例えば、病変「1,0,1」は、体幹血管の遠位の病変であり、分枝血管には病変があるが、体幹血管の近位には病変はないということを示している。
【0015】
図3に示されるように、閉塞分枝血管(図i)の治療には、多数の異なった技法が採用されている。ステント+PTCA法(図ii)の場合には、ステントを体幹血管に留置させ分枝血管で血管形成術を行う。T−ステント法(図iii)の場合には、第一ステントを留置させ、次に第二ステントを体幹血管に留置させる。逆T−ステント法の場合には、体幹血管に第一ステントを留置させ、次に分枝血管に、第一ステントからの壁の穴を通して第二ステントを留置させる。キュロットステント法では、まず、第一ステントを体幹血管に留置させ、次に第二ステントを体幹血管から分枝血管内に留置させ、次に第二ステントを第一ステントの壁部の開口部を通して体幹血管から分枝血管に留置させてステントの遠位部分が重なるようにする。V−ステント法(図vi)では、ガイドワイアを体幹血管と分枝血管に配置させ、次にステントを各血管に留置させる。Y−ステント法では、V−ステント法の方法を実施した後に、ガイドワイアを分枝血管から取り出し、第三のステントを体幹血管内のガイドワイア上に載せ、分枝血管の遠位境界面にステントを留置させる。クラッシュステント法(図vii)では、2つのステントを分枝病変部位に、体幹血管内で重なっている分枝血管ステントを使って、遠位ステント部分が並行になるように配置する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
分枝病変の治療の大きな問題点の1つは、スノープロー効果であり、これは、図4Aに示したような遠位部位でのプラーク沈着16と、図4Bで示したような近位部位でのプラーク沈着16であり、血管形成術のためのバルーン18の膨張とステント20の拡張の過程で、プラーク16の移動が発生して、プラーク16が体幹血管12内で再度移動して、少なくとも、その一部を、分枝血管内に分散させ、その結果、分枝血管が閉塞状態となる病変である。
【0017】
もう1つの重要な問題は、急性心筋梗塞(AMI)において起こることであるが、血管形成バルーンの膨張(ステントがあるかどうかに関係なく)のために、プラークまたは血栓が望ましくない場所に移動する、例えば、動脈の狭い部分に移動するということが起こり、その結果、血液の流れをふさいでプラークの治療や管理が困難になることである。
【0018】
分枝血管であるか非分枝血管であるかを問わず、血管系に留置できる脈管内医療器具を使えることは治療上大きなメリットであって、これは、従来技術にはなかったことである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明のいくつかの実施形態は、血管形成バルーンカテーテル、バルーン膨張型ステントのような脈管内医療器具およびこれらの使用方法に関するもので、従来の脈管内医療器具に比べてメリットの大きいものである。特に、いくつかの実施形態では、血管形成バルーンの膨張またはステントの拡張の間において発生するプラーク移動の負の結果、つまり、分枝血管の閉塞を起こすスノープロー効果を克服または減少させている。
【0020】
特に、本発明の実施形態のアスペクトは、バルーンカテーテル、バルーン膨張型ステントのような脈管内の医療器具の、制御された方向性のある拡張に特長があり、それらが膨張している間に、プラークや血栓が、特定の方向(オペレータの所望の方向)に向かって移動されて、分枝血管の側部や、血管内の狭窄部位から押し出されて、塞栓症保護器具の方向に向かうようになっていることである。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態のアスペクトによれば、バルーンカテーテルおよびバルーン膨張型ステントから成る群から選択される拡張式の脈管内医療器具が提供され、この器具は、遠位端部、近位端部、中心部を有し、上記器具は、血管内において制御された方向性のある拡張をするように構成されていることを特徴とする。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態のアスペクトによれば、血管形成術を実施するための方法が提供され、(a)バルーンカテーテルおよびバルーン膨張型ステントから成る群から選択された、遠位端部、近位端部、中心部を有し、血管内において制御された方向性のある拡張をするように構成された拡張式の脈管内医療器具を血管内に案内すること、および(b)上記血管内において上記器具を方向性のある拡張をすることを特徴とするとする。いくつかの実施形態によれば、上記血管形成は、末梢血管形成術、経皮的腔内血管形成術、腎臓動脈血管形成術、頚動脈血管形成術、脳動脈血管形成術から成る群より選択されることを特徴とする。
【0023】
いくつかの実施形態によれば、上記方向性のある拡張が、上記近位端部から上記遠位端部への拡張であること、上記遠位端部から近位端部への拡張であること、上記遠位端部と近位端部から中心部への拡張であること、上記中心部から遠位端部と近位端部への拡張であることから成る群より選択されることを特徴とする。
【0024】
いくつかの実施形態によれば、上記器具が、上記器具の長さに沿った多様な膨張抵抗を示すことを特徴とする。その結果、拡張が起こったとき、より抵抗の少ない部分が、抵抗の大きい部分よりも先に拡張が起こる。
【0025】
いくつかの実施形態によれば、上記器具がバルーンから成り、バルーン材料の厚みが上記バルーンの長さ応じて変化し、バルーン材料が薄くなればなる程、膨張抵抗が小さくなり、バルーン材料が厚くなればなる程、膨張抵抗が大きくなることを特徴とする。いくつかの実施形態によれば、上記バルーンは2つの実質上等しいテーパ状の端部を有することを特徴とする。いくつかの実施形態によれば、バルーンにおける近位端部での、バルーン材料の厚みが、バルーンの遠位端部でのバルーン材料の厚みよりも小さい、そのために、バルーンは近位端部から遠位端部に向かっての方向性のある膨張をする。いくつかの実施形態によれば、バルーンにおける遠位端部での、バルーン材料の厚みが、バルーンの近位端部でのバルーン材料の厚みよりも小さい、そのために、バルーンは遠位端部から近位端部に向かっての方向性のある膨張をする。いくつかの実施形態では、バルーンにおける近位と遠位端部のバルーン材料の厚みが、バルーンの中心部近くのバルーン材料の厚みよりも小さい、そのために、バルーンは、近位と遠位端部から中心部に向かっての方向性のある膨張をする。いくつかの実施例では、バルーンの中心部近くのバルーンの厚みが、バルーンの近位と遠位端部の厚みよりも小さい、そのために、バルーンは、中心部から近位と遠位端部に向かって、方向性のある膨張をすることになる。
【0026】
いくつかの実施形態によれば、上記器具がより斜面の鋭いテーパ状端部を有するバルーンから成ることを特徴とする。さらに、いくつかの実施形態によれば、上記器具がより斜面の鋭いテーパ状端部を有するバルーンから成ることを特徴とする。いくつかの実施形態では、より斜面の緩やかなテーパ状の端部は、実質的に直線状の断面(例えば、内角は約80度から約100度の間)を有するとする。いくつかの実施形態では、上記の斜面の鋭いテーパ状端部は、上記の近位端部から成り、そのために、抵抗が上記近位端から上記遠位端部に向かって増加することを特徴とする。いくつかの実施形態によれば、上記の斜面の鋭いテーパ状端部は、上記の遠位端部から成り、そのために、抵抗が上記遠位端部から上記近位端部に向かって増加することを特徴とする。いくつかの実施形態によれば、より鋭いテーパ状の端部のバルーン材料の厚みは、より緩やかなテーパ状端部のバルーン材料の厚みより小さい。いくつかの実施形態では、上記で述べたように、そのような多様な厚みのために、抵抗は、より緩やかな斜面のテーパ状端部よりも、斜面の鋭い端部において小さいとする。
【0027】
いくつかの実施形態によれば、上記器具は、圧着圧力下で上記ステントの長さに沿ってバルーン上に圧着されたバルーン膨張型ステントから成ることを特徴とする。いくつかの実施形態では、上記圧着力は、上記近位端部から上記遠位端部に向かって増加し、そのために、上記方向性のある膨張は上記近位端部から上記遠位端部に向かって起こることを特徴とする。いくつかの実施形態では、上記圧着力は、上記近位端部と上記遠位端部から中心部に向かって増加し、そのために、上記方向性のある膨張は上記近位と上記遠位端部から上記中心部に向かって発生することを特徴とする。いくつかの実施形態によれば、上記圧着力は、上記近位端部から上記遠位端部に向かって増加し、そのために、上記方向性のある膨張は上記近位端部から上記遠位端部に向かって起こることを特徴とする。いくつかの実施形態によれば、上記圧着力は、上記近位端部と上記遠位端部から中心部に向かって増加し、そのために、上記方向性のある膨張は上記近位端部と上記遠位端部から上記中心部に向かって起こることを特徴とする。いくつかの実施形態では、上記器具は、圧着温度で上記ステントの長さに沿ってバルーン上に圧着されたバルーン膨張型ステントから成ることを特徴とする。いくつかの実施形態によれば、上記圧着温度は、上記遠位端部から上記近位端部に向かって増加し、そのために、上記方向性のある拡張は、上記遠位端部から上記近位端部に向かって発生することを特徴とする。いくつかの実施形態によれば、上記圧着温度は、上記近位端部から上記遠位端部に向かって増加し、そのために、上記方向性のある膨張は上記近位端部から上記遠位端部に向かって起こることを特徴とする。いくつかの実施形態では、上記圧着温度は、上記近位端部と上記遠位端部から中心部に向かって増加し、そのために、上記方向性のある膨張は上記近位端部と上記遠位端部から上記中心部に向かって起こることを特徴とする。いくつかの実施形態によれば、上記圧着温度は、上記中心部から上記近位と上記遠位端部に向かって増加し、そのために、上記方向性のある膨張は、上記中心部から上記近位端部と上記遠位端部に向かって起こることを特徴とする。
【0028】
いくつかの実施形態によれば、上記器具は、バルーン膨張型ステントから成り、上記ステントにおいて、最初に拡張する部分の材料の量が少ないことを特徴とする。いくつかの実施形態によれば、上記の量の少ない材料は、より数が少ないステント支柱であることを特徴とする。いくつかの実施形態によれば、上記の量の少ない材料は、薄いステント支柱であることを特徴とする。いくつかの実施形態によれば、上記の量の少ない材料は、上記遠位端部に位置しており、上記近位端部に向かって増加する、そのために、上記ステントの拡張が上記遠位から上記近位端部に向かって起こることを特徴とする。いくつかの実施形態によれば、上記の量の少ない材料は、上記近位端部に位置しており、上記遠位端部に向かって増加する、そのために、上記ステントの拡張が上記近位から上記遠位端部に向かって起こることを特徴とする。いくつかの実施形態では、上記の量の少ない材料は、上記遠位端部に位置しており、上記中心部に向かって増加する、そのために、上記ステントの拡張が上記近位と上記遠位端部から中心部に向かって起こることを特徴とする。いくつかの実施形態では、上記の量の少ない材料は、上記中心部に位置しており、上記遠位と上記近位端部に向かって増加する、そのために、上記ステントの拡張が上記中心部から上記近位と上記遠位端部に向かって発生することを特徴とする。
【0029】
いくつかの実施形態では、上記脈管内器具が方向性のある位置に置かれた膨張抑止エレメントとから成ることを特徴とする。
【0030】
いくつかの実施形態では、上記の方向性のある位置に置かれた膨張抑止エレメントが取り外し可能で、非拡張性のシースから成ることを特徴とする。いくつかの実施形態によれば、上記取り外し可能なシースは、上記器具の上記近位から上記遠位端部の方向に引き出すことにより取り外し、そのために、上記拡張は近位端部から遠位端部の方向に起こることを特徴とする。いくつかの実施形態によれば、上記取り外し可能なシースは、上記器具の上記遠位から上記近位端部の方向に引き出すことにより取り外され、そのために、上記拡張が、上記遠位端部から上記近位端部の方向に起こることを特徴とする。
【0031】
いくつかの実施形態によれば、上記の方向性のある位置に置かれた膨張抑止エレメントは、長さに沿って強度が変化する長手方向を向いているコイルから成り、そのために、抵抗の量も変化して、上記脈管内器具が開閉することを特徴とする。いくつかの実施形態によれば、上記の方向性のある位置に置かれた膨張抑止エレメントは、上記脈管内器具の少なくともその一部に圧縮をおこさせる分解性要素から成り、そのために、そのような圧縮された部分の拡張は、上記分解性エレメントの分解があると同時に起こる。いくつかの実施形態によれば、上記分解性エレメントは、熱分解性エレメント、生分解性エレメント、pH関連分解性エレメント、酵素分解性エレメントとから成る群から選択されることを特徴とする。
【0032】
いくつかの実施形態によれば、上記の方向性のある位置に置かれた膨張抑止エレメントは、上記脈管内器具の少なくともその一部に圧縮をおこさせる脆弱な構成要素から成り、そのために、そのような圧縮された部分の拡張は、上記脆弱エレメントの分解があると同時に起こることを特徴とする。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態のアスペクトによれば、上記方向性のある拡張は、プラークを所望の方向に移動させることを特徴とする。
【0034】
特に別の定義がない限り、ここで使用されて、本発明に属するすべての科学技術用語は、普通の当業者により、通常、理解されているのと同じ意味である。ここでの記述、材料、方法、例は、単なる例示目的であり、これらに限定されるものではない。ここで記載された方法と材料は、本発明の実施と試験でも使用できる。一般的に、ここで使用されている学術用語および本発明で使用された実験手順には、医学、生物学、化学、材料科学、薬理学、エンジニアリング分野の用語や技法が含まれるが、そのような技法については、文献で十分に説明している。
【0035】
ここで使われている「comprising(成る)」「including (含む)]「having (有する)」または、文法的に変形された同義の用語は、特徴、数字、ステップ、構成要素などを特定するための語であるが、さらに追加の特徴、数字、ステップ、構成要素を除外するものではない。この用語は、「consisting of(・・から成る)」「consisting essentially of(本質的に・・から成る)」という表現を含む。
ここで使用されている「遠位」という用語は、医療従事者に近い位置にあるカテーテルやステントのような長い医療器具の側部または端部を指し、一方、「近位」という用語は、医療従事者に遠い位置にあるカテーテルやステントのような長い医療器具の側部または端部を指す。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1は、分枝血管の状態を示している。
【図2A】図2A(従来技術)は、分枝血管の回りにあるプラークの分布で特徴づけられるアテローム硬化症の分類を示している。
【図2B】図2B(従来技術)は、分枝血管の回りにあるプラークの分布で特徴づけられるアテローム硬化症の分類を示している。
【図2C】図2C(従来技術)は、分枝血管の回りにあるプラークの分布で特徴づけられるアテローム硬化症の分類を示している。
【図3】図3(従来技術)は、分枝血管内にステントを留置する方法を示す。
【図4A】図4A(従来技術)は、血管形成術およびステント留置中に発生する「スノープロー」効果を示している。
【図4B】図4B(従来技術)は、血管形成術およびステント留置中に発生する「スノープロー」効果を示している。
【図5】図5のA乃至Dは、血管形成術中での、発明のいくつかの実施形態の動作の原理を示している。
【図6A】図6Aは、本発明の第一実施形態である、第一端部から第二端部へ方向性のある膨張をする非対称型血管形成バルーンを示している。
【図6B】図6Bは、本発明の第一実施形態である、第一端部から第二端部へ方向性のある膨張をする非対称型血管形成バルーンを示している。
【図7A】図7Aは、多様な材料厚みを有する対称型血管形成バルーンにおける、本発明の実施形態による方向性のある膨張を示している。
【図7B】図7Bは、多様な材料厚みを有する対称型血管形成バルーンにおける、本発明の実施形態による方向性のある膨張を示している。
【図7C】図7Cは、多様な材料厚みを有する対称型血管形成バルーンにおける、本発明の実施形態による方向性のある膨張を示している。
【図8A】図8Aは、非対称型血管形成バルーンに装着されたバルーン膨張型ステントにおける方向性のある膨張を示している。
【図8B】図8Bは、非対称型血管形成バルーンに装着されたバルーン膨張型ステントにおける方向性のある膨張を示している。
【図9A】図9Aは、血管形成バルーンに軸方向に非対称で圧着されたステントにおける方向性のある膨張を示している。
【図9B】図9Bは、血管形成バルーンに軸方向に非対称で圧着されたステントにおける方向性のある膨張を示している。
【図9C】図9Cは、血管形成バルーンに軸方向に非対称で圧着されたステントにおける方向性のある膨張を示している。
【図10】図10は、本発明の実施形態による、多様な支柱厚みを有し、近位端部から遠位端部に拡張するバルーン膨張型ステントを示している。
【図11A】図11Aは、本発明の実施形態による、外部膨張抑止エレメントとして機能する取り外し可能な未膨張状態の血管形成バルーンを示している。
【図11B】図11Bは、本発明の実施形態による、外部膨張抑止エレメントとして機能する取り外し可能な膨張状態の血管形成バルーンを示している。
【図12A】図12Aは、本発明の実施形態にかかる、脆弱な構造の外部膨張抑止エレメンとして機能する2つの破裂可能な血管形成バルーンの方向性のある拡張を示している。
【図12B】図12Bは、本発明の実施形態にかかる、脆弱な構造の外部膨張抑止エレメンとして機能する2つの破裂可能な血管形成バルーンの方向性のある拡張を示している。
【図12C】図12Cは、本発明の実施形態にかかる、脆弱な構造の外部膨張抑止エレメンとして機能する2つの破裂可能な血管形成バルーンの方向性のある拡張を示している。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明のいくつかの実施形態は、添付図面を参照して記述している。ここでの記述と図面が、発明のいくらかの実施形態がどのように実施されるかについて普通の当業者には明確である。この図面は例示目的であり、発明の基礎的理解のために必要以上には発明の構造を詳細を示す意図はない。分かりやすくするために、図面での描画対象には、スケールを合わせていない。
【0038】
本発明は、血管内腔において、方向性のある膨張をするバルーンカテーテルやバルーン膨張型ステントのような拡張式の脈管内器具、および、その使用法に関する。
【0039】
本発明の脈管内器具の原理、使用法、実施については、添付の記載と図面を参照することでより深く理解できる。ここでの記載や図面を精読すれば、当業者であれば、本発明を、過度の努力や実験なしに実施できる。上記図面には、類似の部品には類似の参照番号を付してある。
【0040】
まず初めに、本発明の適用は、ここで詳細に述べた内容に限定されるものでないことを理解すべきである。本発明は、別の実施形態を使用しても実施できるし、別の多様な方法でも実現可能である。ここで使用した語句や用語は、単に記載の便宜のためであり、これらに限定されるものではないことも理解すべきである。
【0041】
本発明のいくつかの実施形態で述べてある動作の原理となるものは、脈管内器具を、血管内腔において、制御された方向に膨張させることである。いくつかの実施形態によれば、ここでの制御された方向への膨張は、ある対象物の膨張ということは、一般的には、膨張抵抗の小さい箇所において最初に起こるという原理に基づいて実施される。いくつかの実施形態では、制御された方向へ膨張させる方式の場合に、脈管内のプラークのような物質を、望ましい方向、例えば、このプラークによる分枝血管の閉塞を避けることができるように、その分枝血管からは離れた方向の場所に、そのような物質を移動させることが可能となる。
【0042】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本発明は、バルーンカテーテルやバルーン膨張型ステント(それぞれ、その遠位端部、近位端部、中心部を有する)のような方向制御拡張式の脈管内医療器具、即ち、血管内腔で制御された方向での拡張ができるように構成された器具を提供する。一般的に、そのような器具の1つ以上の構成物として、医学的画像方法により可視化される1つ以上のマーカを使い、これにより、体内にある器具がどこにあるかの正確な位置を知ることができるようになっている。マーカを可視化する手段の例として、超音波、X線、CT,MRIなどの画像手法がある。
【0043】
ここでの記述で使用している「拡張可能なステント」という用語は、十分な外部方向の軸方向の力がステントの管腔表面に加わった時に、軸方向に拡張するように構成されたステントのことを指す。
【0044】
いくつかの実施形態によれば、本発明を実施するためのステントの例としては、例えば、ベアメタルステント、薬剤溶出ステント、カバードステント、コートステント、および、下記の述べるような、人工弁のフレームワーク(枠)として機能するバルーン膨張式ステントのようなバルーンが膨張する構造のものがある。
【0045】
従来技術として、カバードステントを血管内に留置する方法がすでに知られている。大体において、当業者にすでに知られているステントのカバーは、本発明を実施する際に使用されるステントをカバーする場合にも有用であり、このカバーは、内部カバーとしても外部カバーとしても使えるし、あるいは、全面カバーとしても、部分カバーとしても使うことができ、そのカバーの材料は、単独の材料でも数種の材料を組み合わせたカバーでもよく、天然のものであっても人工のものであってもよい。
【0046】
従来技術として、コートステントを血管内に留置する方法もすでに知られている。コードステント用として多くの種類の違うコーティングが知られており、例えば、抗血栓コーティング、抗血管新生コーティング、抗凝結コーティング、活性医薬品成分送達コーティングなどがある。従って、当業者にすでに知られているステント用コーティングであっても、本発明を実施するために使用するステント構成品をコーティングするものとしては有用である。
【0047】
ステントが、体内の脈管内の場所から留置場所までの移動が容易となるように、拡張する前には直径が小さいことが必要であると同時に、留置カテーテルやステント膨張バルーンの上で、ステントを編むことができるほどに拡張する前の直径が大きいことも必要だということに注意することは重要である。ステントは、個別の拡張する前の直径よりも、拡張した時の直径のほうが大きいが、その大きさは多様である。
【0048】
留置の後の、ステントの拡張時の直径については、ステントが留置される血管内腔の自然の大きさなどの医学的基準に従って、ステントのユーザが決定する。大抵のバルーン膨張式ステントの特徴は、そのステントが構造的な一体性を失わずに拡張できる最も大きい範囲まで最大限まで拡張されるということである。
【0049】
いくつかの実施形態に示されているように、本発明にかかる器具と方法は、分岐血管部での病変を治療する場合に使用できる。
【0050】
いくつかの実施形態によれば、本発明は、血管形成術を実施する方法を提供するものであり、血管内腔に、バルーンカテーテルやバルーン膨張式ステント(それぞれ、遠位端、近位端、中心部を有している)のような拡張式脈管内医療器具を挿入することであり、この器具は、内腔において制御された方向に拡張し、血管内腔において、この器具をある方向に拡張させることができる構造になっている。
【0051】
方向性のある拡張とは、例えば、器具の近位端部から遠位端部へ、遠位端部から近位端部へ、中央部から各端部に、各端部から中央部に広がることである。器具を制御された方向に拡張させることができれば、プラークがある方向での制御が可能となり、例えば、体幹血管内の分枝血管の場合、ここで拡張することにより、分岐血管の方向ではプラークが減少し、その場所にプラークが沈着するのを阻止できる。
【0052】
いくつかの実施形態によれば、本発明の器具とその使用法は、メディナ(Medina)分類システムにおいて、「1.0.0」、「0.1.0」、「0.0.1」、「1.1.0」として分類される病変の治療に使えるとする。例えば、いくつかの別の実施形態によれば、分類が「1.0.0」である病変は、その病変の遠位にはプラークが沈着しており、この場合には、バルーン付きステントで治療を行い、バルーンを近位端から遠位端に移動するように膨張させて、そこにステントを留置して、プラークを分枝血管の開口部から離れた位置に取り除く手順を取ることになっている。別の実施形態では、病変が「0.1.0」の場合には、バルーンを膨張させる方向が逆となり、遠位端部から近位端部に向けてバルーンを膨張させることが好ましいとしている。
【0053】
いくつかの実施形態によれば、本発明の器具とその方法は、従来技術と類似した方法で実施してもよいとする。ガイドワイアが、この器具を皮膚の切開口から血管内部に誘導するようになっている。ガイドワイアが、体幹血管を貫通して遠位の治療対象の部位、例えば、血管の分枝点から、その側面部の分岐血管に、適切に器具を誘導していく。方向性の膨張をする器具(例えば、バルーンカテーテルがあるが、バルーン膨張式ステントを装着していても、装着してなくてもよい)を直接に挿入するか、ガイドワイアの案内で体内を貫通させ、体幹血管内の適当な場所で留置させる。一度適切に留置されると、その拡張可能な器具は、部分的にある方向に拡張をして、その拡張された場所で十分な力を加えて、プラークを所望の場所に移動させる、つまり、側面分枝血管からプラークを取り除くことになるのである。
【0054】
図5A乃至5Dにおいては、本発明の実施形態にかかる、脈管内器具の動作原理を示す。
【0055】
図5Aには、分岐血管が示され、体幹血管10と分枝血管12があり、この中にカテーテルガイドワイヤ22が配置されている。体幹血管10内の血管壁の分枝血管12の近くにプラーク病変24がある。
【0056】
図5Bに示されているように、本発明の実施形態26にかかる、脈管内器具は、カテーテル28、バルーン30、ガイドワイヤ22から成り、ここでの血管形成用バルーン30は、カテーテルの上に配置され、方向性の膨張をするバレーンであり、ガイドワイヤ22に沿って体幹血管10内のプラーク病変24の近くまで導かれることになる。
【0057】
図5Cに示すように、血管形成用バルーン30は、近位端部32から遠位端部34に向かって方向性のある膨張をする。
【0058】
図5Dに示すように、脈管内器具26内の近位端部から遠位端部への膨張により、プラーク24を横に押しのけ、体幹血管10の血管壁に沿って後部へ押しやることになる。さらに、分枝血管の方向には少しではあるが移動する。
【0059】
図5A乃至5Dの例において明らかなように、ここでの拡張は、近位端部から遠位端部の方向に向かって起こることに注目すべきである。上記と同じ「押しのけ」の原理が、遠位端部から近位端部への、中心部から側面部への、側面部から中心部への方向性の膨張の場合にも適用でき、さらに、プラーク病変との相対的な位置に応じて、分枝血管の側面分枝部へ膨張させる場合にも適用される。
【0060】
いくつかの実施形態では、上記脈管内器具は、方向性の膨張をする非対称バルーンを有する非対称型バルーンカテーテルから成る。別のいくつかの実施形態では、非対称型バルーンカテーテルの非対称バルーンには、第一端部と第二端部があり、この第二端部が第一端部より斜面が鋭いテーパ状態になっている。別のいくつかの実施形態では、上記バルーンの遠位端部が第二端部として機能して、鋭いテーパ状態になっており、上記近位端部が第一端部となっている。さらに別のいくつかの実施例では、第一端部が斜面の緩やかなテーパ状態で、実質的に方形の断面を有している。結果として、膨張用の液体がバルーン内に注入されると、バルーンの膨張は第二端部から始まり第一端部に向かっての逆向きの膨張となる。別のいくつかの実施形態によれば、斜面がより鋭いテーパ形状の第二端部のバルーンの素材は、第一端部よりも薄く、テーパ斜面は緩やかで、そうすることで、膨張抵抗を少なくしている。
【0061】
バルーン素材としては、従来技術においてバルーンカテーテルの製造で使用されているような既知の素材で構わない。通常、上述した非対称バルーン型のバルーンカテーテルにおいては、そのバルーン自体の膨張直径は、それが膨張していない時の、少なくとも、5倍乃至6倍である。バルーンとしての望ましい特性は、強度、軟度、柔軟性、破裂強さ、やわさ、疲労強度であり、これらが、バルーンが膨張していない時の折りたたみ性能を達成するためにも重要である。カテーテル用のバルーンを制作するのに最適とされている材料としてのポリマーの例としては、エラストマーシリコン、エラストマーポリウレタン、ポリエチレン、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド、ナイロンなどがある。いくつかの実施形態では、軸方向の膨張に抵抗を示す材料を束にして、バルーンの対象となる第一端部(遠位部または近位部)を取り巻くことにより、従来技術では、すでに既知である対称形状のバルーンを、上記のような非対称形状のバルーンに仕上げてもよいとしている。その結果、バルーンの第二端部(巻かれてない端部)の形状は、実質的に方形の断面を有する第一端部(巻かれている)に比べて、より鋭い角度のテーパ状となり、膨張抵抗も少なくなる。
【0062】
図6には、本発明の脈管内器具の実施形態である、方向性の膨張をする非対称血管形成バルーン36を有する非対称型バルーンカテーテル34が示されており、ここでは、上記バルーン36は膨らんだ状態である。血管形成バルーン36は非対称の形状であり、斜面が緩やかなテーパ状態である第一端部(実質的に方形の断面を有する)と、斜面が鋭いテーパ状態である第二端部を有している。その結果、膨張液がバルーン36に注入されると、バルーンは斜面が鋭い端部の方から、斜面の緩やかな端部に向かって膨れ上がるが、これは図5に示した通りである。図6に示すように、バルーン6の斜面が緩やかなテーパ状の端部は実質的に方形の断面を有することになる。
【0063】
図6Aに示すように、バルーンカテーテル36aの非対称型の血管形成バルーン38aは、斜面の緩やかなテーパ状の近位端部32と、斜面の鋭いテーパ状の遠位端部32を有している。バルーンカテーテル36aのバルーン38aは、図6Aに示したような非対称形状を有する。
【0064】
図6Bに示すように、バルーンカテーテル36bのバルーン38bは、斜面の緩やかなテーパ状の遠位端部34と斜面の鋭いテーパ状の近位端部32を有する。バルーンカテーテル36bの上記バルーン38bは、事実上、対称形の血管形成バルーンであり、その近位端部の周りには、圧縮バンド40(高密度ポリエチレン[HDPE]のような、実質的に非膨張性の素材)が取り付けられている。
【0065】
いくつかの実施形態によれば、上記バルーン38のような非対称形状の血管形成バルーンの斜面の鋭いテーパ状端部の壁面の素材は、オプションとして、緩やかなテーパ状の端部の素材よりも薄いものでも構わない。
【0066】
いくつかの実施形態によれば、上記脈管内器具は、方向性のある膨張をする対称型バルーンを有する対称型バルーンカテーテルから成るとしている。いくつかの実施形態では、上記対称型バルーンカテーテルの対称形状バルーンは、2つの実質的に等しい斜面の端部を有しており、このバルーン素材の第一端部での厚みが、第二端部よりも大きいので、第一端部において、より大きい膨張抵抗となる。その結果、膨張液がバルーンに注入されると、バルーンは第二端部から第一端部に向かって膨張する。いくつかの実施形態によれば、バルーンの近位端部が第二端部として機能している、より薄い端部であり、遠位端部が第一端部として機能するとしている。いくつかの実施形態によれば、バルーンの遠位端部が第二端部として機能して、より薄い端部であり、近位端部が第一端部として機能するとしている。いくつかの実施例では、バルーン素材の厚みは、中心部に近い場所より、2つの端部において大きくなっているが、それは、この2つの端部の膨張抵抗を中心部より大きくするためである。その結果、膨張液がバルーンに注入されると、バルーンは、中心部に近い部分から端部に向かって膨らむことになる。いくつかの実施形態によれば、バルーン素材の厚みは、2つの端部よりも、中心に近い部分のほうが大きく、そうすることで、その2つの端部より中心部において膨張抵抗が大きくなるようにしている。その結果、液体をバルーンに注入されると、バルーンは、端部から中心部に向かって膨らむことになる。
【0067】
図7A乃至7Cは、本発明の脈管内器具の実施形態42を示しており、カテーテル42と対称テーパ型血管形成バルーン44から成る。バルーン44において、第一端部(この実施形態では、近位端部32)の素材は、第二端部(この実施形態では、遠位端部34)の素材よりも薄くなっている。図7Aでは、バルーン44は未膨張の状態にある。図7Bでは、液がバルーン44に注入された時、薄い近位端部32では、膨張抵抗が小さくなり、その膨張が方向性を有し、近位端部32から遠位端部34に向けて広がりバルーン44が完全に膨張する図7Cで示した位置まで続く。
【0068】
いくつかの実施形態によれば(図示しない)、ステントが器具42のバルーン44に装着されている。
【0069】
液体がバルーン44に注入されると、バルーン44は、方向性のある膨張をして、その膨張は、近位端部32から遠位端部34に広がり、それに装着されているステントも、方向性のある移動をすることになる。
【0070】
いくつかの実施形態では、上記で述べたように、ステントがバルーンカテーテルの非対称形状または対称形状バルーンの上に圧着され、それにより、ステントが方向性の拡張をして、上記バルーンが方向性の膨張をすることになる。カテーテルが留置されている間、薄い素材の部分、または、斜面の鋭いテーパ状端部においてバルーンの膨張が始まり、より厚い素材の部分、または、斜面の鈍いテーパ状の端部に向かって移動する。その結果、ステントは、軸方向に方向性のある拡張をすることになる。
【0071】
図8には、本発明によるバルーンカテーテルの方向性のある膨張バルーンに装着されているバルーン膨張型ステントの実施形態が示されており、ステントの方向性のある留置の状態が示されているが、以下において、さらに、詳しく述べる。いくつかの実施形態によれば、ステントをバルーンの上に圧着して、バルーンの第二端部がステントの中に収まるようにして、ステントが第二端部の膨張を阻害する膨張抵抗増加の原因にならないようにしている。
【0072】
実質的には、このことは、従来技術として、すでによく知られているバルーン膨張型ステントが方向性のある拡張をするバルーンの上に圧着されるようになっているが、この種類のステントの例としては、ベアメタルステント、薬剤溶出ステント、コートステント、カバードステントがある。
【0073】
図8Aおよび図8Bは、上部に斜面の鋭いテーパ状の近位端部32を有する非対称バルーン38aと斜面の鈍いテーパ状の遠位端部34から構成されるカテーテル28から成る脈管内器具46を図示したものである。ステント20は、その遠位端部48が、斜面の緩いテーパ状の遠位端部34の上に実質的に配置されており、その近位端部50は、斜面の鈍いテーパ状の近位端部32の、少なくとも、その一部分が、ステント20の近位端部50を越えて拡張するような状態で、バルーン38aに圧着されている。
【0074】
図8Aは、バルーン38aが、まだ膨張していない状態の脈管内器具を示している。実質的に、図5で示された場合と同様に、バルーン38aは、膨張液が注入されるとすぐに、方向性の膨張を始め、斜面が鋭いテーパ状の端部(この実施形態では、近位端部32)から膨張し(そこでは抵抗が少ない)、さらに、斜面の緩やかな端部(この実施形態では、遠位端部34)に向かって膨張していくことになる。このバルーン38aの方向性のある膨張により、ステント20が、図7Bで示したように、最大まで拡張した状態になるまで拡張する。
【0075】
いくつかの実施形態では、上記脈管内器具は、方向性のある拡張をするステントから成る。
【0076】
すでに知られているように、ステントは、比較的大きい半径距離で、バルーンカテーテルのバルーンの上を滑らすことにより、バルーンカテーテルに装着される。次に、例えば、ステント圧着器具を使うことにより、バルーンの回りを圧着した状態で、ステントの外側表面に内向きの軸方向の力を加えるとしている。さらに別の実施形態では、ステントの圧着行程中に、ステントに熱を加えるとする。
【0077】
種々の圧着器具がすでに従来技術として知られている。そのような器具の例として、実質的に互いに直線状に平坦で並行の表面を有する一連の複数プレートがある。これらのプレートの表面と表面との間に、ステント搬送型カテーテルが配置されており、ステントに対する互いの相対的な動きと圧力により、ステントが動作するように、カテーテルの外側の上にステントを圧着されている。このプレートは、自由に多くの角度に向けられ、ステントを圧着している間、圧力指示型のトランスデューサを装着させてカテーテルにかかる圧力を測定、指示するようにしてもよい。別の従来型ステント圧着器具が、ジョンソン・アンド・ジョンソン(Johnson & Johnson)により製造されており、その形はヒンジ型のくるみ割り器に似ている。特に、この圧着器具は、一方の端部が蝶番で留められて動くようになっており、他方の端部が手のひらにはさまれているようになっている2本の手動レバーから成る。その圧着チューブには、ステントをバルーンカテーテルに入れるために、圧着器具の真ん中を貫通して圧着チューブを保持する円筒の開口部が形成されている。ユーザがハンドルを押すことで圧着チューブに圧力がかかり、それにより、今度は、ステントが押されて、バルーンカテーテルに圧着される状態となる。
【0078】
別のいくつかの実施形態によれば、方向性のある膨張をする、本発明の脈管内器具は、軸方向に非対称の状態でバルーンカテーテルに圧着されたステントから成る。ステントに方向性のある拡張をさせる場合には、ステントの長さ方向に沿って、バルーン周りの部分の圧着圧力と圧着温度を変化させる。さらに、いくつかの実施形態によれば、圧着行程中に、バルーンの長さ方向に沿って圧着力と圧着温度を変化させることで、ステントがバルーンにより拡張される際に方向性のある拡張が得られるとする。例えば、圧着力と圧着温度を変化させることで、ステントの遠位部から近位部に、ステントの近位部から遠位部に、ステントの中心部からステントの端部に、ステントの端部からステントの中心に向けて、方向性の拡張が得られることになる。
【0079】
いくつかの実施形態によれば、ステントの第一部分は、他の部分に比べて、より小さい圧着力、または、より低い圧着温度でバルーン上に圧着されるとする。その結果、ステントの第一部分は、軸方向の拡張に対しての抵抗が、他の部分に比べて小さいとする。従って、液体がバルーンに注入されると、ステントは、当初は第一部分において拡張し、次に、方向性のある拡張をして、第一部分から、拡張に対する抵抗の大きい方向に向かって拡張が起こる。上記で述べたように、いくらかの実施形態では、軸方向の膨張に対する抵抗の小さい、上記バルーン上の圧着部分は、ステントの近位部であり(これにより、近位部分から遠位部分への方向性の膨張が可能となる)、別の実施形態では、上記バルーン上の圧着部分は、ステントの遠位部であり(これにより遠位部分から近位部分への方向性の膨張が可能となる)、さらに別のいくつかの実施形態では、上記バルーン上の圧着部分は、ステントの中心部分である(これにより、中心部からステント端部への方向性の膨張が可能となる)。
【0080】
図9A乃至9Cは、脈管内器具を示しているが、実質的に、血管形成バルーン18を装着しているバルーンカテーテル28で構成されており、このカテーテルの上に、4つのリング部54a、54b、54c、54dから成るステント52が圧着されている。上記ステント52は、バルーン18上に軸方向に非対称で圧着されており、このために方向性の拡張が可能となっている。特に、リング部54a乃至54dのそれぞれが、別々の圧着条件下で圧着されている。つまり、リング部54a(ステント52の近位端部50にある)は、最も低い圧力と温度で圧着されており、その横のリング部54bは、54aよりはいくらか高い圧力と、いくらか高い温度で圧着されており、その横のリング部54cは、54bよりは、いくらか高い圧力といくらか高い温度で圧着されており、その横のリング部54dは、54cよりは、いくらか高い圧力といくらか高い温度で圧着されている。図9Bに示すように、膨張液をバルーンに注入することで、バルーンの膨張が始まるとすぐに、リング部54aの圧着状態により、ステント52の近位部分50において拡張抵抗が小さくなる。その結果、バルーン18の膨張とステント52の拡張が方向性のある拡張となり、近位端部(50,32)から遠位端部(48,34)への拡張と膨張となる。
【0081】
いくつかの実施形態によれば、本発明の、方向性のある膨張が可能な脈管内器具は、ステントが最初に拡張する部分では抵抗が小さくなるように構成されているためである、つまり、ステントが方向性のある拡張ができるのは、軸方向への抵抗の少ないステント壁の部分を有するためであるとする。いくつかの実施形態では、ステントが最初に拡張される部分の材料の使用量を少なくすること、例えば、支柱の数を減らしたり厚みを小さくしたりすることで、このステントの方向性のある拡張が実現できるとする。当業者であれば、適切な素材のチューブから、例えば、標準的なレーザカット技術法を使って、上記で述べたようなステントの作製は可能である。
【0082】
いくつかの実施形態によれば、方向性のある拡張をするステントを実現するために、ステントの遠位端部での材料を少なくなるように構成する、つまり、材料の使用量が、遠位端部から近位端部に向かって増えるように構成して、ステントが遠位から近位端部に向かって広がるようにするとする。
【0083】
いくつかの実施形態によれば、方向性のある拡張をするステントを実現するために、ステントの近位端部での材料を少なくなるように構成する、つまり、材料の使用量が、近位端部から遠位端部に向かって増えるように構成して、ステントが近位から遠位端部に向かって広がるようにするとする。
【0084】
いくつかの実施形態によれば、方向性のある拡張をするステントを実現するために、ステントの近位端部と遠位端部での材料を少なくなるように構成する、つまり、材料の使用量が、近位端部と遠位端部から中心部に向かって増えるように構成して、ステントが近位と遠位端部から中心部に向かって広がるようにするとする。
【0085】
いくつかの実施形態によれば、方向性のある拡張をするステントを実現するために、ステントの中心部と中心部の近くの材料を少なくなるように構成する、つまり、材料の使用量が、中心部から近位端部と遠位端部に向かって増えるように構成して、ステントが中心部から両端部に向かって広がるようにするとする。
【0086】
図10は、バルーン膨張型ステント56を示しており、これは、Blazer Cobalt Chromium Stent社の製品であり、この「Blazer」は、OrbusNeich Medical 社 (Lauderdale, FL, USA)の商標登録である。本発明の技術は、方向性のある拡張をするステントであり、近位端部50と遠位端部48を有している。従来技術ではすでに知られているように、ステント56は、ステンレス、Nitinol(ニッケルとチタンの合金、製品名)、コバルトクロム合金などの適当な素材のチューブをレーザで切断して製作したものであるが、支柱58の骨組み部も含んでいる。この支柱58は、近位端部50に近くなると幅が狭くなり、支柱58が遠位端部48に近くなると幅が広くなる、つまり、この支柱の幅は、58a<58b<58c<58dの関係となる。例えば、ある特定の実施形態によれば、58aの支柱厚が0.08mm、支柱幅が0.09mm、58bの幅が0.10mm、58cの幅が0.11mm、58dの幅が0.12mmとしている。結果として、外側の軸方向の力をステント56の脈管内の表面部に適用することで、方向性のあるステントの拡張が実現でき、これにより、支柱58aで制約されるステント56の近位部が最初に拡張され、次にステント56が近位端部50から遠位端部48に向かって方向性のある拡張をすることになる。
【0087】
図10に示すように、ステント56は、軸方向の支柱と連結されたリングから成るフレームワーク(枠)を有するステントである。本発明は、別の型の骨組みから成るステントにも適用可能である。
【0088】
いくつかの実施形態によれば、本発明の、方向性のある膨張可能型の脈管内器具は、膨張バルーン(そのバルーン上にバルーン膨張型のステントが装着されているかどうかに関係なく)の外部表面の、少なくとも、その一部に位置している膨張抑止構成要素から成り、その膨脹抑止構成要素は、上記バルーンが膨張するかどうかは、上記膨張抑止エレメントの方向性のある取り外しがあるかどうかによって制御されるような場所に配置されている。
【0089】
別のいくつかの実施形態によれば、上記の膨張抑止エレメントは、取り外し可能で、膨張バルーンを取り囲む非膨張型のシース(シリコンゴム、フルオロポリマー、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ナイロン、ポリエチレンなど)から成る。このシースにより、現在の配置されている位置での膨張バルーンの膨張が抑止される(このシースはバルーン上に装着される)。シースを徐々に取り外すことで、そのシースが取り外される方向において、バルーンの膨張が可能となる。
【0090】
いくつかの実施形態では、上記のシースは、従来技術としてすでに知られている自己拡張型シース(バルーン拡張型ステントがバルーン上に覆われて装着されている)と類似であるとする。脈管内器具の使用中は、上記シースは遠位端部方向に引き出されて、部分的に取り外されることになり、その結果、バルーンの近位端部が晒されることになるとする。液体をバルーンに注入すると、外部に晒されている近位端部だけが膨張することになる。そのあと、上記シースはさらに引き出されて、バルーンが、近位端部から遠位端部への方向性の膨張をすることなるとする。
【0091】
いくつかの実施形態では、シースは、膨張バルーンとバルーン拡張型ステントの間に配置される、つまり、ステントは膨張バレーン上とシース上に圧着されることになる。このような場合、そのシースはステントとバルーンとの間から引き出されることになる。
【0092】
いくつかの実施形態では、遠位端部から近位端部の方向において膨張が起きるようにシースを近位端部に向かって前に押してもよいとする。
【0093】
いくつかの実施形態では、膨張抑止エレメントには、医学画像手段による1つ以上の目に見えるマーカが付けられるが、マーカを目に見えるようにすることで、シースを可視の制御下での取り除きが可能となるとする。このマーカの例として、超音波、X線、MRIによる画像手段がある。
【0094】
図11Aと11Bには、脈管内器具60が示されているが、それは、カテーテル28、血管形成バルーン18、外部に配置された膨張抑止エレメント62(シースが自己膨張型スタントでの従来技術で知られているシースと類似である)から成り、これらは、少なくとも、バルーン18の外部表面部分に沿って配置されており、それらが最初にバルーンの膨張を防止することになる。図11Aに示されているように、マーカ64が装着された膨張抑止エレメント62は、近位端部に配置されている。
【0095】
この器具は、使用する場合には、通常の方法で、例えば、ガイドウエアの案内下で、治療位置に対して器具を配置することになる。血管形成バルーン19の近位端部32は、マーカ64と照合して、病変の遠位端部に配置される。膨張液がバルーン18に注入される一方、膨張抑止エレメント62が徐々に遠位方向に引っ張られる。図11Bに示されるように、バルーン18の近位端部32が最初に膨張する。追加の液がバルーンに注入されて膨張抑止エレメント62が遠位端部に引き出されるにつれて、バルーン18は、本発明により、方向性のある膨張を行うことになる。いくつかの実施形態では、バルーン18が最初に遠位方向に引き出された後に、さらに続くバルーン18の膨張により、膨張抑止エレメント62が遠位方向に動くことになるとする。
【0096】
関連する実施形態によれば(図示はしない)、脈管内器具60のような器具のバルーン18上にステントを装着するとする。そこで、膨張液がバルーン18に注入されて、膨張抑止エレメント62が引き出されて、バルーン18が近位端部32から遠位端部34に向かって方向性のある膨張をする際に、バルーン18に装着されたステントも同時に方向性のある拡張をするとする。
【0097】
いくつかの実施形態では、膨張抑止エレメントは、脈管内器具の外部表面に沿って配置された長手方向に延びるコイルの状態をしており、このコイルは、器具の開口部において多様な抵抗を与えることができるように、膨張する長さ方向に沿った多様な大きさの力を要求する構成となっているとする。今まで説明した実施形態のように、この抵抗は、脈管内器具の拡張が近位端部から遠位端部に向かって進むように、遠位端部において大きくてもよく、あるいは、器具の開口が遠位端部から近位端部に向かって形成されるように近位端部において大きい場合であってもよいとする。
【0098】
いくつかの実施形態では、この膨張抑止エレメントは、(手術用の)縫合糸、バンド、スリーブを纏めたようなもので構成されているので、方向的な動きにおいては脆いエレメントである。その実施形態では、膨張抑止エレメントがない部分、または、そのような脆い部分が無い部分にバルーンに液を注入した時、その膨張が開始するとしている。バルーンの一部が膨張するにつれてバルーンに隣接する部分が上記の膨張抑止エレメントから解放される仕組みになっている。別の実施形態では、この膨張抑止エレメントの弱点は、このようなバルーンの容易な取り外し方法などの指示がないことだとしている。
【0099】
図12A乃至12Cは、脈管内器具66を示しており、血管形成バルーン68から成り、カテール28上に、近位端部32と遠位端部34がある。バルーン68の近位端部32からおよそ3分の1の所までは、脆い膨張抑止エレメントで囲まれており、このエレメントは、セルロース製のシース70aから成り、切り取り線72aを含んでいる。バルーン68の遠位端部34からおよそ3分の1の所までは、脆い膨張抑止エレメントで囲まれており、このエレメントは、セルロース製のシース70aから成り、切り取り線72aを含んでいる。バルーン68の中心部74は、シース70で覆われてはいない。
【0100】
図12Aに示されているように、脈管内器具66は、体幹血管10内に配置されており、体幹血管内にはプラーク24が沈着しており、分枝血管12を横切るようにバルーン68を配置する。
【0101】
膨張液をバルーン68に注入する。図12Bに示されているように、膨張抵抗が少ない箇所でバルーン68が膨張する、即ち、シース70a、70bの無い、真ん中の部分74で膨張することになる。切り取り線72a、72bが、シース70a、70bの弱い部分を構成しており、上記バルーン68が膨張するにつれて、シース70a、70bが、その真ん中部分74から端部32、34に向かって、切り取り線72a、72bに沿って次第に破れていく。
【0102】
バルーン68は、分枝血管12近くのプラークを押し出しながら、中心部74から近位端部32と遠位端部34に向かって膨張する。バルーン68が完全に膨張した時、図12Cに示すように、体幹血管10が、広がり分枝血管12は、実質的にプラークで塞がれていた状態から塞がれていない状態になることになる。
【0103】
いくつかの実施形態では、膨張抑止エレメントは分解性のエレメントであり、例えば、分解性の縫合糸や分解性のバンドである。このような実施形態では、上記膨張抑止エレメントのない器具部分から膨張が始まり、その膨張抑止エレメントの分解が進むにつれて、圧縮していた部分に膨張が進む。この分解性のエレメントは、例えば、熱、血液の流れ、酵素分解、pH関連の分解が原因で分解する。
【0104】
本発明は、一般的に、多くの異なった心臓血管や非心臓血管に適用できる。本発明の脈管内器具の留置の適用例としては、動脈狭窄などの拡張症動脈、閉塞病変、動脈瘤、ネイティブ動脈病変、冠動脈穿孔、冠動脈フィステル、冠動脈入口部病変、腹部大動脈瘤、末梢動脈瘤の治療、経頚静静脈的肝内門脈シャント、経皮脈管内血管形成術、フィステル閉鎖および脳血管内治療(例えば、動静脈瘤や動静脈奇形など)、大伏在静脈グラフト、小血管管内グラフティングや腎動脈入口部病変治療などがある(これらに限定されない)。さらに、非心臓血管分野では、泌尿器系疾患、胃腸系疾患、呼吸器系疾患、神経系疾患にも適用できる。
【0105】
いくつかの実施形態では、本発明の器具または方法が、末梢血管形成術、経皮的冠動脈血管形成術、腎動脈血管形成術、頚動脈血管形成術、脳動脈血管形成術から成る群から選択された血管形成術に使用する。
【0106】
本発明は、主に、分枝血管の血管形成について述べているが、別の実施形態では、プラークによる分枝血管の破壊を避けるために、分枝血管からプラークを離すことができるようになっている。
【0107】
いくつかの実施形態によれば、本発明は、分枝血管の治療における血管形成術として有用であるとするが、別の実施形態では、非分枝血管にも、本発明が有用であるとする。例えば、下記で述べるように、いくつかの実施形態では、本発明は、栓子材料を所望の方法に移動させる場合に有効であるとする。
【0108】
いくつかの実施形態によれば、本発明は、非分枝血管においてプラークを所望の方向、例えば、血管の広い場所の方向に、移動させるときの血管形成に使えるとする。
【0109】
いくつかの実施形態では、血管の血管形成が、血管形成器具と血栓保護器具を組み合わせた状態で実施できるとする。特に、拡張した拡張型器具が治療済みの血管を塞ぐとする。上述したように、本発明の方向性のある拡張状態が進む。つまり、血栓になる可能性のあるプラークで、従来は血管形成の技術を使って血管内に押し出していたプラークの一部分が、器具の第一端部と器具の未拡張端部との間に閉じ込められることになる。上記器具の拡張が進むにつれて、プラークの一部分が治療済みの血管の管内に形成されたプラーク塊に押し出されて、その中に入りこむことになる。
【0110】
関連実施形態では、本発明の脈管内器具が方向性のある拡張をするにつれて、血管壁から血栓が除去されて、例えば、急性の心筋梗塞の治療中、大伏在血管グラフトを実施中、突出性血栓手術中において、その血栓がすでに留置されている血栓保護器具により取り込まれるようにする。
【0111】
本発明は、血管形成バルーンやバルーン膨張ステントから成る脈管内器具について記載したが、すでに述べたように、それ以外の脈管内器具にも適用可能である。
【0112】
例えば、いくつかの実施形態によれば、自己拡張型ステントが通常の方法で血管内に留置される。血管内にステントを留置し、そのあと、シースを引き出し、それにより、自己拡大ステントが自己拡大され、ステントがプラーク沈着の表面に接触するとする。すでに知られているように、ステントはプラーク自体を移動させるほどの力を加えることはない。自己拡張型のステントの支柱部がプラーク沈着を貫通するが、本発明の方法により、バルーンがその自己拡張型ステントに入り込み、本発明の方法に従って、ステントを広げることになる。その結果、プラークが方向性のある移動をして、血管が拡張されて、自己拡張型ステントが血管内に留置される。
【0113】
例えば、いくつかの実施形態では、本発明は、特に、経皮またはトランスアピカル留置用の人工弁 (例えば、心臓弁、僧帽弁、大動脈弁、肺弁、三尖弁など)のフレームワーク(枠)として作用する拡張型ステントにも適用できるとする。いくつかの実施形態では、人工弁は、方向性のある膨張型のバルーンと一緒に留置される。さらに別の実施形態によれば、人工弁のフレームワーク(枠)を構成しているステントとして、方向性のある拡張型のステントを採用しているとする。
【0114】
本発明のある特徴は、明確さのために、別々の実施形態として説明されている場合であっても、その実施形態を組み合わせた形でも、あるいは、単独の形で説明してもよい。逆に、本発明の多様な実施形態を、簡潔さのために、別々の実施形態として説明してもよいし、それらを組み合わせた実施形態として説明してもよい。種々の多様な実施形態として説明された本発明の特徴が、その実施形態が、それらの要素なしでは実施できない場合を除いて、本発明の実施形態になくてはならない特徴と考えるべきではない。本発明はそれぞれ特別な実施形態で説明されているが、それらに限られる訳ではなく、多くの代替、修正、変更も本発明に含まれることは当業者に明白である。従って、それらの代替、修正、変更も、本発明の添付クレームの広い範囲と精神に含まれるものである。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルーンカテーテルおよびバルーン膨張型ステントから成る群から選択される拡張式の脈管内医療器具であって、遠位端部、近位端部、中心部を有し、上記器具は、血管内において制御された方向性のある拡張をするように構成されていることを特徴とする脈管内医療器具。
【請求項2】
血管形成術を実施するための方法であって、
(a)バルーンカテーテルおよびバルーン膨張型ステントから成る群から選択された、遠位端部、近位端部、中心部を有し、血管内において制御された方向性の拡張をするように構成された拡張式の脈管内医療器具を血管内に案内すること、および
(b)上記血管内において上記器具に方向性のある拡張をさせることを特徴とする方法。
【請求項3】
上記血管形成術は、末梢血管形成術、経皮的腔内血管形成術、腎臓動脈血管形成術、頚動脈血管形成術、脳動脈血管形成術から成る群より選択されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
上記方向性のある拡張が、上記近位端部から上記遠位端部への拡張であること、上記遠位端部から近位端部への拡張であること、上記遠位端部と近位端部から中心部への拡張であること、上記中心部から遠位端部、近位端部への拡張であることから成る群より選択されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1の請求項に記載の器具または方法。
【請求項5】
上記器具が、上記器具の長さに沿った多様な膨張抵抗を示すことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1の請求項に記載の器具または方法。
【請求項6】
上記器具がバルーンから成り、バルーン材料の厚みが上記バルーンの長さと共に変化し、バルーン材料が薄くなればなる程、膨張抵抗が小さくなり、バルーン材料が厚くなればなる程、膨張抵抗が大きくなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1の請求項に記載の器具または方法。
【請求項7】
上記バルーンは2つの実質上等しいテーパ状の端部を有することを特徴とする請求項5に記載の器具または方法。
【請求項8】
上記第一端部での上記の膨張抵抗が上記第二の端部の膨張抵抗よりも大きくするために、上記バルーンの第一端部でのバルーン材料の厚みを、上記バルーンの第二端部でのバルーン材料の厚みより大きくしていることを特徴とする請求項6または7のいずれかに記載の器具または方法。
【請求項9】
上記中心部での上記の膨張抵抗が、上記近位端部と遠位端部での膨張抵抗よりも大きくなるように、上記バルーンの上記近位端部と遠位端部でのバルーン材料の厚みを、上記バルーンの中心部近くでのバルーン材料の厚み以下にすることを特徴とする請求項6または7のいずれかに記載の器具または方法。
【請求項10】
上記近位端部および遠位端部での上記の膨張抵抗を上記中心部の膨張抵抗よりも大きくするために、上記バルーンの近位端部および遠位端部でのバルーン材料の厚みを、上記バルーンの中心部でのバルーン材料の厚みより大きくしていることを特徴とする請求項6または7のいずれかに記載の器具または方法。
【請求項11】
上記器具がより斜面の鋭いテーパ状端部を有するバルーンから成ることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の器具または方法。
【請求項12】
上記の斜面の鋭いテーパ状端部は、上記の近位端部から成り、そのために、抵抗が上記近位端から上記遠位端部に向かって増加することを特徴とする請求項11に記載の器具または方法。
【請求項13】
上記の斜面の鋭いテーパ状端部は、上記の遠位端部から成り、そのために、抵抗が上記遠位端部から上記近位端部に向かって増加することを特徴とする請求項11に記載の器具または方法。
【請求項14】
上記器具は、圧着圧力下で上記ステントの長さに沿ってバルーン上に圧着されたバルーン膨張型ステントから成ることを特徴とする請求項1乃至13のいずれかに記載の器具または方法。
【請求項15】
上記器具は、圧着温度で上記ステントの長さに沿ってバルーン上に圧着されたバルーン膨張型ステントから成ることを特徴とする請求項1乃至14のいずれかに記載の器具または方法。
【請求項16】
上記圧着力と圧着温度は、上記遠位端部から上記近位端部に向かって増加し、そのために、上記方向性のある拡張は、上記遠位端部から上記近位端部に向かって起こることを特徴とする請求項1乃至14のいずれかに記載の器具または方法。
【請求項17】
上記圧着力と圧着温度は、上記近位端部から上記遠位端部に向かって増加し、そのために、上記方向性のある膨張は上記近位端部から上記遠位端部に向かって起こることを特徴とする請求項14または15に記載の器具または方法。
【請求項18】
上記圧着力と圧着温度は、上記近位端部と上記遠位端部から中心部に向かって増加し、そのために、上記方向性のある膨張は上記近位端部と上記遠位端部から上記中心部に向かって起こることを特徴とする請求項14または15に記載の器具または方法。
【請求項19】
上記圧着力と圧着温度は、上記中心部から上記近位端部と上記遠位端部に向かって増加し、そのために、上記方向性のある膨張は、上記中心部から上記近位端部と上記遠位端部に向かって起こることを特徴とする請求項14または15に記載の器具または方法。
【請求項20】
上記器具は、バルーン膨張型ステントから成り、上記ステントにおいて、最初に拡張する部分での材料の量が少ないことを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の器具または方法。
【請求項21】
上記の量の少ない材料は、より数が少ないステント支柱であることを特徴とする請求項20に記載の器具または方法。
【請求項22】
上記の量の少ない材料は、薄いステント支柱であることを特徴とする請求項20または21に記載の器具または方法。
【請求項23】
上記の量の少ない材料は、上記遠位端部に位置しており、上記近位端部に向かって増加する、そのために、上記ステントの拡張が上記遠位端部から上記近位端部に向かって起こることを特徴とする請求項20乃至22のいずれかに記載の器具または方法。
【請求項24】
上記の量の少ない材料は、上記近位端部に位置しており、上記遠位端部に向かって増加する、そのために、上記ステントの拡張が上記近位端部から上記遠位端部に向かって起こることを特徴とする請求項20乃至22のいずれかに記載の器具または方法。
【請求項25】
上記の量の少ない材料は、上記遠位端部に位置しており、上記中心部に向かって増加する、そのために、上記ステントの拡張が上記近位端部から上記遠位端部から中心部に向かって起こることを特徴とする請求項20乃至22のいずれかに記載の器具または方法。
【請求項26】
上記の量の少ない材料は、上記中心部に位置しており、上記遠位端部と上記近位端部に向かって増加する、そのために、上記ステントの拡張が上記中心部から上記近位端部と上記遠位端部に向かって起こることを特徴とする請求項20乃至22のいずれかに記載の器具または方法。
【請求項27】
上記脈管内器具が方向性のある位置に置かれた膨張抑止エレメントとから成ることを特徴とする請求項1乃至26のいずれかに記載の器具または方法。
【請求項28】
上記の方向性のある位置に置かれた膨張抑止エレメントが取り外し可能で、非拡張性のシースから成ることを特徴とする請求項27に記載の器具または方法。
【請求項29】
上記取り外し可能なシースは、上記器具の上記近位端部から上記遠位端部の方向に引き出すことにより取り外し、そのために、拡張は近位端部から遠位端部の方向に起こることを特徴とする請求項28に記載の器具または方法。
【請求項30】
上記取り外し可能なシースは、上記器具の上記遠位端部から上記近位端部の方向に引き出すことにより取り外され、そのために、拡張が、上記遠位端部から上記近位端部の方向に起こることを特徴とする請求項28に記載の器具または方法。
【請求項31】
上記の方向性のある位置に置かれた膨張抑止エレメントは、長さに沿って強度が変化する長手方向を向いているコイルから成り、そのために、抵抗の量も変化して、上記脈管内器具が開閉することを特徴とする請求項27に記載の器具または方法。
【請求項32】
上記の方向性のある位置に置かれた膨張抑止エレメントは、上記脈管内器具の、少なくとも、その一部に圧縮をおこさせる分解性要素から成り、そのために、そのような圧縮された部分の拡張は、上記分解性エレメントの分解があると同時に起こることを特徴とする請求項27に記載の器具または方法。
【請求項33】
上記分解性エレメントは、熱分解性エレメント、生分解性エレメント、pH関連分解、酵素分解から成る群から選択されることを特徴とする請求項32に記載の器具または方法。
【請求項34】
上記の方向性のある位置に置かれた膨張抑止エレメントは、上記脈管内器具の、少なくとも、その一部に圧縮をおこさせる脆弱な構成要素から成り、そのために、そのような圧縮された部分の拡張は、上記脆弱エレメントの分解があると同時に起こることを特徴とする請求項27に記載の器具または方法。
【請求項35】
上記方向性のある拡張が、プラークを所望の方向に移動させることを特徴とする請求項1乃至34のいずれか1の請求項に記載の器具の使用または方法。


【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【公表番号】特表2012−500673(P2012−500673A)
【公表日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−524150(P2011−524150)
【出願日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際出願番号】PCT/CA2009/001198
【国際公開番号】WO2010/022516
【国際公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(511051339)
【出願人】(511051340)
【Fターム(参考)】