説明

施工性の優れた防水テープ

【課題】躯体構造物又は外壁取付柱とサッシとの間隙や下貼材とサッシとの間隙、或いは下貼材間の目地等に防水テープを施工する際、平滑な部分だけでなく段差があるところや入り隅及び出角などの複雑な箇所でも効率よく綺麗に貼り付け作業ができる防水テープを提供する。
【解決手段】粘着材を2枚の離型紙で挟んで巻き取る際、片方の離型紙を単に幅方向に2列に分けて突き付けるのではなく適当な間隔を空けて宛がいながら粘着材の一部を露出させたまま巻き取ることにより、施工性が極めて優れた防水テープが得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築外壁のシール材として用いられる防水テープに関する。詳しくは、躯体構造物又は外壁取付柱とサッシとの間隙や下貼材とサッシとの間隙、或いは下貼材間の目地をシールする防水テープで、平滑な部分だけでなく段差があるところや入り隅及び出角などの複雑な箇所でも綺麗に貼着でき、且つ、確実な水密性が得られる施工性の優れた粘着性防水テープに関する。
【背景技術】
【0002】
戸建て住宅の外壁は、躯体構造物又は外壁取付柱に溶接等の手段によってサッシを取り付け、その間隙部をシールするため両者に跨らせて両面粘着性防水テープを貼り付け、他面の粘着力を利用して透湿性防水シートを貼り、次いで外壁用パネルを取り付け、最後にサッシと外壁パネルの目地部やパネル間目地にコーキング材を施工して仕上げるのが一般的な工法として実施されている。また、合板や石膏ボードが外壁パネルの下貼材として使用される場合もあり、これらの下貼材やサッシとの間隙部や下貼材間の目地等も防水テープによってシールされる。
【0003】
このとき使用される両面粘着性防水テープは、合成ゴムや合成樹脂、または改質アスファルト等を主成分とした粘着材が使われる。中でも耐久性に優れたブチルゴムを主成分としたものが多用されており、粘着性ブチルゴムに補強糸や極細糸のプラスチックネットを支持体として埋設したもの、粘着性ブチルゴムでプラスチックネットやフィルム或いは不織布等の支持体を挟み込んだもの等に離型紙を宛がって巻き取ったもの等多種存在する。
【0004】
巻き取りに際して、表裏共に剥離処理が施された両面離型紙1枚だけを用いる場合と、片面に剥離処理された2枚の片面離型紙で粘着材を挟み込む場合とがあるが、いずれにしても施工時にはこれを捲り取りながら、部材間目地や間隙部を確実に覆い両者に跨らせて真っ直ぐに貼り付けなければならない。
【0005】
しかしながら、躯体構造物や外壁取付柱等とサッシとは平滑に取り付けられておらず段差があってこの間隙をシールする場合、入り隅に防水テープを貼り付けなければならず作業は甚だ難しい。また、下貼材間目地も必ずしも平滑ではない上、サッシとの取り合い部においても通常数mm程度の断差が見受けられる。
【0006】
貼り付け作業は、初め離型紙の一部を捲り下地に押し付けるが、このとき粘着材の全幅が露出してしまい所定の位置以外にもくっついてしまって、作業がやりづらい。この後も少しずつ離型紙を捲りながら順次貼り付けていかなければならないが、特に段差があるところや入り隅等の複雑な部位に施工する場合は、空気を巻き込んだり蛇行してしまう等施工上問題がある。
【0007】
両面離型紙1枚だけを宛がったタイプは、ハンドリング時に形が崩れず、また、クラフト粘着テープでダンボールケースを止める要領に似て概してやり易い。しかしながら、粘着材の全幅が露出してしまうので意図する部分以外にもくっついてしまうので、特に上述の複雑な部位に貼り付ける場合は困難を極める。
【0008】
2枚の片面離型紙で粘着材を挟み込んだタイプの貼り付け作業は、予め所定の寸法に裁断しておくことができるのでやり易いが、予備裁断は足場や梯子を使っての高所作業においては甚だ難しい上、持ち運び時に形が崩れ易く、掴み損ねると一挙に巻き戻されて垂れ下がる等、作業性は良くない。また、貼り付け時には粘着材の全幅がむき出しになることに変わりはなく、施工作業性は悪い。
【0009】
これらの問題点を解決する手段として、
特開平10―195397号公報には、粘着材の片面に宛がわれる離型紙を二分割、即ち、背割り加工された離型紙を使うことが提案されており、分割された一方の離型紙を捲って貼り付けた後残されたもう一方の離型紙を捲って貼着することにより、確実且つ容易に気密性施工ができると述べられている。粘着部を半分ずつ露出させながら貼り付けるので、余分な部位にくっつきにくく作業はし易いようであるが、予備裁断を行う場合は粘着材が2枚の離型紙で挟まれたタイプと大差ない上、持ち運び時に形が崩れ易いという問題点は依然として残されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平10―195397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、かかる事情に鑑みなされたもので、施工時に予備裁断する必要がなく、ハンドリング時に型崩れを起こさない上、段差のあるところや入り隅、出角等の複雑な箇所にも綺麗に、且つ、容易に貼り付けることができ、確実な水密性が得られる防水テープを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題の解決のため鋭意研究の結果、粘着材の一部を露出させたまま巻き取ることで、貼り付け作業性が極めて良好な防水テープが得られることを見出だした。詳しくは、粘着材を挟む2枚の離型紙の一方を2列に分け、適当な隙間を空けて宛がいながら巻き取ることにより、その隙間から露出した粘着材の一部が他方の両面離型紙の背面にくっつくことで型崩れしない巻物を得ることができることが分かり、本発明を完成するに至った。
【0013】
本発明品を施工する場合、通常の粘着テープを貼り付けるのと同様に巻物を片手で持ち、露出した粘着材の一部を被着体の貼り初め位置に押し付け、数十センチメートル毎に仮止めしながら、所定の長さを終えたら裁断した後、隙間を空けて宛がった離型紙の何れか一方を外しながら貼り付け、後に残りの一方の離型紙を捲りながら相対する被着体に貼り付ければよい。入り隅や出角等の複雑な部位も極めて簡単に貼り付けることができ、予め所定の寸法に裁断しておく作業工程も不要である。
【0014】
貼り終えたら粘着材に宛がわれている幅の広い他方の両面離型紙を捲りながら透湿性防水シートを押し付ければ、完璧な防水性、機密性を確保することができる。
【0015】
2列に分けた離型紙の隙間、即ち、粘着材を露出させる幅は、防水テープの全幅が50〜200mmの場合3〜10mmが好ましく、3mm以下では他方の離型紙の背面にくっつく部分が狭すぎてハンドリング時に形が崩れる恐れがある上、施工の際仮止め部分が小さすぎて脱落し易い。また、10mm以上では露出する粘着部が大きすぎて無用な部分にもくっついてしまい貼り辛い。
【0016】
粘着材としては、合成ゴムを主成分とした粘着性非加硫ゴムシートや改質アスファルトを主成分としたゴム・アスファルト系粘着シート、或いはアクリル樹脂系粘着シート等を用いることができる。ゴム・アスファルト系粘着シートは、アスファルトを熱可塑性ゴムで改質しこれに粘着付与樹脂等を添加して得られ、廉価で防水工事に広く使用されている。本発明には、とりわけ耐久性に優れたブチルゴム系が望ましく、ブチルゴムに粘着性付与樹脂、軟化剤、充填材、安定剤等を混練して得ることができる。
【0017】
長手方向に隙間を空けて2列にして宛がう離型紙は、特に限定されるものではないが、クラフト紙、グラシン紙、クルパック紙等の片面にシリコーン樹脂やフッ素樹脂等の剥離剤を施した汎用品が使用できる。また、ポリエチレンやポリエステル等のプラスチックフィルムに剥離処理を施した片面離型フィルムを用いることもでき、工事現場で剥離時に破れたり裂けたりする危険性が少なく施工性をより向上させることができる。
【0018】
これらの離型紙は内側に巻き取ることになるが、内径外径の差によるしわの発生を防ぐ目的で、伸縮性のあるクレープ状加工片面離型紙やクレープ状加工片面離型ポリエチレンフィルム等が好ましい。
【0019】
一方、外側に巻き取る離型紙は、隙間から露出した粘着材の一部が背面にくっつくことから背面にも剥離処理が必要で、上述のような紙やプラスチックフィルムの両面に剥離処理されたものでなければならない。また、透湿性防水シートの接着部分が防水テープの全幅にわたらない場合、長手方向に半裁し両者の隙間を空けないで突き付けて粘着材に宛がっておけば、透湿性防水シートの非接着部分に当る離型紙を残したままにしておくことができるので粘着材が剥き出しにならず好都合である。(図3本発明品を入り隅に施工した場合の一例3−1参照)
【0020】
上記の片面離型紙や両面離型紙の厚さは、特に限定されるものではないが50〜200μm程度が好ましい。
【発明の効果】
【0021】
粘着材を挟む2枚の離型紙の一方を2列に分け、適当な隙間を空けて宛がいながら巻き取ることにより、隙間から露出した粘着材が他方の両面離型紙の背面にくっつくことから型崩れせず一挙に巻き戻される危険性のない巻物を得ることが可能になった。更に、段差のある目地や入り隅、出角等の複雑な部位にも一部露出させた粘着材を仮止めしながら作業することにより予備裁断の必要性がなく高所での作業が容易で、且つ、被着面の一方に貼り付けた後次いで相対するもう一方の被着面に順次貼り付けることで、無用な部分にくっつくことなく綺麗に、又、効率よく施工することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本願明細書での実施例1に係る防水テープで、長手方向に2列の離型紙を間隔を空けて宛がい粘着材の一部が露出していること、また、それらを個々に捲り取ることができることを説明した斜視模式図。
【図2】図1の本発明に係る防水テープのA−B線における断面拡大模式図。
【図3】本発明品を入り隅に施工した場合の一例
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に基づく実施例につき説明する。
【実施例1】
【0024】
ゴム用押出機を使って粘着性非加硫ブチルゴム(一般的な配合を表1に示す)を厚さ0.5mm、幅50mmのテープ状に成型し、その片面に、幅50mmの両面離型紙を宛がい、他面には幅20mmのクレープ状加工片面離型ポリエチレンフィルムをテープの中央部に10mmの隙間を空けて2列に平行に宛がい、両面離型紙を外側に、片面離型ポリエチレンフィルムを内側にして巻き取り、長さ20mの粘着性防水テープを得た。
【表1】

【実施例2】
【0025】
実施例1のクレープ状加工片面離型ポリエチレンフィルムの代わりに、幅20mmのクレープ状加工片面離型紙を用い、長さ20mの粘着性防水テープを得た。
【実施例3】
【0026】
実施例1のクレープ状加工片面離型ポリエチレンフィルムの代わりに、幅20mmのクルパック片面離型紙を用い、長さ20mの粘着性防水テープを得た。
(比較例1)
【0027】
実施例1と同様の両面離型紙の片面に、実施例1と同様にして粘着性非加硫ブチルゴムを成型し、他面に幅25mmのクレープ状加工片面離型ポリエチレンフィルムをテープの中央部で隙間を空けないよう突き合わせながら宛がい、両面離型紙を外側に、片面離型ポリエチレンフィルムを内側にして巻き取り、長さ20mの粘着性防水テープを得た。
(比較例2)
【0028】
実施例1と同様の両面離型紙の片面に、実施例1と同様にして粘着性非加硫ブチルゴムを成型し、他面に幅25mmのクルパック片面離型紙をテープの中央部で隙間を空けないよう突き合わせながら宛がい、両面離型紙を外側に、片面離型紙を内側にして巻き取り、長さ20mの粘着性防水テープを得た。
【0029】
(貼り付け作業性の評価)
実施例1、2、3及び比較例1、2の防水テープを、サッシと躯体構造物との間にできる入り隅に貼り付け、そのときの作業性を比較した。
【0030】
貼り付け作業性の評価結果を表2に示す。
【表2】

【0031】
記号の説明
◎・・・良好
□・・・やや良好
○・・・無し
△・・・有り
×・・・悪い又は不可
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明に基づく防水テープは、主として戸建て住宅の躯体構造物又は外壁取付柱等とサッシとの間隙のシール、下貼材とサッシとの間隙や下貼材間の段差目地、或いは入り隅、出角等の複雑な部位にも、効率よくしかも真っ直ぐ綺麗に貼り付けることができ、新築、改装を問わず建築物の長期間にわたる水密性、機密性を維持することができる。
【符号の説明】
【0033】
1:本発明に係る防水テープ
2:隙間を空けて配した2列の片面離型紙
3:両面離型紙
3−1:半裁した両面離型紙
4:粘着材
4−1:片面離型紙の隙間から露出した粘着材の一部
5:巻き心
6: 透湿性防水シート
7:サッシ開口枠
7−1:溶接などによるサッシ取付部
8:躯体構造物又は外壁取付柱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着材の片面に離型紙を宛がい、他面に長手方向に2列の離型紙を間隔を空けて宛がった防水テープ。
【請求項2】
粘着材にブチルゴムを用いた請求項1記載の防水テープ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−87195(P2012−87195A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−234136(P2010−234136)
【出願日】平成22年10月19日(2010.10.19)
【出願人】(710011729)
【出願人】(508154047)
【Fターム(参考)】