説明

施肥装置付き乗用型苗移植機

【課題】本発明では、圃場面高さ検出用センサとして機能するセンターフロートに施肥用作溝器を取り付けても圃場面の凹凸を敏感に検出するようにすることが課題である。
【解決手段】走行車体の左右中央側に配置するセンターフロート52とこのセンターフロート52の左右に配置するサイドフロート53の後上部に苗植付部を設け、センターフロート52とサイドフロート53にそれぞれセンター作溝器54とサイド作溝器55を設け、センターフロート52を圃場表面検出センサとして苗植付部を昇降制御した乗用型苗移植機において、センター作溝器54の先端前傾角αをサイド作溝器55の先端前傾角βよりも小さく寝かせて設けたことを特徴とする施肥装置付き乗用型苗移植機とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、乗用型苗移植機で苗の移植と同時に施肥を行う施肥装置付き乗用型苗移植機に関する
【背景技術】
【0002】
施肥装置付き乗用型苗移植機は、例えば、特開2004−248679号公報に記載されている。
この乗用型苗移植機の施肥装置は、圃場を整地するフロートの底面に設けた作溝器の後端に肥料案内筒を設け、機体の進行に伴って作溝器で移植苗の横に成型される溝に肥料案内筒から肥料を施すようにしている。
【特許文献1】特開2004−248679号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記のフロートは、圃場面を整地すると共に、左右中央のフロートが植付装置を昇降制御するための圃場面高さ検出用センサとして機能しているが、作溝器を取り付けると圃場面の凹凸を検出し難くなる。
【0004】
そこで、本発明では、圃場面高さ検出用センサとして機能するセンターフロートに施肥用作溝器を取り付けても圃場面の凹凸を敏感に検出するようにすることが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
請求項1に記載の発明は、走行車体(2)の左右中央側に配置するセンターフロート(52)とこのセンターフロート(52)の左右に配置するサイドフロート(53)の上側に苗植付部(4)を設け、センターフロート(52)とサイドフロート(53)にそれぞれセンター作溝器(54)とサイド作溝器(55)を設け、センターフロート(52)を圃場表面検出センサとして苗植付部(4)を昇降制御する乗用型苗移植機において、センター作溝器(54)の先端前傾角(α)をサイド作溝器(55)の先端前傾角(β)よりも小さく寝かせて設けたことを特徴とする施肥装置付き乗用型苗移植機とした。
【0006】
この構成で、センター作溝器(54)が圃場面を抉る作用が弱くなって、センターフロート(52)が圃場面に浮き上がり易くなり圃場面の凹凸に追従して昇降する。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の発明では、センターフロート(52)が圃場面の凹凸に追従して昇降し易くすることで、苗植付部(4)を正確に昇降させて苗の植え付け深さを均一に出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
この発明の実施例を図面に基づき説明する。
本発明を実施する苗移植機1は、8条植えの施肥田植機であって、乗用走行車体2の後側にリンク装置3を介して苗植付部4が昇降可能に装着され、走行車体2の後部には施肥装置5の肥料ホッパ5aと、肥料を繰り出す肥料繰出装置5bが各条に配設されている。
【0009】
肥料繰出装置5bと後述する施肥ガイド5cは、施肥ホース5dで連結され、走行車体2の左側部に設ける肥料ブロア10で発生する圧風を送風ホース11で各施肥ホース5dに送って肥料の搬送を行っているが、風力の弱い側の送風ホース11を強い側の送風ホース11よりも短くして、施肥ガイド5cに至る風量の均一化を図って肥料を各植付け条に均等に供給するようにしている。
【0010】
走行車体2は、駆動回転する左右一対の操向可能な前輪6,6と駆動回転する左右一対の後輪7,7を備え、前後フレーム8上の前側にミッションケース9、その後側にエンジンEが搭載され、エンジンEの回転動力は、第一ベルト伝動装置と第二ベルト伝動装置を介してミッションケース9内に伝動されるようになっている。そして、ミッションケース9内のミッションで変速された動力が前輪6,6及び後輪7,7に伝達されると共に、伝動軸と中間ギヤケースと伝動軸を介して苗植付部4に伝動される。
【0011】
車体2の前側には前輪6,6を操向操舵するステアリングハンドル12が設けられ、また、該ハンドル12の後側には操縦者が着座する操縦座席13が設置されている。14はステップフロア、15は予備苗載台、16は線引きマーカ、17は噴霧用水タンクを示す。
【0012】
噴霧用水タンク17は、走行車体2の左右側部にメイン噴霧用水タンク17aとサブ噴霧用水タンク17bとして分割して設けているが、その取り付け高さは、均等に水が減っていく高さとしている。
【0013】
また、前記肥料ブロア10は、ステップフロア14上の作業性を良くするために折り畳み可能にしているが、肥料ブロア10を所定の位置に固定するとサブ噴霧用水タンク17bも共に固定されるようにしている。
【0014】
なお、噴霧用水タンク17の水は、噴霧ノズルでポット苗ホルダーに噴射して洗浄するが、ポット苗ホルダーは噴霧ノズルから遠くなる周縁部を低くして水がポット苗ホルダーの全面に均一散布されるようにしている。
【0015】
また、ステアリングハンドル12の周りには、ミッションを変速するチェンジレバーや変速レバー、植付部の伝動入・切及び植付部4を昇降させる植付昇降レバー、植付部4の作業状態と非作業状態とを切り替えるフィンガアップレバー、植付部昇降制御の感度を調節する副感度調節レバー、植付部4の下降を規制する下降ロックレバー、対地昇降制御の感度を調節する感度調節ダイヤル等を設けている。
【0016】
苗植付部4は、8条植えの構成で、昇降用油圧シリンダ26によって昇降用油圧(電磁)バルブを介して上下に昇降する構成であり、隣接する2条ずつで共用の後下がりに傾斜した上下2段の苗箱供給部30,30・・・が左右並列に4組設けられ、これら各組の苗箱供給部の後端部に苗箱主搬送部31,31・・・が接続されて苗箱搬送路が構成されている。
【0017】
各苗箱主搬送部31は、上下2段の苗箱供給部30,30から順に1個ずつ供給される苗箱Cを前半は下向きに搬送し、途中で搬送方向を徐々に変え、後半は上向きに搬送する側面視略U字条に形成されている。
【0018】
苗箱搬送部31の終端部に接続して、後記苗取出位置Pで苗を取り出された後の空の苗箱Cを複数個上下に重ねた状態で収容することのできる空箱収容枠38が設けられている。
【0019】
空箱ガイドレール39aと39bとの繋ぎ目に対応する部位には、空箱を上側から案内するガイド体40が設けられ、苗箱Cの周回移動が円滑に行われるようにしている。
ところで、苗が取出された後の空の苗箱は、空箱ガイドレール39がU字状に上方に屈曲するよう設けているので、再び上方に搬送されていき、その上端部から排出される空の苗箱Cは、空箱収容枠38内に収容されることになる。
【0020】
なお、この種の移植機に使用される苗箱Cとしては、縦横に多数配列した育苗ポットC1に苗が一株ずつ収容された可撓性を有する苗トレイが使用される。
苗箱供給部30にある苗箱を主搬送部31へ供給する苗箱供給装置29が備えられている。苗箱供給部30,30の底面には空転ローラ20,・・・が設けられていて、載置されている苗箱が自重で後方に滑り落ちるようになっている。
【0021】
各苗箱供給部30の後端部には、苗箱主搬送部31の搬送路へ苗箱を供給する供給装置29として、苗箱の左右縁部を把持して苗箱を主搬送部側に繰り出す左右各一対の供給ローラ21,22と、該供給ローラの前方に位置し、外周部に形成された突起がポットとポットの隙間に下側から係合して苗箱を送る幅広の送りローラ23とが設けられている。上下苗箱供給部の下側供給ローラ22及び送りローラ23は、それぞれモータM1,M2で回転駆動される。
【0022】
また、各苗箱主搬送部31に対応して、苗箱を苗箱搬送路に沿って搬送させる苗箱送り装置32と、苗箱主搬送部31の苗取出位置Pで搬送中の苗箱からポット横一列分ずつ苗を取り出す苗取出装置33と、取り出された苗を下側前方に弧を描くような軌跡でもって搬送する苗搬送装置34と、該苗搬送装置から苗を抜き出す苗抜き装置35と、該苗抜き装置によって抜き出される横1列分の半分ずつ左右両側に横送りする苗横送り装置36と、該苗横送り装置によって供給される苗を取って圃場に植え付ける苗植付装置37が設けられている。
【0023】
駆動ケース41と一体のフレーム42の下側左右水平部分から植付伝動フレーム45が後方に延出され、駆動ケース41の上面には苗載台支持フレーム46が固着され、これで上下2段の苗箱供給部(供給台)30を支持している。
【0024】
ローリング支持軸24は、フレーム42の左右中央部分に固着の植付部支持ブラケット48に取り付けた軸受ケース50に回動自在に軸受され、植付部全体がローリング自在に支持されている。
【0025】
この植付部全体は、駆動ケース41上に設けた水平センサ43の検出値に基づきこの検出値が設定値に維持されるように、制御装置からの操作信号によりローリングモータ25を正逆転駆動することで、植付部4がローリングスプリング28を介して支持軸24回りに左右ローリング制御されるようになっている。なお、前記水平センサ43は、植付部の脱着部より後側に設置するようにしておくことで、植付部を交換しても作動の狂いをなくすことができる。
【0026】
各ユニットの下方には、植付作業時に圃場面を整地しながら滑走する2個ずつのセンターフロート52とサイドフロート53が設けられ、支持アーム56の後端部に上下回動自在に枢着されている。これらセンターフロート52とサイドフロート53の左右両側には、各条の苗植付位置の近傍の圃場面に施肥用の溝を形成するセンター作溝器54とサイド作溝器55と、その後側に施肥ガイド5cとが取り付けられ、この施肥ガイド5cには肥料繰り出し装置5bからの肥料を移送する施肥ホース5dが連設されている。
【0027】
そして、図28に示す如く、センター作溝器54の先端前傾角αはサイド作溝器55の先端前傾角βよりも小さくして圃場面に切り込んでいく抵抗を軽くして、センターフロート52が圃場面に浮き易くしている。
【0028】
中央2個のセンターフロート52,52は、圃場面の凹凸を検出するものであり、両フロートの圃場面に対する角度(迎い角)αがフロート迎い角センサ150によって検出される。つまり、図22に示すように、センサ150の検出アーム151が連結ロッド152を介して天秤アーム153に連結されている。天秤アーム153はロッド154を介してフロート52に連結される。これにより、フロートの迎い角が検出されることになるが、植付作業時に、植付部4をフロートが接地する作業位置まで下降させると、植付部4が圃場面から一定の高さに維持されるようにフロート迎い角センサ150の検出値に基づく対地昇降制御を行う。
【0029】
苗箱送り装置32は、左右一対の送り爪60,60及び係止爪61,61とからなり、送り爪60,60は苗箱搬送路に沿って上下に往復動し、下動するときには苗箱Cの左右端縁部にポットのピッチと同ピッチで穿設された苗箱送り用の角孔に係合し、上動するときは角孔との係合が外れて次の角孔まで乗り越すように作動する。
【0030】
係止爪61,61は、送り爪60,60の動作と連動し、送り爪60,60が下動するときには、角孔から外れ、送り爪60,60が上動するときには、角孔に係合して苗箱Cを支えるように作動する。
【0031】
これら送り爪60,60及び係止爪61,61の作動により、苗箱搬送路31に沿って苗箱Cがポット配列の1ピッチ分ずつ間欠的に送られる。この苗箱送り装置32の送り作動は、後記苗取出装置33の苗押出しピン72,・・・が苗箱Cの育苗ポットC1内に挿入されていない時に行われる。
【0032】
また、送り爪60,60及び係止爪61,61の搬送上手側には、係止爪61,61が先行する苗箱Cの角孔から抜け出るのに連動して苗箱搬送路に突出し、苗箱搬送路31を滑り落ちてくる後続の苗箱Cを一旦受け止める遮断爪63,63が設けられている。
【0033】
苗箱送り装置32の作動機構は、駆動ケース41の上部を貫通する第一伝動軸64に苗箱送りカム65を設け、苗箱作動アーム66に回動自在に支承されたローラ67をカム65の外周面に常時当接するように苗箱送り作動アーム66をスプリング68で付勢している。
【0034】
苗箱送りカム65の回転により、苗箱送り作動アーム66が揺動し、その苗箱送り作動アーム66の揺動が苗箱送り駆動軸69を介して苗箱送り駆動アーム70,70に伝えられ、送り爪60,60を上下に往復動させる。カム65がローラ67を押す時に送り爪60,60が下動して苗箱Cを送るようになっている。
【0035】
図17に示すように、送り爪60が最下点に下動した時、苗箱送り駆動アーム70で感知スイッチ71を押すように設けてあり、そして、この感知スイッチ71が押されないと、警報音を発するように連動構成しておくことができる。この構成によると、苗箱供給部での箱詰まり等により、苗箱送り不良をおこした時に、送り爪60の駆動アーム70が感知スイッチ71を押さなくなるので、警報ブザーにてオペレータに知らせることができ、連続欠株等の植付不良を防止できる。
【0036】
図4に示す構成例において、苗箱供給部30,30と苗箱主搬送部31の搬送路には、苗箱の有無を検出する7個の苗箱検出センサSW1から苗箱検出センサSW7が設けられている。上側の苗箱検出センサSW1は、上段苗箱供給部30に苗箱Cが載置されているとき苗箱有りとなり、下側の苗箱検出センサSW5は、下段苗箱供給部30に苗箱が載置されているとき苗箱有りとなる。
【0037】
上側の苗箱検出センサSW2は、上段の供給ローラ21,22が苗箱を把持しているとき苗箱有りとなり、下側の苗箱検出センサSW6は、下段の供給ローラ21,22が苗箱を把持しているとき苗箱有りとなる。
【0038】
苗箱検出センサSW3は、上段搬送路と下段搬送路の合流部に設けられていて、上段又は下段の供給ローラ21,22が苗箱を開放する寸前まで繰り出しているとき苗箱有りとなる。
【0039】
苗箱検出センサSW4は、苗箱検出センサSW3の位置と苗取出位置Pの直前位置との間に設けられていて、上段又は下段の供給ローラ21,22が苗箱を開放した直後に苗箱有りとなる。
【0040】
また、この苗箱検出センサSW4は、接触式のセンサにて構成され、この苗箱検出センサSW4の接触作用部tが遮断爪63の作用位置の搬送上手側から下手側にかけて位置するように配置されてあり、そして、この苗箱検出センサSW4が苗箱無しを検出すると、これに連動して苗箱供給装置29の供給ローラ21,22の作動により次の苗箱Cを繰り出し供給するようになっている。
【0041】
このようにして供給される苗箱Cが遮断爪63によって受け止められる直前に至っては、接触式検出センサ自体の押圧スプリング力によって接触抵抗を受けることになり、苗箱Cに制動作用が付与されて落下速度が緩和さるようになっている。
【0042】
苗箱検出センサSW7は、苗箱送り駆動アーム70を駆動する苗箱作動アーム66の位置を検出する検出センサで、つまり、送り爪60及び係止爪61の作動位置を検出するセンサであり、苗箱作動アーム66が上動したときに押されてOFFになる構成である。
【0043】
7個の苗箱検出センサSW1から苗箱検出センサSW7は、図5に示すように、コントローラに接続されている。そして、各センサからの情報に基づき、コントローラがモータM1,M2、苗減少ランプ、及び減少ブザーに出力する。
【0044】
図6は、コントローラにおける制御のフローチャートであって、苗箱検出センサSW1から苗箱検出センサSW7までの入力を読み込み、それを図7に示す動作表と比較し、該当する入力条件のパターンに応じて出力を行う。いずれの入力条件にも該当しない時には出力は行なわない。
【0045】
図7に示す動作表において、苗箱検出センサSW1から苗箱検出センサSW6については、「0」は苗箱無し、「1」は苗箱有り、空白部は苗箱無し又は苗箱有りとする。苗箱検出センサSW7については、「1」はOFF時とし、空白部はON又はOFF時とする。また、「優先」はプログラム処理上のフラグで、その切換条件はNO.8とNO.13とする。「優先」の空白部は「1」又は「2」とし、電源投入時の「優先」は「1」とする。
【0046】
植付作業を行う前に、上段搬送路に苗箱Cを1個装填すると共に、上下両苗箱供給部に苗箱Cを2個ずつ載置する。この作業開始状態では、苗箱検出センサSW1から苗箱検出センサSW7は「1」、優先は「1」となっており、いづれの入力条件にも該当しないので、モータM1,M2は停止している。上記状態から植付作業を開始すると、送り爪60と係止爪61が作動して、苗箱を1ピッチずつ間欠的に送る。これと同期して植付部4の各部が作動し、苗取出位置Pで苗箱の横一列分ずつのポットから苗を取出し、それを圃場に植え付ける。
【0047】
作業が進行して、苗取出し中の苗箱(第一苗箱)の最後尾が苗取出位置Pの直前位置まで来て、苗箱検出センサSW3及びSW4が「0」になると、NO.5の入力条件となり、モータM1が作動する。これにより、上段苗箱供給部の次の苗箱(第二苗箱)が上段搬送部に繰り出される。この第二苗箱を開放する寸前まで繰り出すと、第二苗箱の先頭部が上下搬送路の合流部に達し、苗箱検出センサSW3が「1」になる。この状態は、苗箱検出センサSW1から苗箱検出センサSW6については、NO.6−1の入力条件に該当している。
【0048】
従って、送り爪60の送り作動時即ち係止爪61が苗箱Cを支えていない時にはモータM1が一旦停止し、その後、係止爪61が苗箱を支えた状態で且つ苗箱遮断爪63が苗箱搬送路内に突入して苗箱Cの下端を受け止める状態になっている時(苗箱検出センサSW7が「1」)になった時点でモータM1が再作動して、第二苗箱を開放する。すると、第二苗箱Cは遮断爪63にて一旦受け止められる。
【0049】
そして、第二苗箱Cを開放して苗箱検出センサSW2が「0」になると、NO.4の入力条件に切り替わり、モータM1の作動が継続され、次の第3苗箱の先頭部が供給ローラに把持される。すると、苗箱検出センサSW2が「1」になり、いずれの入力条件にも該当しなくなるので、モータM1は停止する。このようにして作業が進行し、第三苗箱の再後尾が苗取出位置Pの直前位置を通過し、苗箱検出センサSW3及び苗箱検出センサSW4が「0」になると、NO.13の入力条件となり、「優先」が「1」から「2」に切り替わる。すると、今度はモータM2が作動し、下段苗箱供給部の苗箱C(第4苗箱C)を繰り出す。
【0050】
以下、上段苗箱供給部の第二苗箱C、第三苗箱Cを上段搬送部に供給する場合と同様に、モータM2が適時作動して、下段苗箱供給部の第四苗箱C、第五苗箱Cが順に下段搬送部に供給され、それぞれの苗箱から苗が取り出される。最後の第五苗箱Cが下段供給ローラから開放されると、NO.1の入力条件となり、苗減少ランプに出力する。苗減少ランプが点灯すると、上下苗供給部に苗補給する。また、苗減少ランプが点灯しても苗補給せず、第五苗箱の最後尾が苗取出位置Pの直前位置を通過して苗箱検出センサSW3及び苗箱検出センサSW4が「0」になると、NO.3の入力条件が4秒以上継続されることになるので、条件が成立してから4秒後に苗減少ブザーに出力する。
【0051】
以上のような経過を経て苗箱供給部の苗箱が主搬送部の所定位置まで自動供給されるが、この作業中において、上記苗取出し中の苗箱の最後尾が苗取出位置Pの直前位置まで来て、苗箱検出センサSW3及び苗箱検出センサSW4が「0」になると、NO.5(又はNO・10、NO・13)の入力条件となり、モータM1又はM2の作動により、苗箱供給部にある次の苗箱Cが主搬送部の所定位置に繰り出されることになるが、このとき、図8のフローチャートで示すように、モータM1又はM2が所定時間(約5秒程度)以上作動しても、苗箱が所定位置まで送られて来ない場合には、苗箱検出センサSW3がOFF作動し、苗箱送り不良警報装置BZに出力してオペレータに告知するようにしている。これにより、オペレータは苗箱送り不良と判断して速やかに対処することができる。
【0052】
上記苗箱Cの自動供給装置において、上段搬送路と下段搬送路で苗箱Cを送るモータM1,M2の回転速度を切り替えできる構成としている。上段のモータM1の回転速度は、下段のモータM2の回転速度より遅くしている。つまり、図6に示すように、モータM2の連続出力に対し、モータM1のパルス出力によって回転速度を遅くしている。これは、上段搬送路は、下段搬送路に対し苗箱の落下する傾斜角度が大きいため、遮断爪63に当たった時に苗箱Cの両端が破損し易い。自動供給時の上段を送るときは、モータM1の回転速度を遅くすることで、遮断爪63に当たる時の速度が上下段共、同じになり、苗箱C両端の破損を防ぐことができる。
【0053】
なお、図7に示すように、モータM2のパルス出力に対し、モータM1を微小パルス出力とすることによってこの回転速度を遅くすることもできる。また、モータの回転速度と苗箱検出センサSW1からSW2間の苗箱の自由落下速度を略同じにすることで、苗箱Cがモータ部のローラへ激突する時の衝撃力が少なくなり、苗箱の破損を防ぐことができる。
【0054】
なお、図10に示す苗箱検出センサSWは、このセンサの接触作用部tが苗箱CのポットC1部に作用して感知する構成としてあり、前記苗箱検出センサSW1から苗箱検出センサSW6の検出センサに利用することができる。これら各検出センサはポット部側面にて感知させるので、泥の影響を受けることがなく、ポット部は規則正しく成形された丸形状のため、確実に感知することができる。
【0055】
苗取出装置33は、苗箱横方向のポットに対し同数同ピッチで並んだ苗押出しピン72,・・・が、前後方向に摺動自在に支持された左右一対のスライド軸73,73と一体に作動するように設けられている。スライド軸73にはラック73aが形成され、そのラックに第一扇形ギヤ74が噛み合っている。
【0056】
また、第一扇形ギヤ74が取り付けられているギヤ軸75には、別の第二扇形ギヤ76が取り付けられ、第二扇形ギヤ76は、支持軸78に回動自在に支持された苗取出作動アーム79のギヤ部79aと噛み合っている。
【0057】
苗取出作動アーム79のギヤ部79aと反対側の端部にはローラ80が回転自在に支承されており、そのローラ80が苗取出カム81のガイド溝81aに嵌り込んでいる。苗取出カム81の回転によりスライド軸73,73が前後にスライドし、該スライド軸が後方にスライドするときに、苗押出しピン72,・・・が苗取出位置Pにある苗箱の横一列分のポットに対し、ポット底部の切れ目からポット内に挿入され、苗を後方に押し出す。
【0058】
また、前記ギヤ軸75には、ギヤ軸75以後の伝動系に所定以上の負荷がかかった場合には第一扇形ギヤ74からギヤ軸75への伝動を断つ安全クラッチ75aが設けられている。
【0059】
さらに、ギヤ軸75には、苗押出しピン72,・・・の前後スライドのストロークを調節する機構75bと左右のスライド軸73,73の位置を調節する機構75cとが設けられている。
【0060】
苗箱送りカム66と苗取出カム81は第一伝動軸64に回転自在に嵌合する共通の筒体64aに一体形成され、該筒体と第一伝動軸64を外部操作する定位置停止クラッチ64bによって伝動入・切可能に連結している。
【0061】
前記苗押出しピン72,・・・による苗取出位置Pの手前には苗箱の有無を検出するセンサスイッチSW8を設け(図4参照)ている。苗箱供給部に苗箱があって苗箱検出センサSW1又は苗箱検出センサSW5がON状態にあっても、前記センサスイッチSW8がOFFの場合には、図9に示すように、苗箱送り不良として、主クラッチモータの駆動で走行クラッチを「切り」作動(同時に警報装置を作動するようにしてもよい。)して機体の走行を停止するように構成することもできる。従って、この走行停止によって、オペレータは苗箱送り不良であることを察知でき、速やかに対処することによって連続欠株を未然に防止することができる。
【0062】
また、苗押出しピン72とスライド軸73との間に荷重センサ126を設け(図18参照)、荷重センサの検出結果による荷重値が軽い場合は噴霧の時間を通常より長くするように設定している。押出しピンの押出し荷重が軽いと、ポットが崩れ易い状態になるので、噴霧の時間を長くし、苗ホルダーや苗送りベルト等への泥の付着を少なくして植付を安定させることができる。
【0063】
図20及び図21において、押出しピンの荷重センサ126及び植付昇降レバーセンサ127が制御部128の入力側に接続され、制御部の出力側には噴霧用電磁バルブ129が接続されている。植付昇降レバーセンサ127が「植付」作業状態であることを検出し、前回の噴霧時から所定時間経過後、押出しピン荷重センサ値が「大」(重)の時には、噴霧用電磁バルブ129を通常の時間開く信号を出力する。逆に、押出しピン荷重センサ126の値が「小」(軽)の場合には、噴霧用電磁バルブ129を長時間開く信号を出力する。
【0064】
なお、荷重センサが異常に重い値を検出した時には、警報ブザーを鳴らしてオペレータに報知するように構成することもできる。苗押出しピンが苗箱ポット部から芯ずれした位置を押し出すと、荷重センサが非常に重い検出値を出すので、これをオペレータに報知することによって植付不良を未然に防止することができる。
【0065】
苗搬送装置34は、苗押出しピン72,・・・により苗箱から押し出される苗の床土部を保持する苗ホルダー83を備えている。苗ホルダー83は上下2本ずつの揺動リンク84,85に連結された支持部材86,86に左右両端が固定されており、上記揺動リンクの揺動により円弧軌跡を描いて往復動するようになっている。
【0066】
苗搬送装置34の駆動機構は、図16及び図19に示すように、第一伝動軸64の回転を、アーム88、伸縮ロッド89、アーム90を介して苗搬送伝動ケース91の入力軸92に反復回動運動として伝達し、更に、該入力軸92から一対の伝動ギヤ93、94を介して、揺動リンク85に取り付けられている苗搬送駆動軸95に反復回動運動を伝達するように構成されている。
【0067】
また、図3に示すように、前記苗ホルダー83は、苗植付時において、植付クラッチ又は畦クラッチを切った時の苗ホルダーの停止位置が、苗を取りに行く方向で洗浄ノズル116から噴水される噴水圏(イ)内にあって停止するように構成している。これによれば、苗を植え付けしていない状態のときでも苗ホルダーを効率よく洗浄でき、泥の付着が少なくなって苗のキャッチングが安定することになる。
【0068】
苗抜き装置35は、苗ホルダー83の苗保持部を前後に通り抜け可能な櫛状の苗叩き100を備えている。回動自在に設けた左右方向の苗叩き取付軸101に苗叩きアーム102を取り付け、更にその苗叩きアーム102に回動可能に取り付けた回動アーム103に苗叩き100を一体的に取り付けている。回動アーム103は長孔103aの範囲内でボルト102aを介して回動可能である。叩きアーム102に取り付けたローラ104が、カム軸105に取り付けられた苗叩きカム106のカム面に当接するようにスプリング107にて付勢している。苗叩きカム106が回転すると、該カムの凹部にローラ104嵌り込むときスプリング107の張力により苗叩き100が素早く下向きに回動し、直ぐに元の位置に復帰するように作動する。
【0069】
苗ホルダー83が移動軌跡下端に移動してきたとき、苗ホルダー83の各苗保持部に保持されている苗を苗叩き100が受け止め苗ホルダー83のみを通過させて苗を抜き出すと共に、苗叩き100が下向きに回動し、抜き出された苗を後記苗横送り装置36の苗送りベルト113,113上に叩き落とす。
【0070】
苗横送り装置36は、メインフレームに架設された苗横送り駆動軸110の駆動ローラ111と従動ローラ112とに巻き掛けた左右一対の苗送りベルト113,113を、それぞれの横送り作用部外側へ移動するように左右対称に設けている。横送り部の下側には落下する苗の重みでベルトが橈むのを防止する撓み防止板114が設けられている。苗抜き装置35により抜き落とされた横一列分の苗N,・・・は、各苗送りベルト113,113の上に整列で落下し、これを受けた苗送りベルト113,113が左右半分ずつの苗をそれぞれ左右両側に搬送する。苗送りベルト113で搬送された苗Nは、一対の植付ガイド115,115の間に落し込まれる。
【0071】
苗送りベルト113,113の上方には該ベルトに付着した泥土を洗い流す洗浄ノズル116,・・・が設けられている。洗浄ノズル116,・・・が一体に形成された通水パイプ117は、その両端部に一体の取付プレート118をボルト119により植付部フレームに固定することにより支持されている。
【0072】
また、図26に示す如く、苗送りベルト113,113には、搬送面に付着する泥をかき落とすブラシ19を設けているが、このブラシ19はベルト幅の前幅にわたって設け、ベルト面との間隔を苗の根元側を狭く葉側を広くして苗の搬送に支障が無いようにしている。
【0073】
図11には、苗送りベルト113の周辺に泥が溜まると、その泥溜まりを検出する音波検出装置124が設けられている。この音波検出装置は泥溜まりを検出すると、警報ブザー等でオペレータに報知することで、オペレータはその泥溜まりを速やかに除去できるし、若しくは噴霧装置を作動して洗浄ノズルで洗い落すことができ、苗の植付不良を少なくすることができる。
【0074】
苗植付装置37は、植付伝動フレーム45の後端部に設けられた植付駆動軸120と一体回転する回転ケース121に一対の苗植込具122、122が取り付られ、苗植込具122、122が閉ループの先端軌跡を描いて移動する。各苗植込具122は、植付ガイド115,115の間に落し込まれた苗を交互に一株ずつ取り、それを植付ガイド115,115の間を移動させて圃場に植え付ける。
【0075】
植付部の伝動機構について図14及び図15に基づき説明すると、本機側から動力伝達される入力軸130はベベルギヤ131,132を介して第二伝動軸133と連動連結している。そして、第二伝動軸133から、8組のベベルギヤ135,136を介して各条の苗横送り駆動軸110へ伝動する。隣接する一対の苗横送り駆動軸110,110は、互いに逆向きに回転するようになっている。
【0076】
また、各植付伝動フレーム45内には、第二伝動軸133に取り付けたスプロケット137aと植付駆動軸120に取り付けたスプロケット137b掛け渡した伝動チエン137が設けられており、該チエン137により第二伝動軸133から植付駆動軸120へ伝動する。
【0077】
更に、第二伝動軸133は、その外端部でベベルギヤ140,141を介して、左右2本の上下伝動軸142の下端部とそれぞれ連動連結している。左側の上下伝動軸142は、その上端部がベベルギヤ143,144を介して第一ユニット・第二ユニット用の第一伝動軸64と連動連結すると共に、その中間部がベベルギヤ147,148を介して第一ユニット・第二ユニット用の苗叩きカム軸105と連動連結している。同様に右側の上下伝動軸142は、第三ユニット・第四ユニット用の第一伝動軸64及び苗叩きカム軸105と連動連結している。
【0078】
感度調節ダイヤル18は、植付部の昇降制御感度とローリング制御感度を同時に調節できる構成としてある。ローリング制御の作動速度を感度調節ダイヤルのレンジと連動させ、ローリング作動速度は圃場の土壌が軟弱な場合はゆっくりと遅くし、圃場の土壌が硬いときにはローリング作動速度を速くするように連動構成することで、安定した苗の植え付けができるようにしている。
【0079】
図23に示す制御ブロック図において、制御部28の入力側に、植付部4の昇降制御感度とローリング制御感度を調節する感度調節ダイヤル18と、圃場面の左右方向の傾きを検出する水平センサ43と、対地高さの変動量に起因するフロートの前上がり前下がり量を検出するフロート迎い角センサ150を接続し、制御部の出力側には、水平センサの左右の対地高さ検出結果に基づき植付部を左右にローリング制御するローリングモータ25と、フロート迎い角センサの前上がり前下がり量検出結果に基づき植付部を上下に昇降制御する昇降用油圧電磁バルブ27を接続している。
【0080】
図24の図表に示すように、土壌が軟弱な場合は、フロートが沈み気味となって迎い角前上がりとなり、フロートの応答性が鈍感になるので、ローリングモータ速度は遅くし、土壌が硬い場合は、フロートは浮き気味となって迎い角前下がりとなり、フロートの応答性が敏感になるので、ローリングモータ速度は速くする。このように土壌条件に応じた適正なローリング制御を行い植付精度の向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】苗移植機の側面図である。
【図2】同上平面図である。
【図3】苗植付部の要部の側面図である。
【図4】苗箱供給部及び苗箱搬送部の側面図である。
【図5】苗箱供給の制御ブロック図である。
【図6】苗箱供給用フローチャートである。
【図7】各部材の動作表である。
【図8】苗箱送り不良の警報フローチャートである。
【図9】同上警報フローチャートである。
【図10】苗箱検出センサの(a)側面図、及び(b)正面図である。
【図11】苗叩き及び苗送りベルトの背面図である。
【図12】苗抜き装置の側面図である。
【図13】洗浄装置の背面図である。
【図14】植付部の伝動機構図である。
【図15】植付伝動機構部の一部の背断面図である。
【図16】駆動ケースの背断面図である。
【図17】図16のS1−S1断面図である。
【図18】図16のS2−S2断面図である。
【図19】苗搬送駆動ケースの側断面図である。
【図20】制御ブロック図である。
【図21】フローチャートである。
【図22】フロートの側面図である。
【図23】制御ブロック図である。
【図24】フロート迎い角とローリングモータ速度との関係図表である。
【図25】センターフロートとサイドフロートの前部拡大斜視図である。
【図26】苗送りベルト113の拡大側面図である。
【符号の説明】
【0082】
α 先端前傾角
β 先端前傾角
2 走行車体
4 苗植付部
52 センターフロート
53 サイドフロート
54 センター作溝器
55 サイド作溝器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体(2)の左右中央側に配置するセンターフロート(52)とこのセンターフロート(52)の左右に配置するサイドフロート(53)の上側に苗植付部(4)を設け、センターフロート(52)とサイドフロート(53)にそれぞれセンター作溝器(54)とサイド作溝器(55)を設け、センターフロート(52)を圃場表面検出センサとして苗植付部(4)を昇降制御する乗用型苗移植機において、センター作溝器(54)の先端前傾角(α)をサイド作溝器(55)の先端前傾角(β)よりも小さく寝かせて設けたことを特徴とする施肥装置付き乗用型苗移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2010−148379(P2010−148379A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−327734(P2008−327734)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】