説明

旋回体を有する建設機械

【課題】蓄電装置の蓄電量が適正値を超えた場合にも作業を続行可能なハイブリッド方式の建設機械を提供する。
【解決手段】上部旋回体20の駆動用として、油圧モータ27と電動モータ25の両方を備える。キャパシタ24の蓄電量が適正である場合には、油圧モータ27と電動モータ25の両方で、上部旋回体20を駆動する。キャパシタ24の蓄電量が適正値を超える場合には、油圧モータ27のみによる上部旋回体20の駆動に切り替えると共に、アシスト発電モータ23をアシスト駆動又はエンジン駆動して、キャパシタ24の蓄電量を速やかに適正範囲に戻す。
【効果】キャパシタ24の容量を小さくすることができ、旋回動作の操作性を損なうことなくキャパシタの蓄電量を管理することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の旋回体を有する建設機械に係り、特に、旋回体駆動用の電動モータ及び油圧ポンプアシスト用の電動モータ、並びにこれらの各電動モータより回生される電気エネルギの充電と、これらの各電動モータへの電気エネルギの放電とを行う蓄電装置を備えた建設機械における、エネルギマネジメント手段に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベル等の旋回体を有する建設機械は、従来、エンジンで油圧ポンプを駆動し、油圧ポンプから吐出される油圧にて油圧モータを回転し、慣性体である旋回体を駆動するものが主流であったが、近年に至り、エンジンの燃費向上、騒音レベルの低減及び排ガス量の低減などを図るため、蓄電装置からの電気エネルギの供給を受けて駆動する電動モータ及び油圧モータの双方を用いて旋回体を駆動するハイブリッド方式のものが、提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この特許文献1に記載の建設機械には、旋回用の電動モータに加えて、蓄電装置の蓄電レベルが低下した場合に、電気エネルギを蓄電装置に供給する発電用の別の電動モータも備えられている。
【0003】
このようなハイブリッド方式の建設機械においては、油圧モータのみを用いて旋回体を駆動する従来方式の建設機械の操作に慣れたオペレータが違和感なく操作できるように、油圧モータ及び電動モータが分担する駆動トルクを適切に制御する必要がある。その際に、電動モータが、駆動(力行)時に消費、制動(回生)時に発生するエネルギを、電動モータと接続された蓄電装置が充放電することになる。蓄電装置の容量には限界があるので、蓄電装置の蓄電量を適正に管理すること、即ち、エネルギマネジメントが特に重要となる。
【0004】
特許文献1には、ハイブリッド方式の建設機械の制御手段として、電動モータが駆動制御されるときのトルクを、旋回駆動用の油圧モータのイン側とアウト側の差圧に関連して指令するトルク指令手段を備える技術が開示されている。また、特許文献1には、加速駆動時における油圧モータのトルクと電動モータのトルクの比率、及び減速駆動時における油圧モータのトルクと電動モータのトルクの比率を、油圧モータのイン側とアウト側の差圧をパラメータとして定める技術も開示されている(例えば、段落0060)。特許文献1には、これらの技術によれば、慣性体である旋回体を連続してスムースに駆動制御することが可能になり、かつ制動時のエネルギを電気エネルギとして効果的に蓄電装置に取り込むことができると記載されている(例えば、段落0033、0034)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−63888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載の技術は、油圧モータのイン側とアウト側の差圧をパラメータとして、加速駆動時及び減速駆動時における油圧モータが分担するトルクと電動モータが分担するトルクのそれぞれを変更することによってその比率を変更し、旋回体の駆動に必要なトルクを得る構成であるが、かかる構成によると、加速駆動時に電動モータが消費する電気エネルギと、減速駆動時に電動モータが発電する電気エネルギとに差があるため、蓄電装置の蓄電量が増減することになる。言うまでもなく、蓄電装置の蓄電量が不足すると、電動モータを所要のトルクで駆動できなくなるし、蓄電装置の蓄電量が過充電の状態になると、蓄電装置の寿命に悪影響を与え、最悪の場合には、蓄電装置が故障することにもなる。
【0007】
しかしながら、特許文献1には、蓄電装置の放充電管理に関して、蓄電装置の蓄電量が所定値よりも低下している場合に、発電用の電動機を駆動して、その発電エネルギを蓄電装置に供給する(段落0053、0055)と記載されているだけで、蓄電装置の過充電をも含めたより厳密なエネルギマネジメントについては、何ら記載されていない。なお、大容量の蓄電装置を備えれば、厳密なエネルギマネジメントを不要とすることも可能になるが、蓄電装置の大容量化に伴って建設機械における蓄電装置の設置スペースが大きくなり、かつ建設機械が高コスト化するというデメリットがある。
【0008】
さらに、厳密なエネルギマネジメントを実施しても、機械の作業パターンは規定されていないので、加速駆動時に電動モータが消費する電気エネルギと減速駆動時に電動モータが発電する電気エネルギとの差によっては、蓄電装置の蓄電量が適正値を超えることもあり得る。これを防ぐためには、蓄電装置の大容量化が考えられるが、前述のように設置スペースやコストの観点から望ましくない。ハイブリッド方式の建設機械を実用性のあるものとするためには、蓄電装置の蓄電量が適正値を超えた場合にも、作業を続行できることが求められる。
【0009】
本発明は、このような従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、蓄電装置の蓄電量が最小限でよく、かつ蓄電量が適正値を外れた場合にも作業を続行可能なハイブリッド方式の建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を達成するため、本発明は、エンジンと、該エンジンによって駆動される油圧ポンプと、旋回体と、該旋回体を駆動する第1の電動モータ及び油圧モータと、前記旋回体を駆動するためにオペレータが操作する旋回用操作レバーと、力行動作時には前記油圧ポンプをアシスト駆動し、前記エンジンによる駆動時には電気エネルギを発生する第2の電動モータと、前記第1及び第2の電動モータに供給するための電気エネルギを蓄積する蓄電装置と、前記旋回用操作レバーの操作量及び操作方向に応じた信号を入力し、前記蓄電装置の充放電を制御するコントローラとを備え、前記コントローラは、前記蓄電装置の蓄電量に関して、当該蓄電装置の最適な使用範囲である通常使用領域の上限値及び下限値と、前記通常使用領域の上限値よりも大きく、当該蓄電装置の最大蓄電量よりも低い値に設定された回生禁止値と、前記通常使用領域の下限値よりも小さく、当該蓄電装置の最小蓄電量よりも高い値に設定された旋回禁止値とを記憶しており、前記蓄電装置の蓄電量が前記通常使用範囲内にあるときには、前記第1の電動モータ及び前記油圧モータの双方を用いて、前記旋回用操作レバーの操作量及び操作方向に応じた前記旋回体の駆動と制動とを行い、前記蓄電装置の蓄電量が前記通常使用範囲の上限値を超えて前記回生禁止値に至ったときには、前記油圧モータのみを用いて、前記旋回用操作レバーの操作量及び操作方向に応じた前記旋回体の駆動と制動とを行うと共に、前記第2の電動モータを力行させて前記蓄電装置に蓄積された電気エネルギを消費し、反対に、前記通常使用範囲の下限値を下回って前記旋回禁止値に至ったときには、前記油圧モータのみを用いて、前記旋回用操作レバーの操作量及び操作方向に応じた前記旋回体の駆動と制動とを行うと共に、前記エンジンにより前記第2の電動モータを駆動して前記蓄電装置への充電を行うという構成にした。
【0011】
上述のように、ハイブリッド方式の建設機械においては、厳密なエネルギマネジメントを実施しても、加速駆動時に第1の電動モータが消費する電気エネルギと減速駆動時に第1の電動モータが発電する電気エネルギとに差によっては、蓄電装置の蓄電量が適正値を超えることもあり得る。上記構成のハイブリッド方式の建設機械は、蓄電装置の蓄電量が予め設定された回生禁止値又は旋回禁止値に至ったとき、旋回体の駆動及び制動を油圧モータのみを用いて行う方式に切り替えるので、旋回体の旋回、即ち、建設機械による作業を継続的に行うことができる。また、上記構成のハイブリッド方式の建設機械は、これと同時に、第2の電動モータを力行又はエンジン駆動させて、蓄電装置の充放電を促進するので、速やかに第1の電動モータと油圧モータの双方を用いた通常の旋回体の駆動モードに復帰することができる。
【0012】
また本発明は、上記構成の建設機械において、前記コントローラは、前記蓄電装置の蓄電量が前記通常使用範囲の上限値を超えて前記回生禁止値に至ったとき、前記蓄電装置の蓄電量が、前記通常使用範囲の上限値と下限値との間に設定された所定の中間値に達するまで、前記油圧モータのみを用いた前記旋回体の駆動と制動とを継続し、前記蓄電装置の蓄電量が前記中間値に達したとき、前記第1の電動モータ及び前記油圧モータの双方を用いた前記旋回体の駆動と制動とに切り替えるという構成にした。
【0013】
かかる構成によると、回生禁止値と中間値との差を大きくできるので、蓄電装置の蓄電量が通常使用範囲の上限値を超えて回生禁止値に至りにくくなり、第1の電動モータ及び油圧モータの双方を用いた旋回体の駆動・制動状態から、油圧モータのみを用いた旋回体の駆動・制動状態への切替頻度を減少することができる。
【0014】
また本発明は、上記構成の建設機械において、前記コントローラは、前記蓄電装置の蓄電量が前記通常使用範囲の下限値を下回って前記旋回禁止値に至ったとき、前記蓄電装置の蓄電量が、前記通常使用範囲の上限値と下限値との間に設定された所定の中間値に達するまで、前記油圧モータのみを用いた前記旋回体の駆動と制動とを継続し、前記蓄電装置の蓄電量が前記中間値に達したとき、前記第1の電動モータ及び前記油圧モータの双方を用いた前記旋回体の駆動と制動とに切り替えるという構成にした。
【0015】
かかる構成によると、旋回禁止値と中間値との差を大きくできるので、蓄電装置の蓄電量が通常使用範囲の下限値を超えて旋回禁止値に至りにくくなり、第1の電動モータ及び油圧モータの双方を用いた旋回体の駆動・制動状態から、油圧モータのみを用いた旋回体の駆動・制動状態への切替頻度を減少することができる。
【0016】
また本発明は、上記構成の建設機械において、前記コントローラは、前記蓄電装置の蓄電量が前記通常使用範囲内にあり、前記第1の電動モータ及び前記油圧モータの双方を用いて、前記旋回用操作レバーの操作量及び操作方向に応じた前記旋回体の駆動を行っているとき、前記蓄電装置の蓄電量に応じて前記第1の電動モータの駆動トルク指令値を演算し、前記第1の電動モータは、この演算された駆動トルク指令値に基づいて駆動されるという構成にした。
【0017】
旋回体を旋回するための第1の電動モータは、蓄電装置の充放電を行うための第2の電動モータに比べて格段にトルク及び発電量が大きい。したがって、蓄電装置の蓄電量に応じて第1の電動モータの駆動トルク指令値を演算し、この演算された駆動トルク指令値に基づいて第1の電動モータを駆動すると、第2の電動モータを用いる場合よりも蓄電装置の充放電を効率良く行うことができる。よって、油圧モータのみを用いて旋回体の駆動及び制動を行う状態への移行頻度を減少することができると共に、蓄電装置の低容量化を図ることができる。また、エネルギを有効に活用でき、燃費の向上を図ることができる。
【0018】
また本発明は、上記構成の建設機械において、前記コントローラは、前記蓄電装置の蓄電量が前記通常使用範囲内にあり、前記第1の電動モータ及び前記油圧モータの双方を用いて、前記旋回用操作レバーの操作量及び操作方向に応じた前記旋回体の制動を行っているとき、前記蓄電装置の蓄電量に応じて前記第1の電動モータの駆動トルク指令値を演算し、前記第1の電動モータは、この演算された駆動トルク指令値に基づいて駆動されて、前記旋回体の制動を行うという構成にした。
【0019】
この場合にも、算出された加算値を用いて第1の電動モータの駆動を行う場合と同様の効果を奏することができる。
【0020】
また本発明は、上記構成の建設機械において、蓄電装置の蓄電量に応じて演算される前記第1の電動モータの駆動トルク指令値は、同一駆動または制動条件において前記蓄電量に応じて変動するが、その変動トルク巾は、前記同一駆動または制動条件における電動モータと油圧モータとを合計したトルクの標準値に対して、20%以下となるようにした。
【0021】
このように、オペレータが感じる旋回体の旋回感触を基準として、同一条件における旋回トルクの変動を20%以下に抑えることにより、オペレータに操作上の違和感を与えることなく、厳密なエネルギマネジメントを実行することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によると、蓄電装置の蓄電量が予め設定された回生禁止値又は旋回禁止値に至ったとき、第1の電動モータによる旋回体の駆動及び制動を停止して、この旋回体の駆動及び制動を油圧モータのみを用いて行う方式に切り替えるので、建設機械による作業を継続的に行うことができる。また、この場合に、第2の電動モータを力行又はエンジン駆動させて、蓄電装置の充放電を促進するので、速やかに第1の電動モータと油圧モータの双方を用いた通常の旋回体の駆動モードに復帰することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施形態に係る油圧ショベルの側面図である。
【図2】実施形態に係る油圧ショベルのシステム構成図である。
【図3】実施形態に係る油圧ショベルの詳細なシステム構成図である。
【図4】レバー操作量と油圧モータ駆動トルク及び電動モータ駆動トルクとの関係を示す図である。
【図5】エネルギマネジメント部の制御ブロック図である。
【図6】コントローラに記憶される通常使用領域、回生禁止領域及び旋回禁止領域、並びに放電指令及び充電指令の説明図である。
【図7】旋回電動モータのトルク指令値を算出する処理フローを示す図である。
【図8】キャパシタ電圧に対する上乗せ要求出力指令値の関係を示す図である。
【図9】上部旋回体の起動から停止に至るまでの油圧モータトルクと、旋回電動モータトルクと、上乗せトルクの変化を示す図である。
【図10】油圧単独モード切替要求の出力例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る建設機械につき、油圧ショベルを例にとって説明する。なお、本発明は、旋回体を備えた全ての作業機械及び建設機械に適用可能であり、油圧ショベルへの適用に限定されるものではない。
【0025】
図1に示すように、本例の油圧ショベルは、下部走行体10と、下部走行体10の上部に旋回可能に設けられた上部旋回体20と、一端が上部旋回体20に連結された多関節リンク機構からなるショベル機構30を備えている。
【0026】
下部走行体10は、左右一対のクローラ11及びクローラフレーム12(図1には片側のみを示す)を備えており、各クローラ11は、図示しない減速機構等を介して、図2に示す一対の走行用油圧モータ13,14により、それぞれ独立に駆動される。
【0027】
上部旋回体20は、下部走行体10に旋回可能に取り付けられた旋回フレーム21を有しており、この旋回フレーム21には、エンジン22と、エンジン22により駆動されるアシスト発電モータ(第2の電動モータ)23と、旋回電動モータ(第1の電動モータ)25と、アシスト発電モータ23及び旋回電動モータ25に接続される蓄電装置であるキャパシタ24と、旋回油圧モータ27とが搭載されている。また、この旋回フレーム21には、図2に示す油圧ポンプ41及びコントロールバルブ42を含む油圧システム40、並びにパワーコントロールユニット55及びコントローラ60を含む旋回制御システム41も搭載されている。旋回フレーム21は、旋回電動モータ25の回転を減速する減速機構26を含み、旋回電動モータ25と旋回油圧モータ27の駆動力により駆動させる旋回機構を介して、下部走行体10の上部に旋回可能に取り付けられる。なお、本実施形態においては、蓄電装置としてキャパシタ24を用いているが、蓄電池を用いることもできるし、キャパシタと蓄電池の双方を併用することもできる。
【0028】
ショベル機構30は、ブーム31と、ブーム31を駆動するためのブームシリンダ32と、ブーム31の先端部近傍に回転自在に軸支されたアーム33と、アーム33を駆動するためのアームシリンダ34と、アーム33の先端に回転可能に軸支されたバケット35と、バケット35を駆動するためのバケットシリンダ36をもって構成されており、ブーム31の基端部は、旋回フレーム21に回転可能に軸支されている。ブーム31、アーム33及びバケット35は、それぞれの連結軸を中心として垂直方向に駆動し、掘削等の作業を行う。
【0029】
図1に記載の油圧システム40は、図2に示すように、エンジン22と、エンジン22によって駆動される油圧ポンプ41と、油圧ポンプ41から吐出される動作油により駆動される走行用油圧モータ13,14、旋回油圧モータ27、ブームシリンダ32、アームシリンダ34及びバケットシリンダ36と、これらの各油圧アクチュエータに供給される動作油の供給量及び供給方向を、操作レバー72(図3参照)からの指令に基づいて切り換えるコントロールバルブ42をもって構成される。
【0030】
なお、実施形態に係るコントロールバルブ42は、旋回操作レバーの操作量が中間域(中立と最大の間)の時のブリードオフ開口面積を通常機よりも大きくし、操作量が中間域での旋回油圧モータ27の駆動トルク(上部旋回体20を駆動する方向のトルク)が通常機よりも小さくなるようにしている。また、このコントロールバルブ42は、旋回操作レバーの操作量が中間域の時のメータアウト開口面積を通常機よりも大きくし、操作量が中間域での旋回油圧モータ27の制動トルク(上部旋回体20を制動する方向のトルク)が通常機よりも小さくなるようにしている。なお、通常機とは、アシスト用の電動モータを備えず、油圧機構のみで旋回体などの駆動部を駆動する建設機械をいう。
【0031】
旋回制御システム41としては、図2に示すように、操作レバー72(図3参照)からの指令に応じた制御信号を、前述のコントロールバルブ42と、キャパシタ24の充放電を制御するパワーコントロールユニット55に出力するコントローラ80が備えられる。パワーコントロールユニット55は、キャパシタ24からアシスト発電モータ23及び旋回電動モータ25への電力供給と、アシスト発電モータ23及び旋回電動モータ25から回収された交流電力のキャパシタ24への充電を制御するもので、キャパシタ24から供給される直流電力を所定の母線電圧に昇圧するチョッパ51と、旋回電動モータ25を駆動するためのインバータ52と、アシスト発電モータ23を駆動するためのインバータ53と、母線電圧を安定化させるために設けられる平滑コンデンサ54とからなる。なお、図中の符号56はメインコンタクタを示しており、このメインコンタクタ56は、メインリレー57及び突入電流防止回路58をもって構成されている。
【0032】
旋回電動モータ25の回転軸と旋回油圧モータ27の回転軸は結合されており、これらの各モータが発生する合計のトルクで上部旋回体20を駆動する。これらアシスト発電モータ23及び旋回電動モータ25の駆動状態(力行しているか回生しているか)によって、キャパシタ24は充電又は放電されることになる。
【0033】
コントローラ80は、図3に示すように、異常監視・異常処理制御ブロック81、エネルギマネジメント制御ブロック82、油圧電動複合旋回制御ブロック83、油圧単独旋回制御ブロック84、及び油圧電動複合旋回制御ブロック83と油圧単独旋回制御ブロック84の切替手段85とからなる。異常監視・異常処理制御ブロック81には、パワーコントロールユニット55から出力されるエラー・故障・警告信号が入力される。エネルギマネジメント制御ブロック82は、パワーコントロールユニット55から出力されるキャパシタ残量信号を入力し、パワーコントロールユニット55へのアシスト発電モータトルク指令と、油圧電動複合旋回制御ブロック83への上乗せトルク要求を出力する。油圧電動複合旋回制御ブロック83は、旋回操作レバー72から出力され、油圧→電気信号変換デバイス(例えば、圧力センサ)74によって電気信号に変換された旋回パイロット圧信号と、パワーコントロールユニット55から出力される旋回モータ速度と、コントロールバルブ42から出力され、電気→圧力信号変換デバイス(例えば、電磁比例弁)75によって油圧パイロット信号に変換された旋回作動圧とを入力し、パワーコントロールユニット55への旋回電動モータトルク指令と、油圧ポンプ41へのポンプ吸収トルク補正指令と、コントロールバルブ42への旋回油圧モータ出力トルク減少指令とを出力する。油圧単独旋回制御ブロック84は、旋回操作レバー72から出力され、油圧→電気信号変換デバイス74によって電気信号に変換された旋回パイロット圧信号を入力し、コントロールバルブ42への油圧旋回特性補正指令と、旋回パイロット圧補正信号とを出力する。切替手段85は、後述するように、上部旋回体20の駆動状態及びキャパシタ24の蓄電量に応じてコントローラ80が自動的に切り換えるほか、コントローラ80に付設された油圧単独旋回モード固定スイッチ77により、手動で切り換えることもできる。なお、図中の符号71はゲートロックレバー、符号76はゲートロックレバー71によって操作されるパイロット圧信号遮断弁を示している。
【0034】
システム全体に異常がなく、旋回電動モータ25が駆動可能な状態では、油圧電動複合旋回制御ブロック83により、上部旋回体20の旋回制御が行われる。即ち、オペレータが旋回操作レバー72を操作すると、その操作方向及び操作量に応じた油圧パイロット信号が発生し、コントロールバルブ42に入力されると共に、油圧→電気信号変換デバイス74を介してコントローラ80にも入力される。これにより、旋回油圧モータ用のコントロールバルブが開放され、旋回油圧モータ27が駆動されると共に、旋回電動モータ25がキャパシタ24からの電力供給を受けて駆動される。
【0035】
上述のように、本実施形態に係るコントロールバルブ42は、駆動時には、旋回操作レバー72の操作量が中間域のときのブリードオフ開口面積を通常機よりも大きくして駆動トルクを小さくしており、制動時においても、旋回操作レバー72の操作量が中間域の時のメータアウト開口面積を通常機よりも大きくして制動トルクを小さくしている。したがって、本実施形態に係る油圧システム40では、旋回油圧モータ27の駆動トルクが従来の油圧機(通常機)よりも小さくなる。コントローラ80は、この旋回油圧モータ27の駆動トルクの低下分を補う駆動トルクで旋回電動モータ25を駆動するに足る旋回電動モータトルク指令を算出する。図4に、旋回操作レバー72の操作量に応じた旋回電動モータ25の駆動トルクTms1及び旋回油圧モータ27の駆動トルクTmoを模式的に示す。
【0036】
油圧電動複合旋回制御ブロック83は、旋回操作レバー72の操作量に応じた旋回電動モータ25の駆動トルクTms1及び旋回油圧モータ27の駆動トルクTmoに、エネルギマネジメント制御ブロック82から要求される上乗せトルクを加算し、パワーコントロールユニット55に出力する。上乗せトルクは、旋回電動モータ25の駆動トルクTms1に上乗せされるものである。上乗せトルクを加味した旋回電動モータトルク指令の算出方法については、後に説明する。
【0037】
旋回電動モータ25が加速時に消費する電気エネルギと減速時に回生する電気エネルギの差により、キャパシタ24の蓄電量は増減する。このキャパシタ24の蓄電量を適正な範囲に制御するのがエネルギマネジメント制御ブロック82であり、アシスト発電モータ23に発電指令又はアシスト指令を出すことにより、キャパシタ24の蓄電量を適正な範囲に保つ制御を行う。
【0038】
図5に、エネルギマネジメント制御ブロック82におけるアシスト発電モータ23の制御方法を示す。本例においては、キャパシタ目標電圧Vc*に対して、アシスト発電モータ23を力行動作あるいは回生動作させてキャパシタ電圧Vcを制御する。キャパシタ目標電圧Vc*は、上部旋回体20の運動エネルギに依存するように設定する。ここでは、図6に示すように、キャパシタ24の目標電圧Vc*を、充電指令VL*、放電指令VH*として予め設定し、旋回速度に応じたテーブルとして保持している。例えば、旋回力行動作時においては、運動エネルギが小さい場合よりも運動エネルギが大きい場合、即ち旋回速度が大きい場合の方が、回生動作時に得られる回生エネルギが大きくなるため、それに備えてキャパシタの充電状態を低くするように、キャパシタ目標電圧Vc*を低く設定している。回生動作時においても同様に、運動エネルギが小さい場合、即ち旋回速度が小さくなるにつれ、次の力行動作に備えてキャパシタの充電状態を高くしておくように、キャパシタ目標電圧Vc*を高く設定している。
【0039】
以上のようなキャパシタ目標電圧Vc*を設定することにより、図6において旋回速度がWxのときに、キャパシタ電圧Vcが(Vh_x+α)よりも高い場合には、アシスト発電モータ23は最大出力で力行動作をするように制御される。また、旋回速度がWxのときにキャパシタ電圧Vcが(Vl_x−β)よりも低い場合には、アシスト発電モータ23は最大出力で発電動作をするように制御される。また、キャパシタ電圧VcがVl_x≦Vc≦Vh_xの場合には、アシスト発電モータ23は駆動されず、旋回電動モータ25の力行動作と回生動作に応じた電気エネルギがキャパシタ24に充放電されることになる。
【0040】
図6において、キャパシタ24への充電指令と放電指令を意味するキャパシタ目標電圧VL*及びVH*は、キャパシタ24の通常使用領域を有効に使用するように設定すべきである。即ち、安全面や寿命の観点から、キャパシタ24を適性に使用するための電圧範囲を通常使用領域とした場合に、キャパシタ電圧Vcが最小電圧Vminから最大電圧Vmaxの範囲内を最大限に使用する程、電気エネルギを有効に活用でき、効率が向上する。よって、回生エネルギを得て充電されたときのキャパシタ電圧がVmaxに近く、力行動作にて放電されたときのキャパシタ電圧がVminに近いほどエネルギ効率は向上する。但し、実際には、例えば傾斜地等での旋回作業で回生によるキャパシタ24への充電が続いた場合や、押し当て作業等でキャパシタ24からの放電が続いた場合に備えて、所定の回生エネルギEx1や、所定の力行エネルギEx2の分だけ余裕を持たせた設定値とする。本システムによれば、後述するように、キャパシタ残量が所定の範囲から外れた場合においても、油圧モータ単独モードへの切り換えが可能であるため、回生エネルギEx1及び力行エネルギEx2を小さな値に設定することができ、キャパシタ24の小型化を図ることができる。なお、最大電圧Vmax以上の電圧範囲は、アシスト発電モータ23及び旋回電動モータ25から回生される電気エネルギの充電が禁止される回生禁止領域であり、最小電圧Vmin以下の電圧範囲は、上部旋回体20の旋回作業が禁止される旋回禁止領域である。コントローラ80は、これら図6に示す通常使用領域、回生禁止領域及び旋回禁止領域を記憶している。
【0041】
図5に戻って、算出されたキャパシタ目標電圧Vc*とキャパシタ電圧Vcの偏差に対し、制御機101で比例ゲインを乗じ、キャパシタ24から充放電すべき出力を演算する。また、要求トルク算出手段102にて、制御機101で算出された出力をアシスト発電モータ23の回転速度で除してアシスト発電モータトルク指令に換算し、パワーコントロールユニット55に出力する。ここで、キャパシタ電圧Vcは、内部抵抗値による電圧降下分を補正部103で補正した値とする。
【0042】
次に、図5に示す旋回モータ上乗せ要求トルク演算処理ブロック104の処理を、図7に示すフローチャートにしたがって説明する。この処理は、アシスト発電モータ23の駆動による充放電だけでは、キャパシタ24の蓄電量を所定の範囲に保つことができない場合、オペレータに旋回感触の違和感を与えない範囲のトルクを旋回電動モータ25の駆動トルクを上乗せし、キャパシタ24の蓄電量を調節するものである。これにより、キャパシタ24の蓄電量が回生禁止領域及び旋回禁止領域に至りにくくすることができる。
【0043】
初めに、旋回油圧モータ27のAポート圧力とBポート圧力の差から、油圧モータトルクTmoを計算する。ここで、旋回油圧モータ27のAポートとBポートとは、旋回油圧モータ27の作動油の入口と出口になる2つのポートである。次に、旋回油圧モータ27が駆動しているか制動しているかを判定する。駆動時には、旋回操作量に応じて設定している駆動ゲインテーブルを用いてゲインを算出し、算出した駆動ゲインを油圧モータトルクに乗じた値を電動モータトルク指令値Tms1とする。同様に、制動時には、旋回操作量に応じて設定している制動ゲインテーブルを用いてゲインを算出し、油圧モータトルクに乗じた値を電動モータトルク指令値Tms1とする。この電動モータトルク指令値Tms1は、従来機の油圧モータのトルクとほぼ同じになるように設定される。よって、算出した電動モータトルク指令値Tms1は、旋回操作レバーの操作量が中間域の時に大きくなる。
【0044】
次に、キャパシタ24の充電状態から上乗せ要求トルクTaddを算出する。本実施形態においては、キャパシタ電圧Vcに応じて入出力する充放電電力を定義し、旋回速度で除することにより上乗せ要求トルクに換算する。図8に、キャパシタ電圧Vcに対して上乗せ要求出力指令を設定するテーブルを示す。旋回駆動時においては、キャパシタ電圧がVH1*以上において、所定の放電パワーPaddmax[kW]で放電するように、上乗せ要求出力を設定している。また、旋回回生時においては、キャパシタ電圧がVL*以下において、所定の充電パワーPaddmin[kW]で充電するように上乗せ要求出力を設定している。
【0045】
なお、図8の例では、駆動時と制動時の両方について上乗せ要求出力を設定しているが、システムによっては、駆動時又は制動時のいずれか一方のみを設定することもできる。通常、アシスト発電モータ23に比べて旋回電動モータ25の最大出力は大きいため、アシスト発電モータ23のみでキャパシタ24の蓄電量を制御するよりも、エネルギマネジメントをおこない易くなる。また、効率の観点からも、旋回電動モータ25の制動時にキャパシタに蓄電された回生エネルギは、アシスト発電モータ23を駆動してポンプ出力のアシストに用いるよりも、旋回電動モータ25が加速旋回する際に利用した方が効果的である。
【0046】
次に、算出した上乗せ要求トルクTaddに対して、予め設定した上限値Tadd1を超えるか否かの判定をし、上限値Tadd1を超える場合には、上乗せ要求トルクTadd=Tadd1とする。この上限値Tadd1は、上乗せ要求トルクTaddと旋回電動モータ25の駆動トルクTms1の加算値で旋回電動モータ25を駆動したときに、オペレータが感じる旋回感触と、上乗せ要求トルクTaadが加算されていない旋回電動モータ25の駆動トルクTms1で旋回電動モータ25を駆動したときに、オペレータが感じる旋回感触とに差が生じない範囲に設定される。発明者らの実験によると、旋回電動モータ25の駆動トルクTms1に対して、20%程度のトルクを上乗せしても、大部分のオペレータは違和感を感じないことが分かっている。ここでは、上乗せ要求トルクの上限値は、前記油圧モータトルク指令Tms1にゲインK1を乗じた値(Tadd1=K1・Tms1)とする。以上により、前記電動モータトルク指令値Tms1に上乗せトルクTaddを加えたものを電動モータトルク指令値Tms2(=Tms1+Tadd)として算出する。
【0047】
算出された電動モータトルク指令値Tms2は、油圧電動複合旋回制御ブロック83からパワーコントロールユニット55に出力される。図9に、上部旋回体20の起動から停止に至るまでの油圧モータトルクTmo及び旋回電動モータトルクTms1と、旋回電動モータトルクTms1に上乗せされる上乗せトルクTaddの変化を示す。このような制御をおこなうことにより、キャパシタ24の蓄電状態を適正な範囲に管理しやすくなり、以下に説明する油圧単独旋回モードへの切替えを可能な限り減らすことができる。また、キャパシタ24の容量を小さくしたシステム構成が実現できる。さらには、オペレータに操作上の違和感を与えることがなく、エネルギも有効に活用できて、燃費を向上することができる。
【0048】
次に、図5の油圧単独モード切替要求演算処理ブロック105について説明する。旋回電動モータ25のトルクを上乗せしても、キャパシタ24の蓄電量が所定の範囲内に収まらない場合、旋回電動モータ25の駆動と制動によるキャパシタ24への充放電を防止するため、油圧電動複合旋回モードから油圧単独モードに切り替える。油圧単独モードへの切り替えは、キャパシタ24の蓄電状態に基づいておこなうように設定し、蓄電量が多い場合には回生禁止フラグ、蓄電量が少ない場合には旋回禁止フラグをそれぞれ2段階で出力する。
【0049】
図10(a)は、回生禁止フラグの設定例である。本例の場合には、キャパシタ電圧が回生禁止領域のしきい値Vmaxに至った場合に、回生禁止フラグがONとなって、油圧単独モードに切り替えられ、キャパシタ電圧が通常使用領域の中央値Vcentまで復帰した段階で、回生禁止フラグがOFFとなって、油圧単独モードが解除される。図10(b)は、旋回禁止フラグの設定例である。この場合には、電圧が旋回禁止領域のしきい値Vminに至った場合に、旋回禁止フラグがONとなって、油圧単独モードに切り替えられ、キャパシタ電圧が通常使用領域の中央値Vcentまで復帰した段階で、旋回禁止フラグがOFFとなって、油圧単独モードが解除される。この場合のフラグのON,OFFは、可能な限り操作中のショックを低減するため、旋回動作及び操作が行われていないタイミングがきた段階で、その切り替えがされる。
【0050】
なお、図10(a),(b)の制御に加えて、キャパシタ電圧が、回生禁止領域のしきい値Vmax以上の所定の電圧値、例えばVfullに至った段階で、第2の回生禁止フラグをONに切り替えるという制御方法をとることもできる。キャパシタ電圧がVfullに至る状態とは、キャパシタ24に異常が発生した場合であると判断されるので、この第2の回生禁止フラグのOFFからONへの切り替えは、旋回動作が行われているか否かにかかわりなく、直ちに行われる。
【0051】
なお、油圧電動複合旋回モードから油圧単独旋回モードへの切替は、上述したエネルギマネジメント制御ブロック82からの要求によって行われるほか、パワーコントロールユニット、電動モータ、キャパシタ等の電動系に異常が発生した場合にも実施することができる。この場合の油圧電動複合旋回モードから油圧単独旋回モードへの切替は、異常監視・異常処理ブロック81の判断で行われる。
【0052】
油圧電動複合旋回モードと油圧単独旋回モードとの間のモード切替は、モード切替時に油圧回路上のバルブの切り替え動作が行われることなどにより、操作上軽いショックが生じる可能性があるので、エラー信号の内容が深刻ではなく、直ちに切替える緊急性がない場合は、旋回動作及び操作が行われてないタイミング、あるいは、フロントも含め操作がまったく行われていないアイドリング時などに行う。インバータの過電流異常等、システムを損傷させる恐れや重大な故障や災害に繋がる恐れがある異常については、操作中であっても、直ちに電動系を停止させ、油圧単独旋回モードに切替える。
【0053】
油圧単独旋回制御中には、アシスト発電モータ23を用いて、キャパシタ電圧が所定の電圧値に復帰するまで充電又は放電を行う。キャパシタ電圧が所定値よりも大きくなり、油圧単独旋回制御に切り替った場合には、キャパシタ電圧が所定の電圧(本例では、Vcent)に下がるまで、アシスト発電モータ23は最大出力でアシスト駆動するように制御される。また、キャパシタ電圧が所定値よりも小さくなり、油圧単独旋回制御に切り替わった場合には、キャパシタ電圧が所定の電圧(本例では、Vcent)に上がるまで、アシスト発電モータ23は最大出力で発電駆動するように制御される。
【0054】
なお、油圧単独旋回制御中に、所定のエラー処理によって、あるいは、自然にエラー信号が解消された場合は、旋回動作及び操作が行われてないタイミング、あるいは、フロントも含め操作がまったく行われていないアイドリング時などにおいて、油圧電動複合旋回モードへの復帰動作を行う。
【0055】
このように、キャパシタ電圧が所定の回生禁止値又は旋回禁止値に至ったとき、上部旋回体20の駆動モードを、油圧電動複合旋回モードから油圧単独旋回モードに切り替えると、上部旋回体20の駆動を継続できるので、高い作業性を維持することができる。また、上部旋回体20の駆動モードが、油圧電動複合旋回モードから油圧単独旋回モードに切り替えられたとき、アシスト発電モータ23をフルに駆動してキャパシタ24の充放電を促進するので、速やかに油圧電動複合旋回モードに復帰でき、燃費の向上、騒音の低減及び排ガス量の低減を図ることができる。
【符号の説明】
【0056】
10…下部走行体、11…クローラ、12…クローラフレーム、13…右走行用油圧モータ、14…左走行用油圧モータ、20…上部旋回体、21…旋回フレーム、22…エンジン、23…アシスト発電モータ、24…キャパシタ、25…旋回電動モータ、26…減速機構、27…旋回油圧モータ、30…ショベル機構、31…ブーム、32…ブームシリンダ、33…アーム、34…アームシリンダ、35…バケット、36…バケットシリンダ、37…旋回用スプール、40…油圧システム、41…油圧ポンプ、42…コントロールバルブ、43…油圧配管、51…チョッパ、52…旋回電動モータ用インバータ、53…アシスト発電モータ用インバータ、54…平滑コンデンサ、55…パワーコントロールユニット、56…メインコンタクタ、57…メインリレー、58…突入電流防止回路、70…イグニッションキー、71…ゲートロックレバー、72…旋回操作レバー、73…操作レバー(旋回以外)、74…油圧→電気信号変換デバイス、75…電気→油圧信号変換デバイス、76…パイロット圧信号遮断弁、77…油圧単独旋回モード固定スイッチ、80…コントローラ(旋回モード切り替え手段)、81…異常監視・異常処理制御ブロック、82…エネルギマネジメント制御ブロック、83…油圧電動複合旋回制御ブロック、84…油圧単独制御ブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、該エンジンによって駆動される油圧ポンプと、旋回体と、該旋回体を駆動する第1の電動モータ及び油圧モータと、前記旋回体を駆動するためにオペレータが操作する旋回用操作レバーと、力行動作時には前記油圧ポンプをアシスト駆動し、前記エンジンによる駆動時には電気エネルギを発生する第2の電動モータと、前記第1及び第2の電動モータに供給するための電気エネルギを蓄積する蓄電装置と、前記旋回用操作レバーの操作量及び操作方向に応じた信号を入力し、前記蓄電装置の充放電を制御するコントローラとを備え、
前記コントローラは、前記蓄電装置の蓄電量に関して、当該蓄電装置の最適な使用範囲である通常使用領域の上限値及び下限値と、前記通常使用領域の上限値よりも大きく、当該蓄電装置の最大蓄電量よりも低い値に設定された回生禁止値と、前記通常使用領域の下限値よりも小さく、当該蓄電装置の最小蓄電量よりも高い値に設定された旋回禁止値とを記憶しており、
前記蓄電装置の蓄電量が前記通常使用範囲内にあるときには、前記第1の電動モータ及び前記油圧モータの双方を用いて、前記旋回用操作レバーの操作量及び操作方向に応じた前記旋回体の駆動と制動とを行い、前記蓄電装置の蓄電量が前記通常使用範囲の上限値を超えて前記回生禁止値に至ったときには、前記油圧モータのみを用いて、前記旋回用操作レバーの操作量及び操作方向に応じた前記旋回体の駆動と制動とを行うと共に、前記第2の電動モータを力行させて前記蓄電装置に蓄積された電気エネルギを消費し、反対に、前記通常使用範囲の下限値を下回って前記旋回禁止値に至ったときには、前記油圧モータのみを用いて、前記旋回用操作レバーの操作量及び操作方向に応じた前記旋回体の駆動と制動とを行うと共に、前記エンジンにより前記第2の電動モータを駆動して前記蓄電装置への充電を行うことを特徴とする旋回体を有する建設機械。
【請求項2】
請求項1に記載の旋回体を有する建設機械において、
前記コントローラは、前記蓄電装置の蓄電量が前記通常使用範囲の上限値を超えて前記回生禁止値に至ったとき、前記蓄電装置の蓄電量が、前記通常使用範囲の上限値と下限値との間に設定された所定の中間値に達するまで、前記油圧モータのみを用いた前記旋回体の駆動と制動とを継続し、前記蓄電装置の蓄電量が前記中間値に達したとき、前記第1の電動モータ及び前記油圧モータの双方を用いた前記旋回体の駆動と制動とに切り替えることを特徴とする旋回体を有する建設機械。
【請求項3】
請求項1に記載の旋回体を有する建設機械において、
前記コントローラは、前記蓄電装置の蓄電量が前記通常使用範囲の下限値を下回って前記旋回禁止値に至ったとき、前記蓄電装置の蓄電量が、前記通常使用範囲の上限値と下限値との間に設定された所定の中間値に達するまで、前記油圧モータのみを用いた前記旋回体の駆動と制動とを継続し、前記蓄電装置の蓄電量が前記中間値に達したとき、前記第1の電動モータ及び前記油圧モータの双方を用いた前記旋回体の駆動と制動とに切り替えることを特徴とする旋回体を有する建設機械。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の旋回体を有する建設機械において、
前記コントローラは、前記蓄電装置の蓄電量が前記通常使用範囲内にあり、前記第1の電動モータ及び前記油圧モータの双方を用いて、前記旋回用操作レバーの操作量及び操作方向に応じた前記旋回体の駆動を行っているとき、前記蓄電装置の蓄電量に応じて前記第1の電動モータの駆動トルク指令値を演算し、前記第1の電動モータは、この演算された駆動トルク指令値に基づいて駆動されることを特徴とする旋回体を有する建設機械。
【請求項5】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の旋回体を有する建設機械において、
前記コントローラは、前記蓄電装置の蓄電量が前記通常使用範囲内にあり、前記第1の電動モータ及び前記油圧モータの双方を用いて、前記旋回用操作レバーの操作量及び操作方向に応じた前記旋回体の制動を行っているとき、前記蓄電装置の蓄電量に応じて前記第1の電動モータの駆動トルク指令値を演算し、前記第1の電動モータは、この演算された駆動トルク指令値に基づいて駆動されて、前記旋回体の制動を行うことを特徴とする旋回体を有する建設機械。
【請求項6】
請求項4及び請求項5のいずれか1項に記載の旋回体を有する建設機械において、
前記蓄電装置の蓄電量に応じて演算される前記第1の電動モータの駆動トルク指令値は、同一駆動または制動条件において前記蓄電量に応じて変動するが、その変動トルク巾は、前記同一駆動または制動条件における電動モータと油圧モータとを合計したトルクの標準値に対して、20%以下であることを特徴とする旋回体を有する建設機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−154024(P2012−154024A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−11096(P2011−11096)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】