説明

既存農耕機を用いた除雪方法及びその装置

【課題】降雪地域における農耕機は冬季には遊休となるが、これに除雪装置をつけて除雪機として有効活用すれば農業者の機械経費の軽減に寄与できる。しかし、市場には農耕機に装着出来るように造られた除雪装置は見当たらない。
【解決手段】そのため新たにアタチメント式の小形除雪装置を開発した。ここで工夫したことは、十分な放雪力を得るためオーガ掻き寄せ翼1条に対しブロワー掻き出し羽根を通常は1枚であるのに対しこれを2枚とする工夫をしブロワー全体では4枚とした。また、農耕機には除雪装置取り付けのための軽微な改装を施し農耕機前端にボルト結合で装着できるようにすると共に、農耕機からの動力取り出しはVベルト伝達による平行軸方式を採用しVベルト1本の架け替えで出来るようにした。これにより除雪装置の農耕機への着脱作業を一人で容易に出来るようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既存農耕機を用いた除雪方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
降雪地域において、農業者の保有する既存の農耕機は冬季には遊休となる機械で、その一方、農業者は自宅及びその周辺の除雪の必要性から除雪機を保有している。この現状に発案されるのが、遊休となっている農耕機を除雪機として冬季有効活用できないかである。
【0003】
ここで云う農耕機は、人力で容易に操作できるハンドガイド式の出力4.5kw程度の小形農耕機であり、また、除雪機は同じようにハンドガイド式の出力4.5Kw程度の小形除雪機で両機とも構造、性能的には近似した機械である。従って、農耕機に僅かの改装を加えれば除雪装置を取り付けて除雪機として活用できる可能性がある。そこで、この発案に基づいた実施例をIPDIにおいて調査した。しかし、除雪機の夏季活用の事例はあったが(特許文献1)、農耕機を除雪機に活用した例は見当たらない。
【0004】
この実施例の見当たらない背景を考えると、小形農耕機は作業の性質から走行駆動体の後部に作業装置を有し(非特許文献1)、小形除雪機は作業の性質から走行駆動体の前部に作業装置を有する(非特許文献2)。従って、作業装置を別の装置に交換する場合、いずれも作業装置の位置で交換すればベースマシンからの動力取り出しが容易なため装置の交換も比較的容易にできる。特許文献1はこの例である。しかし、本発案の場合には、作業装置を走行駆動体後部に装備する農耕機のその前部に除雪装置を装着するので動力の取り出しが困難という技術的概念から実施されていないものと推測される。
【0005】
【特許文献1】 公開実用新案公報(U)昭64−42320
【非特許文献1】 Ranee総合カタログ 楽園ギアー 富士ロビン株式会社製品カタログ
【非特許文献2】 青い除雪機ヤマハスノーメイト ヤマハ発動機株式会社製品カタログ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、農業分野にもコスト縮減が求められているが、農業の機械化と共に農業者の保有する機械も増え負担する機械経費も大きくこの軽減が今後の農業に求められる。このような状況において農耕機、除雪機は類似した機械であり工夫すれば他の作業装置を取り付けて別の作業をできるものもある。本発明はその1例であるが以下に述べるように、既存農耕機に除雪装置を取り付け除雪機として冬季有効活用することを可能とした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1)既存農耕機に止められた1条のVベルトプーリを新たに2条のVベルトプーリに交換すると共に、新たな動力手段を介して円筒形ケーシング内を回転するオーガ軸に動力が伝えられる。該オーガ軸には積雪をブロワー側に掻き寄せる複数条からなる掻き寄せ翼や、掻き寄せた積雪を外周に集めこれを分離掻き出す適宜高さの掻き出し羽根複数を同軸上に備え、農耕機の走行に合わせオーガ軸を回転させながら積雪を案内シュートを介し外部へ放出されることを特徴とする既存農耕機を用いた除雪方法。
2)既存農耕機エンジン出力軸に取り付けられる2条のVベルトプーリと、これを伝える動力手段と、円筒形ケーシングに軸着されたオーガ軸に複数条の螺旋状に形成し積雪をブロワー側に掻き寄せる翼と掻き寄せた積雪を外周に集めこれを分離掻き出す適宜高さの掻き出し羽根複数を備え、農耕機の走行に合わせオーガ軸を回転させながら積雪を案内シュートを介し外部に放出されることを特徴とする既存農耕機を用いた除雪装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明で期待される効果は、
1 冬季遊休となる農耕機を除雪機として有効活用できる。
2 既存除雪専用機の代替機となる。
3 農業者の機械保有台数を減らし機械経費軽減に寄与する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
まず、一般市場には農耕機は農耕専用機として製造販売されておりそのため除雪装置アタチメントは市販されていない。従って、最初に除雪装置を新しく開発する必要がある。次に、開発した除雪装置を取り付けるための農耕機の部分的な改装を行う。以下にその実施例を記す。
【0010】
I.除雪装置の開発
開発方針
1 農耕機の前端部に容易に取り付け可能な構造とする。
2 除雪機構は、装置が簡易となる掻き込み用オーガと放雪用ブロワーを同軸上に配する型式とする。
3 除雪作業は、農耕機の前進1速において行い能力を最大に発揮するよう設定する。
4 放雪は、人家や施設の近接場所での作業となることから数メートルの短距離投雪とする。
【0011】
上記の開発方針に沿って図1及び2に示す除雪装置を開発した。以下に開発した除雪装置の構造機能を図1〜図5に基づいて説明する。
図1において、1は掻き寄せ翼、2はオーガ軸、3はブロワーで1及び3は共にオーガ軸2の同軸上に配置されており4は円筒形をしたケーシングで、1〜4が本除雪装置の基本構成要素である。農耕機エンジンからVベルト動力手段で回転駆動されるオーガ軸2は、左方向捩れの2条の掻き寄せ翼を有し積雪を切り進み切り込んだ雪を左端のブロワー3に送る。ブロワー3は送られた雪を受けその回転力と掻き出し羽根3A、3Bとで放出力を与え案内シュート5を介して外部に放出する。
【0012】
以下に、特に工夫した点について記述する。
1 ブロワー羽根の増設: 本除雪装置は寸法上の制約からオーガの外径が300mmと小さくそのためブロワーの放出力が小さい。これを補うためオーガの回転を上げると共に、ブロワーの掻き出し羽根をオーガ掻き寄せ翼1条に1枚が一般的であるのに対し本機ではこれを2枚としブロワー全体としては4枚として実用的な放出力を得ることを可能とした。以下にその構造、機能を図2,3を基に説明する。
【0013】
図3は図2の部分拡大図で、掻き寄せ翼1からブロワー3に送り込まれた雪は、先ず掻き出し羽根3Aに入るがこの羽根3Aの高さを0.5hとし、次の増設する羽根3Bの高さを1hとする。これにより羽根3Aに入る雪の1/2がブロワー3の回転力で羽根3Aを越流して羽根3Bに流れ込む。 そして羽根3A,3Bに分散された雪はブロワー3の回転に伴って羽根先端へと移動する。羽根先端は回転周速度が最大で放出力も最大となる位置であり、この位置にある雪が1枚羽根の場合の2倍となると同時に放出口4Aから分離放出される放雪量も増加してブロワー全体の雪の平均放出量及び放出力は強められた。
【0014】
2 動力伝達の簡素化: 図1に対応する図4及び図2に対応する図5に基づいて説明する。オーガ軸2はプーリ6D、6C、中間軸6B及びプーリ6Aを経由してVベルトでエンジンVプーリ29w(溝2条)から動力を受ける。農耕機の推進速度とオーガ軸2の回転速度との比は除雪性能に直接関係し、その最適比の設定は本機の場合はプーリ6D、6C及びプーリ6A、29wのプーリ組み合わせ比による。これにより最適点は1点のみとなるが、反面、動力の取り出し伝達機構がVベルト及びVプーリのみに簡素化して除雪装置の農耕機への取り付けが容易となり、除雪装置装着台座7を農耕機装着ブラケット32に挿入しボルト締結することで可能となった。
【0015】
II. 次に、除雪装置を農耕機に取り付けるための農耕機の一部改装について説明する。
選定した農耕機は、一般市場で市販されている農耕機の中から選定しその概観を図6に示した。カタログ上での出力は3.7kw(5ps)の耕うん機であるが、本書での呼びは“農耕機”に統一する。
農耕機の一部改装: 図6及び図7に基づいて説明する。選定した農耕機において1)作業装置である耕うんロータリ21を外す(次の夏期まで保管する)。 その跡に、2)ロータリ駆動軸22を支持中心として除雪ウェイト支持枠31(別途製作)を設ける。3)フロントウェイト28を外して支持枠31内に移設すると共に、調節ウエイト37(砂又は小石を詰めた袋)を追加する。次に、4)フロントウェイト28の跡に除雪装置を取り付けるための4本の植え込みボルトを有する装着ブラケット32(別途製作)をシャシーフレーム先端にボルト固定する。5)ハンドル26全幅に亘ってある農耕機の主クラッチレバー27を2分割し、右半分を除雪装置への除雪クラッチレバー34に加工する。6)除雪装置への動力断続用のテンションローラによる除雪クラッチ機構83(別途製作)を装着ブラケット32の上部にボルト締結する。7)除雪クラッチレバー34とクラッチ機構33とをワイヤー35で繋いでクラッチ系統を機能化する。8)最後に、エンジンに止められたVプーリ29をVベルト2条溝のVプーリ29wに取り変える(取り替え加工)。
【0016】
本改装は軽微ではあるが製作部品及び加工工作が含まれるため除雪装置製作と合わせて行うことが望ましく、また、この改装は一度行えば以降は必要ない。また、多数台で農耕機工場対応となる場合には、出荷時に除雪装置装着可能型とし改装を済ませ、かつ、必要部品も用意しておくことで市場への対応は可能と考える。
【0017】
除雪装置を取り付け除雪機とする: 改装の終えた農耕機に除雪装置を取り付ける。先ず一人操作で、除雪装置装着台座7に対面して農耕機装着ブラケット32を向けて位置し、農耕機を微調整接近して装着ブラケット32のボルトを装着台座7のボルト穴に挿入しナットで固く締結する。次に、Vベルト10をVプーリ6Aと29wに掛けるが、このVプーリ29wの1条は除雪装置を駆動し、1条は本来の農耕機駆動用Vベルトで除雪機のときは機の推進力を発生する。最後に、ベルトの張り、クラッチレバーの効き具合等を調整し除雪機として完成する。
【0018】
夏期には再び農耕機へ: 冬季シーズンを終えた除雪機03はシーズンオフの清掃、整備をして除雪装置01と農耕機02とを装着ブラケット32において分離し、除雪装置01は適切な場所に保管する。農耕機02には作業装置21を元の位置に戻して農耕作業のできる状態に戻す。以上の除雪装置の着脱作業は、農業者一人で十分に可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】開発した除雪装置の平面図
【図2】 “ の立面ブロワー部断面図
【図3】 “ のブロワー羽根作用拡大図
【図4】農耕機前端部の改装平面図(図1に対応)
【図5】 “ の改装立面図(図2に対応)
【図6】除雪機ベースマシに選定した農耕機
【図7】農耕機をベースマシンとし完成した除雪機
【符号の説明】
【0020】
1 オーガ掻き寄せ翼
2 オーガ軸
3 ブロワー
3A、3B ブロワー掻き出し羽根
4 円筒形のケーシング
5 案内シュート
7 除雪装置の装着台座
動力手段
6B 中間シャフト
6A、6C、6D Vプーリ
10、11 Vベルト
29 農耕機エンジンに本来取り付けられている1条溝のVプーリ
29w 1条溝Vプーリ29に替え新たに取り付けた2条溝のVプーリ
32 農耕機前端に取り付けられる装着ブラケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既存農耕機に止められた1条のVベルトプーリを新たに2条のVベルトプーリに交換すると共に、新たな動力手段を介して円筒形ケーシング内を回転するオーガ軸に動力が伝えられる。該オーガ軸には積雪をブロワー側に掻き寄せる複数条からなる掻き寄せ翼や、掻き寄せ積雪を外周に集めこれを分離掻き出す適宜高さの掻き出し羽根複数を同軸上に備え、農耕機の走行に合わせオーガ軸を回転させながら積雪を案内シュートを介し外部へ放出されることを特徴とする既存農耕機を用いた除雪方法。
【請求項2】
既存農耕機エンジン出力軸に取り付けられる2条のVベルトプーリと、これを伝える動力手段と、円筒形ケーシングに軸着されたオーガ軸に複数条の螺旋状に形成し積雪をブロワー側に掻き寄せる翼と掻き寄せた積雪を外周に集めこれを分離掻き出す適宜高さの掻き出し羽根複数を備え、農耕機走行に合わせオーガ軸を回転させながら積雪を案内シュートを介し外部へ放出されることを特徴とする既存農耕機を用いた除雪装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−101148(P2010−101148A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−297313(P2008−297313)
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【出願人】(504415359)
【Fターム(参考)】