説明

既設埋設管の撤去方法

【課題】地中に埋設され、破損したり老朽化した既設埋設管を、上部の他の既設埋設管および地上の構造物や車両に影響を与えることなく、安全に効率良く撤去できる方法を提供する。
【解決手段】本発明は、地中に布設された既設埋設管に向けて、その外径とほぼ同じかまたはそれ以上の掘削径を有する筒状の外殻より成る先導体を配置し、前記先導体の左右の外殻部には左右方向に所定の幅をもった取込手段を装着し、前記先導体で既設埋設管を覆うように前方に押し込むことによって、左右の側面部に設けた取込手段で既設埋設管を内側に変形させたり切断して取込み、先導体内に入った前記既設埋設管の変形片や切断片及び掘削土を回収して坑外に搬出することを主要な特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中に布設された既設埋設管が老朽化しり、地震等によって変形したりして破損した既設埋設管を、安全で効率良く撤去できる方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地中には、上下水道、ガス、電気、通信等の各種の管渠が輻輳して埋設されている。埋設される管渠は、その用途によって管径や埋設深さが変化する。既設埋設管の耐用年数は、コンクリート管では数十年といわれており、管内に供用される内容物によっても多少は変化する。耐用年数によって老朽化した埋設管は、管材強度は低下しているが比較的原形を維持している場合が多い。しかし、大地震等による設計値よりも大きな荷重が作用した場合には、管渠は大きく変形したり、完全に破壊してしまうこととなる。既設埋設管の破損によって、管渠上部の地盤が沈下して他の地下埋設物や地上構造物に悪影響を与えることとなる。このため、耐用年数を過ぎて老朽化した管渠や地震等で変形破壊した管渠は、撤去して新たに新設管を構築したり、管渠の撤去後に埋め戻したりする処置が実施されている。
【0003】
管渠を撤去して新たに新設管を構築する方法としては、既設埋設管部分を上部から掘削して埋設管を撤去し、その位置に管渠を新設する開削工法や、既設埋設管は残置したまま内部を充填して補強し、その隣接部に新設管を埋設する推進工法が、一般に多く用いられていた。
【0004】
また、非開削による改築推進工法も提案されている。その技術内容としては、打撃機21を内蔵した中空筒体10に緩衝装置26を介して新設管50を連結し、打撃機21を作動させて既設管30の尾端を押圧して前方に推進し、同時に先端部材12で拡孔し、既設管30を押し出して除去するとともに、新設管50を布設する方法である。
【0005】
【特許文献1】特開2001−73682号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記した改築推進工法は、既設埋設管の変形・変位が小さい場合に適しているが、既設埋設管の変形・変位が大きい場合には、中空筒体10に内蔵した打撃機21が既設埋設管に対して有効に作動できなく、改築が困難となる。他の既設埋設管を先端の先導体で破砕しながら改築する推進工法でも同様に困難となる。このため本発明は、既設埋設管が大きく変形・変位した場合でも簡単で効率良く、確実に既設埋設管が撤去できる工法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係わる発明は、地中に布設された既設埋設管に向けて、その外径とほぼ同じかまたはそれ以上の掘削径を有する筒状の外殻より成る先導体を配置し、前記先導体の左右の外殻部には左右方向に所定の幅をもった取込手段を装着し、前記先導体で既設埋設管を覆うように前方に押し込むことによって、左右の側面部に設けた取込手段で既設埋設管を内側に変形させたり切断して取込み、先導体内に入った前記既設埋設管の変形片や切断片及び掘削土を回収して坑外に搬出することを特徴とする。
【0008】
請求項2に係わる発明は、前記先導体の上下の外殻部には上下方向に所定の幅をもった取込手段を装着したことを特徴とする。
【0009】
請求項3に係わる発明は、前記先導体の上部だけの外殻または上下両方の外殻を左右の外殻よりも前方に延長して構成されることを特徴とする。
【0010】
請求項4に係わる発明は、前記先導体の左右および上下に設けられる取込手段を貫入抵抗や排除土量の低減から推進方向に厚みを持たないプレート状の構造とするとともに、既設埋設管の管径や埋設管の材質によって1段から複数段に変化させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係わる発明によれば、既設埋設管が大きく楕円状に変形した場合でも、先導体の左右の外殻に装着した取込手段によって、既設埋設管を先導体の内側に変形させて取り込んだり、切断して取り込むことができる。先導体内に入ってきた既設埋設管は分割されて掘削土とともに容易に坑外に撤去することが可能となる。
【0012】
請求項2に係わる発明によれば、既設埋設管の変形が比較的小さい場合でも、先導体の上下、左右の外殻に装着した取込手段によって、既設埋設管を効率良く先導体の内側に変形させて取り込んだり、切断して取り込むことができる。先導体内に入ってきた既設埋設管は分割されて掘削土とともに容易に坑外へ撤去することが可能となる。
【0013】
請求項3に係わる発明によれば、先導体先端の上部外殻を左右の外殻よりも前方に延長させることによって、外殻が地盤内に充分に食い込み上部地盤の崩壊を防止しながら、先導体内への既設埋設管片等の取込み、撤去が安全に行なえる。
【0014】
請求項4に係わる発明によれば、取込手段にプレートを採用することによって、左右および上下の取込み手段が地盤内を通過する際の貫入抵抗や排除土量が低減でき、地上への影響を軽減しながら既設埋設管の撤去が行なえる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
既設埋設管の撤去方法において、大きく変形したり、破損した既設埋設管を、安全で確実に撤去できる方法を実現した。
【実施例1】
【0016】
図1は、本発明の既設埋設管の撤去方法を説明する縦断面図である。先端には、既設埋設管7の外径とほぼ同じかまたはそれ以上の掘削径を有する筒状の外殻より成る先導体1が配設されている。前記先導体1の左右の外殻部には左右方向に所定の幅をもった取込手段6が装着されている。前記先導体1の後部には、円周方向に均等に配置した複数本の方向制御ジャッキ3が装備されている。前記方向制御ジャッキ3の後方には、先導体1の外径とほぼ同径で先導体1の後方外殻内に嵌挿するように筒状の後続筒2が設置されている。後続筒2の内周面には、円周方向に均等に配置した複数本のシールドジャッキ4が装備されている。さらに、後続筒2の後端には、新設管5が接続されている。
【0017】
先導体1先端の外殻は、前方地山を保持し地盤に貫入させるために、比較的強度のある鋼材等が用いられるとともに、変形等を起こさないようにテーパー状のリブが外殻内面に補強されている。先導体1の外殻は、上下部分が左右の側面部分に対して前方に延長して構成されている。特に上部の外殻を前方に長く構成することによって、上載土の崩壊を防止しながら安全に既設埋設管7の取り込み、撤去が行なえる。
【0018】
先導体1の後部の方向制御ジャッキ3は、先導体1が計画位置を逸脱しないように常に方向制御ジャッキ3を伸縮させてることによって、先導体1を偏向させて制御する。方向制御ジャッキ3の配置は、通常は左右の上下45°位置の4箇所に配置される。また、1箇所に設置される方向制御ジャッキ3の本数は、先導体1の径や土質条件によって変化させる。
【0019】
後続筒2の内周面のシールドジャッキ4は、先導体1先方の地山が不安定な場合等に、シールドジャッキ4を伸長させて先導体を地盤に貫入させることを目的としている。シールドジャッキ4の配置は、前記方向制御ジャッキ3と同様に左右の上下45°位置の4箇所に配置されている。また、1箇所に設置されるシールドジャッキ3の本数も、先導体1の径や土質条件によって変化させる。
【0020】
先導体1の左右の外殻部に装着される取付手段6は、貫入抵抗や排除土量の低減を考慮して、推進方向には厚みを持たないプレート板が用いられる。取付手段6の設置は、既設埋設管7の変形状況に応じて、左右方向に所定の幅をもったプレートを外殻よりも張り出した状態で取付けたり、外殻内面から内側に向かって取付けたりして効率の良い既設埋設管7の回収を行う。既設埋設管7の管径が大きい場合には、取付手段6が1箇所だけでは取り込み効率が悪くなるため、先導体1の左右の外殻部の上下方向に所定の間隔を置いて複数段に取付手段6を装着して効率の良い取り込み回収を行なえる。
【0021】
図2は、取込手段の設置状況を説明する縦断面図である。既設埋設管7が上下方向に余り変形していない場合には、先導体1内に既設埋設管7を効率良く変形させて取り込んだり、切断するために、先導体1の上下の外殻部に外殻よりも突出して外殻内部に円弧状に配置した取込手段6が設置される。本実施例では取付手段6の取付数を1箇所と例示したが、既設埋設管7の径や材質によって左右方向に複数段設置される。また、既設埋設管7の変形状況に応じて先導体1に取付ける取付手段6を上下、左右の両部分に設置して先頭体1内に均等に変形させて取り込むことも可能である。
【0022】
図3は、先導体を説明する正面図である。先導体1は、筒状の外殻によって構成され、左右の対称位置には左右方向に所定の幅をもった取込手段6が装着されている。取込手段6の設置状況は、既設埋設管7の変形状況に応じて外殻の外周よりも張り出した位置から先導体1の内周面までの幅で設置されている。取込手段6は、地盤への貫入抵抗や排除土量の低減を考え、厚さを制限できるプレート形状が適している。先導体1の外殻内で既設埋設管7を変形させて取り込む場合には、取込手段6の形状を円球状とすることによって、効率良く既設埋設管7を変形させて先導体1内に取り込むことができる。
【0023】
以下に、本発明の実施例を図4から図5を用いて詳細に説明する。図4は、既設埋設管の撤去状況ー1を説明する平面図である。地中に布設された既設埋設管7である鋼製パイプ端面に向けて、その外径よりもやや大きな掘削径を有する筒状の外殻より成る先導体1が配置されている。先導体1の左右の先端部には、外殻よりも張り出した位置から先導体1の内周面までの幅で取込手段6が装着されている。先導体1の先端を鋼製パイプの端部に当接させると、先導体後方に接続した後続筒2の内周面に装備したシールドジャッキ4を伸長させて、先導体1を前進させ鋼製パイプを取り込んでいく。
【0024】
図5は、既設埋設管の撤去状況ー2を説明する平面図である。先導体1の押し込みによって、鋼製パイプは取込手段6によって先導体1の内径よりも小さく変形されて取り込まれていく。鋼製パイプの取り込みが所定の長さまで行われると、シールドジャッキ4の伸長を停止する。
【0025】
図6は、既設埋設管の撤去状況ー3を説明する平面図である。鋼製パイプの取込みが進むと、鋼製パイプを推進方向に所定の長さで切断し、坑内を通して鋼製パイプを坑外に回収する。伸長したシールドジャッキ4は、加圧側をフリーの状態にして後方の新設管5を前進させることによってシールドジャッキ4を縮小させる。前記した工程を順次繰り返すことによって既設埋設管7の撤去と新設管5の布設が行なわれる。
【0026】
本発明の実施例では、既設埋設管7として鋼製パイプを変形による撤去方法で開示したが、既設埋設管7の管種が陶管や塩化ビニル管のような材質の管渠では、先頭体1内に切断したり破断して取り込む撤去方法も実施することができる。当然、取込手段6の形状としては、既設埋設管7が切断しやすいように先端部分をブレード状のものとして硬質肉盛りやチップイサートを施して対応する。
【0027】
本実施例では、既設埋設管7の撤去とともに、先導体1の後方から新設管5を布設していく方法を開示したが、新設管5の布設を行わず土砂等による原形復旧を行う場合には、仮設管を布設後、仮設管を引抜きながらトンネル孔を土砂等で充填して復旧する方法を行うことも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0028】
地中に布設された既設埋設管の破損や老朽化に対して、上部地盤を崩壊させることなく、安全で効率良く撤去が行なえる既設埋設管の撤去工事に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の既設埋設管の撤去方法を説明する縦断面図である。
【図2】取込手段の設置状況を説明する縦断面図である。
【図3】先導体を説明する正面図である。
【図4】既設埋設管の撤去状況ー1を説明する平面図である。
【図5】既設埋設管の撤去状況ー2を説明する平面図である。
【図6】既設埋設管の撤去状況ー3を説明する平面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 先導体
2 後続筒
3 方向制御ジャッキ
4 シールドジャッキ
5 新設管
6 取込手段
7 既設埋設管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に布設された既設埋設管に向けて、その外径とほぼ同じかまたはそれ以上の掘削径を有する筒状の外殻より成る先導体を配置し、前記先導体の左右の外殻部には左右方向に所定の幅をもった取込手段を装着し、前記先導体で既設埋設管を覆うように前方に押し込むことによって、左右の側面部に設けた取込手段で既設埋設管を内側に変形させたり切断して取込み、先導体内に入った前記既設埋設管の変形片や切断片及び掘削土を回収して坑外に搬出することを特徴とする既設埋設管の撤去方法。
【請求項2】
前記先導体の上下の外殻部に、上下方向に所定の幅をもった取込手段を装着したことを特徴とする請求項1記載の既設埋設管の撤去方法。
【請求項3】
前記先導体の上部だけの外殻または上下両方の外殻は、左右の側面部よりも前方に延長して構成されることを特徴とする請求項1または2記載の既設埋設管の撤去方法。
【請求項4】
前記先導体の左右および上下に設けられる取込手段は、貫入抵抗や排除土量の低減を考慮して推進方向に厚みを持たないプレート状の構造するとともに、既設埋設管の管径や埋設管の材質によって1段から複数段に変化させることを特徴とする請求項1または2記載の既設埋設管の撤去方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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