説明

既設木造建物における外壁の補強装置

【課題】 施工が簡単で既設木造建物の外壁を補強するに好適な装置を提供する。
【解決手段】 外壁1の表面の適所に設けた透孔5にエポキシ樹脂7で成るスペーサ11を装置し、前記外壁の表面に重ね合わせた構造用合板8を、前記スペーサ11を通じた釘9で柱2に止着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設木造建物における外壁の補強装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
既設の木造建物の外壁、例えば、モルタル外壁を補強するには、該モルタル外壁の表面にFRP樹脂層を層設し、該FRP樹脂層をネジ釘でラス板(木摺)に固着するようにした方法が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−244841号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来例の、被補強層であるモルタル外壁は、補強層であるFRP樹脂層とラス板でいわば挟持されて補強効果を得ようとするものであるが、ラス板は古い木造建物においては腐蝕している場合が多々あり、従って、期待するほどの補強効果を得られない場合がある。
【0005】
また、モルタル外壁の表面にFRP樹脂層を層設するため、モルタル外壁に生じている亀裂や凹凸を該FRP樹脂層で吸収させるにはきわめて煩雑な作業を必要とし、必ずしも経済的ではない。
【0006】
本発明は、斯様な従来例を勘案し、施工が簡単で、補強効果の期待できる装置を提供することを目的として創案したものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
外壁の表面の適所に設けた透孔にエポキシ樹脂や無収縮モルタルで成るスペーサを装置し、前記外壁の表面に重ね合わせた構造用合板を、前記スペーサを通じた釘で柱に止着した、構成とするのである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、構造用合板を外壁に重ね合わせて柱に釘着することにより外壁を簡単に補強することができ、既存壁を撤去することなく耐振補強が可能であると共に、廃棄物を大幅に削減でき、しかも、スペーサを貫通して柱に打ち込まれた釘で止着されるものであるから、補強層によって釘が補強され、地震などの外力の負荷による釘が折り曲がりや応力伝達ロスを防ぐことが可能となり、従って、釘着したにも係わらず、補強効果の期待できる既設木造建物の外壁の補強装置を提供できる。
【実施例】
【0009】
図面は、本発明の、既設木造建物における外壁の補強装置の一実施例を示し、図1は一部欠截正面図、図2は一部欠截斜視図、図3は断面図である。
【0010】
図で示す既設木造建物の外壁1は、柱2の屋外面に多数の木摺(ラス板)3,…を縦方向に並べて止着し、該木摺3,…屋外面側にモルタル層4を設けて構成したもの(大壁)である。そして、この外壁1の適所すなわち、前記柱2と重なり合う部分に、モルタル層4の表面から柱2の屋外面に達するように透孔5を開設し、該透孔5に樹脂製の保持筒6を嵌挿し、該保持筒6にエポキシ樹脂(揺変性)7を充填してスペーサ11を設けて外壁1と柱2との間に介在させ、外壁1の表面に重ね合わせた構造用合板8を、前記スペーサ11のエポキシ樹脂7を貫通させて先端を前記柱2に嵌入させた釘(ねじ釘でも良い)9によって柱2に止着、固定したものである。
【0011】
なお、実施例の場合は、補強するための外壁1の高さ幅に対し前記構造用合板8の縦幅が不足するときに、該不足分を満たす他の構造用合板8´を、前記構造用合板8の上側に重ね合わせ、前記と同様にして外壁1に取付けると共に、両合板8,8´の表面に、しかも、該合板8,8´にわたすようにして連続繊維シート10(アラミド繊維、ガラス繊維又は炭素繊維など高強度の繊維で成る)を合板8,8´の境界に沿ってX字状に配置し接着して合板8、8´同士を一体的にしてあり、連続繊維シート10を交差部が合板8,8´間の境界上に存するようにX字状に配置することにより、合板8,8´同士の一体的性は維持され、耐振強度が増大する。
【0012】
なお、前記保持筒6(金属製でも良く、樹脂製にこだわる必要はない)は、スペーサ11を構成する樹脂(実施例ではエポキシ樹脂)材7を透孔5に充填する際、該透孔5より当該樹脂材が流失するのを防ぐためのもので、樹脂材がゲル或いは粘土状のように保形性を保ち、経時的に硬化するものであれば充分で、この保持筒6の適用は省略しても良い。
【0013】
また、実施例の装置は、既設のモルタル外壁1(大壁)の表面の適所に、柱2に達する透孔5を設け、該透孔5に支持筒6を嵌挿して(支持筒6の適用は省略して良い)、前記モルタル外壁1内に埋設し、該支持筒6(透孔5)内に、パテ状のエポキシ樹脂7を充填し、しかる後、外壁1の表面に構造用合板8を重ね合わせて、該合板8の外側から釘9を当て、その先端を前記エポキシ樹脂7を通じて前記柱2に打ち込んで柱2に止着し、エポキシ樹脂を硬化させることによって得たものである。
【0014】
本発明を適用できる外壁としては、モルタル化粧の他に、サイディング(モルタル層に代る)を化粧材として用いたものが考えられるが、その他の場合でも不都合はなく、スペーサは未硬化状態のものを支持筒(又は透孔)に充填して硬化させて構成する場合と、固体状のもの(釘9挿通用の挿通孔を設けたものと設けないものがあり、後者の場合は釘を打ち込んでも割裂しないものを選択すべきであるが)がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】一部欠截正面図。
【図2】一部欠截斜視図。
【図3】断面図。
【符号の説明】
【0016】
1 外壁
2 柱
5 透孔
7 エポキシ樹脂
8 構造用合板
9 釘
11 スペーサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外壁の表面の適所に設けた透孔にエポキシ樹脂や無収縮モルタルで成るスペーサを装置し、前記外壁の表面に重ね合わせた構造用合板を、前記スペーサを通じた釘で柱に止着した、既設木造建物の外壁の補強装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−264051(P2009−264051A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−117144(P2008−117144)
【出願日】平成20年4月28日(2008.4.28)
【出願人】(597170368)アサヒボンド工業株式会社 (4)
【出願人】(508082773)株式会社MG耐震技術研究所 (3)
【出願人】(591027499)株式会社カネシン (49)
【出願人】(508083987)株式会社田中組 (3)
【出願人】(598072180)ファイベックス株式会社 (24)
【出願人】(592067395)日本化成株式会社 (11)
【Fターム(参考)】