説明

既設杭の撤去方法

【課題】振動や騒音が少なく、地盤中に埋設されている円柱状の既設コンクリート杭を容易に撤去できる既設杭の撤去方法を提供する。
【解決手段】ケリーバー9と、ケリーバー9に回転力と押込み力を与えるケリーバー駆動装置とを備えた掘削機を使用した既設杭の撤去方法であって、既設コンクリート杭14を、ケリーバー9の下端部に連結した回転掘削装置によって、鉄筋15が埋設されている外周部を残してその内部を所要深さ掘削し、掘削屑を地上へ排出した後、残った円筒状コンクリート杭14aの下端部を、回転掘削装置に代えてケリーバーの下端部に連結した切断装置20によって切断し、この切断した円筒状コンクリート杭14aの上端部を掴み引上げ装置により掴んで、地上に引き上げ、以降は上記の行程を繰り返し行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、都市部の再開発や橋の架け替えなどの工事等において、旧建造物を解体してその跡地に新たな建造物を築造するような場合に、地中に埋設されている円柱状の既設コンクリート杭を撤去する方法に関し、特に、ケリーバーと、ケリーバーに回転力と押込み力を与えるケリーバー駆動装置とを備えた掘削機を使用した既設杭の撤去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
既設杭の撤去手段として、一般的には、既設杭を囲繞するようにケーシングを建て込んで周囲の地盤を保護した上で、クレーンに吊持したチゼル(重鎮)をケーシングの内側に落下させて既設杭を上端部側から破砕し、その破砕物をハンマーグラブによって地上へ引き上げる操作を繰り返す方法が行われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記のような撤去手段では、チゼル落下時の衝撃に伴って発生する大きな振動や騒音が問題になると共に、チゼルとハンマーグラブを頻繁に交換する必要があって作業能率が悪い上に、既設杭の内部に埋設されている鉄筋がチゼルやハンマーグラブに絡まって引き上げが困難になることもあった。
【0004】
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたもので、振動や騒音が少なく、地盤中に埋設されている円柱状の既設コンクリート杭を容易に撤去することができる既設杭の撤去方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための手段を、後述する実施形態の参照符号を付して説明すると、請求項1は、ケリーバー9と、ケリーバー9に回転力と押込み力を与えるケリーバー駆動装置10とを備えた掘削機1を使用した既設杭の撤去方法であって、円柱状の既設コンクリート杭14を、ケリーバー9の下端部に連結した回転掘削装置19によって、鉄筋15が埋設されている外周部を残してその内部を所要深さ掘削し、その掘削屑を地上へ排出した後、残った円筒状コンクリート杭14aの下端部を、回転掘削装置19に代えてケリーバーの下端部に連結した切断装置20によって切断し、この切断した円筒状コンクリート杭14aの上端部を前記巻上ワイヤー7で吊持される掴み引上げ装置28により掴んで、地上に引き上げ、以降は上記の行程を繰り返し行うことを特徴とする。
【0006】
請求項2は、請求項1に記載の既設杭の撤去方法において、回転掘削装置19によって円柱状既設コンクリート杭14の内部を掘削する前に、この杭14を囲繞するように周囲地盤崩壊防止用ケーシング16を地盤G中に貫入することを特徴とする。
【0007】
請求項3は、請求項1又は2に記載の既設杭の撤去方法において、回転掘削装置19は、ケリーバー9の下端部9aに連結可能な連結部19oを上端部に有するオーガスクリューからなることを特徴とする。
【0008】
請求項4は、請求項1又は2に記載の既設杭の撤去方法において、回転掘削装置19は、ケリーバー9の下端部9aに連結可能な連結部50oを上端部に有し且つ下端部に切削ビット51を装着したコアチューブ50からなることを特徴とする。
【0009】
請求項5は、請求項1〜4の何れかに記載の既設杭の撤去方法において、切断装置20は、基筒部21と、基筒部21の上端部に上下動自在で回転自在に同心状に連結されていて、ケリーバー9の下端部が着脱自在に連結されるケリーバー連結部22と、基筒部21内に退避する退避位置と基筒部21の側壁部21aに設けた窓26から半径方向外向きに進出する進出位置との間で進退自在に設けられた複数の切削ビット23と、基筒部21内に設けられたメインシリンダ24及び複数のビット駆動シリンダ25と、基筒部21の下端部に回転自在に設けた反力受け43とを備え、メインシリンダ24のピストンロッド241をケリーバー連結部22に連動連結し、各ビット駆動シリンダ25のピストンロッド251を切削ビット23に連動連結し、メインシリンダ24のピストン側室24aと各ビット駆動シリンダ25のピストン側室25aとを連通連結すると共に、メインシリンダ24のロッド側室24bと各ビット駆動シリンダ25のロッド側室25bとを連通連結してなるもので、ケリーバー駆動装置10によるケリーバー9の押込み動作によりメインシリンダ24を往動して各ビット駆動シリンダ25を往動し、それにより各切削ビット23を退避位置から進出位置へ進出させつつ円筒状コンクリート杭14aの内周面に突き刺しながら、ケリーバー9を回転駆動して各切削ビット23を旋回させることにより、円筒状コンクリート杭14aを切断し、またケリーバー9を引き上げてメインシリンダ24を復動させることにより、各ビット駆動シリンダ25を復動させて各切削ビット23を退避位置に退入させるようにしたことを特徴とする。
【0010】
請求項6は、請求項2〜5の何れかに記載の既設杭の撤去方法において、周囲地盤崩壊防止用ケーシング16は、下端部に切削ビット17を備えていることを特徴とする。
【0011】
請求項7は、請求項1〜6の何れかに記載の既設杭の撤去方法において、掴み引上げ装置28はハンマーグラブからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
上記解決手段による発明の効果を、後述する実施形態の参照符号を付して説明すると、請求項1に係る発明の方法、円柱状の既設コンクリート杭14を、ケリーバー9の下端部に連結した回転掘削装置19により、鉄筋15が埋設されている外周部を残してその内部を所要深さ掘削し、その掘削屑を地上へ排出した後、残った円筒状コンクリート杭14aの下端部を、回転掘削装置19に代えてケリーバーの下端部に連結した切断装置20によって切断し、この切断した円筒状コンクリート杭14aの上端部を掴み引上げ装置28により掴んで地上に引き上げ、以降は上記の行程を繰り返し行うようにするから、撤去作業中に振動や騒音が少なく、地盤中に埋設されている既設コンクリート杭14を容易且つ確実に撤去することができる。また、この発明による既設杭の撤去方法は、ケリーバー9と、ケリーバー9に回転力と押込み力を与えるケリーバー駆動装置10とを備えた掘削機1を使用する方法で、回転掘削装置19及び切断装置20の駆動をそれぞれケリーバー9によって行わせるようにするから、特別な駆動装置及び油圧配管等の複雑な設備が不要となり、設備費用及び作業コストの低減を図ることができる。
【0013】
請求項2に係る発明によれば、回転掘削装置19によって円柱状既設コンクリート杭14の内部を掘削する前に、杭14を囲繞するように周囲地盤崩壊防止用ケーシング16を地盤G中に貫入するから、周囲地盤の崩壊を未然に防ぎ、作業の安全性と適正化を期することができる。
【0014】
請求項3に係る発明のように、回転掘削装置19としてオーガスクリューを使用することにより、円柱状既設コンクリート杭14の掘削作業(中抜き作業)を行いながら、掘削屑の排出を行うことができ、作業能率を向上できる。
【0015】
請求項4に係る発明のように、回転掘削装置としてコアチューブ50を使用すれば、コアチューブ50を回転して先端部の切削ビット51で円柱状コンクリート杭14を穿孔しながらコアチューブ50内にコンクリート14oを取り入れた後、ケリーバー9を介してコアチューブ50を引き抜くことにより、内部のコンクリート14oを取り出して地上へ排出できるから、円柱状既設コンクリート杭14の掘削作業(中抜き作業)を一層効率良く行うことができる。
【0016】
請求項5に記載の切断装置20を使用すれば、掘削機1の設置される地上から基筒部21までの大掛かりな油圧配管設備が不要となり、基筒部21内のメインシリンダ24と各ビット駆動シリンダ25とを連通連結する最小限の配管設備で済むから、設備が簡単となり、設備費用及び作業コストが一層低減される。また、切断装置20は、基筒部21と、ケリーバー9の下端部が着脱自在に連結されるケリーバー連結部22と、基筒部21内から進退自在の複数の切削ビット23と、基筒部21内に設けられたメインシリンダ24及び複数のビット駆動シリンダ25とで構成されるから、構造が簡単でコンパクトになり、また各切削ビット23を退避位置から進出位置へ進出させつつ円筒状コンクリート杭14aの内周面に突き刺しながら、ケリーバー9を回転駆動して各切削ビット23を旋回させることによって切断するから、鉄筋15を含む円筒状コンクリート杭14aを有効に切断することができる。また、メインシリンダ24及び各ビット駆動シリンダ25が夫々複動シリンダであるから、特に各ビット駆動シリンダ25を退避位置と進出位置との間で確実に往復作動させることができる。
【0017】
請求項6に記載のように、周囲地盤崩壊防止用ケーシング16の下端部に切削ビット17を設けて、回転させながら地盤G中に貫入するようにすれば、このケーシング16の貫入が容易となる。
【0018】
請求項7に記載のように、掴み引上げ装置28がハンマーグラブの場合には、掘削機1の頂部から垂下される巻上げワイヤーを使用してハンマーグラブを操作できるため、作業を簡単容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明方法に使用する掘削機を示す側面図である。
【図2】(a) は地中に埋設されている既設杭の縦断面図、(b) は(a) のA−A線断面図である。
【図3】(a) は周囲地盤崩壊防止用ケーシングを地盤中に貫入した状態の縦断面図、(b) は(a) のB−B線断面図である。
【図4】(a) は既設杭の鉄筋が埋設されている外周部を残してその内部をオーガスクリューによって掘削している状態を示す、(b) は(a) のC−C線断面図である。
【図5】残った円筒状コンクリート杭の下端部を切断装置によって切断する時の状態を示す縦断面図で、(a) は切削ビットが退避位置にある状態を示し、(b) は切削ビットが退避位置から進出位置へ進出した状態を示す。
【図6】(a) は切断装置の切削ビットが進出位置から退避位置へ戻った状態の縦断面図、(b) は切断装置を引き上げた後の状態の既設杭の縦断面図である。
【図7】最初に切断した円筒状コンクリート杭の上端部をハンマーグラブにより掴んで地上に引き上げようとする状態を示す一部縦断面図である。
【図8】最初に切断した円筒状コンクリート杭の引上げを終えた後の状態を示す縦断面図である。
【図9】(a) は切断装置を示す正面図、(b) は平面図である。
【図10】(a) は切断装置の縦断面図で、切削ビットが退避している状態を示す縦断面図、(b) は(a) のD−D線断面図である。
【図11】(a) は切削ビットが進出位置に突出した状態の切断装置の縦断面図であり、(b) は(a) のE−E線断面図である。
【図12】切断装置のメインシリンダ及びビット駆動シリンダの油圧回路を示すもので、(a) は切削ビットが退避位置から進出位置へ進出する時の状態を示し、(b) は切削ビットが進出位置から退避位置へ退入する時の状態を示す。
【図13】(a) は回転掘削装置として使用されるコアチューブの使用状態を示す一部断面側面図、(b) はコアチューブの平面図、(c) はコアチューブの底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明の好適な一実施形態を図面に基づいて説明すると、図1は本発明の既設杭撤去方法に使用する掘削機1を示している。この掘削機1は、クローラ走行体2に旋回体3を搭載し、旋回体3にはリーダ4を立設し、リーダ4と旋回体3との間にはリーダ傾斜装置5を介装し、リーダ4の頂部からは、図示しない巻上ウインチによって繰り出される巻上ワイヤー6を、シーブ7を通して垂下し、この巻上ワイヤー6によってケリーバー9をスイベルジョイント8を介して吊持している。なお、図1には示していないが、この掘削機1は、巻上ワイヤー6の他にも、補巻きウインチによって繰り出される補巻上ワイヤーを有している。
【0021】
そして、リーダ4には昇降基台10が昇降自在に取り付けられ、この昇降基台10は、図1に示すようにリーダ4に装備されたクラウドシリンダ11により、リーダ4に沿って昇降駆動されるようになっている。また昇降基台10には、図示しないチャック手段を介してケリーバー9に回転力を与える回転駆動装置12が装備されている。従って、これらの昇降基台10とクラウドシリンダ11と回転駆動装置12と図示しないチャック手段とによってケリーバー駆動装置13を構成し、このケリーバー駆動装置13によってケリーバー9に回転力を与え、またケリーバー9に押込み力を与えるようになっている。なお、図1には、ケリーバー9の下端部に、後述する回転掘削装置としてのオーガスクリュー19を連結した状態を示す。
【0022】
次に、上記掘削機1を使用した、この発明方法の実施形態について説明すると、図2の(a) ,(b) に示すように、地盤G中に埋設された場所打ち杭である円柱状の既設コンクリート杭14には、その外周部に補強用の鉄筋15が埋設されている。
【0023】
この既設コンクリート杭14を撤去するにあたって、先ず、図3の(a) に示すように、円柱状既設コンクリート杭14の外周を囲繞するように周囲地盤崩壊防止用のケーシング16を地盤G中に貫入する。周囲地盤崩壊防止用ケーシング16は、図示のように、全周回転圧入装置18により回転圧入されて地盤G中に貫入される。このケーシング16は、下端部に切削ビット17を備えているから、回転圧入装置18による回転貫入作業が容易となる。なお、このケーシング16は、既設コンクリート杭14の撤去作業が終われば、回転圧入装置18によって地上へ引き上げるようになっている。
【0024】
全周回転圧入装置18は、図3の(a) に概略示すように、ベースフレームaの四隅に設けた昇降シリンダbに連結された昇降フレームcを備え、この昇降フレームcには、前記ケーシング16が挿通されるテーパ孔(図示省略)を有する回転フレーム(図示省略)が回転可能に支持されていて、昇降フレームcに連結されたチャックシリンダ(図示省略)によりケーシング16とテーパ孔との間に楔部材を挿入して、回転フレームとケーシング16とを締結するするようになっている。従って、ケーシング16の貫入時には、ケーシング16を回転フレームに把持した状態で回転フレームをモータ(図示省略)によって回転駆動すると共に、昇降シリンダbを下降させることにより、ケーシング16を回転させながら地盤G中に押し込んでゆく。
【0025】
上記のように円柱状既設コンクリート杭14の外周に周囲地盤崩壊防止用のケーシング16を貫入した後、図4の(a) に示すように、回転掘削装置としてのオーガスクリュー19によって、円柱状既設コンクリート杭14の鉄筋15が埋設されている外周部14aを残してその内側を所要深さにわたって掘削する、つまり円柱状既設コンクリート杭14の中抜きを行う。このオーガスクリュー19は、回転軸19aの先端部側に杭14の直径より小さい所定の直径を有するスクリュー19bを設けると共に、スクリュー19bの先端部に複数のビット19cを突設してなるもので、図1及び図4の(a) に示すように、回転軸19aの上端連結部19oをケリーバー9の下端部9aに連結し、ケリーバー駆動装置13における回転駆動装置12の回転駆動によるケリーバー9の回転により回転軸19aを回転させて、先端のビット19cにより円柱状コンクリート杭14をその外周部14aを残して掘削する(中抜きする)ようになっている。
【0026】
オーガスクリュー19によって掘削された円柱状コンクリート杭14の掘削屑は、スクリュー19bを適宜引き上げることによって地上に排出させることができる。このように回転掘削装置としてのオーガスクリュー19を使用すれば、円柱状コンクリート杭14を掘削しながら、その掘削屑を排出することができ、作業能率を向上できる。なお、掘削屑は、掘削終了後にオーガスクリュー19を引き抜いた後、ハンマーグラブ等により排出させるようにしてもよい。
【0027】
上記のようにコンクリート杭14の掘削屑を地上へ排出した後、オーガスクリュー19を地上へ引き上げて、回転軸19aの上端連結部19oをケリーバー9の下端部9aから取り外し、このオーガスクリュー19に代えて、切断装置20のケリーバー連結部22をケリーバー9の下端部9aに連結する。この状態から、切断装置20を、図5の(a) に示すように中抜きした円筒状コンクリート杭14a内に挿入して、その底面14aoに接地させ、しかして図5の(a) に示す基筒部21内の退避位置にある切削ビット23を図5の(b) に示す進出位置へと進出させながら、回転駆動装置12(図1参照)によるケリーバー9の回転駆動によって各切削ビット23を旋回することにより、円筒状コンクリート杭14aの下端部を切断する。この切断部を図6の(a) ,(b) に27で示す。切断装置20の構造及びその作用については、後に詳しく説明する。
【0028】
円筒状コンクリート杭14aの下端部を切断したならば、切削ビット23を図6の(a) に示すように基筒部21内の退避位置に退入させた後、切断装置20をケリーバー9を介して地上に引き上げる。それから図7に示すように、切断した円筒状コンクリート杭14aの上端部を、前記巻上ワイヤー7とは別の補巻上ワイヤー48によりリーダ4の頂部から吊持されるハンマーグラブ28(掴み引上げ装置)により掴んで、そのまま地上に引き上げる。このハンマーグラブ28は、周知構造のもので、複数のシェル49を適宜に開閉操作することによって、切断した円筒状コンクリート杭14aの上端部を掴持することができる。このように掴み引上げ装置としてハンマーグラブ28を使用すれば、リーダ4の頂部から垂下される巻上げワイヤーを使用してハンマーグラブを操作できるため、掴み引上げ作業を簡単容易に行うことができる。
【0029】
こうして切断した円筒状コンクリート杭14aを地上に引き上げたならば、図8に示すように地盤G中に残存する、未だ中抜きされていない円柱状既設コンクリート杭14部分を、図4〜図7によって説明したような行程と同じ行程をもう一回、あるいは複数回繰り返し行うことによって、地盤G中から既設コンクリート杭14の全体を撤去する。
【0030】
上記切断装置20について図9〜図12を参照しながら説明すると、この切断装置20は、図9〜図11に示すように、樽形の基筒部21と、この樽形基筒部21の上端部に、一定ストローク上下動自在で且つ一体回転可能に連結されていて、ケリーバー9の下端部に着脱自在に連結されるケリーバー連結部22と、基筒部21内に退避する退避位置と基筒部21の側壁部21aに設けた窓26から半径方向外向きに進出する進出位置との間で進退自在に設けられた2つの切削ビット23,23と、基筒部21内に設けられたメインシリンダ24及び2つのビット駆動シリンダ25,25と、基筒部21の下端部に回転自在に設けられた反力受け43と、からなるもので、メインシリンダ24のピストンロッド241をケリーバー連結部22に連動連結し、各ビット駆動シリンダ25のピストンロッド251を切削ビット23に連動連結し、そして図12から分かるように、メインシリンダ24のピストン側室24aと各ビット駆動シリンダ25のピストン側室25aとを、油路29を介して連通連結すると共に、メインシリンダ24のロッド側室24bと各ビット駆動シリンダ25のロッド側室25bとを油路30を介して連通連結し、しかしてケリーバー駆動装置10によるケリーバー9の押込み動作によりメインシリンダ24を往動して各ビット駆動シリンダ25を往動し、それにより各切削ビット23を退避位置から進出位置へ進出させつつ円筒状コンクリート杭14aの内周面に突き刺しながら、ケリーバー9を回転駆動して各切削ビット23を旋回させることにより、円筒状コンクリート杭14aを切断し、またケリーバー9を引き上げてメインシリンダ24を復動させることによって、各ビット駆動シリンダ25を復動させて各切削ビット23を退避位置に退入させるようになっている。なお、切断にあたっては、基筒部21の下端部に設けられた反力受け43を円筒状コンクリート杭14aの底面14aoに接地させる。図12において、242はメインシリンダ24のピストンを示し、252は各ビット駆動シリンダ25のピストンを示す。
【0031】
この切断装置20について更に説明すれば、ケリーバー連結部22は、基筒部21の上端側に同軸状に固定された筒状軸受部材31に上下動自在で回転自在に嵌挿される本体軸部32と、この本体軸部32の上端部に同軸状に連設された径大の基台部33と、この基台部33の上端に同軸状に突設され、ケリーバー9の下端部9aを嵌合させる角筒状嵌合部34と、前記本体軸部32の下端部に設けられた本体軸部抜け止めストッパー35と、ケリーバー連結部22と基筒部21とを一体回転可能に連結するために本体軸部32の外周面にその軸方向に設けられたキー36及びこのキー36が軸方向にスライド自在に嵌合するように筒状軸受部材31の内周面に設けられたキー溝37とから構成される。基台部33の上側段部33aと筒状軸受部材31の上端部との間には圧縮コイルバネ38が介装され、この圧縮コイルバネ38の付勢力によって、本体軸部32は、図10に示すように、その上端部側が筒状軸受部材31の上端から常時所要長さ突出し、それによって各切削ビット23が常時は基筒部21内の退避位置に退入した状態となる。このように切削ビット23が常時は基筒部21内の退避位置に退入するようにしておけば、切断装置20を単独で持ち運びするような時に切削ビット23でケガをするようなことがなく安全である。なお、図9の(a) ,(b) には切削ビット23を仮想線で示しているが、これは、ケリーバー連結部22を図示の状態から圧縮コイルバネ38の付勢力に抗して押し下げた時に、切削ビット23が退避位置から基筒部21の外へ突出した状態となることを示したものである。またこの圧縮コイルバネ38は、ケリーバー9を引き上げてメインシリンダ24を復動させる時のピストン242の押し上げ作用を助ける機能も有する。また、前記ストッパー35の下部には枢着用ブラケット39が取り付けられ、このブラケット39にメインシリンダ24のピストンロッド241がピン40により枢着され、このメインシリンダ24は、基筒部21内の下部に直径方向に横設された角筒状支持部材41上に設置されている。
【0032】
また、図9〜図11に示すように、一対の切削ビット23,23は、角筒状支持部材41内にスライド自在に夫々嵌挿されていて、連結部材42,42を介してピストンロッド251,251に連動連結されたビット駆動シリンダ25,25により、角筒状支持部材41の両端側の窓26,26から夫々外向きに進出する進出位置と、基筒部21内に夫々退入する退避位置との間で進退駆動されるようになっている。また、基筒部21の下端部に設けられた反力受け43は、基筒部21の下面側に垂直に固定された固定軸部44と、この固定軸部44にスラスト及びラジアル軸受45を介して回転自在に支持された筒状回転部材46と、この筒状回転部材46の下端面に固着された接地部材47とからなるもので、切断装置20の使用時には、図5の(a) ,(b) に示すように、接地部材47を、掘削された円筒状コンクリート杭14aの底面14aoに接地させることによって、基筒部21の反力を受けるようにしている。
【0033】
上記のように構成される切断装置20によって円筒状コンクリート杭14aを切断する時は、巻上ワイヤー6で吊持されたケリーバー9の下端部9aにケリーバー連結部23の角筒状嵌合部34を嵌合して、ボルト又はピンにより固定し、ケリーバー9を介して切断装置20を図5の(a) に示すように円筒状コンクリート杭14a内の下部まで下降させ、反力受け43の接地部材47を円筒状コンクリート杭14a内の底面14aoに接地させた後、図1に示す押込み装置13によって、基筒部21内の退避位置にある各切削ビット23を図5の(b) に示すように進出位置へ進出させつつ円筒状コンクリート杭14aの内周面下端部に突き刺しながら、ケリーバー駆動装置10の回転駆動装置12によりケリーバー9を回転駆動して、基筒部21と共に各切削ビット23を旋回させることにより、円筒状コンクリート杭14aを切断する。その切断後は、ケリーバー9を引き上げて、メインシリンダ24を復動させることにより、各ビット駆動シリンダ25を復動させて、各切削ビット23を図6の(a) に示すように進出位置から基筒部21内の退避位置に退入させる。
【0034】
上記切断装置20におけるメインシリンダ24及びビット駆動シリンダ25の作動並びにこれらのシリンダ24,25による切削ビット23の進退動作を図12の油圧回路によって説明すると、先ず、ケリーバー駆動装置10によってケリーバー9を下方へ押し込むと、切断装置20のケリーバー連結部22が図10に示す通常位置から図11に示す位置へ押し下げられ、これによりメインシリンダ24のピストンロッド241が図10の位置から図11の位置へ下動してピストン242を押し下げ、これによってそのピストン側室24aの油が図12の(a) に示すように油路29を通じて各ビット駆動シリンダ25のピストン側室25aに供給されるから、各ピストンロッド251に連結された切削ビット23が図5の(a) 及び図10の(a) ,(b) に示す退避位置から進出を開始して、円筒状コンクリート杭14aの内周面下端部に突き刺さる。
【0035】
上記のように各切削ビット23が退避位置から進出位置への進出を開始すると同時に、ケリーバー駆動装置13の回転駆動装置12によりケリーバー9が回転を開始して、各切削ビット23が旋回することにより、円筒状コンクリート杭14aの切断が開始され、そして各切削ビット23が図5の(b) 及び図11の(a) ,(b) に示すような進出位置に至るころには円筒状コンクリート杭14aの切断が終了する。こうして各切削ビット23による切断が終了すると、回転駆動装置12によるケリーバー9の回転を停止させた後、巻上ワイヤー7でケリーバー9を引き上げることにより、切断装置20のケリーバー連結部22が図11に示す位置から図10に示す通常位置へ引き上げられ、これによりメインシリンダ24のピストンロッド241が図11の位置から図10の位置へ上動して、ピストン242を引き上げ、これによってそのロッド側室24bの油が図12の(b) に示すように油路30を通じ各ビット駆動シリンダ25のロッド側室25bに供給されるから、各ピストンロッド251に連結された切削ビット23が進出位置から退避位置へと退入する。
【0036】
以上説明したような掘削機1の使用による既設杭の撤去方法によれば、円柱状の既設コンクリート杭14を、ケリーバー9の下端部に連結した回転掘削装置19によって、鉄筋15が埋設されている外周部を残してその内部を所要深さ掘削し、その掘削屑を地上へ排出した後、残った円筒状コンクリート杭14aの下端部を、回転掘削装置19に代えてケリーバーの下端部に連結した切断装置20によって切断し、この切断した円筒状コンクリート杭14aの上端部を掴み引上げ装置28により掴んで地上に引き上げ、以降は上記の行程を繰り返し行うようにするから、撤去作業中に振動や騒音が少なく、地盤中に埋設されている既設コンクリート杭14を容易且つ確実に撤去することができる。また、この撤去方法は、ケリーバー9と、ケリーバー9に回転力と押込み力を与えるケリーバー駆動装置10とを備えた掘削機1を使用する方法で、回転掘削装置19及び切断装置20の駆動をそれぞれケリーバー9によって行わせるようにするから、特別な駆動装置及び油圧配管等の複雑な設備が不要となり、設備費用及び作業コストの低減が図られる。
【0037】
また、図9〜図12によって説明したような切断装置20を使用すれば、掘削機1の設置される地上から基筒部21までの大掛かりな油圧配管設備が不要となり、基筒部21内のメインシリンダ24と各ビット駆動シリンダ25とを連通連結する最小限の配管設備で済むから、設備が簡単となり、設備費用及び作業コストが一層低減される。また、この切断装置20は、基筒部21と、ケリーバー9の下端部が着脱自在に連結されるケリーバー連結部22と、基筒部21内から進退自在の複数の切削ビット23と、基筒部21内に設けられたメインシリンダ24及び複数のビット駆動シリンダ25とで構成されるから、構造が簡単でコンパクトになり、また各切削ビット23を退避位置から進出位置へ進出させつつ円筒状コンクリート杭14aの内周面に突き刺しながら、ケリーバー9を回転駆動して各切削ビット23を旋回させることによって切断するから、鉄筋15を含む円筒状コンクリート杭14aを有効に切断することができる。
【0038】
また、上記切断装置20において、メインシリンダ24及び各ビット駆動シリンダ25として夫々複動シリンダを使用して、メインシリンダ24のピストンロッド241をケリーバー連結部22に連動連結し、各ビット駆動シリンダ25のピストンロッド251を切削ビット23に連動連結し、メインシリンダ24のピストン側室24aと各ビット駆動シリンダ25のピストン側室25aとを連通連結すると共に、メインシリンダ24のロッド側室24bと各ビット駆動シリンダ25のロッド側室25bとを連通連結したことによって、切断終了後に各ビット駆動シリンダ25を退避位置と進出位置との間で確実に往復作動させることができる。
【0039】
図13は、上述の既設杭撤去方法において回転切削装置19としてコアチューブ50を使用する場合を示し、(a) はその使用状態の側面図、(b) はコアチューブ50の平面図、(c) は底面図である。即ち、先に説明した実施形態では、回転切削装置19として図4の(a) に示すようなオーガスクリュー19を使用したが、これに代えてコアチューブ50を使用することができる。このコアチューブ50は、同図(a) に示すように上端側が閉塞した円筒状体からなるもので、上端閉塞壁50aの中央部にはケリーバー9の下端部に連結可能な連結部50oが突設され、そして下端部に切削ビット51が装着されている。同図(a) ,(b) において、52は上端閉塞壁50aに設けられた空気抜き孔である。
【0040】
上記コアチューブ50によって円柱状既設コンクリート杭14の中抜きを行う時には、上端部の連結部50oをケリーバー9の下端部に連結した後、図1に示すケリーバー駆動装置13における回転駆動装置12の駆動によるケリーバー9の回転によりコアチューブ50を回転させて、図13の(a) に示すように、円柱状のコンクリート杭14を、先端部の切削ビット51により鉄筋15の埋設された外周部14aが残るように穿孔しながら、コアチューブ50内にコンクリート14oを取り入れてゆき、所定深さまで穿孔した後、回転駆動装置12による回転駆動を停止し、図1に示すクラウドシリンダ11により昇降基台10を上昇駆動してケリーバー9を介してコアチューブ50を引き抜くことにより、コアチューブ50内に詰まったコンクリート14oを取り出して地上へ排出し、中抜きを行う。このような操作を繰り返し行うことによって、円柱状の既設コンクリート杭14を所要深さまで中抜きすることができる。
【0041】
上記のように回転掘削装置としてコアチューブ50を使用すれば、コアチューブ50を回転して先端部の切削ビット51で円柱状コンクリート杭14を穿孔しながらコアチューブ50内にコンクリート14oを取り入れた後、ケリーバー9を介してコアチューブ50を引き抜くことにより、内部のコンクリート14oを取り出して地上へ排出できるから、円柱状既設コンクリート杭14の掘削作業(中抜き作業)を一層効率良く行うことができる。
【符号の説明】
【0042】
1 掘削機
4 リーダ
6 巻上ワイヤー
9 ケリーバー
10 昇降基台
11 クラウドシリンダ
12 回転駆動装置
13 ケリーバー駆動装置
14 既設コンクリート杭
14a 掘削された(中抜きされた)円筒状コンクリート杭
14ao 円筒状コンクリート杭の底面
16 周囲地盤崩壊防止用ケーシング
19 回転掘削装置
20 切断装置
21 基筒部
22 ケリーバー連結部
23 切削ビット
24 メインシリンダ
25 ビット駆動シリンダ
28 掴み引上げ装置
43 反力受け
50 コアチューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケリーバーと、ケリーバーに回転力と押込み力を与えるケリーバー駆動装置とを備えた掘削機を使用した既設杭の撤去方法であって、円柱状の既設コンクリート杭を、ケリーバーの下端部に連結した回転掘削装置によって、鉄筋が埋設されている外周部を残してその内部を所要深さ掘削し、その掘削屑を地上へ排出した後、残った円筒状コンクリート杭の下端部を、回転掘削装置に代えてケリーバーの下端部に連結した切断装置によって切断し、この切断した円筒状コンクリート杭の上端部を掴み引上げ装置により掴んで、地上に引き上げ、以降は上記行程を繰り返し行うことを特徴とする既設杭の撤去方法。
【請求項2】
回転掘削装置によって円柱状既設コンクリート杭の内部を掘削する前に、この杭を囲繞するように周囲地盤崩壊防止用ケーシングを地盤中に貫入することを特徴とする請求項1に記載の既設杭の撤去方法。
【請求項3】
回転掘削装置は、ケリーバーの下端部に連結可能な連結部を上端部に有するオーガスクリューからなることを特徴とする請求項1又は2に記載の既設杭の撤去方法。
【請求項4】
回転掘削装置は、ケリーバーの下端部に連結可能な連結部を上端部に有し且つ下端部に切削ビットを装着したコアチューブからなることを特徴とする請求項1又は2に記載の既設杭の撤去方法。
【請求項5】
切断装置は、基筒部と、基筒部の上端部に上下動自在で一体回転可能に連結されていて、ケリーバーの下端部に着脱自在に連結されるケリーバー連結部と、基筒部内に退避する退避位置と基筒部の側壁部に設けた窓から半径方向外向きに進出する進出位置との間で進退自在に設けられた複数の切削ビットと、基筒部内に設けられたメインシリンダ及び複数のビット駆動シリンダと、基筒部の下端部に回転自在に設けた反力受けとを備え、メインシリンダのピストンロッドをケリーバー連結部に連動連結し、各ビット駆動シリンダのピストンロッドを切削ビットに連動連結し、メインシリンダのピストン側室と各ビット駆動シリンダのピストン側室とを連通連結すると共に、メインシリンダのロッド側室と各ビット駆動シリンダのロッド側室とを連通連結してなるもので、ケリーバー駆動装置によるケリーバーの押込み動作によりメインシリンダを往動して各ビット駆動シリンダを往動し、それにより各切削ビットを退避位置から進出位置へ進出させつつ円筒状コンクリート杭の内周面に突き刺しながら、ケリーバーを回転駆動して各切削ビットを旋回させることにより、円筒状コンクリート杭を切断し、またケリーバーを引き上げてメインシリンダを復動させることにより、各ビット駆動シリンダを復動させて各切削ビットを退避位置に退入させるようにした請求項1〜4の何れかに記載の既設杭の撤去方法。
【請求項6】
周囲地盤崩壊防止用ケーシングは、下端部に切削ビットを備えていることを特徴とする請求項2〜5の何れかに記載の既設杭の撤去方法。
【請求項7】
掴み引上げ装置はハンマーグラブからなることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の既設杭の撤去方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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