説明

既設構造物の下部地盤の液状化抑制工法

【課題】 既設構造物に悪影響を与えることなく、且つドレーン材と地盤との間に間隙を生じさせず、ドレーン材を軟弱な地盤に敷設することが可能な地盤の液状化抑制工法を提供する。
【解決手段】 既設構造物11の下部地盤10を横断する掘削孔を形成する工程と、掘削孔内で圧力流体を噴出して拡大掘削しながら鞘管22の無孔区間を引き込む工程と、無孔区間の後端に接続された鞘管21の有孔区間をその管内に挿設されたドレーン管21と共に掘削孔内に引き込む工程と、さらに有孔区間の後端に接続された鞘管22の無孔区間を掘削孔内に引き込む工程とを含み、鞘管の有孔区間をその管内に挿設されたドレーン管と共に既設構造物のほぼ直下付近に埋設する。鞘管の有孔区間とドレーン管との隙間には、鞘管の無孔区間に連通しないようにパッキング23が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震時に既設構造物の下部地盤に生じる液状化を抑制する工法に関する。
【背景技術】
【0002】
砂地盤等の軟弱な地盤は、地震時に液状化を起こすおそれがあり、このような軟弱地盤に石油タンク等の既設構造物が建っている場合には、その直下地盤にドレーン管等の排水材を設けることにより、この地盤の液状化を抑制する方法が提案されている。
【0003】
このような液状化抑制工法として、例えば、特開2000−290989号公報(特許文献1)には、先端に削孔装置が設けられたケーシング管により既設構造物の直下地盤に曲線状埋設孔を設け、このケーシング管内にドレーン材を敷設した後に、ケーシング全長を地上に引き抜いて、ドレーン材と地盤との間に生じた間隙を透水性充填材で埋める方法が提案されている。
しかしながら、ケーシングの引き抜きにより、ドレーン材と地盤との間に生じてしまった間隙を、透水性充填材で埋めることは、それほど容易なことではない。
【特許文献1】特開2000−290989号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、地盤や既設構造物に悪影響を与えることなく、且つドレーン材と地盤との間に間隙を生じさせず、ドレーン材を軟弱な地盤に敷設することが可能な既設構造物の下部地盤の液状化抑制工法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明では、既設構造物の下部地盤にドレーン管を設け、地震時に生じる過剰間隙水圧をドレーン管に伝えることにより、下部地盤の地震時の液状化を抑制する工法において、既設構造物の下部地盤を横断する掘削孔を形成する工程と、該掘削孔内で圧力流体を噴出して拡大掘削しながら鞘管の無孔区間を引き込む工程と、該無孔区間の後端に接続された鞘管の有孔区間をその管内に挿設されたドレーン管と共に掘削孔内に引き込む工程と、さらに該有孔区間の後端に接続された鞘管の無孔区間を掘削孔内に引き込む工程とを含み、前記鞘管の有孔区間をその管内に挿設されたドレーン管と共に既設構造物のほぼ直下に埋設することを特徴とする地盤の液状化抑制工法が提供される。
【0006】
本発明の地盤の液状化抑制工法では、前記鞘管の有孔区間と前記ドレーン管との隙間が、前記鞘管の無孔区間に連通しないように、前記有孔区間の端部とドレーン管との間にパッキングを設けることが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明の液状化抑制工法では、ドレーン管を鞘管の有孔区間内に挿入し、引張力と摩擦力を鞘管に負担させてドレーン管を掘削孔内に引き込むものであり、これら鞘管とドレーン管を既設構造物のほぼ直下に埋設するものであるため、地盤との間に間隙が発生しないように施工することが可能になり、地盤や既設構造物への悪影響も防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0009】
本発明は、地震時に液状化を起こす虞がある軟弱地盤10において、図1(c)に示したように、既設構造物11のほぼ直下の地盤にドレーン管20と有孔の鞘管21とを敷設し、この有孔の鞘管21の両端には無孔の鞘管22を接続して地表まで延ばし、これにより地震時に生じる過剰間隙水圧をドレーン管20と鞘管21,22を介して地上空間(大気中)に伝達することで、この下部地盤10に生じる液状化を抑制する工法であり、その主要工程として、ガイド管の敷設工程とドレーン管の敷設工程とを備えるものである。
【0010】
[ドレーン管の詳細]
図2は本発明の液状化抑制工法に用いるドレーン管20及び鞘管21,22を示した図である。最初に、これら構成について説明する。
ドレーン管20としては、開口率20%以上の周面を有する金属以外の材料により形成された管体を使用する。このようなドレーン管20としては、例えば、高密度ポリエチレンからなるメッシュ状割繊維で管体20aが形成され、その外周に補強リブ20bが螺旋状に突設されたものがあり、さらに例示すれば、株式会社太陽工業製のマックスドレーンや東拓工業株式会社製のトータクドレンが使用可能である。
なお、以上のようなドレーン管20は、他の金属製ドレーン管と比較して、材料コストが安いという利点がある一方で、管体軸方向への引張力や摩擦力に対する耐力は比較的小さいという弱点がある。
【0011】
[鞘管の詳細]
以上のようなドレーン管20の弱点を補うため、本発明では、ドレーン管20を鞘管21,22の内部に挿設して敷設作業を行うものである。
鞘管21,22としては、引張耐力がある一方でフレキシブルかつ安価なもの、例えば、塩化ビニール管やポリエチレン管等を使用し、特に、鞘管21には複数の孔が形成された有孔管を使用し、一方、鞘管22には孔が全く形成されていない無孔管を使用する。有孔管である鞘管21は充分な引張耐力を確保するために、無孔の鞘管21よりも肉厚の管体を使用する。両鞘管21,22は端部を溶着により連結され、この連結部付近において、ドレーン管20と鞘管21,22との隙間にパッキング23が嵌められる。パッキング23は、鞘管21の孔21aからドレーン管20との隙間に侵入した土砂が鞘管22内にまで浸入しないように防止するためのものである。
【0012】
[ガイド管の敷設工程]
次に、図1(a)(b)は本発明の液状化抑制工法による各工程を示した図である。
図1(a)において、既設構造物11の下方には液状化層10aと支持層10bが存在し、この液状化層10aに対して、慣用の誘導式ボーリング装置(図示せず)により方向制御しながら、既設構造物11の下方をほぼ平行に横断するように液状化層10aを削孔する。この孔はドレーン管20や鞘管21,22の敷設予定経路に設けられるものであり、この孔には直径60mm程度のガイド管24を敷設する。
【0013】
[ドレーン管の敷設工程]
次に、地表に突き出たガイド管24の先端部分を取り外し、ここに拡削リーマー25を取り付け、この拡削リーマー25に自在ジョイント(図示せず)を介して鞘管22の端部を連結する。この鞘管22の連結端部は予め蓋で塞がれている。拡削リーマー24は、前方の砂地盤を緩めて引き込み易くしつつ、必要な孔径のみを拡大掘削することにより、排出土砂の低減を図るものである。
拡削リーマー25や鞘管22の連結作業が終了したら、図1(b)に示したように、ガイド管24により拡削リーマー25を引き込みながら、前記工程により掘削された孔を拡削リーマー25で拡大掘削し、無孔の鞘管22を液状化層10aに引き込む。この鞘管22が液状化層10aに所定長さ引き込まれたら、引き込み作業を一旦停止して、鞘管22の後端に有孔管である鞘管21を接続する。この鞘管21の内部には図2に示したようにドレーン管20が設けられている。これら鞘管22と鞘管21を接続した後に、ガイド管24による引き込み作業を再開する。この引き込み作業時には、液状化層10aの土砂から作用する摩擦力が鞘管21,22により負担され、ドレーン管20にはほとんど作用せず、また鞘管21の複数の孔21aから管内に浸入する土砂はドレーン管20との隙間に留まり、ドレーン管20や鞘管22の内部への侵入は防止される。
さらに、鞘管22と鞘管21を所定長さ引き込んだら、鞘管21の後端に無孔の鞘管22を接続し、ガイド管24による引き込み作業を再開する。拡削リーマー25が既設構造物11の逆側まで到達し、且つ、図1(c)に示したように鞘管21が既設構造物11のほぼ直下の地盤にドレーン管20と共に配置した時点で引き込み作業を終了する。
引き込み作業後に、地上に表出した鞘管22両端の開口22aにメッシュのキャップ等を被せ、地震時に発生する間隙水圧に対して抵抗の無い構造とする。また必要に応じてメッシュキャップの上に砕石を地表上に敷き均し、これにより鞘管22の両端開口を被うことも可能である。
【0014】
以上のように本発明の液状化抑制工法では、鞘管21の有孔区間内にドレーン管20を挿入し、鞘管21,22に引張力と摩擦力を負担させてドレーン管20を掘削孔内に引き込むものであり、ドレーン管20は鞘管21に被覆された状態で既設構造物11のほぼ直下に敷設される。このように鞘管21,22はドレーン管20と共に液状化層10aに埋設されるものであるため、鞘管21,22と地盤との間には間隙が発生せず、この間隙による地盤や既設構造物への悪影響も防止できる。このように構築された補強構造では、地震時に間隙水圧が発生した場合にも、この間隙水圧が鞘管21の孔21aを通ってドレーン管20の内部に流入し、両端に連通する鞘管22の地表付近の開口から排出されるので軟弱地盤10の液状化は抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)〜(c)は本発明の実施形態における各工程を示した図である。
【図2】本発明の実施形態で使用する鞘管及びドレーン管等を示した図である。
【符号の説明】
【0016】
10 軟弱地盤
10a 液状化層
11 既設構造物
20 ドレーン管
21 鞘管(鞘管の有孔区間)
21a 孔
22 鞘管(鞘管の無孔区間)
23 パッキング
24 ガイド管
25 拡削リーマー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設構造物の下部地盤にドレーン管を設け、地震時に生じる過剰間隙水圧をドレーン管に伝えることにより、下部地盤の地震時の液状化を抑制する工法において、
既設構造物の下部地盤を横断する掘削孔を形成する工程と、該掘削孔内で圧力流体を噴出して拡大掘削しながら鞘管の無孔区間を引き込む工程と、該無孔区間の後端に接続された鞘管の有孔区間をその管内に挿設されたドレーン管と共に掘削孔内に引き込む工程と、さらに該有孔区間の後端に接続された鞘管の無孔区間を掘削孔内に引き込む工程とを含み、前記鞘管の有孔区間をその管内に挿設されたドレーン管と共に既設構造物のほぼ直下付近に埋設することを特徴とする地盤の液状化抑制工法。
【請求項2】
前記鞘管の有孔区間と前記ドレーン管との隙間が、前記鞘管の無孔区間に連通しないようにパッキングを設けたことを特徴とする請求項1に記載の地盤の液状化抑制工法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−191984(P2007−191984A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−13711(P2006−13711)
【出願日】平成18年1月23日(2006.1.23)
【出願人】(303057365)株式会社間組 (138)
【Fターム(参考)】