説明

既設管人孔接続部の耐震化工法

【課題】既設管の先端部を除去した部分に構成した既設管の代替先端部分に十分な強度を得ることができ、また作業性のよい既設管人孔接続部の耐震化工法を提供する。
【解決手段】管孔5に嵌合している既設管2の先端部分を、周壁4の外周壁面の近傍で外周壁面を超えない範囲内の位置まで切除し、未硬化の硬化性樹脂を含浸させた可撓性ある筒状ライニング材15内に、鋼管17を縮径状態として挿入する。内部に鋼管17を挿入してある筒状ライニング材を管孔5を通して、その端部を既設管2の先端部に挿入して管孔5内に配置し、筒状ライニング材15に挿入してある鋼管17を拡径させて筒状ライニング材15を円筒状に膨らませ、その端部を既設管2の先端部内周面に圧接させて筒状ライニング材15を硬化させる。筒状ライニング材15の外周と管孔5の内周面との間に弾性変形可能な弾性止水管状部20を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設管が人孔を構成している周壁の管孔に嵌合して接続されている既設管人孔接続部の耐震化を非開削で行う既設管人孔接続部の耐震化工法に関する。
【背景技術】
【0002】
過去に発生した大きな地震において、下水道施設は甚大な被害を被り、市民生活に与えた影響は深刻なものであった。そのなかで既設管が受けた被害をみると、破損、抜け出し、ずれ、ひび割れ等が発生し、とりわけ既設管が人孔のところで該人孔の周壁の管孔に嵌合して接続されている既設管人孔接続部に被害が多くみられた。これは、既設管と人孔との既設管人孔接続部が剛接合となっているために、該既設管人孔接続部が地震動に対する動きの違いを吸収できないことに起因している。
【0003】
このため、剛接合となっている既設管と人孔との既設管人孔接続部の耐震化が求められるものとなった。剛接合となっている既設管人孔接続部の耐震化を図る工法として、人孔の周壁の管孔に嵌合している既設管を、周壁の外周壁面の近傍で外周壁面を超えない位置で切断し、この既設管の内部にライニング管を配置した後、人孔の周壁の管孔に嵌合している既設管の切断した先端部を管孔から除去し、管孔から既設管の先端部を除去した空隙に、弾性変形可能な弾性止水管状部を設けるようにした工法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
この工法によれば、人孔の周壁の管孔に嵌合している既設管の先端部分を、人孔の周壁の内周壁面側から外周壁面を超えない範囲内で切除するので、カッターは人孔の周壁の外に突出せず、このため人孔の周壁の外周壁面と既設管の周囲との間は閉じられた状態にあり、外周壁面と既設管の周囲との間から人孔の周壁の管孔内へ人孔の周壁の外にある土砂が流入することを防止でき、また水の流入も防止でき或いは最小限に抑えることができるものとなり、作業を容易に行うことができ、また、カッターにより人孔の周壁の外周囲に近接して存在する地下ケーブルや各種流体用埋設管等の埋設物に傷を付けるおそれがない。
【0005】
また、既設管の内部に配置したライニング管は、既設管としての役割を果たし、既設管の先端部を除去した部分にあるライニング管が人孔の周壁の管孔に嵌合される既設管の代替先端部分を構成することになるので、地震による既設管と人孔の周壁との動きの違いにより管孔内に嵌合している既設管の端部に破壊があってもライニング管で補うことができ、既設管としての機能を損ねるおそれはないものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−138433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記した特許文献1に記載の既設管人孔接続部の耐震化工法では、既設管の先端部を除去した部分にあるライニング管のみをもって人孔の周壁の管孔に嵌合される既設管の代替先端部分を構成するが、ライニング管にあらゆる既設管の代替先端部分としての強度を持たせることができるとは限らず、例えば、既設管が大口径管である場合、ライニング管のみをもって既設管の代替先端部分の強度を得ることは困難な場合がある。
また、既設管の内部へのライニング管の配置は、通常、既設管内に硬化可能な軟質状態にある筒状ライニング材を挿入し、筒状ライニング材内に空気を送り込んで筒状ライニング材を膨張させ既設管の内壁に押し付けて硬化させることによりライニング管を形成して配置しているため、筒状ライニング材を膨らませるための設備を必要とし、また、筒状ライニング材を膨らませるための手間のかかる作業を強いられている。
【0008】
本発明の目的は、既設管の先端部を除去した部分に構成した既設管の代替先端部分に十分な強度を得ることができ、また作業性のよい既設管人孔接続部の耐震化工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、既設管が人孔の周壁の管孔に嵌合して接続されている既設管人孔接続部の耐震化を図る既設管人孔接続部の耐震化工法であって、前記人孔の周壁の前記管孔に嵌合している前記既設管の先端部分を、前記人孔の周壁の内周壁面側から前記周壁の外周壁面の近傍で外周壁面を超えない範囲内の位置まで切除する工程と、未硬化の硬化性樹脂を含浸させた可撓性ある筒状ライニング材内に、軸方向にスリットを有する鋼管を、スリット端部同士を重ね縮径状態として挿入する工程と、内部に縮径した前記鋼管を挿入してある前記筒状ライニング材を前記人孔の周壁の内周側から前記管孔を通して、その端部を前記既設管の先端部に挿入し、前記人孔の周壁の前記管孔内に配置する工程と、前記既設管の先端部に挿入した前記筒状ライニング材に挿入してある前記鋼管を拡径させて前記筒状ライニング材を円筒状に膨らませ、その端部を前記既設管の先端部内周面に圧接させて前記筒状ライニング材を硬化させる工程と、前記端部が前記既設管の先端部内周面に圧接した前記筒状ライニング材の外周と前記既設管の先端部分を切除した部分における前記人孔の周壁の前記管孔の内周面との間に弾性変形可能な弾性止水管状部を設ける工程とを含むことを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、既設管が人孔の周壁の管孔に嵌合して接続されている既設管人孔接続部の耐震化を図る既設管人孔接続部の耐震化工法であって、前記人孔の周壁の前記管孔に嵌合している前記既設管の先端部分を、前記人孔の周壁の内周壁面側から前記周壁の外周壁面の近傍で外周壁面を超えない範囲内の位置まで切除する工程と、未硬化の硬化性樹脂を含浸させた可撓性ある筒状ライニング材内に、軸方向にスリットを有する鋼管を、スリット端部同士を重ね縮径状態として挿入する工程と、前記筒状ライニング材に縮径状態で挿入してある前記鋼管を拡径させて前記筒状ライニング材を円筒状に膨らませ、その外径が前記既設管の先端部の内径と概ね同径となるようにし、円筒状となった筒状ライニング材を硬化させる工程と、円筒状となり前記鋼管と一体となった前記筒状ライニング材の一端部を前記既設管の先端部に挿入する挿入部とし、該筒状ライニング材の前記挿入部を除く外周に、前記筒状ライニング材の外周と前記既設管の先端部分を切除した部分における前記人孔の周壁の前記管孔の内周面との間を液密にシールする弾性変形可能な弾性止水管状部を設ける工程と、外周に前記弾性止水管状部を設けた前記筒状ライニング材を前記人孔の周壁の内周側から前記管孔を通して、その挿入部を前記既設管の先端部に挿入し、前記人孔の周壁の前記管孔内に配置する工程とを含むことを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、既設管が人孔の周壁の管孔に嵌合して接続されている既設管人孔接続部の耐震化を図る既設管人孔接続部の耐震化工法であって、前記人孔の周壁の前記管孔に嵌合している前記既設管の先端部分を、前記人孔の周壁の内周壁面側から前記周壁の外周壁面の近傍で外周壁面を超えない範囲内の位置まで切除する工程と、前記既設管の先端部分を切除した部分における前記人孔の周壁の前記管孔に、外径を前記管孔の内径と、そして内径を前記既設管の先端部の内径と概ね同径とする弾性変形可能な弾性止水管状部を設ける工程と、未硬化の硬化性樹脂を含浸させた可撓性ある筒状ライニング材内に、軸方向にスリットを有する鋼管を、スリット端部同士を重ね縮径状態として挿入する工程と、内部に縮径した前記鋼管を挿入してある前記筒状ライニング材を前記人孔の周壁の内周側から前記管孔に設けた前記弾性止水管状部内を通して、その端部を前記既設管の先端部に挿入し、前記人孔の周壁の前記管孔内に配置する工程と、前記既設管の先端部に挿入した前記筒状ライニング材に挿入してある前記鋼管を拡径させて前記筒状ライニング材を円筒状に膨らませ、その外周面を前記既設管の先端部内周面及び前記弾性止水管状部内周面に圧接させて筒状ライニング材を硬化させる工程とを含むことを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の、前記既設管の切除する先端部分の周囲に位置する前記人孔の管孔の内壁を前記既設管に沿って前記既設管と同軸上に環状に切除し環状切除部を形成する工程を含むことを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の、前記人孔の周壁の前記管孔に嵌合している先端部分を切除した前記既設管の切除後の先端部の内周を周方向に切除し、大径内周部を形成する工程を含み、そして、前記筒状ライニング材に挿入した前記鋼管を拡径させて前記筒状ライニング材を円筒状に膨らませ前記筒状ライニング材を硬化させることにより前記筒状ライニング材と前記鋼管を一体としたとき、前記筒状ライニング材の外径が前記既設管の先端部の内周に形成された大径内周部の内径と概ね同径となり且つ前記鋼管の内径が前記既設管の大径内周部の内側の小径内周部の内径と概ね同径となるようにすることを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の、前記人孔の周壁の前記管孔に嵌合している前記既設管の先端部分の切除は、切除後の前記既設管の端面が前記人孔の外周壁の円弧に沿った略V字状の凹面となるように切除されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1,2,3に記載の既設管人孔接続部の耐震化工法によれば、人孔の周壁の管孔内に配置され、既設管を切除した部分にある、一体となった鋼管と硬化した筒状ライニング材が、先端部分が除去された既設管の代替先端部分を構成することになるので、鋼管と硬化した筒状ライニング材により構成される既設管の代替先端部分に十分な強度を得ることができるので、地震により既設管の端部の破壊があっても、鋼管及び硬化した筒状ライニング材で破壊部分を十分補うことができ、既設管としての機能を損ねるおそれはない。特に、既設管が大口径管であっても、かかる既設管に見合った十分な強度を求めることができ、破壊部分を十分補うことができる。また、地震が発生したときに生じる既設管と人孔の周壁との動きの違いを弾性止水管状部で吸収できるので、既設管人孔接続部が地震動で破壊されるのを防止することができる。
【0016】
また、前記の鋼管と一体となる筒状ライニング材にあっては、未硬化の硬化性樹脂を含浸させた可撓性ある筒状ライニング材であって、筒状ライニング材の内部に挿入してある、軸方向にスリットを有しスリット端部同士を重ね縮径状態となっている鋼管を拡径させて筒状ライニング材を円筒状に膨らませるので、容易に且つ簡単な作業で筒状ライニング材を円筒状に膨らませ、鋼管と一体とすることができる。
【0017】
また、筒状ライニング材を円筒状に膨らませる鋼管にあっては、軸方向にスリットを有しているので、例えば、既設管の口径が人孔の入口となる開口部の口径より大径で、鋼管の径も既設管に対応するように人孔の開口部の口径より大径となっているような場合であっても、スリット端部同士を重ね縮径状態にすることにより鋼管を人孔の開口部から内部に容易に搬入することができる。
【0018】
請求項4に記載の既設管人孔接続部の耐震化工法によれば、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の、既設管の切除する先端部分の周囲に位置する人孔の管孔の内壁を既設管に沿って既設管と同軸上に環状に切除し環状切除部を形成する工程を含むので、既設管の先端部分を切除した部分における人孔の周壁の管孔内に設ける弾性止水管状部の外径を環状切除部の分だけ大径とすることができ、これにより地震が発生したときに生じる既設管と人孔の周壁との動きの違いを弾性止水管状部で一層効果的に吸収するできる。
【0019】
請求項5に記載の既設管人孔接続部の耐震化工法によれば、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の、人孔の周壁の管孔に嵌合している先端部分を切除した既設管の切除後の先端部の内周を周方向に切除し、大径内周部を形成する工程を含み、そして、筒状ライニング材に挿入した鋼管を拡径させて筒状ライニング材を円筒状に膨らませ筒状ライニング材を硬化させることにより筒状ライニング材と鋼管を一体としたとき、筒状ライニング材の外径が既設管の先端部の内周に形成された大径内周部の内径と概ね同径となり且つ鋼管の内径が既設管の大径内周部の内側の小径内周部の内径と概ね同径となるようにするので、鋼管を挿入してある筒状ライニング材の端部を既設管の先端部に形成された大径内周部に挿入することにより、鋼管の内周面と既設管の小径内周部の内周面が面一となるので、鋼管を挿入してある筒状ライニング材が既設管内を流れる流体の妨げとならず、円滑な流れを確保することができる。
【0020】
請求項6に記載の既設管人孔接続部の耐震化工法によれば、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の、人孔の周壁の管孔に嵌合している既設管の先端部分の切除は、切除後の既設管の端面が人孔の外周壁面の円弧に沿った略V字状の凹面となるように切除されるので、切除後に人孔の周壁の管孔に嵌合している既設管の部分は僅かであり、既設管の先端部分を切除した部分における人孔の周壁の管孔の軸方向の長さを長く確保することができ、既設管の先端部分を切除した部分における人孔の周壁の管孔内に設ける弾性止水管状部を軸方向に長くすることができることから、これにより地震が発生したときに生じる既設管と人孔の周壁との動きの違いを弾性止水管状部で一層効果的に吸収するでき、また止水効果も向上するものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る既設管人孔接続部の耐震化工法の実施の第1例の工程で、工事前の状態を示す縦断面図である。
【図2】本発明に係る既設管人孔接続部の耐震化工法の実施の第1例の工程で、人孔の周壁の管孔に嵌合している既設管の先端部分を切除し環状切除部を形成した状態を示す縦断面図である。
【図3】図2の横断面図である。
【図4】人孔の周壁の管孔に嵌合している既設管の先端部分を切除し環状切除部を形成した状態の他例を示す横断面図である。
【図5】第1例の工程で、未硬化の硬化性樹脂を含浸させた筒状ライニング材内に鋼管を縮径状態として挿入する状態を示す斜視図である。
【図6】第1例の工程で、縮径状態とした鋼管の開口部端面を示す説明図である。
【図7】第1例の工程で、拡径した鋼管の開口部端面を示す説明図である。
【図8】第1例の工程で、内部に縮径した鋼管を挿入してある筒状ライニング材を人孔の周壁の内周側から管孔を通して、その端部を既設管の先端部に挿入し、人孔の周壁の管孔内に配置した状態を示す縦断面図である。
【図9】既設管の先端部に挿入した筒状ライニング材に挿入してある鋼管を拡径させて筒状ライニング材を円筒状に膨らませ、その端部を既設管の先端部内周面に圧接させた状態を示す縦断面図である。
【図10】鋼管を拡径させて筒状ライニング材を円筒状に膨らませる手段の一例を示す説明図である。
【図11】拡径した鋼管により一体となった鋼管と筒状ライニング材の開口部端面を示す説明図である。
【図12】筒状ライニング材の外周と人孔の周壁の管孔の内周壁との間に弾性止水管状部を設けた状態を示す縦断面図である。
【図13】本発明に係る既設管人孔接続部の耐震化工法の実施の第2例の工程で、筒状ライニング材に縮径状態で挿入してある鋼管を拡径させて筒状ライニング材を円筒状に膨らませ一体とした状態を示す縦断面図である。
【図14】第2例の工程で、鋼管と一体となった筒状ライニング材の外周に弾性変形可能な弾性止水管状部を設けた状態を示す縦断面図である。
【図15】第2例の工程で、外周に弾性止水管状部を設けた筒状ライニング材を人孔の周壁の内周側から前記管孔を通して既設管の先端部に挿入する状態を示す縦断面図である。
【図16】第2例の工程で、外周に弾性止水管状部を設けた筒状ライニング材を人孔の周壁の管孔内に配置した状態を示す縦断面図である。
【図17】本発明に係る既設管人孔接続部の耐震化工法の実施の第3例の工程で、既設管の先端部分を切除した部分における人孔の周壁の管孔に弾性変形可能な弾性止水管状部を設け状態を示す縦断面図である。
【図18】第3例の工程で、内部に縮径した鋼管を挿入してある筒状ライニング材を人孔の周壁の内周側から管孔を通して、その端部を既設管の先端部に挿入し人孔の周壁の管孔内に配置する状態を示す縦断面図である。
【図19】第3例の工程で、鋼管を拡径させて筒状ライニング材の外周面を既設管の先端部内周面及び弾性止水管状部内周面に圧接させて筒状ライニング材を硬化させた状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る既設管人孔接続部の耐震化工法を実施するための形態を、図面に示す実施例を参照して詳細に説明する。
【0023】
図1乃至図12は本発明に係る既設管人孔接続部の耐震化工法を実施する第1例を示すものであり、図1は工事前の状態を示す縦断面図、図2は人孔の周壁の管孔に嵌合している既設管の先端部分を切除し環状切除部を形成した状態を示す縦断面図、図3は図2の横断面図、図4は人孔の周壁の管孔に嵌合している既設管の先端部分を切除し環状切除部を形成した状態の他例を示す横断面図、図5は未硬化の硬化性樹脂を含浸させた筒状ライニング材内に鋼管を縮径状態として挿入する状態を示す斜視図、図6は縮径状態とした鋼管の開口部端面を示す説明図、図7は拡径した鋼管の開口部端面を示す説明図、図8は内部に縮径した鋼管を挿入してある筒状ライニング材を人孔の周壁の内周側から管孔を通して、その端部を既設管の先端部に挿入し、人孔の周壁の管孔内に配置した状態を示す縦断面図、図9は既設管の先端部に挿入した筒状ライニング材に挿入してある鋼管を拡径させて筒状ライニング材を円筒状に膨らませ、その端部を既設管の先端部内周面に圧接させた状態を示す縦断面図、図10(A)、(B)は鋼管を拡径させて筒状ライニング材を円筒状に膨らませる手段の一例を示す説明図、図11は拡径した鋼管により一体となった鋼管と筒状ライニング材の開口部端面を示す説明図、図12は筒状ライニング材の外周と人孔の周壁の管孔の内周壁との間に弾性止水管状部を設けた状態を示す縦断面図である。
【0024】
図1は本例の工法を実施する人孔(マンホール)の一例を示しており、同図に示すように、工事前の状態では地盤1の中に敷設されている既設管2は、人孔3のところで該人孔3の基礎周壁部4aの管孔5に差し込まれて接続されて既設管人孔接続部6が形成されている。人孔3は、コンクリートで構築された基礎周壁部4aの上に、予めコンクリートで成型された成型周壁部4bが設置されて周壁4が形成され、上端の開口部7が開閉可能に蓋8で閉塞されている。
【0025】
このような構造の既設管人孔接続部6に対して行う本例の耐震化工法は、先ず、図2に示すように、人孔3の周壁4における基礎周壁部4aの管孔5に嵌合している既設管2の先端部分2aを、基礎周壁部4aの内周壁面9側から外周壁面10の近傍で外周壁面10を超えない範囲内の位置まで切除する。
【0026】
基礎周壁部4aの内周壁面9側から外周壁面10の近傍とは、既設管2の先端部分2aの切除後に、基礎周壁部4aの管孔5内に嵌合した状態で残っている既設管2の端部2bが、地震が発生したとき容易に破壊し、既設管2と人孔3の基礎周壁部4aとが縁切りできる位置をいう。既設管2の先端部分の切除後に基礎周壁部4aの管孔5内に嵌合した状態で残っている既設管2の長さLは、0〜5cm位が好ましいが、管孔5内への土砂や水の流入を防止するために0.5cm以上であることが特に好ましい。既設管2の先端部分2aの切除寸法位置Pを設定するに際しては、基礎周壁部4aは現場打ちのため、その壁厚は必ずしも設計通りとはなっていないので、基礎周壁部4aの壁厚を超音波を当てて測定し、既設管2の先端部分2aの切除寸法位置Pを設定することが好ましい。
【0027】
また、前記した人孔3の基礎周壁部4aの管孔5に嵌合している既設管2の先端部分2aの切除にあっては、切除後の既設管2の端面が図3に示すように同一平面となるように切除してもよく、或いは図4に示すように人孔3の外周壁面の円弧に沿った略V字状の凹面となるように切除してもよい。
【0028】
さらに本例では、既設管2の切除する先端部分2aの周囲に位置する基礎周壁部4aの管孔5の内壁を既設管2に沿って既設管2と同軸上に環状に切除し、環状切除部11を形成する。既設管2の先端部分2aの切除と管孔5の内壁の切除は、同時に切除してもよく、或いは何れか一方を先に切除し、その後に他方を切除するようにしてもよい。
【0029】
また、本例では、人孔3の基礎周壁部4aの管孔5に嵌合している先端部分2aを切除した既設管2の先端部の内周を、後述するところの一体となった鋼管と筒状ライニング材の厚さ分に概ね相当する厚さ分だけ周方向に切除し、大径内周部12を形成する。即ち、鋼管と一体となった筒状ライニング材の外径と既設管2の切除後の先端部に形成した大径内周部12の内径と概ね同径に、そして鋼管の内径と既設管2の大径内周部12の内側の小径内周部13の内径と概ね同径になるように先端部分2aを切除した既設管2の先端部の内周を周方向に切除する。
【0030】
なお、既設管2の先端部分2aの切除に先立ち、既設管2の先端部分の切除作業に必要な作業空間と、後に述べるように、環状切除部11に筒状補助部材の嵌合部を嵌合し固定する作業空間を確保するために、既設管2の先端部分2aの前面のインバートコンクリート14を必要な範囲だけ切除しておく。
【0031】
次に、図5に示すように、未硬化の硬化性樹脂を含浸させた可撓性ある筒状ライニング材15と軸方向にスリット16を有する鋼管17を用意し、筒状ライニング材15内にスリット端部16a,16b同士を重ね縮径状態とした鋼管17を挿入する。
【0032】
筒状ライニング材15にあっては、円筒状に膨らませたときその外径が、先端部分2aを切除した後の既設管2の先端部の内径とほぼ同径となるように設定されており、未硬化の硬化性樹脂を含浸できるフエルト、織布等といった繊維性素材で形成されている。また、筒状ライニング材15にに含浸する硬化性樹脂としては、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂或いは常温硬化性樹脂が挙げられる。
【0033】
また、鋼管17にあっては、その外径は筒状ライニング材15を既設管2の先端部内周面に圧接させる径に設定されている。この鋼管17は、スリット端部16a,16b同士を重ねることにより縮径状態とするものであり、本例では、スリット端部16a,16b同士を重ねるとき、内側に重ねられるスリット端部16aの内面に、縮径状態にある鋼管17を拡径したときに、外側に重ねられるスリット端部16bの内面に当接させる裏当補助板18が溶接等により固定されている(図6、図7)。また、鋼管17はステンレス製が好ましい。
【0034】
本例では、筒状ライニング材15に挿入した鋼管17を拡径させて筒状ライニング材15を円筒状に膨らませ、硬化性樹脂の硬化により筒状ライニング材15を硬化させ、筒状ライニング材15と鋼管17を一体としたとき、筒状ライニング材15の外径が既設管2の先端部の内周に形成された大径内周部12の内径と概ね同径となり且つ鋼管17の内径が既設管2の大径内周部12の内側の小径内周部13の内径と概ね同形となるように設定されている。
【0035】
次に、図8に示すように、内部に縮径した鋼管17を挿入してある筒状ライニング材15を人孔3の基礎周壁部4aの内周側から管孔5を通して、その端部を既設管2の先端部分に挿入し、人孔3の基礎周壁部4aの管孔5内に配置する。
【0036】
次に、図9に示すように、既設管2の先端部分に挿入した筒状ライニング材15に挿入してあり縮径状態にある鋼管17を拡径させて筒状ライニング材15を円筒状に膨らませ、その端部を既設管2の先端部内周面、本例では大径内周部12の内周面に圧接させ、筒状ライニング材15に含浸している未硬化の硬化性樹脂を硬化させることにより筒状ライニング材15を硬化させる。本例では、筒状ライニング材15の端部を既設管2の大径内周部12の内周面に圧接させる前に、既設管2の大径内周部12の内周面に接着剤を塗布している。
【0037】
また、縮径状態にある鋼管17の拡径にあっては、鋼管17を押し広げる拡径治具19を用い、図10(A)に示すように縮径状態にある鋼管17に拡径治具19を挿入し、図10(B)に示すように拡径治具19を拡開させて鋼管17を押し広げることにより鋼管17の拡径を行っている。
【0038】
次に、図12に示すように、端部が既設管2の先端部分内周面に圧接した筒状ライニング材15の外周と、既設管2の先端部分を切除した部分における人孔3の基礎周壁部4aの管孔5の内周壁との間に弾性変形可能な弾性止水管状部20を液密に設ける。
【0039】
弾性止水管状部20は、例えばシリコン樹脂、軟性エポキシウレタン等の軟性樹脂や吸水材を含有する水膨張ゴム、化成ゴム、天然ゴム等の弾性止水材を用いて成形される。弾性止水管状部20を設ける手段としては、弾性止水材で弾性止水管状部20を成形し、この弾性止水管状部20を挿入して設けてもよく、或いは筒状ライニング材13の外周と人孔3の基礎周壁部4aの管孔5の内周壁との間に弾性止水材を注入して弾性止水管状部20を形成して設けてもよく、或いは弾性止水管状部20を軸方向に複数に分割しておき、人孔3の基礎周壁部4aの管孔5内で筒状に組み立てるようにしてもよい。
【0040】
また、本例では、既設管2の先端と弾性止水管状部20の一端部との間に目地材21を介在させており、また、内周壁面9に開口する筒状ライニング材15の外周と人孔3の基礎周壁部4aの管孔5の内周壁との間に形成される空間には、弾性止水管状部20の他端部との間に目地材21を介して弾性シーリング材22を充填している。
【0041】
この後、既設管2の先端部分の切除に先立ち切除しておいた既設管2の先端部分前面のインバートコンクリート14の切除部に充填材23を充填する。充填材23としては、特に限定されるものではない。本例では、充填材23として弾性材を使用している。この弾性材として、例えば、弾性止水管状部20を形成する弾性止水材を使用してもよい。更に、樹脂、モルタル等の充填材23でインバートコンクリート14の切除部を埋め均す。このようにして、既設管人孔接続部の耐震化工法の実施の工程が完了する。
【0042】
なお、前記既設管人孔接続部6の耐震化は、図面では、図上右側にある既設管人孔接続部6の耐震化の工程が示されているが、図上左側の既設管人孔接続部6についても、前記と同様の工程で耐震化が実施される。
【0043】
上記の既設管人孔接続部の耐震化工法によれば、管孔5に嵌合している既設管2の先端部分2aを、基礎周壁部4aの内周壁面9側から外周壁面10の近傍で外周壁面10を超えない範囲内の位置まで切除するので、カッターは基礎周壁部4aの外に突出せず、このため基礎周壁部4aの外周壁面10と既設管2の周囲との間は閉じられた状態にあり、外周壁面10と既設管2の周囲との間から管孔5内へ基礎周壁部4aの外にある土砂が流入することを防止でき、また水の流入も防止でき或いは最小限に抑えることができるものとなり、作業を容易に行うことができ、また、カッターにより基礎周壁部4aの外周囲に近接して存在する地下ケーブルや各種流体用埋設管等の埋設物に傷を付けるおそれがない。
【0044】
また、未硬化の硬化性樹脂を含浸させた可撓性ある筒状ライニング材15内に、スリット端部16a,16b同士を重ね縮径状態とした鋼管17を挿入し、鋼管17を挿入した筒状ライニング材15を人孔3の基礎周壁部4aの内周側から管孔5を通して、その端部を既設管2の先端部の大径内周部12に挿入して管孔5内に配置し、筒状ライニング材15に挿入してある鋼管17を拡径させて筒状ライニング材15を円筒状に膨らませ、その端部を既設管の先端部内周面、即ち大径内周部12の内周面に圧接させて筒状ライニング材15を硬化させるので、一体となった鋼管17と硬化した筒状ライニング材15が、先端部分2aが除去された既設管2の代替先端部分を構成することになり、鋼管17と硬化した筒状ライニング材15により構成される既設管2の代替先端部分に十分な強度を得ることができるものとなる。
【0045】
これにより、地震により既設管2の端部の破壊があっても、鋼管17及び硬化した筒状ライニング材15により破壊部分を十分補うことができ、既設管2としての機能を損ねるおそれはない。特に、既設管2が大口径管であっても、かかる既設管2に見合った十分な強度を求めることができ、破壊部分を十分補うことができる。
【0046】
また、端部が既設管2の先端部内周面に圧接した筒状ライニング材15の外周と既設管2の先端部分を切除した部分における人孔3の基礎周壁部4aの管孔5の内周面との間に弾性変形可能な弾性止水管状部20を設けるので、地震が発生したときに生じる既設管2と人孔3の基礎周壁部4aとの動きの違いを弾性止水管状部20で吸収でき、既設管人孔接続部6が地震動で破壊されるのを防止することができる。
【0047】
また、本例では、既設管2の切除する先端部分2aの周囲に位置する人孔3の管孔5の内壁を既設管2に沿って既設管2と同軸上に環状に切除し環状切除部11を形成したので、既設管2の先端部分2aを切除した部分における人孔3の管孔5内に設ける弾性止水管状部20の外径を環状切除部11の分だけ大径とすることができ、これにより地震が発生したときに生じる既設管2と人孔3の基礎周壁部4aとの動きの違いを弾性止水管状部20で一層効果的に吸収するできる。
【0048】
また、本例では、人孔3の基礎周壁部4aの管孔5に嵌合している先端部分2aの切除は、切除後の既設管2の端面が人孔3の外周壁面10の円弧に沿った略V字状の凹面となるように切除されるので、切除後に人孔3の管孔5に嵌合している既設管2の部分は僅かであり、既設管2の先端部分2aを切除した部分における人孔3の管孔5の軸方向の長さを長く確保することができ、既設管2の先端部分2aを切除した部分における人孔3の管孔5内に設ける弾性止水管状部20を軸方向に長くすることができることから、これにより地震が発生したときに生じる既設管2と人孔3の基礎周壁部4aとの動きの違いを弾性止水管状部20で一層効果的に吸収するできる。
【0049】
また、本例では、人孔3の基礎周壁部4aの管孔5に嵌合している先端部分2aを切除した既設管2の先端部の内周を、後述するところの一体となった鋼管17と筒状ライニング材15の厚さ分に概ね相当する厚さ分だけ周方向に切除し、大径内周部12を形成する、即ち、鋼管17と一体となった筒状ライニング材15の外径と既設管2の切除後の先端部に形成した大径内周部12の内径と概ね同径に、そして鋼管17の内径と既設管2の大径内周部12の内側の小径内周部13の内径と概ね同径になるように先端部分2aを切除した既設管2の先端部の内周を周方向に切除するので、鋼管17を挿入してある筒状ライニング材15の端部を既設管2の先端部に形成された大径内周部12に挿入することにより、鋼管17の内周面と既設管2の小径内周部13の内周面が面一となり、鋼管17を挿入してある筒状ライニング材15が既設管2内を流れる流体の妨げとならず、円滑な流れを確保することができる。
【0050】
既設管人孔接続部の耐震化工法の実施に際し、鋼管17と一体となる筒状ライニング材15にあっては、未硬化の硬化性樹脂を含浸させた可撓性ある筒状ライニング材15の内部に挿入してある、軸方向にスリット16を有しスリット端部16a,16b同士を重ね縮径状態となっている鋼管17を拡径させて筒状ライニング材15を円筒状に膨らませるので、容易に且つ簡単な作業で筒状ライニング材15を円筒状に膨らませ、鋼管17と一体とすることができる。
【0051】
また、鋼管17にあっては、軸方向にスリット16を有しているので、例えば、既設管2の口径が人孔3の開口部7の口径より大径で、鋼管17の径も既設管2に対応するように人孔3の開口部7の口径より大径となっているような場合であっても、スリット端部16a,16b同士を重ね縮径状態にすることにより鋼管17を人孔3の開口部7から内部に容易に搬入することができる。
【0052】
図13乃至図16は本発明に係る既設管人孔接続部の耐震化工法を実施する第2例を示すものであり、図13は筒状ライニング材に縮径状態で挿入してある鋼管を拡径させて筒状ライニング材を円筒状に膨らませ一体とした状態を示す縦断面図、図14は鋼管と一体となった筒状ライニング材の外周に弾性変形可能な弾性止水管状部を設けた状態を示す縦断面図、図15は外周に弾性止水管状部を設けた筒状ライニング材を人孔の周壁の内周側から前記管孔を通して既設管の先端部に挿入する状態を示す縦断面図、図16は外周に弾性止水管状部を設けた筒状ライニング材を人孔の周壁の管孔内に配置した状態を示す縦断面図である。
なお、本例において、第1例と工程を同じくするところは、第1例の図面を援用して説明を省略する。
本例の工法を実施する人孔(マンホール)は、第1例を実施する図1に示す人孔と同様であり、同図を援用して説明を省略する。
【0053】
図1に示す構造の既設管人孔接続部6に対して行う本例の耐震化工法は、先ず、人孔3の周壁4における基礎周壁部4aの管孔5に嵌合している既設管2の先端部分2aを、基礎周壁部4aの内周壁面9側から外周壁面10の近傍で外周壁面10を超えない範囲内の位置まで切除する。
【0054】
また、本例でも、第1例と同様に、既設管2の切除する先端部分2aの周囲に位置する基礎周壁部4aの管孔5の内壁を既設管2に沿って既設管2と同軸上に環状に切除し、環状切除部11を形成する。また、前記した人孔3の基礎周壁部4aの管孔5に嵌合している既設管2の先端部分2aの切除にあっては、第1例と同様に、切除後の既設管2の端面が第1例の図3に示すように同一平面となるように切除してもよく、或いは第1例の図4に示すように人孔3の外周壁面の円弧に沿った略V字状の凹面となるように切除してもよい。
【0055】
また、本例でも、第1例と同様に、人孔3の基礎周壁部4aの管孔5に嵌合している先端部分2aを切除した既設管2の先端部の内周を、後述するところの一体となった鋼管と筒状ライニング材の厚さ分に概ね相当する厚さ分だけ周方向に切除し、大径内周部12を形成する。即ち、鋼管と一体となった筒状ライニング材の外径と既設管2の切除後の先端部に形成した大径内周部12の内径と概ね同径に、そして鋼管の内径と既設管2の大径内周部12の内側の小径内周部13の内径と概ね同径になるように先端部分2aを切除した既設管2の先端部の内周を周方向に切除する。
この工程は、前記した第1例と同様なので、第1例の図2、図3、図4及び第1例の説明を援用し、この工程の詳細な説明を省略する。
【0056】
次に、第1例と同様に、第1例の図5に示す未硬化の硬化性樹脂を含浸させた可撓性ある筒状ライニング材15と第1例の図6、図7に示す軸方向にスリット16を有する鋼管17を用意し、筒状ライニング材15内にスリット端部16a,16b同士を重ね縮径状態とした鋼管17を挿入する。
筒状ライニング材15及び鋼管17にあっては、第1例と同様なので、前記した第1例の説明を援用する。
【0057】
次に、筒状ライニング材15に縮径状態で挿入してある鋼管17を、図10に示す第1例と同様に手段を用いて拡径させ、筒状ライニング材15を円筒状に膨らませてその外径が既設管2の先端部の内径と概ね同径となるようにし、円筒状となった筒状ライニング材15を硬化させる(図13)。
【0058】
次に、図14に示すように、円筒状となり鋼管17と一体となった筒状ライニング材15の一端部を既設管2の先端部に挿入する挿入部15aとし、筒状ライニング材15の挿入部15aを除く外周に、筒状ライニング材15の外周と既設管2の先端部分2aを切除した部分における人孔3の基礎周壁部4aの管孔5の内周面との間を液密にシールする弾性変形可能な弾性止水管状部20を設ける。弾性止水管状部20にあっては、第1例と同様に、例えばシリコン樹脂、軟性エポキシウレタン等の軟性樹脂や吸水材を含有する水膨張ゴム、化成ゴム、天然ゴム等の弾性止水材を用いて成形される。
【0059】
次に、図15に示すように、外周に弾性止水管状部20を設けた筒状ライニング材15を人孔3の基礎周壁部4aの管孔5を通して、その挿入部15aを既設管2の先端部に挿入し、図16に示すように、人孔3の基礎周壁部4aの管孔5内に配置する。本例では、筒状ライニング材15の挿入部15aを既設管2の先端部に挿入する前に、既設管2の大径内周部12の内周面に接着剤を塗布している。
【0060】
また、本例では、筒状ライニング材15の外周の弾性止水管状部20の両端側に目地材21を設けている。また、弾性止水管状部20を設けた筒状ライニング材15を人孔3の基礎周壁部4aの管孔5内に配置した後、内周壁面9に開口する筒状ライニング材13の外周と人孔3の基礎周壁部4aの管孔5の内周壁との間に形成される空間には、弾性止水管状部20の他端部との間に目地材21を介して弾性シーリング材22を充填している。
【0061】
この後、第1例と同様に、既設管2の先端部分の切除に先立ち切除しておいた既設管2の先端部分前面のインバートコンクリート14の切除部に充填材23を充填する。充填材23としては、特に限定されるものではない。本例では、充填材23として弾性材を使用している。この弾性材として、例えば、弾性止水管状部20を形成する弾性止水材を使用してもよい。更に、樹脂、モルタル等の充填材23でインバートコンクリート14の切除部を埋め均す。このようにして、既設管人孔接続部の耐震化工法の実施の工程が完了する。
【0062】
なお、前記既設管人孔接続部6の耐震化は、図面では、図上右側にある既設管人孔接続部6の耐震化の工程が示されているが、図上左側の既設管人孔接続部6についても、前記と同様の工程で耐震化が実施される。
【0063】
上記第2例の既設管人孔接続部の耐震化工法によれば、その作用効果は前記した第1例と同様なので、第1例の説明を援用する。
【0064】
図17乃至図19は本発明に係る既設管人孔接続部の耐震化工法を実施する第3例を示すものであり、図17は既設管の先端部分を切除した部分における人孔の周壁の管孔に弾性変形可能な弾性止水管状部を設け状態を示す縦断面図、図18は内部に縮径した鋼管を挿入してある筒状ライニング材を人孔の周壁の内周側から管孔を通して、その端部を既設管の先端部に挿入し人孔の周壁の管孔内に配置する状態を示す縦断面図、図19は鋼管を拡径させて筒状ライニング材の外周面を既設管の先端部内周面及び弾性止水管状部内周面に圧接させて筒状ライニング材を硬化させた状態を示す縦断面図である。
なお、本例において、第1例と工程を同じくするところは、第1例の図面を援用して説明を省略する。
本例の工法を実施する人孔(マンホール)は、第1例を実施する図1に示す人孔と同様であり、同図を援用して説明を省略する。
【0065】
図1に示す構造の既設管人孔接続部6に対して行う本例の耐震化工法は、先ず、人孔3の周壁4における基礎周壁部4aの管孔5に嵌合している既設管2の先端部分2aを、基礎周壁部4aの内周壁面9側から外周壁面10の近傍で外周壁面10を超えない範囲内の位置まで切除する。
【0066】
また、本例でも、第1例と同様に、既設管2の切除する先端部分2aの周囲に位置する基礎周壁部4aの管孔5の内壁を既設管2に沿って既設管2と同軸上に環状に切除し、環状切除部11を形成する。また、前記した人孔3の基礎周壁部4aの管孔5に嵌合している既設管2の先端部分2aの切除にあっては、第1例と同様に、切除後の既設管2の端面が第1例の図3に示すように同一平面となるように切除してもよく、或いは第1例の図4に示すように人孔3の外周壁面の円弧に沿った略V字状の凹面となるように切除してもよい。
【0067】
また、本例でも、第1例と同様に、人孔3の基礎周壁部4aの管孔5に嵌合している先端部分2aを切除した既設管2の先端部の内周を、後述するところの一体となった鋼管と筒状ライニング材の厚さ分に概ね相当する厚さ分だけ周方向に切除し、大径内周部12を形成する。即ち、鋼管と一体となった筒状ライニング材の外径と既設管2の切除後の先端部に形成した大径内周部12の内径と概ね同径に、そして鋼管の内径と既設管2の大径内周部12の内側の小径内周部13の内径と概ね同径になるように先端部分2aを切除した既設管2の先端部の内周を周方向に切除する。
この工程は、前記した第1例と同様なので、第1例の図2、図3、図4及び第1例の説明を援用し、この工程の詳細な説明を省略する。
【0068】
次に、図17に示すように、既設管2の先端部分2aを切除した部分における人孔3の基礎周壁部4aの管孔5に、外径を管孔5の内径と、そして内径を既設管2の先端部の内径と概ね同径とする弾性変形可能な弾性止水管状部20を設ける。弾性止水管状部20にあっては、第1例と同様に、例えばシリコン樹脂、軟性エポキシウレタン等の軟性樹脂や吸水材を含有する水膨張ゴム、化成ゴム、天然ゴム等の弾性止水材を用いて成形される。
本例では、既設管2の先端と弾性止水管状部20の一端部との間及び弾性止水管状部20の他端部に目地材21を設けている。
【0069】
次に、第1例と同様に、第1例の図5に示す未硬化の硬化性樹脂を含浸させた可撓性ある筒状ライニング材15と第1例の図6、図7に示す軸方向にスリット16を有する鋼管17を用意し、筒状ライニング材15内にスリット端部16a,16b同士を重ね縮径状態とした鋼管17を挿入する。
筒状ライニング材15及び鋼管17にあっては、第1例と同様なので、前記した第1例の説明を援用する。
【0070】
次に、図18に示すように、内部に縮径した鋼管17を挿入してある筒状ライニング材15を人孔3の基礎周壁部4aの内周側から管孔5に設けた弾性止水管状部20内を通して、その端部を既設管2の先端部分に挿入し、人孔3の基礎周壁部4aの管孔5内に配置する。
【0071】
次に、図19に示すように、既設管2の先端部分に挿入した筒状ライニング材15に挿入してあり縮径状態にある鋼管17を、図10に示す第1例と同様に手段を用いて拡径させ、その外周面を既設管2の先端部内周面及び弾性止水管状部20の内周面に圧接させ、筒状ライニング材15に含浸している未硬化の硬化性樹脂を硬化させることにより筒状ライニング材15を硬化させる。本例では、筒状ライニング材15の端部を既設管2の大径内周部12の内周面に圧接させる前に、既設管2の大径内周部12の内周面に接着剤を塗布している。
【0072】
また、本例では、筒状ライニング材15の外周面を既設管2の先端部内周面及び弾性止水管状部20の内周面に圧接させ、筒状ライニング材15を硬化した後、内周壁面9に開口する筒状ライニング材15の外周と人孔3の基礎周壁部4aの管孔5の内周壁との間に形成される空間には、弾性止水管状部20の他端部との間に目地材21を介して弾性シーリング材22を充填している。
【0073】
この後、第1例と同様に、既設管2の先端部分の切除に先立ち切除しておいた既設管2の先端部分前面のインバートコンクリート14の切除部に充填材23を充填する。充填材23としては、特に限定されるものではない。本例では、充填材23として弾性材を使用している。この弾性材として、例えば、弾性止水管状部20を形成する弾性止水材を使用してもよい。更に、樹脂、モルタル等の充填材23でインバートコンクリート14の切除部を埋め均す。このようにして、既設管人孔接続部の耐震化工法の実施の工程が完了する。
【0074】
なお、前記既設管人孔接続部6の耐震化は、図面では、図上右側にある既設管人孔接続部6の耐震化の工程が示されているが、図上左側の既設管人孔接続部6についても、前記と同様の工程で耐震化が実施される。
【0075】
上記第3例の既設管人孔接続部の耐震化工法によれば、その作用効果は前記した第1例と同様なので、第1例の説明を援用する。
【符号の説明】
【0076】
1 地盤
2 既設管
2a 先端部分
2b 端部
2c 端面
3 人孔
4 周壁
4a 基礎周壁部
4b 成型周壁部
5 管孔
6 既設管人孔接続部
7 開口部
8 蓋
9 内周壁面
10 外周壁面
11 環状切除部
12 大径内周部
13 小径内周部
14 インバートコンクリート
15 筒状ライニング材
15a 挿入部
16 スリット
16a、16b スリット端部
17 鋼管
18 裏当補助板
19 拡径治具
20 弾性止水管状部
21 目地材
22 弾性シーリング材
23 充填材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設管が人孔の周壁の管孔に嵌合して接続されている既設管人孔接続部の耐震化を図る既設管人孔接続部の耐震化工法であって、
前記人孔の周壁の前記管孔に嵌合している前記既設管の先端部分を、前記人孔の周壁の内周壁面側から前記周壁の外周壁面の近傍で外周壁面を超えない範囲内の位置まで切除する工程と、
未硬化の硬化性樹脂を含浸させた可撓性ある筒状ライニング材内に、軸方向にスリットを有する鋼管を、スリット端部同士を重ね縮径状態として挿入する工程と、
内部に縮径した前記鋼管を挿入してある前記筒状ライニング材を前記人孔の周壁の内周側から前記管孔を通して、その端部を前記既設管の先端部に挿入し、前記人孔の周壁の前記管孔内に配置する工程と、
前記既設管の先端部に挿入した前記筒状ライニング材に挿入してある前記鋼管を拡径させて前記筒状ライニング材を円筒状に膨らませ、その端部を前記既設管の先端部内周面に圧接させて前記筒状ライニング材を硬化させる工程と、
前記端部が前記既設管の先端部内周面に圧接した前記筒状ライニング材の外周と前記既設管の先端部分を切除した部分における前記人孔の周壁の前記管孔の内周面との間に弾性変形可能な弾性止水管状部を設ける工程とを含むことを特徴とする既設管人孔接続部の耐震化工法。
【請求項2】
既設管が人孔の周壁の管孔に嵌合して接続されている既設管人孔接続部の耐震化を図る既設管人孔接続部の耐震化工法であって、
前記人孔の周壁の前記管孔に嵌合している前記既設管の先端部分を、前記人孔の周壁の内周壁面側から前記周壁の外周壁面の近傍で外周壁面を超えない範囲内の位置まで切除する工程と、
未硬化の硬化性樹脂を含浸させた可撓性ある筒状ライニング材内に、軸方向にスリットを有する鋼管を、スリット端部同士を重ね縮径状態として挿入する工程と、
前記筒状ライニング材に縮径状態で挿入してある前記鋼管を拡径させて前記筒状ライニング材を円筒状に膨らませ、その外径が前記既設管の先端部の内径と概ね同径となるようにし、円筒状となった筒状ライニング材を硬化させる工程と、
円筒状となり前記鋼管と一体となった前記筒状ライニング材の一端部を前記既設管の先端部に挿入する挿入部とし、該筒状ライニング材の前記挿入部を除く外周に、前記筒状ライニング材の外周と前記既設管の先端部分を切除した部分における前記人孔の周壁の前記管孔の内周面との間を液密にシールする弾性変形可能な弾性止水管状部を設ける工程と、
外周に前記弾性止水管状部を設けた前記筒状ライニング材を前記人孔の周壁の内周側から前記管孔を通して、その挿入部を前記既設管の先端部に挿入し、前記人孔の周壁の前記管孔内に配置する工程とを含むことを特徴とする既設管人孔接続部の耐震化工法。
【請求項3】
既設管が人孔の周壁の管孔に嵌合して接続されている既設管人孔接続部の耐震化を図る既設管人孔接続部の耐震化工法であって、
前記人孔の周壁の前記管孔に嵌合している前記既設管の先端部分を、前記人孔の周壁の内周壁面側から前記周壁の外周壁面の近傍で外周壁面を超えない範囲内の位置まで切除する工程と、
前記既設管の先端部分を切除した部分における前記人孔の周壁の前記管孔に、外径を前記管孔の内径と、そして内径を前記既設管の先端部の内径と概ね同径とする弾性変形可能な弾性止水管状部を設ける工程と、
未硬化の硬化性樹脂を含浸させた可撓性ある筒状ライニング材内に、軸方向にスリットを有する鋼管を、スリット端部同士を重ね縮径状態として挿入する工程と、
内部に縮径した前記鋼管を挿入してある前記筒状ライニング材を前記人孔の周壁の内周側から前記管孔に設けた前記弾性止水管状部内を通して、その端部を前記既設管の先端部に挿入し、前記人孔の周壁の前記管孔内に配置する工程と、
前記既設管の先端部に挿入した前記筒状ライニング材に挿入してある前記鋼管を拡径させて前記筒状ライニング材を円筒状に膨らませ、その外周面を前記既設管の先端部内周面及び前記弾性止水管状部内周面に圧接させて筒状ライニング材を硬化させる工程とを含むことを特徴とする既設管人孔接続部の耐震化工法。
【請求項4】
前記既設管の切除する先端部分の周囲に位置する前記人孔の管孔の内壁を前記既設管に沿って前記既設管と同軸上に環状に切除し環状切除部を形成する工程を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の既設管人孔接続部の耐震化工法。
【請求項5】
前記人孔の周壁の前記管孔に嵌合している先端部分を切除した前記既設管の切除後の先端部の内周を周方向に切除し、大径内周部を形成する工程を含み、
そして、前記筒状ライニング材に挿入した前記鋼管を拡径させて前記筒状ライニング材を円筒状に膨らませ前記筒状ライニング材を硬化させることにより前記筒状ライニング材と前記鋼管を一体としたとき、前記筒状ライニング材の外径が前記既設管の先端部の内周に形成された大径内周部の内径と概ね同径となり且つ前記鋼管の内径が前記既設管の大径内周部の内側の小径内周部の内径と概ね同径となるようにすることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の既設管人孔接続部の耐震化工法。
【請求項6】
前記人孔の周壁の前記管孔に嵌合している前記既設管の先端部分の切除は、切除後の前記既設管の端面が前記人孔の外周壁の円弧に沿った略V字状の凹面となるように切除されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の既設管人孔接続部の耐震化工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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