説明

昆虫の抵抗性を管理するためのCry1CAとCry1ABタンパク質との併用

本発明は、鱗翅目昆虫を防除するための方法および植物を包含し、前記植物は、昆虫による抵抗性の発達を遅延または予防するために、Cry1Ca殺虫性タンパク質およびCry1Ab殺虫性タンパク質を組み合わせて含む。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
人は、食物およびエネルギーに応用するためのトウモロコシを栽培する。人は、また、ダイズおよびワタをはじめとするその他多くの作物を栽培する。昆虫は、植物を食べ、損傷し、それによって人類の努力を無駄にする。毎年、害虫を防除するために数10億ドルが費やされ、かつそれらの害虫が与える損傷にさらに数10億ドルが浪費される。合成有機化学系殺虫剤は、害虫を防除するのに使用される主要ツールであったが、バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)(Bt)由来の殺虫性タンパク質などの生物学的殺虫剤が、一部の地域において重要な役割を演じている。Btの殺虫性タンパク質遺伝子を用いる形質転換を介して昆虫抵抗性植物を産生する能力は、現代農業を革命的に変え、殺虫性タンパク質およびそれらの遺伝子の重要性および価値を高めた。
【0002】
今日まで、いくつかのBtタンパク質が昆虫抵抗性トランスジェニック植物を創り出すのに使用され、それらの植物は、現在まで成功裡に登録され商品化されている。これらのBtタンパク質としては、トウモロコシにおけるCry1Ab、Cry1Ac、Cry1FaおよびCry3Bb、ワタにおけるCry1AcおよびCry2Ab、ならびにジャガイモにおけるCry3Aが挙げられる。
【0003】
これらのタンパク質を発現する市販製品は、2種のタンパク質を組み合わせた殺虫活性が所望される(例えば、それぞれ鱗翅目有害生物およびルートワームに対して抵抗性を提供するように組み合わされたトウモロコシにおけるCry1AbおよびCry3Bb)事例、またはタンパク質の独自の作用が該タンパク質を感受性昆虫集団における抵抗性の発達を遅延させるためのツールとして有用にする(例えば、タバコバッドワームのための抵抗性管理を提供するように組み合わされたワタにおけるCry1AcおよびCry2Ab)事例を除いて、単一のタンパク質を発現する。
【0004】
すなわち、この技術の急速かつ広範な採用につながった昆虫抵抗性のあるトランスジェニック植物の性質の一部は、有害生物集団がこれらの植物によって産生される殺虫性タンパク質に対して抵抗性を発達させるという懸念も引き起こす。Btをベースにした昆虫抵抗性形質の有用性を保つために、いくつかの戦略が提案されており、該戦略は、緩衝帯と組み合わせて高用量のタンパク質を配備すること、異なる毒素と交互にタンパク質を配置すること、あるいは、異なる毒素と共に配備することを含む。(McGaugheyet al(1998)、「B.t. Resistance Management」、Nature Biotechnol.16:144〜146)。
【0005】
昆虫抵抗性管理(IRM)のスタッキングにおいて使用するためのタンパク質は、1種のタンパク質に対して発達した抵抗性が第2のタンパク質に抵抗性を付与しない(すなわち、タンパク質に対する交差抵抗性が存在しない)ように、それらの殺虫効果を独立的に発揮する必要がある。例えば、「タンパク質A」に対する抵抗性のため選択された有害生物集団が「タンパク質B」に対して感受性であるなら、交差抵抗性が存在せず、タンパク質Aとタンパク質Bとの組合せは、タンパク質A単独に対する抵抗性を遅延させる上で有効であると結論付けられる。
【0006】
抵抗性昆虫集団の不在下で、評価は、作用機構および交差抵抗性の可能性に関連すると想定される他の特性をベースにして行うことができる。交差抵抗性を呈示しないと思われる殺虫性タンパク質を同定する上での受容体介在性結合の有用性が、示唆されている(van Mellaert et al, 1999)。この方法に固有の交差抵抗性の欠如の鍵となる予測因子は、殺虫性タンパク質が、感受性昆虫種中の受容体に関して競合しないことである。
【0007】
2種のB.t.Cry毒素が、同一受容体に関して競合する事象において、次いで、その受容体が、その昆虫において変異し、その結果毒素の1つがその受容体にもはや結合せず、かくして昆虫に対してもはや殺虫性でないなら、昆虫は、第2毒素(同一受容体に競合的に結合した)に対しても抵抗性である事例である可能性がある。しかし、2種の毒素が2種の異なる受容体に結合するなら、これは、昆虫が、それらの2種の毒素に対して同時に抵抗性ではないことの兆候である可能性がある。
【0008】
Cry1Abは、多種の害虫から植物を守るために、トランスジェニックトウモロコシにおいて現在使用されている殺虫性タンパク質である。Cry1Abが保護を提供するトウモロコシの鍵となる有害生物は、ユーロピアンコーンボーラーである。
【0009】
さらなるCry毒素は、公式のB.t.命名委員会のウェブサイトに列挙されている(Crickmoreら、lifesci.sussex.ac.uk/home/Neil_Crickmore/Bt/)。添付の付表Aを参照されたい。現在、さらなるCyt毒素およびVIP毒素などと共に、ほぼ60種の「Cry」毒素の主なグループ(Cry1〜Cry59)が存在する。各数字のグループの多くは、大文字のサブグループを有し、大文字のサブグループは小文字のサブグループを有する(例えば、Cry1はA〜Lを有し、Cry1Aはa〜iを有する)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、Cry1Caが、Cry1Abに対して抵抗性であるシュガーケーンボーラー集団を含むシュガーケーンボーラーに対して極めて活性であるという驚くべき発見に部分的には関連する。当業者が本開示の利益について認識するように、Cry1CaおよびCry1Ab(その殺虫性部分を含む)を産生する植物は、これらの殺虫性タンパク質のどちらか単独に対する抵抗性の発達を遅延または予防する上で有用である。cry1Fa遺伝子を、例えば、これらの2種の塩基対遺伝子/タンパク質とスタッキングすることができる可能性もある。
【0011】
本発明は、また、Cry1CaおよびCry1Abが、フォールアーミーワーム(スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda);FAW)からの消化管受容体に結合することに関して互いに競合しないという発見にも関連する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】Cry1Abコア毒素、Cry1Caコア毒素、および125I標識化Cry1Caコア毒素タンパク質によるスポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)BBMVに対する結合に関する競合を示す図である。
【図2】Cry1Caコア毒素、Cry1Abコア毒素、および125I標識化Cry1Abコア毒素タンパク質によるスポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)BBMVに対する結合に関する競合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
配列の簡単な説明
配列番号1:Cry1Caコア/Cry1Abプロトキシンキメラタンパク質(DIG−152)、1164個のアミノ酸
配列番号2:Cry1Caコア毒素
配列番号3:Cry1Abコア毒素
【0014】
本発明は、Cry1Caが、Cry1Abに対して抵抗性であるシュガーケーンボーラー(SCB;ヂアトラエ・サッカラリス(Diatraea saccharalis))集団に対して極めて活性であるという驚くべき発見に部分的には関連する。したがって、本発明は、これらの殺虫性タンパク質のどちらかの単独に対する抵抗性の発達に立ち向かうために、Cry1CaをCry1Abと組み合わせて、またはスタッキングして使用することができるという驚くべき発見に部分的には関連する。言い方を代えれば、本発明は、Cry1Abに対する抵抗性のために選択されたシュガーケーンボーラー集団が、Cry1Caに対して抵抗性でなく;Cry1Ab毒素に対して抵抗性であるシュガーケーンボーラーが、Cry1Caに対して感受性である(すなわち、交差抵抗性でない)という驚くべき発見に部分的には関連する。したがって、本発明は、Cry1Abに対して抵抗性であるシュガーケーンボーラーの集団を防除するためのCry1Ca毒素の使用を包含する。
【0015】
当業者が本開示の利益を認識するように、Cry1CaおよびCry1Ab(その殺虫性部分を含む)を発現する植物は、これらの殺虫性タンパク質のどちらかの単独に対する抵抗性の発達を遅延させる、または予防する上で有用である。
【0016】
本発明は、シュガーケーンおよびその他の商業的に重要な植物種を、シュガーケーンボーラーまたはCry1Abに対する抵抗性を発達させてしまったシュガーケーンボーラー集団によって引き起こされる損傷および収量損失から保護するためのCry1Caの使用を包含する。シュガーケーンボーラーは、トウモロコシの有害生物でもあり得る。このことは、ブラジルおよびアルゼンチンなどの一部の中央および南アメリカ諸国においてとりわけ当てはまる。したがって、例えば、トウモロコシを、本発明により保護することもできる。
【0017】
本発明は、したがって、シュガーケーンボーラーによるCry1Abおよび/またはCry1Caに対する抵抗性の発達を予防または軽減するための昆虫抵抗性管理(IRM)スタッキングを教示する。
【0018】
さらに、放射能標識化Cry1Caおよびスポドプテラ・フルギペラ(Spodoptera frugipera);フォールアーミーワーム(FAW)昆虫の組織を使用する受容体結合研究は、Cry1Abが、Cry1Caが結合する高親和性結合部位に関して競合しないことを示す。これらの結果は、Cry1AbとCry1Caとの組合せを、その双方のタンパク質を産生する植物(トウモロコシおよびシュガーケーンなど)に関してCry1Abおよび/またはCry1Caに対する、昆虫集団(FAWおよびSCBなど)における抵抗性の発達を軽減する有効な手段として使用することができることを指摘している。毒素オーバーレイ研究は、Cry1Caタンパク質が、S.フルギペルダ(S. frugiperda)からのBBMV中の2種のタンパク質、40kDaのものおよび44kDaのものに結合されるが、一方、Cry1Abタンパク質は、非競合結合研究に関係しなかった150kDaのただ1つのタンパク質に結合されることを立証した(Arandaet al, 1996)。
【0019】
したがって、本発明は、また、フォールアーミーワームおよび/またはシュガーケーンボーラーによるどちらかのタンパク質に対する抵抗性の発達を軽減するための、あるいはCry1Abに対する抵抗性を発達させてしまったシュガーケーンボーラー集団に対するIRMスタッキングとしてのCry1CaとCry1Abとの組合せを包含する。
【0020】
本発明は、
Cry1Caコア毒素を含むタンパク質およびCry1Abコア毒素を含むタンパク質を発現する細胞;
Cry1Abコア毒素を含むタンパク質およびCry1Cコア毒素を含むタンパク質の双方を発現するように形質転換された、微生物または植物細胞である宿主(該ポリヌクレオチド(群)は好ましくは、非バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)(に作動可能的に連結した/を含む)プロモーターの調節下の遺伝的構築物中に存在し、該ポリヌクレオチドは、植物中での高められた発現のためのコドン使用頻度を含むことができる);
前記有害生物または前記有害生物の環境を、Cry1Abコア毒素を含むタンパク質を発現する有効量の組成物およびCry1Cコア毒素を含むタンパク質を発現する細胞と接触させることを含む、鱗翅目有害生物の防除方法;
Cry1Caコア毒素を含むタンパク質をコードするDNAおよびCry1Abコア毒素を含むタンパク質をコードするDNAを含む植物(例えば、トウモロコシ植物、またはダイズもしくはワタもしくはシュガーケーン)ならびにこのような植物の種子;
植物(例えば、トウモロコシ植物、またはダイズもしくはワタもしくはシュガーケーンなど)およびこのような植物の種子であって、Cry1Caコア毒素を含むタンパク質をコードするDNAおよびCry1Abコア毒素を含むタンパク質をコードするDNAは、前記トウモロコシ植物中に遺伝子移入されている、種子
を含む鱗翅目有害生物を防除するための組成物を提供する。
【0021】
本発明者らは、例えば、Cry1Ca(組換えシュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas fluorescens)株MR1206/DC639;プラスミドpMYC2547からのタンパク質)が、Cry1Abに対する抵抗性のために選択された人工飼料でのバイオアッセイにおいて、シュガーケーンボーラー(SCB;ジアトラエ・サッカラリス(Diatraea saccharalis))集団を防除する上で極めて有効であることを立証した。このことは、Cry1Caが、Cry1Abに対する抵抗性を発達させてしまったSCB集団を防除する上で、またはSCB集団におけるCry1Ab抵抗性の発達を軽減する上で有用であることを指摘している。
【0022】
部分的には本明細書に記載のデータに基づき、Cry1CaおよびCry1Abを共発現することは、SCBを防除するための高用量IRMスタッキングをもたらすことができる。この組合せに他のタンパク質を添加してスペクトルを付加することができる。例えば、トウモロコシにおいて、Cry1Faの付加は、SCBを防除するためのさらに別のMOAを付加しながら、ユーロピアンコーンボーラー(ECB)、オストリニア・ヌビラリス(Ostrinia nubilalis)(Hubner)に対するIRMスタッキングを創り出すことができる。
【0023】
植物中の潜在的生物殺虫剤としてのCry1Cの総説については、(Avisaret al, 2009)を参照されたい。Avisar D, Eilenberg H, Keller M, Reznik N, Segal M, Sneh B, Zilberstein A(2009)「The Bacillus thuringiensis delta-endotoxin Cry1C as a potential bioinsecticide in plants」Plant Science 176:315〜324。
【0024】
昆虫の受容体。実施例中で説明するように、放射能標識化Cry1Caコア毒素タンパク質を使用する競合受容体結合研究は、Cry1Abコア毒素タンパク質が、FAW昆虫の組織中に存在するCry1Caが結合する高親和性結合部位に関して競合しないことを示す。これらの結果は、Cry1AbおよびCry1Caタンパク質の組合せが、FAW集団におけるCry1Abに対する抵抗性の発達(同様に、Cry1Caに対する抵抗性の発達)を軽減するのに有効な手段であり、双方のタンパク質を発現するトウモロコシ植物におけるこの有害生物に対する抵抗性のレベルをおそらくは増大させることを指摘している。
【0025】
これらのデータは、また、Cry1Caが、Cry1Abに対する抵抗性を発達させてしまったSCB集団を防除する上で有効であることを示唆している。1つの配備選択肢は、Cry1Abが、抵抗性の発達のためSCBを防除する上で無効になってしまった地形において、これらのCryタンパク質を使用することである。もう1つの配備選択肢は、SCBにおけるCry1Abに対する抵抗性の発達を軽減するために、Cry1CaをCry1Abと組み合わせて使用することである。
【0026】
本発明に記載の毒素の組合せは、鱗翅目有害生物を防除するのに使用することができる。鱗翅目の成虫、すなわちチョウおよびガは、主として花蜜を摂食する。幼虫、すなわち毛虫は、ほとんど全てが、植物を摂食し、多くは、深刻な有害生物である。毛虫は、植物の葉の表面または内部を、あるいは根または茎を摂食し、植物から栄養分を奪い、しばしば植物の物理的支持構造を破壊する。さらに、毛虫は、果実、組織、ならびに貯蔵された種子および穀粉を摂食し、販売用のこれらの製品をだいなしにし、それらの価値をひどく減少させる。本明細書中で使用する場合、鱗翅目有害生物に対する言及は、幼虫段階を含むさまざまな生活環の有害生物を指す。
【0027】
本発明のキメラ毒素は、毒素部分の終端を越えたいくつかの箇所に、B.t.毒素の完全コアN末端毒素部分を含み、そのタンパク質は、異種プロトキシン配列への変異を有する。B.t.毒素のN末端毒素部分は、本明細書中で「コア」毒素と呼ばれる。異種プロトキシンセグメントへの変異は、ほぼ毒素/プロトキシン結合部で起こることができ、あるいは代わりに、本来のプロトキシの部分(毒素部分を越えて拡がる)を、下流で起こす異種プロトキシンに対する変異を伴って保持することができる。
【0028】
例として、本発明の1種のキメラ毒素は、Cry1Abの完全コア毒素部分(1〜601のアミノ酸)および異種プロトキシン(602からC末端までのアミノ酸)を有する。好ましい一実施形態において、プロトキシンを含むキメラ毒素の部分は、Cry1Abタンパク質毒素に由来する。第2の例として、配列番号1で開示されるような本発明の第2のキメラ毒素(DIG−152)は、Cry1Caの完全コア毒素部分(1〜619のアミノ酸)および異種プロトキシン(620からC末端までのアミノ酸)を有する。好ましい実施形態において、プロトキシンを含むキメラ毒素の部分は、Cry1Abタンパク質毒素に由来する。
【0029】
当業者は、B.t.毒素が、Cry1Caなどの特定のクラス内でさえも、毒素部分からプロトキシン部分までの長さおよび変異の正確な位置をある程度異にすることを認識するであろう。典型的には、Cry1Ca毒素は、約1150〜約1200のアミノ酸の長さである。毒素部分からプロトキシン部分までの変異は、典型的には、完全長毒素の約50%〜約60%の間で起こる。本発明のキメラ毒素は、このコアN末端毒素部分の完全伸張を含む。したがって、キメラ毒素は、完全長Cry1CaまたはCry1Ab B.t.毒素の少なくとも約50%を含む。これは、典型的には、少なくとも約590個のアミノ酸である。プロトキシン部分に関して、完全伸張のCry1A(b)プロトキシン部分は、毒素部分の終端から分子のC末端まで拡がっている。それは、本発明のキメラ毒素中に含めるための最も重要であるこの部分の最後の約100〜150個のアミノ酸である。
【0030】
遺伝子および毒素。本発明により有用である遺伝子および毒素は、開示された完全長配列のみならず、本明細書中で具体的に例示される毒素の特徴的な殺有害生物活性を保持する、これらの配列のフラグメント、変異体、突然変異体、および融合タンパク質を包含する。本明細書中で使用する場合、用語、遺伝子の「変異体」または「変形形態」は、同一毒素をコードする、または殺有害生物活性を有する同等の毒素をコードするヌクレオチド配列を指す。本明細書中で使用する場合、用語「同等の毒素」は、標的有害生物に対して特許請求される毒素と同一または本質的に同一の生物学的活性を有する毒素を指す。
【0031】
本明細書中で使用する場合、境界は、「Revision of the Nomenclature for the Bacillus thuringiensis Pesticidal Crystal Proteins」(N. Crickmore, D. R. Zeigler, J. Feitelson, E. Schnepf, J. Van Rie, D. Lereclus, J. Baum、およびD. H. Dean、Microbiology and Molecular Biology Reviews (1998) Vol. 62: 807〜813)に従って、ほぼ95%(Cry1Ab類および1Ca類)、78%(Cry1A類およびCry1C類)、および45%(Cry1類)の配列同一性を意味する。これらのカットオフは、また、コア毒素(Cry1AbおよびCry1C毒素)のみに適用することができる。添付の付表Aに列挙されたGENBANK番号も、本明細書中で開示または言及される任意の遺伝子およびタンパク質についての配列を入手するのに使用することができる。
【0032】
当業者にとって、活性毒素をコードする遺伝子を、いくつかの手段を介して同定および入手することができることは明らかなはずである。本明細書中で例示される特定の遺伝子または遺伝子部分は、前記のような培養物寄託機関に寄託されたアイソレートから入手することができる。これらの遺伝子、またはその部分または変異体は、例えば遺伝子シンセサイザーを使用することによって合成的に構築することもできる。種々の遺伝子を、点突然変異を作るための標準的技術を使用して容易に構築することができる。また、これらの遺伝子のフラグメントを、市販のエキソヌクレアーゼまたはエンドヌクレアーゼを標準的手順で使用して調製することができる。例えば、Bal31などの酵素または部位指向性突然変異誘発を使用して、これらの遺伝子の終端からヌクレオチドを系統的に切り離すことができる。また、活性フラグメントをコードする遺伝子を、種々の制限酵素を使用して得ることができる。プロテアーゼを使用して、これらの毒素の活性フラグメントを直接的に得ることができる。
【0033】
例示された毒素の殺有害生物活性を保持するフラグメントおよび等価体は、本発明の範囲に包含される。また、遺伝子コードの冗長性のため、種々の異なるDNA配列が、本明細書に記載のアミノ酸配列をコードすることができる。同一または本質的に同一の毒素をコードするこれらの代わりのDNA配列を創り出すことは、当業者の技術に包含される。これらの変異体DNA配列は、本発明の範囲に包含される。本明細書中で使用する場合、「本質的に同一の」配列への言及は、殺有害生物活性に実質的に影響を及ぼさない、アミノ酸の置換、欠失、付加、または挿入を有する配列を指す。殺有害生物活性を保持するフラグメントも、この定義に包含される。
【0034】
毒素をコードする遺伝子および本発明により有用である遺伝子部分を同定するためのさらなる方法は、オリゴヌクレオチドプローブの使用により行われる。これらのプローブは、検出可能なヌクレオチド配列である。これらの配列は、適切な標識によって検出することができ、あるいは国際公開第93/16094号に記載のように、本来的に蛍光を発するように調製することができる。当技術分野で周知のように、プローブ分子および核酸サンプルが、2つの分子間で強力な結合を形成することによってハイブリダイズするなら、プローブおよびサンプルは、実質的相同性を有すると合理的に推量することができる。好ましくは、ハイブリダイゼーションは、例えばKeller, G. H., M. M. Manak (1987) DNA Probes, Stockton Press, New York.,pp169〜170中に記載のような当技術分野で周知の技術によるストリンジェントな条件下で実施される。塩濃度と温度との組合せのいくつかの例は次の通りである(ストリンジェンシーを増加する順で):室温での2X SSPEまたはSSC;42℃での1X SSPEまたはSSC;42℃での0.1X SSPEまたはSSC;65℃での0.1X SSPEまたはSSC。プローブの検出は、ハイブリダイゼーションが起こったかどうかを既知の方式で判定するための手段を提供する。このようなプローブ分析は、本発明の毒素をコードする遺伝子を同定するための迅速な方法を提供する。本発明によりプローブとして使用されるヌクレオチドセグメントは、DNAシンセサイザーおよび標準的な手順を使用して合成することができる。これらのヌクレオチド配列を、本発明の遺伝子を増幅するためのPCRプライマーとして使用することもできる。
【0035】
本発明の特定の毒素は、本明細書中で具体的に例示されている。これらの毒素は、本発明の毒素の単に例示であるので、本発明は、例示される毒素と同一または類似の殺有害生物活性を有する変異体または同等の毒素(および同等の毒素をコードするヌクレオチド配列)を含むことが容易に想到されよう。同等の毒素は、例示される毒素とアミノ酸の相同性を有する。このアミノ酸の相同性は、典型的には、75%を超え、好ましくは90%を超え、最も好ましくは95%を超える。アミノ酸の相同性は、生物学的活性の源泉である毒素の重要な領域で最も高く、あるいは最終的に生物学的活性の原因である三次元立体配置の決定に必要とされる。これに関して、特定アミノ酸の置換は、これらの置換が活性に対して重要でない領域中に存在するか、あるいは分子の三次元立体配置に影響を及ぼさない保存的アミノ酸置換であるなら、許容され、予測され得る。例えば、アミノ酸は、次のクラス:無極性、無電荷極性、塩基性、および酸性に分けることができる。あるクラスのアミノ酸を、同一タイプの別のアミノ酸に置き換える保存的置換は、その置換が化合物の生物学的活性を実質的に変更しない限り、本発明の範囲に包含される。表1に、各クラスに属するアミノ酸の例を列挙する。
【0036】
【表1】

【0037】
一部の例において、非保存的置換も行うことができる。重要な要素は、これらの置換が、毒素の生物学的活性を顕著に損なってはならないことである。
【0038】
組換え宿主。本発明の毒素をコードする遺伝子は、広範な種類の微生物または植物宿主中に導入することができる。毒素遺伝子の発現は、直接的または間接的に、殺有害生物剤の細胞内産生および維持をもたらす。接合伝達および組換え伝達を使用して、本発明の双方の毒素を発現するB.t.株を創り出すことができる。他の宿主生物体を、一方または双方の毒素遺伝子で形質転換し、次いで、相乗効果を達成するのに使用することもできる。適切な微生物宿主、例えばシュードモナス(Pseudomonas)を用いて、微生物を、有害生物の場所に適用することができ、そこで、微生物は増殖し、摂食される。結果は、有害生物の防除である。別法として、毒素遺伝子を宿す微生物を、毒素の活性を延長し細胞を安定化する条件下で処理することができる。毒素活性を維持している被処理細胞を、次いで、標的有害生物の環境に適用することができる。
【0039】
B.t.毒素遺伝子を適切なベクターを介して微生物宿主中に導入し、前記宿主が、生存状態で環境に適用される場合、特定の宿主微生物を使用することが必須である。対象の1種または複数の作物の「植物圏」(葉面、葉圏、根圏、および/または根面)を占拠することが知られている微生物宿主が選択される。これらの微生物は、特定の環境(作物およびその他の昆虫の生息地)中で野生型微生物と成功裡に競争する能力があり、ポリペプチド殺有害生物剤を発現する遺伝子の安定な維持および発現を提供し、望ましくは殺有害生物剤の環境での分解および不活化からの改善された保護を提供するように選択される。
【0040】
多数の微生物が、広範な種類の重要作物の葉面(植物の葉の表面)および/または根圏(植物の根を取り囲む土壌)に居住することが知られている。これらの微生物には、細菌、藻類、および真菌が含まれる。とりわけ興味のあるのは、細菌、例えば、シュードモナス(Pseudomonas)、エルウィニア(Erwinia)、セラチア(Serratia)、クレブシエラ(Klebsiella)、キサントモナス(Xanthomonas)、ストレプトミセス(Streptomyces)、リゾビウム(Rhizobium)、ロドシュードモナス(Rhodopseudomonas)、メチロフィリウス(Methylophilius)、アグロバクテリウム(Agrobacterium)、アセトバクター(Acetobacter)、ラクトバチルス(Lactobacillus)、アルスロバクター(Arthrobacter)、アゾトバクター(Azotobacter)、ロイコノストック(Leuconostoc)、およびアルカリゲネス(Alcaligenes)属;真菌とりわけ酵母、例えば、サッカロミセス(Saccharomyces)、クリプトコッカス(Cryptococcus)、クリベロマイセス(Kluyveromyces)、スポロボロマイセス(Sporobolomyces)、ロドトルラ(Rhodotorula)、およびアウレオバシジウム(Aureobasidium)属などの微生物である。とりわけ興味のあるのは、シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)、シュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas fluorescens)、セラチア・マルセセンス(Serratia marcescens)、アセトバクター・キシリナム(Acetobacter xylinum)、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)、ロドシュードモナス・スフェロイデス(Rhodopseudomonas spheroides)、キサントモナス・カンペストリス(Xanthomonas campestris)、リゾビウム・メリロチ(Rhizobium melioti)、アルカリゲネス・エントロファス(Alcaligenes entrophus)、およびアゾトバクター・ビンランジ(Azotobacter vinlandii)などの植物圏細菌種;ならびにロドトルラ・ルブラ(Rhodotorula rubra)、R.グルチニス(R. glutinis)、R.マリナ(R. marina)、R.アウランティアカ(R. aurantiaca)、クリプトコッカス・アルビダス(Cryptococcus albidus)、C.ジフルエンス(C. diffluens)、C.ラウレンティ(C. laurentii)、サッカロミセス・ロセイ(Saccharomyces rosei)、S.プレトリエンシス(S. Pretoriensis)、S.セレビシエ(S. cerevisiae)、スポロボロマイセス・ロセウス(Sporobolomyces roseus)、S.オドルス(S. odorus)、クリベロマイセス・ベロナエ(Kluyveromyces veronae)、およびアウレロバシジウム・ポルランス(Aureobasidium pollulans)などの植物圏酵母種である。とりわけ興味のあるのは、有色微生物である。
【0041】
広範な種類の方法が、毒素をコードするB.t.遺伝子を、遺伝子の安定な維持および発現を可能にする条件下で微生物宿主中に導入するのに利用することができる。これらの方法は、当技術分野で周知であり、参照により本明細書に組み込まれる、例えば、米国特許第5,135,867号中に記載されている。
【0042】
細胞の処理。B.t.毒素を発現するバチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)または組換え細胞を処理して、毒素活性を延長し、細胞を安定化することができる。形成される殺有害生物のマイクロカプセルは、安定化され、該マイクロカプセルを標的有害生物の環境に適用する場合に毒素を保護する細胞構造内にB.t.毒素または毒素群を含む。適切な宿主細胞としては、原核生物または真核生物を挙げることができ、通常、哺乳動物などの高等生物体に対して毒性のある物質を産生しないそれらの細胞に限定される。しかし、その毒性物質が不安定であるか、あるいは哺乳動物宿主に対する任意の毒性の可能性を回避するような十分に低い適用レベルにある場合、高等生物体に対して毒性のある物質を産生する生物体を使用することができる可能性もある。宿主として、とりわけ興味のあるのは、原核生物、および真菌などのより低級の真核生物である。
【0043】
細胞は、処理される場合、通常、無傷であり、芽胞形態であるよりも、むしろ実質上増殖形態であるが、一部の例では、芽胞を採用することができる。
【0044】
微生物細胞、例えば、B.t.毒素遺伝子または遺伝子群を含む微生物の処理は、その技術が毒素の特性に有害な影響を及ぼさず、また毒素を保護する細胞の能力を損ねない限り、化学的または物理的手段によって、あるいは化学的および/または物理的手段の組合せによって行うことができる。化学試薬の例が、ハロゲン化剤、とりわけ原子番号17〜80のハロゲンである。より詳細には、ヨウ素を、温和な条件下で、所望の結果を達成するのに十分な時間使用することができる。その他の適切な技術は、グルタルアルデヒドなどのアルデヒド;塩化ゼフィランおよび塩化セチルピリジニウムなどの抗感染薬;イソプロピルおよびエタノールなどのアルコール;複方ヨード・グリセリン、Bouin固定液、各種の酸およびHelly固定液などの組織固定液(Humason, Gretchen L.,Animal Tissue Techniques W. H. Freeman and Company, 1967参照);または細胞が宿主環境に投与される場合に細胞中で産生される毒素の活性を保存し延長する物理的(熱)および化学的作用物の組合せを用いる処理を包含する。物理的手段の例が、ガンマ線およびX線などの短波長放射線、凍結、UV照射、凍結乾燥などである。微生物細胞の処理方法は、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第4,695,455号および4,695,462号中に開示されている。
【0045】
細胞は、一般に、環境条件に対する抵抗性を増強する高められた構造安定性を有する。殺有害生物剤がプロ型で存在する場合、細胞処理法は、標的有害生物病原体による殺有害生物剤のプロ型の成熟形態へのプロセッシングを阻害しないように選択されるべきである。例えば、ホルムアルデヒドは、タンパク質を架橋し、ポリペプチド系殺有害生物剤のプロ型のプロセッシングを阻害する可能性がある。処理方法は、毒素のバイオアベイラビリティーまたは生物活性の少なくとも実質的部分を維持すべきである。
【0046】
製造の目的で宿主細胞を選択する上でとりわけ興味のある特性には、B.t.遺伝子または遺伝子群を宿主中に導入する容易さ、発現系の利用可能性、発現の効率、宿主中での殺有害生物剤の安定性、および補足的遺伝子能力の存在が含まれる。殺有害生物剤のマイクロカプセルとして使用するのに興味のある特性には、厚い細胞壁、色素形成、および封入体の細胞内詰め込みまたは形成などの殺有害生物剤のための保護特性;水性環境中での生き残り;哺乳動物毒性の欠如;有害生物に対する摂食への誘因性;毒素への損傷のない死滅および固定の容易さなどが含まれる。その他の考慮には、製剤および取扱いの容易さ、経済性、貯蔵安定性などが含まれる。
【0047】
細胞の増殖。B.t.殺虫性遺伝子または遺伝子群を含む細胞宿主を、任意の好都合な栄養培地中で増殖させることができ、そこで、DNA構築物は選択的利益を提供し、全てまたは実質的に全ての細胞が、B.t.遺伝子を維持するように選択培地を提供する。次いで、これらの細胞を通常的な方法により採取することができる。別法として、採取に先立って細胞を処理することができる。
【0048】
本発明の毒素を産生するB.t.細胞を、標準的技術の培地および発酵技術を使用して培養することができる。発酵サイクルを完結したら、当技術分野で周知の手段で発酵培養液からB.t.芽胞および結晶をまず分離することによって、細菌を採取することができる。回収されたB.t.芽胞および結晶を、界面活性剤、分散剤、不活性担体、ならびに取扱いおよび特定の標的有害生物に対する適用を容易にするためのその他の成分を添加することによって、湿潤性粉末、液体濃縮物、顆粒またはその他の製剤に製剤することができる。これらの製剤化および適用方法は、全て当技術分野で周知である。
【0049】
製剤化。誘引剤、ならびに芽胞、結晶、およびB.t.アイソレートの毒素、または本明細書に開示のB.t.アイソレートから得ることのできる遺伝子を含む組換え微生物を含む製剤されたベイト顆粒を、土壌に適用することができる。製剤された製品を、種子被覆もしくは根の処理、または作物サイクルの後期段階での全植物処理として適用することもできる。B.t.細胞の植物および土壌処理を、無機鉱物(フィロケイ酸塩、炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩など)または植物材料(粉末化されたトウモロコシの穂軸、コメ籾殻、クルミ殻など)などの種々の不活性材料と混合することによって、湿潤性粉末、顆粒または粉塵として採用することができる。製剤は、展着−固着補助剤、安定化剤、その他の殺有害生物剤用添加剤、または界面活性剤を含むことができる。液体製剤は、水をベースにしたまたは非水性でよく、発泡剤、ゲル剤、懸濁剤、乳化性濃縮剤などとして採用される。成分は、レオロジー剤、界面活性剤、乳化剤、分散剤、またはポリマーを含むことができる。
【0050】
当業者によって認識されるように、殺有害生物剤の濃度は、特定の製剤の性質、とりわけそれが濃縮物であるか、あるいは直接的に使用されるかに応じて広範に変化する。殺有害生物剤は、少なくとも1重量%で存在し、100重量%であってもよい。無水製剤は、約1〜95重量%の殺有害生物剤を有し、一方、液体製剤は、一般に、液相中に約1〜60重量%の固体が存在する。製剤は、一般に、mgあたり約10〜10個の細胞を有する。これらの製剤は、ヘクタール当たり約50mg(液体または乾体)〜1kg以上で投与される。
【0051】
製剤は、鱗翅目有害生物の環境、例えば、葉茎または土壌に、噴霧、散布、散水などによって適用することができる。
【0052】
植物の形質転換。本発明の殺虫性タンパク質を産生させるのに好ましい組換え宿主は、形質転換された植物である。本明細書に開示のようなB.t.毒素タンパク質をコードする遺伝子を、当技術分野で周知の種々の技術を使用して植物細胞中に挿入することができる。例えば、大腸菌(Escherichia coli)中の複製系を含む多数のクローニングベクター、および形質転換された細胞の選択を可能にするマーカーは、外来遺伝子を高等植物中に挿入するための準備に利用可能である。ベクターは、例えば、とりわけpBR322、pUCシリーズ、M13mpシリーズ、pACYC184を含む。したがって、B.t.毒素タンパク質をコードする配列を有するDNAフラグメントを、適切な制限部位でベクター中に挿入することができる。生じるプラスミドは、大腸菌(E. coli)中への形質転換に使用される。大腸菌(E. coli)細胞を、適切な栄養培地中で培養し、次いで採取し、溶菌する。プラスミドを回収する。配列解析、切断解析、電気泳動、およびその他の生化学−分子生物学的方法が、解析方法として一般的に実施される。各操作の後、使用されるDNA配列を開裂し、次のDNA配列に連結することができる。各プラスミド配列を、同一または他のプラスミド中にクローン化することができる。所望の遺伝子を植物中に挿入する方法に応じて、他のDNA配列を必要とする可能性がある。例えば、植物細胞の形質転換にTiまたはRiプラスミドを使用するなら、TiまたはRiプラスミドT−DNAの少なくとも右境界、しばしば右および左境界を、挿入すべき遺伝子の隣接領域として連結すべきである。植物細胞の形質転換のためのT−DNAの使用は、徹底的に研究され、欧州特許第120516号、LeeおよびGelvin(2008)、Hoekema(1985)、Fraleyet al(1986)、およびAn et al(1985)中に十分に記載されており、当技術分野で十分確立されている。
【0053】
挿入されたDNAが植物ゲノム中で統合されると、それは、比較的安定である。形質転換ベクターは、通常、形質転換された植物細胞に、殺生物剤、あるいはとりわけビアラホス、カナマイシン、G418、ブレオマイシン、またはヒグロマイシンなどの抗生物質に対する抵抗性を付与する選択マーカーを含む。個別的に採用されるマーカーは、したがって、挿入DNAを含まない細胞よりも形質転換された細胞の選択を可能にするべきである。
【0054】
多数の技術が、DNAを植物宿主細胞中に挿入するのに利用可能である。これらの技術には、形質転換剤としてアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)またはアグロバクテリウム・リゾゲネス(Agrobacterium rhizogenes)、融合、注入、遺伝子銃(微粒子照射)、またはエレクトロポレーション、ならびにその他の可能な方法を使用する、T−DNAでの形質転換が含まれる。形質転換にアグロバクテリアを使用するなら、挿入すべきDNAを、特別のプラスミド中に、すなわち、中間ベクター中に、またはバイナリーベクター中にクローン化すべきである。中間ベクターを、T−DNA中の配列に相同である配列のための相同組換えによってTiまたはRiプラスミド中に統合することができる。TiまたはRiプラスミドは、また、T−DNAの移動に必須であるvir領域を含む。中間ベクターは、アグロバクテリア中でそれ自身を複製することができない。中間ベクターを、ヘルパープラスミド(複合化)を使用して、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)中に移動させることができる。バイナリーベクターは、大腸菌(E. coli)およびアグロバクテリウムの双方中でそれ自身を複製することができる。それらは、選択マーカー遺伝子、および右および左T−DNA境界領域によって枠取られたリンカーまたはポリリンカーを含む。それらを、アグロバクテリア中に直接的に形質転換することができる(Holstersら、1978)。宿主細胞として使用されるアグロバクテリウム(Agrobacterium)は、vir領域を所持するプラスミドを含むはずである。vir領域は、T−DNAの植物細胞中への移行に必須である。さらなるT−DNAを含むことができる。そのように形質転換されたバクテリウムは、植物細胞の形質転換に使用される。植物の外植体を、DNAを植物細胞中へ移行するためにアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)またはアグロバクテリウム・リゾゲネス(Agrobacterium rhizogenes)と共に有利に培養することができる。次いで、全植物を、選択のための抗生物質または殺生物剤を含んでいてもよい適切な培地中で、感染植物材料(例えば、葉片、茎、根の部分、さらには原形質体または懸濁培養細胞)から再生することができる。そうして得られる植物を、次いで、挿入されたDNAの存在について試験することができる。注入およびエレクトロポレーションの場合、プラスミドに関する特別の要求はなされない。例えば、pUC誘導体などの通常のプラスミドを使用することが可能である。
【0055】
形質転換された細胞は、植物中、通常の方式で増殖する。それらは、胚細胞を形成し、形質転換された形質(群)を子孫植物に伝達することができる。このような植物を、通常の方式で育成し、同一の形質転換された遺伝要因または他の遺伝要因を有する植物と交配させることができる。生じるハイブリッド個体は、対応する表現型特性を有する。
【0056】
本発明の好ましい実施形態において、植物は、そのコドン使用頻度が植物に対して最適化された遺伝子で形質転換される。参照により本明細書に組み込まれる、例えば、米国特許第5380831号を参照されたい。一部の末端欠失型毒素を本明細書中で例示するが、Btの技術分野で、130kDa型(完全長)毒素は、コア毒素であるN末端の半分、およびプロトキシンの「尾部」であるC末端の半分を有することが周知である。したがって、適切な「尾部」を、本発明の末端欠失型/コア毒素と共に使用することができる。例えば、米国特許第6218188号および米国特許第6673990号を参照されたい。さらに、植物中で使用するための合成のBt遺伝子を創り出す方法は、当技術分野で周知である(StewartおよびBurgin、2007)。好ましい形質転換植物の1つの非限定的例が、Cry1Faタンパク質をコードする植物で発現可能な遺伝子を含み、かつCry1Caタンパク質をコードする植物で発現可能な第2遺伝子をさら含む受精能力のあるトウモロコシ植物である。
【0057】
Cry1AbおよびCry1C形質(群)の近交系トウモロコシ系統中への移行(遺伝子移入)は、反復選択育種によって、例えば、戻し交配によって達成することができる。この場合、所望の反復親を、まず、Cry1AbおよびCry1C形質に対して適切な遺伝子(群)を所持する供与近交系(非反復親)に交配させる。この交配の子孫を、次いで、反復親へ戻し接合し、続いて非反復親から移行される予定の所望の形質(群)について生じる子孫の中で選択する。所望の形質(群)に関する選択を伴う、反復親との3、好ましくは4、より好ましくは5世代以上の戻し交配の後に、子孫は、移行される形質(群)を調節する遺伝子座に関してヘテロ接合性であるが、他の遺伝子のほとんどまたはほとんど全てに関して反復親に似ている(例えば、Poehlman & Sleper (1995) Breeding Field Crops 4th Ed., 172〜175;Fehr (1987) Principles of Cultivar Development Vol.1 :Theory and Technique, 360〜376参照)。
【0058】
昆虫抵抗性管理(IRM)の戦略。例えば、Roushらは、殺虫性トランスジェニック作物の管理のために、「ピラミッド化」または「スタッキング」とも呼ばれる2毒素戦略を概説している(The Royal Society. Phil. Trans. R. Soc. Lond. B. (1998) 353, 1777〜1786)。それらのウェブサイト(epa.gov/oppbppd1/biopesticides/pips/bt_corn_refuge_2006.htm)上で、米国環境保護庁は、標的有害生物に対して活性な単一のBtタンパク質を産生するトランスジェニック作物を使用するための非トランスジェニック(すなわち、非B.t.)緩衝帯(非Bt作物/トウモロコシのブロック)を準備するための種の次の要件を発表している。
【0059】
コーンボーラーから保護されるBt(Cry1AbまたはCry1F)トウモロコシ製品のための特定の構造化要件は次の通りである:
構造化緩衝帯:
トウモロコシ地域の20%の非鱗翅目Btトウモロコシ緩衝帯
ワタ地域の50%の非鱗翅目Bt緩衝帯
ブロック:
1.内部(すなわち、Bt耕地内)
2.外部(すなわち、無作為接合を最大化するためのBt耕地の1/2マイル(可能なら1/4マイル)以内の分離された耕地)
圃場内帯状地
帯状地は、幼虫移動の効果を低減するために少なくとも4列の幅(好ましくは6列)でなければならない。
【0060】
また、全米トウモロコシ耕作者協会(National Corn Growers Association)は、彼らのウェブサイト(ncga.com/insect-resistance-management-fact-sheet-bt-corn)上で、要件に関する類似の指針を提供している。例えば、
コーンボーラーのIRMの要件
・トウモロコシ耕地少なくとも20%に保護ハイブリッド種を植え付ける
・ワタを作る地域では、緩衝帯は50%でなければならない
・保護ハイブリッド種の1/2マイル以内に植え付けるべきである
・緩衝帯は、Bt圃場内に帯状地として植えることができ;緩衝帯の帯状地は少なくとも4列の幅でなければならない
・緩衝帯は、標的昆虫に対して経済的閾値に到達するなら、通常の殺有害生物剤だけで処理することができる
・Btをベースにした噴霧可能な殺虫剤は、緩衝帯のトウモロコシに用いることができない
・適切な緩衝帯は、あらゆる農場にBtトウモロコシを植えるべきである
【0061】
Roush et alが述べているように(例えば、1780および1784頁の右欄)、標的有害生物に対してそれぞれ有効で、交差抵抗性がほとんどまたはまったくない異なる2種のタンパク質のスタッキングまたはピラミッド化は、より小さな緩衝帯の使用を可能にすることができる。Roushは、成功的なスタッキングの場合、10%未満の緩衝帯の大きさが、単一(非ピラミッド化)形質に関して約50%の緩衝帯に匹敵する抵抗性管理を提供できることを示唆した。現在利用可能なピラミッド化Btトウモロコシ製品の場合、米国環境保護庁は、単一形質の製品の場合(一般には20%)に比べて、植え付けられる非Btトウモロコシのかなりより少ない(一般には5%)構造化緩衝帯を要求している。
【0062】
上記のパーセンテージ(1F/1Abに対するものなど)のいずれか、または類似の緩衝帯比率を、対象の2倍または3倍のスタッキングまたはピラミッド化のために使用することができる。本発明は、このような緩衝帯を備えて(または備えないで)植え付けられ、かつ本発明による植物を有する例えば10エーカーを超える商業的土地を含む。
【0063】
Roush、および例えば米国特許第6,551,962号でさらに考察されているように、袋内種子混合物(in-bag seed mixture)のための耕地における種々の幾何的植え付けパターン(上述のような)を含む、緩衝帯を準備する種々の方法が存在する。
【0064】
本明細書中で言及または引用される全ての特許、特許出願、仮出願、および刊行物は、それらが本明細書の明確な教示と矛盾しない程度まで、参照によりその全体で組み込まれる。特別に指摘または暗示しない限り、用語[a]、「an」および「the」は、本明細書中で使用する場合、「少なくとも1つ」を意味する。
【0065】
次の実施例は本発明を例示する。この実施例を限定と解釈すべきでない。
【実施例】
【0066】
〔実施例1〕
Cry1コア毒素および異種プロトキシンを含むキメラ毒素の設計、ならびにシュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas fluorescens)中で産生されるDIG−152タンパク質の殺虫活性
キメラ毒素。別のCry毒素のプロトキシンセグメントに融合されたあるCry毒素のコア毒素ドメインを利用するキメラタンパク質は、例えば、米国特許第5593881号および米国特許第5932209号中に既に報告されている。
【0067】
本発明のCry1Caキメラタンパク質変異体は、コア毒素セグメントの終端を越えたいくつかの箇所で異種δエンドトキシンプロトキシンセグメントに融合されたCry1Ca3殺虫性毒素に由来するN末端コア毒素セグメントを含むキメラ毒素を包含する。コア毒素から異種プロトキシンセグメントへの移行は、ほぼ本来のコア毒素/プロトキシン結合部で起こることができ、本来のプロトキシンのora部分(コア毒素セグメントを越えて拡がる)を、下流に現れる異種プロトキシンへの移行を伴って維持することができる。変異体方式において、コア毒素およびプロトキシンセグメントは、それらが由来する本来の毒素のアミノ酸配列を正確に含むことができ、あるいは互いに融合された場合にセグメントの生物学的機能を減弱せず、増強することのできるアミノ酸の付加、欠失、または置換を含むことができる。
【0068】
例えば、本発明のキメラ毒素は、Cry1Ca3に由来するコア毒素セグメントおよび異種プロトキシンを含む。本発明の好ましい実施形態において、Cry1Ca3に由来するコア毒素セグメント(619個のアミノ酸)は、Cry1Abδエンドトキシンに由来するプロトキシンセグメントを含む異種セグメント(545個のアミノ酸)に融合される。本明細書中でDIG−152と呼ばれるキメラタンパク質の1164個のアミノ酸の配列は、配列番号1として開示される。Cry1Ca3コア毒素変異体およびCry1Abに由来するプロトキシンを含む他のキメラ融合体も本発明の範囲に包含されると理解されたい。
【0069】
DIG−152タンパク質の鱗翅目殺虫活性は、シュガーケーンボーラー(SCB;ジアトラエ・サッカラリス(Diatraea saccharalis))の新生幼虫およびCry1Ab抵抗性SCB(rSCB)に対して、飼料組込み法を利用する用量反応実験で立証された。DIG−152封入体は、200μLの細菌プロテアーゼ阻害剤(Sigma P4865;供給業者の説明書に従って調製)を添加した7.5mLの100mM CAPS(pH11)、1mM EDTA中、4℃で4時間穏やかに揺動することによって可溶化された。遠心して不溶物をペレット化した後、原液のタンパク質濃度を、100mM CAPS(pH11)中、4.0mg/mLに調節した。昆虫でのバイオアッセイのため、ほぼ0.7mLの飼料を128セルトレー(Bio−Ba−128、C−D International)の個々のセルに分配する直前に、0.030μg〜102μg/g(飼料)の範囲のDIG−152タンパク質濃度を、適切な量をメリディック飼料(meridic diet)(Bio−Serv、Frenchtown、ニュージャージー州)と混合することによって準備した。
【0070】
トリプシンで活性化されたCry1Abタンパク質(殺虫活性に関する陽性対照として使用される)を、0.03125μg〜32μg/g(飼料)(飼料調製の前に、凍結乾燥粉末を適切な量の蒸留水と混合することによって調製された)の範囲で試験した。
【0071】
蒸留水(ブランク対照、Cry1Ab試験用)または緩衝液のみ(100mM CAPS、pH11、DIG−152試験用)を用いて調製された飼料を、対照処理として使用した。1頭のD.サッカラリス(D. saccharalis)の新生幼虫(孵化後24時間未満)を、各セルの飼料表面に放出した。幼虫を植え付けた後、孔を空けた蓋(C−D International)でセルを覆い、バイオアッセイトレーを、28℃、50%RH、16時間:8時間(明:暗)の光周期で維持された環境チャンバー中に配置した。幼虫死亡率、幼虫重量、重量増加を示さなかった(幼虫につき0.1mg未満)生き残り幼虫の数を、植え付けの7日後に記録した。昆虫株/Cryタンパク質濃度の各組合せを、各繰返しに16〜32頭の幼虫を用いて、4回繰り返した。
【0072】
幼虫死亡率の判断基準は、死亡(病的)幼虫および体重の有意な増加を示さなかった(すなわち、幼虫につき0.1mg未満)生き残り(発育阻害された、摂食しない)幼虫の双方を考慮した「実質的」死亡率として評価した。処理された幼虫の実質的死亡率を、次の等式を使用して計算した:
実質的死亡率(%)=[TDS/TNIT]×100
ここで、TDSは、死亡幼虫の総数+発育を阻害された幼虫の数であり、TNITは、処理された昆虫の総数である。
【0073】
各D.サッカラリス(D. saccharalis)株の「実質的」死亡率(以後、死亡率と簡略化する)を、Cry1Ab処理後の結果を分析するための水ブランク対照飼料、またはDIG−152処理のための緩衝液のみで処理された飼料に関して観察された幼虫死亡率に対して補正した。
【0074】
用量反応実験の結果を、さらに分析して、GI50値[すなわち、幼虫成長阻害(%GI)値が50である、飼料中のB.t.タンパク質濃度]を確立した。Cry1Abタンパク質を含む飼料に関する幼虫の%GI値を、次式を使用して計算した:
%GI=[TWC−TWT]/TWC×100
ここで、TWCは、水対照飼料で給餌されている幼虫の総体重であり、TWTは、Cry1Ab処理飼料で給餌されている幼虫の総体重であり、一方、DIG−152タンパク質摂取の結果としての幼虫の%GIを分析するため、次式を使用して%GI計算した:
%GI=[TWB−TWT]/TWB×100
ここで、TWBは、緩衝液のみの対照処理飼料で給餌されている幼虫の総体重であり、TWTは、DIG−152処理飼料で給餌されている幼虫の総体重である。
【0075】
100%の幼虫成長阻害は、有意な体重増加(幼虫につき0.1mg未満)を有する幼虫が存在しない場合に繰返しに割り振られた。成長阻害データを、昆虫系統およびCryタンパク質濃度を2つの主要因子とした二元ANOVAを使用して解析した。LSMEANS検定を使用して、α=0.05のレベルでの処理差を判定した。
【0076】
ジアトラエ・サッカラリス(Diatraea saccharalis)幼虫での飼料組込みバイオアッセイの結果を表2に示す。
【0077】
【表2】

【0078】
データ解析。補正した用量/死亡率データを、次いで、50%の死亡率をもたらす処理タンパク質濃度の値(LC50)および対応する95%信頼区間(CI)を決定するためのプロビット分析に供した。プロビット分析で使用する処理には、ゼロ死亡率をもたらした最高濃度、100%死亡率をもたらした最低濃度、およびそれらの極値間の全ての結果を含めた。抵抗率を、rSCB系統のLC50値をSCB昆虫のそれで除算することによって計算した。致死用量比率の検定を使用して、抵抗率がα=0.05のレベルで有意であるかどうかを判定した。また、二元ANOVAを使用して、死亡率データを解析し、続いて、α=0.05のレベルでのLSMEANS検定を使用して処理差を判定した。解析の結果を表3に示す。
【0079】
【表3】

【0080】
同様の生物学的応答を与える活性化Cry1Abタンパク質のそれに類似したレベルでのDIG−152タンパク質の摂取の後に、新生シュガーケーンボーラー(ジアトラエ・サッカラリス(Diatraea saccharalis))幼虫の成長を阻害する、または幼虫を死滅させることは、本発明のDIG−152タンパク質の特徴である。さらに、Cry1Abタンパク質の毒性効果に対して抵抗性であるジアトラエ・サッカラリス(Diatraea saccharalis)幼虫が、それにもかかわらず、DIG−152タンパク質の毒性作用に対して感受性であることは、DIG−152タンパク質の特徴である。
【0081】
〔実施例2〕
キメラタンパク質をコードする発現プラスミドの構築およびシュードモナス(Pseudomonas)中での発現
完全長DIG−152キメラタンパク質を産生するように遺伝子操作された、シュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas fluorescens)(Pf)発現構築物pMYC2547の構築では、標準的なクローニング法[例えば、Sambrook et al(1989)およびAusubelet al(1995)、ならびにこれらの更新版中に記載のような]を使用した。タンパク質の産生は、米国特許第5169760号中に開示のように、改変されたlacオペロンの挿入を有するシュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas fluorescens)株MB214(株MB101の誘導体;P.フルオレセンス(P. fluorescens)次亜種I)中で実施した。基本的なクローニング戦略は、DIG−152をコードするDNAフラグメントをプラスミドベクター中にサブクローニングすることを必要とし、それによって、該プラスミドベクターは、プラスミドpKK223−3(PL Pharmacia、Milwaukee、ウィスコンシン州)からのPtacプロモーターおよびrrnBTIT2ターミネーターの発現調節下に置かれる。1つのこのようなプラスミドは、pMYC2547と命名され、このプラスミドを抱えるMB214アイソレートはDpf108と命名される。
【0082】
振盪フラスコ中での増殖および発現の解析。特徴づけおよび昆虫でのバイオアッセイのためのDIG−152タンパク質の産生は、振盪フラスコ中で増殖させたP.フルオレセンス(P. fluorescens)株Dpf108によって完遂された。Ptacプロモーターによって駆動されるDIG−152タンパク質の産生は、米国特許第5527883号中に以前に記載されているように実施した。微生物学的操作の詳細は、参照により本明細書に組み込まれるSquireset al(2004)、米国特許出願公開第2006/0008877号、米国特許出願公開第2008/0193974号、および米国特許出願公開第2008/0058262号中で入手可能である。発現は、振盪しながら30℃で24時間の初期インキュベーションの後に、イソプロピル−β−D−1−チオガラクトピラノシド(IPTG)を添加することによって誘導された。培養物を、誘導時点および誘導後のいくつかの時点でサンプリングした。細胞密度を、600nmでの光学密度(OD600)によって測定した。
【0083】
振盪フラスコ中のサンプルの細胞分画およびSDS−PAGE分析。各サンプリング時点で、サンプルの細胞密度をOD600=20に調節し、1mLのアリコートを14000×gで5分間遠心した。細胞ペレットを−80℃で凍結した。凍結された振盪フラスコ内細胞ペレットサンプルから溶性および不溶性画分を、EasyLyse(商標)細菌タンパク質抽出溶液(EPICENTRE(登録商標)Biotechnologies、Madison、ウィスコンシン州)を使用して作り出した。各細胞ペレットを、1mLのEasyLyse(商標)溶液に再懸濁し、さらに溶解緩衝液中に1:4で希釈し、振盪しながら室温で30分間インキュベートした。溶菌液を、4℃、14,000rpmで20分間遠心し、上清液を溶性画分として回収した。次いで、ペレット(不溶性画分)を、等容のリン酸緩衝生理食塩水(PBS;11.9mM NaHPO、137mM NaCl、2.7mM KCl、pH7.4)に再懸濁した。
【0084】
サンプルを、β−メルカプトエタノールを含む2X Laemmliサンプル緩衝液(Sambrooket al、同上)と1:1で混合し、Criterion XTBis−Tris 12%ゲル(Bio−Rad Inc.、Hercules、カリフォルニア州)に負荷するに先立って5分間沸騰させた。推奨されたXT MOPS緩衝液中で電気泳動を実施した。ゲルを、製造業者(Bio−Rad)のプロトコールに従ってBio−Safeクーマシー染色液で染色し、Alpha Innotech Imagingシステム(San Leandro、カリフォルニア州)を使用して画像化した。
【0085】
封入体の調製。DIG−152タンパク質封入体(IB)の調製は、SDS−PAGEおよびMALDI−MS(マトリックス支援レーザー脱離/イオン化質量分光測定法)によって立証されるように、不溶性B.t.殺虫性タンパク質を産生するP.フルオレセンス(P. fluorescens)発酵からの細胞で実施した。P.フルオレセンス(P. fluorescens)発酵のペレットを、37℃の水浴中で解凍した。細胞を、溶菌緩衝液(50mM Tris、pH7.5、200mM NaCl、20mM EDTA(エチレンジアミン四酢酸)二ナトリウム塩、1%Triton X−100、および5mMジチオチトレイトール(DTT);5mL/Lの細菌プロテアーゼ阻害剤カクテル(カタログ番号P8465、Sigma−Aldrich、St.Louis、ミズーリ州)を使用直前に添加した)中に25%w/vで再懸濁した。細胞を、最低に設定した携帯型ホモジナイザー(Tissue Tearor、BioSpec Products Inc.、Bartlesville、オクラホマ州)を使用して懸濁した。細胞懸濁液にリゾチーム(25mgのSigma L7651、チキン卵白由来)を、金属スパチュラで混合しながら細胞懸濁液に添加し、懸濁液を室温で1時間インキュベートした。懸濁液を、氷上で15分間冷却し、次いで、Branson Sonifier250(1分の持続期間で2回、動作周期50%、出力30%)を使用して超音波処理した。細胞溶菌は、顕微鏡法でチェックした。必要なら、さらなる25mgのリゾチームを添加し、インキュベーションおよび超音波処理を繰り返した。細胞溶菌を顕微鏡法で確認した後、溶菌液を11,500×gで25分間(4℃)遠心して、IBペレットを形成し、上清液を廃棄した。IBペレットを、100mLの溶菌緩衝液で再懸濁し、携帯型ミキサーでホモジナイズし、上記のように遠心した。IBペレットを、上清液が無色になり、かつIBペレットが硬く類白色になるまで、再懸濁(50mLの溶菌緩衝液に)、ホモジナイズ、超音波処理、および遠心によって反復洗浄した。最終洗浄では、IBペレットを、2mM EDTAを含む減菌濾過(0.22μm)蒸留水中に再懸濁し、遠心した。最終ペレットを、2mM EDTAを含む滅菌濾過蒸留水中に再懸濁し、1mLアリコートの状態で、−80℃で貯蔵した。
【0086】
IB調製物中のタンパク質のSDS−PAGE分析および定量を、IBペレットの1mLアリコートを解凍すること、および滅菌濾過蒸留水で1:20に希釈することによって実施した。希釈されたサンプルを、次いで、4X還元サンプル緩衝液[250mM Tris、pH6.8、40%グリセロール(v/v)、0.4%ブロモフェノールブルー(w/v)、8%SDS(w/v)、および8%β−メルカプトエタノール(v/v)]と共に煮沸し、1X Tris/グリシン/SDS緩衝液(BioRad)で展開される、Novex(登録商標)4〜20%Tris−グリシン、12+2ウェルゲル(Invitrogen)に負荷した。ゲルを、200ボルトで60分間展開し、次いでクーマシーブルー(45%メタノール、10%酢酸中の50%G−250/50%R−250)で染色し、蒸留水中の7%酢酸、5%メタノールで脱染した。標的バンドの定量は、該バンドの濃度測定値を、標準曲線を作出するために同一ゲル上で展開されたウシ血清アルブミン(BSA)標準サンプルに比較して行った。
【0087】
封入体の可溶化。PfクローンDPf108からのDIG−152封入体懸濁液の6mLを、最高に設定したEppendorfモデル5415C微量遠心管で遠心(ほぼ14000×g)して封入体をペレットにした。貯蔵緩衝液の上清液を除去し、50mLコニカル管中、25mLの100mM炭酸ナトリウム緩衝液(pH11)で置き換えた。封入体を、ピペットを使用して再懸濁し、渦撹拌して完全に混合した。管を、静かに揺動している台上に4℃で一夜乗せ、標的タンパク質を抽出した。抽出物を、4℃、30,000×gで30分間遠心し、生じた上清液を、Amicon Ultra−15再生セルロース遠心フィルター装置(30,000の分子量カットオフ;Milipore)を使用して5分の1に濃縮した。次いで、サンプル緩衝液を、使い捨てのPD−10カラム(GE Healthcare、Piscataway、ニュージャージー州)を使用して10mM CAPS[3−(シクロヘキサミノ)1−プロパンスルホン酸]、pH10に変更した。
【0088】
封入体タンパク質の可溶化およびトリプシンでの活性化。一部の例において、PfクローンDPf108からのDIG−152封入体の懸濁液を、最高に設定したEppendorfモデル5415C微量遠心管で遠心(ほぼ14,000×g)して、封入体をペレットにした。貯蔵緩衝液の上清液を除去し、100mMのCAPS(pH11)で置き換えて、ほぼ50mg/mLのタンパク質濃度とした。チューブを室温で3時間揺動して、タンパク質を完全に可溶化した。トリプシンを5%〜10%(w:w、IB粉末の初期重量を基準にして)に相当する量で添加し、消化を、4℃で一夜揺動しながらの、または室温で90〜120分間揺動することによるインキュベーションによって完遂した。不溶物を、10,000×gで15分間遠心することによって除去し、上清液を、MonoQアニオン交換カラム(10mm×10cm)にかけた。活性化されたDIG−152タンパク質を、カラム容積の25倍を超える0%〜100%の1M NaClでのグラジエントで溶離した(SDS−PAGEによって判定されるように、後記参照)。活性化されたタンパク質を含む画分を一緒にし、必要なら、前記のようにAmiconUltra−15再生セルロース遠心濾過装置を使用して10mL未満まで濃縮した。次いで、材料を、100mM NaCl、10%グリセロール、0.5%Tween−20、および1mM EDTAを含む緩衝液でSuperdex200カラム(16mm×60cm)に通した。活性化された(酵素的に切り詰められた)タンパク質が65〜70mLで溶離することがSDS−PAGE分析よって判定された。活性化されたタンパク質を含む画分を、一緒にし、前記のような遠心濃縮装置を使用して濃縮した。
【0089】
ゲル電気泳動。電気泳動のため、濃縮されたタンパク質調製物を、還元剤としての5mM DTTを含むNuPAGE(登録商標)LDSサンプル緩衝液(Invitrogen)で1:50に希釈することによって調製し、95℃で4分間加熱した。サンプルを、0.2μg〜2μg/レーンの範囲の5つのBSA標準(標準曲線の作出のための)と並んで、4〜12%NuPAGE(登録商標)ゲルの二つ組みレーンに負荷した。MOPS SDS展開緩衝液(Invitrogen)を使用して、追跡用色素がゲルの底部に到達するまで、電圧を200Vで印加した。ゲルを、45%メタノール、10%酢酸中の0.2%クーマシーブルーG−250で染色し、まず45%メタノール、10%酢酸で簡単に、次いで7%酢酸、5%メタノールで、背景が澄明になるまで十分に脱染した。脱染した後、ゲルをBioRad Fluor−S Multimagerで走査した。装置のQuantitiy Oneソフトウェア v.4.5.2を使用して、染色されたタンパク質バンドの背景控除容積を得てBSA標準曲線を作出し、その曲線を使用して原液中のキメラDIG−152タンパク質の濃度を計算した。
【0090】
〔実施例3〕
Cry1CaおよびCry1Abコア毒素タンパク質の調製、ならびに競合結合実験で使用するためのスポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)刷子縁膜小胞の単離
次の実施例は、昆虫消化管組織中の推定受容体に対するCry1コア毒素タンパク質の競合結合を評価する。125I標識化Cry1Caコア毒素タンパク質は、スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)(フォールアーミーアーム)から調製された刷子縁膜小胞(BBMV)に対して高い親和性で結合すること、およびCry1Abコア毒素タンパク質はこの結合と競合しないことが示されている。代わりに、125I標識化Cry1Abコア毒素タンパク質は、S.フルギペルダ(S. frugiperda)から調製されたBBMVに対して高い親和性で結合し、Cry1Caコア毒素タンパク質は、この結合と競合しないことが示されている。
【0091】
Cryタンパク質の精製。Cry1Ca3コア毒素およびCry1Abプロトキシンを含むキメラDIG−152タンパク質をコードする遺伝子を、実施例2に記載のようにシュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas fluorescens)発現株中で発現させた。類似の方式で、Cry1Abタンパク質をコードする遺伝子を、Pf系中で発現させた。Cry1Abタンパク質を発現するP.フルオレセンス(P. fluorescens)株はDPf88と命名された。
【0092】
タンパク質を、実施例2の方法で精製し、次いで、完全長タンパク質から活性化されたコア毒素を作るためのトリプシン消化を実施し、その産生物を実施例2に記載の方法で精製した。トリプシンで処理されたタンパク質(活性化されたコア毒素)の調製物は、95%を超える純度であり、SDS−PAGEによって実験的に判定するとほぼ65kDaの分子量を有した。本明細書中で使用する場合、DIG−152タンパク質から調製される活性化されたコア毒素は、Cry1Caコア毒素タンパク質と呼ばれ、Cry1Abタンパク質から調製される活性化されたコア毒素は、Cry1Abコア毒素タンパク質と呼ばれる。
【0093】
可溶化されたBBMVの調製および分画。タンパク質定量およびSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動の標準的方法を、例えば、Sambrooket al(1989)およびAusubelet al(1995)ならびにこれらの更新版中の教示のように採用した。
【0094】
最終齢のS.フルギペルダ(S. frugiperda)幼虫を一夜絶食させ、次いで氷上で15分間冷やした後、解剖した。中腸を、外皮に付着した後腸の後ろに残された体腔から取り出した。中腸を、供給業者によって推奨されたように希釈したプロテアーゼ阻害剤カクテル(Sigma−Aldrich P−2714)で補足された9倍容の氷冷ホモジネーション緩衝液(300mMマンニトール、5mM EDTA、17mM Tris塩基、pH7.5)中に置いた。組織を、ガラス製組織ホモジナイザーで15往復してホモジナイズした。BBMVは、Wolfersberger(1993)のMgCl沈殿法により調製した。簡潔には、300mMマンニトール中の等容積の24mM MgCl溶液を、中腸ホモジネートと混合し、5分間撹拌し、氷上に15分間放置した。溶液を、4℃、2,500×gで15分間遠心した。上清液を取り置き、ペレットを、元の体積の0.5倍希釈ホモジネーション緩衝液中に懸濁し、再び遠心した。2つの上清液を、合わせ、4℃、27,000×gで30分間遠心してBBMV画分を形成した。ペレットをBBMV貯蔵緩衝液(10mM HEPES、130mM KCl、10%グリセロール、pH7.4)中に、約3mg/mLのタンパク質濃度で懸濁した。タンパク質濃度は、標準としてウシ血清アルブミン(BSA)を使用して測定した。アルカリホスファターゼの測定(BBMV画分に対するマーカー酵素)は、サンプルを凍結する前に、QuantiChrom(商標)DALP−250アルカリホスファターゼアッセイキット(Gentaur Molecular Products、Kampenhout、ベルギー)を製造業者の説明書に従って使用して行った。この酵素の特異的活性は、典型的には、出発中腸ホモジネート画分中で見出されるものに比較して7倍に増大した。BBMVを250μLサンプルのアリコートに分け、液体窒素中で瞬間凍結し、−80℃で貯蔵した。
【0095】
電気泳動。SDS−PAGEによるタンパク質の分析は、還元(すなわち、5%β−メルカプトエタノール中、BME)および変性(すなわち、2%SDSの存在下に90℃で5分間加熱)条件下に行った。タンパク質を、4%〜20%Tris−グリシンポリアクリルアミドゲル(BioRad、Hercules、カリフォルニア州)のウェル中に負荷し、200ボルトで60分間分離した。タンパク質バンドを、クーマシーブリリアントブルーR−250(BioRad)で1時間染色することによって検出し、7%酢酸中の5%メタノール溶液で脱染した。ゲルを、BioRad Fluro−S Multi Imager(商標)を使用して、画像化し、分析した。タンパク質バンドの相対分子量を、ゲルの1つのウェル中に負荷したBenchMark(商標)Protein Ladder(Life Technologies、Rockville、メリーランド州)のサンプルで観察される既知分子量のタンパク質の移動度と比較することによって決定した。
【0096】
Cry1CaまたはCry1Abコア毒素タンパク質のヨウ素化。精製したCry1Caコア毒素タンパク質またはCry1Abコア毒素タンパク質を、Pierceヨウ素化ビーズ(Thermo Fisher Scientific、Rockford、イリノイ州)を使用してヨウ素化した。簡潔には、2つのヨウ素化ビーズを500μLのPBS(20mMリン酸ナトリウム、0.15M NaCl、pH7.5)で2回洗浄し、100μLのPBSを含む1.5mL遠心管中に配置した。0.5mCiの125I標識化ヨウ化ナトリウムを添加し、成分を室温で5分間反応させ、次いで、その溶液に1μgのCry1Caコア毒素タンパク質(または1μgのCry1Abコア毒素タンパク質)を添加し、さらに3〜5分間反応させた。ヨウ素化ビーズから溶液をピペットで吸い上げること、およびそれを50mM CAPS、pH10.0、1mM DTT(ジチオトレイトール)、1mM EDTA、および5%グリセロール中で平衡化されたZeba(商標)スピンカラム(Invitrogen)にかけることによって、反応を終結させた。ヨウ素化ビーズを、10μLのPBSで2回洗浄し、洗浄液をZeba(商標)脱塩カラムにかけた。放射性溶液を、1,000×gで2分間遠心することによってスピンカラムを通して溶出した。125I放射能標識化Cry1Caコア毒素タンパク質(またはCry1Abコア毒素タンパク質)を、次いで、50mM CAPS、pH10.0、1mM DTT、1mM EDTA、および5%グリセロールに対して透析した。
【0097】
画像化。ヨウ素化されたCry1CaおよびCry1Abコア毒素タンパク質の放射能純度は、SDS−PAGEおよび蛍光画像化によって測定した。簡潔には、SDS−PAGEゲルを、BioRadゲル乾燥装置を製造業者の説明書に従って使用することによって乾燥した。乾燥したゲルを、Mylarフィルム(厚さ12μm)で覆うこと、およびそれらをMolecular Dynamics 貯蔵蛍光スクリーン(35cm×43cm)の下に1時間暴露することによって画像化した。プレートを、Molecular Dynamics Storm820ホスホイメージャーを使用して現像し、ImageQuant(商標)ソフトウェアを使用して画像を分析した。
【0098】
〔実施例4〕
スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)からのBBMVに対する125I標識化Cry1コア毒素タンパク質の結合
Cry1CaおよびCry1Abコア毒素タンパク質との結合アッセイで使用するためのBBMVタンパク質の最適量を決定するため、飽和曲線を作出した。0.5nMの125I放射能標識化Cry1コア毒素タンパク質を、結合緩衝液(8mM NaHPO、2mM KHPO、150mM NaCl、0.1%BSA、pH7.4)中、0μg/mL〜500μg/mLの範囲のBBMVタンパク質の量で(全容積0.5mL)、28℃で1時間インキュベートした。BBMVタンパク質に結合された125I標識化Cry1コア毒素タンパク質を、非結合画分から、150μLの反応混合物を三つ組みで1.5mL分離遠心管中にサンプリングし、該サンプルを室温にて14,000×gで8分間遠心することによって分離した。上清液を、穏やかに除去し、ペレットを、氷冷結合緩衝液で3回洗浄した。ペレットを含む遠心管の底部を、切り離し、13×75mmのガラス製培養管中に配置し、サンプルを、ガンマーカウンター中でそれぞれ5分間計数した。得られたCMP(計数値/分)−バックグラウンドCMP(BBMVでないタンパク質との反応)を、BBMVタンパク質濃度に対してプロットした。結合アッセイで使用するためのBBMVタンパク質の最適濃度は、別の人(Luo et al, 1999)によって報告された結果と一致して、150μg/mLであると判定された。
【0099】
〔実施例5〕
S.フルギペルダ(S. frugiperda)からのBBMVに対するCry1AbおよびCry1Caのコア毒素タンパク質との競合結合アッセイ
同種および異種競合結合アッセイを、150μg/mLのS.フルギペルダ(S. frugiperda)BBMVタンパク質および0.5nMの125I放射能標識化Cry1Caコア毒素タンパク質を使用して実施した。真の結合競合を保障するために、反応混合物に添加される0.045nM〜300nMの範囲の濃度の競合非放射能標識化Cry1Abコア毒素タンパク質を、放射性Cry1Caコア毒素タンパク質と同時に添加した。28℃で1時間インキュベーションを実施し、BBMVに結合された(特異的結合)125I標識化Cry1Caコア毒素タンパク質の量を、前記のように測定した。非特異的結合は、1,000nMの非放射能標識化Cry1Caコア毒素タンパク質の存在下に得られた計数値によって表された。100パーセントの総結合を、全ての競合Cry1Abコア毒素タンパク質の不在下における結合量であるとみなした。
【0100】
125I標識化Cry1Caコア毒素タンパク質を使用する受容体結合アッセイは、Cry1Abコア毒素タンパク質がS.フルギペルダ(S. frugiperda)からのBBMV上のその結合部位からこの放射能標識化リガンドを追放する能力を判定した。結果(図1)は、Cry1Abコア毒素タンパク質が、300nM(放射性結合リガンドの濃度の600倍)の高さの濃度でその受容体タンパク質(群)から結合された125I標識化Cry1Caコア毒素タンパク質を追放しなかったことを示す。予想したように、非標識化Cry1Caコア毒素タンパク質は、その結合タンパク質(群)から放射能標識化Cry1Caコア毒素タンパク質を追放することができ、5nMで50%の置き換えが起こる、S字状用量反応曲線を示した。
【0101】
したがって、Cry1Caコア毒素タンパク質は、Cry1Abコア毒素タンパク質に結合しないS.フルギペルダ(S. frugiperda)BBMV中の結合部位と相互作用することを指摘している。
【0102】
〔実施例6〕
S.フルギペルダ(S. frugiperda)からのBBMVに対するCry1CaおよびCry1Abのコア毒素タンパク質との競合結合アッセイ
同種および異種競合結合アッセイを、150μg/mLのBBMVタンパク質および0.5nMの125I放射能標識化Cry1Abコア毒素タンパク質を使用して実施した。真の結合競合を保障するために、反応混合物に添加される0.045nM〜1000nMの範囲の濃度の競合非放射能標識化Cry1Caコア毒素タンパク質を、放射性Cry1Abコア毒素タンパク質と同時に添加した。28℃で1時間インキュベーションを実施し、BBMVに結合された(特異的結合)125I標識化Cry1Abコア毒素タンパク質の量を、前記のように測定した。非特異的結合は、1,000nMの非放射能標識化Cry1Abコア毒素タンパク質の存在下に得られた計数値によって表された。100パーセントの総結合を、全ての競合Cry1Caコア毒素タンパク質の不在下における結合量であるとみなした。
【0103】
125I標識化Cry1Abコア毒素タンパク質を使用する受容体結合アッセイは、Cry1Caコア毒素タンパク質がS.フルギペルダ(S. frugiperda)からのBBMV上のその結合部位からこの放射能標識化リガンドを追放する能力を判定した。結果(図2)は、Cry1Caコア毒素タンパク質が、300nM(放射性結合リガンドの濃度の600倍)の高さの濃度でその受容体タンパク質(群)から結合された125I標識化Cry1Abコア毒素タンパク質を追放しなかったことを示す。予想したように、非標識化Cry1Abコア毒素タンパク質は、その結合タンパク質(群)から放射能標識化Cry1Abコア毒素タンパク質を追放することができ、5nMで50%の置き換えが起こる、S字状用量反応曲線を示した。
【0104】
したがって、Cry1Abコア毒素タンパク質は、Cry1Caコア毒素タンパク質に結合しないS.フルギペルダ(S. frugiperda)BBMV中の結合部位と相互作用することを指摘している。
【0105】
(参考文献)
【数1】

【0106】
【表4−1】


【表4−2】


【表4−3】


【表4−4】


【表4−5】


【表4−6】


【表4−7】


【表4−8】


【表4−9】


【表4−10】


【表4−11】


【表4−12】


【表4−13】

【0107】
【表5−1】


【表5−2】


【表5−3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
Cry1C殺虫性タンパク質をコードするDNAおよびCry1Ab殺虫性タンパク質をコードするDNAを含むトランスジェニック植物。
【請求項2】
請求項1に記載の植物の種子。
【請求項3】
Cry1Ca殺虫性タンパク質をコードするDNAおよびCry1Ab殺虫性タンパク質をコードするDNAが遺伝子移入されている、請求項1に記載のトランスジェニック植物。
【請求項4】
請求項3に記載の植物の種子。
【請求項5】
非Bt緩衝帯植物、および請求項1に記載の複数のトランスジェニック植物を含む植物の圃場であって、前記緩衝帯植物が、前記圃場の全ての作物植物の40%未満を構成する、圃場。
【請求項6】
前記緩衝帯植物が、前記圃場の全ての作物植物の30%未満を構成する、請求項5に記載の植物の圃場。
【請求項7】
前記緩衝帯植物が、前記圃場の全ての作物植物の20%未満を構成する、請求項5に記載の植物の圃場。
【請求項8】
前記緩衝帯植物が、前記圃場中の全ての作物植物の10%未満を構成する、請求項5に記載の植物の圃場。
【請求項9】
前記緩衝帯植物が、前記圃場の全ての作物植物の5%未満を構成する、請求項5に記載の植物の圃場。
【請求項10】
前記緩衝帯植物がブロックまたは帯状地にある、請求項5に記載の植物の圃場。
【請求項11】
非Bt緩衝帯植物からの緩衝帯種子、および請求項7に記載の複数の種子を含む種子混合物であって、前記緩衝帯種子は混合物の全ての種子の40%未満を構成する、種子混合物。
【請求項12】
前記緩衝帯種子が、混合物の全ての種子の30%未満を構成する、請求項11に記載の種子混合物。
【請求項13】
前記緩衝帯種子が、混合物の全ての種子の20%未満を構成する、請求項11に記載の種子混合物。
【請求項14】
前記緩衝帯種子が、混合物の全ての種子の10%未満を構成する、請求項11に記載の種子混合物。
【請求項15】
前記緩衝帯種子が、混合物の全ての種子の5%未満を構成する、請求項11に記載の種子混合物。
【請求項16】
昆虫によるCry毒素に対する抵抗性の発達を管理する方法であって、種子を播いて請求項5に記載の植物の圃場を作製することを含む方法。
【請求項17】
Cry1Faコア毒素を含むタンパク質をコードするDNAをさらに含む、請求項1に記載の植物。
【請求項18】
非Bt緩衝帯植物および請求項17に記載の複数種のトウモロコシ植物を含む植物の圃場であって、前記緩衝帯植物が、前記圃場の全ての作物植物の約20%未満を構成する、圃場。
【請求項19】
請求項17に記載の複数の植物を含む植物の圃場であって、約10%未満の緩衝帯植物を含む圃場。
【請求項20】
昆虫によるCry毒素に対する抵抗性の発達を管理する方法であって、種子を播いて請求項19に記載の植物の圃場を作製することを含む方法。
【請求項21】
Cry1Abコア毒素を含むタンパク質およびCry1Cコア毒素を含むタンパク質の双方の有効量を発現する細胞を含む、鱗翅目有害生物を防除するための組成物。
【請求項22】
Cry1Abコア毒素を含むタンパク質およびCry1Cコア毒素を含むタンパク質の双方を発現するように形質転換された、微生物または植物細胞である宿主を含む、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記有害生物に対してまたは前記有害生物の環境に対して有効量の請求項21に記載の組成物を提示することを含む、鱗翅目有害生物の防除方法。
【請求項24】
前記植物が、10エーカーよりも多くを占める、請求項5または18に記載の圃場。
【請求項25】
トウモロコシ、ダイズ、シュガーケーン、およびワタからなる群から選択される、請求項1、3および17のいずれかに記載の植物。
【請求項26】
トウモロコシ植物である、請求項1、3および17のいずれかに記載の植物。
【請求項27】
請求項1、3、17、25および26のいずれかに記載の植物の植物細胞であって、前記植物細胞が、前記Cry1C殺虫性タンパク質をコードする前記DNAおよび前記Cry1Ab殺虫性タンパク質をコードする前記DNAを含み、前記Cry1C殺虫性タンパク質が配列番号2と少なくとも99%同一であり、前記Cry1D殺虫性タンパク質が、配列番号3と少なくとも99%同一である、植物細胞。
【請求項28】
前記Cry1C殺虫性タンパク質が配列番号2を含み、前記Cry1Ab殺虫性タンパク質が配列番号3を含む、請求項1、3、17、25および26のいずれかに記載の植物。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−514770(P2013−514770A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−544841(P2012−544841)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際出願番号】PCT/US2010/060819
【国際公開番号】WO2011/084622
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(501035309)ダウ アグロサイエンシィズ エルエルシー (197)
【Fターム(参考)】