説明

昇圧コンバータ

【課題】最小デューティ比を充分小さな値まで絞ることができ、最大デューティ比の設定が容易なカレントモード制御方式の昇圧コンバータの提供を目的とする。
【解決手段】整流器4の電流に応じた電流検出信号Vcを生成する電流検出器9と、出力直流電圧Voに応じた誤差信号Veを生成する誤差増幅器8と、前記電流検出信号Vcと前記誤差信号Veに基づいて前記主スイッチ3をオンオフする制御回路10を備える。制御回路10は比較器11とタイマー回路12を備える。この構成によって、主スイッチ3のオン時間は所定値に設定され、三角波状に増減するインダクタ電流の谷値を制御するので、出力安定化のために調整されるのは主スイッチのオフ時間となる。主スイッチのオン時間の設定は自由であり、最小デューティ比をゼロもしくは充分小さな値まで絞ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カレントモード制御方式の昇圧コンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯機器のような電子機器はバッテリを電力源とし、このバッテリ電圧を昇圧コンバータによって所望の電圧に昇圧変換して、各種電子回路への電源電圧としている。昇圧コンバータは、インダクタと主スイッチと整流器から構成されるスイッチング式のDC−DCコンバータであり、その制御方式としては安定性に優れたカレントモード制御方式が知られている。図10に示したものは、特許文献1の図4に記載されたカレントモード制御方式の昇圧コンバータの回路構成図である。
【0003】
図10に示した従来の昇圧コンバータは、入力直流電圧Viを供給する入力直流電源201と、入力直流電源201に並列に直列接続されたインダクタ202と主スイッチ203と、主スイッチ203とインダクタ202との接続点と昇圧コンバータの出力との間に接続された整流器であるダイオード214と、出力直流電圧Voを負荷206に供給する出力コンデンサ205と、基準電圧Vrを出力する基準電圧源207と、出力直流電圧Voと基準電圧Vrを入力されて誤差信号Veを出力する誤差増幅器218と、インダクタ202の電流を検出して電流検出信号Vcを出力する電流検出器219と、誤差信号Veと電流検出信号Vcを入力されて主スイッチ203をオンオフする駆動回路210とから構成される。
【0004】
以上のような構成により、駆動回路210は、電流検出信号Vcが誤差信号Veに追従するように主スイッチ203をオンオフ制御する。このことにより、出力直流電圧Voが基準電圧Vrと等しくなるように、インダクタ202の電流が調整される。昇圧コンバータに限らず、カレントモード制御方式はインダクタを等価的に電流源とするために、出力コンデンサとのLC共振の制御動作への影響を抑制することができる。このことにより、カレントモード制御方式は、制御安定性や応答性に優れたDC−DCコンバータを実現することができる。
【0005】
尚、特許文献1は電流検出器とその挿入位置に特徴を有するものであり、カレントモード制御方式の昇圧コンバータとして図10に示した昇圧コンバータの他、インダクタの出力側に電流検出器が挿入されている昇圧コンバータや、主スイッチと直列に電流検出器が挿入されている昇圧コンバータが開示されている。
【特許文献1】特開2000−134923号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のカレントモード制御方式の昇圧コンバータは、インダクタや主スイッチの電流を検出し、そのピーク値を制御することによって出力を安定化させていた。このため、主スイッチは必ずオン状態となって電流を流す必要があり、最小オン時間(最小デューティ比)が存在する。デューティ比とは1スイッチング周期に占めるオン時間の割合である。通常の動作においてはデューティ比が大きいほど出力直流電圧Voは高くなる。換言すれば、昇圧コンバータの昇圧比(Vo/Vi)は、デューティ比が大きいほど大きくなる。逆にデューティ比が小さいほど昇圧比は小さくなり、1に近づく。昇圧コンバータにとって最小デューティ比の存在は、入出力電圧が近い場合に、出力の安定化の障害になるという問題がある。
【0007】
また、検出電流が制御したい目標値に達するまでは主スイッチのオン状態を続けようとするために、何らかの制限を設けなければデューティ比1の状態に陥る。昇圧コンバータにおいて、デューティ比が1になると整流器を介して電力が出力できないことは、回路構成から自明である。さらに主スイッチなどの導通時の抵抗や配線抵抗も含む抵抗成分の影響によって、昇圧比にも上限があり、この上限昇圧比に至らないように最大デューティ比の設定が必要となる。
【0008】
前記に鑑み、本発明は、最小デューティ比をゼロもしくは充分小さな値まで絞ることが可能であり、最大デューティ比の設定が容易なカレントモード制御方式の昇圧コンバータの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するため、本発明に係る昇圧コンバータは、直列接続されたインダクタと主スイッチと、前記主スイッチの両端電圧を整流平滑する整流器と、平滑部とを有し、前記主スイッチのオンオフ動作によって、前記インダクタに入力された入力直流電圧を昇圧変換して前記平滑部から出力直流電圧を出力する昇圧コンバータであって、
前記整流器の電流に応じた電流検出信号を生成する電流検出器と、前記出力直流電圧に応じた誤差信号を生成する誤差増幅器と、前記電流検出信号と前記誤差信号に基づいて前記主スイッチをオンオフする制御回路とを備える。この構成によって、三角波状に増減するインダクタ電流の谷値を制御するので、出力安定化のために調整されるのは主スイッチのオフ時間となる。
【0010】
ここで、前記制御回路は、所定のオン時間を設定し、前記所定のオン時間だけ前記主スイッチをオン状態とし、前記電流検出信号が前記誤差信号に至るまでの期間は前記主スイッチをオフ状態とするよう構成してもよい。この構成によって、主スイッチのオン時間の設定は自由であり、最小デューティ比をゼロもしくは充分小さな値まで絞ることができる。
【0011】
さらに、前記制御回路は、所定のオン時間と所定のオフ時間を設定し、前記所定のオン時間だけ前記主スイッチをオン状態とし、前記所定のオフ時間又は前記電流検出信号が前記誤差信号に至るまでの期間は前記主スイッチをオフ状態とするよう構成してもよい。この構成によって、最小デューティ比をゼロもしくは充分小さな値まで絞ることができ、最大デューティ比も容易に設定できる。
【0012】
また、前記制御回路は、前記入力直流電圧が高いほど前記所定のオン時間を短く設定する構成としてもよい。この構成によって、入力直流電圧によるスイッチング周波数の変動や出力リップルを補正することができる。
【0013】
また、前記制御回路は、前記出力直流電圧の目標値が高いほど前記所定のオン時間を長く設定する構成としてもよい。この構成によって、出力直流電圧の目標値によるスイッチング周波数の変動や出力リップルを補正することができる。
【0014】
また、前記制御回路は、前記所定のオン時間と前記所定のオン時間を含む所定の期間を設定し、前記所定のオフ時間は前記所定の期間と前記所定のオン時間との時間差によって設定される構成としてもよい。この構成によって、最小デューティ比をゼロもしくは充分小さな値まで絞ることができ、最大デューティ比も容易に設定できる。
【0015】
また、前記誤差増幅器は、前記出力直流電圧と目標値との誤差を増幅した誤差信号を生成し、前記制御回路は、前記出力直流電圧が前記目標値以上の所定値を越えると、前記所定値を下回るまでは前記主スイッチをオフ状態とする構成にしてもよい。また、前記制御回路は、前記誤差信号が所定のレベル以下であり、且つ前記出力直流電圧が前記目標値以上の所定値を越えたとき、前記所定値を下回るまでは前記主スイッチをオフ状態とする構成にしてもよい。さらに前記制御回路は、前記誤差信号が所定のレベル以下の場合、前記所定のオン時間を長くする構成にしてもよい。上記の構成により、インダクタ電流の谷値制御の問題点である軽負荷時不連続モードにおいても良好に出力安定化が可能となる。
【0016】
また、前記整流器は、前記主スイッチと交互にオンオフする整流トランジスタであり、前記電流検出器は、少なくとも導通時において前記整流トランジスタとカレントミラーを構成する検出トランジスタを備え、前記検出トランジスタの電流に基づいて前記電流検出信号を生成する構成としてもよい。また、前記電流検出器は、前記整流トランジスタと前記検出トランジスタの各電流流出端子の電圧が入力される差動増幅器と、前記差動増幅器の出力によって導通抵抗が調整される調整トランジスタとを備え、前記検出トランジスタの電流流出端子に前記調整トランジスタを接続し、前記調整トランジスタを介して流れる前記検出トランジスタの電流に基づいて前記電流検出信号を生成する構成としてもよい。また、前記電流検出器の前記差動増幅器は、入力端子間に所定のオフセット電圧が設けられた構成としてもよい。上記の構成によって、低損失且つ高精度に、逆方向も含む整流器の電流を検出することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、最小デューティ比をゼロもしくは充分小さな値まで絞ることが可能であり、最大デューティ比の設定が容易なカレントモード制御方式の昇圧コンバータを提供することができる。
本発明に係る昇圧コンバータによると、主スイッチのオン時間を任意に設定または調整でき、三角波状に増減するインダクタ電流の谷値を制御するので、出力安定化のために調整されるのは主スイッチのオフ時間となる。このことにより最小デューティ比をゼロもしくは充分小さな値まで絞ることができ、また、最大デューティ比も容易に設定できる。さらに、スイッチング周波数の変動や出力リップルを補正することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(第1の実施形態)
以下、本発明に係る第1の実施形態の昇圧コンバータについて、図面を参照しながら説明する。図1(a)は本発明の第1の実施形態に係る昇圧コンバータの回路構成図であり、(b)はその動作波形図である。
【0019】
図1(a)において、1はバッテリなどの入力直流電源であり、入力直流電圧Viを供給する。2はインダクタであり、入力直流電源1に接続される。インダクタ2のインダクタンスをLとする。3は主スイッチであり、インダクタ2の他端に接続され、駆動信号Vgでオンオフされる。4は整流器であり、インダクタ2と主スイッチ3との接続点に一端が接続される。5は平滑手段である出力コンデンサであり、整流器4の他端に接続され負荷6に出力直流電圧Voを供給する。7は基準電圧源、8は誤差増幅器であり、出力直流電圧Voと基準電圧源7の電圧差を比較増幅して誤差信号Veを生成する。誤差信号Veは、出力直流電圧Voが基準電圧Vrより高くなると低下し、出力直流電圧Voが基準電圧Vrより低くなると上昇する。9は電流検出器であり、整流器4に流れる電流を検出して電流検出信号Vcを生成する。10は制御回路であり、比較器11とタイマー回路12を備える。比較器11は、誤差信号Veと電流検出信号Vcを比較して比較信号Vtを出力する。比較信号Vtは、誤差信号Ve<電流検出信号Vcの時にHレベルになる。タイマー回路12は所定のオン時間Tonを設定し、比較信号Vtに基づいて主スイッチ3をターンオンし、オン時間後にターンオフする駆動信号Vgを出力する。具体的には、比較信号Vtの立下りを検出すると駆動信号VgをHレベルにし、所定のオン時間Ton後に駆動信号VgをLレベルにする。
図1(b)には、破線で示した誤差信号Veと電流検出信号Vc、比較信号Vt、駆動信号Vgを示す。
【0020】
図2はタイマー回路12の回路構成図である。図2において、100はNMOSトランジスタであり、101はコンデンサであり、NMOSトランジスタ100のオン時には短絡放電される。102は電流源回路であり、コンデンサ101を定電流充電する。103は比較器であり、非反転入力端子にコンデンサ101の電位が入力される。104は基準電圧源であり、比較器103の反転入力端子に基準電圧V4を印加する。105はNOR回路であり、比較信号Vtと比較器103の出力とのNOR信号を生成する。106はRSラッチ回路であり、NOR回路105の出力によってセットされ、比較器103の出力によってリセットされ、駆動信号Vgを出力する。107はインバータであり、駆動信号Vgを反転してNMOSトランジスタ100のゲートに印加する。
【0021】
以下に、図1及び図2を用いて本発明に係る第1の実施形態の昇圧コンバータの動作について説明する。
まず図1(a)において主スイッチ3のオン状態の時、インダクタ2には入力直流電圧Viが印加され、インダクタ2には増加する電流が流れるとともにエネルギーが蓄積される。後述するタイマー回路12によって、所定のオン時間に至ると駆動信号VgはLレベルとなって主スイッチ3はターンオフする。
図1(a)において主スイッチ3がオフ状態になると、入力直流電源1から整流器4を介して出力コンデンサ5を充電しながら減少する電流が流れ、インダクタ2に蓄えられたエネルギーは放出される。この整流器4を流れる電流は出力コンデンサ5によって直流に平滑されて負荷6へ供給される。また、整流器4を流れる電流は電流検出器9によって検出され、図1(b)に示すように、その電流に応じた電流検出信号Vcが生成される。
【0022】
一方、出力コンデンサ5の電圧、即ち出力直流電圧Voは、基準電圧源7の基準電圧Vrとの電圧差を誤差増幅器8によって増幅され、誤差信号Veとして出力される。制御回路10では、比較器11によって、電流検出信号Vcと誤差信号Veが比較される。主スイッチ3のオフ状態において整流器4に流れるインダクタ電流は減少するが、電流検出信号Vcは誤差信号Veより高く、比較器11の出力である比較信号VtはHレベルである。
【0023】
図2において、駆動信号VgがLレベルで比較信号VtがHレベルの時、NMOSトランジスタ100はオン状態にあり、NOR回路105はLレベルを出力し、また、コンデンサ101は短絡放電されている。このためコンデンサ101の電位は基準電圧源104の電圧V4より低く、比較器103はLレベルを出力している。したがって、RSラッチ106は駆動信号VgのLレベルを維持している。
やがて整流器4に流れるインダクタ電流の減少とともに電流検出信号Vcも低下し、図1(b)に示すように、誤差信号Veを下回ると、比較器11の出力である比較信号VtはHレベルからLレベルに変化する。比較信号VtがLレベルになると、図2のNOR回路105の出力がHレベルになり、RSラッチ106がセットされて駆動信号VgがHレベルになる。駆動信号VgがHレベルになると、主スイッチ3がターンオンする。同時に図2のNMOSトランジスタ100がオフ状態となり、コンデンサ101は電流源回路102の電流によって充電され、その電位が徐々に上昇する。
【0024】
主スイッチ3のオン状態において、上昇するコンデンサ101の電位が電圧V4を越えると、比較器103の出力はHレベルになり、RSラッチ106がリセットされて駆動信号VgがLレベルになる。駆動信号VgがLレベルになると、主スイッチ3がターンオフする。主スイッチ3のオン時間Tonは、コンデンサ101の短絡状態が解除されてから電圧V4に至るまでの充電時間にほぼ等しく、これはコンデンサ101の静電容量C1と電流源回路102の出力する定電流値I2と基準電圧源104の電圧V4を用いて、以下のように表される。
【0025】
Ton=C1×V4/I2 (1)
【0026】
誤差信号Veは、出力直流電圧Voが基準電圧Vrより高くなると低下し、出力直流電圧Voが基準電圧Vrより低くなると上昇する。従って、出力直流電圧Voが基準電圧Vrより高くなると、誤差信号Veは低下し、主スイッチ3のオフ時間が延びてインダクタ電流が減少し、出力直流電圧Voが低下する。以上のような動作によって、出力直流電圧Voが基準電圧Vrに等しくなるように、整流器4に流れる電流、即ちインダクタ電流の谷値を制御する。結果的に、オフ時間が制御されることにより、出力直流電圧Voは安定化される。
【0027】
以上のように、第1の実施形態の昇圧コンバータによれば、主スイッチのオン時間は所定値に固定されるものの、オフ時間が調整される。このため、スイッチング周波数の変動さえ許容すれば、広範なデューティ比の変動が可能となり、最小デューティ比の制約は実質的に無くなる。さらに、主スイッチのオン時間が所定値に固定されると、1スイッチング周期に占める出力コンデンサ5の充放電電荷がほぼ一定となるので、出力直流電圧Voに重畳される交流成分である出力リップル電圧の入力条件による変動が抑制されるという効果も奏する。
尚、例えば誤差電圧Veに上限値を設けるなどの手段によって、最大出力電流の制限が可能であることは自明であろう。
【0028】
(第2の実施形態)
図3(a)は本発明に係る第2の実施形態の昇圧コンバータにおけるタイマー回路12aの回路構成図である。第2の実施形態におけるタイマー回路12aは、前述の第1の実施形態のタイマー回路12のオン時間設定機能に加えて、最小オフ時間を設定し得るものである。第2の実施形態の昇圧コンバータにおいて、タイマー回路12a以外の構成は前述の第1の実施形態の構成と同様であるため、図3(a)において、図1(a)に示した入力直流電源1、インダクタ2、主スイッチ3、整流器4、平滑手段5、負荷6、基準電圧源7、誤差増幅器8及び電流検出器9は省略している。また、制御回路10の比較器11も同様の構成であるため省略している。図3(a)の第2の実施形態に係る昇圧コンバータのタイマー回路12aにおいて、第1の実施形態に係る昇圧コンバータと同じ構成要素のものについては同じ番号を付与し、その説明を省略する。第2の実施形態の昇圧コンバータのタイマー回路12aが、図2の第1の実施形態の昇圧コンバータのタイマー回路12の構成と異なるのは、比較器103の出力でセットされるRSラッチ108と、比較器103の出力を所定時間だけ遅延させてRSラッチ108をリセットする遅延回路109とを設け、NOR回路105にRSラッチ108の出力と比較信号Vtが入力され、RSラッチ108の出力がRSラッチ106をリセットするように構成した点である。
【0029】
図3(b)は図3(a)の比較信号Vt、コンデンサ101の電圧V1と電圧V4、比較器103の出力V103、遅延回路109の出力V109、RSラッチ108の出力V108、駆動信号Vgを示す動作波形図である。
【0030】
以下に、図3(a)に示した本発明の昇圧コンバータの第2の実施形態を示すタイマー回路12aの動作を、図3(b)の動作波形図を用いて説明する。
まず、図3(a)において駆動信号VgがLレベルで、主スイッチ3がオフ状態の時、整流器4に流れるインダクタ電流の減少とともに電流検出信号Vcも低下し、誤差信号Veを下回ると、比較信号VtはHレベルからLレベルに変化する。比較信号VtがLレベルになると、NOR回路105の出力がHレベルになり、RSラッチ106がセットされて駆動信号VgがHレベルになる。駆動信号VgがHレベルになると、主スイッチ3がターンオンする。同時に図2のNMOSトランジスタ100がオフ状態となり、コンデンサ101は電流源回路102の電流によって充電される。
【0031】
上昇するコンデンサ101の電圧V1が電圧V4を越えると、比較器103の出力はHレベルになり、RSラッチ108がセットされてHレベルを出力するので、RSラッチ106がリセットされて駆動信号VgがLレベルになる。駆動信号VgがLレベルになると、主スイッチ3がターンオフする。主スイッチ3のオン時間Tonは、コンデンサ101の短絡状態が解除されてから電圧V4に至るまでの充電時間にほぼ等しくなる。この主スイッチ3のオン時間Tonは、コンデンサ101の静電容量C1と電流源回路102の出力する定電流値I2と基準電圧源104の電圧V4を用いて、前述の式(1)のように表されるのは第1の実施形態と同様である。
【0032】
主スイッチ3がオフ状態になると、整流器4にインダクタ電流が流れて電流検出信号Vcが発生し、比較器11の出力である比較信号VtはHレベルになる。この時、NOR回路はLレベルを出力し、また、NMOSトランジスタ100はオン状態となってコンデンサ101は短絡放電される。このためコンデンサ101の電圧V1は基準電圧源104の電圧V4より低くなり、比較器103はLレベルになる。従って、比較器103の出力V103は、主スイッチ3のターンオフ時に発生するワンショットパルスとなる。
【0033】
このワンショットパルスの比較器103の出力V103は、遅延回路109を介して所定時間遅れてRSラッチ108をリセットする。V103の遅延信号によってリセットされるまでRSラッチ108の出力はHレベルであるので、この期間は比較信号VtのレベルによらずNOR回路105はLレベルを出力する。即ち、RSラッチ106は駆動信号VgのLレベルを維持する最小オフ時間ToffMINが設定できる。電流検出信号Vcが誤差信号Veを下回って比較信号VtがLレベルになることを検知して、RSラッチ106が駆動信号VgをHレベルにするのは、この最小オフ時間ToffMINが終了した後である。図3(b)の右側の波形ではこの様子を表した。
出力直流電圧Voが基準電圧Vrに等しくなるように、整流器4に流れる電流、即ちインダクタ電流の谷値を制御する。結果的にオフ時間が制御されることにより、出力直流電圧Voは安定化されるのは、第1の実施形態と同様である。
【0034】
以上のように、第2の実施形態の昇圧コンバータは、遅延回路で設定された遅延時間だけ最小オフ時間を設定することができ、オン時間を所定値に設定していることから、最大デューティ比を容易に設定することができる。
【0035】
(第3の実施形態)
図4(a)は本発明に係る第3の実施形態の昇圧コンバータのタイマー回路12bの回路構成図であり、前述の第2の実施形態のタイマー回路12aに加えて、入出力直流電圧によってオン時間を補正し得るものである。図4において、図3(a)に示した第2の実施形態に係る昇圧コンバータのタイマー回路12aと同じ構成要素のものについては同じ番号を付与し、その説明を省略する。第3の実施形態の昇圧コンバータのタイマー回路12bが図3(a)のタイマー回路12aの構成と異なるのは、電流源回路102bと電圧源回路104bの構成であり、電流源回路102bの回路構成を図4(b)に、電圧源回路104bの回路構成を図4(c)に示す。
【0036】
図4(b)において、電流源回路102bは、抵抗120、抵抗121、差動増幅器122、抵抗123とPMOSトランジスタ124からなり、抵抗120と抵抗121は出力直流電圧Voを分圧して差動増幅器122の非反転入力端子に印加し、差動増幅器122の反転入力端子と出力端子の間には抵抗123が接続され、PMOSトランジスタ124のソースは差動増幅器122の反転入力端子に接続され、PMOSトランジスタ124のゲートは差動増幅器122の出力に接続され、PMOSトランジスタ124のドレインから電流I2が出力される。抵抗120と抵抗121による分圧比をαとすると、差動増幅器122の非反転入力端子に印加される電圧はα×Voとなる。差動増幅器122はその入力端子電圧が等しくなるように動作するので、抵抗123の抵抗値をR1とすると、PMOSトランジスタ124のドレインから出力される電流I2は、出力直流電圧Voに比例した次式(2)のように表される。
【0037】
I2=(1−α)×Vo/R1 (2)
【0038】
図4(c)において、電圧源回路104bは、抵抗140、抵抗141、差動増幅器142、抵抗143、PMOSトランジスタ144、抵抗145、抵抗146、差動増幅器147、抵抗148、NMOSトランジスタ149と抵抗150を有する。抵抗140、抵抗141、差動増幅器142、抵抗143とPMOSトランジスタ144の構成は電流源回路102bと同様である。従って、抵抗140と抵抗141による分圧比をβとし、抵抗143の抵抗値をR2とすると、PMOSトランジスタ144のドレインから出力される電流I3は、出力直流電圧Voに比例した次式(3)のように表される。
【0039】
I3=(1−β)×Vo/R2 (3)
【0040】
一方、抵抗145と抵抗146は入力直流電圧Viを分圧して差動増幅器147の非反転入力端子に印加し、差動増幅器147の反転入力端子と接地端子の間には抵抗148が接続され、NMOSトランジスタ149のソースは差動増幅器147の反転入力端子に接続され、NMOSトランジスタ149のゲートは差動増幅器147の出力に接続され、NMOSトランジスタ149のドレインへ電流I4が流入される。抵抗145と抵抗146による分圧比を(1−β)とすると、差動増幅器147の非反転入力端子に印加される電圧は(1−β)×Voとなる。差動増幅器147はその入力端子電圧が等しくなるように動作するので、抵抗148の抵抗値を抵抗143と等しいR2とすると、NMOSトランジスタ149のドレインへ流入される電流I4は、入力直流電圧Viに比例した次式(4)のように表される。
【0041】
I4=(1−β)×Vi/R2 (4)
【0042】
PMOSトランジスタ144のドレインとNMOSトランジスタ149のドレインは接続され、その接続点から抵抗150を介して接地される。この構成により抵抗150には、PMOSトランジスタ144のドレインから出力される電流I3とNMOSトランジスタ149のドレインへ流入される電流I4の差電流(I3−I4)が流れる。抵抗150の電圧降下を電圧V4として出力するので、抵抗150の抵抗値を抵抗143や抵抗148と等しいR2とすると、電圧V4は入出力電圧差(Vo−Vi)に比例した次式(5)のように表される。
【0043】
V4=(I3−I4)×R2=(1−β)×(Vo−Vi) (5)
【0044】
以上のように本実施形態の昇圧コンバータは、コンデンサ101を出力直流電圧Voに比例した電流で充電し、その充電終了電圧V4を入出力電圧差(Vo−Vi)に比例させることによって、オン時間Tonを入出力電圧差(Vo−Vi)/Voに比例させることができる。昇圧コンバータの安定動作時において、入出力電圧の関係は、次式(6)で表せることが知られている。
【0045】
Vo/Vi=T/(T−Ton) (6)
【0046】
ここで、Tはスイッチング周期であり、この関係からスイッチング周期Tとオン時間Tonの関係は、次式(7)のように表される。
【0047】
Ton/T=(Vo−Vi)/Vo (7)
【0048】
従って、オン時間Tonを入出力電圧差(Vo−Vi)/Voに比例させることによって、入出力電圧の設定変更または変動に伴うスイッチング周期Tの変動、即ちスイッチング周波数の変動を抑制することができる。スイッチング周波数の大きな変動は、スイッチングノイズ等の広帯域化となるので、特にAV機器や通信機器などの分野ではその対策が大きな課題となる。本実施形態のようにスイッチング周波数の変動を抑制することによる効果は大きい。
【0049】
尚、昇圧コンバータの動作開始時においては、Vo−Vi≒0V であることを考慮すれば、コンデンサ101の充電電流や充電終了電圧V4を設定するパラメータに用いた出力直流電圧Voの代わりに、出力直流電圧Voの目標値を用いてもよい。
【0050】
(第4の実施形態)
図5(a)は本発明に係る第4の実施形態の昇圧コンバータのタイマー回路12cの回路構成図であり、前述の第3の実施形態のタイマー回路12bの入出力直流電圧によるオン時間の補正機能に加え、また最小オフ時間設定機能に代えて、最小周期を設定することによる最大デューティ比のより高性能な制限を実現するものである。図5(a)において、図4(a)に示した第3の実施形態に係る昇圧コンバータのタイマー回路12bと同じ構成要素のものについては同じ番号を付与し、その説明を省略する。第4の実施形態の昇圧コンバータのタイマー回路12cが図4(a)のタイマー回路10bの構成と異なるのは、インバータ107とRSラッチ108と遅延回路109を取り除き、代わりに比較器103の出力がRSラッチ106を直接リセットし、電圧源回路110と比較器111とRSラッチ112を付加した点である。
【0051】
比較器111は、コンデンサ101の電圧と電圧源回路110の電圧V10を比較し、コンデンサ101の電圧がV10を越すとRSラッチ112をセットする。RSラッチ112はNOR回路105の出力によってリセットされ、その出力はNMOSトランジスタ100のゲートに接続される。
【0052】
図5(b)は図5(a)の比較信号Vt、コンデンサ101の電圧V1と電圧V4及び電圧V10、比較器103の出力V103、比較器111の出力V111、RSラッチ112の出力V112、駆動信号Vgを示す動作波形図である。以下に、図5(a)に示した本発明の昇圧コンバータの第4の実施形態を示すタイマー回路12cの動作を、図5(b)の動作波形図を用いて説明する。
まず、図5(a)において、駆動信号VgがLレベル、比較信号VtがHレベル、比較器103の出力V103がLレベルであり、RSラッチ112の出力はHレベルでNMOSトランジスタ100はオン状態でコンデンサ101は短絡放電され、その電圧V1は0Vになっているものとする。主スイッチ3はオフ状態であり、整流器4に流れるインダクタ電流の減少とともに電流検出信号Vcも低下し、誤差信号Veを下回ると、比較信号VtはHレベルからLレベルに変化する。比較信号VtがLレベルになると、NOR回路105の出力がHレベルになり、RSラッチ106がセットされて駆動信号VgがHレベルになる。駆動信号VgがHレベルになると、主スイッチ3がターンオンする。同時にRSラッチ112はリセットされてLレベルを出力し、NMOSトランジスタ100がオフ状態となり、コンデンサ101は電流源回路102bの電流によって充電される。
【0053】
上昇するコンデンサ101の電圧V1が電圧V4を越えると、比較器103の出力はHレベルになり、RSラッチ106がリセットされて駆動信号VgがLレベルになる。駆動信号VgがLレベルになると、主スイッチ3がターンオフする。主スイッチ3のオン時間Tonは、コンデンサ101の短絡状態が解除されてから電圧V4に至るまでの充電時間にほぼ等しく、これはコンデンサ101の静電容量C1と電流源回路102bの出力する定電流値I2と基準電圧源104の電圧V4を用いて、前述の式(1)のように表されるのは第1の実施形態と同様である。
【0054】
主スイッチ3がオフ状態になると、整流器4にインダクタ電流が流れて電流検出信号Vcが発生し、比較信号VtはHレベルになる。この時、NOR回路105はLレベルを出力する。コンデンサ101の電圧V1は基準電圧源104の電圧V4を越えて上昇を続ける。上昇するコンデンサ101の電圧V1が電圧V10を越えると、比較器111の出力はHレベルになり、RSラッチ112がセットされてHレベルを出力する。するとNMOSトランジスタ100はオン状態となり、コンデンサ101を短絡放電する。コンデンサ101の電圧V1は電圧V4を下回るので、比較器103の出力V103はLレベルとなり、RSラッチ106のセット入力を受け付けるようになる。コンデンサ101の電圧V1が電圧V4を越えてから電圧V10に至るまでの期間は、比較信号VtのレベルによらずNOR回路105はLレベルを出力する。即ち、RSラッチ106は駆動信号VgのLレベルを維持する最小オフ時間となる。電流検出信号Vcが誤差信号Veを下回って比較信号VtがLレベルになることを検知して、RSラッチ106が駆動信号VgをHレベルにするのは、この最小オフ時間が終了した後である。
【0055】
但し、第4の実施形態の昇圧コンバータにおける最小オフ時間は、上述のようにオン時間によって変わる。これは本実施形態が最初周期Tminを設定しているからである。最初周期Tminはコンデンサ101の静電容量C1、電流源回路102bの電流I2、電圧源回路110の電圧V10を用いて、次式(8)のように表される。
【0056】
Tmin=C1×V1/I2 (8)
【0057】
以上のように第4の実施形態の昇圧コンバータは、最小周期を設定することができ、オン時間を所定値に設定していることから、最大デューティ比を容易に設定することができる。また、最小周期の設定により、高入力時のようにオン時間が短くなると最小オフ時間が長くなる、即ち、高入力ほど最大デューティ比を小さく設定できる。
【0058】
(第5の実施形態)
以上において説明した各実施形態の昇圧コンバータは、整流器4の電流を検出し、インダクタ電流の谷値を調整する制御方法であった。しかし、負荷6が軽くて出力電流が少ない条件では、主スイッチ3がオフ状態の時に整流器4の電流がゼロに至る不連続モードになり、このような場合には制御ができない状態となる。図6は本発明に係る第5の実施形態の昇圧コンバータの回路構成図であり、前記の不連続モードに対応するものである。図6において、図1(a)に示した第1の実施形態に係る昇圧コンバータと同じ構成要素のものについては同じ番号を付与し、その説明を省略する。図6において、図1(a)に示した第1の実施形態の昇圧コンバータと異なるのは、基準電圧源7の基準電圧VrよりΔVrだけ高い電圧を生成するための電圧源回路13と、出力直流電圧Voを(Vr+ΔVr)と比較する比較器14を付加し、比較器14の出力を入力されるタイマー回路12dの構成である。タイマー回路12dの構成は第4の実施形態のタイマー回路12cとほとんど同様であるので、その大部分を省略し、駆動信号Vgを出力するRSラッチ106と、RSラッチ106をセットするNOR回路のみを記述した。タイマー回路12dが第4の実施形態のタイマー回路12cと異なるのは、RSラッチ106をセットするNOR回路であり、NOR回路105と区別するためにNOR回路105dとした。NOR回路105dは3入力であり、比較信号Vtと比較器103の出力に加えて、比較器14の出力が入力される。
【0059】
以下に、図6に示した本発明に係る第5の実施形態の昇圧コンバータにおける昇圧の動作について説明する。
負荷6がある程度重い通常動作では、出力直流電圧Voは基準電圧Vrに安定化されており、比較器14はLレベルを出力している。このためNOR回路105dの出力は比較信号Vtと比較器103の出力で決まり、前述の第4の実施形態と同様の動作をする。
【0060】
次に、負荷6が軽く、主スイッチ3がオフ状態の時に整流器4の電流がゼロに至る不連続モードにおける動作を説明する。このような状態では、誤差増幅器8の出力Veは0Vより高い下限電圧に貼り付いているので、整流器4の電流がゼロに至ると比較器11は反転し、比較信号VtをLレベルにする。すると駆動信号VgはHレベルとなって主スイッチ3がターンオンし、インダクタ2に電流を流してエネルギーを蓄える。主スイッチ3のオン時間はタイマー回路12dで設定された所定値であるので、このオンオフ動作が繰り返されると、出力直流電圧Voは基準電圧Vrから上昇していく。
【0061】
出力直流電圧Voが(Vr+ΔVr)を越えると、比較器14の出力はLレベルからHレベルに反転し、NOR回路105dの出力をLレベルに固定する。即ち、整流器4の電流がゼロに至って比較信号VtをLレベルにしても、RSラッチ106はセットされず、駆動信号VgはLレベルなので主スイッチ3はオフ状態を維持する。出力コンデンサ5から負荷6への電力供給による放電で出力直流電圧Voが低下し、(Vr+ΔVr)を下回ると、比較器14の出力はHレベルからLレベルに反転し、NOR回路105dは比較信号VtのLレベルと比較器103の出力のLレベルによって、Hレベルを出力してRSラッチ106をセットする。すると駆動信号VgはHレベルとなって主スイッチ3はターンオンする。
【0062】
所定のオン時間だけ主スイッチ3がオンした後ターンオフすると、インダクタ2に蓄えられたエネルギーは整流器4を介して出力コンデンサ5を充電する電流として放出される。出力コンデンサ5の充電によって、再び出力直流電圧Voが(Vr+ΔVr)を越えると、(Vr+ΔVr)を下回るまで主スイッチ3のオフ状態が維持される。以上の動作を繰り返すことにより、出力直流電圧Voは(Vr+ΔVr)に安定化される。
ΔVrは極力小さいことが望ましいが、重負荷動作時に比較器14がHレベルにならないように、重負荷動作時の出力リップル電圧以上に設定しなくてはならない。
【0063】
(第6の実施形態)
図7は本発明に係る第6の実施形態の昇圧コンバータの回路構成図である。第6の実施形態の昇圧コンバータにおいては、前述の第5の実施形態において説明した、負荷6が軽くて出力電流が少ない条件では、主スイッチ3がオフ状態の時に整流器4の電流がゼロに至る不連続モードにおいて、ΔVrを小さくするものである。図7において、図6に示した第5の実施形態に係る昇圧コンバータと同じ構成要素のものについては同じ番号を付与し、その説明を省略する。図7において、図6に示した第5の実施形態の昇圧コンバータと異なるのは、誤差増幅器8の出力Veの下限電圧よりわずかに高い電圧Velを生成する電圧源回路15と、誤差増幅器8の出力Veと電圧Velを比較する比較器16と、比較器16の出力V16と比較器14の出力の論理積を出力するAND回路17を付加し、比較器14の出力の代わりにAND回路17の出力V17をタイマー回路12dのNOR回路105dに入力する構成とした点である。
【0064】
以上の構成により、重負荷動作時においては、誤差増幅器8の出力Veは電圧Velより高く、比較器16の出力V16はLレベルである。これにより、ΔVrを小さく設定して出力リップル電圧によって比較器14の出力がHレベルとなっても、AND回路17の出力V17はLレベルのままであり、NOR回路105dには伝わらない。比較器14の出力がHレベルとなって主スイッチ3のオフ時間を延ばすのは、軽負荷となって誤差増幅器8の出力Veが電圧Vel以下となり、比較器16の出力V16がHレベルとなる場合だけである。
【0065】
比較器16の出力V16は、第6の実施形態の昇圧コンバータが軽負荷の不連続モードか重負荷の連続モードかの判定信号となる。不連続モードと連続モードの切替り時に両モードを行き来すると出力リップル電圧の増大などの問題があるので、本発明の昇圧コンバータにおける比較器16はヒステリシス特性を有することが望ましい。
【0066】
(第7の実施形態)
図8は本発明に係る第7の実施形態の昇圧コンバータのタイマー回路12eの回路構成図である。第7の実施形態の昇圧コンバータにおいては、不連続モードと連続モードの切替り時に両モードを行き来する現象を回避することができる。図8において、図7に示した第6の実施形態に係る昇圧コンバータと同じ構成要素のものについては同じ番号を付与し、その説明を省略する。図8において、図7に示した第6の実施形態の昇圧コンバータと異なるのは、比較器16の出力V16をゲートに印加されるNMOSトランジスタ150と、コンデンサ101とNMOSトランジスタ150のドレインの間に接続された抵抗151を付加した点である。
【0067】
以上の構成により、軽負荷となって比較器16の出力V16がHレベルとなると、NMOSトランジスタ150がオン状態となり、コンデンサ101と並列に抵抗151が接続される。このため主スイッチ3のオン時、即ち、コンデンサ101が電流源回路102bによって充電される時、抵抗151へ充電電流が分流されるため、コンデンサ101の電圧V1の上昇速度が遅くなる。このことにより、タイマー回路12eが設定する主スイッチ3のオン時間は、重負荷連続モード時よりも長くなる。主スイッチ3のオン時間が長くなると、インダクタ2に蓄えられるエネルギーは大きくなり、主スイッチ3のオフ時間において出力コンデンサ5を充電する電荷量が増え、出力直流電圧Voを高くすることになる。出力直流電圧Voが上昇すると誤差増幅器8の出力Veはさらに低下するので、不連続モードは深くなり、不連続モードと連続モードの切替り時に両モードを行き来する現象は回避される。
【0068】
(第8の実施形態)
以上において説明した各実施形態の昇圧コンバータは、整流器としてダイオードを用いて説明してきたが、PMOSトランジスタなどを用いた同期整流器とした場合には電流検出器9を低損失化できる。また、同期整流器とした場合には逆方向の電流を流すことができるが、逆方向電流の検出も可能な電流検出器9について、以下に説明する。
【0069】
図9は本発明に係る第8の実施形態の昇圧コンバータの回路構成図である。図9において、図1(a)に示した第1の実施形態に係る昇圧コンバータと同じ構成要素のものについては同じ番号を付与し、その説明を省略する。図9において、図1(a)に示した第1の実施形態の昇圧コンバータと異なるのは、図1(a)においてはダイオードで表記した整流器4の構成を、PMOSトランジスタを用いた同期整流器とし、電流検出器9の詳細な構成を示した点である。整流器40はPMOSトランジスタから構成され、制御回路10からの駆動信号Vgpによってオンオフ制御される。駆動信号Vgpは駆動信号Vgと同相であるが、主スイッチ3との同時オンを回避するために休止期間が設けられている。
【0070】
図9において、電流検出器9は、整流器40のPMOSトランジスタと同一基板上に設けられた小サイズのPMOSトランジスタ90と、整流器40のPMOSトランジスタのソースに正極が接続されたオフセット電圧源回路91と、オフセット電圧源回路91の負極とPMOSトランジスタ90のソースを入力された差動増幅器92と、PMOSトランジスタ90のソースにソースが接続されたPMOSトランジスタ93と、PMOSトランジスタ93のドレインに接続された抵抗94とからなる。PMOSトランジスタ90はゲートを接地されたオン状態であり、ドレインを整流器40のPMOSトランジスタと共有することによって、整流器40のPMOSトランジスタのオン状態においてカレントミラーを構成する。差動増幅器92の出力は、PMOSトランジスタ93のゲートへ印加される。抵抗94にはPMOSトランジスタ90からPMOSトランジスタ93を介して電流が流れ、その電圧降下が電流検出信号Vcとして出力される。
尚、PMOSトランジスタ90はゲートは接地ではなく、整流器40のPMOSトランジスタのゲートと共用してもかまわない。
【0071】
以上の構成により、電流検出信号Vcにより整流器40を流れる電流を検出できることを説明する。整流器40を流れる電流をI4、整流器40のPMOSトランジスタのオン抵抗をR4、PMOSトランジスタ90のオン抵抗をR9、オフセット電圧源回路91のオフセット電圧をVosとする。オン状態にある整流器40のPMOSトランジスタの電圧降下は、I4×R4 である。差動増幅器92は入力端子間の電位差を0VにするようにPMOSトランジスタ93のオン抵抗を調整するので、PMOSトランジスタ90のドレイン−ソース間電圧は、I4×R4+Vos となる。従って、PMOSトランジスタ90からPMOSトランジスタ93を介して流れる電流I9は、次式(9)で表される。
【0072】
I9=I4×R4/R9+Vos/R9 (9)
【0073】
また、抵抗94の抵抗値をR94とすると、電流検出信号Vcは次式(10)で表される。
【0074】
Vc=I4×(R94×R4/R9)+Vos×(R94/R9) (10)
【0075】
これらの式(9)、(10)から明らかなように、電流検出信号Vcは整流器4に流れる電流I4と線形の関係にある。さらに、比較器11によって誤差信号Veと比較される際の下限電圧をVelとすると、検出制御可能なI4の下限値I4minは次式(11)で表される。
【0076】
I4min=(Vel×R9/R94−Vos)/R4 (11)
【0077】
式(11)から、オフセット電圧VosをVel×R9/R94より大きくすることで、負のI4、即ち整流器40を逆方向に流れる電流も検出制御可能であることがわかる。逆方向電流の検出制御ができると、第6の実施形態や第7の実施形態で説明した不連続モードは不要となる。また、負荷急減などによる出力上昇にも高速に対応できる。
尚、上記の説明では電流検出信号Vcを電圧信号として扱ってきたが、本発明はこれに限定されるものではない。やはり電圧信号としてきた誤差増幅器8の出力Veを電流に変換することにより、比較器11を式(9)で表した検出電流I9と電流比較する構成にしてもよい。
【0078】
また、式(9)において(R4/R9)は、サイズは異なるが同じ構成のPMOSトランジスタのオン抵抗の比なので、温度特性などによるバラツキや変動を抑制できる。同様にオフセット電圧Vosも、同じ構成のPMOSトランジスタをオン状態し、定電流を流して得られる電圧降下を用いることで、(Vos/R9)の温度特性などによるバラツキや変動を抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
以上説明したように、本発明は、各種電子機器に直流電圧を供給する昇圧電源回路等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】(a)は第1の実施形態の昇圧コンバータの回路構成図、(b)は第1の実施形態の昇圧コンバータの動作波形図。
【図2】第1の実施形態に係る昇圧コンバータのタイマー回路12の回路構成図。
【図3】(a)は第2の実施形態の昇圧コンバータのタイマー回路12aの回路構成図、(b)は第2の実施形態の昇圧コンバータのタイマー回路12aの動作波形図。
【図4】(a)は第3の実施形態の昇圧コンバータのタイマー回路12bの回路構成図、(b)はタイマー回路12bの電流源回路102bの回路構成図、(c)はタイマー回路12bの電圧源回路104bの回路構成図。
【図5】(a)は第4の実施形態の昇圧コンバータのタイマー回路12cの回路構成図、(b)は第4の実施形態の昇圧コンバータのタイマー回路12cの動作波形図。
【図6】第5の実施形態の昇圧コンバータの回路構成図。
【図7】第6の実施形態の昇圧コンバータの回路構成図。
【図8】第7の実施形態の昇圧コンバータのタイマー回路12eの回路構成図。
【図9】第8の実施形態の昇圧コンバータの回路構成図。
【図10】従来の昇圧コンバータの回路構成図。
【符号の説明】
【0081】
1 入力直流電源
2 インダクタ
3 主スイッチ
4 整流器
5 平滑手段
6 負荷
7 基準電圧源
8 誤差増幅器
9 電流検出器
10 制御回路
11 比較器
12、12a、12b、12c、12d、12e タイマー回路
13 電圧源回路
14 比較器
15 電圧源回路
16 比較器
17 AND回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列接続されたインダクタと主スイッチと、前記主スイッチの両端電圧を整流平滑する整流器と、平滑部とを有し、前記主スイッチのオンオフ動作によって、前記インダクタに入力された入力直流電圧を昇圧変換して前記平滑部から出力直流電圧を出力する昇圧コンバータであって、
前記整流器の電流に応じた電流検出信号を生成する電流検出器と、
前記出力直流電圧に応じた誤差信号を生成する誤差増幅器と、
前記電流検出信号と前記誤差信号に基づいて前記主スイッチをオンオフする制御回路と、を備えた昇圧コンバータ。
【請求項2】
前記制御回路は、所定のオン時間を設定し、前記所定のオン時間だけ前記主スイッチをオン状態とし、前記電流検出信号が前記誤差信号に至るまでの期間は前記主スイッチをオフ状態とするよう構成された請求項1記載の昇圧コンバータ。
【請求項3】
前記制御回路は、所定のオン時間と所定のオフ時間を設定し、前記所定のオン時間だけ前記主スイッチをオン状態とし、前記所定のオフ時間又は前記電流検出信号が前記誤差信号に至るまでの期間は前記主スイッチをオフ状態とするよう構成された請求項1記載の昇圧コンバータ。
【請求項4】
前記制御回路は、前記入力直流電圧が高いほど前記所定のオン時間を短く設定するよう構成された請求項2または3記載の昇圧コンバータ。
【請求項5】
前記制御回路は、前記出力直流電圧の目標値が高いほど前記所定のオン時間を長く設定するよう構成された請求項2または3記載の昇圧コンバータ。
【請求項6】
前記制御回路は、前記所定のオン時間と前記所定のオン時間を含む所定の期間を設定し、前記所定のオフ時間は前記所定の期間と前記所定のオン時間との時間差によって設定されるよう構成された請求項3記載の昇圧コンバータ。
【請求項7】
前記誤差増幅器は、前記出力直流電圧と目標値との誤差を増幅した誤差信号を生成し、
前記制御回路は、前記出力直流電圧が前記目標値以上の所定値を越えると、前記所定値を下回るまでは前記主スイッチをオフ状態とするよう構成された請求項2または3記載の昇圧コンバータ。
【請求項8】
前記制御回路は、前記誤差信号が所定のレベル以下であり、且つ前記出力直流電圧が前記目標値以上の所定値を越えたとき、前記所定値を下回るまでは前記主スイッチをオフ状態とするよう構成された請求項2または3記載の昇圧コンバータ。
【請求項9】
前記制御回路は、前記誤差信号が所定のレベル以下の場合、前記所定のオン時間を長くすることを特徴とする請求項8記載の昇圧コンバータ。
【請求項10】
前記整流器は、前記主スイッチと交互にオンオフする整流トランジスタであり、
前記電流検出器は、少なくとも導通時において前記整流トランジスタとカレントミラーを構成する検出トランジスタを備え、前記検出トランジスタの電流に基づいて前記電流検出信号を生成する請求項1記載の昇圧コンバータ。
【請求項11】
前記電流検出器は、前記整流トランジスタと前記検出トランジスタの各電流流出端子の電圧が入力される差動増幅器と、前記差動増幅器の出力によって導通抵抗が調整される調整トランジスタとを備え、前記検出トランジスタの電流流出端子に前記調整トランジスタを接続し、前記調整トランジスタを介して流れる前記検出トランジスタの電流に基づいて前記電流検出信号を生成する請求項10記載の昇圧コンバータ。
【請求項12】
前記電流検出器の前記差動増幅器は、入力端子間に所定のオフセット電圧が設けられた請求項11記載の昇圧コンバータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−92618(P2008−92618A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−267191(P2006−267191)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】