説明

昇温ロール均熱化方法およびその装置

【課題】昇温ロールのロール幅方向での均熱化を実現することを目的とする。
【解決手段】昇温ロール(1)のロール表面のワーク(2)が接触していない部分に、ダミーワーク(11a,11b)を接触させることによって、昇温ロール(1)のロール幅方向で一様に熱を奪って、ロール幅方向でのロール表面温度の均熱化を実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池の製造工程においてリチウムイオン二次電池の極板を昇温させるロール装置に関するもので、特に昇温ロールのロール表面の幅方向の温度の均一化を実現するための昇温ロール均熱化方法およびその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今、リチウムイオン二次電池は、携帯電話機やノート型パーソナルコンピュータ等のポータブル型電子機器の電源として多く使用されてきた。さらに近年は、モーターを動力源とする自動二輪車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車等に使用されるなど用途が広がるのに伴い、リチウム二次電池の高容量化が求められてきている。
【0003】
そこでリチウム二次電池の高容量化を実現するために、リチウム二次電池の極板を構成する物質が様々な材質に変更されてきている。このような材料変更に伴い、極板を100℃以上の高温状態まで昇温させたのちに加工をする新たな工程が必要になってきた。極板を昇温させる方法としては、IRヒータや熱風など様々な加熱手法があるが、昇温時間の短縮や製造スペースの縮小などから、この工程では、加熱した金属製もしくはセラミック製のロールに極板を接触させて昇温させる手法が一般的に採用されている。
【0004】
例えば図5に示すように、円筒状の回転する加熱されたロールである昇温ロール1にあらかじめ所定の膜が塗布されたリチウム二次電池用の極板2を接触させることで、極板2を目的の温度まで昇温させ、最後に加工機3で加工処理を行う。
【0005】
この場合、極板2が昇温ロール1で昇温されてから加工機3で加工処理行われるまで積算熱量が製品後の電池特性に大きく影響を及ぼすことがわかっている。例えば、この熱処理中の極板温度が1℃変動するだけでも、製品後の電池容量に大きな差が発生したり電池の不良率が急激に上昇したりするなどの致命的な課題が発生する。
【0006】
このように温度管理が厳しい工程にもかかわらず、製品単価を抑える必要があるため、この工程では極板2の1枚幅で熱処理を行うのではなく、複数枚の幅をもったシートの状態で熱処理を行った後に、極板2の1枚幅にシートが分割される方法が一般的に採用されている。そのため、製品後の極板2の品質ばらつきは、この熱処理工程中の幅が広いシート状の極板の幅方向の温度ばらつきに比例する。
【0007】
そこで、極板2を昇温させる場合には幅方向の温度均一化が非常に重要になってくる。そのため、この工程ではシート状の極板2の温度ばらつきが幅方向で±1℃以内という厳しい温度管理基準のもと生産が行われている。またそれに伴って、加熱源となる昇温ロール1でも幅方向の温度ばらつきが±1℃以内という非常に厳しい温度管理が求められる。
【0008】
このようにこの工程では、極板2を昇温させるための昇温ロール1のロール表面の温度は幅方向で非常に高精度な温度管理が求められているにもかかわらず、昇温ロール1の設計条件としては極板2を接触させていない状態で昇温ロール1のロール表面の温度が均一になるように設計されることが一般的である。なぜならば、極板2を製造する条件、例えば製造する速度、温度、電池極板の物性等は装置導入後にも仕様変更が度々行われるためである。
【0009】
極板2を流していない状態でも昇温ロール1のロール表面温度を幅方向で均一にすることは非常に困難である。図6は極板2が接触していない状態での昇温ロール1の表面温度の分布を示している。加熱された昇温ロール1は、図6で示すようにロール端部の温度が低下するという問題がある。
【0010】
それは、ロール中央部からの放熱はロール表面からのみであるが、ロール端部はロール表面のみだけでなくロール端部も放熱面となるためにロール中央部に比べて放熱される面積が大きく、温度が低下してしまうからである。このような問題を解決するために、ロール表面温度の均熱化方法として様々な手法が提案されている。
【0011】
特許文献1には、図7に示すように昇温ロール1に内蔵させたヒータ4を幅方向に3分割にし、端のヒータ4aの発熱量を中央のヒータ4bより多く設計する方法が一般的に知られている。5は昇温ロール1の回転軸を表している。このような構成を用いることによって、ロール端部で放熱量が大きい分を端のヒータの発熱量を高めに設定することで補うことができ、昇温ロール1のロール表面の幅方向の温度を均一にすることが実現可能な昇温ロールが提案されている。
【0012】
また、極板2が接触していない状態では、図6にも示したように昇温ロール1の中央部でロール表面温度が均一になっているため、その部分を極板2が熱処理可能な有効幅と設定し、その有効幅の範囲内で極板を接触させて熱処理を行う方法も一般的に用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2006−185696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
特許文献1に記載の昇温ロールの表面温度均熱化方法では、生産用のワークである極板2が昇温ロール1に接触していない状態、つまり無負荷の状態ではロール表面で幅方向の温度は均一化できていても、極板2が昇温ロール1に接触した場合、図8に示すように昇温ロール1の表面温度は極板2が接触している部分、すなわちロール中央側だけ温度が低下するような温度曲線となる。
【0015】
そのため、生産中はロール幅方向で温度が均一な状態で極板2を熱処理することができないという問題がある。これは、昇温ロール1のロール表面で極板2が接触した部分、すなわちロール中央側からのみ熱が奪われるために、その部分のみロール表面温度が低下するが、極板2が接触していないロール表面、すなわちロール端部側からは極板2に熱が奪われることがないため温度低下がほとんど発生せず、図8に示すように温度ばらつきが発生する。
【0016】
昇温ロール1の温度が幅方向でばらつきが発生している状態で極板2を接触させた場合、極板2が昇温ロール1から受ける受熱量も当然ながら幅方向でばらつくため、昇温ロール1の温度ばらつきがそのままワーク温度に転写されるような形で極板2の幅方向にも温度ばらつきが発生するという問題がある。
【0017】
本発明は、昇温ロール1の表面の幅方向の温度ばらつきを均熱化し、ワークである極板2が昇温ロール1から受ける受熱量を幅方向で均一化できる方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の昇温ロール均熱化方法は、帯状のワークを昇温ロールに接触させて設定温度にして送り出すに際し、前記昇温ロールの中央部に前記ワークを接触させて送り出すとともに、前記ワークが前記昇温ロールに接触する直前の温度に調節された帯状のダミーワークを前記昇温ロールの中央部の両側の端部に接触させて、前記昇温ロールの幅方向のロール表面の温度のばらつきを低減することを特徴とする。
【0019】
また本発明の昇温ロール均熱化装置は、帯状のワークを昇温ロールに接触させて温度調節して送り出す昇温ロール均熱化装置であって、前記ワークが前記昇温ロールの幅方向の中央部の表面に接触するよう構成するとともに、前記昇温ロールの幅方向の中央部の両側の表面に接触して送り出されて前記昇温ロールに循環する帯状のダミーワークを設け、前記ダミーワークの循環経路中に配設され前記ダミーワークを温度調節してから前記昇温ロールに循環させる温度調節部を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
この構成によれば、昇温ロールのロール表面のワークが接触していない部分に、ダミーワークを接触させることによって、昇温ロールのロール幅方向で一様に熱を奪って、ロール表面温度をロール幅方向に均熱化できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の昇温ロール均熱化方法を実行する昇温ロール均熱化装置の構成図
【図2】同実施の形態の昇温ロール均熱化装置の斜視図
【図3】別の実施の形態の昇温ロール均熱化装置の構成図
【図4】さらに別の実施の形態の昇温ロール均熱化装置の構成図
【図5】従来の一般的なワーク処理装置の断面図
【図6】従来の非生産時のロール表面の幅方向の温度の測定結果説明図
【図7】従来の昇温ロールの断面図
【図8】従来例での生産時のロール表面の幅方向の温度の測定結果説明図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の昇温ロール均熱化方法を具体的な実施の形態に基づいて説明する。
(実施の形態1)
図1と図2は、ワークとしての極板2を昇温ロール1で昇温させて加工機3に送り込む昇温ロール均熱化装置を示す。
【0023】
昇温ロール1に接触する前の極板2は、ロール6と予熱ロール7およびロール8を経由して昇温ロール1に接触し、昇温ロール1に接触した極板2は、ロール9,10を経由して加工機3に搬入されるように架張されている。昇温ロール1は図7に示したように、内部にヒータ4a,4aや中央ヒータ4bが組み込まれて設定温度に温度制御されている。
【0024】
極板2は昇温ロール1の中央部に接触しており、昇温ロール1の中央部の両側のロール表面には、極板2と同じ熱容量かつ同じ熱伝導率を持った帯状のダミーワーク11a,11bが接触している。
【0025】
ダミーワーク11a,11bは、昇温ロール1に接触した後に、ロール12と、温度調節部13を構成している冷却ロール14a,14b,14cとロール6及び予熱ロール7と、ロール8を経由して昇温ロール1に接触して循環するよう環状に形成されている。ダミーワーク11a,11bを冷却する冷却ロールの大きさ及び本数は、冷却する目標温度までに到達可能な本数を設置すればよい。
【0026】
予熱ロール7における極板2の接触個所は、幅方向の中央部であって、極板2が接触している幅方向の中央部の両側の予熱ロール7にダミーワーク11a,11bが接触している。
【0027】
具体的には、40℃の極板2が予熱ロール7に接触して60℃に予熱されてから昇温ロール1に接触する。昇温ロール1は設定温度を200℃にして温度調節されている。昇温ロール1を通過したダミーワーク11a,11bは、200℃に温度が上昇しており、このダミーワーク11a,11bが冷却ロール14a,14b,14cを通過して40℃よりも低い30℃程度に冷やされて、さらにワーク2が接触して予熱を受けた同じ予熱ロール7に接触して、ワーク2と同じ温度に予熱されてから昇温ロール1に接触している。
【0028】
この時に極板2とダミーワーク11a,11bは、それぞれが昇温ロール1との接触時間、長さ、円周方向での接触する位置関係が同じになるように構成することが望ましい。このような構成にすることによって、昇温ロール1はロール表面から幅方向に均等に熱が奪われるため、従来例と比べて、ロール表面の幅方向の温度の均一化という点において飛躍的な改善を行うことができる。
【0029】
また、昇温ロール1のロール表面での極板2とダミーワーク11a,11bとの隙間dは、できるだけ近づけることが好ましい。なぜならば、昇温ロール1のロール表面において、極板2またはダミーワーク11a,11bが接触していない部分は、ロール表面から熱が奪われないために、極板2またはダミーワーク11a,11bが接触している部分に比べて温度が高くなる。それがロール幅方向の温度ばらつき要因となる。しかしながら、実際には極板2とダミーワーク11a,11bの搬送時には蛇行等により、隙間dが極めて小さい場合には、極板2とダミーワーク11a,11bが接触する危険がある。そのため、ロール表面で許容される温度ばらつきに収まる範囲内であれば隙間dが空いていてもよい。具体的には、極板2の幅が700mm〜800mm,ダミーワーク11a,11bの幅が50mm〜100mmの場合に、隙間dは10mm〜20mmが一般的である。この許容される隙間dは、許容温度ばらつき範囲、極板2とダミーワーク11a,11bの物性、搬送速度、周囲雰囲気温度、昇温ロールの内部構造に起因するため、これらに合った隙間dを適切に選ぶことにより、効果を高めることができる。
【0030】
また、ダミーワーク11a,11bは昇温ロール1の端から極板2の直前までの範囲で昇温ロール1に接触させるよりも、端からある程度内側の所から極板2の直前まで接触されていることが望ましい。前述のように、一般的に高温の昇温ロール1はロール中央部より端部の方が放熱する面積が広いため、ロール端部の温度がロール中央部に比べて低下する傾向にある。そのため、ダミーワーク11a,11bを昇温ロール1の端から接触させるよりは、ロール端よりも内側の所から接触させることによって、これまでロール端部で奪われる熱量を削減することによってロール端部の温度低下を抑えることが可能となり、従来例と比べて、昇温ロール1のロール表面の温度を幅方向で均一にするという点において大きな改善がみられる。
【0031】
例えば、この端からの距離は、昇温ロール1のロール長が1000mmの場合に、20mm〜60mmが一般的である。この端からの最適な距離についても同様に、ダミーワーク11a,11bと昇温ロール1の端部との最適な間隔は、許容温度ばらつき範囲、極板の物性、搬送速度、周囲雰囲気温度、昇温ロールの内部構造に起因するため、これらに合った距離を適切に選ぶことにより、効果を高めることができる。
【0032】
上記のように、単一の予熱ロール7によって極板2と冷却後のダミーワーク11a,11bを予熱しているので、次のような効果が得られる。
冷却ロール14a,14b,14cの冷却水の温度がばらつくことで冷却ロールの温度がばらつくことや、冷却ロール14a,14b,14cの周辺の雰囲気温度がばらつくことで、冷却後のダミーワーク11a,11bが到達する温度にはばらつきが発生する。また、極板2も周辺雰囲気温度のばらつきにより熱処理前の温度にばらつきが発生する。そこで、予熱ロール7によって極板2と冷却後のダミーワーク11a,11bを予熱することによって、極板2とダミーワーク11a,11bの温度を均一にすることが可能となる。
【0033】
この時、昇温ロール1の温度をt1、極板2の物性に大きな影響を与えない温度をt2、極板2の初期温度でばらつきを考慮した時の上限の温度:twとした時、予熱ロール7の温度:t0は、
tw < t0 ≦ t1,t2
の条件を満たすような温度設定が必要である。また、ダミーワーク11a,11bを冷却する温度:t3、昇温ロール1で許容される温度ばらつき:±α、予熱ロール7後の極板2の温度:twa、予熱ロール7後のダミーワーク11a,11bの温度:t3aとすると、ダミーワーク11a,11bを冷却する温度:t3は
t3 < t0 の条件を満たし、かつ( twa −t3a) < α
を満たすことが可能な温度:t3まで冷却する必要がある。
【0034】
このような構成により、昇温ロール1に接触するときに極板2とダミーワーク11a,11bが同一の温度で接触することによって、昇温ロール1のロール表面から幅方向に均一に熱が奪われる構成となり、ロール表面で幅方向に温度が均一になるという結果が得られ、従来例と比べて飛躍的な改善をすることができる。
【0035】
このように、従来例に比べて昇温ロール表面の温度が幅方向で均一となったのは、昇温ロール1の表面から幅方向で均一に熱が奪われるためであり、以下、これについて詳しく説明する。
【0036】
生産をしていない無負荷の時は、昇温ロール1のロール表面の温度を幅方向で均一にするためにロール内部のヒータを幅方向で分割し各ヒータを個別に温度制御するなどの手法を採用し、ロール表面温度を目的の温度ばらつき以内に抑えることができている。
【0037】
しかしながら、昇温ロール1の内部は構造上の理由から、負荷時つまり極板2を熱処理している時は、図8に示すような温度ばらつきが発生する。それは、図7に示すように、端ヒータ4a,4aや中央ヒータ4bから昇温ロール1のロール表面までロールの肉厚の部分がある。
【0038】
そのため、ロール内部のヒータ温度:TH、ロール表面の温度:Tsとすると、
TH > Ts
というような温度差が発生している。これは、ロール表面から大気へ放熱をするため(このときの熱量:Qとする)、その放熱した熱を補うためにロール内部の端ヒータ4a,4aや中央ヒータ4bから昇温ロール1の表面へ熱の移動が発生し、THとTsに温度差が発生する。このときの関係式は以下のような熱力学の一般的な式により表されている。
【0039】
Q = λ ÷ L ・( TH − Ts )・ A
ただし、λ:ロールの肉厚部の物質の熱伝導率、L:肉厚長さ、Aはロール表面積
を示す。
【0040】
この関係式からわかるように、ヒータ温度:THが固定であれば、ロールの肉厚が厚いほど、また放熱量が大きいほどTsの温度が低下することは明らかである。このようにヒータとロール表面の温度差がある状態で、さらに冷えたワークが昇温ロール1のロール表面と接触することでロール表面から奪われる熱量:Qaが増加する。この時、上記の関係式からわかるように、ロール表面から奪われる熱量が大きくなるため、極板2が接触している箇所のロール表面温度:TsaとTHの温度差がより拡大する傾向、つまり、極板2が接触後のロール表面温度:Tsaがワーク接触前のロール表面温度:Tsに比べて低下することがわかる。しかし、ロール表面で、極板2が接していない部分は、ロール表面から奪われる熱量:Qbは増加しない、つまり Qb= Q の関係式がなりたつため、生産時もロール表面温度Tsbと生産前のTsは同じ温度を維持している。そのため、ロール表面でワークが接触している部分と接触していない部分で温度差が生じ( Ta < Tb )、結果的にロール表面の温度が幅方向で均一にならないことがわかる。
【0041】
このような問題を解決するには、ロールの肉厚の部分を0mmにする、もしくは、ロール内部のヒータを幅方向で細かく分割する方法があるが、ロールの肉厚は構造上の問題で0mmにすることは不可能であること、またロール内部のヒータを幅方向で細かく分割することは、構造が複雑になりすぎて昇温ロール製作に要するコストが非常に大きくなるという欠点がある。そこで、本発明の昇温ロール均熱化方法は、極板2が接触していない昇温ロールの両端部にダミーワーク11a,11bを接触させることで、昇温ロール1のロール表面温度を均一化しているため、構造が非常に簡単で導入コストも抑えることができる。
【0042】
なお、ダミーワーク11a,11bが昇温ロール1から奪う単位あたりの熱量が極板2と同じか温度ばらつきの許容範囲内に収まる材料もしくは構成のものであれば、同じ熱容量かつ同じ熱伝導率の材料もしくは構成のものを選定しなくてもよい。
【0043】
(実施の形態2)
図3は本発明の実施の形態2を示す。
実施の形態1では、昇温ロール1を通過して温度が上昇したダミーワーク11a,11bを温度調節してから昇温ロール1に循環させる温度調節部13は、冷却ロール14a,14b,14cと予熱ロール7とで構成されていたが、この実施の形態2では温度調節部13が、第1,第2の熱交換ゾーン15a,15bで構成されている点だけが異なっている。
【0044】
昇温ロール1と接触して温度の上昇したダミーワーク11a,11bを冷却する第1の熱交換ゾーン15aは、冷却用の流体としての例えば冷却用に温度を低くしたエアー16aが通過するチャンバー17aと、チャンバー17aをダミーワーク11a,11bが通過するように複数のロールが配置された通路ガイド18aとで構成されている。
【0045】
極板2とダミーワーク11a,11bを予熱する第2の熱交換ゾーン15bは、予熱用の流体としての例えば予熱用に暖めたエアー16bが通過するチャンバー17bと、チャンバー17bを極板2,ダミーワーク11a,11bが通過するように複数のロールが配置された通路ガイド18bとで構成されている。
【0046】
このように構成したため、第1の熱交換ゾーン15aを通過するダミーワーク11a,11bは、通路ガイド18aによってガイドされながらジグザク状に走行している間にエアー16aと熱交換して冷やされて搬出される。第2の熱交換ゾーン15bを通過する極板2とダミーワーク11a,11bは、通路ガイド18bによってガイドされながらジグザク状に走行している間にエアー16bと熱交換して予熱されて搬出される。
【0047】
(実施の形態3)
図4は本発明の実施の形態3を示す。
実施の形態2では、エアー16aとダミーワーク11a,11bとの接触による熱交換、エアー16bと極板2,ダミーワーク11a,11bとの接触による熱交換によって、冷却,予熱を実施したが、この実施の形態3では、第1の熱交換ゾーン15aに熱交換器19を設け、第2の熱交換ゾーン15bにヒータ20を設け、冷却用の流体として例えば冷却用に温度を低くした液体21を熱交換器19に流し、熱交換器19の輻射熱によってダミーワーク11a,11bを冷却する。また、ヒータ20に通電して、ヒータ20の輻射熱によって極板2とダミーワーク11a,11bを予熱する。その他は実施の形態2と同じである。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明はリチウムイオン二次電池などの電池の高性能化に寄与する。
【符号の説明】
【0049】
1 昇温ロール
2 極板(ワーク)
3 加工機
4a ヒータ
4b 中央ヒータ
6 ロール
7 予熱ロール
8 ロール
9,10 ロール
11a,11b ダミーワーク
12 ロール
13 温度調節部
14a,14b,14c 冷却ロール
15a,15b 第1,第2の熱交換ゾーン
16a,16b エアー
17a,17b チャンバー
18a,18b 通路ガイド
19 熱交換器
20 ヒータ
21 液体
d 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状のワークを昇温ロールに接触させて設定温度にして送り出すに際し、
前記昇温ロールの中央部に前記ワークを接触させて送り出すとともに、
前記ワークが前記昇温ロールに接触する直前の温度に調節された帯状のダミーワークを前記昇温ロールの中央部の両側の端部に接触させて、前記昇温ロールの幅方向のロール表面の温度のばらつきを低減する
昇温ロール均熱化方法。
【請求項2】
前記昇温ロールを通過して温度が上昇した前記ダミーワークを温度調節してから前記昇温ロールに循環させる
請求項1記載の昇温ロール均熱化方法。
【請求項3】
前記ダミーワークとして、熱容量と熱伝導率が前記ワークと同じものを使用する
請求項1記載の昇温ロール均熱化方法。
【請求項4】
前記ワークと前記ダミーワークを前記昇温ロールに接触させる前に、単一の予熱ロールに接触させて互いの温度差を小さくする
請求項1記載の昇温ロール均熱化方法。
【請求項5】
帯状のワークを昇温ロールに接触させて温度調節して送り出す昇温ロール均熱化装置であって、
前記ワークが前記昇温ロールの幅方向の中央部の表面に接触するよう構成するとともに、
前記昇温ロールの幅方向の中央部の両側の表面に接触して送り出されて前記昇温ロールに循環する帯状のダミーワークを設け、
前記ダミーワークの循環経路中に配設され前記ダミーワークを温度調節してから前記昇温ロールに循環させる温度調節部を設けた
昇温ロール均熱化装置。
【請求項6】
前記ダミーワークの熱容量と熱伝導率が、前記ワークの熱容量と熱伝導率と同じである
請求項5記載の昇温ロール均熱化装置。
【請求項7】
前記温度調節部が、
前記昇温ロールと接触して温度が上昇した前記ダミーワークに接触して冷却する冷却ロールと、
前記冷却ロールを通過した前記ダミーワークに接触して前記ワークとの温度差を小さくするように加熱する予熱ロールとを設けた
請求項5記載の昇温ロール均熱化装置。
【請求項8】
前記昇温ロールに接触する前の前記ワークと前記昇温ロールに接触する前の前記ダミーワークが、単一の前記予熱ロールに接触している
請求項7記載の昇温ロール均熱化装置。
【請求項9】
前記ワークと前記ダミーワークは、それぞれが前記昇温ロールとの接触時間、長さ、円周方向での接触する位置関係が同じである
請求項7記載の昇温ロール均熱化装置。
【請求項10】
前記温度調節部は、
温度調節された流体を前記ダミーワークに接触させて冷却する第1の熱交換ゾーンと、
前記昇温ロールに接触する前の前記ワークならびに前記第1の熱交換ゾーンを通過して前記昇温ロールに接触する前の前記ダミーワークに、温度調節された流体を接触させて前記ダミーワークと前記ワークとの温度差を小さくする第2の熱交換ゾーンとを設けた
請求項5記載の昇温ロール均熱化装置。
【請求項11】
前記温度調節部は、
流体が供給された熱交換器を有し、この熱交換器の輻射熱で前記ダミーワークを冷却する第1の熱交換ゾーンと、
発熱するヒータを有し、前記昇温ロールに接触する前の前記ワークならびに前記第1の熱交換ゾーンを通過して前記昇温ロールに接触する前の前記ダミーワークを、前記ヒータの輻射熱で予熱して前記ダミーワークと前記ワークとの温度差を小さくする第2の熱交換ゾーンとを設けた
請求項5記載の昇温ロール均熱化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−233276(P2011−233276A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−100448(P2010−100448)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】