説明

昇降ユニット用制動装置

【課題】昇降ユニットを定位置で停止状態に保つ手段として従来の電磁ブレーキを採用せず、静音であって省スペースに構成することができ、また減速ギアのギア歯が欠けることなく昇降ユニットを停止状態に保つことができる昇降ユニット用制動装置を提供する。
【解決手段】巻取パイプ8の両端を回動自在に支承するユニットケース7の外側に固定されたスプリングホルダ15と、コイル状に巻回された弾性線材の両端が対向位置にて内側に突出してなる一対の爪19a、19bを有するスプリングクラッチ19と、巻取パイプ8の端部に形成された円弧形のブレーキ片9と、減速機17の出力軸20の端部に形成された円弧形の出力軸片21とを備え、スプリングクラッチの一対の爪を挟んで、スプリングクラッチを縮径する側に減速機の出力軸片が配置されると共に、スプリングクラッチを拡径する側に巻取パイプのブレーキ片が配置された構成を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昇降棚をアクチュエータによって昇降するように構成した昇降ユニットを定位置で停止状態に保つようにした昇降ユニット用制動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、台所等において食器等の物品を収納する昇降棚をアクチュエータの駆動によって昇降するように構成した昇降ユニットが開発されている。このような昇降ユニットは、昇降棚に収容物を出し入れする際には下降させ、それ以外は上昇位置で停止させることにより、台所などの作業スペースを確保するようにしたものである。また、このような昇降ユニットは、台所に限らず、書斎や工場等において、種々の棚を昇降可能とする際にも採用されている。
【0003】
ところで、このような昇降ユニットの昇降棚に物品を収容した後は、通常、最上昇位置で停止した状態を長時間保つこととなるが、その停止状態を安全に保つためには、何らかの制動機能を備える必要がある。
【0004】
そこで、従来の技術として、特許文献1を参照すると、この文献の「製品受け容器の自動搬送装置」は、複数の棚板を有する一対の昇降棚を互いに同期して上下動自在に設け、棚板と受台が合致した位置でその下降動作を停止させるためのブレーキ装置を有するものであり、そのブレーキ装置としては電磁ブレーキが採用されている。
【0005】
ところが、この電磁ブレーキは騒音が大きく、台所の昇降棚等のように静音が要求されるような昇降ユニットに電磁ブレーキを採用することは不適当であった。また、従来の電磁ブレーキは、アクチュエータの後部に取付けられる小型であり、制動力も小さいものであったが、本発明で使用する巻取パイプのように大きな制動力が要求される場合、電磁ブレーキを大型化する必要があり、高価になるうえ、大きな取付けスペースが必要となるものであった。
【0006】
また、昇降ユニットの棚内に重量の大きい物品を収容した場合、収容物の重量で減速ギアに負荷が掛かり、ギア歯が欠けてしまうおそれがあった。
【特許文献1】実公平3−33683号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、昇降棚をアクチュエータによって昇降するように構成した昇降ユニットを定位置で停止状態に保つ手段として従来の電磁ブレーキを採用せず、静音であって省スペースに構成することができ、また減速ギアのギア歯が欠けることなく昇降ユニットを停止状態に保つことができる昇降ユニット用制動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1の昇降ユニット用制動装置は、減速機を介してアクチュエータに接続された巻取パイプを備えると共に、巻取パイプによって巻き取られるベルトを介して昇降棚が昇降するようにした昇降ユニットにおいて、巻取パイプの両端を回動自在に支承するユニットケースの外側に固定されたスプリングホルダと、コイル状に巻回された弾性線材の両端が対向位置にて内側に突出してなる一対の爪を有するスプリングクラッチと、巻取パイプの端部に形成された円弧形のブレーキ片と、減速機の出力軸の端部に形成された円弧形の出力軸片とを備え、スプリングクラッチの一対の爪を挟んで、スプリングクラッチを縮径する側に減速機の出力軸片が配置されると共に、スプリングクラッチを拡径する側に巻取パイプのブレーキ片が配置された構成を有し、アクチュエータの駆動により出力軸片がいずれかの爪に係合し押圧することによってスプリングクラッチが縮径し、スプリングクラッチの回転に従動して巻取パイプが回動する一方、アクチュエータの停止により昇降棚の自重によってベルトを介して巻取パイプのブレーキ片がいずれかの爪に係合し押圧することによってスプリングクラッチが拡径し、スプリングクラッチの外周がスプリングホルダの内周に圧接して巻取パイプを停止状態とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
上記の本発明の昇降ユニット用制動装置によれば、従来の電磁ブレーキを使用することなく、弾性線材をコイル状に巻回してなるスプリングクラッチをスプリングホルダに収容した構成によって、巻取パイプを制動したり、回動自在にすることができるため、省スペース構造であって、安価に製造することができ、また、制動時の静音を確保することができ、さらには減速ギアのギア歯に負荷をかけることのない状態で昇降棚を停止状態に保つことができる。
【0010】
また、本発明の昇降ユニット用制動装置によれば、スプリングホルダに収容されたスプリングクラッチの一対の爪に対して巻取パイプのブレーキ片と減速機の出力軸片とが係合される構成であって、スプリングクラッチの一対の爪を挟んで、スプリングクラッチを縮径する側に減速機の出力軸片が配置されると共に、スプリングクラッチを拡径する側に巻取パイプのブレーキ片が配置された構成を有するため、アクチュエータの駆動によって減速機が回転すると、減速機の出力軸片がスプリングクラッチを縮径する方向に作用することにより、巻取パイプを回動状態にする。また、アクチュエータの停止によって減速機が停止すると、ベルトに作用する昇降棚の自重によって巻取パイプのブレーキ片がスプリングクラッチを拡径する方向に作用することにより、巻取パイプを停止状態にすることができる。
【0011】
即ち、本発明によれば、アクチュエータを駆動するか、停止するかによって、自動的に、巻取パイプを制動するか、回転自在にするかが決定されるため、巻取パイプを制動するためのタイミングをアクチュエータの駆動又は停止によって図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0013】
この実施例の昇降ユニット用制動装置1(図2(a)(b)参照)は、図1に示すように、例えば台所等に設けられる昇降棚2を昇降するための昇降ユニット3の駆動部6(図2参照)に設けられるブレーキ装置に関するものである。昇降ユニット3全体の構成については、図1に示すように、台所の天井や壁などに固定される外箱4の左右の内側に沿って縦状にガイド枠5、5が設けられ、夫々のガイド枠5、5に沿って昇降棚2が上下方向に案内される構成とされている。また、外箱4の内側上面の中央には、ユニットケース7が固設されている。
【0014】
図2(a)に示すように、ユニットケース7の両側板7a、7bには巻取パイプ8が回動自在に支承されている。この巻取パイプ8は、図3(a)〜(c)に示すように、筒形のパイプ本体8aを有し、パイプ本体8aの一端は、断面形状が円弧形のブレーキ片9が形成されると共に、中央の両側部に沿って軸方向にスリット8b、8bが形成され、これらの両側のスリット8b、8bに1本のベルト10(図2(a)参照)が挿通された状態でネジ穴8c、8cにネジ11、11(図2(a)参照)が螺入されることによって固定される。また、図2(a)に示すように、巻取パイプ8の両端には巻回時のベルト10を案内する円形のフランジ8d、8dが設けられている。
【0015】
さらに、図1に示すように、ベルト10の両端は外箱4の内側の左右端付近に設けられたプーリ12、12に案内され、昇降棚2の上側の左右端部に設けられた動プーリ13、13に案内された後、ベルト10の各端部が外箱4の内側上部の左右端付近に設けられた固定部14、14で固定された構成とされている。
【0016】
上記の構成において、図2(a)、(b)に示すように、巻取パイプ8の両端を回動自在に支承するユニットケース7の側板7aの外側にスプリングホルダ15が固設され、スプリングホルダ15の外側にはユニットケース7の外側にネジ16aで固定されたアクチュエータ受台16が設けられ、このアクチュエータ受台16にネジ17a、17a…で固定された減速機17を介してアクチュエータ18が固定されている。
【0017】
上記のスプリングホルダ15の内部には、図5(a)、(b)に示すようにコイル状に巻回された弾性線材の両端が対向位置にて内側に突出してなる一対の爪19a、19bを有するスプリングクラッチ19が収納されている。
【0018】
また、減速機17の出力軸20の軸端部は、図4(a)、(b)に示すように、円弧形に形成された出力軸片21を備え、図6(a)に示すように、スプリングホルダ15内に収納されたスプリングクラッチ19の一対の爪19a、19bを挟んで、スプリングクラッチ19を縮径する側に減速機の出力軸20の出力軸片21が配置されると共に、スプリングクラッチ19を拡径する側に巻取パイプ8のブレーキ片9が配置されている。
【0019】
次に、上記のように構成された昇降ユニット用制動装置の動作について説明する。図6(a)〜(d)は、本実施例の動作説明のために減速機17の側部から巻取パイプ8(図2(a)参照)の方向を透視的に見た概略図である。
【0020】
図6(a)に示すように、アクチュエータ18(図2(a)参照)を駆動して、減速機の出力軸20が矢印Aの方向に回転すると、出力軸片21の端部がスプリングクラッチ19の一方の爪19aに係合して押圧することにより、スプリングクラッチ19は縮径するため、スプリングクラッチ19がスプリングホルダ15の内周面からフリーの状態になって回動自在となる。
【0021】
さらに、図6(b)に示すように、出力軸片21の端部が矢印Aの方向に回動すると、ブレーキ片9がスプリングクラッチ19の一方の爪19aに係合して矢印Aの方向に押圧される結果、減速機の出力軸20とスプリングクラッチ19とブレーキ片9とが共回りの状態となり、減速機17の回転に従って巻取パイプ8が回転すると、巻取パイプ8に固定されたベルト10が巻取パイプ8の周りに巻き取られ、昇降棚2が上昇する。
【0022】
次いで、図6(c)に示すように、昇降棚2を停止するためにアクチュエータ18(図2(a)参照)を停止すると、昇降棚2(図1参照)の自重によってベルト10を介して巻取パイプ8が上記とは反対方向(矢印Bの方向)に回転し、巻取パイプ8のブレーキ片9の端部がスプリングクラッチ19の一方の爪19aに係合して押圧することにより、スプリングクラッチ19が拡径し、スプリングクラッチ19の外周面がスプリングホルダ15の内周面に当接する結果、その摩擦力によって制動がかかった状態になり、昇降棚2が停止した状態を保持することとなる。
【0023】
また、図6(d)に示すように、アクチュエータ18(図2(a)参照)を逆転すると、減速機の出力軸20が矢印Aの方向に回転して出力軸片21がスプリングクラッチ19の一方の爪19bに係合して押圧することにより、スプリングクラッチ19が縮径し、スプリングクラッチ19がスプリングホルダ15の内周からフリーの状態になり、昇降棚2は自重で下降することとなる。
【0024】
本実施例の構成においては、上記のようにアクチュエータ18を駆動するか、停止するかによって、自動的に、巻取パイプ8を制動するか、回転自在にするかが決定されるため、巻取パイプ8を制動するためのタイミングをアクチュエータ18の駆動又は停止によって図ることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の昇降ユニット用制動装置は、昇降棚をアクチュエータによって昇降するように構成した昇降ユニットを定位置で停止状態に保つ手段として従来の電磁ブレーキを採用せず、静音であって省スペースに構成することができ、また減速ギアのギア歯が欠けることなく昇降ユニットを停止状態に保つことができる昇降ユニット用制動装置として利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る実施例1の昇降ユニット用制動装置を設けた昇降棚の設置状況を示す部分正面図である。
【図2】(a)は本発明に係る実施例1の昇降ユニット用制動装置を設けた駆動部の上面図であり、(b)は側面図である。
【図3】(a)、(b)は本発明に係る実施例1の昇降ユニット用制動装置に使用する巻取パイプの側面図、(c)は端面図である。
【図4】(a)は本発明に係る実施例1の昇降ユニット用制動装置に使用する出力軸の端面図、(b)は側面図である。
【図5】(a)は本発明に係る実施例1の昇降ユニット用制動装置に使用するスプリングクラッチの端面図、(b)は側面図である。
【図6】(a)〜(d)は本発明に係る実施例1の昇降ユニット用制動装置の作動状態を示す概略図である。
【符号の説明】
【0027】
1 昇降ユニット用制動装置
2 昇降棚
3 昇降ユニット
4 外箱
5 ガイド枠
6 駆動部
7 ユニットケース
7a、7b 側板
8 巻取パイプ
8a パイプ本体
8b スリット
8c ネジ穴
8d フランジ
9 ブレーキ片
10 ベルト
11 ネジ
12 プーリ
13 動プーリ
14 固定部
15 スプリングホルダ
16 アクチュエータ受台
16a ネジ
17 減速機
17a ネジ
18 アクチュエータ
19 スプリングクラッチ
19a、19b 一対の爪
20 減速機の出力軸
21 出力軸片
A 出力軸片(出力軸)の回転方向
B ブレーキ片(巻取パイプ)の回転方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
減速機を介してアクチュエータに接続された巻取パイプを備えると共に、巻取パイプによって巻き取られるベルトを介して昇降棚が昇降するようにした昇降ユニットにおいて、
巻取パイプの両端を回動自在に支承するユニットケースの外側に固定されたスプリングホルダと、コイル状に巻回された弾性線材の両端が対向位置にて内側に突出してなる一対の爪を有するスプリングクラッチと、巻取パイプの端部に形成された円弧形のブレーキ片と、減速機の出力軸の端部に形成された円弧形の出力軸片とを備え、
スプリングクラッチの一対の爪を挟んで、スプリングクラッチを縮径する側に減速機の出力軸片が配置されると共に、スプリングクラッチを拡径する側に巻取パイプのブレーキ片が配置された構成を有し、
アクチュエータの駆動により出力軸片がいずれかの爪に係合し押圧することによってスプリングクラッチが縮径し、スプリングクラッチの回転に従動して巻取パイプが回動する一方、
アクチュエータの停止により昇降棚の自重によってベルトを介して巻取パイプのブレーキ片がいずれかの爪に係合し押圧することによってスプリングクラッチが拡径し、スプリングクラッチの外周がスプリングホルダの内周に圧接して巻取パイプを停止状態とすることを特徴とする昇降ユニット用制動装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−100837(P2009−100837A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−273290(P2007−273290)
【出願日】平成19年10月22日(2007.10.22)
【出願人】(391016989)株式会社的場電機製作所 (8)
【Fターム(参考)】