説明

昇降式キャブを有する作業機械の安全装置

【課題】 昇降式キャブを備えた各種作業機械に対して好適に適用することができ、キャブが上昇位置にあるときにキャブのドアが開けられたことを運転者に注意喚起でき、キャブからの転落を防止できる昇降式キャブを有する作業機械の安全装置を提供する。
【解決手段】 キャブ内に標準装備のロック手段とは別にドアロック手段を設け、ドアロック手段によるロック状態をロック検出センサにより検出する。キャブが乗降可能高さ位置よりも高い位置に居たときにドアロック手段によるロック状態が解除されると、警報灯等を用いた警報手段により警報を報知する。これにより、高い位置にあるキャブからの転落を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昇降式キャブを有する作業機械の安全装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、港湾における荷役作業や製鉄所の作業などでは、昇降式キャブを備えた作業機械が用いられている。この種の作業機械では、キャブを昇降させることにより、キャブ内で操縦している運転者のアイポイントの高さ位置を変えることができる。そして、作業状況に応じてキャブの外側やキャブの前方側における下方を運転席から視認することが可能になり、作業を効率的に、しかも、容易に行うことができる。
【0003】
そして、例えば、港湾荷役のように岸壁と船艙内との間で貨物の積降を行う作業では、キャブの高さ位置を船艙の床が視認できるような高さ位置にした状態で作業機械の運転を行うことができる。また、港湾荷役や製鉄所の作業などでは、24時間稼動による作業機械の運転が行われることが数多くある。
【0004】
キャブを上昇させた位置において作業を行っていた運転者が、乗員の乗降に対して問題が無いと予め設定した所定の乗降位置までキャブを降下させずに、キャブから降りようとすると、転落してしまう危険性が生じることになる。特に、夜間のように作業環境が悪い状況下においてキャブから降りようとしたときには、周囲の様子を見てキャブの高さ位置を確認することもできず、キャブから転落してしまう危険性が高くなってしまう。
【0005】
昇降式キャブを備えた作業機械では、運転者の安全を図った安全装置を備えた様々な作業機械が提案されており、安全装置を備えた作業機械としては、作業機械における移動式運転室の通路遮断装置(特許文献1参照)やキャブ可動式作業機械(特許文献2参照)などがある。
【0006】
特許文献1に記載された通路遮断装置では、運転者がキャブから降りるときには、必ずキャブが格納位置に戻されていることを確認した後において行えるようにするため、キャブに備えた通路を遮断できる通路遮断装置が設けられている。
【0007】
即ち、キャブを移動操作する移動操作機構を支持するフレームには、キャブが格納位置に収まっていることを検知する格納位置検知手段が設けられており、キャブ内には、格納位置検知手段による検知を確認する検知確認手段が設けられている。通路遮断装置は、キャブに設けた通路と作業機械のフレームに設けた通路との間を遮断可能に配した遮断バーを備えている。遮断バーは、キャブに設けた通路側の昇降通路開口部に設けられており、検知確認手段からの信号によって昇降通路開口部を遮断状態と通行可能状態とに切換えることができる。
【0008】
遮断バーは、キャブが格納位置を離れるとキャブに設けた通路の昇降通路開口部を閉鎖したロック状態になり、キャブに設けた通路を行き止り状態にする。そして、キャブが格納位置にあるときには、遮断バーはフリー状態になり、キャブに設けた通路と作業機械のフレームに設けた通路との間を通行可能にする。
【0009】
また、特許文献1に記載された発明には、検知確認手段が設けられており、検知確認手段の表示ランプは、検知確認手段の検知によりキャブが格納位置にあるときには、青色を点灯し、キャブが格納位置から離れると赤色の表示ランプが点灯する。
【0010】
特許文献2に記載されたキャブ可動式作業機械では、キャブのドアが閉じられている場合に信号を出力するドア閉検知手段がキャブに設けられている。また、キャブの移動操作を規制する移動制限手段が設けられており、移動制限手段は、ドア閉検知手段がドアの閉状態を示す信号を出力している場合に、キャブの移動操作を可能にする。
更に、キャブがチルト操作された状態において、ドアが開けられた際に警報を報知する報知手段が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2004−249843号公報
【特許文献2】特開2004−131006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1に記載された通路遮断装置では、キャブの位置が格納位置にあるのか、格納位置から離れた位置にあるのかに対応して、遮断バーがフリー状態になったりロック状態になったりする。そして、キャブが格納位置から離れた位置にあるときには、遮断バーはロック状態になって、運転者等の乗員の通行を規制する構成になっている。
【0013】
このように特許文献1の発明では、運転者の安全を図る安全装置を備えた発明になっているが、キャブが格納位置から離れた位置にあるときでも、運転者がキャブからキャブに設けた通路まで出ることは可能な構成になっている。
【0014】
しかも、キャブが格納位置から離れた位置にあるときには、赤色の表示ランプが点灯する構成にはなっているが、キャブが格納位置から離れた位置にあるときに運転者がキャブから外に出ようとして、ドアを開けたときに注意を喚起するようには構成されていない。
【0015】
このように、特許文献1の安全装置は、キャブの移動操作時に運転者がキャブの外に出た後、そこから更に先に運転者が移動するのを規制する安全装置として構成されている。そのため、キャブに通路を備えた大型の作業機械に対して、特許文献1の安全装置を好適に適用することはできる。しかし、キャブに通路を備えていない作業機械に対しては、遮断バーを設けておくべき通路が存在しないことになる。
【0016】
特許文献2に記載された発明では、キャブ内に運転者が乗車したままの状態で、キャブに対してチルト操作が行われた場合を想定して、キャブのチルト操作中にドアが開けられたときには、警報が報知される構成になっている。しかし、キャブに対する操作が、チルト操作ではなく昇降等の移動操作を行うときには、移動制限手段が作動する構成になっている。しかも、移動制限手段は、ドア閉検知手段がドアの閉状態を示す信号を出力している場合にのみ、キャブの移動操作を可能にする構成になっている。
【0017】
そのため、キャブに対して昇降等の移動操作を行うときに、ドアを開けた状態でキャブの周囲を確認しながらキャブの移動操作を実行しようとしても、ドア閉検知手段によってキャブの移動操作を行うことはできない。そして、仮に、キャブの移動操作時においても、ドアを開けたときには警報が報知されるように、警報手段をキャブに設けたとしても、キャブの移動操作自体は、ドアを開けた状態ではドア閉検知手段からの信号によって禁止された状態になっている。
【0018】
本願発明では、運転者をキャブ内に閉じ込めておくことにより運転者に対する安全を確保しようとすることを基本的な目的にしており、キャブに通路が備えられていない作業機械に対しても適用することができる。また、キャブが上昇位置にあるときにキャブのドア
を開けたとしても、作業機械の操作を続けて行うことができ、しかも、ドアを開けたキャブの位置が、上昇位置にあることを運転者に注意喚起することができる。これによって、運転者にキャブの高さ位置を確認させることができ、キャブからの転落を防止できる昇降式キャブを有する作業機械の安全装置を提供することを課題にしている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本願発明の課題は、請求項1〜6に記載された各発明により達成することができる。
本願発明の昇降式キャブを有する作業機械の安全装置は、昇降式キャブを有する作業機械において、前記昇降式キャブ内に別途設けられ、前記昇降式キャブの乗降ドアを手動操作でロックできるドアロック手段と、前記ドアロック手段のロック状態を検出するロック検出センサと、を設け、
前記ロック検出センサが前記ロック状態を検出しているときには、アクチュエータの作動システムを作動可能状態に設定することができ、前記昇降式キャブが乗員の乗降可能位置よりも上昇した位置にいるときに、前記ロック検出センサにより前記ロック状態の解除が検出されると、警報が報知されることを最も主要な特徴としている。
【0020】
また、本願発明は、前記作動システムの作動可能状態の設定が、エンジンキースイッチのON操作により設定でき、前記昇降式キャブが前記乗降可能位置よりも上昇した位置にいるときに、前記エンジンキースイッチがOFFに操作されても、少なくとも前記ロック検出センサ及び前記警報を制御するコントローラのコントロール電源が保持されてなることを主要な特徴としている。
【0021】
更に、本願発明は、前記作動システムの作動可能状態の設定が、エンジンキースイッチはON状態であって、前記アクチュエータに対する圧油の給排を行い得る状態にすることにより設定でき、前記昇降式キャブが前記乗降可能位置よりも上昇した位置にいるときに、前記アクチュエータへの圧油の給排が行い得ない状態になっても、少なくとも前記ロック検出センサ及び前記警報を制御するコントローラのコントロール電源が保持されてなることを主要な特徴としている。
【0022】
更にまた、本願発明は、前記昇降式キャブが前記乗降可能位置にいるときに、前記ドアロック手段によるロック状態が解除されるとともに、前記作動システムの作動可能状態の設定がキャンセルされ、そして前記乗降ドアが開閉されて閉状態になった所定時間経過後には、少なくとも前記ロック検出センサ及び前記警報を制御するコントローラのコントロール電源がOFFになることを主要な特徴としている。
【0023】
また、本願発明は、隠しスイッチと、前記乗降ドアの開閉を検出するドア開閉検出センサと、を更に備え、前記隠しスイッチがON状態のときには、前記ロック検出センサによる前記ロック状態の検出の有無に係らず、前記作動システムを作動可能状態に設定することが可能となり、
前記隠しスイッチを介して前記作動システムを作動可能状態に設定したときであって、前記昇降式キャブが前記乗降可能位置よりも上昇した位置にいるときに、前記ドア開閉検出センサが前記乗降ドアの開状態を検出すると、警報が報知されることを主要な特徴としている。
更に、本願発明は、前記警報が、音声及び警告灯を用いて報知されることを主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0024】
本願発明では、キャブ内に運転者を閉じ込めた状態を確認するため、標準装備されている乗降ドアのロック装置とは別にドアロック手段を設けている。そして、このドアロック手段でのロック状態をロック検出センサにより検出したときには、アクチュエータの作動
システムを作動可能状態に設定することができる構成になっている。
【0025】
ドアロック手段は、手動により操作することができるので、キャブ内に入った運転手がドアロック手段を操作した後に、ドアロック手段がロック状態になっているときには、アクチュエータ作動システムを作動可能状態に設定することができる。
【0026】
このように、アクチュエータ作動システムを作動可能状態に設定することができれば、運転者は乗降ドア(以下では、単にドアとして記載する。)が閉状態でロックされていることを認識することができる。尚、ドアロック手段がロック状態になっていることは、ロック検出センサからの検出信号がコントローラに入力されるにより、判断されることになる。
【0027】
そして、アクチュエータ作動システムが一旦作動可能状態に設定された後に、ドアロック手段のロック状態が解除されたとしても、設定したアクチュエータ作動システムの作動可能状態は維持される構成になっている。
【0028】
アクチュエータ作動システムとしては、例えば、エンジンキースイッチをON状態にすることにより作動可能状態に設定することができる。そして、エンジンキースイッチをOFF状態にすることにより作動不能状態にすることができる。また、エンジンキースイッチはON状態であるが、エンジンによって駆動される油圧ポンプから吐出した圧油を、各アクチュエータに対して給排することができる状態にすることで、アクチュエータ作動システムを作動可能状態に設定することもできる。
【0029】
即ち、例えば、油圧ポンプと各アクチュエータとを結ぶ油路に配した制御弁を作動不能状態にすることにより、あるいは、油圧ポンプから吐出した圧油をそのままタンク内に排出するように油路を制御することなどにより、アクチュエータ作動システムを作動不能状態にしておくことができる。そして、この作動不能状態を解除することにより、アクチュエータ作動システムを作動可能状態に設定することができる。
【0030】
アクチュエータ作動システムが作動可能状態に設定されると、キャブを昇降させるアクチュエータを作動させたり、作業機を動かすアクチュエータを作動させたりして作業機械を動かすことができる。そして、乗員の乗降に問題が無いと予め設定した所定の乗降位置よりもキャブが上昇した位置にいるときに、ドアロック手段のロック状態が解除され、ロック状態の解除がロック検出センサにより検出されると、警報が報知されることになる。
【0031】
警報の報知としては、音声やブザーによる警報、ランプの点灯や点滅、回転灯等による警報、制御画面上に警報を表示するなど、あるいは、これらの報知を適宜組み合わせた報知方法などを採用することができる。
【0032】
このように構成されているので、運転者は、乗降可能位置よりも上昇した位置にいるキャブのドアロックを解除したことを警報によって確認することができる。そして、夜間における作業中であっても、運転者は現在のキャブの状況を警報によって正しく判断することができるので、乗降位置よりも上昇した位置にいるキャブのドアから外に出るのを取りやめることができる。
【0033】
本願発明では、キャブが乗降可能位置よりも上昇した位置にいるときに、作動システムを作動不能状態に設定したとしても、少なくともロック検出センサや警報を制御しているコントローラのコントロール電源をOFF状態にすることなく、電源を保持しておくことができる。
【0034】
このように構成されているので、キャブが乗降可能位置よりも上昇した位置にいるときに、ドアロックが解除されれば警報が報知されることになる。そして、運転者は現在のキャブの状況を正しく判断することができるので、上昇した位置にいるキャブのドアから外に出るのを止めることができる。
【0035】
本願発明では、キャブが乗降可能位置にいるときに、ドアロック手段によるロック状態が解除され、しかも、作動システムの作動可能状態がキャンセルされた後に、ドアから運転手がキャブの外に出て、ドアを閉めると、ドアを閉めてから所定時間が経過すると、コントローラのコントロール電源をOFFにすることができる。
【0036】
このように構成されているので、コントローラのコントロール電源は、作動システムの作動可能状態がキャンセルされても、直ぐにはOFF状態にはならず、運転手がキャブの外に出てドアが閉められた後の所定時間が経過するまでは、電源が保持されている状態に維持される。そして、コントロール電源が保持されている間に必要と思われる何らかの制御をコントローラに行わせることができる。また、コントロール電源をOFFにすることにより、バッテリー上がりが生じるのを長期に亘って抑えておくことができる。
【0037】
本願発明では、隠しスイッチと、ドアの開閉を検出するドア開閉検出センサと、を更に備えておくことができる。隠しスイッチは、ロック検出センサによるロック状態の検出の有無に係らず、作動システムを作動可能状態に設定させることができるセンサとして構成されている。ドア開閉検出センサは、キャブのドアが開状態になったことを検出するセンサであり、ロック検出センサとは別に構成されている。
【0038】
隠しスイッチを介して作動システムを作動可能状態に設定したときにおいて、キャブが乗降可能位置よりも上昇した位置にいるときに、ドアが開状態になったのをドア開閉検出センサで検出すると、警報を報知することができる。
【0039】
このように構成されているので、ドアの開状態をロック検出センサとドア開閉検出センサとの二重の安全構造で検出することができる。しかも、ロック検出センサが故障してドアロック手段によるロック状態が検出できないときでも、隠しスイッチによって作業機械を操作可能状態にすることができる。そして、ドアの開状態をドア開閉検出センサで検出することができるので、キャブが乗降可能位置よりも上昇した位置にいるときにドアが開状態になれば、警報が報知されることになる。
【0040】
このように、警報によって、運転者は現在のキャブの状況を正しく判断することができるので、上昇した位置にいるキャブのドアから外に出るのを止めることができる。そして、運転者のキャブからの転落を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】昇降式キャブを上昇状態にした作業機械の側面図である。(実施例)
【図2】昇降式キャブと平行リンク機構を示す側面図である。(実施例)
【図3】昇降式キャブ内におけるドアロック手段及びロック検出センサを示す図である。(実施例)
【図4】昇降式キャブ内におけるドア開閉検出センサを示す図である。(実施例)
【図5】昇降式キャブ内における警報手段を示す図である。(実施例)
【図6】昇降式キャブの乗降可能位置を検出する位置センサを示す図である。(実施例)
【図7】安全装置の電気回路図である。(実施例)
【図8】安全装置のフローチャートである。(実施例)
【発明を実施するための形態】
【0042】
本願発明の好適な実施の形態について、添付図面に基づいて以下において具体的に説明する。本願発明に係わる安全装置の構成としては、以下で説明する形状、構成以外にも本願発明の課題を解決することができる形状、構成であれば、それらの形状、構成を採用することができるものである。このため、本願発明は、以下に説明する実施例に限定されるものではなく、多様な変更が可能である。
【実施例】
【0043】
図1は昇降式キャブを有する作業機械の一例として、マテリアルハンドラと呼ばれている作業機械1の側面図を示している。作業機械1は、下部走行体2の上に旋回機構3aを介して上部旋回体3が旋回自在に載置されている。上部旋回体3には、昇降式キャブ4(以下では、単にキャブ4として記載する。)と作業機とが設けられている。
【0044】
尚、本願発明に係る作業機械としては、マテリアルハンドラと呼ばれている作業機械1に限定されるものではなく、昇降式キャブを備えた作業機械に対して本願発明を好適に適用することができる。
【0045】
図2に示すように、キャブ4内への乗降を行う乗降ドア15へのアクセスは、キャブ4の下方側面に設けたステップ19を利用して行うことができる。キャブ4は、左右一対の平行リンク機構9を介して支持柱部材8に支持されており、キャブ4と支持柱部材8との間に配された左右一対のキャブ昇降シリンダ10の作動により、キャブ4は最下降位置とそれよりも上昇した位置との間で昇降することができる。図1では、キャブ4を乗降可能位置よりも上昇させた状態を示している。
【0046】
図1に示すように、ブーム5は、上部旋回体3の前方側中央部に支承されており、ブーム5と上部旋回体3との間に介装した左右一対のブームシリンダ11の作動により、ブーム5はその基端部を中心として倒伏自在に回動することができる。ブーム5の先端部にはアーム6が支承されており、アーム6とブーム5との間に介装した左右一対のアームシリンダ12の作動により、アーム6はその基端部を中心として回動することができる。
【0047】
アーム6の先端部にはリフティングマグネット7が装着されており、作業機シリンダ13の作動により、リフティングマグネット7の吸着姿勢を変更させることができる。アーム6の先端部に装着するアタッチメントとして、リフティングマグネット7を装着した構成を用いて説明を行うが、リフティングマグネット7の代わりにフォークなどのアタッチメントを装着することもできる。
【0048】
図2では、左右一対の平行リンク機構9及び左右一対のキャブ昇降シリンダ10のうちで、一方側の平行リンク機構9及び一方側のキャブ昇降シリンダ10を示している。左右一対の平行リンク機構9及び左右一対のキャブ昇降シリンダ10は、それぞれ同様の構成を備えており、図2の説明では、一方側の平行リンク機構9及び一方側のキャブ昇降シリンダ10についての説明を行う。これにより、他方側の平行リンク機構9及び他方側のキャブ昇降シリンダ10についての説明は省略する。
【0049】
図2に示すように、キャブ4を支持する平行リンク機構9は、それぞれ平行に配した上側リンク9aと下側リンク9bとから構成され、上側リンク9a及び下側リンク9bにおけるそれぞれの一端側が支持柱部材8に支承され、それぞれの他端側はキャブ4の背面側に設けた支持フランジ14に支承されている。また、キャブ昇降シリンダ10は一端側が支持柱部材8に支承されており、他端側が下側リンク9bの他端側に形成したフランジ部29に支承されている。尚、キャブ昇降シリンダ10の軸線は、下側リンク9bの長手方向における軸線に対して交差した配置関係に構成されている。
【0050】
このように構成されているので、キャブ昇降シリンダ10に伸張動作を行わせることにより、点線で示したようにキャブ4を上昇させることができ、キャブ昇降シリンダ10に縮小動作を行わせることにより、実線で示したようにキャブ4を下降させることができる。
【0051】
尚、本願発明では、キャブ4を昇降させる機構に特徴を有するものではないので、キャブ4の昇降動作を行うのに平行リンク機構を用いた構成で説明を行うことにするが、キャブ4を昇降させる機構は平行リンク機構に限定されるものではなく、キャブ4を昇降させることのできる機構であれば他の機構を採用することができる。
【0052】
図3、図7(a)、(b)に示すように、ドアロック手段20は、本体部材20b内に摺動自在に配されたロック部材20aと、本体部材20bから離間した位置に取り付けることができ、ロック部材20aを受け入れることのできる受け部材20cと、を備えた構成になっている。
【0053】
ドアロック手段20は、キャブ4に標準装備されているドアロック機構とは別に、キャブ4内に別途設けられたものであり、図3に示すように、ロック部材20aを収納した本体部材20bは、ドアガラス18bの窓枠でもあるドアフレーム16に取り付けられ、受け部材20cは、本体部材20bに対向した前方側のドア枠17aの部位に取り付けられている。ロック部材20aを本体部材20b内で摺動させるためのつまみ20dがロック部材20aに取り付けられており、つまみ20dを介してロック部材20aを本体部材20b内で摺動させることができる。
【0054】
本体部材20b内で摺動させたロック部材20aが受け部材20c内に挿入された状態は、ロック検出センサ21により検出することができる。ロック検出センサ21は、前方側のドア枠17aに、受け部材20cを間に挟んで本体部材20bと対向する位置に取り付けられている。
【0055】
ドアロック手段20を取り付けるキャブ4内の部位は、乗降ドア15の閉状態を維持することができる部位であれば、適宜の部位に取り付けることができる。そのため、ドアロック手段20を取り付けるキャブ4内の部位としては、図3に示した部位に限定されるものではない。
【0056】
図7(a)では、ロック検出センサ21の構成として、近接スイッチを用いた構成を例示しているが、ロック検出センサ21の構成としては、近接スイッチを用いる代わりに、受け部材20c内にロック部材20aが挿入された状態を検出することができるセンサであれば、例えば、リミットスイッチ等の各種センサを用いることができる。
【0057】
キャブ4の昇降操作は、図7(a)に示した昇降スイッチ28を操作することにより行うことができる。例えば、昇降スイッチ28を「上げ」側に操作し続けることにより、キャブ4を上昇させることができ、昇降スイッチ28における「上げ」側の操作を止めることにより、任意の高さ位置でキャブ4を停止させることができる。
【0058】
昇降スイッチ28の構成としては、「上げ」側への操作状態又は「下げ」側への操作状態を続けることにより、キャブ4を昇降させる構成にしておくことも、「上げ」側又は「下げ」側への操作が一旦行われるとその状態が自己保持され、「上げ」側と「下げ」側との間の中立状態への操作が行われると、自己保持状態が解除されるなど適宜の構成を採用することができる。
【0059】
図4は、乗降ドア15の開閉を検出するドア開閉検出センサ22を、キャブ4内に配設した構成を示している。ドア開閉検出センサ22は、後方側のドア枠17bの上部に取り付けられており、乗降ドア15が開状態になると、ドア開閉検出センサ22の作動片22aは乗降ドア15との当接状態が解除され、乗降ドア15が開状態になっていることを検出することができる。
【0060】
尚、ドア開閉検出センサ22を取り付けるキャブ4内の部位としては、例えば、前方側のドア枠17aの上部などのように、乗降ドア15の開状態を検出することができる部位であれば、適宜の部位に取り付けることができる。そのため、ドア開閉検出センサ22を取り付けるキャブ4内の部位としては、図4に示した部位に限定されるものではない。
【0061】
また、ドア開閉検出センサ22の構成として、リミットスイッチを用いた構成を例示しているが、ドア開閉検出センサ22の構成としては、リミットスイッチに限定されるものではなく、乗降ドア15の開状態を検出することができるセンサであれば、例えば、磁気によるON−OFFセンサ等の各種センサを用いることができる。
【0062】
図5は、キャブ4内からフロントガラス18a側を視認したときの状態を示しており、後述するようにキャブ4が乗降可能位置から離れた上方の位置にいるときに、ロック検出センサ21やドア開閉検出センサ22からの検出信号によって警報が報知されたときに、警報を報知する警告灯24を示している。警告灯24は、キャブ4内において運転席の前方側に配されており、運転者に対して注意を喚起できる位置に配設されている。また、キャブ4内の運転席前方側には、制御装置の表示パネルが配設されており、表示パネルにおける表示画面25を警告灯24とともに図示している。
【0063】
表示画面25には、ロック検出センサ21やドア開閉検出センサ22からの検出信号によって警報が発せられたときに、警報を表示させることもできる。また、図示を省略しているが、警報音又は警告音声を発するスピーカが、キャブ4内には配設されている。スピーカとしては、音楽等を聴くスピーカを兼用させることで、警報音又は警告音声を発生させることもできる。
【0064】
図6は、キャブ4における乗員の乗降可能位置を検出する位置センサ23を、キャブ4の裏面側に配した支持フランジ14に取り付けた構成になっている。支持フランジ14と平行リンク機構9の上側リンク9a又は下側リンク9bとの間に生じる角度は、キャブ4の位置に応じて変化し、キャブ4が最下降位置にいるときが最も狭い角度になり、最も上昇した位置にいるときが最も広い角度になる。
【0065】
そこで、支持フランジ14に設けた位置センサ23の作動片23aが上側リンク9a又は下側リンク9bに当接することにより、キャブ4の乗降可能位置を支持フランジ14と上側リンク9a又は下側リンク9bとの間に生じる角度で検出することができる。キャブ4の乗員可能位置としては、キャブ4が最下降位置に来た位置に限定することなく、乗員の乗降に問題が無いと予め設定した所定の乗降位置であれば、キャブ4の最下降位置から多少上がった位置、例えば、最下降位置から30cm上の位置までのように幅を持たせて設定しておくことができる。
【0066】
尚、キャブ4の乗降可能位置を検出する位置センサ23として、リミットスイッチを用いた構成を例示しているが、位置センサ23の構成としては、リミットスイッチに限定されるものではなく、キャブ4の高さ位置を検出することができるセンサであれば、例えば、上側リンク9a又は下側リンク9bの軸端部における回動量を検出するセンサ等の各種センサを用いることができる。
【0067】
図7(a)に示した隠しスイッチ31は、ロック検出センサ21が故障した場合を想定して設置されているものであり、隠しスイッチ31をON状態にすれば、ロック検出センサ21からの信号の有無に係わらずにアクチュエータ作動システムを作動可能状態に設定することができる。そのため、隠しスイッチ31の設置場所は、通常の操作では操作され難い場所に配設しておくことができる。
【0068】
次に、図7(a)、(b)の電気回路図及び図8のフローチャートを用いて、本願発明に係る安全装置の構成について説明する。
キャブ4内に入った運転者が、乗降ドア15を閉めると乗降ドア15は標準装備されているドアロック機構によってロックされる。運転者がキャブ4内に別途設けたドアロック手段20を操作してロック状態にすると、ロック状態はロック検出センサ21によって検出されることになる。即ち、図8のステップS1では、コントローラは乗降ドア15がロック状態であるか否かの判断を行う。
【0069】
ステップS1において、乗降ドア15が閉状態でロックされている状態のときには、ステップS2に移り、乗降ドア15がロック状態でないときには、ステップS30に移る。
図7(a)に示したように、作業機械1に搭載したバッテリーは、常時電源、アクセサリー電源とも呼ばれるACC電源、エンジンキースイッチをON状態にした時に流れるON電源等の電源に分けられて使用されることになる。コントローラにおける主要な制御は、ON電源と言われる電源を用いて行われることになる。
【0070】
ステップS2では、コントローラのコントロール電源をONにし、安全装置の作動を開始させる。ステップS2におけるコントロール電源は、一時的に使用する電源であり、例えば、常時電源又はACC電源を一時的に使用することができる。ステップS2での制御が行われると、ステップS3に移動する。
【0071】
ステップS3では、アクチュエータ作動システムが作動可能状態に設定されているのか否かの判断がコントローラによって行われる。アクチュエータ作動システムを作動可能状態に設定されている状態とは、本願発明では、エンジンキースイッチ30をON状態にすること、あるいは、エンジンキースイッチ30はON状態であって、エンジンによって駆動される油圧ポンプから吐出した圧油を、各アクチュエータに給排することができる状態にすること、をいう。
【0072】
各アクチュエータに給排することができる状態に設定することとは、例えば、油圧ポンプと各アクチュエータとを結ぶ油路に配した制御弁を作動不能状態にすることにより、あるいは、油圧ポンプから吐出した圧油をそのままタンク内に排出するように油路を制御することなどにより、アクチュエータ作動システムを作動不能状態にしておくことができる。そして、この作動不能状態を解除することにより、アクチュエータ作動システムを作動可能状態に設定することができる。
【0073】
ステップS3において、アクチュエータ作動システムが作動可能状態に設定されているときには、コントローラのコントロール電源として、ON電源が供給されることになる。ON電源は、図7(b)に示すように、エンジンキースイッチ30のキー穴30bにキー30aを挿入し、キー30aを0位置からIII位置に回転させる。キー30aをIII位置にすることにより、スタータを起動してエンジンを駆動させることができる。
【0074】
エンジンが駆動された後にキー30aから手を離すと、キー30aはII位置に自動的に戻りII位置の状態を保持する。キー30aがII位置に保持されていることによって、バッテリーからのON電源をエンジンやコントローラに供給することができる。この時点からは、コントロール電源としてはON電源が用いられることになる。また、キー30aをI位置に移動させると、ON電源をOFFにしてACC電源を利用することができる。そして、キー30aを0位置に移動させると、ON電源及びACC電源をOFFにするとともに、キー30aをキー穴30bから抜き取ることができる。
【0075】
ステップS3において、アクチュエータ作動システムが作動可能状態に設定されていると
きには、ステップS4に移動し、作動可能状態に設定されていないときには、ステップS11に移動する。
【0076】
ステップS4では、アクチュエータを操作するサブプログラムを実行する。ステップS4の制御が行われると、ステップS5に移動する。また、ステップS3からステップS11に移動した場合には、ステップS11では、コントロール電源としてはON電源の代わりに、常時電源又はACC電源を一時的に使用されることになり、一時的に使用される電源がコントロール電源として保持されることになる。ステップS11での制御が行われると、ステップS5に移動する。
尚、保持しておくコントローラの電源としては、必要に応じてON電源を利用しておくことも、専用の保持電源を使えるように構成しておくこともできる。
【0077】
ステップS5では、ロック検出センサ21から検出信号に基づいて、コントローラはドアロック手段20による乗降ドア15のロック状態の判断を行う。ステップS5において、コントローラがドアロック手段20はロック状態であると判断したときには、ステップS3に戻りステップS3以降の制御を繰り返すことになる。コントローラがドアロック手段20のロック状態が解除されていると判断したときには、ステップS6に移動する。
【0078】
ステップS6では、コントローラは位置センサ23からの検出信号により、コントローラはキャブ4が乗降可能位置にいるのかいないのかの判断を行う。キャブ4が乗降可能位置にいないときには、ステップS7に移動し、キャブ4が乗降可能位置にいるときには、ステップS20に移動する。
【0079】
ステップS7では、キャブ4が乗降可能位置よりも上方にいる状態でドアロック手段20のロックが解除されたことを運転者に注意するため、警報の報知を行う。警報の報知としては、キャブ4内に配した警告灯24を点灯させたり点滅させたり、警告灯24を回転灯として使用したりすることができる。また、警報音や警報音声をスピーカ26から発生させたり、表示画面25に警告メッセージを表示させたりすることもできる。その他、運転者に注意を喚起することができる方法で、警報を報知することができる。ステップS7での制御が行われると、ステップS8に移動する。
【0080】
ステップS8では、ロック検出センサ21から検出信号に基づいて、コントローラはドアロック手段20による乗降ドア15のロック状態の判断を行う。ステップS8において、コントローラがドアロック手段20はロック状態であると判断したときには、ステップS12に移動し、ドアロック手段20によるロック状態が解除されていると判断したときには、ステップS9に移動する。
【0081】
ステップS9では、コントローラは位置センサ23からの検出信号により、キャブ4が乗降可能位置にいるのかいないのかの判断を行う。キャブ4が乗降可能位置にいるときには、キャブ4の乗降ドア15を開けても安全であるので、ステップS10に移動し、キャブ4が乗降可能位置にいないときには、キャブ4の乗降ドア15を開けて運転手がキャブ4の外に出ることは危険なので、警報の報知状態をそのままにして、ドアロック手段20がロック状態に戻されたのかを判断するため、ステップS8に戻されることになる。
【0082】
ステップS10では、キャブ4が乗降可能位置にいるので、この状態で警報を停止しても問題が生じないので警報の停止を行う。ステップS10での制御が行われると、ステップS20に移動する。
【0083】
ステップS8において、ドアロック手段20はロック状態であると判断してステップS12に移動したときには、ステップS12では、ドアロック手段20がロック状態に戻されているの
で、警報の停止を行い、ステップS3に戻され、ステップS3以降の制御が繰り返されることになる。
【0084】
ステップS20では、アクチュエータ作動システムが作動可能状態に設定されているのか否かの判断がコントローラによって行われる。即ち、作業の途中で運転者がアクチュエータ作動システムを作動可能状態に設定していたものをキャンセルしたか否かの判断が行われる。アクチュエータ作動システムは作動可能状態に設定されたままの状態であるときには、ステップS4のアクチュエータを操作するサブプログラムを実行し、ステップS4以降の制御を繰り返すことになる。
【0085】
ステップS20で、アクチュエータ作動システムは作動可能状態がキャンセルされていることをコントローラが判断したときには、ステップS21に移動する。
ステップS21では、コントローラのコントロール電源を保持する制御を行う。例えば、アクチュエータ作動システムの作動可能状態がキャンセルされた状態が、キー30aの操作によって行われていた場合には、キー30aはII位置からI位置又は0位置に切り替えられていることになる。即ち、コントローラに供給される電源がON電源ではなくなっていることになる。
【0086】
このような状態になっても、安全装置を作動させておくためには、コントローラに電源を供給した状態に維持しておかなければならない。そのため、S20においてアクチュエータ作動システムは作動可能状態がキャンセルされていることをコントローラが判断したときには、コントローラの電源を保持しておく制御を行うことになる。保持しておくコントローラの電源としては、電源回路の構成から常時電源を用いたりACC電源を用いたりすることができる。必要に応じてON電源を利用し続ける構成にしておいたり、専用の保持電源を使えるように構成しておくこともできる。ステップS21での制御が行われると、ステップS22に移動する。
【0087】
ステップS22では、ドア開閉検出センサ22からの検出信号により乗降ドア15が開状態であるのか否かの判断が行われる。乗降ドア15が開状態であると判断したときには、ステップS23に移動し、乗降ドア15が閉状態であると判断したときには、ステップS20に戻り、ステップS20からの制御を繰り返すことになる。
【0088】
ステップS20からステップS22の制御によって、乗降可能位置まで降下したキャブ4の乗降ドア15が開かれて、運転者がキャブ4の外に出たのかどうかの判断を行っている。キャブ4を乗降可能位置にまで下げて、一旦アクチュエータ作動システムの作動可能状態をキャンセルしたが、乗降ドア15を開けずに再度アクチュエータ作動システムを作動可能状態に設定し直して、作業機械1の操作を開始する場合にも対しても対応できるように構成されている。
【0089】
ステップS23では、乗降ドア15が開かれた後に、乗降ドア15が閉状態になったのか否かの判断が行われる。乗降ドア15が閉状態になったと判断したときには、ステップS24に移動し、乗降ドア15が開状態であると判断したときには、乗降ドア15が閉状態になったのを確認できるまで、ステップS23の制御を繰り返し行うことになる。
【0090】
ステップS24では、運転者がキャブ4内に残ったままの状態で乗降ドア15の開閉操作を行ったのか、キャブ4から外に出たのかを確認するため、アクチュエータ作動システムが作動可能状態に設定されているのか否かの判断を行っている。
【0091】
アクチュエータ作動システムは作動可能状態に設定されているときには、ステップS4のアクチュエータを操作するサブプログラムを実行し、ステップS4以降の制御を繰り返すこ
とになる。また、アクチュエータ作動システムは作動可能状態がキャンセルされていることをコントローラが判断したときには、ステップS25に移動する。
ステップS25では、タイマー時計の計時を開始する。タイマー時計の計時を開始すると、ステップS26に移動する。
ステップS26では、タイマー計時によって所定の時間が経過したか否かの判断を行う。所定の時間が経過したときには、ステップS27に移動してコントローラ電源をOFFにする。即ち、ステップS21においてコントローラ電源を保持していた状態をキャンセルすることになる。ステップS27の制御が行われると、一連の制御が終了することになる。
【0092】
ステップS1において、乗降ドア15がロック状態でないときに移ったステップS30では、隠しスイッチ31がON状態に操作されたのか否かの判断が行われる。隠しスイッチ31は、ロック検出センサ21が故障した場合を想定して設置されているものであり、隠しスイッチ31をON状態にすれば、ロック検出センサ21からの信号の有無に係わらずにアクチュエータ作動システムを作動可能状態に設定することができる。
【0093】
隠しスイッチ31が操作されてON状態のときには、ステップS31に移動し、隠しスイッチ31がOFF状態のときには、ステップS1に戻り、ステップS1からの制御を繰り返すことになる。即ち、ステップS31以降の制御において、隠しスイッチ31を介してアクチュエータ作動システムを作動可能状態に設定したときであっても、キャブ4内に居る運転者が、乗降可能位置よりも上昇した位置で乗降ドア15を開状態にした場合には、運転者に対して警報が報知されるように構成している。
【0094】
このように、本願発明では、運転者は、キャブ4内において乗降ドア15がドアロック手段20によって閉状態であれば、確実にキャブ4の昇降操作や作業機の操作を行うことができるが、ドアロック手段20が不良状態であったとしても、隠しスイッチ31を操作することによって、作業機械1の操作を行うことができるように構成している。
【0095】
そして、隠しスイッチ31を操作したときであっても、キャブ4が乗降可能位置よりも上昇した位置にあるときに乗降ドア15が開状態になれば、警報が報知される構成になっている。これにより、乗降可能位置よりも上昇した位置にあるキャブ4から乗員が転落するのを防止することができる。
【0096】
ステップS31では、ステップS2での制御と同様に、コントローラのコントロール電源をONにし、安全装置の作動を開始させる。ステップS31での制御が行われると、ステップS32に移動する。
【0097】
ステップS32では、ステップS3での制御と同様に、アクチュエータ作動システムが作動可能状態に設定されているのか否かの判断がコントローラによって行われる。ステップS32において、アクチュエータ作動システムが作動可能状態に設定されているときには、コントローラのコントロール電源として、ON電源が供給されることになる。
【0098】
ステップS32において、アクチュエータ作動システムが作動可能状態に設定されているときには、ステップS33に移動し、作動可能状態に設定されていないときには、ステップS39に移動する。
【0099】
ステップS33では、ステップS4と同様に、アクチュエータを操作するサブプログラムを実行する。ステップS33の制御が行われると、ステップS34に移動する。
また、ステップS32からステップS39に移動した場合には、コントロール電源としてはON電源の代わりに、常時電源又はACC電源を一時的に使用されることになり、一時的に使用される電源がコントロール電源として保持されることになる。あるいは、保持しておくコ
ントローラの電源としては、必要に応じてON電源を利用する構成にしておくことも、専用の保持電源を使えるように構成しておくこともできる。ステップS39での制御が行われると、ステップS34に移動する。
【0100】
ステップS34では、ドア開閉検出センサ22から検出信号に基づいて、コントローラは乗降ドア15の開閉状態の判断を行う。ステップS34において、コントローラがドア開閉検出センサ22からの検出信号により、乗降ドア15が閉状態であると判断したときには、ステップS32に戻りステップS32以降の制御を繰り返すことになる。コントローラが、乗降ドア15は開状態であると判断したときには、ステップS35に移動する。
【0101】
ステップS35では、ステップS6での制御と同様に、コントローラは位置センサ23からの検出信号により、キャブ4が乗降可能位置にいるのかいないのかの判断を行う。キャブ4が乗降可能位置にいないときには、ステップS36に移動し、キャブ4が乗降可能位置にいるときには、ステップS41に移動する。
【0102】
ステップS36では、ステップS7での制御と同様に、キャブ4が乗降可能位置よりも上方にいる状態で乗降ドア15が開状態であることを運転者に注意するため、警報の報知を行う。ステップS36での制御が行われると、ステップS37に移動する。
【0103】
ステップS37では、ドア開閉検出センサ22から検出信号に基づいて、コントローラは乗降ドア15が開状態であるか閉状態であるのかの判断を行う。ステップS37において、乗降ドア15が閉状態であると判断したときには、ステップS40に移動し、乗降ドア15が開状態であると判断したときには、ステップS38に移動する。
【0104】
ステップS38では、ステップS9での制御と同様に、コントローラは位置センサ23からの検出信号により、キャブ4が乗降可能位置にいるのかいないのかの判断を行う。キャブ4が乗降可能位置にいるときには、キャブ4の乗降ドア15が開状態であっても安全であるので、ステップS40に移動し、キャブ4が乗降可能位置にいないときには、乗降ドア15が開状態であると運転手がキャブ4の外に出る危険性があるので、警報の報知状態を継続して、乗降ドア15が閉状態に戻されたのかを判断するため、ステップS37に戻されることになる。
【0105】
ステップS40では、キャブ4が乗降可能位置にいるので、この状態で警報を停止しても問題が生じないので警報の停止を行う。ステップS40での制御が行われると、ステップS41に移動する。
【0106】
ステップS41では、ステップS20での制御と同様に、アクチュエータ作動システムが作動可能状態に設定されているのか否かの判断がコントローラによって行われる。即ち、作業の途中で運転者がアクチュエータ作動システムを作動可能状態に設定していたものをキャンセルしたのか否かの判断が行われる。アクチュエータ作動システムは作動可能状態に設定されたままの状態であるときには、ステップS33のアクチュエータを操作するサブプログラムを実行し、ステップS33以降の制御を繰り返すことになる。
【0107】
ステップS41で、アクチュエータ作動システムにおける作動可能状態の設定がキャンセルされていることをコントローラが判断したときには、ステップS42に移動する。
ステップS42では、ステップS21での制御と同様に、コントローラのコントロール電源を保持する制御を行う。ステップS42での制御が行われると、ステップS43に移動する。
【0108】
ステップS43では、ステップS22での制御と同様に、ドア開閉検出センサ22からの検出信号により乗降ドア15が開状態であるのか否かの判断が行われる。乗降ドア15が開状態であると判断したときには、ステップS44に移動し、乗降ドア15が閉状態であると判断したと
きには、ステップS41に戻り、ステップS41からの制御を繰り返すことになる。
【0109】
ステップS44では、ステップS23での制御と同様に、乗降ドア15が開かれた後に、乗降ドア15が閉状態になったのか否かの判断が行われる。乗降ドア15が閉状態になったと判断したときには、ステップS45に移動し、乗降ドア15が開状態であると判断したときには、乗降ドア15が閉状態になったのを確認できるまで、ステップS44の制御を繰り返し行うことになる。
【0110】
ステップS45では、運転者がキャブ4内に残ったままの状態で乗降ドア15の開閉操作を行ったのか、キャブ4から外に出たのかを確認するため、アクチュエータ作動システムが作動可能状態に設定されているのか否かの判断を行っている。アクチュエータ作動システムが作動可能状態に設定されているときには、ステップS33のアクチュエータを操作するサブプログラムを実行し、ステップS33以降の制御を繰り返すことになる。また、アクチュエータ作動システムの作動可能状態がキャンセルされていることをコントローラが判断したときには、ステップS25に移動して、タイマー時計の計時を開始する。
【0111】
このように、本願発明では、運転者は、キャブ4内において乗降ドア15が閉状態であれば、確実にキャブ4の昇降操作や作業機の操作を行うことができ、キャブ4が乗降可能位置よりも上昇した位置にあるときに乗降ドア15が開状態になれば、警報が報知される構成になっている。
【0112】
また、ドアロック手段20が不良状態であったとしても、隠しスイッチ31を操作することでアクチュエータ作動システムを作動可能状態に設定することができる。そして、隠しスイッチ31を操作した場合であっても、キャブ4が乗降可能位置よりも上昇した位置にあるときに乗降ドア15が開状態になれば、警報が報知される構成になっている。このように構成されているので、乗降可能位置よりも上昇した位置にあるキャブ4から乗員が転落するのを確実に防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0113】
昇降式キャブを備えた作業機械に対して、本願発明を好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0114】
1・・・作業機械、4・・・昇降式キャブ、9・・・平行リンク機構、10・・・キャブ昇降シリンダ、15・・・乗降ドア、20・・・ドアロック手段、21・・・ロック検出センサ、22・・・ドア開閉検出センサ、23・・・位置センサ、24・・・警告灯、28・・・昇降スイッチ、30・・・エンジンキースイッチ、31・・・隠しスイッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降式キャブを有する作業機械であって、
前記昇降式キャブ内に別途設けられ、前記昇降式キャブの乗降ドアを手動操作でロックできるドアロック手段と、
前記ドアロック手段のロック状態を検出するロック検出センサと、を設け、
前記ロック検出センサが前記ロック状態を検出しているときには、アクチュエータの作動システムを作動可能状態に設定することができ、
前記昇降式キャブが乗員の乗降可能位置よりも上昇した位置にいるときに、前記ロック検出センサにより前記ロック状態の解除が検出されると、警報が報知されることを特徴とする昇降式キャブを有する作業機械の安全装置。
【請求項2】
前記作動システムの作動可能状態の設定が、エンジンキースイッチのON操作により設定でき、前記昇降式キャブが前記乗降可能位置よりも上昇した位置にいるときに、前記エンジンキースイッチがOFFに操作されても、少なくとも前記ロック検出センサ及び前記警報を制御するコントローラのコントロール電源が保持されてなることを特徴とする請求項1に記載の昇降式キャブを有する作業機械の安全装置。
【請求項3】
前記作動システムの作動可能状態の設定が、エンジンキースイッチはON状態であって、前記アクチュエータに対する圧油の給排を行い得る状態にすることにより設定でき、前記昇降式キャブが前記乗降可能位置よりも上昇した位置にいるときに、前記アクチュエータへの圧油の給排が行い得ない状態になっても、少なくとも前記ロック検出センサ及び前記警報を制御するコントローラのコントロール電源が保持されてなることを特徴とする請求項1に記載の昇降式キャブを有する作業機械の安全装置。
【請求項4】
前記昇降式キャブが前記乗降可能位置にいるときに、前記ドアロック手段によるロック状態が解除されるとともに、前記作動システムの作動可能状態の設定がキャンセルされ、そして前記乗降ドアが開閉されて閉状態になった所定時間経過後には、少なくとも前記ロック検出センサ及び前記警報を制御するコントローラのコントロール電源がOFFになることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の昇降式キャブを有する作業機械の安全装置。
【請求項5】
隠しスイッチと、前記乗降ドアの開閉を検出するドア開閉検出センサと、を更に備え、
前記隠しスイッチがON状態のときには、前記ロック検出センサによる前記ロック状態の検出の有無に係らず、前記作動システムを作動可能状態に設定することが可能となり、
前記隠しスイッチを介して前記作動システムを作動可能状態に設定したときであって、前記昇降式キャブが前記乗降可能位置よりも上昇した位置にいるときに、前記ドア開閉検出センサが前記乗降ドアの開状態を検出すると、警報が報知されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の昇降式キャブを有する作業機械の安全装置。
【請求項6】
前記警報が、音声及び警告灯を用いて報知されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の昇降式キャブを有する作業機械の安全装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−50007(P2013−50007A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189699(P2011−189699)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(507078337)京浜物流株式会社 (1)
【出願人】(511212457)コマツ建機販売株式会社東京カンパニー (1)
【出願人】(506336681)有限会社エヌビー工業 (2)
【Fターム(参考)】