昇降式作業台
【課題】昇降可能な作業台を軽い操作力で昇降操作でき、かつ、作業台の昇降時の安定性を兼ね備え、さらに、コンパクトな昇降式作業台を提供する。
【解決手段】固定フレーム1と、この固定フレーム1に昇降可能に支持された洗面台2とを備え、バネ力で巻き取り付勢された吊ワイヤ26を備えたバランサ24が、固定フレーム1に取り付けられており、吊ワイヤ26が、巻き取られることによって洗面台2が上昇するように洗面台2に連結されている。したがって、洗面台2を軽い操作力で昇降操作かつ洗面台2の昇降時の安定性がよい。バランサ4は、取付けスペースが狭くて済むので、昇降洗面台をコンパクトにできる。
【解決手段】固定フレーム1と、この固定フレーム1に昇降可能に支持された洗面台2とを備え、バネ力で巻き取り付勢された吊ワイヤ26を備えたバランサ24が、固定フレーム1に取り付けられており、吊ワイヤ26が、巻き取られることによって洗面台2が上昇するように洗面台2に連結されている。したがって、洗面台2を軽い操作力で昇降操作かつ洗面台2の昇降時の安定性がよい。バランサ4は、取付けスペースが狭くて済むので、昇降洗面台をコンパクトにできる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昇降式の洗面台または流し台等の作業台を備えた昇降式作業台に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ユニバーサルデザインを取り入れた商品が普及されていく中、子供、身長差、車椅子使用者に関係なく使用できる昇降式の洗面台や流し台を備えた昇降式作業台の開発が進んでいる。
例えば、特許文献1には、水槽が設けられたカウンタートップと、このカウンタートップの下部に連続一体に設けられる可動体と、家屋側に固定状態に立設され前記可動体が上下方向にスライド可能に取り付けられる固定体と、前記カウンタートップを弾力的に支持する弾力支持体と、前記カウンタートップを所定高さに位置決めする位置決め体とを有する構成とした昇降式カウンタートップ装置が記載されている。そして、前記弾力支持体としてガススプリングを使用している。
【0003】
また、特許文献2には、2本の支柱を立て、この支柱で上下にスライドする昇降ガイドに洗面台を取り付け、支柱に設けたバランス用バネで洗面台の重さとバランスさせ、洗面台を上下させるには昇降ガイドに連結した操作レバーで上下に移動し、位置決め用溝に固定するものが記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開平10−155574号公報
【特許文献2】実開平06−031590号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、前者の場合、弾力支持体にガススプリングを使用しているので、可動体を昇降させる際に、上昇、下降のどちらかの操作が重くなり、また、バランスがとれたとしてもガススプリング内部の抵抗力が強く昇降操作力が重くなる傾向にある。
また、後者の場合、巻きバネ(圧縮、引張り)を利用し、操作負荷を軽減する機構としているが、昇降ストロークとバネ定数の関係により、上昇下降時の操作力が変動するため、操作力が安定しない傾向にある。
さらに、カウンターウェイトを使用した場合、操作力の軽さと安定性はあるが、機構部が大きくなり、全体の重量も増加し、施工性が悪くなる傾向にある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、昇降可能な作業台を軽い操作力で昇降操作でき、かつ、作業台の昇降時の安定性を兼ね備え、さらに、コンパクトな昇降式作業台を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の昇降式作業台は、固定フレームと、この固定フレームに昇降可能に支持された洗面台または流し台等の作業台とを備えた昇降式作業台であって、
バネ力で巻き取り付勢された吊索材を備えたバランサが、前記固定フレームに取り付けられており、このバランサの吊索材が、巻き取られることによって前記作業台が上昇するように前記作業台に連結されていることを特徴とする。
【0008】
ここで、前記バランサは、前記作業台を僅かな力で簡単に昇降させるようにするととも
に、任意の位置で作業台を停止可能とするために、作業台の重量と力学的平衡関係を保つようにバネ力が調整されたものである。
また、バランサは作業台の重さによって、取付け個数を適宜設定し、また、作業台の大きさや形状によって取付け位置を適宜設定する。
【0009】
請求項2に記載の昇降式作業台は、請求項1に記載の発明において、
前記バランサは、ケーシングと、このケーシング内に設けられた軸部と、この軸部に正逆方向に回転自在に取り付けられて前記吊索材が巻き付けられ、かつ、前記吊索材の巻き取り方向にバネ力で付勢された回転ドラムとを備えており、
前記回転ドラムは転がり軸受を介して前記軸部に取り付けられており、
前記回転ドラムの端面と、前記ケーシングとの間にはクリアランスが設けられていることを特徴とする。
【0010】
ここで、前記クリアランスは、回転ドラムの両端面のうちの少なくとも一方の端面とケーシングとの間に設ければよい。
【0011】
請求項3に記載の昇降式作業台は、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記バランサの吊索材は、動滑車に巻き掛けられており、この動滑車が前記作業台に取り付けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の昇降式作業台によれば、バランサが固定フレームに取り付けられており、このバランサの吊索材が作業台に連結されているので、作業台を軽い操作力で昇降操作できる。すなわち、バランサは作業台の重量と力学的平衡関係を保つようにバネ力が調整されたものであるから、作業台を軽い操作力で昇降操作できる。
また、作業台が固定フレームに昇降可能に支持されるとともに、バランサの吊索材が作業台に連結されているので、作業台の昇降時の安定性がよい。
さらに、バランサは、カウンターウェイトに比して、非常に小さく取付けスペースが狭くて済むので、昇降式作業台をコンパクトにできる。
【0013】
従来の上げ下げ窓に使用されているバランサでは、回転ドラムがカラー等の滑り軸受を介して軸部に取り付けられており、また、上げ下げ窓を任意の位置で止めるべくある程度の抵抗を持たせたいので、回転ドラムの端面とケーシングとは接触している。
これに対して、請求項2に記載の昇降式作業台によれば、回転ドラムが転がり軸受を介して軸部に取り付けられているので、従来の回転ドラムに比して回転摩擦を軽減でき、また、回転ドラムの端面とケーシングとの間にはクリアランスが設けられているので、従来の回転ドラムに比して摩擦接触を軽減できる。したがって、回転ドラムが回転する際に該回転ドラムに作用する摩擦力を軽減できるので、作業台の昇降時の操作力を格段に軽くできる。
【0014】
請求項3に記載の昇降式作業台によれば、バランサの吊索材が巻き掛けられた動滑車が作業台に取り付けられているので、作業台からバランサに作用する力を半減できる。したがって、バランサの取付け個数を減じることができるので、バランサの取付けスペースを狭くできるとともに、コストを軽減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1〜図5に示すように、本実施の形態では、本発明に係る昇降式作業台を昇降式洗面台に適用している。
まず、昇降式洗面台は、固定フレーム1とこの固定フレーム1に昇降可能に支持された洗面台(作業台)2とを備えている。
【0016】
固定フレーム1は左右の側板3,3と、この側板3,3を連結する複数の横フレーム4〜8とから構成されている。横フレーム5,7は側板3,3の前部において、中間部どうしおよび下端部どうしをそれぞれ連結している。また、横フレーム4,6,8は側板3,3の後部において、上端部どうし、中間部どうしおよび下端部どうしをそれぞれ連結している。
また、固定フレーム1の下端部には、可動脚9,9がその基端部を支点として上下に回動可能に、つまり起倒可能に取り付けられている。この可動脚9,9は、昇降式洗面台を壁に当接させて床に設置する際に、固定フレーム1の前側に回動して倒されて、床に当接することによって、昇降式洗面台が前方に倒れないように支持し、また設置後は起こして固定フレーム1側に収納するものである。
【0017】
また、側板3には、その上端部と中間部とにそれぞれガイドローラ10,11が取り付けられている。また、ガイドローラ10,11は、側板3の前部と後部とにそれぞれ取り付けられている。つまり、ガイドローラ10,11は一枚の側板3にそれぞれ2個ずつ取り付けられている。
また、側板3の上端部には、ガイドローラ12,12が取り付けられている。ガイドローラ12はその軸を、ガイドローラ10の軸と直交させて取り付けられたものである。
上記ガイドローラ10,11,12は洗面台2の昇降をガイドするものであり、洗面台2の後述する縦フレーム7に回転自在に当接されている。
【0018】
洗面台2は、洗面ボール15を保持する台16と、この台16の左右を下方から支持する一対の縦フレーム17,17とを備えている。台16は、左右に間隔をおいて配置され、前後に平行に延びる一対の前後フレーム16a、16aと、これらの前後フレーム16a、16aの後端部どうしを連結する後部フレーム16bとを備えたフレーム構造となっている。また、台16の背面には取付板19が上方に突出するようにして固定されており、この取付板19には化粧鏡20が取り付けられている。また、台16の上面には、洗面ボール15の後側において、蛇口となるシャワーヘッド21と、シャワーヘッド21からの水または湯の吐出を開閉するレバー22とが取り付けられている。なお、レバー22は上下させることによって水または湯の吐出を開閉するとともに吐出量を調整し、左右に回転させることによって、水または湯の温度を調整するようになっている。
【0019】
前記縦フレーム17,17はその上端部が、台16の左右両側にそれぞれ固定されており、下端部は固定フレーム1の内側に挿入されている。縦フレーム17,17の下端部どうしは横フレーム18によって連結されている。
また、縦フレーム17,17は固定フレームの側板3,3の内側に配置され、かつ該側板3,3に近接している。そして、縦フレーム17,17には、側板3,3にそれぞれ取り付けられているガイドローラ10,11とガイドローラ12とが、それぞれ縦フレーム17,17の側面と、前面および後面にそれぞれ転動可能に当接されている。
また、縦フレーム17の下端部には、ガイドローラ23,23が取り付けられており、該ガイドローラ23,23は固定フレーム1の側板3に転動可能に当接されている。
したがって、縦フレーム17,17は、前記ガイドローラ10,11,12,23を介して固定フレーム1の側板3,3に昇降可能に支持されており、これによって、洗面台2は固定フレーム1に昇降可能に支持されている。
【0020】
また、固定フレーム1には、合計4つのバランサ24が取り付けられている。すなわち、側板3,3の上端部の内側には、取付フレーム25,25が固定されており、この取付フレーム25,25にそれぞれ2つのバランサ24,24が取り付けられている。前側のバランサ24は後側のバランサ24より若干上方に位置している。
バランサ24は、洗面台2を僅かな力で簡単に昇降させるようにするとともに、洗面台2の重量と力学的平衡関係を保つようにバネ力が調整されたものであり、バネ力で巻き取り付勢された吊ワイヤ(吊索材)26を備えている。
【0021】
バランサ24は以下のように構成されている。
すなわち、図7に示すように、バランサ24は、ケーシング27と、このケーシング27内に設けられた軸部28と、この軸部28に正逆方向に回転自在に取り付けられて前記吊ワイヤ26が巻き付けられ、かつ、吊ワイヤ26の巻き取り方向にバネ力で付勢された回転ドラム29とを備えている。
ケーシング27は、ケーシング本体27aと、このケーシング本体27aの背面側開口を塞ぐプレート27bとを備えており、該プレート27bはねじ27c・・・によってケーシング本体27aに固定されている。
【0022】
軸部28は、ケーシング本体27aの平板部とプレート27bとの間に架け渡すようにして設けられており、その一端部はケーシング本体27aの平板部に形成された孔に挿通されて突出しており、該平板部によって支持されている。また、軸部28の他端部はプレート27bに形成された孔に挿通されて突出しており、該プレート27bによって支持されている。
回転ドラム29は、吊ワイヤ26が巻き付けられる巻取ドラム30と、この巻取ドラム30にバネ力を付与する付勢ドラム31とを備えている。
巻取ドラム30には、巻き始めから巻き終わりまで吊ワイヤー26に一定の張力が作用するように漸次縮径した螺旋状の巻取り溝(図示略)が形成されている。すなわち、巻取ドラムに円錐状の周面30aが形成されており、この周面30aに巻取り溝が螺旋状に形成されている。
また、巻取ドラム30の中心部には、軸穴30bとこの軸穴30baより小径の軸穴30cが同軸に形成されており、軸穴30bにはニードルベアリング(転がり軸受)32が装着されている。また、軸穴30cにはスペーサ33が嵌め込まれている。ニードルベアリング32は、前記軸部28に装着されており、これによって、巻取ドラム30はニードルベアリング32を介して軸部28に取り付けられている。
【0023】
前記付勢ドラム31は、バネケース31a,31bとこのバネケース31a,31bに収納されたゼンマイバネ31cとから構成されている。このゼンマイバネ31cの内方端は軸部28に係止され、外方端はバネケース31a,31bの内壁に係止されている。
このような構成の付勢ドラム31の端面(バネケース31aの端面)は、巻取ドラム30の端面に固定されている。したがって、巻取ドラム30は、付勢ドラム31のゼンマイバネ31cによって、吊ワイヤ26の巻き取り方向に付勢されている。
【0024】
上記のような構成の回転ドラム29は、該回転ドラム29に軸部28が挿通され、さらにこの軸部28に、回転ドラム29を挟むようにして薄型ワッシャ34a,34bが外挿されたうえで、ケーシング本体27aに背面開口から装入され、このケーシング本体27aにプレート27bを固定することによって、ケーシング27に納められている。
この状態において、回転ドラム29の端面29aと、ケーシング27のプレート27bとの間にはクリアランスSが設けられている。つまり、回転ドラム29は、薄型ワッシャ34bによってプレート27bへの移動が阻止され、さらに、薄型ワッシャ34bはプレート27bとの間に隙間をもっているので、回転ドラム29の端面とプレート27bとの間にはクリアランスSが設けられている。これによって、従来の回転ドラムに比して摩擦接触を軽減できるので、回転ドラム29が回転する際に該回転ドラム29に作用する摩擦力を軽減できる。
【0025】
また、ケーシング27の前面には、爪車35が設けられており、この爪車35は前記ケーシング27から突出している軸部28に取り付けられている。また、ケーシング27の前面には、爪36が揺動可能に軸支されており、この爪36はバネ37によって爪車35に付勢されている。軸部28の先端面には工具例えばマイナスドライバーが係合する係合溝28aが形成されており、軸部28を巻き取り方向に回すことによりゼンマイバネ31cを巻いて巻取付勢力を増大させることができるようになっている。また爪35をバネ37に抗して揺動させることにより軸部28を間欠的に巻き戻し(ゼンマイバネを緩め)、巻き取り付勢力を減少させることができるようになっている。
したがって、洗面化粧台の設置時に、軸部28をゼンマイバネ31cの巻き方向に回転し、所定の巻き回数位置にて軸部28に取り付けられた爪車35に対して爪36を噛合させることにより、洗面台2の重量と釣り合う上方向力を導入できるようになっている。
【0026】
上記のようなバランサ24の吊ワイヤ26は動滑車40に巻き掛けられている。すなわち、前記洗面台2の縦フレーム17,17の下端部には、それぞれブラケットを介して2つの動滑車40,40が同軸に取り付けられており、該動滑車40,40にそれぞれバランサ24,24の吊ワイヤ26,26が巻き掛けられている。この吊ワイヤ26,26の先端部は固定フレーム1の取付フレーム25に固定されている。このように、バランサ24の吊ワイヤ26が巻き掛けられた動滑車40が固定フレーム1に取り付けられているので、洗面台2からバランサ24に作用する力を半減できる。
【0027】
また、本実施の形態の昇降式洗面台は、昇降する洗面台2を上下の所望の位置で固定できる固定装置41を備えている。
すなわち、まず、図1および図3に示すように、固定フレーム1の左右中央部には、外筒42が、下端部を横フレーム8に固定されて、ほぼ鉛直に立設されている。また、外筒42の内部には内筒43が昇降可能に挿入されており、この内筒43の上端部は洗面台2の台16の後部フレーム16bの中央部に設けられた取付フレーム16cに固定されている。したがって、内筒43は洗面台2とともに昇降するようになっている。
また、内筒43の下端部には、図9に示すように、弾性部材44が取り付けられている。弾性部材44はそれに力を作用していない状態では外筒42の内周面との間に隙間を隔てている。また、弾性部材44に軸方向の圧縮力を作用させると、径方向外方に弾性的に拡径して外筒42の内周面に圧接するようになっている。
【0028】
弾性部材44には軸方向に沿って貫通孔44aが形成されており、この貫通孔44aには軸部材45が上下動可能に挿通されている。この軸部材45の下端部にはナット46が螺合されており、これによって軸部材45の下端部は弾性部材44の下端部に固定されている。一方、軸部材45の上端部は内筒43内に挿入されており、この軸部部材45にはワイヤ47が連結されている。したがって、このワイヤ47を引き上げることによって、軸部材45が引き上げられ(上昇し)て、弾性部材44が径方向外方に弾性的に拡径して外筒42の内周面に圧接する。また、ワイヤ47の引き上げ力を解除すると、弾性部材44が弾性復帰して、外筒42の内周面から離間するようになっている。
なお、弾性部材44と外筒42の内周面の摩擦力が大きくて、ワイヤ47の引き上げ力の解除だけでは、弾性部材44が弾性復帰できない場合は、弾性部材44と内筒43との間に圧縮バネを介在させて、この圧縮バネの弾性復帰力を利用してもよい。
【0029】
前記ワイヤ47は内筒43の上端から延出しており、軟性のパイプ48に挿通されている。パイプ48は、図5に示すように、内筒43の上端開口近傍から、右側方に延びさらに、洗面台2の内部を通って前方に延び、洗面台2の下方の右側部付近まで延びるようにして設けられている。
洗面台2の下方の右側部には、筒状に形成され、外周にねじが形成された筒状ネジ50が螺合されており、この筒状ネジ50の先端部には、ブラケット51の一端部がナット52によって固定されており、このブラケット51の他端部には前記パイプ48の端部が固定されている。また、筒状ネジ50の内部には軸部53が挿入されており、この軸部53の先端部に、パイプ48内に挿通されているワイヤ47が連結されている。また、軸部53の基端部は筒状ネジ50から突出している。
【0030】
一方、洗面台2の右側部から突出している筒状ネジ50には、ナット54が螺合して締め付けられることによって、洗面台2の右側部の前面に固定されている。また、筒状ネジ50から突出している軸部53の端部には操作レバー55が軸55aを介して回動可能に取り付けられている。また、この操作レバー55にはコロ56が軸支されており、このコロ56は前記ナット54の端面に当接している。なお、コロ56、ナット54等はカバー57によって覆われている。
【0031】
そして、上記のような構成の固定装置41では、操作レバー55を押し下げることによって、コロ56がナット54の端面を転動するとともに、軸部53が引き込まれ、これによって、軸部53に連結されているワイヤ47が引き込まれる。
ワイヤ47が引き込まれると、軸部材45が引き上げられ(上昇し)て、弾性部材44が径方向外方に弾性的に拡径して外筒42の内周面に圧接することによって、弾性部材44が摩擦力によって外筒42の内周面に固定される。これによって、洗面台2が所望の位置で固定される。
一方、操作レバー55を引き上げることによって、コロ56がナット54の端面を転動するとともに、軸部53が押し出され、これによって、軸部53に連結されているワイヤ47が緩む。
ワイヤ47が緩むと、ワイヤ47の引き上げ力が解除されるので、弾性部材44が弾性復帰して、外筒42の内周面から離間する。これによって、洗面台2の固定が解除され、昇降可能となる。
【0032】
操作レバー55はコロ56によって、てこの力を利用してワイヤ47を引き込むようになっているので、軽い力で操作することができる。
【0033】
なお、ワイヤ47を引き込む機構としては、図11に示すものを採用してもよい。この機構は以下のように構成されている。すなわち、台16の下面にはブラケット61が固定されており、このブラケット61には軸62が取り付けられている。この軸62には、操作レバー60の中央部が回動可能に取り付けられており、これによって操作レバー60は上下に揺動可能となっている。
また、台16の下面には、ブラケット63が固定されており、このブラケット63にはリンク64の中間部が軸65によって回動可能に取り付けられている。リンク64の中間部には長穴64aが形成されており、この長穴64aに軸65が挿入されている。したがって、リンク64は軸65を支点として回動可能であるとともに、長穴64aによってリンク64の長さ方向に移動可能である。
さらに、リンク64の一端部には、操作レバー60の基端部が回動可能に連結されており、他端部にはワイヤ47が連結されている。
【0034】
したがって、操作レバー60を引き上げるか押し下げることによって、ワイヤ47が緩み、洗面台2の固定が解除され、洗面台2が昇降可能となる。
また、操作レバー60を水平位置にすると、リンク64を介してワイヤ47が引き込まれ、これによって、洗面台2が所望の位置で固定される。
【0035】
以上のような昇降式洗面化粧台では、洗面台2を昇降させる場合には、操作レバー55を引き上げることによって、ワイヤ47が緩んで、ワイヤ47の引き上げ力が解除されるので、弾性部材44が弾性復帰して、外筒42の内周面から離間する。これによって、洗面台2の固定が解除され、昇降可能となる。
そして、バランサ24が固定フレーム1に取り付けられており、このバランサ24の吊ワイヤ26が洗面台2に連結されているので、洗面台2を軽い操作力で昇降操作できる。すなわち、バランサ24は洗面台2の重量と力学的平衡関係を保つようにゼンマイバネ31cバネ力が調整されたものであるから、洗面台2を軽い操作力で昇降操作できる。
【0036】
また、洗面台2が固定フレーム1にガイドローラ10,11,12,23によって昇降可能に支持されるとともに、バランサ24の吊ワイヤ26が洗面台2に連結されているので、洗面台2の昇降時の安定性がよい。なお、スライドレール等によって洗面台2を固定フレーム1に昇降可能に支持するようにしてもよい。
さらに、バランサ24は、カウンターウェイトに比して、非常に小さく取付けスペースが狭くて済むので、昇降式洗面台をコンパクトにできる。
また、回転ドラム29がニードルベアリング32を介して軸部28に取り付けられているので、従来の回転ドラムに比して回転摩擦を軽減でき、また、回転ドラム29の端面29aとケーシング27のプレート27bとの間にはクリアランスSが設けられているので、従来の回転ドラムに比して摩擦接触を軽減できる。したがって、回転ドラム29が回転する際に該回転ドラム29に作用する摩擦力を軽減できるので、洗面台2の昇降時の操作力を格段に軽くできる。
また、バランサ24の吊ワイヤ26が巻き掛けられた動滑車40が洗面台2に取り付けられているので、洗面台2からバランサ24に作用する力を半減できる。したがって、バランサ24の取付け個数を減じることができるので、バランサの取付けスペースを狭くできるとともに、コストを軽減できる。
【0037】
また、洗面台2を昇降させた後、所望の上下方向の位置で固定する場合には、操作レバー55を押し下げることによって、ワイヤ47が引き込まれ、軸部材45が引き上げられ(上昇し)て、弾性部材44が径方向外方に弾性的に拡径して外筒42の内周面に圧接することによって、弾性部材44が摩擦力によって外筒42の内周面に固定される。これによって、洗面台2が所望の位置で固定される。
このように、操作レバー55を軽い力で操作することによって、洗面台2を容易に昇降可能にしたり、固定できる。
【0038】
また、固定装置41が、バランサ24、吊ワイヤ26、動滑車40等で構成されたバランス機構と別体であるので、バランス機構に支障が生じても、洗面台2は固定され続けるので安全面でも優れたものとなる。
さらに、本実施の形態の昇降式洗面台は、洗面ボール15の下側は車椅子等が入れるように空間を開けた構造となっているので、昇降式洗面台を床に設置するとともに壁に固定する際に、前倒れするのを防止するために、起倒式の可動脚9,9を備えているので、設置の際は可動脚9,9を倒して床に当接することによって、前倒れを防止できるのはもとより、壁固定後は、可動脚9,9は起こして固定フレーム1側に収容することによって、可動脚9,9が邪魔になることがない。
【0039】
なお、本実施の形態では、本発明に係る昇降式作業台を昇降式洗面台に適用した例について説明したが、本発明は昇降式流し台やその他の昇降式作業台にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係る昇降式洗面台の一例を示すもので、(a)は昇降式洗面台の正面図、(b)は洗面台が上昇した場合の昇降式洗面台の正面図である。
【図2】同、図1におけるA矢視図である。
【図3】同、図1におけるB−B線断面図である。
【図4】同、図1におけるC−C線断面図である。
【図5】同、図1におけるD矢視図である。
【図6】同、図1におけるE−E線断面図である。
【図7】同、バランサを示すもので、(a)は正面図、(b)は右側面図、(c)は左側面図、(d)は平面図、(e)は平面分解図である。
【図8】同、バランサと動滑車を示す要部の正面図である。
【図9】同、固定装置の弾性部材を示し、(a)はロック解除時、(b)はロック時を示す断面図である。
【図10】同、固定装置の操作レバー部分を示し、(a)は側面図、(b)は平面図、(c)は正面図である。
【図11】同、固定装置の操作レバーの変形例を示す側面図である。
【符号の説明】
【0041】
1 固定フレーム
2 洗面台(作業台)
24 バランサ
26 吊ワイヤ(吊索材)
27 ケーシング
28 軸部
29 回転ドラム
30 巻取ドラム
31c ゼンマイバネ
32 ニードルベアリング(転がり軸受)
40 動滑車
【技術分野】
【0001】
本発明は、昇降式の洗面台または流し台等の作業台を備えた昇降式作業台に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ユニバーサルデザインを取り入れた商品が普及されていく中、子供、身長差、車椅子使用者に関係なく使用できる昇降式の洗面台や流し台を備えた昇降式作業台の開発が進んでいる。
例えば、特許文献1には、水槽が設けられたカウンタートップと、このカウンタートップの下部に連続一体に設けられる可動体と、家屋側に固定状態に立設され前記可動体が上下方向にスライド可能に取り付けられる固定体と、前記カウンタートップを弾力的に支持する弾力支持体と、前記カウンタートップを所定高さに位置決めする位置決め体とを有する構成とした昇降式カウンタートップ装置が記載されている。そして、前記弾力支持体としてガススプリングを使用している。
【0003】
また、特許文献2には、2本の支柱を立て、この支柱で上下にスライドする昇降ガイドに洗面台を取り付け、支柱に設けたバランス用バネで洗面台の重さとバランスさせ、洗面台を上下させるには昇降ガイドに連結した操作レバーで上下に移動し、位置決め用溝に固定するものが記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開平10−155574号公報
【特許文献2】実開平06−031590号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、前者の場合、弾力支持体にガススプリングを使用しているので、可動体を昇降させる際に、上昇、下降のどちらかの操作が重くなり、また、バランスがとれたとしてもガススプリング内部の抵抗力が強く昇降操作力が重くなる傾向にある。
また、後者の場合、巻きバネ(圧縮、引張り)を利用し、操作負荷を軽減する機構としているが、昇降ストロークとバネ定数の関係により、上昇下降時の操作力が変動するため、操作力が安定しない傾向にある。
さらに、カウンターウェイトを使用した場合、操作力の軽さと安定性はあるが、機構部が大きくなり、全体の重量も増加し、施工性が悪くなる傾向にある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、昇降可能な作業台を軽い操作力で昇降操作でき、かつ、作業台の昇降時の安定性を兼ね備え、さらに、コンパクトな昇降式作業台を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の昇降式作業台は、固定フレームと、この固定フレームに昇降可能に支持された洗面台または流し台等の作業台とを備えた昇降式作業台であって、
バネ力で巻き取り付勢された吊索材を備えたバランサが、前記固定フレームに取り付けられており、このバランサの吊索材が、巻き取られることによって前記作業台が上昇するように前記作業台に連結されていることを特徴とする。
【0008】
ここで、前記バランサは、前記作業台を僅かな力で簡単に昇降させるようにするととも
に、任意の位置で作業台を停止可能とするために、作業台の重量と力学的平衡関係を保つようにバネ力が調整されたものである。
また、バランサは作業台の重さによって、取付け個数を適宜設定し、また、作業台の大きさや形状によって取付け位置を適宜設定する。
【0009】
請求項2に記載の昇降式作業台は、請求項1に記載の発明において、
前記バランサは、ケーシングと、このケーシング内に設けられた軸部と、この軸部に正逆方向に回転自在に取り付けられて前記吊索材が巻き付けられ、かつ、前記吊索材の巻き取り方向にバネ力で付勢された回転ドラムとを備えており、
前記回転ドラムは転がり軸受を介して前記軸部に取り付けられており、
前記回転ドラムの端面と、前記ケーシングとの間にはクリアランスが設けられていることを特徴とする。
【0010】
ここで、前記クリアランスは、回転ドラムの両端面のうちの少なくとも一方の端面とケーシングとの間に設ければよい。
【0011】
請求項3に記載の昇降式作業台は、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記バランサの吊索材は、動滑車に巻き掛けられており、この動滑車が前記作業台に取り付けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の昇降式作業台によれば、バランサが固定フレームに取り付けられており、このバランサの吊索材が作業台に連結されているので、作業台を軽い操作力で昇降操作できる。すなわち、バランサは作業台の重量と力学的平衡関係を保つようにバネ力が調整されたものであるから、作業台を軽い操作力で昇降操作できる。
また、作業台が固定フレームに昇降可能に支持されるとともに、バランサの吊索材が作業台に連結されているので、作業台の昇降時の安定性がよい。
さらに、バランサは、カウンターウェイトに比して、非常に小さく取付けスペースが狭くて済むので、昇降式作業台をコンパクトにできる。
【0013】
従来の上げ下げ窓に使用されているバランサでは、回転ドラムがカラー等の滑り軸受を介して軸部に取り付けられており、また、上げ下げ窓を任意の位置で止めるべくある程度の抵抗を持たせたいので、回転ドラムの端面とケーシングとは接触している。
これに対して、請求項2に記載の昇降式作業台によれば、回転ドラムが転がり軸受を介して軸部に取り付けられているので、従来の回転ドラムに比して回転摩擦を軽減でき、また、回転ドラムの端面とケーシングとの間にはクリアランスが設けられているので、従来の回転ドラムに比して摩擦接触を軽減できる。したがって、回転ドラムが回転する際に該回転ドラムに作用する摩擦力を軽減できるので、作業台の昇降時の操作力を格段に軽くできる。
【0014】
請求項3に記載の昇降式作業台によれば、バランサの吊索材が巻き掛けられた動滑車が作業台に取り付けられているので、作業台からバランサに作用する力を半減できる。したがって、バランサの取付け個数を減じることができるので、バランサの取付けスペースを狭くできるとともに、コストを軽減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1〜図5に示すように、本実施の形態では、本発明に係る昇降式作業台を昇降式洗面台に適用している。
まず、昇降式洗面台は、固定フレーム1とこの固定フレーム1に昇降可能に支持された洗面台(作業台)2とを備えている。
【0016】
固定フレーム1は左右の側板3,3と、この側板3,3を連結する複数の横フレーム4〜8とから構成されている。横フレーム5,7は側板3,3の前部において、中間部どうしおよび下端部どうしをそれぞれ連結している。また、横フレーム4,6,8は側板3,3の後部において、上端部どうし、中間部どうしおよび下端部どうしをそれぞれ連結している。
また、固定フレーム1の下端部には、可動脚9,9がその基端部を支点として上下に回動可能に、つまり起倒可能に取り付けられている。この可動脚9,9は、昇降式洗面台を壁に当接させて床に設置する際に、固定フレーム1の前側に回動して倒されて、床に当接することによって、昇降式洗面台が前方に倒れないように支持し、また設置後は起こして固定フレーム1側に収納するものである。
【0017】
また、側板3には、その上端部と中間部とにそれぞれガイドローラ10,11が取り付けられている。また、ガイドローラ10,11は、側板3の前部と後部とにそれぞれ取り付けられている。つまり、ガイドローラ10,11は一枚の側板3にそれぞれ2個ずつ取り付けられている。
また、側板3の上端部には、ガイドローラ12,12が取り付けられている。ガイドローラ12はその軸を、ガイドローラ10の軸と直交させて取り付けられたものである。
上記ガイドローラ10,11,12は洗面台2の昇降をガイドするものであり、洗面台2の後述する縦フレーム7に回転自在に当接されている。
【0018】
洗面台2は、洗面ボール15を保持する台16と、この台16の左右を下方から支持する一対の縦フレーム17,17とを備えている。台16は、左右に間隔をおいて配置され、前後に平行に延びる一対の前後フレーム16a、16aと、これらの前後フレーム16a、16aの後端部どうしを連結する後部フレーム16bとを備えたフレーム構造となっている。また、台16の背面には取付板19が上方に突出するようにして固定されており、この取付板19には化粧鏡20が取り付けられている。また、台16の上面には、洗面ボール15の後側において、蛇口となるシャワーヘッド21と、シャワーヘッド21からの水または湯の吐出を開閉するレバー22とが取り付けられている。なお、レバー22は上下させることによって水または湯の吐出を開閉するとともに吐出量を調整し、左右に回転させることによって、水または湯の温度を調整するようになっている。
【0019】
前記縦フレーム17,17はその上端部が、台16の左右両側にそれぞれ固定されており、下端部は固定フレーム1の内側に挿入されている。縦フレーム17,17の下端部どうしは横フレーム18によって連結されている。
また、縦フレーム17,17は固定フレームの側板3,3の内側に配置され、かつ該側板3,3に近接している。そして、縦フレーム17,17には、側板3,3にそれぞれ取り付けられているガイドローラ10,11とガイドローラ12とが、それぞれ縦フレーム17,17の側面と、前面および後面にそれぞれ転動可能に当接されている。
また、縦フレーム17の下端部には、ガイドローラ23,23が取り付けられており、該ガイドローラ23,23は固定フレーム1の側板3に転動可能に当接されている。
したがって、縦フレーム17,17は、前記ガイドローラ10,11,12,23を介して固定フレーム1の側板3,3に昇降可能に支持されており、これによって、洗面台2は固定フレーム1に昇降可能に支持されている。
【0020】
また、固定フレーム1には、合計4つのバランサ24が取り付けられている。すなわち、側板3,3の上端部の内側には、取付フレーム25,25が固定されており、この取付フレーム25,25にそれぞれ2つのバランサ24,24が取り付けられている。前側のバランサ24は後側のバランサ24より若干上方に位置している。
バランサ24は、洗面台2を僅かな力で簡単に昇降させるようにするとともに、洗面台2の重量と力学的平衡関係を保つようにバネ力が調整されたものであり、バネ力で巻き取り付勢された吊ワイヤ(吊索材)26を備えている。
【0021】
バランサ24は以下のように構成されている。
すなわち、図7に示すように、バランサ24は、ケーシング27と、このケーシング27内に設けられた軸部28と、この軸部28に正逆方向に回転自在に取り付けられて前記吊ワイヤ26が巻き付けられ、かつ、吊ワイヤ26の巻き取り方向にバネ力で付勢された回転ドラム29とを備えている。
ケーシング27は、ケーシング本体27aと、このケーシング本体27aの背面側開口を塞ぐプレート27bとを備えており、該プレート27bはねじ27c・・・によってケーシング本体27aに固定されている。
【0022】
軸部28は、ケーシング本体27aの平板部とプレート27bとの間に架け渡すようにして設けられており、その一端部はケーシング本体27aの平板部に形成された孔に挿通されて突出しており、該平板部によって支持されている。また、軸部28の他端部はプレート27bに形成された孔に挿通されて突出しており、該プレート27bによって支持されている。
回転ドラム29は、吊ワイヤ26が巻き付けられる巻取ドラム30と、この巻取ドラム30にバネ力を付与する付勢ドラム31とを備えている。
巻取ドラム30には、巻き始めから巻き終わりまで吊ワイヤー26に一定の張力が作用するように漸次縮径した螺旋状の巻取り溝(図示略)が形成されている。すなわち、巻取ドラムに円錐状の周面30aが形成されており、この周面30aに巻取り溝が螺旋状に形成されている。
また、巻取ドラム30の中心部には、軸穴30bとこの軸穴30baより小径の軸穴30cが同軸に形成されており、軸穴30bにはニードルベアリング(転がり軸受)32が装着されている。また、軸穴30cにはスペーサ33が嵌め込まれている。ニードルベアリング32は、前記軸部28に装着されており、これによって、巻取ドラム30はニードルベアリング32を介して軸部28に取り付けられている。
【0023】
前記付勢ドラム31は、バネケース31a,31bとこのバネケース31a,31bに収納されたゼンマイバネ31cとから構成されている。このゼンマイバネ31cの内方端は軸部28に係止され、外方端はバネケース31a,31bの内壁に係止されている。
このような構成の付勢ドラム31の端面(バネケース31aの端面)は、巻取ドラム30の端面に固定されている。したがって、巻取ドラム30は、付勢ドラム31のゼンマイバネ31cによって、吊ワイヤ26の巻き取り方向に付勢されている。
【0024】
上記のような構成の回転ドラム29は、該回転ドラム29に軸部28が挿通され、さらにこの軸部28に、回転ドラム29を挟むようにして薄型ワッシャ34a,34bが外挿されたうえで、ケーシング本体27aに背面開口から装入され、このケーシング本体27aにプレート27bを固定することによって、ケーシング27に納められている。
この状態において、回転ドラム29の端面29aと、ケーシング27のプレート27bとの間にはクリアランスSが設けられている。つまり、回転ドラム29は、薄型ワッシャ34bによってプレート27bへの移動が阻止され、さらに、薄型ワッシャ34bはプレート27bとの間に隙間をもっているので、回転ドラム29の端面とプレート27bとの間にはクリアランスSが設けられている。これによって、従来の回転ドラムに比して摩擦接触を軽減できるので、回転ドラム29が回転する際に該回転ドラム29に作用する摩擦力を軽減できる。
【0025】
また、ケーシング27の前面には、爪車35が設けられており、この爪車35は前記ケーシング27から突出している軸部28に取り付けられている。また、ケーシング27の前面には、爪36が揺動可能に軸支されており、この爪36はバネ37によって爪車35に付勢されている。軸部28の先端面には工具例えばマイナスドライバーが係合する係合溝28aが形成されており、軸部28を巻き取り方向に回すことによりゼンマイバネ31cを巻いて巻取付勢力を増大させることができるようになっている。また爪35をバネ37に抗して揺動させることにより軸部28を間欠的に巻き戻し(ゼンマイバネを緩め)、巻き取り付勢力を減少させることができるようになっている。
したがって、洗面化粧台の設置時に、軸部28をゼンマイバネ31cの巻き方向に回転し、所定の巻き回数位置にて軸部28に取り付けられた爪車35に対して爪36を噛合させることにより、洗面台2の重量と釣り合う上方向力を導入できるようになっている。
【0026】
上記のようなバランサ24の吊ワイヤ26は動滑車40に巻き掛けられている。すなわち、前記洗面台2の縦フレーム17,17の下端部には、それぞれブラケットを介して2つの動滑車40,40が同軸に取り付けられており、該動滑車40,40にそれぞれバランサ24,24の吊ワイヤ26,26が巻き掛けられている。この吊ワイヤ26,26の先端部は固定フレーム1の取付フレーム25に固定されている。このように、バランサ24の吊ワイヤ26が巻き掛けられた動滑車40が固定フレーム1に取り付けられているので、洗面台2からバランサ24に作用する力を半減できる。
【0027】
また、本実施の形態の昇降式洗面台は、昇降する洗面台2を上下の所望の位置で固定できる固定装置41を備えている。
すなわち、まず、図1および図3に示すように、固定フレーム1の左右中央部には、外筒42が、下端部を横フレーム8に固定されて、ほぼ鉛直に立設されている。また、外筒42の内部には内筒43が昇降可能に挿入されており、この内筒43の上端部は洗面台2の台16の後部フレーム16bの中央部に設けられた取付フレーム16cに固定されている。したがって、内筒43は洗面台2とともに昇降するようになっている。
また、内筒43の下端部には、図9に示すように、弾性部材44が取り付けられている。弾性部材44はそれに力を作用していない状態では外筒42の内周面との間に隙間を隔てている。また、弾性部材44に軸方向の圧縮力を作用させると、径方向外方に弾性的に拡径して外筒42の内周面に圧接するようになっている。
【0028】
弾性部材44には軸方向に沿って貫通孔44aが形成されており、この貫通孔44aには軸部材45が上下動可能に挿通されている。この軸部材45の下端部にはナット46が螺合されており、これによって軸部材45の下端部は弾性部材44の下端部に固定されている。一方、軸部材45の上端部は内筒43内に挿入されており、この軸部部材45にはワイヤ47が連結されている。したがって、このワイヤ47を引き上げることによって、軸部材45が引き上げられ(上昇し)て、弾性部材44が径方向外方に弾性的に拡径して外筒42の内周面に圧接する。また、ワイヤ47の引き上げ力を解除すると、弾性部材44が弾性復帰して、外筒42の内周面から離間するようになっている。
なお、弾性部材44と外筒42の内周面の摩擦力が大きくて、ワイヤ47の引き上げ力の解除だけでは、弾性部材44が弾性復帰できない場合は、弾性部材44と内筒43との間に圧縮バネを介在させて、この圧縮バネの弾性復帰力を利用してもよい。
【0029】
前記ワイヤ47は内筒43の上端から延出しており、軟性のパイプ48に挿通されている。パイプ48は、図5に示すように、内筒43の上端開口近傍から、右側方に延びさらに、洗面台2の内部を通って前方に延び、洗面台2の下方の右側部付近まで延びるようにして設けられている。
洗面台2の下方の右側部には、筒状に形成され、外周にねじが形成された筒状ネジ50が螺合されており、この筒状ネジ50の先端部には、ブラケット51の一端部がナット52によって固定されており、このブラケット51の他端部には前記パイプ48の端部が固定されている。また、筒状ネジ50の内部には軸部53が挿入されており、この軸部53の先端部に、パイプ48内に挿通されているワイヤ47が連結されている。また、軸部53の基端部は筒状ネジ50から突出している。
【0030】
一方、洗面台2の右側部から突出している筒状ネジ50には、ナット54が螺合して締め付けられることによって、洗面台2の右側部の前面に固定されている。また、筒状ネジ50から突出している軸部53の端部には操作レバー55が軸55aを介して回動可能に取り付けられている。また、この操作レバー55にはコロ56が軸支されており、このコロ56は前記ナット54の端面に当接している。なお、コロ56、ナット54等はカバー57によって覆われている。
【0031】
そして、上記のような構成の固定装置41では、操作レバー55を押し下げることによって、コロ56がナット54の端面を転動するとともに、軸部53が引き込まれ、これによって、軸部53に連結されているワイヤ47が引き込まれる。
ワイヤ47が引き込まれると、軸部材45が引き上げられ(上昇し)て、弾性部材44が径方向外方に弾性的に拡径して外筒42の内周面に圧接することによって、弾性部材44が摩擦力によって外筒42の内周面に固定される。これによって、洗面台2が所望の位置で固定される。
一方、操作レバー55を引き上げることによって、コロ56がナット54の端面を転動するとともに、軸部53が押し出され、これによって、軸部53に連結されているワイヤ47が緩む。
ワイヤ47が緩むと、ワイヤ47の引き上げ力が解除されるので、弾性部材44が弾性復帰して、外筒42の内周面から離間する。これによって、洗面台2の固定が解除され、昇降可能となる。
【0032】
操作レバー55はコロ56によって、てこの力を利用してワイヤ47を引き込むようになっているので、軽い力で操作することができる。
【0033】
なお、ワイヤ47を引き込む機構としては、図11に示すものを採用してもよい。この機構は以下のように構成されている。すなわち、台16の下面にはブラケット61が固定されており、このブラケット61には軸62が取り付けられている。この軸62には、操作レバー60の中央部が回動可能に取り付けられており、これによって操作レバー60は上下に揺動可能となっている。
また、台16の下面には、ブラケット63が固定されており、このブラケット63にはリンク64の中間部が軸65によって回動可能に取り付けられている。リンク64の中間部には長穴64aが形成されており、この長穴64aに軸65が挿入されている。したがって、リンク64は軸65を支点として回動可能であるとともに、長穴64aによってリンク64の長さ方向に移動可能である。
さらに、リンク64の一端部には、操作レバー60の基端部が回動可能に連結されており、他端部にはワイヤ47が連結されている。
【0034】
したがって、操作レバー60を引き上げるか押し下げることによって、ワイヤ47が緩み、洗面台2の固定が解除され、洗面台2が昇降可能となる。
また、操作レバー60を水平位置にすると、リンク64を介してワイヤ47が引き込まれ、これによって、洗面台2が所望の位置で固定される。
【0035】
以上のような昇降式洗面化粧台では、洗面台2を昇降させる場合には、操作レバー55を引き上げることによって、ワイヤ47が緩んで、ワイヤ47の引き上げ力が解除されるので、弾性部材44が弾性復帰して、外筒42の内周面から離間する。これによって、洗面台2の固定が解除され、昇降可能となる。
そして、バランサ24が固定フレーム1に取り付けられており、このバランサ24の吊ワイヤ26が洗面台2に連結されているので、洗面台2を軽い操作力で昇降操作できる。すなわち、バランサ24は洗面台2の重量と力学的平衡関係を保つようにゼンマイバネ31cバネ力が調整されたものであるから、洗面台2を軽い操作力で昇降操作できる。
【0036】
また、洗面台2が固定フレーム1にガイドローラ10,11,12,23によって昇降可能に支持されるとともに、バランサ24の吊ワイヤ26が洗面台2に連結されているので、洗面台2の昇降時の安定性がよい。なお、スライドレール等によって洗面台2を固定フレーム1に昇降可能に支持するようにしてもよい。
さらに、バランサ24は、カウンターウェイトに比して、非常に小さく取付けスペースが狭くて済むので、昇降式洗面台をコンパクトにできる。
また、回転ドラム29がニードルベアリング32を介して軸部28に取り付けられているので、従来の回転ドラムに比して回転摩擦を軽減でき、また、回転ドラム29の端面29aとケーシング27のプレート27bとの間にはクリアランスSが設けられているので、従来の回転ドラムに比して摩擦接触を軽減できる。したがって、回転ドラム29が回転する際に該回転ドラム29に作用する摩擦力を軽減できるので、洗面台2の昇降時の操作力を格段に軽くできる。
また、バランサ24の吊ワイヤ26が巻き掛けられた動滑車40が洗面台2に取り付けられているので、洗面台2からバランサ24に作用する力を半減できる。したがって、バランサ24の取付け個数を減じることができるので、バランサの取付けスペースを狭くできるとともに、コストを軽減できる。
【0037】
また、洗面台2を昇降させた後、所望の上下方向の位置で固定する場合には、操作レバー55を押し下げることによって、ワイヤ47が引き込まれ、軸部材45が引き上げられ(上昇し)て、弾性部材44が径方向外方に弾性的に拡径して外筒42の内周面に圧接することによって、弾性部材44が摩擦力によって外筒42の内周面に固定される。これによって、洗面台2が所望の位置で固定される。
このように、操作レバー55を軽い力で操作することによって、洗面台2を容易に昇降可能にしたり、固定できる。
【0038】
また、固定装置41が、バランサ24、吊ワイヤ26、動滑車40等で構成されたバランス機構と別体であるので、バランス機構に支障が生じても、洗面台2は固定され続けるので安全面でも優れたものとなる。
さらに、本実施の形態の昇降式洗面台は、洗面ボール15の下側は車椅子等が入れるように空間を開けた構造となっているので、昇降式洗面台を床に設置するとともに壁に固定する際に、前倒れするのを防止するために、起倒式の可動脚9,9を備えているので、設置の際は可動脚9,9を倒して床に当接することによって、前倒れを防止できるのはもとより、壁固定後は、可動脚9,9は起こして固定フレーム1側に収容することによって、可動脚9,9が邪魔になることがない。
【0039】
なお、本実施の形態では、本発明に係る昇降式作業台を昇降式洗面台に適用した例について説明したが、本発明は昇降式流し台やその他の昇降式作業台にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係る昇降式洗面台の一例を示すもので、(a)は昇降式洗面台の正面図、(b)は洗面台が上昇した場合の昇降式洗面台の正面図である。
【図2】同、図1におけるA矢視図である。
【図3】同、図1におけるB−B線断面図である。
【図4】同、図1におけるC−C線断面図である。
【図5】同、図1におけるD矢視図である。
【図6】同、図1におけるE−E線断面図である。
【図7】同、バランサを示すもので、(a)は正面図、(b)は右側面図、(c)は左側面図、(d)は平面図、(e)は平面分解図である。
【図8】同、バランサと動滑車を示す要部の正面図である。
【図9】同、固定装置の弾性部材を示し、(a)はロック解除時、(b)はロック時を示す断面図である。
【図10】同、固定装置の操作レバー部分を示し、(a)は側面図、(b)は平面図、(c)は正面図である。
【図11】同、固定装置の操作レバーの変形例を示す側面図である。
【符号の説明】
【0041】
1 固定フレーム
2 洗面台(作業台)
24 バランサ
26 吊ワイヤ(吊索材)
27 ケーシング
28 軸部
29 回転ドラム
30 巻取ドラム
31c ゼンマイバネ
32 ニードルベアリング(転がり軸受)
40 動滑車
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定フレームと、この固定フレームに昇降可能に支持された洗面台または流し台等の作業台とを備えた昇降式作業台であって、
バネ力で巻き取り付勢された吊索材を備えたバランサが、前記固定フレームに取り付けられており、このバランサの吊索材が、巻き取られることによって前記作業台が上昇するように前記作業台に連結されていることを特徴とする昇降式作業台。
【請求項2】
前記バランサは、ケーシングと、このケーシング内に設けられた軸部と、この軸部に正逆方向に回転自在に取り付けられて前記吊索材が巻き付けられ、かつ、前記吊索材の巻き取り方向にバネ力で付勢された回転ドラムとを備えており、
前記回転ドラムは転がり軸受を介して前記軸部に取り付けられており、
前記回転ドラムの端面と、前記ケーシングとの間にはクリアランスが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の昇降式作業台。
【請求項3】
前記バランサの吊索材は、動滑車に巻き掛けられており、この動滑車が前記作業台に取り付けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の昇降式作業台。
【請求項1】
固定フレームと、この固定フレームに昇降可能に支持された洗面台または流し台等の作業台とを備えた昇降式作業台であって、
バネ力で巻き取り付勢された吊索材を備えたバランサが、前記固定フレームに取り付けられており、このバランサの吊索材が、巻き取られることによって前記作業台が上昇するように前記作業台に連結されていることを特徴とする昇降式作業台。
【請求項2】
前記バランサは、ケーシングと、このケーシング内に設けられた軸部と、この軸部に正逆方向に回転自在に取り付けられて前記吊索材が巻き付けられ、かつ、前記吊索材の巻き取り方向にバネ力で付勢された回転ドラムとを備えており、
前記回転ドラムは転がり軸受を介して前記軸部に取り付けられており、
前記回転ドラムの端面と、前記ケーシングとの間にはクリアランスが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の昇降式作業台。
【請求項3】
前記バランサの吊索材は、動滑車に巻き掛けられており、この動滑車が前記作業台に取り付けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の昇降式作業台。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−117542(P2007−117542A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−316027(P2005−316027)
【出願日】平成17年10月31日(2005.10.31)
【出願人】(302045705)トステム株式会社 (949)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年10月31日(2005.10.31)
【出願人】(302045705)トステム株式会社 (949)
【Fターム(参考)】
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