説明

昇降機構における直動ベアリングの支持構造

【課題】直動ベアリングにかかる過荷重によるベアリングブロックの摩耗及び機械的破損を未然に防止するようにした昇降機構における直動ベアリングの支持構造を提供すること。
【解決手段】ベアリングレール1に沿って昇降するように昇降台Sの左右両側上下に配設したベアリングブロック取付台22にそれぞれベアリングブロック片21を固定し、かつ、ベアリングブロック取付台22にて昇降台Sにかかる偏荷重を吸収できるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昇降機構における直動ベアリングの支持構造に関し、特に、ベアリングレールとベアリングブロックとからなる直動ベアリングにより昇降台を昇降可能に支持するようにした昇降機構において、固定されたベアリングレールに摺動可能に取り付けたベアリングブロックを、昇降台の偏荷重を吸収するよう構成し、直動ベアリングにかかる過荷重によるベアリングブロックの機械的破損を未然に防止するようにした昇降機構における直動ベアリングの支持構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特に限定されるものではないが、例えば、クリーンルーム内を走行するスタッカークレーンにおいて、走行台車上に樹立したマストに沿って配設固定したベアリングレール(ガイドレール)に導かれて昇降可能に支持する昇降台の支持構造として、摺動摩擦が少なく、発塵も抑制できるものとして直動ベアリングを採用することがある。
【0003】
また、この直動ベアリングは、ベアリングレールとベアリングブロックとから構成され、直線状のベアリングレールをマストに垂直に配設固定し、このベアリングレールに嵌挿して摺動するようにしたベアリングブロックを、上下に配する2個一対とし、かつ、このベアリングブロックを昇降台側に取り付け、そして昇降台の昇降動作を、昇降台の左右両側に緊張配設する2条のローラチェーンの巻き上げ、巻き下げにて行うようにしている。
この緊張配設する2条のローラチェーンの端部は、昇降台の上部とカウンタウエイトの上部、昇降台の下部とカウンタウエイトの下部にそれぞれ締結し、該ローラチェーンの巻き上げ、巻き下げを同期して行うことにより昇降台が昇降するようにしている。
さらに、この場合、昇降台がベアリングレールに導かれて水平状態を維持しつつ安定して昇降するように昇降台の昇降軌跡に沿ってマストに2本のベアリングレールを平行に配設し、この各ベアリングレールに対して、上下2個一対としたベアリングブロックを昇降台の左右両側にそれぞれ取り付けている。
したがって、1台の昇降台は、平行する2本のベアリングレールと計4個のベアリングブロックとにより水平状態を維持しつつ安定して昇降することができる。
【0004】
しかしながら、フォーク移載機等により被搬送物などを昇降台側に移載する時、昇降台の中央位置と載荷物の重心とが一致するようにすることが難しく、しばしば偏荷重となることがある。
また、昇降台の左右両側に緊張配設する昇降用のローラチェーンの巻き上げ下げを行う昇降駆動源は、左右独立して、すなわち、1条のローラチェーンに対し、1台のモータの合計4台のモータにて行っているため、左右4本のローラチェーンの伸張度等の相違或いはその他の原因によりこの独立した左右4台のモータの同期がとりにくく、左右のローラチェーンによる巻き上げ下げ力及び巻き上げ下げ量が不一致となることがあった。
【0005】
このように、被搬送物移載時の昇降台にかかる荷重が偏荷重となったり、左右4台のモータの同期がとれなかった場合、その偏荷重は昇降台の上下左右に配設する各ベアリングブロックに直接かかるものとなる。
このように昇降台にかかる偏荷重は、左右両側に配設した各ベアリングブロックにベアリングレールに対して曲げモーメントとして作用するものとなる。この偏荷重はベアリングブロックをベアリングレールに対してこじるように作用し、かつ、これがベアリングブロックの許容された耐強度以上となった場合、ベアリングブロックの摩耗を促進してその寿命を著しく縮めたり、或いは破損させるという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、昇降機構における直動ベアリングの有する問題点に鑑み、直動ベアリングにかかる過荷重によるベアリングブロックの摩耗及び機械的破損を未然に防止するようにした昇降機構における直動ベアリングの支持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の昇降機構における直動ベアリングの支持構造は、ベアリングレールに沿って昇降するように昇降台の左右両側上下に配設したベアリングブロック取付台にそれぞれベアリングブロック片を固定し、かつ、ベアリングブロック取付台にて昇降台にかかる偏荷重を吸収できるように構成したことを特徴とする。
【0008】
この場合において、ベアリングブロック取付台の左右両側面で、昇降台側取付部との接触面を球面に構成することができる。
【0009】
また、下部のベアリングブロック取付台の背面側を、ベアリングブロックとベアリングブロック取付台とが離間する方向の力を吸収するようにしたゴム座及びばね部材を介して昇降台側取付部に固定するようにすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の昇降機構における直動ベアリングの支持構造によれば、ベアリングレールに沿って昇降するように昇降台の左右両側上下に配設したベアリングブロック取付台にそれぞれベアリングブロック片を固定し、かつ、ベアリングブロック取付台にて昇降台にかかる偏荷重を吸収できるように構成することにより、昇降台上の載荷の重心が定位置よりずれたり、或いは左右のローラチェーンによる巻き上げ下げ力及び巻き上げ下げ量が不一致となって、昇降台にかかる荷重が偏荷重となっても、この偏荷重をベアリングブロック取付台にて吸収するようにしているため、ベアリングブロック片に偏荷重が直接かからないので簡単な方法でベアリングブロックの摩耗や破損を防止することができる。
【0011】
また、ベアリングブロック取付台の左右両側面で、昇降台側取付部との接触面を球面に構成することにより、ベアリングブロック取付台の左右両側面の簡易な加工で、全方向にかかるモーメントをベアリングブロック取付台にて確実に吸収し、ベアリングブロックに偏荷重が直接かからないようにすることができる。
【0012】
また、下部のベアリングブロック取付台の背面側を、ベアリングブロックとベアリングブロック取付台とが離間する方向の力を吸収するようにしたゴム座及びばね部材を介して昇降台側取付部に固定するようにすることにより、ベアリングブロック取付台の背面側にかかるベアリングブロックとベアリングブロック取付台とが離間する方向の力の吸収を簡易な方法で確実に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の昇降機構における直動ベアリングの支持構造の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0014】
図1〜図3に、本発明の昇降機構における直動ベアリングの支持構造の第1実施例を示す。
本発明の昇降機構における直動ベアリングの支持は、特に限定されるものではないが、例えば、図7〜図8に示すスタッカークレーンCの実施例について説明する。
スタッカークレーンCは、倉庫或いは工場内の運行ルートに沿って敷設されたレールRに導かれて走行するようにした走行台車D上にマストMを樹立し、移載機(図示省略)を搭載した昇降台SをこのマストMに導かれて昇降させ、搬送物の移載、搬送を行うようにしている。
この昇降台Sの昇降を円滑に行うため、特に限定されるものではないが、例えば、ベアリングレール1とベアリングブロック2とよりなる直動ベアリングBを介して行う。
この直動ベアリングBのベアリングレール1を、図8に示すように、マストMの側面に沿うよう垂直になるよう固定するとともに、ベアリングブロック2を昇降台Sに取り付け、該ベアリングブロック2がベアリングレール1に摺動可能に嵌合されて垂直方向に移動するように構成する。
【0015】
なお、ベアリングレール1はマスト側面に取付ボルト等(図示省略)を介して確固に固定されており、またベアリングブロック2は昇降台側に固定されるが、この場合、ベアリングブロック2は、図1及び図2に示すように、昇降台Sの上部側に取り付ける上部ベアリングブロック2Aと、また、図1及び図3に示すように、昇降台Sの下部側に昇降台側取付部31を介して取り付ける下部ベアリングブロック2Bとをその構成を異なるようにしたものを2個一対として使用し、これにより昇降台Sに対して多方向(例えば、横及び/又は縦方向)にかかるモーメントを吸収することで、ベアリングブロック2に、偏荷重がかかってもベアリングブロック2の過剰摩耗及び/又は破損を防止するようにする。
【0016】
このベアリングブロック2にかかる多方向のモーメント(偏荷重)を吸収する方法として、第1実施例では昇降台Sの上部側及び下部側に取り付ける上部及び下部ベアリングブロック2A、2Bを、ベアリングブロック片21を固定したベアリングブロック取付台22の支持側面を球面23に加工することで行うようにする。なお、このベアリングブロック片21はベアリングレール1に摺動可能に嵌挿された状態で、ベアリングレール1に導かれて移動するようにする。
【0017】
この場合、上部ベアリングブロック2Aのベアリングブロック取付台22を、図2に示すように、左右両側面で、昇降台側取付部との接触面を球面23に形成するとともに、昇降台側取付部、特に限定されるものではないが、例えば、取付ブラケット24の平坦な内面と接触、支持するようにし、さらに、このベアリングブロック取付台22の基端側を、球面軸受25とこれに貫通した軸26を介して前記取付ブラケット24に揺動可能に支持するようにして構成する。
これにより、上部ベアリングブロック2Aにかかる全方向の偏荷重を、ベアリングブロック取付台22側面の球面23と球面軸受25により吸収するようにする。
【0018】
なお、この場合、球面23と平坦な取付ブラケット24の内面との摺動接触時の過摩耗を考慮して、取付ブラケット24の内面に高硬度な平板P、特に限定されるものではないが、例えば、高周波焼入鋼からなる平板を配設することができる。
【0019】
また、下部ベアリングブロック2Bのベアリングブロック取付台27を、上部ベアリングブロック2Aのベアリングブロック取付台22と同様に、図3に示すように、その左右両側面で、上部ベアリングブロック2Aと同様に、昇降台側取付部となる取付ブラケット24との接触面を球面28に形成し、球面28と平坦な取付ブラケット24の内面との摺動接触時の過摩耗を考慮して、取付ブラケット24の内面に高硬度な平板Q、特に限定されるものではないが、例えば、高周波焼入鋼からなる平板を配設するとともに、背面はゴム座29及びコイルばね等のばね部材32を介して昇降台側取付部31に取り付けるように構成する。
ここで、ばね部材32は、昇降台Sの起動/停止時等において、昇降台Sが上部ベアリングブロック2Aの軸26を回転中心とする下部ベアリングブロック2Bとベアリングブロック取付台27とが離間する方向の力Fを受けた場合に、これを阻止するベアリングブロック取付台27側への引張力F’を昇降台側取付部31を介して昇降台Sに対して付与するものである。
これにより、下部ベアリングブロック2Bにかかるベアリングブロック2Bとベアリングブロック取付台27とが離間する方向の力F及び全方向の偏荷重を、ベアリングブロック取付台27の球面28とゴム座29及びばね部材32により吸収するようにする。
【0020】
次に、本発明の昇降機構における直動ベアリングの支持構造の第1実施例の作用について説明する。
昇降台Sの上部側には上部ベアリングブロック2Aを、また下部側には下部ベアリングブロック2Bを上下に対向して、かつ、左右に平行する各ベアリングレール1にそれぞれ一対づつ嵌挿するようにして取り付ける。この場合、ベアリングブロック片21を固定した上下部両ベアリングブロック取付台22、27は、共にその支持側面となる球面23、28と昇降台側取付部の取付ブラケット24、24とを、接触面となる球面23、28を平板P、Qにより支持しているので、全方向の偏荷重がベアリングブロック2にかかってもこの球面23、28にてベアリングブロック取付台22、27が摺動して上下部両ベアリングブロック取付台22、27が自由に揺動偏位する。
【0021】
また、上部側のベアリングブロック取付台22の基端側を球面軸受25と軸26を介して前記取付ブラケット24に取り付けているので、ベアリングブロック取付台22の先端側、すなわち、ベアリングレール側の揺動に、ベアリングブロック取付台22の基端側も追従するようになって揺動し、これにより上部ベアリングブロック2Aにかかる偏荷重を実質的に吸収するようになって上部ベアリングブロック2Aの偏摩耗、破損を防止することができる。
【0022】
また、下部側のベアリングブロック取付台27も、その球面28を平板Qにより支持しているので、全方向の偏荷重がベアリングブロック2Bにかかってもこの球面28にてベアリングブロック取付台27に対して摺動して自由に揺動偏位するとともに、背面側のゴム座29及びばね部材32により、下部ベアリングブロック2Bにかかるベアリングブロック2Bとベアリングブロック取付台27とが離間する方向の力F及び全方向の偏荷重を吸収することができる。
【実施例2】
【0023】
図4〜図6に、本発明の昇降機構における直動ベアリングの支持構造の第2実施例を示す。
この第2実施例は、ベアリングブロックにかかる全方向の偏荷重をすべてゴム座にて吸収するようにするものである。
昇降台Sの上部側及び下部側に取り付けるベアリングブロック20A、20Bを、図4〜図6に示すように、ベアリングブロック片21を固定したベアリングブロック取付台22、27の左右両側面と取付ブラケット24、24との間にゴム座29、29を介在して取り付ける。
【0024】
なお、この上部ベアリングブロック20Aは、ベアリングブロック取付台22の基端側を、第1実施例と同じようにして球面軸受25と軸26を介して揺動可能に取付ブラケット24に取り付け、これによりベアリングブロック取付台の先端側、すなわち、ベアリングレール側の揺動に対して、基端側もこれに追従するよう揺動し、上部ベアリングブロック20Aにかかる偏荷重を実質的に吸収するようになって上部ベアリングブロック20Aの偏摩耗、破損を防止することができる。
【0025】
また、下部ベアリングブロック20Bのベアリングブロック取付台27は、図6に示すように、上部ベアリングブロック20Aと同様にその左右両側面と背面にそれぞれゴム座29、30を介して取付ブラケット24或いは昇降台側取付部に取り付けるようにする。
なお、このゴム座30は、図示の実施例では糸巻き車の形状としているが、これに限定されることなく、厚板形とすることもできる。
【0026】
以上、本発明の昇降機構における直動ベアリングの支持構造について、複数の実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、これらの実施例を適当に組み合わせるなど、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明の昇降機構における直動ベアリングの支持構造は、固定されたベアリングレールに対して摺動可能に取り付けたベアリングブロックを、昇降台の偏荷重を吸収するように構成して直動ベアリングにかかる過荷重による機械的破損を未然に防止するという特性を有していることから、スタッカークレーンの用途に好適に用いることができるほか、例えば、扛上機や移載機の用途にも用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の昇降機構における直動ベアリングの支持構造の第1実施例を示す側面図である。
【図2】上部ベアリングブロックの平面図である。
【図3】下部ベアリングブロックの平面図である。
【図4】本発明の昇降機構における直動ベアリングの支持構造の第2実施例を示す側面図である。
【図5】上部ベアリングブロックの平面図である。
【図6】下部ベアリングブロックを示し、(A)は平面図、(B)は側面図である。
【図7】本発明の昇降機構における直動ベアリングの支持構造を適用したスタッカークレーンの正面図である。
【図8】スタッカークレーンに適用した実施例の拡大横断平面図である。
【符号の説明】
【0029】
B 直動ベアリング
C スタッカークレーン
D 走行台車
M マスト
S 昇降台
1 ベアリングレール
2 ベアリングブロック
2A 上部ベアリングブロック
2B 下部ベアリングブロック
20A 上部ベアリングブロック
20B 下部ベアリングブロック
21 ベアリングブロック片
22 ベアリングブロック取付台
23 球面
24 取付ブラケット
25 球面軸受
26 軸
27 ベアリングブロック取付台
28 球面
29 ゴム座
30 ゴム座
31 昇降台側取付部
32 ばね部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベアリングレールに沿って昇降するように昇降台の左右両側上下に配設したベアリングブロック取付台にそれぞれベアリングブロック片を固定し、かつ、ベアリングブロック取付台にて昇降台にかかる偏荷重を吸収できるように構成したことを特徴とする昇降機構における直動ベアリングの支持構造。
【請求項2】
ベアリングブロック取付台の左右両側面で、昇降台側取付部との接触面を球面に構成したことを特徴とする請求項1記載の昇降機構における直動ベアリングの支持構造。
【請求項3】
下部のベアリングブロック取付台の背面側を、ベアリングブロックとベアリングブロック取付台とが離間する方向の力を吸収するようにしたゴム座及びばね部材を介して昇降台側取付部に固定するようにしたことを特徴とする請求項1又は2記載の昇降機構における直動ベアリングの支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−127172(P2008−127172A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−315163(P2006−315163)
【出願日】平成18年11月22日(2006.11.22)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】