説明

昇降装置

【課題】より使い勝手の良い旋回式の昇降装置を提供する。
【解決手段】浚渫船10に備えられた昇降装置100は、グラブバケット14に接続された支持ワイヤ102を中継するジブ先シーブ122と、支持ワイヤ102が巻き付けられた支持ドラム116aと支持ドラム116aを回転させる支持モータとを有する支持ウインチ116と、支持ウインチ116がグラブバケット14を上昇させる際、支持モータに電力を供給し、支持ウインチ116がグラブバケット14を下降させる際、支持モータで発電された電力をバッテリに蓄電する第1電源装置124、第2電源装置と、支持ウインチ116と第1電源装置124、第2電源装置とを一体として旋回軸Rの周りで旋回させる旋回駆動部108と、を備える。第1電源装置124、第2電源装置は、旋回台106の横に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、旋回式の昇降装置に関する。
【背景技術】
【0002】
港湾・河川・運河などの底面を浚って土砂などを取り去る機械として、浚渫機や浚渫船が知られている。特許文献1には、浚渫船が記載されている。この浚渫船では、土砂を掴むグラブバケットが主ワイヤによって吊り下げられており、主ワイヤは主ワイヤ巻取ウインチに連結されている。主ワイヤ巻取ウインチが回転・逆回転することで、主ワイヤに連結されたグラブバケットが巻き上げ・巻き下げされる。湾岸の底面の土砂等を浚う際には、グラブバケットを巻き下げてグラブバケットで土砂等を掴み、その後、グラブバケットを巻き上げる。
【0003】
通常、浚渫船が浚った土砂は浚渫船に横付けされた土砂運搬船に移される。このため、浚渫船はターンテーブルなどのグラブバケットを旋回させるための機構を有する。浚渫船は、グラブバケットにより土砂を浚った後、グラブバケットを旋回させて土砂運搬船の上に移動させ、そこでグラブバケットを開く。
【0004】
特許文献2には、クレーン一般に用いられるハイブリッド電源装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭63−100554号公報
【特許文献2】特開2009−11021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
グラブバケットの昇降装置(クレーン)に二次電池を導入してハイブリッド化すると、その昇降装置に電力を供給するエンジン発電機を小型化できるが、エンジン発電機からの電力を受けて各種モータを駆動する電源装置は少なくとも二次電池の分だけ大型化する。電源装置が大型化すると、グラブバケットを旋回させる際の昇降装置の旋回半径が大きくなり、使い勝手が悪化しうる。
【0007】
このような課題は、グラブバケットを昇降させる昇降装置以外の旋回式の昇降装置でも発生しうる。
【0008】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的はより使い勝手の良い旋回式の昇降装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のある態様は昇降装置に関する。この昇降装置は、吊り上げるべき対象に接続されたワイヤを中継するシーブと、ワイヤが巻き付けられているドラムと、ドラムを回転させるモータと、を有するウインチと、ウインチが対象を上昇させる際、モータに電力を供給し、ウインチが対象を下降させる際、モータで発電された電力を二次電池に蓄電する電源装置と、ウインチと電源装置とを一体として所定の旋回軸の周りで旋回させる旋回機構と、を備える。電源装置は、旋回軸とシーブとを含む仮想的な平面から離れた箇所に配置される。
【0010】
この態様によると、電源装置からの旋回半径への寄与を抑えることができる。
【0011】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を装置、方法、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、より使い勝手の良い旋回式の昇降装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1の実施の形態に係る昇降装置を備える浚渫船の側面図である。
【図2】図1の第1電源装置の機能および構成を示す回路ブロック図である。
【図3】図1の昇降装置の平面図である。
【図4】第1変形例に係る昇降装置の平面図である。
【図5】第2変形例に係る昇降装置を備える浚渫船の側面図である。
【図6】第2の実施の形態に係る昇降装置を備える浚渫船の側面図である。
【図7】図6の昇降装置の背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0015】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態に係る昇降装置(クレーン)100を備える浚渫船10の側面図である。昇降装置100は浚渫船10の船体12の上に設けられる。昇降装置100は、吊り上げるべき対象すなわちグラブバケット14の旋回、昇降、開閉を行う。グラブバケット14には支持ワイヤ102の一端と開閉ワイヤ104の一端とが接続される。グラブバケット14は支持ワイヤ102によって空中に支持される。グラブバケット14は開閉ワイヤ104が巻き上げられることにより、刃が閉じる閉状態となる。
【0016】
昇降装置100は、支持ワイヤ102と、開閉ワイヤ104と、旋回台106と、旋回駆動部108と、ジブ110と、起伏ワイヤ112と、起伏ウインチ114と、支持ウインチ116と、開閉ウインチ118と、中継フレーム120と、ジブ先シーブ122と、第1電源装置124と、第2電源装置125(図1では不図示)と、カウンターウエイト140と、を含む。
【0017】
ジブ110の一端は旋回台106に起伏可能に取り付けられる。ジブ110の他端には起伏ワイヤ112の一端が取り付けられる。ジブ110の他端にはジブ先シーブ122が回転可能に取り付けられる。ジブ先シーブ122は、支持ワイヤ102および開閉ワイヤ104を中継する。
【0018】
起伏ウインチ114、支持ウインチ116および開閉ウインチ118はそれぞれ旋回台106に取り付けられる。起伏ウインチ114は、起伏ワイヤ112を巻き上げ、ないし繰り出すことでジブ110を起伏させる。支持ウインチ116は支持ワイヤ102を巻き上げ、ないし繰り出すことでグラブバケット14を昇降させる。以下、支持ウインチ116がグラブバケット14を上昇させるときの昇降装置100のモードを巻き上げモード、下降させるときのモードを巻き下げモードと称す。
【0019】
開閉ウインチ118は、巻き上げモードにおいて、開閉ワイヤ104を巻き上げることでグラブバケット14を閉状態とする。開閉ウインチ118の巻き上げが緩められるとグラブバケット14は刃が開く開状態となる。例えば、巻き下げモードにおいては開閉ウインチ118の巻き上げが緩められた状態でグラブバケット14が下降する。
起伏ワイヤ112、支持ワイヤ102および開閉ワイヤ104はそれぞれ中継フレーム120によって中継される。
【0020】
起伏ウインチ114、支持ウインチ116および開閉ウインチ118はそれぞれ、起伏ワイヤ112、支持ワイヤ102、開閉ワイヤ104が巻き付けられている起伏ドラム114a、支持ドラム116a、開閉ドラム118aと、そのドラムを回転させる2つの起伏モータ、2つの支持モータ、2つの開閉モータ(いずれも不図示)と、を有する。
【0021】
旋回駆動部108は、2つの旋回モータ(不図示)を使用して、旋回台106を所定の旋回軸Rの周りに旋回させる。第1電源装置124、第2電源装置125、起伏ウインチ114、支持ウインチ116、開閉ウインチ118はいずれも旋回台106に取り付けられているので、旋回駆動部108はそれらを一体として旋回軸Rの周りで旋回させると言える。
【0022】
カウンターウエイト140は旋回台106の反負荷側に取り付けられる。すなわち、カウンターウエイト140は旋回軸Rを挟んでジブ先シーブ122と対向する位置に設けられる。旋回台106の負荷側には不図示の運転室が設けられる。
【0023】
図2は、第1電源装置124の機能および構成を示す回路ブロック図である。第1電源装置124は、巻き上げモードにおいて支持ウインチ116および開閉ウインチ118に電力を供給し、巻き下げモードにおいて支持ウインチ116および開閉ウインチ118で発電された回生電力を二次電池すなわちバッテリ142に蓄電する。第1電源装置124は、第1コンバータ156と、第2コンバータ154と、バッテリ142と、支持インバータ148と、開閉インバータ144と、起伏インバータ151と、旋回インバータ150と、制動ユニット146と、抵抗器134と、を含む。
【0024】
エンジン発電機126は船体12内に収納され、ダイオードコンバータ127に交流の電力を供給する。
ダイオードコンバータ127は交流電力を直流電力に変換して第1電源装置124へ供給する。第1コンバータ156は、巻き上げモードにおいて、エンジン発電機126側から供給される直流の電力を受け、その電圧を変換(昇圧)して支持インバータ148および開閉インバータ144に供給する。第1コンバータ156は、旋回駆動部108が旋回台106の旋回を開始するときおよび旋回中に、エンジン発電機126側から供給される直流の電力を受け、その電圧を変換(昇圧)して旋回インバータ150に供給する。
【0025】
第1コンバータ156は、巻き下げモードにおいて、支持ウインチ116および開閉ウインチ118で発電された回生電力をそこで阻止して通過させないようにする。これにより、巻き下げモードにおいて発電された回生電力は、エンジン発電機126に逆流しない。旋回駆動部108が旋回台106の旋回を停止するときも同様に第1コンバータ156は、旋回駆動部108で発電された回生電力をそこで阻止する。
【0026】
第2コンバータ154は、巻き上げモードにおいて、バッテリ142から供給される直流の電力を受け、その電圧を変換(昇圧)して支持インバータ148および開閉インバータ144に供給する。第2コンバータ154は、旋回駆動部108が旋回台106の旋回を開始するときおよび旋回中に、バッテリ142から供給される直流の電力を受け、その電圧を変換(昇圧)して旋回インバータ150に供給する。
【0027】
第2コンバータ154は、巻き下げモードにおいて、支持インバータ148および開閉インバータ144から出力される回生電力を受け、受けた回生電力を使用してバッテリ142を充電する。第2コンバータ154は、旋回駆動部108が旋回台106の旋回を停止するとき、旋回インバータ150から出力される回生電力を受け、受けた回生電力を使用してバッテリ142を充電する。
【0028】
支持インバータ148は、巻き上げモードにおいて、第1コンバータ156および第2コンバータ154から供給される直流の電力を交流の電力に変換して支持ウインチ116の一方の支持モータに供給する。支持インバータ148は、巻き下げモードにおいて、一方の支持モータで発電された回生電力を第2コンバータ154に出力する。
【0029】
開閉インバータ144は、巻き上げモードにおいて、第1コンバータ156および第2コンバータ154から供給される直流の電力を交流の電力に変換して開閉ウインチ118の一方の開閉モータに供給する。開閉インバータ144は、巻き下げモードにおいて、一方の開閉モータで発電された回生電力を第2コンバータ154に出力する。
【0030】
起伏インバータ151は、ジブ110を起伏させる際に、第1コンバータ156から供給される直流の電力を交流の電力に変換して起伏ウインチ114の一方のモータに供給する。
【0031】
旋回インバータ150は、旋回駆動部108が旋回台106の旋回を開始するときおよび旋回中に、第1コンバータ156および第2コンバータ154から供給される直流の電力を交流の電力に変換して旋回駆動部108の一方の旋回モータに供給する。旋回インバータ150は、旋回駆動部108が旋回台106の旋回を停止するとき、一方の旋回モータで発電された回生電力を第2コンバータ154に出力する。
【0032】
制動ユニット146は回生電力を放電する必要がある場合に起動される補助的なユニットである。制動ユニット146は、放電すべき回生電力の電圧や電流を調整し、抵抗器134に入力する。このようにして、放電すべき回生電力は、抵抗器134によってジュール熱として散逸される。
第2電源装置125は第1電源装置124と同様の構成を有する。第2電源装置125は、他方の支持モータ、他方の開閉モータ、他方の旋回モータおよび他方の起伏モータと接続される。
【0033】
図3は、昇降装置100の平面図である。旋回軸Rとジブ先シーブ122とを含む仮想的な平面を第1平面S1と称す。旋回軸Rを含み第1平面S1と直交する仮想的な平面を第2平面S2と称する。
第1電源装置124および第2電源装置125はそれぞれ、第1平面S1から所定の距離D1、D2だけ離れた箇所に配置される。すなわち、第1平面S1の一方の側を右側、他方の側を左側とすると、バッテリ142を含む第1電源装置124は旋回台106の右側の側面に設けられ、同じくバッテリを含む第2電源装置125は旋回台106の左側の側面に設けられる。
【0034】
第2平面S2のジブ先シーブ122が設けられている側を前側、そうでない側を後ろ側とする。旋回台106が旋回軸Rの周りに旋回する際、旋回台106の後部側が掃引する平面領域を後部旋回領域200、その境界である円弧を含む円を後部旋回円202と称す。後部旋回円202の半径は後部旋回半径である。
【0035】
第1電源装置124および第2電源装置125はいずれも後部旋回領域200内に配置される。本実施の形態では、第1電源装置124および第2電源装置125はいずれも、後部旋回円202からはみ出さない限りにおいて後部旋回円202にできる限り近づけて配置されている。したがって、第1電源装置124および第2電源装置125の重心G1は第2平面S2の後ろ側に位置し、特に重心G1と第2平面S2との距離は、第1電源装置124および第2電源装置125が後部旋回円202からはみ出さない限りにおいて最大化されている。
【0036】
第1電源装置124の重量は第2電源装置125の重量と実質的に等しく、第1電源装置124と第1平面S1との距離D1は第2電源装置125と第1平面S1との距離D2と実質的に等しい。したがって、第1電源装置124および第2電源装置125の重心G1は実質的に第1平面S1内に位置する。
【0037】
以上のように構成された昇降装置100の動作について説明する。昇降装置100は、支持ワイヤ102および開閉ワイヤ104を繰り出すことにより、グラブバケット14を海底まで降ろす。昇降装置100は、開閉ワイヤ104を巻き上げることにより、グラブバケット14を閉状態とする。このグラブバケット14を閉じる動作により、海底の土砂が浚われる。昇降装置100は、支持ワイヤ102および開閉ワイヤ104を巻き上げることにより、浚った土砂を含むグラブバケット14を上昇させる。昇降装置100は旋回台106を旋回させることにより、グラブバケット14を不図示の土砂運搬船の上に移動させる。昇降装置100は、開閉ワイヤ104を緩めることによりグラブバケット14を開き、浚った土砂を土砂運搬船に移す。
【0038】
昇降装置における電源装置の配置として、電源装置をカウンターウエイトとして使用するために、電源装置をカウンターウエイトに代えてまたはそれに加えて旋回台の後部に配置することが考えられる。しかしながらこの場合、電源装置の大きさに応じて後部旋回半径が大きくなってしまう。これは昇降装置の大型化を招きうる。特にそのような昇降装置を船舶に搭載する場合、船舶上の貴重なスペースのより多くが昇降装置によって占められることとなり、好ましくない。
【0039】
これに対して本実施の形態に係る昇降装置100では、第1電源装置124および第2電源装置125はいずれも第1平面S1から離れた箇所に配置される。したがって後部旋回半径を増大させることなく、第1電源装置124、第2電源装置125を後部旋回領域200内に収めることができる。その結果、より小型で使い勝手の良い昇降装置100が提供されうる。
【0040】
特に本実施の形態に係る昇降装置100はバッテリ142を使用するハイブリッド型の昇降装置である。したがって、そうでないものよりも、少なくともバッテリ142およびバッテリ142のための第2コンバータ154の分だけ電源装置のサイズが大きくなる傾向にある。このような状況において、本実施の形態に係る電源装置の配置を採用すると、後部旋回半径の増大を抑え、昇降装置100全体の大型化を抑制することができる。
【0041】
また、第1電源装置124および第2電源装置125はそれなりに重いので、旋回台106の後部に配置するとまではいかないまでも、それらをできる限りカウンターウエイトとして使用できると好適である。そこで本実施の形態に係る昇降装置100では、第1電源装置124および第2電源装置125は、それらの重心G1が第2平面S2の後ろ側に位置するよう配置される。これにより、第1電源装置124および第2電源装置125は、ジブ110、ジブ先シーブ122、グラブバケット14に対するカウンターウエイトとして作用する。
【0042】
第1電源装置124および第2電源装置125がカウンターウエイトとして作用する分、カウンターウエイト140を小型化および軽量化できる。したがって、後部旋回半径を小さくして昇降装置100をより小さくでき、また昇降装置100全体の重量を抑制できる。
【0043】
また、本実施の形態に係る昇降装置100では、第1電源装置124と第2電源装置125とは第1平面S1を挟んで反対側に配置される。このように電源装置を複数に分割し、後部旋回領域200内に分散して配置することで、1つの大きな電源装置を後部旋回領域200内に配置する場合と比べて、電源装置配置のために後部旋回領域200をより効率よく使用できる。
【0044】
また、本実施の形態に係る昇降装置100では、第1電源装置124および第2電源装置125は、その重心G1が実質的に第1平面S1内に位置するよう配置される。したがって、偏荷重の発生を抑制でき、昇降装置100のバランスがよりよくなる。
【0045】
図4は、第1変形例に係る昇降装置170の平面図である。昇降装置170は、第1の実施の形態に係る第1電源装置124の機能および第2電源装置125の機能を併せ持つ電源装置172をひとつ備える。電源装置172は、第1平面S1から離れた箇所すなわち旋回台106の右側の側面に配置される。また、電源装置172は、その重心G2が第2平面S2の後ろ側に位置するよう配置される。
【0046】
本変形例によると、電源装置172が第1平面S1から離れた箇所に配置される点および重心G2が第2平面S2の後ろ側に位置する点について第1の実施の形態と同様の作用効果が奏される。
【0047】
あるいはまた、電源装置を旋回軸Rに沿って積み重ねて配置してもよい。図5は、第2変形例に係る昇降装置182を備える浚渫船180の側面図である。昇降装置182は第1電源装置184と第2電源装置186とを備える。第1電源装置184、第2電源装置186はそれぞれ第1の実施の形態に係る第1電源装置124、第2電源装置125に対応する。
【0048】
第1電源装置184は旋回台106の右側の側面に設けられ、第2電源装置186は第1電源装置184の上に積み重ねられている。
本変形例によると、第1電源装置184および第2電源装置186がいずれも第1平面S1から離れた箇所に配置される点、第1電源装置184および第2電源装置186の重心が第2平面S2の後ろ側に位置する点、および電源装置が分割されている点について第1の実施の形態と同様の作用効果が奏される。
【0049】
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態では、支持ウインチ116および開閉ウインチ118が旋回台106の上面に並べて配置される場合について説明した。第2の実施の形態では、支持ウインチ304および開閉ウインチ306が旋回軸Rに沿って配列される。これにより、支持ウインチ304および開閉ウインチ306を配置するために必要な旋回台106上の領域を小さくできる。
【0050】
図6は、第2の実施の形態に係る昇降装置302を備える浚渫船300の側面図である。起伏ウインチ114は旋回台106の上面に取り付けられる。支持ウインチ304および開閉ウインチ306は旋回台106の後ろ側にウインチフレーム308を介して取り付けられる。支持ウインチ304および開閉ウインチ306は、旋回軸Rに沿って積み重ねて配置される。開閉ウインチ306は支持ウインチ304の上に配置される。
【0051】
開閉ワイヤ104は例えばグラブバケット14の降下時に緩んでたるむことがある。したがって、そのたるみと支持ワイヤ102とが干渉しないよう、昇降装置302は支持ワイヤ102が開閉ワイヤ104の上に位置するよう構成される。
【0052】
支持ウインチ304は支持ワイヤ102を巻き上げ、ないし繰り出すことでグラブバケット14を昇降させる。開閉ウインチ306は、巻き上げモードにおいて、開閉ワイヤ104を巻き上げることでグラブバケット14を閉状態とする。開閉ウインチ306の巻き上げが緩められるとグラブバケット14は刃が開く開状態となる。
【0053】
図7は、昇降装置302の背面図である。ウインチフレーム308は、旋回台106の上面に立設された2つの支持部308a、308bと、それら2つの支持部308a、308bによってカウンターウエイト140の上方に支持されるウインチ基部308cと、を含む。ウインチ基部308cの下面には2つの支持軸受312が立設される。2つの支持軸受312は支持ドラム304aを回転可能に支持する。支持ドラム304aの回転は、支持減速機314と、支持減速機314の下側に取り付けられた支持ブレーキ316、2つの支持モータ310と、によって制御される。ウインチ基部308cの上面には2つの開閉軸受318が立設される。2つの開閉軸受318は開閉ドラム306aを回転可能に支持する。開閉ドラム306aの回転は、開閉減速機320と、開閉減速機320の上側に取り付けられた開閉ブレーキ322、2つの開閉モータ324と、によって制御される。
【0054】
本実施の形態に係る昇降装置302によると、第1の実施の形態に係る昇降装置100と同様の作用効果が奏される。加えて、支持ウインチ304および開閉ウインチ306は旋回台106の後ろ側に旋回軸Rに沿って配列されるので、旋回半径方向の張り出しを抑えて旋回半径を小さくできる。また、支持ウインチ304および開閉ウインチ306をカウンターウエイトとしてより有効に作用させることができる。
【0055】
特に支持ウインチ304および開閉ウインチ306は両方とも旋回台106の後部旋回半径の限界に設置されうるので、小さな重量でもカウンターウエイトとして大きな役割を果たす。その結果、昇降装置302全体の重量をより小さくできる。
【0056】
以上、実施の形態に係る昇降装置およびそれが搭載される浚渫船について説明した。これらの実施の形態は例示であり、それらの各構成要素の組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0057】
第1および第2の実施の形態では、昇降装置が電源装置を2つ備える場合について説明したが、これに限られず、電源装置を任意の数に分割して後部旋回領域200内に配置してもよい。
【0058】
第1および第2の実施の形態では、第1電源装置124と第2電源装置125とは同様の構成を有する場合について説明したが、これに限られず、それらは異なる構成を有してもよい。例えば第1電源装置が支持モータおよび起伏モータと接続され、第2電源装置が開閉モータおよび旋回モータと接続されてもよい。
【0059】
第1および第2の実施の形態では、エンジン発電機126を使用する場合について説明したが、これに限られず、任意の発電機が使用されてもよい。
【0060】
第1および第2の実施の形態では、各モータは交流駆動のモータである場合について説明したが、これに限られず他の駆動形式、例えば直流駆動のモータが使用されてもよい。
【0061】
第1および第2の実施の形態では浚渫船に搭載される昇降装置を説明したが、これに限られず、第1または第2の実施の形態に係る技術的思想はジブクレーンを含む旋回式クレーン一般や浚渫機や杭打ち機等にも適用可能である。また、船舶に搭載される昇降装置以外にも、陸上に設置される昇降装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0062】
10 浚渫船、 12 船体、 14 グラブバケット、 100 昇降装置、 102 支持ワイヤ、 104 開閉ワイヤ、 106 旋回台、 110 ジブ、 116 支持ウインチ、 118 開閉ウインチ、 124 第1電源装置、 125 第2電源装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吊り上げるべき対象に接続されたワイヤを中継するシーブと、
前記ワイヤが巻き付けられているドラムと、前記ドラムを回転させるモータと、を有するウインチと、
前記ウインチが前記対象を上昇させる際、前記モータに電力を供給し、前記ウインチが前記対象を下降させる際、前記モータで発電された電力を二次電池に蓄電する電源装置と、
前記ウインチと前記電源装置とを一体として所定の旋回軸の周りで旋回させる旋回機構と、を備え、
前記電源装置は、前記旋回軸と前記シーブとを含む仮想的な平面から離れた箇所に配置されることを特徴とする昇降装置。
【請求項2】
前記旋回軸を含み前記平面と直交する仮想的な別の平面の、前記シーブが設けられていない側を後ろ側と称すとき、
前記電源装置は、前記電源装置の重心が前記別の平面の後ろ側に位置するよう配置されることを特徴とする請求項1に記載の昇降装置。
【請求項3】
前記電源装置は、前記平面の一方の側に配置された第1電源装置と、前記平面の他方の側に配置された第2電源装置と、を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の昇降装置。
【請求項4】
前記電源装置は、前記電源装置の重心が実質的に前記平面内に位置するよう配置されることを特徴とする請求項3に記載の昇降装置。
【請求項5】
前記対象はグラブバケットであり、
前記ウインチが前記グラブバケットを上昇させる際、前記グラブバケットに接続された別のワイヤを巻き上げることで前記グラブバケットを閉状態とする別のウインチをさらに備え、
前記旋回軸を含み前記平面と直交する仮想的な別の平面の、前記シーブが設けられていない側を後ろ側と称すとき、
前記ウインチおよび前記別のウインチは、前記別の平面の後ろ側に前記旋回軸に沿って配列されることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の昇降装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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