説明

易溶性固形飲料の製造方法

【課題】水またはお湯に添加することにより、容易に溶解又は均一に分散しうる、成型された易溶性固形飲料を提供する。
【解決手段】易溶性固形飲料の製造方法として、起泡剤、トレハロース、砂糖および水を含む起泡組成物を成型し乾燥する。好ましくは、起泡剤として、乳清タンパク質を使用する。製造時、起泡組成物に含まれる水分量が5〜30重量%である。トレハロースと砂糖の配合割合が、1:4〜4:1である。更に増粘剤、好ましくは、キサンタンガム、グァーガム、ローカストビーンガム及びカラギナンから選ばれる1種又は2種以上を併用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質構造を有する易溶性固形飲料に関する。詳細には、水またはお湯に添加することにより、容易に溶解又は均一に分散しうる、成型された易溶性固形飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水やお湯に加えて直ちに溶解・分散する粉末タイプのインスタント飲料が種々検討されている。しかし、粉末タイプであるとスプーンですくう時に粉末が飛散したり、また、一杯分の分量がわかりにくいことがある。また、一杯分毎に個包装されたものであっても、カップに注ぐ際に粉末をこぼしたりすることがあった。そこで、固形飲料について、前記のような粉末状ではなく、例えばキャンデーのような固形の形状であり、一杯毎の分量が固形物一個分となり、一杯毎の分量が分かり易く、しかも、水やお湯に速やかに溶けるか或いは分散する固形飲料が要望されている。
【0003】
一方、固形飲料に関して、起泡剤などを使用して膨化させ、多孔質構造とする固形飲料についても検討されている。例えば、(1)コーヒー、緑茶等の嗜好性飲料の水溶性又は水分散性の有効成分と、(2)食品用起泡剤と、(3)甘味料糖類の少なくとも1つと水との混合物を煮詰めた飴状物と(4)水、とを含有し、かつ起泡した水性組成物を、減圧下に乾燥することを特徴とする多孔質構造を有する易溶性固形飲料の製造法(特許文献1)などがある。しかし、飴状物を調製するのに100℃以上の高温で煮詰める工程や、減圧乾燥する工程などの煩雑な工程を要しており、また、多孔質構造は有しているものの、成型はされておらず、依然として得られた固形飲料の飛散性などの問題もあった。
【0004】
【特許文献1】特公昭51−46822号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、水やお湯に加えて、容易に溶解又は均一に分散しうる、易溶性の固形飲料であって、一杯分毎に成型され、取扱がし易くなった易溶性固形飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、起泡剤、トレハロース、砂糖および水を含む起泡組成物を成型し乾燥する方法によって製造することにより、上記課題が解決した、成型された易溶性固形飲料が得られることを見いだした。更に、起泡剤として、乳清タンパク質を使用することにより、より安定な起泡組成物を調製することができ、製造時起泡組成物に含まれる水分量が5〜30重量%であり、トレハロースと砂糖の配合割合が、1:4〜4:1とすることにより良好な成型性および水やお湯への溶解・分散性を示すことを見いだした。更には、増粘剤を併用することで、最終的に調製する飲料にとろみを付与できる固形飲料を調製できるようになった。
【0007】
本発明は、以下の態様を有する;
項1.起泡剤、トレハロース、砂糖および水を含む起泡組成物を成型し乾燥することにより製造することを特徴とする易溶性固形飲料の製造方法。
項2.起泡剤として、乳清タンパク質を使用する項1に記載の易溶性固形飲料の製造方法。
項3.製造時起泡組成物に含まれる水分量が5〜30重量%である、項1又は2に記載の易溶性固形飲料の製造方法。
項4.トレハロースと砂糖の配合割合が、1:4〜4:1である、項1乃至3に記載のいずれかに記載の易溶性固形飲料の製造方法。
項5.更に増粘剤を併用する項1乃至4に記載のいずれかに記載の易溶性固形飲料の製造方法。
項6.項1乃至5のいずれかに記載の方法で製造された易溶性固形飲料。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、水またはお湯に添加することにより容易に溶解又は均一に分散しうる、成型された易溶性固形飲料を提供できるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の易溶性固形飲料は、起泡剤、トレハロース、砂糖および水を含む起泡組成物を成型し乾燥することにより製造することを特徴とする。
【0010】
本発明で言う易溶性固形飲料とは、水やお湯に添加すると容易に溶解又は均一に分散する、成型された固形飲料のことを言う。従来、インスタントの固形飲料は粉末のものが多かったが、本発明の易溶性固形飲料は成型されているため、例えば、飲料一杯毎に1個となるように成型することが可能であり、実際の飲料調製時に、スプーンなどが必要なく、容易に一杯の分量が判り、飲料を調製しやすくなったものである。
【0011】
本発明で使用する起泡剤としては、WPC、WPI等の乳清タンパク質、大豆、小麦、卵白等のタンパク質およびそれらの加水分解物、カゼインナトリウム、キラヤサポニン、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル等の乳化剤が挙げられ、これらから1種又は2種以上を選択して使用することが出来る。中でも乳清タンパク質を使用するのが好ましい。起泡剤の添加量としては、固形飲料調製時における乾燥前の全量に対し、0.5〜10重量%、好ましくは1〜5重量%、更に好ましくは2〜4重量%を挙げることができる。
【0012】
本発明では、易溶性固形飲料を製造する際、トレハロースおよび砂糖を使用する。トレハロースは乾燥製品の吸湿を抑制し、水やお湯などに溶解した場合の復水性も良好であり、また、味質的にも甘味度が低く、あっさりとした甘味で好ましい。また、砂糖はグラニュー糖、粉糖などどのような形態でもよいが、好ましくは粉糖を使用する。
【0013】
トレハロース及び砂糖の配合割合であるが、1:4〜4:1、好ましくは、3:2〜2:3となるように配合するのが好ましい。当該配合割合にすることにより、成型性がよく、製造した固形飲料の吸湿を抑制できるからである。また、トレハロースおよび砂糖の添加量としては、前記配合割合で、固形飲料調製時における乾燥前の全量に対し、それぞれ、トレハロース10〜75重量%、好ましくは、10〜40重量%、更に好ましくは20〜30重量%、粉糖10〜75重量%、好ましくは、30〜50重量%、更に好ましくは35〜45重量%を挙げることができる。
【0014】
本発明では、起泡剤、トレハロース、砂糖および水を合わせて攪拌混合して起泡物を生成するが、製造時起泡組成物に含まれる水分量が、固形飲料調製時における乾燥前の全量に対し、5〜30重量%、好ましくは10〜25重量%となるように水分量を調整するのが好ましい。当該水分量に調製することにより、成型、乾燥した際の保型性が良好になる。
【0015】
本発明の易溶性固形飲料は、起泡剤、トレハロース、砂糖および水を含む起泡組成物を成型し乾燥することにより製造することを特徴とする。トレハロース、砂糖および水を含む起泡組成物の調製方法として、起泡剤、トレハロース、砂糖およびその他の原料の一部または全てと混合して、含気処理をし、起泡含有組成物を調製する。
【0016】
含気処理方法としては、気泡を含ませる操作であり、結果として気泡が入る方法であれば特に制限されない。例えば各種の慣用の攪拌機(ホイッパー、ビーター、ミキサー、カッティングマシーン等)を用いて気泡を抱き込むように対象物を攪拌するか、または気泡を吹き込みながら対象物を攪拌する方法、各種の泡立て器を用いて対象物を泡立てる方法等を任意に用いることができる。
【0017】
なお、本発明では含気処理により得られた起泡組成物の比重を0.6〜0.7程度に調製することが好ましい。
【0018】
成型の方法としては、例えば、スターチモールドに充填する方法等の公知の方法が挙げられる。乾燥の方法としても、乾燥機による乾燥、凍結乾燥、減圧乾燥などの公知の方法が挙げられる。例えば、乾燥機による乾燥方法では、40〜80℃の乾燥機で、8〜24時間程度乾燥させる方法を挙げることができる。
【0019】
本発明では、更に、易溶性固形飲料に増粘剤を添加することにより、当該固形飲料に水やお湯に溶解した飲料にとろみを付与することができ、水や既存の液状食品に添加すると、常温の液状食品にも容易に溶解し、急激に高い粘度を発現する。
【0020】
増粘剤としては、可食性で、増粘する性質を有し、粉末状態で水に溶解或いは分散する性質を持つものであれば特に限定されない。具体的には、キサンタンガム、グァーガム、ローカストビーンガム、カラギナン、タラガム、カシアガム、グルコマンナン、ネイティブ型ジェランガム、脱アシル型ジェランガム、タマリンドシードガム、ペクチン、サイリウムシードガム、ゼラチン、トラガントガム、カラヤガム、アラビアガム、マクロホモプシスガム、ラムザンガム、ガッティガム、寒天、アルギン酸類(アルギン酸、アルギン酸塩)、カードラン、プルラン、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)ナトリウム、カルボキシメチルセルロース(CMC)カルシウム、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、微結晶セルロース、発酵セルロース、微小繊維状セルロース等のセルロース誘導体、水溶性ヘミセルロース、大豆多糖類、加工・化工でん粉、未加工・未化工でん粉(生でん粉)などから選ばれる1種又は2種以上を挙げることができる。
【0021】
好ましくは、キサンタンガム、グァーガム、ローカストビーンガム及びカラギナンから選ばれる1種又は2種以上を使用するのが好ましく、更に好ましくはキサンタンガムの組み合わせである。
【0022】
本発明の易溶性固形飲料は、緑茶、ウーロン茶、紅茶、コーヒー、果実ジュース、スポーツドリンク、スープ等あらゆる飲料に応用できる。特に、とろみを付与される飲料に好適に使用されるため、嚥下困難者用食品としても適している。
【0023】
本発明の易溶性固形飲料は、少なくとも前記成分を含有するものであればよいが、本発明の効果を奏する限りにおいて、他に任意の成分を配合することもできる。他の食品添加物、例えば、スクラロース、ソーマチン、アセスルファムカリウム、アスパルテーム等の高甘味度甘味料:エリスリトール、キシリトール、マルチトールなどの糖アルコール:ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンK等のビタミン類;鉄、カルシウム、マグネシウム等の各種ミネラル類:香料:着色料:調味料:日持向上剤:保存料;α、βアミラーゼ、α、βグルコシダ−ゼ、パパイン等の酵素;クエン酸、フマル酸、コハク酸等のpH調整剤;ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、レシチン、ポリソルベート等の乳化剤:等を添加することができる。
【実施例】
【0024】
以下、本発明の内容を以下の実施例等を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。また、特に記載のない限り「部」とは、「重量部」を意味するものとする。文中*印のものは、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製、文中※印は三栄源エフ・エフ・アイ株式会社の登録商標であることを示す。
【0025】
実施例1:固形とろみ飲料
下記処方のうち、水を万能攪拌機のボウルに秤量し、粉糖、トレハロース及び起泡剤の粉体混合物を投入し、ホイッパーを用いて63rpmで溶解した後、216rpmで2〜3分間泡立てる(比重0.6〜0.7)。更にキサンタンガムを添加して混合した後、スターチモールドに充填し、60℃の乾燥機にて12時間乾燥させて、固形とろみ飲料を調製した。
【0026】
出来上がった固形とろみ飲料1個(8g)を70℃のお湯100gに入れ、スプーンで約60秒間かき混ぜると溶解し、とろみが付与された飲料となった。
【0027】
処方例 部
粉糖 42
トレハロース 28
起泡剤(乳清タンパク質:ミルプロ※WP*) 3
キサンタンガム(サンエース※E−S*) 10
水 17
乾燥前収量 100
【0028】
実施例2:固形とろみ飲料(緑茶)
下記処方のうち、水を万能攪拌機のボウルに秤量し、粉糖、トレハロース、起泡剤及び抹茶の粉体混合物を投入し、ホイッパーを用いて63rpmで溶解した後、216rpmで2〜3分間泡立てる(比重0.6〜0.7)。更にキサンタンガム、緑茶エキスパウダー、香料を添加して混合した後、スターチモールドに充填し、60℃の乾燥機にて12時間乾燥させて、固形とろみ飲料を調製した。
【0029】
出来上がった固形とろみ飲料1個(8g)を70℃のお湯100gに入れ、スプーンで約60秒間かき混ぜると溶解し、とろみを有する緑茶となった。このようなとろみが付与された緑茶は、嚥下・咀嚼困難者用食品としても適用可能である。
【0030】
処方例 部
粉糖 42
トレハロース 28
起泡剤(乳清タンパク質:ミルプロ※WP*) 3
キサンタンガム(サンエース※E−S*) 10
FD中国緑茶エキスパウダーNO.16323* 2
抹茶 1.6
香料(リョクチャフレーバーNO.2121*) 0.3
水 13.1
乾燥前収量 100
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明により、水またはお湯に添加することにより容易に溶解又は均一に分散しうる、成型された易溶性固形飲料を提供できる。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
起泡剤、トレハロース、砂糖および水を含む起泡組成物を成型し乾燥することにより製造することを特徴とする易溶性固形飲料の製造方法。
【請求項2】
起泡剤として、乳清タンパク質を使用する請求項1に記載の易溶性固形飲料の製造方法。
【請求項3】
製造時起泡組成物に含まれる水分量が5〜30重量%である、請求項1又は2に記載の易溶性固形飲料の製造方法。
【請求項4】
トレハロースと砂糖の配合割合が、1:4〜4:1である、請求項1乃至3に記載のいずれかに記載の易溶性固形飲料の製造方法。
【請求項5】
更に増粘剤を併用する請求項1乃至4に記載のいずれかに記載の易溶性固形飲料の製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の方法で製造された易溶性固形飲料。

【公開番号】特開2006−109785(P2006−109785A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−302241(P2004−302241)
【出願日】平成16年10月15日(2004.10.15)
【出願人】(000175283)三栄源エフ・エフ・アイ株式会社 (429)
【Fターム(参考)】