説明

易開封性蓋

【課題】金属製蓋殻体からなる易開封性容器蓋を成形する際、プルリングの引っ張り上げにより引裂かれる開封線が成形時に破損することを防止する。
【解決手段】金属製蓋殻体1の頂板部7とスカート部9との境界部である湾曲部13に、内面からの刻設により形成されたスコアからなる一対の開封誘導線21,21が、間に頂板部を挟むようにして周方向に延び、更に、その舌片側の端部が、少なくとも、スカート部9の下部よりも上方に位置していると共に、スカート部9の下端に連続しており且つプルリング3に連なっている舌片11の両付け根部からは、それぞれ、スカート部9を上方に湾曲部13に向かって延びているが、少なくとも湾曲部13の周方向には延びていない開封開始線23,23が設けられており、開封開始線23は、外面からの刻設により形成されたスコアからなっていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、易開封性蓋に関するもので、より詳細には、金属製蓋殻体とプルリングとライナー材から成り、金属製蓋殻体に設けられた開封誘導線を切断して開封を行う易開封性蓋の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ビン等の容器に設けられる易開封性容器蓋として、金属製蓋殻体とプルリングとを備え、金属製蓋殻体の内面にライナー材が設けられ、さらに、金属製蓋殻体には、スコアにより一対の開封誘導線が設けられている構造のものが広く使用されている。このような易開封性容器蓋は、プルリングを引っ張り上げることにより、開封誘導線が引き裂かれ、この結果、格別の開封器具を用いることなく容易に容器蓋を容器から取り外すことが可能となっている。
【0003】
ところで、上記のような構造の易開封性容器蓋において、金属製蓋殻体のスカート部の下端には、さらに下方に延びている舌片が形成されており、この舌片に樹脂製或いは金属製のプルリングを形成した構造のものが広く使用されている(例えば特許文献1参照)。即ち、金属製蓋殻体に形成されている開封誘導線を引裂くために、プルリングを上方に引っ張り上げる際に、スカート部の下端に直接プルリングが設けられている場合には、スカート部の下端とプルリングとの連結部分が折り曲げられるため、プルリングが引き千切れてしまうという不都合を生じやすい。しかるに、スカート部の下端からさらに下方に延びている舌片を設け、この舌片にプルリングを設けた構造とすれば、プルリングを引っ張り上げたときに折り曲げられる部分は、舌片の付け根部分(舌片とスカート部との連結部分)となるため、プルリングの引き千切れを有効に防止することが可能となるというわけである。
【0004】
また、金属製蓋殻体に設けられている一対の開封誘導線は、金属製蓋殻体の頂板部からスカート部に延びており、プルリングを引っ張り上げることにより、スカート部に形成されている開封誘導線が引裂かれ、引き続いて頂板部に形成されている開封誘導線が引裂かれるようになっている。従って、スカート部に延びている一対の開封誘導線は、それぞれ、舌片の付け根部の両端にまで延びており、プルリングの引っ張り上げにより、スカート部からの開封誘導線の引裂きがスムーズに行われるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭63−138956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、易開封性容器蓋の金属製蓋殻体(頂板部とスカート部)に設けられている一対の開封誘導線は、適当な治具を用いて金属製蓋殻体の外面或いは内面からの刻設により形成され、例えば上記の特許文献1では、その図22や図23に示されているように、内面からの刻設により形成されている。
【0007】
しかしながら、開封誘導線を外面からの刻設或いは内面からの刻設の何れの方法により形成した場合においても、金属板を容器蓋の形態に成形する際に、この開封誘導線が破損してしまうという不都合がしばしば生じていた。即ち、易開封性容器蓋は、平板形状の金属板の所定位置に容器蓋の外面或いは内面となる側からの刻設により一対の開封誘導線を形成し、この状態で金属板を打抜くと同時に絞り乃至曲げ加工を行うことにより金属製蓋殻体を成形し、樹脂製のプルリングを設ける場合には、インサート成形等により金属製蓋殻体の舌片に樹脂製のプルリングを成形し、さらに金属製蓋殻体の頂板部内面にライナー材を固定することにより製造される。このようにして易開封性容器蓋を製造する際、特に所定形状に打ち抜かれた平板状の金属板を絞り乃至曲げ加工により、頂板部、スカート部及び舌片を有する金属製蓋殻体(容器蓋形状)に成形する際に、開封誘導線が形成されている部分がしばしば破損してしまうという問題があったのである。この現象は、容器蓋の容器からの取り外しを容易にするためには、頂板部を周方向に延びる開封誘導線をできるだけ外方に設ける場合に特に起こることが分かった。
【0008】
従って、本発明の目的は、プルリングの引っ張り上げにより引裂かれる一対の開封誘導線が金属製蓋殻体の頂板部及びスカート部に形成されている易開封性容器蓋において、容器蓋の成形時、特に打ち抜かれた金属板を容器蓋の形状に絞り乃至曲げ加工する際に、開封誘導線が形成されている部分の破損が有効に防止された構造を有する易開封性容器蓋を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、頂板部と、これに連なるスカート部と、スカート部の一部にその端縁より突出するように設けられた舌片とを備えている金属製蓋殻体;該舌片の下端部分から延びているプルリング;及び前記金属製蓋殻体の頂板部内面に固定されているライナー材;からなる易開封性蓋において、
前記金属製蓋殻体の頂板部とスカート部との境界部である湾曲部には、内面からの刻設により形成されたスコアからなる一対の開封誘導線が、間に頂板部を挟むようにして周方向に延び、更に、該一対の開封誘導線の前記舌片側の端部が、少なくとも、前記スカート部の下端よりも上方に位置していると共に、
前記舌片の両付け根部からは、それぞれカート部を上方に前記湾曲部に向かって延びているが、少なくとも前記湾曲部の周方向には延びていない開封開始線が設けられており、該開封開始線は、外面からの刻設により形成されたスコアからなっていることを特徴とする易開封性蓋が提供される。
【0010】
本発明の易開封性容器蓋においては、
(1)前記一対の開封誘導線の一方側の端部が、下方を指向しており且つその延長線上に、前記舌片の一方側及び他方側の付け根部が位置していると共に、該開封誘導線の下方延長線に沿って、若しくは該延長線の外側に位置するように、前記開封開始線が前記スカート部を上方に延びていること、
或いは
(2)前記一対の開封誘導線が、それぞれ、前記舌片の側面の軸方向延長線と2点で交わるようにスカート部を延びていると共に、該開封誘導線と交差するように、前記開封開始線か該開封開始線の延長線が前記スカート部を上方に延びていること、
という態様を採用することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の易開封性容器蓋においては、プルリングの引っ張り上げにより引裂かれる開封線が、それぞれ、金属製蓋殻体の頂板部とスカート部との境界部である湾曲部を延びている一対の開封誘導線と、金属製蓋殻体のスカート部の下端(舌片の両付け根部)から延びている一対の開封開始線とに機能分離している。容器口部に固定されたこの容器蓋を容器口部から取り外して容器口部を開封するには、プルリングを引っ張り上げていけばよく、この引っ張り上げにより、先ず舌片の付け根部のスカート部下端から延びている一対の開封開始線が引裂かれていき、この開封開始線の引裂きに連続して開封誘導線が引裂かれ、これにより、この容器蓋を容器口部から容易に取り外すことができる。
【0012】
本発明においては、上記のように機能分離された開封開始線と開封誘導線において、開封誘導線はスカート部の下部までは延ばさず、開封開始線はスカート部と頂板部との境界部である湾曲部の周方向には延ばさないように構成すると同時に、開封誘導線を金属製蓋殻体の内面からの刻設により形成し、開封開始線を金属製殻体の外面からの刻設により形成した点に顕著な特徴を有する。このようにして一対の開封誘導線及び一対の開封開始線を形成することにより、打抜き及び絞り乃至曲げ加工により金属製蓋殻体を成形する際の開封線が形成されている部分の破損を有効に防止することが可能となる。
【0013】
即ち、引裂きのための開封線が形成されている平板上の金属板を打抜き、引き続いて絞り乃至曲げ加工を行うと、頂板部とスカート部との境界部分となる湾曲部の上面には、その金属板を伸長せしめるような径方向の応力が発生し、該湾曲部の下面には、金属板(蓋殻体)を収縮せしめるような径方向の応力が発生する。従って、このような湾曲部を通り周方向に延びる開封線が外面からの刻設により形成されていると、この開封線の破損(例えば引き裂き)が容易に生じてしまう。開封線が刻設されている側に、これを引き伸ばすような応力が発生しているからである。しかるに、本発明によれば、頂板部とスカート部との湾曲部を周方向に延びている開封線(即ち、開封誘導線)は内面からの刻設により形成されているため、上記の不都合を有効に防止することができる。即ち、内面側に発生している応力は、金属板を収縮する方向に作用するものであり、開封誘導線が刻設されている内面側を引き伸ばす方向に作用するものではないため、絞り乃至曲げ加工時に発生する応力によって開封誘導線が形成されている部分に破損を生じることはないのである。また、スカート部の下端(舌片の付け根部)からスカート部を上方に延びている開封線、即ち開封開始線は、外面からの刻設により形成されているものであるが、この開封開始線は、少なくとも頂板部とスカート部との境界部である湾曲部の周方向には延びていないため、湾曲部の絞り乃至曲げ加工時に発生する上記の径方向に作用する応力により、この部分が破損するという問題は全く生じない。
【0014】
また、湾曲部を越えて、スカート部の絞り乃至曲げ加工に際しては、金属の平板状態から垂直状態への加工に伴って、垂直部とその外方に延びる水平部とで内側に突出した屈曲部が形成され、その屈曲部が徐々に下方に移動していき、垂直に延びるスカート部が形成される。
従って、このような曲げによりスカート部を形成する際には、スカート部の成形段階において、その下面側に、垂直部と水平部との境界部(即ち屈曲部)を伸長せしめるような応力が発生し、その上面側に、該境界部を収縮させるような応力が発生する。特に、下端において最も大きな応力が発生する。従って、スカート部の下端(舌片の付け根部)から延びている開封開始線が、前述した開封誘導線と同様、下面からの刻設により形成されていると、下面に発生した応力によって開封開始線が引裂かれて破損してしまうこととなる。しかるに、本発明においては、スカート部の下端(舌片の付け根部)から延びている開封開始線が外面からの刻設により形成されているため、上記の応力によって引裂かれて破損するという不都合を有効に防止できるのである。また、内面からの刻設により形成されている開封誘導線の前記舌片側の端部は、スカート部の下部にまでは延びていないため、上記の応力によって、この開封誘導線が引裂かれて破損するおそれもない。
【0015】
このように、本発明によれば、プルリングの引っ張り上げにより引裂かれる開封誘導線と開封開始線とを上記のような構造とすることにより、金属製蓋殻体を絞り乃至曲げ加工により形成する際の開封線の破損を有効に防止することができるのである。例えば、特許文献1のように、開封線を全て内面からの刻設により形成すると、スカート部の下端近傍部分において、開封線の破損を生じ易くなってしまうのである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の易開封性容器蓋の一部破断斜視図である。
【図2】図1の易開封性容器蓋の平面図である。
【図3】図1の易開封性容器蓋の側面図である。
【図4】図1の易開封性容器蓋の側断面図(図2のA−A断面図)である。
【図5】図1の易開封性容器蓋を容器口部に被せ、巻締める前の状態の要部を示す側断面図である。
【図6】図1の易開封性容器蓋を容器口部に被せて巻締めた後の状態の要部を示す側断面図である。
【図7】図2の易開封性容器蓋のB−B断面を拡大して示す図である。
【図8】容器口部に巻締め固定された図1の易開封性容器蓋を開封しているときの状態を示す図である。
【図9】図2の易開封性容器蓋のC−C断面でのスカート部を拡大して示す図である。
【図10】図1の易開封性容器蓋の金属製蓋体を成形する際の打抜き、絞り乃至曲げ工程のプロセスを示す図である。
【図11】図10のプロセスのプロセス(c)の要部を拡大して示す図である。
【図12】本発明の易開封性容器蓋における開封誘導線と開封開始線の位置関係の図1とは異なるパターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1乃至図5を参照して、この態様の本発明の易開封性容器蓋は、全体として1で示す金属製蓋殻体1と、樹脂製プルリング3と、ライナー材5とからなっている。
【0018】
金属製蓋殻体1は、頂板部7と、頂板部7に連なっているスカート部9と、スカート部9の下端から下方に突出している舌片11とからなっており、頂板部7とスカート部9との境界部は、その内面が容器口部上端のコーナー部に密着する部分であるため、湾曲部13となっている。また、舌片11は、図4から明らかな通り、樹脂製プルリング3が取り付けられるものであるため、その下方部分は、下方に向かって外方に傾斜した形状となっている。
【0019】
上記のような形状の金属製蓋殻体1は、金属板を所定形状に打抜き、後述する絞り乃至曲げ加工によって成形されるが、その金属素材としては、表面未処理鋼(ブラックプレート)、表面処理鋼、アルミニウム等の軽金属が使用される。表面処理鋼としては、鋼基質上に、リン酸処理、クロム酸処理等の化学処理;電解クロム酸処理等の化成処理;電解スズメッキ、電解亜鉛メッキ、電解クロムメッキ等の電解メッキ処理;溶融アルミニウムメッキ処理;溶融錫メッキ処理等の溶融メッキ処理;を行ったものが挙げられる。これらの内でも易開封性の点ではアルミニウムやアルミニウム合金が好ましく、その厚みは一般に0.15乃至0.25mmの範囲にあるのがよい。
【0020】
尚、絞り乃至曲げ加工に供する金属板の少なくとも蓋内面となる面は保護塗料で塗装される。塗料の適当な例は、熱硬化性樹脂塗料、例えばフェノール−ホルムアルデヒド樹脂、フラン−ホルムアルデヒド樹脂、キシレン−ホルムアルデヒド樹脂、ケトン−ホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ビスマレイミド樹脂、トリアリルシアヌレート樹脂、熱硬化型アクリル樹脂、シリコーン樹脂、油性樹脂、或いは熱可塑性樹脂塗料、例えば塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体部分ケン化物、塩化ビニル−マレイン酸共重合体、塩化ビニル−マレイン酸−酢酸ビニル共重合体、アクリル重合体、飽和ポリエステル樹脂等である。これらの脂肪塗料は単独でも2種以上の組合せでも使用される。
【0021】
また、樹脂製プルリング3は、その内部に舌片11の下端部分が埋め込まれるようにして形成されている。この樹脂製プルリング3を引っ張り上げることにより、金属製蓋殻体1を引裂いて、容器口部に巻締め固定された易開封性容器蓋(金属製蓋殻体1)を容器口部から取り除いて開封することができる。
【0022】
このような樹脂製プルリング3には、その上面に突出部15が設けられ、開封の際に舌片11が折れ曲がり、プルリング3がこの部分で、引き千切れてしまうことを防止している。また、プルリング3の両側に設けられた外側に延びる突部17は開封の際に指が滑って開封開始線(後述して説明する)の破断端部に当たることを防止している。
【0023】
また、樹脂製プルリング3は、このリング内に指を挿入して引っ張り上げるものであるため、その引っ張り上げ操作が容易に行い得るように、若干湾曲した形状となっている(特に図4参照)。さらに、樹脂製プルリング3の形状は指先の挿入が容易である限り任意のものであってよい。例えば円、楕円、長円、角の丸められた矩形等の任意の形をとり得ることができ、その厚み或いは幅は、一般に1.0乃至3.0mm程度の範囲にあるのがよい。
【0024】
樹脂製プルリング3を形成する樹脂素材としては、成形可能であり且つ適度な強度を確保できるものであれば特に制限されないが、一般に、高密度ポリエチレン又はアイソタクティックポリプロピレンであることが好ましく、特に好ましくは、密度が0.935乃至0.965g/cm、メルトフローレートが0.1乃至20g/10分の高密度ポリエチレンである。また、この樹脂素材には、少量の着色剤や滑剤乃至離型剤が配合されていてもよい。
【0025】
上記の樹脂製プルリング3は、一般に、上記の金属製蓋殻体1と別個に成形されてものを熱融着により舌片11に固定したり、或いは金属製蓋殻体1を型内に収容してのインサート成形等により成形される。インサート成形により樹脂製プルリング3を形成する場合には、舌片11の下方部分に1または複数の孔を形成しておくことにより、舌片11の上面側及び下面側の樹脂を一体化して、舌片11と樹脂製プルリング3との接合強度を一層向上させることができる。
【0026】
ライナー材5は、金属製蓋殻体1の頂板部7の内面に設けられており、金属製蓋殻体1から脱落しないように接合されている。このライナー材5は、ライニング可能でしかもクッション性及び密封性能を有する有機高分子、例えば樹脂やエラストマーから形成されている。好適なライナー材5は低密度ポリエチレンのような軟質樹脂またはエラストマーを使用することができ、この樹脂を溶融状態で施し、押圧成形してライナー形状に成形する。勿論ライナーとしては、軟質塩化ビニル樹脂やウレタン樹脂を用いることもできる。この場合にはプラスチゾルの形で回転して金属製蓋殻体1内(頂板部7の内面)に施され、次いで加熱ゲル化されてライナーとなる。
【0027】
尚、ライナー材5の周縁部5a、即ち、この容器蓋を容器口部に巻締め固定したときに容器口部の上端面に密着する部分は厚肉に形成されており、且つ上方からの押圧によって容器口部にぴったりと密着するように、この周縁部5aには、凹部5bが形成されている。
【0028】
上記のような構造の易開封性容器蓋は、図5に示されているように容器口部60に被せられ、次いで、図6に示されているように、所定の治具を用いて容器口部60に押し込み且つ容器口部60の外面に沿ってクリンプし、これにより、スカート部9の下端が容器口部60の上端の突部61の外面の下側にしっかりと係合し、この結果、金属製蓋殻体1は容器口部60にしっかりと固定され、また、上記のライナー材5の周縁部5aは押し潰され、容器口部60の上端面に密着し、良好なシールが確保されることとなる。
【0029】
上記のような構造の易開封性容器蓋においては、プルリング3を引っ張り上げたときに引裂かれる開封線を金属製蓋殻体1に設けられるが、本発明においては、この開封線を、一対の開封誘導線21,21と一対の開封開始線23,23とから形成し、始めに開封開始線23を引裂き、この引裂きに続いて開封誘導線21を引裂き、これにより、この容器蓋(金属製蓋殻体1)を容器口部から取り除くような構造となっている。
【0030】
図1、図2及び図3と共に、開封誘導線21及び開封開始線23の形態が示されている要部の拡大断面図である図7及び図8を併せて参照されたい。
【0031】
一対の開封誘導線21,21は、内面側からの刻設により形成されたものであり(特に図7参照)、頂板部7の中央部分を間に挟むようにして頂板部7とスカート部9との境界の湾曲部13を通って延びており、その一方側の端部21aは、下方を指向してスカート部9内に侵入しており、その延長線上に舌片11の付け根部が位置している。即ち、この開封誘導線21はスカート部9の下部にまでは延びておらず、開封開始線23の引裂きに続いて引裂かれるようになっている。
【0032】
一方、一対の開封開始線23は、上記の開封誘導線21とは逆に、外面側からの刻設により形成されたものであり(特に図8参照)、プルリング3の引っ張り上げにより引裂かれる。従って、この開封開始線23の引裂き開始点となる舌片11の付け根部(スカート部9との連結部)には、図1等に示されているように、ノッチ25,25が設けられており、プルリング3の引っ張り上げによる開封開始線23の引裂きが容易に開始されるようになっている。また、この開封開始線23の引裂きを介して上記の開封誘導線21の引裂きが行われるものであるため、この開封開始線23は、開封開始線23の引裂きがスムーズに開封誘導線21に伝達されるように、開封誘導線21の一方側端部21aの延長線と重なり合うようにして舌片11の付け根部分からスカート部9を上方に延びており、さらに、開封開始線23の端部23aは、湾曲部13には到達していないが(図3、図8参照)、湾曲部13に至る場合もある。この場合においても開封開始線23が周方向に延びる位置まで延びていなければ問題ない。また、一対の開封誘導線21,21は、舌片11のスカート部の上方から湾曲部13に至り、湾曲部13を離れる方向で上方に延び、湾曲部13を周方向に沿って延び、舌片11と反対側の湾曲部13から下方に延びて停止している。開封誘導線21が破断する虞を回避するためには、周方向に沿って延びる部分のみ内面側から設ければいいのであるが、開封開始線23から開封誘導線21への破断をスムーズに行うためには、開封誘導線21はスカート部9の上部乃至湾曲部13からから上方に延びていることが好ましい。
【0033】
上記の説明から理解されるように、容器口部60にクリンプされて固定されている容器蓋のプルリング3を引っ張り上げることにより、図8に示されているように、舌片11の付け根部の両端から延びている開封開始線23,23が引裂かれ、これにより舌片11と一体に開封開始線23,23の間にあるスカート部9aが捲り上げられていき、さらに開封開始線23,23の引裂きから開封誘導線21,21が引裂かれていき、プルリング3をさらに引っ張り上げていくことにより、開封誘導線21,21の引裂きが進行し、開封誘導線21,21の間に位置するライナー材5が金属製蓋殻体1と接着されているため、共に捲り上げられていく。従って、開封線21,21がある程度引裂かれた段階で、この容器蓋(金属製蓋殻体1)を容器口部60からすっぽりと取り外すことが可能となるのである。
【0034】
本発明においては、プルリング3の引っ張り上げにより引裂かれる開封線を、内面側からの刻設により形成され且つスカート部9の下部までは延びていない開封誘導線21,21と、外面側からの刻設により形成される開封開始線23,23とから形成することにより、打抜き、絞り乃至曲げ加工により金属製蓋殻体1を成形する際の開封線部分の破損を有効に防止することができる。
【0035】
既に述べた通り、金属製蓋殻体1は、金属板を打抜き、次いで絞り乃至曲げ加工することにより形成されるが、このような加工に供せられる金属板には、予め、カッター等を用いての刻設により開封線(開封誘導線21及び開封開始線23)が形成されている。即ち、この開封線が形成されている部分は薄肉のスコアとなっているため、この金属板を成形する際に開封線が形成されている部分の破損が問題となる。
【0036】
このような金属板の打抜き、絞り乃至曲げ加工のプロセスを示す図10、特に図10(a)を参照して、この加工を行う成形装置は、基台80と、基台の上方に配置され且つ上下動可能なパンチカッター81とからなっており、基台80上には、成形すべき金属板83(前述した開封線、即ち開封誘導線21と開封開始線23とが所定位置に既に形成されている)が保持されており、パンチカッター81は、その下方部分が金属製蓋体1を展開した形状に対応する外径を有する筒状形状となっており、その下端外周部は、鋭利な傾斜面となっている。
【0037】
基台80は、中央部にダイセンター85を備え、その周囲にはダイカッター87が配置されており、何れも位置固定されている。また、ダイセンター85の上端部外周縁(コーナー部)は、成形される金属製蓋殻体1における頂板部7とスカート部9との境界部である曲率部13に対応する曲率面となっている。
【0038】
ダイセンター85とダイカッター87との間の空間には、ダイリング89とプレッシャーリング90とが設けられており、ダイリング89がプレッシャーリング90とダイセンター85との間に挟持されるように配置されている。また、プレッシャーリング90は、一定幅で上下動可能に設けられており、ダイリング89は、ダイセンター85の側面に密着しながらプレッシャーリング90と共に上下動可能となっている。さらに、ダイリング90の上面は、舌片11に対応する傾斜面となっている。尚、プレッシャーリング90は、ダイリング89先端の傾斜面の傾斜角度よりなだらかな傾斜角度の先端面を設けることにより、スカート部9下端のしわの発生を防止している。
【0039】
上記のような基台80上に金属板83が配置された状態でパンチカッター81が降下し、その下端がダイセンター85とダイカッター87との間の空間に侵入して降下していくと、図10(b)に示されているように、金属板83は金属製蓋殻体1の展開形状に切断されることとなる。
また、パンチカッター81の降下に伴い、プレッシャーリング90が降下し、プレッシャーリング90の降下と一体にダイリングも降下していき、この過程で、切断された金属板83の周縁部分は、ダイセンター85のコーナー部に圧着されながら降下していくため、前述した頂板部7とスカート部9との境界部である湾曲部13が形成され、さらに、スカート部9及び舌片11に対応する部分が折り曲げられていくこととなる。
【0040】
引き続いてパンチカッター81を降下していくと、図10(c)に示されているように、切断された金属板83の周縁部分は、ダイセンター85の側面に沿って絞られていき、これによりスカート部9が形成されていく。
【0041】
さらに、パンチカッター81を降下させ、図10(d)に示されている位置までパンチカッター81が降下すると舌片11が形成され、かくして頂板部7、湾曲部13、スカート部9及び舌片11からなる金属製蓋殻体1が成形されることとなる。
【0042】
このような打抜き、絞り乃至曲げ加工の成形プロセスから理解されるように、この過程で開封線が形成されている金属板は、湾曲部13及びスカート部9の成形過程で、対応する部分で折り曲げられるため、曲げ応力が発生する。例えば、図10(c)のプロセスを部分的に拡大して示す図11に示されているように、湾曲部13を形成するためのダイセンター85のコーナー部85aに対面する部分では、外面側が伸長し且つ内面側が収縮するような曲げ応力が金属板83に発生する。また、スカート部9を形成するためのパンチカッター81とダイリング89及びとダイセンター85との境界部分では、上記とは逆に、外面側が収縮し且つ内面側が伸長するような曲げ応力が発生することとなる。そして、特に、スカート部下端近傍においては、スカート部9を絞る圧縮力が高くなるため、この曲げ応力が顕著となる。
【0043】
従って、湾曲部13に相当する部分に形成されている開封線が外面側からの刻設により形成されている場合には、外面側に発生した伸長する方向の曲げ応力によって、この開封線が広げられてしまい、引裂き等の破損を生じ易くなってしまう。また、スカート部の下端から延びている開封線が内面側からの刻設により形成されている場合には、内面側に発生した伸長する方向の曲げ応力によって、この開封線が広げられてしまい、引裂き等の破損を生じ易くなってしまうことが理解されよう。
【0044】
しかるに、本発明によれば、金属製殻体1に形成する開封線を、湾曲部13を延びている開封誘導線21と舌片11の付け根部分(スカート部9の下端)から上方に延びている開封開始線23とに機能分離し、湾曲部13を延びている開封誘導線21を内面側からの刻設により形成すると同時に、この開封誘導線21は、スカート部9の下部までは延ばさず、一方、スカート部の下端から延びている開封開始線23を外面側からの刻設により形成すると同時に、この開封開始線23は、湾曲部13までは延ばさないように形成することが好ましいが、若干湾曲部13に至ってもかまわない。従って、上記の成形プロセスにおいて、ダイセンター85のコーナー部85aに対面する部分及びダイリング89とダイセンター85との境界部分で発生する曲げ応力は、開封誘導線21及び開封開始線23の何れに対しても収縮する方向に作用し、伸長する方向に作用するものはなく、この結果、金属製蓋殻体1を成形する際の開封線(開封誘導線21及び開封開始線23)の破損を有効に防止することが可能となるのである。
【0045】
上述した本発明において、開封誘導線21と開封開始線23とは、開封開始線23の引裂きが開封誘導線21の引裂きに連続するような位置関係に設けることが必要である。このために、前述した例では、図3及び図8に示されているように、開封誘導線21の延長線と重なるように該延長線に沿って開封開始線23が形成されており、また、開封開始線23の端部23aは、若干、開封誘導線21の下側に入り込んでいる。
【0046】
勿論、開封誘導線21と開封開始線23との位置関係を上記以外のパターンとすることも可能であり、図12には、他のパターンの例を示した。
【0047】
即ち、図12(a)の例では、開封開始線23が開封誘導線21と交差するように形成されている。
また、図12(b)の例では、一対の開封誘導線21の端部21aが、一対の開封開始線23の間の領域に位置するような位置関係となっている。この場合、一対の開封開始線23の引裂き応力は、開始線23,23の中心側を指向するため、開封誘導線21の端部21aを開封開始線23,23の間の領域に存在させることにより、開封開始線23の引裂きが脱線せずに開封誘導線21に伝達されることとなる。
【0048】
さらに、上述した例では、プルリング3として樹脂製のものを用いた例を示したが、このプルリング3を金属製のものとすることも勿論可能である。金属製プルリング3を金属製蓋殻体1と一体に設ける場合には、図10に示すプロセスで成形を行う前に、プルリング形成部分を打ち抜けばよく、また、金属製プルリング3を金属製蓋殻体1と別体に設ける場合には、適当な治具を用いてプルリング3の部分をカール加工するのがよい。カール加工を行わないと、プルリング3の引っ張りに際して手切れ等の不都合を生じることがあるからである。
【0049】
上述した本発明の易開封性容器蓋は、ガラスビンやPETボトル等の容器の口部の密封に好適に適用される。
【符号の説明】
【0050】
1:金属製蓋殻体
3:プルリング
5:ライナー材
7:頂板部
9:スカート部
11:舌片
13:湾曲部
21:開封誘導線
23:開封開始線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
頂板部と、これに連なるスカート部と、スカート部の一部にその端縁より突出するように設けられた舌片とを備えている金属製蓋殻体;該舌片の下端部分から延びているプルリング;及び前記金属製蓋殻体の頂板部内面に固定されているライナー材;からなる易開封性蓋において、
前記金属製蓋殻体の頂板部とスカート部との境界部である湾曲部には、内面からの刻設により形成されたスコアからなる一対の開封誘導線が、間に頂板部を挟むようにして周方向に延び、更に、該一対の開封誘導線の前記舌片側の端部が、少なくとも、前記スカート部の下部よりも上方に位置していると共に、
前記舌片の両付け根部からは、それぞれ、スカート部を上方に前記湾曲部に向かって延びているが、少なくとも前記湾曲部の周方向には延びていない開封開始線が設けられており、該開封開始線は、外面からの刻設により形成されたスコアからなっていることを特徴とする易開封性蓋。
【請求項2】
前記一対の開封誘導線の一方側の端部が、下方を指向しており且つその延長線上に、前記舌片の一方側及び他方側の付け根部が位置していると共に、該開封誘導線の下方延長線に沿って、若しくは該延長線の外側に位置するように、前記開封開始線が前記スカート部を上方に延びている請求項1に記載の易開封性蓋。
【請求項3】
前記一対の開封誘導線が、それぞれ、前記舌片の側面の軸方向延長線と2点で交わるようにスカート部を延びていると共に、該開封誘導線と交差するように、前記開封開始線か該開封開始線の延長線が前記スカート部を上方に延びている請求項1に記載の易開封性蓋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−173594(P2011−173594A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−37154(P2010−37154)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(000228442)日本クラウンコルク株式会社 (382)
【Fターム(参考)】